(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の蓄電装置の充放方法および蓄電装置の放電方法について、図1乃至図4を用いて説明する。
本発明の一態様の蓄電装置の充電方法または蓄電装置の放電方法では、少なくとも2の支持材と、2の緩衝材により構成される加圧器具を用いて、蓄電装置に均一な圧力を加えながら、蓄電装置の充電または放電を行う。
図1を用いて、2枚の平板状の支持材、2枚の平板状の緩衝材および固定器具によって構成される加圧器具を用いて蓄電装置に均一な圧力を加える方法を説明する。図1(A)乃至図1(E)に、加圧器具を組み立てる様子の側面図を、順を追って示す。
まず、図1(A)に示すように、平板状の支持材11を用意する。また、支持材11の上に、平板状の緩衝材12を配置する。支持材11を水平な作業台等に置くことにより、続く工程を安全に進めることができ、好ましい。
次に、図1(B)に示すように、緩衝材12の上に、ラミネート型の蓄電装置20を配置する。
また、図1(C)に示すように、蓄電装置20の上に、平板状の緩衝材13を配置する。
なお、平板上の緩衝材12、蓄電装置20および平板状の緩衝材13を配置するとき、緩衝材12および緩衝材13が、蓄電装置20が有する正極および負極の全体を覆うように配置すると、蓄電装置20の正極および負極の全体に均一な圧力を加えることができ、好ましい。これによって、蓄電装置20の充電または放電を行うとき、正極と負極との間の距離を一定に保ちやすくすることができる。従って、蓄電装置の放電を行うとき、放電容量が不安定化するのを抑制することができる。
例として、図2(A)に、平板状の緩衝材13を配置するときの、支持材11、緩衝材12、蓄電装置20および緩衝材13の上面図を示す。蓄電装置20は、外装体26、正極リード23および負極リード24を有し、外装体26に囲まれる領域に、正極21および負極25を有する。緩衝材12および緩衝材13は、正極21および負極25の全体を覆う。
図2(A)に示すように、平板上の緩衝材12、蓄電装置20および平板状の緩衝材13を配置するとき、緩衝材12および緩衝材13は、正極21および負極25の全体を覆えばよく、緩衝材12及び緩衝材13が、蓄電装置20の外装体26の一部を覆わなくてもよい。
次に、図1(D)に示すように、緩衝材13の上に、緩衝材13と重なるように支持材14を配置する。
さらに、図1(E)に示すように、固定器具15を用いて支持材11と、支持材14との間の距離を固定することにより、加圧器具が完成し、蓄電装置20に圧力を加えることができる。
平板上の緩衝材12、蓄電装置20および平板状の緩衝材13を配置するとき、緩衝材12及び緩衝材13のいずれか一方が、蓄電装置20の外装体26の一部を覆わない構成とすると、加圧器具を完成させても、外装体26の一部の領域には、圧力がかかりにくい。従って、蓄電装置20の充放電を行うとき、電解液が分解されることにより発生するガスは、該領域に流れやすくなる。従って、外装体26に囲まれる領域において、正極21および負極25の付近にガスがたまることを防ぎ、正極と負極との間の距離が変化するのを抑制することができる。従って、蓄電装置20を放電させるとき、放電容量が不安定化するのを抑制することができる。
図2(B)に、加圧装置と蓄電装置20の上面図の一例を示す。図2(B)に示すように、蓄電装置20が有する正極リード23および負極リード24は、支持材11および支持材14と重ならない領域を有していると、正極リード23および負極リード24に導線を接続しやすくなるため、好ましい。
リード電極に導線を接続する方法は特に限られず、例えばワニ口クリップを用いて一時的にリード電極と導線を接続してもよい。または、リード電極と導線をはんだ付けしてもよい。リード電極に接続した導線を用いて、蓄電装置20に電流を流すことによって、蓄電装置の充放電を行うことができる。
なお、図1では、2枚の支持材および2枚の緩衝材を有する加圧器具を用いて蓄電装置に圧力を加える例を示したが、本発明の一態様はこれに限定されない。必要に応じて、3枚以上の支持材または3枚以上の緩衝材を用いて、蓄電装置に圧力を加えながら充放電を行ってもよい。
図3を用いて、3枚の支持材、2枚の緩衝材を有する加圧器具を用いて、蓄電装置に均一に圧力を加える方法を説明する。
まず、図3(A)に示すように、支持材11を用意する。次に、支持材11の上に、緩衝材12を配置する。
次に、図3(B)に示すように、緩衝材12の上に、蓄電装置20を配置する。
また、図3(C)に示すように、蓄電装置20の上に、緩衝材13を配置する。さらに、緩衝材13の上に、緩衝材13と重なるように支持材16を配置する。
そして、図3(D)に示すように、支持材16の上に、支持材16と重なるように支持材14を配置する。
図3(D)に示すように、緩衝材13と支持材14との間に支持材16を配置することで、支持材14をより安定に配置することができる場合がある。例えば、支持材14が、緩衝材13よりも大きく、その大きさの差が大きい場合には、支持材14よりも大きく、緩衝材よりも小さい支持材16を緩衝材13と支持材14との間に配置することで、支持材14をより安定に配置することができる。
図1および図3では、支持材および緩衝材が、平面を有する場合を示したが、本発明の一態様はこれに限られない。支持材および緩衝材は、凸曲面または凹曲面等を有していてもよい。
図4を用いて、凸曲面または凹曲面を有する支持材および緩衝材を有する加圧器具について説明する。
図4(A)に示すように、湾曲した板状の支持材11の凹曲面に接するように、緩衝材12を配置し、緩衝材12の上に、蓄電装置20を配置し、蓄電装置20の上に、緩衝材13を配置し、緩衝材13に凸曲面が接するように、湾曲した板状の支持材14を配置し、固定器具15を用いて支持材11と、支持材14との間の距離を固定することにより、蓄電装置に圧力を加えてもよい。
または、図4(B)に示すように、本発明の一態様は、凸曲面を有する支持材11の凸曲面に接するように、緩衝材12を配置し、緩衝材12の上に、蓄電装置20を配置し、蓄電装置20の上に、緩衝材13を配置し、緩衝材13に凹曲面が接するように、凹曲面を有する支持材14を配置し、固定器具15を用いて支持材11と、支持材14との間の距離を固定することにより、蓄電装置に圧力を加えてもよい。
図4(A)および図4(B)に示すように、凸曲面または凹曲面を有する支持材を用いることで、蓄電装置20が湾曲していても、均一な圧力を加えながら充放電を行うことができる。また、湾曲していない蓄電装置20に対して、凸曲面または凹曲面を有する支持材を用いて圧力を加えることで、蓄電装置20を湾曲させてもよい。
また、以上では、支持材と緩衝材がそれぞれ別の部材である例を示したが、支持材と緩衝材は一体化されていてもよい。例えば、接着剤等を用いて支持材11の表面に緩衝材12が接着されていてもよい。また、接着剤等を用いて支持材14の表面に緩衝材13が接着されていてもよい。
図5に、支持材と緩衝材とが一体化した複合材を用いて、蓄電装置20に圧力を加える方法を示す。
まず、図5(A)に示すように、第1の支持材11と、第1の緩衝材12を組み合わせることにより構成された第1の複合材31を用意し、図5(B)に示すように、第1の複合材31の上に蓄電装置20を配置する。
次に、図5(C)に示すように、蓄電装置20の上に、第2の緩衝材13と、第2の支持材14とを組み合わせることにより構成された第2の複合材32を配置する。
そして、固定器具15を用いて、第1の複合材31と、第2の複合材32との間の距離を固定し、蓄電装置20に圧力を加えることができる。
なお、図1(E)、図3(E)、図4(A)および図4(B)等においては、加圧器具の組立を完了した様子を示すが、加圧器具を組み立てた後、充放電を行うときの加圧器具および蓄電装置の置き方は、特に限定されない。加圧器具および蓄電装置において、加圧器具を組み立てたときとは異なる面を下にして、蓄電装置の充放電を行ってもよい。
例えば、図6(A)のように、加圧器具を組み立てたときの状態のままで、蓄電装置20が有する正極リード23及び負極リード24に導線を接続して充放電を行ってもよい。
また例えば、図6(B)のように、加圧器具を、面積の小さい面を下にして配置し、蓄電装置20が有する正極リード23および負極リード24に導線を接続して充放電を行ってもよい。加圧器具を、面積の小さい面を下にして配置することにより、限られた空間により多くの加圧器具を配置することができる。
以下、支持材、緩衝材、固定器具等について詳細に説明する。
支持材には、金属、合金、熱硬化性プラスチック、ガラスまたは木材等を用いることができる。例えば、金属として、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛またはチタン等を用いることができる。また、合金として、ステンレス鋼またはジュラルミン等を用いることができる。
支持材に、熱伝導性に優れた金属または合金を用いると、充放電により蓄電装置が発熱したとき、放熱しやすくすることができ、蓄電装置の発火等の危険性を減少させるため、好ましい。また、支持材は、歪みが発生しにくい材料および形状であれば、蓄電装置に均等に圧力を加えることができ、好ましい。例えば、ステンレス鋼を使用した厚さ5mm以上30mm以下の板を用いると、2枚の支持材間の距離を固定することにより蓄電装置に圧力を加えるときにも、歪みにくい支持材とすることができる。
緩衝材は、支持材よりも弾性が高い材料、又は、支持体よりも絶縁性が高い材料であればよい。例えば、支持材に用いることができる材料を緩衝材に用いてもよい。
緩衝材に、支持材よりも弾性が高い材料を用いると、支持材11と支持材14との間の距離を固定することにより蓄電装置20にかかる圧力を分散することができ、好ましい。
支持体よりも弾性が高い材料として、ゴム硬度10以上70以下、より好ましくは50以上70以下の合成ゴムまたは天然ゴム等を用いることができる。合成ゴムとして、例えばイソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴムまたはシリコーンゴム等を用いることができる。
また、緩衝材に、支持体よりも絶縁性が高い材料を用いると、蓄電装置がショートする危険性を減少させることができ、好ましい。
支持体よりも絶縁性が高い材料として、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、フッ素樹脂またはフェノール樹脂等の絶縁性の高いプラスチックまたは、上述の合成ゴムまたは天然ゴム等の絶縁体を用いることができる。
また、緩衝材は、熱伝導性が高い材料であるとより好ましい。熱伝導性が高い材料を緩衝材に用いると、充放電により蓄電装置が発熱したとき、放熱しやすくすることができ、蓄電装置の発火等の危険性を減少させるため、好ましい。
熱伝導性が高い材料として、シリコーンゴム、アクリル系ゴム、エチレンプロピレンゴム、フェライトまたはグラファイト等を用いることができる。これらの材料の熱伝導率は、0.8W/m・K以上であれば好ましく、2.0以上であればより好ましい。これらの材料の一または複数を含む放熱シート等を用いることもできる。
固定器具には、ねじ、ボルト、ナットおよび座金(ワッシャともいう。)のうちの一、または複数を組み合わせて用いることができる。固定器具としてボルト、ナットおよび座金を使用して、トルクレンチを使用し、トルクを指定すると、蓄電装置に加わる圧力を一定にすることができ、好ましい。指定するトルクの値は、例えば0.3N・m 以上1.0N・m以下とするとよい。また、クリップ等を用いて、第1の支持板および第2の支持板を挟んで固定してもよい。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る蓄電装置の充電方法を用いて蓄電装置のエージングを行う、蓄電装置100の作製方法の例について、図7乃至図11を用いて説明する。
[1.正極をセパレータで覆う]
まず、図7(A)に示すように、正極集電体101の一方の面に、正極活物質層102を形成した正極111を用意し、セパレータ107と重なるように配置する。次に、図7(B)に示すように、セパレータ107の正極111と重ならない領域が、正極111と重なるように、セパレータ107を折り曲げる。
次に、図7(C)に示すように、正極111の周囲の領域107aにおいて、セパレータ107同士を接合する。セパレータ107同士の接合は、接着材などを用いて行ってもよいし、超音波溶接や、加熱による融着により行ってもよい。また、繊維を重ねて成形されたセパレータを使用する場合、機械的な加圧によって、繊維同士を絡ませることによって、セパレータ同士を接合してもよい。また、加圧することにより接合する材料からなるセパレータを使用する場合、加圧することって、セパレータ同士を接合することができる。
本実施の形態では、セパレータ107としてポリプロピレンを用いて、正極111の周囲の領域107a(換言すると、セパレータ107において正極111と重ならない領域)を加熱することによりセパレータ107同士を接合する。このようにして、正極111をセパレータ107で覆うことができる。
領域107aは、セパレータ107を加熱により接合する場合に限らず、他の方法で接合する場合にも使用することができる。セパレータ107を接合する方法に応じ、適切な大きさの領域107aをセパレータに設けると、セパレータ107同士を接合しやすくなり、好ましい。
また、接合後の領域107aの厚みは、正極111の厚みよりも小さいと好ましい。
なお、セパレータ107の接合は、断続的に行ってもよいし、一定間隔毎の点状としてもよい。
本実施の形態では領域107aの4辺を接合する例を示すが、本発明の一態様はこれに限定されない。例えば、領域107aの1辺のみを接合してもよい。または、領域107aの2辺のみを接合してもよい。または、領域107aの3辺のみを接合してもよい。
なお、領域107aの1辺、2辺または3辺のみを接合した場合、接合していない領域については、後の工程で接合してもよい。例えば、負極をセパレータで覆った後に、該領域を接合してもよい。また、複数の正極および複数の負極を積層した二次電池を製造する場合は、複数の正極および負極をそれぞれセパレータで覆い、積層した後に、該領域を接合してもよい。
[2.負極をセパレータで覆う]
次に、図7(D)に示すように、負極集電体105の一方の面に、負極活物質層106が形成された負極115を用意し、セパレータ107を介して正極111と重なるように配置する。また、図8(A)に示すように、セパレータ107の負極115と重なっていない領域が、負極115に重なるように、セパレータ107を折り曲げる。
そして、図8(B)に示すように、負極115の周囲の領域107b(換言すると、セパレータ107において負極115と重ならない領域)において、セパレータ107同士を接合することにより、負極115をセパレータ107で覆う。
負極115を、セパレータ107を介して正極111と重なるように配置するとき、適切な大きさの領域107bを設けると、セパレータ107を接合しやすくなり好ましい。また、セパレータ107を接合する方法に応じ、適切な大きさの領域107bをセパレータ107に設けると、セパレータ107同士を接合しやすくなり、好ましい。
また、セパレータ107を折り曲げるときにも、適切な大きさの領域107bを設けると、セパレータ107を接合しやすくなり好ましい。
また、接合後の領域107bの厚みは、負極115の厚みよりも小さいと好ましい。
なお、領域107bは、領域107aと重なっていてもよく、領域107aの厚みと、領域107bの厚みの合計が、正極111の厚みと、負極115の厚みの合計よりも、小さいと好ましい。
上述のように、折り曲げたセパレータ107同士を接合して、正極111と負極115の相対位置がずれるのを防止することにより、正極活物質層102と、負極活物質層106とが、相対しない領域が増加することを確実に防止することができ、電池特性を保持する上で好ましい。また、このような構成とすると、蓄電装置の凹凸を減少させることができる。例えば、接着テープを用いて正極111と負極115とを固定する場合、接着テープの厚みによって、電極に凹凸が生じる。一方、接着テープを使用せず、セパレータ107同士を接合することにより電極の相対位置がずれるのを防止する場合、電極に凹凸が生じることを防ぐことができる。さらに、蓄電装置の凹凸を減少させることができる。
電極および蓄電装置の凹凸を減少させることにより、本発明の一態様に係る蓄電装置の充放方法を用いて蓄電装置の充電を行うとき、電極全体および蓄電装置全体に均一に圧力をかけやすくなる。また、正極と負極との間の距離を一定に保ちやすくすることができる。従って、蓄電装置の充電により蓄電装置が有する電解液が分解され、ガスが発生しても、正極と負極との間の距離がばらつくのを抑制することができる。
また、電極および蓄電装置の凹凸を減少させることにより、蓄電装置を構成する部材が損傷するのを防ぐことができる。例えば、接着テープを用いて正極111と負極115とを固定すると、蓄電装置の凹凸が増加するため、圧力が集中する凸部において正極111または負極115が有する活物質層が剥がれることがある。一方、接着テープを使用せず、セパレータ107同士の熱圧着により、正極111と負極115との位置がずれるのを防止することにより、正極111または負極115が有する活物質層が剥がれることを防ぐことができる。
[3.正極リードと負極リードを接続する]
次に、図8(C)に示すように、正極111の正極集電体において、正極活物質層が接していない領域(以下、正極タブと呼ぶ。)と、封止層121を有する正極リード141とを、電気的に接続する。また、負極115の負極集電体において、負極活物質層が接していない領域(以下、負極タブと呼ぶ。)と、封止層121を有する負極リード145とを、電気的に接続する。電気的に接続する方法は特に限られないが、例えば圧力を加えながら超音波を照射すればよい(超音波溶接)。
[4.外装体用フィルムを用意する]
次に、外装体に用いるフィルム110aを折り曲げる(図8(D))。
[5.外装体の一辺を接着する]
次に、折り曲げたフィルム110aで、正極111、正極リード141、負極115、負極リード145およびセパレータ107を挟む。そして、フィルム110aの一辺(図9(A)における領域110b)において、フィルム110a同士を接着する。接着は、熱溶着により行うことができる。
[6.外装体の他の一辺を接着し、電解液を注入する]
次に、フィルム110aの他の一辺(図9(B)における領域110c)において、フィルム110a同士を接着する。そして、フィルム110aが接着されていない部分から、フィルム110aで挟まれた領域に、電解液108を注入する(図9(B))。
[7.封止する]
そして真空引きを行いながら、加熱および加圧によりフィルム110aの残りの辺(図9(C)における領域110d)を接着し、フィルム110aを封止された外装体110とする(図9(C))。これらの操作は、グローブボックスを用いるなどして酸素や水を排除した環境にて行う。真空引きは、脱気シーラー、注液シーラー等を用いて行うとよい。またシーラーが有する加熱可能な2本のバーで挟むことにより、加熱および加圧を行うことができる。それぞれの条件は、例えば真空度は50kPa以上70kPa以下、加熱は150℃以上190℃以下、加圧は0.5MPa以上1.5MPa以下において2秒以上3秒以下とすることができる。このとき、フィルム110aの上から正極および負極を加圧してもよい。加圧により、電解液注入の際に混入した気泡を正極と負極の間から排除することができる。
[8.エージング]
次に、以上の方法によって作製した蓄電装置100に対して、エージングのための充放電を行う。本明細書等において、エージングとは、蓄電装置の初期不良を検出するため、また初期の充放電で負極活物質上に安定な被膜を形成させるために行う工程をいう。該被膜は、電解液の分解物に由来する。具体的には、電池使用温度範囲の上限に近い温度で、長時間充電状態で保持し、その後1サイクル以上の充放電を伴う、等の工程である。また、これらの工程によってガスが発生するため、さらに、外装体110で覆われた領域に発生したガスを抜く工程を含めてもよい。
初期の充放電で負極活物質上に安定な被膜を形成することで、その後の充放電における、さらなる被膜の形成に起因するキャリアイオンの消費を抑止することができる。そのためエージングを行うことで、蓄電装置の性能をより安定させ、不良セルを選別することができる。
本実施の形態では、実施の形態1で説明した蓄電装置の充電方法および蓄電装置の放電方法により蓄電装置100のエージングのための充放電を行い、蓄電装置100を完成させる。まず、図10に示すように、支持材11を水平な場所に置いたあと、支持材11に重なるように緩衝材12を配置する。次に、緩衝材12に重なるように蓄電装置100を配置したあと、蓄電装置100と重なるように緩衝材13を配置し、緩衝材12と緩衝材13で蓄電装置100を挟む。また、緩衝材13と重なるように支持材16と、支持材14とを重ねる。
次に、図10(B)に示すように、ボルト15aと、ナット15bを用いて、支持材11と支持材14との間の距離を固定する。このとき、トルクレンチを使用してボルトを締めると、複数のボルトの締め具合を等しくすることができ、蓄電装置にかかる圧力を均一にしやすくなるため、好ましい。
本実施の形態では、蓄電装置に対して1サイクル以上の充放電を行った後、図11(A)に示すように外装体110の一部を切り取ってガスを抜くこととする。さらにガスを抜くために、外装体110の一部を切り取ったあと、外装体110の外から、加圧を行ってもよい。
実施の形態1で説明した蓄電装置の充電方法により蓄電装置100のエージングのための充放電を行うことにより、蓄電装置に均一に圧力を加えながら、エージングのための充放電を行うことできる。これによって、蓄電装置を充放電するとき、正極と負極との間の距離を一定に保ちやすくすることができる。従って、蓄電装置の充放電により、ガスが発生しても、正極と負極との間の距離が変化するのを抑制することができる。従って、エージングのための充放電が安定化するため、効率的に負極活物質表面に安定な被膜を形成することができる。従って、後の充放電によるさらなる被膜の形成が抑制されるため、放電容量の不安定化が抑制された蓄電装置を製造することができる。
[9.再封止]
次に、エージングの際に切り取られた外装体110の一辺(図11(B)における領域110e)を再び封止する(図11(B))。上記の工程で、エージングのための充放電を行い、蓄電装置100を完成させることができる。
エージングと再封止の工程は、適宜繰り返し行ってもよい。
なお、本発明の一態様は、上記したようにセパレータ同士を接合することにより、正極111および負極115をそれぞれセパレータ107で覆うことに限定されない。セパレータ107は、蓄電装置100における正極111と負極115との接触を防ぐことができればよく、例えば短冊状のセパレータを正極111と負極115の間に配置する構成であってもよい。
また、本発明の一態様は、1枚の正極111、1枚の負極115および1枚のセパレータ107を使用することに限定されない。複数の正極111、複数の負極115および複数のセパレータ107を使用して、蓄電装置を作製してもよい。
また、本発明の一態様は、正極集電体101の一方の面に正極活物質層102を形成した正極111および負極集電体105の一方の面に負極活物質層106が形成された負極115を使用することに限定されない。正極集電体の両方の面に正極活物質層が形成された正極を用いてもよい。また、負極集電体の両方の面に負極活物質層が形成された負極を用いてもよい。また、正極集電体の両方の面に正極活物質層が形成された正極と、正極集電体の一方の面に正極活物質層が形成された正極とを、組み合わせて使用してもよい。また、負極集電体の両方の面に負極活物質層が形成された負極と、負極集電体一方の面に負極活物質層が形成された負極とを、組み合わせて使用してもよい。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態3)
本発明の一態様の蓄電装置の充電方法は、電子機器または車両等に搭載した蓄電装置において適用することができる。本実施の形態では、二次電池を有するバッテリーモジュールを例に挙げ、図12および図13を用いて説明する。
図12(A)に、バッテリーモジュール50Aの上面図を示す。また、図12(B)にバッテリーモジュール50の斜視図を示す。バッテリーモジュール50Aは、加圧器具、二次電池60および回路基板51を有する。
回路基板51は、回路52と、端子53を有する。回路52は、二次電池60が有する正極リードおよび負極リード、並びに端子53と電気的に接続される。回路52は、二次電池60の過充電および過放電を防止する保護回路であってもよく、または、二次電池60を制御する制御回路であってもよい。端子53は、制御信号入力端子または電源端子等として使用することができる。
加圧器具は、実施の形態1で説明した構成を使用することができる。図12には、支持材11、緩衝材12、緩衝材13、支持材14および固定器具15を有する加圧器具を示す。
実施の形態1に記載の加圧器具を使用することにより、バッテリーモジュール50Aにおいて、二次電池60が有する正極および負極に均一な圧力をかけながら、二次電池60の充放電を行うことができる。これによって、二次電池60の放電容量が不安定化することを抑制することができる。
従って、バッテリーモジュール50を電子機器または車両等に搭載することで、電子機器または車両等の信頼性を向上させることができる。
図13に、バッテリーモジュールの別の例を示す。図13(A)に、バッテリーモジュール50Bの斜視図を示し、図13(B)に、図13(A)に示す一点鎖線X−Yにおけるバッテリーモジュール50Bの断面図を示す。バッテリーモジュール50Bは、加圧器具と、二次電池60aおよび二次電池60bを有する。
バッテリーモジュール50Bが有する加圧器具は、支持材11a、緩衝材12a、緩衝材13a、支持材11b、緩衝材12b、緩衝材13b、支持材14および固定器具15を、この順に並べて有する。緩衝材12aと緩衝材13aとの間に二次電池60aを配置し、緩衝材12bおよび緩衝材13bとの間に二次電池60bを配置し、固定器具15を用いて支持材11aと、支持材14との間の距離を固定することにより、二次電池60aおよび二次電池60bの両方に圧力を加えることができる。
なお、図13では、バッテリーモジュール50Bは、2の二次電池を有する例を示したが、本発明の一態様はこれに限られない。バッテリーモジュール50Bは、3以上の二次電池を有していてもよい。
また、バッテリーモジュール50Bは、バッテリーモジュール50Aと同様に、回路基板51を有していてもよい。回路基板51が、回路52を有し、複数の二次電池が回路52に接続されていてもよい。回路52は、複数の二次電池の過充電および過放電を防止する保護回路であってもよく、または、複数の二次電池を制御する制御回路であってもよい。
上記のバッテリーモジュールを電子機器または車両等に搭載することで、電子機器または車両等への電源供給を、より安定させることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、図14乃至図18を用いて、実施の形態2に記載の蓄電装置の作製方法を用いて作製することのできる蓄電装置の他の例について説明する。
図14(A)に、複数の正極111、複数の負極115およびセパレータ107を使用した蓄電装置100Bの正面図を示す。また、図14(A)で示す一点鎖線A1−A2における、正極111、負極115、セパレータ107および負極リード145の断面図を図14(B)に示す。また、図14(A)で示す一点鎖線B1−B2における、正極111、負極115、セパレータ107および正極リード141の断面図を図14(C)に示す。
図14(B)および図14(C)に示すように、蓄電装置100Bは、3枚の正極111、3枚の負極115および3枚のセパレータ107を有する。正極111は、正極集電体101の一方の面に正極活物質層102が形成され、負極115は、負極集電体105の一方の面に負極活物質層106が形成される。正極活物質層102と負極活物質層106は、セパレータ107を介して重なるように配置される。また、負極115の負極活物質層106が形成されていない面同士が接するように配置する。また、正極111の正極活物質層102が形成されていない面同士が接するように配置する。
このような配置とすることで、負極115の負極活物質層106を有さない面同士という、金属同士の接触面155をつくることができる。また、正極111の正極活物質層102を有さない面同士という、金属同士の接触面151をつくることができる。金属同士の接触面は、活物質層とセパレータ107との接触面と比較して摩擦係数を小さくすることができる。
そのため、正極111および負極115が湾曲する場合、負極115の負極活物質層106を有さない面同士が接触面155において滑ることで、湾曲の内径と外径の差により生じる応力を逃がすことができる。従って、蓄電装置100Bが湾曲するとしても、正極111および負極115が劣化しにくくすることができる。
図15(A)に、一点鎖線C1−C2における、正極111、負極115およびセパレータ107の断面図の別の例を示す。
図15(A)に示す断面図においては、正極集電体101の両方の面に正極活物質層102が形成された正極111を2枚、負極集電体105の一方の面に負極活物質層106が形成された負極115を4枚使用している。このような構成としても、負極115の負極活物質を有さない面同士という、金属同士の接触面をつくることができる。
また、図15(A)に示す断面図において、セパレータ107は袋状の形状を有し、正極111を囲む。セパレータ107をこのような構成とすることによって、正極111と負極115とが接触するのを抑制することができる。
図15(B)に、正極111、負極115およびセパレータ107の断面図の別を示す。図15(B)では、正極集電体101の両面に正極活物質層102を有する正極111を2枚、負極集電体105の片面に負極活物質層106を有する負極115を2枚、負極集電体105の両面に負極活物質層を有する負極115を1枚積層している。図15(B)のように集電体の両面に活物質層を設けることで、蓄電装置100Bの単位体積あたりの容量を大きくすることができる。
図15(C)に、図1と異なる正極111と負極115の積層の例を示す。図15(C)では、電解液108としてゲル電解液108aを用い、一組の正極111、負極115、セパレータ107をゲル電解液108aで貼りあわせている。このような構成とすると、蓄電装置100Bを湾曲したとしても、正極111と負極115が滑り、ずれることを抑制できる。
また、正極111の正極活物質を有さない面同士、および負極115の負極活物質を有さない面同士という、金属同士の接触面をより多くつくることができる。そのため蓄電装置100Bを湾曲したとしても、これらの接触面がすべることで、湾曲の内径と外径の差により生じる応力を逃がすことができる。
図16に、蓄電装置100Cを示す。図16(A)は蓄電装置100Cの上面図である。図16(A)に示す一点鎖線D1−D2における蓄電装置100Cの断面図を、図16(B)に示す。図16(C)に、蓄電装置100Cの正極111、負極115およびセパレータ107を抜粋して示した斜視図を示す。
図17を用いて、図16に示す蓄電装置100Cの作製方法の一部について説明する。
まず、図17(A)に示すように、繰り返し折り曲げたセパレータ107の間に、正極111および負極115を交互に挟む。このとき、負極115が有する負極活物質層が、セパレータ107と重なるように配置する。同様に、正極111が有する正極活物質層102が、セパレータ107と重なるように配置する。なお、集電体の片面に活物質層が形成されている電極を用いる場合は、正極111の正極活物質層102と、負極115の負極活物質層106がセパレータ107を介して重なるように配置する。
次に、図17(B)に示すように、セパレータ107で複数の正極111および複数の負極115を覆う。さらに、セパレータ107同士が重なる領域、例えば図17(B)に示す領域107cを熱溶着することで、複数の正極111と複数の負極115を、セパレータ107によって覆い、結束する。
なお、複数の正極111、複数の負極115およびセパレータ107を、結束材を用いて結束してもよい。
このような工程で正極111および負極115を積み重ねるため、セパレータ107は、1枚のセパレータ107の中で、複数の正極111と複数の負極115に挟まれている領域と、複数の正極111と複数の負極115を覆うように配置されている領域とを有する。
換言すれば、図16の蓄電装置100Cが有するセパレータ107は、一部が折りたたまれた1枚のセパレータである。セパレータ107の折りたたまれた領域に、複数の正極111と、複数の負極115が挟まれている。セパレータ107をこのように折りたたむことによって、複数の正極111と複数の負極115との位置のずれを防止することができる、従って、正極111と負極115とを固定するために、接着テープ等を使用する必要がないため、蓄電装置の凹凸を減少させることができる。
図18に、図16と異なる蓄電装置100Dを示す。図18(A)は蓄電装置100Dの上面図である。図18(B1)は第1の電極組立体130、図18(B2)は第2の電極組立体131の断面図である。図18(C)は、図18(A)の一点破線C1−C2における断面図である。なお、図18(C)では図を明瞭にするため、第1の電極組立体130、第2の電極組立体131およびセパレータ107を抜粋して示す。
図18に示す蓄電装置100Dは、正極111と負極115の配置、およびセパレータ107の配置が図16の蓄電装置100Cと異なる。
図18(C)に示すように、蓄電装置100Dは、複数の第1の電極組立体130および複数の第2の電極組立体131を有する。
図18(B1)に示すように、第1の電極組立体130では、正極集電体101の両面に正極活物質層102を有する正極111、セパレータ107、負極集電体105の両面に負極活物質層106を有する負極115、セパレータ107、正極集電体101の両面に正極活物質層102を有する正極111がこの順に積層されている。また、図18(B2)に示すように、第2の電極組立体131では、負極集電体105の両面に負極活物質層106を有する負極115、セパレータ107、正極集電体101の両面に正極活物質層102を有する正極111、セパレータ107、負極集電体105の両面に負極活物質層106を有する負極115がこの順に積層されている。
さらに図18(C)に示すように、複数の第1の電極組立体130および複数の第2の電極組立体131は、巻回したセパレータ107によって覆われている。換言すれば、複数の第1の電極組立体130および複数の第2の電極組立体131は、渦巻き状に巻回されたセパレータ107の間に配置されている。
なお、最も外側に配置される第1の電極組立体130の正極111は、外側には正極活物質層102を設けないことが好ましい。
また図18(B1)および(B2)では、電極組立体が3枚の電極と2枚のセパレータを有する構成を示したが、本発明の一態様はこれに限らない。電極を4枚以上、セパレータを3枚以上有する構成としてもよい。電極を増やすことで、蓄電装置100Dの容量をより向上させることができる。また電極を2枚、セパレータを1枚有する構成としてもよい。電極が少ない場合、より湾曲しやすい蓄電装置100Dとすることができる。また図18(C)では、蓄電装置100Dが第1の電極組立体130を3組、第2の電極組立体131を2組有する構成を示したが、本発明の一態様はこれに限らない。さらに多くの電極組立体を有する構成としてもよい。電極組立体を増やすことで、蓄電装置100Dの容量をより向上させることができる。またより少なり電極組立体を有する構成としてもよい。電極組立体が少ない場合、より湾曲しやすい蓄電装置100Dとすることができる。
このような構成によっても、複数の正極111と複数の負極115との位置がずれるのを防止することができる、従って、正極111と負極115とを固定するために接着テープ等を使用する必要がないため、蓄電装置の凹凸を減少させることができる。
蓄電装置100Dの、正極111と負極115の配置、およびセパレータ107の配置の他は、図16についての記載を参酌することができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態5)
本実施の形態では、図19、図20および図21を用いて、本発明の一態様の蓄電装置の作製方法により作製する蓄電装置の材料について説明する。
[1.正極]
正極は、正極集電体と、正極集電体に接する正極活物質層などにより構成される。
正極集電体には、ステンレス、金、白金、アルミニウム、チタン等の金属、及びこれらの合金など、導電性が高く、正極の電位で溶出しない材料を用いることができる。また、シリコン、チタン、ネオジム、スカンジウム、モリブデンなどの耐熱性を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金を用いることができる。また、シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で形成してもよい。シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル等がある。正極集電体101は、箔状、板状(シート状)、網状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。正極集電体101は、厚みが5μm以上30μm以下のものを用いるとよい。また、正極集電体101の表面に、グラファイトなどを用いてアンダーコート層を設けてもよい。
正極活物質層は、正極活物質の他、正極活物質の密着性を高めるための結着剤(バインダ)、正極活物質層102の導電性を高めるための導電助剤等を有してもよい。
正極活物質層に用いる正極活物質としては、オリビン型の結晶構造、層状岩塩型の結晶構造、またはスピネル型の結晶構造を有する複合酸化物等がある。正極活物質として、例えば、LiFeO2、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、V2O5、Cr2O5、MnO2等の化合物を用いる。
特に、LiCoO2は、容量が大きいこと、LiNiO2に比べて大気中で安定であること、LiNiO2に比べて熱的に安定であること等の利点があるため、好ましい。
また、LiMn2O4等のマンガンを含むスピネル型の結晶構造を有するリチウム含有材料に、少量のニッケル酸リチウム(LiNiO2やLiNi1−xMxO2(0<x<1)(M=Co、Al等))を混合すると、これを用いた蓄電装置の特性を向上させることができ好ましい。
また、正極活物質として、組成式LiaMnbMcOdで表すことができるリチウムマンガン複合酸化物を用いることができる。ここで、元素Mは、リチウム、マンガン以外から選ばれた金属元素、またはシリコン、リンを用いることが好ましく、ニッケルであることがさらに好ましい。また、リチウムマンガン複合酸化物の粒子全体を測定する場合、放電時に0<a/(b+c)<2、かつc>0、かつ0.26≦(b+c)/d<0.5を満たすことが好ましい。なお、リチウムマンガン複合酸化物の粒子全体の金属、シリコン、リン等の組成は、例えばICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析計)を用いて測定することができる。またリチウムマンガン複合酸化物の粒子全体の酸素の組成は、例えばEDX(エネルギー分散型X線分析法)を用いて測定することが可能である。また、ICP−MS分析と併用して、融解ガス分析、XAFS(X線吸収微細構造)分析の価数評価を用いることで求めることができる。なお、リチウムマンガン複合酸化物とは、少なくともリチウムとマンガンとを含む酸化物をいい、クロム、コバルト、アルミニウム、ニッケル、鉄、マグネシウム、モリブデン、亜鉛、インジウム、ガリウム、銅、チタン、ニオブ、シリコン、およびリンなどからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含んでいてもよい。
なお、高容量を発現させるために、表層部と中心部で、結晶構造、結晶方位または酸素含有量が異なる領域を有するリチウムマンガン複合酸化物とすることが好ましい。このようなリチウムマンガン複合酸化物とするために、組成式がLiaMnbNicOd(1.6≦a≦1.848、0.19≦c/b≦0.935、2.5≦d≦3)の範囲とすることが好ましい。さらに、Li1.68Mn0.8062Ni0.318O3の組成式であらわされるリチウムマンガン複合酸化物を用いることが特に好ましい。本明細書等において、Li1.68Mn0.8062Ni0.318O3の組成式であらわされるリチウムマンガン複合酸化物とは、材料の量の割合(モル比)を、Li2CO3:MnCO3:NiO=0.84:0.8062:0.318とすることにより形成したリチウムマンガン複合酸化物をいう。そのため該リチウムマンガン複合酸化物は、組成式Li1.68Mn0.8062Ni0.318O3で表されるが、この組成からずれることもある。
結晶構造、結晶方位または酸素含有量が異なる領域を有するリチウムマンガン複合酸化物の粒子の断面図の例を図19に示す。
図19(A)に示すように、結晶構造、結晶方位または酸素含有量が異なる領域を有するリチウムマンガン複合酸化物は、第1の領域331と、第2の領域332と、第3の領域333を有することが好ましい。第2の領域は、第1の領域の外側の少なくとも一部に接する。ここで、外側とは、粒子の表面により近いことを示す。また、第3の領域は、リチウムマンガン複合酸化物を有する粒子の、表面と一致する領域を有することが好ましい。
また、図19(B)に示すように、第1の領域331は、第2の領域332に覆われない領域を有してもよい。また、第2の領域332は、第3の領域333に覆われない領域を有してもよい。また、例えば第1の領域331に第3の領域333が接する領域を有してもよい。また、第1の領域331は、第2の領域332および第3の領域333のいずれにも覆われない領域を有してもよい。
第2の領域は、第1の領域と異なる組成を有することが好ましい。
例えば、第1の領域と第2の領域の組成を分けて測定し、第1の領域がリチウム、マンガン、元素Mおよび酸素を有し、第2の領域がリチウム、マンガン、元素Mおよび酸素を有し、第1の領域のリチウム、マンガン、元素M、および酸素の原子数比はa1:b1:c1:d1で表され、第2の領域のリチウム、マンガン、元素M、および酸素の原子数比はa2:b2:c2:d2で表される場合について説明する。なお、第1の領域と第2の領域のそれぞれの組成は、例えばTEM(透過型電子顕微鏡)を用いたEDX(エネルギー分散型X線分析法)で測定することができる。EDXを用いた測定では、リチウムの組成の測定が困難な場合がある。そのため、以下では、第1の領域と第2の領域の組成の違いは、リチウム以外の元素について述べる。ここで、d1/(b1+c1)は2.2以上が好ましく、2.3以上であることがより好ましく、2.35以上3以下であることがさらに好ましい。また、d2/(b2+c2)は2.2未満であることが好ましく、2.1未満であることがより好ましく、1.1以上1.9以下であることがさらに好ましい。またこの場合でも、第1の領域と第2の領域を含むリチウムマンガン複合酸化物粒子全体の組成は、前述の0.26≦(b+c)/d<0.5を満たすことが好ましい。
また、第2の領域が有するマンガンは、第1の領域が有するマンガンと異なる価数を有してもよい。また、第2の領域が有する元素Mは、第1の領域が有する元素Mと異なる価数を有してもよい。
より具体的には、第1の領域331は、層状岩塩型の結晶構造を有するリチウムマンガン複合酸化物であることが好ましい。また第2の領域332は、スピネル型の結晶構造を有するリチウムマンガン複合酸化物であることが好ましい。
ここで、各領域の組成や、元素の価数に空間的な分布がある場合には、例えば複数の箇所についてその組成や価数を評価し、その平均値を算出し、該領域の組成や価数としてもよい。
また、第2の領域と第1の領域との間に、遷移層を有してもよい。ここで遷移層とは、例えば組成が連続的、あるいは段階的に変化する領域である。または、遷移層とは、結晶構造が連続的、あるいは段階的に変化する領域である。または、遷移層とは、結晶の格子定数が連続的、あるいは段階的に変化する領域である。または、第2の領域と第1の領域との間に、混合層を有してもよい。ここで混合層とは、例えば異なる結晶方位を有する2以上の結晶が混合する場合を指す。あるいは、混合層とは、例えば異なる結晶構造を有する2以上の結晶が混合する場合を指す。あるいは、混合層とは、例えば異なる組成を有する2以上の結晶が混合する場合を指す。
第3の領域には、炭素または金属化合物を用いることができる。ここで、金属としては例えばコバルト、アルミニウム、ニッケル、鉄、マンガン、チタン、亜鉛、リチウム等が挙げられる。金属化合物の一例として、第3の領域はこれらの金属の酸化物や、フッ化物などが挙げられる。
第3の領域は、上記の中でも、炭素を有することが特に好ましい。炭素は導電性が高いため、炭素で被覆された粒子を蓄電装置の電極に用いることにより、例えば電極の抵抗を低くすることができる。また、第3の領域が炭素を有することで、第3の領域と接する第2の領域を酸化することができる。また、第3の領域は導電性を有するグラフェン化合物(後述)を有してもよい。導電性を有するグラフェン化合物は、優れた電気特性に加え、柔軟性並びに機械的強度が高いという優れた物理特性を有する。またリチウムマンガン複合酸化物の粒子を効率よく被覆することができる。
第3の領域が、導電性を有するグラフェン化合物をはじめとする炭素を有することで、リチウムマンガン複合酸化物を正極材料に用いた蓄電装置の、サイクル特性を向上させることができる。
炭素を含む層の膜厚は、0.4nm以上40nm以下とすることが好ましい。
また、リチウムマンガン複合酸化物は、例えば、一次粒子の平均粒子径が、5nm以上50μm以下であることが好ましく、100nm以上500nm以下であることがより好ましい。また比表面積が5m2/g以上15m2/g以下であることが好ましい。また、二次粒子の平均粒子径は、5μm以上50μm以下であることが好ましい。なお平均粒子径は、SEM(走査型電子顕微鏡)またはTEMによる観察、またはレーザ回折・散乱法を用いた粒度分布計等によって測定することができる。また比表面積は、ガス吸着法により測定することができる。
または、正極活物質として、複合材料(一般式LiMPO4(Mは、Fe(II)、Mn(II)、Co(II)、Ni(II)の一以上))を用いることができる。一般式LiMPO4の代表例としては、LiFePO4、LiNiPO4、LiCoPO4、LiMnPO4、LiFeaNibPO4、LiFeaCobPO4、LiFeaMnbPO4、LiNiaCobPO4、LiNiaMnbPO4(a+bは1以下、0<a<1、0<b<1)、LiFecNidCoePO4、LiFecNidMnePO4、LiNicCodMnePO4(c+d+eは1以下、0<c<1、0<d<1、0<e<1)、LiFefNigCohMniPO4(f+g+h+iは1以下、0<f<1、0<g<1、0<h<1、0<i<1)等のリチウム化合物を材料として用いることができる。
特にLiFePO4は、安全性、安定性、高容量密度、初期酸化(充電)時に引き抜けるリチウムイオンの存在等、正極活物質に求められる事項をバランスよく満たしているため、好ましい。
または、一般式Li(2−j)MSiO4(Mは、Fe(II)、Mn(II)、Co(II)、Ni(II)の一以上、0≦j≦2)等の複合材料を用いることができる。一般式Li(2−j)MSiO4の代表例としては、Li(2−j)FeSiO4、Li(2−j)NiSiO4、Li(2−j)CoSiO4、Li(2−j)MnSiO4、Li(2−j)FekNilSiO4、Li(2−j)FekColSiO4、Li(2−j)FekMnlSiO4、Li(2−j)NikColSiO4、Li(2−j)NikMnlSiO4(k+lは1以下、0<k<1、0<l<1)、Li(2−j)FemNinCoqSiO4、Li(2−j)FemNinMnqSiO4、Li(2−j)NimConMnqSiO4(m+n+qは1以下、0<m<1、0<n<1、0<q<1)、Li(2−j)FerNisCotMnuSiO4(r+s+t+uは1以下、0<r<1、0<s<1、0<t<1、0<u<1)等のリチウム化合物を材料として用いることができる。
また、正極活物質として、AxM2(XO4)3(A=Li、Na、Mg、M=Fe、Mn、Ti、V、Nb、X=S、P、Mo、W、As、Si)の一般式で表されるナシコン型化合物を用いることができる。ナシコン型化合物としては、Fe2(MnO4)3、Fe2(SO4)3、Li3Fe2(PO4)3等がある。また、正極活物質として、Li2MPO4F、Li2MP2O7、Li5MO4(M=Fe、Mn)の一般式で表される化合物、NaFeF3、FeF3等のペロブスカイト型フッ化物、TiS2、MoS2等の金属カルコゲナイド(硫化物、セレン化物、テルル化物)、LiMVO4等の逆スピネル型の結晶構造を有する酸化物、バナジウム酸化物系(V2O5、V6O13、LiV3O8等)、マンガン酸化物、有機硫黄化合物等の材料を用いることができる。
なお、キャリアイオンが、リチウムイオン以外のアルカリ金属イオンや、アルカリ土類金属イオンの場合、正極活物質として、リチウムの代わりに、アルカリ金属(例えば、ナトリウムやカリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ベリリウム、マグネシウム等)を用いてもよい。例えば、NaFeO2や、Na2/3[Fe1/2Mn1/2]O2などのナトリウム含有層状酸化物を正極活物質として用いることができる。
なお、図示しないが、正極活物質層の表面に炭素層などの導電性材料を設けてもよい。炭素層などの導電性材料を設けることで、電極の導電性を向上させることができる。例えば、正極活物質層への炭素層の被覆は、正極活物質の焼成時にグルコース等の炭水化物を混合することで形成することができる。
粒状の正極活物質の一次粒子の平均粒径は、50nm以上100μm以下のものを用いるとよい。
導電助剤としては、例えば炭素材料、金属材料、又は導電性セラミックス材料等を用いることができる。また、導電助剤として繊維状の材料を用いてもよい。活物質層の総量に対する導電助剤の含有量は、1wt%以上10wt%以下が好ましく、1wt%以上5wt%以下がより好ましい。
導電助剤により、電極中に電気伝導のネットワークを形成することができる。導電助剤により、活物質どうしの電気伝導の経路を維持することができる。活物質層中に導電助剤を添加することにより、高い電気伝導性を有する活物質層を実現することができる。
導電助剤としては、例えば天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ等の人造黒鉛、炭素繊維などを用いることができる。炭素繊維としては、例えばメソフェーズピッチ系炭素繊維、等方性ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維を用いることができる。また炭素繊維として、カーボンナノファイバーやカーボンナノチューブなどを用いることができる。また、炭素繊維として、気相成長炭素繊維(VGCF(登録商標):Vapor−Grown Carbon Fiber)を用いることができる。また、導電助剤として、例えばカーボンブラック(アセチレンブラック(AB)など)、グラファイト(黒鉛)粒子、導電性を有するグラフェン化合物(後述)、フラーレンなどの炭素材料を用いることができる。また、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金などの金属粉末や金属繊維、導電性セラミックス材料等を用いることができる。
導電性を有するグラフェン化合物は、優れた電気特性に加え、柔軟性並びに機械的強度という優れた物理特性を有する。そのため、導電性を有するグラフェン化合物を、導電助剤として用いることにより、活物質同士の接触点や、接触面積を増大させることができる。
また、導電性を有するグラフェン化合物は、平面的な形状を有するため接触抵抗の低い面接触が可能である。また、導電性を有するグラフェン化合物は、薄くても導電性が非常に高く、少ない量でも効率よく活物質層内で導電パスを形成することができる。
平均粒径の小さい活物質、例えば1μm以下の活物質を用いる場合には、活物質の比表面積が大きく、活物質同士を繋ぐ導電パスがより多く必要となる。このような場合には、導電性が非常に高く少ない量でも効率よく導電パスを形成することができるグラフェン化合物を用いることが、特に好ましい。
以下では、正極活物質層に、導電助剤として、導電性を有するグラフェン化合物を用いる場合の断面構成例を説明する。なお、負極活物質層に導電助剤として導電性を有するグラフェン化合物を用いてもよい。
図20(A)に、正極活物質層102および正極集電体101の縦断面図を示す。正極活物質層102は、粒状の正極活物質322と、導電助剤としての導電性を有するグラフェン化合物321と、結着剤(バインダともいう。図示せず)と、を含む。
正極活物質層102の縦断面においては、図20(A)に示すように、正極活物質層102の内部において概略均一にシート状のグラフェン化合物321が、面接触する程度に正極活物質を覆っている。図20(A)においてはグラフェン化合物321を模式的に太線で表しているが、実際には炭素分子の単層又は多層の厚みを有する薄膜である。複数のグラフェン化合物321は、複数の粒状の正極活物質322を包むように、覆うように、あるいは複数の粒状の正極活物質322の表面上に張り付くように形成されているため、互いに面接触している。また、グラフェン化合物321どうしも互いに面接触することで、複数のグラフェン化合物321により三次元的な電気伝導のネットワークを形成している。
これは導電性を有するグラフェン化合物321の形成に、極性溶媒中での分散性が極めて高い酸化グラフェンを用いるためである。均一に分散した酸化グラフェンを含有する分散媒から溶媒を揮発除去し、酸化グラフェンを還元して導電性を有するグラフェン化合物とするため、正極活物質層102に残留するグラフェン化合物321は部分的に重なり合い、互いに面接触する程度に正極活物質を覆うことで電気伝導の経路を形成している。なお、酸化グラフェンの還元は、例えば熱処理により行ってもよいし、還元剤を用いて行ってもよい。
活物質と点接触するアセチレンブラック等の粒状の導電助剤と異なり、グラフェン化合物321は接触抵抗の低い面接触を可能とするものであるから、導電助剤の量を増加させることなく、粒状の正極活物質322とグラフェン化合物321との電気伝導性を向上させるができる。よって、正極活物質322の正極活物質層102における比率を増加させることができる。これにより、蓄電装置の放電容量を増加させることができる。
また、グラフェン化合物同士が結合することにより、網目状のグラフェン化合物(以下グラフェンネットと呼ぶ)を形成することができる。活物質をグラフェンネットが被覆する場合に、グラフェンネットは粒子間を結合するバインダとしても機能することができる。よって、バインダの量を少なくすることができる、又は使用しないことができるため、電極体積や電極重量に占める活物質の比率を向上させることができる。すなわち、蓄電装置の容量を増加させることができる。
上記のような、正極活物質層または負極活物質層に、導電助剤として導電性を有するグラフェン化合物を用いる構成は、可撓性を有する蓄電装置において特に有効である。
図21(A)に、従来例として、導電助剤にアセチレンブラックをはじめとする粒子状の導電助剤323を用いた場合の正極活物質層102および正極集電体101の縦断面図を示す。正極活物質322同士は、粒子状の導電助剤323との接触によって電気伝導のネットワークが形成されている。
図21(B)に、図21(A)の正極活物質層102および正極集電体101を曲げる場合を示す。図21(B)のように、導電助剤に粒子状の導電助剤323を用いると、正極活物質層102が曲がるのに伴って正極活物質322同士の距離が変化し、正極活物質322同士の電気伝導のネットワークの一部が切れてしまう恐れがある。
一方、導電助剤として導電性を有するグラフェン化合物を用いた図20(A)の正極活物質層102および正極集電体101を曲げる場合を図20(B)に示す。グラフェン化合物は柔軟性を有するシートであるため、図20(B)のように正極活物質層102が曲がるのに伴って正極活物質322同士の距離が変化しても、電気伝導のネットワークを維持することができる。
本発明の一態様の蓄電装置に用いる電極は様々な方法で作製することができる。例えば、塗布法を用いて集電体上に活物質層を形成する場合は、活物質とバインダと導電助剤と分散媒(溶媒ともいう)を混合してペーストを作製し、集電体上にペーストを塗布して、分散媒を気化させればよい。その後、必要があれば、ロールプレス法や平板プレス法等の圧縮方法によりプレスして圧密化してもよい。
分散媒としては、例えば、水や、N−メチルピロリドン(NMP)やジメチルホルムアミド等の極性を有する有機溶媒等を用いることができる。安全性とコストの観点から、水を用いることが好ましい。
バインダとしては、例えば水溶性の高分子を含むことが好ましい。水溶性の高分子としては、例えば多糖類などを用いることができる。多糖類としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、再生セルロースなどのセルロース誘導体や、澱粉などを用いることができる。
また、バインダとしては、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン・イソプレン・スチレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体などのゴム材料を用いることが好ましい。これらのゴム材料は、前述の水溶性の高分子と併用して用いると、さらに好ましい。
または、バインダとしては、ポリスチレン、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル(ポリメチルメタクリレート(PMMA))、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、イソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリビニルクロライド、エチレンプロピレンジエンポリマー、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース等の材料を用いることが好ましい。
バインダは上記のうち二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
正極活物質層102の総量に対するバインダの含有量は、1wt%以上10wt%以下が好ましく、2wt%以上8wt%以下がより好ましく、3wt%以上5wt%以下がさらに好ましい。また、正極活物質層102の総量に対する導電助剤の含有量は、1wt%以上10wt%以下が好ましく、1wt%以上5wt%以下がより好ましい。
塗布法を用いて正極活物質層を形成する場合は、正極活物質とバインダと導電助剤を混合して正極ペースト(スラリー)を作製し、正極集電体101上に塗布して乾燥させればよい。
[2.負極]
負極は、負極集電体と、負極集電体上に形成された負極活物質層などにより構成される。
負極集電体には、ステンレス、金、白金、鉄、銅、チタン等の金属、及びこれらの合金など、導電性の高く、リチウム等のキャリアイオンと合金化しない材料を用いることができる。また、シリコン、チタン、ネオジム、スカンジウム、モリブデンなどの耐熱性を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金を用いることができる。負極集電体105は、箔状、板状(シート状)、網状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。負極集電体105は、厚みが5μm以上30μm以下のものを用いるとよい。また、負極集電体105の表面に、グラファイトなどを用いてアンダーコート層を設けてもよい。
なお、負極集電体の材料をステンレス、チタンなどの強度のあるものとすると、負極活物質層の膨張に伴う負極集電体の変形に耐えることができ、好ましい。これは、負極活物質として、ケイ素を含む材料をはじめとする充放電に伴う体積の変化が大きい材料を用いる場合に特に好適である。
負極活物質層は、負極活物質の他、負極活物質の密着性を高めるための結着剤(バインダ)、負極活物質層106の導電性を高めるための導電助剤等を有してもよい。負極活物質層に用いるバインダおよび導電助剤の材料は、正極活物質層に用いるバインダおよび導電助剤の材料を参酌することができる。
負極活物質としては、リチウムの溶解・析出、又はリチウムイオンとの可逆的な反応が可能な材料を用いることができ、リチウム金属、炭素系材料、合金系材料等を用いることができる。
リチウム金属は、酸化還元電位が低く(標準水素電極に対して−3.045V)、重量及び体積当たりの比容量が大きい(それぞれ3860mAh/g、2062mAh/cm3)ため、好ましい。
炭素系材料としては、黒鉛、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンブラック等がある。
黒鉛としては、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス系人造黒鉛、ピッチ系人造黒鉛等の人造黒鉛や、球状化天然黒鉛等の天然黒鉛がある。
黒鉛はリチウムイオンが黒鉛に挿入されたとき(リチウム−黒鉛層間化合物の生成時)にリチウム金属と同程度に卑な電位を示す(0.1−0.3V vs.Li/Li+)。これにより、リチウムイオン蓄電装置は高い作動電圧を示すことができる。さらに、黒鉛は、単位体積当たりの容量が比較的高い、体積膨張が小さい、安価である、リチウム金属に比べて安全性が高い等の利点を有するため、好ましい。
また、負極活物質には上述の炭素材の他、キャリアイオンとの合金化、脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な材料を用いることができる。キャリアイオンがリチウムイオンである場合、例えば、Mg、Ca、Al、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、及びIn等の元素のうちの少なくとも一つを含む材料を用いることができる。このような元素は炭素に対して容量が大きく、特にシリコンは理論容量が4200mAh/gと飛躍的に高い。このため、負極活物質にシリコンを用いることが好ましい。このような元素を用いた材料としては、例えば、Mg2Si、Mg2Ge、Mg2Sn、SnS2、V2Sn3、FeSn2、CoSn2、Ni3Sn2、Cu6Sn5、Ag3Sn、Ag3Sb、Ni2MnSb、CeSb3、LaSn3、La3Co2Sn7、CoSb3、InSb、SbSn等がある。
また、負極活物質として、SiO、SnO、SnO2、二酸化チタン(TiO2)、リチウムチタン酸化物(Li4Ti5O12)、リチウム−黒鉛層間化合物(LixC6)、五酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化タングステン(WO2)、酸化モリブデン(MoO2)等の酸化物を用いることができる。
なお、SiOとは、ケイ素酸化物の粉末を指しており、SiOy(2>y>0)とも表記できる。SiOは、ケイ素リッチの部分を含んでいてもよい。例えばSiOは、Si2O3、Si3O4、またはSi2Oから選ばれた単数または複数を含む材料や、Siの粉末と二酸化ケイ素SiO2の混合物も含む。また、SiOは他の元素(炭素、窒素、鉄、アルミニウム、銅、チタン、カルシウム、マンガンなど)を含む場合もある。即ち、単結晶Si、アモルファスSi、多結晶Si、Si2O3、Si3O4、Si2O、SiO2から選ばれる複数を含む材料を指しており、SiOは有色材料である。SiOではないSiOx(Xは2以上)であれば無色透明、或いは白色であり、区別することができる。ただし、蓄電装置の材料としてSiOを用いて蓄電装置を作製した後、充放電を繰り返すなどによって、SiOが酸化した場合には、SiO2に変質する場合もある。
また、負極活物質として、リチウムと遷移金属の複窒化物である、Li3N型構造をもつLi3−xMxN(M=Co、Ni、Cu)を用いることができる。例えば、Li2.6Co0.4N3は大きな充放電容量(900mAh/g、1890mAh/cm3)を示し好ましい。
リチウムと遷移金属の複窒化物を用いると、負極活物質中にリチウムイオンを含むため、正極活物質としてリチウムイオンを含まないV2O5、Cr3O8等の材料と組み合わせることができ好ましい。なお、正極活物質にリチウムイオンを含む材料を用いる場合でも、あらかじめ正極活物質に含まれるリチウムイオンを脱離させておくことで負極活物質としてリチウムと遷移金属の複窒化物を用いることができる。
また、コンバージョン反応が生じる材料を負極活物質として用いることもできる。例えば、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化鉄(FeO)等の、リチウムと合金化反応を行わない遷移金属酸化物を負極活物質に用いてもよい。コンバージョン反応が生じる材料としては、さらに、Fe2O3、CuO、Cu2O、RuO2、Cr2O3等の酸化物、CoS0.89、NiS、CuS等の硫化物、Zn3N2、Cu3N、Ge3N4等の窒化物、NiP2、FeP2、CoP3等のリン化物、FeF3、BiF3等のフッ化物でも起こる。なお、上記フッ化物の電位は高いため、正極活物質として用いてもよい。
塗布法を用いて負極活物質層を形成する場合は、負極活物質と結着剤を混合して負極ペースト(スラリー)を作製し、負極集電体105上に塗布して乾燥させればよい。
また、負極活物質層の表面に、グラフェンを形成してもよい。例えば、負極活物質をシリコンとした場合、充放電サイクルにおけるキャリアイオンの吸蔵・放出に伴う体積の変化が大きいため、負極集電体と負極活物質層との密着性が低下し、充放電により電池特性が劣化してしまう。そこで、シリコンを含む負極活物質層の表面にグラフェンを形成すると、充放電サイクルにおいて、シリコンの体積が変化したとしても、負極集電体と負極活物質層との密着性の低下を抑制することができ、電池特性の劣化が低減されるため好ましい。
また、負極活物質層の表面に、酸化物等の被膜を形成してもよい。充電時において電解液の分解等により形成される被膜は、その形成時に消費された電荷量を放出することができず、不可逆容量を形成する。これに対し、酸化物等の被膜をあらかじめ負極活物質層の表面に設けておくことで、不可逆容量の発生を抑制又は防止することができる。
このような負極活物質層を被覆する被膜には、ニオブ、チタン、バナジウム、タンタル、タングステン、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、クロム、アルミニウム若しくはシリコンのいずれか一の酸化膜、又はこれら元素のいずれか一とリチウムとを含む酸化膜を用いることができる。このような被膜は、従来の電解液の分解生成物により負極表面に形成される被膜に比べ、十分緻密な膜である。
例えば、酸化ニオブ(Nb2O5)は、電気伝導度が10−9S/cmと低く、高い絶縁性を示す。このため、酸化ニオブ膜は負極活物質と電解液との電気化学的な分解反応を阻害する。一方で、酸化ニオブのリチウム拡散係数は10−9cm2/secであり、高いリチウムイオン伝導性を有する。このため、リチウムイオンを透過させることが可能である。また、酸化シリコンや酸化アルミニウムを用いてもよい。
負極活物質層を被覆する被膜の形成には、例えばゾル−ゲル法を用いることができる。ゾル−ゲル法とは、金属アルコキシドや金属塩等からなる溶液を、加水分解反応・重縮合反応により流動性を失ったゲルとし、このゲルを焼成して薄膜を形成する方法である。ゾル−ゲル法は液相から薄膜を形成する方法であるから、原料を分子レベルで均質に混合することができる。このため、溶媒の段階の金属酸化膜の原料に、黒鉛等の負極活物質を加えることで、容易にゲル中に活物質を分散させることができる。このようにして、負極活物質層106の表面に被膜を形成することができる。当該被膜を用いることで、蓄電体の容量の低下を防止することができる。
[3.セパレータ]
セパレータを形成するための材料として、セルロースや、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリブテン、ナイロン、ポリエステル、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ポリフェニレンサルファイド等の多孔性絶縁体を用いることができる。また、ガラス繊維等の不織布や、ガラス繊維と高分子繊維を複合した隔膜を用いてもよい。また、耐熱性を高めるために、ポリエステル不織布に、セラミック塗布やアラミドのコーティングを行ったセパレータを用いてもよい。
[4.電解液]
蓄電装置に用いる電解液の溶媒としては、非プロトン性有機溶媒が好ましく、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ギ酸メチル、酢酸メチル、酪酸メチル、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、メチルジグライム、アセトニトリル、ベンゾニトリル、テトラヒドロフラン、スルホラン、スルトン等の1種、又はこれらのうちの2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
また、電解液の溶媒として、難燃性及び難揮発性であるイオン液体(常温溶融塩)を一つ又は複数用いることで、蓄電体の内部短絡や、過充電等によって内部温度が上昇しても、蓄電装置の破裂や発火などを防ぐことができる。
また、上記の溶媒に溶解させる電解質としては、キャリアにリチウムイオンを用いる場合、例えばリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(略称:LiTFSA)、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiAlCl4、LiSCN、LiBr、LiI、Li2SO4、Li2B10Cl10、Li2B12Cl12、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3、LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiN(C4F9SO2)(CF3SO2)、LiN(C2F5SO2)2等のリチウム塩を一種、又はこれらのうちの二種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
電解液にポリマーを添加し、ゲル状にしてもよい。電解液をゲル状にすることにより、漏液性等に対する安全性が高まる。また、蓄電装置の薄型化及び軽量化が可能である。電解液をゲル状にすることのできるポリマーとしては、例えば、ポリアルキレンオキシド系、ポリアクリロニトリル系、ポリフッ化ビニリデン系、ポリアクリレート系、ポリメタクリレート系ポリマーを用いることができる。なお本明細書等において、例えばポリフッ化ビニリデン系ポリマーとは、ポリフッ化ビニリデンを含むポリマーを意味し、ポリ(フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン)共重合体等を含む。形成されるポリマーは、多孔質形状を有してもよい。
FT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)等を用いることで、上記のポリマーを定性分析することができる。例えばポリフッ化ビニリデン系ポリマーは、FT−IRで得たスペクトルに、C−F結合を示す吸収を有する。またポリアクリロニトリル系ポリマーは、FT−IRで得たスペクトルに、C≡N結合を示す吸収を有する。
また、蓄電装置に用いる電解液は、粒状のごみや電解液の構成元素以外の元素(以下、単に「不純物」ともいう。)の含有量が少ない高純度化された電解液を用いることが好ましい。具体的には、電解液に対する不純物の重量比を1%以下、好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.01%以下とすることが好ましい。また、電解液にビニレンカーボネートなどの添加剤を加えてもよい。
また、電解液の代わりに、硫化物系や酸化物系等の無機物材料を有する固体電解質を用いることができる。固体電解質を用いる場合には、セパレータやスペーサの設置が不要となる。また、電池全体を固体化できるため、漏液のおそれがなくなり安全性が飛躍的に向上する。
[5.外装体]
外装体として用いるフィルムには、金属箔にプラスティックフィルムを積層した、金属箔ラミネートフィルムを用いることができる。金属箔ラミネートフィルムは、熱圧着することで封止が可能であり、形状の自由度が高く、軽量である、可撓性を有するといった利点があり好ましい。金属箔ラミネートフィルムが有する金属箔の材料としては、アルミニウム、ステンレス、錫、ニッケル鋼などを用いることができる。該金属箔に積層するプラスティックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン等を用いることができる。
なお本明細書等において、ラミネートとは、金属箔やプラスティックフィルム等の薄い材料を貼りあわせて積層する加工法をいう。
また外装体に用いるフィルムとしては、金属箔に、有機材料(有機樹脂や繊維など)と無機材料(セラミックなど)とを含むハイブリッド材料フィルム、炭素含有無機フィルム(カーボンフィルム、グラファイトフィルムなど)から選ばれる単層フィルムまたはこれら複数からなる積層フィルムを積層したものを用いてもよい。
なお、本発明の一態様において、蓄電装置を構成する各部材にグラフェン化合物を用いることができる。グラフェン化合物は後述の通り、修飾により構造及び特性を幅広く選択することができため、グラフェン化合物を適用しようとする部材に応じて、好ましい性質を発現させることができる。また、グラフェン化合物は機械的強度が高いため、グラフェン化合物は可撓性を有する蓄電装置を構成する各部材にも適用することができる。以下、グラフェン化合物について説明する。
グラフェンは、炭素原子が1原子層配列したものであり、炭素原子間にπ結合を有する。グラフェンが2層以上100層以下重なったものを、マルチグラフェンと呼ぶ場合がある。グラフェンおよびマルチグラフェンは、例えば、長手方向、あるいは面における長軸の長さが50nm以上100μm以下または800nm以上50μm以下である。
本明細書等において、グラフェンまたはマルチグラフェンを基本骨格として有する化合物を「グラフェン化合物(「グラフェンコンパウンド:Graphene Compound」ともいう)」と呼ぶ。グラフェン化合物には、グラフェンとマルチグラフェンを含む。
以下に、グラフェン化合物について詳細を説明する。
グラフェン化合物は例えば、グラフェンまたはマルチグラフェンが、炭素以外の原子、または炭素以外の原子を有する原子団に修飾された化合物である。また、グラフェンまたはマルチグラフェンが、アルキル基、アルキレン等の炭素を主とした原子団に修飾された化合物であってもよい。なお、グラフェンまたはマルチグラフェンを修飾する原子団を、置換基、官能基、または特性基等と呼ぶ場合がある。ここで、本明細書等において修飾とは、置換反応、付加反応またはその他の反応により、グラフェン、マルチグラフェン、グラフェン化合物、または酸化グラフェン(後述)に、炭素以外の原子、または炭素以外の原子を有する原子団を導入することをいう。
なお、グラフェンの表面と裏面は、それぞれ異なる原子や原子団により修飾されていてもよい。また、マルチグラフェンにおいては、それぞれの層が異なる原子や原子団に修飾されていてもよい。
上述の原子または原子団により修飾されたグラフェンの一例として、酸素または酸素を含む官能基に修飾されたグラフェンまたはマルチグラフェンが挙げられる。ここで酸素を含む官能基として例えば、エポキシ基、カルボキシル基などのカルボニル基、または水酸基等が挙げられる。酸素または酸素を有する官能基により修飾されたグラフェン化合物を、酸化グラフェンと呼ぶ場合がある。また、本明細書においては、酸化グラフェンは多層の酸化グラフェンをも含むものとする。
酸化グラフェンにおける修飾の一例として、酸化グラフェンのシリル化について説明する。まず、窒素雰囲気中において、容器内に酸化グラフェンを入れ、容器にn−ブチルアミン(C4H9NH2)を加え、60℃に保ち1時間撹拌する。次に、容器にトルエンを加え、シリル化剤として、アルキルトリクロロシランをさらに加えて、窒素雰囲気中において、60℃に保ち5時間撹拌する。次に、容器にさらにトルエンを加え、吸引濾過して固体粉末を得て、これをエタノール中に分散させる。さらにこれを吸引濾過して固体粉末を得て、アセトンに分散させる。さらに、これを吸引濾過して固体粉末を得て、液体成分を気化してシリル化された酸化グラフェンが得られる。
なお修飾は、シリル化に限定されず、シリル化も上述の方法に限定されない。また、1種類の原子または原子団を導入するだけでなく、複数の種類の修飾を施し、複数の種類の原子または原子団を導入してもよい。グラフェン化合物に特定の原子団を導入することで、グラフェン化合物の物性を変化させることができる。従って、グラフェン化合物の用途に応じて望ましい修飾を施すことにより、グラフェン化合物に所望の性質を意図的に発現させることができる。
次に、酸化グラフェンの作製方法の一例を説明する。酸化グラフェンは、上記グラフェンまたはマルチグラフェンを酸化して得ることができる。または、酸化グラフェンは、酸化グラファイトを分離して得ることができる。酸化グラファイトは、グラファイトを酸化して得ることができる。ここで、酸化グラフェンに、さらに上述の原子または原子団を修飾してもよい。
酸化グラフェンを還元して得られる化合物を、「RGO(Reduced Graphene Oxide)」と呼ぶ場合がある。なお、RGOには、酸化グラフェンに含まれる酸素は全て脱離されずに、一部の酸素または酸素を含む原子団が結合した状態で残存する場合がある。例えばRGOは、エポキシ基、カルボキシル基などのカルボニル基、または水酸基等の官能基を有する場合がある。
グラフェン化合物は、複数のグラフェン化合物が部分的に重なりながら1枚のシート状となっていてもよい。このようなグラフェン化合物を、グラフェン化合物シートと呼ぶ場合がある。グラフェン化合物シートは例えば、厚さが0.33nm以上10mm以下、より好ましくは0.34nmより大きく10μm以下の領域を有する。グラフェン化合物シートは、炭素以外の原子、炭素以外の原子を有する原子団、またはアルキル基等の炭素を主とした原子団等により修飾されていてもよい。また、グラフェン化合物シートが有する複数の層のそれぞれにおいて、異なる原子または原子団により修飾されていてもよい。
グラフェン化合物は、炭素で構成される六員環の他に、炭素で構成される五員環や、炭素で構成される七員環以上の多員環を有してもよい。ここで、七員環以上の多員環の近傍では、リチウムイオンが通過可能な領域が生じる場合がある。
また例えば、複数のグラフェン化合物が集まって、シート状の形状となっていてもよい。
グラフェン化合物は平面的な形状を有するため、面接触を可能とする。
グラフェン化合物は薄くても導電性が高い場合があり、また面接触によりグラフェン化合物同士、あるいはグラフェン化合物と活物質との間の接触面積を増加させることができる。よって、体積あたりの量が少なくても効率よく導電パスを形成することができる。
一方で、グラフェン化合物を絶縁体として用いることもできる。例えばグラフェン化合物シートをシート状の絶縁体として用いることができる。ここで例えば、酸化グラフェンは酸化されていないグラフェン化合物と比較して絶縁性が高い場合がある。また、原子団に修飾されたグラフェン化合物は、修飾する原子団の種類により、絶縁性を高めることができる場合がある。
ここで、本明細書等においてグラフェン化合物は、グラフェン前駆体を有してもよい。グラフェン前駆体とは、グラフェンを製造するために用いられる物質のことをいい、グラフェン前駆体には例えば、上述の酸化グラフェンや、酸化グラファイトなどを含んでもよい。
なお、アルカリ金属を有するグラフェンや、酸素等の炭素以外の元素を有するグラフェンを、グラフェン類似体と呼ぶ場合がある。本明細書等においてグラフェン化合物には、グラフェン類似体も含まれる。
また、本明細書等におけるグラフェン化合物は、層間に原子、原子団、およびそれらのイオンを有してもよい。なお、グラフェン化合物が層間に原子、原子団、およびそれらのイオンを有することにより、グラフェン化合物の物性、例えば電気伝導性やイオン伝導性が変化する場合がある。また、層間距離が大きくなる場合がある。
グラフェン化合物は、高い導電性を有するという優れた電気特性と、高い柔軟性および高い機械的強度を有するという優れた物理特性と、を有する場合がある。また、グラフェン化合物は、修飾の種類に応じて、導電性を極めて低くし絶縁体とすることができる場合がある。また、グラフェン化合物は平面的な形状を有する。グラフェン化合物は、接触抵抗の低い面接触を可能とする。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様の蓄電装置の作製方法を適用して作製することのできる蓄電装置を搭載する電子機器について説明する。
また、以下に説明する電子機器において、搭載された蓄電装置を、本発明の一態様のバッテリーモジュールに置き換えてもよい。本発明の一態様のバッテリーモジュールを電子機器に搭載することにより、電子機器に安定した電源供給を行うことができる。
電気機器の具体例として、テレビ、モニタ等の表示装置、照明装置、デスクトップ型あるいはノート型のパーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体に記憶された静止画又は動画を再生する画像再生装置、ポータブルCDプレーヤ、ラジオ、テープレコーダ、ヘッドホンステレオ、ステレオ、置き時計、壁掛け時計、コードレス電話子機、トランシーバ、携帯電話、自動車電話、携帯型ゲーム機、電卓、携帯情報端末、電子手帳、電子書籍端末、電子翻訳機、音声入力機器、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、玩具、電気シェーバ、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器、電気洗濯機、電気掃除機、温水器、扇風機、毛髪乾燥機、エアコンディショナ、加湿器、除湿器などの空調設備、食器洗い器、食器乾燥器、衣類乾燥器、布団乾燥器、電気冷蔵庫、電気冷凍庫、電気冷凍冷蔵庫、DNA保存用冷凍庫、懐中電灯、チェーンソー等の電動工具、煙感知器、透析装置等の医療機器などが挙げられる。さらに、誘導灯、信号機、ベルトコンベア、エレベータ、エスカレータ、産業用ロボット、電力貯蔵システム、電力の平準化やスマートグリッドのための蓄電装置等の産業機器が挙げられる。また、蓄電装置からの電力を用いて電動機により推進する移動体なども、電気機器の範疇に含まれるものとする。上記移動体として、例えば、電気自動車(EV)、内燃機関と電動機を併せ持ったハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、これらのタイヤ車輪を無限軌道に変えた装軌車両、電動アシスト自転車を含む原動機付自転車、自動二輪車、電動車椅子、ゴルフ用カート、小型又は大型船舶、潜水艦、ヘリコプター、航空機、ロケット、人工衛星、宇宙探査機や惑星探査機、宇宙船などが挙げられる。
なお、上記電気機器は、消費電力の殆ど全てを賄うための主電源として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いる事が出来る。あるいは、上記電気機器は、上記主電源や商用電源からの電力の供給が停止した場合に、電気機器への電力の供給を行なう事が出来る無停電電源として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いる事が出来る。あるいは、上記電気機器は、上記主電源や商用電源からの電気機器への電力の供給と並行して、電気機器への電力の供給を行なうための補助電源として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いる事が出来る。
図22に、上記電気機器の具体的な構成を示す。図22において、表示装置700は、本発明の一態様に係る蓄電装置704を用いた電気機器の一例である。具体的に、表示装置700は、TV放送受信用の表示装置に相当し、筐体701、表示部702、スピーカ部703、蓄電装置704等を有する。本発明の一態様に係る蓄電装置704は、筐体701の内部に設けられている。表示装置700は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置704に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置704を無停電電源として用いることで、表示装置700の利用が可能となる。
表示部702には、液晶表示装置、有機EL素子などの発光素子を各画素に備えた発光装置、電気泳動表示装置、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)などの、半導体表示装置を用いることができる。
なお、表示装置には、TV放送受信用の他、パーソナルコンピュータ用、広告表示用など、全ての情報表示用表示装置が含まれる。
図22において、据え付け型の照明装置710は、本発明の一態様に係る蓄電装置713を用いた電気機器の一例である。具体的には、照明装置710は筐体711、光源712、蓄電装置713等を有する。図22では、蓄電装置713が、筐体711及び光源712が据え付けられた天井714の内部に設けられている場合を例示しているが、蓄電装置713は、筐体711の内部に設けられていても良い。照明装置710は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置713に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置713を無停電電源として用いることで、照明装置710の利用が可能となる。
なお、図22では天井714に設けられた据え付け型の照明装置710を例示しているが、本発明の一態様に係る蓄電装置は、天井714以外、例えば側壁715、床716、窓717等に設けられた据え付け型の照明装置に用いることもできるし、卓上型の照明装置などに用いることもできる。
また、光源712には、電力を利用して人工的に光を得る人工光源を用いることができる。具体的には、白熱電球、蛍光灯などの放電ランプ、LEDや有機EL素子などの発光素子が、上記人工光源の一例として挙げられる。
図22において、室内機720及び室外機724を有するエアコンディショナは、本発明の一態様に係る蓄電装置723を用いた電気機器の一例である。具体的に、室内機720は、筐体721、送風口722、蓄電装置723等を有する。図22では、蓄電装置723が、室内機720に設けられている場合を例示しているが、蓄電装置723は室外機724に設けられていても良い。あるいは、室内機720と室外機724の両方に、蓄電装置723が設けられていても良い。エアコンディショナは、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置723に蓄積された電力を用いることもできる。特に、室内機720と室外機724の両方に蓄電装置723が設けられている場合、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置723を無停電電源として用いることで、エアコンディショナの利用が可能となる。
なお、図22では、室内機と室外機で構成されるセパレート型のエアコンディショナを例示しているが、室内機の機能と室外機の機能とを1つの筐体に有する一体型のエアコンディショナに、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いる事も出来る。
図22において、電気冷凍冷蔵庫730は、本発明の一態様に係る蓄電装置734を用いた電気機器の一例である。具体的に、電気冷凍冷蔵庫730は、筐体731、冷蔵室用扉732、冷凍室用扉733、蓄電装置734等を有する。図22では、蓄電装置734が、筐体731の内部に設けられている。電気冷凍冷蔵庫730は、商用電源から電力の供給を受ける事も出来るし、蓄電装置734に蓄積された電力を用いる事も出来る。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置734を無停電電源として用いる事で、電気冷凍冷蔵庫730の利用が可能となる。
なお、上述した電気機器のうち、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器などの電気機器は、短時間で高い電力を必要とする。よって、商用電源では賄いきれない電力を補助するための補助電源として本発明の一態様に係る蓄電装置を用いる事で、電気機器の使用時に商用電源のブレーカーが落ちるのを防ぐ事が出来る。
また、電気機器が使用されない時間帯、特に、商用電源の供給元が供給可能な総電力量のうち、実際に使用される電力量の割合(電力使用率と呼ぶ)が低い時間帯において、蓄電装置に電力を蓄えておくことで、上記時間帯以外において電力使用率が高まるのを抑える事が出来る。例えば、電気冷凍冷蔵庫730の場合、気温が低く、冷蔵室用扉732、冷凍室用扉733の開閉が行われない夜間において、蓄電装置734に電力を蓄える。そして、気温が高くなり、冷蔵室用扉732、冷凍室用扉733の開閉が行われる昼間において、蓄電装置734を補助電源として用いる事で、昼間の電力使用率を低く抑える事が出来る。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施する事が可能である。
(実施の形態7)
さらに、電気機器の一例である車両の例について、図23を用いて説明する。
先の実施の形態で図12および図13を用いて説明したバッテリーモジュールを制御用のバッテリーに用いる事が出来る。制御用のバッテリーは、プラグイン技術や非接触給電による外部からの電力供給により充電をする事が出来る。なお、車両が鉄道用電気車両の場合、架線や導電軌条からの電力供給により充電をする事が出来る。
図23(A)及び(B)は、車両の一例である電気自動車を示している。電気自動車860には、バッテリーパック861が搭載されている。バッテリーパック861は、バッテリーモジュール865を有する。バッテリーモジュール865の電力は、制御回路862により出力が調整されて、駆動装置863に供給される。制御回路862は、図示しないROM、RAM、CPU等を有する処理装置864によって制御される。
図23(C)は、バッテリーパック861を示す。バッテリーパック861は、バッテリーモジュール865を複数有する。バッテリーパック861は、電気自動車860に効率よく収納するために、不規則な形状をしていてもよい。例えば、図23(C)に示すように、バッテリーパック861において電気自動車860の前方側に位置する領域866aと、中央に位置する領域866bと、後方側に位置する領域866cの高さがそれぞれ異なってもよい。
バッテリーパック861において、複数のバッテリーモジュール865を積み重ねて配置する場合、積み重ねる数または向きを変化させることで、望みの形状のバッテリーパック861とすることができる。例えば、図23(C)に示すように、領域866aに位置するバッテリーモジュール865は、電気自動車860の上下方向に3段積み重ねて配置し、領域866bに位置するバッテリーモジュール865は、電気自動車860の上下方向に2段積み重ねて配置し、領域866cに位置するバッテリーモジュール865は、電気自動車860の左右方向に並べて配置してもよい。このような構成とすると、例えば領域866cの高さを領域866aおよび領域866bより高くすることができる。また、領域866bの高さを領域866aおよび領域866cよりも低くすることができる。
本発明の一態様の、バッテリーモジュール865を有するバッテリーパック861を使用することで、複数の二次電池の放電容量のばらつきを抑制することができる。
バッテリーモジュール865において、二次電池は、加圧器具に挟まれることで保護されている。従って、例えば電気自動車860が衝突事故を起こし、バッテリーパック861に衝撃が加わる場合でも、二次電池が破損するのを防ぐことができる。また、例えば、バッテリーパック861が有するバッテリーモジュール865のいずれか一つが発火した場合でも、バッテリーモジュール865が有する加圧器具が、二次電池同士の接触を防ぐため、周辺の二次電池が連鎖的に破損するのを防止することができる。
駆動装置863は、直流電動機若しくは交流電動機単体、又は電動機と内燃機関と、を組み合わせて構成される。処理装置864は、電気自動車860の運転者の操作情報(加速、減速、停止など)や走行時の情報(上り坂や下り坂等の情報、駆動輪にかかる負荷情報など)の入力情報に基づき、制御回路862に制御信号を出力する。制御回路862は、処理装置864の制御信号により、バッテリーパック861が有するバッテリーから供給される電気エネルギーを調整して駆動装置863の出力を制御する。交流電動機を搭載している場合は、図示していないが、直流を交流に変換するインバータも内蔵される。
バッテリーパック861が有するバッテリーは、プラグイン技術による外部からの電力供給により充電することができる。例えば、商用電源から電源プラグを通じてバッテリーパック861が有するバッテリーに充電する。充電は、AC/DCコンバータ等の変換装置を介して、一定の電圧値を有する直流定電圧に変換して行なうことができる。バッテリーパック861に、本発明の一態様に係るバッテリーモジュールを搭載することで、バッテリーの放電容量を安定にすることができ、信頼性を向上させることができる。
なお、本発明の一態様のバッテリーパックを具備していれば、上記で示した電気機器に特に限定されない事は言うまでもない。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施する事が可能である。
本実施例では、実際に蓄電装置を充放電する際に用いた加圧装置について、図24を用いて説明する。
図24(A)および図24(B)に、実施の形態1で説明した蓄電装置の充電方法にて用いる加圧装置1300の設計図を示す。図24(A)に、加圧装置1300の正面図の設計図を示す。また、図24(A)に示す一点鎖線A1−A2における断面図を図24(B)に示す。
加圧装置1300は、縦120mm、横100mm、厚さ6.0mmのステンレス板1301と、熱伝導シート1302と、厚さ5.0mmのシリコーンシート1304と、縦70mm、横70mm、厚さ2.0mmのステンレス板1305と、縦120mm、横100mm、厚さ5.0mmのステンレス板1306と、固定器具1307によって構成される。固定器具1307としては、ボルト、ナットおよび座金を使用する。
加圧装置1300を用いて実際に蓄電装置1303に圧力を加えた方法について説明する。水平に置いたステンレス板1301の上に、熱伝導シート1302を置き、その上に蓄電装置1303を置いた。さらに、蓄電装置1303の上に、シリコーンシート1304を置き、その上にステンレス板1305と、ステンレス板1306とを置いた。次に、ステンレス板1301と、ステンレス板1306との間の距離を、ボルト、ナット、座金等の固定器具1307を用いて固定した。4組のボルトおよびナットを締める際に、トルクレンチを使用し、0.6N・mのトルクで固定することにより、蓄電装置1303に圧力を加えた。
図24(C)および図24(D)には比較例として作製した、緩衝材を有さない加圧装置1400の設計図を示す。図24(C)に、加圧装置1400の正面図を示す。また、図24(C)に示す一点鎖線B1−B2における断面図を図24(D)に示す。
加圧装置1400は、縦115mm、横120mm、厚さ1.6mmのPCB基板1401と、2枚の厚さ2.0mmのアルミニウム板1402、1404と、ボルトと、ナットと、座金からなる。
加圧装置1400を用いて蓄電装置1403に圧力を加えた方法について説明する。水平に置いたPCB基板1401の上に、アルミニウム板1402を置き、さらにその上に蓄電装置1403を置いた。また、蓄電装置1403の上にアルミニウム板1404を置いた。次に、PCB基板1401、アルミニウム板1402およびアルミニウム板1404を、固定器具1405を用いて固定することにより、蓄電装置1403に圧力を加えた。固定器具1405には、ねじを用いた。
以上のように、本発明の一態様を適用した加圧装置1300と、比較の加圧装置1400と、を作製し、実施例3で説明する充放電試験に使用した。
本実施例では、蓄電装置として実際に作製した二次電池について、図25および図32を用いて説明する。
まず、二次電池に用いた材料について説明する。
正極集電体には厚さ20μmのアルミニウムを用い、負極集電体には厚さ18μmの銅を用いた。
正極活物質にはLiFePO4を、導電助剤にはABおよびVGCF(登録商標)を、バインダにはPVdFを用いて、正極活物質層を作製した。LiFePO4、AB、VGCF(登録商標)およびPVdFの混合比(重量)は、90:3:2:5とした。
負極活物質には人造黒鉛G10を、導電助剤にはVGCF(登録商標)を、バインダにはCMCおよびSBRを用いて、負極活物質層を作製した。人造黒鉛G10、VGCF(登録商標)、CMCおよびSBRの混合比(重量)は、96:1:1:2とした。
電解液にはEC:DEC=1:1(重量比)の混合溶媒中に、1mol/LのLiTFSAを溶解させ、2重量%のLiPF6および1重量%のビニレンカーボネートを加えたものを用いた。
セパレータにはポリプロピレンを用いた。また、外装体にはアルミニウムラミネートフィルムを用いた。
次に、上記の材料を用いて作製した2種類の二次電池aおよび二次電池bの構成について説明する。
二次電池aは、実施の形態2にて説明した蓄電装置の作製方法で作製した二次電池である。図25(A)および図25(B)は、同一の二次電池aが有する、正極1111、負極1115およびセパレータ1107からなる積層体を、それぞれ異なる方向から撮影した写真である。
まず、正極集電体の一方の面に正極活物質層が接する正極1111と、負極集電体の一方の面に負極活物質層が接する負極1115とを作製した。
次に、正極1111を、セパレータ1107と重なるように配置したあと、セパレータ1107の正極1111と重ならない領域が、正極1111と重なるように、セパレータ1107を折り曲げた。また、セパレータ1107を溶着部1121において熱溶着することにより、正極1111をセパレータ1107で覆った。そして、負極1115を、セパレータ1107と、正極1111と、重なるように配置し、セパレータ1107の負極1115と重ならない領域が、負極1115と重なるように、セパレータ1107を折り曲げた。また、セパレータ1107を溶着部1122において熱溶着することにより、負極1115を、セパレータ1107で覆った。
上記の方法で図25(A)および図25(B)に示すように、正極1111、負極1115およびセパレータ1107を互いに重なるように配置した。次に、正極1111および負極1115に、リード電極をとりつけた。そして、電解液とともに正極1111、負極1115およびセパレータ1107を外装体に囲まれた領域に配置し、外装体を封止することにより、二次電池aを作製した。
二次電池bは、正極1211、負極1215およびセパレータ1207の積層体の作製方法が、二次電池aと異なる。図25(C)および図25(D)は、同一の二次電池bが有する、正極1211、負極1215およびセパレータ1207の積層体を、それぞれ異なる方向から撮影した写真である。
まず、正極1111と同様の方法で、正極1211を作製した。また、負極1115と同様の方法で、負極1215を作製した。
次に、図32(A)に示すように、セパレータ1207を2つ折りにして正極1211を挟み、正極活物質層を囲む溶着部1220においてセパレータ1207同士を熱溶着することにより、正極1211をセパレータ1207で覆った。さらに、図32(B)に示すように負極1215が、セパレータ1207と、正極1211と、重なるように配置し、カプトン(登録商標)テープ(厚さ25μm)(図32(B)ではテープ1221で示す)を用いて負極1215と、セパレータ1207を固定した。
上記の方法で図25(C)および図25(D)に示すように、正極1211、負極1215およびセパレータ1207を互いに重なるように配置した。次に、正極1211および負極1215に、リード電極をとりつけた。そして、電解液とともに正極1211、負極1215およびセパレータ1207を外装体に囲まれた領域に配置し、外装体を封止することにより、二次電池bを作製した。
次に、二次電池aおよび二次電池bに対して、エージングを行った。計4回の充放電と、2回のガス抜きの操作を表1に示す工程と条件で行った。
ここで、CC(定電流)充電、CCCV(定電流定電圧)充電およびCC放電について説明する。
<CC充電>
まず、CC充電について説明する。CC充電は、充電期間のすべてで一定の電流を二次電池に流し、所定の電圧になったときに充電を停止する充電方法である。二次電池を、図26(A)に示すように内部抵抗Rと二次電池容量Cの等価回路と仮定する。この場合、二次電池電圧VBは、内部抵抗Rにかかる電圧VRと二次電池容量Cにかかる電圧VCの和である。
CC充電を行っている間は、図26(A)に示すように、スイッチがオンになり、一定の電流Iが二次電池に流れる。この間、電流Iが一定であるため、VR=R×Iのオームの法則により、内部抵抗Rにかかる電圧VRも一定である。一方、二次電池容量Cにかかる電圧VCは、時間の経過とともに上昇する。そのため、二次電池電圧VBは、時間の経過とともに上昇する。
そして二次電池電圧VBが所定の電圧、例えば4.1Vになったときに、充電を停止する。CC充電を停止すると、図26(B)に示すように、スイッチがオフになり、電流I=0となる。そのため、内部抵抗Rにかかる電圧VRが0Vとなる。そのため、内部抵抗Rでの電圧降下がなくなった分、二次電池電圧VBが下降する。
CC充電を行っている間と、CC充電を停止してからの、二次電池電圧VBと充電電流の例を図26(C)に示す。CC充電を行っている間は上昇していた二次電池電圧VBが、CC充電を停止してから若干低下する様子が示されている。
<CCCV充電>
次に、CCCV充電について説明する。CCCV充電は、まずCC充電にて所定の電圧まで充電を行い、その後CV(定電圧)充電にて流れる電流が少なくなるまで、具体的には終止電流値になるまで充電を行う充電方法である。
CC充電を行っている間は、図27(A)に示すように、定電流電源のスイッチがオン、定電圧電源のスイッチがオフになり、一定の電流Iが二次電池に流れる。この間、電流Iが一定であるため、VR=R×Iのオームの法則により、内部抵抗Rにかかる電圧VRも一定である。一方、二次電池容量Cにかかる電圧VCは、時間の経過とともに上昇する。そのため、二次電池電圧VBは、時間の経過とともに上昇する。
そして二次電池電圧VBが所定の電圧、例えば4.1Vになったときに、CC充電からCV充電に切り替える。CV充電を行っている間は、図27(B)に示すように、定電圧電源のスイッチがオン、定電流電源のスイッチがオフになり、二次電池電圧VBが一定となる。一方、二次電池容量Cにかかる電圧VCは、時間の経過とともに上昇する。VB=VR+VCであるため、内部抵抗Rにかかる電圧VRは、時間の経過とともに小さくなる。内部抵抗Rにかかる電圧VRが小さくなるに従い、VR=R×Iのオームの法則により、二次電池に流れる電流Iも小さくなる。
そして二次電池に流れる電流Iが所定の電流、例えば0.01C相当の電流となったとき、充電を停止する。CCCV充電を停止すると、図27(C)に示すように、全てのスイッチがオフになり、電流I=0となる。そのため、内部抵抗Rにかかる電圧VRが0Vとなる。しかし、CV充電により内部抵抗Rにかかる電圧VRが十分に小さくなっているため、内部抵抗Rでの電圧降下がなくなっても、二次電池電圧VBはほとんど降下しない。
CCCV充電を行っている間と、CCCV充電を停止してからの、二次電池電圧VBと充電電流の例を図27(D)に示す。CCCV充電を停止しても、二次電池電圧VBがほとんど降下しない様子が示されている。
<CC放電>
次に、CC放電について説明する。CC放電は、放電期間のすべてで一定の電流を二次電池から流し、二次電池電圧VBが所定の電圧、例えば2.5Vになったときに放電を停止する放電方法である。
CC放電を行っている間の二次電池電圧VBと充電電流の例を図28に示す。放電が進むに従い、二次電池電圧VBが降下していく様子が示されている。
また、エージングをするとき、二次電池aおよび二次電池bに対して、実施例1で説明した加圧装置1300および加圧装置1400のいずれか一方を用いて圧力を加えた。
二次電池aに対して、加圧装置1300を用いて圧力を加えながらエージングを行ったものを実施例Aとした。また、二次電池bに対して、加圧装置1300を用いて圧力を加えながらエージングを行ったものを実施例Bとした。また、二次電池bに対して、比較例として作製した加圧装置1400を用いて圧力を加えながらエージングを行ったものを比較例Cとした。
上記の方法により実施例A、実施例Bおよび比較例Cを用意し、実施例3で説明する充放電試験に使用した。
本実施例では、実施例1で説明した加圧装置と、実施例2で説明した二次電池を用いて、実際に二次電池に圧力を加えながら充放電試験を行った例について図29乃至図31を用いて説明する。
まず、二次電池を加圧装置にとりつけたとき、二次電池にかかる圧力の分布を、圧力が加わることにより着色する感圧紙を用いて調べた。感圧紙に加えられる圧力の強弱を着色の濃淡によって、調べることができる。実験には、実施例Bおよび比較例Cの二次電池を使用した。
実施例Bには、加圧装置1300を用いて圧力を加えた。このとき、実施例Bとシリコーンシート1304との間に感圧紙を挟み、実施例Bに圧力を加えながら、感圧紙に圧力を加え、着色させることで、実施例Bに加えられる圧力の分布を調べた。
また、比較例Cには、加圧装置1400を用いて圧力を加えた。このとき、比較例Cとアルミニウム板1404との間に感圧紙を挟み、比較例Cに圧力を加えながら感圧紙に圧力を加え、着色させることで、比較例Cに加えられる圧力の分布を調べた。
図29(A)に、加圧装置1300を用いて実施例Bに圧力を加えたあとの感圧紙の写真を示す。また、図29(B)に、加圧装置1400を用いて比較例Cに圧力を加えたあとの感圧紙の写真を示す。
図29(A)に示すように、加圧装置1300を用いて圧力を加えた場合の感圧紙1340においては、着色領域1350が均一に広がっていた。
一方、図29(B)に示すように、加圧装置1400を用いて圧力を加えた場合の感圧紙1440においては、濃く着色した着色領域1451、着色領域1452および着色領域1453が確認された。着色領域1451には、二次電池において、電極とリード電極を接続するためのタブ部の存在によって、外装体が凸となった部分が接触することにより、圧力が強く加えられたと推測される。また、着色領域1452は、二次電池の電極の端部によって外装体が凸となった部分が接触することにより、圧力が強くかかったと推測される。また、着色領域1453には、二次電池において、正極、負極およびセパレータを固定するためのカプトン(登録商標)テープによって、外装体が凸となった部分が接触することにより、圧力が強くかかったと推測される。
以上の結果より、加圧装置1300を用いることで、二次電池に均一に圧力を加えることができたとわかった。従って、加圧装置1300を用いることで、二次電池の外装体に囲まれた領域において、ガスが局在することを防ぐことができると推測された。
また、支持材として、厚さ5.0mmのステンレス板および厚さ6.0mmのステンレス板を用いることで、厚さ1.6mmのアルミニウム板および厚さ2.0mmのアルミニウム板を用いる場合に比べて、歪みを小さくすることができ、二次電池に均一な圧力を加えることができるとわかった。
また、緩衝材を用いて、二次電池に圧力を加えることで、二次電池に均一な圧力を加えることができるとわかった。
次に、充放電試験の条件について説明する。
実施例Aには、加圧装置1300を用いて圧力を加えながら、充放電試験をおこなった。また、実施例Bには、加圧装置1300を用いて圧力を加えながら、充放電試験をおこなった。また、比較例Cには、加圧装置1400を用いて圧力を加えながら、充放電試験をおこなった。
表2に示す条件で、実施例A、実施例Bおよび比較例Cの充放電をおこなった。温度は60℃に設定した。
実施例A、実施例Bおよび比較例Cの充放電試験により、サイクル特性を計測した結果を、図30、図31および表3に示す。なお、実施例A、実施例Bおよび比較例Cは、それぞれ10ずつ用意し、試料ごとの放電容量のばらつきを観察することとした。
表3には、実施例Bと比較例Cについて用意した10の試料の、放電容量の統計を示す。
表3より、初回の放電容量と30サイクル後の放電容量の標準偏差は、比較例Cより実施例Bにおいて小さいことがわかった。従って、実施例Bでは、比較例Cよりも、試料ごとの放電容量のばらつきが小さいことがわかった。
図30(A)には、初回から100サイクル目までの実施例A、実施例Bおよび比較例Cの放電容量(mAh/g)を示す。また、図30(B)には、初回から100サイクル目までの実施例A、実施例Bおよび比較例Cの容量維持率(%)を示す。
図30(A)および図30(B)より、比較例Cでは、試料ごとに放電容量のばらつきが大きいのと比べて、実施例A及び実施例Bでは、試料ごとの放電容量のばらつきが小さいことがわかった。
このことから、実施例Aおよび実施例Bでは、比較例Cに比べて放電容量がばらつくことを抑制できたとわかった。従って、加圧装置1400を用いるより、加圧装置1300を用いて充放電を行った方が、放電容量のばらつきを防ぐことができるとわかった。
この結果から、加圧装置1300を用いると、加圧装置1400を用いるよりも、二次電池に均一に圧力を加えることができ、二次電池の外装体の内部でのガスの局在を防ぐことができたと示唆された。
図31(A)には、初回から約580サイクル目までの実施例Aおよび実施例Bの放電容量(mAh/g)を示し、図30(B)には、初回から約580サイクル目までの実施例Aおよび実施例Bの容量維持率(%)を示す。
図31(A)及び図31(B)より、実施例Aは、実施例Bよりも放電容量が減少しにくいことがわかった。このことから、二次電池aは、二次電池bと比べて、放電容量が減少しにくいことが明らかになった。
このことから、二次電池の製造工程において、セパレータの溶着により電極を固定すると、カプトン(登録商標)テープを用いて電極を固定するのと比較して、放電容量が減少しにくい二次電池とすることができるとわかった。これによって、セパレータを溶着して電極の位置がずれるのを固定することにより、二次電池の凹凸を減少させることができ、電極において活物質層が剥がれることを防ぐことができると推測された。
従って、セパレータの溶着により電極を固定すると、サイクル特性に優れる二次電池を作製できることがわかった。