JP2017008437A - 不織布およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】低BET比表面積繊維状炭素ナノ構造体を用いて製造した不織布を提供する。【解決手段】本発明による不織布は、BET比表面積が600m2/g以下の繊維状炭素ナノ構造体と、繊維とを含む。本発明による不織布は、シート状部材として好適に使用可能である。【選択図】なし

Description

本発明は、不織布およびその製造方法に関するものである。
近年、軽量であるとともに、導電性、熱伝導性および機械的特性に優れる材料として、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と称することがある。)が注目されている。しかし、CNT等の繊維状炭素ナノ構造体は直径がナノメートルサイズの微細な構造体であるため、単体では取り扱い性や加工性が悪い。そこで、例えば、複数本のCNTを用いて不織布を形成し、当該不織布を放熱シートや導電膜などとして用いることが提案されている。具体的には、例えば特許文献1では、溶媒とCNTとを含むカーボンナノチューブ分散液をろ過および乾燥して得たシートを加圧プレスすることにより成膜した不織布を、太陽電池やタッチパネルなどの電極を構成する部材(例えば、導電膜や触媒層など)として用いることが提案されている。
特開2010−105909号公報
ところで、CNT等の繊維状炭素ナノ構造体の製造には高度な技術および高い製造コストが必要である。特に、BET比表面積が大きい繊維状炭素ナノ構造体は、製造コストが高かった。一方、BET比表面積の小さい繊維状炭素ナノ構造体は、比較的低コストで製造可能なことが知られている。そのため、製造コストの観点からは、放熱シートや導電膜などのシート状部材として用いられる不織布として、BET比表面積の小さい繊維状炭素ナノ構造体を使用して形成したものが注目されている。
しかし、本発明者がBET比表面積の小さい繊維状炭素ナノ構造体を使用した不織布の形成について鋭意研究を行ったところ、BET比表面積が600m/g以下の繊維状炭素ナノ構造体は互いに絡み合い難く、BET比表面積が600m/g以下の繊維状炭素ナノ構造体のみを用いた不織布は形成し難い(即ち、成膜性が低い)ことが明らかとなった。特に、BET比表面積が600m/g以下の繊維状炭素ナノ構造体を含む分散液をろ過および乾燥して得た不織布は、成膜性が低く、プレス処理等の後処理を施さなければ自立性を有するシート状部材として使用し難いことが明らかとなった。
そこで、本発明は、シート状部材として好適に使用可能な、BET比表面積の小さい繊維状炭素ナノ構造体を用いて製造した不織布及びその製造方法を提供することを目的とする。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の不織布は、BET比表面積が600m/g以下の繊維状炭素ナノ構造体と、繊維とを含むことを特徴とする。このような不織布は、BET比表面積が600m/g以下の繊維状炭素ナノ構造体を使用しているので、製造コストが低い。また、BET比表面積が600m/g以下の繊維状炭素ナノ構造体に加えて繊維も含む不織布は、良好に形成することができ、成膜性にも優れている。ここで、本発明において、BET比表面積が600m/g以下の繊維状炭素ナノ構造体を「低BET比表面積繊維状炭素ナノ構造体」と称する。
なお、本発明において、「BET比表面積」とは、BET法を用いて測定した窒素吸着比表面積を指す。
また、本発明において、「繊維状炭素ナノ構造体」とは、外径(繊維径)が1μm未満の繊維状の炭素構造体を指す。また、本発明において、「繊維」とは、繊維径が1μm以上の繊維状物質を指し、「繊維」には「繊維状炭素ナノ構造体」は含まれない。
本発明の不織布では、前記繊維状炭素ナノ構造体100質量部に対して、前記繊維を5質量部以上4000質量部以下の割合で含むことが好ましい。このような比率で繊維状炭素ナノ構造体と繊維とを配合することで、不織布の強度を向上させることができる。
また、本発明の不織布では、前記繊維の平均繊維長が、50μm以上であることが好ましい。不織布に含有される繊維の平均繊維長が、50μm以上であれば、不織布の強度を向上させることができる。
なお、本発明において、繊維の平均繊維長は、走査型電子顕微鏡を用いて無作為に選択した繊維100本の繊維長を測定して求めることができる。
また、本発明の不織布では、前記繊維の平均繊維径が、3μm以上50μm以下であることが好ましい。不織布に含有される繊維の平均繊維径がかかる範囲内であれば、不織布の強度を向上させることができる。
なお、本発明において、繊維の平均繊維径は、走査型電子顕微鏡を用いて無作為に選択した繊維100本の繊維径を測定して求めることができる。
本発明の不織布では、前記繊維状炭素ナノ構造体がカーボンナノチューブを含むことが好ましい。繊維状炭素ナノ構造体としてカーボンナノチューブを配合することで、不織布の強度及び導電性を向上させることができる。
本発明の不織布では、前記繊維が炭素繊維を含むことが好ましい。繊維として炭素繊維を配合することで、不織布の導電性を向上させることができる。
また、上記課題を有利に解決する本発明の不織布製造方法は、BET比表面積が600m/g以下の繊維状炭素ナノ構造体と、繊維と、分散媒とを含む分散液から前記分散媒を除去して不織布を形成する工程を含むことを特徴とする。かかる不織布製造方法によれば、低コストで不織布を製造することができる。また、不織布を良好に形成することができる。
また、本発明にかかる不織布製造方法は、前記分散媒中に前記繊維状炭素ナノ構造体を添加してなる粗分散液を60MPa以上200MPa以下の圧力で細管流路へと圧送し、前記粗分散液にせん断力を与えて平均粒子径が60μm以下の繊維状炭素ナノ構造体分散液を得た後、前記繊維状炭素ナノ構造体分散液に前記繊維を混合して前記分散液を調製する工程を更に含むことが好ましい。このような工程を実施することで、不織布の強度を向上させることができる。
なお、本発明において、繊維状炭素ナノ構造体分散液の「平均粒子径」とは、繊維状炭素ナノ構造体分散液中に含まれている固形物のメジアン径(体積換算値)を指し、粒度分布計を用いて測定することができる。
本発明によれば、シート状部材として好適に使用可能な、低BET比表面積繊維状炭素ナノ構造体を含有してなる不織布を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の不織布は、BET比表面積が600m/g以下である繊維状炭素ナノ構造体と、繊維とを含む。本発明の不織布は、本発明の不織布製造方法を用いて製造することができる。
(不織布)
本発明の不織布は、通常、複数本の繊維状炭素ナノ構造体と、複数本の繊維とをシート状に集合させて形成した不織布である。なお、不織布には、繊維状炭素ナノ構造体および繊維以外に、不織布の製造時に使用した添加物等のその他の成分が含まれていてもよい。
そして、本発明の不織布は、集合体を構成する繊維状炭素ナノ構造体が、BET比表面積が600m/g以下と、低BET比表面積であることを大きな特徴の一つとする。なお、本発明の不織布は、支持体が存在していなくとも膜としての形状を保つことができる自立膜である。
ここで、一般に、BET比表面積が小さい繊維状炭素ナノ構造体は、BET比表面積が大きい繊維状炭素ナノ構造体と比較して安価で製造することはできるものの、互いに絡み合い難く、BET比表面積が小さい繊維状炭素ナノ構造体のみでは自立性に優れる不織布を形成し難いと考えられている。しかし驚くべきことに、本発明者は、低BET比表面積繊維状炭素ナノ構造体に対して繊維を配合することで、低BET比表面積繊維状炭素ナノ構造体を用いた膜(不織布)を良好に形成できることを見出し、本発明を完成させた。
<繊維状炭素ナノ構造体>
本発明に用いる繊維状炭素ナノ構造体は、BET比表面積が600m/g以下であるが、400m/g以下であることが好ましく、さらに、100m/g以上であることが好ましく、150m/g以上であることが更に好ましい。繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積を600m/g以下とすることで、不織布の製造コストを低くすることができる。また、繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積を100m/g以上とすることで、成膜性を向上させることができる。
さらに、BET比表面積が600m/g以下の繊維状炭素ナノ構造体は、カーボンナノチューブ(CNT)を含むことが好ましい。繊維状炭素ナノ構造体としてCNTを配合することで、本発明の不織布の強度及び導電性を向上させることができる。BET比表面積が600m/g以下の繊維状炭素ナノ構造体に含まれるCNTとしては、特に限定されることなく、単層カーボンナノチューブおよび/または多層カーボンナノチューブが挙げられる。さらに、好ましくはBET比表面積が600m/g以下の繊維状炭素ナノ構造体は、多層カーボンナノチューブである。
ここで、BET比表面積が600m/g以下の繊維状炭素ナノ構造体は、円筒形状の炭素ナノ構造体であるCNTのみからなるものであってもよいし、CNTと、CNT以外の非円筒形状の繊維状炭素ナノ構造体との混合物であってもよい。なおかかる非円筒形状の繊維状炭素ナノ構造体は、炭素の六員環ネットワークが扁平筒状に形成されてなる炭素ナノ構造体等の非円筒形状の炭素ナノ構造体である。
更に、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)は、0.5nm以上であることが好ましく、1nm以上であることがより好ましく、3nm以上であることが更に好ましく、50nm以下であることが好ましく、40nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることが更に好ましい。繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)が0.5nm以上であれば、繊維状炭素ナノ構造体の凝集を抑制して繊維状炭素ナノ構造体の分散性を高めることができる。また、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)が50nm以下であれば、不織布の強度を十分に高めることができる。
なお、本発明において、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径は、透過型電子顕微鏡を用いて無作為に選択した繊維状炭素ナノ構造体100本の直径(外径)を測定して求めることができる。また、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径は、繊維状炭素ナノ構造体の製造方法や製造条件を変更することにより調整してもよいし、異なる製法で得られた繊維状炭素ナノ構造体を複数種類組み合わせることにより調整してもよい。
また、繊維状炭素ナノ構造体として、構造体の平均長さが100μm以下であるものも使用することができる。
<繊維>
本発明に用いる繊維は、上述したBET比表面積が600m/g以下の繊維状炭素ナノ構造体とは異なる。そのような繊維は、特に限定されることなく、例えば、ナイロン、ポリエステル、アクリル、アラミド、及びポリパラフェニレンベンズオキサゾールなどの合成繊維、セルロース、キチン、及びキトサンなどの不溶性食物繊維、ガラス繊維、並びに炭素繊維であり得る。好ましくは、本発明の不織布は炭素繊維を含有する。不織布に炭素繊維を含有させることで、不織布の導電性を向上させることができる。
なお、一般に、炭素繊維は、カーボンナノチューブなどの繊維状炭素ナノ構造体よりも導電性が低いと考えられている。しかし、繊維状炭素ナノ構造体と炭素繊維とを用いて形成した不織布は、驚くべきことに、繊維状炭素ナノ構造体と、当該繊維状炭素ナノ構造体よりも導電性の低い炭素繊維とを用いた場合であっても、繊維状炭素ナノ構造体のみを用いて形成した不織布よりも優れた導電性を発揮することができる。この理由は、明らかではないが、繊維状炭素ナノ構造体と炭素繊維とが良好に絡み合うことで不織布内に導電パスが良好に形成されるためであると推察される。
ここで、本発明に用いうる炭素繊維としては、例えば、PAN(Polyacrylonitrile)系、ピッチ(PITCH)系からつくられた炭素繊維や黒鉛繊維が挙げられる。さらに、本発明に用いうる繊維として、炭素繊維、樹脂繊維およびガラス繊維等の繊維状材料の表面を金属で被覆してなる金属被覆繊維も用いることができる。なお、繊維状材料の表面を被覆する金属としては、例えば、ニッケル、イッテルビウム、金、銀、銅などが挙げられる。また、繊維状材料の表面に金属を被覆する方法としては、例えば、メッキ法、CVD法、PVD法、イオンプレーティング法、蒸着法などを用いることができる。特に、繊維としてピッチ系炭素繊維を用いることが好ましい。繊維としてピッチ系炭素繊維を配合することで、不織布の導電率を向上させることができるからである。
これらの繊維は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の不織布では、繊維状炭素ナノ構造体100質量部に対して、繊維を5質量部以上配合することが好ましく、10質量部以上配合することがより好ましく、4000質量部以下配合することが好ましく、1200質量部以下配合することがより好ましく、800質量部以下配合することが更に好ましい。繊維の添加量を上記下限値以上とすることによって、不織布の成膜性を一層向上させることができる。また、繊維の添加量を上記上限値以下とすることによって、不織布の耐粉落ち性を一層向上させることができる。
特に、本発明の不織布では、繊維状炭素ナノ構造体100質量部に対して、繊維を25質量部以上配合することが更に好ましく、50質量部以上配合することが特に好ましく、400質量部以下配合することが特に好ましく、200質量部以下配合することが更に特に好ましい。上記特定範囲の割合で低BET比表面積の繊維状炭素ナノ構造体と繊維とを配合することで、不織布の強度が特に向上するからである。
なお、下記の表1に示す参考例からも明らかなように、本発明者の研究によれば、BET比表面積が600m/g超である高BET比表面積繊維状炭素ナノ構造体(下記の参考例ではBET比表面積が812m/gのカーボンナノチューブを使用)は、互いに良好に絡み合って強固な不織布を形成することが可能であるため、繊維を併用することなく高BET比表面積繊維状炭素ナノ構造体のみを用いて不織布を形成した方が高強度の不織布が得られる。そのため、高BET比表面積繊維状炭素ナノ構造体を使用した不織布では、繊維の配合量が増えるほど強度が低下する。しかし、驚くべきことに、BET比表面積が600m/g以下の繊維状炭素ナノ構造体を使用した不織布においては、繊維を所定の割合で併用した方が、不織布の強度を向上させることができる。
Figure 2017008437
*1 高BET比表面積CNTとしては、スーパーグロース法(国際公開第2006/011655号参照)に準じて調製したCNTを用いた。かかる高BET比表面積CNTの平均直径は3nmであった。
*2 ピッチ系炭素繊維(三菱樹脂株式会社製、ダイアリード(登録商標)K223HM)であり、平均繊維径は10μm、平均繊維長は200μmであった。
*3 各不織布を4×2cmに切り抜いたものを試験体とした。小型卓上引張試験機(日本電産シンポ社製、型番「FGS-TV」)を用いて、試験体1cmをチャックでつかみ、30mm/分の引っ張り速度にて引張試験を行い、試験体が破断した際の荷重(N)を厚み(mm)で割った値を評価した。
また、繊維の平均繊維長は、50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましい。このような長さを有する繊維を均一に不織布中で分散させることにより、繊維を骨組みのように作用させることができ、成膜性及び強度を向上させることができると推察される。なお、繊維の平均長さは、通常、1000μm以下である。
なお、本発明において、繊維の平均繊維長は、走査型電子顕微鏡を用いて無作為に選択した繊維100本の繊維長を測定して求めることができる。
また、繊維の平均繊維径は3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、50μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましい。このような平均繊維径を有する繊維は、繊維状炭素ナノ構造体と共に不織布を形成する際にいわば「骨組み」のような役割を果たすことができるからである。すなわち本発明の不織布内において、骨組みのように延在する繊維と繊維状炭素ナノ構造体とが相互作用して、不織布の強度を向上させることが可能となると推察される。
なお、本発明において、繊維の平均繊維径は、走査型電子顕微鏡を用いて無作為に選択した繊維100本の繊維径を測定して求めることができる。
さらに、繊維の平均繊維径は、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径の100倍以上1000倍以下であることが好ましい。繊維状炭素ナノ構造体の平均直径と繊維の平均繊維径との比をこのような範囲内とすることで、繊維状炭素ナノ構造体が繊維の骨組みの間に入り込み易くなり、繊維同士の間の空間を埋めるように延在しつつ繊維に絡みつくことで、不織布の強度を一層向上させることができると推察される。
<その他>
また、不織布に任意に含有され得るその他の成分としては、特に限定されることなく、不織布の調製時に使用した分散剤などの既知の添加剤が挙げられる。これらは、製法上の理由により不織布中に不可避的に残留するものである。
(不織布製造方法)
本発明の不織布製造方法は、上述した本発明の不織布を製造する際に用いることができる。そして、本発明の不織布製造方法は、BET比表面積が600m/g以下の繊維状炭素ナノ構造体と、繊維と、分散媒とを含む分散液から分散媒を除去して不織布を形成する工程(不織布形成工程)を含むことを特徴とする。なお、本発明の不織布の製造方法は、不織布の形成に用いられる上記分散液を調製する工程(分散液調製工程)を不織布形成工程の前に含んでいてもよい。そして、本発明の不織布製造方法によれば、BET比表面積が600m/g以下の繊維状炭素ナノ構造体を含む不織布を成膜することができる。
<分散液調製工程>
分散液調製工程では、上述した繊維状炭素ナノ構造体および繊維と、任意の添加剤とを分散媒に分散または溶解させて分散液を調製する。なお、分散媒に分散させる繊維状炭素ナノ構造体および繊維の量の比率は、通常、分散液を用いて形成される不織布に含有させる繊維状炭素ナノ構造体および繊維の量の比率と同じにする。
ここで、分散液調製工程では、BET比表面積が600m/g以下の繊維状炭素ナノ構造体と、繊維と、任意の添加剤とを分散媒に添加して得た粗分散液に対して分散処理を施して分散液を調製してもよいが、BET比表面積が600m/g以下の繊維状炭素ナノ構造体と任意の添加剤とを分散媒に添加して得た粗分散液に対して分散処理を施して繊維状炭素ナノ構造体分散液を得た後、繊維状炭素ナノ構造体分散液に繊維を混合することにより分散液を調製することが好ましい。凝集し易くて分散し難い繊維状炭素ナノ構造体を予め分散させた後に繊維と混合すれば、繊維状炭素ナノ構造体および繊維が良好に分散した分散液を得ることができるからである。そして、繊維状炭素ナノ構造体および繊維が良好に分散した分散液を使用すれば、均質で強度に優れる不織布を形成することができる。
そこで、以下では、分散液調製工程において分散液を調製する方法の一例として、繊維状炭素ナノ構造体分散液を得た後、繊維状炭素ナノ構造体分散液に繊維を混合することにより分散液を調製する方法について詳細に説明する。
[粗分散液の調製]
繊維状炭素ナノ構造体と任意の添加剤とを含む粗分散液は、分散媒に対して繊維状炭素ナノ構造体および任意の添加剤を添加した後、任意にホモジナイザーなどの混合器を用いて混合することにより調製することができる。
[[分散剤]]
ここで、分散剤としては、繊維状炭素ナノ構造体を分散可能であり、後述する分散媒に溶解可能であれば、特に限定されないが、界面活性剤、合成高分子または天然高分子を用いることができる。
具体的には、界面活性剤としては、ドデシルスルホン酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
また、合成高分子としては、例えば、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリビニルアルコール、部分けん化ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、アセタール基変性ポリビニルアルコール、ブチラール基変性ポリビニルアルコール、シラノール基変性ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合樹脂、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ系樹脂、フェノキシ樹脂、変性フェノキシ系樹脂、フェノキシエーテル樹脂、フェノキシエステル樹脂、フッ素系樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
更に、天然高分子としては、例えば、多糖類であるデンプン、プルラン、デキストラン、デキストリン、グアーガム、キサンタンガム、アミロース、アミロペクチン、アルギン酸、アラビアガム、カラギーナン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、カードラン、キチン、キトサン、セルロース、並びに、その塩または誘導体が挙げられる。なお、「誘導体」とは、エステルやエーテルなどの従来公知の化合物を意味する。
これらの分散剤は、1種または2種以上を混合して用いることができる。
[[分散媒]]
また、分散媒としては、特に限定されることなく、例えば、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、アミルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系極性有機溶媒、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、パラジクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。これらは1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
[繊維状炭素ナノ構造体分散液の調製]
粗分散液に対して分散処理を施して繊維状炭素ナノ構造体分散液を調製する際の分散処理としては、特に限定されることなく、既知の分散処理を用いることができる。具体的には、分散処理としては、キャビテーション効果または解砕効果が得られる分散処理を用いることができる。なお、キャビテーション効果が得られる分散処理は、液体に高エネルギーを付与した際、水に生じた真空の気泡が破裂することにより生じる衝撃波を利用した分散方法である。そして、キャビテーション効果が得られる分散処理の具体例としては、超音波ホモジナイザーによる分散処理、ジェットミルによる分散処理および高剪断撹拌装置による分散処理が挙げられる。また、解砕効果が得られる分散処理は、粗分散液にせん断力を与えて繊維状炭素ナノ構造体の凝集体を解砕・分散させ、さらに粗分散液に背圧を負荷することで、気泡の発生を抑制しつつ、繊維状炭素ナノ構造体を分散媒中に均一に分散させる分散方法である。そして、解砕効果が得られる分散処理は、市販の分散システム(例えば、製品名「BERYU SYSTEM PRO」(株式会社美粒製)など)を用いて行うことができる。
上述した中でも、繊維状炭素ナノ構造体分散液を調製する際の分散処理としては、細管流路を備える分散処理装置を使用し、粗分散液を細管流路に圧送して粗分散液にせん断力を与えることで繊維状炭素ナノ構造体を分散させる分散処理が好ましい。粗分散液を細管流路に圧送して粗分散液にせん断力を与えることで繊維状炭素ナノ構造体を分散させれば、繊維状炭素ナノ構造体の損傷の発生を抑制しつつ、繊維状炭素ナノ構造体を良好に分散させることができる。
ここで、細管流路を備える分散処理装置としては、例えば、湿式ジェットミル(例えば、製品名「JN5」、「JN10」、「JN20」、「JN100」、「JN1000」(いずれも株式会社常光製)など)および上述した分散システム(株式会社美粒製、製品名「BERYU SYSTEM PRO」)などが挙げられる。
そして、上記分散処理装置が備える細管流路は、単一の細管流路であっても、下流の任意の位置に合流部を有する複数の細管流路であってもよい。但し、粗分散液同士をより効果的に衝突させてせん断力を付与する観点からは、分散処理装置が備える細管流路は、下流の任意の位置に合流部を有する複数の細管流路であることが好ましい。
更に、分散処理装置が備える細管流路の直径は、特に限定されないが、粗分散液が目詰まりすることなく粗分散液に高速流せん断を効果的に付与する観点から、50μm以上1000μm以下であることが好ましく、50μm以上600μm以下であることがより好ましい。
また、細管流路に粗分散液を圧送する手段としては、特に限定されることなく、高圧ポンプやピストン構造を有するシリンダを用いることができる。
そして、細管流路に粗分散液を圧送する際の圧力は、特に限定されることなく、60MPa以上200MPa以下とすることが好ましい。粗分散液を圧送する際の圧力を上記範囲内とすれば、繊維状炭素ナノ構造体の損傷の発生を十分に抑制しつつ、繊維状炭素ナノ構造体を良好に分散させることができる。
また、細管流路を用いた分散処理の条件(圧力、処理回数など)は、得られる繊維状炭素ナノ構造体分散液中に1mm以上の凝集体が目視で確認されない条件とすることが好ましく、粒度分布計で測定した際のメジアン径(体積換算の平均粒子径)の値が60μm以下となるレベルで繊維状炭素ナノ構造体が分散する条件とすることがより好ましい。繊維状炭素ナノ構造体を良好に分散させれば、繊維状炭素ナノ構造体分散液を用いて形成した不織布の導電性を更に向上させることができる。
[繊維の混合(分散液の調製)]
繊維状炭素ナノ構造体分散液と繊維との混合は、特に限定されることなく、例えばホモジナイザーなどの混合器を用いて行うことができる。
<不織布形成工程>
不織布形成工程では、繊維状炭素ナノ構造体と、繊維と、分散媒と、任意の添加剤とを含有する上記分散液から分散媒を除去して、不織布を形成する。具体的には、不織布形成工程では、例えば多孔質基材を用いて分散液をろ過し、得られたろ過物を乾燥させることにより、不織布を形成する。
なお、分散液をろ過して得られたろ過物は、乾燥させる前に、水やアルコールなどを用いて洗浄してもよい。
ここで、多孔質基材としては、特に限定されることなく、ろ紙や、セルロース、ニトロセルロース、アルミナ等よりなる多孔質シートを挙げることができる。
また、ろ過方法としては、自然ろ過、減圧ろ過、加圧ろ過などの既知のろ過方法を用いることができる。
ろ過により得られたろ過物を乾燥する方法としては、公知の乾燥方法を採用できる。乾燥方法としては、熱風乾燥法、真空乾燥法、熱ロール乾燥法、赤外線照射法等が挙げられる。乾燥温度は、特に限定されないが、通常、室温〜200℃、乾燥時間は、特に限定されないが、通常、0.1〜150分である。
<不織布の性状>
そして、上記不織布形成工程を経て得られた不織布は、自立性に優れており、プレス処理等を行わなくても、多孔質基材から剥離してそのまま自立膜として用いることができる。なお、本発明の不織布は、厚さが10nm〜3μm、面積が1mm〜100cmのサイズにおいて支持体無しで不織布としての形状を保つことが好ましい。
また、上記不織布形成工程を経て得られた不織布は、ろ過の際に繊維状炭素ナノ構造体と繊維とが絡み合うことで形成されており、通常、密度が1.0g/cm以下、好ましくは0.5g/cm以下、より好ましくは0.3g/cm以下と軽量である。
なお、本発明において、不織布の密度は、不織布の質量、面積および厚さを測定し、不織布の質量を体積で割って求めることができる。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」、および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
実施例および比較例において、各種の測定は、以下の方法に従って行った。
<成膜性>
不織布の作製時にろ紙から剥がす前の状態を目視評価した。評価基準は以下の通りとした。
A:不織布の表面に平面方向に長さ1mm以上のヒビがなく、及び、ろ紙を上から見たときに収縮により見えるろ紙の面積が、ろ紙全体の10%未満である状態
B:不織布の表面に平面方向に長さ1mm以上のヒビがなく、及び、収縮により上からみてろ紙の10%以上20%未満が見える状態
F:不織布の表面に平面方向に長さ1mm以上のヒビが生じ、及び/又は、収縮により上からみてろ紙の20%以上が見える状態
<耐粉落ち性>
不織布の上にシクロヘキサンを十分に染み込ませたキムワイプを乗せた。更に、キムワイプの上に、均一に圧力がかかるように、1kgの重しを乗せた。30秒経過後に重しを外して、キムワイプに付着した物質の有無を目視にて確認し、以下の基準で評価した。
A:キムワイプに付着物無し
B:キムワイプに付着物有り
<破断強度>
各不織布を4×2cmに切り抜いたものを試験体とした。小型卓上引張試験機(日本電産シンポ社製、型番「FGS-TV」)を用いて、試験体1cmをチャックでつかみ、30mm/分の引っ張り速度にて引張試験を行い、試験体が破断した際の荷重(N)を厚み(mm)で割った値を評価した。
<密度>
不織布の質量、面積および厚さを測定し、不織布の質量を体積で割って算出した。
<導電率>
作製した不織布から寸法10mm×10mmの正方形の試験片を4個切り出し、測定サンプルとした。
そして、低抵抗率計(三菱化学アナリテック社製、製品名「ロレスタ(登録商標)GPMCP−T610」)を用い、JIS K7194に準拠した方法で測定サンプルの導電率を測定した。具体的には、測定サンプルを絶縁ボードの上に固定し、測定サンプルの中心位置(縦5mm、横5mmの位置)にLSPプローブを押し当て、10Vの電圧をかけて各測定サンプルの導電率を測定した。そして、測定値の平均値を求めて不織布の導電率とした。
(実施例1)
<繊維の準備>
繊維としてピッチ系炭素繊維(三菱樹脂株式会社製、ダイアリード(登録商標)K223HM)を準備した。
なお、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製、S−4300)を用いて測定したピッチ系炭素繊維の平均繊維径は、10μmであった。また、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製、S−4300)を用いて測定したピッチ系炭素繊維の平均繊維長は、200μmであった。
<分散液の調製>
BET比表面積が600m/g以下の繊維状炭素ナノ構造体である多層CNT(KUMHO PETROCHEMICAL社製、商品名「K−NANO」、平均繊維径:13nm、平均繊維長:30μm、BET比表面積:266m/g)400mgを、2Lのメチルエチルケトン中に投入し、ホモジナイザーにより2分間撹拌して粗分散液を調製した。
次に、得られた粗分散液を、直径0.5mmの細管流路を備えた湿式ジェットミル(株式会社常光製、JN20)に100MPaの圧力で2サイクル通過させ、繊維状炭素ナノ構造体をメチルエチルケトン中に分散させて濃度0.20%の繊維状炭素ナノ構造体分散液を得た。なお、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所製、LA−960)にて繊維状炭素ナノ構造体分散液中の繊維状炭素ナノ構造体のメジアン径(体積換算の平均粒子径)を測定したところ、メジアン径は41.2μmであった。
その後、得られた繊維状炭素ナノ構造体分散液に対し、繊維としてのピッチ系炭素繊維を40mg投入し、ホモジナイザーにより2分間撹拌して分散液を得た。
<不織布の製造>
得られた分散液16gをキリヤマろ紙(No.5A、直径3cm)を用いて減圧ろ過し、ろ物を温度80℃の雰囲気下で60分間乾燥させてシート状の不織布を得た。そして、室温まで冷却した後、ろ紙上で不織布の成膜性を評価し、その後、不織布をろ紙から剥がし、不織布の強度、耐粉落ち性、導電率、及び密度を評価した。結果を表2に示す。
(実施例2〜8)
繊維の配合量を表2に記載の通りに変更した以外は実施例1と同様にして不織布を製造し、得られた不織布について成膜性、強度、耐粉落ち性、導電率、及び密度を評価した。結果を表2に示す。
(実施例9)
<繊維の準備>
繊維として、合成繊維であるポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維(東洋紡株式会社製、商品名「Zylon HM(登録商標)」)を準備した。
なお、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製、S−4300)を用いて測定した合成繊維の平均繊維径は、20μmであった。また、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製、S−4300)を用いて測定した合成繊維の平均長さは、1000μmであった。
<分散液の調製>
実施例1と同様にして得た繊維状炭素ナノ構造体分散液に対し、繊維としての合成繊維を200mg投入し、ホモジナイザーにより2分間撹拌して分散液を得た。
<不織布の製造>
上述のようにして得られた分散液から、実施例1と同様にして不織布を製造した。得られた不織布について成膜性、強度、耐粉落ち性、導電率、及び密度を評価した。結果を表2に示す。
(比較例1)
繊維を使用することなく、濃度0.20%の繊維状炭素ナノ構造体分散液のみを用いて不織布を製造した。具体的には、16gの繊維状炭素ナノ構造体分散液をキリヤマろ紙(No.5A、直径3cm)を用いて減圧ろ過し、ろ物を温度80℃の雰囲気下で60分間乾燥させてシート状の不織布を製造した。そして、実施例1と同様にして成膜性、強度、耐粉落ち性、導電性、及び密度を評価した。結果を表2に示す。
Figure 2017008437
表2から、BET比表面積が600m/g以下の繊維状炭素ナノ構造体と、繊維とを含む実施例1〜9にかかる不織布は、成膜性に優れることが分かる。なかでも、実施例2〜6にかかる不織布は耐粉落ち性も良好であり、さらに、実施例2〜5にかかる不織布は強度および導電性の双方が著しく向上していることが分かる。
本発明によれば、シート状部材として使用可能な、BET比表面積が600m/g以下の繊維状炭素ナノ構造体を用いた不織布を得ることができる。

Claims (8)

  1. BET比表面積が600m/g以下の繊維状炭素ナノ構造体と、繊維とを含む、不織布。
  2. 前記繊維状炭素ナノ構造体100質量部に対して、前記繊維を5質量部以上4000質量部以下の割合で含む、請求項1に記載の不織布。
  3. 前記繊維の平均繊維長が、50μm以上である、請求項1又は2に記載の不織布。
  4. 前記繊維の平均繊維径が、3μm以上50μm以下である、請求項1〜3の何れかに記載の不織布。
  5. 前記繊維状炭素ナノ構造体がカーボンナノチューブを含む、請求項1〜4の何れかに記載の不織布。
  6. 前記繊維が炭素繊維を含む、請求項1〜5の何れかに記載の不織布。
  7. 請求項1〜6の何れかに記載の不織布の製造方法であって、
    BET比表面積が600m/g以下の繊維状炭素ナノ構造体と、繊維と、分散媒とを含む分散液から前記分散媒を除去して不織布を形成する工程を含む、不織布製造方法。
  8. 前記分散媒中に前記繊維状炭素ナノ構造体を添加してなる粗分散液を60MPa以上200MPa以下の圧力で細管流路へと圧送し、前記粗分散液にせん断力を与えて平均粒子径が60μm以下の繊維状炭素ナノ構造体分散液を得た後、前記繊維状炭素ナノ構造体分散液に前記繊維を混合して前記分散液を調製する工程を更に含む、請求項7に記載の不織布製造方法。

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