JP2017008432A - ポリオレフィン弾性モノフィラメント - Google Patents

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Abstract

【課題】収縮性が高く、低比重、低吸水性、耐摩耗性の品質バランスに優れるポリオレフィン弾性モノフィラメントを提供する。
【解決手段】本発明のポリオレフィン弾性モノフィラメントは、(A)特定のプロピレン系重合体を5〜25質量部、(B)特定のプロピレン系共重合体を35〜95質量部、および(C)特定のアイソタクティックポリプロピレン(C−1)及び特定のアイソタクティックプロピレン・エチレン共重合体(C−2)から選ばれる少なくとも1種の重合体(C)を0〜40質量部(ただし、(A)、(B)および(C)の合計を100質量部とする)含むプロピレン系重合体組成物を溶融紡糸し、さらに延伸して得られるモノフィラメントであり、該モノフィラメントのJIS L1013に準拠して測定される引張伸び率が80〜300%の範囲であり、該モノフィラメントの直径が50〜2000μmであることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリオレフィン弾性モノフィラメントに関する。
弾性モノフィラメントなどの弾性繊維は、インナーウェア、アウターウェア、ストッキング等に代表される衣類分野、水着やタイツ等のスポーツ分野、オムツに代表される衛生材料分野、産業資材分野に広く使用されている。
近年、特にスポーツ分野や衣類分野、衛生材料分野で用いられる弾性繊維は、高い収縮性に加えて、薄地、軽量、透明化することにより高機能性が強く求められている。
これらの分野には、ポリアミド、ポリエステルあるいはポリウレタンの弾性繊維が使用されてきた(たとえば、特許文献1〜3)。しかしながら、これらの繊維では、吸水や加水分解による劣化、生活部材(例えば椅子等)との摩擦接触、さらには洗濯によって摩耗するという問題があった。
一方、原料としてポリオレフィン系樹脂を用いて得られるモノフィラメントは上記樹脂を用いたものに比べて軽量、低吸水性である特徴を有するものの、柔軟性に課題があった。これに対し、特定の要件を満たすエチレン(共)重合体を含む樹脂材料を紡糸して、さらに、延伸してなるモノフィラメントが提案されている(特許文献4)。しかしながら、依然として柔軟性に改良の余地があり、また耐摩耗性に課題があった。
特開平11−323659号公報 特開平11−222724号公報 特開2008−248137号公報 特開2004−323983号公報
上記の背景技術を鑑み、本発明の課題は、収縮性が高く、低比重、低吸水性、耐摩耗性の品質バランスに優れ、透明性を有するポリオレフィン弾性モノフィラメントを提供することである。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定のプロピレン系重合体(A)、特定のプロピレン系共重合体(B)、および特定の重合体(C)を特定量で含むプロピレン系重合体組成物を溶融紡糸し、さらに延伸して得られる、特定のポリオレフィン弾性モノフィラメントを用いることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のポリオレフィン弾性モノフィラメントは、
下記プロピレン系重合体(A)を5〜25質量部、下記プロピレン系共重合体(B)を35〜95質量部、および下記(C−1)及び(C−2)から選ばれる少なくとも1種の重合体(C)を0〜40質量部(ただし、(A)、(B)および(C)の合計を100質量部とする)を含むプロピレン系重合体組成物を溶融紡糸し、さらに延伸して得られるモノフィラメントであり、
該モノフィラメントのJIS L1013に準拠して測定される引張伸び率が80〜300%の範囲であり、
該モノフィラメントの直径が50〜2000μmであることを特徴とする。
(A)プロピレン系重合体:
13C−NMRにより測定されるシンジオタクティックペンタッド分率(rrrr分率)が85%以上であり、示差走査熱量計(DSC)により測定される融点(Tm)が145℃以上であり、プロピレンから導かれる構成単位を90〜100モル%(ただし、該プロピレン系重合体(A)中の構成単位の全量を100モル%とする。)で含有する。
(B)プロピレン系共重合体:
プロピレンから導かれる構成単位を40モル%以上90モル%未満、炭素数2〜20のα−オレフィン(ただしプロピレンを除く。)から導かれる構成単位を10モル%を超えて60モル%以下で含有し(ただし、プロピレンから導かれる構成単位および炭素数2〜20のα−オレフィン(但し、プロピレンを除く)から導かれる構成単位の合計を100モル%とする)、以下の要件(b)を満たす。
要件(b)135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η](dl/g)と、ASTM D1238に準拠して、230℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR)が下記の関係式を満たす。
1.50×MFR(-0.20)≦[η]≦2.65×MFR(-0.20)
(C−1)アイソタクティックポリプロピレン。
(C−2)示差走査熱量計(DSC)により測定される融点(Tm)が110℃未満か、または融点(Tm)が観測されず、プロピレン系共重合体(B)と異なる、アイソタクティックプロピレン・エチレン共重合体。
前記プロピレン系重合体組成物が、該組成物100質量部に対して、滑剤を0.1〜1.0質量部含むことが好ましい。
前記モノフィラメントのJIS L1013に準拠して測定される比重が0.91以下であることが好ましい。
前記モノフィラメントのJIS K7361−1に準拠して測定される全光線透過率が85%以上であることが好ましい。
本発明のポリオレフィン弾性モノフィラメントは、収縮性が高く、低比重、低吸水性、耐摩耗性の品質バランスに優れ、透明性を有する。
そのため、本発明のポリオレフィン弾性モノフィラメントは、各種の二次加工品に好適に用いられる。
<プロピレン系重合体(A)>
本発明に係るプロピレン系重合体組成物に含まれる重合体成分の一つであるプロピレン系重合体(A)は、13C−NMRにより測定されるシンジオタクティックペンタッド分率(rrrr分率)が85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは94%以上である。
rrrr分率が上記の範囲にあるプロピレン系重合体(A)は、成形性、さらには耐熱性および透明性にも優れ、結晶性ポリプロピレンとしての特性がより良好なものとなる。また、プロピレン系重合体(A)を用いることで、結晶化抑制と微細球晶化が起こる。そのため、得られる本発明のポリオレフィン弾性モノフィラメントは、耐熱性、透明性および表面光沢性の高いものとなる。
本発明に係るプロピレン系重合体(A)のシンジオタクティックペンタッド分率(rrrr分率)は、以下のようにして測定される。
rrrr分率は、13C−NMRスペクトルにおけるPrrrr(プロピレン単位が5単位連続してシンジオタクティック結合した部位における第3単位目のメチル基に由来する吸収強度)およびPw(プロピレン単位の全メチル基に由来する吸収強度)の吸収強度から下記式(1)により求められる。
rrrr分率(%)=100×Prrrr/Pw・・・(1)
NMR測定は、例えば、次のようにして行われる。すなわち、試料0.35gをヘキサクロロブタジエン2.0mlに加熱溶解させる。この溶液をグラスフィルター(G2)で濾過した後、重水素化ベンゼン0.5mlを加え、内径10mmのNMRチューブに装入する。そして、日本電子製GX−500型NMR測定装置を用い、120℃で13C−NMR測定を行う。積算回数は8,000回以上とする。
プロピレン系重合体(A)は、示差走査熱量計(DSC)により測定される融点(Tm)が、通常145℃以上、より好ましくは147℃以上、さらに好ましくは150℃以上、特に好ましくは155℃以上である。なお、Tmの上限は特にないが、通常は、例えば170℃以下である。該重合体(A)の融点(Tm)が上記の範囲にあることで、ポリオレフィン弾性モノフィラメントは、成形性、さらには耐熱性および機械特性に優れる。
プロピレン系重合体(A)は、該重合体中に含まれる構成単位の全量100モル%に対して、プロピレンから導かれる構成単位を90〜100モル%、好ましくは92〜100モル%、より好ましくは95〜100モル%含む。
プロピレン系重合体(A)としては、プロピレンの単独重合体、あるいは、プロピレンと炭素原子数が2〜20のα−オレフィンとの共重合体などが挙げられる。前記α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられ、エチレンまたは炭素原子数が4〜10のα−オレフィンが好ましい。プロピレンと共重合されるα−オレフィンは一種でも二種以上であってもよい。
プロピレン系重合体(A)は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、好ましくは、示差走査熱量計(DSC)により測定される融解熱量(ΔHC)が20J/g以上、より好ましくは40J/g以上、さらに好ましくは50J/g以上である。融解熱量(ΔHC)の上限は特に限定はされないが、通常、120J/g以下である。
プロピレン系重合体(A)の、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、好ましくは0.5〜10dl/g、より好ましくは1.0〜6dl/g、さらに好ましくは1.0〜4dl/gの範囲にある。極限粘度がこのような範囲にあると、良好な流動性を示し、他の成分と配合し易く、得られるポリオレフィン弾性モノフィラメントは、機械的強度に優れる。
プロピレン系重合体(A)の、ASTM D1238に準拠して、230℃、2.16kg荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)は、プロピレン系重合体組成物が成形加工し得る限り特に限定はされないが、通常、0.001〜50g/10分、好ましくは0.1〜30g/10分、より好ましくは0.1〜10g/10分の範囲にある。
プロピレン系重合体(A)は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、通常、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn、分子量分布)(ポリスチレン換算)が1.2〜3.5、より好ましくは1.5〜3.0の範囲にある。
<プロピレン系重合体(A)の製造方法>
本発明に係るプロピレン系重合体(A)は、種々公知の製造方法、例えば、国際公開番号WO2006/123759明細書に記載された製造方法などにより、得ることができる。
<プロピレン系共重合体(B)>
本発明のプロピレン系重合体組成物に含まれる重合体成分の一つであるプロピレン系共重合体(B)は、プロピレンから導かれる構成単位を40モル%以上90モル%未満、好ましくは50〜89モル%、より好ましくは55〜89モル%であり、炭素数2〜20のα−オレフィン(ただし、プロピレンを除く)から導かれる構成単位を10モル%を超えて60モル%以下、好ましくは11〜50モル%、より好ましくは11〜45モル%含有する(ただし、プロピレンから導かれる構成単位および炭素数2〜20のα−オレフィン(ただし、プロピレンを除く)から導かれる構成単位の合計を100モル%とする)。
また、プロピレン系共重合体(B)は、以下の要件(b)を満たす。
要件(b)135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η](dl/g)と、ASTM D1238に準拠して、230℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR)(g/10分)が下記の関係式(1)を満たし、好ましくは下記の関係式(2)を満たす。
1.50×MFR(-0.20)≦[η]≦2.65×MFR(-0.20)・・・(1)
1.80×MFR(-0.20)≦[η]≦2.50×MFR(-0.19)・・・(2)
上記式(1)、好ましくは式(2)を満たすプロピレン系重合体(B)は、従来のアイソタクティックプロピレン系共重合体に比べて同一極限粘度[η]で小さなMFRを示す。
これはMacromolecules 31、1335−1340(1998)にも記載のようにアイソタクティックポリプロピレンの絡み合い点間分子量(論文ではMe=6900(g/mol)と報告されている)と、シンジオタクティックポリプロピレンの絡み合い点間分子量(論文ではMe=2170(g/mol)と報告されている)との違いに起因すると考えられる。即ち、同一[η]ではシンジオタクティック構造を持つことにより、アイソタクティック構造を有する材料に対して絡み合い点が多くなり、MFRが小さくなると考えられる。
以上のように、上記式を満たすプロピレン系重合体は、アイソタクティック構造を有するプロピレン系重合体とは異なった立体規則性を有した重合体であり、いわゆるシンジオタクティック構造を有するものと考えられる。この場合、得られるポリオレフィン弾性モノフィラメントは耐摩耗性に優れる。
本発明に係るプロピレン系共重合体(B)は、プロピレンと炭素原子数が2〜20のα−オレフィン(ただし、プロピレンを除く)との共重合体などが挙げられる。前記α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられ、エチレンまたは炭素原子数が4〜10のα−オレフィンが好ましい。プロピレンと共重合されるα−オレフィンは一種でも二種以上であってもよい。
本発明に係るプロピレン系共重合体(B)は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、好ましくは、DSCにより測定される融解熱量(ΔHB)が10J/g以下、より好ましくは5J/g以下、さらに好ましくは1J/g以下である。
本発明に係るプロピレン系共重合体(B)は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、好ましくは、DSCにより測定される融点が90℃未満であるか、または融点が存在しない、より好ましくは80℃以下あるか、または融点が存在しない、さらに好ましくは、融点が存在しない重合体である。本発明において、融点が存在しないとは、融解ピークに起因する融解熱量△Hが1J/g以下であることをいう。
本発明に係るプロピレン系共重合体(B)の、ASTM D1238に準拠して、230℃、2.16kg荷重下で測定したMFRは、前記(b)を満たし、プロピレン系重合体組成物が成形加工し得る限り特に限定はされないが、通常、0.01〜100g/10分、好ましくは0.01〜50g/10分、より好ましくは0.1〜30g/10分、特に好ましくは0.1〜10g/10分の範囲にある。
プロピレン系共重合体(B)の、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]は、前記(b)を満たす限り特に制限されないが、通常0.01〜10dl/g、好ましくは0.05〜10dl/g、より好ましくは0.1〜5dl/gの範囲にあることが望ましい。極限粘度[η]が上記範囲にあると、プロピレン系重合体組成物は、成形時の流動性に優れ、得られるポリオレフィン弾性モノフィラメントは、機械物性に優れる。
本発明に係るプロピレン系重合体(B)は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、通常、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn、分子量分布)(ポリスチレン換算)が1.2〜3.5、より好ましくは1.5〜3.0の範囲にある。
本発明に係るプロピレン系共重合体(B)は、さらに以下に示すように、13C−NMR法で測定したシンジオタクティックトライアッド分率(rr分率)が特定の範囲の値をとるものであってもよい。好ましくはrr分率が40%以上、さらには45%以上であるものがよい。
rr分率は、13C−NMRスペクトルにおけるPrr(プロピレン単位が3単位連続してシンジオタクティック結合した部位における第2単位目のメチル基に由来する吸収強度)およびPw(プロピレン単位の全メチル基に由来する吸収強度)の吸収強度から下記式(3)により求められる。
rr分率(%)=100×Prr/Pw・・・(3)
ここで、rr分率を求める際に、mr由来の吸収(プロピレン単位が3単位の内、少なくともシンジオタクティック結合とアイソタクティック結合の両方から由来する吸収、Pmr(吸収強度)の決定に用いる)、rr由来の吸収(プロピレン単位が3単位連続してシンジオタクティック結合した部位における第2単位目のメチル基に由来する吸収、Prr(吸収強度)の決定に用いる)、またはmm由来の吸収(プロピレン単位が3単位連続してアイソタクティック結合した部位における第2単位目のメチル基に由来する吸収、Pmm(吸収強度)の決定に用いる)と、コモノマーに由来する吸収とが重なる場合には、コモノマー成分の寄与を差し引かずそのまま算出する。
rr分率は、具体的には、特開2002−097325号公報の段落〔0018〕〜〔0031〕に記載された「シンジオタクティシティパラメータ(SP値)」の求め方の記載のうち、〔0018〕〜〔0023〕までの帰属に従い、第1領域、第2領域、第3領域のシグナルの積算強度から上記式(3)により計算することにより求める。
また、rr分率の測定において、NMR測定は、例えば、次のようにして行われる。すなわち、試料0.35gをヘキサクロロブタジエン2.0mlに加熱溶解させる。この溶液をグラスフィルター(G2)で濾過した後、重水素化ベンゼン0.5mlを加え、内径10mmのNMRチューブに装入する。そして、日本電子製GX−400型NMR測定装置を用い、120℃で13C−NMR測定を行う。積算回数は、8,000回以上とする。
rr分率は、成分(B)がいわゆるシンジオタクティック構造の割合がより多い、ということを示す指標であり、前述した要件(b)を満たすことと類似する意味を有する指標である。
本発明に係るプロピレン系共重合体(B)は、プロピレンから導かれる構成単位を40〜89モル%、好ましくは50〜89モル%、より好ましくは55〜80モル%、エチレンから導かれる構成単位を1〜35モル%、好ましくは1〜30モル%、より好ましくは5〜20モル%、及び炭素数4〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位を10〜45モル%、好ましくは10〜40モル%、より好ましくは15〜40モル%の範囲で含むプロピレン・エチレン・炭素数4〜20のα−オレフィン共重合体(B1)が、組成物の耐熱性の観点から、望ましい(但し、プロピレンから導かれる構成単位、エチレンから導かれる構成単位および炭素数4〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位の合計を100モル%とする。)。
また、この場合、炭素数4〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位の含量の、プロピレンから導かれる構成単位とエチレンから導かれる構成単位と炭素数4〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位の合計量に対する割合(モル%)(Pb2−2)と、エチレンから導かれる構成単位の含量の、プロピレンから導かれる構成単位とエチレンから導かれる構成単位と炭素数4〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位の合計量に対する割合(モル%)(Pb2−1)が、Pb2−2>Pb2−1の関係を満たすことが好ましく、(Pb2−2)−(Pb2−1)≧1モル%以上であることがより好ましい。
本発明に係るプロピレン系共重合体(B)としては、前記プロピレン・エチレン・炭素数4〜20のα−オレフィン共重合体(B1)以外にも、プロピレンから導かれる構成単位を50〜89モル%、好ましくは55〜89モル%、より好ましくは65〜85モル%、エチレンから導かれる構成単位を11〜50モル%、好ましくは11〜45モル%、より好ましくは15〜35モル%含むプロピレン・エチレン二元共重合体(B2)を挙げることもできる(但し、プロピレンから導かれる構成単位およびエチレンから導かれる構成単位の合計を100モル%とする。)。共重合体(B1)と(B2)とを比較すると、プロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体(B1)が好ましい。
<プロピレン系共重合体(B)の製造方法>
本発明に係るプロピレン系共重合体(B)は、種々公知の製造方法により製造しうる。例えばシンジオタクティックプロピレンを製造可能な触媒でプロピレンとα−オレフィンとを共重合して得ることができる。より具体的には例えば、国際公開2008−059895号公報に記載の方法により製造できるが、これに限定されるものではない。
<重合体(C)>
本発明に係るプロピレン系重合体組成物には、下記のアイソタクティックプロピレン系重合体(C−1)およびアイソタクティックプロピレン・エチレン共重合体(C−2)から選ばれる少なくとも1種の重合体(C)を含んでいてもよい。
(アイソタクティックプロピレン系重合体(C−1))
本発明のプロピレン系重合体組成物に含まれてもよい重合体成分の一つであるアイソタクティックプロピレン系重合体(C−1)は、13C-NMR法により測定したアイソタクティックペンタッド分率が通常、0.85以上、好ましくは0.9以上、より好ましくは0.95以上のプロピレン系重合体である(以下「アイソタクティックポリプロピレン」と言うことがある)。
アイソタクティックペンタッド分率(mmmm)は、13C-NMR法を使用して測定される分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクティック連鎖の存在割合を示しており、プロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である。具体的には、13C−NMRスペクトルで観測されるメチル炭素領域の全吸収ピーク中に占めるmmmmピークの分率として算出される値である。アイソタクティックペンタッド分率(mmmm)は、特開2003-147135号公報に記載されている方法で測定、計算される。
本発明に係るアイソタクティックポリプロピレンとしては、融点が110℃を超える公知のアイソタクティックプロピレン系重合体であれば制限なく使用できるが、プロピレンから導かれる構成単位とプロピレン以外の単量体から導かれる構成単位との合計を100モル%とした場合に、プロピレンから導かれる構成単位は90モル%を超える量でかつ100モル%以下、好ましくは91モル%以上100モル%以下の量含み、プロピレン以外の単量体から導かれる構成単位を0モル%以上10モル%未満、好ましくは0モル%以上9モル%以下の量含む例を挙げることができる。プロピレン以外の単量体は、全量が炭素数2〜20のα−オレフィン(但しプロピレンを除く)であることが好ましい。
具体的にはプロピレン単独重合体またはプロピレンとプロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα−オレフィンとの共重合体を挙げることができる。ここでアイソタクティックポリプロピレン中の、プロピレンから導かれる構成単位とプロピレン以外の単量体から導かれる構成単位との合計を100モル%とした場合に、プロピレンから導かれる構成単位は90モル%を超える量でかつ100モル%以下、好ましくは91モル%以上100モル%以下の量で存在している。
ここで、プロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられ、エチレンまたは炭素原子数が4〜10のα−オレフィンが好ましい。これらのα−オレフィンは、プロピレンとランダム共重合体を形成してもよく、ブロック共重合体を形成してもよい。これらのα−オレフィンから導かれる構成単位は、通常、ポリプロピレン中に10モル%未満、好ましくは9モル%以下である。
本発明に係るアイソタクティックプロピレン系重合体(C−1)は、ASTM D 1238に準拠して、230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が0.01〜1000g/10分、好ましくは0.05〜100g/10分の範囲にあることが望ましい。
該アイソタクティックプロピレン系重合体(C−1)は、示差走査熱量計(DSC)で測定される融点(Tm)は、通常120℃を超え170℃以下である。
本発明に係るアイソタクティックプロピレン系重合体(C−1)は、必要に応じて複数のアイソタクティックポリプロピレンを併用することができ、例えば、融点や剛性の異なる2種類以上の成分を用いることもできる。
本発明に係るアイソタクティックプロピレン系重合体(C−1)は、耐熱性に優れるプロピレンの単独重合体あるいはα−オレフィン由来の共重合成分が3モル%以下の重合体、耐熱性および柔軟性のバランスに優れるブロックポリプロピレン(通常3〜30質量%のノルマルデカン溶出ゴム成分を有する公知のもの)、さらには、柔軟性および透明性のバランスに優れるプロピレンとα−オレフィンのランダム共重合体(通常DSCにより測定される融点が110℃を超えて150℃以下の範囲にある公知のもの)を、目的の物性を得るために選択してまたは併用して用いることができる。
本発明に係るアイソタクティックプロピレン系重合体(C−1)は、例えば、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分と有機アルミニウム化合物および電子供与体からなるチーグラー触媒系、またはメタロセン化合物を触媒の一成分として用いたメタロセン触媒系で、プロピレンを重合、またはプロピレンと他のα−オレフィンとを共重合することにより製造できる。
本発明に係るアイソタクティックプロピレン系重合体(C−1)の市販品としては、例えば、プライムポリプロ(登録商標)F107((株)プライムポリマー製)、ノバテック(登録商標)SA3A(日本ポリプロ(株)製)、住友ノーブレン(登録商標)W101(住友化学(株)製)、などが挙げられる。
(アイソタクティックプロピレン・エチレン共重合体(C−2))
本発明に係るプロピレン・エチレン共重合体(C−2)は、実質的にアイソタクティック構造を有する。実質的にアイソタクティック構造であるとは、13C−NMRで測定されるトリアドタクティシティ(mm分率)が85%以上、好ましくは85〜97.5%、より好ましくは87〜97%、さらに好ましくは90〜97%の範囲にあることを意味する。トリアドタクティシティ(mm分率)がこの範囲にあると、特に柔軟性と機械強度のバランスに優れるため、本発明に好適である。mm分率は、国際公開2004−087775号パンフレットの21頁7行目から26頁6行目までに記載された方法を用いて測定することができる。
該プロピレン・エチレン共重合体(C−2)は、示差走査熱量計(DSC)で測定される融点(Tm)が110℃未満か、または融点(Tm)が観測されない。融点(Tm)が100℃未満であるか、または融点(Tm)が観測されないものであることが好ましい。ここで、融点(Tm)が観測されないとは、−150〜200℃の範囲において、結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピークが観測されないことをいう。23℃±2℃で72時間以上の状態調節を実施した後の試験体にて、−40℃まで冷却してから昇温速度10℃/minで測定したときに得られるDSC曲線を作成することにより求める。
該プロピレン・エチレン共重合体(C−2)は、前記のプロピレン系重合体(A)およびプロピレン系共重合体(B)と、異なる。
本発明に係るアイソタクティックプロピレン・エチレン共重合体(C−2)は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、プロピレンとエチレンがランダム共重合することにより得られるランダム共重体であることが好ましく、プロピレンから導かれる構成単位を、通常50〜95モル%、好ましくは55〜90モル%、より好ましくは60〜88モル%含み、コモノマーとして用いられるエチレンから導かれる構成単位を、通常5〜50モル%、好ましくは10〜45モル%、より好ましくは12〜40モル%含む(ここで、プロピレンから導かれる構成単位とエチレンから導かれる構成単位との合計は100モル%である)。
該プロピレン・エチレン共重合体(C−2)は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、好ましくは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定された分子量分布(Mw/Mn)の値が1〜3である。
該プロピレン・エチレン共重合体(C−2)の、ASTM D1238に準拠して、230℃、2.16kg荷重下で測定したMFRは、プロピレン系重合体組成物が成形加工し得る限り特に限定はされないが、好ましくは0.01〜50g/10分、より好ましくは0.1〜30g/10分、特に好ましくは0.1〜10g/10分の範囲にある。
また、本発明に係るプロピレン・エチレン共重合体(C−2)は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が、好ましくは0.01〜10dl/g、より好ましくは0.05〜10dl/gの範囲にある。
本発明に係るプロピレン・エチレン共重合体(C−2)の製造方法は特に制限されないが、例えば、固体状チタン成分及び有機金属化合物を主成分とする触媒、又はメタロセン化合物を触媒の一成分として用いたメタロセン触媒の存在下で、プロピレンとエチレンとを共重合して製造できる。
そのようなプロピレン・エチレンランダム共重合体(C−2)は、The Dow Chemical Companyから商品名VERSIFY(登録商標)で、又はExxonMobil Chemical Companyから商品名VISTAMAXX(登録商標)で市販されている。
<プロピレン系重合体組成物>
本発明に係るプロピレン系重合体組成物は、前記プロピレン系重合体(A)を5〜25質量部と、前記プロピレン系共重合体(B)を35〜95質量部と、必要に応じて、(C)前記アイソタクティックポリプロピレン(C−1)及びアイソタクティックプロピレン・エチレン共重合体(C−2)から選ばれる少なくとも1種の重合体(C)を0〜40質量部含む。ただし、(A)、(B)および(C)の合計を100質量部とする。
本発明に係るプロピレン系重合体組成物は、前記プロピレン系重合体(A)及び前記プロピレン系共重合体(B)を含むことにより、柔軟性を有しつつ耐摩耗性に優れる。本発明に係るプロピレン系重合体組成物は、さらに前記アイソタクティックポリプロピレン(C−1)を含むことにより、引張強さに優れる。本発明に係るプロピレン系重合体組成物は、さらに前記アイソタクティックプロピレン・エチレン共重合体(C−2)を含むことにより、非結晶成分が増え、延伸の高倍率化を必要とせず、モノフィラメントの細径化を図ることに優れる。
本発明に係るプロピレン系重合体組成物が、柔軟性でありながら、耐摩耗性に優れる理由は定かではないが、以下のように考えることができる。すなわち耐摩耗性は、該重合体組成物に含まれる各成分の相溶性に大きく影響されると考えられるが、該重合体組成物は、マトリックス中に分散相が適度な大きさで分散した構造をとっているのではないかと考えられる。その結果、耐摩耗性は、相分離しているモルフォロジーにおいて分散相の粒径が小さいために、分散相界面を起点とした、界面剥離に由来する摩耗損失が起きにくくなると考えられる。
本発明に係るプロピレン系重合体組成物は、ASTM D1238に準拠して、230℃、2.16kg荷重で測定したMFRが、通常、0.01〜50g/10分、好ましくは0.01〜30g/10分の範囲にある。
本発明に係るプロピレン系重合体組成物には、前記(A)〜(C)に加え、その用途に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)、(B)および(C)とは異なる他の樹脂、例えばオレフィン系重合体または共重合体、オレフィン系エラストマーなどを添加してもよい。このような樹脂の市販品としては、例えば、ミラソン(登録商標)11P((株)三井・デュポンポリケミカル(株)製)、サンテック(登録商標)L1850A(旭化成ケミカルズ(株)製)、エボリュー(登録商標)SP2540((株)プライムポリマー製)、ハイゼックス(登録商標)5000S((株)プライムポリマー製)、ミラストマー(登録商標)4010NS(三井化学(株)製)、タフマー(登録商標)A−4085S(三井化学(株)製)、サントプレンTM(ExxonMobil Chemical Company製)、ウェルネックス(登録商標)RFG4VA(日本ポリプロ(株)製)、インフューズTM(The Dow Chemical Company製)などの商品名で製造・販売されている種々のポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
また、本発明に係るプロピレン系重合体組成物には、その用途に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で、水添スチレン系ブロック共重合体、水添スチレン系ランダム共重合体などのゴム成分を添加してもよい。このような水添スチレン系ブロック共重合体の市販品としては、例えば、クレイトン(登録商標)G A1535H(Kraton Performance Polymers製)、ハイブラー(登録商標)5127((株)クラレ製)、タフテック(登録商標)H1062(旭化成工業(株)製)、セプトン(登録商標)S8007((株)クラレ製)などが挙げられる。
本発明に係るプロピレン系重合体組成物に他の重合体を加える場合は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、該プロピレン系重合体組成物100質量部に対して、通常0.1〜50質量部、好ましくは1〜30質量部の範囲で添加し得る。
本発明に係るプロピレン系重合体組成物には、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で、無機充填剤、造核剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、滑剤(スリップ剤、アンチブロッキング剤)、顔料、染料、発錆防止剤などの添加物を添加することができる。
前記滑剤の例としては、ステアリル酸ホスフェイト系、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、シリコーンオイル、シリカ等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
本発明に係るプロピレン系重合体組成物に滑剤を加える場合は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、プロピレン系重合体組成物100質量部に対して、通常0.1〜1.0質量部の範囲で添加し得る。
本発明に係るプロピレン系重合体組成物は、上記各成分を上記のような範囲で種々公知の方法、例えばヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラブレンダー等で混合する方法、あるいは混合後、一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練する方法を採用して調製することができる。
<ポリオレフィン弾性モノフィラメント>
本発明のポリオレフィン弾性モノフィラメントは、上記プロピレン系重合体組成物を溶融紡糸及び延伸の工程を含んで得られる繊維であって、モノフィラメントである。
本発明のポリオレフィン弾性モノフィラメントは、JIS L1013に準拠して測定される引張伸び率が、通常80〜300%の範囲であり、好ましくは80〜200%である。前記範囲を満たすポリオレフィン弾性モノフィラメントは、引張強さと伸度のバランスに優れる。
本発明のポリオレフィン弾性モノフィラメントの直径は、特に限定されないが、好ましくは50〜2000μmであり、より好ましくは100〜1750μmである。前記範囲を満たす弾性モノフィラメントは、二次加工性に優れる。
本発明のポリオレフィン弾性モノフィラメントは、JIS L1013に準拠して測定される比重が、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、好ましくは0.91以下である。比重の下限値は特に制限はないが、通常0.865以上である。前記範囲を満たすポリオレフィン弾性モノフィラメントは、軽量性に優れる。
本発明のポリオレフィン弾性モノフィラメントは、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、JIS K7361−1に準拠して測定される全光線透過率が、好ましくは85%以上である。全光線透過率の上限値は特に制限はないが、通常92%以下である。前記範囲を満たすポリオレフィン弾性モノフィラメントは、透明性に優れる。
<ポリオレフィン弾性モノフィラメントの製造方法>
本発明に係るモノフィラメントは、上記のプロピレン系重合体組成物を溶融紡糸し、更に、延伸することにより製造される。溶融紡糸には、公知の溶融紡糸方法を採用することができる。また、延伸についても同様である。
本発明に係るモノフィラメントの製造方法としては、例えば、上記のプロピレン系重合体組成物を、成形機のダイス孔より溶融ストランドを押出し、冷却水槽に導きストランド得る押出工程、ストランドを延伸する延伸工程、延伸した糸を巻取る巻取工程、からなる方法を挙げることができる。
押出温度は、プロピレン系重合体組成物の融点(Tm)から融点(Tm)に130℃まで上昇させた範囲の温度で行い、ダイスから吐出された溶融ストランドを水槽中に浸漬させて冷却する。その水温は、目的とするモノフィラメントの直径にもよるが、5〜60℃の範囲が好ましく、7〜50℃の範囲がより好ましく、10〜40℃の範囲が更に好ましい。水温が60℃より高い場合には、ストランドの冷却不足を生じ、軟らかいまま次の延伸行程へ導入されるため、引取ロール(延伸ロール)での巻き取り不良を引き起こす場合がある。
本発明で示す延伸とは、モノフィラメント(糸)を、材料の融点以下の温度で機械的に引伸ばし、引張方向と平行に分子鎖を配向させる操作をいう。この操作により引張強さは著しく向上し、靱性を増す。延伸工程の後、延伸温度以上に再加熱すると元の寸法に収縮しようとする性質が表れるため、寸法や強度の安定性をはかるために、延伸温度よりやや低い温度で熱処理(熱固定、ヒートセット)を行うことがある。本発明では、押出工程で得られたストランドを、特定の温度に加熱して延伸を行う。延伸は、入口側の引取ロールと出口側の引取ロールとの速度比(延伸倍率)によって行い、このときの延伸倍率は、3〜15倍が好ましい。延伸時の加熱方法は、温水槽、オーブン、熱ロール等のいずれを用いてもよく何ら制限はないが、より均一に加熱延伸するには温水槽がより好ましい。
温水槽を用いた延伸としては、水温調節可能な長さと深さを有する水槽と、その前後に引取ロールを配置することにより実現可能である。オーブンを用いた延伸としては、電気式ヒーター(赤外線ヒーター)を熱源として引取方向に配置して温度調節を行う長さ数mのオーブンと、その前後に引取ロールを配置することにより実現可能である。また、熱ロールを用いた延伸としては、水配管、油配管、電気ヒーターなどを内部に配置して加熱し温度調節された複数の引取ロールを設置し、ロールの回転速度を調節することにより実現可能である。
本発明では、延伸時の温度条件としては、温水槽、オーブン、熱ロール等いずれの装置及び方法を選択してもほぼ同じで、延伸前のモノフィラメントの表面温度がプロピレン系重合体組成物のガラス転移温度(Tg)〜融点(Tm)であるのが好ましく、Tg〜Tm−30℃がより好ましく、Tg〜Tm−60℃が更に好ましい。表面温度がTgに満たない場合は、延伸切れが起こったり、3倍以上の延伸が不可能となったりする場合がある。逆にTmを越える場合は、延伸による強度発現の効果が少なくなる。
本発明では、延伸倍率は通常3〜15倍の範囲であり、好ましくは4〜14倍が良く、より好ましくは5〜13倍が良い。延伸倍率が3倍に満たない場合は、延伸操作による強度発現が不充分となり、モノフィラメントとしての実用的な引張強さ(0.5cN/dtex以上)を有する製品が得られない場合がある。逆に、15倍を越える延伸倍率では、延伸切れを起こしやすくなったり、ボイドを生じ白化したり、モノフィラメントが縦割れやすくなるなどのトラブルが発生する場合がある。
3〜15倍の延伸を行う方法としては、1段で行う方法の他に、これらを適宜組み合わせて、2段、3段〜多段の構成とし、各段で小倍率の延伸を行い、全体の延伸倍率を3〜15倍とする方法もとることができる。
多段の延伸を行う場合には、例えば、1段目で1.1〜10倍、2段目で1.5〜10倍というように、順次延伸倍率を変化させ、全体的な延伸倍率を3〜15倍となるようにし、同時に加熱温度条件は、上記温度範囲において、1段目を一番低く、段数を増す毎に順次温度を高くする方法が好ましい。
本発明では、延伸したフィラメントを更に熱処理(熱固定)し、高温下での物性変化(例えば、収縮性)を抑制することができる。その方法は、プロピレン系重合体組成物のガラス転移温度(Tg)〜融点(Tm)の間の温度で熱処理すること、好ましくは20〜140℃、より好ましくは30〜120℃に設定した加熱槽に導き、熱処理(熱固定)を行った後、冷却槽にて冷却する。熱処理には、延伸操作の場合と同様に、水槽、オーブン、熱ロール等いずれの方法を用いてもよく何ら制限はない。又、冷却には、水冷、空冷いずれの方法でも良く、何ら制限はない。
最後に、延伸したモノフィラメントを巻取機により筒状の紙、プラスチック、金属製のボビンおよびコーン状で巻取り、モノフィラメントの巻物を得ることができる。
本発明のモノフィラメントの断面形状は、通常、円形であるが、使用目的に応じて、その断面形状を三角形、長方形等の多角形、楕円形、星形等、異形形状としてもよい。
本発明の製造方法により得られるモノフィラメントの直径は50〜2000μmであり、該モノフィラメントのJIS L1013に準拠して測定される引張伸び率は80〜300%の範囲にある。
本発明により、収縮性が高く、低比重、低吸水性、耐摩耗性の品質バランスに優れ、ヒステリシスロスが小さく、透明性を有するポリオレフィン弾性モノフィラメントを提供できる。また、本発明のモノフィラメントは、例えば、従来から知られている編成機や織機で加工し、二次加工品を得ることができる。二次加工品とは、ネット状、ロープ状、網状、更にはそれらの組み合わせの形を有し、その大きさ、形状、意匠に関して何ら制限はない。編成機や織機で加工する際の網地の種類としては、緯編地、経編地、丸編地などの編地、織物全般、本目網、蛙又網、二重蛙又網などの有結節網、ラッセル網、もじ網、織り網、メタリック・ファイバー網等の無結節網等が挙げられるが、何ら制限はない。
本発明で得られるモノフィラメントの二次加工品としては、衣類用資材、衛生用資材、漁業用資材、農林業用資材、土木建築用資材、スポーツレジャー用資材、産業用資材等の用途に用いることができる。例えば、衣類用資材としては、肌着、靴下、シャツ、ブリーフ、トランクス、ショーツ、キャミソール、スパッツ、ブラジャー、タイツ、腹巻き等のインナーウェア、Tシャツ、セーター、コート、ジャケット、ジャンパー、パンツ、スカート、帽子、手袋等のアウターウェア、トレーニングウェア、スキーウェア、水着、レオタード等のスポーツウェア、衛生用資材としては、オムツ、生理用品、お産パッド、母乳パッド、創傷被覆材等、漁業用資材としては、海苔網、巻き網、養殖の魚網や養殖網等、農林業用資材としては、防虫ネット、防風ネット、遮光ネット、雑草防止用ネット、防鳥用ネット、キューリネット、フラワーネット等、土木建築用資材としては、植生ネット、土嚢ネット等、スポーツレジャー用資材としては、ゴルフ、野球、テニス、卓球、バレーボール、バドミントン、サッカー、ハンドオール、バスケットボール、ホッケー、アイスホッケー、水球などのスポーツ用ネット、虫取り網等、産業用資材としては、熱溶解積層法に用いる三次元造形(3Dプリンター)用フィラメント材料、丸紐、玩具、携帯電話用ストラップ等が挙げられる。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例における物性値等は、以下の方法により測定した。
(1)MFR(g/10分)
MFRの測定は、ASTM D1238に従い、230℃、2.16kg荷重で測定を行った。
(2)極限粘度[η](dl/g)
デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した値である。すなわち重合パウダー、ペレットまたは樹脂塊約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、溶質の濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求めた(下式参照)。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
(3)分子量分布(Mw/Mn)
分子量分布(Mw/Mn)は、Waters社製ゲル浸透クロマトグラフAlliance GPC−2000型を用い、以下のようにして測定した。分離カラムは、TSKgel GNH6−HTを2本およびTSKgel GNH6−HTLを2本であり、カラムサイズはいずれも直径7.5mm、長さ300mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはo−ジクロロベンゼン(和光純薬工業)および酸化防止剤としてBHT(ジブチルヒドロキシトルエン、武田薬品)0.025質量%を用い、1.0ml/分で移動させ、試料濃度は15mg/10mLとし、試料注入量は500マイクロリットルとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンは、分子量がMw<1000およびMw>4×106 については東ソー社製を用い、1000≦Mw≦4×106 についてはプレッシャーケミカル社製を用いた。
(4)重合体中のエチレン、プロピレン、α−オレフィン含量(モル%)
エチレン、プロピレン、α−オレフィン含量の定量化は日本電子(株)製JNM GX−400型NMR測定装置を用いて、下記のように測定した。試料0.35gをヘキサクロロブタジエン2.0mlに加熱溶解させた。この溶液をグラスフィルター(G2)で濾過した後、重水素化ベンゼン0.5mlを加え、内径10mmのNMRチューブに装入して、120℃で13C−NMR測定を行った。積算回数は、8,000回以上とした。得られた13C−NMRスペクトルにより、エチレン、プロピレン、α−オレフィンの組成を定量化した。
(5)立体規則性(rrrr分率)
立体規則性は、上記同条件で13C−NMR測定にて定量化した。
シンジオタクティックペンタッド分率(rrrr分率)は、13C−NMRスペクトルにおけるPrrrr(プロピレン単位が5単位連続してシンジオタクティック結合した部位における第3単位目のメチル基に由来する吸収強度)およびPw(プロピレン単位の全メチル基に由来する吸収強度)の吸収強度から下記式(1)により求めた。
rrrr分率(%)=100×Prrrr/Pw・・・(1)
(6)融点(Tm)(℃)及び融解熱量(ΔH)(J/g)
セイコ−インスツルメンツ社製DSCを用い、測定用アルミパンに約5mgの試料をつめて、50℃/分で230℃まで昇温し、230℃で5分間保持した後、10℃/分で−100℃まで降温し、次いで、5分間保持した後、10℃/分で200℃まで昇温した。この最後の昇温時の吸熱曲線より融点(Tm)及び融解熱量(ΔH)を求めた。
(7)見掛繊度(dtex)
JIS L1013(2010年)に従って測定した。
(8)比重
JIS L1013(2010年)に従って測定した。
(9)引張強さ(cN/dtex)及び引張伸び率(%)
JIS L1013(2010年)に従い、定速伸長形引張試験機(島津製作所社製オートグラフAG−500C)を使用して、20℃、相対湿度65%、及び20℃、相対湿度95%の各条件下で、つかみ間隔100mm、100mm/分の速度により、モノフィラメントが破断するまで測定した。
また、20℃、相対湿度65%の引張強さにおける20℃、相対湿度95%の引張強さの比を、乾湿強力比(%)として算出した。
(10)見掛ヤング率(N/mm2
JIS L1013(2010年)に従い、20℃、相対湿度65%の条件下で、(9)引張強さ及び伸び率と同じ測定方法で行った。荷重−伸び率曲線を描き、この図から原点の近くで伸長変化する荷重変化に対する荷重変化の最大点(接触角の最大点)を求め、初期引張抵抗度(N/tex)を算出し、以下の式により見掛ヤング率を求めた。
Ym=1000×ρ×Tri
ここに、Ym:見掛ヤング率(N/mm2
ρ:モノフィラメントの密度(g/cm3
Tri:初期引張抵抗度(N/tex)
(11)水分率(%)
JIS L1013(2010年)に従い、温度20℃、相対湿度65%、及び20℃、相対湿度95%の各条件下で測定した。
(12)モノフィラメントの直径(μm)
JIS B7503(2011年)に準拠したダイヤルゲージを用いて測定した。
(13)摩耗強さ(テーバ形摩耗損失量(mg))
小型織機(トヨシマビジネスシステム社製)を用い、モノフィラメントを経糸、緯糸ともに選定して、糸束からレピア方式でよこ入れし、両端を押さえながら筬打ちして、幅13cmの平織物を作製した。
その平織物から、直径13cmの円形試験片として採取し、各試験片の中心に直径6mmの孔をあけ、テーバ形摩耗試験機(テーバ社製5130型)を用いて、JIS L1096(2010年)に従い、摩耗輪CS−10、荷重4.90N、摩擦回数500回の条件で測定した。
摩耗試験前後の試験片それぞれについて、質量を測定し、摩擦前の質量(mg)から摩擦後の質量(mg)を減じることにより、摩擦損失量を算出した。
(14)ヒステリシスロス率(%)
定速伸長形引張試験機(島津製作所社製オートグラフAG−500C)を使用して、20℃、相対湿度65%の条件下で、モノフィラメントを200mmのつかみ間隔に取り付け、100mm/分の速度でつかみ間隔の50%まで伸長した後、直ちに同じ速度(100mm/分)で荷重を取り除き回復させ、2分間保持した後、モノフィラメントの伸び率をヒステリシスロス率として測定した。
(15)全光線透過率(%)
中央に17mm四方の角孔を穿設した台紙に、モノフィラメントを横一列に隙間無く整列させてテープで固定し、測定試料を作製した。
その測定試料を、JIS K7361−1(1997年)に従い、ヘーズメーター(日本電色工業社製NDH4000)にセットして、全光線透過率を測定した。
実施例及び比較例で用いた重合体を以下に示す。
(A)プロピレン系重合体(A−1)
充分に窒素置換した内容量500mlのガラス製オートクレーブにトルエン250mlを装入し、プロピレンを150リットル/時間の量で流通させ、25℃で20分間保持させておいた。一方、充分に窒素置換した内容量30mlの枝付きフラスコにマグネチックスターラーを入れ、これにメチルアルミノキサンのトルエン溶液(Al=1.53mol/l)を5.00mmol、次いでジベンジルメチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジ−tert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液5.0μmolを加え、20分間攪拌した。この溶液を、プロピレンを流通させておいたトルエン入りガラス製オートクレーブに加え、重合を開始した。プロピレンガスを150リットル/時間の量で連続的に供給し、常圧下、25℃で45分間重合を行った後、少量のメタノールを添加し重合を停止した。ポリマー溶液を大過剰のメタノールに加え、重合体を析出させ、80℃で12時間、減圧乾燥を行った結果、重合体2.38gが得られた。重合活性は0.63kg-PP/mmol-Zr・hrであり、得られたプロピレン単独重合体(A−1)の極限粘度[η]は1.9dl/g、Tm=158℃(Tm1=152℃、Tm2=158℃)であり、ペンタッド分率(rrrr分率)は93.5%であり、融解熱量(△HC)は57J/gであり、Mw/Mn=2.0であった。MFR(ASTM D1238、230℃、2.16kg荷重)は6.0g/10分であった。
(B)プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体(B−1)
充分に窒素置換した2000mlの重合装置に、833mlの乾燥ヘキサン、1−ブテン120gとトリイソブチルアルミニウム(1.0mmol)を常温で仕込んだ後、重合装置内温を60℃に昇温し、プロピレンで系内の圧力を0.33MPaになるように加圧した後に、エチレンで、系内圧力を0.63MPaに調整した。次いで、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド0.002mmolとアルミニウム換算で0.6mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)を接触させたトルエン溶液を重合器内に添加し、内温60℃、系内圧力を0.63MPaにエチレンで保ちながら20分間重合し、20mlのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、2Lのメタノール中で重合溶液から重合体を析出し、真空下130℃、12時間乾燥した。得られたプロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体(B−1)は97gであり、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]=2.3(dl/g)であった。MFR(ASTM D1238、230℃、2.16kg荷重)は1.3g/10分であった。すなわち、式(1)(条件(b))の左辺の値は、1.50×(1.3)(-0.20)=1.42、右辺の値は2.65×(1.3)(-0.20)=2.51であり、式(1)を満たしていることがわかる。DSCより得られたガラス転移点は−23.8℃であり、融解熱量(ΔHB)は1J/g以下であった。
プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体(B−1)の組成はプロピレンから導かれる構成単位が62モル%、エチレンから導かれる構成単位が10モル%、1−ブテンから導かれる構成単位が28モル%であった。
(C)アイソタクティックポリプロピレン(C−1)
ASTM D1238に準拠して、230℃、2.16kg荷重で測定したMFR:7g/10分、融点:162℃のアイソタクティックポリプロピレン(株式会社プライムポリマー社製、商品名プライムポリプロ(登録商標)F107)を用いた。
(C)プロピレン・エチレン共重合体(C−2)
ASTM D1238に準拠して、230℃、2.16kg荷重で測定したMFR:8g/10分、融点:85℃の実質的にアイソタクティック構造を有するプロピレン・エチレン共重合体(ダウケミカル社製、商品名VERSIFYTM3200)を用いた。
実施例及び比較例における紡糸条件を以下に示す。
<モノフィラメント紡糸装置、及び紡糸条件>
口径30mm単軸押出機(ユニプラス機械社製)
紡糸ノズル ;穴直径1.8mm×3ホール
押出設定温度 ;(実施例;280〜290℃、比較例1;240〜250℃、比較例2;180〜200℃)
スクリュー回転数 ;16rpm
ギヤポンプ回転数 ;6.0〜9.5rpm(2.2cc/min)
ギヤポンプ回転数により吐出量を決定
冷却槽温度 ;10℃(チラー水循環)
・温水槽温度 ;20℃
・延伸倍率 ;通糸されるロール速度の差異により設定
・熱固定 ;第3ロール速度〜第4ロール速度の差異により決定(=リラックス率、%)
・熱固定温度 ;第3ロール〜第4ロール間を通糸する熱風オーブンによる(℃)
プロピレン系重合体組成物を、ギヤポンプが装着された押出機に供し、好適なシリンダー設定温度(実施例1〜7:280〜290℃、比較例1:240〜250℃、比較例2:180〜200℃)にて溶融させ、ノズル孔の直径1.8mmにて3本のストランドを吐出し、ノズル直下に設けた10℃設定の冷却水槽へ導き、冷却固化したストランドを得た。得られたストランドを、第1引取ロールにて5m/分の速度で引き取り、続いて、第2引取ロール〜第4引取ロールまでを35〜60m/分の速度で導いた。第2引取ロール〜第4引取ロールの速度比により、第1段延伸倍率(倍率=第2引取ロール速度/第1引取ロール速度)、第2段延伸倍率(倍率=第3引取ロール速度/第2引取ロール速度)、最終延伸倍率(倍率=第4引取ロール速度/第1引取ロール速度)を設定した。延伸した糸は、高温化での物性変化(例えば、収縮性)を抑制する目的に、熱固定処理を実施することができる。具体的には、第4引取ロールへ導く前に配置したオーブンにて、糸の表面が所望の温度となるように加熱し、更に、緩和操作(リラックス率={1−(第4引取ロール速度/第3引取ロール速度)}×100)を設けた。このように得られたモノフィラメントは、巻取機により紙管で巻き取った。
[実施例1〜4]
(A)プロピレン系重合体として前記(A−1)を15質量部、(B)プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体として前記(B−1)を85質量部それぞれ秤量し、溶融紡糸装置(ユニプラス機械社製)を用い、上記及び表1に記載の条件で紡糸、及び延伸してモノフィラメントを得た。このモノフィラメントについて、物性を評価した結果を表1に示す。
[実施例5]
(A)プロピレン系重合体として前記(A−1)を15質量部、(B)プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体として前記(B−1)を85質量部、及び滑剤としてエルカ酸アミド(日本精化社製)を0.2質量部とを、それぞれ秤量して配合し、上記及び表1に記載の条件で紡糸、及び延伸してモノフィラメントを得た。このモノフィラメントについて、物性を評価した結果を表1に示す。
[実施例6]
(A)プロピレン系重合体として前記(A−1)を12質量部、(B)プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体として前記(B−1)を68質量部、(C)アイソタクティックプロピレン系重合体として前記(C−1)を20質量部、及び滑剤としてエルカ酸アミドを0.2質量部とを、それぞれ秤量して配合し、上記及び表1に記載の条件で紡糸、及び延伸してモノフィラメントを得た。このモノフィラメントについて、物性を評価した結果を表1に示す。
[実施例7]
実施例6において、(C)アイソタクティックプロピレン系重合体として前記(C−1)に代えて、前記(C−2)を用いた以外は実施例6と同様にして、モノフィラメントを得た。このモノフィラメントについて、物性を評価した結果を表1に示す。
[比較例1]
(C)アイソタクティックプロピレン系重合体として前記(C−1)を100質量部、及び滑剤としてエルカ酸アミドを0.2質量部とを、それぞれ秤量して配合し、上記及び表1に記載の条件で紡糸、及び延伸してモノフィラメントを得た。このモノフィラメントについて、物性を評価した結果を表1に示す。
[比較例2]
(C)アイソタクティックプロピレン系重合体として前記(C−2)を100質量部、及び滑剤としてエルカ酸アミドを0.2質量部とを、それぞれ秤量して配合し、上記及び表1に記載の条件で紡糸、及び延伸してモノフィラメントを得た。このモノフィラメントについて、物性を評価した結果を表1に示す。
表1に示す通り、本願発明のオレフィン系弾性モノフィラメントは、引張伸び率が高く、ヒステリシスロスが小さいので、弾性に優れることがわかる。更に、低吸水性、低比重、耐摩耗性、透明性に優れることがわかる。
Figure 2017008432

Claims (4)

  1. 下記プロピレン系重合体(A)を5〜25質量部、下記プロピレン系共重合体(B)を35〜95質量部、および下記(C−1)及び(C−2)から選ばれる少なくとも1種の重合体(C)を0〜40質量部(ただし、(A)、(B)および(C)の合計を100質量部とする)を含むプロピレン系重合体組成物を溶融紡糸し、さらに延伸して得られるモノフィラメントであり、
    該モノフィラメントのJIS L1013に準拠して測定される引張伸び率が80〜300%の範囲であり、
    該モノフィラメントの直径が50〜2000μmである、ポリオレフィン弾性モノフィラメント。
    (A)プロピレン系重合体:
    13C−NMRにより測定されるシンジオタクティックペンタッド分率(rrrr分率)が85%以上であり、示差走査熱量計(DSC)により測定される融点(Tm)が145℃以上であり、プロピレンから導かれる構成単位を90〜100モル%(ただし、該プロピレン系重合体(A)中の構成単位の全量を100モル%とする。)で含有する。
    (B)プロピレン系共重合体:
    プロピレンから導かれる構成単位を40モル%以上90モル%未満、炭素数2〜20のα−オレフィン(ただしプロピレンを除く。)から導かれる構成単位を10モル%を超えて60モル%以下で含有し(ただし、プロピレンから導かれる構成単位および炭素数2〜20のα−オレフィン(但し、プロピレンを除く)から導かれる構成単位の合計を100モル%とする)、以下の要件(b)を満たす。
    要件(b)135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η](dl/g)と、ASTM D1238に準拠して、230℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR)が下記の関係式を満たす。
    1.50×MFR(-0.20)≦[η]≦2.65×MFR(-0.20)
    (C−1)アイソタクティックポリプロピレン。
    (C−2)示差走査熱量計(DSC)により測定される融点(Tm)が110℃未満か、または融点(Tm)が観測されず、プロピレン系共重合体(B)と異なる、アイソタクティックプロピレン・エチレン共重合体。
  2. 前記プロピレン系重合体組成物が、該組成物100質量部に対して、滑剤を0.1〜1.0質量部含む、請求項1に記載のポリオレフィン弾性モノフィラメント。
  3. 前記モノフィラメントのJIS L1013に準拠して測定される比重が0.91以下である、請求項1または2に記載のポリオレフィン弾性モノフィラメント。
  4. 前記モノフィラメントのJIS K7361−1に準拠して測定される全光線透過率が85%以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリオレフィン弾性モノフィラメント。
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