JP2017008096A - アミラーゼ阻害物質の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 小麦由来のアミラーゼ阻害物質を、経済的かつ高効率に調製可能な製造方法を提供する。
【解決手段】 (A)アミラーゼ阻害物質を含有する複合体を形成させるために、小麦アルブミンおよび遊離もしくは塩形態の縮合リン酸を水性溶媒中で混合する工程;(B)工程(A)で得られた混合液から該複合体を分離する工程;および(C)該複合体からアミラーゼ阻害物質を回収するために、工程(B)で分離した複合体およびアミラーゼ阻害物質遊離剤を水性溶媒中で混合する工程を含む、小麦アルブミンからアミラーゼ阻害物質を製造する方法であって、但し、該縮合リン酸は実質的にピロリン酸およびトリポリリン酸を含ない、製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】 (A)アミラーゼ阻害物質を含有する複合体を形成させるために、小麦アルブミンおよび遊離もしくは塩形態の縮合リン酸を水性溶媒中で混合する工程;(B)工程(A)で得られた混合液から該複合体を分離する工程;および(C)該複合体からアミラーゼ阻害物質を回収するために、工程(B)で分離した複合体およびアミラーゼ阻害物質遊離剤を水性溶媒中で混合する工程を含む、小麦アルブミンからアミラーゼ阻害物質を製造する方法であって、但し、該縮合リン酸は実質的にピロリン酸およびトリポリリン酸を含ない、製造方法。
【選択図】 なし
Description
本発明は、小麦アルブミンからアミラーゼ阻害物質を経済的に及び/又は高効率に製造する方法およびアミラーゼ阻害物質を回収するための試薬に関する。
近年、食生活および生活習慣の変化により、人々の血液は高血糖状態が続きやすい傾向にある。高血糖状態の持続は、インスリンを分泌する膵臓および血管内皮細胞のストレスとなることから、境界型もしくはII型糖尿病、肥満症および動脈硬化など疾患を惹起する危険因子と考えられている。かかる疾患の発症リスクの低下もしくは予防、疾患の進行抑制、および健康維持の観点から、食後の血糖コントロールの重要性が認識されている。
食後の急激な血糖の上昇やインスリンの分泌を抑制できる物質が種々開発されており、そのうちの1つにアミラーゼ阻害物質がある。アミラーゼ阻害物質は、デンプンを糖に分解する酵素のアミラーゼ活性を阻害する。アミラーゼ阻害物質の経口摂取は、糖質(デンプン)の消化吸収を穏やかにし、食後の血糖値上昇を抑制し得ることが知られている。
小麦の胚乳部はアルブミン(水溶性タンパク質)を含み、それらにアミラーゼ阻害物質が含まれていることが知られている。かかるアミラーゼ阻害物質は、小麦胚乳の状態またはこれを粉砕した小麦粉の状態で摂取しても効果的な作用を示さないため、小麦由来のアミラーゼ阻害物質は抽出することによって利用されている(特許文献1〜5)。
当該分野には、依然として、小麦、小麦粉または小麦グルテンからアミラーゼ阻害物質を経済的に及び/又は高効率に調製できる製造方法に関する要求が存在する。
本発明は、以下の方法、製造方法、血糖値上昇抑制剤、及び前記剤を含む食品を提供する。
[1] 小麦アルブミンからのアミラーゼ阻害物質の製造方法であって、(A)アミラーゼ阻害物質を含有する複合体を形成させるために、小麦アルブミンおよび遊離もしくは塩形態の縮合リン酸を水性溶媒中で混合する工程;(B)工程(A)で得られた混合液から該複合体を分離する工程;および(C)該複合体からアミラーゼ阻害物質を回収するために、工程(B)で分離した複合体およびアミラーゼ阻害物質遊離剤を水性溶媒中で混合する工程を含み、但し、該縮合リン酸は実質的にピロリン酸およびトリポリリン酸を含ない、製造方法;
[2] [1]記載の製造方法により製造されたアミラーゼ阻害物質を含む、血糖値上昇抑制剤;
[3] [2]記載の血糖値上昇抑制剤を添加した食品であって、該食品の摂取後1時間の血糖値が、該血糖値上昇抑制剤を添加していないことを除いて実質的に同じ食品の摂取後1時間の血糖値と比べ、その血糖値上昇が抑制される、食品;
[4] 小麦アルブミンからアミラーゼ阻害物質を回収するための、縮合リン酸を含む試薬であって、但し、実質的にピロリン酸およびトリポリリン酸を含まない試薬;
[5] 縮合リン酸を含む試薬およびアミラーゼ阻害物質を含む小麦アルブミンを水性溶媒中で混合する工程を含む、該アミラーゼ阻害物質および該縮合リン酸を含有する複合体を形成させる方法であって、該試薬は実質的にピロリン酸およびトリポリリン酸を含まない、方法。
[1] 小麦アルブミンからのアミラーゼ阻害物質の製造方法であって、(A)アミラーゼ阻害物質を含有する複合体を形成させるために、小麦アルブミンおよび遊離もしくは塩形態の縮合リン酸を水性溶媒中で混合する工程;(B)工程(A)で得られた混合液から該複合体を分離する工程;および(C)該複合体からアミラーゼ阻害物質を回収するために、工程(B)で分離した複合体およびアミラーゼ阻害物質遊離剤を水性溶媒中で混合する工程を含み、但し、該縮合リン酸は実質的にピロリン酸およびトリポリリン酸を含ない、製造方法;
[2] [1]記載の製造方法により製造されたアミラーゼ阻害物質を含む、血糖値上昇抑制剤;
[3] [2]記載の血糖値上昇抑制剤を添加した食品であって、該食品の摂取後1時間の血糖値が、該血糖値上昇抑制剤を添加していないことを除いて実質的に同じ食品の摂取後1時間の血糖値と比べ、その血糖値上昇が抑制される、食品;
[4] 小麦アルブミンからアミラーゼ阻害物質を回収するための、縮合リン酸を含む試薬であって、但し、実質的にピロリン酸およびトリポリリン酸を含まない試薬;
[5] 縮合リン酸を含む試薬およびアミラーゼ阻害物質を含む小麦アルブミンを水性溶媒中で混合する工程を含む、該アミラーゼ阻害物質および該縮合リン酸を含有する複合体を形成させる方法であって、該試薬は実質的にピロリン酸およびトリポリリン酸を含まない、方法。
本明細書において「小麦アルブミン」は、小麦、小麦粉または小麦グルテン中に含まれるアルブミンファミリーに属する水可溶性タンパク質を意味する。本発明の1つの実施形態において、小麦アルブミンは、小麦、小麦粉または小麦グルテンから、例えば、特開平4−182500号公報、特開平5−301898号公報、および特開平7−41499号公報に記載の方法に従って、小麦アルブミンを含む原料液の形態で調製されてよい。小麦アルブミンがアミラーゼ阻害物質を含むことは既知であり、したがって、本発明において小麦アルブミンは、アミラーゼ阻害物質を含有する小麦アルブミンを意味する。本明細書中、小麦アルブミンを含む原料液は、アミラーゼ阻害物質を含有する小麦アルブミンの原料液と同意義である。また、小麦アルブミンを含む原料液は、小麦アルブミンを含む水性溶媒と同意義である。1つの実施形態において、該水性溶媒は、限定するものではないが、水または含水アルコールであってよく、好ましくは水である。
本明細書において「アミラーゼ阻害物質」は、小麦アルブミンから得られたアミラーゼ阻害活性を示す物質を意味する。そのようなアミラーゼ阻害物質としては、電気泳動の移動度が0.19のアルブミン(以下、「0.19AI」という。AI:アミラーゼ阻害物質(Amylase Inhibitor)。)、移動度が0.26のアルブミン(0.26aアルブミンまたは0.26bアルブミンと称されることもある。)、移動度が0.28のアルブミンまたは移動度が0.53のアルブミンが知られている。小麦アルブミンのなかでも、高いα−アミラーゼ阻害活性を有する点から、0.19AIがアミラーゼ阻害物質として好ましい。本発明において、0.19AIを含有するアミラーゼ阻害物質が好ましく、0.19AI含有量の高いアミラーゼ阻害物質がさらに好ましい。ここで、本明細書において、「電気泳動の移動度」は試料をDavisの方法(Annals of the NewYork Academy of Science,121,404−427,1964)に従って、ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけた際の移動度をさす。
本発明において工程(A)は、小麦アルブミンおよび遊離もしくは塩形態の縮合リン酸を水性溶媒中で混合する工程を含む。工程(A)において、小麦アルブミンに含まれるアミラーゼ阻害物質および該縮合リン酸が複合体を形成し得る。工程(A)における水性溶媒は、水または含水アルコールであってよく、好ましくは水である。1つの実施形態において、工程(A)は、水性溶媒中の小麦アルブミンに遊離もしくは塩形態の縮合リン酸を加えて混合してもよい。この場合、該水性溶媒は、小麦、小麦粉または小麦グルテンから小麦アルブミンを調製する際に用いた溶媒であってよく、または、小麦アルブミンを分散または溶解させるために用いた溶媒であってもよい。該水性溶媒が小麦アルブミン調製物に由来する場合、工程(A)は、小麦アルブミンを含む原料液および遊離もしくは塩形態の縮合リン酸を該溶媒中で混合する工程であってよく、または小麦アルブミンを含む原料液および水性溶媒中の縮合リン酸を混合する工程であってもよい。他の実施形態において、工程(A)は、水性溶媒中の縮合リン酸に小麦アルブミンを加えて混合してもよい。さらなる他の実施形態において、工程(A)は、小麦アルブミンおよび遊離もしくは塩形態の縮合リン酸を合し、それらを水性媒体に加えてもよい。本発明の工程(A)において、アミラーゼ阻害物質および縮合リン酸を含有する複合体は、好ましくは、使用する水性溶媒に対して難溶性または不溶性である。この場合、工程(A)において、アミラーゼ阻害物質および縮合リン酸を含有する難溶性複合体または不溶性複合体が形成される。
工程(A)で用いられる遊離もしくは塩形態の縮合リン酸の濃度は、縮合リン酸の種類、小麦アルブミン中もしくは小麦アルブミンを含む原料液中のアミラーゼ阻害物質の含有量もしくは濃度、混合する際の溶液の温度、pH等に応じて調整される。小麦アルブミンを含む原料液に縮合リン酸を添加して混合した混合液中の縮合リン酸の濃度は、限定するものではないが、アミラーゼ阻害物質および縮合リン酸を含有する複合体の効率的な形成の観点から、溶液の重量あたり0.0005重量%〜0.1重量%であり、好ましくは0.002重量%〜0.08重量%であり、より好ましくは0.005重量%〜0.07重量%であり、さらにより好ましくは0.01重量%〜0.07重量%である。
工程(A)で得られる混合液の温度は、一般に0〜95℃であるが、これに限定されない。操作性の観点から、1〜50℃が好ましく、1〜30℃がより好ましく、常温がさらに好ましい。混合液の温度が95℃を超えると、アミラーゼ阻害物質が変性または失活する可能性がある。
工程(A)における複合体の形成時の混合液のpHは、特に限定されないが、2〜8の範囲であり、効率的な複合体形成の観点から2〜6の範囲が好ましく、3〜4の範囲がより好ましい。
工程(B)は、工程(A)で得られた混合液から複合体を分離する工程を含む。該複合体の分離は、例えばデカンター、ろ過、遠心分離、自然沈降、およびこれらの組合せにより実施できるが、これらに限定されない。該複合体が固形物の場合、固液分離により混合液(液層)から分離して回収できる。
工程(C)は、工程(B)で分離した複合体およびアミラーゼ阻害物質遊離剤を水性溶媒中で混合する工程を含む。工程(C)により、工程(B)で分離した複合体からアミラーゼ阻害物質が遊離し、混合溶液中に遊離したアミラーゼ阻害物質を得ることができる。工程(C)における水性溶媒は、特に限定されないが、水または含水アルコールが好ましく、より好ましくは水である。1つの実施形態において、工程(C)は、工程(B)で分離した複合体およびアミラーゼ阻害物質遊離剤を合し、それらを水性溶媒に加える工程を含んでもよい。他の実施形態において、工程(C)は、工程(B)で分離した複合体を水性溶媒に懸濁することを含み、該懸濁液にアミラーゼ阻害物質遊離剤を加える工程を含んでもよい。さらなる他の実施形態において、工程(C)は、アミラーゼ阻害物質遊離剤を水性溶媒に溶解することを含み、該溶液に工程(B)で分離した複合体を加える工程を含んでもよい。アミラーゼ阻害物質遊離剤は、粉末の形態または溶液の形態のいずれであってもよい。
工程(C)において、アミラーゼ阻害物質を遊離した縮合リン酸は、アミラーゼ阻害物質遊離剤と縮合リン酸塩を形成し得る。該縮合リン酸塩は、使用する水性溶媒に対して不溶性または難溶性であり得る。この場合、工程(C)において、縮合リン酸およびアミラーゼ阻害物質遊離剤を含有する不溶性または難溶性の縮合リン酸塩が形成される。遊離したアミラーゼ阻害物質を含む溶液は、形成され得る不溶性または難溶性の縮合リン酸塩から分離して回収できる。不溶性または難溶性の縮合リン酸塩の分離は、例えばデカンター、ろ過、遠心分離、自然沈降、これらの組合せ等により実施できるが、これらに限定されない。工程(C)で形成され得る不溶性または難溶性の縮合リン酸塩が固形物の場合、該難溶性の縮合リン酸塩は、固液分離によって遊離したアミラーゼ阻害物質を含む溶液(液層)から分離できる。したがって、工程(C)は、所望により、形成され得る不溶性または難溶性の縮合リン酸塩を分離する工程(c1)を含んでもよい。
工程(C)におけるアミラーゼ阻害物質遊離剤の濃度は、工程(B)で分離した複合体から、アミラーゼ阻害物質を遊離させる濃度であれば、特に限定されない。工程(C)におけるアミラーゼ阻害物質遊離剤の濃度は、アミラーゼ阻害物質遊離剤の種類、工程(A)で用いた縮合リン酸の種類、水性溶媒中の工程(B)で分離した複合体の濃度、pH、温度などに応じて調整される。工程(C)におけるアミラーゼ阻害物質遊離剤の濃度は、限定するものではないが、溶液重量あたり0.01重量%〜5重量%、0.05重量%〜2重量%が好ましく、0.1重量%〜1重量%がより好ましい。
工程(C)で得られる混合液の温度は、特に限定されないが、0〜95℃であってよく、操作性の観点から1〜30℃がより好ましい。混合液の温度が95℃を超えると、アミラーゼ阻害物質が変性または失活する可能性がある。
工程(C)において、アミラーゼ阻害物質が遊離する際の混合液のpHは、特に限定されないが、好ましくは、工程(B)で分離した複合体からのアミラーゼ阻害物質が効率的に遊離されるpHである。
1つの実施形態において、本発明に係るアミラーゼ阻害物質の製造方法は、工程(C)(工程(c1)を含んでいてもよい)により得られた遊離したアミラーゼ阻害物質を含む溶液からアミラーゼ阻害物質遊離剤を除去する工程(d1)をさらに含んでもよい。工程(d1)は、透析、限外ろ過、ゲルろ過、イオン交換、またはこれらの組合せ等により実施できるが、これらに限定されない。使用する装置メンテナンスの容易さなどの観点から、溶解したアミラーゼ阻害物質の除去には限外ろ過が好ましい。
1つの実施形態において、工程(C)(工程(c1)を含んでいてもよい)または工程(d1)から得られた遊離したアミラーゼ阻害物質を含む溶液から粉末形態のアミラーゼ阻害物質を得る工程(d2)をさらに含んでもよい。工程(d2)は、凍結乾燥、減圧乾燥、噴霧乾燥、ボール乾燥などにより実施できるが、これらに限定されない。アミラーゼ阻害物質の変性防止の観点から、凍結乾燥または減圧乾燥が好ましい。
1つの実施形態において、工程(C)の後、工程(c1)を含む工程(C)もしくは(d1)の前後、あるいは工程(d2)の前のいずれかの時点で、所望により、不純物および菌などを除去するための処理を実施してもよい。不純物および菌などを除去するための処理は、例えば精密ろ過膜、多孔質高分子膜、セラミックフィルターなどを用いて実施できるが、これらに限定されない。
1つの実施形態において、小麦アルブミンまたは小麦アルブミンを含む原料液は、(a1)小麦、小麦粉または小麦グルテンに、水、希酸、希アルカリ、含水アルコールまたはそれらの組合せを加えて抽出する工程を含む方法により調製されたものであってよい。他の実施形態において、小麦アルブミンまたは小麦アルブミンを含む原料液は、(a2)工程(a1)により得られた小麦アルブミンまたは小麦アルブミンを含む原料液を酸処理および/または熱処理して、夾雑タンパク質を変性させる工程、および変性した夾雑タンパク質を除去する工程を含む方法により調製されたものであってよい。さらなる他の実施形態において、小麦アルブミンまたは小麦アルブミンを含む原料液は、(a3)工程(a1)または工程(a2)により得られた小麦アルブミンまたは小麦アルブミンを含む原料液に多糖類を加え、多糖類を含有する難溶性複合体を形成させる工程、および形成した多糖類を含む難溶性複合体からアミラーゼ阻害物質を回収する工程を含む方法により調製されたものであってよい。
工程(a1)の1つの実施形態は、小麦、小麦粉または小麦グルテンに水を加えて混錬して生地を作製し、さらに水を用いて作製した生地から可溶性成分を抽出することを含む方法であってよい。工程(a2)の1つの実施形態は、工程(a1)により得られた小麦アルブミンを含む原料液を、酸処理(例えばpH2〜4に調整する)した後に中和して(例えばpH5〜7に調整する)夾雑物質を変性させ、次いで変性した夾雑タンパク質を遠心分離により分離し、その上清を、小麦アルブミンを含む原料液として得る方法であってよい。
本明細書において「縮合リン酸」は、2個以上のPO4四面体が酸素原子を共有し、重合して生成した重合物を意味する。本発明において縮合リン酸は、ポリリン酸、メタリン酸またはウルトラリン酸、もしくはそれらの混合物である。本発明において縮合リン酸は、小麦アルブミンまたは小麦アルブミンを含む原料液に含有されるアミラーゼ阻害物質と難溶性の複合体を形成する。本発明における縮合リン酸は、常法に従って調製されたものであってよく、または当該分野において市販されるものであってもよい。縮合リン酸の種類および性質は、製造時に用いるリン酸塩の塩類、モル比、加熱温度、時間および加熱雰囲気によって異なる。
遊離形態の縮合リン酸は、縮合リン酸の水酸基の水素が水素であるか電離したイオンの形態を意味し、塩形態の縮合リン酸は、該水酸基の水素が金属と置換した分子構造を有する化合物を意味する。塩形態の縮合リン酸は水可溶性であるものが好ましく、例えばアンモニウム、リチウム、ナトリウムまたはカリウムの縮合リン酸塩であり、好ましくはナトリウムまたはカリウムの縮合リン酸塩であり、より好ましくはナトリウムの縮合リン酸塩である。本発明において、遊離もしくは塩形態の縮合リン酸は、限定するものではないが、固体または液体の形態で用いられる。
本発明において縮合リン酸は、実質的にピロリン酸およびトリポリリン酸を含まない。ここで、「実質的にピロリン酸およびトリポリリン酸を含まない」は、本発明の技術的思想および保護対象範囲を迂回する意図または目的で、上記した除外成分である「ピロリン酸およびトリポリリン酸」を縮合リン酸として本発明に影響を与えない程度の量を添加したもの又は添加する行為を、本発明の保護対象範囲から除外するものでないことを意味する。本発明において、縮合リン酸は一種単独で用いてもよく、2種以上の混合物を用いてもよい。
本明細書において「ポリリン酸」はオルトリン酸の脱水縮合によって生じる直鎖状分子のリン酸を意味する。本明細書においてポリリン酸は、一般式:Ml+2PlO3l+1[式中、Mは1価の金属および/またはHであり、およびlは4以上の整数である]で表され、常法に従って調製されたものであってよく、当該分野において市販されるものであってもよい。例えば、ポリリン酸は、リン酸を加熱する方法またはリン酸に五酸化二リンを添加溶解する方法によって調製される。本発明においてポリリン酸は、種々の直鎖状リン酸の混合物であってよい。
ポリリン酸の一般式において、lは4〜1000、4〜100または4〜50である。本発明において、ポリリン酸は、ポリリン酸ナトリウムまたはポリリン酸カリウム(lは4〜200、4〜100、4〜50、4〜30または4〜10である)が好ましく、ポリリン酸ナトリウムまたはポリリン酸カリウム(lは4〜50、4〜30または4〜10である)がさらに好ましい。
本明細書において「メタリン酸」は別名ガラス状リン酸または氷状リン酸ともよばれ、縮合(ポリ)リン酸を意味する。本明細書においてメタリン酸は、一般式:(MPO3)n[式中、Mは1価の金属および/またはHであり、およびnは3以上の整数である]で表され、環状リン酸および直鎖状のポリリン酸の混合物であってよい。本発明におけるメタリン酸は、常法に従って調製されたものであってよく、当該分野において市販されるものであってもよい。例えば、メタリン酸ナトリウムは、リン酸2水素ナトリウムを600℃以上で加熱し、溶融、固化することで製造される。メタリン酸の重合度は、加熱温度、加熱時間により適宜調整される。M2O/P2O5含量(理論値)が同じメタリン酸において、低重合のメタリン酸の場合、M2O/P2O5比率(実測値)は大きくなり、高重合度のメタリン酸の場合、M2O/P2O5比率(実測値)は小さくなる。本発明においてメタリン酸は、種々の環状リン酸および直鎖状のポリリン酸の混合物であってよい。
メタリン酸の一般式において、nは2〜1000、5〜100または5〜50である。本発明において、メタリン酸は、メタリン酸ナトリウムまたはメタリン酸カリウム(nは5〜200、5〜100、5〜30、10〜30または10〜100である)が好ましく、メタリン酸ナトリウムまたはメタリン酸カリウム(nは5〜50、10〜30または10〜25である)がさらに好ましく、よりさらに好ましくは、低重合度のメタリン酸ナトリウムである。
本明細書において「ウルトラリン酸」は分子中に分枝PO4基を有し、架橋構造または直鎖状リン酸と環状リン酸が相互に結合した構造を有する分子を意味する。本明細書においてウルトラリン酸は、一般式:xM2O・yP2O5[式中、Mは1価の金属および/またはHであり、およびxまたはyは整数である]において、R値が0<R<1(理論値)の範囲にあり、常法に従って調製されたものであっても、当該分野において市販されるものであってもよい。例えば、ウルトラリン酸は、水酸化ナトリウムとリン酸とを0<Na2O/P2O5<1で混合し、400〜700℃で加熱脱水し、無定形の化合物として製造される。本発明において、ナトリウムまたはカリウム塩の形態のウルトラリン酸が好ましく、より好ましくはナトリウム塩の形態のウルトラリン酸である。
本明細書において縮合リン酸に関する「P2O5含量」(理論値)は、分子式量に占めるP2O5の割合[%]を意味する。本発明において、縮合リン酸は、P2O5含量[%]が57%超または57%超〜85%であり、好ましくは64%以上または64%〜85%であり、より好ましくは65%〜85%、さらに好ましくは65%〜80%、さらにより好ましくは66%〜78%である。本発明においてP2O5含量は、モリブデンブルー吸光光度法により測定される。
本明細書において「R(値)」(理論値)は、陽性元素(H、Naなど)の原子数とリン(P)の原子数の比(H/P、Na/Pなど)を意味し(New Food Industry Vol.11、臨時増刊号:15頁〜33頁)、通常、ポリリン酸はR値が1<R<2の範囲(理論値)にあり、メタリン酸はR値が1(理論値)であり、ウルトラリン酸はR値が0<R<1(理論値)の範囲にある。本発明において、R値はICP発光分光法によるイオン定量分析法にしたがって測定される。
本明細書においてアミラーゼ阻害物質および縮合リン酸を含有する「複合体」、「不溶性複合体」もしくは「難溶性複合体」、またはアミラーゼ阻害物質遊離剤および縮合リン酸を含有する「縮合リン酸塩」、「不溶性の縮合リン酸塩」もしくは「難溶性の縮合リン酸塩」は、水性溶媒(水、含水アルコールなど)中で複合体または塩を形成すること、あるいは該水性溶媒に対して不溶性もしくは難溶性の複合体または塩を意味する。本発明において、該不溶性もしくは難溶性複合体または該不溶性もしくは難溶性の縮合リン酸塩は、それらを含む水性溶媒から分離可能な形態であることが好ましい。1つの実施形態において、該不溶性もしくは難溶性複合体または該不溶性もしくは難溶性の縮合リン酸塩は、本発明で用いられる条件(濃度、温度、水性溶媒の種類、他の試薬の存在、pHなど)下で固形物またはゲルの状態である。1つの実施形態において、該不溶性もしくは難溶性複合体または該不溶性もしくは難溶性の縮合リン酸塩は、限定するものではないが、デカンター、ろ過、遠心分離、自然沈降、およびこれらの組合せ等により水性溶媒または溶液から分離することができる。1つの実施形態において、該不溶性もしくは難溶性複合体または該不溶性もしくは難溶性の縮合リン酸塩は固形物である。固形物である不溶性もしくは難溶性複合体または不溶性もしくは難溶性の縮合リン酸塩は、当該分野で公知の固液分離方法により容易に分離・回収できる。
本明細書において「アミラーゼ阻害物質遊離剤」は、アミラーゼ阻害物質および縮合リン酸を含有する複合体から該アミラーゼ阻害物質を水性溶媒中に遊離させる試薬を意味する。1つの実施形態において、アミラーゼ阻害物質遊離剤は、遊離もしくは塩形態のマグネシウム、カルシウム、バリウムまたはそれらの混合物であってよい。アミラーゼ阻害物質遊離剤は、効率の観点または経済的観点から、マグネシウム、カルシウムまたはそれらの組合せが好ましく、カルシウムがより好ましい。アミラーゼ阻害物質遊離剤は、工程(A)で用いられる縮合リン酸の種類によって選択され得る。塩形態のアミラーゼ阻害物質遊離剤は、特に限定されないが、その塩化物、臭化物、酸化物、硝酸塩、または酢酸塩などであってよく、好ましくは塩化物である。
本発明の1つの実施形態におけるアミラーゼ阻害物質遊離剤は、工程(A)で用いられた縮合リン酸と難溶性の縮合リン酸塩を形成し得る。1つの実施形態において、アミラーゼ阻害物質遊離剤は、工程(A)で用いられた縮合リン酸と難溶性の塩を形成する物質が好ましい。限定するものではないが、そのようなアミラーゼ阻害物質遊離剤は、マグネシウム、カルシウムまたはその混合物が好ましく、より好ましくはカルシウムである。
本発明の他の態様は、小麦アルブミンからアミラーゼ阻害物質を回収するための試薬を提供し、該試薬は縮合リン酸を含み、但し、実質的にピロリン酸およびトリポリリン酸を含まない。1つの実施形態において、該試薬は本明細書に記載の製造方法に使用するための試薬であり、より具体的には、小麦アルブミンを含む原料液と混合され、または小麦アルブミンと水性溶媒中で混合され、該混合液においてアミラーゼ阻害物質および縮合リン酸を含有する複合体を形成させるための試薬である。本発明の更なる他の態様は、アミラーゼ阻害物質を含有する複合体を形成させるための、上記試薬の使用を提供する。本発明の1つの実施形態において、前記使用は本明細書に記載の製造方法における使用であり、より具体的には、前記使用は工程(A)において水性溶媒中で小麦アルブミンと混合することを含む。本発明の更なる態様は、縮合リン酸を含む試薬およびアミラーゼ阻害物質を含む小麦アルブミンを水性溶媒中で混合する工程を含む、該アミラーゼ阻害物質および該縮合リン酸を含有する複合体を形成させる方法であって、該試薬は実質的にピロリン酸およびトリポリリン酸を含まない、方法を提供する。
本発明の別の態様は、本発明に係る製造方法により製造されたアミラーゼ阻害物質を含む血糖値上昇抑制剤を提供する。1つの実施形態において、血糖値上昇抑制剤は、実質的に該アミラーゼ阻害物質からなる。別の実施形態において、血糖値上昇抑制剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の添加剤、例えばミネラル(カルシウム、マグネシウム、ヨウ素、リン、カリウムおよびナトリウムなど);ビタミン(ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンCおよびビタミンEなど);甘味料(フルクトース、グルコース、ガラクトースおよびキシロースなど);酸味料(クエン酸、リンゴ酸および酒石酸など);香料;着色料;保存料等を含んでいてもよい。1つの実施形態において、血糖値上昇抑制剤の剤型は、液剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、錠剤、丸剤などであってよい。血糖値上昇抑制剤は、実質的に、本発明にかかる製造方法により製造されたアミラーゼ阻害物質を、該抑制剤の重量あたり5重量%〜50重量%、好ましくは10重量%〜40重量%、より好ましくは20重量%〜30重量%含む。
本明細書において「血糖」は血液中のグルコースをいう。血糖は、主としてインスリンの作用により狭い濃度範囲に調節されており(ホメオスタシス)、血液中のグルコース濃度である血糖値は食後上昇するが、通常、数時間後には元の値、即ち食事の前の血糖値に戻る。
本明細書において「血糖値上昇抑制剤」は、本発明の製造方法により調製されたアミラーゼ阻害物質を含む試薬を意味する。1つの実施形態において、血糖値上昇抑制剤は、試薬重量あたり10重量%〜50重量%、好ましくは20重量%〜40重量%、より好ましくは27重量%〜31重量%の0.19AIを含む。
本発明のさらなる態様は、本発明に係る製造方法により製造されたアミラーゼ阻害物質を用いて、血糖値上昇抑制剤を製造する方法を提供する。
本発明の更なる他の態様は、本発明に係る血糖値上昇抑制剤を添加した食品を提供する。1つの実施形態に係る食品は、該食品の摂取後の特定時点の血糖値が、該血糖値上昇抑制剤を添加していないことを除いて実質的に同じ食品の摂取後の特定時点の血糖値と比べ、その血糖値上昇がt検定において有意に(例えば、P<0.05、好ましくはP<0.01、より好ましくはP<0.001)少なくとも10%以上、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上抑制されることを特徴とする。食品摂取後の特定時点は、食後1時間、1.5時間、2時間、2.5時間または3時間であってよく、これらの限定されるものではない。特定の実施形態において、食品摂取後の特定時点は食後1時間である。
本発明に係る血糖値上昇抑制剤が添加された食品は、限定するものではないが、澱粉質を多く含むパン、クッキー等の炭水化物系食品であってよい。本発明に係る血糖値上昇抑制剤は、お茶類、スープ類(例えば粉末形態のスープ)、ふりかけ又はバター、ジャム等のスプレッド類に添加して使用してもよい。本発明に係る血糖値上昇抑制剤の食品への配合量は、該食品を摂取する対象または該食品を摂取すると想定される対象の年齢、健康状態、疾患の症状、食品の種類またはその摂取量等に応じて適宜調整することができる。例えば食品に添加して摂取する場合は、一回の食事当たりの該血糖値上昇抑制剤中に含まれるアミラーゼ阻害物質の摂取量は、限定するものではないが、約0.1〜約20g、好ましくは約0.4〜約8gの範囲であってよい。
以下に本発明の好ましい実施形態として実施例を記載するが、それらは添付する特許請求の範囲に記載の発明をいかようにも限定するものではない。本明細書に記載の具体的な実施形態、材料、組成物および方法から容易に認識される均等物、または変更、改変もしくは変形が本発明の範囲内にあることは理解されるであろう。
<小麦アルブミンを含む原料液の調製>
(調製例1)
小麦粉25gに水12.5mlを加え、5分間混錬して生地を調製した。生地から可溶性成分を225mlの水中に抽出した。抽出液からデンプンやグルテンなどの難溶性成分を除去するために、抽出液を遠心分離した(9,000×g、10分)。その上清を、塩酸を用いてpH3に調整した。10分後、水酸化ナトリウムを用いて中和し、pHを5.5に調整した。この中和処理により形成した不溶物を遠心分離(9,000×g、10分)により除去し、小麦アルブミンを含む原料液を得た。
(調製例1)
小麦粉25gに水12.5mlを加え、5分間混錬して生地を調製した。生地から可溶性成分を225mlの水中に抽出した。抽出液からデンプンやグルテンなどの難溶性成分を除去するために、抽出液を遠心分離した(9,000×g、10分)。その上清を、塩酸を用いてpH3に調整した。10分後、水酸化ナトリウムを用いて中和し、pHを5.5に調整した。この中和処理により形成した不溶物を遠心分離(9,000×g、10分)により除去し、小麦アルブミンを含む原料液を得た。
<アミラーゼ阻害物質の調製1>
(実施例1)
小麦アルブミンを含む原料液(調製例1:200ml)にメタリン酸ナトリウム(太平化学産業(株))を0.03重量%(300ppm)となるよう添加し混合した。その混合液を、塩酸を用いてpH3.7に調整し、次いで、遠心分離(9,000g、15分)した。その上清を棄て、沈殿物を回収した。その沈殿物を水25mlに懸濁し、該懸濁液に塩化カルシウムを0.5重量%(5,000ppm)となるよう添加し、次いで、遠心分離(9,000×g、10分)した。その上清を限外ろ過により脱塩した。脱塩後の溶液を水分濃度が5重量%以下になるまで凍結乾燥して、粉末形態のアミラーゼ阻害物質を調製した。このアミラーゼ阻害物質の調製を3回実施した。
(実施例1)
小麦アルブミンを含む原料液(調製例1:200ml)にメタリン酸ナトリウム(太平化学産業(株))を0.03重量%(300ppm)となるよう添加し混合した。その混合液を、塩酸を用いてpH3.7に調整し、次いで、遠心分離(9,000g、15分)した。その上清を棄て、沈殿物を回収した。その沈殿物を水25mlに懸濁し、該懸濁液に塩化カルシウムを0.5重量%(5,000ppm)となるよう添加し、次いで、遠心分離(9,000×g、10分)した。その上清を限外ろ過により脱塩した。脱塩後の溶液を水分濃度が5重量%以下になるまで凍結乾燥して、粉末形態のアミラーゼ阻害物質を調製した。このアミラーゼ阻害物質の調製を3回実施した。
<0.19AI含有量および回収率の測定>
粉末形態のアミラーゼ阻害物質を0.1重量%トリフルオロ酢酸(TFA)水溶液に溶解し、0.45μmのメンブランフィルターでろ過してHPLC(高性能液体クロマトグラフィー)用試料とした。下記表1に示す条件のHPLCに供し、クロマトグラム中の0.19AIのピーク面積を測定した。
0.19AI標品(純度100%)を、同じ条件下のHPLCにより0.19AIのピーク面積を測定し、HPLC用試料中の0.19AIの含有量(mg)を算出した。
粉末形態のアミラーゼ阻害物質を0.1重量%トリフルオロ酢酸(TFA)水溶液に溶解し、0.45μmのメンブランフィルターでろ過してHPLC(高性能液体クロマトグラフィー)用試料とした。下記表1に示す条件のHPLCに供し、クロマトグラム中の0.19AIのピーク面積を測定した。
0.19AI標品(純度100%)を、同じ条件下のHPLCにより0.19AIのピーク面積を測定し、HPLC用試料中の0.19AIの含有量(mg)を算出した。
カラムサイズ:4.6mm I.D.×250mm
小麦アルブミンを含む溶液中の0.19AI含有量および回収試薬を用いて回収した0.19AIを含む溶液中の0.19AI含有量を用い、下記式より0.19AI回収率[%]を算出した。
(式)
0.19AI回収率[%]=回収した0.19AI含有量[g]/小麦アルブミンを含む溶液中の0.19AI含有量[g]×100
<0.19AI回収量および回収率>
実施例1で得られたアミラーゼ阻害物質における0.19AIの含有量(即ち、回収量)はそれぞれ9.6mg、8.8mgおよび8.3mgであり、0.19AI回収率はそれぞれ53.3%、48.9%および46.1%であった。
実施例1で得られたアミラーゼ阻害物質における0.19AIの含有量(即ち、回収量)はそれぞれ9.6mg、8.8mgおよび8.3mgであり、0.19AI回収率はそれぞれ53.3%、48.9%および46.1%であった。
(比較例1)
メタリン酸ナトリウムをアルギン酸ナトリウム(品番:020−70905、キシダ化学株式会社)に代えたことを除いて、実施例1と実質的に同じ方法で、小麦アルブミンを含む原料液(調製例1:200ml)からアミラーゼ阻害物質を3回調製した。0.19AIの回収量はそれぞれ4.9mg、5.9mgおよび4.8mgであり、0.19AI回収率はそれぞれ27.2%、32.8%および26.7%であった。
メタリン酸ナトリウムをアルギン酸ナトリウム(品番:020−70905、キシダ化学株式会社)に代えたことを除いて、実施例1と実質的に同じ方法で、小麦アルブミンを含む原料液(調製例1:200ml)からアミラーゼ阻害物質を3回調製した。0.19AIの回収量はそれぞれ4.9mg、5.9mgおよび4.8mgであり、0.19AI回収率はそれぞれ27.2%、32.8%および26.7%であった。
<アミラーゼ阻害活性の測定>
αアミラーゼ,Human Pancreas(品番:CLZ 203A0050、フナコシ株式会社)、50mM NaCl、5mM CaCl2および0.04%卵白アルブミンを含む20mM PIPES緩衝液(pH6.9)に、0.19AIが0.25、0.5、1.0および2.0μg/mlとなるように加えて混合し、その混合液を37℃で30分間インキュベートした。次いで、1.5%可溶性デンプン溶液(pH6.9)を加え、37℃で10分間インキュベートした後、停止液(0.08M HClおよび0.4M酢酸)を加えた。該溶液0.2mlに2.5mlのヨウ素液(0.05%KI、0.005%ヨウ素)を加えて混合し、その混合液の吸光度(660nm)を測定した。このアミラーゼ阻害活性の測定では、アミラーゼ阻害物質を含む試料液を用いない場合の吸光度を80%減少させる量のαアミラーゼを用いた。αアミラーゼ活性を50%阻害する濃度(IC50)を算出した。
αアミラーゼ,Human Pancreas(品番:CLZ 203A0050、フナコシ株式会社)、50mM NaCl、5mM CaCl2および0.04%卵白アルブミンを含む20mM PIPES緩衝液(pH6.9)に、0.19AIが0.25、0.5、1.0および2.0μg/mlとなるように加えて混合し、その混合液を37℃で30分間インキュベートした。次いで、1.5%可溶性デンプン溶液(pH6.9)を加え、37℃で10分間インキュベートした後、停止液(0.08M HClおよび0.4M酢酸)を加えた。該溶液0.2mlに2.5mlのヨウ素液(0.05%KI、0.005%ヨウ素)を加えて混合し、その混合液の吸光度(660nm)を測定した。このアミラーゼ阻害活性の測定では、アミラーゼ阻害物質を含む試料液を用いない場合の吸光度を80%減少させる量のαアミラーゼを用いた。αアミラーゼ活性を50%阻害する濃度(IC50)を算出した。
実施例1で3回調製した0.19AI調製液を用いて、アミラーゼ阻害活性(IC50)を測定した。結果はそれぞれ0.09μg/ml、0.02μg/mlおよび0.07μg/mlであった。比較例1で3回調製した0.19AI調製液を用いて、アミラーゼ阻害活性(IC50)を測定した。結果はそれぞれ0.09μg/ml、0.2μg/mlおよび0.07μg/mlであった。結果を以下の表2にまとめる。数値は平均値±標準偏差である。
実施例1で用いたメタリン酸ナトリウムにより、アミラーゼ阻害物質を含む原料液から安定して、アミラーゼ阻害活性を回収できた。実施例1の0.19AI回収率は、比較例1の0.19AI回収率よりも約2倍高く、アルギン酸ナトリウムよりも高効率に0.19AIを回収できた。回収した0.19AIのアミラーゼ阻害活性は、実施例1と比較例1とでほぼ等しかった。0.19AIを主成分とするアミラーゼ阻害物質が、メタリン酸ナトリウムを用いて、アミラーゼ阻害活性に関してアルギン酸ナトリウムと同じ程度に精製でき、かつ回収率に関してはアルギン酸ナトリウムより高効率に回収できることが分かった。一般に、メタリン酸などの縮合リン酸はアルギン酸などの多糖類よりも安価であることから、縮合リン酸を用いた場合、小麦由来のアミラーゼ阻害物質を製造する方法は、多糖類を用いた製造方法よりも経済的な利点を有する。
<トリプシン阻害活性の測定>
アミラーゼ阻害物質調製物のトリプシン阻害活性は、Kakade法(Kakade et al., Cereal Chem., 51巻, p376 (1974))に従って測定した。小麦アルブミンを含む原料液からメタリン酸Naまたはアルギン酸Naを用いてアミラーゼ阻害物質を回収した。メタリン酸Naを用いて回収したアミラーゼ阻害物質のトリプシン阻害活性値(TIU/mg)は、アルギン酸Naを用いて回収したアミラーゼ阻害物質の阻害活性値よりも、約50%小さかった。
トリプシン阻害物質は一般にアミラーゼを含む膵液の分泌を促進し得るため、アミラーゼ阻害物質によるインスリン分泌の抑制作用を阻害する可能性があることが知られている(特許文献2)。食後の血糖コントロールの観点から、アミラーゼ阻害物質調製物のトリプシン阻害活性が低いことが望ましい。
アミラーゼ阻害物質調製物のトリプシン阻害活性は、Kakade法(Kakade et al., Cereal Chem., 51巻, p376 (1974))に従って測定した。小麦アルブミンを含む原料液からメタリン酸Naまたはアルギン酸Naを用いてアミラーゼ阻害物質を回収した。メタリン酸Naを用いて回収したアミラーゼ阻害物質のトリプシン阻害活性値(TIU/mg)は、アルギン酸Naを用いて回収したアミラーゼ阻害物質の阻害活性値よりも、約50%小さかった。
トリプシン阻害物質は一般にアミラーゼを含む膵液の分泌を促進し得るため、アミラーゼ阻害物質によるインスリン分泌の抑制作用を阻害する可能性があることが知られている(特許文献2)。食後の血糖コントロールの観点から、アミラーゼ阻害物質調製物のトリプシン阻害活性が低いことが望ましい。
<アミラーゼ阻害物質の調製2>
(実施例2)
以下の回収試薬を用いたこと、及び凍結乾燥処理をせずにHPLCに供したことを除き、実施例1と実質的に同じ方法でアミラーゼ阻害物質を調製し、0.19AIの回収量及び回収率を測定した。得られた結果を表3に示す。
メタリン酸ナトリウムを回収試薬として用いた場合、アルギン酸ナトリウム以外の多糖類、即ち酸性多糖類であるペクチン(比較例3)、中性多糖類であるグァーガム(比較例4)および塩基性多糖類であるキトサン(比較例5)を用いた場合よりも、高効率に0.19AIを回収できた(実施例2)。
(実施例2)
以下の回収試薬を用いたこと、及び凍結乾燥処理をせずにHPLCに供したことを除き、実施例1と実質的に同じ方法でアミラーゼ阻害物質を調製し、0.19AIの回収量及び回収率を測定した。得られた結果を表3に示す。
メタリン酸ナトリウムを回収試薬として用いた場合、アルギン酸ナトリウム以外の多糖類、即ち酸性多糖類であるペクチン(比較例3)、中性多糖類であるグァーガム(比較例4)および塩基性多糖類であるキトサン(比較例5)を用いた場合よりも、高効率に0.19AIを回収できた(実施例2)。
<アミラーゼ阻害物質の調製3>
(実施例3〜5)
小麦粉100gから、以下の回収試薬を用いたこと、及び凍結乾燥処理をせずにHPLCに供したことを除き、実施例1と実質的に同じ方法でアミラーゼ阻害物質を調製し、0.19AIの回収率[%]を測定した。
(実施例3〜5)
小麦粉100gから、以下の回収試薬を用いたこと、及び凍結乾燥処理をせずにHPLCに供したことを除き、実施例1と実質的に同じ方法でアミラーゼ阻害物質を調製し、0.19AIの回収率[%]を測定した。
用いた回収試薬の無水リン酸(P2O5)含量は、モリブデンブルー吸光度法により測定した。より具体的には、回収試薬を5mLの硝酸および90mLの水と混合し、30分間加熱した後、冷却して検液とした。5mLの検液にフェノールフタレイン指示薬(1重量%フェノールフタレイン・エタノール溶液)を1滴加え、溶液が紅色となるまで30%水酸化ナトリウム溶液を滴下した。次いで無色となるまで硝酸を滴下し、バナジン酸・モリブデン酸試液20mLおよび水を混合した。30分間放置した後、吸光度(400nm)を測定した。10重量%のP2O5標準液15mLおよび20mLについて、上記と同様に処理して吸光度(400nm)を測定し、検液から得られた吸光度から、検液5mL中のP2O5の重量を算出した。得られたP2O5重量を用いた試薬の重量で除して、P2O5含量(%)を得た。R値(%)は、食品添加物公定書に記載の誘導結合プラズマ(ICP)発光強度測定法により測定した。
得られた結果を表4に示す。
得られた結果を表4に示す。
表4によれば、本実施条件下では、アミラーゼ阻害物質を含む原料液から、トリポリリン酸ナトリウムおよびピロリン酸二水素ナトリウムを用いて0.19AIを回収することはできなかった(比較例6および7)。リン(P)原子を4個以上有する縮合リン酸は、高効率に0.19AIを回収できる良好なアミラーゼ阻害物質の回収試薬であった(実施例1〜5)。P2O5含量が64%以上の縮合リン酸を用いた場合、高効率に0.19AIを回収できた(実施例1〜5)。縮合リン酸は、0.19AI回収率の観点から高重合体よりも低重合体の方が好ましい(実施例3および4)。縮合リン酸は、0.19AI回収率の観点からウルトラポリリン酸が特に好ましかった。
Claims (9)
- 小麦アルブミンからのアミラーゼ阻害物質の製造方法であって、
(A)アミラーゼ阻害物質を含有する複合体を形成させるために、小麦アルブミンおよび遊離もしくは塩形態の縮合リン酸を水性溶媒中で混合する工程;
(B)工程(A)で得られた混合液から該複合体を分離する工程;および
(C)該複合体からアミラーゼ阻害物質を回収するために、工程(B)で分離した複合体およびアミラーゼ阻害物質遊離剤を水性溶媒中で混合する工程
を含み、
但し、該縮合リン酸は実質的にピロリン酸およびトリポリリン酸を含ない、製造方法。 - 縮合リン酸のP2O5含量が64%以上である、請求項1記載の製造方法。
- 前記アミラーゼ阻害物質遊離剤が遊離もしくは塩形態のカルシウム、マグネシウムまたはそれらの混合物である、請求項1または2記載の製造方法。
- 工程(C)が、該アミラーゼ阻害物質遊離剤および縮合リン酸により形成された縮合リン酸塩を分離する工程を含む、請求項1〜3いずれか一項記載の製造方法。
- 工程(C)において回収したアミラーゼ阻害物質から、アミラーゼ阻害物質遊離剤を除去する工程(d1)、および/または工程(C)もしくは工程(d1)により得られたアミラーゼ阻害物質を含む溶液から粉末形態のアミラーゼ阻害物質を得る工程(d2)をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項記載の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか一項記載の製造方法により製造されたアミラーゼ阻害物質を含む、血糖値上昇抑制剤。
- 請求項6に記載の血糖値上昇抑制剤を添加した食品であって、該食品の摂取後1時間の血糖値が、該血糖値上昇抑制剤を添加していないことを除いて実質的に同じ食品の摂取後1時間の血糖値と比べ、その血糖値上昇が抑制される、食品。
- 小麦アルブミンからアミラーゼ阻害物質を回収するための、縮合リン酸を含む試薬であって、但し、実質的にピロリン酸およびトリポリリン酸を含まない試薬。
- 縮合リン酸を含む試薬およびアミラーゼ阻害物質を含む小麦アルブミンを水性溶媒中で混合する工程を含む、該アミラーゼ阻害物質および該縮合リン酸を含有する複合体を形成させる方法であって、該試薬は実質的にピロリン酸およびトリポリリン酸を含まない、方法。
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