JP2017004004A - 透過型回折素子 - Google Patents

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剛守 若林
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Abstract

【課題】低コストで容易に製造でき、入射する光の波長帯全域にわたって、高い回折効率と低い偏光依存性とを有する透過型回折素子を提供する。
【解決手段】透明基板と、前記透明基板の一方の面に周期的に形成された凸部と、を有する前記透明基板に入射した光を回折する透過型回折素子であって、前記凸部は、前記透明基板側より、第1の層、第2の層、第3の層、第4の層を積層することにより形成されているものであって、前記第1の層と前記第3の層は、高屈折率材料により形成されており、前記第2の層と前記第4の層は、前記高屈折率材料よりも屈折率の低い低屈折率材料により形成されていることを特徴とする透過型回折素子を提供することにより上記課題を解決する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、入射光を透過し回折する透過型回折素子に関する。
波長可変レーザー、波長選択スイッチ、光スペクトルアナライザといった装置またはモジュールは、複数の波長を含む光を分離(分光)し、波長毎に含まれる光の強度、位相等の情報を取得している。この際、光を分離する方法として、プリズムあるいは回折素子を使用でき、特に、回折素子は格子周期を小さくすることで、単位波長刻みあたりの回折角度差を大きくでき、光の波長分解能を増すことが容易なため多用されている。
ところで、回折素子を使う場合、回折光が±1次、±2次・・・と、複数の回折光が発生してしまい、光の利用効率が低いという欠点を補うため、回折素子の格子周期を、入射する光の波長程度あるいはそれ以下の大きさとし、入射光を回折素子の法線方向から斜めに入射することで、回折光として1次(あるいは−1次)回折光のみを発生させて光の利用効率を上げている。
また、光通信あるいは光計測では、一般に光の偏光状態は一定でないため、回折効率に偏光依存性が無い回折素子が求められている。特に、反射型回折素子では偏光依存性を抑えることが困難であり、回折素子の前方には、偏光依存性を補償する偏光解消素子等の素子が配置されている。一方、透過型回折素子では、偏光依存性を抑えた構造のものが実用化されている。
国際公開第2004/074888号パンフレット 特開2008−102488号公報
しかしながら、年々、光通信の情報量が増大しており、これに伴い、波長可変レーザー、波長選択スイッチに用いられる回折素子として、入射する光の波長帯全域にわたって、より高い波長分解能、より高い回折効率、より低い偏光依存性を有する透過型回折素子が求められている。
より高い波長分解能を得るために、回折素子の格子の周期を小さくすることが有効であるが、格子の周期が入射する光の波長の半分以下になると、原理的に回折しなくなってしまう。そこで、複数の回折素子を使う、または、1つの回折素子に2回以上光を通すなどして波長分解能を高める方法がとられている。この場合、回折素子による光の利用効率は、回折効率のべき乗になるので、より高い回折効率が要求される。例えば、回折素子による光の利用効率は、回折素子を1回通るときの回折効率が98%であれば、2回通るとき約96%、4回通るとき約92%となるのに対し、回折素子を1回通るときの回折効率が96%であれば、2回通るとき約92%、4回通るとき約85%となり、その差は大きい。
より高い回折効率を得る方法として、特許文献1または特許文献2においては、回折素子の格子凸部の構造、断面形状を調整する方法が開示されている。特許文献1及び特許文献2においては、格子凸部が3層構造であって、高い回折効率を得る例が示されているが、高い回折効率を得るためには、断面形状を樽型等の形状にする必要があり、このような樽型等の断面形状の格子凸部を形成することは困難である。また、比較的容易に製造できるものとして、断面形状が台形状のものが示されている。しかしながら、開示されている台形状の断面形状の格子凸部を有するものは、所望の回折効率を得るための波長の範囲が狭く、製造マージンも狭いものと推察され、使用する波長帯全域にわたって、高い歩留りで、高い回折効率を得ることができないという問題を有している。
また、断面形状が台形状であるものにおいて、波長依存性が良く、高い回折効率を得る方法としては、格子凸部が3層構造により形成されており、3層構造における各層の屈折率と基板の屈折率との間に特定の関係を持たせたものが開示されている。例えば、基板に隣接する層から順に屈折率をn1、n2、n3として、基板の屈折率をnsとしたとき、ns<n1<n2、n3<n1であるものが示されている。この場合、格子凸部を形成している3層がすべて異なる材料により形成されているため、3種類の異なる材料を用いる必要があり、更には、大型の成膜装置が必要となり、製造工程が複雑となるといった問題を有している。
また、光通信において品質良く信号処理するためには、高い回折効率を得るばかりでなく、入射光とほぼ同じ方向に戻る反射1次回折光の低減も課題である。例えば、光ファイバー端から出射した光を回折素子に入射する光学系であれば、反射1次回折光が光ファイバー端で反射して再度、回折素子に入射して共振器として作用すると、信号強度が安定しなくなってしまう。例えば、透過1次回折光の回折効率が96%であれば、残りの4%が透過0次回折光(直進透過光)、反射0次回折光(正反射光)、反射1次回折光(入射光の方向に戻る回折光)に振り分けられる。すなわち、反射1次回折光を低減させるためにも、透過1次回折光の回折効率を上げることが有効であることを意味している。
本発明は、上述のような課題を鑑みてなされたものであり、低コストで容易に製造でき、入射する光の波長帯全域にわたって、高い回折効率と低い偏光依存性とを有する透過型回折素子の提供を目的とする。
本発明は、透明基板と、前記透明基板の一方の面に周期的に形成された凸部と、を有する前記透明基板に入射した光を回折する透過型回折素子であって、前記凸部は、前記透明基板側より、第1の層、第2の層、第3の層、第4の層を積層することにより形成されているものであって、前記第1の層と前記第3の層は、高屈折率材料により形成されており、前記第2の層と前記第4の層は、前記高屈折率材料よりも屈折率の低い低屈折率材料により形成されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記高屈折率材料は、Si、TiO、Nb及びTaのうちから選ばれる1又は2以上の材料であって、前記低屈折率材料は、SiO、SiONのいずれかであることを特徴とする。
また、本発明は、前記高屈折率材料は、前記入射する光の波長における屈折率が1.9〜2.3の範囲内の材料であって、前記低屈折率材料は、前記入射する光の波長における屈折率が1.4〜1.6の範囲内の材料であることを特徴とする。
また、本発明は、前記高屈折率材料における屈折率と、前記低屈折率材料における屈折率との差が、0.5以上であることを特徴とする。
また、本発明は、前記低屈折率材料は、前記入射する光の波長における屈折率が1.5以下であることを特徴とする。
また、本発明は、前記第1の層、前記第2の層、前記第3の層、前記第4の層のうち、前記第3の層における膜厚が最も厚いものであることを特徴とする。
また、本発明は、前記第1の層の膜厚と前記第3の層の膜厚の和が、前記第2の層の膜厚と前記第4の層の膜厚の和よりも大きいことを特徴とする。
また、本発明は、前記透明基板の他方の面には、反射防止膜が形成されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記反射防止膜は、前記第1の層及び前記第3の層を形成している高屈折率材料により形成される層と、前記第2の層及び前記第4の層を形成している低屈折率材料により形成される層とを交互に積層することにより形成されているものであることを特徴とする。
本発明により、低コストで容易に製造でき、入射する光の波長帯全域にわたって、高い回折効率と低い偏光依存性とを有する透過型回折素子を提供できる。
第1の実施の形態における透過型回折素子の構造の一例を示す断面模式図 第1の実施の形態における透過型回折素子の凸部を示す断面模式図 透過型回折素子への入射光及び出射回折光に関する説明図 第2の実施の形態における透過型回折素子の構造の一例を示す断面模式図 第2の実施の形態における透過型回折素子の凸部を示す断面模式図 実施例1における透過型回折素子の回折効率を示す特性図 実施例1における透過型回折素子のオーバーエッチング量に関する特性図 実施例2における透過型回折素子の回折効率を示す特性図 実施例2における透過型回折素子のオーバーエッチング量に関する特性図 比較例1における透過型回折素子の構造の一例を示す断面模式図 比較例1における透過型回折素子の凸部を示す断面模式図 比較例1における透過型回折素子の回折効率を示す特性図
発明を実施するための形態について、以下に説明する。なお、同じ部材等については、同一の符号を付して説明を省略する。
〔第1の実施の形態〕
(透過型回折素子の構造)
本実施の形態における透過型回折素子について説明する。図1は、本実施の形態における透過型回折素子10の断面図であり、透明基板11の一方の面に、周期的、即ち、周期Pの周期で凸部12を形成することにより、凹凸状の回折格子が形成されている。本実施の形態においては、図2に示されるように、凸部12は低屈折率材料と高屈折率材料の2種類の材料を用いて4層構造が形成されている。具体的には、透明基板11の一方の面より、厚さdの高屈折材料により形成された第1の層21、厚さdの低屈折材料により形成された第2の層22、厚さdの高屈折材料により形成された第3の層23、厚さdの低屈折率材料により形成された第4の層24を積層して形成することにより凸部12が形成されている。この凸部12の形状は、下辺の長さがXb、上辺の長さがXt、高さがD、側辺の傾き(テーパー角)が鉛直から角度φ傾いている台形となっている。尚、透明基板11の他方の面には、反射防止膜13が形成されている。また、格子凹部に相当する凸部12の間の領域には、空気等の周辺媒質が存在しているものとする。
図3に示されるように、本実施の形態における透過型回折素子10に、回折格子が形成されている面より、透明基板11の一方の面の法線に対し入射角度θ傾いた角度で、波長λの光を入射させる。これにより、回折格子において光が回折され複数の回折光が発生し、発生した各々の回折光は反射防止膜13が成膜されている基板11の他方の面より出射する。この際、mを整数としたとき、m次の回折光は、透明基板11の一方の面の法線に対して出射回折角度θの方向に出射する。この場合、入射角度θと出射回折角度θは数1に示される式(式1)の関係を有している。尚、出射回折角度θは、2次の回折光の出射回折角度を示す。
Figure 2017004004
本実施の形態における透過型回折素子10によって、光を効率よく利用するためには、2次以上の回折光を発生させることなく、1次回折光のみを発生させる必要がある。即ち、2次以上の回折光を発生させない条件(2λ/P−sinθ)>1を満たすように、使用する光の波長λに対し、格子周期P、入射角度θを設定する。
数1に示される式(式1)を1次回折光の出射回折角度θについて解くと、数2に示される式(式2)のように変形できる。
Figure 2017004004
数2に示される式(式2)では、入射する光の波長λによって1次回折光の出射回折角度θ1が異なることを意味しており、出射回折角θの波長による違いの差、すなわち分解能波長は、数2に示される式をλで微分した数3に示される式(式3)であらわされる。尚、数3に示される式に基づくならば、格子周期Pが小さいほど波長分解能が大きくなることがわかる。
Figure 2017004004
(透過型回折素子の製造方法)
次に、本実施の形態における透過型回折素子10の作製方法について説明する。最初に、石英ガラスあるいは低膨張石英ガラス等の透明基板11の表面に、第1の層21、第2の層22、第3の層23、第4の層24を順次真空蒸着やスパッタリングにより成膜する。具体的には、第1の層21は、厚さdの高屈折率材料により形成されており、第2の層22は、厚さdの低屈折率材料により形成されており、第3の層23は、厚さdの高屈折率材料により形成されており、第4の層24は、厚さdの低屈折率材料により形成されている。これにより、基板11の表面に高屈折率材料層と低屈折率材料層とが交互に積層されている多層膜を形成する。尚、高屈折率材料としては、Si、TiO、Nb、Ta等の誘電体を使用でき、低屈折率材料としては、SiO、SiON等の誘電体を使用できる。具体的には、高屈折率材料は、Si、TiO、Nb及びTaのうちから選ばれる1又は2以上の材料であってもよく、低屈折率材料は、SiO、SiONのいずれかであってもよい。
本実施の形態では、高屈折率材料より1種類、低屈折率材料より1種類の計2種類を選択することにより、蒸着源あるいはスパッタターゲットの数を最小にでき、簡易な製造設備を用いて製造できる。また、成膜の際の条件等も低減できるため、製造工程が複雑となることはなく、安定した成膜を行うことができる。具体的には、本実施の形態においては、スパッタ装置を用いて、第1の層21、第2の層22、第3の層23、第4の層24を成膜する場合、スパッタ装置に搭載できるターゲットの種類が2つである装置を使用可能である。従って、従来のように3種類以上の異なる材料により、3層の膜を形成する場合と比較して、簡易な製造設備により透過型回折素子を製造することが可能となり、また、製造工程も複雑にはならないため、低コストで透過型回折素子を製造できる。
尚、本実施の形態においては、高屈折率材料とは使用する光の波長に対して、屈折率が1.9〜2.3の範囲内における材料が好ましく、低屈折率材料とは使用する光の波長に対して、屈折率が1.4〜1.6の範囲内における材料が好ましい。また、本実施の形態においては、高屈折率材料と低屈折率材料との屈折率差は、0.5以上であることが好ましい。更には、低屈折率材料における屈折率は、空気等との屈折率差の関係上1.5以下であることが好ましい。また、良好な特性を得るためには、第3の層23における膜厚が、第1の層21、第2の層22、第4の層24のいずれの膜厚よりも厚く形成されていることが好ましく。更には、高屈折率層である第1の層21の膜厚と第3の層23の膜厚の和が、低屈折率層である第2の層22の膜厚と第4の層24の膜厚の和よりも厚く形成されていることが好ましい。以上の知見は、発明者が鋭意検討を行った結果得られたものである。
次に、透明基板11の一方の面上に成膜された4層の多層膜により凸部12を形成する。具体的には、第4の層24の表面に、フォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行うことにより、凸部12が形成される領域に、不図示のレジストパターンを形成する。この後、レジストパターンが形成されていない領域における第4の層24、第3の層23、第2の層22、第1の層21をドライエッチングにより除去することにより、凸部12を形成し、周期的な凹凸による回折格子を形成する。このとき凸部12は4層構造となり、空間となる凹部に相当する凸部12間の領域には周辺媒質(空気)が存在している。
尚、ドライエッチングにおいては、所望のエッチングストップ位置よりも手前でエッチングが終了している状態(アンダーエッチング状態)や、所望のエッチングストップ位置よりも深くエッチングがされている状態(オーバーエッチング状態)となる場合がある。具体的には、アンダーエッチング状態では、第1の層21が薄く残り、オーバーエッチング状態では、基板11の一部までエッチングされてしまう。これらの場合には、形成される透過型回折素子の特性に少なからず影響を及ぼすため、アンダーエッチング及びオーバーエッチングの許容値については、製造マージン等の観点から重要となる。
凸部12の形状パラメータである4層の多層膜の各層の厚さ、即ち、第1の層21の厚さd、第2の層22の厚さd、第3の層23の厚さd、第4の層24の厚さd、テーパー角φ、下辺の長さXb、上辺の長さXtは、透過型回折素子10に入射する光の波長λ、入射角度θ、格子周期Pに対し、偏光に依存せず回折効率が高くなるように最適設計がなされている。設計上の回折効率としては、製造上のばらつきによる低下を考慮して、入射する光の波長域におけるS偏光、P偏光に対し、ともに98%以上であることが好ましい。
凸部12の形状として前述した形状を実現するために、フォトリソグラフィの工程において使用されるフォトマスクの開口、露光・現像条件等の諸条件、ドライエッチングの工程において使用されるエッチャントガス、装置依存の諸条件は適宜調整されているものとする。
また、基板11において、凸部12が形成されている面とは反対側の他方の面には、反射防止膜13が成膜されている。反射防止膜13を形成する工程は、凸部12となる4層の多層膜を成膜する前であってもよく、後であってもよく、更には、凸部12を形成した後に成膜してもよい。
反射防止膜13は、凸部12によって回折される光が、波長によって出射方向が異なること、即ち、回折光が反射防止膜13に入射する角度が、波長によって異なることを考慮して、各々の波長に対して、S偏光及びP偏光成分の反射率が略0%になるように最適設計されたものが成膜されている。透明基板11が平行平板である場合、反射防止膜13の成膜面と回折格子が形成されている面との間において生じる多重反射による干渉により、回折効率の波長変動(リップル)を引き起こしてしまうため、反射防止膜13の反射率として0.5%以下であることが好ましく、0.2%以下であれば、より好ましい。
反射防止膜13の成膜方法としては、真空蒸着、スパッタリング等の成膜方法が挙げられる。また、反射防止膜13を形成する材料としては、SiO、SiON、Si、TiO、Nb、Taなどの誘電体を使用できる。具体的には、例えば、これらの誘電体のうち高屈折率材料と低屈折率材料とを各々選択し、高屈折率材料と低屈折率材料とを交互に積層することにより形成できる。また、透過型回折素子10を光通信に用いる場合は、使用される光の波長帯で透明でかつ高屈折率の材料であるSiを使用することもできる。特に、凸部12の材料の組み合わせと同じ材料の組み合わせにより、反射防止膜13を形成することにより、製造工程等が簡略化されるため、低コストで製造できるため好ましい。
〔第2の実施の形態〕
(透過型回折素子の構造)
次に、第2の実施の形態における透過型回折素子について説明する。図4は、本実施の形態における透過型回折素子50の断面図であり、透明基板51の一方の面に反射防止膜53が形成されており、一方の面とは反対側の他方の面に反り調整膜54が形成されている。本実施の形態においては、このような反り調整膜54を形成することによって、反射防止膜53によって生じる透明基板51の反りを相殺することができる。反り調整膜54を形成する材料としては、透明基板51との屈折率差が±0.1以内となる材料を選択した場合には、光学的な特性が殆ど損なわれないため好ましい。また、透明基板51として石英ガラスあるいは低膨張石英ガラスを用いる場合には、SiO、SiONといった誘電体材料を使用することができる。また、反り調整膜54の厚さは、反射防止膜53の厚さの0.5〜1.5倍であって、透過型回折素子における反り量に基づき適宜調整して定めることができる。反り調整膜54の厚さが反射防止膜53の厚さの0.5倍未満、あるいは1.5倍を超えると、反りを相殺することが難しい。本実施の形態においては、反射防止膜53が引張り応力の生じる膜である場合は、反り調整膜54も引張り応力の生じる膜を成膜する。反射防止膜53が圧縮応力の生じる膜である場合は、反り調整膜54も圧縮応力の生じる膜を成膜する。
反り調整膜54の上には、周期的、即ち、周期Pの周期で凸部52を形成することにより、凹凸状の回折格子が形成されている。本実施の形態においては、図5に示されるように、凸部52は、低屈折率材料と高屈折率材料の2種類の材料を交互に積層することにより形成された4層構造により形成されている。具体的には、透明基板51の他方の面に形成された反り調整膜54の上に、厚さdの高屈折材料により形成された第1の層61、厚さdの低屈折材料により形成された第2の層62、厚さdの高屈折材料により形成された第3の層63、厚さdの低屈折率材料により形成された第4の層64を順に積層することにより凸部52を形成することができる。よって、本実施の形態における透過型回折素子50は、透明基板51と凸部52との間に反り調整膜54が形成されている構造のものである。なお、図5における凸部52の構造、形状、材料、製造方法については、第1の実施形態と同様である。
(実施例1)
最初に、第1の実施の形態に係る実施例1における透過型回折素子について説明する。本実施例における透過型回折素子10は、図1に示される断面構造のものであり、反射防止膜13が成膜された透明基板11上に、周期が1040nmである凸部12を形成することにより回折格子が形成されている。尚、本実施例における透過型回折素子10には、波長1525nm〜1575nmの光が、凸部12が形成されている面の法線に対し、48°の角度から入射させるものである。
本実施例における凸部12は、第1の層21、第2の層22、第3の層23、第4の層24からなる4層構造により形成されている。具体的には、本実施例における凸部12は、図2の模式図に示すように透明基板11側から、第1の層21として高屈折率材料層であるTa層(屈折率2.11)を40nm、第2の層22として低屈折率材料層であるSiO層(屈折率1.46)を140nm、第3の層23として高屈折率材料層であるTa層(屈折率2.11)を1140nm、第4の層24として低屈折率材料層であるSiO層(屈折率1.46)を310nm積層することにより形成されている。このように形成された凸部12の断面形状は台形状である。表1は、本実施例における凸部12の形状パラメータを示す。即ち、本実施例は、第1の層21、第2の層22、第3の層23、第4の層24の膜厚の和である凸部12の高さDは1630nmであり、テーパー角の角度φは3°であり、下辺の長さXbは688.6nmであり、上辺の長さXtは517.8nmである。
Figure 2017004004
本実施例における透過型回折素子10は、本実施に形態において説明した製造方法により作製できる。透明基板11として厚さが0.6mmの石英ガラス(屈折率1.44)を用い、透明基板11の一方の面の表面に、第1の層21となる厚さdが40nmのTa層、第2の層22となる厚さdが140nmのSiO層、第3の層23となる厚さdが1140nmのTa層、第4の層24となる厚さdが310nmSiO層の順に、スパッタリング装置を用いて成膜する。
次に、第4の層24の上にフォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行うことにより、周期が1040nmの格子状の不図示のレジストパターンを形成する。この後、ドライエッチングにより、レジストパターンの形成されていない領域の第4の層24、第3の層23、第2の層22、第1の層21を除去し、凸部12を形成する。この後、有機溶剤等により不図示のレジストパターンは除去される。
次に、透明基板11において、凸部12が形成されている面とは反対側の他方の面に、反射防止膜13を成膜する。反射防止膜13は、凸部12を形成している材料と同じ材料であるTaとSiOとを用い、スパッタリングにより交互に積層することにより形成する。
反射防止膜13は、波長1525nmの光が、凸部12により形成される回折格子において回折し、透明基板11から反射防止膜13面から出射する角度(反射防止膜13が形成されている面の法線に対する角度)が46.3°、同様に波長1545nmの光が出射する角度が47.9°、同様に波長1575nmの光が出射する角度が50.5°であること、即ち、波長毎に透明基板11を出射する角度が異なることを考慮して、各々の波長に対し、S偏光及びP偏光成分の反射率がともに0.2%以下になるように設計されている。
図6は、本実施例における透過型回折素子10の透過1次回折光の回折効率を示すグラフである。図6におけるグラフの横軸は入射する光の波長であって、使用する1525nm〜1575nmの範囲の波長帯において、実線で示されるS偏光及び破線で示されるP偏光の回折効率がともに99%以上であり、偏光依存性としてS偏光、P偏光間の回折効率差も0.5%以下で良好な特性を示している。また、1500nm〜1590nmに波長範囲を拡大しても、S偏光及びP偏光の回折効率が98%以上あるため、形成される凸部12は設計値からのずれに対しても強く、製造マージンが広いと考えられる。
また、反射1次回折光の回折効率は、使用する1525nm〜1575nmの範囲の波長帯において、S偏光、P偏光ともに0.4%以下であって、入射光よりも2桁小さい。
ここで、透過型回折素子10に斜め方向から入射する場合、その入射する光の光路と、透過型回折素子10の凸部12が形成されている面に対する法線とを含む平面を入射面として定義したとき、入射面に対して垂直方向に振動する偏光成分をS偏光、入射面において振動する偏光成分をP偏光として定義する。
次に、ドライエッチングを行った後において、格子凹部の底に4層の多層膜のうち第1の層21が薄く残っている状態(アンダーエッチング状態)と、4層の多層膜だけでなく透明基板11の一部までもエッチングしてしまう状態(オーバーエッチング状態)において、本実施例における透過型回折素子10の回折効率に及ぼす影響について説明する。
図7(a)、(b)、(c)は、オーバーエッチング状態、アンダーエッチング状態における回折効率への影響を示すグラフであって、横軸がオーバーエッチング量、縦軸が回折効率である。尚、横軸のオーバーエッチング量は、正の値はオーバーエッチング状態を意味し、負の値はアンダーエッチング状態を意味している。尚、図7(a)は波長1525nmの光に対する結果、図7(b)は波長1545nmの光に対する結果、図7(c)は波長1575nmの光に対する結果を示すグラフである。
図7(a)、(b)、(c)に示されるグラフに基づくならば、100nm以内のオーバーエッチングを許容し、40nm以内のアンダーエッチングを許容すれば、S偏光及びP偏光の回折効率はともに98%以上を維持できる。更に、維持すべき回折効率を下げるならば、オーバーエッチングおよびアンダーエッチングで許容できる範囲の幅を広げることができる。従って、用途によって許容値を適宜設定すればよい。尚、本実施例においては、98%以上の回折効率を維持するように、オーバーエッチング及びアンダーエッチングの許容値を設定している。
以上、本実施例における透過型回折素子10は、高い回折効率、低い偏光依存性を有するものであって、回折格子を形成している凸部12が2種類の材料を交互に積層した4層構造により形成されているため、簡易な製造工程等により製造できる。
(実施例2)
次に、第1の本実施の形態に係る実施例2における透過型回折素子について説明する。本実施例における透過型回折素子10は、図1に示される断面構造のものであり、反射防止膜13が成膜された透明基板11上に、周期が1070nmである凸部12を形成することにより回折格子が形成されている。尚、本実施例における透過型回折素子10は、波長1570nm〜1610nmの光が、凸部12が形成されている面の法線に対し、48°の角度から入射するものである。
本実施例における凸部12は、第1の層21、第2の層22、第3の層23、第4の層24からなる4層構造により形成されている。具体的には、本実施例における凸部12は、図2の模式図に示すように透明基板11側から、第1の層21として高屈折率材料層であるTa層(屈折率2.11)を60nm、第2の層22として低屈折率材料層であるSiO層(屈折率1.46)を120nm、第3の層23として高屈折率材料層であるTa層(屈折率2.11)を1160nm、第4の層24として低屈折率材料層であるSiO層(屈折率1.46)を340nm積層することにより形成されている。このように形成された凸部12の断面形状は台形状である。表2は、本実施例における凸部12の形状パラメータを示す。即ち、本実施例は、第1の層21、第2の層22、第3の層23、第4の層24の膜厚の和である凸部12の高さDは、1680nmであり、テーパー角の角度φは、3°であり、下辺の長さXbは730nmであり、上辺の長さXtは554nmである。
Figure 2017004004
本実施例の透過型回折素子10は、本実施の形態において説明した製造方法により作製できる。透明基板11としては、厚さが2.0mmの石英ガラス(屈折率1.44)を用い、透明基板11の一方の面の表面に、第1の層21となる厚さdが60nmのTa層、第2の層22となる厚さdが120nmのSiO層、第3の層23となる厚さdが1160nmのTa層、第4の層24となる厚さdが340nmのSiO層の順に、スパッタリング装置を用いて成膜する。次に、第4の層24の上にフォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行うことにより、周期が1070nmの格子状の不図示のレジストパターンを形成する。この後、ドライエッチングにより、レジストパターンの形成されていない領域の第4の層24、第3の層23、第2の層22、第1の層21を除去し、凸部12を形成する。この後、有機溶剤等により不図示のレジストパターンは除去される。
次に、透明基板11において、凸部12が形成されている面とは反対側の他方の面に、反射防止膜13を成膜する。反射防止膜13は、凸部12を形成している材料と同じ材料であるTaとSiOとを用い、スパッタリングにより交互に積層形成することにより形成する。
反射防止膜13は、波長1570nmの光が、凸部12により形成される回折格子において回折し、透明基板11から反射防止膜13面から出射する角度(反射防止膜13が形成されている面の法線に対する角度)が46.4°、同様に波長1590nmの光が出射する角度が48.0°、同様に波長1610nmの光が出射する角度が49.6°であること、即ち、波長毎に透明基板11を出射する角度が異なることを考慮して、各々の波長に対し、S偏光及びP偏光成分の反射率がともに0.2%以下になるように設計されている。
図8は、本実施例における透過型回折素子10の透過1次回折光の回折効率を示すグラフである。図8におけるグラフの横軸は入射する光の波長であって、使用する1570nm〜1610mの範囲の波長帯において、実線で示されるS偏光及び破線で示されるP偏光の回折効率がともに98.5%以上であり、偏光依存性としてS偏光、P偏光間の回折効率差も0.5%以下で良好な特性を示している。また、波長範囲を1545nm〜1635nmに拡大しても、S偏光及びP偏光の回折効率が98%以上あるので、形成される凸部12は設計値からのずれに対しても強く、製造マージンが広いと考えられる。
また、反射1次回折光の回折効率は、使用する1570nm〜1610nmの範囲の波長帯において、S偏光は0.2%以下、P偏光は0.6%以下であって、入射光よりも2桁小さい。
次に、ドライエッチングを行った後において、格子凹部の底に4層の多層膜のうち第1の層21が薄く残っている状態(アンダーエッチング状態)と、4層の多層膜だけでなく透明基板11の一部までもエッチングしてしまう場合(オーバーエッチング状態)において、本実施例における透過型回折素子10の回折効率に及ぼす影響について説明する。
図9(a)、(b)、(c)は、オーバーエッチング状態、アンダーエッチング状態における回折効率への影響を示すグラフであって、横軸がオーバーエッチング量、縦軸が回折効率である。尚、横軸のオーバーエッチング量は、正の値はアンダーエッチング状態を意味し、負の値はアンダーエッチング状態を意味している。尚、図9(a)は波長1570nmの光に対する結果、図9(b)は波長1590nmの光に対する結果、図9(c)は波長1610nmの光に対する結果を示すグラフである。
図9(a)、(b)、(c)に示されるグラフに基づくならば、160nm以内のオーバーエッチングを許容し、30nm以内のアンダーエッチングを許容すれば、S偏光及びP偏光の回折効率はともに98%以上を維持できる。更に、維持すべき回折効率を下げるならば、オーバーエッチング及びアンダーエッチングで許容できる範囲の幅を広げることができる。したがって、用途によって許容値を適宜設定すればよい。尚、本実施例においては、98%以上の回折効率を維持するように、オーバーエッチングおよびアンダーエッチングの許容値が設定されている。
以上、本実施例における透過型回折素子10は、高い回折効率、低い偏光依存性を有するものであって、回折格子を形成している凸部12が2種類の材料を交互に積層した4層構造により形成されているため、簡易な製造工程等により製造できる。
(実施例3)
次に、第2の実施の形態に係る実施例3における透過型回折素子について説明する。本実施例における透過型回折素子50は、図4に示される断面構造のものであり、透明基板51の一方の面に反射防止膜53が成膜され、一方の面とは反対側の他方の面に反り調整膜54が成膜されている。また、反り調整膜54の上には、周期が1040nmとなる凸部52を形成することにより回折格子が形成されている。尚、本実施例における透過型回折素子50は、波長1525nm〜1575nmの光を凸部52が形成されている面の法線に対し、48°の角度より入射させて使用するものである。
本実施例における凸部52は、第1の層61、第2の層62、第3の層63、第4の層64からなる4層構造により形成されている。具体的には、本実施例における凸部52は、反り調整膜54の上に、図5の模式図に示すように透明基板51側から、第1の層61として高屈折率材料層であるTa層(屈折率2.11)を40nm、第2の層62として低屈折率材料層であるSiO層(屈折率1.46)を140nm、第3の層63として高屈折率材料層であるTa層(屈折率2.11)を1140nm、第4の層64として低屈折率材料層であるSiO層(屈折率1.46)を310nm積層することにより形成されている。このように形成された凸部52の断面形状は台形状である。表3は、本実施例における凸部52の形状パラメータを示す。表3に示されるように、本実施例における透過型回折素子は、第1の層61、第2の層62、第3の層63、第4の層64の膜厚の和である凸部52の高さDは1630nmであり、テーパー角の角度φは3°であり、下辺の長さXbは688.6nmであり、上辺の長さXtは517.8nmである。
Figure 2017004004
本実施例における透過型回折素子50は、本実施の形態において説明した製造方法により作製することができる。透明基板51として厚さが0.6mmの石英ガラス(屈折率1.44)を用い、透明基板51の一方の面の表面に、SiOとTaからなる反射防止膜53を、スパッタリング装置を用いて成膜する。
反射防止膜53は、波長毎に透明基板51を出射する角度が異なることを考慮して、各々の波長に対し、S偏光及びP偏光成分の反射率がともに0.2%以下になるように形成されている。即ち、波長1525nmの光が、凸部52により形成される回折格子において回折し、透明基板51における反射防止膜53が形成されている面から出射する角度(反射防止膜53が形成されている面の法線に対する角度)が46.3°、同様に波長1545nmの光が出射する角度が47.9°、同様に波長1575nmの光が出射する角度が50.5°であることを考慮して、各々の波長に対し、S偏光及びP偏光成分の反射率がともに0.2%以下になるように形成されている。
次に、透明基板51の他方の面に、SiOからなる反り調整膜54を厚みが、反射防止膜53の0.6倍の厚さになるようにスパッタリング装置を用いて成膜する。この後、反り調整膜54の上に、第1の層61となる厚さdが40nmのTa層、第2の層62となる厚さdが140nmのSiO層、第3の層63となる厚さdが1140nmのTa層、第4の層64となる厚さdが310nmSiO層を順に、スパッタリング装置を用いて成膜する。
次に、第4の層64の上にフォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行うことにより、周期が1040nmの格子状の不図示のレジストパターンを形成する。この後、ドライエッチングにより、レジストパターンの形成されていない領域の第4の層64、第3の層63、第2の層62、第1の層61を除去し、凸部52を形成する。この後、有機溶剤等により不図示のレジストパターンは除去される。
こうして作製した透過型回折素子50は、曲率半径が30mをこえるような、反りの小さな透過型回折素子となる。なお、反り調整膜54の厚さを適宜調整することにより、より大きな曲率半径となる反りの小さな透過型回折素子を得ることも可能である。
このように作製された本実施例における透過型回折素子50の透過1次回折光の回折効率は、図6に示される特性と同様となる。即ち、反射防止膜53及び反り調整膜54を形成しても透過1次回折光の回折効率には殆ど変化がない。具体的には、図6に示されるように、使用する1525nm〜1575nmの範囲の波長帯において、実線で示されるS偏光及び破線で示されるP偏光の回折効率がともに99%以上であり、偏光依存性としてS偏光、P偏光間の回折効率差も0.5%以下で良好な特性を示している。また、1500nm〜1590nmに波長範囲を拡大しても、S偏光及びP偏光の回折効率が98%以上あるため、形成される凸部52は設計値からのずれに対しても強く、製造マージンが広いと考えられる。
また、反射1次回折光の回折効率は、使用する1525nm〜1575nmの範囲の波長帯において、S偏光、P偏光ともに0.4%以下であって、入射光よりも2桁小さい。ここで、透過型回折素子50に斜め方向から入射する場合、その入射する光の光路と、透過型回折素子50の凸部52が形成されている面に対する法線とを含む平面を入射面として定義したとき、入射面に対して垂直方向に振動する偏光成分をS偏光、入射面において振動する偏光成分をP偏光として定義する。
以上、本実施例における透過型回折素子50は、基板の反りが小さく、高い回折効率、低い偏光依存性を有するものであって、回折格子を形成している凸部52が2種類の材料を交互に積層した4層構造により形成されているため、簡易な製造工程等により製造できる。
(比較例1)
次に、比較例1における透過型回折素子について説明する。本比較例における透過型回折素子910は、図10に示される断面構造のものであり、反射防止膜913が成膜された透明基板911上に、周期が1040nmである凸部912を形成することにより回折格子が形成されているものである。尚、本比較例における透過型回折素子910は、波長1525nm〜1575nmの光が、凸部912が形成されている面の法線に対し、48°の角度から入射させるものである。
なお、透明基板911の厚みは0.6mmであって、反射防止膜913による基板の反りは、曲率半径にして約6mであった。
本比較例における凸部912は、第1の層921、第2の層922、第3の層923からなる3層構造により形成されている。具体的には、本比較例における凸部912は、図11の模式図に示されるように、透明基板911側から、第1の層911として中間屈折率材料層であるSiON層(屈折率1.7、厚さdxが290nm)、第2の層912として高屈折率材料層であるTa層(屈折率2.11、厚さdxが1130nm)、第3の層913として低屈折率材料層であるSiO層(屈折率1.46、厚さdxが250nm)を積層することにより形成されている。このように形成された凸部912の断面形状は台形状であり、表4は、本比較例における凸部912の形状パラメータを示す。即ち、本比較例は、第1の層21、第2の層22、第3の層23、第4の層24の膜厚の和である凸部12の高さDは、1670nmであり、テーパー角の角度φは、3°であり、下辺の長さXbは711.5nmであり、上辺の長さXtは536.5nmである。
Figure 2017004004
本比較例における透過型回折素子910は、凸部912が3種類の材料により形成された3層構造、即ち、第1の層921、第2の層922、第3の層923により形成されていることを除き、本実施の形態の形態と同様の工程で作製できる。しかしながら、凸部912が3種類の材料により形成されているため、ターゲットが3つ以上取り付けられる大型のスパッタリング装置を用いて成膜するか、又は、スパッタリングターゲットの交換等の工程を要するため、高コスト化してしまう。
図12は、本比較例における透過型回折素子910の透過1次回折光の回折効率を示すグラフである。図12におけるグラフの横軸は入射する光の波長であって、使用する1525nm〜1575nmの範囲の波長帯において、実線で示されるS偏光及び破線で示されるP偏光における回折効率の双方、または、一方が98%を下回り、また偏光依存性としてS偏光、P偏光間の回折効率差も0.5%以上になる場合もあり良好な特性は得られていない。また、波長範囲を1500nm〜1590nmに拡大すると、S偏光及びP偏光における回折効率が更に低下し、波長依存性が悪くなる。従って、形成される凸部912は設計値からのずれに対して影響を受けるため、製造マージンは狭いものと考えられる。
また、反射1次回折光の回折効率は、使用する1525nm〜1575nmの範囲の波長帯において、S偏光は0.4%以下、P偏光は1.5%以下であって、前述の本発明の実施例1、2よりも大きい。
10 透過型回折素子
11 透明基板
12 凸部
13 反射防止膜
21 第1の層
22 第2の層
23 第3の層
24 第4の層

Claims (13)

  1. 透明基板と、
    前記透明基板の一方の面に周期的に形成された凸部と、
    を有する前記透明基板に入射した光を回折する透過型回折素子であって、
    前記透明基板の他方の面には、反射防止膜を有し、
    前記凸部と前記透明基板の間には、前記透明基板の屈折率に対し屈折率差が±0.1以内である材料により、前記反射防止膜の厚さの0.5〜1.5倍の厚さの反り調整膜が備わることを特徴とする透過型回折素子。
  2. 前記透明基板は石英ガラスまたは低膨張石英ガラスであり、
    前記反り調整膜は、SiOまたはSiONである、請求項1に記載の透過型回折素子。
  3. 前記反り調整膜は、前記反射防止膜が圧縮応力を生じる膜である場合、引張り応力を生じる膜であり、前記反射防止膜が引張り応力を生じる膜である場合、圧縮応力を生じる膜である、請求項1または2に記載の透過型回折素子。
  4. 曲率半径30mを超える反りを有する、請求項1から3のいずれかに記載の透過型回折素子。
  5. 前記凸部は、前記透明基板側より、第1の層、第2の層、第3の層、第4の層を有し、
    前記第1の層と前記第3の層は、高屈折率材料であり、
    前記第2の層と前記第4の層は、前記高屈折率材料よりも屈折率の低い低屈折率材料であり、
    前記第1の層、前記第2の層、前記第3の層および前記第4の層のうち、前記第3の層の膜厚が最も厚い、請求項1から4のいずれかに記載の透過型回折素子。
  6. 前記高屈折率材料は、Si、TiO、Nb及びTaのうちから選ばれる1又は2以上の材料であって、
    前記低屈折率材料は、SiO、SiONのいずれかである請求項5に記載の透過型回折素子。
  7. 前記高屈折率材料は、前記入射する光の波長における屈折率が1.9〜2.3の範囲内の材料であって、
    前記低屈折率材料は、前記入射する光の波長における屈折率が1.4〜1.6の範囲内の材料である請求項5または6に記載の透過型回折素子。
  8. 前記高屈折率材料における屈折率と、前記低屈折率材料における屈折率との差が、0.5以上である請求項5から7のいずれかに記載の透過型回折素子。
  9. 前記低屈折率材料は、前記入射する光の波長における屈折率が1.5以下である請求項5から8のいずれかに記載の透過型回折素子。
  10. 前記第1の層の膜厚と前記第3の層の膜厚の和が、前記第2の層の膜厚と前記第4の層の膜厚の和よりも大きい請求項5から9のいずれかに記載の透過型回折素子。
  11. λを入射光の波長、Pを複数の凸部の格子周期、θを入射光の入射角とし、(2λ/P-sinθ)>1を満足するときの、1500〜1590nm、または、1545〜1610nmの波長範囲でのp偏光およびs偏光の透過の1次回折効率が98%以上である請求項5から10のいずれかに記載の透過型回折素子。
  12. λを入射光の波長、Pを複数の凸部の格子周期、θを入射光の入射角とし、(2λ/P-sinθ)>1を満足するときの、1525〜1575nm、または、1570〜1610nmの波長範囲でのp偏光およびs偏光の透過の1次回折効率が99%以上である請求項5から10のいずれかに記載の透過型回折素子。
  13. 前記反射防止膜は、前記第1の層及び前記第3の層を形成している高屈折率材料により形成される層と、前記第2の層及び前記第4の層を形成している低屈折率材料により形成される層とを交互に積層することにより形成されているものである請求項5から12のいずれかに記載の透過型回折素子。
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