JP2017001970A - ビニル芳香族モノマーの重合を抑制するための組成物 - Google Patents

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安夫 小谷
Yasuo Kotani
安夫 小谷
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Abstract

【課題】重合抑制効果が向上したビニル芳香族モノマーの重合抑制方法の提供。
【解決手段】一又は複数の実施形態において、ビニル芳香族モノマーの製造、精製、貯蔵、及び輸送工程からなる群から選択される少なくとも1つの工程に、α−ヒドロキシナフトキノンとα−ヒドロキシベンゾキノンとを含む組成物を添加することを含む、ビニル芳香族モノマーの重合を抑制する方法に関する。
【選択図】なし

Description

本開示は、ビニル芳香族モノマーの重合を抑制するための組成物、その組成物を用いたビニル芳香族モノマーの精製方法、及びその組成物を用いたビニル芳香族モノマーの重合を抑制する方法に関する。
スチレン及びα−メチルスチレンのようなビニル芳香族モノマーは、高温下に重合しやすい性質を有する。一方、このようなビニル芳香族モノマーを製造、精製等する際に、高温下に晒される場合がある。このような高温下において、ビニル芳香族モノマーが重合してポリマーが生成すると、ビニル芳香族モノマーの収率が低下するのみならず、製造、精製等工程において用いる装置に汚れとして付着するため、生産効率が著しく低下するという問題点がある。
このような重合を防ぐため、従来から様々な化合物が重合抑制剤として用いられている。重合抑制剤としては、重合禁止剤と重合遅延剤の2種類に分類される。前記重合禁止剤は、重合を完全に停止することが可能であるが、特定の時間を経過すると、重合を停止する活性が失活してしまう。前記重合遅延剤は、重合禁止剤ほど完全ではないが、重合を抑制することができる。ただし、時間の経過と共に、重合を抑制する能力は徐々に低下していく。このような性質を鑑み、通常は、重合を防ぐために、重合禁止剤と重合遅延剤の2種類を併用している。
従来、ビニル芳香族モノマー用重合遅延剤として知られている化合物の中で、4,6−ジニトロ−2−sec−ブチルフェノール(DNBP)に代表されるニトロフェノール化合物は、非常に毒性が強いことが知られている。例えば、DNBPは、毒物及び劇物取締法では、医薬用外毒物に指定されている。
また、スチレン類の重合抑制方法として、スチレン類の製造、精製、貯蔵、あるいは輸送工程に、6−非置換−2−ヒドロキシ−p−ベンゾキノン類を添加するスチレン類の重合抑制方法が知られている(特許文献1)。
特開2002−226409号公報
本開示は、重合抑制効果が向上したビニル芳香族モノマーの重合抑制方法を提供する。
本開示は、一又は複数の実施形態において、α−ヒドロキシナフトキノンとα−ヒドロキシベンゾキノンとを含むビニル芳香族モノマーの重合を抑制するための組成物に関する。
本開示は、一又は複数の実施形態において、ビニル芳香族モノマーの製造、精製、貯蔵、及び輸送工程からなる群から選択される少なくとも1つの工程に、本開示にかかる組成物を添加することを含む、ビニル芳香族モノマーの重合を抑制する方法に関する。
本開示は、一又は複数の実施形態において、ビニル芳香族モノマーを含有する混合物を加熱下に蒸留してビニル芳香族モノマーを単離する工程を含むビニル芳香族モノマーの精製方法であって、前記単離工程において、前記混合物に本開示にかかる組成物を添加することを含む、ビニル芳香族モノマーの精製方法に関する。
本開示は、一又は複数の実施形態において、効率よくビニル芳香族モノマーの重合を抑制しうるという利点がある。
図1は、120℃に達したスチレン溶液におけるポリマー生成量を、2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン(LSN)及びテトラヒドロキシ−1,4−ベンゾキノン(BQTH)を含む組成物を粉末状態で添加した場合(合計1200 ppm、実施例1〜3)と、LSNとBQTHをそれぞれ単独で1200 ppm添加した場合(粉末状態、比較例1及び2)とで比較し、モノマー重合抑制における相乗的効果を確認した結果の一例を示すグラフである。実施例4は、実施例3の組成物を溶媒(MDG)に溶解して添加した場合の結果である。 図2は、2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン(LSN)及び2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゾキノン(DHBQ)を含む組成物を粉末状態で添加した場合(合計1200 ppm、実施例5)と、LSNとDHBQをそれぞれ単独で添加した場合(粉末状態、比較例3及び4)とで比較し、モノマー重合抑制効果の向上を確認した結果の一例を示すグラフである。 図3は、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ナフトキノン(INZ)及びテトラヒドロキシ−1,4−ベンゾキノン(BQTH)を含む組成物を粉末状態で添加した場合(合計1200 ppm、実施例6)と、INZとBQTHをそれぞれ単独で1200 ppm添加した場合(粉末状態、比較例5及び6)とで比較し、モノマー重合抑制効果の向上を確認した結果の一例を示すグラフである。
本開示は、加熱下におけるビニル芳香族モノマー(スチレン)の重合が、α−ヒドロキシナフトキノンとα−ヒドロキシベンゾキノンとを含む組成物を添加することによって、α−ヒドロキシナフトキノンとα−ヒドロキシベンゾキノンとを単独で添加する場合に比べて効果的に抑制できるという知見に基づく。
α−ヒドロキシナフトキノンとα−ヒドロキシベンゾキノンとを組み合わせて使用することでビニル芳香族モノマーの重合を抑制する効果が向上するメカニズムの詳細は明らかではないが以下のように推測される。すなわち、α−ヒドロキシナフトキノンとα−ヒドロキシベンゾキノンは、それぞれ、自己カップリングすると考えられる(下記左参照)。一方で、α−ヒドロキシナフトキノンとα−ヒドロキシベンゾキノンとの間でも下記右のようなカップリングが形成されると考えられる。これらのカップリングによってビニル芳香族モノマーの重合が効果的に抑制されると考えられる。但し、本開示はこのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
Figure 2017001970
[α−ヒドロキシナフトキノン]
本開示におけるα−ヒドロキシナフトキノンとは、α−ヒドロキシ基を有するナフトキノンをいい、一又は複数の実施形態において、少なくとも2位又は3位にα−ヒドロキシ基を有する1,4−ナフトキノンをいう。α−ヒドロキシナフトキノンとしては、一又は複数の実施形態において、2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン(LSN)、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ナフトキノン(INZ)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
[α−ヒドロキシベンゾキノン]
本開示におけるα−ヒドロキシベンゾキノンとは、α−ヒドロキシ基を有するベンゾキノンをいい、一又は複数の実施形態において、少なくとも1つのヒドロキシ基を有する1,4−ベンゾキノンをいう。α−ヒドロキシベンゾキノンとしては、一又は複数の実施形態において、テトラヒドロキシ−1,4−ベンゾキノン(BQTH)、2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゾキノン(DHBQ)、2−ヒドロキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2−ヒドロキシ−5−メトキシ−1,4−ベンゾキノン、2−ヒドロキシ−5−タ−シャリーブチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ベンゾキノン、及びこれらの2又は2以上の組み合わせが挙げられる。
[ビニル芳香族モノマー]
本開示におけるビニル芳香族モノマーとは、芳香族化合物にビニル基が置換した化合物をいい、一又は複数の実施形態において、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンが挙げられる。
[組成物]
本開示は、一態様において、α−ヒドロキシナフトキノンとα−ヒドロキシベンゾキノンとを含む、ビニル芳香族モノマーの重合を抑制するための組成物に関する。α−ヒドロキシナフトキノンとα−ヒドロキシベンゾキノンの具体例は上述のとおりである。α−ヒドロキシナフトキノン及びα−ヒドロキシベンゾキノンは、それぞれ独立して、1種類又は2種類以上であってよい。
α−ヒドロキシナフトキノンとα−ヒドロキシベンゾキノンの組み合わせとしては、より長期の重合抑制効果を得ることができる観点から、一又は複数の実施形態において、α−ヒドロキシナフトキノンが2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン(LSN)であることが好ましい。LSNは、α−ヒドロキシベンゾキノンと組み合わせることで、使用量(添加質量)が同じであっても、LSN単独で使用する場合に比べて、ビニル芳香族モノマーの重合を抑制する効果が長時間維持できる。
本開示における組成物における、α−ヒドロキシナフトキノンとα−ヒドロキシベンゾキノンの含有量(質量比)は、向上したビニル芳香族モノマーの重合抑制効果を得る観点から、2:8〜8:2、3:7〜7:3、4:6〜6:4、又は、5:5となることが好ましい。
一又は複数の実施形態において、向上したビニル芳香族モノマーの重合抑制効果を得る観点から、本開示にかかる組成物は、溶媒に溶解した溶液の状態で使用することが好ましい。該溶媒としては、ビニル芳香族モノマーの製造、精製、又は使用に影響が大きくなく、かつ、α−ヒドロキシナフトキノンとα−ヒドロキシベンゾキノンとを必要量溶解できるものが好ましく、後述するものが使用できる。
したがって、本開示にかかる組成物は、一又は複数の実施形態において、α−ヒドロキシナフトキノンとα−ヒドロキシベンゾキノンとを含む、溶媒に溶解してビニル芳香族モノマーの重合抑制剤とするための組成物である。また、本開示にかかる組成物は、その他の一又は複数の実施形態において、α−ヒドロキシナフトキノン及びα−ヒドロキシベンゾキノン並びに溶媒を含む、ビニル芳香族モノマーの重合抑制のための組成物である。
本開示にかかる組成物は、一又は複数の実施形態において、α−ヒドロキシナフトキノン及びα−ヒドロキシベンゾキノンの効果を損なわない範囲で他の公知の重合禁止剤及び/又は重合遅延剤を含有してもよい。
本開示にかかる組成物は、固体(例えば、粉体)の形態であってもよいが、溶媒に溶解された溶液の形態であってもよい。
[溶媒]
本開示にかかる組成物に含まれる又は本開示にかかる組成物が溶解される溶媒は、一又は複数の実施形態において、向上したビニル芳香族モノマーの重合抑制効果を得る観点から、グリコールエーテルが挙げられる。1種類のグリコールエーテルでもよく、2種類以上が混合されたグリコールエーテルでもよい。グリコールエーテルとしては、エチレングリコールエーテル及びプロピレングリコールエーテルが挙げられる。
エチレングリコールエーテルとしては、一又は複数の実施形態において、下記式(1)で表されるものが挙げられる。プロピレングリコールエーテルとしては、一又は複数の実施形態において、下記式(2)で表されるものが挙げられる。
1-O-(CH2CH2O)n-R2 (1)
1-O-(CH2CH(CH3)O)n-R2 (2)
式(1)及び(2)において、nは、1、2、3、又は4〜12であり、R1は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、アリル基、フェニル基、又はベンジル基であり、R2は、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、アリル基、フェニル基、又はベンジル基である。
これらの中でも該溶媒としては、向上したビニル芳香族モノマーの重合抑制効果を得る観点から、エチレングリコール又はジエチレングリコールのモノC1-4アルキルエーテルが好ましく、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(MDG)、又はトリエチレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。
本開示にかかるこれらの組成物は、一又は複数の実施形態において、「ビニル芳香族モノマーの重合を抑制する方法」及び/又は「ビニル芳香族モノマーの精製方法」に使用するための組成物である。
[ビニル芳香族モノマーの重合を抑制する方法]
本開示は、一態様において、ビニル芳香族モノマーの製造、精製、貯蔵、及び輸送工程からなる群から選択される少なくとも1つの工程に、本開示にかかるこれらの組成物を添加することを含む、ビニル芳香族モノマーの重合を抑制する方法(以下、「重合抑制方法」ともいう。)に関する。
本開示にかかるこれらの組成物を添加する場所は、特に限定されるものではないが、ビニル芳香族モノマーの蒸留塔、反応塔の塔頂部、塔底部、貯蔵タンクなど重合反応が生起する場所、ファウリング(汚れ)の発生場所、あるいはそれより上流の工程が挙げられる。前記上流の工程としては、例えばスチレンでは、一般にエチルベンゼンの脱水素反応によってスチレンが製造され、製造されたスチレンと未反応エチルベンゼンを連続的に蒸留分離して精製されるため、エチルベンゼン脱水素後の蒸留塔群等の工程があげられる。添加方法としては、特定箇所に一括添加する、あるいはいくつかの箇所に分けて多点添加するなどの方法があり、適宜選択される。
本開示にかかる重合抑制方法における本開示にかかるこれらの組成物の添加量としては、ビニル芳香族モノマーの溶液又は雰囲気が約100℃程度の温度の場合、一又は複数の実施形態において、α−ヒドロキシナフトキノンとα−ヒドロキシベンゾキノンの合計添加量が、ビニル芳香族モノマーに対して10ppm以上、50ppm以上、100ppm以上、300ppm以上、又は500ppm以上が挙げられる。該α−ヒドロキシナフトキノンとα−ヒドロキシベンゾキノンの合計添加量は、経済性の観点から1000ppm以下が挙げられる。なお、本開示における組成物における、α−ヒドロキシナフトキノンとα−ヒドロキシベンゾキノンの含有量(質量比)は、上述のとおりである。
本開示にかかる重合抑制方法における本開示にかかるこれらの組成物の添加量としては、ビニル芳香族モノマーの溶液又は雰囲気が約120℃程度(例えば、120℃±3℃)の温度の場合、一又は複数の実施形態において、α−ヒドロキシナフトキノンとα−ヒドロキシベンゾキノンの合計添加量が、ビニル芳香族モノマーに対して500ppm以上、700ppm以上、900ppm以上、又は1000ppm以上であって、好ましくは、ビニル芳香族モノマーに対して1000ppmを超える又は1100ppm以上が挙げられる。該α−ヒドロキシナフトキノンとα−ヒドロキシベンゾキノンの合計添加量は、経済性の観点から1500ppm以下が挙げられる。なお、本開示における組成物における、α−ヒドロキシナフトキノンとα−ヒドロキシベンゾキノンの含有量(質量比)は、上述のとおりである。
よって、本開示にかかる重合抑制方法は、一又は複数の実施形態において、ビニル芳香族モノマーの製造、精製、貯蔵、及び輸送工程からなる群から選択される少なくとも1つの工程において、ビニル芳香族モノマーの溶液又は雰囲気が120℃±3℃又はそれ以上となる工程がある場合に、その工程又はその前に、ビニル芳香族モノマーに対してα−ヒドロキシナフトキノン及びα−ヒドロキシベンゾキノンを合計量として1000ppmを超える又は1100ppm以上となるように添加することを含む、ビニル芳香族モノマーの重合を抑制する方法である。
本開示にかかる重合抑制方法は、一又は複数の実施形態において、α−ヒドロキシベンゾキノン溶液の効果を損なわない範囲で他の公知の重合禁止剤及び/又は重合遅延剤を併用してもよい。
[ビニル芳香族モノマーの精製方法]
本開示は、一態様において、ビニル芳香族モノマーを含有する混合物を加熱下に蒸留してビニル芳香族モノマーを単離する工程を含むビニル芳香族モノマーの精製方法であって、前記単離工程において、前記混合物に本開示にかかるこれらの組成物を添加することを含む、ビニル芳香族モノマーの精製方法に関する。
本開示にかかる精製方法において、本開示にかかるこれらの組成物及び添加量は上述のとおりである。
本開示にかかる精製方法において、ビニル芳香族モノマーを含有する混合物を蒸留する地点の上流で、連続的又は断続的に、本開示にかかるこれらの組成物を添加することができる。あるいは、前記精製方法において、ビニル芳香族モノマーを含有する混合物を蒸留する地点より前の異なる導入地点において、連続的又は断続的に、本開示にかかるこれらの組成物を添加してもよい。
本発明はさらに以下の一又は複数の実施形態に関する。
<1> α−ヒドロキシナフトキノンと、α−ヒドロキシベンゾキノンとを含むビニル芳香族モノマーの重合を抑制するための組成物。
<2> α−ヒドロキシナフトキノンとα−ヒドロキシベンゾキノンと含有量比が、1:4〜4:1である、<1>記載の組成物。
<3> α−ヒドロキシナフトキノンが、2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、及びこれらの組み合わせから選択される、<1>又は<2>に記載の組成物。
<4> α−ヒドロキシベンゾキノンが、2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゾキノン、テトラヒドロキシ−1,4−ベンゾキノン、及びこれらの組み合わせから選択される、<1>から<3>のいずれかに記載の組成物。
<5> ビニル芳香族モノマーの製造、精製、貯蔵、及び輸送工程からなる群から選択される少なくとも1つの工程に、<1>から<4>のいずれかに記載の組成物を添加することを含む、ビニル芳香族モノマーの重合を抑制する方法。
<6> α−ヒドロキシナフトキノン及びα−ヒドロキシベンゾキノンの少なくとも一方が溶媒に溶解した状態で、前記製造、精製、貯蔵、又は輸送工程に添加される、<5>記載の方法。
<7> ビニル芳香族モノマーを含有する混合物を加熱下に蒸留してビニル芳香族モノマーを単離する工程を含むビニル芳香族モノマーの精製方法であって、前記単離工程において、前記混合物に<1>から<4>のいずれかに記載の組成物を添加することを含む、ビニル芳香族モノマーの精製方法。
<8> α−ヒドロキシナフトキノン及びα−ヒドロキシベンゾキノンの少なくとも一方が溶媒に溶解した状態で前記単離工程に添加される、<7>記載の精製方法。
以下、実施例を用いて本開示をさらに説明する。ただし、本開示は以下の実施例に限定して解釈されない。
[α−ヒドロキシナフトキノン]
α−ヒドロキシナフトキノンとして下記を使用した。
2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン(以下、LSNと表す)
2,3−ジヒドロキシ−1,4−ナフトキノン(以下、INZと表す)
[α−ヒドロキシベンゾキノン]
α−ヒドロキシベンゾキノンとして下記を使用した。
テトラヒドロキシ−1,4−ベンゾキノン(以下、BQTHと表す)
2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゾキノン(以下、DHBQと表す)
[ビニル芳香族モノマー]
ビニル芳香族モノマーとして、市販のスチレンを、活性アルミナ(たとえばSigma−Aldrich社製Inhibitor remover)充填カラムを通過させて安定剤(tert−ブチルカテコール)を除去した後、以下の実験で用いた。
[ポリマー形成実験]
温度コントローラーつき熱電対、コンデンサーおよびガス吹き込み用ガラスチューブを備えた100mL三つ首フラスコに、スチレン(100g)及び重合抑制剤を加えたスチレン溶液を配置した。次に、窒素ガスを100ml/分の速度で前記スチレン溶液中に注入(ガスパージング)した。このガスパージングは以下のサンプリングが終了するまで継続した。あらかじめ40℃に調整したオイルバスに前記三つ首フラスコを浸漬させ、前記スチレン溶液の温度が40分間で120℃に到達するように加熱した。
前記スチレン溶液の温度が120℃へ到達後、所定の時間にコンデンサー上部からテフロン(登録商標)チューブを挿入し、約0.5mLのスチレン溶液を三つ首フラスコ中の前記スチレン溶液から採取した。
[ポリマー量の測定方法]
採取したスチレン溶液をトルエンで適当に希釈した。その希釈液へメタノールを添加することにより生じた濁度を測定した。この結果と、予め標準ポリスチレンにより作成した濃度と濁度との検量線とを用いて、採取したスチレン溶液におけるポリマー濃度(ppm)を求めた。
[実施例1−4]
重合抑制剤として、LSNとBQTHとの組合せを使用してポリマー形成実験を行った。実施例1では、スチレンに対して600ppmのLSN及び600ppmのBQTHを粉末の状態で添加した。実施例2では、スチレンに対して800ppmのLSN及び400ppmのBQTHを粉末の状態で添加した。実施例3では、スチレンに対して400ppmのLSN及び800ppmのBQTHを粉末の状態で添加した。実施例4では、実施例3と同じ量のLSN及びBQTHをジエチレングリコールモノメチルエーテル(MDG)に溶解させた溶液の状態で添加した。
比較例1として、スチレンに対して1200ppmのLSNを粉末の状態で添加した。
比較例2として、スチレンに対して1200ppmのBQTHを粉末の状態で添加した。
これらの結果を下記表1及び図1に示す。
[実施例5]
重合抑制剤として、スチレンに対して600ppmのLSNと600ppmのDHBQを粉末の状態で添加してポリマー形成実験を行った。
比較例3として、スチレンに対して1200ppmのLSNを粉末の状態で添加した。
比較例4として、スチレンに対して600ppmのDHBQを粉末の状態で添加した。
これらの結果を下記表1及び図2に示す。
[実施例6]
重合抑制剤として、スチレンに対して600ppmのINZと600ppmのBQTHを粉末の状態で添加してポリマー形成実験を行った。
比較例5として、スチレンに対して1200ppmのINZを粉末の状態で添加した。
比較例6として、スチレンに対して1200ppmのBQTHを粉末の状態で添加した。
これらの結果を下記表1及び図3に示す。
Figure 2017001970
※実施例3では粉末形態のLSN及びBQTHを添加し、実施例4では、LSN及びBQTHをMDGに溶解させたものを添加した。
LSN: 2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン
INZ: 2,3−ジヒドロキシ−1,4−ナフトキノン
BQTH: テトラヒドロキシ−1,4−ベンゾキノン
DHBQ: 2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゾキノン
MDG: ジエチレングリコールモノメチルエーテル
表1及び図1に示すとおり、LSNとα−ヒドロキシベンゾキノン(BQTH)との組合せ(実施例1〜3)では、それぞれ単独で同濃度添加した比較例(比較例1及び2)よりも長時間重合抑制の効果、すなわち、相乗的に向上した重合抑制効果を発揮した。
表1及び図1に示すとおり、LSNとα−ヒドロキシベンゾキノンを溶液で添加すると(実施例4)、粉末形態で添加した場合に比べ(実施例3)重合抑制効果がいっそう向上した。
表1及び図2に示すとおり、LSNとα−ヒドロキシベンゾキノン(DHBQ)との組合せ(実施例5)では、それぞれ単独で添加した比較例(比較例3及び4)に比べて長時間の重合抑制の効果を発揮した。
表1及び図3に示すとおり、INZとα−ヒドロキシベンゾキノンとの組合せ(実施例6)では、測定開示から1時間の範囲で、比較例6より強い重合抑制の効果を発揮した。すなわち、重合禁止剤のような効果を発揮した。
なお、α−ヒドロキシナフトキノンと、α−ヒドロキシ基を持たないベンゾキノンとの組合せ、並びに、α−ヒドロキシ基を持たないナフトキノンと、α−ヒドロキシベンゾキノンとの組合せでは、上記の効果はいずれも発揮されなかった。

Claims (8)

  1. α−ヒドロキシナフトキノンと、α−ヒドロキシベンゾキノンとを含むビニル芳香族モノマーの重合を抑制するための組成物。
  2. α−ヒドロキシナフトキノンとα−ヒドロキシベンゾキノンと含有量比が、1:4〜4:1である、請求項1記載の組成物。
  3. α−ヒドロキシナフトキノンが、2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
  4. α−ヒドロキシベンゾキノンが、2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゾキノン、テトラヒドロキシ−1,4−ベンゾキノン、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。
  5. ビニル芳香族モノマーの製造、精製、貯蔵、及び輸送工程からなる群から選択される少なくとも1つの工程に、請求項1から4のいずれかに記載の組成物を添加することを含む、ビニル芳香族モノマーの重合を抑制する方法。
  6. α−ヒドロキシナフトキノン及びα−ヒドロキシベンゾキノンの少なくとも一方が溶媒に溶解した状態で、前記製造、精製、貯蔵、又は輸送工程に添加される、請求項5記載の方法。
  7. ビニル芳香族モノマーを含有する混合物を加熱下に蒸留してビニル芳香族モノマーを単離する工程を含むビニル芳香族モノマーの精製方法であって、
    前記単離工程において、前記混合物に請求項1から4のいずれかに記載の組成物を添加することを含む、ビニル芳香族モノマーの精製方法。
  8. α−ヒドロキシナフトキノン及びα−ヒドロキシベンゾキノンの少なくとも一方が溶媒に溶解した状態で前記単離工程に添加される、請求項7記載の精製方法。
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JP2020132678A (ja) * 2019-02-13 2020-08-31 栗田工業株式会社 不飽和芳香族単量体の重合を抑制する方法
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