以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1に示すように、本実施形態の電源システム100は、車両用のバッテリ10と、バッテリ10の電圧を昇圧する昇圧コンバータ60と、複数のスイッチング素子をオン・オフさせて昇圧コンバータ60によって昇圧された高電圧の直流電力をモータジェネレータ等の負荷85を駆動する三相交流電力に変換するインバータ80と、バッテリ10と昇圧コンバータ60との間の電路をオン・オフするシステムメインリレー57とを含む電源系統110と、バッテリ10の電圧及び電源系統110の対地絶縁抵抗を検出する電源状態検出装置40とを備えている。
バッテリ10の正極及び負極とは、昇圧コンバータ60の正極側入力電路61および負極側入力電路62とそれぞれ正極電路51および負極電路52によって接続されている。正極電路51には正極システムメインリレー53が配置され、負極電路52には負極システムメインリレー54が接続されている。また、バッテリ10から昇圧コンバータ60への突入電流を抑制する突入電流防止抵抗56と補助リレー55とが負極システムメインリレー54と並列に接続されている。
昇圧コンバータ60の正極側入力電路61および負極側入力電路62との間にはバッテリ10と並列になるようにフィルタコンデンサ63が接続されている。昇圧コンバータ60の負極側入力電路62は負極側出力電路72に直接接続されている。そして、昇圧コンバータ60の正極側出力電路71と負極側出力電路72との間には、正極側出力電路71から負極側出力電路72に向ってスイッチング素子65、67が直列に接続されている。また、各スイッチング素子65,67にはそれぞれダイオード66,68が逆並列に接続されている。各スイッチング素子65、67の接続点は、正極側入力電路61に接続されており、フィルタコンデンサ63とスイッチング素子65,67の接続点との間の正極側入力電路61には、リアクトル64が配置されている。正極側出力電路71は、昇圧コンバータ60で昇圧した高電圧が流れる高圧電路71である。正極側出力電路71と負極側出力電路72との間には、昇圧コンバータ60の出力電圧を平滑にする平滑コンデンサ69が各スイッチング素子65,67と並列に接続されている。
昇圧コンバータ60の正極側出力電路71(高圧電路71)と負極側出力電路72とはインバータ80に接続され、インバータ80の出力端子81、82は負荷85に接続されている。また、昇圧コンバータ60とインバータ80との間の正極側出力電路71(高圧電路71)と負極側出力電路72の間には、放電抵抗76が接続されている。昇圧コンバータ60の正極側出力電路71(高圧電路)とグランドとの間の対地絶縁抵抗(RHp)及び負極側出力電路72とグランドとの間の対地絶縁抵抗(RHn)は、それぞれ絶縁抵抗75、77(RHp(75)、RHn(77))として模式的に示す。
正極システムメインリレー53、負極システムメインリレー54、補助リレー55、昇圧コンバータ60の各スイッチング素子65,67、インバータ80の各スイッチング素子とは制御部90に接続され、制御部90の指令によって駆動される。制御部90は、内部に情報処理或いは演算処理を行うCPUと、データ或いはプログラム等を格納する記憶部とを含むコンピュータである。
図1に示すように、電源状態検出装置40は、電源状態検出回路42と電源監視制御部41とを備えている。電源状態検出回路42は、バッテリ10と並列に接続されたキャパシタ13と、電圧検出器30と、第1正極リレー16、第1負極リレー17、第2正極リレー18、第2負極リレー19、正極接地抵抗20、負極接地抵抗21、正極ツェナーダイオード22、負極ツェナーダイオード23とを含んでいる。
バッテリ10の正極端とキャパシタ13の一端(正極側端)とは第1正極検出電路11aで接続され、バッテリ10の負極端とキャパシタ13の他端(負極側端)とは第1負極検出電路12aで接続されている。第1正極検出電路11aのバッテリ10とキャパシタ13との間には、第1正極検出電路11aをオン・オフする第1正極リレー(S1)16と抵抗14とが配置されており、第1負極検出電路12aのバッテリ10とキャパシタ13との間には、第1負極検出電路12aをオン・オフする第1負極リレー(S2)17と抵抗15とが配置されている。また、キャパシタ13の一端(正極側端)と電圧検出器30の正極側入力端子31とは第2正極検出電路11bで接続され、キャパシタ13の他端(負極側端)と電圧検出器30の負極側入力端子32とは第2負極検出電路12bで接続されている。第2正極検出電路11bのキャパシタ13と電圧検出器30の正極側入力端子31との間には第2正極リレー(S3)18が配置され、第2負極検出電路12bのキャパシタ13と電圧検出器30の負極側入力端子32との間には第2負極リレー(S4)19が配置されている。
第2正極リレー(S3)18と電圧検出器30の正極側入力端子31との間の第2正極検出電路11bとグランドとは正極接地抵抗20で接続され、第2負極リレー(S4)119と電圧検出器30の負極側入力端子32との間の第2負極検出電路12bとグランドとは負極接地抵抗21で接続されている。また、第2正極検出電路11bとグランドの間には、正極接地抵抗20と並列に正極ツェナーダイオード22が配置され、第2負極検出電路12bとグランドとの間には負極接地抵抗21と並列に負極ツェナーダイオード23が配置されている。
電源状態検出回路42の各リレー(S1〜S4)16〜19は、電源監視制御部41に接続され、電源監視制御部41の指令によってオン・オフ動作する。また、電源監視制御部41は、電源状態検出回路42の電圧検出器30によって検出した電圧に基づいて電源システム100の対地絶縁抵抗値(RHp(75)、RHn(77))を算出する。電源監視制御部41は、内部に情報処理或いは演算処理を行うCPUと、データ或いはプログラム等を格納する記憶部とを含むコンピュータであり、制御部90とデータバス91で接続されて相互にデータ、情報の授受を行うよう構成されている。
<電源監視制御部の基本動作>
以上のように構成された電源システム100の電源監視制御部41の基本動作であるバッテリ10の電圧検出、正極側出力電路71(高圧電路71)の対地絶縁抵抗(RHp(75))の抵抗値の検出、昇圧コンバータ60の負極側出力電路72の対地絶縁抵抗(RHn(77))の抵抗値の検出動作について図2〜図5、図11〜図13を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、第1正極リレー16、第1負極リレー17、第2正極リレー18、第2負極リレー19には、それぞれ、S1(16)、S2(17)、S3(18)、S4(19)の表示を用いる。また、以下の実施形態では、一例として、バッテリ10の電圧VBは200V、昇圧コンバータ60の出力電圧VH(正極側出力電路71(高圧電路71)の電圧)は750V、正極及び負極ツェナーダイオード22,23の動作電圧VTは450Vとして説明する。
<バッテリの電圧検出>
図2に示すように、電源システム100は、正極及び負極システムメインリレー53,54が閉でバッテリ10が昇圧コンバータ60に接続され、昇圧コンバータ60で昇圧された直流の高電圧がインバータ80に供給され、インバータ80が直流電力を交流電力に変換して負荷85に供給している状態である。電源監視制御部41は、図11に示す時刻ゼロに図2に示すように、S1(16)、S2(17)をオン、S3(18)、S4(19)をオフとして、[バッテリ10→第1正極検出電路11a→抵抗14→S1(16)→キャパシタ13→S2(17)→抵抗15→第1負極検出電路12a→バッテリ10]と電流が流れる回路R1を形成し、バッテリ10によってキャパシタ13の充電を開始する。
図11の実線a1に示す様に、バッテリ10によってキャパシタ13の充電が開始されると、時間の経過と共に、キャパシタ13の両端の電圧VCは上昇し、バッテリ10の電圧VB(200V)に達する。
電源監視制御部41は、所定時間だけS1(16)、S2(17)をオン、S3(18)、S4(19)をオフとしてバッテリ10によってキャパシタ13の充電を行ったら、図11に示す時刻t1にキャパシタ13の充電を終了し、図3に示す様に、S1(16)、S2(17)をオフ、S3(18)、S4(19)をオンとして、キャパシタ13とバッテリ10との接続を遮断すると共に、キャパシタ13と電圧検出器30とを接続する。また、上記動作により、[キャパシタ13→第2正極検出電路11b→S3(18)→正極接地抵抗20→負極接地抵抗21→S4(19)→第2負極検出電路12b→キャパシタ13]と電流が流れる回路R2が形成される。このため、キャパシタ13に溜まっていた電荷は回路R2を通って放電される。キャパシタ13の両端の電圧は、図11の破線b1に示す様に、放電によって時刻t1から次第に低下してくる。電源監視制御部41は、時刻t1の直後のキャパシタ13の両端の電圧VCが安定している間に第2正極検出電路11b、第2負極検出電路12bを通してキャパシタ13の電圧VCを計測し、これによってバッテリ10の電圧を検出する。そして、電源監視制御部41は、時刻t2にキャパシタ13の両端の電圧VCの検出を終了する。キャパシタ13の電荷は時刻t2にはゼロまで放電していないので、電源監視制御部41は、キャパシタ13の電荷が完全に放電されてキャパシタ13の両端の電圧VCがゼロとなるまで、S1(16)、S2(17)をオフ、S3(18)、S4(19)をオンとした状態を保持する。そして、キャパシタ13が完全に放電されたら、バッテリ10の電圧検出を終了する。
<高圧電路71の対地絶縁抵抗(RHp(75))の抵抗値の検出>
以下、図4、図3、図12を参照しながら正極側出力電路71(高圧電路71)の絶縁抵抗(RHp)75の抵抗値の検出動作について説明する。なお、以下の説明においては、正極側出力電路71は、高圧電路71、正極側出力電路71(高圧電路71)とグランドとの間の対地絶縁抵抗はRHp(75)、負極側出力電路72とグランドとの間の対地絶縁抵抗はRHn(77)の表示を用いる。
図4に示すように、電源監視制御部41は、図12に示す時刻ゼロにS2(17)、S3(18)をオン、S1(16)、S4(19)をオフとして、図4に示すように、[高圧電路71→RHp(75)→グランド→正極接地抵抗20→S3(18)→第2正極検出電路11b→キャパシタ13→S2(17)→抵抗15→第1負極検出電路12a→負極電路52→バッテリ10→正極電路51→正極システムメインリレー53→リアクトル64→ダイオード66→高圧電路71]と電流が流れる回路R3を形成する。正極側出力電路71(高圧電路7)とグランドとの間の絶縁抵抗RHp(75)の抵抗値(対地絶縁抵抗値)は非常に大きいので回路R3を流れる電流は非常に小さい。このため、図12の実線a2に示すように、キャパシタ13の充電速度は遅く、所定の時間が経過してもキャパシタ13の両端の電圧VCは図12に示すVC1までしか上昇しない。その後、電源監視制御部41は、先に説明したと同様、図3に示す様に、S1(16)、S2(17)をオフ、S3(18)、S4(19)をオンとして、回路R2を形成してキャパシタ13を放電させる。すると図12の破線b2のようにキャパシタ13の電圧VCは低下していく。また、電圧検出器30は、図12に示す時刻t1の後のキャパシタ13の両端の電圧VCが安定している間に第2正極検出電路11b、第2負極検出電路12bを通してキャパシタ13の電圧VCを検出する。高圧電路71とグランドとの間の絶縁抵抗RHp(75)の抵抗値(対地絶縁抵抗値)が低下してくる、つまり、絶縁が低下してくると、先に説明した回路R3を流れる電流が大きくなってくる。このため、RHp(75)が低下してくると、図12の実線a2´に示すように、図12に示す時刻ゼロから所定の期間の終了する時刻t1までの間にキャパシタ13の電圧VCは先のVC1よりも大きなVC2まで上昇する。その後、電源監視制御部41は、先に説明したと同様、図3に示す様に、S1(16)、S2(17)をオフ、S3(18)、S4(19)をオンとしてキャパシタ13を放電させると図12の破線b2´のようにキャパシタ13の電圧VCは低下していく。電圧検出器30は、図12に示す時刻t1の後に第2正極検出電路11b、第2負極検出電路12bを通してキャパシタ13の電圧VCを検出する。このように、キャパシタ13の充電開始から所定の時間が経過した時刻t1におけるキャパシタ13の両端の電圧VCは、RHp(75)の大きさに依存し、RHp(75)が大きいほど時刻t1におけるキャパシタ13の電圧VCは小さく、RHp(75)が小さくなってくるほど時刻t1におけるキャパシタの両端の電圧VCは大きくなってくる。電源監視制御部41は、例えば、時刻t1のキャパシタ13の電圧VCとRHp(75)との関係を規定したマップ等を記憶部に格納しておき、検出したキャパシタ13の両端の電圧VCからRHp(75)の抵抗値(対地絶縁抵抗値)を検出する。
<負極側出力電路72の対地絶縁抵抗(RHn(77))の抵抗値の検出>
以下、図5、図3、図13を参照しながら負極側出力電路72の絶縁抵抗(RHn)77の抵抗値の検出動作について説明する。
図5に示すように、電源監視制御部41は、図13に示す時刻ゼロにS1(16)、S4(19)をオン、S2(17)、S3(18)をオフとして、[バッテリ10→第1正極検出電路11a→抵抗14→S1(16)→キャパシタ13→第2負極検出電路12b→S4(19)→負極接地抵抗21→グランド→RHn(77)→負極側出力電路72→負極システムメインリレー54→負極電路52→バッテリ10]と電流が流れる回路R4を形成し、時刻t1までの間キャパシタ13を充電し、図3に示すように、時刻t1にS1(16)、S2(17)をオフ、S3(18)、S4(19)をオンとしてキャパシタ13を放電させる。これによりキャパシタ13の電圧VCは、時刻ゼロから時刻t1の間、実線a3或いはa3´のように上昇し、時刻t1以降は破線b3或いは破線b3´のように低下する。先に、RHp(75)の抵抗値(対地絶縁抵抗値)の検出動作で述べたと同様、RHp(75)の抵抗値(対地絶縁抵抗値)が低下してくると、図13の実線a3からa3´に示すようにキャパシタ13の電圧VCの上昇カーブが急になり、時刻t1におけるキャパシタ13の電圧VCの検出値もVC3からVC4に大きくなる。電源監視制御部41は、例えば、時刻t1のキャパシタ13の電圧VCとRHn(77)との関係を規定したマップ等を記憶部に格納しておき、検出したキャパシタ13の両端の電圧VCからRHn(77)の抵抗値を検出する。
<高圧電路71が地絡した場合の電流の流れと電源監視制御部の動作>
次に、RHp(75)がほとんどゼロで高圧電路71が地絡状態となった場合の電流の流れと電源監視制御部41の動作について説明する。
<高圧電路71が地絡した場合のバッテリの電圧検出>
まず、RHp(75)がほとんどゼロで高圧電路71が地絡状態となった場合のバッテリ10の電圧検出の際の電流の流れ、各検出電路の電圧の変化、及び、キャパシタ13の両端の電圧VCの変化について説明する。電源監視制御部41は、図2を参照して説明したように、S1(16)、S2(17)をオン、S3(18)、S4(19)をオフとして回路R1を形成し、バッテリ10によってキャパシタ13を充電する。図11に示すように、時刻t1にキャパシタ13の両端の電圧VCは、バッテリ10の電圧VB(200V)となる。
時刻t1に電源監視制御部41はキャパシタ13の電圧VCの検出を行うために、図6Aに示すように、S1(16)、S2(17)をオフ、S3(18)、S4(19)をオンとする。今、RHp(75)がほとんどゼロで高圧電路71が地絡状態となっているので、グランドの電圧は略VH(750V)となっている。すると、図6Aに示すように、[高圧電路71→グランド→負極接地抵抗21→第2負極検出電路12b→S4(19)→キャパシタ13→S3(18)→第2正極検出電路11b→正極ツェナーダイオード22→グランド→負極電路52→バッテリ10→正極電路51→正極システムメインリレー53→リアクトル64→ダイオード66→高圧電路71]と電流が流れる回路R5が形成される。正極ツェナーダイオード22は第2正極検出電路11bの電圧がクリップ電圧VTの450Vになると、第2正極検出電路11bからグランドに向かって電流を流すので、キャパシタ13の正極側電圧或いは第2正極検出電路11bの電圧は図11の*を付した線c1のように、一気にVT(450V)まで上昇する。一方、時刻t1の直後は、S4(19)を含む第2負極検出電路12bの電圧は、図11の二点鎖線d1に示すように、キャパシタ13の負極側電圧或いは第2正極検出電路11bの電圧はVT(450V)からキャパシタ13に充電された電圧VC(=VB(200V))を差し引いた電圧である250Vまで一旦上昇する(VT(450V)−VB(200V)=250V)。キャパシタ13の両端の電圧VCは、時刻t1の直後は、図11の○を付した線e1に示す様に、略200V(=VB)となる。
グランドの電圧はVH(750V)なので、時刻t1の後、第2負極検出電路12bの電圧が250Vになった後も、図6Bに示すように、グランドから負極接地抵抗21を通って電流がキャパシタ13の負極側に流れ込んでくる。これにより、第2負極検出電路12bの電圧は、250Vになった後、図11の二点鎖線d1のように急速に上昇する。そして電圧がVT(450V)に達すると、負極ツェナーダイオード23が動作し、[グランド→負極接地抵抗21→第2負極検出電路12b→負極ツェナーダイオード23→グランド]と電流が流れる回路R6が形成され、第2負極検出電路12bの電圧は負極ツェナーダイオード23によってVT(450V)に保持される。キャパシタ13の両端の電圧VCは、図11の*を付した線c1で示す第2正極検出電路11bの電圧と図11に二点鎖線d1で示す第2負極検出電路12bの電圧との差であるから、図11に○を付した線e1に示すように時刻t1の略VB(200V)から0Vまで急速に低下する。以上説明したように、第2正極検出電路11b、第2負極検出電路12bの電圧は、正極及び負極ツェナーダイオード22,23によってVT(450V)を超えない。従って、高圧電路71が地絡した場合のバッテリ10の電圧検出を行う場合、図6Bに示すように、バッテリ10側の電圧が0VとなっているS2(17)の両端に印加される電圧は、最大でもVT(450V)となるため、S2(17)の耐電圧を低く設定することができる。また、図6Aに示す状態でも、第2正極検出電路11b、第2負極検出電路12bの電圧はVT(450V)までしか上昇しないので、図11に示す時刻t1の直前で、図4に示すS4(19)がオフでS4(19)の第1負極検出電路12a側の電圧がゼロとなっている場合でも、S4(19)の両端に印加される電圧はVT(450V)を超えない。このため、S1(16)〜S4(19)の耐電圧を低く設定することができる。このように、スイッチの耐電圧を低く設定することにより、絶縁検出頻度を向上させることが可能となり、検出精度を向上させることができる。
<高圧電路71が地絡した場合のRHp(75)の抵抗値(対地絶縁抵抗値)検出>
次に、RHp(75)の抵抗値(対地絶縁抵抗値)がほとんどゼロで高圧電路71が地絡状態となった場合のRHp(75)の抵抗値(対地絶縁抵抗値)検出の際の電流の流れ、各検出電路の電圧の変化、及び、キャパシタ13の両端の電圧VCの変化について説明する。
電源監視制御部41は、図4を参照して説明したように、S2(17)、S3(18)をオン、S1(16)、S4(19)をオフとして図4に示す回路R3を形成してキャパシタ13を充電しようとする。しかし、RHp(75)の抵抗値(対地絶縁抵抗値)がほとんどゼロで高圧電路71が地絡状態となった場合には、グランドの電圧は略VH(750V)となっているので、図4を参照して説明した回路R3の他に、図7に示すように、[グランド→正極接地抵抗20→第2正極検出電路11b→正極ツェナーダイオード22→グランド]と電流が流れる回路R7と、[グランド→負極接地抵抗21→第2負極検出電路12b→負極ツェナーダイオード23→グランド]と電流が流れる回路R8とが形成され、キャパシタ13の正極側の電圧は図12の*を付した線c2に示すように、時刻ゼロから各ツェナーダイオード22,23の動作電圧であるVT(450V)まで急速に上昇する。一方、S4(19)がオフとなっており、キャパシタ13の負極側はバッテリ10の負極に接続されているので、図12に二点鎖線d2で示すキャパシタ13の負極側の電圧は0Vとなっている。従って、図7に示す状態では、S4(19)の両端の電圧差はVT(450V)である。なお、正極及び負極ツェナーダイオード22,23が無い場合には、第2正極検出電路11b,第2負極検出電路12bの電圧は、図12の一点鎖線f2に示すように、高圧電路71の電圧、即ち、昇圧コンバータ60で昇圧した電圧VHである750Vまで上昇し、S4(19)の両端の電圧差は750Vとなってしまう。
図12に示す時刻t1に、電源監視制御部41は、図8Aに示すように、S1(16)、S2(17)をオフ、S3(18)、S4(19)をオンとしてキャパシタ13の電圧の検出を行おうとする。電源監視制御部41がS1(16)をオフ、S4(19)をオンとした瞬間のキャパシタ13の負極側の電圧は0Vであり、キャパシタ13の両端の電圧VCはVT(450V)となるが、上記動作により、図6Aを参照して説明したと同様、回路R5が形成されるので、電流が急速にキャパシタ13の負極側に流れ込み、図8B、図12の二点鎖線d2に示すようにキャパシタ13の負極側の電圧はツェナーダイオード23の動作電圧であるVT(450V)まで急速に上昇する。キャパシタ13の両端の電圧VCは、図12の*を付した線c2で示すキャパシタ13の正極側の電圧と図12に二点鎖線d2で示すキャパシタ13の負極側の電圧との差であるから、キャパシタ13の両端の電圧VCは図12に○を付した線e2に示すように、時刻t1の略VT(450V)から0Vまで急速に低下する。以上説明したように、高圧電路71が地絡した場合のRHp(75)の抵抗値(対地絶縁抵抗値)の検出を行う際にも、キャパシタ13の正極側及び負極側の電圧、第2正極検出電路11b、第2負極検出電路12bの電圧は、正極及び負極ツェナーダイオード22,23によってVT(450V)を超えない。従って、図8Bに示すように、S2(17)の両端に印加される電圧は最大でもVT(450V)となるため、S2(17)の耐電圧を低く設定することができる。また、図7に示す状態でも、S4(19)の負極ツェナーダイオード側の端子に印加される電圧もVT(450V)までしか上昇しないので、S4(19)の両端に印加される電圧もVT(450V)を超えない。このため、S1(16)〜S4(19)の耐電圧を低く設定することができる。このように、スイッチの耐電圧を低く設定することにより、絶縁検出頻度を向上させることが可能となり、検出精度を向上させることができる。
電源監視制御部41は、電圧検出器30で検出したキャパシタ13の両端の電圧VCが各ツェナーダイオード22,23の動作電圧であるVT(450V)以上となった場合には、RHp(75)がほとんどゼロで高圧電路71が地絡状態であると判定し、データバス91を介してその情報を制御部90に送信する。
<高圧電路71が地絡した場合のRHn(77)の抵抗値(対地絶縁抵抗値)検出>
次に、RHp(75)がほとんどゼロで高圧電路71が地絡状態となった場合のRHn(77)の抵抗値(昇圧コンバータ60の負極側出力電路72の対地絶縁抵抗値)検出の際の電流の流れ、各検出電路の電圧の変化、及び、キャパシタ13の両端の電圧VCの変化について説明する。
電源監視制御部41は、図5を参照して説明したように、S1(16)、S4(19)をオン、S2(17)、S3(18)をオフとして図5に示す回路R4を形成してキャパシタ13を充電しようとする。しかし、RHp(75)がほとんどゼロで高圧電路71が地絡状態となった場合には、グランドの電圧は略VH(750V)となっているので、図9に示すように、[高圧電路71→グランド→正極接地抵抗20→第2正極検出電路11b→正極ツェナーダイオード22→グランド→負極電路52→バッテリ10→正極電路51→正極システムメインリレー53→リアクトル64→ダイオード66→高圧電路71]と電流が流れる回路R9と、[グランド→第2負極検出電路12b→負極ツェナーダイオード23→グランド]と電流の流れる回路R8とが形成され、図13の二点鎖線d3に示すようにキャパシタ13の負極側の電圧は、負極ツェナーダイオード23の動作電圧であるVT(450V)まで上昇する。一方、図9に示すように、キャパシタ13の正極側はバッテリ10の正極に接続されているので、図13の*を付した線c3に示すように、その電圧はバッテリ10の電圧VB=200Vまで上昇する。なお、正極及び負極ツェナーダイオード22,23が無い場合には、第2正極検出電路11b,第2負極検出電路12bの電圧は、図13の一点鎖線f3に示すように、高圧電路71の電圧、即ち、昇圧コンバータ60で昇圧した電圧VHである750Vまで上昇し、S4(19)の両端の電圧差は750Vとなってしまう。
図13に示す時刻t1に、電源監視制御部41は、図10Aに示すように、S1(16)、S2(17)をオフ、S3(18)、S4(19)をオンとしてキャパシタ13の電圧の検出を行おうとすると、図10Aに示すように、[高圧電路71→グランド→正極接地抵抗20→第2正極検出電路11b→S3(18)→キャパシタ13→S4(19)→第2負極検出電路12b→負極ツェナーダイオード23→グランド→負極電路52→バッテリ10→正極電路51→正極システムメインリレー53→リアクトル64→ダイオード66→高圧電路71]と電流が流れる回路R10が形成される。電源監視制御部41がS1(16)をオフ、S4(19)をオンとした瞬間のキャパシタ13の負極側の電圧は負極ツェナーダイオード23の動作電圧であるVT(450V)であり、キャパシタ13の正極側の電圧はバッテリ10の電圧VBの200Vであるが、上記の回路R10が形成されると、図13の*を付した線c3に示すように、キャパシタ13の正極側の電圧は、時刻t1の直後に負極側の電圧VB(200V)からバッテリ10の電圧VB=200Vを引いた250Vまで急速に上昇する。このため、電圧検出器30の正極側入力端子31に印加される電圧は250V、負極側入力端子32に印加される電圧はVT(450V)となる。この際、電圧検出器30は、図13の○を付した線e3に示す様に、−VB(−200V)をキャパシタ13の電圧として検出する。
時刻t1の後、回路R10を通してさらに電流が流れるので、キャパシタ13の正極側の電圧或いは第2正極検出電路11bの電圧は、図13の*を付した線c3に示すように、250Vから正極ツェナーダイオード22の動作電圧であるVT(450V)まで急速に上昇する。キャパシタ13の正極側の電圧或いは第2正極検出電路11bの電圧が正極ツェナーダイオード22の動作電圧であるVT(450V)まで上昇すると図10Bに示すように、[第2正極検出電路11b→正極ツェナーダイオード22→グランド]と電流が流れる回路R11が形成され、第2正極検出電路11bの電圧はVT(450V)に維持される。従って、電圧検出器30の検出するキャパシタ13の電圧は、図13の○を付した線e3に示すように、時刻t1の―VB(−200V)から急速に0Vとなる。以上説明したように、高圧電路71が地絡した場合のRHn(77)の抵抗値(対地絶縁抵抗値)の検出を行う際にも、キャパシタ13の正極側及び負極側の電圧、第2正極検出電路11b、第2負極検出電路12bの電圧は、正極及び負極ツェナーダイオード22,23が動作することによってVT(450V)を超えない。従って、図9、図10A,図10Bに示すように、S2(17)、S1(16)の両端に印加される電圧は最大でもVT(450V)となるため、S1(16)、S2(17)の耐電圧を低く設定することができる。このため、S1(16)〜S4(19)の耐電圧を低く設定することができる。このように、スイッチの耐電圧を低く設定することにより、絶縁検出頻度を向上させることが可能となり、検出精度を向上させることができる。
電源監視制御部41は、RHn(77)の抵抗値(対地絶縁抵抗値)検出を行う際に、電圧検出器30で検出したキャパシタ13の両端の電圧VCが負電圧(−VB(−200V))となった場合には、RHp(75)がほとんどゼロで高圧電路71が地絡状態であると判定し、データバス91を介してその情報を制御部90に送信する。
以上説明したように、本実施形態の電源システム100は、電源状態検出回路42に正極及び負極ツェナーダイオード22,23を取り付けることによって、RHp(75)がほとんどゼロで高圧電路71が地絡状態である場合にバッテリ10の電圧を検出する際も、RHp(75)の抵抗値(対地絶縁抵抗値)を検出する際も、RHn(77)の抵抗値(対地絶縁抵抗値)を検出する際にも、S1(16)〜S4(19)に印加される電圧を正極及び負極ツェナーダイオード22,23の動作電圧であるVT(450V)を超えないようにすることができ、S1(16)〜S4(19)がオン故障しないようにすることができる。また、S1(16)〜S4(19)に抵抗の小さい耐電圧の低いリレーを用いることができるので、RHp(75)が非常に大きい通常状態において、図3に示すように回路R2を形成してキャパシタ13の電荷を放電させる際に、短時間でキャパシタ13を放電させることができ、バッテリ10の電圧検出或いはRHp(75)、RHn(77)の抵抗値(対地絶縁抵抗値)の検出頻度を高くすることができる。
RHp(75)がほとんどゼロで高圧電路71が地絡状態である場合には、図11の○を付した線e1、図12の○を付した線e2、図13の○を付した線e3に示すように、電圧検出器30の検出する電圧は、時刻t1の後急速に変化してしまう。このため、電圧検出器30によって検出する電圧の精度が低下することがある。図11〜図13の*を付した線c1,c2,c3で示すキャパシタ13の正極側の電圧、二点鎖線d1,d2,d3で示すキャパシタ13の負極側の電圧の時間変化は、S1(16)、S2(17)をオフ、S3(18)、S4(19)をオンとした際にキャパシタ13に向って流れる電流の大きさで決まってくる。この電流の大きさは、高圧電路71の電圧、即ち、昇圧コンバータ60の出力電圧によって決まってくるので、RHp(75)がゼロ近くまで低下した場合には、昇圧コンバータ60の出力電圧を制限することにより、キャパシタ13の正極側及び負極側の電圧の時間変化を緩やかにすることができ、これにより、電圧検出器30の電圧検出精度が低下することを抑制することができる。
<高圧電路71が地絡した場合にRHp(75)の検出処理を用いて正極及び負極ツェナーダイオード22,23が動作しないできるだけ高い電圧に昇圧コンバータの出力電圧を設定する動作>
以下に説明するように、昇圧コンバータ60の出力電圧を正極及び負極ツェナーダイオード22,23が動作しないような電圧まで低減することにより、RHp(75)がゼロ近くまで低下した場合でも電圧検出器30の電圧検出精度を高く保つことができる。しかし、昇圧コンバータ60の出力電圧を制限すると、負荷85に供給できる電力が低下してしまう。そこで、本実施形態の電源システム100は、昇圧コンバータ60の出力電圧を正極及び負極ツェナーダイオード22,23が動作しないできるだけ高い電圧に設定することにより、電圧検出器30の電圧検出精度を確保しつつ、負荷にできる限り大きな電力を供給するようにする。以下、図14〜図21を参照しながら詳細に説明する。
図14のステップS101に示すように、図1に示す制御部90は、昇圧コンバータ60の出力電圧VHの指令値をVH*(750V)に設定して、昇圧コンバータ60の昇圧動作を行う。この結果、昇圧コンバータ60の正極側出力電路である高圧電路71の電圧は、VH*(750V)に制御される。次に、図14のステップS102に示す様に、図1に示す電源監視制御部41は、RHp(75)の抵抗値(対地絶縁抵抗値)の検出処理を行う。この処理は、先に、図4、図3、図7、図8A、図8B、図12を参照して説明した処理である。そして、電源監視制御部41は、図14のステップS103に示すように、図1に示す電圧検出器30によって検出したキャパシタ13の電圧VCと、所定の第1閾値電圧、例えば、正極及び負極のツェナーダイオード22,23の動作電圧であるVT(450V)とを比較し、電圧検出器30によって検出したキャパシタ13の電圧VCが所定の第1閾値以上である場合には、図14のステップS104に進み、RHp(75)の抵抗値(対地絶縁抵抗値)が略ゼロでRHp(75)が異常であると判定し、データバス91を介してRHp(75)異常の信号を制御部90に送信する。
図14のステップS105に示すように、上記の異常信号を受信した制御部90は、昇圧コンバータ60の出力電圧VHの指令値をVH*(750V)からΔVHだけ低下させ、その信号を電源監視制御部41に送信する。
電源監視制御部41は、VH*を低下させた信号を受信したら、図14のステップS106に示すように、再度、RHp(75)の抵抗値(対地絶縁抵抗値)の検出処理を行う。そして、電源監視制御部41は、図14のステップS107において、電圧検出器30が検出した電圧が、前回のRHp(75)の抵抗値の検出処理の際に検出した電圧よりも低下しているかどうかを判定する。先に、図7、図8A,図8B、図12を参照して説明したように、正極及び負極のツェナーダイオード22,23が動作した場合には、電圧検出器30が検出するキャパシタ13の電圧は正極及び負極のツェナーダイオード22,23の動作電圧であるVT(450V)一定で変化しない。このため、図14のステップS107で電圧検出器30が検出した電圧が、前回のRHp(75)の抵抗値の検出処理の際に検出した電圧と同じ場合(図14のステップS107でNOと判断した場合)、電源監視制御部41は、図14のステップS110に進み、正極及び負極ツェナーダイオード22,23が動作していると判定し、データバス91を介してその信号を制御部90に送信する。この信号を受信した制御部90は、図14のステップS105に示すように再度、出力電圧VHの指令値VH*をΔVHだけ低下させ、その信号を電源監視制御部41に送信する。
このように、制御部90と電源監視制御部41とは、図14に示すステップS105、S106、S107、S110を繰り返し、昇圧コンバータ60の出力電圧をΔVHずつ段階的に低下させていく。そして、図14のステップS107で電源監視制御部41が電圧検出器30で検出した電圧が、前回のRHp(75)の抵抗値の検出処理の際に検出した電圧よりも低下していると判定した場合(図14のステップS107でYESと判断した場合)、図14のステップS108に進み正極及び負極のツェナーダイオード22,23が動作していないと判定する。
RHp(75)の抵抗値(対地絶縁抵抗値)検出の際に、正極及び負極のツェナーダイオード22,23が動作しない場合には、昇圧コンバータ60の出力電圧(高圧電路71の電圧)に応じて電圧検出器30が検出するキャパシタ13の電圧が変化することについて、図17A、図17B、図18を参照しながら説明する。
図17A、図17Bでは、昇圧コンバータ60の出力電圧をVH2(500V)まで低下させた場合を一例として説明する。図17Aに示す様に、RHp(75)の抵抗値(対地絶縁抵抗値)が略ゼロの場合、高圧電路71の電圧はVH2(500V)、グランドの電圧もVH2(500V)となる。電源監視制御部41がRHp(75)の抵抗値(対地絶縁抵抗値)の検出を行うために、図18の時刻ゼロに、図17Aに示すようにS2(17)、S3(18)をオン、S1(16)、S4(19)をオフとすると、図4を参照して説明したと同様の回路R3が形成される。この際、第2正極検出電路11bの電圧は、グランドの電圧VH2(500V)よりも正極接地抵抗20の電圧降下の70Vだけ低いVS1(430V)で、正極ツェナーダイオード22は動作せず、電流は、回路R3を通って流れ、キャパシタ13の正極側の電圧は、図18の*を付した線c5に示す様に、VS1(430V)まで上昇し、キャパシタ13の負極側はバッテリ10の負極に接続されているので、図18の二点鎖線d5に示すようにその電圧は0Vとなっている。
図18に示す時刻t1に、図17Bに示す様に電源監視制御部41がS1(16)、S2(17)をオフ、S3(18)、S4(19)をオンとすると、先に図3を参照して説明したと同様の回路R2が形成され、キャパシタ13の電荷が放電され、キャパシタ13の負極側の電圧は、図18の二点鎖線d5に示すように、第2正極検出電路11bの電圧と同じVS1(430V)に向かって上昇していく。従ってキャパシタ13の両端の電圧VCは、図18に○を付した線e5に示すように、時刻t1のVS1(430V)から緩やかに低下していく。電源監視制御部41は、時刻t1の後のキャパシタ13の電圧変化が緩やかなときに電圧検出器30で検出したキャパシタ13の電圧VCを検出し、検出電圧とRHp(75)との関係を示すマップを用いてRHp(75)の抵抗値(対地絶縁抵抗値)を検出する。
以上説明したように、昇圧コンバータ60の出力電圧或いはグランド電圧(VH2(500V))の場合、第2正極検出電路11bの電圧は、グランド電圧(VH2(500V))より正極接地抵抗20の電圧降下(70V)だけ低い電圧(VS1(430V))となるので、正極及び負極ツェナーダイオード22,23は動作しない。また、昇圧コンバータ60の出力電圧が、例えば、400Vに低下すると、正極接地抵抗20の電圧降下(70V)が変わらない場合、第2正極検出電路11bの電圧はVS1´(330V)に低下し、時刻t1におけるキャパシタ13の電圧VCもVS1´(330V)に低下する(図18の*を付した線c51、○を付した線e51参照)。この際も正極及び負極ツェナーダイオード22,23は動作しない。つまり、正極及び負極ツェナーダイオード22,23が動作しない場合には、第2正極検出電路11bの電圧は正極及び負極ツェナーダイオード22,23の動作電圧のVT(450V)一定にならず、昇圧コンバータ60の出力電圧つまり高圧電路71の電圧が低下すると、電圧検出器30の検出する電圧も低下する。
RHp(75)の抵抗値がほとんどゼロの場合、第2正極検出電路11bの電圧は、昇圧コンバータ60の出力電圧から正極接地抵抗20の電圧降下を引いた電圧となるから、正極接地抵抗20における電圧降下が大きい程、正極及び負極ツェナーダイオード22,23が動作しない昇圧コンバータ60の出力電圧を高くすることができる。先の説明では、正極接地抵抗20の電圧降下は70V一定であるとして説明したが、実際には、正極接地抵抗20における電圧降下は、流れる電流やグランドの電圧等によって変化するので、一定にはならない。
そこで、電源監視制御部41は、先に説明したように、図14のステップS103,S104でRHp(75)の抵抗値(対地絶縁抵抗値)が異常であると判断した場合、図14のステップS105、S106、S107、S110に示すように、昇圧コンバータ60の出力電圧の指令値VH*をΔVHずつ低下させていく。そして、図14のステップS107に示すように、電源監視制御部41が電圧検出器30で検出した電圧が、前回のRHp(75)の抵抗値の検出処理の際に検出した電圧よりも低下していると判定した場合(図14のステップS107でYESと判断した場合)には、図14のステップS108に進み正極及び負極のツェナーダイオード22,23が動作しておらず、この際の昇圧コンバータ60の出力電圧或いは高圧電路71の電圧は、昇圧電圧の指令値VH*をΔVHずつ低下させた場合の正極及び負極ツェナーダイオード22,23が動作しない一番高い電圧であると判定する。そして、電源監視制御部41は、データバス91を介してその判定信号を制御部90に送信する。制御部90は、この判定信号を受信したら、図14のステップS109に示すように、昇圧コンバータ60の出力電圧をその際の指令値VH*に設定する。そして、電源監視制御部41は、バッテリ10の電圧、RHp(75)、RHn(77)の抵抗値(対地絶縁抵抗値)の検出動作を所定の頻度で継続する通常動作に戻る。
一方、電源監視制御部41は、図14のステップS103でキャパシタ13の電圧VCが所定の閾値未満の場合(図14のステップS103でNOと判断した場合)には、図14のステップS111に進み、RHp(75)の抵抗値(対地絶縁抵抗値)は低下しておらず、RHp(75)は正常であると判断してプログラムの動作を終了し、バッテリ10の電圧、RHp(75)、RHn(77)の抵抗値(対地絶縁抵抗値)の検出動作を所定の頻度で継続する通常の動作に戻る。
このように、本実施形態の電源システム100は、RHp(75)の抵抗値(対地絶縁抵抗値)が異常となった場合に、昇圧コンバータ60の出力電圧を正極及び負極ツェナーダイオード22,23が動作しないできるだけ高い電圧に制限することにより、正極及び負極ツェナーダイオード22,23を動作させずにバッテリ電圧の検出を精度よく行うとともに、電源システムが負荷に供給可能な電力を大きく保つことができる。
<高圧電路71が地絡した場合のバッテリ電圧の検出(ツェナーダイオード不動作)>
先に、昇圧コンバータ60の出力電圧をVH2(500V)(正極及び負極ツェナーダイオード22,23が動作しない電圧)まで低下させた際のRHp(75)の抵抗値(対地絶縁抵抗値)の検出動作と昇圧コンバータ60の出力電圧の設定動作について説明したが、次に、図15A,15B、図16を参照しながら、RHp(75)の抵抗値(対地絶縁抵抗値)が略ゼロの場合に、昇圧コンバータ60の電圧を正極及び負極ツェナーダイオード22,23が動作しない電圧であるVH2(500V)まで低減した際のバッテリ10の電圧検出動作について説明する。
電源監視制御部41は、図16の時刻ゼロに、図2を参照して説明したと同様、S1(16)、S2(17)をオン、S3(18)、S4(19)をオフとしてバッテリ10によってキャパシタ13を充電する。キャパシタ13の正極側の電圧或いは第1正極検出電路11aの電圧は、図16の実線a4のようにゼロからバッテリ10の電圧VB=200Vまで上昇していく。一方、キャパシタ13の負極側の電圧或いは第1負極検出電路12aの電圧は、図16の二点鎖線d4に示すように0Vである。
図16の時刻t1に、電源監視制御部41は図15Aに示す様に、S1(16)、S2(17)をオフ、S3(18)、S4(19)をオンとする。RHp(75)が略ゼロであるから、先に図17A、図17Bを参照して説明したと同様、キャパシタ13の正極側の電圧或いは第2正極検出電路11bの電圧は、図16の*を付した線c4に示すように、VS1(430V)(=グランド電圧VH2(500V)−正極接地抵抗での電圧降下70V)まで急速に上昇する。一方、キャパシタ13の負極側或いは第2負極検出電路12bの電圧は、図16の二点鎖線d4に示す様に、正極側の電圧VS1(430V)から充電後のキャパシタ13の両端の電圧VB(200V)を引いた230Vまで急速に上昇する。その後、図15Bに示すように、キャパシタ13の電荷は回路R2によってキャパシタ13の負極側の電圧がVS1(430V)になるまで徐々に減少していく。これにより、図16に○を付した線e4に示すように、キャパシタ13の電圧VCは、図11を参照して説明したRHp(75)が非常に大きい通常の場合と同様、時刻t1のVB(200V)から緩やかに減少していく。電圧検出器30は、時刻t1の後のキャパシタ13の電圧VCが安定している期間に電圧の検出をすることができるので、RHp(75)が略ゼロで高圧電路71が地絡しているような場合でも、バッテリ10の電圧を精度よく検出することができる。
<高圧電路71が地絡した場合のRHn(77)の抵抗値の検出(ツェナーダイオード不動作)>
次に、図19A,図19B、図20を参照しながら、RHp(75)の抵抗値(対地絶縁抵抗値)が略ゼロの場合に、昇圧コンバータ60の電圧をVH2(500V)まで低減した際のRHn(77)の抵抗値(対地絶縁抵抗値)の検出動作について説明する。
図20の時刻ゼロに電源監視制御部41がキャパシタ13の充電をしようと、S1(16)、S4(19)をオン、S2(17)、S3(18)をオフとすると、[高圧電路71→グランド→第2負極検出電路12b→S4(19)→キャパシタ13→S1(16)→抵抗14→正極電路51→正極システムメインリレー53→リアクトル64→ダイオード66→高圧電路71]と電流が流れる回路R13が形成され、キャパシタ13の負極側或いは第2負極検出電路12bの電圧は、図20に二点鎖線d6で示すように、VS1(430V)(=グランド電圧VH2(500V)−正極接地抵抗での電圧降下70V)まで急速に上昇するが、正極及び負極ツェナーダイオード22,23は動作しない。一方、キャパシタ13の正極側の電圧は、図20に*を付した線c6に示すように、バッテリ10の電圧VB=200Vまで上昇していく。そして、図20の時刻t1に、電源監視制御部41がキャパシタ13の電圧を検出しようと、S1(16)、S2(17)をオフ、S3(18)、S4(19)をオンとすると、図19Bに示す回路R2のように、キャパシタ13の負極側から正極側に向かって電流が流れ、キャパシタ13の正極側の電圧或いは第2正極検出電路11bの電圧は、図20の*を付した線c6に示すように、キャパシタ13の正極側の電圧VS1(430V)からキャパシタ13に充電された電圧VB(200V)を引いた230Vまで急速に上昇した後、正極及び負極接地抵抗20,21を通って徐々に放電され、VS1(430V)まで上昇していく。このため、キャパシタ13の電圧VCは、図20の○を付した線e6に示すように、時刻t1の―VB(−200V)から0Vに向かって上昇していく。このように、正極及び負極ツェナーダイオード22,23が動作しないようにすると、電圧検出器30の検出するキャパシタ13の電圧VCの変化が緩やかになり、電圧の検出精度が向上する。
また、先に図18を参照して説明したと同様、RHn(77)の抵抗値(対地絶縁抵抗値)の検出動作で正極及び負極のツェナーダイオード22,23が動作しない場合、昇圧コンバータ60の出力電圧を、例えば、400Vに低下させ、負極接地抵抗21の電圧降下(70V)が変わらない場合、第2負極検出電路12bの電圧は、図20の二点鎖線d61に示すように、VS1´(330V)に低下する。一方、キャパシタ13の正極側の電圧は、図20の*を付した線c61に示すようにバッテリ10の電圧VB(200V)まで上昇するので、図20に示す時刻t1に措けるキャパシタ13の電圧VCは、図20の○を付した線e61に示すように−VB(−200V)から−130Vに上昇する。つまり、正極及び負極ツェナーダイオード22,23が動作しない場合には、キャパシタ13の電圧VCは一定にならず、昇圧コンバータ60の出力電圧つまり高圧電路71の電圧が低下すると、電圧検出器30の検出する電圧は上昇する。
<高圧電路71が地絡した場合にRHn(77)の検出処理を用いて正極及び負極ツェナーダイオード22,23が動作しないできるだけ高い電圧に昇圧コンバータの出力電圧を設定する動作>
従って、この動作を利用して、図14を参照して説明したRHp(75)の抵抗値の検出処理の際にVHを低下させてキャパシタ13の電圧が低下した際の電圧を昇圧コンバータ60の出力電圧の指令値VH*に設定するのに代えて、図21のフローチャートに示す様に、RHn(77)の抵抗値(対地絶縁抵抗値)の検出処理を行い、ステップS203でキャパシタ13の電圧VC(図13に示すように負電圧を検出)が所定の第2閾値電圧「以下」の場合(例えば、図13に示すようにバッテリ10の電圧VB=200Vの負電圧(−200V)以下の場合)に、ステップS204に進んでRHp(75)の抵抗値(対地絶縁抵抗値)が異常であると判断し、図21のステップS205、S206、S207、S210に示すように、昇圧コンバータ60の出力電圧の指令値VH*をΔVHずつ低下させ、図21のステップS207でキャパシタ13の電圧VCが前回検出電圧よりも「上昇」した場合に、正極及び負極ツェナーダイオード22,23が動作しなくなったと判定し、データバス91を介してその判定信号を制御部90に送信するようにしてもよい。制御部90は、この判定信号を受信したら、図21のステップS209に示すように、昇圧コンバータ60の出力電圧をその際の指令値VH*に設定するようにしてもよい。
以上説明したように、本実施形態の電源システム100は、制御部90によって昇圧コンバータ60の出力電圧の指令値VH*をΔVHずつ、正極及び負極のツェナーダイオード22,23が動作しない電圧まで低下させることにより、昇圧コンバータ60の出力電圧を正極及び負極ツェナーダイオード22,23が動作しないできるだけ高い電圧に設定し、電圧検出器30の電圧検出精度を確保しつつ、負荷にできる限り大きな電力を供給するようにすることができる。
<他の実施形態>
以下、図22〜図25を参照しながら本発明の他の実施形態について説明する。先に図1〜図21を参照して説明した部分と同様の部分には同様の符号を付して説明は省略する。
図22に示す様に、本実施形態の電源システム200は、バッテリ10が第1、第2の2つのバッテリブロック10a,10bを接続点59で直列に接続したものであり、電源状態検出装置44の電源状態検出回路43は、第1バッテリブロック10aの正極とキャパシタ13の一端(正極側端)とを接続する第1正極検出電路11aと、第2バッテリブロック10bの負極とキャパシタ13の他端(負極側端)とを接続する第1負極検出電路12aと、第1バッテリブロック10aと第2バッテリブロック10bの接続点59とキャパシタ13の一端(正極側端)と、を接続するブロック正極検出電路24と、接続点59とキャパシタ13の他端(負極側端)とを接続するブロック負極検出電路25とを備えている。
第1正極検出電路11aには抵抗14とS1(16)とが直列に接続され、第1負極検出電路12aには抵抗15とS2(17)とが直列に接続されている。また、ブロック正極検出電路24には抵抗26とブロック正極リレー28(以下、S5(28)という)とが直列に接続され、ブロック負極検出電路25には抵抗27とブロック負極リレー29(以下、S6(29)という)とが直列に接続されている。S1(16)、S2(17)、S5(28)、S6(29)とは電源監視制御部41に接続され電源監視制御部41の指令によってオン・オフ動作する。
電源監視制御部41は、図23に示すように、バッテリ10全体の電圧を検出する際には、S1(16)、S2(17)をオン、S5(28)、S6(29)をオフとして図23に示す回路R21を形成し、第1、第2バッテリブロック10a,10bでキャパシタ13を充電し、第1バッテリブロック10aの電圧を検出する際には、図24に示すように、S1(16)、S6(29)をオン、S2(17)、S6(29)をオフとして第1バッテリブロック10aによってキャパシタ13を充電し、第2バッテリブロック10bの電圧を検出する際には、図25に示すように、S5(28)、S2(17)をオン、S1(16)、S6(29)をオフとして第2バッテリブロック10bによってキャパシタ13を充電する。そして、図3を参照して説明したように、S3(18)、S4(19)をオン、他のリレーをオフとしてキャパシタ13の電圧を検出してバッテリ10全体、第1バッテリブロック10a、第2バッテリブロック10bの各電圧を検出する。
本実施形態の電源システム200は、一つの電源状態検出装置44で第1、第2の2つバッテリブロック10a、10bを直列に接続したバッテリ10の各バッテリブロック10a、10bの各電圧を検出することができるので、部品点数を少なくし、システム全体の体格を小さくすることができる。
本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲により規定されている本発明の技術的範囲乃至本質から逸脱することない全ての変更及び修正を包含するものである。