JP2017000321A - 人工血管用組紐 - Google Patents

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Abstract

【課題】組糸の繊度、糸角度、組打ち数等を適正化し、糸密度が高く小口径人工血管に好適な人工血管用組紐を提供する。
【解決手段】生体適合性繊維糸を組紐に製紐した人工血管用組紐(4)であって、組紐(4)を構成する組糸の単糸繊度が117〜932dtexの範囲であり、組紐(4)は24打ち以上の組紐であり、組紐(4)を構成する組糸(5)の角度が円周方向に対して35〜45°の範囲の所定の角度に整っており、1inchあたりの組目の数が25以上であり、全体として円筒形状である。組紐(4)の端部(6a,6b)はほつれ防止されていても良い。
【選択図】図2

Description

本発明は人工血管用材料に関する。さらに詳しくは、糸密度が高く小口径人工血管に好適な人工血管用組紐に関する。
大口径人工血管に使用されているポリエチレンテレフタレート(PET)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、内径(中空径)が6mm以下の小口径人工血管に適用すると、移植後に閉塞しやすいという問題がある。これは、血管材料の生体不適合性による血管内膜の肥厚や血栓形成による閉塞が原因と言われている。そのため、現行では、膝関節末梢等へのバイパス術は自家静脈移植が行われているが、患者への負担が大きいこと、適合する血管を持たず自家静脈移植を行うことができない患者が多数いる等問題は多い。近年、患者の高齢化や糖尿病の増加に伴い、細小血管の再生治療の需要は増加している。従って、特に末梢血管等小口径の血管に利用できる抗血栓性のある人工血管の開発が従来から望まれていた。
一方、絹糸は、高い生体親和性を有しており、細くて強く適度な弾性と柔軟性を持ち、糸の滑りがよく、結びやすくほつれ難い特性を持っていることから、手術用の縫合糸として用いられる天然繊維である。これまでに絹の高い生体適合性を利用した様々な再生絹材料が開発され、医療、生化学、食品、化粧料等幅広い分野での利用が期待されている。特に、再生医療のための材料として注目されている。絹を用いた人工血管作製の試みとしては、組紐構造物が提案されている(特許文献1〜3)。
特開2004−173772号公報 特開2009−279214号公報 特開2014−050412号公報
しかし、前記のような従来技術は、組糸の繊度、糸角度、組打ち数等が適正化されておらず、特に移植に必要な強度に関して、さらに改善が求められていた。
本発明は、前記従来の問題を解決するため、組糸の繊度、糸角度、組打ち数等を適正化し、糸密度が高く、強度に優れた小口径人工血管に好適な人工血管用組紐を提供する。
本発明の人工血管用組紐は、生体適合性繊維糸を組紐に製紐した人工血管用組紐であって、前記組紐を構成する組糸の単糸繊度が117〜932dtexの範囲であり、前記組紐は24打ち以上の組紐であり、前記組紐を構成する組糸の角度が円周方向に対して35〜45°の範囲の所定の角度に整っており、1inchあたりの組目の数が25以上であり、全体として円筒形状であることを特徴とする。
本発明の人工血管用組紐は、生体適合性繊維糸を組紐に製紐した人工血管用組紐であって、前記組紐を構成する組糸単糸の繊度が117〜932dtexの範囲であり、前記組紐は24打ち以上の組紐であり、前記組紐を構成する組糸の角度が円周方向に対して35〜45°の範囲の所定の角度に整っており、1inchあたりの組目の数が25以上であり、全体として円筒形状であることにより、糸密度と組目密度が高く強度もあり、小口径人工血管に好適な人工血管用組紐を提供できる。さらに本発明の人工血管用組紐は、血圧で破裂しない強度と、生体の血管と同等の弾力性を有する。
図1は本発明の一実施例における人工血管用組紐を光学顕微鏡(倍率10倍)で観察したトレース側面図である。 図2は同組紐の模式的斜視図である。 図3Aは同組紐の製造装置を示す模式的説明図、図3Bは同ボビンの動きを示す動作図である。 図4A−Bは本発明の一実施例における人工血管用組紐の周軸破断強度及び周軸破断伸度(ひずみ)の測定装置の模式的説明図である。 図5は本発明の別の実施例のほつれ防止した人工血管用組紐の端部を針金で強く引っ張ってもほつれず、孔が広がらない状態を示す写真である。 図6Aは同実施例のほつれ防止した人工血管用組紐の端部を示す写真、図6Bはつぶしても元に戻る弾力性があることを示す写真である。
本発明者らは、組糸単糸の繊度と、組紐の打ち上げ本数と、組糸の角度を検討した結果、本発明の範囲であれば、糸密度と組目密度が高く強度もあり、小口径人工血管に好適な人工血管用組紐とすることができることを見出し本発明にいたった。
本発明の人工血管用組紐は、生体適合性繊維糸を組紐に製紐した人工血管用組紐である。組み紐であると円筒状に形成しやすい。生体適合繊維糸は、絹糸、ポリ乳酸糸、ポカプロラクトン、ポリグリコール酸等であり、それ自体の安全性は手術糸等で知られている。人体内における耐用期間は、絹糸は数年、ポリ乳酸糸は約6月、ポリカプロラクトンは1〜2年、ポリグリコールは約2週間と言われている。
本発明の組紐を構成する組糸単糸の繊度は117〜932dtexの範囲であり、好ましくは117〜700dtex、さらに好ましくは117〜467dtexである。前記の範囲であれば、小口径人工血管に好適な人工血管用組紐とすることができる。
組打ち数を24打ち以上の組紐とする。好ましくは24〜64、さらに好ましくは32〜64の組紐である。これにより組目密度を高くできる。組紐を構成する組糸の角度が円周方向に対して35〜45°の範囲の所定の角度に整える。好ましい角度は37〜45°である。組糸の角度が前記の範囲であれば歪みがなく、円筒形状に整った組紐ができる。また、組目の数は25/inch以上であり、好ましくは25〜54/inchである。これにより、糸密度と組目密度が高く強度も高く、生体欠陥度同等の弾力性となる。
組糸はマルチフィラメント糸でもよいし紡績糸でもよい。マルチフィラメント糸は生糸でもよいし加工糸でもよい。これらの糸は混合して使用することもできる。
本発明の組紐は中空直径(内径)が1〜6mmであるのが好ましく、より好ましくは2〜5mmである。組紐であるとこのような小口径の人工血管も形成可能である。
組紐は長さが10〜50mmが好ましく、さらに好ましくは10〜40mmである。この範囲であれば生体内に移植するのに都合が良い。
組紐は肉厚が0.32〜1.20mmが好ましい。この範囲であれば強度も高く、応力がかかっても中空を保て、人工血管として十分な強度を保てる。
組紐はほつれ防止されていても良い。ほつれ防止は組紐に熱融着性生体適合繊維糸を組み込んでおき、端部を接着又は熱融着することにより行う。組紐が絹糸の場合は、組紐の端部にポリ乳酸糸を縫い込み、接着しても良いし、溶着あるいは溶融してほつれ防止処理するのが好ましい。ポリ乳酸は熱可塑性であり、180〜195℃で溶融する。接着する場合は端部にクロロホルムをつけて溶解させる。ポリ乳酸糸、ポカプロラクトン、ポリグリコール酸の組紐の場合は、それ自体の端部を接着又は溶融してほつれ防止処理できる。ポリ乳酸糸、ポカプロラクトン、ポリグリコール酸等の共重合体を使用し、100℃以下の温度で絹を劣化させずに接着又は熱融着させるのが好ましい。
組紐は中空直径3.5mm、長さ10mmの周軸破断強度は1N以上であるのが好ましい。前記の強度であれば実用的に十分である。中空直径3.5mm、長さ10mmの周軸破断伸度(ひずみ)79〜175%であるのが好ましい。前記の伸度であれば、人工血管用組紐として使用できる。
本発明の組紐は、組糸本数24打ち以上で組み上げた組紐が好ましい。好ましい打ち本数は24〜64である。組み機の打ち本数(組紐を組み上げるときに立てるボビン数)は24,32,40,48,56,64,72,80,88,96が採用できる。打ち本数24で内径1〜3mm、打ち本数32で内径2〜4mm、打ち本数64で直径3〜6mm程度が製造できる。組み紐には丸打ちと角打ちがあるが、丸打ちで組み上げた組紐は中空状となり人工血管用組紐に好適である。
製紐機は打ち数により、主として組紐の太さ(内径、外径)を変えることができる。製紐工程で組み上げる際の紐は製紐機の中心部において、下から先端部分が紐の内径に略相当する丸みのある円形または多角形の金属製または木製の棒を垂直方向に上下運動させながら(突き上げ)組み上げることにより、円筒形の組紐を得ることができる。
製紐工程でテンションを低くして引き取った場合は、組目が詰まった被覆性の良い組紐が得られる。テンションを掛けて引き取った場合、組紐が伸ばされ、内径が細くなったり、場合により組み目がずれるので注意が必要である。また単糸繊度が本発明より大きくなると糸が硬くなるため、突き上げ動作でも組目の詰まりが不十分となり空隙部ができやすくなる傾向がある。また、突き上げから引き取りまでの段階でヒーターを設置し、非接触の熱処理を行うことで形状を安定化することもできる。
人工血管用組紐は、そのままでは人工血管として使用した際に、血液が漏れるため、生体適合性を有する素材でコーティング処理を施すことが好ましい。生体適合性素材としては、絹フィブロインや、ポリL乳酸、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸等の生体吸収性高分子およびこれらの共重合体を原料が考えられ、絹フィブロイン水溶液、ポリL乳酸、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸は酢酸などの有機溶剤に溶解させ、得られた溶液に組紐を浸し、−30℃で凍結乾燥させることで、コーティングできる。またコーティングには、上記の溶液を電解紡糸により、得られるナノファイバーを組紐の上に被覆することも可能である。
以下図面を用いて説明する。図1は本発明の一実施例における人工血管用組紐の側面を光学顕微鏡(倍率10倍)で観察したトレース図面である。組紐1は組糸2,3で組み上げられているが、その表面には開口(空隙)は観察されない。組糸同士の組み目が密に詰まった状態で、隙間は見られない。組糸2,3は円周方法に対して35〜45°の範囲の所定の角度に整えられている。図1右下の角度Θが組み上げ角度である。図2は本発明の一実施例における組紐の模式的斜視図である。この組紐4は全体が円筒状であり、円筒部が組糸5で構成され、両端部がほつれ防止処理部6a,6bである。この状態で人工血管用組紐となる。
図3Aは本発明の一実施例で使用する丸打ちの組紐の製造装置を示す模式的説明図、図3Bは同ボビンの動きを示す動作図である。この製造装置10は、架台11、およびボビン(キャリア)12と、マンドレル14と、図示しない駆動装置を含んで構成されている。ボビン12が架台11上の軌道19の実線上を回転移動することによりボビン12に巻き付けられた糸13が突き上げ動作をするマンドレル14上で編組され、組紐が作成される。突き上げ部16はボビン12の回転移動と連動して上下に運動する半球状ヘッドとその中心部にある円筒形(または多角形)の円筒部15で構成される。円筒部15の外径は組紐17の内径に略等しい。組紐17は必要な場合は加熱ヒーターに送られ、ヒートセットされる。組紐17は、取出しガイド(プーリー)18を通過して収納容器に振り落としされる。前記において、マンドレル14ストローク長、ストローク回数は適宜設定する。絹糸の組紐に対しては、ヒートセットは必須ではないが、熱可塑性樹脂からなる糸を使用した組紐に対しては、ヒートセットは有効である。
以下実施例および比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。以下の実施例および比較例における各種測定は以下のようにして測定した。
<内径、厚み(肉厚)、組目数>
内径:円錐形のテーパーゲージ(測定器:新潟精機製テーパーゲージ710B型(4〜15mm)をテーパー先端が上になるようにして立て、組紐を挿入して軽くのせ、組紐端面部のゲージを読んだ。組目(目/インチ):一辺が1インチのフレームを有する拡大鏡(リネンテスター)を組紐側面に組紐が変形しない程度に軽く接触させ、1インチ(25.4mm)間の組目の数を0.5目まで測った。厚み(肉厚):ノギスを使用して組紐の内側と外側に挟み、厚み(mm)を計測した。データはいずれも3回の平均値とした。
<組紐10mmあたりの重量(g/10mm)>
標準状態(温度20±3℃、相対湿度65±3%)で24時間放置した組紐を、所定の長さに切断した。その重量を測定し、10mmあたりの重さを算出した。
<組糸角度>
組紐の側面を光学顕微鏡観察(倍率10倍)し、円周方向(図1のX方向)に対する組糸の角度を測定した。組糸の角度は計10回測定し、その平均値とした。
<周軸破断強度と周軸破断伸度(ひずみ)>
引張試験機(EZ-graph(SHIMAZU 社製))の上下にL字型の治具を挟み,そこに長さ10mm に切った人工血管を通して,ロードセル100N,引張り速度2mm/min の条件で周軸方向へ引張し、人工血管の破断強度と、変位から周軸破断伸度(%)を算出した。図4A−Bは本発明の一実施例における人工血管用組紐の周軸破断強度及び周軸破断伸度(ひずみ)の測定装置の模式的説明図である。上下のロードセル21,22にそれぞれL字型の治具23,24を固定し、組紐25を取り付ける。図4Aの矢印はシワの無い状態まで引っ張った状態である。この状態から図4Bのように上下のロードセル21,22を引き離し、L字型の治具23,24で組紐25を平行状に引っ張る。これにより周軸破断強度と周軸破断伸度(ひずみ)を測定する。
<被覆性>
組紐の側面を光学顕微鏡観察(倍率10倍)して下記にて判定した。
A 空隙の認められない
B 糸間に空隙が認められる
C 組紐構成糸の配列が乱れており、糸間の空隙も大きい
<弾力性>
組紐を親指と人差し指でつまみ、数回圧縮、回復操作を繰り返し、形状の保持回復性と追随性(なじみ性)から弾力性の有無を評価した
A 適度な回復性となじみ性があり弾力性が良好
B 回復性は低く、やや硬くなじみ性が不十分で弾力性は不足
C 弾力性が不足で潰れてしまう
(実施例1)
組糸として絹フィラメント糸(繊度23.3decitex)を10本合撚した。合撚は撚り数40/m、撚り方向Sとし、ボビンに巻き上げた。この絹糸を図3に示す組紐の製造装置30を用いて丸打ちの24打ちで内径1.5mmの組紐を製造した。得られた組紐の特性を表1にまとめて示す。
(実施例2〜10、比較例1〜2)
絹フィラメント糸の繊度、組打ち数、及び内径を表1に示す以外は実施例1と同様に実施した。以上の条件と結果を表1にまとめて示す。
表1から明らかなとおり、実施例1〜10は糸密度が高く強度もあり、血圧で破裂しない強度と、生体の血管と同等の弾力性し、小口径人工血管に好適な人工血管用組紐とすることができた。
これに対して比較例1、2は、組紐の組角度あるいは組目の数が低かったため、周軸破断強度が好ましくなかった。
(実施例11)
実施例9の繊度23.3decitexの絹糸5本に対し、生体吸収性糸としてポリ乳酸(PLLA)、直径0.0075mmを1本引き揃えて、組紐を作製し、端部にクロロホルムを付着させて25℃で、10秒間接着した。これにより、端部1mm未満に縫合針をかけてもほつれず、かつ、弾力性を有する組紐を作製することができた。図5の写真は、この実施例のほつれ防止した人工血管用組紐の端部を針金で強く引っ張ってもほつれず、孔が広がらない状態を示す写真である。図6Aはこの実施例のほつれ防止した人工血管用組紐の端部を示す写真、図6Bはつぶしても元に戻る弾力性があることを示す写真である。
本発明の人工血管用組紐は、人体、ペット、家畜などの動物の人工血管用材料として好適である。
1,4 人工血管用組紐
2,3,5 組糸
6a,6b 端部ほつれ処理部
30 組紐製造装置
11 架台
12 ボビン
13 糸
14 マンドレル
15 円筒部
16 突き上げ部
17 組紐
18 取出しガイド(プーリー)
19 軌道
θ 組み上げ角度
21,22 ロードセル
23,24 L字型の治具
25 組紐

Claims (10)

  1. 生体適合性繊維糸を組紐に製紐した人工血管用組紐であって、
    前記組紐を構成する組糸の単糸繊度が117〜932dtexの範囲であり、
    前記組紐は24打ち以上の組紐であり、前記組紐を構成する組糸の角度が円周方向に対して35〜45°の範囲の所定の角度に整っており、1inchあたりの組目の数が25以上であり、全体として円筒形状であることを特徴とする人工血管用組紐。
  2. 前記組紐は中空直径が1〜6mmである請求項1に記載の人工血管用組紐。
  3. 前記組紐は長さが10〜50mmである請求項1又は2に記載の人工血管用組紐。
  4. 前記組紐は肉厚が0.32〜1.20mmである請求項1〜3のいずれか1項に記載の人工血管用組紐。
  5. 前記生体適合繊維糸は、絹糸、ポリ乳酸糸、ポリカプロラクトン及びポリグリコール酸から選ばれる少なくとも一つである請求項1〜4のいずれか1項に記載の人工血管用組紐。
  6. 前記組紐の端部はほつれ防止がされている請求項1〜5のいずれか1項に記載の人工血管用組紐。
  7. 前記ほつれ防止は、組紐に熱融着性生体適合繊維糸を組み込んでおき、端部を接着又は熱融着して形成されている請求項6に記載の人工血管用組紐。
  8. 前記組紐は中空直径3.5mm、長さ10mmの周軸破断強度が1N以上である請求項1〜7のいずれか1項に記載の人工血管用組紐。
  9. 前記組紐は中空直径3.5mm、長さ10mmの周軸破断伸度(ひずみ)が79〜175%である請求項1〜8のいずれか1項に記載の人工血管用組紐。
  10. 前記組紐は丸打ちである請求項1〜9のいずれか1項に記載の人工血管用組紐。
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