以下の説明および添付の図面は、ニット構成要素およびニット構成要素の製造に関わる多様な概念を開示する。ニット構成要素は多様な製品で利用してもよいが、ニット構成要素の1つを組み込んだ履物製品を一実施例として以下に開示する。
履物にくわえて、ニット構成要素は他の種類の衣類(例、シャツ、ズボン、靴下、上着、下着)、運動用具(例、ゴルフバッグ、野球およびフットボール用のグローブ、サッカーボールの規制構造体)、入れ物(例、バックパック、バッグ)、ならびに家具の装飾用品(例、椅子、ソファ、カーシート)で利用してもよい。ニット構成要素はベッドカバーリング(例、シーツ、毛布)、テーブルカバーリング、タオル、旗、テント、帆およびパラシュートでも利用してもよい。ニット構成要素は、自動車および航空宇宙産業用の構造物、フィルタ材料、医療用の布(例、包帯、綿球、移植組織片)、堤防を補強するためのジオテキスタイル、作物を保護するためのアグロテキスタイル、ならびに熱および放射から保護または絶縁する工業用衣料品を含め、産業用の技術的テキスタイルとして利用してもよい。したがって、本明細書で開示するニット構成要素および他の概念は、個人用および産業用の両方の目的のための多様な製品に組み込まれる。
〈履物の構成〉
ソール構造110およびアッパー120を含む履物製品100が図1〜図4Cに図示されている。履物100はランニングに適した一般構成を有するように図示されているが、履物100に関連する概念は、たとえば、ベースボールシューズ、バスケットボールシューズ、サイクリングシューズ、フットボールシューズ、テニスシューズ、サッカーシューズ、トレーニングシューズ、ウォーキングシューズ、およびハイキングブーツを含め、多様な他の運動用の履物の種類にも適用してもよい。この概念は、ドレスシューズ、ローファー、サンダルおよび作業靴を含め、一般に非運動用と考えられる履物の種類にも適用してもよい。したがって、履物100に関して開示される概念は、多様な履物の種類に適用される。
参照のために、履物100は、足先領域101と中足領域102とかかと領域103との大略的に3つの領域に分割してもよい。足先領域101は、大略的に、つま先、および中足骨と指骨とを接続する関節に対応する履物100の部分を含んでいる。中足領域102は、大略的に、足のアーチ部位に対応する履物100の部分を含んでいる。かかと領域103は、大略的に、踵骨を含めて足の後部に対応している。履物100は外側側部104および内側側部105も含んでおり、領域101〜103のそれぞれを通って延びており、履物100の両側に対応する。より具体的には、外側側部104は足の外側部位に対応し(つまり、反対の足から遠ざかる方を向く面)、内側側部105は足の内側部位に対応する(つまり、反対の足の方を向く面)。
領域101〜103および側部104〜105は履物100の厳密な区域を区切ることを意図していない。むしろ、領域101〜103および側部104〜105は、以下の説明の助けになるように、履物100の大略的な区域を表すことを意図している。履物100に加えて、領域101〜103および側部104〜105は、ソール構造110、アッパー120およびそれらの個々の要素にも適用してもよい。
ソール構造110はアッパー120に固定されていて、履物100を履いたときに足と地面との間に延びる。ソール構造110の主要な要素は、ミッドソール111、アウトソール112、および中敷き113である。ミッドソール111はアッパー120の下面に固定されて、歩いているとき、走っているとき、または他の歩行活動中に足と地面との間で圧縮されると、地面の反力を弱める(つまり、クッション材となる)圧縮可能なポリマー発泡体要素(例、ポリウレタンまたはエチルビニルアセテート発泡体)から形成してもよい。さらなる構成では、ミッドソール111は、力をさらに弱め、安定性を高め、もしくは足の運動に影響するプレート、モデレータ、流体充填チャンバ、ラスティング要素、もしくはモーションコントロール部材を組み込んでもよく、またはミッドソール21は主に流体体充填チャンバから形成してもよい。
アウトソール112はミッドソール111の下面に固定されて、トラクションを付与するようにテクスチャード加工された耐摩耗性のゴム材料から形成してもよい。中敷き113はアッパー120内に配置されていて、足の下面の下に延びるように位置付けられて履物100の快適性を高める。ソール構造110のこの構成は、アッパー120と接続して使用してもよいソール構造の一実施例を提供しているが、ソール構造110のさまざまな他の従来の構成または従来にない構成も利用してもよい。したがって、ソール構造110またはアッパー120とともに利用されるソール構造の特徴は大幅に変わってもよい。
アッパー120は、ソール構造110に対して、足を受け入れて固定するための空洞を履物100内に画定する。空洞は足を収容するような形状にされており、足の外側側部に沿い、足の内側側部に沿い、足の上、かかとの周り、さらに足の下に延びている。空洞へのアクセスは、少なくともかかと領域103に配置されている足首開口部121により提供される。
締めひも122がアッパー120のさまざまな締めひも開口部123を通って延びており、着用者がアッパー120の寸法を調整して足のさまざまなプロポーションを収容できるようにする。さらに具体的には、締めひも122は着用者が足の周りにアッパー120を締め付けることができるようにし、締めひも122は着用者が空洞からの(つまり、足首開口部121を通して)足の出し入れを容易にするために、アッパー120を緩めることができる。くわえて、アッパー120は締めひも122および締めひも開口部123の下に延びて、履物100の快適性を高めるベロ124を含んでいる。さらなる構成において、アッパー120は、(a)かかと領域103に安定性を高めるヒールカウンタ、(b)足先領域101に耐摩耗性材料から形成されるつま先ガード、ならびに(c)ロゴ、商標、および注意事項や材料情報を記載した札などの追加要素を含んでもよい。
多くの従来の履物のアッパーは、たとえば縫製または接着により接合される複数の材料要素(例、布地、ポリマー発泡体、ポリマーシート、革、合成皮革)から形成されている。対して、アッパー120の大半はニット構成要素130から形成され、外側側部104および内側側部105の両方に沿って、足先領域101の上、さらにかかと領域103の周りに、領域101〜103のそれぞれを通って延びている。くわえて、ニット構成要素130は、アッパー120の外側面および反対側の内側面の部分を形成する。このように、ニット構成要素130はアッパー120内部に空洞の少なくとも一部を画成する。いくつかの構成では、ニット構成要素130は足の下にも延びていてもよい。しかし、図4A〜図4Cを参照すると、ストローベル式中敷き125がニット構成要素130およびミッドソール111の上面に固定され、それによって中敷き113の下に延びるアッパー120の部分を形成する。
〈ニット構成要素の構成〉
図5および図6に履物100の残りから分離したニット構成要素130が図示されている。ニット構成要素130は一体ニット構造で形成される。本明細書で利用する場合、ニット構成要素(例、ニット構成要素130)は、編みプロセスによりワンピース要素として形成されるとき、「一体ニット構造」で形成されると定義する。すなわち、編みプロセスは、大幅な追加の製造ステップまたはプロセスを必要とせずに、ニット構成要素130のさまざまな特徴および構造を実質的に形成する。編みプロセスの後にニット構成要素130の一部を互いに接合してもよいが(例、ニット構成要素130の縁部を互いに接合する)、ニット構成要素130はワンピースニット要素として形成されるので、依然として一体ニット構造で形成されている。また、編みプロセスの後に他の要素(例、締めひも122、ベロ124、ロゴ、商標、注意書きおよび材料情報を記載した札)を追加する場合も、ニット構成要素130は依然として一体ニット構造で形成されている。
ニット構成要素130の主要要素は、ニット要素131およびインレイストランド132である。ニット要素131は、(例、編み機を用いて)操作して、多様なコースおよびウェールを画成する複数の互いに絡み合ったループを形成する少なくとも1本のヤーンから形成される。すなわち、ニット要素131はニット布地の構造を有する。インレイストランド132はニット要素131を通って延び、ニット要素131内のさまざまなループ間を通る。インレイストランド132は一般にニット要素131内のコースに沿って延びるが、インレイストランド132はニット要素131内のウェールに沿って延びてもよい。インレイストランド132の利点は、支持、安定性および構造を提供することを含む。たとえば、インレイストランド132は、アッパー120を足の周りに固定することを補助し、アッパー120の区域の変形を制限し(例、耐伸縮性を付与する)、締めひも122とともに機能して履物100のフィット性を高める。
ニット要素131は、周縁部133、1対のかかと縁部134、および内縁部135によって輪郭が示される略U字形の構成を有する。履物100に組み込まれるとき、周縁部133はミッドソール111の上面に対して置き、ストローベル式中敷き125に接合される。かかと縁部134は互いに接合されて、かかと領域103に垂直に延びる。履物100のいくつかの構成では、ある材料要素がかかと縁部134間の縫い目を被覆して、縫い目を補強するとともに、履物100の美的魅力を向上させてもよい。内縁部135は足首開口部121を形成し、締めひも122、締めひも開口部123、およびベロ124が配置される区域まで前方に延びている。くわえて、ニット要素131は第1の面136および反対側の第2の面137を有する。第1の面136はアッパー120の外側面の一部を形成するのに対し、第2の面137はアッパー120の内側面の一部を形成し、それによってアッパー120内の空洞の少なくとも一部を画成する。
前述したように、インレイストランド132はニット要素131を通って延び、ニット要素131内のさまざまなループ間を通る。より具体的には、図7A〜図7Dに図示されるように、インレイストランド132はニット要素131のニット構造内に配置され、これは、インレイストランド132の区域で、面136と面137との間に単一の布地層の構成を有してもよい。そのため、ニット構成要素130が履物100に組み込まれるとき、インレイストランド132はアッパー120の外側面と内側面との間に配置される。
いくつかの構成では、インレイストランド132の一部が面136および面137の一方もしくは両方に見えるか、または露出していてもよい。たとえば、インレイストランド132は面136および面137の一方に対接してもよく、またはインレイストランドが通る凹みもしくは開口部をニット要素131が形成してもよい。インレイストランド132を面136と面137との間に配置させる利点は、ニット要素131がインレイストランド132を擦過および引っ掛けから保護することである。
図5および図6を参照すると、インレイストランド132は繰り返し、周縁部133から内縁部135に向かって、1つの締めひも開口部123の横に隣接して、少なくとも部分的に締めひも開口部123を回って、反対側まで延びて、さらに周縁部133に戻る。ニット構成要素130が履物100に組み込まれるとき、ニット要素131はアッパー120のスロート区域(すなわち、締めひも122、締めひも開口部123およびベロ124が配置されるところ)から、アッパー120の下方区域(すなわち、ニット要素131がソール構造110と接合するところ)まで延びる。この構成では、インレイストランド132もスロート区域から下方区域まで延びる。より具体的には、インレイストランドはニット要素131をスロート区域から下方区域まで繰り返し通過する。
ニット要素131は多様な方法で形成してもよいが、ニット構造のコースは一般にインレイストランド132と同じ方向に延びる。すなわち、コースはスロート区域と下方区域との間に延びる方向に延びてもよい。このように、インレイストランド132の大半はニット要素131内のコースに沿って延びる。しかし、締めひも開口部123に隣接する区域では、インレイストランド132はニット要素131内のウェールにも沿って延びてもよい。より具体的には、内縁部135に平行なインレイストランド132の区画はウェールに沿って延びてもよい。
上述したように、インレイストランド132はニット要素131を行き来する。図5および図6を参照すると、インレイストランド132も、繰り返し周縁部133でニット要素131から出てから、周縁部133の別の位置でニット要素131に再進入し、それによって周縁部133に沿ってループを形成する。この構成の利点は、履物100の製造プロセス中に、スロート区域と下方区域との間に延びるインレイストランド132の各区画を独立して張り、緩め、またはその他の形で調整できることである。すなわち、ソール構造110をアッパー120に固定する前に、インレイストランド132の区画を独立して適正な張力に調整してもよい。
ニット要素131と比較して、インレイストランド132は、より大きな耐伸縮性を呈してもよい。すなわち、インレイストランド132はニット要素131よりも伸張しなくてもよい。インレイストランド132の複数の区画がアッパー120のスロート区域からアッパー120の下方区域まで延びていることを考えると、インレイストランド132は、スロート区域と下方区域との間のアッパー120の部分に耐伸縮性を付与する。また、締めひも122に張力を掛けるとインレイストランド132に張力が付与され、それによってスロート区域と下方区域との間のアッパー120の部分が足に当たるよう誘導してもよい。このように、インレイストランド132は締めひも122とともに機能して、履物100のフィット性を高める。
ニット要素131は、アッパー120の個々の区域に異なる特性を付与するさまざまな種類のヤーンを組み込んでもよい。すなわち、ニット要素131のある区域は特性の第1のセットを付与する第1の種類のヤーンから形成してもよく、ニット要素131の別の区域は特性の第2のセットを付与する第2の種類のヤーンから形成してもよい。この構成では、ニット要素131の異なる区域に固有のヤーンを選択することにより、アッパー120全体で特性を変えてもよい。ある特定の種類のヤーンがニット要素131のある区域に付与することになる特性は、ヤーン内部のさまざまなフィラメントおよびファイバーを形成する材料に部分的に依存する。
たとえば、綿は、ソフトな手触り、自然な美しさおよび生分解性を備えている。エラステインおよび伸縮性ポリエステルは、それぞれ、かなりの伸縮性および復元性を備えており、伸縮性ポリエステルはさらにリサイクル性も備えている。レーヨンは、高い光沢性および吸湿性を備えている。ウールも、断熱性および生分解性に加えて、高い吸湿性を備えている。ナイロンは、比較的高い強度を有する耐久性がある耐摩耗性の材料である。ポリエステルは、比較的高い耐久性も備えている疎水性材料である。材料に加えて、ニット要素131のために選択されるヤーンの他の側面がアッパー120の特性に影響を与えることもある。たとえば、ニット要素131を形成するヤーンは単繊維ヤーンまたは多繊維ヤーンであってもよい。ヤーンはそれぞれ異なる材料から形成される個別のフィラメントも含んでもよい。くわえて、ヤーンは、フィラメントが鞘芯構成を有するか、または異なる材料から形成される2種類のフィラメントを半分ずつ用いた複合ヤーンなど、2種類以上の異なる材料からそれぞれ形成されるフィラメントを含んでもよい。異なる撚度および捲縮の程度、ならびに異なるデニールもアッパー120の特性に影響してもよい。したがって、ヤーンを形成する材料およびヤーンの他の側面の両方を、アッパー120の個々の区域に多様な特性を付与するように選択してもよい。
ニット要素131を形成するヤーンと同様に、インレイストランド132の構成も大幅に変えてもよい。ヤーンに加えて、インレイストランド132は、たとえば、フィラメント(例、単繊維)、スレッド、ロープ、帯、ケーブル、または鎖の構成を有してもよい。ニット要素131を形成するヤーンと比較して、インレイストランド132の厚みはより大きくしてもよい。いくつかの構成では、インレイストランド132はニット要素131のヤーンよりも大幅に厚くした厚みを有してもよい。インレイストランド132の断面形状は円形にしてもよいが、三角形、正方形、長方形、楕円形または不規則形状も利用してもよい。また、インレイストランド132を形成する材料は、綿、エラステイン、ポリエステル、レーヨン、ウールおよびナイロンなど、ニット要素131内のヤーンの材料のいずれを含んでもよい。前述したように、インレイストランド132はニット要素131よりも大きい耐伸縮性を呈してもよい。このように、インレイストランド132に適した材料は、ガラス、アラミド(例、パラアラミドおよびメタアラミド)、超高分子量ポリエチレン、および液晶ポリマーを含め、高引っ張り強度の用途に利用される多様なエンジニアリングフィラメントを含んでもよい。別の実施例として、インレイストランド132として、ポリエステル編組スレッドも利用してもよい。
ニット構成要素130の一部に適した構成の実施例が図8Aに図示されている。この構成では、ニット要素131は、複数の水平コースおよび垂直ウェールを画成する複数の互いに絡み合ったループを形成するヤーン138を含む。インレイストランド132はコースの1つに沿って延び、(a)ヤーン138から形成されるループの後と、(b)ヤーン138から形成されるループの前と、の間を交互に通る。実際に、インレイストランド132は、ニット要素131によって形成される構造を縫うように通る。この構成ではヤーン138がコースのそれぞれを形成するが、追加ヤーンがコースの1つ以上を形成してもよく、またはコースの1つ以上の一部を形成してもよい。
ニット構成要素130の一部に適した構成の別の実施例が図8Bに図示されている。この構成では、ニット要素131はヤーン138および別のヤーン139を含む。ヤーン138および139は添え糸編みされて、複数の水平コースおよび垂直コースを画成する複数の互いに絡み合ったループを協働して形成する。すなわち、ヤーン138および139は互いに平行に走行する。
図8Aの構成と同様に、インレイストランド132はコースの1つに沿って延び、(a)ヤーン138および139から形成されるループの後と、(b)ヤーン138および139から形成されるループの前と、の間を交互に通る。この構成の利点は、ニット構成要素130のこの区域にヤーン138および139それぞれの特性が存在できることである。たとえば、ヤーン138および139は色が異なっていてもよく、ニット要素131のさまざまなステッチの表にヤーン138の色が主に存在し、ニット要素131のさまざまなステッチの裏にヤーン139の色が主に存在する。別の実施例として、ヤーン139はヤーン138よりも柔らかく、足に対してより快適なヤーンから形成してもよく、ヤーン138が第1の面136に主に存在し、ヤーン139が第2の面137に主に存在する。
図8Bの構成の説明を続けると、ヤーン138は熱硬化性ポリマー材料と天然ファイバー(例、綿、ウール、絹)のうちの少なくとも1つから形成してもよいのに対し、ヤーン139は熱可塑性ポリマー材料から形成してもよい。一般に、熱可塑性ポリマー材料は加熱すると溶け、冷却すると固体状態に戻る。より具体的には、熱可塑性ポリマー材料は十分な熱を受けると固体状態から軟化した状態または液体状態に遷移し、さらに熱可塑性ポリマー材料は十分に冷却すると軟化した状態または液体状態から固体状態に遷移する。このように、熱可塑性ポリマー材料は2つの物または要素を互いに接合するためによく使用される。
ヤーン139は、たとえば、(a)ヤーン138のある部分をヤーン138の別の部分に、(b)ヤーン138およびインレイストランド132を互いに、または(c)別の要素(例、ロゴ、商標、および注意書きや材料情報を記載した札)をニット構成要素130に、接合するために利用してもよい。このように、ヤーン139は、ニット構成要素130の部分を互いに融着またはその他の形で接合するために使用してよいことを考えると、融着ヤーンと考えてもよい。また、ヤーン138は、一般にニット構成要素130の部分を互いに融着またはその他の形で接合することのできる材料から形成されていないことを考えると、非融着ヤーンと考えてもよい。すなわち、ヤーン138は非融着ヤーンであってもよいのに対し、ヤーン139は融着ヤーンであってもよい。ニット構成要素130のいくつかの構成では、ヤーン138(すなわち、非融着ヤーン)は実質的に熱硬化性ポリエステル材料から形成してもよく、ヤーン139(すなわち、融着ヤーン)は少なくとも部分的に熱可塑性ポリエステル材料から形成してもよい。
添え糸編みしたヤーンの使用は、ニット構成要素130に利点を付与するだろう。ヤーン139を加熱してヤーン138およびインレイストランド132に融着すると、このプロセスはニット構成要素130の構造を剛化または硬化する効果を有する。また、(a)ヤーン138のある部分をヤーン138の別の部分に、(b)ヤーン138およびインレイストランド132を互いに、接合することは、ヤーン138およびインレイストランド132の相対的な位置を固定またはロックし、それにより耐伸縮性および剛性を付与する効果を有する。
すなわち、ヤーン138の部分は、ヤーン139と融着されると、互いに対して滑らなくなり、それによってニット構造の相対的な移動によるニット要素131の歪みまたは恒久的な伸張を防止する。別の利点は、ニット構成要素130の一部が傷んできた場合、またはヤーン138の1本が切れた場合に、解けるのを制限することに関わる。また、インレイストランド132はニット要素131に対して滑らないことにより、インレイストランド132の部分がニット要素131から外方に引っ張られるのを防止する。したがって、ニット構成要素130の区域は、ニット要素131内に融着ヤーンおよび非融着ヤーンの両方を使用することから利するであろう。
ニット構成要素130の別の側面は、足首開口部121に隣接して、足首開口部121の周りに少なくとも部分的に延びているパッド入り区域に関する。図7Eを参照すると、パッド入り区域は、重なり合って、少なくとも部分的に同一の広がりをもつ、一体ニット構造で形成されてもよい2つのニット層140と、ニット層140間に延びる複数のフローティングヤーン141とによって形成される。ニット層140の辺または縁部は互いに固定されるが、中央区域は一般に固定されていない。したがって、ニット層140はチューブまたは筒状構造を効果的に形成する。フローティングヤーン141をニット層140間に配置または挿入して、筒状構造を通過させてもよい。すなわち、フローティングヤーン141はニット層140間に延び、ニット層140の表面に略平行で、ニット層140間も通過して、その間の内部容積を埋める。ニット要素131の大半が機械操作して互いに絡み合ったループを形成するヤーンから形成されるのに対し、フローティングヤーン141はニット層140間の内部容積内で一般に自由または内部容積内にその他の形で挿入される。
追加の事項として、ニット層140は、少なくとも部分的に伸縮ヤーンから形成されてもよい。この構成の利点は、ニット層がフローティングヤーン141を効果的に圧縮して、足首開口部121に隣接するパッド入り区域に弾性の性質を提供することである。すなわち、ニット構成要素130を形成する編みプロセス中に、ニット層140内の伸縮ヤーンに張力をかけて、それによってニット構成要素140がフローティングヤーン141を圧縮するよう誘導してもよい。伸縮ヤーンの伸縮度は大幅に変わってもよいが、ニット構成要素130の多くの構成において、伸縮ヤーンは少なくとも百パーセント伸張してもよい。
フローティングヤーン141の存在は足首開口部121に隣接するパッド入り区域に圧縮性の性質を付与し、それによって足首開口部121の区域の履物100の快適性を高める。多くの従来の履物製品は、足首開口部に隣接した区域にポリマー発泡体要素または他の圧縮可能な材料を組み込んでいる。従来の履物製品と対照的に、ニット構成要素130の残りとの一体ニット構造で形成されるニット構成要素130の部分が、足首開口部121に隣接したパッド入り区域を形成してもよい。履物100のさらなる構成では、ニット構成要素130の他の区域に同様なパッド入り区域を配置してもよい。たとえば、関節にパッドを施すために、中足骨と近位指骨との間の関節に対応する区域と同様なパッド入り区域を配置してもよい。代替例として、アッパー120の区域にある程度のパッドを施すために、テリーループ構造も利用してもよい。
上記説明に基づくと、ニット構成要素130はアッパー120に多様な特徴を付与する。また、ニット構成要素130はいくつかの従来のアッパーの構成を凌ぐ多様な利点を提供する。前述したように、従来の履物のアッパーは、たとえば縫製または接着により接合される複数の材料要素(例、布地、ポリマー発泡体、ポリマーシート、革、合成皮革)から形成されている。アッパーに組み込まれる材料要素の数および種類が増えるほど、材料要素の輸送、保管、裁断および接合に伴う時間および費用も増大するであろう。裁断および縫製プロセスから出る廃材も、アッパーに組み込まれる材料要素の数および種類が増えるほど、より多く蓄積する。また、材料要素の数が多いアッパーは、少ない種類および数の材料要素から形成されているアッパーよりもリサイクルが難しくなるであろう。そのため、アッパーに利用される材料要素の数を減らすことにより、アッパーの製造効率およびリサイクル性を高めながら廃棄物が減少するであろう。このために、製造効率を高め、廃棄物を減らし、リサイクル性を簡便にしながら、ニット構成要素130がアッパー120の実質的な部分を形成する。
〈ニット構成要素のさらなる構成〉
履物100のニット構成要素150が図9および図10に図示されており、ニット構成要素130の代わりに利用されてもよい。ニット構成要素150の主要要素は、ニット要素151およびインレイストランド152である。
ニット要素151は、(例、編み機を用いて)操作して、多様なコースおよびウェールを画成する複数の互いに絡み合ったループを形成する少なくとも1本のヤーンから形成される。すなわち、ニット要素151はニット布地の構造を有する。インレイストランド152はニット要素151を通って延び、ニット要素151内のさまざまなループ間を通る。インレイストランド152は一般にニット要素151内のコースに沿って延びるが、インレイストランド152はニット要素151内のウェールに沿って延びてもよい。インレイストランド132と同様に、インレイストランド152は耐伸縮性を付与し、履物100に組み込まれるとき、締めひも122とともに機能して履物100のフィット性を高める。
ニット要素151は、周縁部153、1対のかかと縁部154、および内縁部155によって輪郭が示される略U字形の構成を有する。くわえて、ニット要素151は第1の面156および反対側の第2の面157を有する。第1の面156はアッパー120の外側面の一部を形成してよいのに対し、第2の面157はアッパー120の内側面の一部を形成してもよく、それによりアッパー120内に空洞の少なくとも一部を画成する。多くの構成では、ニット要素151はインレイストランド152の区域において単一の布地層の構成を有してもよい。すなわち、ニット層151は、面156と面157との間の単一の布地層であってもよい。くわえて、ニット要素151は複数の締めひも開口部158を画成する。
インレイストランド132と同様に、インレイストランド152は繰り返し、周縁部153から内縁部155に向かって、少なくとも部分的に締めひも開口部158の1つを周り、さらに周縁部153に戻る。しかし、インレイストランド132と対照的に、インレイストランド152のいくつかの部分は後方に斜行して、かかと縁部154まで延びる。より具体的には、最後部の締めひも開口部158に関連するインレイストランド152の部分はかかと縁部154の1つから内縁部155に向かって、少なくとも部分的に最後部の締めひも開口部158の1つを周り、かかと縁部154の1つに戻る。くわえて、インレイストランド152のいくつかの部分は締めひも開口部158の1つの周りに延びていない。より具体的には、インレイストランド152のいくつかの区画は内縁部155に向かって延び、締めひも開口部158の1つに隣接した区域で折り返し、周縁部153またはかかと縁部154の1つに向かって戻る。
ニット要素151は多様な方法で形成してもよいが、ニット構造のコースは一般にインレイストランド152と同じ方向に延びる。しかし、締めひも開口部158に隣接する区域では、インレイストランド152はニット要素151内のウェールに沿っても延びてもよい。より具体的には、内縁部155に平行なインレイストランド152の区画はウェールに沿って延びてもよい。
ニット要素151と比較して、インレイストランド152は、より大きな耐伸縮性を呈してもよい。すなわち、インレイストランド152はニット要素151よりも伸張しなくてもよい。インレイストランド152の複数の区画がニット要素151を通って延びていることを考えると、インレイストランド152はスロート区域と下方区域との間のアッパー120の部分に耐伸縮性を付与する。また、締めひも122に張力を掛けるとインレイストランド152に張力が付与され、それによってスロート区域と下方区域との間のアッパー120の部分が足に当たるよう誘導してもよい。くわえて、インレイストランド152の複数の区画がかかと縁部154に向かって延びていることを考えると、インレイストランド152はかかと領域103のアッパー120の部分に耐伸縮性を付与するだろう。また、締めひも122に張力を掛けると、かかと領域103のアッパー120の部分が足に当たるよう誘導してもよい。このように、インレイストランド152は締めひも122とともに機能して、履物100のフィット性を高める。
ニット要素151は、ニット要素131について上述したさまざまな種類のヤーンのいずれを組み込んでもよい。インレイストランド152も、インレイストランド132について上述した構成および材料のいずれから形成してもよい。くわえて、図8Aおよび図8Bに関して述べたさまざまなニット構成もニット構成要素150に利用してもよい。より具体的には、ニット要素151は1本のヤーン、添え糸編みされる2本のヤーン、または融着ヤーンおよび非融着ヤーンから形成される区域を有してもよく、融着ヤーンは、(a)非融着ヤーンのある部分を非融着ヤーンの別の部分に、または(b)非融着ヤーンとインレイストランド152とを互いに、接合する。
ニット要素131の大半は、比較的テクスチャード加工されていない布地で、共通のまたは単一のニット構造(例、筒状ニット構造)から形成されているように図示されている。対して、ニット要素151は、ニット構成要素150の異なる区域に固有の特性および利点を付与するさまざまなニット構造を組み込む。また、さまざまなヤーンの種類をニット構造と組み合わせることで、ニット構成要素150はアッパー120の異なる区域に幅広い特性を付与してもよい。図11を参照すると、ニット構成要素150の模式図は、異なるニット構造を有するさまざまなゾーン160〜169を示しており、そのそれぞれをこれから詳細に説明する。参照のために、ニット構成要素150が履物100に組み込まれたとき、ニットゾーン160〜169の位置の基準となるよう、図11では領域101〜103ならびに側部104および105のそれぞれを示している。
筒状ニットゾーン160は周縁部153の大半に沿って、側部104および105の両側の領域101〜103のそれぞれを通って延びている。筒状ニットゾーン160は、領域101および102の界接面にほぼ位置する区域では、側部104および105のそれぞれから内方にも延びて、内縁部155の前部を形成する。筒状ニットゾーン160は比較的テクスチャード加工されていないニット構成を形成する。
図12Aを参照すると、筒状ニットゾーン160の区域を通る断面が図示されており、面156および157は互いに実質的に平行である。筒状ニットゾーン160は履物100にさまざまな利点を付与する。たとえば、特に筒状ニットゾーン160のヤーンを融着ヤーンで添え糸編みした場合、筒状ニットゾーン160はいくつかの他のニット構造よりも優れた耐久性および耐摩耗性を有する。くわえて、筒状ニットゾーン160の比較的テクスチャード加工されていない性質は、ストローベル中敷き125を周縁部153に接合するプロセスを簡略にする。すなわち、周縁部153に沿って配置される筒状ニットゾーン160の部分は、履物100のラスティングプロセスを容易にする。参照のために、図13Aは、筒状ニットゾーン160を編みプロセスを用いて形成する仕方のループ図を示す。
2つの伸縮ニットゾーン161は周縁部153から内方に延びて、足の中足骨と近位指骨との間の関節の位置に対応して配置される。すなわち、伸縮ゾーンは、界接面領域101および102にほぼ位置する区域において、周縁部から内方に延びている。筒状ニットゾーン160と同様に、伸縮ニットゾーン161のニット構成は筒状ニット構造であってもよい。しかし、筒状ニットゾーン160と対照的に、伸縮ニットゾーン161はニット構成要素150に伸縮特性および復元特性を付与する伸縮ヤーンから形成される。伸縮ヤーンの伸縮度は大幅に変えてもよいが、ニット構成要素150の多くの構成において、伸縮ヤーンは少なくとも百パーセント伸張してもよい。
筒状両面タックニットゾーン162は、少なくとも中足領域102の内縁部155の部分に沿って延びている。筒状両面タックニットゾーン162も比較的テクスチャード加工されていないニット構造を形成するが、筒状ニットゾーン160よりも厚みが大きい。断面では、筒状両面タックニットゾーン162は図12Aと同様であり、面156および157は互いに実質的に平行である。筒状両面タックニットゾーン162は履物100にさまざまな利点を付与する。たとえば、筒状両面タックニットゾーン162はいくつかの他のニット構造よりも耐伸縮性が優れ、締めひも122が筒状両面タックニットゾーン162およびインレイストランド152に張力をかけたときに有利である。参照のために、図13Bは、筒状両面タックニットゾーン162を編みプロセスを用いて形成する仕方のループ図を示す。
1×1メッシュニットゾーン163を中足領域101に、周縁部153から内方に離間して配置する。図12Bに図示されるように、1×1メッシュニットゾーンはC字形構成を有し、ニット要素151を通って、第1の面156から第2の面157まで延びる複数の開口部を形成する。開口部はニット構成要素150の通気性を高め、アッパー120に空気を入れ、アッパー120から湿気を逃がす。参照のために、図13Cは、1×1メッシュニットゾーン163を編みプロセスを用いて形成する仕方のループ図を示す。
2×2メッシュニットゾーン164は1×1メッシュニットゾーン163に隣接して延びる。1×1メッシュニットゾーン163と比較して、2×2メッシュニットゾーン164はより大きな開口部を形成し、ニット構成要素150の通気性をさらに高められる。参照のために、図13Dは、2×2メッシュニットゾーン164を編みプロセスを用いて形成する仕方のループ図を示す。
3×2メッシュニットゾーン165は2×2メッシュニットゾーン164内に配置され、別の3×2メッシュニットゾーン165は伸縮ゾーン161の1つに隣接して配置される。1×1メッシュニットゾーン163および2×2メッシュニットゾーン164と比較して、3×2メッシュニットゾーン165はさらに大きな開口部を形成し、これがニット構成要素150の通気性をさらに高められる。参照のために、図13Eは、3×2メッシュニットゾーン165を編みプロセスを用いて形成する仕方のループ図を示す。
1×1モックメッシュニットゾーン166は足先領域101に配置されて、1×1メッシュニットゾーン163の周りに延びている。ニット要素151を通る開口部を形成するメッシュニットゾーン163〜165と対照的に、図12Cに図示されるように、1×1モックメッシュニットゾーン166は第1の面156に凹みを形成する。履物100の美観を向上させることに加えて、1×1モックメッシュニットゾーン166は柔軟性を高めて、ニット構成要素150の全体の質量を減少させられる。参照のために、図13Fは、1×1モックメッシュニットゾーン166を編みプロセスを用いて形成する仕方のループ図を示す。
2つの2×2モックメッシュニットゾーン167がかかと領域103に、かかと縁部154に隣接して配置される。1×1モックメッシュニットゾーン166と比較して、2×2モックメッシュニットゾーン167は第1の面156に、より大きな凹みを形成する。図12Dに図示されるように、インレイストランド152が2×2モックメッシュニットゾーン167の凹みを通って延びる区域では、インレイストランド152は凹みの下方区域で見えて、露出していてもよい。参照のために、図13Gは、2×2モックメッシュニットゾーン167を編みプロセスを用いて形成する仕方のループ図を示す。
2つの2×2ハイブリッドニットゾーン168が中足領域102に、2×2モックメッシュニットゾーン167の前方に配置される。2×2ハイブリッドニットゾーン168は、2×2メッシュニットゾーン164および2×2モックメッシュニットゾーン167の特徴を共有する。より具体的には、2×2ハイブリッドニットゾーン168は2×2メッシュニットゾーン164のサイズおよび構成を有する開口部を形成するとともに、2×2ハイブリッドニットゾーン168は2×2モックメッシュニットゾーン167のサイズおよび構成を有する凹みを形成する。
図12Eに図示されるように、インレイストランド152が2×2ハイブリッドニットゾーン168の凹みを通って延びる区域では、インレイストランド152は見えて露出している。参照のために、図13Hは、2×2ハイブリッドニットゾーン168を編みプロセスを用いて形成する仕方のループ図を示す。
ニット構成要素150は、ニット構成要素130について上で説明した足首開口部121に隣接するパッド入り区域の一般構成を有し、少なくとも部分的に足首開口部121の周りに延びている2つのパッド入りゾーン169も含む。このように、パッド入りゾーン169は重なり合って少なくとも部分的に同一の広がりをもつ、一体ニット構造で形成されてもよい2つのニット層と、ニット層間に延びている複数のフローティングヤーンとによって形成される。
図9と図10とを比較すると、ニット要素151の編目模様の大半は、第2の面157ではなく、第1の面156に配置されていることが分かる。すなわち、モックメッシュニットゾーン166および167によって形成される凹み、ならびに2×2ハイブリッドニットゾーン168の凹みは、第1の面156に形成される。この構成は、履物100の快適性を高めるという利点を有する。より具体的には、この構成は第2の面157の比較的テクスチャード加工されていない構成を足に当てる。図9と図10とをさらに比較すると、インレイストランド152の部分は第1の面156には露出しているが、第2の面157には露出していない。この構成も、履物100の快適性を高めるという利点を有する。より具体的には、ニット要素151の一部によってインレイストランド152を足から離間することにより、インレイストランド152は足に接触しない。
ニット構成要素130の追加構成が図14A〜図14Cに図示されている。ニット構成要素130に関して述べたが、これらの構成のそれぞれに関連する概念もニット構成要素150とともに利用してもよい。
図14Aを参照すると、ニット構成要素130にインレイストランド132がない。インレイストランド132はニット構成要素130の区域に耐伸縮性を付与するが、いくつかの構成ではインレイストランド132からの耐伸縮性を必要としないことがある。また、いくつかの構成はアッパー120の伸縮性をより大きくすることから利することがある。図14Bを参照すると、ニット要素131は、ニット要素131の残りとの一体ニット構造で形成されて、周縁部133にニット構成要素130の長さに沿って延びている2つの折込部142を含む。履物100に組み込まれるとき、折込部142はストローベル式中敷き125の代わりをしてもよい。すなわち、折込部142は、中敷き113の下に延びてミッドソール111の上面に固定される、アッパー120の一部を協働して形成してもよい。図14Cを参照すると、ニット構成要素130は中足領域102に限定される構成を有する。この構成では、たとえば縫製または接着により、他の材料要素(例、布地、ポリマー発泡体、ポリマーシート、革、合成皮革)をニット構成要素130に接合して、アッパー120を形成してもよい。
上記説明に基づくと、ニット構成要素130および150のそれぞれは、アッパー120に特徴および利点を付与するさまざまな構成を有してもよい。より具体的には、ニット要素131および151は、アッパー120の異なる区域に固有の特性を付与するさまざまなニット構造およびヤーンの種類を組み込んでもよく、インレイストランド132および152はニット構造を通って延びてアッパー120の区域に耐伸縮性を付与し、締めひも122とともに機能して履物100のフィット性を高めてもよい。
〈編み機およびフィーダーの構成〉
編みは手で行ってもよいが、ニット構成要素の商業的な製造は一般に編み機で行われる。図15に、ニット構成要素130および150のいずれの生産にも適した編み機200の実施例が図示されている。編み機200は、例示のためにVベッド型横編み機の構成を有するが、ニット構成要素130および150またはニット構成要素130および150の性質のいずれも、他の種類の編み機で生産してもよい。
編み機200は、互いに対して角度を成すことによって、Vベッドを形成する2つの針床201を含む。針床201はそれぞれ、共通平面上に置かれている複数の個々の針202を含む。すなわち、一方の針床201からの針202は第1平面上に置かれ、他方の針床201からの針202は第2平面上に置かれている。第1平面および第2平面(つまり、2つの針床201)は互いに対して角度を成して、編み機200の幅の大半に沿って延びている交差部を形成するように交わる。より詳細に以下で説明するように、針202はそれぞれ、後退する第1位置と、延伸する第2位置とを有する。第1位置では、針202は第1平面と第2平面とが交わる交差部から離間している。しかし、第2位置では、針202は第1平面と第2平面とが交わる交差部を通過する。
1対のレールが、針床201の交差部の上にかつこれに平行に延びており、複数の標準フィーダー204およびコンビネーションフィーダー220の装着ポイントを提供する。各レール203は2つの側部を有し、そのそれぞれが1つの標準フィーダー204または1つのコンビネーションフィーダー220のいずれかを収容する。このように、編み機200は合計で4つのフィーダー204および220を含んでもよい。図示するように、最前列のレール203は対向する側部にコンビネーションフィーダー220および標準フィーダー204を1つずつ含み、最後列レール203は対向する側部に2つの標準フィーダー204を含む。2本のレール203を図示しているが、編み機200のさらなる構成は、追加レール203を組み込んで、より多くのフィーダー204および220の装着ポイントを提供してもよい。
キャリッジ205の作用により、フィーダー204および220はレール203および針床201に沿って移動し、それによって針202にヤーンを供給する。図15では、ヤーン206はスプール207によってコンビネーションフィーダー220に供給される。より具体的には、ヤーン206はスプール207からさまざまなヤーンガイド208、ヤーン引きばね209、およびヤーンテンショナー210に延びてから、コンビネーションフィーダー220に進入する。図示していないが、ヤーンをフィーダー204に供給するために、追加スプール207を使用してもよい。
標準フィーダー204は、編み機200などのVベッド型横編み機で従来から使用されている。すなわち、既存の編み機は標準フィーダー204を組み込んでいる。各標準フィーダー204は、針202が編み、タック編みおよび浮き編みするために操作するヤーンを供給する能力を有する。比較として、コンビネーションフィーダー220は、針202が編み、タック編みおよび浮き編みするヤーン(例、ヤーン206)を供給する能力を有するとともに、コンビネーションフィーダー220はヤーンを挿入する能力を有する。また、コンビネーションフィーダー220は、多様な異なるストランド(例、フィラメント、スレッド、ロープ、帯、ケーブル、鎖もしくはヤーン)を挿入する能力を有する。したがって、コンビネーションフィーダー220は各標準フィーダー204よりも優れた汎用性を示す。
前述したように、コンビネーションフィーダー220は、ヤーンを編み、タック編み、および浮き編みすることに加えて、ヤーンまたは他のストランドを挿入するときに利用してもよい。コンビネーションフィーダー220を組み込んでいない従来の編み機もヤーンを挿入してもよい。より具体的には、インレイフィーダーを備える従来の編み機もヤーンを挿入してもよい。Vベッド型横編み機の従来のインレイフィーダーは、ヤーンを挿入するために連動する2つの構成要素を含む。インレイフィーダーの構成要素のそれぞれを2本の隣り合うレールの個別の装着ポイントに固定することによって、2つの装着ポイントを占有する。個々の標準フィーダー204は1つの装着ポイントしか占有しないのに対し、インレイフィーダーを利用してヤーンをニット構成要素に挿入する場合には、一般に2つの装着ポイントが占有される。また、コンビネーションフィーダー220は1つの装着ポイントしか占有しないのに対し、従来のインレイフィーダーは2つの装着ポイントを占有する。
編み機200が2本のレール203を含んでいることを考えると、編み機200には4つの装着ポイントが利用できる。従来のインレイフィーダーを編み機200とともに使用した場合、標準フィーダー204には2つの装着ポイントしか利用できないであろう。しかし、編み機200にコンビネーションフィーダー220を使用すると、標準フィーダー204に3つの装着ポイントが利用できる。したがって、ヤーンまたは他のストランドを挿入するときにコンビネーションフィーダー220を利用してもよく、コンビネーションフィーダー220は1つの装着ポイントしか占有しないという利点を有する。
図16〜図19には、キャリア230、フィーダーアーム240および1対の作動部材250を含むように、コンビネーションフィーダー220が個々に図示されている。コンビネーションフィーダー220の大半は金属材料(例、スチール、アルミニウム、チタン)から形成してもよいが、キャリア230、フィーダーアーム240および作動部材250の部分は、たとえば、ポリマー、セラミックまたは複合材料から形成してもよい。上述したように、コンビネーションフィーダー220は、ヤーンを編み、タック編みおよび浮き編みすることに加えて、ヤーンまたは他のストランドを挿入するときに利用してもよい。特に図16を参照すると、ストランドがコンビネーションフィーダー220と界接する仕方を図解するために、ヤーン206の一部が図示されている。
キャリア230は略矩形構成を有し、4本のボルト233によって接合されている第1カバー部材231および第2カバー部材232を含む。カバー部材231および232は、フィーダーアーム240および作動部材250の部分が配置される内部空洞を画成する。キャリア230は、フィーダー220をレール203の1本に固定するために、第1カバー部材231から外方に延びている装着要素234も含む。装着要素234の構成は変わってもよいが、図17に図示されるように、装着要素234は鳩尾形を形成する2つの離間した突出区域を含むように描かれている。レール203の1本にある逆鳩尾構成が装着要素234の鳩尾形まで延びて、コンビネーションフィーダー220を編み機200に効果的に接合してもよい。図18に図示されるように、第2カバー部材234は中央に配置された細長いスロット235を形成することも留意するべきである。
フィーダーアーム240は、キャリア230(すなわち、カバー部材231と232との間の空洞)を通って、キャリア230の下側から外方に延びる略細長い構成を有する。他の要素に加えて、フィーダーアーム240は作動ボルト241、ばね242、プーリ243、ループ244および給糸区域245を含む。作動ボルト241はフィーダーアーム240から外方に延びて、カバー部材231と232との間の空洞内に配置される。
図18に図示されるように、作動ボルト241の片側も第2カバー部材232のスロット235内に配置される。ばね242はキャリア230およびフィーダーアーム240に固定される。より具体的には、ばね242の一端がキャリア230に固定されて、ばね242の反対の端部がフィーダーアーム240に固定される。フィーダーアーム240上にプーリ243、ループ244および給糸区域245が存在し、ヤーン206または別のストランドと界接する。また、プーリ243、ループ244および給糸区域245は、ヤーン206または別のストランドがコンビネーションフィーダー220をスムーズに通過することによって、針202に確実に供給されることを確保するように構成されている。再び図16を参照すると、ヤーン206はプーリ243の周りに、ループ244を通って、給糸区域245まで延びる。くわえて、ヤーン206はフィーダーアーム240の末端領域である給糸先端部246の外に延びて、さらに針202を供給する。
作動部材250はそれぞれアーム251およびプレート252を含む。作動部材250の多くの構成では、各アーム251はプレート252の1つとのワンピース要素として形成される。アーム251はキャリア230の外側、キャリア230の上側に配置されるのに対し、プレート252はキャリア250内に配置される。アーム251はそれぞれが外側端部253および反対側の内側端部254を画成する細長い構成を有し、アーム251は内側端部254の両方の間に空間255を画成するように位置付けられている。すなわち、アーム251は互いに離間している。プレート252は略平面構成を有する。
図19を参照すると、プレート252はそれぞれが傾斜縁部257を有する開口部256を画成する。また、フィーダーアーム240の作動ボルト241は各開口部256の中まで延びている。
上述したコンビネーションフィーダー220の構成は、フィーダーアーム240の平行移動を促進する構造を提供する。より詳細に以下で述べるように、フィーダーアーム240の平行移動は、給糸先端部246を針床201の交差部の上または下の位置に選択的に位置付ける。すなわち、給糸先端部246は針床201の交差部を往復運動する能力を有する。フィーダーアーム240が平行移動する利点は、コンビネーションフィーダー220が、(a)給糸先端部246が針床201の交差部の上に位置付けられると、編み、タック編みおよび浮き編みするためのヤーン206を供給し、(b)給糸先端部246が針床201の交差部の下に位置付けられると、挿入するためのヤーン206または別のストランドを供給することである。また、フィーダーアーム240は、コンビネーションフィーダー220を利用する仕方によって、2つの位置の間を往復運動する。
針床201の交差部を往復運動するとき、フィーダーアーム240は後退位置から延伸位置まで平行移動する。後退位置にあるとき、給糸先端部246は針床201の交差部の上に位置付けられる。延伸位置にあるとき、給糸先端部246は針床201の交差部の下に位置付けられる。フィーダーアーム240が延伸位置にあるときよりも、フィーダーアーム240が後退位置にあるときの方が、給糸先端部246はキャリア230に近づく。同様に、フィーダーアーム240が後退位置にあるときよりも、フィーダーアーム240が延伸位置にあるときの方が、給糸先端部246はキャリア230から遠ざかる。言い換えると、給糸先端部246は延伸位置にあるときにキャリア230から遠ざかる方に移動し、給糸先端部246は後退位置にあるときにキャリア230に近づく方に移動する。
図16〜図20Cおよび後述する他の図において、参照のために、矢印221を給糸区域245付近に位置付けている。矢印221が上方またはキャリア230の方に向いているとき、フィーダーアーム240は後退位置にある。矢印221が下方またはキャリア230から離れる方を向いているとき、フィーダーアーム240は延伸位置にある。したがって、矢印221の位置を参照することにより、フィーダーアーム240の位置を容易に確認できる。
フィーダーアーム240の自然な状態は後退位置である。すなわち、コンビネーションフィーダー220の区域に大きな力が加えられていないとき、フィーダーアームは後退位置のままである。たとえば、図16〜図19を参照すると、コンビネーションフィーダー220と相互に作用するような力または他の影響は示されておらず、フィーダーアーム240は後退位置にある。しかし、アーム251の1つに十分な力が加えられると、フィーダーアーム240の平行移動が起こる。より具体的には、外側端部253の1つに十分な力が加えられて、空間255の方に向けられると、フィーダーアーム240の平行移動が生じる。
図20Aおよび図20Bを参照すると、力222が外側端部253の1つに作用しており、空間255の方に向けられ、フィーダーアーム240は延伸位置に平行移動した状態が示されている。しかし、力222が取り除かれると、フィーダーアーム240は後退位置に戻る。図20Cは、力222が内側端部254に作用し、外方に向けられている状態を描いており、フィーダーアーム240が後退位置のままであることにも留意するべきである。
上述したように、フィーダー204および220は、キャリッジ205の作用により、レール203および針床201に沿って移動する。より具体的には、キャリッジ205内の駆動ボルトがフィーダー204および220に接触して、フィーダー204および220を針床201に沿って押す。コンビネーションフィーダー220に関しては、駆動ボルトは外側端部253の1つまたは内側端部254の1つのいずれかに接触して、コンビネーションフィーダー220を針床201に沿って押してもよい。駆動ボルトが外側端部253の1つに接触すると、フィーダーアーム240は延伸位置に平行移動し、給糸先端部246は針床201の交差部の下を通る。駆動ボルトが内側端部254の1つに接触して、空間255内に配置されると、フィーダーアーム240は後退位置に留まり、給糸先端部246は針床201の交差部の上になる。したがって、キャリッジ205がコンビネーションフィーダー220に接触する区域が、フィーダーアーム240が後退位置にあるか、または延伸位置にあるかを決定する。
ここで、コンビネーションフィーダー220の機械的作用を説明する。図19〜図20Bは、第1カバー部材231を取り外し、それによってキャリア230の空洞内の要素が露出している状態のコンビネーションフィーダー220を描いている。図19を図20Aおよび図20Bと比較することにより、力222がフィーダーアーム240を平行移動するよう誘導する仕組みが明らかになるであろう。力222が外側端部253の1つに作用すると、作動部材250の1つが、フィーダーアーム240の長さに垂直な方向にスライドする。すなわち、図19〜図20Bでは作動部材250の1つが水平にスライドする。作動部材250の1つが移動することにより、作動ボルト241を傾斜縁部257の1つに係合させる。作動部材250の移動はフィーダーアーム240の長さに垂直な方向に制限されることを考えると、作動ボルト241は傾斜縁部257に対して転がるかまたはスライドして、フィーダーアーム240を延伸位置に平行移動するよう誘導する。力222が取り除かれると、ばね242がフィーダーアーム240を延伸位置から後退位置に引く。
上記説明に基づくと、ヤーンまたは他のストランドが編み、タック編みもしくは浮き編みに利用されているのか、または挿入に利用されているのかによって、コンビネーションフィーダー220は後退位置と延伸位置との間を往復運動する。コンビネーションフィーダー220は、力222を加えるとフィーダーアーム240を後退位置から延伸位置に平行移動するよう誘導し、力222を取り除くとフィーダーアーム240を延伸位置から後退位置に平行移動するよう誘導する構成を有する。すなわち、コンビネーションフィーダー220は、力222の加除がフィーダーアーム240を針床201の両側間で往復運動させる構成を有する。一般的に、外側端部253は作動区域と考えてもよく、フィーダーアーム240の移動を誘導する。コンビネーションフィーダー220のさらなる構成では、作動区域は他の場所でもよく、または他の刺激に反応して、フィーダーアーム240の移動を誘導してもよい。たとえば、作動区域はフィーダーアーム240の移動を制御するサーボメカニズムに連結される電気入力であってもよい。したがって、コンビネーションフィーダー220は、上述した構成と同じ一般的な仕組みで動作する多様な構造を有してもよい。
〈編みプロセス〉
ここで、ニット構成要素を製造するために編み機200を操作する方法を詳細に説明する。また、以下の説明は編みプロセス中のコンビネーションフィーダー220の操作を実証する。
図21Aを参照すると、さまざまな針202、レール203、標準フィーダー204およびコンビネーションフィーダー220を含む編み機200の一部が図示されている。コンビネーションフィーダー220はレール203の前側に固定されているが、標準フィーダー204はレール203の後側に固定されている。ヤーン206はコンビネーションフィーダー220を通過し、ヤーン206の末端は給糸先端部246から外方に延びている。ヤーン206が図示されているが、任意の他のストランド(例、フィラメント、スレッド、ロープ、帯、ケーブル、鎖またはヤーン)がコンビネーションフィーダー220を通過してもよい。別のヤーン211が標準フィーダー204を通過して、ニット構成要素260の一部を形成し、ニット構成要素260の一番上のコースを形成するヤーン211のループは針202の末端に配置されるフックによって保持される。
本明細書で述べる編みプロセスは、ニット構成要素260の形成に関するが、これはニット構成要素130および150と同様なニット構成要素を含め、あらゆるニット構成要素であってもよい。説明のために、図面では、ニット構造を例示できるように、ニット構成要素260の比較的小さい区画しか示していない。また、編み機200およびニット構成要素260のさまざまな要素の縮尺または比率は、編みプロセスをよりよく例示するために拡大していることがある。
標準フィーダー204は、給糸先端部213を備えるフィーダーアーム212を含む。フィーダーアーム212は、給糸先端部213を、(a)針202間の中心、かつ(b)針床201の交差部の上の位置に位置付けるような角度にされている。
図22Aは、この構成の模式的な断面図を示す。針202は、互いに対して角度を成す異なる平面上にあることに留意する。すなわち、針床201からの針202は異なる平面上にある。針202はそれぞれ第1位置と第2位置とを有する。実線で示される第1位置では、針202は後退している。点線で示される第2位置では、針202は延伸している。第1位置では、針202は、針床201がその上にある平面が交わる交差部から離間している。しかし、第2位置では、針202は延伸して、針床201がその上にある平面が交わる交差部を通過する。すなわち、針202は、第2位置まで延伸すると、互いに交差する。給糸先端部213は平面の交差部の上に配置されることに留意するべきである。この位置で、給糸先端部213は、編み、タック編みおよび浮き編みのために針202にヤーン211を供給する。
矢印221の向きで明示されるように、コンビネーションフィーダー220は後退位置にある。フィーダーアーム240はキャリア230から下方に延びて、給糸先端部246を、(a)針202間の中心、かつ(b)針床201の交差部の上の位置に位置付ける。
図22Bは、この構成の模式的な断面図を示す。給糸先端部246は、図22Aの給糸先端部213と同じ相対位置に位置付けられている。
ここで図21Bを参照すると、標準フィーダー204はレール203に沿って移動し、ヤーン211からニット構成要素260に新たなコースが形成される。より具体的には、針202は前のコースのループを通るヤーン211の区画を引っ張り、それによって新たなコースを形成する。したがって、標準フィーダー204を針202に沿って移動させ、それによって、針202にヤーン211を操作させて、ヤーン211から追加ループを形成させることによって、ニット構成要素260にコースを追加してもよい。
編みプロセスを続けると、図21Cに図示するように、ここでフィーダーアーム240が後退位置から延伸位置に平行移動する。延伸位置では、フィーダーアーム240はキャリア230から下方に延びて、給糸先端部246を、(a)針202間の中心、かつ(b)針床201との交差部の下の位置に位置付ける。図22Cは、この構成の模式的な断面図を示す。給糸先端部246は、フィーダーアーム240の平行移動によって図22Bの給糸先端部246の位置の下に位置付けられていることに留意する。
ここで図21Dを参照すると、コンビネーションフィーダー220はレール203に沿って移動し、ヤーン206はニット構成要素260のループ間に配置される。すなわち、ヤーン206は、あるループの前と他のループの背後とに交互パターンで配置される。さらに、ヤーン206は、針床201から針202によって保持されているループの前に配置され、ヤーン206は、他の針床201から針202によって保持されているループの背後に配置される。ヤーン206を針床201の交差部の下の区域に置くために、フィーダーアーム240は延伸位置のままであることに留意する。これによりヤーン206を図21Bの標準フィーダー204によって直近に形成されたコース内に効果的に配置する。
ニット構成要素260へのヤーン206の挿入を完了するために、図21Eに図示するように、標準フィーダー204はレール203に沿って移動して、ヤーン211から新たなコースを形成する。新たなコースを形成することにより、ヤーン206は効果的にニット構成要素260の構造内に編み込まれるか、またはその他の形で組み込まれる。この段階で、フィーダーアーム240も延伸位置から後退位置に平行移動してもよい。
図21Dから図21Eは、レール203に沿ったフィーダー204および220の個々の動きを示す。すなわち、図21Dはレール203に沿ったコンビネーションフィーダー220の第1移動を示し、図21Eはレール203に沿った標準フィーダー204の第2のその後の移動を示す。多くの編みプロセスでは、フィーダー204および220は効果的に同時に移動してヤーン206を挿入し、ヤーン211から新たなコースを形成してもよい。しかし、コンビネーションフィーダー220は、ヤーン211から新たなコースを形成する前にヤーン206を位置付けるために、標準フィーダー204の先または前に移動する。
上記説明で概説する一般的な編みプロセスは、インレイストランド132および152をニット要素131および151に配置してもよい方法の実施例を提供する。より具体的には、ニット構成要素130および150は、コンビネーションフィーダー220を利用して、ニット要素131内にインレイストランド132および152を効果的に挿入することによって形成してもよい。フィーダーアーム240の往復動を考えると、前に形成されたコース内にインレイストランドを配置した後で、新たなコースを形成してもよい。
編みプロセスを続けると、図21Fに図示するように、ここでフィーダーアーム240は後退位置から延伸位置に平行移動する。図21Gに図示するように、次いでコンビネーションフィーダー220がレール203に沿って移動し、ニット構成要素260のループ間にヤーン206が配置される。これにより図21Eの標準フィーダー204により形成されるコース内にヤーン206が効果的に配置される。ニット構成要素260へのヤーン206の挿入を完了するために、図21Hに図示するように、標準フィーダー204はレール203に沿って移動して、ヤーン211から新たなコースを形成する。新たなコースを形成することにより、ヤーン206が効果的にニット構成要素260の構造内に編み込まれるか、またはその他の形で組み込まれる。この段階で、フィーダーアーム240も延伸位置から後退位置に平行移動してもよい。
図21Hを参照すると、ヤーン206は、2つのインレイ区画間にループ214を形成する。ニット構成要素130の上記説明では、図5および図6で分かるように、インレイストランド132は周縁部133でニット要素131から出て、さらに周縁部133の別の場所でニット要素131に再び進入することを繰り返すことによって、周縁部133に沿ってループを形成することに注目した。ループ214は同様に形成される。すなわち、ループ214は、ヤーン206がニット構成要素260のニット構造から出て、さらにニット構造に再び進入するところに形成される。
上述したように、標準フィーダー204は、針202が編み、タック編みおよび浮き編みをするように操作するヤーン(例、ヤーン211)を供給する能力を有する。しかし、コンビネーションフィーダー220は、ヤーンを挿入する他に、針202が編み、タック編みまたは浮き編みするヤーン(例、ヤーン206)を供給する能力も有する。編みプロセスの上記説明は、コンビネーションフィーダー220が延伸位置にあるときにヤーンを挿入する方法を説明した。コンビネーションフィーダー220は後退位置にあるとき、編み、タック編みおよび浮き編みするためのヤーンも供給してもよい。
たとえば、図21Iを参照すると、コンビネーションフィーダー220は後退位置にあるときにレール203に沿って移動し、後退位置にあるときにニット構成要素260のコースを形成する。したがって、フィーダーアーム240を後退位置と延伸位置との間で往復運動させることにより、コンビネーションフィーダー220は、編み、タック編み、浮き編みおよび挿入のためのヤーン206を供給してもよい。そのため、コンビネーションフィーダー220の利点は、標準フィーダー204よりも多くの数の機能に利用できるヤーン供給の汎用性に関係する。
コンビネーションフィーダー220が編み、タック編み、浮き編みおよび挿入のためにヤーンを供給する能力は、フィーダーアーム240の往復動に基づく。図22Aおよび図22Bを参照すると、給糸先端部213および246は針220に対して同一の位置である。したがって、フィーダー204および220はともに、編み、タック編みおよび浮き編みのためにヤーンを供給してもよい。図22Cを参照すると、給糸先端部246は異なる位置である。したがって、コンビネーションフィーダー220は挿入するためにヤーンまたは他のストランドを供給してもよい。そのため、コンビネーションフィーダー220の利点は、編み、タック編み、浮き編みおよび挿入のために利用できるヤーン供給の汎用性に関係する。
〈編みプロセスのさらなる考察〉
ここで、編みプロセスに関する追加の側面を説明する。図23を参照すると、ニット構成要素260の上側のコースはヤーン206および211の両方から形成される。より具体的には、コースの左側はヤーン211から形成されるのに対し、コースの右側はヤーン206から形成される。くわえて、ヤーン206はコースの左側に挿入される。この構成を形成するために、標準フィーダー204は最初にヤーン211からコースの左側を形成してもよい。次に、フィーダーアーム240が延伸位置にあるときに、コンビネーションフィーダー220がコースの右側にヤーン206を挿入する。その後、フィーダーアーム240は延伸位置から後退位置に移動して、コースの右側を形成する。したがって、コンビネーションフィーダーはコースの一部にヤーンを挿入してから、コースの残りを編むためにヤーンを供給してもよい。
図24は、4つのコンビネーションフィーダー220を含む編み機200の構成を図示している。上述したように、コンビネーションフィーダー220は、編み、タック編み、浮き編みおよび挿入するためにヤーン(例、ヤーン206)を供給する能力を有する。この汎用性を考えると、編み機200またはさまざまな従来の編み機において、標準フィーダー204を複数のコンビネーションフィーダー220に取り替えてもよい。
図8Bは、ニット要素131を形成するために2本のヤーン138および139を添え糸編みし、インレイストランド132がニット要素131を通って延びているニット構成要素130の構成を図示している。上述した一般的な編みプロセスを利用してこの構成を形成してもよい。図15に図示されるように、編み機200は複数の標準フィーダー204を含み、コンビネーションフィーダー220がインレイストランド132を置きながら、標準フィーダー204のうちの2つを利用してニット要素131を形成してもよい。したがって、図21A〜図21Iで上述した編みプロセスは、追加のヤーンを供給する別の標準フィーダー204を追加することにより改変してもよい。ヤーン138が非融着ヤーンで、ヤーン139が融着ヤーンの構成では、編みプロセス後にニット構成要素130を加熱して、ニット構成要素130を融着してもよい。
図21A〜図21Iに図示されるニット構成要素260の部分は、規則的な途切れのないコースおよびウェールでリブニット布地の構成を有する。すなわち、ニット構成要素260の部分は、たとえば、メッシュニットゾーン163〜165と同様なメッシュ区域、またはモックメッシュニットゾーン166および167と同様なモックメッシュ区域を有していない。ニット構成要素150および260のいずれにもメッシュニットゾーン163〜165を形成するためには、振り針床201と、異なる振り位置で前から後への針床201の目移しおよび後から前への針床201の目移しとの組み合わせを利用する。モックメッシュニットゾーン166および167と同様なモックメッシュ区域を形成するためには、振り針床と、前から後への針床201の目移しとの組み合わせを利用する。
ニット構成要素内のコースは互いに略平行である。インレイストランド152の大半がニット要素151内のコースをたどることを考えると、インレイストランド152のさまざまな区画は互いに平行になるとされるであろう。たとえば、図9を参照すると、インレイストランド152のいくつかの区画は縁部153と155との間を延び、他の区画は縁部153と154との間を延びる。そのため、インレイストランド152のさまざまな区画は平行ではない。インレイストランド152にこの非平行構成を付与するために、ダーツを形成する概念を利用してもよい。より具体的には、異なる長さのコースを形成して、インレイストランド152の区画間に楔状の構造を効果的に挿入してもよい。そのため、ニット構成要素150に形成される構造は、インレイストランド152のさまざまな区画が平行ではない場合、ダーツ形成のプロセスにより達成してもよい。
インレイストランド152の大半はニット要素151内のコースをたどるが、インレイストランド152のいくつかの区画はウェールをたどる。たとえば、内縁部155に隣接しかつ平行なインレイストランド152の区画はウェールをたどる。これはまず、インレイストランド152のある区画をコースの一部に沿って、インレイストランド152がウェールをたどる予定の地点まで挿入することによって行ってもよい。次いで、インレイストランド152をずらして移動するようにインレイストランド152を跳ね返して、コースを終了する。後続のコースを形成しながら、インレイストランド152がウェールをたどる予定の地点で、インレイストランド152をずらして移動するように再び跳ね返して、コースを終了する。インレイストランド152がウェールに沿って所望の距離延びるまで、このプロセスを繰り返す。ニット構成要素130のインレイストランド132の部分に、同様な概念を利用してもよい。
(a)ニット要素131とインレイストランド132との間、または(b)ニット要素151とインレイストランド152との間の相対的な移動を低減するために、多様な手順を利用してもよい。すなわち、インレイストランド132および152がニット要素131および151から滑り、移動し、抜け出し、またはその他の形でずれてくることを防止するために、さまざまな手順を利用してもよい。たとえば、熱可塑性ポリマー材料から形成される1本以上のヤーンをインレイストランド132および152に融着して、インレイストランド132および152とニット要素131および151との間の移動を防止してもよい。くわえて、インレイストランド132および152は、タック要素として編み針に定期的に送り込まれるとき、ニット要素131および151に固定してもよい。すなわち、インレイストランド132および152をニット要素131および151に固定して、インレイストランド132および152の移動を防止するために、インレイストランド132および152をその長さに沿った地点(例、1センチメートルにつき1回)でタック編みにしてもよい。
上述した編みプロセス後に、ニット構成要素130および150のいずれの特性も向上させるために、さまざまな操作を行ってもよい。たとえば、ニット構造の吸水および保水能力を制限するために、撥水コートまたは他の防水処理を施してもよい。別の実施例として、ニット構成要素130および150にスチームをあてて、嵩高性を改善し、ヤーンの融着を生じさせてもよい。図8Bに関して上述したように、ヤーン138は非融着ヤーンであってもよく、ヤーン139は融着ヤーンであってもよい。スチームをあてると、ヤーン139は溶けるかまたはその他の形で軟化して、固体状態から軟化状態もしくは液体状態に遷移し、十分に冷ますと軟化状態もしくは液体状態から固体状態に遷移する。このように、ヤーン139を利用して、たとえば、(a)ヤーン138のある部分をヤーン138の別の部分に、(b)ヤーン138とインレイストランド132とを互いに、または(c)別の要素(例、ロゴ、商標、および注意書きや材料情報を記載した札)をニット構成要素130に、接合してもよい。したがって、スチーミングプロセスは、ニット構成要素130および150のヤーンの融着を誘導するために利用してもよい。
スチーミングプロセスに関連する手順は大幅に変わってもよいが、ある方法は、スチーミング中にニット構成要素130および150の1つをジグにピン留めすることに関わる。ニット構成要素130および150の1つをジグにピン留めする利点は、ニット構成要素130および150の特定の区域の最終寸法をコントロールできることである。たとえば、ジグのピンをニット構成要素130の周縁部133に対応する区域を保持するために配置してもよい。周縁部133の特定の寸法を保つことにより、周縁部133は、アッパー120をソール構造110に接合するラスティングプロセスの部分のために正確な長さを有することになる。したがって、スチーミングプロセス後のニット構成要素130および150の最終寸法をコントロールするために、ニット構成要素130および150のピン留め区域を利用してもよい。
ニット構成要素260を形成するために上で説明した編みプロセスは、履物100のニット構成要素130および150の製造に適用してもよい。編みプロセスは、多様な他のニット構成要素の製造にも適用してもよい。すなわち、1つ以上のコンビネーションフィーダーまたは他の往復フィーダーを利用する編みプロセスを利用して、多様なニット構成要素を形成してもよい。
このように、上述した編みプロセスまたは同様なプロセスにより形成されるニット構成要素は、他の種類の衣類(例、シャツ、ズボン、靴下、上着、下着)、運動用具(例、ゴルフバック、野球およびフットボール用のグローブ、サッカーボールの規制構造体)、入れ物(例、バックパック、バッグ)、ならびに家具の装飾用品(例、椅子、ソファ、カーシート)で利用してもよい。ニット構成要素はベッドカバーリング(例、シーツ、毛布)、テーブルカバーリング、タオル、旗、テント、帆およびパラシュートでも利用してもよい。ニット構成要素は、自動車および航空宇宙産業用の構造物、フィルタ材料、医療用の布(例、包帯、綿球、移植組織片)、堤防を補強するためのジオテキスタイル、作物を保護するためのアグロテキスタイル、ならびに熱および放射から保護または絶縁する工業用衣料品を含め、産業用の技術的テキスタイルとして利用してもよい。したがって、上述した編みプロセスまたは同様なプロセスにより形成されるニット構成要素は、個人用および産業用の両方の目的のための多様な製品に組み込んでもよい。
〈かかと領域のインレイストランド〉
上述したように、インレイストランド152のいくつかの区画または部分は、後方に斜行して、かかと縁部154まで延びている。たとえば、図9および図10を参照すると、インレイストランド152のこれらの区画はかかと縁部154から内縁部155に向かって延び、少なくとも部分的に1つ以上の締めひも開口部158を周って、さらにかかと縁部154に戻る。くわえて、インレイストランド152のいくつかの区画はかかと縁部154から内縁部155に向かって延び、締めひも開口部158に隣接し、かつその間の区域で折り返して、かかと縁部154に戻る。この構成の利点は、かかと縁部154と内縁部155との間に延びるインレイストランド152の部分が着用者のかかとを効果的に包み込んで、履物100内にかかとの位置を固定する補助をすることである。インレイストランド152の他の部分と同様に、これらの区画は、(a)支持、安定性および構造を提供し、(b)ニット構成要素150またはアッパー120を足の周りに固定する補助をし、(c)アッパー120の区域の変形を制限し(例、耐伸縮性を付与する)、ならびに(d)締めひも122または別の締めひもとともに機能して、履物100のフィット性を高める。
履物100の別の構成が図25〜図28に図示されており、ニット構成要素130のインレイストランド132がかかと領域103まで延びている。より具体的には、ニット要素131はアッパー120のスロート区域からかかと領域103まで延び、インレイストランド132はスロート区域からかかと領域103の後部までニット要素131を通って延びるか、またはニット要素131内に挿入されている。くわえて、かかと領域103まで延びているインレイストランド132の部分は、スロート区域に、側部104および105のそれぞれの締めひも開口部158の1つを周って延びるループを形成し、締めひも122がループを通って延びる。参照のために、アッパーのスロート区域は一般に中足領域102に配置されて、甲周り領域または足の上面に対応し、それによってニット要素131の締めひも開口部123、ベロ124および内縁部135を含むアッパー120の部分を取り囲む。インレイストランド132のいくつかの区画はかかと領域103まで延びているが、インレイストランド132の他の区画はスロート区域と、ソール構造110に隣接するアッパー120の下方区域との間に延びていることにも留意するべきである。
図25〜図28のニット構成要素130の構成を図29に図示する。インレイストランド132の区画は、スロート区域から側部104および105の両方にあるかかと縁部134のそれぞれまで、ニット要素131を通って延びるか、またはニット要素131内に挿入されている。また、インレイストランド132の一部はかかと縁部134のそれぞれでニット要素131から出る。この構成の利点は、履物100の製造プロセス中に、スロート区域とかかと縁部134との間に延びるインレイストランド132の各区画を独立して張り、緩めまたはその他の形で調整できることである。
インレイストランド132の端部区域がニット要素131から出る位置は、側部104および105のそれぞれで互いに一致する。図27のように、かかと縁部134が一旦接合されると、インレイストランド132の端部区域はかかと縁部134に形成される縫い目143で互いに接触するか、または隣り合って配置されてもよい。この構成では、インレイストランド132またはインレイストランド132のさまざまな区画がかかと領域103の周りに効果的に延びて、かかと領域103における履物100の支持、安定性、構造およびフィット性を高めるとともに、履物100の美的魅力も高める。いくつかの構成では、布製の帯片または目止めが縫い目143に沿って延びて、これを被覆してもよい。
スロート区域とかかと縁部134との間に延びているインレイストランド132の部分は、足首開口部121または足首開口部121を形成する内縁部153の部分と略平行に図示されている。この構成の利点は、インレイストランド132が足首開口部121の外周の大半に沿ってむらのない支持、安定性、構造およびフィット性を提供できることである。しかし、インレイストランド132のうち少なくとも4センチメートルが足首開口部121に平行である場合、またはインレイストランド132のうち少なくとも4センチメートルが足首開口部121に平行で、かつ足首開口部121の3センチメートル内に位置付けられる場合、同様な利点が得られる。換言すると、むらのない支持、安定性、構造およびフィット性は、インレイストランド132を足首開口部121の比較的近くに、かつこれに沿って位置付けることにより得られる。インレイストランド132はニット層140およびフローティングヤーン141のすぐ隣に、または離間して位置付けてもよいことも留意するべきである。また、インレイストランド132もフローティングヤーン141と実質的に平行であってもよい。
インレイストランド132をスロート区域とかかと領域103との間に延ばすという概念は、さまざまな方法で履物100に組み込んでもよい。たとえば、図30Aを参照すると、インレイストランド132の2つの部分が2つの個別の締めひも開口部123の周りにループを形成して、かかと領域103まで延びている。インレイストランド132のある区画は足首開口部121と実質的に平行であってもよいが、図30Bは、インレイストランド132が足首開口部121から反れて、かかと領域103のソール構造110の方に延びている構成を示している。この構成の利点は、インレイストランド132のこの区画がソール構造110をかかと領域103の足に対して固定できることである。
図30Cを参照すると、インレイストランド132の区画が交互にニット要素131内に埋め込まれ、アッパー120の外側面に露出している。この構成では、インレイストランド132の個別の離間した区画が露出し、スロート区域とかかと領域103の後部との間で外側面の一部を形成する。すなわち、インレイストランド132の複数の被覆された区画がニット要素131内に配置されるか、または埋め込まれて、インレイストランド132の他の区画が露出して、スロート区域とかかと領域103の後部との間にアッパー120の外側面の一部を形成する。履物100の追加構成を図30Dおよび図30Eに図示しており、ニット構成要素130は上述した概念および変型のさまざまな組み合わせを含む。
ニット構成要素130を製造する方法は、編み機200およびコンビネーションフィーダー220の性質を利用してもよい。方法は図21A〜図21I、図22A〜図22Cおよび図23に関して上述した概念の多くも組み込んでもよい。ニット構成要素130の実施例では、方法は、編みプロセスを利用して少なくとも1本のヤーンからニット要素131を形成することと、編みプロセス中にニット要素131にストランド132も挿入することとを含んでもよい。編みプロセスが実質的に完了したら、インレイストランド132がスロート区域からかかと領域103の後部まで延びるように、ニット構成要素130をアッパー120に組み込む。
〈包まれたかかと領域の構成〉
図25〜図28に図示される履物100の構成では、縫い目143はかかと領域103の後部区域の中心に配置される。したがって、インレイストランド132の端部区域は縫い目143で互いに接触するか、または隣り合って配置されてもよい。審美的に、インレイストランド132はかかと領域103の周りに連続して延びているように見えるかもしれないが、インレイストランド132の個別の区画が縫い目143で合流し、互いに接合され、または隣接して置かれる。しかし、さらなる構成では、縫い目143は履物100の他の区域に配置してもよい。一実施例として、図31および図32は、縫い目143を内側側部105に配置した履物100を図示している。この構成では、ニット要素131およびインレイストランド132はかかと領域103の後部区域の周りに連続して(すなわち、大きな不連続部分または縫い目なく)包み、内側側部105に縫い目143を配置する。より具体的には、ニット要素131およびインレイストランド132は外側側部104のスロート区域からかかと領域103に延びて、かかと領域103を周って内側側部105まで連続して延びている。この構成の利点は、(a)かかと領域103の後部区域から縫い目143をなくすことによって、履物100の快適性が高まること、および(b)インレイストランド132がかかと領域103の周りに連続して延びるので、ニット構成要素150またはアッパー120を足のかかと区域の周りに固定するのをさらに補助することである。
図31および図32のニット構成要素130の構成を図33に図示する。インレイストランド132の区画はニット要素131内に挿入されて、側部104および105の両方のスロート区域から後方に延びている。図29ではニット構成要素130は比較的対称的な外観を有するのに対し、この構成は非対称で、一方の側部の長さが長く、他方の側部の長さが短い。実際には、外側側部104に関連するニット構成要素130の区域が、延長された長さを呈して、かかと領域103の周りに延びて、内側側部105の一部を形成する。
〈調整可能なインレイストランド〉
図34〜図40は、ニット構成要素およびソール構造から構成される履物製品のさらに別の実施形態を示す。これらの追加実施形態は、前述の実施形態で述べた特徴のいくつかを含んでもよいが、必ずしも全部を含まなくてもよい。くわえて、これらの追加実施形態は、前述していないいくつかの特徴を含む。明確にするために、図34〜図40に示す実施形態のいくつかの特徴のみを詳細に説明するが、これらの実施形態は上述したさまざまな実施形態に見られる特徴のあらゆる組み合わせを含め、前述の実施形態で説明した特徴の一部または全部を含むことができることは理解されるであろう。
ここで図34〜図36を参照すると、履物製品400(単に履物400ともいう)は、ソール構造410とアッパー420とを含むように図示されている。前述の実施形態と同様に、履物400はランニングに適した一般構成を有するように図示されているが、履物400に関連する概念は、上述したさまざまな種類を含め、多様な他の運動用の履物の種類にも適用してもよい。したがって、履物400に関して開示される概念は多様な履物の種類に適用される。
参照のために、履物400は、足先領域401と中足領域402とかかと領域403との大略的に3つの領域に分割してもよい。履物400は外側側部404および内側側部405も含んでいる。外側側部404および内側側部405はそれぞれ、領域401、領域402および領域403のそれぞれを通って延びてもよく、履物400の両側に対応する。
ソール構造410はアッパー420に固定されていて、履物400を履いたときに足と地面との間に延びる。いくつかの実施形態では、ソール構造410は、上で説明し、かつ図1に示すソール構造110と同様な特性を含むことができる。特に、いくつかの実施形態では、ソール構造410はミッドソールおよびアウトソールの両方を含んでもよい。さらに、いくつかの実施形態では、ソール構造410は中敷きを含むことができるであろう。
アッパー420は、ソール構造410に対して、足を受け入れて固定するための空洞を履物400内に画成する。空洞は足を収容するような形状にされており、足の外側側部に沿い、足の内側側部に沿い、足の上、かかとの周り、さらに足の下に延びている。空洞へのアクセスは、少なくともかかと領域403に配置されている足首開口部421により提供される。締めひも422(明確にするために図34にしか図示していない)がアッパー420に関連付けられて、アッパー420の寸法を調整して足のさまざまなプロポーションを収容するために使用することができる。さらに具体的には、締めひも422は着用者が足の周りにアッパー420を締め付けることができるようにし、締めひも422は着用者が空洞からの(つまり、足首開口部421を通して)足の出し入れを容易にするために、アッパー420を緩めることができるようにする。
いくつかの実施形態では、アッパー420は一体ベロ部424を含んでもよい。一体ベロ部424はアッパー420の隣接部と一体的に形成されてもよい(例、ベロはアッパー420のスロートの周りの他の部分と一体であってもよい)。あるいは、他の実施形態では、アッパー420はアッパー420の隣接部から分離している従来のベロを組み込んでもよい。さらに他の実施形態は、対応するベロをもたずに、スロート区域に沿って開口部を含むことができるであろう。
いくつかの実施形態では、アッパー420は、図37の製品400の残りとは別に図示されているニット構成要素450から構成してもよい。ここで図37を参照すると、ニット構成要素450の主要要素は、ニット要素451およびインレイストランド452である。ニット要素451は、(例、編み機を用いて)操作して、多様なコースおよびウェールを画成する複数の互いに絡み合ったループを形成する少なくとも1本のヤーンから形成される。すなわち、ニット要素451はニット布地の構造を有する。インレイストランド452はニット要素451を通って延び、ニット要素451内のさまざまなループ間を通る。インレイストランド452は一般にニット要素451内のコースに沿って延びるが、インレイストランド452はニット要素451内のウェールに沿って延びてもよい。インレイストランド132と同様に、インレイストランド452は耐伸縮性を付与し、履物400に組み込まれるとき、締めひも422とともに機能して履物400のフィット性を高める。
図33に図示する前述の実施形態と同様に、ニット構成要素450の構成は非対称で、一方の側部の長さが長く、他方の側部の長さが短い。ニット要素451の構成はさらに、周縁部453、1対のかかと縁部454および内縁部455によって特徴づけられてもよい。しかし、いくつかの他の実施形態と対照的に、内縁部455はニット要素451のスロート区域419を通って延びていない。代わりに、一体ベロ部424が、スロート区域419の周辺領域417の中に延びているニット要素451の領域を埋める。
ニット要素451は、第1の面456と反対側の第2の面457とを有してもよい(図34および図39に図示される)。第1の面456はアッパー420の外側面の一部を形成してもよいのに対し、第2の面457はアッパー420の内側面の一部を形成し、それによりアッパー420内に空洞の少なくとも一部を画成してもよい。多くの構成では、ニット要素451はインレイストランド452の区域に単一の布地層の構成を有してもよい。すなわち、ニット要素451は、第1の面456と第2の面457との間の単一の布地層であってもよい。しかし、他の実施形態では、ニット要素451は2つ以上の別々のニット層から構成することができるであろう。
いくつかの実施形態では、インレイストランド452は繰り返し、周縁部453からスロート区域419の周辺領域417に向かって延びて、周縁部153に戻る。また、インレイストランド452のいくつかの部分は後方に斜行して、かかと縁部454まで延びている。より具体的には、インレイストランド452のいくつかの部分はかかと縁部454の1つから周辺領域455に向かって延び、かかと縁部454の同じかかと縁部に戻る。
いくつかの実施形態では、インレイストランド452が周縁部453と周辺領域417との間を行き来して延びると、インレイストランド452のいくつかの隣接部分はニット要素451内で互いに近くに配置されてもよい。たとえば、図37に図示されるように、インレイストランド452の第1の区画461は周縁部453に進入して、ニット要素451を通ってスロート区域419の周辺領域417まで延びてもよい。この地点で、インレイストランド452の第2区画462がニット要素451を通って周縁部453に戻るように、インレイストランド451は折り返す。また、ニット要素451内で、第1区画461と第2区画462との間に明らかな分離がほとんどない、ないしはまったくないように、第2区画462は第1区画461のごく近くに配置される。換言すると、いくつかの実施形態では、第1区画461および第2区画462はニット要素451内でほぼ同一の経路に沿って編んでもよい。しかし、他の実施形態では、第1区画461および第2区画462は、ニット要素451内に互いに直に隣り合って通るのではなく、離間できることは理解されるであろう。たとえば、他の実施形態は、インレイストランドの隣接する区画がニット要素内でさらに離間している前述の実施形態により類似した構成を採用することができるであろう。
図34〜図38に明確に示されるように、いくつかの実施形態では、インレイストランド452の部分は第1の面456でニット要素451から出て、締めひもループ470を形成してもよい。具体的には、インレイストランド452の部分は周辺領域417の開口部472から出て、締めひもループ470を形成する。たとえば図34で示されるように、締めひもループ470はさらに締めひも422と係合してもよい。この構成を用いて、締めひも422に張力をかけると、締めひもループ470、またそれに応じてインレイストランド452が引っ張られて張り、着用者の足の周りのアッパー420のフィット性を高める。
少なくともいくつかの実施形態では、ニット要素451と比較すると、インレイストランド452は、より大きな耐伸縮性を呈してもよい。すなわち、インレイストランド452はニット要素451よりも伸縮しなくてもよい。インレイストランド452の複数の区画がニット要素451を通って延びていることを考えると、インレイストランド452は、スロート区域419とアッパー420の下方区域との間のアッパー420を形成するニット構成要素450の部分に、耐伸縮性を付与してもよい。また、締めひも422に張力をかけると、インレイストランド452に張力を付与し、これによりスロート区域と下方区域との間のアッパー420の部分が足に当たるように誘導する。くわえて、インレイストランド452の複数の区画がかかと縁部454に向かって延びていることを考えると、インレイストランド452はかかと領域403のアッパー420の部分に耐伸縮性を付与してもよい。また、締めひも422に張力をかけると、かかと領域403のアッパー420の部分が足に当たるように誘導するであろう。このように、インレイストランド452は締めひも422とともに機能して、履物400のフィット性を高める。
ニット要素451は、ニット要素131および/またはニット要素151について上述したさまざまな種類のヤーンのいずれを組み込んでもよい。インレイストランド452も、インレイストランド132および/またはインレイストランド152について上述した構成および材料のいずれから形成してもよい。くわえて、図8Aおよび図8Bに関して述べたさまざまなニット構成も、ニット構成要素450で利用してもよい。より具体的には、ニット要素451は、1本のヤーン、添え糸編みされる2本のヤーン、または融着ヤーンおよび非融着ヤーンから形成される区域を有してもよく、融着ヤーンは、(a)非融着ヤーンのある部分を非融着ヤーンの別の部分に、または(b)非融着ヤーンとインレイストランド452とを互いに、接合する。
実施形態は、たとえば、着用者がインレイストランドの一部に直接張力を加えられるようにすることにより、アッパーのフィット性向上を容易にする手段を含むことができる。また、インレイストランドが締めひもループを形成するか、または少なくとも1つの締めひも開口部を取り囲む実施形態では、足に対するアッパーのフィット性を高めるために、インレイストランドの一部に直接張力をかけることで、締めひもの張力を高めてもよい。
図38から図40は、履物製品400の模式的な後等角図を示す。まず、図37および図38を参照すると、インレイストランド452は、外側かかと縁部459からスロート区域419の周辺領域417まで延びている第1区画481と、スロート区域419から外側かかと縁部459まで戻る第2区画482とを含む。締めひもループ483が、第1区画481と第2区画482との間のインレイストランド452の一部に沿って形成されている。締めひもループ483は、スロート区域419の周辺領域417の最後部に設けられている開口部484から外方に延びている。
実施形態では、第1区画481は、第1区画481が第1の面456(例、アッパー420の外側面)と第2の面457(例、アッパー420の内側面)との間に効果的に拘束されるように、大略的に外側かかと縁部459とスロート区域419との間にニット要素451を通って延びていてもよい。対して、第2区画482の少なくともいくつかの部分はニット要素451の第1の面456から外方に延びていてもよい。特に、第2区画482は、第1の面456と第2の面457との間に設けられている第1の部分486と、第1の面456の外方(例、遠位に)設けられている第2の部分487と、第1の面456と第2の面457との間に設けられている第3の部分489とをさらに備えてもよい。換言すると、第1の部分486および第3の部分489がニット要素451の1つ以上のコースおよび/もしくはウェールを通って延びてもよいか、または他の形でニット要素451のヤーンと編み合わされてもよいのに対し、第2の部分487はニット要素451を通って配置されていないある長さのインレイストランド452を備える。
一般に、第2の部分487の長さ(例、ニット要素451の外部のインレイストランド452の部分の長さ)は変わってもよい。いくつかの実施形態では、第2の部分487は数ミリメートルから数センチメートルの範囲の長さを有する。いくつかの実施形態では、第2の部分487は数センチメートルよりも長くすることができるであろう。ある場合には、第2の部分487の長さは、着用者が、第2の部分487とニット要素451の外側部との間に指を差し込むことによって第2の部分487を確実に掴むことができるように選択してもよい。
また、インレイストランド452のいくつかの他のセグメントは、インレイストランド452がニット要素451を備えるヤーンを通って延びるとき、ニット要素451の外側面に出現する小さな部分を含んでもよいが、これらの小さな部分は典型的には第2の部分487の長さよりもはるかに短い長さを有してもよい。具体的には、ニット要素451の外側面に見えてもよいこれらの小さな部分は、ニット要素451の隣接するコースもしくはウェール間の間隔程度であってもよく、または場合によっては隣接するコースもしくはウェール間の間隔の数倍程度であってもよい。
実施形態は、張力および/または圧力の増大が起こるかもしれないニット構成要素450の領域に沿って、快適性を高める手段を含めてもよい。図38〜図39に明確に示されるように、インレイストランド452の第1区画481および第2区画482はニット構成要素450のニットカラー部492を通って延びている。ある場合には、ニット構成要素450のニットカラー部492は、ニット要素451の隣接する部分とは異なるニット構成を有する。たとえば、ニット要素451の隣接する部分に対し、ニットカラー部492は足を開口部421に入れやすくするのを助けるために、弾性または柔軟性を増してもよい。しかし、他の場合には、ニットカラー部492は、ニット要素451の隣接する部分と実質的に同様なニット構成を有することができるであろう。
図39に示されるように、いくつかの実施形態は、厚さが変わるニットカラー部492を含んでもよい。実施形態では、ニットカラー部492は、第1の厚み498を有する第1ニット部494と、第2の厚み499を有する第2ニット部495とを備える。いくつかの実施形態では、第1の厚み498は第2の厚み499よりも実質的に大きい。また、インレイストランド452の第2の部分487が第1ニット部494で外方に延びているため、第1ニット部494の増厚は、第1の部分486を使用してインレイストランド452およびアッパー420の張力を高めると、増大した張力および/または圧力が蓄積するかもしれない領域でのクッション性および快適性を高める助けをするであろう。
一般に、ニットカラー部492は実質的に連続したニット部を備えてもよい。該実施形態では、第1ニット部494と第2ニット部495との厚みの違いは、ニット構成を変えることによって達成してもよい。いくつかの実施形態では、第1ニット部494と第2ニット部495との厚みの違いは、第1ニット部494に使用する層を、第2ニット部495に使用する層よりも多くすることによって達成してもよい。さらに他の実施形態では、異なるヤーンを使用して、同様に厚みの違いを達成してもよい。
図40は、アッパー420のかかと領域403から離すように引っ張られるインレイストランド452の第1の部分486の模式的な斜視図を示す。第1の部分486がかかと領域403からさらに遠くに引っ張られると、締めひもループ部483を含めてインレイストランド452の張力が増す。締めひもループ部483に沿った張力が増すと、締めひもループ部483はサイズが小さくなって、締めひもループ部483を通って設けられる締めひも(図示せず)を後方に強く引っ張り始める。こうして、かかと領域403に露出している第1の部分486を引くか、またはその他の形で張力を加えることで、着用者は締めひも422を、ひいてはアッパー420を足の周りに締めやすくすることができる。
さまざまな実施形態を説明してきたが、この説明は制限ではなく例示的なものを意図しており、本実施形態の範囲内にある他の多くの実施形態および実施態様が可能であることは当業者には明らかであろう。したがって、本実施形態は添付の請求項およびその均等物に鑑みる場合を除き制限されるべきではない。また、さまざまな修正および変更を添付の請求項の範囲内で行ってもよい。
〈関連出願のクロスリファレンス〉
本出願は、2012年11月27日に出願され、「Knitted Footwear Component with an Inlaid Ankle Strand」と題する米国特許出願第13/686,048号の一部継続出願であり、35 U.S.C.第120条に基づく優先権の利益を主張する。同出願は2011年3月15日に米国特許商標庁に出願され、「Article of Footwear Incorporating a Knitted Component」と題する米国特許出願第13/048,514号の一部継続出願であり、35 U.S.C.第120条に基づく優先権の利益を主張する。これらの出願の開示は参照によりその全体を本明細書に組み込む。