JP2016528146A - ガラス表面を処理する方法 - Google Patents

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Abstract

エッチングされたガラス基体に、少なくとも1つの鉱酸を含むクリーニング溶液を適用することを含む、エッチングされたガラス表面を処理する方法が開示される。また、エッチングされたガラス基体をクリーニングするための、少なくとも1つの鉱酸を含むクリーニング溶液も開示される。

Description

関連出願との相互参照
本願は、2013年7月25日に出願された米国仮特許出願第61/858,292号による優先権を主張するものであり、その内容に依拠すると共に、その全体を参照して、以下に完全に述べたものであるかのように本明細書に組み込む。
本明細書は、エッチングされたガラス表面を処理する方法を開示し、この方法は、エッチングされたガラス表面に、少なくとも1つの鉱酸を含む溶液を適用することを含む。少なくとも特定の実施形態において、このガラス表面は、フッ化物イオンを含むエッチング液を用いてエッチングされたものである。特定の実施形態において、少なくとも1つの鉱酸を含む溶液は、フッ化物イオンを含まない。また、本明細書は、エッチングされたガラス表面を処理するための、少なくとも1つの鉱酸を含む溶液も開示する。特定の例示的な実施形態では、このクリーニング溶液は、フッ化物イオンを含まない。更に、本明細書は、フッ化物イオンを含むエッチング液を用いてエッチングされたガラス表面であって、エッチングされたガラス表面に、少なくとも1つの鉱酸を含む溶液を適用することを含む処理によって調製された、エッチングされたガラス表面も開示する。
ガラスパネルの製造中、例えば、LCDモジュールを組み立てた後に、ガラスパネルを薄化する(即ち、エッチングする)ことは珍しくない。例えば、ガラスパネルは、フッ化水素酸(HF)を用いて、約0.1mm〜約0.4mmの範囲の基体厚さまで薄化され得る。しかし、薄化またはエッチング処理により、スラッジとして知られている不溶性の副生成物が生じ得る。スラッジは、エッチング処理から生じて、ガラス表面に付着してガラスを汚染し得る。ガラスパネルをエッチングした後、物理的方法、化学的方法、またはそれらの両方によって、ガラスパネルからスラッジをクリーニングおよび/または除去することが可能である。
例えば、エッチング後に、ガラスパネルはブラシクリーニングされ得る。しかし、ブラシクリーニングは、ガラス表面に損傷を生じ得るものであり、それによってガラスの強度および表面品質が低下し得る。ブラシクリーニングという物理的な方法においては、既にエッチングされたガラスを、まず、すすぎ水中ですすいでから、ブラシクリーニングが行われ得る。汚染物質が水溶性である場合には、単純な水によるすすぎでも役に立ち得る。しかし、ブラシクリーニングは、ガラス表面上の汚染物質が水に溶けにくい場合、および/または、ガラス表面に強く付着している場合にも、しばしば用いられる。しかし、ブラシクリーニングは、ガラス表面から汚染物質を除去するだけでなく、ガラス表面に傷や欠陥も生じさせ得る。この傷や欠陥は、たとえ欠陥の形状が小さく且つ/または浅い場合でも、ガラスの強度および性能を大きく低下させ得る。
エッチングされたガラス表面をクリーニングする別の方法は、化学的なクリーニングによるものである。化学的なクリーニングは、物理的なクリーニング方法の幾つかの限界を克服できる。化学的なクリーニングでは、すすぎ液は水ではなく、ガラス表面からスラッジを除去可能な溶液であり、化学的なクリーニングを用いた場合には、ブラシクリーニングは必要なくなり得る。
化学的なクリーニング中は、エッチング液を用いてエッチングされた、汚い汚染されたガラス表面が処理され、理論上は、新しい、清浄な、汚れのない表面が生じる。理想的な理論的条件化では、汚染物質はエッチングされた表面から離れ、再生された清浄な表面に再付着することはない。しかし、エッチング処理中にガラス表面から離れた汚染物質が、エッチングされたガラス表面に再付着して、エッチングされたガラスの再汚染を生じ得ることが認識されている。それにもかかわらず、ガラス表面をクリーニングする(即ち、処理する)ために、化学的なクリーニングが用いられる。この目的で、塩基性物質(例えば、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム、および水酸化アンモニウム等)およびエッチング液(例えば、HF等)の両方が用いられ得る。
従って、再汚染および/または更なる欠陥を生じることを回避し得る、エッチングされたガラス表面を処理する方法、および/または、エッチングされたガラス表面からスラッジをクリーニングする方法が必要である。
本明細書では、エッチング後にスラッジを除去するためにガラス表面を処理するための、新たな、効果的で、安全で、環境に優しい方法を開示する。
本明細書では、エッチングされたガラス表面を処理する方法が開示される。この方法は、エッチングされたガラス表面に、少なくとも1つの鉱酸を含む溶液を適用する工程を含む。少なくとも特定の実施形態において、エッチングされたガラス表面は、フッ化物イオンを含むエッチング液を用いてエッチングされたものであり得る。特定の実施形態において、クリーニング溶液は、例えばフッ化水素酸からのイオン等の、フッ化物イオンを含まない。
また、本明細書では、エッチングされたガラス表面を処理するための、少なくとも1つの鉱酸を含む溶液も開示される。少なくとも特定の実施形態において、この溶液はフッ化物イオンを含まない。更に、本明細書では、フッ化物イオンを含むエッチング液を用いてエッチングされたガラス表面であって、エッチングされたガラス表面を、少なくとも1つの鉱酸を含む溶液を用いて処理することを含む処理によって調製された、エッチングされたガラス表面も開示される。
エッチング(例えば、HFを用いたエッチング)後のガラス表面は、エッチング処理中に生じた不溶性のスラッジを含み得る、または同スラッジで汚染され得る。このスラッジは、エッチングされたガラスからの金属イオン(例えば、K、Ca2+、Al3+、およびSi4+等)や、エッチング液からのイオン(例えば、アンモニウムイオン(NH4+)およびフッ化物イオン(F)等)で構成され得る。例えば、ガラスおよびエッチング液から生じるスラッジは、Ca2+、Al3+、およびFを含み得る。スラッジは、従来の化学的なクリーニング溶液で用いられている塩基にも酸(例えばHF)にも溶解できないので、塩基および酸(例えば、HF等)を用いた化学的なクリーニング処理中に、スラッジ粒子はガラス表面から離れた後、ガラス表面に再付着し得る。この状況においては、現行の化学的な方法を用いても、再付着したスラッジ汚染物質がガラス上に残るので、ガラス表面は完全には清浄にならない。更に、化学的なクリーニング溶液は、例えば、KOHおよび/またはHF等の危険な化学物質を含み得る。従来の化学的なクリーニングは危険であり得ると共に、廃棄物処理が高価になり得る。
従って、クリアで汚れのないガラスの表面を取り戻すために、エッチングされたガラスを処理またはクリーニングすることが望ましい場合がある。ここで、フッ化物イオンを含むエッチング液を用いたエッチング後にガラス表面を効果的にクリーニングするための、エッチングされたガラス表面に少なくとも1つの鉱酸を含む溶液を適用することを含む新たな方法が開発された。本明細書では、少なくとも特定の実施形態において、欠陥を生じることなく、またはガラスの強度を低下させることなく、エッチングされたガラス表面をクリーニングできる方法が開示される。本明細書において開示される方法は、様々な実施形態において、コスト効率が高く、運用が簡単で、環境に優しい。
上述の一般的な概要および以下の詳細な説明は共に例示的なものに過ぎず、本開示を限定するものではない。明細書中で述べたものに加えて、更なる特徴および変形が設けられ得る。例えば、本開示は、詳細な説明で開示される特徴の様々な組み合わせおよび部分的な組み合わせを説明する。更に、複数の工程が開示される場合には、特に明記しない限り、それらの工程はその順序で行われる必要はない。
EagleXG(登録商標)ガラスおよびHFから生じたガラススラッジのX線回折(XRD)スペクトルを示した図 6MのHClおよび12g/Lの溶解したEagleXGガラススラッジを含む、用いられたクリーニング溶液中における、EagleXGガラスのエッチング速度を示したグラフ 室温におけるEagleXGガラススラッジの溶解を示したグラフ それぞれ異なるクリーニング方法を用いてクリーニングされたガラス(エッチングされていないガラス、エッチングされたガラス(即ち、ガラスをエッチングした後、脱イオン水中で10分間すすいだ)、脱イオン水および機械的撹拌を用いてクリーニングされた、エッチングされたガラス、超音波法を用いてクリーニングされた、エッチングされたガラス、3MのHCl中でクリーニングされた、エッチングされたガラス、および、6MのHCl中でクリーニングされた、エッチングされたガラスを含む)の、X線光電子分光法(XPS)の結果であって、各方法を用いたクリーニング後にガラス表面に残ったB、Al、Si、およびFの量を示した結果の図 それぞれ異なるクリーニング方法を用いてクリーニングされたガラス(エッチングされていないガラス、エッチングされたガラス(即ち、ガラスをエッチングした後、脱イオン水中で10分間すすいだ)、脱イオン水および機械的撹拌を用いてクリーニングされた、エッチングされたガラス、超音波法を用いてクリーニングされた、エッチングされたガラス、3MのHCl中でクリーニングされた、エッチングされたガラス、および、6MのHCl中でクリーニングされた、エッチングされたガラスを含む)の、X線光電子分光法(XPS)の結果であって、各方法を用いたクリーニング後にガラス表面に残ったN、Mg、およびCaの量を示した結果の図 それぞれ異なるクリーニング方法を用いてクリーニングされたガラス(エッチングされていないガラス、エッチングされたガラス(即ち、ガラスをエッチングした後、脱イオン水中で10分間すすいだ)、脱イオン水および機械的撹拌を用いてクリーニングされた、エッチングされたガラス、超音波法を用いてクリーニングされた、エッチングされたガラス、3MのHCl中でクリーニングされた、エッチングされたガラス、および、6MのHCl中でクリーニングされた、エッチングされたガラス、水平方向にブラッシングすることによってクリーニングされた、エッチングされたガラス、垂直方向にブラッシングすることによってクリーニングされた、エッチングされたガラス、および標準クリーニング1(“Standard Cleaning 1;SC1”)メガソニッククリーニング法を用いてクリーニングされた、エッチングされたガラスを含む)のTOF‐SIMS(飛行時間−二次イオン質量分析法)の結果であって、残ったAl、Si、K、Ca、O、およびFの量を示した結果の図 それぞれ異なるクリーニング方法を用いてクリーニングされたガラス(エッチングされていないガラス、エッチングされたガラス(即ち、ガラスをエッチングした後、脱イオン水中で10分間すすいだ)、脱イオン水および機械的撹拌を用いてクリーニングされた、エッチングされたガラス、超音波法を用いてクリーニングされた、エッチングされたガラス、3MのHCl中でクリーニングされた、エッチングされたガラス、および、6MのHCl中でクリーニングされた、エッチングされたガラス、水平方向にブラッシングすることによってクリーニングされた、エッチングされたガラス、垂直方向にブラッシングすることによってクリーニングされた、エッチングされたガラス、および標準クリーニング1(“Standard Cleaning 1;SC1”)メガソニッククリーニング法を用いてクリーニングされた、エッチングされたガラスを含む)のTOF−SIMS(飛行時間−二次イオン質量分析法)の結果であって、残ったB、Sr、およびMgの量を示した結果の図 それぞれ異なるクリーニング方法の後のガラス表面(延伸されたままのエッチングされてないEagleXGガラスのサンプル、エッチングされたままのEagleXGガラスのベースラインサンプル、ブラシクリーニングによってクリーニングされた、エッチングされたガラス、超音波クリーニングによってクリーニングされた、エッチングされたガラス、およびHClでのすすぎによってクリーニングされた、エッチングされたガラスを含む)の表面強度の比較を示した図
例えば、HFを用いたエッチング等のエッチング処理を受けた後も、ガラス表面はエッチング処理中に形成されたスラッジを含み得るため、ガラス表面は依然として汚れていると見なされる場合がある。従って、既にエッチングされたガラス表面を処理またはクリーニングすることが望ましい場合がある。本明細書では、ガラス表面が、フッ化物イオンを含むエッチング液を用いたエッチングを受けた後、ガラス表面をクリーニングするための新規な方法が開示され、この方法は、少なくとも特定の実施形態では、ガラス表面に欠陥や傷を生じないもの、および/またはガラス基体を再汚染しないものであり得る。
本明細書において開示される特定の実施形態では、エッチングされたガラス表面にスラッジ汚染物質が化学的に再付着できないように、ガラス表面は、スラッジ汚染物質をクリーニング溶液中に溶解させることによってクリーニングされる。本明細書において開示される特定の実施形態では、スラッジが完全に、または略完全にクリーニング溶液中に溶解するので、ガラス表面からスラッジが完全にクリーニングされて、再汚染されないようになり得る。
本明細書で用いる「クリーニング」とは、エッチングされたガラス表面上のスラッジの量を低減するように、エッチングされたガラス表面を処理することを指す。本明細書で用いる「処理する」とは、ガラス表面および/またはスラッジをクリーニング溶液に晒すことを指す。少なくとも特定の実施形態では、クリーニングは、フッ化物イオンを含むエッチング液(例えば、HF等)を用いてガラス表面をエッチングすることによって生じた表面スラッジの一部またはすべてを溶解させることを含み得る。エッチングされたガラス表面は、当業者に知られているフッ化物イオンを含む任意のエッチング液を用いてエッチングされたものであり得る。例えば、特定の実施形態では、本明細書において開示されるエッチングされたガラス表面は、HF、HFおよび鉱酸、緩衝HF(例えば、フッ化アンモニウムおよびフッ化水素酸等)、二フッ化アンモニウム、並びにフッ化アンモニウムおよび少なくとも1つの酸の少なくとも1つを用いてエッチングされたものであり得る。
特定の例示的な実施形態では、本明細書において開示される、エッチングされたガラスを処理するための溶液は、少なくとも1つの鉱酸(例えば、エッチング液よりも強い酸性度を有する鉱酸)を含む。特定の例示的な実施形態では、少なくとも1つの鉱酸は、HFのpKaである3.16よりも低いpKaを有する。更に別の例示的な実施形態では、少なくとも1つの鉱酸の濃度は少なくとも約3M(例えば、少なくとも約6M等)である。
本明細書において開示される特定の実施形態に従って用いられ得る、例示的かつ非限定的な鉱酸としては、塩酸(HCl)および硝酸(HNO)が含まれる。特定の実施形態、例えばスラッジがCa2+を含まない実施形態では、硫酸(HSO)が用いられ得る。この理由は、HSOがCa2+と反応して、不溶性の硫酸カルシウム(CaSO)を生じ得るからである。しかしエッチングされたガラス表面がHFを用いてエッチングされた場合には、HFより低いpKaを有する任意の鉱酸が用いられてもよいと考えられる。
本明細書において開示されるクリーニング溶液は、少なくとも1つの界面活性剤を更に含み得る。特定の実施形態において、界面活性剤は、スラッジをガラス表面から離れさせること、および/または、スラッジ粒子をクリーニング溶液中に懸濁させることを補助し得るが、これは必須ではない。一部の実施形態では、懸濁したスラッジ粒子は、少なくとも1つの界面活性剤を含むクリーニング溶液中により迅速に溶解し得る。本明細書において開示される特定の実施形態に従って用いられ得る例示的な界面活性剤としては、例えば、デュポン社(DuPont)のFS−10等のフッ素化界面活性剤が含まれる。他の例示的な界面活性剤としては、例えばドデシル硫酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤、および、例えばTriton(商標)X−100等の非イオン性界面活性剤が含まれる。
少なくとも特定の実施形態では、本明細書において開示されるクリーニング溶液の温度を上げることにより、クリーニング処理が更に加速され得る。特定の実施形態において、クリーニング溶液の温度は室温以上であり得る(例えば、少なくとも約22℃、少なくとも約25℃、または少なくとも約30℃等)。
上述したように、クリーニング処理によって生じるスラッジの1つの成分は、HFエッチング処理からのフッ化物を含み得る。本明細書において開示されるように少なくとも1つの鉱酸を含むクリーニング溶液を用いてスラッジを溶解させる場合には、フッ化物を含むスラッジは、まず僅かに解離して、或る濃度で遊離フッ化物イオンを放出し得る。少なくとも1つの鉱酸を含むクリーニング溶液は、鉱酸イオンからの陽子(H)を高濃度で含む。陽子は、Fイオンと結合して水溶性のHFを生じる、フッ化物(F)イオンスカベンジャーとして作用し得る。Fイオンが減少すると、スラッジがほぼ完全に、または一部の実施形態では完全に、クリーニング溶液中に溶解するまで、スラッジの解離が更に促進され得る。
下記の式1は、フッ化物イオンを含むエッチング液を用いたガラス表面のエッチング処理中の、ガラススラッジの形成の一般的な反応機構を表しており、式中、Mは金属イオンを表す。ガラススラッジからの金属イオンは、フッ化物含有エッチング液からのフッ化物イオンと結合して、その強い結合力により、化合物(MF)が沈殿する。
式1:Mn++nF→MF
式2は、式1の逆反応であり、解離反応と呼ばれる場合もある。式2に示されている反応により、ガラス沈殿物(MF)を溶解させることができる。
式2:MF→Mn++nF
しかし、ガラス沈殿物(MF)の解離は弱い場合がある。従って、ガラス沈殿物の解離を促進するために、(強酸からの)陽子を加えて、式3に示されているように、遊離フッ化物イオンを捕捉してもよい。
式3:H+F→HF
式2からのフッ化物イオンは、式3(即ち、少なくとも1つの鉱酸の存在)によって消費され続けるので、式2の反応は、左から右へと移行して、ガラス沈殿物が溶解され得る。
特定の実施形態では、本明細書において開示されるガラスクリーニング方法は、任意の種類のシリケート含有ガラスのHFエッチングから生じたスラッジをクリーニングするために用いられ得る。例えば、特定の実施形態では、例えば液晶ディスプレイ等のディスプレイ用のガラスがクリーニングされ得る。特定の実施形態において、ガラスは、アルミノシリケートガラスおよびボロシリケートガラスから選択され得る。特定の例示的な実施形態では、Gorilla(登録商標)glass(例えばGorilla glass 2およびGorilla glass 3を含む)がクリーニングされ得る。
本明細書において開示される特定の実施形態は、必須ではないが、幾つかの点で長所を有し得る。例えば、本明細書において開示される方法は、クリーニング溶液がガラス表面からスラッジを迅速に溶解させて、ガラスを短時間でクリーニングし得る点で、比較的効率的であり得る。単に一例として、少なくとも特定の実施形態では、本明細書において開示されるクリーニング溶液は、ガラス表面からスラッジを、約25分以下(例えば、約10分以下、または約5分以下等)の時間で溶解させ得る。特定の例示的な実施形態では、大量のガラススラッジ(例えば、約4g/L)を約5分以内で溶解させることができる。
更に別の例示的な実施形態では、本明細書において開示される方法は、クリーニング処理中にガラス表面を物理的に損傷することがないか、または、従来の化学的なクリーニング方法と比較してガラスに対する物理的な損傷を低減し得る。従って、本明細書に記載される方法は、欠陥を生じることなく、且つ/または、ガラス表面の強度を低下させることなく、ガラス表面を実質的に保存し得る。
更に、少なくとも特定の例示的な限定しない実施形態では、本明細書において開示されるクリーニング溶液は、1種類のみの鉱酸(例えばHCl等)を含み得る。特定の実施形態では、本明細書において開示されるクリーニング溶液は、3M、4.5M、または6MのHClを含む。
他の様々な例示的な実施形態では、本明細書において開示されるエッチングされたガラス表面を処理する方法は、従来の化学的なクリーニング方法と比較して、比較的より安全である。従来の化学的なクリーニング方法は、HFおよび/またはKOHを非常な高温で用い得るものであり、危険であり得るためである。特定の実施形態では、本明細書において開示されるクリーニング溶液は、HFおよび/またはKOHを含まないものであり得、且つ/または、処理は室温で行われ得る。更に、本明細書において開示されるクリーニング溶液は鉱酸のみを含み得るため、原材料のコストも比較的低くなり得る。
特定の例示的な実施形態では、本明細書において開示されるエッチングされたガラス表面を処理する方法は、クリーニング溶液中にHFを生じる。従って、任意に、使用済のクリーニング溶液を、更なるガラス表面をエッチングするために更に用いてもよく、および/またはリサイクルしてもよい。本明細書において開示されるように、エッチングされたガラス表面をHClを用いて処理すると、エッチングされたガラス表面からフッ化物残渣が効率的に除去され得ると共に、例えば、従来のブラシクリーニングのように、エッチングされたガラス表面の表面強度に悪影響を及ぼすことがない。
本明細書において開示される特定の実施形態では、スラッジは、Fと、例えば、Al3+、Ca2+、Si4+、Mg2+、およびSr2+の少なくとも1つとを含み得る。特定の実施形態では、スラッジは、AlFおよびSiFの少なくとも一方を含み得る。他の特定の実施形態では、スラッジの主成分はCaAlFであり得、ここで、xは、例えば約3〜約5の範囲であり得るが、この範囲に限定されない。例えば、特定の実施形態では、スラッジの主成分はCaAlFであり得る。特定の実施形態では、スラッジの少量相(minor phase)はMgAlF(HO)であり得る。この点について、図1は、3MのHFおよび6MのHCl中に溶解されたEagleXG(登録商標)ガラスから生じた例示的なガラススラッジのXRDスペクトルを示している。理論的には、低い角度における主要なピークはCaAlF(ここで、xは未知)であり得、一方、スラッジの少量相はMgAlF(HO)であり得る。
本明細書で用いる「クリーニング効率」とは、クリーニング溶液中におけるガラススラッジの溶解速度のことである。本明細書において開示される特定の実施形態では、幾つかの要因を調節することにより、クリーニング効率が更に改善され得る。ガラススラッジの溶解速度を改善し得る1つの要因は、用いられる鉱酸のタイプである。これは、鉱酸からのカチオンがガラススラッジと反応して溶解プロセスを阻害し得るためである。例えば、EagleXGガラスのスラッジでは、上記少なくとも1つの鉱酸としてHSOを用いた場合に、CaAlFからのCa2+がSO 2−と反応して、CaSOを生じ得る。しかし、特定の実施形態では、HSOは、硫酸塩と反応する金属イオン(例えば、Ca2+等)を含まないスラッジを溶解させることができ得る。一方、例えばHClを用いた場合には、塩化物はスラッジからの金属イオンと反応しないので、EagleXGスラッジを非常に迅速に溶解させ得る。
ガラススラッジの溶解速度を改善し得るもう1つの要因は、用いられる鉱酸の濃度である。鉱酸の濃度を高くすると、ガラススラッジを溶解させるのに要する時間が短縮され得る。特定の実施形態では、例えば、鉱酸の濃度は少なくとも約3M(例えば、少なくとも約4.5M、または少なくとも約6M等)であり得る。少なくとも1つの例示的な実施形態では、HClの濃度を約3Mから約6Mに増加させることにより、約4g/LのEagleXGスラッジの溶解時間が約80分から約10分に短縮され得る。
なお、例えばHF等のフッ化物イオン源をクリーニング溶液に加えると、溶解速度が遅くなり得る。従って、少なくとも特定の実施形態では、クリーニング溶液はフッ化物イオンを実質的に含まない。例えば、特定の実施形態では、クリーニング溶液はHFを含まない。
ガラススラッジの溶解速度を改善し得る更なる要因は、反応温度である。特定の実施形態では、反応温度を例えば約22℃から約30℃以上に上げることにより、溶解速度が速くなり、溶解時間が短縮され得る。特定の実施形態では、反応は固体(即ち、スラッジ)と液体(即ち、クリーニング溶液)との界面において生じるので、撹拌(例えば、撹拌および/または超音波処理等)も、溶解プロセスを加速し得る。
本明細書において開示される特定の実施形態では、使用済のクリーニング溶液が、リサイクルされることによって、ガラス表面をエッチングするために更に用いられ得る。クリーニング溶液を、ガラス表面をエッチングするために再使用することにより、原材料および廃棄物処理のコストが低減され得る。本明細書における特定の実施形態によって開示されるクリーニング処理中、フッ化物含有スラッジが鉱酸中に溶解されることにより、クリーニング処理中にクリーニング溶液中にHFを生じ得る。特定の実施形態では、使用済のクリーニング溶液中のHFおよび鉱酸の混合物で、ガラス表面のエッチングを行うことができる。
例えば、1つの例示的な実施形態では、1Lの6MのHClで、約16gのEagleXGスラッジを溶解させることが可能である。別の例示的な実施形態では、本明細書において開示される、12g/LのEagleXGスラッジを6MのHCl中に溶解させることによって生じた使用済のクリーニング溶液の、EagleXGガラスに対するエッチング速度は、約0.1μm/分である。例えば、使用済のクリーニング溶液(6MのHCl+12g/Lの溶解したEagleXGスラッジ)の、EagleXGガラスをエッチングする際のエッチング速度を示している図2を参照されたい。本明細書において開示される特定の実施形態では、使用済のクリーニング溶液に更にフッ化物イオンを加えること(例えばHFを加える等)により、エッチング速度が増加され得る。
本明細書において開示される方法は、簡単さおよび低コストを含む多くの長所を有する。本明細書において開示される溶液は、当業者に知られている任意の方法でエッチングされたガラス表面に、適用され得る。例えば、溶液は、エッチングされたガラス表面を溶液中に浸すことによって、またはエッチングされたガラス表面に溶液をスプレーすることによって適用され得る。特定の実施形態では、ガラスを室温のクリーニング溶液中に浸した後、脱イオン水中ですすげば、ガラス表面からガラススラッジを除去するのに十分であり得る。
本明細書において開示される特定の実施形態では、本明細書において開示されるクリーニング方法は、ガラス表面を、実質的に欠陥が無い状態に保存し得る。ガラス表面を物理的にクリーニングするためにブラシを適用しない、本明細書において開示されるクリーニング方法は、ガラス表面を、クリーニング処理中の傷や他の欠陥から守り得る。
特に明記しない限り、本明細書および特許請求の範囲で用いられるすべての数は、すべての事例において、記載の有無に関わらず「約」という用語によって修飾されることを理解されたい。また、本明細書および特許請求の範囲で用いられる精確な数値は、本開示の更なる実施形態を構成するものであることも理解されたい。実施例において開示される数値の精確さを確実にするための努力がなされた。しかし、測定されたどの数値も、それぞれの測定技術において見られる標準偏差から生じる若干の誤差を本質的に含み得る。
本明細書で用いる“the”(「その」等)、“a”または“an”(「1つの」等)は、「少なくとも1つ」を意味するものであり、特に明示しない限り、「1つのみ」に限定されるべきではない。
上記の概要説明および詳細な説明は、単に例示的で説明的なものであり、本開示を限定する意図のものではないことを理解されたい。
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、本開示を限定することは意図せず、本開示の実施形態を説明するものである。
当業者には、本明細書を考慮し、本開示を実施することにより、他の実施形態も自明である。
以下の実施例は、本開示を限定することは意図しない。
実施例1
EagleXGスラッジを、15重量%の水酸化カリウム(KOH)、6MのHCl、および10重量%のHFという3つの異なる溶液中に溶解させた。4g/LのEagleXGスラッジを各溶液に加えた(即ち、0.2gのEagleXGスラッジを50mLの各溶液に加えた)。6MのHCl中では、10分以内にEagleXGスラッジが完全に溶解し、透明な溶液を生じた。他の2つの溶液中では、数日間を超えてもスラッジは溶解せず、視認可能な濁りを有する溶液を生じた。
図3は、室温の6MのHCl中におけるEagleXGスラッジの溶解を示す。図3に示されているように、溶解プロセス中は、6MのHClのクリーニング溶液中に、スラッジから金属イオン(例えば、Ca2+、Al3+、およびMg2+等)が放出される。EagleXGスラッジの溶解速度は、それぞれ異なる時間における金属イオンの濃度をモニタリングすることによって得られる。溶解プロセス中のCa2+濃度の変化に基づく計算から、最初の2分以内にほぼ65%のスラッジが溶解されたことが示されている。
実施例2
12%HF(即ち、24体積%のHF50体積%原液)を用いてEagleXGガラスをエッチングし、エッチングされたシートをそれぞれ異なるクリーニング方法を用いてクリーニングした。HClを用いたクリーニングは、表面から効率的にフッ化物残渣を除去することがわかり、かつエッチングされたサンプルの表面強度を低下させなかった。
12%HFを用いて、自動エッチングシステムにおいてエッチングを行った。10インチ(25.4センチメートル)×14インチ(35.56センチメートル)の1.1mm厚のEagleXGシートを0.7mmまで薄化し、片側につき200マイクロメートル、合計400μmの基体を除去した。薄化およびすすぎ中はNバブリングを用いた。薄化後、シートを脱イオン水を用いて2回すすいだ。即ち、シートを5分間すすいだ後、すすぎ水を捨て、シートを新しい脱イオン水で更に5分間すすいだ。次に、薄化されたサンプルを、以下のそれぞれ異なるクリーニング方法を用いてクリーニングした。
(1)機械的撹拌を伴う、脱イオン水を用いた5分間のすすぎ。
(2)4%のセミクリーン(登録商標)KG(KOH)洗剤を用いた超音波(40Khz)洗浄。
(3)3MのHClを用いた5分間のすすぎ。
(4)6MのHClを用いた5分間のすすぎ。
(5)NHOH、H、およびHOを用いたSC1メガソニッククリーニング。
(6)4%のセミクリーンKG(KOH)洗剤を用いた水平方向のBentlerブラシクリーニング。
(7)4%のセミクリーンKG(KOH)洗剤を用いた水平方向および垂直方向のBentlerブラシクリーニング。
また、以下の3通りのガラスの参照サンプルを用いた。
(1)薄化され、脱イオン水中で10分間すすいだ10インチ(25.4センチメートル)×14インチ(35.56センチメートル)のシート。
(2)2インチ(5.08センチメートル)×2インチの薄化されていない(延伸されたままの)1.1mmのシート。
(3)ブラシクリーニングされたもの。
参照サンプルおよびクリーニングされた10インチ(25.4センチメートル)×14インチ(35.56センチメートル)のシートのエッジライティング画像を取得した。クリーニングされた10インチ×14インチのシートを、2インチ(5.08センチメートル)×2インチの各片に切断して分析した。X線光電子分光法(XPS)による検査(図4Aおよび図4B参照)から、クリーニングされていない(薄化されたままの)表面にはカルシウムおよびフッ素の存在が確認された。図4Aに示されているように、HClは、表面のAlの一部を低減するが、表面からフッ素も除去する。超音波洗浄は、表面からフッ化物残渣を除去するには効率的であったが、機械的撹拌を伴う追加の5分間の脱イオン水でのすすぎは、残渣を洗い落すには不十分であった。
TOF−SIMS分析により、エッチングされたままのサンプルおよび脱イオン水ですすいだサンプルの表面にはカルシウム、マグネシウム、およびフッ素の存在が確認された。図5Aおよび図5Bを参照されたい。図5Aに示されているように、3MのHCl溶液は、表面のAlの一部を低減すると共に、フッ化物を効率的に除去する。水平方向にブラシクリーニングされたサンプル、並びに水平方向および垂直方向にブラシクリーニングされたサンプルは共に、表面にカリウムの存在を示した。ブラシクリーニングはフッ化物残渣を除去するには効率的であったが、表面に若干量のカリウムを有した。カリウムは、ブラシクリーニング中に用いたセミクリーンKG洗剤からのものである可能性がある。
エッジライティングによる検査では、ブラシクリーニングされたサンプルに幾つかの傷が存在することが明らかになった。光学顕微鏡画像も、この観察を支持している。光学顕微鏡画像には、10週間の保管期間の後の、エッチングされたままのクリーニングされていないガラス表面において、結晶の生成が示されていた。結晶の生成は、クリーニングされたサンプルには見られなかった。このことは、エッチング処理で残ったフッ化物残渣を除去するための効率的なクリーニング方法の重要性を更に支持するものである。
機械的撹拌を伴う脱イオン水でのすすぎ、3MのHClでのすすぎ、6MのHClでのすすぎ、超音波クリーニング、およびメガソニッククリーニングを含む、上記の化学的処理方法のすべては、エッチングされたガラス表面から化学的残渣を除去するのに少なくとも部分的に効果的であった。ブラシクリーニングは、エッチングされたガラス表面から化学的残渣の一部を除去することができたが、ブラシによって、ガラス基体の表面品質を損なう傷が生じた。追加の5分間の脱イオン水でのすすぎは、ガラス表面からフッ化物残渣を除去するのに十分に効果的ではなかった。6MのHCl溶液はフッ化物残渣を除去するのに効率的であったが、ガラス表面の損傷を生じた。3MのHClは、エッチングされたガラス表面のクリーニングに効率的であることがわかった。
実施例3
4インチ(10.16センチメートル)×4インチのサイズのEagleXGシートを、10%HF(即ち、20体積%のHF50体積%原液)を用いて、500マイクロメートル厚から300マイクロメートル厚に薄化した。ブラシクリーニング、HClでのすすぎ、および超音波クリーニングを用いて、これらのサンプルをクリーニングした。上記のサンプルを、エッチングされたままの参照サンプルおよび延伸されたままのEagleXGガラスのサンプルと共に、表面強度について試験した。図6に示されているように、ブラシクリーニングされたサンプルは、超音波クリーニング法を用いてクリーニングされたサンプルおよびエッチングされたままの参照サンプルと比較して、最も強度が低かった。HClでクリーニングされたサンプルは、検査されたクリーニング方法の中で最も強度が高かった。図6を参照されたい。
以下の表1は、用いられたクリーニング方法の要約、並びに表面品質および表面強度についてのそれぞれの結果を示す。
Figure 2016528146
実施例4
以下の表2は、EagleXGスラッジを溶解させるのにかかった時間および用いられたクリーニング溶液を示す。試験のために、4g/LのEagleXGスラッジを各溶液中に懸濁させた。
Figure 2016528146

Claims (10)

  1. フッ化物イオンを含むエッチング液を用いてエッチングされたガラス表面を処理する方法であって、
    前記エッチングされたガラス表面に、少なくとも1つの鉱酸を含む溶液を適用する工程を含むことを特徴とする方法。
  2. 前記少なくとも1つの鉱酸が、塩酸、硝酸、および硫酸から選択される、請求項1記載の方法。
  3. 前記溶液が、前記エッチングされたガラス表面に適用される前には、フッ化水素酸を実質的に含まない、請求項1または2記載の方法。
  4. 前記少なくとも1つの鉱酸が、少なくとも約3Mの濃度を有する、請求項1から3のいずれか一項記載の方法。
  5. 前記溶液が、約5分〜約80分の範囲内の時間にわたって前記エッチングされたガラス表面に適用される、請求項1から4のいずれか一項記載の方法。
  6. 処理されたエッチングされたガラス表面であって、該ガラス表面が、フッ化物イオンを含むエッチング液を用いてエッチングされたものであり、エッチングされたガラス表面に、少なくとも1つの鉱酸を含む溶液を適用する工程を含む処理によって調製されたことを特徴とする、処理されたエッチングされたガラス表面。
  7. 前記少なくとも1つの鉱酸が、塩酸、硝酸、および硫酸から選択される、請求項6記載の処理されたエッチングされたガラス表面。
  8. 前記溶液が、前記エッチングされたガラス表面に適用される前には、フッ化水素酸を実質的に含まない、請求項6または7記載の処理されたエッチングされたガラス表面。
  9. 前記少なくとも1つの鉱酸が、少なくとも約3Mの濃度を有する、請求項6から8のいずれか一項記載の処理されたエッチングされたガラス表面。
  10. フッ化物イオンを含むエッチング液を用いてエッチングされたガラス表面を処理する方法であって、
    少なくとも約3Mの濃度を有する塩酸を含む溶液を前記ガラス表面に適用する工程を含み、前記溶液が、前記エッチングされたガラス表面に適用される前には、フッ化水素酸を実質的に含まないことを特徴とする方法。
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