JP2016522063A - リンク要素を備えた人工心臓弁およびその移植方法 - Google Patents

Abstract

人工心臓弁は、心臓内または心臓の周囲の他の人工心臓弁を含む他の人工器具をアンカ固定、整列、安定化、固定、あるいは、移植可能に構成される１つ以上のリンク要素を組み込む。

Description

本発明は、人工心臓弁に関する。特に、本発明は、人工心臓弁であって、心臓内または心臓の周囲に他の人工心臓弁を含む他の人工器具を、アンカ固定、整列、安定化、固定、あるいは移植を可能とするように構成される１つ以上のリンク要素を組み込む人工心臓弁に関する。

哺乳類の心臓（ヒトのものを含む）における４つの弁の機能は、反流、あるいは逆流させることなく血液を順方向に進めることを可能にすることにある。弁は、心臓の室と、その大血管との間に着座する。左心は酸素化した血液を高圧下で体循環にくみ出し、右心は脱酸素化した血液をより低い圧力下で肺循環にくみ出す。

左心および右心は各々２つの弁、すなわち房室弁、および半月弁を有する。左心において、これらはそれぞれ僧帽弁および大動脈弁である。右心において、これらは三尖弁および肺動脈弁である。房室弁は心室（筋肉のくみ出す室）から心房（低圧で室を満たす）を隔てる。半月弁はそれらの流出の大血管から心室を隔てる。

心臓の左側の心臓周期に注目して、正常に機能する僧帽（房室）弁は、左心房が心拡張時に空となり、低圧下で弛緩した左心室内に至るように開く。心室収縮の開始において、左心室内の増加する圧力により僧帽弁が閉じられ、これにより、血液は左心房に逆流しない。左心室の血圧が大動脈の血圧を超えるように上昇すると、大動脈（半月）弁が開き、これにより、左心室の血液は、大動脈内に放出される。

左心室がその放出過程を終え、弛緩し始めると、大動脈弁の流れは閉じられ、血液が左心室に逆流することが防止される。等容性弛緩時に、心室の圧力は落ち、大動脈弁および僧帽弁の両者が閉じられる。僧帽弁が開くことにより、左心房が再び空となり、低圧の左心室内に至り、圧−容量のサイクルが再開する。同様のシーケンスが、右心において、その三尖弁、肺動脈弁、右心房および右心室、並びに肺動脈で行われる。

人体内の心臓弁は、様々な先天性および後天性の障害に影響される。
これらの障害の機能的な結果は、以下を含む：
１．弁の狭窄、これにより、弁が完全に開放し損なうため、その弁を横断する血流に対して抵抗が増加する。

２．弁の逆流、これにより、弁（あるいは弁に関連付けられた組織構造）が完全に閉鎖し損なうため、血液が通常保護される室内に逆流して漏れる。
弁の狭窄および逆流の結果、鬱血心不全、心室の有害な再構築（ａｄｖｅｒｓｅ ｒｅｍｏｄｅｌｉｎｇ）、不能にする症状、心臓の律動障害、低減された機能的な性能、および死を含む主要なヒトの疾病が生じる。

これらの理由により、医学は、異常に機能する心臓弁を、治療、交換、あるいは補足する治療を含む。
誤作動する心臓弁を処置する一方法は、疾患のある弁に機能を補足または交換する人工弁を心臓内に移植することにある。例えば、大動脈弁または肺動脈弁（半月弁）の位置内への人工弁の経カテーテル移植は、これらの弁の狭窄および逆流の両者を処置するために成功裡に使用されている。多くのそのような応用において、経カテーテル弁は疾患があるか誤作動する半月弁を取り除くことなく移植され；こうして、誤作動する弁の組織は、血流の主通路から除外され、その機能は新しい弁と部分的にあるいは全体的に取り替えられる。病気の生来の弁の治療に付加的に、人工心臓弁あるいは移植される心臓弁もこの方法で処置される。

半月弁の構造および機能は、房室弁のものとは重要な点で異なる。本開示の目的において重要な意義を有する特徴は以下を含む：
１．半月弁を包囲するとともに低い膨脹性を有する組織の円形、または緩やかな楕円の形態。

２．心室の流出管（半月弁より下の）および大血管（半月弁より上の）の管の性質。
３．房室弁と比較して、半月弁を横断する流れのより高い速度および加圧された性質。
４．房室弁の複雑な三次元構造。

これらおよび他の理由において、房室弁内への、あるいは心臓内またはその周辺部内への人工器具のアンカ固定、整列、安定化、固定、あるいは移植を可能とするための、半月弁複合体およびその周囲の組織の所定の態様を利用する方法および装置が当該技術において要求されている。

本発明は以下により完全に記述されるが、以下の記述の開始において、当業者がここに開示される本発明を修正しても、なお本発明の好意的な結果を得られるものといえる。従って、後述の明細書は、当業者に向けられた広い教示の開示であるといえ、本発明を制限するものではないものといえる。

ここに開示される発明は、他の実施形態でもとりわけ、例えば半月弁の位置における人工心臓弁であって、心臓内または心臓の周囲に他の人工心臓弁を含む他の人工器具をアンカ固定、整列、安定化、固定、あるいは移植を可能とするように構成される１つ以上のリンク要素を組み込む人工心臓弁に関する。

先行技術において周知の人工心臓弁の多くの例があり、それらはすべて、本開示に記述されるリンク要素への適応に好適である。それらの器具でもとりわけ、例えば、米国特許出願第２０１０００３６４８５号、第２０１４０１６３６７２号、および第２０１４０００５７７４号の他、米国特許第７５８５３２１号、第７８４６２０３号、第７８４６２０４号、第６９０８４８１号、第８００２８２５号、第８０５７５４０号、第８５７９９６６号、第８５９１５７５号、および第８７２１７０８号に人工半月心臓弁が開示されており、これらのすべてはその全体がここに開示されたものとする。

一実施形態において、本発明は、半月弁の位置における人工器官間のリンク要素、および房室弁の位置における人工器官の使用を包含する。
上記一実施形態において、経カテーテル移植される大動脈弁は、１つ以上の機械的なリンク要素によって移植される僧帽弁に物理的に接続される。１つ以上のリンク要素は、移植される僧帽弁をアンカ固定するとともに補足的な安定性をもたらし、また、付加的に、生来の僧帽弁の体環に対して、および生来の僧帽弁器具の他の構造に対して、移植される僧帽弁をよりよく整列する。

別のそのような実施形態において、経カテーテル移植される肺動脈弁は、１つ以上の機械的なリンク要素によって、移植される三尖弁に物理的に接続され、これにより、同様の安定性および整列の効果が得られる。

本発明のいくつかの実施形態において、開示される固定要素は、移植される器具の位置決めおよび／または安定性を改善するための他の整列または固定要素を補足する。
本発明の別例において、移植される心臓弁以外の要素は、１つ以上の機械的なリンク要素によって移植される半月弁に接続される。これらの要素は、第２の移植される心臓弁に付加的に、あるいはこれに代えて、移植される半月弁に接続される。

付加的な要素は、心臓および／または血管の様々な室間の血流の制御以外に心臓内の機能を実施する装置を含む。例えば、そのような要素は、（ペースメーカおよび移植された細動除去器などの）心臓を電気的に刺激することに関与する装置を含む。そのような要素は、補助心臓、および／または心臓機能の、心内圧の、血流の、あるいは心臓内の電気的な活動を監視可能な装置の要素を更に含む。これらの要素は、ステントのような心臓の冠状動脈内の血流を維持または支援する器具を更に含む。

本発明の１つ以上のリンク要素は、関連する技術において周知の生体適合性を備えた材料から形成される。この材料は、金属（ステンレス鋼、銀、金、チタン、コバルト・クロミウムおよび他の生体適合性を備える金属）、プラスチックポリマ、セラミックス、あるいは他の周知の生体適合性を備える材料である。前記リンク要素は、適用に応じて度合いが変化する剛性を備える。

本発明の１つ以上のリンク要素は、単体として形成されるか、あるいはリンク内の関節接合を許容するように接続されるサブ要素から形成される。
本発明の１つ以上のリンク要素は、要求に応じて、張引、調整、および締結可能な縫合糸、ファイバ、ケーブル、あるいは同様の材料から構成される。

本発明の１つ以上のリンク要素は、移植される半月弁に一体的に形成されるか、あるいは移植される半月弁に着脱自在に取り付けられる。半月弁と１つ以上のリンク要素との間の接続部は、要求される適用に応じて、剛性を備えるか、可撓性を備えるか、あるいは関節接合（例えば蝶番関節、スナップ嵌合関節（ｓｎａｐ−ｔｏｇｅｔｈｅｒ ｊｏｉｎｔ）、ボール・ソケット関節、あるいは同様の機構）である。

同様に、１つ以上のリンク要素間の接続部、および移植される半月弁によってアンカ固定されるか支持される１つ以上の要素は、要求される適用に応じて、剛性を備えるか、可撓性を備えるか、関節接合される。

本発明の別例において、リンク要素は、移植される半月弁あるいはこれにアンカ固定される器具に接続するために磁力を利用する。リンク要素と、移植される半月弁あるいは他の器具との間の磁気による接続により、器具と弁とを互いに対して配向することが相当支援される。

本実施形態の変形において、リンクされる要素が互いに直接接触しないように、磁力が所定の距離を横断して作用する。
開示される発明の医学、医師、および患者のための効果は、以下を含むが、これらに制限されるものではない：
１．房室弁人工器官のその位置への安定化。

２．房室の人工器官の所望の位置への配向。
３．房室弁人工器官によって心臓に課される、環状の拡張およびゆがみの力の低減。
４．心臓内における診断または治療要素の正確な位置決め。

本発明の実施形態は下記方法によって使用することができる。まず、大動脈弁人工器官は、以下を含むいくつかの技術のうちの任意のものを使用して、その組織の位置に移植されるが、以下のものに限定されるものではない：
−経カテーテル後退輸送
−経カテーテル前進輸送
−外科的移植
大動脈弁人工器官は、器具の主な構造への取り付けに際し、開示される１つ以上のリンク要素と（体内における移植に先立って、あるいは移植後に）組み立てられる。

リンク要素を備えた大動脈弁人工器官を利用するために、操作する者は第２に移植される器具（例えば僧帽弁人工器官）をリンク要素に接続する。この接続は、心臓への経カテーテル（大動脈弁を横断して後退するアクセス、僧帽弁を横断する中隔を超える前進、あるいは左心室経心尖（ｔｒａｎｓａｐｉｃａｌ））、あるいは任意の外科的アプローチを含むいくつかのアクセス・アプローチのうちの任意のものによりリンク要素の経カテーテル捕捉によって行われるが、これらに限定されるものではない。

一旦主要な弁と第２の器具との間の接続がなされると、操作する者は、第２の器具の安定化、配向、あるいは固定のその意図した目的のためのリンク要素を利用して、第２の器具の移植を完了する。

上記では、移植される半月弁人工器官は、移植される房室弁人工器官、あるいは他の器具がアンカ固定される基部であるが、当業者には逆の構成も本発明に包含されるものと理解されるであろう。すなわち、移植される房室弁人工器官は、移植される半月弁人工器官、あるいは他の器具がアンカ固定される基部として機能する。

従って、本発明の様々な実施形態が例示されており、他の修正および変更が添付の特許請求の範囲および趣旨から逸脱することなく当業者が認識するものといえる。

Claims (25)

1. 人工心臓弁アセンブリであって、
   第１の方向の血流を許容するとともに該第１の方向とは反対の第２の方向の血流を抑制するように構成される移植可能な人工心臓弁と、
   前記人工心臓弁を支持する径方向に折り畳み可能かつ拡張可能な環状支持フレームと、
   前記支持フレームから遠位側に延びる終端部をそれぞれ有するとともに前記支持フレームに接続される１つ以上のリンク要素とを備え、
   前記終端部の各々は、心臓に移植可能な器具に接続するように構成される、人工心臓弁アセンブリ。
2. 前記移植可能な人工心臓弁は、大動脈弁人工器官、肺動脈弁人工器官、僧帽弁人工器官、および三尖弁人工器官からなる群から選択される弁人工器官である、請求項１に記載の人工心臓弁アセンブリ。
3. 前記心臓に移植可能な器具は、大動脈弁人工器官、肺動脈弁人工器官、僧帽弁人工器官、および三尖弁人工器官からなる群から選択される器具である、請求項１に記載の人工心臓弁アセンブリ。
4. 前記心臓に移植可能な器具は、大動脈弁人工器官、肺動脈弁人工器官、僧帽弁人工器官、三尖弁人工器官、ペースメーカ、細動除去器、補助心臓、血流モニタ、電気的活動モニタ、ステント、およびその要素からなる群から選択される器具である、請求項１に記載の人工心臓弁アセンブリ。
5. 前記１つ以上のリンク要素のうちの少なくとも１つは、ステンレス鋼、銀、金、チタン、コバルト・クロミウム、プラスチックポリマ、パイロライトカーボン、縫合糸、ファイバ、フィラメント、ケーブル、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される生体適合性を備えた材料から少なくとも部分的に形成される、請求項１に記載の人工心臓弁アセンブリ。
6. 前記１つ以上のリンク要素のうちの少なくとも１つは、単一の要素を含む、請求項１に記載の人工心臓弁アセンブリ。
7. 前記１つ以上のリンク要素のうちの少なくとも１つは、関節接合する構造体の複数のサブ要素を含む、請求項１に記載の人工心臓弁アセンブリ。
8. 前記１つ以上のリンク要素のうちの少なくとも１つは、剛性を備える、請求項１に記載の人工心臓弁アセンブリ。
9. 前記１つ以上のリンク要素のうちの少なくとも１つは、可撓性を備える、請求項１に記載の人工心臓弁アセンブリ。
10. 前記支持フレームと、前記１つ以上のリンク要素のうちの少なくとも１つとの間の接続部は、剛性を備える、請求項１に記載の人工心臓弁アセンブリ。
11. 前記支持フレームと、前記１つ以上のリンク要素のうちの少なくとも１つとの間の接続部は、関節接合する、請求項１に記載の人工心臓弁アセンブリ。
12. 前記支持フレームと、前記１つ以上のリンク要素のうちの少なくとも１つとの間の接続部は、可撓性を備える、請求項１に記載の人工心臓弁アセンブリ。
13. 前記支持フレームと、前記１つ以上のリンク要素のうちの少なくとも１つとの間の接続部は、磁気を帯びる、請求項１に記載の人工心臓弁アセンブリ。
14. 前記終端部のうちの少なくとも１つは、関節接合する関節を使用して、前記心臓に移植可能な器具に接続するように構成される、請求項１に記載の人工心臓弁アセンブリ。
15. 前記終端部のうちの少なくとも１つは、関節接合する関節を使用して、前記心臓に移植可能な器具に接続するように構成される、請求項１に記載の人工心臓弁アセンブリ。
16. 前記１つ以上のリンク要素のうちの少なくとも１つは、張引、弛緩、回転、あるいは転送することにより調整可能である、請求項１に記載の人工心臓弁アセンブリ。
17. 心臓に移植可能な器具を接続するリンク要素であって、
    第１の終端部および第２の終端部を有する長尺状をなす要素を備え、
    前記第１の終端部は第１の心臓に移植可能な器具に接続するように構成され、
    前記第２の終端部は第２の心臓に移植可能な器具に接続するように構成される、リンク要素。
18. 前記第１の心臓に移植可能な器具および前記第２の心臓に移植可能な器具は、大動脈弁人工器官、肺動脈弁人工器官、僧帽弁人工器官、三尖弁人工器官、ペースメーカ、細動除去器、補助心臓、血流モニタ、電気的活動モニタ、ステント、およびその要素からなる群から選択される、請求項１７に記載のリンク要素。
19. 前記リンク要素は、ステンレス鋼、銀、金、チタン、コバルト・クロミウム、プラスチックポリマ、パイロライトカーボン、縫合糸、ファイバ、フィラメント、ケーブル、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される生体適合性を備えた材料から少なくとも部分的に形成される、請求項１７に記載のリンク要素。
20. 前記リンク要素は、関節接合する構造体の複数のサブ要素を含む、請求項１７に記載のリンク要素。
21. 前記リンク要素は剛性を備える、請求項１７に記載のリンク要素。
22. 前記リンク要素は可撓性を備える、請求項１７に記載のリンク要素。
23. 前記リンク要素は、張引、弛緩、回転、あるいは転送することにより調整可能である、請求項１７に記載のリンク要素。
24. 前記第１の終端部および前記第２の終端部のうちの少なくとも１つは、関節接合する関節を使用して、前記第１の心臓に移植可能な器具、あるいは前記第２の心臓に移植可能な器具に接続するように構成される、請求項１７に記載のリンク要素。
25. 前記第１の終端部および前記第２の終端部のうちの少なくとも１つは、磁性関節を使用して、前記第１の心臓に移植可能な器具、あるいは前記第２の心臓に移植可能な器具に接続するように構成される、請求項１７に記載のリンク要素。