本発明は、車両の速度を制御するためのシステムに関する。とりわけ、これに限定するものではないが、本発明は、数多くのさまざまな特有の(異なる極端な)地形上で走行することができる陸上車両の速度を制御するためのシステムに関する。本発明の態様は、システム、方法および車両に関する
凹凸路面またはオフロード条件で車両を走行させるとき、走行路面の勾配の比較的に激しい変化を示す地形的な特徴構造物(地形特徴物)に直面することがある。たとえば、車両がポットホール(深い穴)、クレータ(凹み)、トレンチ(深くて細長い溝)、または段差等の地形特徴物上を走行しているとき、下方急勾配に直面することがある。こうした地形特徴物に直面すると、一方または両方の先頭車輪(前輪)勾配を下り始めるとき、車両は比較的に突然に大きな加速度を受けることがある。車両が下り坂を走行し終えるまでに、加速度が急激に増大した後に、加速度が急激に減少することがある。ポットホールまたはトレンチ等の場合、車両は、比較的に急峻な上り坂に直面し、地形特徴物から脱出するように切り抜ける必要がある。こうした地形特徴物に直面するとき、車両の安定性に悪影響を与え、乗員に不快感をもたらすことがある。
クルーズコントロールシステムと一般に呼ばれる車両速度制御システムが提供されていることが知られている。こうしたシステムにおいて、ユーザの運転体感を改善するために、ユーザがさらに操作しなければ、ユーザが設定した車両速度を維持するものである。
ユーザは維持すべき車両速度を選択し、ブレーキ、またはいくつかのシステムではクラッチを操作しない限り、車両はその速度を維持する。クルーズコントロールシステムは、ドライブシャフトまたは車輪に設けた速度センサからの速度信号を用いる。ブレーキーペダルまたはクラッチペダルが踏み込まれると、クルーズコントロールシステムは動作しなくなり、システムからの抵抗を受けることなく、ユーザは車両速度を変更することができる。ユーザがアクセルペダルを踏み込むと、車両速度は増大するが、ユーザの足がアクセルペダルから離れると、車両速度は事前設定されたクルーズ速度に戻る。より洗練されたクルーズコントロールシステムは、エンジン制御システムに組み込まれ、レーダ搭載システムを用いて前方にある車両までの距離を考慮した適応機能を有するものであってもよい。車両は、ユーザが入力する必要なく、前方にある車両の速度および距離を検知して、安全な後続速度および車間距離を自動的に維持するために、たとえば前向きレーダ検知システムを有してもよい。前方車両が減速した場合、またはレーダ検知システムが別の対象物を検知した場合、このシステムは、これに応じて、エンジンまたはブレーキシステムに減速するように信号を送信する。
こうしたシステムは、通常、車両速度が典型的には15マイル/時以上の所定速度より大きく、安定した交通状況(特に、高速道路や自動車道路)で走行する理想的な環境にある場合にのみ動作可能である。しかしながら、交通渋滞状況においては、車両速度は大きく変動する傾向があり、とりわけ最低速度条件を満たさないため、クルーズコントロールシステムは機能しない。たとえば駐車時、低速追突の可能性を低減するために、クルーズコントロールシステムには最低速度条件が適用される場合が多い。したがって、こうしたクルーズコントロールシステムは、特定の運転状況において動作せず、ユーザが好ましいとは考えない状況でも自動的に動作不能に制御される。
1つまたはそれ以上の車両サブシステムを制御するための動力車両用制御システムが提供されることが知られている。ここに一体のものとして参考に統合される米国特許第7,349,776号には、車両制御システムが開示され、この車両制御システムは、エンジン制御システムを含む複数のサブシステムコントローラ、トランスミッションコントローラ、ステアリングコントローラ、ブレーキコントローラ、およびサスペンションコントローラを備える。サブシステムコントローラのそれぞれは、複数のサブシステム機能モードで動作可能である。サブシステムコントローラは、車両のための数多くの運転モードを提供するために必要な機能モードを実現するようにサブシステムコントローラを制御する車両モードコントローラに接続されている。各運転モードは、1つまたは一連の特定の運転状況に対応し、各運転モードにおいて、サブシステムは、こうした運転状況に最も適した機能モードに設定される。こうした運転状況は、車両が「特別プログラムオフモード(SPオフモード)」として知られる草/砂利/雪モード、泥/轍モード、岩徐行モード、砂モード、高速道路モードで走行する地形タイプに関連する。車両モードコントローラは、「テレイン・レスポンス(登録商標、TR、地形応答)」システムまたはコントローラとも呼ばれている。
本発明の実施形態は、添付クレームを参照して理解することができる。本発明の態様は、システム、車両、および方法に関する。
保護を求める本発明の1つの態様によれば、複数の車輪を有する車両のための車両制御システムが提供され、この車両制御システムは、車両のピッチ角の変化率(ピッチレート)に相当する入力信号を受信するように動作可能であり、さらにピッチレートに基づいて、複数の車輪のうちの少なくとも1つの車輪に与えるトルクの大きさの変更を指令するように動作可能である。
本発明に係る実施形態は、車両安定性および乗員快適性を改善するような手法で車両を制御することができるといった利点を有する。
本発明に係る実施形態は、たとえば車両が急峻な勾配を急激に下降し始めたことを示す所定のピッチレートを超えるとシステムが判断したとき、このシステムが1つまたはそれ以上の車輪に与えるトルクの大きさを低減できるといった利点を有する。これにより、車両が勾配を下降するときのピッチレートを低減する効果が得られる。こうして車両安定性および乗員快適性を改善することができ、いくつかの状況において、車両に対する損傷を低減または回避することができる。たとえば、車両がポットホール、ピット、トレンチ、またはその他の走行路面にある比較的に突然の凹みを横断し始めるとき、制御システムは、車両を減速して、車両が凹みに入るピッチレートを低減することができる。
ピッチレートに関する信号は、縦方向加速度、車輪速度、および/または運転路面勾配に関する1つまたはそれ以上の信号に加えて生成された信号であってもよい。本発明の実施形態は、車両が前方または後方に移動しているときに動作するように構成してもよい。
このシステムは、車両の前方端部が下向きに縦揺れしたとき、トルクの大きさの変更を指令するように動作可能であってもよい。
すなわち車両の前方端部が下向きに縦揺れしたとき、この制御システムは、ピッチレートに基づいてトルクの大きさの変更を指令するように動作可能である。
この制御システムは、車両の前方端部が所定のピッチレートを超えるピッチレートで下向きに縦揺れしたとき、複数の車輪のうちの少なくとも1つの車輪に与えるトルクの大きさの変更を指令するように動作可能であってもよい。
この制御システムは、車両の前方端部が所定のピッチレートを超えるピッチレートで所定期間を超える期間、下向きに縦揺れしたとき、複数の車輪のうちの少なくとも1つの車輪に与えるトルクの大きさの変更を指令するように動作可能であってもよい。
この制御システムは、車両の前方端部が所定のピッチレートを超えるピッチレートで所定の距離を超える距離、下向きに縦揺れしたとき、複数の車輪のうちの少なくとも1つの車輪に与えるトルクの大きさの変更を指令するように動作可能であってもよい。
この制御システムは、車両の加速を抑制するために、トルクの大きさの変更を指令するように動作可能であってもよい。
車両の加速を抑制するようにトルクの大きさを変更することとは、意図した移動方向に車両を推進するために与えたトルクの大きさを低減するということを意味し、車両の走行方向とは反対の方向のトルクが与えられるように反転させるということを意味する。
すなわち車両のパワートレインが車両を走行させるために1つまたはそれ以上の車輪に正のトルクを与えた場合、正のトルクの大きさをより小さい正の値、実質的にはゼロ、または負の値に低減してもよい。たとえばエンジン圧縮ブレーキ、またはたとえば発電機として機能するときの電気マシンを用いて、負のトルクを与えてもよい。
理解されるように、内燃機関としてのエンジンで動力を得る車両と同様、ハイブリッド電気車両および電気車両において、本発明に係る実施形態は有用である。
追加的または択一的に、摩擦ブレーキシステム等の基礎ブレーキシステムを用いて、負のトルクを加えてもよい。典型的には、たとえばエンジン圧縮ブレーキによるパワートレインを介して負のトルクを与える場合に比べた場合、エンジン等のパワートレイン構成部品の慣性に部分的に起因するが、基礎ブレーキシステムを用いて負のトルクを迅速に加えることができるといった利点がある。
このシステムがトルクの大きさの変更を指令するときに、すでにパワートレインが負のトルクを与えている場合、パワートレインにより与えられる負のトルクの大きさ(絶対値)が負の方向により大きくしてもよい。
パワートレインのトルク変更に加え、またはこれに代えて、ブレーキシステムは、1つまたはそれ以上の車輪に負のトルクを与えるように指令されてもよい。
たとえば車両が坂道を下っており、速度制御システムがブレーキシステムを用いて車両を減速させる場合、ブレーキシステムにより加えられるブレーキトルクの大きさは、車両のピッチレートに基づいて増大させてもよい。たとえばピットホールまたは轍等により車両が急峻な下方勾配に直面して、勾配を下るとき、負のトルクを増大させることにより、車両の急激な加速を実質的に防止または低減することができる。所定のピッチレートは、車両が走行している地形のタイプに基づいて決定してもよい。
この制御システムは、車両が走行している地形のタイプを示す1つまたはそれ以上の入力信号に基づいて地形のタイプを決定するように動作可能であってもよい。
この制御システムは、車両が走行している地形のタイプに関するユーザ入力信号に基づいて地形のタイプを決定するように動作可能であってもよい。
すなわち、いくつかの実施形態では、特定の地形タイプを指定するために、たとえばコントロールダイヤルまたはコントロールボタンを介してユーザから信号が入力されてもよい。択一的には、たとえば表面摩擦係数、路面上の凹凸、および/または1つまたはそれ以上のパラメータに関するデータに呼応して、制御システムが地形タイプを自動的に判断してもよい。このデータは、システムに付随する1つまたはそれ以上のセンサから受信してもよい。択一的には、このデータは、たとえばコントローラ・エリア・ネットワーク(CAN)バス等を介して1つまたはそれ以上の車両システムから受信してもよい。他の構成も同様に有用である。
すなわち制御システムは、ピッチレートが所定のピッチレートを超えてことに呼応してトルクの大きさの変更を指令するように動作可能であってもよく、所定のピッチレートは、地形タイプに基づいて設定される。
所定の期間は、地形タイプを示す1つまたはそれ以上の入力信号に基づいて決定してもよい。
所定の距離は、地形のタイプを示す1つまたはそれ以上の入力信号に基づいて決定してもよい。
制御システムは、それぞれ異なる地形のタイプに対して動作するように構成された1つまたはそれ以上の車両サブシステムが複数の運転モードのうちの1つの運転モードで動作するように車両を制御可能であってもよく、運転モードは地形タイプに基づいて選択される。
すなわち、草、砂利、または雪のタイプに対して特定される地形上で車両を駆動するために「草/砂利/雪」運転モードを選択してもよい。砂のタイプに対して特定される地形上で車両を駆動するために「砂」運転モードを選択してもよい。
理解されるように、運転モードおよび所定のピッチ変化率(縦揺れ変化率)はともに、地形タイプに基づいて決定してもよい。上述のように、いくつかの実施形態では、地形タイプはユーザが設定してもよい。いくつかの実施形態では、追加的または択一的に、このシステムは、動作可能であってもよい。車両が地形タイプを自動的に検知し、これに応じて運転モードおよびピッチ変化率を自動的に決定してもよい。
制御システムは、車両サスペンションシステムに関する1つまたはそれ以上のパラメータをピッチレートに少なくとも部分的に基づいて変更することを指令するように動作可能であってもよい。
制御システムは、ピッチレートおよび地形のタイプに少なくとも部分的に基づいて、車両サスペンションシステムに関する1つまたはそれ以上のパラメータの変更を指令するように動作可能であってもよい。
1つまたはそれ以上のパラメータは、車両サスペンションシステムの硬さを含む。
制御システムは、目標速度値に基づいて車両を自動的に駆動させるように動作可能であってもよい。すなわち制御システムは、速度制御を実行するように動作可能であってもよい。すなわち、いくつかの実施形態では、制御システムが車両速度を制御するとき、車両のピッチ変化率(ピッチレート)が所定値を超えると、制御システムは、ピッチレートに基づいたトルク変更を指令してもよい。
目標速度値は、設定速度値ともいう。
制御システムは、目標速度値に実質的に等しい速度で車両を走行させるように動作可能であってもよい。いくつかの実施形態では、制御システムは、地形タイプ、検出された路面凹凸、または他の任意の適当なパラメータ等の1つまたはそれ以上のパラメータに基づいて車両速度の最大許容値に対する上限値を設定してもよい。すなわち制御システムは、車両速度の上限値で走行させるように車両を駆動する場合、車両速度の上限値が目標速度値以上であれば、目標速度値で車両を駆動させてもよい。
制御システムは、車両の1つまたはそれ以上の車輪に与えるトルクの大きさを制御することにより、目標速度値に基づいて車両を駆動させるように動作可能であってもよい。
制御システムは、車両の1つまたはそれ以上の車輪にスリップが生じたことを検知したとき、目標速度値に基づいて車両を継続的に駆動させるように動作可能であってもよい。
すなわち制御システムは、1つまたはそれ以上の車輪にスリップが生じた場合でも車両速度の制御を停止(中止)しない。むしろ制御システムは、1つまたはそれ以上の車輪に生じたスリップを積極的に制御するように構成してもよい。これは、1つまたはそれ以上の車輪のスリップを検知したときに車両速度制御を自動的に中止する既知のクルーズコントロールシステムとは対照的なものである。たとえば電子的安定性制御システム(ESC)、動的安定性制御システム(DSC)、または牽引制御システム(TCS)を用いて、スリップを検知し、クルーズコントロールシステムによる車両速度制御を中止する。
保護を求める本発明の別の態様によれば、上記態様に係る制御システムを備えた車両が提供される。
保護を求める本発明のさらに別の態様によれば、制御システムを用いて車両を制御する方法が提供され、この方法は、車両のピッチ角の変化率に相当する入力信号を受信するステップと、ピッチレートに基づいて、車両の複数の車輪のうちの少なくとも1つの車輪に与えるトルクの大きさの変更を指令するステップとを有する。
本願の範疇において、上記段落、クレーム、および/または以下の明細書および図面に記載された、さまざまな態様、実施形態、実施例、および択一例、特に個々の特徴物は、独立してまたは組み合わせて採用することができる。たとえば1つの実施形態に関連して説明された特徴物は、その特徴物が矛盾するものでなければ、すべての実施形態に適用することができる。
単なる具体例として以下の図面を参照しながら、本発明に係る1つまたはそれ以上の実施形態を以下説明する。
本発明の実施形態に係る車両の概略的な平面図である。
図1の車両の側面図である。
本発明の実施形態に係る車両速度制御システムを相当に概略的に示し、このシステムは、クルーズコントロールシステムおよび低速推進コントロールシステムを含むものである。
図3のクルーズコントロールシステムのさらなる特徴を示す概略図である。
本発明の実施形態に係る車両の操舵ハンドル(ステアリングホイール)およびブレークペダルならびにアクセルペダルを示す。
時間の関数としてのピッチレートと、ピッチレートの変化に応じて要求された対応ブレーキトルクとを示すグラフである。
本願明細書において、機能ブロック等のブロックは、1つまたはそれ以上の入力に応答して得られる1つの出力で特定される機能または動作を実行するソフトウェアコードを含むものと理解すべきである。ソフトウェアコードは、メインコンピュータプログラムで呼び出されるソフトウェアルーチンまたはソフトウェア機能の形態を有するか、または独立したソフトウェアルーチンまたはソフトウェア機能ではないソフトウェアコードのフローの一部を構成するコードであってもよい。本発明の実施形態の動作方法の説明を容易にするために、機能ブロックを参照する。
図1は、本発明の1つの実施形態に係る車両100を示す。車両100はパワートレイン129を備え、パワートレインは、オートマ(自動)トランスミッション124を有するドライブライン130に接続されるエンジン121を有する。また理解されるように、本発明の実施形態は、マニュアルトランスミッション、無段変速可能トランスミッション、または任意の他の適当なトランスミッションを備えた車両に利用されるのに適したものである。
ドライブライン130は、フロント(前輪)ディファレンシャル(差動装置)137および一対のフロント(前輪)ドライブシャフト118を用いて、一対の車両前輪111,112を駆動するように構成されている。ドライブライン130は、補助ドライブシャフトすなわちプロペラシャフト132、リア(後輪)ディファレンシャル135、および一対のリアドライブシャフト139を用いて、一対の後輪114,115を駆動するように構成されたドライブライン補助部131を備える。本発明の実施形態は、(前輪駆動車もしくは後輪駆動車)一対の前輪または一対の後輪のみを駆動する車両、または二輪/四輪駆動を選択できる車両に利用される上で適したものである。図1の実施形態において、トランスミッション124は、パワートランスファーユニット(PTU:動力伝達装置)131Pを介して、ドライブライン補助部131に離脱可能に接続することができる。本発明の実施形態は、4つ以上の車輪を有する車両、たとえば三輪車両または四輪車両の2つの車輪だけが駆動される車両、または4つ以上の車輪を有する車両に適したものであってもよい。
車両エンジン121のための制御システムは、車両制御ユニット(VCU)10と呼ばれる中央コントローラと、パワートレインコントローラ11、ブレーキコントローラ13、およびステアリングコントローラ170Cを有する。ブレーキコントローラ13は、ブレーキシステム22(図3)の一部を構成する。車両制御ユニット10は、車両に搭載されたさまざまなセンサおよびサブシステム(図示せず)の間で複数の信号を送受信する。車両制御ユニット10は、図3に示す低速前進(LSP)コントロールシステム12と、スタビリティコントロールシステム(SCS:安定化制御システム)14を備える。スタビリティコントロールシステム14は、牽引力(車輪と走行面との間の静止摩擦力)の損失を検知し、調整することにより、車両100の安全性を改善するものである。牽引力の低減または操舵制御の低下が検知されると、スタビリティコントロールシステム14は、ブレーキコントローラ13に自動的に要求して、車両の1つまたはそれ以上のブレーキをかけ、ユーザが運転したい方向に車両100を操縦しやすくするように動作することができる。図示された実施形態では、スタビリティコントロールシステム14は、車両制御ユニット10により実現されている。いくつかの択一的な実施形態では、スタビリティコントロールシステム14は、ブレーキコントローラ13により実現されている。さらに択一的には、スタビリティコントロールシステム14は、別体のコントローラにより実現してもよい。
図3には詳細には図示されていないが、車両制御ユニット10は、ダイナミックスタビリティコントロール(DSC:動的安定化制御)機能ブロック、トラクションコントロール(TC:牽引力制御)機能ブロック、アンチロックブレーキシステム(ABS)機能ブロック、およびヒルディセントコントロール(HDC)機能ブロックを有する。これらの機能ブロックは、車両制御ユニット10のコンピュータデバイスにより実行されるソフトウェアコードとして実現され、たとえば車輪スリップ事象が生じた場合、DSCアクティビティ(DSC起動状態)、TCアクティビティ、ABSアクティビティ、各車輪に対するブレーキ動作、およびエンジントルクリクエスト(エンジントルク出力要求)を示す信号を、車両制御ユニット10からエンジン121に出力する。上記アクティビティを示す信号のそれぞれが、車輪スリップ事象が生じたことを示す。ロールスタビリティコントロールシステム(ロール安定化制御システム)等の他の車両サブシステムも同様に有用である。
上述のように、車両100はクルーズコントロールシステム16を備え、このシステムは、車両が25km/時を超える速度で走行しているとき、選択された速度に車両速度を自動的に維持するように動作可能である。クルーズコントロールシステム16にはクルーズコントロール用ヒューマンマシンインターフェイス(HMI)が設けられ、これを用いてユーザは既知の手法で目標車両速度をクルーズコントロールシステム16に入力する。本発明の1つの実施形態では、クルーズコントロールシステムの入力制御部は、操舵ハンドル171に取り付けられている(図5)。クルーズコントロールシステム選択ボタン176を押すことにより、クルーズコントロールシステム16を作動させることができる。クルーズコントロールシステム16を作動させた後、「設定速度」制御部173を押すと、クルーズコントロール設定速度パラメータ(cruise_set-speed)の値を、現時点での車両速度に設定する。「+」ボタン174を押すと、クルーズコントロール設定速度パラメータ(cruise_set-speed)の値を増大させ、「−」ボタン175を押すと、クルーズコントロール設定速度パラメータ(cruise_set-speed)の値を低減させることができる。再開ボタン173Rは、ドライバがクルーズコントロールを解除した直後の瞬間の値で速度制御再開するようにクルーズコントロールシステム16を制御するように動作可能である。理解されるように、このシステム16を含むハイウェイ用クルーズコントロールシステムは、ユーザがブレーキを踏み込んだとき、またはマニュアルトランスミッションを用いた場合にはユーザがクラッチを踏み込んだとき、クルーズコントロール機能は解除され、車両100は、マニュアル動作モードに戻り、マニュアル動作モードで車両速度を維持するためには、ユーザがアクセルペダルを踏み込んでいることが必要となる。さらに、車輪スリップ事象が牽引力の損失等により検知されると、クルーズコントロール機能は解除される。再開ボタン173Rを押し続けると、クルーズコントロールシステム16による速度制御が再開される。
クルーズコントロールシステム16は、車両速度をモニタして、目標車両速度から逸脱すると、車両速度が(典型的には、25km/時を超える)実質的に一定の速度となるように、車両速度を自動的に調整する。換言すると、クルーズコントロールシステムは、25km/時以下の速度では機能しない。クルーズコントロール用HMI18は、クルーズコントロールシステム16の状況について、HMI18の画像ディスプレイを介してユーザに警告を与えてもよい。本実施形態では、クルーズコントロールシステム16は、クルーズコントロール設定速度パラメータ(cruise_set-speed)の値を25km/時〜150km/時の範囲の任意の値に設定できるように構成されている。
低速前進(LSP)コントロールシステム12は、ユーザが要求するペダル入力がなくても、車両が前進できるような極めて遅い目標速度をユーザが選択できるような速度依存式の制御システムを提供する。この低速の速度制御(すなわち低速前進制御)の機能は、速度が25km/時を超えるときのみ動作するハイウェイ用クルーズコントロールシステム16により提供されるものではない。
低速前進(LSP)コントロールシステム12は、操舵ハンドル171上に取り付けられたLSPコントロールシステム選択ボタン172を用いて起動される。このシステム12は、車両100を所望速度に維持するために、車両100の1つまたはそれ以上の車両の車輪に対して全体的または個別的に、パワートレイン制御、トラクション制御、およびブレーキ動作を選択的に行う。
低速前進(LSP)コントロールシステム12は、ユーザが、LSPコントロール用HMI(LSP HMI、図1および図3)20を用いて、所望のクルーズコントロール設定速度パラメータ(cruise_set-speed)の値を入力できるように構成されており、LSPコントロール用HMI20は、クルーズコントロールシステム16およびヒルディセントコントロール(HDC)12HDと、特定の入力ボタン173〜175を共用する。車両速度は、低速前進コントロールシステムの動作可能範囲(他の範囲も有用であるが、本実施形態では2km/時〜30km/時の範囲)にあって、低速前進コントロールシステム12は、クルーズコントロール設定速度パラメータ(cruise_set-speed)の値に基づいて車両速度を制御する。ハイウェイ用クルーズコントロールシステム16とは異なり、低速前進コントロールシステム12は、牽引力事象とは関係なく動作するように構成され、すなわちシステム12は、車輪スリップが検知されても速度制御を中止しない。むしろ、低速前進コントロールシステム12は、車輪スリップが検知されたときの車両の挙動を積極的に調整するものである。
LSPコントロール用HMI20は、ユーザが容易に操作できるように、車両キャビン内に設けられている。車両100のユーザは、LSPコントロール用HMI20を介して、ハイウェイ用クルーズコントロールシステム16と同様の手法により「設定速度」ボタン173および「+」ボタン174ならびに「−」ボタン175を用いて、ユーザが所望する車両の走行速度(「目標速度」という。)を示す信号を低速前進コントロールシステム12に入力することができる。LSPコントロール用HMI20は、画像ディスプレイを有し、低速前進コントロールシステム12の状態に関する情報およびガイダンス(案内)を画像ディスプレイ上で表示することができる。
低速前進コントロールシステム12は、ユーザがブレーキペダル163を用いてブレーキをかけた程度(度合)を示す入力信号を、車両のブレーキシステム22から受信する。また低速前進コントロールシステム12は、ユーザがアクセルペダル161を踏み込んだ程度(度合)を示す入力信号を、アクセルペダル161から受信する。同様に、トランスミッションまたはギアボックス124からの入力信号が低速前進コントロールシステム12に入力される。この入力信号は、たとえばギアボックス124の出力シャフトの速度、トルクコンバータのスリップ、およびギア比リクエストを示す信号が含まれる。低速前進コントロールシステム12に対する他の入力信号は、クルーズコントロール用HMI18から入力されるクルーズコントロールシステム16の(ON/OFF)の状態を示す入力信号、およびLSPコントロール用HMI20から入力される入力信号を含む。
車両制御ユニット(VCU)10のヒルディセントコントロール(HDC)機能ブロックは、ヒルディセントコントロール(HDC)システム12HDの一部を構成する。ヒルディセントコントロールシステム12HDは、動作中、ユーザにより設定可能なHDC設定速度パラメータ(HDC_set-speed)の値に相当する速度に車両速度を制限するために、(ABS機能ブロックの一部を構成する)ブレーキシステム22を制御する。HDC設定速度パラメータ(HDC_set-speed)は、HDC目標速度ともいう。ヒルディセントコントロール(HDC)システムの動作中、ユーザがアクセルペダルを踏み込むことにより、HDCシステムを解除しなかった場合、ヒルディセントコントロールシステム12HDは、車両速度がHDC設定速度(HDC_set-speed)を超えないように制御する。本実施形態では、ヒルディセントコントロールシステム12HDは、正の駆動トルクを与えるように動作することはできない。むしろヒルディセントコントロールシステム12HDは、負のブレーキトルクを与えるように動作することしかできない。
ヒルディセントコントロール(HDC)用HMI20HDには、ユーザがヒルディセントコントロールシステム12HDを制御する(HDC設定速度(HDC_set-speed)の値の設定を含む)ための手段が設けられている。HDCシステム選択ボタン177が操舵ハンドル171上に取り付けられ、ユーザは、HDCシステム選択ボタンを用いてHDCシステム12HDを起動して車両速度を制御することができる。
上述のように、HDCシステム12HDは、ユーザがクルーズコントロールシステム16および低速前進コントロールシステム12と同一の制御部を用いて、HDC設定速度パラメータ(HDC_set-speed)の値を設定し、調節することができるように動作可能である。すなわち本実施形態では、HDCシステム12HDが車両速度を制御するとき、HDC設定速度を増減させ、あるいはクルーズコントロールシステム16および低速前進コントロールシステム12の設定速度と同様、同一の制御ボタン173,173R,174,175を用いて、車両の瞬間的な速度に設定することができる。HDCシステム12HDは、HDC設定速度パラメータ(HDC_set-speed)の値を2km/時〜30km/時の範囲の任意の値に設定できるように動作可能である。
車両100が50km/時以下で走行しているときにHDCシステム12HDが選択され、その他の速度制御システムが動作していない場合、HDCシステム12HDは、参照テーブルから選択された値を、HDC設定速度パラメータ(HDC_set-speed)の値に設定する。参照テーブルから出力された値は、現時点で選択されたトランスミッションギア、現時点で選択されたパワートランスファーユニット(PTU)のギア比(Hi/Lo)、および現時点で選択された運転モードに応じて決定される。そしてユーザがアクセルペダルを踏み込むことにより、HDCシステム12HDを解除しなかった場合、HDCシステム12HDは、車両100を減速させるように、パワートレイン129および/またはブレーキシステム22を制御する。HDCシステム12HDは、最大許容可能レートを超えない減速度で設定速度値まで車両を減速させるように構成されている。本実施形態では、減速度は1.25m/s2に設定されるが、他の値も同様に有用である。ユーザが「設定速度」ボタン173を連続的に押した場合、現時点の車両速度が30km/時以下であるならば、HDCシステム12HDは、HDC設定速度の値を現時点の車両速度に設定する。車両100が50km/時を超える速度で走行しているときにHDCシステム12HDが選択された場合、HDCシステム12HDは、リクエスト(HDCシステムを選択する要求)を却下し、そのリクエストが却下されたことをユーザに提示する。
理解されるように、車両制御ユニット(VCU)10は、上記説明したような既知のテレイン・レスポンス(登録商標、TR、地形応答)システムを実現するように構成され、車両制御ユニット10は、選択された運転モードに依存して、1つまたはそれ以上の車両システムまたはパワートレインコントローラ11等のサブシステムの設定値を制御する。運転モードは、運転モードセレクタ141S(図1)を用いて選択することができる。運転モードとは、地形モード、地形応答モード、または制御モードとも呼ばれる。図1の実施形態において、比較的に硬く、路面と車両車輪との間の摩擦係数が比較的に大きく、滑らかな運転路面上の走行に適した「ハイウェイ」運転モードと、砂地地形上の運転に適した「砂地」運転モードと、草、砂利、または雪の上の走行に適した「草、砂利、または雪」運転モードと、岩石の多い表面上をゆっくりとした走行に適した「岩徐行」運転モードと、泥まみれで轍の多い地形上を徐行走行するのに適した「泥または轍」運転モードとを含む5つの運転モードが提供される。追加的または択一的な他の運転モードが提供されてもよい。
いくつかの実施形態において、低速前進(LSP)コントロールシステム12は、動作状態、スタンバイ状態、および「非動作」状態のいずれかの状態にある。LSPコントロールシステム12は、動作状態にあるとき、パワートレインのトルクおよびブレーキシステムのトルクを制御することにより車両速度を積極的に制御する。LSPコントロールシステム12は、スタンバイ状態にあるとき、ユーザが再開ボタン173Rまたは「設定速度」ボタン173を押すまで車両速度を制御しない。LSPコントロールシステム12は、非動作状態にあるとき、LSPコントロールシステムセレクタボタン172が押されるまで、制御部に対する入力信号に応答しない。
また本実施形態では、LSPコントロールシステム12は、動作モードの状態と同様での中間的な状態を実行するように動作可能である。ただし、この中間的な状態では、車両100の1つまたはそれ以上の車輪にパワートレイン129から正の駆動トルクを加えるようにLSPコントロールシステム12による命令が阻止される。すなわち、ブレーキシステム22および/またはパワートレイン129を用いて、ブレーキトルクのみが与えられる。他の構成も同様に有用である。
LSPコントロールシステム12が動作状態にあるとき、ユーザは「+」ボタン174および「−」ボタン175を用いて車両の設定速度を増減させることができる。さらにユーザは、アクセルペダル161またはブレーキペダル163を軽く踏むことにより、車両の設定速度を増減させることができる。いくつかの実施形態では、LSP設定速度(LSP_set-speed)の値をアクセルペダル161またはブレーキペダル163のみを用いて調節することができるように、「+」ボタン174および「−」ボタン175は動作不能である。動作不能とする上記特徴により、たとえば「+」ボタン174および「−」ボタン175を偶発的に押したことにより、設定速度が意図せず変更されることを防止することができる。偶発的なボタンの押下は、操縦困難な地形路面上を運転していて、操舵ハンドルの角度を比較的に大きく頻繁に変える必要がある場合に生じる。他の構成も同様に有用である。
理解されるように、本実施形態に係るLSPコントロールシステム12は、他の値も同様に有用ではあるが、クルーズコントロールシステムが25km/時〜150km/時の範囲の設定速度値に従って車両を走行させるように動作可能である一方、LSPコントロールシステム12が2km/時〜30km/時の範囲の設定速度値に従って車両を走行させるように動作可能である。車両速度が30km/時を超えるが、実質的に50km/時以下であるときにLSPコントロールシステム12が選択された場合、LSPコントロールシステム12は中間的なモードを実行する。中間的なモードでは、車両速度が30km/時を超えるときに、ドライバがアクセルペダル161から足を離した場合、LSPコントロールシステム12は、LSP設定速度パラメータ(LSP_set-speed)の値に相当する設定速度値まで車両100を減速させるようにブレーキシステム22を制御する。車両速度が30km/時以下となったとき、LSPコントロールシステム12は、LSP設定速度パラメータ(LSP_set-speed)の値に従って車両を制御するように、パワートレイン129を介して正の駆動トルクを加えるとともに、パワートレイン129を用いて(エンジンブレーキを用いて)およびブレーキシステム22を用いて制動トルクを与えるように動作可能な動作状態に移行する。LSP設定速度パラメータ(LSP_set-speed)の値が設定されなければ、LSPコントロールシステム12は、スタンバイモードに移行する。
理解されるように、LSPコントロールシステム12が動作モードにあるとき、クルーズコントロールシステム16の動作が禁止(抑制)される。したがって、これら2つのシステム12,16は、車両が走行している速度に依存して、常に互いに対して独立して動作することができる。
いくつかの実施形態では、たとえば、低速前進コントロール用の入力信号とクルーズコントロール用の入力信号とを切り換えるための1つまたはそれ以上の独立したスイッチが設けられているとき、選択速度を同一のハードウェアを用いて入力できるように、クルーズコントロール用HMI18およびLSPコントロール用HMI20は、同一のハードウェア内に構成することができる。
図4は、LSPコントロールシステム12内で車両速度を制御する手段を示す。上述のように、ユーザが選択した速度(設定速度)は、LSPコントロール用HMI20を用いてLSPコントロールシステム12に入力される。パワートレイン129に付随する車両速度センサ34(図1に示す)は、車両速度を示す信号36をLSPコントロールシステム12に出力する。LSPコントロールシステム12は、ユーザが選択した設定速度(「目標速度」38ともいう。)を測定した速度36と比較して、比較結果を示す信号30を出力するコンパレータ28を有する。出力信号30は、車両制御ユニット10の評価ユニット40に送信され、評価ユニットは、LSP設定速度(LSP_set-speed)を維持するためには車両速度を増大させるべきか、または低減させるべきかに応じて、車両の車輪111〜115に追加的なトルクを加えるように要求するものか、車両の車輪111〜115にかかるトルクを減らすように要求するものかについて出力信号30を評価する。一般に、トルクの増大は、パワートレインの所与の部位(たとえばエンジン出力シャフト、車輪、または任意の適当な部位)に供給されるパワートレイントルクの大きさの増大を伴うものである。また、車輪に対するより小さい正のトルクまたはより大きい負のトルクへの低減は、車輪に供給されるパワートレイントルクの大きさの低減または車輪にかかるブレーキ力の増大を伴うものである。理解されるように、パワートレイン129が発電機として機能する電気マシンを有するいくつかの実施形態では、パワートレイン129が電気マシンを介して1つまたはそれ以上の車輪に対して負のトルクを与えることができる。車両100が走行している速度に部分的に依存するが、いくつかの状況では、エンジンブレーキを用いて、車輪に対して負のトルクを与えることができる。1つまたはそれ以上の電気マシンが推進駆動モータとして動作可能である場合、1つまたはそれ以上の電気マシンを用いて正の駆動トルクを加えることができる。
評価ユニット40からの信号42は、パワートレインコントローラ11およびブレーキコントローラ13に出力され、ブレーキコントローラは車両車輪111〜115に負荷される正味のトルクを制御する。評価ユニット40から正または負のトルク要求があるかに依存して、正味のトルクを増減させてもよい。車輪に対して正または負の必要とされるトルクを供給するために、評価ユニット40は、パワートレイン129から車両車輪に正または負のトルクを供給するように指令を出し、および/またはブレーキシステム22により車両車輪に制動力をかけるように指令を出し、いずれにしても要求される車両速度を達成し、維持するために必要なトルク増減を実現することができる。図示した実施形態では、トルクが車両の要求された速度を維持するように車両車輪に個別に供給されるが、別の実施形態では、要求速度を維持するために車両車輪全体に供給される。いくつかの実施形態では、パワートレインコントローラ11は、リアドライブユニット、フロントドライブユニット、ディファレンシャル、あるいは他の任意の適当な構成部品等を含むドライブライン構成部品を制御することにより、1つまたはそれ以上の車輪に加わるトルクの大きさを制御するように動作可能であってもよい。たとえば、ドライブライン130の1つまたはそれ以上の構成部品は、1つまたはそれ以上の車輪に加わるトルクの大きさを変化させるように動作可能な1つまたはそれ以上のクラッチを含んでもよい。他の実施形態も同様に有用である。
パワートレイン129が、1つまたはそれ以上の推進モータおよび/または発電機等の1つまたはそれ以上の電気マシンを有する場合、パワートレインコントローラ11は、1つまたはそれ以上の電気マシンを用いて、1つまたはそれ以上の車輪に与えるトルクを調節するように動作可能であってもよい。
LSPコントロールシステム12は、車両スリップ事象が生じたことを示す信号48を受信する。この信号は、車両のハイウェイ用クルーズコントロールシステム16に出力される信号48と同じものである。システム16に出力される信号48は、ハイウェイ用クルーズコントロールシステム16の動作モードを解除(無効化)または阻害(禁止)するトリガとなるもので、ハイウェイ用クルーズコントロールシステム16による車両速度の自動制御は、一時中断または中止される。しかしながら、LSPコントロールシステム12は、車両スリップを示す車両スリップ信号48を受信したことに呼応して、その動作を一時中断または中止するように構成されない。むしろ、システム12は、ドライバの負担を軽減するように車両スリップをモニタし、継続して制御するように構成される。車両スリップが生じている間、LSPコントロールシステム12は、測定車両速度と、LSP設定速度(LSP_set-speed)の値とを比較し続け、選択された車両速度値を維持するように車両の各車輪に加わるトルクを自動的に制御し続ける。したがって、理解されるように、LSPコントロールシステム12は、クルーズコントロールシステム16とは異なるように構成され、クルーズコントロールシステム16は、車輪スリップ事象により、クルーズコントロール機能が解除(無効化)されるため、車両のマニュアル操作を再開するか、もしくは再開ボタン173Rもしくは設定速度ボタン173を押すことにより再起動されるクルーズコントロールシステム16で速度制御を再開する必要がある。
本発明のさらなる実施形態(図示せず)において、車輪スリップ信号48は、単に複数の車輪速度を比較するだけでなく、路面に対する車両速度を示すセンサデータを用いてさらに洗練(改善)されて得られたものである。このように路面に対する速度は、全地球測位(GPS)データを用いて、または車両と車両が走行している路面との間の相対的な移動を決定するように構成されたレーザ式システムを用いて特定してもよい。いくつかの実施形態では、路面に対する速度を測定するためのカメラシステムを採用してもよい。
LSPコントロールプロセスの任意の段階において、正または負の方向に車両速度を調整するために、アクセルペダル161および/またはブレーキペダル163を踏むことにより、LSP制御機能を解除(無効化)することができる。しかしながら、車輪スリップが信号48により検知された場合、LSPコントロールシステム12はアクティブ状態を維持し、LSPコントロールシステム12による車両速度制御は中断されることはない。これは、図4に示すように、車輪スリップ事象信号48を制御するLSPコントロールシステム12に車輪スリップ事象信号48を出力することにより実現してもよい。図1に示す実施形態において、スタビリティコントロールシステム(SCS)14は、車輪スリップ事象信号48を生成し、これをLSPコントロールシステム12およびクルーズコントロールシステム16に出力する。
車両車輪のうちの任意の1つの車輪に牽引力損失が生じたとき、車輪スリップ事象がトリガ(起動)される。車輪およびタイヤは、たとえば雪、氷、泥、砂、および/または急勾配もしくは横断勾配の上を走行するとき、牽引力の損失が生じやすい。また車両100は、地形がより不均一または滑りやすい環境において、通常のオンロード状況にあるハイウェイ上を走行する場合に比して、牽引力の損失がより生じやすい。したがって本発明の実施形態は、車両100がオフロード環境を走行している場合、または車輪スリップが頻繁に生じる場合に特に有益なものである。こうした状況におけるユーザによるマニュアル操作は、困難を伴うものであり、しばしば多くのストレスを与え、乗り心地が良くない。
車両100は、車両の動きおよび状態に関連するさまざまな異なるパラメータを示す追加的なセンサ(図示せず)を有する。これらは、LSPコントロールシステム12、HDCコントロールシステム12HD、または乗員拘束システムもしくはジャイロセンサおよび/または加速度計等のセンサからデータを出力する任意の他のサブシステムの一部に固有の慣性システムを含み、このデータは車両本体の動きを示し、LSPコントロールシステム12および/またはHDCコントロールシステム12HDに対する有用な入力を提供する。センサからの信号は、複数の運転状況指標(地形指標ともいう。)を提供し、または複数の運転状況指標を計算するために用いられ、運転状況指標は車両が走行している地形の性質を示すものである。
車両100に搭載されたこれらのセンサ(図示せず)は、これに限定するものではないが、車両制御ユニット10に連続的に出力するセンサであって、上記説明した図4に示す周囲温度センサ、大気圧センサ、タイヤ圧センサ、車輪アーティキュレーションセンサ、車両のヨー角・ロール角・ピッチ角およびこれらの角速度を検出するジャイロセンサ、車両速度センサ、縦方向加速度センサ、エンジントルクセンサ(エンジントルク推定器)、操舵ハンドル角度センサ、操舵ハンドル角速度センサ、勾配センサ(勾配推定器)、スタビリティコントロールシステム(SCS)14の一部である横方向加速度センサ、ブレーキペダル位置センサ、ブレーキ圧センサ、アクセルペダル位置センサ、縦方向・横方向・垂直方向モーションセンサ、および車両進水支援システム(図示せず)の一部である水検出センサを含む。他の実施形態では、上記センサのうちから選択されたセンサのみが使用される。
車両制御ユニット10は、操舵コントローラ170Cからの信号を受信する。操舵コントローラ170Cは、電動アシストステアリングユニット(ePASユニット)の形態を有する。操舵コントローラ170Cは、車両100の操舵可能な車輪111,112に与える操舵力を示す信号を車両制御ユニット10に出力する。この操舵力は、ユーザが操舵ハンドル171に与える力に、電動アシストステアリングユニット170Cにより生成される操舵力を加えた力に相当する。
車両制御ユニット10は、さまざまなセンサ入力信号を評価し、車両走行中の特定の地形タイプ(たとえば泥または轍、砂、草/砂利/雪)に対応する複数の異なる制御モードのそれぞれが車両サブシステムに対して適当である確度(確からしさ)を決定する。
ユーザが自動運転モード選択状況の中で車両の操作を選択したとき、車両制御ユニット10は、最も適当な制御モードを選択し、選択されたモードに基づいてサブシステムを制御するように自動的に構成される。本発明のこの態様は、本願出願人の同時係属中の英国出願第1111288.5号、第1211910.3号、および第1202427.9号に詳細に記載され、その開示内容はここに参考として一体のものとして統合される。
車両が走行している地形の性質は(選択された制御モードを参照して決定されるが)、LSPコントロールシステム12でも利用されて、車両車輪に加わる駆動トルクに対する適当な増減トルクが決定される。たとえば車両走行中の地形の性質に適していないLSP設定速度値(LSP_set-speed)をユーザが選択した場合、LSPコントロールシステム12は、車両車輪の速度を抑制することにより車両速度を自動的に調整(低減)するように動作可能である。いくつかの場合には、ユーザ選択速度が、たとえば特定の地形タイプ、特に不均一または凹凸の大きい地形タイプに対して実現できないか、または適当でないことがある。ユーザが選択した設定速度とは異なる設定速度をLSPコントロールシステム12が選択した場合、代替的な速度が設定されたことを示すために、LSPコントロール用HMI20を用いて、速度の制約に関する情報が視覚的にユーザに表示される。
車両制御ユニット10は、車両のピッチレートを示す信号を受信するように動作可能であり、ピッチレートとは、車両のピッチ姿勢(ピッチ高さ)が時間の関数として変化する割合である。いくつかの実施形態では、ピッチレートは、車両の重心等の車両の基準位置に対する横方向軸(すなわち東西方向軸)の周りの車両の回転速度(回転レート)に対応する。
車両制御ユニット10は、ピッチレートを周期的にモニタする。車両100の先端部が所定値を超えるレートで下方向に縦振れしたことを車両制御ユニット10が判断した場合、車両制御ユニット10は、車輪111,112,114,115に対するブレーキトルクの負荷を指令するように構成されている。本実施形態では、ブレーキトルクが4つの車輪のそれぞれに負荷される。いくつかの択一的な実施形態では、前輪の過剰なスリップを低減するために、ブレーキトルクは車両の後輪のみに負荷される。いくつかの実施形態では、ブレーキトルクは、4つの車輪のそれぞれに負荷されるものの、車両の前輪より後輪の方が大きなブレーキトルクが負荷される。その特徴は、依然として前輪において多少の制動効果が得られるとともに、前輪の過剰なスリップを低減する上で有用である。
いくつかの実施形態では、車両制御ユニット10は、ピッチレートがポットホール等の凹み(穴)に入り込んだ(嵌った)一方のみの前輪に起因するものか、両方の前輪111,112に起因するものか判断するように構成することができる。車両制御ユニット10は、ポットホールに嵌らなかった前輪に負荷されるブレーキトルクの大きさに比して、ポットホールに嵌った前輪に負荷されるブレーキトルクの大きさを(任意的あるが、実質的にゼロトルクとなるまで)低減するように動作することができる。他の構成も同様に有用である。いくつかの実施形態では、操舵コントローラ170Cにより検知される前輪に対する力をモニタすることにより、車両制御ユニット10は、車両100の一方または両方の前輪が障害物に衝突したか否か判断することができる。追加的または択一的に、車輪アーティキュレーションに関するデータ、横方向加速度、縦方向加速度、車両本体の車輪アーティキュレーションに関するデータ、横方向加速度、縦方向加速度、車両本体のロールレート、車両ヨーレート等の他のインジケータ(指標)を用いてもよい。理解されるように、いくつかの実施形態では、これらの測定事象のうちの1つまたはそれ以上のものを用いて、車両走行中の障害物の影響をモニタすることができる。
ブレーキトルクの負荷のトリガ(端緒)となる上記ピッチレートは、現時点で選択されている運転モードに応じて決定される。上述のように、運転モードはユーザがセレクタ141Sを用いて選択するか、または車両制御ユニット10により自動的に選択することができる。いくつかの実施形態では、ブレーキトルクをかけるトリガとなる上記ピッチレートは、さらにLSPコントロールシステム12またはHDCコントロールシステム12HD等の速度制御システムが動作しているか否かに基づいて決定してもよい。
図6は、車両制御ユニット10が検知したピッチレートPを時間tの関数で表したグラフと、検知されたピッチレート値に呼応して車両制御ユニット10が指令したブレーキトルクTBを示すグラフである。下向きの縦振れに対する2つのピッチレート閾値P1,P2が経時変化するピッチレートのグラフに重ねて表されている。ピッチレート閾値P1は、「砂」運転モードで走行している場合にブレーキを起動させる閾値に対応し、ピッチレート閾値P2は、「泥および轍」運転モードで走行している場合にブレーキを起動させる閾値に対応する。いくつかの択一的な実施形態では、ピッチレート閾値P1が「泥および轍」運転モードで走行している場合にブレーキを起動させる閾値に対応し、ピッチレート閾値P2が「砂」運転モードで走行している場合にブレーキを起動させる閾値に対応する。他の構成も同様に有用である。理解されるように、表面摩擦係数が比較的に小さく、相対的に滑りやすい地形におけるピッチレート閾値は、表面摩擦係数が比較的に大きい地形上を走行している場合に比して、より小さい値に設定してもよい。しかしながら、(「泥および轍」運転モードまたは「岩徐行」運転モードに対応する地形で経験されるような)比較的に凹凸の大きい表面上の許容可能なサスペンション・アーティキュレーションの大きさが、比較的に滑らかな地形の場合より小さい場合があるので、表面粗さも同様に考慮してもよい。
例示された実施例では、車両100は「砂」運転モードで走行している、したがって、車両制御ユニット10は、ピッチレートPが閾値P1を超えたと判断したとき、車両の加速度を制御または調整するために、ブレーキシステム22を用いてブレーキトルクTBを負荷するように指令する。車両制御ユニット10は、ブレーキ圧を増大させるように指令することにより、ブレーキトルクの増大を指令するように構成される。
図6から明らかなように、時刻t1において、下向きの縦振れ時のピッチレートが閾値P1を超えて大きくなっている。これにより車両制御ユニット10は、ブレーキシステム22が負荷するブレーキトルクTBの増大を指令する。ピッチレートが急激に増大したことに起因した車両の加速度を低減するために、ブレーキトルクTBを比較的に急激に増大させている。
時刻t2において、ピッチレートが閾値P1以下に小さくなる。本実施形態では、このとき、車両ドライバがブレーキペダル163を用いてブレーキ操作し、および/またはたとえばアクセルペダル161から足を離すことにより、パワートレインによる要求トルクを低減することができるように、車両制御ユニット10は、負荷されるブレーキトルクを徐々に低減し始める。いくつかの実施形態では、車両制御ユニット10は、ピッチレートが閾値P1以下まで低減した後、所定期間、増大したピッチレートに呼応したブレーキトルクTBを指令するように構成してもよい。
たとえば、いくつかの実施形態では、下向きの縦振れ時にピッチレートが閾値P1を超えて大きくなったことに呼応して、車両制御ユニット10がブレーキトルクTBを加える(負荷する)ように指令した場合、車両制御ユニット10は、車両100がピッチ高さを上方向に向きを変え始める時点を検出するために、車両のピッチ高さをモニタする。車両制御ユニット10は、車両100がピッチ高さを上方向に向きを変え始めたことを検出したとき、下向きの縦振れの検知に起因して指令した追加的なブレーキトルクを(任意的には、実質的にゼロまで)低減するように指令してもよい。すなわち理解されるように、車両制御ユニット10は、車両100の1つまたはそれ以上の前輪が窪み(凹み)または他の走行路面にある下方勾配の底に達したことを検知し、ブレーキトルクを解除して、車両100が継続的に推進できるように構成されている。
いくつかの実施形態では、車両制御ユニット10は、サスペンションシステムコントローラに指令することにより、車両のサスペンションシステムの硬さ(剛性)の変更を指令するように動作可能である。下向きの縦振れピッチ高さの変化率が現時点での運転モードに対応する一般的な閾値P1,P2を超えた場合、車両制御ユニット10は、ブレーキトルクTBを増大させるとともに、さらにサスペンションの硬さを増大させるように指令する。いくつかの実施形態では、車両制御ユニット10は、サスペンションの硬さの増大を指令するように構成されている。いくつかの択一的に実施形態では、車両制御ユニット10は、サスペンションの硬さの低減を指令するように構成されている。他の構成も同様に有用である。いくつかの実施形態では、追加的または択一的に、サスペンションシステムコントローラは、1つまたはそれ以上の車輪の減衰率(ダンパーレート)を変更してもよい。いくつかの実施形態では、追加的または択一的に、サスペンションシステムコントローラは、最低地上高を変更してもよい。
速度制御システムが動作状態で車両が駆動される場合、および速度制御システムが非動作状態で車両が駆動される場合、車両制御ユニット10は、ピッチレートをモニタし、ブレーキトルクTB(および、いくつかの実施形態ではサスペンションシステムの1つまたはそれ以上の設定値の変更)の負荷を指令するように動作可能である。すなわちHDCコントロールシステム12HD、LSPコントロールシステム12、およびクルーズコントロールシステム16が速度を制御するために選択されたか否かに拘わらず、車両制御ユニット10は、ピッチレートに基づいてブレーキトルクの負荷を指令するように動作可能である。他の構成も同様に有用である。いくつかの実施形態では、車両制御ユニット10は、HDCコントロールシステム12HDおよびLSPコントロールシステム12が動作状態にある場合のみ、ピッチレートに基づいてブレーキトルクの負荷を指令するように動作可能であってもよい。
いくつかの実施形態では、車両制御ユニット10は、車両100が前方走行している場合または後方移動している場合に、ピッチレートに基づいてブレーキトルクの負荷を指令するように動作可能であってもよい。車両100が後方移動している場合、車両100の後方部分が所定のピッチレートPを超えるレートで下方向に縦揺れしたとき、ブレーキトルクの増大を指令するように動作可能であってもよい。所定の運転モードにおける事前設定された(後方移動時の)ピッチレートPは、同一運転モードで前方走行時のピッチレートより小さくてもよい。択一的には、事前設定された(後方移動時の)ピッチレートPは、同一運転モードで前方走行時のピッチレートより大きいか、実質的に同じであってもよい。
いくつかの実施形態では、変更可能なピッチレートの閾値Pnを採用し、閾値Pnの値は、車両が牽引しているか否かについての判断、および車両の貨物の重量に応じて設定してもよい。理解されるように、車両が牽引していると判断した場合、車両および牽引される積載貨物の安定性を改善するために、より小さいピッチレートが採用される。同様に、ピッチレート閾値は、車両貨物の重量が増大するほど小さくしてもよい。すなわち比較的に重い貨物とともにオフロードを走行するとき、車両安定性を増大させることができる。いくつかの実施形態では、重い貨物を積載した状態で、走行路面の別の極端な変動を有するポットホール上の走破に起因して車両が受ける損傷リスクを低減することができる。
本発明に係るいくつかの実施形態によれば、車両のピッチ角の変動レート(変動率)、すなわちピッチレートに対応する信号を受信するように構成された制御システムが提供される。ピッチレートが車両の前方端部が下方向に縦揺れしていることを示す場合、このシステムは、ピッチレートに依存して車両の1つまたはそれ以上の車輪に加えるトルクの大きさを変化させるように指令することができる。いくつかの実施形態では、ピッチレートが事前設定された値を超えたとき、このシステムは、1つまたはそれ以上の車輪にブレーキをかけるように動作可能である。本発明のいくつかの実施形態は、走行路面がポットホール、沼、または轍等の比較的に突然のまたは急峻な下向きの勾配変化を示す地形特徴物に、車両の1つまたはそれ以上の前輪が直面したとき、車両速度が過剰に増大することを防ぐことができるといった利点を有する。いくつかの実施形態では、制御システムは、ブレーキシステムを利用して、車両を減速させるように構成することができる。この特徴は、こうした地形特徴物に対処する車両の速度を低減できるという利点を有する。したがって、車両の前輪が地形特徴物のより低い領域に達した後、その地形特徴物を登り始めるとき、ピッチレートに呼応して自動的にブレーキトルクをかけない場合に車両が受ける衝撃に比して、下り坂から上り坂への移行時に車両が受ける衝撃を緩和することができる。したがって、車両安定性および乗員快適性を改善することができる。さらに、車両の下側表面が地面に接触したときの車両の接地に起因する車両の損傷のリスクを低減することができる。
以下の番号付けされた段落を参照すると、本発明に係る態様および実施形態を理解することができる。
段落1:
複数の車輪を有する車両のための車両制御システムであって、
車両制御システムは、車両のピッチ角の変化率(ピッチレート)に相当する入力信号を受信するように動作可能であり、
車両制御システムは、ピッチレートに基づいて、複数の車輪のうちの少なくとも1つの車輪に与えるトルクの大きさの変更を指令するように動作可能である、車両制御システム。
段落2:
車両の前方端部が下向きに縦揺れしたとき、トルクの大きさの変更を指令するように動作可能である、段落1に記載の車両制御システム。
段落3:
車両の前方端部が所定のピッチレートを超えるピッチレートで下向きに縦揺れしたとき、複数の車輪のうちの少なくとも1つの車輪に与えるトルクの大きさの変更を指令するように動作可能である、段落2に記載の車両制御システム。
段落4:
車両の前方端部が所定のピッチレートを超えるピッチレートで所定期間を超える期間、下向きに縦揺れしたとき、複数の車輪のうちの少なくとも1つの車輪に与えるトルクの大きさの変更を指令するように動作可能である、段落2に記載の車両制御システム。
段落5:
車両の前方端部が所定のピッチレートを超えるピッチレートで所定の距離を超える距離、下向きに縦揺れしたとき、複数の車輪のうちの少なくとも1つの車輪に与えるトルクの大きさの変更を指令するように動作可能である、段落3に記載の車両制御システム。
段落6:
車両の加速を抑制するために、トルクの大きさの変更を指令するように動作可能である、段落1に記載の車両制御システム。
段落7:
所定のピッチレートは、車両が走行している地形のタイプに基づいて決定される、段落1に記載の車両制御システム。
段落8:
車両が走行している地形のタイプを示す1つまたはそれ以上の入力信号に基づいて地形のタイプを決定するように動作可能である、段落7に記載の車両制御システム。
段落9:
車両が走行している地形のタイプに関するユーザ入力信号に基づいて地形のタイプを決定するように動作可能である、段落7に記載の車両制御システム。
段落10:
車両の前方端部が所定のピッチレートを超えるピッチレートで所定期間を超える期間、下向きに縦揺れしたとき、複数の車輪のうちの少なくとも1つの車輪に与えるトルクの大きさの変更を指令するように動作可能であり、
所定期間は、地形のタイプを示す1つまたはそれ以上の入力信号に基づいて決定される、段落7に記載の車両制御システム。
段落11:
車両の前方端部が所定のピッチレートを超えるピッチレートで所定の距離を超える距離、下向きに縦揺れしたとき、複数の車輪のうちの少なくとも1つの車輪に与えるトルクの大きさの変更を指令するように動作可能であり、
所定の距離は、地形のタイプを示す1つまたはそれ以上の入力信号に基づいて決定される、段落7に記載の車両制御システム。
段落12:
それぞれ異なる地形のタイプに対して動作するように構成された1つまたはそれ以上の車両サブシステムが複数の運転モードのうちの1つの運転モードで動作するように車両を制御可能である、段落7に記載の車両制御システム。
段落13:
車両サスペンションシステムに関する1つまたはそれ以上のパラメータをピッチレートに少なくとも部分的に基づいて変更することを指令するように動作可能である、段落1に記載の車両制御システム。
段落14:
所定のピッチレートは、車両が走行している地形のタイプに基づいて決定され、
ピッチレートおよび地形のタイプに少なくとも部分的に基づいて、車両サスペンションシステムに関する1つまたはそれ以上のパラメータの変更を指令するように動作可能である、段落13に記載の車両制御システム。
段落15:
1つまたはそれ以上のパラメータは、車両サスペンションシステムの硬さを含む、段落13に記載の車両制御システム。
段落16:
目標速度値に基づいて車両を自動的に駆動させるように動作可能である、段落1に記載の車両制御システム。
段落17:
車両の1つまたはそれ以上の車輪に与えるトルクの大きさを制御することにより、目標速度値に基づいて車両を自動的に駆動させるように動作可能である、段落16に記載の車両制御システム。
段落18:
車両の1つまたはそれ以上の車輪にスリップが生じたことを検知したとき、目標速度値に基づいて車両を自動的に駆動させるように動作可能である、段落16に記載の車両制御システム。
段落19:
段落1に記載の車両制御システムを備えた車両。
段落20:
車両制御システムを用いて車両を制御する方法であって、
車両のピッチ角の変化率に相当する入力信号を受信するステップと、
ピッチレートに基づいて、車両の複数の車輪のうちの少なくとも1つの車輪に与えるトルクの大きさの変更を指令するステップとを有する、方法。
理解されるように、上記説明した実施形態は、単なる具体例であって、本発明を限定することを意図したものではなく、本発明の範囲は添付クレームにより定義される。
本願明細書の発明の詳細な説明及びクレームを通して、「備える(comprise)」および「含む(contain)」の用語、およびこれらの用語から派生した「備えた(comprising)」および「備え(comprises)」の用語は、「これらに限定することなく有する」という意味であり、その他の部分、付随物、成分、整数、またはステップを排除することを意図したものではない。
本願明細書の発明の詳細な説明及びクレームを通して、単数形は、文脈上要求されるものでなければ、複数形のものを含む。特に、不定冠詞を用いた場合には、文脈上要求されるものでなければ、単数形のみならず、複数形のものを含むものと理解すべきである。
本発明に係る特定の態様、実施形態、または実施例に関連して説明した特徴物、整数、特性、成分、化学成分、または化学塩基は、矛盾するものでなければ、任意の他の態様、実施形態、または実施例に適用可能であるものと理解すべきである。
10…車両制御ユニット(VCU)、11…パワートレインコントローラ、12…低速前進(LSP)コントロールシステム、12HD…ヒルディセントコントロール(HDC)、13…ブレーキコントローラ、14…スタビリティコントロールシステム(SCS)、16…クルーズコントロールシステム、18…クルーズコントロール用HMI、20…LSPコントロール用HMI、22…ブレーキシステム、28…コンパレータ、34…車両速度センサ、40…評価ユニット、100…車両、111,112…前輪、114,115…後輪、118…前輪ドライブシャフト、121…エンジン、124…トランスミッション、129…パワートレイン、130…ドライブライン、131…ドライブライン補助部、131P…パワートランスファーユニット(動力伝達装置)、132…プロペラシャフト、135…リアディファレンシャル(後輪差動装置)、137…フロントディファレンシャル(前輪差動装置)、139…リアドライブシャフト、161…アクセルペダル、163…ブレーキペダル、170C…ステアリングコントローラ、171…操舵ハンドル、172…LSPコントロールシステム選択ボタン、173〜175…入力ボタン、173R…再開ボタン、174…「+」ボタン、175…「−」ボタン、176…クルーズコントロール選択ボタン。
本発明は、車両の速度を制御するためのシステムに関する。とりわけ、これに限定するものではないが、本発明は、数多くのさまざまな特有の(異なる極端な)地形上で走行することができる陸上車両の速度を制御するためのシステムに関する。本発明の態様は、システム、方法および車両に関する
凹凸路面またはオフロード条件で車両を走行させるとき、走行路面の勾配の比較的に激しい変化を示す地形的な特徴構造物(地形特徴物)に直面することがある。たとえば、車両がポットホール(深い穴)、クレータ(凹み)、トレンチ(深くて細長い溝)、または段差等の地形特徴物上を走行しているとき、下方急勾配に直面することがある。こうした地形特徴物に直面すると、一方または両方の先頭車輪(前輪)勾配を下り始めるとき、車両は比較的に突然に大きな加速度を受けることがある。車両が下り坂を走行し終えるまでに、加速度が急激に増大した後に、加速度が急激に減少することがある。ポットホールまたはトレンチ等の場合、車両は、比較的に急峻な上り坂に直面し、地形特徴物から脱出するように切り抜ける必要がある。こうした地形特徴物に直面するとき、車両の安定性に悪影響を与え、乗員に不快感をもたらすことがある。
クルーズコントロールシステムと一般に呼ばれる車両速度制御システムが提供されていることが知られている。こうしたシステムにおいて、ユーザの運転体感を改善するために、ユーザがさらに操作しなければ、ユーザが設定した車両速度を維持するものである。
ユーザは維持すべき車両速度を選択し、ブレーキ、またはいくつかのシステムではクラッチを操作しない限り、車両はその速度を維持する。クルーズコントロールシステムは、ドライブシャフトまたは車輪に設けた速度センサからの速度信号を用いる。ブレーキーペダルまたはクラッチペダルが踏み込まれると、クルーズコントロールシステムは動作しなくなり、システムからの抵抗を受けることなく、ユーザは車両速度を変更することができる。ユーザがアクセルペダルを踏み込むと、車両速度は増大するが、ユーザの足がアクセルペダルから離れると、車両速度は事前設定されたクルーズ速度に戻る。より洗練されたクルーズコントロールシステムは、エンジン制御システムに組み込まれ、レーダ搭載システムを用いて前方にある車両までの距離を考慮した適応機能を有するものであってもよい。車両は、ユーザが入力する必要なく、前方にある車両の速度および距離を検知して、安全な後続速度および車間距離を自動的に維持するために、たとえば前向きレーダ検知システムを有してもよい。前方車両が減速した場合、またはレーダ検知システムが別の対象物を検知した場合、このシステムは、これに応じて、エンジンまたはブレーキシステムに減速するように信号を送信する。
こうしたシステムは、通常、車両速度が典型的には15マイル/時以上の所定速度より大きく、安定した交通状況(特に、高速道路や自動車道路)で走行する理想的な環境にある場合にのみ動作可能である。しかしながら、交通渋滞状況においては、車両速度は大きく変動する傾向があり、とりわけ最低速度条件を満たさないため、クルーズコントロールシステムは機能しない。たとえば駐車時、低速追突の可能性を低減するために、クルーズコントロールシステムには最低速度条件が適用される場合が多い。したがって、こうしたクルーズコントロールシステムは、特定の運転状況において動作せず、ユーザが好ましいとは考えない状況でも自動的に動作不能に制御される。
1つまたはそれ以上の車両サブシステムを制御するための動力車両用制御システムが提供されることが知られている。ここに一体のものとして参考に統合される米国特許第7,349,776号には、車両制御システムが開示され、この車両制御システムは、エンジン制御システムを含む複数のサブシステムコントローラ、トランスミッションコントローラ、ステアリングコントローラ、ブレーキコントローラ、およびサスペンションコントローラを備える。サブシステムコントローラのそれぞれは、複数のサブシステム機能モードで動作可能である。サブシステムコントローラは、車両のための数多くの運転モードを提供するために必要な機能モードを実現するようにサブシステムコントローラを制御する車両モードコントローラに接続されている。各運転モードは、1つまたは一連の特定の運転状況に対応し、各運転モードにおいて、サブシステムは、こうした運転状況に最も適した機能モードに設定される。こうした運転状況は、車両が「特別プログラムオフモード(SPオフモード)」として知られる草/砂利/雪モード、泥/轍モード、岩徐行モード、砂モード、高速道路モードで走行する地形タイプに関連する。車両モードコントローラは、「テレイン・レスポンス(登録商標、TR、地形応答)」システムまたはコントローラとも呼ばれている。
本発明の実施形態は、添付クレームを参照して理解することができる。本発明の態様は、システム、車両、および方法に関する。
保護を求める本発明の1つの態様によれば、複数の車輪を有する車両のための車両制御システムが提供され、この車両制御システムは、車両のピッチ角の変化率(ピッチレート)に相当する入力信号を受信するように動作可能であり、ピッチレートに基づいて、複数の車輪のうちの少なくとも1つの車輪に与えるトルクの大きさを変更するためにブレーキトルクの負荷を指令するように動作可能であり、さらに車両の前方端部が所定のピッチレートを超えるピッチレートで下向きに縦揺れしたとき、複数の車輪のうちの少なくとも1つの車輪に与えるトルクの大きさの変更を指令するように動作可能である。
本発明に係る実施形態は、車両安定性および乗員快適性を改善するような手法で車両を制御することができるといった利点を有する。
本発明は、たとえば車両が急峻な勾配を急激に下降し始めたことを示す所定のピッチレートを超えるとシステムが判断したとき、このシステムが1つまたはそれ以上の車輪に与えるトルクの大きさを低減できるといった利点を有する。これにより、車両が勾配を下降するときのピッチレートを低減する効果が得られる。こうして車両安定性および乗員快適性を改善することができ、いくつかの状況において、車両に対する損傷を低減または回避することができる。たとえば、車両がポットホール、ピット、トレンチ、またはその他の走行路面にある比較的に突然の凹みを横断し始めるとき、制御システムは、車両を減速して、車両が凹みに入るピッチレートを低減することができる。
ピッチレートに関する信号は、縦方向加速度、車輪速度、および/または運転路面勾配に関する1つまたはそれ以上の信号に加えて生成された信号であってもよい。本発明の実施形態は、車両が前方または後方に移動しているときに動作するように構成してもよい。
この制御システムは、車両の前方端部が所定のピッチレートを超えるピッチレートで所定期間を超える期間、下向きに縦揺れしたとき、複数の車輪のうちの少なくとも1つの車輪に与えるトルクの大きさの変更を指令するように動作可能であってもよい。
この制御システムは、車両の前方端部が所定のピッチレートを超えるピッチレートで所定の距離を超える距離、下向きに縦揺れしたとき、複数の車輪のうちの少なくとも1つの車輪に与えるトルクの大きさの変更を指令するように動作可能であってもよい。
この制御システムは、車両の加速を抑制するために、トルクの大きさの変更を指令するように動作可能であってもよい。
車両の加速を抑制するようにトルクの大きさを変更することとは、意図した移動方向に車両を推進するために与えたトルクの大きさを低減するということを意味し、車両の走行方向とは反対の方向のトルクが与えられるように反転させるということを意味する。
すなわち車両のパワートレインが車両を走行させるために1つまたはそれ以上の車輪に正のトルクを与えた場合、正のトルクの大きさをより小さい正の値、実質的にはゼロ、または負の値に低減してもよい。たとえばエンジン圧縮ブレーキ、またはたとえば発電機として機能するときの電気マシンを用いて、負のトルクを与えてもよい。
理解されるように、内燃機関としてのエンジンで動力を得る車両と同様、ハイブリッド電気車両および電気車両において、本発明に係る実施形態は有用である。
追加的または択一的に、摩擦ブレーキシステム等の基礎ブレーキシステムを用いて、負のトルクを加えてもよい。典型的には、たとえばエンジン圧縮ブレーキによるパワートレインを介して負のトルクを与える場合に比べた場合、エンジン等のパワートレイン構成部品の慣性に部分的に起因するが、基礎ブレーキシステムを用いて負のトルクを迅速に加えることができるといった利点がある。
このシステムがトルクの大きさの変更を指令するときに、すでにパワートレインが負のトルクを与えている場合、パワートレインにより与えられる負のトルクの大きさ(絶対値)が負の方向により大きくしてもよい。
パワートレインのトルク変更に加え、またはこれに代えて、ブレーキシステムは、1つまたはそれ以上の車輪に負のトルクを与えるように指令されてもよい。
たとえば車両が坂道を下っており、速度制御システムがブレーキシステムを用いて車両を減速させる場合、ブレーキシステムにより加えられるブレーキトルクの大きさは、車両のピッチレートに基づいて増大させてもよい。たとえばピットホールまたは轍等により車両が急峻な下方勾配に直面して、勾配を下るとき、負のトルクを増大させることにより、車両の急激な加速を実質的に防止または低減することができる。所定のピッチレートは、車両が走行している地形のタイプに基づいて決定してもよい。
この制御システムは、車両が走行している地形のタイプを示す1つまたはそれ以上の入力信号に基づいて地形のタイプを決定するように動作可能であってもよい。
この制御システムは、車両が走行している地形のタイプに関するユーザ入力信号に基づいて地形のタイプを決定するように動作可能であってもよい。
すなわち、いくつかの実施形態では、特定の地形タイプを指定するために、たとえばコントロールダイヤルまたはコントロールボタンを介してユーザから信号が入力されてもよい。択一的には、たとえば表面摩擦係数、路面上の凹凸、および/または1つまたはそれ以上のパラメータに関するデータに呼応して、制御システムが地形タイプを自動的に判断してもよい。このデータは、システムに付随する1つまたはそれ以上のセンサから受信してもよい。択一的には、このデータは、たとえばコントローラ・エリア・ネットワーク(CAN)バス等を介して1つまたはそれ以上の車両システムから受信してもよい。他の構成も同様に有用である。
すなわち制御システムは、ピッチレートが所定のピッチレートを超えてことに呼応してトルクの大きさの変更を指令するように動作可能であってもよく、所定のピッチレートは、地形タイプに基づいて設定される。
所定の期間は、地形タイプを示す1つまたはそれ以上の入力信号に基づいて決定してもよい。
所定の距離は、地形のタイプを示す1つまたはそれ以上の入力信号に基づいて決定してもよい。
制御システムは、それぞれ異なる地形のタイプに対して動作するように構成された1つまたはそれ以上の車両サブシステムが複数の運転モードのうちの1つの運転モードで動作するように車両を制御可能であってもよく、運転モードは地形タイプに基づいて選択される。
すなわち、草、砂利、または雪のタイプに対して特定される地形上で車両を駆動するために「草/砂利/雪」運転モードを選択してもよい。砂のタイプに対して特定される地形上で車両を駆動するために「砂」運転モードを選択してもよい。
理解されるように、運転モードおよび所定のピッチ変化率(縦揺れ変化率)はともに、地形タイプに基づいて決定してもよい。上述のように、いくつかの実施形態では、地形タイプはユーザが設定してもよい。いくつかの実施形態では、追加的または択一的に、このシステムは、動作可能であってもよい。車両が地形タイプを自動的に検知し、これに応じて運転モードおよびピッチ変化率を自動的に決定してもよい。
制御システムは、車両サスペンションシステムに関する1つまたはそれ以上のパラメータをピッチレートに少なくとも部分的に基づいて変更することを指令するように動作可能であってもよい。
制御システムは、ピッチレートおよび地形のタイプに少なくとも部分的に基づいて、車両サスペンションシステムに関する1つまたはそれ以上のパラメータの変更を指令するように動作可能であってもよい。
1つまたはそれ以上のパラメータは、車両サスペンションシステムの硬さを含む。
制御システムは、目標速度値に基づいて車両を自動的に駆動させるように動作可能であってもよい。すなわち制御システムは、速度制御を実行するように動作可能であってもよい。すなわち、いくつかの実施形態では、制御システムが車両速度を制御するとき、車両のピッチ変化率(ピッチレート)が所定値を超えると、制御システムは、ピッチレートに基づいたトルク変更を指令してもよい。
目標速度値は、設定速度値ともいう。
制御システムは、目標速度値に実質的に等しい速度で車両を走行させるように動作可能であってもよい。いくつかの実施形態では、制御システムは、地形タイプ、検出された路面凹凸、または他の任意の適当なパラメータ等の1つまたはそれ以上のパラメータに基づいて車両速度の最大許容値に対する上限値を設定してもよい。すなわち制御システムは、車両速度の上限値で走行させるように車両を駆動する場合、車両速度の上限値が目標速度値以上であれば、目標速度値で車両を駆動させてもよい。
制御システムは、車両の1つまたはそれ以上の車輪に与えるトルクの大きさを制御することにより、目標速度値に基づいて車両を駆動させるように動作可能であってもよい。
制御システムは、車両の1つまたはそれ以上の車輪にスリップが生じたことを検知したとき、目標速度値に基づいて車両を継続的に駆動させるように動作可能であってもよい。
すなわち制御システムは、1つまたはそれ以上の車輪にスリップが生じた場合でも車両速度の制御を停止(中止)しない。むしろ制御システムは、1つまたはそれ以上の車輪に生じたスリップを積極的に制御するように構成してもよい。これは、1つまたはそれ以上の車輪のスリップを検知したときに車両速度制御を自動的に中止する既知のクルーズコントロールシステムとは対照的なものである。たとえば電子的安定性制御システム(ESC)、動的安定性制御システム(DSC)、または牽引制御システム(TCS)を用いて、スリップを検知し、クルーズコントロールシステムによる車両速度制御を中止する。
保護を求める本発明の別の態様によれば、上記態様に係る制御システムを備えた車両が提供される。
保護を求める本発明のさらに別の態様によれば、制御システムを用いて車両を制御する方法が提供され、この方法は、車両のピッチ角の変化率に相当する入力信号を受信するステップと、車両の前方端部が所定のピッチレートを超えるピッチレートで下向きに縦揺れしたとき、車両の複数の車輪のうちの少なくとも1つの車輪に与えるトルクの大きさを変更するためにブレーキトルクの負荷を指令するステップとを有する。
クレームの範疇において、上記段落、クレーム、および/または以下の明細書および図面に記載された、さまざまな態様、実施形態、実施例、および択一例、特に個々の特徴物は、独立してまたは組み合わせて採用することができる。たとえば1つの実施形態に関連して説明された特徴物は、その特徴物が矛盾するものでなければ、すべての実施形態に適用することができる。
単なる具体例として以下の図面を参照しながら、本発明に係る1つまたはそれ以上の実施形態を以下説明する。
本発明の実施形態に係る車両の概略的な平面図である。
図1の車両の側面図である。
本発明の実施形態に係る車両速度制御システムを相当に概略的に示し、このシステムは、クルーズコントロールシステムおよび低速推進コントロールシステムを含むものである。
図3のクルーズコントロールシステムのさらなる特徴を示す概略図である。
本発明の実施形態に係る車両の操舵ハンドル(ステアリングホイール)およびブレークペダルならびにアクセルペダルを示す。
時間の関数としてのピッチレートと、ピッチレートの変化に応じて要求された対応ブレーキトルクとを示すグラフである。
本願明細書において、機能ブロック等のブロックは、1つまたはそれ以上の入力に応答して得られる1つの出力で特定される機能または動作を実行するソフトウェアコードを含むものと理解すべきである。ソフトウェアコードは、メインコンピュータプログラムで呼び出されるソフトウェアルーチンまたはソフトウェア機能の形態を有するか、または独立したソフトウェアルーチンまたはソフトウェア機能ではないソフトウェアコードのフローの一部を構成するコードであってもよい。本発明の実施形態の動作方法の説明を容易にするために、機能ブロックを参照する。
図1は、本発明の1つの実施形態に係る車両100を示す。車両100はパワートレイン129を備え、パワートレインは、オートマ(自動)トランスミッション124を有するドライブライン130に接続されるエンジン121を有する。また理解されるように、本発明の実施形態は、マニュアルトランスミッション、無段変速可能トランスミッション、または任意の他の適当なトランスミッションを備えた車両に利用されるのに適したものである。
ドライブライン130は、フロント(前輪)ディファレンシャル(差動装置)137および一対のフロント(前輪)ドライブシャフト118を用いて、一対の車両前輪111,112を駆動するように構成されている。ドライブライン130は、補助ドライブシャフトすなわちプロペラシャフト132、リア(後輪)ディファレンシャル135、および一対のリアドライブシャフト139を用いて、一対の後輪114,115を駆動するように構成されたドライブライン補助部131を備える。本発明の実施形態は、(前輪駆動車もしくは後輪駆動車)一対の前輪または一対の後輪のみを駆動する車両、または二輪/四輪駆動を選択できる車両に利用される上で適したものである。図1の実施形態において、トランスミッション124は、パワートランスファーユニット(PTU:動力伝達装置)131Pを介して、ドライブライン補助部131に離脱可能に接続することができる。本発明の実施形態は、4つ以上の車輪を有する車両、たとえば三輪車両または四輪車両の2つの車輪だけが駆動される車両、または4つ以上の車輪を有する車両に適したものであってもよい。
車両エンジン121のための制御システムは、車両制御ユニット(VCU)10と呼ばれる中央コントローラと、パワートレインコントローラ11、ブレーキコントローラ13、およびステアリングコントローラ170Cを有する。ブレーキコントローラ13は、ブレーキシステム22(図3)の一部を構成する。車両制御ユニット10は、車両に搭載されたさまざまなセンサおよびサブシステム(図示せず)の間で複数の信号を送受信する。車両制御ユニット10は、図3に示す低速前進(LSP)コントロールシステム12と、スタビリティコントロールシステム(SCS:安定化制御システム)14を備える。スタビリティコントロールシステム14は、牽引力(車輪と走行面との間の静止摩擦力)の損失を検知し、調整することにより、車両100の安全性を改善するものである。牽引力の低減または操舵制御の低下が検知されると、スタビリティコントロールシステム14は、ブレーキコントローラ13に自動的に要求して、車両の1つまたはそれ以上のブレーキをかけ、ユーザが運転したい方向に車両100を操縦しやすくするように動作することができる。図示された実施形態では、スタビリティコントロールシステム14は、車両制御ユニット10により実現されている。いくつかの択一的な実施形態では、スタビリティコントロールシステム14は、ブレーキコントローラ13により実現されている。さらに択一的には、スタビリティコントロールシステム14は、別体のコントローラにより実現してもよい。
図3には詳細には図示されていないが、車両制御ユニット10は、ダイナミックスタビリティコントロール(DSC:動的安定化制御)機能ブロック、トラクションコントロール(TC:牽引力制御)機能ブロック、アンチロックブレーキシステム(ABS)機能ブロック、およびヒルディセントコントロール(HDC)機能ブロックを有する。これらの機能ブロックは、車両制御ユニット10のコンピュータデバイスにより実行されるソフトウェアコードとして実現され、たとえば車輪スリップ事象が生じた場合、DSCアクティビティ(DSC起動状態)、TCアクティビティ、ABSアクティビティ、各車輪に対するブレーキ動作、およびエンジントルクリクエスト(エンジントルク出力要求)を示す信号を、車両制御ユニット10からエンジン121に出力する。上記アクティビティを示す信号のそれぞれが、車輪スリップ事象が生じたことを示す。ロールスタビリティコントロールシステム(ロール安定化制御システム)等の他の車両サブシステムも同様に有用である。
上述のように、車両100はクルーズコントロールシステム16を備え、このシステムは、車両が25km/時を超える速度で走行しているとき、選択された速度に車両速度を自動的に維持するように動作可能である。クルーズコントロールシステム16にはクルーズコントロール用ヒューマンマシンインターフェイス(HMI)が設けられ、これを用いてユーザは既知の手法で目標車両速度をクルーズコントロールシステム16に入力する。本発明の1つの実施形態では、クルーズコントロールシステムの入力制御部は、操舵ハンドル171に取り付けられている(図5)。クルーズコントロールシステム選択ボタン176を押すことにより、クルーズコントロールシステム16を作動させることができる。クルーズコントロールシステム16を作動させた後、「設定速度」制御部173を押すと、クルーズコントロール設定速度パラメータ(cruise_set-speed)の値を、現時点での車両速度に設定する。「+」ボタン174を押すと、クルーズコントロール設定速度パラメータ(cruise_set-speed)の値を増大させ、「−」ボタン175を押すと、クルーズコントロール設定速度パラメータ(cruise_set-speed)の値を低減させることができる。再開ボタン173Rは、ドライバがクルーズコントロールを解除した直後の瞬間の値で速度制御再開するようにクルーズコントロールシステム16を制御するように動作可能である。理解されるように、このシステム16を含むハイウェイ用クルーズコントロールシステムは、ユーザがブレーキを踏み込んだとき、またはマニュアルトランスミッションを用いた場合にはユーザがクラッチを踏み込んだとき、クルーズコントロール機能は解除され、車両100は、マニュアル動作モードに戻り、マニュアル動作モードで車両速度を維持するためには、ユーザがアクセルペダルを踏み込んでいることが必要となる。さらに、車輪スリップ事象が牽引力の損失等により検知されると、クルーズコントロール機能は解除される。再開ボタン173Rを押し続けると、クルーズコントロールシステム16による速度制御が再開される。
クルーズコントロールシステム16は、車両速度をモニタして、目標車両速度から逸脱すると、車両速度が(典型的には、25km/時を超える)実質的に一定の速度となるように、車両速度を自動的に調整する。換言すると、クルーズコントロールシステムは、25km/時以下の速度では機能しない。クルーズコントロール用HMI18は、クルーズコントロールシステム16の状況について、HMI18の画像ディスプレイを介してユーザに警告を与えてもよい。本実施形態では、クルーズコントロールシステム16は、クルーズコントロール設定速度パラメータ(cruise_set-speed)の値を25km/時〜150km/時の範囲の任意の値に設定できるように構成されている。
低速前進(LSP)コントロールシステム12は、ユーザが要求するペダル入力がなくても、車両が前進できるような極めて遅い目標速度をユーザが選択できるような速度依存式の制御システムを提供する。この低速の速度制御(すなわち低速前進制御)の機能は、速度が25km/時を超えるときのみ動作するハイウェイ用クルーズコントロールシステム16により提供されるものではない。
低速前進(LSP)コントロールシステム12は、操舵ハンドル171上に取り付けられたLSPコントロールシステム選択ボタン172を用いて起動される。このシステム12は、車両100を所望速度に維持するために、車両100の1つまたはそれ以上の車両の車輪に対して全体的または個別的に、パワートレイン制御、トラクション制御、およびブレーキ動作を選択的に行う。
低速前進(LSP)コントロールシステム12は、ユーザが、LSPコントロール用HMI(LSP HMI、図1および図3)20を用いて、所望のクルーズコントロール設定速度パラメータ(cruise_set-speed)の値を入力できるように構成されており、LSPコントロール用HMI20は、クルーズコントロールシステム16およびヒルディセントコントロール(HDC)12HDと、特定の入力ボタン173〜175を共用する。車両速度は、低速前進コントロールシステムの動作可能範囲(他の範囲も有用であるが、本実施形態では2km/時〜30km/時の範囲)にあって、低速前進コントロールシステム12は、クルーズコントロール設定速度パラメータ(cruise_set-speed)の値に基づいて車両速度を制御する。ハイウェイ用クルーズコントロールシステム16とは異なり、低速前進コントロールシステム12は、牽引力事象とは関係なく動作するように構成され、すなわちシステム12は、車輪スリップが検知されても速度制御を中止しない。むしろ、低速前進コントロールシステム12は、車輪スリップが検知されたときの車両の挙動を積極的に調整するものである。
LSPコントロール用HMI20は、ユーザが容易に操作できるように、車両キャビン内に設けられている。車両100のユーザは、LSPコントロール用HMI20を介して、ハイウェイ用クルーズコントロールシステム16と同様の手法により「設定速度」ボタン173および「+」ボタン174ならびに「−」ボタン175を用いて、ユーザが所望する車両の走行速度(「目標速度」という。)を示す信号を低速前進コントロールシステム12に入力することができる。LSPコントロール用HMI20は、画像ディスプレイを有し、低速前進コントロールシステム12の状態に関する情報およびガイダンス(案内)を画像ディスプレイ上で表示することができる。
低速前進コントロールシステム12は、ユーザがブレーキペダル163を用いてブレーキをかけた程度(度合)を示す入力信号を、車両のブレーキシステム22から受信する。また低速前進コントロールシステム12は、ユーザがアクセルペダル161を踏み込んだ程度(度合)を示す入力信号を、アクセルペダル161から受信する。同様に、トランスミッションまたはギアボックス124からの入力信号が低速前進コントロールシステム12に入力される。この入力信号は、たとえばギアボックス124の出力シャフトの速度、トルクコンバータのスリップ、およびギア比リクエストを示す信号が含まれる。低速前進コントロールシステム12に対する他の入力信号は、クルーズコントロール用HMI18から入力されるクルーズコントロールシステム16の(ON/OFF)の状態を示す入力信号、およびLSPコントロール用HMI20から入力される入力信号を含む。
車両制御ユニット(VCU)10のヒルディセントコントロール(HDC)機能ブロックは、ヒルディセントコントロール(HDC)システム12HDの一部を構成する。ヒルディセントコントロールシステム12HDは、動作中、ユーザにより設定可能なHDC設定速度パラメータ(HDC_set-speed)の値に相当する速度に車両速度を制限するために、(ABS機能ブロックの一部を構成する)ブレーキシステム22を制御する。HDC設定速度パラメータ(HDC_set-speed)は、HDC目標速度ともいう。ヒルディセントコントロール(HDC)システムの動作中、ユーザがアクセルペダルを踏み込むことにより、HDCシステムを解除しなかった場合、ヒルディセントコントロールシステム12HDは、車両速度がHDC設定速度(HDC_set-speed)を超えないように制御する。本実施形態では、ヒルディセントコントロールシステム12HDは、正の駆動トルクを与えるように動作することはできない。むしろヒルディセントコントロールシステム12HDは、負のブレーキトルクを与えるように動作することしかできない。
ヒルディセントコントロール(HDC)用HMI20HDには、ユーザがヒルディセントコントロールシステム12HDを制御する(HDC設定速度(HDC_set-speed)の値の設定を含む)ための手段が設けられている。HDCシステム選択ボタン177が操舵ハンドル171上に取り付けられ、ユーザは、HDCシステム選択ボタンを用いてHDCシステム12HDを起動して車両速度を制御することができる。
上述のように、HDCシステム12HDは、ユーザがクルーズコントロールシステム16および低速前進コントロールシステム12と同一の制御部を用いて、HDC設定速度パラメータ(HDC_set-speed)の値を設定し、調節することができるように動作可能である。すなわち本実施形態では、HDCシステム12HDが車両速度を制御するとき、HDC設定速度を増減させ、あるいはクルーズコントロールシステム16および低速前進コントロールシステム12の設定速度と同様、同一の制御ボタン173,173R,174,175を用いて、車両の瞬間的な速度に設定することができる。HDCシステム12HDは、HDC設定速度パラメータ(HDC_set-speed)の値を2km/時〜30km/時の範囲の任意の値に設定できるように動作可能である。
車両100が50km/時以下で走行しているときにHDCシステム12HDが選択され、その他の速度制御システムが動作していない場合、HDCシステム12HDは、参照テーブルから選択された値を、HDC設定速度パラメータ(HDC_set-speed)の値に設定する。参照テーブルから出力された値は、現時点で選択されたトランスミッションギア、現時点で選択されたパワートランスファーユニット(PTU)のギア比(Hi/Lo)、および現時点で選択された運転モードに応じて決定される。そしてユーザがアクセルペダルを踏み込むことにより、HDCシステム12HDを解除しなかった場合、HDCシステム12HDは、車両100を減速させるように、パワートレイン129および/またはブレーキシステム22を制御する。HDCシステム12HDは、最大許容可能レートを超えない減速度で設定速度値まで車両を減速させるように構成されている。本実施形態では、減速度は1.25m/s2に設定されるが、他の値も同様に有用である。ユーザが「設定速度」ボタン173を連続的に押した場合、現時点の車両速度が30km/時以下であるならば、HDCシステム12HDは、HDC設定速度の値を現時点の車両速度に設定する。車両100が50km/時を超える速度で走行しているときにHDCシステム12HDが選択された場合、HDCシステム12HDは、リクエスト(HDCシステムを選択する要求)を却下し、そのリクエストが却下されたことをユーザに提示する。
理解されるように、車両制御ユニット(VCU)10は、上記説明したような既知のテレイン・レスポンス(登録商標、TR、地形応答)システムを実現するように構成され、車両制御ユニット10は、選択された運転モードに依存して、1つまたはそれ以上の車両システムまたはパワートレインコントローラ11等のサブシステムの設定値を制御する。運転モードは、運転モードセレクタ141S(図1)を用いて選択することができる。運転モードとは、地形モード、地形応答モード、または制御モードとも呼ばれる。図1の実施形態において、比較的に硬く、路面と車両車輪との間の摩擦係数が比較的に大きく、滑らかな運転路面上の走行に適した「ハイウェイ」運転モードと、砂地地形上の運転に適した「砂地」運転モードと、草、砂利、または雪の上の走行に適した「草、砂利、または雪」運転モードと、岩石の多い表面上をゆっくりとした走行に適した「岩徐行」運転モードと、泥まみれで轍の多い地形上を徐行走行するのに適した「泥または轍」運転モードとを含む5つの運転モードが提供される。追加的または択一的な他の運転モードが提供されてもよい。
いくつかの実施形態において、低速前進(LSP)コントロールシステム12は、動作状態、スタンバイ状態、および「非動作」状態のいずれかの状態にある。LSPコントロールシステム12は、動作状態にあるとき、パワートレインのトルクおよびブレーキシステムのトルクを制御することにより車両速度を積極的に制御する。LSPコントロールシステム12は、スタンバイ状態にあるとき、ユーザが再開ボタン173Rまたは「設定速度」ボタン173を押すまで車両速度を制御しない。LSPコントロールシステム12は、非動作状態にあるとき、LSPコントロールシステムセレクタボタン172が押されるまで、制御部に対する入力信号に応答しない。
また本実施形態では、LSPコントロールシステム12は、動作モードの状態と同様での中間的な状態を実行するように動作可能である。ただし、この中間的な状態では、車両100の1つまたはそれ以上の車輪にパワートレイン129から正の駆動トルクを加えるようにLSPコントロールシステム12による命令が阻止される。すなわち、ブレーキシステム22および/またはパワートレイン129を用いて、ブレーキトルクのみが与えられる。他の構成も同様に有用である。
LSPコントロールシステム12が動作状態にあるとき、ユーザは「+」ボタン174および「−」ボタン175を用いて車両の設定速度を増減させることができる。さらにユーザは、アクセルペダル161またはブレーキペダル163を軽く踏むことにより、車両の設定速度を増減させることができる。いくつかの実施形態では、LSP設定速度(LSP_set-speed)の値をアクセルペダル161またはブレーキペダル163のみを用いて調節することができるように、「+」ボタン174および「−」ボタン175は動作不能である。動作不能とする上記特徴により、たとえば「+」ボタン174および「−」ボタン175を偶発的に押したことにより、設定速度が意図せず変更されることを防止することができる。偶発的なボタンの押下は、操縦困難な地形路面上を運転していて、操舵ハンドルの角度を比較的に大きく頻繁に変える必要がある場合に生じる。他の構成も同様に有用である。
理解されるように、本実施形態に係るLSPコントロールシステム12は、他の値も同様に有用ではあるが、クルーズコントロールシステムが25km/時〜150km/時の範囲の設定速度値に従って車両を走行させるように動作可能である一方、LSPコントロールシステム12が2km/時〜30km/時の範囲の設定速度値に従って車両を走行させるように動作可能である。車両速度が30km/時を超えるが、実質的に50km/時以下であるときにLSPコントロールシステム12が選択された場合、LSPコントロールシステム12は中間的なモードを実行する。中間的なモードでは、車両速度が30km/時を超えるときに、ドライバがアクセルペダル161から足を離した場合、LSPコントロールシステム12は、LSP設定速度パラメータ(LSP_set-speed)の値に相当する設定速度値まで車両100を減速させるようにブレーキシステム22を制御する。車両速度が30km/時以下となったとき、LSPコントロールシステム12は、LSP設定速度パラメータ(LSP_set-speed)の値に従って車両を制御するように、パワートレイン129を介して正の駆動トルクを加えるとともに、パワートレイン129を用いて(エンジンブレーキを用いて)およびブレーキシステム22を用いて制動トルクを与えるように動作可能な動作状態に移行する。LSP設定速度パラメータ(LSP_set-speed)の値が設定されなければ、LSPコントロールシステム12は、スタンバイモードに移行する。
理解されるように、LSPコントロールシステム12が動作モードにあるとき、クルーズコントロールシステム16の動作が禁止(抑制)される。したがって、これら2つのシステム12,16は、車両が走行している速度に依存して、常に互いに対して独立して動作することができる。
いくつかの実施形態では、たとえば、低速前進コントロール用の入力信号とクルーズコントロール用の入力信号とを切り換えるための1つまたはそれ以上の独立したスイッチが設けられているとき、選択速度を同一のハードウェアを用いて入力できるように、クルーズコントロール用HMI18およびLSPコントロール用HMI20は、同一のハードウェア内に構成することができる。
図4は、LSPコントロールシステム12内で車両速度を制御する手段を示す。上述のように、ユーザが選択した速度(設定速度)は、LSPコントロール用HMI20を用いてLSPコントロールシステム12に入力される。パワートレイン129に付随する車両速度センサ34(図1に示す)は、車両速度を示す信号36をLSPコントロールシステム12に出力する。LSPコントロールシステム12は、ユーザが選択した設定速度(「目標速度」38ともいう。)を測定した速度36と比較して、比較結果を示す信号30を出力するコンパレータ28を有する。出力信号30は、車両制御ユニット10の評価ユニット40に送信され、評価ユニットは、LSP設定速度(LSP_set-speed)を維持するためには車両速度を増大させるべきか、または低減させるべきかに応じて、車両の車輪111〜115に追加的なトルクを加えるように要求するものか、車両の車輪111〜115にかかるトルクを減らすように要求するものかについて出力信号30を評価する。一般に、トルクの増大は、パワートレインの所与の部位(たとえばエンジン出力シャフト、車輪、または任意の適当な部位)に供給されるパワートレイントルクの大きさの増大を伴うものである。また、車輪に対するより小さい正のトルクまたはより大きい負のトルクへの低減は、車輪に供給されるパワートレイントルクの大きさの低減または車輪にかかるブレーキ力の増大を伴うものである。理解されるように、パワートレイン129が発電機として機能する電気マシンを有するいくつかの実施形態では、パワートレイン129が電気マシンを介して1つまたはそれ以上の車輪に対して負のトルクを与えることができる。車両100が走行している速度に部分的に依存するが、いくつかの状況では、エンジンブレーキを用いて、車輪に対して負のトルクを与えることができる。1つまたはそれ以上の電気マシンが推進駆動モータとして動作可能である場合、1つまたはそれ以上の電気マシンを用いて正の駆動トルクを加えることができる。
評価ユニット40からの信号42は、パワートレインコントローラ11およびブレーキコントローラ13に出力され、ブレーキコントローラは車両車輪111〜115に負荷される正味のトルクを制御する。評価ユニット40から正または負のトルク要求があるかに依存して、正味のトルクを増減させてもよい。車輪に対して正または負の必要とされるトルクを供給するために、評価ユニット40は、パワートレイン129から車両車輪に正または負のトルクを供給するように指令を出し、および/またはブレーキシステム22により車両車輪に制動力をかけるように指令を出し、いずれにしても要求される車両速度を達成し、維持するために必要なトルク増減を実現することができる。図示した実施形態では、トルクが車両の要求された速度を維持するように車両車輪に個別に供給されるが、別の実施形態では、要求速度を維持するために車両車輪全体に供給される。いくつかの実施形態では、パワートレインコントローラ11は、リアドライブユニット、フロントドライブユニット、ディファレンシャル、あるいは他の任意の適当な構成部品等を含むドライブライン構成部品を制御することにより、1つまたはそれ以上の車輪に加わるトルクの大きさを制御するように動作可能であってもよい。たとえば、ドライブライン130の1つまたはそれ以上の構成部品は、1つまたはそれ以上の車輪に加わるトルクの大きさを変化させるように動作可能な1つまたはそれ以上のクラッチを含んでもよい。他の実施形態も同様に有用である。
パワートレイン129が、1つまたはそれ以上の推進モータおよび/または発電機等の1つまたはそれ以上の電気マシンを有する場合、パワートレインコントローラ11は、1つまたはそれ以上の電気マシンを用いて、1つまたはそれ以上の車輪に与えるトルクを調節するように動作可能であってもよい。
LSPコントロールシステム12は、車両スリップ事象が生じたことを示す信号48を受信する。この信号は、車両のハイウェイ用クルーズコントロールシステム16に出力される信号48と同じものである。システム16に出力される信号48は、ハイウェイ用クルーズコントロールシステム16の動作モードを解除(無効化)または阻害(禁止)するトリガとなるもので、ハイウェイ用クルーズコントロールシステム16による車両速度の自動制御は、一時中断または中止される。しかしながら、LSPコントロールシステム12は、車両スリップを示す車両スリップ信号48を受信したことに呼応して、その動作を一時中断または中止するように構成されない。むしろ、システム12は、ドライバの負担を軽減するように車両スリップをモニタし、継続して制御するように構成される。車両スリップが生じている間、LSPコントロールシステム12は、測定車両速度と、LSP設定速度(LSP_set-speed)の値とを比較し続け、選択された車両速度値を維持するように車両の各車輪に加わるトルクを自動的に制御し続ける。したがって、理解されるように、LSPコントロールシステム12は、クルーズコントロールシステム16とは異なるように構成され、クルーズコントロールシステム16は、車輪スリップ事象により、クルーズコントロール機能が解除(無効化)されるため、車両のマニュアル操作を再開するか、もしくは再開ボタン173Rもしくは設定速度ボタン173を押すことにより再起動されるクルーズコントロールシステム16で速度制御を再開する必要がある。
本発明のさらなる実施形態(図示せず)において、車輪スリップ信号48は、単に複数の車輪速度を比較するだけでなく、路面に対する車両速度を示すセンサデータを用いてさらに洗練(改善)されて得られたものである。このように路面に対する速度は、全地球測位(GPS)データを用いて、または車両と車両が走行している路面との間の相対的な移動を決定するように構成されたレーザ式システムを用いて特定してもよい。いくつかの実施形態では、路面に対する速度を測定するためのカメラシステムを採用してもよい。
LSPコントロールプロセスの任意の段階において、正または負の方向に車両速度を調整するために、アクセルペダル161および/またはブレーキペダル163を踏むことにより、LSP制御機能を解除(無効化)することができる。しかしながら、車輪スリップが信号48により検知された場合、LSPコントロールシステム12はアクティブ状態を維持し、LSPコントロールシステム12による車両速度制御は中断されることはない。これは、図4に示すように、車輪スリップ事象信号48を制御するLSPコントロールシステム12に車輪スリップ事象信号48を出力することにより実現してもよい。図1に示す実施形態において、スタビリティコントロールシステム(SCS)14は、車輪スリップ事象信号48を生成し、これをLSPコントロールシステム12およびクルーズコントロールシステム16に出力する。
車両車輪のうちの任意の1つの車輪に牽引力損失が生じたとき、車輪スリップ事象がトリガ(起動)される。車輪およびタイヤは、たとえば雪、氷、泥、砂、および/または急勾配もしくは横断勾配の上を走行するとき、牽引力の損失が生じやすい。また車両100は、地形がより不均一または滑りやすい環境において、通常のオンロード状況にあるハイウェイ上を走行する場合に比して、牽引力の損失がより生じやすい。したがって本発明の実施形態は、車両100がオフロード環境を走行している場合、または車輪スリップが頻繁に生じる場合に特に有益なものである。こうした状況におけるユーザによるマニュアル操作は、困難を伴うものであり、しばしば多くのストレスを与え、乗り心地が良くない。
車両100は、車両の動きおよび状態に関連するさまざまな異なるパラメータを示す追加的なセンサ(図示せず)を有する。これらは、LSPコントロールシステム12、HDCコントロールシステム12HD、または乗員拘束システムもしくはジャイロセンサおよび/または加速度計等のセンサからデータを出力する任意の他のサブシステムの一部に固有の慣性システムを含み、このデータは車両本体の動きを示し、LSPコントロールシステム12および/またはHDCコントロールシステム12HDに対する有用な入力を提供する。センサからの信号は、複数の運転状況指標(地形指標ともいう。)を提供し、または複数の運転状況指標を計算するために用いられ、運転状況指標は車両が走行している地形の性質を示すものである。
車両100に搭載されたこれらのセンサ(図示せず)は、これに限定するものではないが、車両制御ユニット10に連続的に出力するセンサであって、上記説明した図4に示す周囲温度センサ、大気圧センサ、タイヤ圧センサ、車輪アーティキュレーションセンサ、車両のヨー角・ロール角・ピッチ角およびこれらの角速度を検出するジャイロセンサ、車両速度センサ、縦方向加速度センサ、エンジントルクセンサ(エンジントルク推定器)、操舵ハンドル角度センサ、操舵ハンドル角速度センサ、勾配センサ(勾配推定器)、スタビリティコントロールシステム(SCS)14の一部である横方向加速度センサ、ブレーキペダル位置センサ、ブレーキ圧センサ、アクセルペダル位置センサ、縦方向・横方向・垂直方向モーションセンサ、および車両進水支援システム(図示せず)の一部である水検出センサを含む。他の実施形態では、上記センサのうちから選択されたセンサのみが使用される。
車両制御ユニット10は、操舵コントローラ170Cからの信号を受信する。操舵コントローラ170Cは、電動アシストステアリングユニット(ePASユニット)の形態を有する。操舵コントローラ170Cは、車両100の操舵可能な車輪111,112に与える操舵力を示す信号を車両制御ユニット10に出力する。この操舵力は、ユーザが操舵ハンドル171に与える力に、電動アシストステアリングユニット170Cにより生成される操舵力を加えた力に相当する。
車両制御ユニット10は、さまざまなセンサ入力信号を評価し、車両走行中の特定の地形タイプ(たとえば泥または轍、砂、草/砂利/雪)に対応する複数の異なる制御モードのそれぞれが車両サブシステムに対して適当である確度(確からしさ)を決定する。
ユーザが自動運転モード選択状況の中で車両の操作を選択したとき、車両制御ユニット10は、最も適当な制御モードを選択し、選択されたモードに基づいてサブシステムを制御するように自動的に構成される。本発明のこの態様は、本願出願人の同時係属中の英国特許出願公開第2492748号および第2492655号に詳細に記載され、その開示内容はここに参考として一体のものとして統合される。
車両が走行している地形の性質は(選択された制御モードを参照して決定されるが)、LSPコントロールシステム12でも利用されて、車両車輪に加わる駆動トルクに対する適当な増減トルクが決定される。たとえば車両走行中の地形の性質に適していないLSP設定速度値(LSP_set-speed)をユーザが選択した場合、LSPコントロールシステム12は、車両車輪の速度を抑制することにより車両速度を自動的に調整(低減)するように動作可能である。いくつかの場合には、ユーザ選択速度が、たとえば特定の地形タイプ、特に不均一または凹凸の大きい地形タイプに対して実現できないか、または適当でないことがある。ユーザが選択した設定速度とは異なる設定速度をLSPコントロールシステム12が選択した場合、代替的な速度が設定されたことを示すために、LSPコントロール用HMI20を用いて、速度の制約に関する情報が視覚的にユーザに表示される。
車両制御ユニット10は、車両のピッチレートを示す信号を受信するように動作可能であり、ピッチレートとは、車両のピッチ姿勢(ピッチ高さ)が時間の関数として変化する割合である。いくつかの実施形態では、ピッチレートは、車両の重心等の車両の基準位置に対する横方向軸(すなわち東西方向軸)の周りの車両の回転速度(回転レート)に対応する。
車両制御ユニット10は、ピッチレートを周期的にモニタする。車両100の先端部が所定値を超えるレートで下方向に縦振れしたことを車両制御ユニット10が判断した場合、車両制御ユニット10は、車輪111,112,114,115に対するブレーキトルクの負荷を指令するように構成されている。本実施形態では、ブレーキトルクが4つの車輪のそれぞれに負荷される。いくつかの択一的な実施形態では、前輪の過剰なスリップを低減するために、ブレーキトルクは車両の後輪のみに負荷される。いくつかの実施形態では、ブレーキトルクは、4つの車輪のそれぞれに負荷されるものの、車両の前輪より後輪の方が大きなブレーキトルクが負荷される。その特徴は、依然として前輪において多少の制動効果が得られるとともに、前輪の過剰なスリップを低減する上で有用である。
いくつかの実施形態では、車両制御ユニット10は、ピッチレートがポットホール等の凹み(穴)に入り込んだ(嵌った)一方のみの前輪に起因するものか、両方の前輪111,112に起因するものか判断するように構成することができる。車両制御ユニット10は、ポットホールに嵌らなかった前輪に負荷されるブレーキトルクの大きさに比して、ポットホールに嵌った前輪に負荷されるブレーキトルクの大きさを(任意的あるが、実質的にゼロトルクとなるまで)低減するように動作することができる。他の構成も同様に有用である。いくつかの実施形態では、操舵コントローラ170Cにより検知される前輪に対する力をモニタすることにより、車両制御ユニット10は、車両100の一方または両方の前輪が障害物に衝突したか否か判断することができる。追加的または択一的に、車輪アーティキュレーションに関するデータ、横方向加速度、縦方向加速度、車両本体の車輪アーティキュレーションに関するデータ、横方向加速度、縦方向加速度、車両本体のロールレート、車両ヨーレート等の他のインジケータ(指標)を用いてもよい。理解されるように、いくつかの実施形態では、これらの測定事象のうちの1つまたはそれ以上のものを用いて、車両走行中の障害物の影響をモニタすることができる。
ブレーキトルクの負荷のトリガ(端緒)となる上記ピッチレートは、現時点で選択されている運転モードに応じて決定される。上述のように、運転モードはユーザがセレクタ141Sを用いて選択するか、または車両制御ユニット10により自動的に選択することができる。いくつかの実施形態では、ブレーキトルクをかけるトリガとなる上記ピッチレートは、さらにLSPコントロールシステム12またはHDCコントロールシステム12HD等の速度制御システムが動作しているか否かに基づいて決定してもよい。
図6は、車両制御ユニット10が検知したピッチレートPを時間tの関数で表したグラフと、検知されたピッチレート値に呼応して車両制御ユニット10が指令したブレーキトルクTBを示すグラフである。下向きの縦振れに対する2つのピッチレート閾値P1,P2が経時変化するピッチレートのグラフに重ねて表されている。ピッチレート閾値P1は、「砂」運転モードで走行している場合にブレーキを起動させる閾値に対応し、ピッチレート閾値P2は、「泥および轍」運転モードで走行している場合にブレーキを起動させる閾値に対応する。いくつかの択一的な実施形態では、ピッチレート閾値P1が「泥および轍」運転モードで走行している場合にブレーキを起動させる閾値に対応し、ピッチレート閾値P2が「砂」運転モードで走行している場合にブレーキを起動させる閾値に対応する。他の構成も同様に有用である。理解されるように、表面摩擦係数が比較的に小さく、相対的に滑りやすい地形におけるピッチレート閾値は、表面摩擦係数が比較的に大きい地形上を走行している場合に比して、より小さい値に設定してもよい。しかしながら、(「泥および轍」運転モードまたは「岩徐行」運転モードに対応する地形で経験されるような)比較的に凹凸の大きい表面上の許容可能なサスペンション・アーティキュレーションの大きさが、比較的に滑らかな地形の場合より小さい場合があるので、表面粗さも同様に考慮してもよい。
例示された実施例では、車両100は「砂」運転モードで走行している、したがって、車両制御ユニット10は、ピッチレートPが閾値P1を超えたと判断したとき、車両の加速度を制御または調整するために、ブレーキシステム22を用いてブレーキトルクTBを負荷するように指令する。車両制御ユニット10は、ブレーキ圧を増大させるように指令することにより、ブレーキトルクの増大を指令するように構成される。
図6から明らかなように、時刻t1において、下向きの縦振れ時のピッチレートが閾値P1を超えて大きくなっている。これにより車両制御ユニット10は、ブレーキシステム22が負荷するブレーキトルクTBの増大を指令する。ピッチレートが急激に増大したことに起因した車両の加速度を低減するために、ブレーキトルクTBを比較的に急激に増大させている。
時刻t2において、ピッチレートが閾値P1以下に小さくなる。本実施形態では、このとき、車両ドライバがブレーキペダル163を用いてブレーキ操作し、および/またはたとえばアクセルペダル161から足を離すことにより、パワートレインによる要求トルクを低減することができるように、車両制御ユニット10は、負荷されるブレーキトルクを徐々に低減し始める。いくつかの実施形態では、車両制御ユニット10は、ピッチレートが閾値P1以下まで低減した後、所定期間、増大したピッチレートに呼応したブレーキトルクTBを指令するように構成してもよい。
たとえば、いくつかの実施形態では、下向きの縦振れ時にピッチレートが閾値P1を超えて大きくなったことに呼応して、車両制御ユニット10がブレーキトルクTBを加える(負荷する)ように指令した場合、車両制御ユニット10は、車両100がピッチ高さを上方向に向きを変え始める時点を検出するために、車両のピッチ高さをモニタする。車両制御ユニット10は、車両100がピッチ高さを上方向に向きを変え始めたことを検出したとき、下向きの縦振れの検知に起因して指令した追加的なブレーキトルクを(任意的には、実質的にゼロまで)低減するように指令してもよい。すなわち理解されるように、車両制御ユニット10は、車両100の1つまたはそれ以上の前輪が窪み(凹み)または他の走行路面にある下方勾配の底に達したことを検知し、ブレーキトルクを解除して、車両100が継続的に推進できるように構成されている。
いくつかの実施形態では、車両制御ユニット10は、サスペンションシステムコントローラに指令することにより、車両のサスペンションシステムの硬さ(剛性)の変更を指令するように動作可能である。下向きの縦振れピッチ高さの変化率が現時点での運転モードに対応する一般的な閾値P1,P2を超えた場合、車両制御ユニット10は、ブレーキトルクTBを増大させるとともに、さらにサスペンションの硬さを増大させるように指令する。いくつかの実施形態では、車両制御ユニット10は、サスペンションの硬さの増大を指令するように構成されている。いくつかの択一的に実施形態では、車両制御ユニット10は、サスペンションの硬さの低減を指令するように構成されている。他の構成も同様に有用である。いくつかの実施形態では、追加的または択一的に、サスペンションシステムコントローラは、1つまたはそれ以上の車輪の減衰率(ダンパーレート)を変更してもよい。いくつかの実施形態では、追加的または択一的に、サスペンションシステムコントローラは、最低地上高を変更してもよい。
速度制御システムが動作状態で車両が駆動される場合、および速度制御システムが非動作状態で車両が駆動される場合、車両制御ユニット10は、ピッチレートをモニタし、ブレーキトルクTB(および、いくつかの実施形態ではサスペンションシステムの1つまたはそれ以上の設定値の変更)の負荷を指令するように動作可能である。すなわちHDCコントロールシステム12HD、LSPコントロールシステム12、およびクルーズコントロールシステム16が速度を制御するために選択されたか否かに拘わらず、車両制御ユニット10は、ピッチレートに基づいてブレーキトルクの負荷を指令するように動作可能である。他の構成も同様に有用である。いくつかの実施形態では、車両制御ユニット10は、HDCコントロールシステム12HDおよびLSPコントロールシステム12が動作状態にある場合のみ、ピッチレートに基づいてブレーキトルクの負荷を指令するように動作可能であってもよい。
いくつかの実施形態では、車両制御ユニット10は、車両100が前方走行している場合または後方移動している場合に、ピッチレートに基づいてブレーキトルクの負荷を指令するように動作可能であってもよい。車両100が後方移動している場合、車両100の後方部分が所定のピッチレートPを超えるレートで下方向に縦揺れしたとき、ブレーキトルクの増大を指令するように動作可能であってもよい。所定の運転モードにおける事前設定された(後方移動時の)ピッチレートPは、同一運転モードで前方走行時のピッチレートより小さくてもよい。択一的には、事前設定された(後方移動時の)ピッチレートPは、同一運転モードで前方走行時のピッチレートより大きいか、実質的に同じであってもよい。
いくつかの実施形態では、変更可能なピッチレートの閾値Pnを採用し、閾値Pnの値は、車両が牽引しているか否かについての判断、および車両の貨物の重量に応じて設定してもよい。理解されるように、車両が牽引していると判断した場合、車両および牽引される積載貨物の安定性を改善するために、より小さいピッチレートが採用される。同様に、ピッチレート閾値は、車両貨物の重量が増大するほど小さくしてもよい。すなわち比較的に重い貨物とともにオフロードを走行するとき、車両安定性を増大させることができる。いくつかの実施形態では、重い貨物を積載した状態で、走行路面の別の極端な変動を有するポットホール上の走破に起因して車両が受ける損傷リスクを低減することができる。
本発明に係るいくつかの実施形態によれば、車両のピッチ角の変動レート(変動率)、すなわちピッチレートに対応する信号を受信するように構成された制御システムが提供される。ピッチレートが車両の前方端部が下方向に縦揺れしていることを示す場合、このシステムは、ピッチレートに依存して車両の1つまたはそれ以上の車輪に加えるトルクの大きさを変化させるように指令することができる。いくつかの実施形態では、ピッチレートが事前設定された値を超えたとき、このシステムは、1つまたはそれ以上の車輪にブレーキをかけるように動作可能である。本発明のいくつかの実施形態は、走行路面がポットホール、沼、または轍等の比較的に突然のまたは急峻な下向きの勾配変化を示す地形特徴物に、車両の1つまたはそれ以上の前輪が直面したとき、車両速度が過剰に増大することを防ぐことができるといった利点を有する。いくつかの実施形態では、制御システムは、ブレーキシステムを利用して、車両を減速させるように構成することができる。この特徴は、こうした地形特徴物に対処する車両の速度を低減できるという利点を有する。したがって、車両の前輪が地形特徴物のより低い領域に達した後、その地形特徴物を登り始めるとき、ピッチレートに呼応して自動的にブレーキトルクをかけない場合に車両が受ける衝撃に比して、下り坂から上り坂への移行時に車両が受ける衝撃を緩和することができる。したがって、車両安定性および乗員快適性を改善することができる。さらに、車両の下側表面が地面に接触したときの車両の接地に起因する車両の損傷のリスクを低減することができる。
理解されるように、上記説明した実施形態は、単なる具体例であって、本発明を限定することを意図したものではなく、本発明の範囲は添付クレームにより定義される。
本願明細書の発明の詳細な説明及びクレームを通して、「備える(comprise)」および「含む(contain)」の用語、およびこれらの用語から派生した「備えた(comprising)」および「備え(comprises)」の用語は、「これらに限定することなく有する」という意味であり、その他の部分、付随物、成分、整数、またはステップを排除することを意図したものではない。
クレームの範疇において、単数形は、文脈上要求されるものでなければ、複数形のものを含む。特に、不定冠詞を用いた場合には、文脈上要求されるものでなければ、単数形のみならず、複数形のものを含むものと理解すべきである。
クレームの範疇において、本発明に係る特定の態様、実施形態、または実施例に関連して説明した特徴物、整数、特性、成分、化学成分、または化学塩基は、矛盾するものでなければ、任意の他の態様、実施形態、または実施例に適用可能であるものと理解すべきである。
10…車両制御ユニット(VCU)、11…パワートレインコントローラ、12…低速前進(LSP)コントロールシステム、12HD…ヒルディセントコントロール(HDC)、13…ブレーキコントローラ、14…スタビリティコントロールシステム(SCS)、16…クルーズコントロールシステム、18…クルーズコントロール用HMI、20…LSPコントロール用HMI、22…ブレーキシステム、28…コンパレータ、34…車両速度センサ、40…評価ユニット、100…車両、111,112…前輪、114,115…後輪、118…前輪ドライブシャフト、121…エンジン、124…トランスミッション、129…パワートレイン、130…ドライブライン、131…ドライブライン補助部、131P…パワートランスファーユニット(動力伝達装置)、132…プロペラシャフト、135…リアディファレンシャル(後輪差動装置)、137…フロントディファレンシャル(前輪差動装置)、139…リアドライブシャフト、161…アクセルペダル、163…ブレーキペダル、170C…ステアリングコントローラ、171…操舵ハンドル、172…LSPコントロールシステム選択ボタン、173〜175…入力ボタン、173R…再開ボタン、174…「+」ボタン、175…「−」ボタン、176…クルーズコントロール選択ボタン。