JP2016514687A - 組織因子経路インヒビターに対するプロドラッグ抗体 - Google Patents

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Abstract

本開示は、凝固カスケードからのプロテアーゼにさらされた後で初めて組織因子経路インヒビター(TFPI)に特異的に結合するプロドラッグ抗体を提供する。記載されているプロドラッグ抗体は血友病のような出血障害の治療に有用である。そのような治療に使用される場合、これらのプロドラッグ抗体は血栓症のような副作用の可能性を低減する一方で、他の抗TFPI抗体と比較して延長した半減期を示す。【選択図】図1

Description

37 C.F.R.1.821(c)に従い、〜312キロバイトのサイズを有し2014年3月14日付け作成の「BAYRP0004WO ST25.txt」と称されるASCII準拠テキストファイルとして配列表を本明細書と共に提出する。前記ファイルの内容の全体を参照により本明細書に組み入れることとする。
本出願は、2013年3月15日付け出願の米国仮特許出願第61/794,024号(その全内容を参照により本明細書に組み入れることとする)に基づく優先権の利益を主張するものである。
I.技術分野
技術分野は血友病および他の凝固障害の治療に関する。
II.関連技術
血液凝固は、血液が安定な血餅を形成して出血を停止させるプロセスである。このプロセスには、血中を循環している幾つかの酵素前駆体および補酵素前駆体(または「凝固因子」)が関与している。それらの酵素前駆体および補酵素前駆体は幾つかの経路で相互作用し、該経路により、それらは活性化形態へと連続的または同時に変換される。最終的に、該プロセスは、第Va因子、イオン性カルシウムおよび血小板の存在下、活性化第X因子(FXa)によりプロトロンビンをトロンビンへと活性化する。そして活性化トロンビンは血小板凝集を誘発し、フィブリノーゲンをフィブリンに変換し、ついでこれは活性化第XIII因子(FXIIIa)により架橋されて血餅を形成する。
第X因子の活性化につながるプロセスは、2つの異なる経路、すなわち、接触活性化経路(以前は内因性経路として公知であった)および組織因子経路(以前は外因性経路として公知であった)により遂行されうる。凝固カスケードは、共通の経路へと合流する同等の重要性の2つの経路からなると以前は考えられていた。現在では、血液凝固の開始のための主要経路は組織因子経路であることが公知である。第X因子は、活性化第VII因子(FVIIa)と組合された組織因子(TF)により活性化されうる。第VIIa因子とその必須補因子であるTFとの複合体は凝固カスケードの強力な開始因子である。
凝固の組織因子経路は組織因子経路インヒビター(「TFPI」)によって負に制御される。TFPIはFVIIa/TF複合体の天然のFXa依存的フィードバックインヒビターである。それは多価クーニッツ型セリンプロテアーゼインヒビターのメンバーである。生理的には、TFPIは活性化第X因子(FXa)に結合してヘテロ二量体複合体を形成し、ついでこれはFVIIa/TF複合体と相互作用して、その活性を抑制し、それにより凝固の組織因子経路を閉鎖する。原則として、TFPI活性の遮断はFXaおよびFVIIa/TF活性を回復させて、組織因子経路の作用の持続時間を延長させ、FXaの産生を増幅しうるが、これが血友病AおよびBでは一般に欠損している。
実際、幾つかの予備実験的証拠は、TFPIに対する抗体によるTFPI活性の遮断が凝固時間の延長を正常化し、または出血時間を短縮することを示している。例えば、Nordfangらは、血友病血漿の希薄(dilute)プロトロンビン時間が、TFPIに対する抗体で該血漿を処理した後で正常化されることを示した(Thromb.Haemost.,1991,66(4):464−467)。同様に、Erhardtsenらは、血友病Aウサギモデルにおける出血時間が抗TFPI抗体によって有意に短縮されることを示した(Blood Coagulation and Fibrinolysis,1995,6:388−394)。これらの研究は、抗TFPI抗体によるTFPIの抑制が血友病AまたはBの治療に有用でありうることを示唆している。これらの研究においてはポリクローナル抗TFPI抗体のみが使用された。
ハイブリドーマ技術を用いて、組換えヒトTFPI(rhTFPI)に対するモノクローナル抗体が製造され、特定された。Yangら,Chin.Med.J.,1998,111(8):718−721を参照されたい。希薄プロトロンビン時間(PT)および活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)に対するモノクローナル抗体の効果が試験された。実験は、抗TFPIモノクローナル抗体が第IX因子欠乏血漿の希薄トロンボプラスチン凝固時間を短縮することを示した。組織因子経路は生理的凝固においてだけではなく、血友病の出血においても重要な役割を果たすことが示唆されている(Yangら,Hunan Yi Ke Da Xue Xue Bao,1997,22(4):297−300)。
Kjalkeら,米国特許第7,015,194号は、出血エピソードの治療もしくは予防または凝固治療のための、FVIIaおよびTFPIインヒビター(ポリクローナルもしくはモノクローナル抗体またはそれらのフラグメントを包含する)を含む組成物を開示している。正常哺乳類血漿において凝固時間を減少させるためのそのような組成物の使用も開示されている。更に、FVIIaおよびTFPIインヒビターの開示組成物中に第VIII因子またはその変異体が含まれうることが示唆されている。FVIIIまたは第IX因子とTFPIモノクローナル抗体との組合せは示唆されていない。ポリクローナルまたはモノクローナル抗体を包含するTFPIインヒビターは、血友病の治療に加えて癌の治療に使用されうることも示唆されている(Hung,米国特許第5,902,582号を参照されたい)。
したがって、血液病および癌を治療するために、TFPIに特異的な改良された抗体が必要とされている。
開示の概要
したがって、本開示においては、(a)第1軽鎖および第1重鎖可変領域を含み、組織因子経路インヒビター(TFPI)に免疫学的に結合する第1可変ドメイン、(b)第1軽鎖および/または第1重鎖可変領域のアミノ末端に連結されたマスキングドメイン、ならびに(c)第1軽鎖および/または第1重鎖可変領域とマスキングドメインとの間に挟まれたプロテアーゼ切断可能リンカーを含む抗体を提供する。該プロテアーゼ切断可能ドメインはトロンビン、プラスミン、第VIIa因子または第Xa因子切断部位でありうる。マスキングドメインは、第2軽鎖および第2重鎖可変領域を含む第2可変ドメインを含みうる。該抗体はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、分泌性IgA、IgDおよびIgE抗体でありうる。該抗体はヒト抗体またはヒト化抗体、および/または一本鎖抗体でありうる。該抗体は2価であることが可能であり、2つのマスキングドメインを含むことが可能であり、1つは各第1軽鎖可変領域のアミノ末端に連結されており、あるいは該抗体は2価であることが可能であり、2つのマスキングドメインを含むことが可能であり、1つは各第1重鎖可変領域のアミノ末端に連結されており、あるいは該抗体は2価であることが可能であり、4つのマスキングドメインを含むことが可能であり、1つは各第1軽鎖可変領域および各第1重鎖可変領域のアミノ末端に連結されており、例えば、この場合、マスキングドメインのうちの2つは第2軽鎖可変領域であり、マスキングドメインのうちの2つは第2重鎖可変領域であり、ここで、第2軽鎖および重鎖可変領域は第2可変ドメインを形成している。第2可変ドメインは組織因子(TF)、赤血球またはアルブミンに結合しうる。マスキングドメインはアルブミン結合性タンパク質でありうる。該抗体はヒト組織因子経路インヒビターのクーニッツドメイン2に結合しうる。
また、プロモーターの制御下の前記抗体のコード領域を含む発現ベクター、およびそのような発現ベクターを含む細胞を提供する。また、医薬上許容されるバッファー、担体または希釈剤と共に製剤化された前記抗体を含む医薬製剤を提供する。
もう1つの実施形態においては、(a)第1軽鎖および第1重鎖可変領域を含み、組織因子経路インヒビター(TFPI)に免疫学的に結合する第1可変ドメイン、(b)第1軽鎖および/または第1重鎖可変領域のアミノ末端に連結されたマスキングドメイン、ならびに(c)第1軽鎖および/または第1重鎖可変領域とマスキングドメインとの間に挟まれたプロテアーゼ切断可能リンカーを含む抗体を、患者における凝固を促進させるのに有効な量で投与することを含む、対象における凝固障害の治療方法を提供する。該プロテアーゼ切断可能ドメインはトロンビン、プラスミン、第VIIa因子または第Xa因子切断部位でありうる。マスキングドメインは、第2軽鎖および第2重鎖可変領域を含む第2可変ドメインを含みうる。該抗体はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、分泌性IgA、IgDおよびIgE抗体でありうる。該抗体はヒト抗体またはヒト化抗体、および/または一本鎖抗体でありうる。該抗体は2価であることが可能であり、2つのマスキングドメインを含むことが可能であり、1つは各第1軽鎖可変領域のアミノ末端に連結されており、あるいは該抗体は2価であることが可能であり、2つのマスキングドメインを含むことが可能であり、1つは各第1重鎖可変領域のアミノ末端に連結されており、あるいは該抗体は2価であることが可能であり、4つのマスキングドメインを含むことが可能であり、1つは各第1軽鎖可変領域および各第1重鎖可変領域のアミノ末端に連結されており、例えば、この場合、マスキングドメインのうちの2つは第2軽鎖可変領域であり、マスキングドメインのうちの2つは第2重鎖可変領域であり、ここで、第2軽鎖および重鎖可変領域は第2可変ドメインを形成している。第2可変ドメインは組織因子(TF)、赤血球またはアルブミンに結合しうる。マスキングドメインはアルブミン結合性タンパク質でありうる。該対象はヒトまたは非ヒト哺乳動物でありうる。該対象は外傷、血友病(例えば、血友病AまたはB)または癌に罹患していることが可能である。該抗体は全身投与されることが可能であり、あるいは出血部位に局所的または限局的に投与されることが可能である。該抗体は皮下、静脈内または動脈内に投与されうる。該抗体はヒト組織因子経路インヒビターのクーニッツドメイン2に結合しうる。
本明細書に記載されている任意の方法または組成物は、本明細書に記載されている任意の他の方法または組成物に関して実施されうると想定される。
特許請求の範囲および/または本明細書において「含む」なる語と共に用いられる場合の単数形表現の使用は「1(1つ、1個)」を意味しうるが、「1以上」、「少なくとも」および「1またはそれ以上」の意味とも合致する。
本明細書に記載されている任意の実施形態は本発明の任意の方法または組成物に関して実施されることが可能であり、その逆も言えると想定される。更に、本発明の組成物およびキットは、本発明の方法を達成するために使用されうる。
本出願の全体にわたって、「約」なる語は、ある値が、装置の誤差の固有変動、該値を決定するために用いられる方法の固有変動、または研究対象間に存在する変動を含むことを示すために用いられる。
開示の詳細な説明
本開示は、血友病治療および他の治療のための、組織因子経路インヒビター(TFPI)に対する安全な長時間作用性抗体を記載する。現在、抗TFPI抗体はそれぞれ前臨床および臨床開発中であるが、抗TFPI抗体のインビボ半減期は他のIgG抗体のものより比較的短い。これは恐らく、標的媒介性クリアランスによるものであろう。また、抗TFPI抗体は、炎症を有する又はFVIIaで治療された患者においては特に、副作用を引き起こしうるという懸念も生じている。
これらの課題に対処するために、本開示に記載されている抗TFPIプロドラッグ抗体を開発した。これらの抗体は、それらが凝固カスケード産生性プロテアーゼにさらされる前には、TFPIへの有意に低減した結合を示す。凝固が開始され、プロテアーゼが産生されると、プロテアーゼは、マスキングドメインを切断することにより該抗TFPI抗体を活性化して、TFPIへのその結合を増強する。これらのプロドラッグ抗体は、既に記載されている抗TFPI抗体より良好な安全性および薬物動態プロファイルを示す一方で、血友病のような出血障害を治療するために使用されうる。
1.抗TFPIプロドラッグ抗体
本明細書に開示されている抗体はTFPIに特異的に結合する。すなわち、それらは、無関係な抗原(例えば、BSA、カゼイン)に対するそれらの結合アフィニティより高い(例えば、少なくとも2倍高い)アフィニティでTFPIに結合する。本明細書中で用いる「組織因子経路インヒビター」または「TFPI」なる語は、細胞により天然で発現されるヒトTFPIの任意の変異体、アイソフォームおよび種ホモログを意味する。
幾つかの実施形態においては、プロドラッグ抗体は少なくとも約10−1〜約1012−1(例えば、10−1、105.5−1、10−1、106.5−1、10−1、107.5−1、10−1、108.5−1、10−1、109.5−1、1010−1、1010.5−1、1011−1、1011.5−1、1012−1)のアフィニティでTFPIに結合する。抗原への抗体結合のアフィニティ(K)は、例えば、イムノアッセイ、例えば、酵素結合免疫特異的アッセイ(ELISA)、二分子相互作用分析(BIA)(例えば、Sjolander & Urbaniczky;Anal.Chem.63:2338−2345,1991;Szaboら,Curr.Opin.Struct.Biol.5:699−705,1995(それらを共に参照により本明細書に組み入れることとする))、および抗原を発現する細胞への抗体結合の定量のための蛍光標識細胞分取(FACS)を含む当技術分野で公知のいずれかの方法を用いてアッセイされうる。BIAは、相互作用物質のいずれをも標識することなく生物特異的相互作用をリアルタイムで分析するための技術(例えば、BIACORETM)である。生物学的分子間のリアルタイム相互作用の指標として、光学的現象である表面プラズモン共鳴(SPR)における変化が用いられうる。
抗TFPIプロドラッグ抗体は、実質的に完全長の免疫グロブリン分子(例えば、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgG4、IgM、IgD、IgE、IgA)、それらの抗原結合性フラグメント、例えばFabまたはF(ab’)、あるいは抗原結合部位を含有する構築物、例えばscFv、Fvまたはジアボディ(TFPIに特異的に結合しうるもの)を使用して構築されうる。「抗体」なる語は、天然抗体で見出されるものと同じ活性結合性コンホメーションへの抗体相補性決定領域(CDR)インサートの配向をもたらしうる他のタンパク質スカフォールドをも含み、この場合、これらのキメラタンパク質で観察されるTFPIへの結合が、該CDRが由来する天然抗体のTFPI結合活性と比較して維持されるように、該スカフォールドが含有されている。
本明細書中で用いる「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含有しない抗体である(例えば、TFPIに結合する単離された抗体は、TFPI以外の抗原に結合する抗体を実質的に含有しない)。しかし、ヒトTFPIのエピトープ、アイソフォームまたは変異体に結合する単離された抗体は、例えば他種由来(例えば、TFPI種ホモログ)の他の関連抗原に対する交差反応性を有しうる。単離された抗体は他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含有しないことが可能である。
特定の抗TFPI抗体は米国特許公開US2012/20268917、US2012/0108796、US2011/0229476および国際特許公開WO2012/135671(これらの文書のそれぞれの全開示を参照により本明細書に組み入れることとする)に開示されている。
A.マスク化抗体
幾つかの実施形態においては、本明細書に開示されているプロドラッグ抗体は、TFPIに結合する該抗体の能力を低減するマスキングドメインを有するように操作される。これらのマスキングドメインは凝固カスケードの要素または他の関連マーカーを認識しうるであろう。幾つかの実施形態においては、マスキングドメインは、組織因子(TF)、赤血球(RBC)および/またはアルブミンのような生物学的分子を認識する以下の要素を含む。図1に示されているとおり、これらのマスキングドメインは、プロテアーゼ切断部位を介して、該抗体の可変領域に結合される。これらのマスキングドメインは抗体、ペプチド、タンパク質または別のスカフォールドでありうるであろう。いずれにせよ、マスキングドメインは、除去されるまでは、該抗体がその可変領域を介してTFPIに結合することを妨げる。
本明細書に開示されているプロドラッグ抗体は、1以上のプロテアーゼにより認識されるプロテアーゼ切断部位を含むように操作され。その切断はマスキングドメインを遊離し、TFPIに該抗体が結合することを可能にする。本明細書中で用いる「プロテアーゼ切断部位」は、プロテアーゼにより認識され切断されるアミノ酸配列を意味する。幾つかの実施形態においては、プロテアーゼ切断部位は、抗TFPI抗体の可変領域をマスク(遮蔽)するように配置され、図1に示されている。幾つかの実施形態においては、抗TFPIプロドラッグ抗体は、トロンビン、プラスミンおよび/または第Xa因子により切断されうる1以上のプロテアーゼ切断部位を含む。凝固カスケードにより活性化またはアップレギュレーションされるプロテアーゼのための他のプロテアーゼ切断部位が使用されうると予想される。幾つかの実施形態においては、抗TFPIプロドラッグ抗体の可変領域をマスクするアミノ酸配列は、プロテアーゼ切断部位に加えて、ポリペプチドリンカー(例えば図1に例示されているとおり)および/またはTF、RBCもしくはアルブミンに結合する抗体、ペプチド、タンパク質もしくは別のスカフォールドを含む。該リンカーは単一アミノ酸またはポリペプチド配列(例えば、100アミノ酸まで)でありうる。例えば、該リンカーはGGGGS(配列番号149)でありうる。他の有用なリンカーには、配列番号151〜176に示されているものが含まれる。他の実施形態においては、リンカーは存在せず、図1に示されているとおり、TF、RBCまたはアルブミンに結合する抗体、ペプチド、タンパク質または別のスカフォールドで、TFPIへのその結合をマスクするように、切断部位自体が可変領域上に挿入される。
トロンビンのための以下の少なくとも2つの最適切断部位が決定されている:(1)X−X−P−R−X−X(配列番号147)(ここで、XおよびXは疎水性アミノ酸であり、XおよびXは非酸性アミノ酸である);および(2)GRG。トロンビンはアルギニン残基の後で特異的に切断する。プラスミンも2つの前記切断部位を切断しうるが、トロンビンと比較して低い特異性で切断する。他の有用なトロンビン切断部位は配列番号1〜60として示されている。他の有用なプラスミン切断部位は配列番号12、47、48、53および61〜130として示されている。幾つかの実施形態においては、該切断部位はLVPRGS(配列番号137)である。
幾つかの実施形態においては、第Xa因子切断部位、例えばI(EまたはD)−G−R(配列番号148)が使用される。他の有用な第Xa因子切断部位は配列番号29、59および61〜69として示されている。
切断部位に加えて、切断をより効率的にするためにプロテアーゼの第2結合部位、いわゆるエキソサイトが抗TFPIプロドラッグ内に導入されうる。トロンビンのエキソサイトは、プロテアーゼ基質またはインヒビター、例えばPAR1、フィブリノーゲンおよびヒルジンの天然エキソサイトからのものでありうる。エキソサイトはまた、タンパク質からの他のエキソサイトの誘導体でありうる。
B.抗体合成
抗TFPIプロドラッグ抗体は合成的または組換え的に製造されうる。抗体を製造するためには多数の技術が利用可能である。例えば、抗体を製造するためにファージ−抗体技術が用いられうる(Knappikら,J.Mol.Biol.296:57−86,2000(これを参照により本明細書に組み入れることとする))。抗体を得るためのもう1つのアプローチは、WO 91/17271およびWO 92/01047(それらを共に参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されているとおり、B細胞からのDNAライブラリーをスクリーニングすることである。これらの方法においては、メンバーが種々の抗体をそれらの外表面上に提示する、ファージのライブラリーを作製する。抗体は、通常、FvまたはFabフラグメントとして提示される。選択されたタンパク質への結合に関するアフィニティ増強により、ファージ提示抗体を選択する。抗体は、トリオーマ(trioma)法(例えば、Oestbergら,Hybridoma 2:361−367,1983;米国特許第4,634,664号;米国特許第4,634,666号(それらの全てを参照により本明細書に組み入れることとする))を用いて製造されうる。
抗体はまた、該抗体を発現するいずれかの細胞、例えば、抗体コード化発現構築物でトランスフェクトされた宿主細胞から精製されうる。該宿主細胞は、該抗体が発現される条件下で培養されうる。精製抗体は、細胞において該抗体に付随していることがある他の細胞成分、例えば或るタンパク質、炭水化物または脂質から、当技術分野でよく知られた方法を用いて分離されうる。そのような方法には、サイズ排除クロマトグラフィー、硫酸アルミニウム分画、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィーおよび分取ゲル電気泳動が含まれるが、これらに限定されるものではない。調製物の純度は、当技術分野で公知のいずれかの手段、例えばSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により評価されうる。精製抗体の調製物は2以上のタイプの抗体を含有しうる。
あるいは、抗TFPIプロドラッグ抗体は、そのアミノ酸配列を合成するための化学的方法を用いて、例えば固相技術(Merrifield,J.Am.Chem.Soc.85:2149−2154,1963;Robergeら,Science 269:202−204,1995(それらを共に参照により本明細書に組み入れることとする))を用いる直接的ペプチド合成により製造されうる。タンパク質合成は、手動技術を用いて又は自動化により行われうる。所望により、化学的方法を用いて、抗体のフラグメントを別々に合成し、合体して、完全長分子を製造することが可能である。
幾つかの実施形態においては、抗TFPIプロドラッグ抗体は「一本鎖Fv(scFv)形態」としても構築可能であり、この場合、可変領域上のペプチドリンカー、抗体、ペプチド、タンパク質または別のスカフォールド内またはそれらの周辺に、TFPIを認識するその能力をマスク(遮蔽)するように、プロテアーゼ切断部位が挿入される。抗原結合のためにscFvの2つの可変領域を合体させるためには該ペプチドリンカーが必要であるため、該ペプチドリンカーまたは隣接領域の切断は、関心のあるプロテアーゼがscFvのその抗原への結合を不活性化またはダウンレギュレーションすることを可能にする。
幾つかの実施形態においては、抗TFPIプロドラッグ抗体は、2つの結合部位を有する「IgG形態」で構築され、TFPIを認識するその能力をマスク(遮蔽)するように、可変領域と抗体、ペプチド、タンパク質または別のスカフォールドとの間に1個、2個、3個または4個のプロテアーゼ切断部位を含みうる。各場合において、プロテアーゼ切断部位は片側または両側でリンカーに隣接しうる。更に、各場合において、切断部位は同じ又は異なることが可能である。
2.ポリヌクレオチド
本開示は、プロドラッグ抗体をコードするポリヌクレオチドをも提供する。これらのポリヌクレオチドは、例えば、治療用の大量の抗体を製造するために使用されうる。
mRNAを鋳型として使用して、標準的な分子生物学技術で、抗体コード化cDNA分子を製造することが可能である。ついで、当技術分野で公知であり、Sambrookら(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,(Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press;Cold Spring Harbor,N.Y.;1989)Vol.1−3(これを参照により本明細書に組み入れることとする))のようなマニュアルに開示されている分子生物学技術を用いて、cDNA分子を複製させることが可能である。ポリヌクレオチドの追加コピーを得るために、PCRのような増幅技術が使用されうる。あるいは、抗TFPIプロドラッグ抗体をコードするポリヌクレオチドを合成するために、合成化学技術が用いられうる。
抗体をコードするポリヌクレオチドを発現させるために、挿入コード配列の転写および翻訳に必要な要素を含有する発現ベクター内に該ポリヌクレオチドを挿入することが可能である。抗体をコードする配列と適当な転写および翻訳制御要素とを含有する発現ベクターを構築するためには、当業者によく知られた方法が用いられうる。これらの方法には、インビトロ組換えDNA技術、合成技術、およびインビボ遺伝的組換えが含まれる。そのような技術は、例えば、Sambrookら(1989)およびAusubelら(Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York,N.Y.,1995)(それらを共に参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されている。
抗体をコードする配列を含有させ発現させるためには、種々の発現ベクター/宿主系が使用されうる。これらには、限定的なものではないが、組換えバクテリオファージ、プラスミドまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌のような微生物;酵母発現ベクターで形質転換された酵母;ウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;ウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス,CaMV;タバコモザイクウイルス,TMV)で形質転換された植物細胞系;あるいは細菌発現ベクター(例えば、TiまたはpBR322プラスミド);あるいは動物細胞系が含まれる。
制御要素または調節配列は、転写および翻訳を行うために宿主細胞タンパク質と相互作用する、ベクターの非翻訳領域、すなわち、エンハンサー、プロモーター、5’および3’非翻訳領域である。そのような要素は強度および特異性において様々でありうる。ベクター系および宿主に応じて、構成的および誘導性プロモーターを含む幾つもの適当な転写および翻訳要素が使用されうる。例えば、細菌系におけるクローニングの場合には、誘導性プロモーターが使用されうる。バキュロウイルスポリヘドリンプロモーターが昆虫細胞において使用されうる。植物細胞のゲノムに由来するプロモーターもしくはエンハンサー(例えば、熱ショック、RUBISCOおよび貯蔵タンパク質遺伝子)または植物ウイルスに由来するプロモーターもしくはエンハンサー(例えば、ウイルスプロモーターまたはリーダー配列)がベクター内にクローニングされうる。哺乳類細胞系においては、哺乳類遺伝子由来または哺乳類ウイルス由来のプロモーターが使用されうる。抗体をコードするヌクレオチド配列の複数コピーを含有する細胞系を作製する必要がある場合には、SV40またはEBVに基づくベクターが適当な選択マーカーと共に使用されうる。
3.TFPIに対する抗体の製造方法
抗体の製造を含む追加的な有用な分子生物学的技術を記載している一般的なテキストとしては以下のものが挙げられる:BergerおよびKimmel(Guide to Molecular Cloning Techniques,Methods in Enzymology,Vol.152,Academic Press,Inc.);Sambrookら(Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press;Cold Spring Harbor,N.Y.;1989)Vol.1−3);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausabelら[編],Current Protocols,a joint venture between Green Publishing Associates,Inc.and John Wiley & Sons,Inc.(2000年までの補遺));Harlowら(Monoclonal Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1988),Paul[編]);Fundamental Immunology,(Lippincott Williams & Wilkins(1998));ならびにHarlowら(Using Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1998))(それらの全てを参照により本明細書に組み入れることとする)。
マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体または完全ヒト抗体を製造するために遺伝子工学を用いて、ヒトの疾患に対する治療用抗体が製造されている。マウスモノクローナル抗体は、短い血清半減期、ヒトエフェクター機能を誘発し得ないこと、およびヒト抗マウス抗体の産生ゆえに、治療用物質としての限られた用途しか有さないことが示されている(BrekkeおよびSndlie,“Therapeutic Antibodies for Human Diseases at the Dawn of the Twenty−first Century”,Nature 2,53,52−62(2003年1月))。キメラ抗体はヒト抗キメラ抗体応答を引き起こすことが示されている。ヒト化抗体は抗体のマウス成分を更に最低限度にしたものである。一方、完全ヒト抗体は、マウス要素に関連した免疫原性を完全に回避する。特に、抗TFPIモノクローナル抗体での血友病治療に要求されるような慢性的予防的治療は、マウス成分を有する又はマウス由来の抗体が使用された場合には、頻繁な投与が要求され治療が長期にわたるため、該治療に対する免疫応答の発生の高いリスクを有する。例えば、血友病Aに対する抗体療法は患者の生涯にわたる毎週の投与を要しうる。これは免疫系に対する継続的なチャレンジとなるであろう。したがって、血友病ならびに凝固における関連遺伝的および後天的欠乏症または欠損症に対する抗体療法のための完全ヒト抗体が必要とされている。
治療用抗体は、KoehlerおよびMilsteinにより“Continuous Cultures of Fused Cells Secreting Antibody of Predefined Specificity”,Nature 256,495−497(1975)に記載されているハイブリドーマ技術により製造されている。完全ヒト抗体はまた、原核生物および真核生物において組換え製造されうる。治療用抗体には、ハイブリドーマ製造ではなく宿主細胞における抗体の組換え製造が好ましい。組換え製造は、より大きな製品一貫性、恐らくより高い製造レベル、および動物由来タンパク質の存在を最小化または排除する管理された製造という利点を有する。これらの理由により、組換え製造モノクローナル抗TFPI抗体を得ることが望ましいであろう。
該モノクローナル抗体は、本発明の実施形態におけるモノクローナル抗体の可変領域をコードするヌクレオチド配列を宿主細胞内で発現させることにより組換え製造されうる。発現ベクターの補助により、該ヌクレオチド配列を含有する核酸は、該製造に適した宿主細胞においてトランスフェクトされ発現されうる。したがって、また、(a)本発明のモノクローナル抗体をコードする核酸分子を宿主細胞内にトランスフェクトし、(b)該宿主細胞を培養して、該宿主細胞内で該モノクローナル抗体を発現させ、所望により、(c)産生されたモノクローナル抗体を単離し、精製することを含む、ヒトTFPIに結合するモノクローナル抗体の製造方法を提供し、ここで、該核酸分子は本発明のモノクローナル抗体をコードするヌクレオチド配列を含む。
1つの例においては、該抗体またはその抗体フラグメントを発現させるために、標準的な分子生物学技術により得られた部分的または完全長軽鎖および重鎖をコードするDNAを、該遺伝子が転写および翻訳制御配列に機能的に連結されるように、発現ベクター内に挿入する。この場合、「機能的に連結(される)」なる語は、ベクター内の転写および翻訳制御配列が、抗体遺伝子の転写および翻訳を調節するそれらの意図された機能を果たすように、抗体遺伝子がベクター内に連結されることを意味すると意図される。発現ベクターおよび発現制御配列は、使用される発現宿主に和合性となるように選択される。抗体軽鎖遺伝子および抗体重鎖遺伝子は別々のベクター内に挿入されることが可能であり、あるいはより典型的には、両方の遺伝子は同一発現ベクター内に挿入される。抗体遺伝子は標準的な方法(例えば、抗体遺伝子断片およびベクターの相補的制限部位の連結、または制限部位が存在しない場合には平滑末端連結)により発現ベクター内に挿入される。本明細書に記載されている抗体の軽鎖および重鎖可変領域は、所望のイソタイプの重鎖定常および軽鎖定常領域を既にコードしている発現ベクター内にそれらを挿入してVセグメントがベクター内でCセグメントに機能的に連結されVセグメントがベクター内でCセグメントに機能的に連結されるようにすることにより、任意の抗体イソタイプの完全長抗体遺伝子を作製するために使用されうる。それに加えて又はその代わりに、組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードしうる。抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドが抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームで連結されるように、ベクター内にクローニングされうる。シグナルペプチドは免疫グロブリンシグナルペプチドまたは異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質からのシグナルペプチド)でありうる。
抗体鎖コード化遺伝子に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞における抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を含有する。「調節配列」なる語は、抗体鎖遺伝子の転写または翻訳を制御するプロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むと意図される。そのような調節配列は、例えば、Goeddel;Gene Expression Technology.Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)に記載されている。調節配列の選択を含む、発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、望まれるタンパク質の発現のレベルなどのような要因に左右されうる、と当業者に理解されるであろう。哺乳類宿主細胞発現のための調節配列の例には、哺乳類細胞における高レベルのタンパク質発現を導くウイルス要素、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))およびポリオーマに由来するプロモーターおよび/またはエンハンサーが含まれる。あるいは、非ウイルス調節配列、例えばユビキチンプロモーターまたはベータ−グロビンプロモーターが使用されうる。
抗体鎖遺伝子および調節配列に加えて、組換え発現ベクターは、宿主細胞における該ベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)および選択マーカー遺伝子のような追加的配列を含有しうる。選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を促進する(例えば、米国特許第4,399,216号、第4,634,665号および第5,179,017号(全てAxelら))。例えば、典型的には、選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞に、薬物(例えば、G418、ヒグロマイシンまたはメトトレキセート)に対する耐性を付与する。選択マーカー遺伝子の例には、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキセート選択/増幅を伴うdhfr宿主細胞における使用のためのもの)およびneo遺伝子(G418選択用)が含まれる。
軽鎖および重鎖の発現のためには、重鎖および軽鎖をコードする発現ベクターを標準的な技術により宿主細胞内にトランスフェクトする。種々の形態の「トランスフェクション」なる語は、原核または真核宿主細胞内への外因性DNAの導入のために一般に用いられる多種多様な技術、例えばエレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラントランスフェクションなどを含むと意図される。本発明の抗体を原核または真核宿主細胞において発現させることは理論的に可能であるが、真核細胞、特に哺乳類宿主細胞における発現が最も好ましい。なぜなら、そのような真核細胞、特に哺乳類細胞は、適切にフォールディングされた免疫学的に活性な抗体を構築し分泌する可能性が、原核細胞の場合より高いからである。
組換え抗体を発現させるための哺乳類宿主細胞の例には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(例えばR.J.KaufmanおよびP.A.Sharp(1982)Mol.Biol.159:601−621に記載されているDHFR選択マーカーと共に使用される、UrlaubおよびChasin,(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216−4220に記載されているdhfr−CHO細胞を含む)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞、HKB11細胞およびSP2細胞が含まれる。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターを哺乳類宿主細胞に導入する場合には、該宿主細胞における該抗体の発現または該宿主細胞が培養される培地内への該抗体の分泌を可能にするのに十分な時間にわたり該宿主細胞を培養することにより、該抗体が産生される。標準的なタンパク質精製方法、例えば限外濾過、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーおよび遠心分離を用いて、抗体は培地から回収されうる。
4.無傷抗体を発現させるための部分抗体配列の使用
抗体は、6個の重鎖および軽鎖CDRに位置するアミノ酸残基を介して優先的に標的抗原と相互作用する。この理由により、CDR内のアミノ酸配列は個々の抗体間でCDR以外の配列より多様である。CDR配列はほとんどの抗体−抗原相互作用をもたらすため、異なる特性を有する異なる抗体からのフレームワーク配列上にグラフト化された天然に存在する特異的抗体からのCDR配列を含む発現ベクターを構築することにより、天然に存在する特異的抗体の特性を模倣した組換え抗体を発現させることが可能である(例えば、Riechmannら,1998,Nature 332:323−327;Jonesら,1986,Nature 321:522−525;およびQueenら,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.86:10029−10033を参照されたい)。そのようなフレームワーク配列は、生殖系列抗体遺伝子配列を含む公的DNAデータベースから得られうる。これらの生殖系列配列は成熟抗体遺伝子配列とは異なる。なぜなら、それらは、B細胞成熟中にV(D)J連結により形成される完全構築可変遺伝子を含まないからである。元の抗体のものに類似した結合特性を有する無傷組換え抗体を再生成させるためには、個々の抗体の全DNA配列を得ることは必要でない(WO 99/45962を参照されたい)。典型的には、この目的には、CDR領域に広がる部分的重鎖および軽鎖配列で十分である。どの生殖系列可変および連結遺伝子セグメントが組換え抗体可変遺伝子に寄与したのかを決定するために、該部分配列を使用する。ついで、可変領域の欠落部分を埋めるために、生殖系列配列を使用する。重鎖および軽鎖リーダー配列は成熟中に切断され、最終的な抗体の特性に寄与しない。この理由により、配列構築物のために対応生殖系列リーダー配列を使用することが必要である。欠落配列を付加するために、連結またはPCR増幅によりクローン化cDNA配列を合成オリゴヌクレオチドと組合せることが可能である。あるいは可変領域全体を短い重複オリゴヌクレオチドのセットとして合成し、PCR増幅により組合せて、完全に合成的な可変領域クローンを作製することが可能である。このプロセスは特定の制限部位の排除または含有あるいは特定のコドンの最適化のような一定の利点を有する。
天然配列と同じアミノ酸コード化容量を有する合成V配列を作製するために、合成オリゴヌクレオチドの重複セットを設計するために、重鎖および軽鎖転写産物のヌクレオチド配列を使用する。合成重鎖およびカッパ鎖配列は以下の3つの点で天然配列とは異なりうる:オリゴヌクレオチド合成およびPCR増幅を促進させるために、反復ヌクレオチド塩基の配列が遮られる;コザック則(Kozak,1991,J.Biol.Chem.266:19867−19870)に従い最適翻訳開始部位が組込まれる;ならびに翻訳開始部位の上流にHindIII部位が設けられる。
重鎖および軽鎖可変領域の両方に関して、最適化コード鎖配列および対応非コード鎖配列は対応非コードオリゴヌクレオチドのほぼ中点において30〜50個のヌクレオチド断片に分けられる。したがって、各鎖に関して、該オリゴヌクレオチドは、150〜400ヌクレオチドのセグメントにわたる重複二本鎖セットへと合体されうる。ついで該プールを鋳型として使用して、150〜400ヌクレオチドのPCR増幅産物を得る。典型的には、単一可変領域オリゴヌクレオチドセットは2つのプールへに分けられ、これらは別々に増幅されて2つの重複PCR産物を与える。ついで、これらの重複産物をPCR増幅により合体させて、完全可変領域を形成させる。発現ベクター構築物内に容易にクローニングされうる断片を作製するために、PCR増幅において重鎖または軽鎖定常領域の重複断片を含めることも望ましいかもしれない。
ついで、再構築された重鎖および軽鎖可変領域をクローン化プロモーター、翻訳開始配列、定常領域、3’非翻訳配列、ポリアデニル化配列および転写終結配列と合体させて、発現ベクター構築物を形成させる。重鎖および軽鎖発現構築物を単一ベクターへと合体させ、宿主細胞内にコトランスフェクトし、連続的にトランスフェクトし、または別々にトランスフェクトし、ついでそれを融合させて、両鎖を発現する宿主細胞を得ることが可能である。
したがって、もう1つの態様においては、ヒト抗TFPI抗体、例えばTP2A8、TP2G6、TP2G7、TP4B7などの構造的特徴を用いて、TFPIへの結合の機能を保有する構造的に関連したヒト抗TFPI抗体を製造する。より詳細には、本発明のモノクローナル抗体の特異的に特定された重鎖および軽鎖領域の、1以上のCDRを、公知ヒトフレームワーク領域およびCDRと組換え的に合体させて、本発明の追加的組換え操作ヒト抗TFPI抗体を製造することが可能である。
5.医薬組成物
抗TFPIプロドラッグは、医薬上許容される担体を含む医薬組成物中で提供されうる。医薬上許容される担体は、好ましくは、非発熱性である。抗TFPIプロドラッグ抗体を含む医薬組成物は単独で又は少なくとも1つの他の物質、例えば安定化化合物と共に投与されることが可能であり、それは、塩類液(食塩水)、緩衝食塩水、デキストロースおよび水(これらに限定されるものではない)を含むいずれかの無菌生体適合性医薬担体中で投与されうる。種々の水性担体、例えば0.4% 塩類液、0.3% グリシンなどが使用されうる。これらの溶液は無菌であり、一般に、粒子状物を含有しない。これらの溶液は通常の良く知られた滅菌技術(例えば、濾過)により滅菌されうる。該組成物は、生理的条件に近づけるために、必要に応じて、医薬上許容される補助物質、例えばpH調節および緩衝化剤などを含有しうる。医薬組成物中の抗TFPIプロドラッグ抗体の濃度は広範に、すなわち、約0.5重量%未満、通常は少なくとも約1%から、15または20重量%まで変動可能であり、主に、選択される個々の投与様式に従い、流体体積、粘度などに基づいて選択される。例えば、米国特許第5,851,525号(これを参照により本明細書に組み入れることとする)を参照されたい。所望により、2以上の異なる抗TFPIプロドラッグ抗体が医薬組成物に含まれうる。
有効成分に加えて、医薬組成物は、医薬用に使用されうる製剤への該組成物の加工を促進する賦形剤および補助剤を含む適当な医薬上許容される担体を含有しうる。医薬組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、脳室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、非経口、局所、舌下または直腸手段(これらに限定されるものではない)を含む幾つかの経路により投与されうる。
医薬組成物が製造された後、それらは適当な容器内に配置され、適応病態の治療に関してラベル表示されうる。そのようなラベル表示は投与の量、頻度および方法を含むであろう。該組成物は更に、所望により貯蔵および使用のための説明を含む、成形スチロフォーム(Styrofoam)およびプラスチックブロー成形容器を含む適当なパッケージング材により一体化された1以上の容器を含有するキット内にパッケージング(包装)されうる。
6.出血障害の治療方法
A.障害
血友病は、血管が破壊された際に出血を止めるために用いられる血液凝固または凝血を制御する身体の能力を損なう遺伝性遺伝障害の一群である。血友病A(凝固第VIII因子欠乏症)は、出生男性5,000〜10,000人に約1人の割合で存在する最もよく見られる形態の該障害である。血友病B(第IX因子欠乏症)は出生男性約20,000〜34,000人に約1人の割合で生じる。
ほとんどの劣性伴性X染色体障害と同様に、血友病は女性より男性で生じる可能性が高い。これは、女性は2つのX染色体を有するが、男性は1つしか有さないため、欠損遺伝子が、それを有する全ての男性で確実に顕在化するからである。女性は2つのX染色体を有し、血友病は稀であるため、女性が該遺伝子の2つの欠損コピーを有する可能性は非常に低く、したがって、女性は該障害の、ほぼ例外なく無症候性のキャリアである。女性キャリアは彼女らの母親または父親のいずれかから欠損遺伝子を受け継いでいる可能性があり、あるいはそれは新たな突然変異でありうる。女性が血友病を有することは有り得なくはないが、稀である。血友病AまたはBを有する女性は血友病の男性とキャリアの女性との娘でなければならないことになるが、どちらの性別をも冒しうる凝固第XI因子欠乏による非伴性血友病Cはアシュケナージ系ユダヤ人(東欧)の系統でよりよく見られるが、他の集団群では稀である。
血友病は、正常凝血過程に必要とされる凝固因子の血漿凝固因子レベルを低下させる。したがって、血管が損傷されると、一時的なかさぶたは生じるが、凝固因子の欠損は、血液凝固の維持に必要なフィブリン形成を阻む。血友病患者は、それを有さない者より著しい出血を引き起こしはしないが、遥かに長時間にわたって出血しうる。重篤な血友病患者においては、小さな損傷でさえも、数日間または数週間も続く出血を引き起こしたり、あるいは更には決して完全には治癒しないことがある。脳または内部関節のような領域においては、これは致命的となったり、あるいは永続的に消耗性となりうる。
本開示の抗体により治療されうる他の出血障害には、後天性血小板機能欠損、先天性血小板機能欠損、先天性プロテインCまたはS欠乏症、播種性血管内凝固(DIC)、第II因子欠乏症、第V因子欠乏症、第VII因子欠乏症、第X因子欠乏症、第XII因子欠乏症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)およびフォンヴィレブランド病が含まれる。
B.医薬組成物、経路および投与量
1以上の抗TFPIプロドラッグ抗体を含む医薬組成物は単独で又は他の物質、薬物もしくは凝固因子と共に、血友病または他の凝固障害を治療するために患者に投与されうる。抗TFPIプロドラッグ抗体の「治療的有効量」は、凝固を促進する又は出血時間を低減する抗TFPIプロドラッグ抗体の量を意味する。治療的有効量の決定は当業者の技量の範囲に十分に含まれる。
治療的有効量は最初は細胞培養アッセイにおいて又は動物モデル、通常はラット、マウス、ウサギ、イヌもしくはブタにおいて評価されうる。動物モデルはまた、適当な濃度範囲および投与経路を決定するために使用されうる。ついでそのような情報は、ヒトにおける有用な用量および投与経路を決定するために用いられうる。
抗TFPIプロドラッグ抗体の治療有効性および毒性、例えば、ED50(集団の50%において治療的に有効な用量)およびLD50(集団の50%に致死的な用量)は、細胞培養または実験動物において、標準的な薬学的手法により決定されうる。毒性効果対治療効果の用量比は治療指数であり、それは比,LD50/ED50として表されうる。
大きな治療指数を示す医薬組成物が好ましい。細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータはヒトでの使用のための投与量の範囲の決定において用いられる。そのような組成物に含まれる投与量は、好ましくは、毒性をほとんど又は全く伴わないED50を含む循環濃度の範囲内である。投与量は、使用される剤形、患者の感受性および投与経路に応じて、この範囲内で変動する。
厳密な投与量は、治療を要する患者に関連した要因を考慮して、実施者により決定される。投与量および投与は、抗TFPIプロドラッグの十分なレベルが得られるように、または所望の効果が維持されるように調節される。考慮されうる要因には、病態の重症度、対象の全身健康状態、対象の年齢、体重および性別、食事、投与の時間および頻度、薬物の組合せ、反応感受性ならびに治療に対する耐性/応答が含まれる。長時間作用性医薬組成物は、個々の製剤の半減期およびクリアランス速度に応じて、3〜4日ごと、毎週、または2週間に1回、投与されうる。
幾つかの実施形態においては、抗TFPIプロドラッグ抗体の治療的に有効なインビボ投与量は約5μg〜約100mg/kg、約1mg〜約50mg/kg、約10mg〜約50mg/kg(kgは患者の体重)の範囲である。
抗TFPIプロドラッグ抗体を含む医薬組成物の投与様式は、該抗体を宿主に運搬するいずれかの適当な経路(例えば、皮下、筋肉内、静脈内または鼻腔内投与)でありうる。
幾つかの実施形態においては、抗TFPIプロドラッグ抗体は、他の治療用物質を伴わずに投与される。幾つかの実施形態においては、抗TFPIプロドラッグ抗体は、凝固障害を有する者に血栓症を引き起こしうる範囲より低いトロンビンレベルが維持されることを確保しつつトロンビンの初期産生を増強するために、他の物質、例えば薬物または凝固因子と組合せて投与される。抗TFPIプロドラッグ抗体の投与は他の物質の投与の前、後またはそれと実質的に同時に行われうる。
以下の図面は本明細書の一部を構成し、本開示の或る態様を更に実証するために含まれている。本開示は、本明細書に記載されている特定の実施形態の詳細な説明と共にこれらの図面の1以上を参照することによって、より良く理解されうる。
抗TFPIプロドラッグ抗体の実施形態、およびそれがインビボでどのように機能するのかの例示。 抗TFPIプロドラッグ抗体の潜在的マスキング法の例示。 A〜B。TFPIおよびTFに対する可変領域が縦列連結されているTF結合性プロドラッグのベクター地図。(図3A)HC1−pTTF5 gA200抗TFPIプロドラッグ抗体フラグメントのベクター地図。(図3B)LC1−pTTF 641抗TFPIプロドラッグ抗体フラグメントのベクター地図。 A〜C。TFまたはRBCに対するscFvが抗TFPI抗体の重鎖のアミノ末端上に連結されたTF結合性プロドラッグおよびRBC結合性プロドラッグのベクター地図。(図4A)pQM1−3E10sc−gA200HC抗TFPIプロドラッグ抗体フラグメントのベクター地図。(図4B)pQM1−T119sc−gA200HC抗TFPIプロドラッグ抗体フラグメントのベクター地図。(図4C)pQM1/gA200LC抗TFPIプロドラッグ抗体フラグメントのベクター地図。 A〜B。アルブミン結合性プロドラッグのベクター地図。(図5A)pQM1−56E4−gA200H抗TFPIプロドラッグ抗体フラグメントのベクター地図。(図5B)pQM1−56E4−gA200L抗TFPIプロドラッグ抗体フラグメントのベクター地図。 ジチオトレイトール(DTT)の非存在下の非還元条件およびDTTの存在下の還元条件における、クーマシー染色を用いた、3E10−scFv−gA200およびTer119−scFv−gA200抗TFPI IgGのSDS−PAGE。 天然gA200と比較して56E4−gA200の結合アフィニティを決定するためのTFPI結合性ELISAのグラフ。 抗体濃度の関数としてのRBCへのTer119sc−gA200結合のグラフ。 種々の抗TFPIプロドラッグ抗体および未修飾抗TFPI抗体gA200に関するBIACORETM測定の結果[ヒト血清アルブミン(HSA)の存在下または非存在下のTFPIに対する相対結合率]のグラフ。 A〜G。(図10A)抗TFPIプロドラッグ抗体56E−gA200および抗TFPI抗体gA200の抗体濃度の関数としてのピークトロンビンのグラフ。(図10B)抗TFPIプロドラッグ抗体56E4−gA200および抗TFPI抗体gA200の種々の濃度の関数としてのトロンビン産生のグラフであり、各抗体濃度において産生されたトロンビンの濃度を示している。(図10C)トロンビンおよびFXa活性化の両方により活性化されうるプロドラッグTPP−2654ならびにその親抗体gA200のトロンビン産生プロファイルの比較。外因性トロンビンを加え、ついで該添加トロンビンを不活性化するためにヒルジンを加えることにより、TPP−2654を活性化するトロンビンの能力を評価した。対照は、トロンビンの代わりにバッファーが加えられた反応を含む。(図10D)プロドラッグTPP−2654を活性化するために要したトロンビンの力価測定を示す。試験されたトロンビン濃度は、生理的に潜在的に達成可能な範囲内である。(図10E)プロドラッグTPP−2654を活性化するFXaの能力を間接的に評価した。TGA反応を開始させるために用いるTF濃度を増加させることにより、FXaおよびトロンビンレベルを増加させた。TPP−2654応答を増強する外因性トロンビンの能力を、FXaおよびトロンビン活性化の両方により達成されるものと比較することにより、プロドラッグを活性するためのFXaの相対的寄与が評価されうる。(図10F)トロンビンのみにより活性化されたプロドラッグTPP−2652のトロンビン産生を示す。ここでは、TFPI Abを活性化するための変換のためには、プロドラッグTPP−2652は〜2.5U/mLのトロンビンを要することを、力価測定研究は示した。(図10G)該TF力価測定実験の結果において、FXaに対するTPP−2652の相対的非感受性が認められうる。FXaおよびトロンビン活性化の両方により活性化されるように設計されたTPP−2654とは対照的に、TPP−2652は、より高いTF使用用量においては、トロンビン産生における、より低い上昇を示した(図10Gを図10Eと比較されたい)。 抗TFPIプロドラッグ抗体および未修飾抗TFPI抗体に対する種々の濃度のアルブミンの効果のグラフ。 本開示に従い抗TFPIプロドラッグ抗体を製造するために組合されうる重鎖および軽鎖の配列。 本開示における抗TFPIプロドラッグ抗体の重鎖および軽鎖の配列。 A〜B。本開示における抗TFPIプロドラッグ抗体の、選択された重鎖(図14A)ならびに重および軽鎖(図14B)のアミノ末端配列。 図15A.ヒトまたはサルアルブミンの非存在または存在下のアルブミン結合性抗TFPIプロドラッグのTFPI結合(表面プラズモン共鳴−Biacoreデータ)。図15B.ヒト/サルアルブミンの非存在下または存在下のトロンビンでの処理または非処理の後のアルブミン結合性抗TFPIプロドラッグのTFPI結合(表面プラズモン共鳴)。 16A〜C。(図16A〜B)トロンビン切断後の抗TFPIプロドラッグTPP−2652およびTPP−2654の質量スペクトル。(図16C)Fxaで切断された抗TFPIプロドラッグTPP−2654の質量スペクトル。
7.実施例
以下の実施例は、本開示の種々の態様を更に例示するために記載されている。以下の技術は、具体的な実施形態の実施において十分に機能することが本発明者により見出された技術および/または組成物を表し、その実施のための好ましい様態を構成しうると、当業者に理解されるべきである。しかし、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、これらの実施形態においては変更が施されることが可能であり、尚も同様または類似の結果が得られうる、と当業者は本開示を考慮して理解するであろう。
実施例1 − 抗TFP1プロドラッグ抗体設計方法
抗TFPI活性をマスク(遮蔽)するためには少なくとも3つの方法が想定されているが、追加的な方法も想定される。抗組織因子抗体ドメイン、抗赤血球抗体ドメインまたはアルブミン結合性ペプチドがマスキング(遮蔽)ドメインとして使用されうる。マスキング機能は、第1標的、例えば組織因子、赤血球またはアルブミンへのプロドラッグ抗体結合を含みうる。抗TFPIプロドラッグ抗体がその潜在性形態で存在する場合には、図1に示すとおり、凝固カスケードから産生されたプロテアーゼによりマスキング領域が切断されるまでは、TFPIへの結合は全く生じないか、または有意に低減されるであろう。種々の形態のプロドラッグ抗体が設計されている。それらの形態の全ては、FcRn結合を可能にして長い半減期をもたらすFc領域を含むが、可変領域は修飾されうる(縦列連結可変領域、scFv−可変領域融合、ペプチド−可変領域融合などを含む)。これらのプロドラッグ抗体の表示を図2に示す。現在想定されているプロドラッグ抗体の親抗体はヒト抗体ライブラリーから見出された。これらの抗体は、それらのアフィニティおよび機能性を改善するために、十分に最適化されている。親抗体gA200およびgB9.7はヒトTFPIに対する高いアフィニティおよび特異性を有していて、組織因子(TF)により開始される凝固を促進させる。
マスキング法
A.組織因子結合
組織因子(TF)は、酵素前駆体プロトロンビンからのトロンビン形成の開始に必要な、内皮細胞下組織および白血球に存在するタンパク質である。組織因子は、損傷が生じて初めて血流にさらされて、凝固を開始させる。したがって、TFの標的化は、抗TFPIプロドラッグ抗体が損傷部位上で活性化されることを可能にする。抗TFPIプロドラッグ抗体内に組込まれたTF結合のマスキングドメインは、TFの機能を阻止しないTF結合性抗体、ペプチドまたは代替的スカフォールドでありうるであろう。
B.抗赤血球結合
RBC(赤血球)は薬物および酵素の運搬のための担体またはデポーとして使用されている。RBCは生体適合性、生分解性であり、長い循環半減期を有し、種々の生物活性物質がローディングされうる。抗体での表面修飾はそれらの標的特異性を改善し、それらの循環半減期を増加させることが示されている。本開示においては、抗TFPI抗体のN末端において融合するマスキングドメインとして抗RBC抗体を使用した。この抗TFPIプロドラッグ抗体は、未修飾親抗TFPI抗体より長い潜在的循環時間を有するプロドラッグを与える。RBC上の該プロドラッグの結合は、マスキングドメインが切断されるまでは、TFPIに結合するその能力を更に低減するであろう。
C.アルブミン結合性ペプチド
アルブミンは、治療用および診断用物質のための、主として糖尿病、癌、関節リウマチおよび感染症の診断および治療のための汎用担体として登場した。ヒト血清アルブミンは、約40mg/mLの循環濃度を有する、体内で最も豊富なタンパク質である。アルブミンは67kDaの分子量を有する。アルブミン結合性部分は、抗TFPI抗体のN末端に融合するマスキングドメインとして使用可能であり、それにより、親抗TFPI抗体の場合より潜在的に長い循環時間を有する抗TFPIプロドラッグ抗体が得られる。該プロドラッグ構築物においてはアルブミン結合性ペプチドを使用したが、アルブミン結合性部分はペプチド、天然アルブミン結合性ドメイン、スカフォールド、抗体または抗体フラグメント、例えばFab、scFv、ドメイン抗体および他の誘導体でありうる。
D.プロテアーゼの選択および切断部位の設計
損傷が生じると、組織因子(TF)が血流にさらされ、第VII因子を活性化してTF/FVIIa複合体を形成する。ついでTF/FVIIa複合体は第X因子を活性化し、FXaはプロトロンビンをトロンビンへと活性化して、フィブリン形成および血液凝固を引き起こす。組織因子経路の主要役割は、「トロンビン・バースト(burst)」を引き起こすことであり、このプロセスにより、フィードバック活性化の役割に関して凝固カスケードの最も重要な構成成分であるトロンビンが瞬時に遊離される。また、凝固カスケードにおいて、一連の他の凝固因子が活性化される。
・TF−FVIIaはFIXおよびFXを活性化する。
・FVII自体はトロンビン、FXIa、FXIIおよびFXaにより活性化される。
・FXaおよびその補因子FVaはプロトロンビナーゼ複合体を形成し、これはプロトロンビンをトロンビンへと活性化する。
・ついでトロンビンは凝固カスケードの他の成分(FVおよびFVIIIを含む)を活性化し、活性化はFVIIIをvWFに結合した状態から遊離する。最終的にトロンビンはFXIを活性化し、そしてこれはFIXを活性化する。
・FVIIIaは補因子であり、一緒になってそれらは「テナーゼ」複合体を形成し、これはFXを活性化し、このようにしてサイクルが継続する(「テナーゼ」は「テン(十)」と、酵素に用いられる接尾語「−アーゼ」との短縮形である)。
多数の前記プロテアーゼ、例えばFVIIa、FXaおよびトロンビンは、抗TFPIプロドラッグ抗体を活性化するために使用されうる。本開示においては、FXaおよびトロンビンの切断部位をマスキングドメイン内に設けたが、挙げられている任意のその他のプロテアーゼも抗TFPIプロドラッグ抗体内に組込まれうると想定される。
実施例2 − プロドラッグ抗体のベクター地図
9個のgA200−プロドラッグ重鎖(HC)および6個のgA200軽鎖変異体(LC)を、発現ベクターpTTF5内へのインフュージョン(Infusion)クローニング(Clontech)を用いて構築した。全ての変異体はFXaの6アミノ酸切断部位EGRTATを含有していた。該突然変異タンパク質は、該切断部位に隣接する種々のN末端およびC末端欠失を含有していた。HC1突然変異タンパク質およびLC1突然変異タンパク質の代表的プラスミド地図を図3A〜Bに示す。15個の軽鎖および重鎖変異体のDNA配列を図12に示す。該HC突然変異タンパク質をHC1〜HC9と命名し、該LC突然変異タンパク質をLC1〜LC6と命名した。抗TFPIと融合したscFv(抗RBCまたは抗TF)の代表的プラスミドベクター地図を図4A〜4Cに示し、抗TFPIと融合したアルブミン結合性ペプチドの代表的プラスミドベクター地図を図5A〜Bに示す。図13〜14は、設けられた切断部位を有する種々の軽鎖および重鎖の組合せを含む15個の構築物の配列を示す。
実施例3 − プロドラッグ抗体の発現および製造
チャイニーズハムスター卵巣細胞を宿主細胞で使用した場合、アマクサ(Amaxa)のニュークレオフェクション(Neucleofection)技術を用いて、トランスフェクションを行った。簡潔に説明すると、反応当たり2×10個の細胞を1000rpmで5分間ペレット化した。ペレットを反応当たり100μlのヌクレオフェクター(Nucleofector)溶液Vに再懸濁させた。2μgのpQM1−3E10sc−gA200HC(pQM1−gA200LCを伴う)、pQM1−Ter119sc−gA200HC(pQM1−gA200LCを伴う)またはpQM1−56E4−gA200HC(pQM1−56E4−gA200LCを伴う)をそれぞれ、該細胞に加えた。ついで溶液V中のDNA/細胞をヌクレオキュベット(Nucleocuvette)容器に移した。プログラムU024を使用して、ヌクレオフェクター(Nucleofector)(登録商標)においてエレクトロポレーションを行った。エレクトロポレーション後、0.5mLの加温培地を該細胞に直ちに加え、ついで4.5mL/ウェルの予め加温されたQmix1培地(抗体を含有しない)と共に6ウェルプレートに移し、シェーカー上の37℃のインキュベーターに戻した。トランスフェクションの3〜4日後、プロドラッグ抗体の発現を測定した。陽性発現細胞に関して、安定プールを作製した。該細胞を0.5×10/mLに希釈し、G418を0.7mg/mLに加えた。細胞密度が3〜4×10/mLに達したら、該細胞を0.4×10/mLに再び希釈し、0.7mg/mLのG418を含有するQmix1中で常に維持した。該選択は約2週間を要し、ついで生産段階に入った。細胞生存度が>95%に回復し、細胞密度が3.5〜4×10/mLに達したら、培養温度を30℃に切り換えた。温度切り換えの4〜7日後、馴らし培地を回収した。該細胞を5000rpmで30分間の遠心分離により除去した。該馴らし培地をミリポア(Millipore)濃縮器を使用して5倍濃縮し、ついで9000rpmで40分間の追加的遠心分離を行った。
HEK293−6E細胞を宿主細胞として使用した場合には、それらを、懸濁培養として、4mM L−グルタミン、0.1% プルロニックF68および25mg/L G418で補足されたF17培地内で維持した。トランスフェクションを、ポリエチレンイミン(PEI、25KD、直鎖状)を使用して行った。簡潔に説明すると、トランスフェクションの前日に1×10細胞/mlを播いた。トランスフェクションの当日に、細胞密度を1.7×10/mLに調節した。1Lの細胞をトランスフェクトするために、0.5mgの各VEC−4581およびVE−4568(TPP2652用)、またはVEC−4583および4568(TPP2654用)を500mlのF17培地中で希釈し、2mlのPEI(1mg/mlのPEIストック)を500mlのF17中で希釈した。希釈したDNAおよびPEIを一緒にし、室温で10分間のインキュベーションの後、細胞に加えた。ついで細胞を125rpmのシェーカー上の37℃のインキュベーターに戻した。トランスフェクションの24時間後、1% 超低IgG FBSおよび0.5mM バルプロ酸を該細胞に加えた。トランスフェクションの3〜4日間後、プロドラッグ抗体の発現を測定し、細胞生存度が70%に低下したら、発現を停止させた。ついで2000rpmで10分間の遠心分離により馴らし培地を回収して細胞を除去し、ついで9000rpmで40分間の追加的遠心分離を行った。
実施例4 − 抗TFPIプロドラッグ抗体の精製
プロドラッグタンパク質を、MabSelectプロテインAカラム(5mL HiTrap,GE HealthCare,#28−4082−55)を使用して、CHO細胞馴らし培地から精製した。培地を限外濾過により5〜10倍濃縮し、または濃縮することなく使用した。「平衡化バッファー」(50mM Tris−HCl,150mM NaCl,pH7.0)中でカラムを平衡化した後、1〜1.5mL/分の流速でカラム全体に培地をポンピングした。ローディング後、カラムを4mL/分の流速で5〜10カラム体積(CV)の平衡化バッファーで洗浄した。ついでカラムを「酢酸洗浄バッファー」(50mM 酢酸ナトリウム,150mM NaCl,pH5.4)で再平衡化した。
カラムからの結合タンパク質の溶出を、以下の3段階溶出を用いて、1mL/分の流速で行った:(1)50mM 酢酸ナトリウム、150mM NaCl、pH3.4;(2)50mM 酢酸ナトリウム、150mM NaCl、pH3.2;および(3)100mM Glyeine−HC1、pHは3.0。画分(1mL/画分)を、pHを上昇させるための1mlの「製剤化バッファー」(50mM 酢酸ナトリウム、50mM NaCl、pH5,4)を含有するチューブ内に集めた。カラムを、100mM グリシン(pH2.8)を使用して再生させ、ついでdHOで洗浄し、20% エタノール中で保存した。
280nmの吸光度によるモニタリングにより決定されたタンパク質含有画分をプールし、4℃で一晩の透析により、またはスピン脱塩カラムにより、製剤化バッファー中にバッファー交換した。10kDaの濃縮器を使用する限外濾過により最終タンパク質溶液の濃縮を行った。濃縮または透析中に生じた可能性のある沈殿物を2000×gで30分間の遠心分離により除去した。最終サンプルを、0.22mmカートリッジを使用して滅菌濾過した。
精製されたタンパク質をSDS−PAGE、分析用サイズ排除クロマトグラフィー(aSEC)およびウエスタンブロットにより特徴づけした。内毒素レベルも測定した。aSECおよびSDS−PAGEによると、純度は典型的には90%を超えていた。SDS−PAGEを図6に示す。
実施例5 − GA200および56E4−GA200のインビトロTFPI結合ELISA
Maxisorb 96ウェルプレート(Nunc)をPBS中の1μg/mLのTFPIで4℃でコートした。該プレートを5% 脱脂乾燥乳PBS/0.5% Tween−20中で室温で1時間ブロッキングした。未消化および消化抗体の系列3倍希釈液を該ウェルに加え(100μL/ウェル)、室温で1時間インキュベートした。該プレートをPBS−Tで5回洗浄した。アンプレックスレッド(Amplex Red)(Invitrogen)溶液での検出のために、二次抗Fab−HRP結合抗体を加えた(100μLの1:10,000希釈液)を加えた。図7において認められうるとおり、HSA結合性プロドラッグ抗体は、その親抗TFPI抗体gA200より若干低減した、TFPIへの結合を示す。
実施例6 − TER119SC−GA200プロドラッグ抗体のRBC結合ELISA
赤血球へのプロドラッグ結合を試験するために、ELISAを用いた。透明な96ウェルMaxisorpマイクロタイタープレートのウェルを、10/mlの濃度で(CaもMgも含有しない)DPBS中に再懸濁された100μLのマウスゴーストRBCでコートした。プレートをテープで密封し、4℃で一晩インキュベートした。ウェルをDPBST(DPBS+0.05% Tween20)で1回洗浄し、ついで室温で1時間、5% 乳/DPBSTでブロッキングした。ブロッキングバッファーを廃棄し、50μLの希釈サンプルをウェルごとに加えた。サンプルをPBS中で1:3で系列希釈した。該プレートを室温で1時間インキュベートし、ついでDPBSTで素早く5回洗浄した。PBST(HRPヤギ抗hFAB,Jackson ImmunoResearch,cat#109−035−097)中で1:5000希釈された100μLの二次抗体をウェルごとに加えた。プレートを室温で1時間インキュベートし、ついでDPBSTで5回洗浄した。HRP基質(Amplex Red,Invitrogen A22177)を加え、485nmの励起波長および595nmの発光波長での蛍光測定をSpectraMax M2e(Molecular Devices)で行った。図8において認められうるとおり、該プロドラッグ抗体は、10nMを超える濃度でRBCに結合した。
実施例7 − 抗TFPIプロドラッグ抗体のBIACORETM分析
方法
アミンカップリングキットを製造業者の説明に従い使用して、ヒトTFPIをCM4またはCM5チップ上に固定化した。抗TFPIプロドラッグ抗体または親抗TFPI抗体を、15μg/mL ヒト血清アルブミン(HSA)の存在下または非存在下の10μg/mL 抗体で、該系に流動させた。各注入の完了の2秒後に結合レベルを測定した。動力学アッセイにおいては、一連の濃度の抗体を注入し、30分間の解離時間を設けた。BiaEvaluationソフトウェアを使用して、該抗体の解離および会合速度をモデル化した。
結果
図9はヒトTFPIへの種々のプロドラッグ抗体の結合を示す。図9に示されているとおり、HSAの非存在下ではABP−gA200プロドラッグ抗体は179反射単位(RU)でTFPIに結合するが、HSAの存在下ではシグナルは36RUへと80%減少した。逆に、ヒトアルブミンはTFPIへの親抗体gA200の結合に有意な影響を及ぼさなかった。
RBC結合性プロドラッグ抗体Ter119scFv−gA200はgA200と同じレベルでTFPIに結合したが、TF結合性プロドラッグ抗体3E10scFv−gA200は22%の残留レベルでTFPIに結合した。
それらのプロドラッグ抗体の結合を更に測定するために、動力学アッセイを行ってアフィニテイを測定した。表1a〜dに示されているとおり、抗TFプロドラッグ抗体3E10scFv gA200および抗RBCプロドラッグ抗体Ter119scFv−gA200は、それぞれ29.71倍および14.66倍、TFPIへの結合を低減した。アルブミン結合性プロドラッグ抗体ABP−gA200はTFPIへの結合を低減しなかったが、HSAと混合されインキュベートされた後は、TFPIへのその結合は同様に15.34倍低減した。
Figure 2016514687
ABP−gA200の切断を更に最適化するために、本発明者らはABP−gA200の切断部位を修飾した。アルブミン結合性ペプチドと重鎖の可変領域との間に種々の切断部位を挿入した。図14A〜Bに示されているとおり、該切断部位の周辺にスペーサーGGGGSを挿入した。TPP−2651、TPP−2652、TPP−2653およびTPP2655はトロンビン切断部位を含有していたが、TPP−2654は、FXaおよびトロンビンの両方により切断されうるリンカーを含有していた。表1bに示されているとおり、ヒトまたはサルアルブミンの存在下、これらの抗体はTFPIへのそれらの結合をTPP−2654に関しては最高で28.6倍、TPP−2652に関しては39.6倍低減したが、親抗体gA200は、アルブミンの非存在下または存在下、類似したTFPI結合アフィニティを有していた。TPP−2653は完全には発現されなかったため、そのデータは示さなかった。これらの良く発現されたプロドラッグ抗体を精製し、プロテアーゼ、すなわちトロンビンまたは第Xa因子により消化した。これらのプロテアーゼの除去の後、LC−MSを用いて該抗体を分析した。結果は、該プロテアーゼが該アルブミン結合性ペプチドを切断したことを示している。TPP−2652およびTPP−2654の代表的データを図16に示した。
Figure 2016514687
抗TFPIプロドラッグの切断効率とマスキング機能とのバランスを更に向上させるために、本発明者らは、抗体gA200のリンカー長およびトランケート化FR1ドメインを改変した。ABPを有するプロドラッグのアミノ末端配列を図に示した。
Figure 2016514687
Figure 2016514687
実施例8 − 抗TFPIプロドラッグ抗体に関するトロンビン産生アッセイ
ヒトHemA血漿を使用して、TFPIプロドラッグ抗体のトロンビン産生アッセイ(TGA)を行った。血小板欠乏血漿(PPP)試薬および較正物質を1mLの蒸留水で再構成させた。100nMから出発する1.56nMの最終濃度の抗TFPIプロドラッグ抗体の1:2系列希釈液をHemAヒト血漿に加えた。血漿のみのサンプルを対照として使用した。96ウェルTGAプレートにおいて、20μLのPPP試薬または較正物質を各ウェルに加え、種々の濃度の抗TFPIプロドラッグ抗体を含有する80μLの血漿サンプルを加えた。該プレートをTGA装置内に配置した。ついで該装置は20μLのFluCa(Flu基質+CaCl)を各ウェル内に自動的に分注した。トロンビン産生を60分間測定した。Ter119scFv−gA200をTGAにおいて試験した際、マウスRBCゴーストにHemA血漿を添加した。Ter119scFv−gA200をマウスRBC−GOLDと共に室温で15分間インキュベートした。
図10A〜Bに示されているとおり、56E4−gA200はその親抗体gA200より低いトロンビンピークを与えた。このことは、血漿中のヒトアルブミンが抗TFPIの活性を低減しうることを示している。56E4gA200により生じたトロンビンの形状は低く、幅広いピークはまた、該抗体が時間ゼロにおいてはそれほど活性ではなく、産生されたFXaまたはトロンビンにより活性化された可能性があることを示している。
生理的条件下でプロドラッグTFPI抗体をより活性なTFPI抗体に変換する可能性を、1)(生理的レベルにおいて)TFPI Ab媒介性TGA応答を増強する外因性トロンビンの能力、および2)TGA反応においてFXaおよびトロンビンを産生させ、TFPI抗体誘導性応答における後続の増強をモニタリングすることにより、モデル化した。
外因性トロンビンの添加は、生理的に潜在的に達成可能なレベルの該酵素に対するプロドラッグTFPI抗体の感受性を直接的に評価するであろう。1200nM Abを0.5〜2.5U/mLのトロンビンと共に1時間プレインキュベートし、ついでトロンビン特異的不可逆的インヒビターであるヒルジン(0.5〜2.5U/mL)でトロンビンを1時間不活性化することにより、これを行った。TGA反応におけるヒルジンのキャリオーバーの効果を評価するために、トロンビンの代わりにバッファーを使用してTGA反応におけるヒルジンのキャリオーバーの効果を評価した。幾つかの場合には、対照として、無関係なAbまたは親抗体gA200(アルブミンマスキング配列もプロテアーゼ感受性部位も有さないもの)をプロTFPIAbの代わりに使用した。該抗体−トロンビン−ヒルジン混合物を10〜100nMのAb濃度に系列希釈し、該混合物をTGA反応において更に1:10希釈した。使用した開始因子が、1pM TF−4μM 血小板を含有するPPP−Lowであった以外は前記に記載されているとおりに、TGA反応を行った。無関係な抗体でのTGA結果をプロドラッグTFPI抗体での結果から差し引いた。
プロテアーゼ切断の前および後のプロTFPI Ab TPP−2654のTGAプロファイルを図10に示す。親gA200のTGA応答はトロンビンインキュベーションによっては不変であったが、トロンビンおよびFXaの両方に感受性の切断部位を含有するTPP−2654は、トロンビンと共にプレインキュベートされた場合、応答の増強を示した。しかし、ピークTGA応答はgA200の場合より低かった。このことは、プロテアーゼ切断の効率を増加させるためには、TFPI Ab活性の完全な脱マスキングが、より高いトロンビンレベルまたは最適化プロテアーゼ感受性部位の存在を要しうることを示唆している。
ある範囲のトロンビン濃度(0.5〜2.5U/mL)での力価測定実験は、プロドラッグTFPI抗体からより活性なTFPI抗体への最大変換が、インビボで潜在的に達成可能なレベルである1U/mL トロンビンにおいて達成されうることを確証した(図10D)。
FXaまたはトロンビンが、特に両方のプロテアーゼ感受性部位を含有するプロドラッグ抗体において、プロドラッグ抗体を活性TFPI抗体に、より効率的に変換しうるかどうかを評価するために、in situでのFXaおよびトロンビンの増加の効果を評価した。開始因子としてのTFの濃度を増加させることにより、in situのFXa産生を増加させた。これらの実験においては、TGA反応における開始因子としてPPP−Low(1pM TF−4μM PL)またはPPP試薬(5pM TF−4μM PL)を使用することにより、TF濃度を1pMから5pMまで変動させた。TFの増加はTF−FVIIaの直接作用によりFXaを増加させ、そしてFXaの増加はトロンビン産生を増加させるであろう。前記のとおりにTGA反応を行い、1pMおよび5pM TFでのTGA反応間の応答における相違を比較することにより、結果を分析した。
1pMおよび5pM TF開始因子間のピークトロンビン応答(デルタピーク)における相違の増加において、特に2.5U/mL トロンビンと共にプレインキュベートされたプロドラッグTFPI抗体の場合には、TPP−2654のFXaおよびトロンビン感受性は明らかであった(図10E)。プロTFPI Ab TPP−2654のピークトロンビン応答を、初期トロンビンプレインキュベーションで達成された応答を超えて更に増強しうることは、FXa切断がアルブミン結合性ペプチドの完全な脱マスキングに更に寄与しうることを示した。
マスキングアルブミン結合性ペプチドがトロンビン切断により除去されるプロTFPI Ab(TPP−2652)のTGA応答を図10F〜Gに示す。TPP−2652のトロンビン感受性を図10Fに示す。この図は、被検トロンビンの最大濃度(2.5U/mL)において、TGA応答における僅かな増強が被検抗体の最高レベルで検出されたに過ぎなかったことを示している。TGAを開始させるために使用TF濃度を増加させることによりFXa(およびトロンビン)を増加させることはTPP−2652のTGA応答を更に若干増強したに過ぎなかった(図10F)。これはTPP−2654でのトロンビン応答における大きな増強とは対照的であり、その場合には、トロンビン前処理TPP2654は、5pM TFで産生されたFXaに更にさらされた(図10Eを図10Gと参照されたい)。
これらの結果は、種々のプロテアーゼ感受性部位が活性TFPI Abへのプロドラッグ−TFPI抗体の変換に影響を及ぼしうることを示唆している。
実施例9 − 抗TFPIプロドラッグ抗体に関するFXaアッセイ
材料および方法
以下の試薬をFXaアッセイに使用した。
アッセイバッファー:1×バッファーは25mM Hepes 7.4、100mM NaCl、5mM CaCl、0.1% BSAである。
TFPI − R&D(Cat#2974−PI,MW 〜35kDa)。製品挿入説明に従い10μLの25mM Trisおよび150mM NaCl(pH7.5)を加えることにより、TFPIを100μg/mLに再構成させた。該2.86μM ストックを1/143希釈して、20nM 実施ストックを得た。
FXa − Haematologic Technologies(Cat# HCX−0060,MW − 58.9kDa)ストック2μMアリコートをアッセイバッファー中で予め調製し、−80℃で保存した。該2μM ストックを1/1000希釈して2nM 実施ストックを得た。
S−2765 − Chromogenix(Cat# S−2765,MW − 714.6Da)。凍結乾燥物の25mgを7mLの蒸留水に溶解することにより、5mM 実施ストックを調製した。該5mM 実施ストックをアッセイウェル内に直接加えた。
抗TFPI抗体の4×用量曲線をアッセイバッファーにおいて作成する。各抗体濃度の60μLを4×(20nM)濃度のTFPIと一緒にした。抗体/TFPI混合物を室温で30分間インキュベートする。FXaの2×(2nM)濃度の120μLを該Ab/TFPI混合物に加え、室温で30分間インキュベートする。ついで該Ab/TFPI/FXa混合物を100μL/ウェルで二重にアッセイプレートに移し、ついで20μLの5mM 基質を加える。該プレートをMolecular Devices SpectraMaxプレートリーダーにおいて3分間にわたって405nmで動力学的に直ちに読取る。アルブミン結合性抗TFPIプロドラッグ抗体56E4−gA200を試験した場合には、96ウェル丸底ポリプロピレンプレート内で34μLの8×抗TFPI抗体を種々の濃度の34μLのアルブミンと一緒にした。ついで該溶液を室温で15分間インキュベートし、68μLの20nM(4×)TFPIをα−TFPI Ab/アルブミンに加えた。
図11に示されているとおり、gA200のVmaxはヒトまたはサルのいずれのアルブミンにも影響されなかった。アルブミン結合性プロドラッグ抗体56E4−gA200はアルブミンの濃度の増加と共にVmaxを減少させた。ヒトまたはサルアルブミンの濃度が5μMに達した際、該プロドラッグ抗体の抗TFPI活性は90%抑制された。
実施例10 − 抗TFPIプロドラッグ抗体のプロテアーゼ消化
該プロドラッグのプロテアーゼ切断およびプロテアーゼ枯渇のためにNovagen Thrombin切断捕捉キット(69022−3)およびNovagen第Xa因子キット(69037−3)を使用した。
以下に簡潔に説明するとおり、プロドラッグ切断のためにビオチン化トロンビンを使用した。
各プロドラッグに関する50μLの反応液は5μgのプロドラッグ、5μLの10×キット トロンビン切断/捕捉バッファー、1単位のトロンビン、50μLに調節するための脱イオン水を含有していた。該反応液を室温で37℃でインキュベートした。該切断反応後、酵素1単位当たり16mlの割合の沈降樹脂(32mlの50%スラリー)を使用して、該ビオチン化トロンビンをストレプトアビジンアガロース(該キットにおいて供給されるもの)で除去した。該アガロースを該反応チューブに加えた後、該チューブを、穏やかに振とうしながら、室温で30分間インキュベートした。該反応物全体を、スピンフィルターを備えたキット供給カップに移した。ついで該チューブを500×gで5分間遠心分離した。収集チューブ内の濾液は、ビオチン化トロンビンを含まない切断プロドラッグを含有する。
プロドラッグ切断のために第Xa因子を使用した場合には、各プロドラッグに関する50μLの反応液は5μgのプロドラッグ、10×キット第Xa因子切断/捕捉バッファー、1単位の第Xa因子、および50μLの全体積に調節するための脱イオン水を含有していた。該反応液を37℃で1時間インキュベートした。該切断反応後、第Xa因子をXarrestTMアガロース(該キットにおいて供給されるもの)で除去した。まず、Xarrestアガロースの沈降樹脂体積当たり1lの体積の1×第Xa因子切断/捕捉バッファーを加えることにより、Xarrestアガロースを平衡化した。Xarrestアガロースを1000×gで5分間遠心分離した。上清を除去し、廃棄した。該アガロースを10体積の1×第Xa因子切断/捕捉バッファーに再懸濁させ、1000×gで5分間遠心分離した。上清を除去し、廃棄した。1沈降樹脂体積の1×第Xa因子切断/捕捉バッファーを該チューブに加え、該樹脂を完全に再懸濁させた。調製されたXarrestアガロースを、2ml スピンフィルター(キットと共に含まれているもの)のサンプルカップに移した。プロドラッグ切断反応液の全体積を、調製されたXarrestアガロースに加えた。該チューブを室温で5分間インキュベートし、1000×gで5分間遠心分離してXarrestアガロースを除去した。結合第Xa因子をサンプルカップ内に維持する。該切断プロドラッグは遠心分離中に濾液チューブ内に流入する。
実施例11 − 抗TFPIプロドラッグ抗体のLC−MS
抗TFPIプロドラッグ抗体TPP−2652およびTPP−2654のLC−MS分析を無傷または還元条件下で行った。無傷タンパク質の場合には、2μgをPLRPカラムに直接ローディングした。還元サンプルの場合には、PLRPカラムへのローディングの前に、試験サンプルを10mM DTTで37℃で30分間処理する。
PLRP−S(8μm 4000A,0.3×150mm)を有するAgilent 1200キャピラリーL系を70℃で使用して、LC分離を行った。LCのためのバッファー系は以下のとおりであった:A:0.1% ギ酸+0.01% TFA、B:0.1% ギ酸+0.01% TFAを含有するアセトニトリル、流速10μL/分。勾配:2分で10% B、15分で90% Bへ、90% Bで5分間、10% Bの平衡化を10分間。
Agilent 6520 Q−TOF系を使用してMS分析を行った。その条件は以下のとおりであった:二重ESI(DualEsi)源、ガス温度:350℃、乾燥ガス:7psi、ネブライザー:10psi、スキャン範囲:500〜3000 amu、1スペクトル/秒。1サイクル当たり2つの実験:還元形態の場合には3500v、175vのフラグメンター、65vのスキマー、および無傷タンパク質の場合には4000v、350vのフラグメンター、100vのスキマー。参照イオン:1221.990637および2421.91399 amu、50ppmのウィンドウ、Min 1000.該プロドラッグ抗体を精製し、トロンビンまたは第Xa因子のいずれかのプロテアーゼで消化した。これらのプロテアーゼの除去の後、LC−MSを用いて該抗体を分析した。結果は、該プロテアーゼが該アルブミン結合性ペプチドを切断したことを示している。TPP−2652およびTPP−2654の代表的データを図16A〜Cに示した。
Figure 2016514687
本出願において開示され特許請求されている組成物および方法の全ては、本開示を参照すれば、過度な実験を行うことなく製造され実施されうる。本開示の組成物および方法は好ましい実施形態に関して記載されているが、本開示の概念、精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載されている組成物および方法に、ならびに該方法の工程において又は該方法の工程の順序において、変更が施されうることが当業者に明らかであろう。より詳細には、本明細書に記載されている物質の代わりに、同一または類似結果をもたらす化学的かつ生理的に関連した或る物質が使用可能であることが明らかであろう。当業者に明らかな全てのそのような類似置換体および修飾は、添付の特許請求の範囲により定められる本発明の精神、範囲および概念に含まれるとみなされる。

Claims (35)

  1. (a)第1軽鎖および第1重鎖可変領域を含み、組織因子経路インヒビター(TFPI)に結合する第1可変ドメイン、
    (b)第1軽鎖および/または第1重鎖可変領域のアミノ末端に連結されたマスキングドメイン、ならびに
    (c)第1軽鎖および/または第1重鎖可変領域とマスキングドメインとの間に挟まれたプロテアーゼ切断可能リンカー
    を含む抗体。
  2. 該プロテアーゼ切断可能ドメインがトロンビン、プラスミン、第VIIa因子または第Xa因子切断部位である、請求項1記載の抗体。
  3. 該マスキングドメインが、第2軽鎖および第2重鎖可変領域を含む第2可変ドメインを含む、請求項1記載の抗体。
  4. 該抗体がIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、分泌性IgA、IgDおよびIgE抗体である、請求項1記載の抗体。
  5. 該抗体がヒト抗体またはヒト化抗体である、請求項1記載の抗体。
  6. 該抗体が一本鎖抗体である、請求項1記載の抗体。
  7. 該抗体が2価であり、2つのマスキングドメインを含み、1つが各第1軽鎖可変領域のアミノ末端に連結されている、請求項1記載の抗体。
  8. 該抗体が2価であり、2つのマスキングドメインを含み、1つが各第1重鎖可変領域のアミノ末端に連結されている、請求項1記載の抗体。
  9. 該抗体が2価であり、4つのマスキングドメインを含み、1つが各第1軽鎖可変領域および各第1重鎖可変領域のアミノ末端に連結されている、請求項1記載の抗体。
  10. 該マスキングドメインのうちの2つが第2軽鎖可変領域であり、該マスキングドメインのうちの2つが第2重鎖可変領域であり、ここで、第2軽鎖および重鎖可変領域が第2可変ドメインを形成している、請求項9記載の抗体。
  11. 第2可変ドメインが組織因子(TF)、赤血球またはアルブミンに結合する、請求項3または10記載の抗体。
  12. 該マスキングドメインがアルブミン結合性ペプチドまたはタンパク質である、請求項1、7または8記載の抗体。
  13. プロモーターの制御下の請求項1〜12のいずれか1項記載の抗体のコード領域を含む発現ベクター。
  14. 請求項13記載の発現ベクターを含む細胞。
  15. 医薬上許容されるバッファー、担体または希釈剤と共に製剤化された請求項1〜12のいずれか1項記載の抗体を含む医薬製剤。
  16. (a)第1軽鎖および第1重鎖可変領域を含み、組織因子経路インヒビター(TFPI)に免疫学的に結合する第1可変ドメイン、
    (b)第1軽鎖および/または第1重鎖可変領域のアミノ末端に連結されたマスキングドメイン、ならびに
    (c)第1軽鎖および/または第1重鎖可変領域とマスキングドメインとの間に挟まれたプロテアーゼ切断可能リンカー
    を含む抗体を、対象における凝固を促進させるのに有効な量で投与することを含む、対象における凝固障害の治療方法。
  17. 該プロテアーゼ切断可能ドメインがトロンビン、プラスミン、第VIIa因子または第Xa因子切断部位である、請求項16記載の方法。
  18. 該マスキングドメインが、第2軽鎖および第2重鎖可変領域を含む第2可変ドメインを含む、請求項16記載の方法。
  19. 該対象がヒトである、請求項16記載の方法。
  20. 該対象が非ヒト哺乳動物である、請求項16記載の方法。
  21. 該抗体が一本鎖抗体である、請求項16記載の方法。
  22. 該抗体が2価であり、2つのマスキングドメインを含み、1つが各第1軽鎖可変領域のアミノ末端に連結されている、請求項16記載の方法。
  23. 該抗体が2価であり、2つのマスキングドメインを含み、1つが各第1重鎖可変領域のアミノ末端に連結されている、請求項16記載の方法。
  24. 該抗体が2価であり、4つのマスキングドメインを含み、1つが各第1軽鎖可変領域および各第1重鎖可変領域のアミノ末端に連結されている、請求項16記載の方法。
  25. 該マスキングドメインのうちの2つが第2軽鎖可変領域であり、該マスキングドメインのうちの2つが第2重鎖可変領域であり、ここで、第2軽鎖および重鎖可変領域が第2可変ドメインを形成している、請求項24記載の方法。
  26. 第2可変ドメインが組織因子(TF)、赤血球またはアルブミンに結合する、請求項18または25記載の方法。
  27. 該マスキングドメインがアルブミン結合性タンパク質である、請求項16、22または23記載の方法。
  28. 該対象が外傷、血友病または癌に罹患している、請求項16記載の方法。
  29. 該対象が血友病AまたはBに罹患している、請求項16記載の方法。
  30. 該抗体を全身投与する、請求項16記載の方法。
  31. 該抗体を出血部位に局所的または限局的に投与する、請求項16記載の方法。
  32. 該抗体を皮下、静脈内または動脈内に投与する、請求項16記載の方法。
  33. 該抗体がIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、分泌性IgA、IgDおよびIgE抗体である、請求項16記載の抗体。
  34. 該抗体がヒト抗体またはヒト化抗体である、請求項16記載の方法。
  35. 該抗体がヒト組織因子経路インヒビターのクーニッツドメイン2に結合する、請求項16記載の方法。
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