本願は、2012年7月12日出願の「レーザのスペクトル帯域幅の低減」と題された米国特許仮出願第61/670,926号に対する優先権を主張する。
本発明は、一般に、例えば半導体ウェハ検査システム及びフォトマスク検査システムといった検査システムと関連して用いられる照明装置に関し、特に、そのような検査システムと伴に用いるためのファイバ増幅器を基礎とした光源に関する。
図1(A)は、半導体製造業においてターゲットサンプル(例えば、ウェハ又はフォトマスク/レチクル)41を検査するために用いられるUV−DUVレーザ検査システム40を示す図である。検査システム40は、一般的にUV−DUVの範囲(例えば、350nmより短い真空波長)でレーザ光L50を生成する照明源50、レーザ光の焦点をサンプル41に合わせる1以上の対物レンズ43を含む光学システム42、(例えば、フォトマスク/レチクルを検査する目的で)サンプル41を通り抜けるあらゆるレーザ光を受光するように配置されたセンサアレイ46−1を含む通過検出器アセンブリ45−1、及び(例えば、ウェハ表面の特徴を検査する目的で)サンプル41から反射したあらゆるレーザ光を検出するように配置されたセンサアレイ45−2を含む反射光検出器アセンブリ45−2を含む。ただし、本明細書において特に但し書きがなく波長が記載される場合、真空における波長を指すことが仮定される。真空波長はλ=c/vであり、式中、cは真空における光の速度であり、vは単位時間ごとのサイクルにおける周波数である。角周波数ωは、2πvに等しく、単位時間ごとのラジアン単位で示される。コントローラ(コンピューティングシステム)47は、ソフトウェアオペレーティングプログラムに従って様々なサブシステムの動作を制御し、当該技術において知られている技術を用いて検出器アセンブリ45−1及び45−2から受け取った画像データを処理する。
一般に、短波長のレーザ光ほど高い解像度の画像を生成し、レーザ検査システムにおいて画像サンプルにおける特徴及び欠陥に関する情報を良好に提供することが理解されている。ますます高い解像度を有するレーザ光検査システムへの需要の増加に答えるために、半導体製造業における最近の傾向は、短波長のUV−DUVレーザ検査システム(すなわち、250nmを下回るレーザ光を用いるシステム)の開発に向けられている。例えば、本願の譲受人は現在、213nm、206nm、又は193nmのレーザ光で動作する低周波数UV−DUVレーザ検査システムの開発に取り組んでいる。
短波長のUV−DUVレーザ検査システムを開発する上で重大な障害は、UVレーザ光を効果的に画像化することができる光学システムを提供することである。UV−DUVレーザ検査システムの光学システム(例えば、図1(A)の光学システム42)に関する様々なレンズ及び部品を生成するために利用可能なたった2つの実用的な材料は、融解石英及びフッ化カルシウムであり、フッ化カルシウムは入手し、研磨し、取り付けるために多額の費用がかかるため、融解石英が好ましい。UV−DUVレーザ光を用いるシステムにおいて用いるための、全部が融解石英で製造された光学システムは、許容限度を超える性能低下の末に、限られた帯域幅しか処理できない。具体的には、開口率(NA)及び照射野が大きくなるほど、波長は短く、許容可能な帯域幅は小さくなりうる。例えば、0.8NA及び1.0mmの視野を有する266nmでの全屈折対物レンズは、5pmの帯域幅にしか到達しえない。1つの非球面はいくつかの等価球面レンズを除去するので、より大きい帯域幅に対処するための1つのアプローチは、非球面を用いることによってガラス通路を低減することである。しかし、非球面の使用に関連する費用及び複雑さの増加は望ましくなく、このアプローチは、ほとんどのレーザシステムにおいてさほど役に立たない。
短波長のUV−DUVレーザ検査システム100のための光学システム42を生成するために必要となる費用及び複雑さを最小化するために、照明源50は、実質的に全ての光エネルギが狭い帯域幅内にあるようにレーザ光L50を生成することができなければならない。光の帯域幅範囲を光のピークパワーの半分に指定する全幅半値(FWHM)の値を用いてレーザ光源の帯域幅を指定することが一般的である。しかし、UV−DUVレーザ検査システムにおいて、エネルギの95%が含まれる帯域幅範囲(すなわち、光の「E95」帯域幅値)が最も重要な値である。典型的な照明源41は、比較的狭いFWHM帯域幅値を有するが、そのFWHMの10倍以上広いE95の値を有する、レーザ光L50を生成する。従って、レーザ画像化システム40において、両方が短波長のUV(例えば、250nmを下回る公称波長値を有するレーザ光)であり、狭いE95帯域幅(すなわち、公称又は「中心」UV周波数の±1%以内、かつ好ましくは±0.1%以内)を有する狭帯域UVレーザ光L50を生成する照明源50を用いることが重要である。
狭帯域UV光は、一般に、長い波長(一般的に1ミクロンより長い)を有する基本波光を生成し、その後、非線形周波数変換及び周波数混合を実行する水晶振動子を用いて基本波光を変換し、所望の(より短い)波長を有するUV光を生成することによって作られる。周波数変換/混合プロセスにおける制限により、基本波光は、指定された短波長でUV光を生成するために特定の高い周波数を有さなければならない。他の非線形プロセス(例えば、ラマン、パラメトリック発生、四光波混合(FWM))を用いて周波数変換/混合プロセスを実行することも可能であるが、それらの技術も、帯域幅の増加を招くことがあり、狭い帯域幅の光学レンズには適さない。周波数変換/混合の多数の段階は、時に、指定された周波数を有する短波長の光を生成することが必要とされ、各周波数対話段階中に光からパワーが失われる。従って、許容可能なパワーでUVレーザ光を生成するために、光学システムにおいて必要とされるよりも著しく高いピークパワーで基本波光を生成することが必要である。
狭帯域UV光の生成に用いられる2種類の基本波光源がある。固体レーザ及びファイバレーザである。固体レーザは、非常に狭い帯域幅及び高いピークパワーを有するレーザ光を生成することができ、あまり複雑でない(ゆえに費用が安い)光学システムの利用を可能にするが、固体レーザのための波長の選択肢は非常に限られており、いくつかのレーザ検査システムには適さず、固体レーザから信頼性のある高パワーの光を獲得することは非常に困難である。ファイバレーザは、例えばエルビウム、イッテルビウム、ネオジム、ジスプロシウム、ホルミウム、プラセオジム、ツリウムといった希土類元素によってドープされた光ファイバによって形成された能動利得媒体を含む。ファイバレーザは高いピークパワーを有するレーザ光を生成するので、レーザ検査システムにおいて基本波光を生成するための魅力的な選択肢であり、レーザ光の周波数は、ファイバにおけるドーピング剤の量を変更することによって指定された周波数に「調整」することができる。しかし、下記で説明するように、高いピークパワーのパルス基本波光を生成するためにファイバレーザを用いることの主な欠点は、自己位相変調(SPM)である。一般に、SPMは、光−物質の相互作用の非線形光学効果であり、ファイバ媒体内を移動する超短光パルスは、光カー効果による媒体の様々な屈折率を誘発する。屈折率における変化は、光パルスにおける位相変位をもたらし、パルスの周波数スペクトルの変化を招く。非線形SPM効果は、レーザ検査システムの光学要件を大幅に上回るほどファイバレーザのスペクトル帯域幅を著しく増加させうる。
図1(B)は、(図1(A)に示す)検査システム40においてUVレーザ光L50を生成するために用いられる、従来のファイバベース照明源50を示す図である。ファイバベース照明源50は一般に、指定された基本周波数ωFで基本波光F51を生成するための基本波光源51と、光学システム42(図1(A)を参照)へ通るUVレーザ光L50を指定されたUV周波数ωUVで生成するために上述した周波数変換/混合プロセスを実行する周波数変換モジュール55とを含む。基本波光源51は、初期パワーP0で所望の基本波光周波数ωFを有するシード光S52を生成するシードレーザ52と、適切なシード周波数ωSでポンプシード光PSを生成するポンプレーザ53と、当該技術において知られている方法でシード光S52を増幅するためにポンプシード光PSを用いる1以上のファイバ増幅器54とを含み、それによって基本波光F51は、所望の基本周波数ωFと、初期パワーP0よりも実質的に高い増幅されたパワーPAとを有するように生成される。基本波光F51はその後、周波数変換モジュール55によって変換/混合され、(変換/混合プロセス中のエネルギ損失により)基本波光F51の増幅されたパワーPAよりも実質的に低い出力パワーPOUTで、所望のUV周波数ωUVを有するUVレーザ光L50を生成する。
上述したように、基本波光F51は、当該技術において知られているように、ファイバ増幅器54のSPM特性によって部分的に決定される帯域幅ΔωFを有する。SPMは、
によって求められる強度依存である、増幅処理中の位相変位への増加を示す。式中、
かつ
である。式中、ΦNLは強度依存位相変位であり、Lはファイバ長さであり、Tは時間であり、Uはエネルギ分散であり、αはファイバ損失であり、Leffはファイバ損失を考慮したファイバの有効長さであり、LNLは著しいSPMが発生した時のファイバ長さであり、P0はパルスのピークパワーであり、Υは非線形係数である。シード光S52又はポンプシード光PSのうちの1つがパルス化されるので、強度ΦNLは時間によって変化し、それによって、同様に時間によって変化する位相が生じる。光の位相が時間によって変化すると、波長スペクトルにおける変化が生じる。中央周波数値に対するスペクトルシフトδω(T)は、
によって求められる。
スペクトルシフトδω(T)は、チャープ、すなわちパルスにわたる瞬時周波数における変化としても知られる。
図2(A)及び2(B)は、(図1(B)に示す)従来の基本波光源51によって生成される基本波光パルスF51及びシードパルスS52の例を示す光スペクトル図であり、従来のファイバベースの照明源50(図1(B))において生成される強度依存位相変位によって生じる出力帯域幅を図示する。図2(A)は、基本シード光S52は制限された初期変換であり、ガウスパルスは、基本周波数ωF(例えば、1030nmの波長に対応する周波数)付近に集中しており、かつ11GHzのFWHM値及び23GHzのE95エネルギ帯域幅を有する約6×106Wのピークパワーを有することを示す。図2(B)は、シード光パルスS52及びポンプシード光PSを用いて増幅器54(図1(B))によって生成される基本波光パルスF52を示す。図2(B)は、基本波光パルスF52が一般に、10kWのピークパワーPAに増幅されている間ずっと基本周波数ωFの付近に集中することを示す。しかし、ファイバ増幅器54のSPM特性によって、基本波光パルスF52のFWHM値は222GHzまで増加し、286GHzのE95エネルギ帯域幅を示す。ファイバベース基本波光源によって示されるE95エネルギにおけるこの概ね10倍の増加は、昨今のレーザ検査システムにおいて必要な狭帯域UV光の類を生成するためには実用的でない。
必要とされるのは、ファイバベースのレーザの高いピークパワー及び周波数調整機能と、一般的に固体レーザと関連する簡易な(低価格の)光学システムとを併用する基本波光源である。
本発明は、レーザシステムにおいて基本波光Fを生成するためのファイバベースの基本波光源に関し、シード光及び/又は部分的に増幅された光は、ファイバベース増幅器の自己位相変調(SPM)特性を補償する非線形チャープを含むように変更され、それによって、高いピークパワー及び狭い帯域幅の両方を有する基本波光が生成される。実際の実施形態によると、レーザシステムは、所望の短いUV−DUV波長(例えば、213nm、206nm、又は193nm)で関連する光学システムに向けられるレーザ出力光Lを生成するために、ファイバベースの基本波光源によって生成された基本波光を、比較的長い基本波長(例えば、1030nm)から変換する周波数変換モジュールも含む。ファイバベースの増幅プロセスが完了する前にSPMを補償するために補償非線形チャープを用いることによって、本発明は、ファイバベースレーザの高いピークパワー及び周波数調整機能と、一般的に固体レーザに関連する簡易な光学システムとを併用することによって、高解像度レーザ検査システムの費用効率の高い製造を容易にする。
本発明の一態様によれば、1以上の非線形チャープ要素(例えば、ブラッググレーティング、ファイバブラッググレーティング、又は電気光学的変調器)は、補償非線形チャープを生成するために用いられ、非線形チャープは、x2又は更に高い次数における非線形性を有する。特定の実施形態において、非線形チャープU(0,T)は、
の式によって特徴付けられる経時的周波数を有し、式中、Tは時間であり、iは位相項を含む振幅の虚数部を示し、E、F及びGのうちの少なくとも1つはゼロではない。本発明者は、シードレーザによって生成されるシード光の(例えば、1及び100GHzの範囲内の)(初期)スペクトルE95帯域幅の5倍として定義される範囲内にある狭いスペクトルE95帯域幅を有する基本波光を達成するために、x2の又は更に高い非線形性を有する非線形チャープが必要であると判断した。比較として、本発明で用いられるのと同様の方法で(例えば、線形チャープを生成するように構成されたブラッググレーティングを用いて)生成された線形チャープは、シード光のFWHM値と近いFWHM値を生成することができるが、そのE95帯域幅は、10倍以上に上る。従って、ファイバベース増幅器(例えば、ドープファイバ増幅器又はファイバラマン増幅器の何れか)によって生成されるSPM特性は、高解像度レーザ検査システムによって必要な度合までSPM特性を十分に補償するために、(例えば、上記式中のE、F及びGのうちの少なくとも1つがゼロ以外でなくてはならない)x2の又は更に高い非線形性を必要とする。一実施形態によれば、1つの非線形チャープ要素は、レーザ光路においてシードレーザと一連のファイバ増幅器との間に配置され、直列接続されたファイバ増幅器の全てによって生成された累積SPMを補償する1つの非線形チャープを生成するように構成される。この1つの要素を用いるアプローチの利点は、シード光/増幅された光が最小数の非線形チャープ要素にしか遭遇しないのでパワー損失が最小化されることである。別の実施形態によると、非線形チャープ要素は、レーザ光光路において直列接続された増幅器の各々の前に配置され、各非線形チャープ要素は、各々に後続するファイバ増幅器に関連する個々のSPM特性を補償する要素となる非線形チャープを生成するように構成される。この複数の要素を用いるアプローチの利点は、各ファイバ増幅器のSPM特性に対処することによって補償非線形チャープ計算が簡略化される(すなわち、複数の直列接続された増幅器の累積SPMに関する補償非線形チャープを計算する必要がない)ことである。
本発明の別の実施形態によれば、ラマン増幅器は、連続波(CW)シード光及びパルスポンプシード光の両方を受光し、非線形チャープNLCは、位相変調器によってCWシード光に追加される。後続する「下流の」直列接続されたラマン増幅器は、パルスポンプシード光を受光するが、CWシード光は受光しない。このラマン増幅器を用いるアプローチの利点は、ラマンスペクトルシフトは、標準的なファイバレーザによって可能な範囲の外の波長における高いパワーレベルでレーザが作動することが可能になる点である。
本発明のこれらの利点及びその他の利点は、本発明の以下の詳細な説明及び添付図面によって当業者に明らかとなるであろう。
添付図面の図において、本発明が、限定のためではなく例示のために示される。
レーザ検査システムを図示する簡略化ブロック図である。
従来のパルスファイバレーザを図示する簡略化ブロック図である。
図1(B)のパルスファイバレーザにおいてシードレーザによって生成されるシードパルスを示す出力スペクトル図である。
増幅された光を示し、ファイバレーザのスペクトル帯域幅における自己位相変調の効果を図示する、出力スペクトル図である。
本発明の一般化された実施形態に係るレーザシステムを示す簡略化ブロック図である。
図3のレーザシステムによって生成された増幅された基本波光を示す出力スペクトル図である。
線形チャープを用いて生成された増幅された基本波光を示す出力スペクトル図である。
本発明の実施形態に係るレーザシステムを示す簡略化ブロック図である。
本発明の別の実施形態に係るレーザシステムを示す簡略化ブロック図である。
本発明のさらに別の実施形態に係るレーザシステムを示す簡略化ブロック図である。
図8のレーザシステムによって生成された光を示す出力スペクトル図である。
図8のレーザシステムによって生成された光を示す出力スペクトル図である。
本発明は、レーザ技術の向上に関する。以下の説明は、特定の応用及びその要件の文脈で提供されることにより、当業者に、本発明の製造及び利用を可能とするために提示される。本明細書において用いられる場合、例えば「より高い」、「より低い」、「前」及び「下流」といった方向を示す用語は、説明を目的として相対的な位置を示すことが意図されており、絶対的な基準を示すことを意図するものではない。好適な実施形態に対する様々な改良が当業者には明らかとなり、本明細書で定義された一般原理は他の実施形態にも適用されうる。従って本発明は、図示され説明された特定の実施形態に限定されることは意図されておらず、本明細書において開示された原理及び新規特徴と整合が取れた最も広い範囲と一致するように意図されている。
図3は、本発明の一般化された実施形態に係るレーザシステム90を示す。レーザシステム90は、公称基本周波数ωFで基本波光Fを生成するためのファイバベースの基本レーザシステム100と、その後関連する光学システム(図示せず)へ通るレーザ出力光Lを所望の公称出力周波数ωOUTで生成するために基本波光Fを変換/混合するための様々な部品を含む周波数変換モジュール94とを含む。
実施形態によると、レーザシステム90は、図1(A)を参照して上述された方法でUV−DUVレーザ検査システムにおいて照明源として用いられる。図3の右側を参照すると、特定の実施形態において、基本波光Fは約1μmの波長(例えば、1030nm)に対応する公称基本周波数ωFであり、周波数変換モジュール94は、基本波光Fを、公称基本周波数の2.5倍を上回る指定された出力周波数ωOUTに変換するように(すなわち、出力周波数ωOUTが、公称基本周波数ωFの対応する波長の40%を下回る対応する波長、例えば、400nmを下回る波長を有するように、更に具体的には、レーザ光Lが355nm、266nm、213nm、206nm、又は193nmの公称波長を有するように)構成される。また、レーザ光Lは、基本波光Lの基本スペクトル帯域幅ΔωFに比例する出力帯域幅ΔωOUTを有する。周波数変換モジュール94の機能を実行することができる周波数変換構造は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれた、共有された同時係属の「193nmのレーザを用いた検査システム及び固体レーザ」と題された米国特許出願第13/558318号に開示されている。本発明は、本明細書においてUV−DUVレーザ検査システムに特に言及して説明されるが、他のレーザシステムにおいても同様に役立つことが確信される。
図3の左側を参照すると、従来のファイバベースレーザと同様に、基本波光源100は、シード光105、ファイバベース増幅器130、及びポンプシードレーザ140を含む。シードレーザ105(例えば、パルス光発振器、固体レーザ、ダイオードレーザ、利得スイッチレーザダイオード、又は量子ドットレーザ)は、(比較的低い)初期ピークパワーP0及び初期スペクトル帯域幅ΔωSを有するシード光S0を生成し、周知の技術を用いて光路Oに沿ってシード光S0を送る。増幅器130は、光路Oに配置され、増幅器130から出力される(増幅された)基本波光Fが、シード光S0の初期ピークパワーP0よりも実質的に(例えば、10倍)高い基本ピークパワーP1を有するようにシード光S0を増幅するファイバベースの増幅機構(例えば、ドープファイバ増幅器又はファイバラマン増幅器)を含む。ポンプシードレーザ140(例えば、パルス光発振器、固体レーザ、ダイオードレーザ、利得スイッチレーザダイオード、又は量子ドットレーザ)は、周知の技術に従って、ポンプシード光PSを生成し、増幅器130へ送る。
本発明の態様によると、基本波光源100は、シード光S0(すなわち、以下で説明するような、部分的に増幅されたシード光)と、増幅器130に固有のSPM特性を補償する非線形「プリチャープ」(チャープ)NLCとを結合する、光路Oに(例えば、シードレーザ105と増幅器130との間に)配置された非線形チャープ要素150を含む。1つの実施形態において、非線形チャープ要素150は、基本波光Fの基本スペクトル帯域幅ΔωFが、シード光S0の上記初期スペクトルE95帯域幅ΔωSの5倍として定義された範囲内であるように、増幅器のSPM特性を「反映する」(すなわち、非線形プリチャープNLCの周波数振幅及び周波数帯域幅が、増幅器のSPM特性の周波数振幅及び周波数帯域幅の実質的に正反対になるようにし、それによって、非線形チャープNLCが増幅器のSPM特性を補償(すなわち、効果的に除去又は大幅に低減)する)方法で非線形チャープNLCを生成するように構成されるブラッググレーティング、ファイバブラッググレーティング、又は電気光学的変調器を用いて実装される。
本発明の別の態様によると、チャープ要素150は、x2又は更に高い次数における非線形性を有する非線形プリチャープを生成するように構成される。具体的には、1以上の非線形チャープ要素150は、
の式によって特徴付けられる経時的周波数を有する非線形プリチャープU(0,T)を生成するように構成され、式中、Tは時間であり、iは位相項を含む振幅の虚数部を示し、E、F、Gのうちの少なくとも1つはゼロではない。すなわち、非線形チャープ要素150を生成するために用いられる式は、T2又は更に高い次数を有する少なくとも1つの経時的成分を有する。従って、非線形チャープ要素150は、周知の技術を用いて増幅器130のSPM特性をまず測定及び数量化することによって構成され、その後、測定/数量化された特性を補償(反映)するC、D、E、F、及びGについての値が計算され、その後非線形チャープ要素150は、必要な補償非線形プリチャープを含むように構成される(例えば、ブラッググレーティングは、計算された値によって定義される非線形性を実現する周期的な屈折率変化を有して構成される)。
図4は、本発明に従う、非線形プリチャープを用いてシードパルスから生成される基本波光Fに関する典型的な出力スペクトル図を示す。比較する目的のために、この例において用いられるシードパルスは、図2(A)に示され上述されたものと同一である。但し、基本波光Fは、公称基本周波数ωF(例えば、1030nm)付近の基本スペクトル帯域幅ΔωFを有する10kWのピークパワーのレーザパルスであり、基本スペクトル帯域幅ΔωFは、21GHzのFWHM値(シードパルスの11GHzのFWHM値と比較;図2(A)を参照)及び41GHzのスペクトルE95帯域幅(図2(A)に示すシードパルスの23GHzのE95値と比較)を有することによって特徴付けられる。非線形チャープを追加することによって提供される実質的な改善は、図4と図2(A)とを比較することによって明確に示される――非線形チャープは、FWHMにおいて10倍の(すなわち、222GHzから21GHzへの)低減、及びスペクトルE95帯域幅において約7倍(すなわち、286GHzから41GHzへの)改善をもたらした。
比較する目的のために、図5は、線形プリチャープを用いて生成された、10kWのピークパワーパルスを有する基本波光FLINEARの出力スペクトル図を示す。すなわち、x2又は更に高い非線形性を有するプリチャープを用いるのではなく、図5は、以下の線形方程式(関数)を用いて構成されるプリチャープを用いて図2(A)のシードパルスを変更することによる効果を示す。
非線形の例と同様に、線形プリチャープ要素は、固有のSPMチャープが可能な限り多く補償されるように、上記式を用いて、増幅器によって生成されるSPMの量及びファイバ特性に合わせられる。図5に示すように、基本波光FLINEARは、非線形チャープによって生成される値と同様に比較的狭いFWHM値(すなわち、23GHz)を有する中央スパイク波形を示す。しかし、図5の下部において見られるように、E95エネルギ点におけるレーザパルスのスペクトル幅は極めて広い(すなわち、300GHz以上)。この大きいE95値は、線形でない固有のチャープが未だ著しくパルスに存在するために現れる。そのため、ファイバベース増幅器の非線形SPM特性を十分に補償する線形プリチャープを用いて、高解像度UV−DUVレーザ検査システムに必要な高いピークパワーで狭い帯域幅のレーザ光を生成することが可能であるとは思われない。
再び図3を参照すると、基本レーザシステム100は、光路Oにおいてシードレーザ105と1つの増幅器130との間に配置された1つの非線形チャープ要素150を伴って図示される。この配置の場合、非線形チャープ要素150を出射している変更されたシード光S1は、同一の公称波長ωS、同様のピークパワーP0´(すなわち、ピークパワーP0´はシード光S0の初期ピークパワーP0とほぼ等しいがそれより僅かに低い)、及び、非線形チャープNLCを含むために上記初期の狭いスペクトル帯域幅ΔωSとは異なる変更されたスペクトル帯域幅Δω1を有する。ファイバ増幅器130は、上記基本波光Fが必要なUV−DUV基本スペクトル帯域幅ΔωFを有するように、変更されたシード光S1を増幅するファイバベース増幅機構を含む。一部の実施形態において(例えば、ファイバ増幅器130がドープファイバ増幅器である場合)、基本波光Fの公称基本周波数ωFは、初期(シード)周波数ωSと実質的に同一である。他の実施形態において(例えば、ファイバ増幅器130がラマン増幅器である場合)、基本波光Fの公称基本周波数ωFは、初期(シード)周波数ωSとは実質的に異なる。
本発明は、簡潔を期するために1つのファイバベースの増幅器130を含むシステムを参照して上述されたが、ほとんどの高いピークパワーのファイバベースレーザシステムは、出力レーザ光が十分なパワーレベルを有するように十分に高い基本波光を達成するために、2つ以上の直列接続された増幅器を用いることが理解される。図6は、本発明の実施形態に係るレーザシステム90Aの一部を示し、この図においてファイバベースの基本レーザシステム100Aは、1つのシードレーザ105A、複数の直列接続された増幅器130A−1,130A−2,…,130A−nを含む増幅器部130A、及び光路においてシードレーザ105Aと増幅器部130Aとの間に配置された1つの非線形チャープ要素150Aを含む。この場合、1つの非線形チャープ要素150Aは、直列接続されたファイバ増幅器130A−1,130A−2,…,130A−nの全てによって生成される累積SPM効果を補償するために、変更されたシード光S1に追加される1つの非線形プリチャープNLCを生成するように構成される。すなわち、直列接続された増幅器130A−1,130A−2,…,130A−nの累積SPM特性が決定及び数量化され、その後、非線形チャープ要素150Aは、累積SPM特性を補償する非線形プリチャープを生成するように構成される。1つの非線形チャープ要素150Aを用いることによる利点は、この配置は、増幅器部130Aへ通される変更されたシード光に対するパワー損失を最小限にすることである。
図7は、本発明の別の実施形態に係るレーザシステム90Bの一部を示し、この図においてファイバベースの基本レーザシステム100Bは、シードレーザ105B、複数の増幅器130B−1,130B−2,…,130B−n、及び複数の非線形チャープ要素150B−1,150B−2,…を含み、少なくとも1つの非線形チャープ要素は、光路において2つの増幅器の間に配置される(例えば、要素150B−2は、増幅器130B−1と130B−2との間に配置される)。この場合、各非線形チャープ要素150B−1,150B−2,…は、関連するファイバ増幅器130B−1,130B−2,…,130B−nによって生成される個々のSPM効果を補償するために、シード光又は部分的に増幅されたシード光の何れかに追加される非線形プリチャープ(例えば、非線形プリチャープNLC2は、増幅された光SB3を生成するために、要素150B−2によって、部分的に増幅された光SB2へ追加される)を生成するように構成される。例えば、非線形プリチャープNLC1は、増幅器130B−1のSPM特性を補償し、変更されたシード光SB1を生成するために、要素150B−1によってシード光S0へ追加される。同様に、非線形プリチャープNLC2は、増幅器130B−2のSPM特性を補償し、増幅された光SB3を生成するために要素150B−2によって、部分的に増幅された光SB2へ追加される。非線形チャープ要素150B−1,150B−2,…の累積効果は、1つのチャープ要素を有する実施形態の効果と同様であるが、複数の要素を有するアプローチは、各ファイバ増幅器のSPM特性に個々に対処する(すなわち、複数の直列接続された増幅器の累積SPMに関する補償非線形チャープを計算する必要がない)ことによって補償非線形チャープ計算を簡略化する。
図8は、本発明の別の実施形態に係るレーザシステム90Cの一部を示し、この図においてファイバベースの基本レーザシステム100Bは、直列接続されたラマン増幅器130C−1,130C−2,…,130C−nを用いる。この場合、シードレーザ105C−1は、連続波(CW)レーザ(例えば、固体レーザ、ダイオードレーザ、及び量子ドットレーザのうちの1つ)によって実現され、非線形チャープ要素は、ラマン増幅器130C−1が位相変調器150Cからの非線形チャープNLCとCWシード光S01との両方を受光するように、光路内の(第1の)ラマン増幅器130C−1とCWシードレーザ105Cとの間に配置された位相変調器150Cによって実現される。基本レーザシステム100Bはまた、各ラマン増幅器130C−1,130C−2,…,130C−nへパルス式ポンプシード光をそれぞれ供給する複数のパルス式ポンプシードレーザ105C−21,105C−22,…,105C−2n(例えば、利得スイッチレーザダイオード又はパルス光発振器)も含む。例えばパルス式ポンプシードレーザ105C−21は、パルス式ポンプシード光S021をラマン増幅器130C−1へ供給し、パルス式ポンプシードレーザ105C−22は、パルス式ポンプシード光S022をラマン増幅器130C−2へ供給する。図9(A)及び9(B)は、図8に示す実施形態に従ってラマン増幅器に関する相互位相変調(XPM)を補償するために非線形チャープを用いた結果を示す。XPMは、同一のピークパワーに関して標準的なファイバレーザにおいて取得されるSPMよりも2倍悪化する。このラマン増幅器のアプローチを用いる利点は、標準的なファイバレーザによって利用可能な波長を上回る波長での高いパワーがより実用的となることである。波長を増加させるために1以上のラマンシフトを用いることができる。
本発明を、ある特定の実施形態に関して説明したが、本発明の発明的特徴は他の実施形態にも同様に適用することができ、その全てが本発明の範囲内に含まれることが意図されていることが当業者には明らかであろう。