本発明は、Btkを阻害し、異常B細胞活性化によって引き起こされる自己免疫性及び炎症性疾患の処置に有用な新規の化合物の使用に関する。
背景技術
プロテインキナーゼは、ヒト酵素の最も大きなファミリーの1つを構成し、タンパク質にリン酸基を付加することにより多くの異なるシグナル伝達過程をレギュレーションする(T. Hunter, Cell 1987 50:823-829)。具体的には、チロシンキナーゼは、チロシン残基のフェノール部分のタンパク質をリン酸化する。チロシンキナーゼファミリーには、細胞の増殖、遊走及び分化をコントロールするメンバーが含まれる。異常キナーゼ活性は、癌、自己免疫性及び炎症性疾患などの様々なヒト疾患に関与している。プロテインキナーゼは細胞シグナル伝達の重要なレギュレーターの1種であるため、低分子キナーゼ阻害剤で細胞機能をモデュレーションするターゲットを提供し、優れた薬物設計ターゲットを作る。キナーゼ介在性疾患過程の処置に加えて、キナーゼ活性の選択的で有効な阻害剤も、細胞シグナル伝達過程の研究及び治療目的の他の細胞標的の同定にも有用である。
B細胞が自己免疫性及び/又は炎症性疾患の発病に重要な役割を果すという十分な証拠が存在する。リツキサン(Rituxan)などのB細胞を減少させる、タンパク質に基づく治療法は、関節リウマチなどの自己抗体誘導炎症性疾患に対して有効である(Rastetter et al. Annu Rev Med 2004 55:477)。したがって、B細胞活性化において役割を果すプロテインキナーゼの阻害剤は、自己抗体産生などのB細胞介在性疾患の病状に有用な治療法のはずである。
B細胞レセプター(BCR)によるシグナル伝達は、成熟抗体産生細胞への増殖及び分化を含む幅広いB細胞応答をコントロールする。BCRは、B細胞活性の重要な調節点であり、異常なシグナル伝達が無秩序なB細胞増殖及び病原性自己抗体の形成を引き起こし、多くの自己免疫性及び/又は炎症性疾患を招く可能性がある。ブルトン型チロシンキナーゼ(Btk)は、BCRの直ぐ下流にある膜近位の非BCR関連キナーゼである。BtkがないとBCRシグナル伝達が遮断されることが分かっており、したがって、Btkの阻害がB細胞仲介疾患の過程を遮断するのに有用な治療手法となりうる。
Btkは、チロシンキナーゼのTecファミリーの一員であり、初期B細胞発生並びに成熟B細胞活性化及び生存の重要なレギュレーターであることが示されている(Khan et al. Immunity 1995 3:283; Ellmeier et al. J. Exp. Med. 2000 192:1611)。ヒトにおけるBtkの突然変異は、X連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)という症状をもたらす(Rosen et al. New Eng. J. Med. 1995 333:431及びLindvall et al. Immunol. Rev. 2005 203:200に概説)。これらの患者は免疫不全であり、B細胞の成熟障害、免疫グロブリン及び末梢B細胞のレベルの減少、T細胞非依存性免疫応答の低減、並びにBCR刺激後のカルシウム動員の減衰を示す。
自己免疫性及び炎症性疾患におけるBtkの役割についての証拠は、Btk欠損マウスモデルによっても提供されている。全身性エリテマトーデス(SLE)の前臨床マウスモデルでは、Btk欠損マウスは疾患進行からの著しい回復を示す。さらに、Btk欠損マウスは、コラーゲン誘導関節炎に抵抗性である(Jansson and Holmdahl Clin. Exp. Immunol. 1993 94:459)。選択的Btk阻害剤は、マウス関節炎モデルにおいて用量依存的効果が証明されている(Z. Pan et al., Chem. Med Chem. 2007 2:58-61)。
Btkは、疾患過程に関与しうるB細胞以外の細胞によっても発現される。例えば、Btkは、肥満細胞により発現され、Btk欠損骨由来肥満細胞は、抗原誘導脱顆粒の障害を示す(Iwaki et al. J. Biol. Chem. 2005 280:40261)。これは、Btkが、アレルギーや喘息などの病的肥満細胞応答を処置するのに有用でありうることを示している。また、Btk活性を欠くXLA患者からの単球は、刺激後のTNFα産生の低下を示す(Horwood et al. J Exp Med 197:1603, 2003)。したがって、TNFα介在性炎症は、低分子Btk阻害剤によりモデュレーションされうる。また、Btkは、アポトーシスにおいて役割を果たすことが報告されており(Islam and Smith Immunol. Rev. 2000 178:49)、よってBtk阻害剤は、特定のB細胞リンパ腫及び白血病の処置に有用である(Feldhahn et al. J. Exp. Med. 2005 201:1837)。
発明の概要
本願は、本明細書に後述する、式Iで示されるBtk阻害剤、処置の方法、及びその組成物を提供する:
本願は、式I
[式中:
Aは、低級アルキル、フェニル、CH
2R
1、OR
4、
であり;
R
1は、H、
であり;
R
2は、H又はハロであり、
R
3は、ハロであり;
R
4は、低級アルキルであり;
R
5は、低級アルキルであり;
R
6は、H又はハロであり;
Xは、C(=O)又はS(=O)
2であり;そして
Yは、CH又はNである]
で示される化合物又はその薬学的に許容しうる塩を提供する。
本願は、式Iで示される化合物の治療上有効な量を、必要とする患者に投与することを含む、炎症及び/又は自己免疫状態を処置するための方法を提供する。
本願は、少なくとも1種の薬学的に許容しうる担体、賦形剤又は希釈剤と混合して式Iで示される化合物を含有する医薬組成物を提供する。
発明の詳細な説明
定義
本明細書で使用される場合、「a」又は「an」実体という語句は、1種以上のその実体のことをいい;例えば、a compoundとは、1種以上の化合物又は少なくとも1種の化合物のことをいう。このように、「a」(又は「an」)、「1種以上(one or more)」、及び「少なくとも1種」という用語は、本明細書において交換可能に使用できる。
「本明細書に上記で定義」という語句は、発明の概要又は最も広い請求の範囲に与えられる、各基の最も広い定義のことをいう。以下で提供される全ての他の実施形態において、各実施形態で存在することができ、明確に定義されていない置換基は、発明の概要で提供される最も広い定義を有する。
本明細書で使用される場合、請求項の移行句であろうと本文であろうと、「含む("comprise(s))」及び「含む(comprising)」という用語は、オープン・エンドの意味を有するものと解釈されるべきである。すなわち、この用語は、「少なくとも有する」又は「少なくとも含む」という語句の同義語として解釈されるべきである。方法に関連して使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、方法が少なくとも記載の工程を含むが、追加の工程も含んでよいことを意味する。化合物又は組成物に関連して使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、化合物又は組成物が、少なくとも記載の特徴又は成分を含むが、追加の特徴又は成分も含んでよいことを意味する。
本明細書で使用される場合、特に具体的に示さない限り、「又は」という単語は、「及び/又は」という「包含的」な意味で使用され、「いずれか/又は(either/or)」という「排他的」な意味で使用されない。
「独立に」という用語は、本明細書において、ある可変基が、同じ化合物内の同一か異なる定義を有する可変基の有無に関わらず、いずれか1つの場合に適用されることを示すために使用される。したがって、R”が2回現れ、「独立に炭素又は窒素」として定義される化合物では、両方のR”が炭素であっても、両方のR”が窒素であっても、又は一方のR”が炭素で、他方が窒素であってもよい。
任意の可変基が、本発明において使用又は特許請求される化合物を記述及び記載する任意の部分又は式中に2回以上現れる場合、各出現時の定義は、全ての他の出現時の定義とは独立している。また、置換基及び/又は可変基の組み合せは、そのような化合物が安定な化合物となる場合にのみ許容される。
結合の末端の「*」又は結合に描かれた「-----」という記号は、それぞれ、官能基又は他の化学部分と、それが一部を成す分子の残部との結合点を意味する。したがって、例えば:
である。
(明らかな頂点で接続されるのとは対照的に)環系の中へと描かれる結合は、結合が適切な環原子のいずれかに結合しうることを示している。
本明細書で使用される場合、「場合による」又は「場合により」という用語は、次に記載の事象又は状況が起こっても起こらなくてもよく、その記載には、その事象又は状況が起こる場合と起こらない場合とが含まれることを意味する。例えば、「場合により置換されている」は、場合により置換されている部分が水素原子又は置換基を組み込みうることを意味する。
「任意の結合」という語句は、結合が存在していても、していなくてもよく、その記載には、単結合、二重結合又は三重結合が含まれることを意味する。置換基が「結合」又は「存在しない」と示される場合、その置換基に結合する原子は直接接続されている。
「約」という用語は、およそ、〜の領域、大体、又はほぼを意味するのに本明細書で使用される。「約」という用語が、数値範囲と併せて使用される場合、記載される数値の前後に境界を延長することでその範囲を修正する。一般的に、「約」という用語は、表示値の前後20%の変動で数値を修正するために本明細書で使用される。
式Iで示される特定の化合物は互変異性を示しうる。互変異性化合物は、2種以上の相互変換可能な種として存在できる。プロトトロピー互変異性体は、2個の原子間の共有結合した水素原子の移動によってもたらされる。互変異性体は一般的に平衡で存在し、個々の互変異性体を単離しようと試みると、通常、化学的及び物理的特性が化合物の混合物と一致する混合物が生成される。平衡の位置は分子内の化学的特徴に依存する。例えば、アセトアルデヒドなどの多くの脂肪族アルデヒド及びケトンでは、ケト型が優位を占めるが、フェノールでは、エノール型が優位を占める。一般的なプロトトロピー互変異性体として、ケト/エノール(−C(=O)−CH−⇔−C(−OH)=CH−)互変異性体、アミド/イミド酸(−C(=O)−NH−⇔−C(−OH)=N−)互変異性体、及びアミジン(−C(=NR)−NH−⇔−C(−NHR)=N−)互変異性体が挙げられる。後者の2つは、ヘテロアリール環及び複素環において特に一般的であり、本発明では化合物の全ての互変異性型が含まれる。
本明細書に使用される技術用語及び科学用語は、特に定義されない限り、本発明が関連する当業者によって一般的に理解される意味を有する。本明細書では、当業者に公知の種々の方法論及び材料について述べる。薬理学の一般原理を記載する標準的参考資料には、Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, 10thEd., McGraw Hill Companies Inc., New York (2001)が含まれる。当業者に公知の任意の適切な材料及び/又は方法が、本発明を実施する際に利用することができる。しかし、好ましい材料及び方法を記述する。以下の説明及び実施例において述べられる材料及び試薬などは、特に断りがない限り、商業供給者から入手可能である。
本明細書に記載の定義を付け加え、「ヘテロアルキルアリール」、「ハロアルキルヘテロアリール」、「アリールアルキルヘテロシクリル」、「アルキルカルボニル」、及び「アルコキシアルキル」などのような化学的に関連した組合せを形成してもよい。「アルキル」という用語が「フェニルアルキル」又は「ヒドロキシアルキル」のように別の用語の後に接尾辞として使用される場合、これは、他の具体的に命名された基から選択される1〜2個の置換基で置換されている、上記で定義のアルキル基のことをいうことが意図される。したがって、例えば、「フェニルアルキル」とは、1〜2個のフェニル置換基を有するアルキル基のことをいうため、ベンジル、フェニルエチル及びビフェニルが含まれる。「アルキルアミノアルキル」とは、1〜2個のアルキルアミノ置換基を有するアルキル基である。「ヒドロキシアルキル」には、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、1−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピル、2−ヒドロキシブチル、2,3−ジヒドロキシブチル、2−(ヒドロキシメチル)、3−ヒドロキシプロピルなどが含まれる。したがって、本明細書で使用される場合、「ヒドロキシアルキル」という用語は、下記で定義されるヘテロアルキル基のサブセットを定義するために使用される。(アル)アルキルという用語は、非置換のアルキル基又はアラルキル基のいずれかのことをいう。(ヘテロ)アリール又は(ヘタ)アリールという用語は、アリール基又はヘテロアリール基のいずれかのことをいう。
本明細書で使用される場合、「スピロシクロアルキル」という用語は、例えば、スピロ[3.3]ヘプタンなどのスピロ環式シクロアルキル基を意味する。スピロヘテロシクロアルキルという用語は、本明細書で使用される場合、例えば、2,6−ジアザスピロ[3.3]ヘプタンなどのスピロ環式ヘテロシクロアルキルを意味する。
本明細書で使用される場合、「アシル」という用語は、式−C(=O)R[式中、Rは、水素又は本明細書で定義される低級アルキルである]で示される基を指す。本明細書で使用される場合、「アルキルカルボニル」という用語は、式C(=O)R[式中、Rは、本明細書で定義されるアルキルである]で示される基を指す。「C1−6アシル」という用語は、6個の炭素原子を含む基−C(=O)Rである。本明細書で使用される場合、「アリールカルボニル」という用語は、式C(=O)R[式中、Rはアリール基である]で示される基を意味し;本明細書で使用される場合、「ベンゾイル」という用語は、Rがフェニルである「アリールカルボニル」基を意味する。
本明細書で使用される場合、「エステル」という用語は、式−C(=O)OR[式中、Rは、本明細書で定義される低級アルキルである]で示される基を指す。
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、1〜10個の炭素原子を含む非分岐鎖又は分岐鎖の飽和一価炭化水素残基を指す。「低級アルキル」という用語は、1〜6個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖の炭化水素残基を指す。本明細書で使用される場合、「C1−10アルキル」は、1〜10個の炭素から構成されるアルキルのことをいう。アルキル基の例として、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、又はペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、及びオクチルなどの低級アルキル基が挙げられるが、これらに限定されない。
「アルキル」という用語が「フェニルアルキル」又は「ヒドロキシアルキル」のように別の用語の後に接尾辞として使用される場合、これは、他の具体的に命名された基から選択される1〜2個の置換基により置換されている、上記で定義のアルキル基のことをいうことが意図される。したがって、例えば、「フェニルアルキル」は、R’R”−基[式中、R’は、フェニル基であり、R”は、本明細書で定義されるアルキレン基である]を指し、但し、このフェニルアルキル部分の結合点は、アルキレン基にあるものと理解される。アリールアルキル基の例として、ベンジル、フェニルエチル、3−フェニルプロピルが挙げられるが、これらに限定されない。「アリールアルキル」又は「アラルキル」という用語は、R’がアリール基であること以外は同様に解釈される。「(ヘタ)アリールアルキル」又は「(ヘタ)アラルキル」という用語は、R’が場合によりアリール基又はヘテロアリール基であること以外は同様に解釈される。
「ハロアルキル」又は「ハロ低級アルキル」又は「低級ハロアルキル」という用語は、1個以上の炭素原子が1個以上のハロゲン原子で置換された1〜6個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖炭化水素残基のことをいう。
本明細書で使用される場合、「アルキレン」又は「アルキレニル」という用語は、特に断りがない限り、1〜10個の炭素原子の二価の飽和直鎖炭化水素基(例えば、(CH2)n)、又は2〜10個の炭素原子の分岐飽和二価炭化水素基(例えば、−CHMe−又は−CH2CH(i−Pr)CH2−)を指す。メチレンの場合を除いて、アルキレン基のオープン原子価(open valence)は、同じ原子に結合しない。アルキレン基の例として、メチレン、エチレン、プロピレン、2−メチル−プロピレン、1,1−ジメチル−エチレン、ブチレン、2−エチルブチレンが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用される場合、「アルコキシ」という用語は、メトキシ、エトキシ、n−プロピルオキシ、i−プロピルオキシ、n−ブチルオキシ、i−ブチルオキシ、t−ブチルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ(これらの異性体を含む)などの−O−アルキル基(ここで、アルキルは上記で定義される)を意味する。本明細書で使用される場合、「低級アルコキシ」は、上記で定義の「低級アルキル」基を備えるアルコキシ基を指す。本明細書で使用される場合、「C1−10アルコキシ」は、アルキルがC1−10である−O−アルキルのことをいう。
「PCy3」という用語は、3つの環式部分で三置換されたホスフィンのことをいう。
「ハロアルコキシ」又は「ハロ低級アルコキシ」又は「低級ハロアルコキシ」という用語は、1個以上の炭素原子が1個以上のハロゲン原子で置換された低級アルコキシ基のことをいう。
本明細書で使用される場合、「ヒドロキシアルキル」という用語は、異なる炭素原子上の1〜3個の水素原子が水酸基により置換されている、本明細書で定義されたアルキル基を指す。
本明細書で使用される場合、「アルキルスルホニル」及び「アリールスルホニル」という用語は、式−S(=O)2R[式中、Rは、それぞれ、アルキル又はアリールであり、アルキル及びアリールは、本明細書で定義される]で示される基のことをいう。本明細書で使用される場合、「ヘテロアルキルスルホニル」という用語は、本明細書において、式−S(=O)2R[式中、Rは、本明細書で定義される「ヘテロアルキル」である]で示される基のことをいう。
本明細書で使用される場合、「アルキルスルホニルアミノ」及び「アリールスルホニルアミノ」という用語は、式−NR’S(=O)2R[式中、Rは、それぞれ、アルキル又はアリールであり、R’は、水素又はC1−3アルキルであり、アルキル及びアリールは、本明細書で定義される]で示される基のことをいう。
本明細書で使用される場合、「シクロアルキル」という用語は、3〜8個の炭素原子を含む飽和炭素環、すなわち、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル又はシクロオクチルのことをいう。本明細書で使用される場合、「C3−7シクロアルキル」は、炭素環の3〜7個の炭素から構成されるシクロアルキルのことをいう。
本明細書で使用される場合、「カルボキシ−アルキル」という用語は、1個の水素原子がカルボキシルで置換されたアルキル部分のことをいい、但し、ヘテロアルキル基の結合点が炭素原子を介するものと理解されよう。「カルボキシ」又は「カルボキシル」という用語は−CO2H部分のことをいう。
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール」又は「複素芳香族」という用語は、1個以上のN、O又はSヘテロ原子を組み込み、残りの環原子が炭素である、環1個当たり4〜8個の原子を含有する少なくとも1つの芳香族環又は部分不飽和環を有する、5〜12個の環原子の単環式基又は二環式基を意味し、但し、ヘテロアリール基の結合点が芳香族環又は部分不飽和環にあるものと理解されよう。当業者に周知であるように、ヘテロアリール環は、全てが炭素であるその対応物よりも小さい芳香性を有する。したがって、本発明の目的のために、ヘテロアリール基はある程度の芳香性しか必要としない。ヘテロアリール部分の例として、5〜6個の環原子及び1〜3個のヘテロ原子を有する単環式芳香族複素環が挙げられ、ヒドロキシ、シアノ、アルキル、アルコキシ、チオ、低級ハロアルコキシ、アルキルチオ、ハロ、低級ハロアルキル、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、ハロゲン、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル及びジアルキルアミノアルキル、ニトロ、アルコキシカルボニル及びカルバモイル、アルキルカルバモイル、ジアルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、アルキルカルボニルアミノ及びアリールカルボニルアミノから選択される1個以上、好ましくは1個又は2個の置換基で場合により置換されてもよい、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、オキサジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、4,5−ジヒドロ−オキサゾリル、5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]オキサゾリル、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、トリアゾリン、チアジアゾール及びオキサジアゾリンが挙げられるが、これらに限定されない。二環式部分の例として、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、ナフチリジニル、5,6,7,8−テトラヒドロ−[1,6]ナフチリジニル、及びベンゾイソチアゾールが挙げられるが、これらに限定されない。二環式部分は、いずれかの環において場合により置換されてもよいが、結合点は、ヘテロ原子を含有する環にある。
本明細書で使用される場合、「ヘテロシクリル」、「ヘテロシクロアルキル」又は「複素環」という用語は、1個以上の環ヘテロ原子(N、O又はS(O)0−2から選択される)を組み込んだ、環1個当たり3〜8個の原子の、1個以上の環、好ましくは1〜2個の環(スピロ環系を含む)から構成される、一価飽和環式基を示し、これらは、特に断りがない限り、ヒドロキシ、オキソ、シアノ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級ハロアルコキシ、アルキルチオ、ハロ、低級ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ニトロ、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルアミノスルホニル、アリールアミノスルホニル、アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、アルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ及びそれらのイオン形態から選択される1個以上の、好ましくは、1個又は2個の置換基で場合により独立して置換されてもよい。複素環式基の例として、モルホリニル、ピペラジニル、ピペリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ヘキサヒドロアゼピニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、オキサゾリジニル、チアゾリジニル、イソオキサゾリジニル、テトラヒドロピラニル、チオモルホリニル、キヌクリジニル及びイミダゾリニル、及びそれらのイオン形態が挙げられるが、これらに限定されない。また、例として、例えば、3,8−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン、2,5−ジアザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン、又はオクタヒドロ−ピラジノ[2,1−c][1,4]オキサジンなどの二環式であってもよい。
Btkの阻害剤
本願は、式I
[式中:
Aは、低級アルキル、フェニル、CH
2R
1、OR
4、
であり;
R
1は、H、
であり;
R
2は、H又はハロであり、
R
3は、ハロであり;
R
4は、低級アルキルであり;
R
5は、低級アルキルであり;
R
6は、H又はハロであり;
Xは、C(=O)又はS(=O)
2であり;そして
Yは、CH又はNである]
で示される化合物又はその薬学的に許容しうる塩を提供する。
さらに、本明細書に開示される特定の残基A、R1、R2、R3、R4、R5、R6、Y及びXに関する各実施形態が、本明細書に開示される別の残基A、R1、R2、R3、R4、R5、R6、Y及びXに関する別の実施形態と組み合わせてもよいことが理解されよう。
本願は、式I[式中、XはC(=O)である]で示される化合物を提供する。
本願は、式I[式中、Aは
である]で示される化合物を提供する。
本願は、式I[式中、XはC(=O)であり、Aは
である]で示される化合物を提供する。
本願は、式I[式中、R6はHである]で示される化合物を提供する。
本願は、式I[式中、R6はClである]で示される化合物を提供する。
本願は、式I[式中、R
6はHであり、XはC(=O)であり、Aは
である]で示される化合物を提供する。
本願は、式I[式中、R
6はClであり、XはC(=O)であり、Aは
である]で示される化合物を提供する。
本願は、式I[式中、Aはメチル又はOR4であり、R4はt−ブチルである]で示される化合物を提供する。
本願は、式I[式中、Aはメチルである]で示される化合物を提供する。
本願は、式I[式中、Aはメチル又はOR4であり、R4はt−ブチルである]で示される化合物を提供する。
本願は、式I[式中、XはC(=O)であり、Aはメチルである]で示される化合物を提供する。
本願は、式I[式中、XはC(=O)であり、Aはメチル又はOR4であり、R4はt−ブチルである]で示される化合物を提供する。
本願は、式I[式中、Aは
であり、R
5はt−ブチルである]で示される化合物を提供する。
本願は、式I[式中、XはC(=O)であり、Aは
であり、R
5はt−ブチルである]で示される化合物を提供する。
本願は、式I[式中、YはNである]で示される化合物を提供する。
本願は、式I[式中、YはCHである]で示される化合物を提供する。
本願は、式I[式中、YはNであり、XはC(=O)であり、Aは
であり、R
5はt−ブチルである]で示される化合物を提供する。
本願は、式I[式中、YはCHであり、XはC(=O)であり、Aは
であり、R
5はt−ブチルである]で示される化合物を提供する。
本願は、式I[式中、Aは
である]で示される化合物を提供する。
本願は、式I[式中、R2はHである]で示される化合物を提供する。
本願は、式I[式中、R2はt−ブチルである]で示される化合物を提供する。
本願は、式I[式中、XはC(=O)であり、Aは
である]で示される化合物を提供する。
本願は、式I[式中、XはC(=O)であり、R
2はAであり、Aは
である]で示される化合物を提供する。
本願は、式I[式中、XはC(=O)であり、R
2はt−ブチルであり、Aは
である]で示される化合物を提供する。
本願は、式I[式中、XはS(=O)2であり、Aは、メチル、イソプロピル又はフェニルである]で示される化合物を提供する。
本願は、式I[式中、XはS(=O)2であり、Aはメチルである]で示される化合物を提供する。
本願は、式I[式中、XはS(=O)2であり、Aはイソプロピルである]で示される化合物を提供する。
本願は、式I[式中、XはS(=O)2であり、Aはフェニルである]で示される化合物を提供する。
本願は、式I[式中、Aは
であり、R
3はClである]で示される化合物を提供する。
本願は、式I[式中、XはC(=O)であり、Aは
であり、R
3はClである]で示される化合物を提供する。
本願は、
1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボン酸{(R)−1−[4−カルバモイル−5−(ピリジン−2−イルアミノ)−チアゾール−2−イル]−ピペリジン−3−イル}−アミド;
5−クロロ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボン酸{(R)−1−[4−カルバモイル−5−(ピリジン−2−イルアミノ)−チアゾール−2−イル]−ピペリジン−3−イル}−アミド;
{(R)−1−[4−カルバモイル−5−(ピリジン−2−イルアミノ)−チアゾール−2−イル]−ピペリジン−3−イル}−カルバミン酸tert−ブチルエステル;
6−tert−ブチル−N−{(R)−1−[4−カルバモイル−5−(ピリジン−2−イルアミノ)−チアゾール−2−イル]−ピペリジン−3−イル}−ニコチンアミド;
2−((R)−3−フェニルアセチルアミノ−ピペリジン−1−イル)−5−(ピリジン−2−イルアミノ)−チアゾール−4−カルボン酸アミド;
5−(ピリジン−2−イルアミノ)−2−[(R)−3−(2−m−トリル−アセチルアミノ)−ピペリジン−1−イル]−チアゾール−4−カルボン酸アミド;
2−[(R)−3−(4−tert−ブチル−ベンゾイルアミノ)−ピペリジン−1−イル]−5−(ピリジン−2−イルアミノ)−チアゾール−4−カルボン酸アミド;
2−((R)−3−メタンスルホニルアミノ−ピペリジン−1−イル)−5−(ピリジン−2−イルアミノ)−チアゾール−4−カルボン酸アミド;
2−((R)−3−ベンゼンスルホニルアミノ−ピペリジン−1−イル)−5−(ピリジン−2−イルアミノ)−チアゾール−4−カルボン酸アミド;
2−[(R)−3−(プロパン−2−スルホニルアミノ)−ピペリジン−1−イル]−5−(ピリジン−2−イルアミノ)−チアゾール−4−カルボン酸アミド;
2−{(R)−3−[2−(3−クロロ−フェニルアミノ)−アセチルアミノ]−ピペリジン−1−イル}−5−(ピリジン−2−イルアミノ)−チアゾール−4−カルボン酸アミド;及び
2−((R)−3−アセチルアミノ−ピペリジン−1−イル)−5−(ピリジン−2−イルアミノ)−チアゾール−4−カルボン酸アミドよりなる群から選択される式Iで示される化合物を提供する。
本願は、式Iで示される化合物の治療上有効な量を、必要とする患者に投与することを含む、炎症及び/又は自己免疫状態を処置するための方法を提供する。
本願は、式Iで示される化合物の治療上有効な量を、必要とする患者に投与することを含む、関節リウマチを処置するための方法を提供する。
本願は、式Iで示される化合物の治療上有効な量を、必要とする患者に投与することを含む、喘息を処置するための方法を提供する。
本願は、式Iで示される化合物を含有する医薬組成物を提供する。
本願は、少なくとも1種の薬学的に許容しうる担体、賦形剤又は希釈剤と混合して式Iで示される化合物を含有する医薬組成物を提供する。
本願は、治療上有効な物質としての上記化合物の使用を提供する。
本願は、炎症性障害を処置するための医薬の製造における式Iで示される化合物の使用を提供する。
本願は、自己免疫障害を処置するための医薬の製造における式Iで示される化合物の使用を提供する。
本願は、関節リウマチを処置するための医薬の製造における式Iで示される化合物の使用を提供する。
本願は、喘息を処置するための医薬の製造における式Iで示される化合物の使用を提供する。
本願は、炎症及び/又は自己免疫状態を処置するための上記化合物の使用を提供する。
本願は、関節リウマチを処置するための上記化合物の使用を提供する。
本願は、喘息の処置のための上記化合物の使用を提供する。
本願は、炎症及び/又は自己免疫状態の処置で使用するための上記化合物を提供する。
本願は、関節リウマチ又は喘息の処置で使用するための上記化合物を提供する。
本願は、本明細書に記載される化合物、方法又は組成物を提供する。
化合物及び調製
本発明に包含され、本発明の範囲内である代表的な化合物の例を以下の表に示す。下記の実施例及び調製例は、当業者が本発明をより明確に理解し、実施可能にするために提供される。これらは、本発明の範囲を限定するものではなく、単に本発明の例示及び代表例として考えられるべきである。
一般的に、本願で使用する命名法は、IUPAC系統命名法の作成のためのBeilstein Instituteコンピュータ化システムであるAUTONOMTM v. 4.0に基づく。図示された構造とその構造を示す名称に相違がある場合、図示された構造がより重視される。さらに、構造又は構造の一部の立体化学が、例えば太線又は破線で示されていない場合、その構造又は構造の一部は、その立体異性体の全てを包含すると解釈されるべきである。
表Iに、一般式Iで示される化合物の例を示す:
一般合成スキーム
本発明の化合物は任意の従来の手段によって調製されうる。これらの化合物を合成するための適切な方法は実施例で提供する。一般的に、本発明の化合物は下記のスキームにしたがって調製されうる。
本発明で特許請求される化合物は、スキーム1で示される経路によって調製できる。
合成順序の第1の工程では、市販の2−ブロモチアゾール−4−カルボニトリル2を、ピペリジン−3−イル−カルバミン酸tert−ブチルエステル3などの適切に置換されたピペリジン誘導体と結合させて、式4で示される2−ピペリジニル置換チアゾール誘導体を生成する。ピペリジン環式第二級アミンと2−ブロモチアゾールとのカップリングは、2つの有機基質間の効率的なクロスカップリングを促進する適切なホスフィン系配位子の存在下、かつパラジウム(0)触媒下で行うことができる。複素芳香族ハロゲン化物とアミンを効率的にカップリングするための条件の多くの変形が、化学文献(Chem. Sci., 2011, 2, 27)で知られており、パラジウム(0)触媒前駆体、ホスフィン配位子、塩基、反応温度、溶媒、試薬の化学量論及び濃度の変化を含む。2−ブロモチアゾール2と置換ピペリジン3のカップリングを行うための好ましい条件は、パラジウム(0)源としてtris−(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(CAS番号51364−51−3)、ホスフィン配位子として2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−3,6−ジメトキシ−2’,4’,6’−tri−イソプロピル−1,1’−ビフェニル(BrettPhos、CAS番号1070663−78−3)、塩基として炭酸セシウムを使用し、95℃で加熱したtert−ブタノール中で反応を行うことである。
合成順序の第2の工程では、化合物4のチアゾール環の5位に臭素原子を導入する。この変換を行うための好ましい条件は、DMF中、わずかに化学量論的に過剰のN−ブロモスクシンイミドを使用することである。これらの条件下では、反応時間が短く、良好な収率でチアゾールブロミド5を手際よく得ることができる。異なる臭素原子移動試薬(bromine atom transfer reagent)及び/又は反応条件を用いる他の臭素化条件も同様に効率的でありうる。
合成順序の第3の工程では、チアゾールブロミド5をアミンと反応させて、置換窒素原子で臭素原子を置換し、アミノ置換チアゾールを生成する。反応するアミンが2−アミノピリジンである場合、生成物は2−アミノピリジン置換チアゾール6となる。この変換は、2個の有機基質間の効率的なクロスカップリングを促進する適切なホスフィン系配位子の存在下で、パラジウム(0)を触媒として使用することで最もよく行われる。効率的に複素芳香族ハロゲン化物とアミンをカップリングするための条件の多くの変形が、化学文献(Chem. Sci., 2011, 2, 27)で知られており、パラジウム(0)触媒前駆体、ホスフィン配位子、塩基、反応温度、溶媒、試薬の化学量論及び濃度の変化を含む。5−ブロモチアゾール5と2−アミノピリジンのカップリングを行うための好ましい条件は、パラジウム(0)源としてジ−パラジウムtris−ジベンジリデンアセトン、ホスフィン配位子として4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン(Xantphos、CAS番号161265−03−8)、塩基として三塩基性リン酸カリウムを使用し、110℃で加熱したp−ジオキサン中で反応を行うことである。
合成順序の第4の工程では、化合物6のチアゾール環の4位におけるニトリルを第一級カルボキサミドに変換する。塩基又は酸の水溶液の使用を含む、第一級カルボキサミドを生成するニトリルの加水分解について、多くの条件が報告されている。出発物質6及び生成物7に存在する他の官能性に適合する、この反応を行なうための好ましい条件は、テトラヒドロフランと水の加熱混合物中でヒドリド(ジメチルホスフィナス酸−kP)[水素ビス(ジメチルホスフィニト−kP]白金(II)(Parkins触媒、CAS番号173416−05−2、J. Mol. Catal. A: Chem. 2000, 160, 249; Organic Letters 2007, 9, 227)を使用することである。
ピペリジン環の環外窒素を官能化するために、合成順序の第5の工程でtert−ブチルオキシカルボニル基を除去する。tert−ブチルオキシカルボニル基は、通常、酸性条件下で除去する。化合物7の環外窒素からtertブチルオキシカルボニル基を除去するための好ましい条件は、周囲温度でジクロロメタン中のトリフルオロ酢酸の1:1混合物で処理することである。これらの条件下では、第一級アミン8は、最初、対応するトリフルオロ酢酸塩として生成され、炭酸水素ナトリウムなどの適切な塩基の水溶液と有機溶媒の間の分配のような別の工程で遊離塩基に変換できる。あるいは、8の中和は、トリエチルアミン又はジイソプロピルエチルアミンなどの有機第三級アミン塩基の付加による第一級アミンの官能基化と共にin situで行うことができる。
本発明で特許請求される化合物である一般式1で示される化合物は、化合物8に存在する第一級アミンの誘導体化により調製される。第一級アミンがアミドに変換される場合、アミンは、第三級アミン塩基の存在下で、塩化アシルなどのアシル化剤と反応させて遊離酸を捕捉しても、又はO−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HBTU、CAS番号94790−37−1)などのペプチドカップリング試薬の存在下で、カルボン酸で縮合してもよい。あるいは、第一級アミンは、塩化スルフォニルとの反応によりスルホンアミドに変換することもできる。あるいは、第一級アミンは、事前に生成したイソシアナートとの反応により尿素に変換しても、又はアミンをイソシアナートに変換してから第2の第一級アミン若しくは第二級アミンを含有する試薬との反応により、若しくはアミン8が、カルボニルに結合した2個の不安定基を含むカルバナートと反応するようにカルバマートと反応してまず反応性カルバマートを生成し、第一級アミン若しくは第二級アミンの第2の相当物と反応して尿素を生成してもよい。アミンの第2の相当物の代わりにアルコールを用いる場合、得られる生成物はカルバミン酸エステルとなる。あるいは、第一級アミンは、置換クロロギ酸エステル又は同等の試薬と第一級アミンの反応により直接カルバミン酸エステルに変換することができる。
スキーム1で示される合成順序が本願で特許請求される化合物の調製の単に1つの方法であり、各工程に関与する変換に提案された試薬及び条件が特定の誘導体に最適でなくてもよいことが有機化学の当業者に明らかであろう。有機化学の当業者が、本願で提供される例を参照し、かつ化学文献の他で公開された好適な例を参照することにより、スキーム1に記載の変換を行なうための条件を導くか、又は適切な試薬を見出すことが可能であることが予測されよう。
医薬組成物及び投与
本発明の化合物は、多種多様な経口投与剤形及び担体に配合されてもよい。経口投与は、錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬質及び軟質のゼラチンカプセル剤、液剤、乳剤、シロップ剤又は懸濁剤の形態でありうる。本発明の化合物は、他の投与経路のうち、持続的(静脈内滴注)、局所的、非経口的、筋肉内、静脈内、皮下、経皮的(浸透向上剤を含みうる)、口腔内、鼻腔内、吸入及び坐剤投与を含む他の投与経路により投与される場合に有効である。好ましい投与方法は、一般に、罹患の程度及び有効成分に対する患者の反応により調整できる便利な1日投与計画を使用する経口である。
本発明の化合物(1種又は複数)及びその薬学的に使用しうる塩は、1種以上の従来の賦形剤、担体、又は希釈剤と一緒に、医薬組成物及び単位投与の形態にしてもよい。医薬組成物及び単位投与剤形は、従来の成分を従来の割合で含むことができ、追加の活性化合物又は活性成分を含んでも含まなくてもよく、単位投与剤形は、使用すべき目的の一日投与量範囲に相当する任意の適切な有効量の有効成分を含有することができる。医薬組成物は、錠剤若しくは充填カプセル剤、半固形剤、粉末剤、徐放性製剤などの固体として;又は液剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤若しくは経口用の充填カプセル剤などの液体として;又は直腸内若しくは膣内投与用の坐剤の形態で;又は非経口用の滅菌注射液剤の形態で用いることができる。典型的な調合剤は、約5%〜約95%の活性化合物(1種又は複数)(w/w)を含有する。「調合剤」又は「投与剤形」という用語は、活性化合物の固体製剤と液体製剤の両方を包含することを意図し、当業者であれば、標的の臓器又は組織、並びに所望の用量及び薬物動態パラメーターに応じて異なる調合剤に有効成分が存在できることが理解されよう。
本明細書で使用される場合、「賦形剤」という用語は、一般的に安全で無毒であり、生物学的にもその他の面でも不適切でない、医薬組成物を調製するのに有用な化合物のことをいい、ヒトへの薬学的使用だけでなく獣医学的使用にも許容しうる賦形剤が含まれる。本発明の化合物は、単独で投与できるが、一般的に、意図する投与経路及び標準的な薬務を考慮して選択される1種以上の適切な医薬賦形剤、希釈剤又は担体と混合して投与される。
「薬学的に許容しうる」とは、一般的に安全で無毒であり、生物学的にもその他の面でも不適切でない医薬組成物を調製するのに有用なことを意味し、ヒトへの薬学的使用だけでなく獣医学的使用にも許容しうることを包含する。
有効成分の「薬学的に許容しうる塩」の形態はまた、非塩形態で存在しなかった有効成分に所望の薬物動態特性をまず付与することができ、さらに、体内での有効成分の治療活性に対して、有効成分の薬力学に正の影響を与えうる。化合物の「薬学的に許容しうる塩」という語句は、薬学的に許容しうるものであり、親化合物の所望の薬理活性を有する塩を意味する。このような塩として:(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸で形成される酸付加塩;又は、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクタ−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert−ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などの有機酸で形成される酸付加塩;又は(2)親化合物に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、若しくはアルミニウムイオンにより置換されるか;又はエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミンなどの有機塩基と配位結合すると形成される塩が挙げられる。
固体形態の調合剤には、粉末剤、錠剤、ピル剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤及び分散性顆粒剤が含まれる。固体担体は、希釈剤、着香剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁剤、結合剤、防腐剤、錠剤崩壊剤、又は封入材料としても作用しうる1種以上の物質であってよい。粉剤では、担体は、一般的に、微粉化活性成分との混合物である微粉化固体である。錠剤では、活性成分は、一般的に、必要な結合性を有する担体と適切な割合で混合され、所望の形状とサイズに圧縮される。適切な担体として、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、乳糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ロウ、カカオバターなどが挙げられるが、これらに限定されない。固体形態の調合剤には、活性成分の他に、着色料、香味料、安定剤、緩衝剤、人工及び天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などが含まれてもよい。
液体製剤もまた経口投与に適しており、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、水溶液剤、水性懸濁剤などの液体製剤が含まれる。これらには、使用直前に液体形態の調合剤に変換されることが意図される固体形態の調合剤が含まれる。乳剤は、溶液、例えば、プロピレングリコール水溶液で調製されてもよく、レシチン、ソルビタンモノオレアート又はアカシアなどの乳化剤を含有してもよい。水性液剤は、活性成分を水に溶解させ、適切な着色料、香味料、安定剤及び増粘剤を加えることにより調製することができる。水性懸濁剤は、微粉化した活性成分を、天然又は合成ガム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び他の周知の懸濁剤など粘性物質と共に水に分散させることにより調製することができる。
本発明の化合物は、非経口投与(例えば、ボーラス注入又は持続注入などの注射などによる)用に製剤化されても、アンプル剤、充填済注射器、小量注入液の単位用量剤形、又は防腐剤を添加した又は多回投与容器で提供されてもよい。組成物は、油性媒体又は水性媒体中の懸濁剤、液剤又は乳剤、例えばポリエチレングリコール水溶液中の液剤のような形態をとってもよい。油性又は非水性の担体、希釈剤、溶媒又は媒体の例として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油)、及び注射用有機酸エステル(例えば、オレイン酸エチル)が挙げられ、防腐剤、湿潤剤、乳化剤又は懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤のような配合剤が含まれてもよい。あるいは、活性成分は、滅菌固体の無菌分離によるか、又は適切な媒体、例えば滅菌した発熱物質を含まない水を用いて、使用前の構成用溶液から凍結乾燥することにより得られる粉末形態であってよい。
本発明の化合物は、軟膏剤、クリーム剤若しくはローション剤として、又は経皮パッチ剤として、表皮への局所投与用に製剤化することができる。軟膏剤及びクリーム剤は、例えば、水性又は油性の基剤を用い、適切な増粘剤及び/又はゲル化剤を加えることにより製剤化することができる。ローション剤は、水性又は油性の基剤を用いて製剤化することができ、一般的に、1種以上の乳化剤、安定剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤又は着色剤も含有する。腔内への局所投与に適切な調合剤として、着香基剤、通常、スクロース及びアカシア又はトラガカント中に活性剤を含むロゼンジ剤;ゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシアなどの不活性基剤中に有効成分を含むパステル剤;並びに適切な液体担体中に有効成分を含む口内洗浄液が挙げられる。
本発明の化合物は、坐剤としての投与用に製剤化することができる。脂肪酸グリセリド又はカカオバターの混合物のような低融点ロウを最初に溶融し、例えば撹拌により有効成分を均質に分散する。次に、溶融均質混合物を、都合のよい大きさの成形型に注ぎ、冷却し、凝固させる。
本発明の化合物は、膣内投与用に製剤化することができる。ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレーは、有効成分の他に、当技術分野において適切であることが知られている担体を含有する。
本発明の化合物は、鼻腔内投与用に製剤化することができる。液剤又は懸濁剤を、従来の方法、例えば、滴瓶、ピペット又はスプレーを用いて直接鼻腔に適用する。製剤は、単回投与又は多回投与剤形で提供することができる。滴瓶又はピペットの後者の場合、適切で所定の容量の液剤又は懸濁剤を患者に投与することで、これを達成できる。スプレーの場合、例えば定量噴霧スプレーポンプを用いて達成できる。
本発明の化合物は、特に、鼻腔内投与を含む、気道へのエアロゾル投与用に製剤化することができる。化合物は、一般的に、例えば、5ミクロン以下程度の小さい粒径を有する。このような粒径は、当技術分野において公知の方法、例えば微粒子化により得ることができる。有効成分は、クロロフルオロカーボン(CFC)、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン若しくはジクロロテトラフルオロエタン、又は二酸化炭素、又は他の適切な気体などの適切な噴射剤を用いた加圧パックで提供される。エアロゾルは、レシチンなどの界面活性剤を都合よく含有することもできる。薬物の用量を計量弁によりコントロールしてもよい。あるいは、有効成分は、乾燥粉末、例えば、ラクトース、デンプン、デンプン誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルピロリジン(PVP))などの適切な粉末基剤中の化合物の粉末混合物の形態で提供することができる。粉末担体は、鼻腔内でゲルを形成する。粉末組成物は、単位用量剤形で、例えば、吸入器を用いて粉末を投与できる、例えば、ゼラチンパック又はブリスターパックのカプセル又はカートリッジで提供することができる。
必要に応じて、製剤は、有効成分の徐放投与又は放出制御投与に適合した腸溶コーティングを用いて調製することができる。例えば、本発明の化合物は、経皮又は皮下薬物送達装置に配合できる。これらの送達システムは、化合物の徐放が必要である場合、及び処置計画に対する患者のコンプライアンスが重要である場合に有利である。経皮送達システムでの化合物は、皮膚付着固体支持体に固定されていることが多い。目的の化合物を、浸透促進剤、例えばアゾン(1−ドデシルアザ−シクロヘプタン−2−オン)と組み合わせることもできる。徐放送達システムは、手術又は注射により皮下層に皮下的に挿入される。皮下インプラントは、脂溶性膜、例えばシリコーンゴム又は生分解性ポリマー、例えばポリ乳酸(polyactic acid)に化合物を封入する。
適切な製剤は、医薬担体、希釈剤及び賦形剤と共に、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 1995, edited by E. W. Martin, Mack Publishing Company, 19th edition, Easton, Pennsylvaniaに記載されている。熟練の製剤科学者であれば、本発明の組成物を不安定にすることなく又はそれらの治療活性を損なうことなく、特定の投与経路で多くの製剤を提供するために、本明細書の教示の範囲内で製剤を改変することができる。
水又はその他の媒体に溶解されやすくするための本化合物の改変は、例えば、小さな改変(塩製剤、エステル化など)によって容易に達成することができ、これらの改変は十分に当技術分野における通常の技術の範囲内である。また、患者への最大の有益な効果を目的として本化合物の薬物動態を管理するために、特定の化合物の投与経路及び投与計画を変更することも十分に当技術分野における通常の技術の範囲内である。
本明細書で使用される場合、「治療上有効な量」という用語は、個体の疾患の症状を軽減させるのに必要な量を意味する。用量は、各特定の症例において個々の要件に対して調整される。投与量は、例えば、処置される疾患の重症度、患者の年齢及び総体的な健康状態、患者の処置に用いられている他の薬品、投与経路及び形態、並びに担当医の選択及び経験などの多くの要因に応じて、広い範囲内で変更することができる。経口投与の場合、単剤療法及び/又は併用療法では、一日当たり約0.01から約1000mg/kg体重の一日投与量が適切であろう。好ましい一日投与量は、一日当たり約0.1から約500mg/kg体重、より好ましくは0.1から約100mg/kg体重、最も好ましくは1.0から約10mg/kg体重である。したがって、70kgの人への投与では、投与量範囲は、一日当たり約7mg〜0.7gであろう。一日投与量は、単回投与量又は分割投与量、典型的には、一日当たり1〜5回の投与量で投与することができる。一般的に、処置は、化合物の最適用量より少ない投与量で開始する。その後、個々の患者に最適な効果が得られるまで、投与量を少量ずつ増やしていく。本明細書に記載される疾患を処置する当業者であれば、必要以上の実験をすることなく、個人の知識、経験及び本願の開示を頼りに、特定の疾患及び患者に対して本発明の化合物の治療上有効な量を確定することができるであろう。
本医薬調合剤は、好ましくは単位投与剤形である。そのような剤形では、調合剤は、適正量の活性成分を含有する単位用量に細分される。単位投与剤形は、パッケージ調合剤であってよく、このパッケージは、パケット錠剤(packeted tablet)、カプセル剤、及びバイアル又はアンプル中の粉剤のような、別個の分量の調合剤を含有する。また、単位投与剤形は、カプセル剤、錠剤、カシェ剤又はトローチ剤自体であってもよく、適切な数のこれらのいずれかがパッケージ化された形態であってもよい。
症状及び処置の方法
一般式Iで示される化合物はブルトン型チロシンキナーゼ(Btk)を阻害する。上流のキナーゼによるBtkの活性化により、ホスホリパーゼ−Cγが活性化され、次に、前炎症性メディエーターの放出が刺激される。式Iで示される化合物は、関節炎並びに他の抗炎症性及び自己免疫性疾患の処置に有用である。したがって、式Iで示される化合物は、関節炎の処置に有用である。式Iで示される化合物は、細胞でのBtkの阻害、B細胞発生のモデュレーションに有用である。本発明は、さらに、薬学的に許容しうる担体、賦形剤又は希釈剤と混合して式Iで示される化合物を含有する医薬組成物を含む。
本明細書に記載の化合物は、キナーゼ阻害剤、特にBtk阻害剤である。これらの阻害剤は、哺乳動物において、Btk阻害及び/又はB細胞増殖の阻害に応答する疾患を含む、キナーゼ阻害に応答する1種以上の疾患を処置するのに有用でありうる。いかなる特定の理論にも束縛されないが、本発明の化合物とBtkとの相互作用によりBtk活性が阻害され、それによってこれらの化合物の薬学的有用性が生じると考えられる。したがって、本発明は、Btk活性の阻害及び/又はB細胞増殖の阻害に応答する疾患を有する哺乳動物、例えば、ヒトを処置する方法であって、そのような疾患を有する哺乳動物に、本明細書で提供される少なくとも1種の化学物質の有効量を投与することを含む方法を含む。有効濃度は、実験的に、例えば、化合物の血中濃度をアッセイすることにより、又は理論的に、生物学的利用能を計算することにより確定することができる。Btkの他に影響を受けうるその他のキナーゼとして、その他のチロシンキナーゼ及びセリン/トレオニンキナーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
キナーゼは、増殖、分化及び死(アポトーシス)などの基本的な細胞プロセスをコントロールするシグナル伝達経路において特筆すべき役割を果たしている。異常キナーゼ活性は、多発性癌、自己免疫性及び/又は炎症性疾患並びに急性炎症反応を含む、広範な疾患に関与している。重要な細胞のシグナル伝達経路におけるキナーゼの多面的な役割は、キナーゼ及びシグナル伝達経路をターゲティングする新規薬物を同定する重要な機会を提供する。
一実施形態には、Btk活性及び/又はB細胞増殖の阻害に応答する、自己免疫性及び/若しくは炎症性疾患又は急性炎症反応を有する患者を処置する方法が含まれる。
本発明の化合物及び組成物を使用して作用しうる自己免疫性及び/又は炎症性疾患として:乾癬、アレルギー、クローン病、過敏性腸症候群、シェーグレン病、組織移植片拒絶反応、及び移植臓器の超急性拒絶反応、喘息、全身性エリテマトーデス(及び関連した糸球体腎炎)、皮膚筋炎、多発性硬化症、強皮症、血管炎(ANCA関連血管炎及びその他の血管炎)、自己免疫性溶血状態及び血小板減少状態、グッドパスチャー症候群(並びに関連した球体腎炎及び肺出血)、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、慢性特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、アジソン病、パーキンソン病、アルツハイマー病、糖尿病、敗血性ショック、及び重症筋無力症が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書に提供される少なくとも1種の化学物質を抗炎症剤と組み合わせて投与する処置の方法が本明細書に含まれる。抗炎症剤として、NSAID、非特異的及びCOX−2特異的シクロオキシゲナーゼ酵素阻害剤、金化合物、コルチコステロイド、メトトレキサート、腫瘍壊死因子レセプター(TNF)レセプターアンタゴニスト、免疫抑制剤及びメトトレキサートが挙げられるが、これらに限定されない。
NSAIDの例として、イブプロフェン、フルルビプロフェン、ナプロキセン及びナプロキセンナトリウム、ジクロフェナク、ジクロフェナクナトリウムとミソプロストールの組み合わせ、スリンダク、オキサプロジン、ジフルニサル、ピロキシカム、インドメタシン、エトドラク、フェノプロフェンカルシウム、ケトプロフェン、ナトリウムナブメトン、スルファサラジン、トルメチンナトリウム並びにヒドロキシクロロキンが挙げられるが、これらに限定されない。NSAIDの例として、セレコキシブ、バルデコキシブ、ルミラコキシブ及び/又はエトリコキシブなどのCOX−2特異的阻害剤も挙げられる。
いくつかの実施形態では、抗炎症剤はサリチル酸塩である。サリチル酸としては、アセチルサリチル酸(すなわち、アスピリン)、サリチル酸ナトリウム、並びにサリチル酸コリン及びサリチル酸マグネシウムが挙げられるが、これらに限定されない。
抗炎症剤は、コルチコステロイドであってもよい。例えば、コルチコステロイドは、コルチゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、又はプレドニゾンであってもよい。
追加の実施形態では、抗炎症剤は、金チオリンゴ酸ナトリウム又はオウラノフィンなどの金化合物である。
本発明はまた、抗炎症剤が、メトトレキサートなどのジヒドロ葉酸還元酵素阻害剤、又はレフルノミドなどのジヒドロオロチン酸脱水素酵素阻害剤などの代謝阻害剤である実施形態も包含する。
本発明の他の実施形態は、少なくとも1種の抗炎症性化合物が、抗C5モノクローナル抗体(エクリズマブ又はパキセリズマブなど)、エタネルセプト(entanercept)などのTNFアンタゴニスト、又は抗TNFαモノクローナル抗体であるインフリキシマブである、組み合わせに関する。
本発明のさらに別の実施形態は、少なくとも1種の活性剤が、メトトレキサート、レフルノミド、シクロスポリン、タクロリムス、アザチオプリン、及びミコフェノール酸モフェチルから選択される免疫抑制化合物などの免疫抑制化合物である、組み合わせに関する。
BTKを発現するB細胞及びB細胞前駆体は、B細胞悪性腫瘍の病状に関与しており、B細胞悪性腫瘍として、B細胞リンパ腫、リンパ腫(ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫を含む)、ヘアリー細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、慢性及び急性骨髄性白血病、並びに慢性及び急性リンパ性白血病が挙げられるが、これらに限定されない。
BTKは、B系統リンパ球細胞においてFas/APO−1(CD−95)死を誘導するシグナル伝達複合体(DISC)の阻害剤であることを示されている。白血病/リンパ腫細胞の運命は、DISCにより活性化されたカスパーゼの対抗アポトーシス促進効果と、BTK及び/又はその基質が関与する上流抗アポトーシス調節機構とのバランスにありうる(Vassilev et al., J. Biol. Chem. 1998, 274, 1646-1656)。
BTK阻害剤はまた、化学療法増感剤(chemosensitizing agent)として有用であるため、他の化学療法剤、特にアポトーシスを誘導する薬物との併用に有用であることも発見された。化学療法増感性のBTK阻害剤と併用できる他の化学療法薬の例として、トポイソメラーゼI阻害剤(カンプトテシン又はトポテカン)、トポイソメラーゼII阻害剤(例えば、ダウノマイシン及びエトポシド)、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、メルファラン及びBCNU)、チューブリン標的剤(tubulin directed agent)(例えば、タキソール及びビンブラスチン)、及び生物学的薬剤(例えば、抗CD20抗体などの抗体、IDEC8、免疫毒素、及びサイトカイン)が挙げられる。
Btk活性はまた、9番及び22番染色体の一部の転座から生じるbcr−abl融合遺伝子を発現するいくつかの白血病にも関係している。この異常は、通常、慢性骨髄性白血病で確認される。Btkは、bcr−ablキナーゼにより恒常的にリン酸化され、これにより下流の生存シグナルが開始し、bcr−abl細胞のアポトーシスが回避される(N. Feldhahn et al. J. Exp. Med. 2005 201(11):1837-1852)。
処置の方法
本願は、式Iで示される化合物の治療上有効な量を、必要とする患者に投与することを含む、炎症及び/又は自己免疫状態を処置するための方法を提供する。
本願は、式Iで示される化合物の治療上有効な量を、必要とする患者に投与することを含む、炎症状態を処置するための方法を提供する。
本願は、式Iで示される化合物の治療上有効な量を、必要とする患者に投与することを含む、関節リウマチを処置するための方法を提供する。
本願は、式Iの治療上有効な量を、必要とする患者に投与することを含む、喘息を処置するための方法を提供する。
本願は、式Iで示されるBtk阻害化合物の治療上有効な量を、必要とする患者に投与することを含む、炎症及び/又は自己免疫状態を処置するための方法を提供する。
本願は、式Iで示されるBtk阻害化合物の治療上有効な量を、必要とする患者に投与することを含む、関節炎を処置するための方法を提供する。
本願は、式Iで示されるBtk阻害化合物の治療上有効な量を、必要とする患者に投与することを含む、喘息を処置するための方法を提供する。
本願は、式Iで示されるBtk阻害化合物の治療上有効な量を、必要とする患者に投与することを含む、B細胞増殖を阻害する方法を提供する。
本願は、式Iのいずれか1種のBtk阻害化合物を投与することを含むBtk活性を阻害するための方法であって、Btk阻害化合物が、Btk活性のin vitro生化学アッセイで50マイクロモル以下のIC50を示す、方法を提供する。
上記方法の1つの変形では、Btk阻害化合物は、Btk活性のin vitro生化学アッセイで100ナノモル以下のIC50を示す。
上記方法の別の変形では、化合物は、Btk活性のin vitro生化学アッセイで10ナノモル以下のIC50を示す。
本願は、式Iで示されるBtk阻害化合物と組み合わせて、抗炎症性化合物の治療上有効な量を、必要とする患者に同時投与することを含む、炎症状態を処置するための方法を提供する。
本願は、式Iで示されるBtk阻害化合物と組み合わせて、抗炎症性化合物の治療上有効な量を、必要とする患者に同時投与することを含む、関節炎を処置するための方法を提供する。
本願は、式Iで示されるBtk阻害化合物の治療上有効な量を、必要とする患者に投与することにより、リンパ腫又はBCR−ABL1+白血病細胞を処置するための方法を提供する。
実施例
一般的な略語
一般的に使用される略語には、アセチル(Ac)、アゾ−ビス−イソブチリルニトリル(AIBN)、大気(Atm)、9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン(9−BBN又はBBN)、2、2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(BINAP)、tert−ブトキシカルボニル(Boc)、ジ−tert−ブチルピロカーボナート又はboc無水物(BOC2O)、ベンジル(Bn)、ブチル(Bu)、Chemical Abstracts Registration Number(CASRN)、ベンジルオキシカルボニル(CBZ又はZ)、カルボニルジイミダゾール(CDI)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、三フッ化ジエチルアミノ硫黄(DAST)、ジベンジリデンアセトン(dba)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1,2−ジクロロエタン(DCE)、ジクロロメタン(DCM)、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)、アゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)、ジ−イソ−プロピルアゾジカルボキシラート(DIAD)、ジ−イソ−ブチルアルミニウム水素化物(DIBAL又はDIBAL−H)、ジ−イソ−プロピルエチルアミン(DIPEA)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、4−N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,1’−ビス−(ジフェニルホスフィノ)エタン(dppe)、1,1’−ビス−(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(dppf)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCI)、2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリン(EEDQ)、エチル(Et)、酢酸エチル(EtOAc)、エタノール(EtOH)、2−エトキシ−2H−キノリン−1−カルボン酸エチルエステル(EEDQ)、ジエチルエーテル(Et2O)、エチルイソプロピルエーテル(EtOiPr)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート酢酸(HATU)、酢酸(HOAc)、1−N−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、イソ−プロパノール(IPA)、イソプロピルマグネシウムクロリド(iPrMgCl)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、液体クロマトグラフィー質量分析(LCMS)、リチウムヘキサメチルジシラザン(LiHMDS)、メタ−クロロ過安息香酸(m−CPBA)、メタノール(MeOH)、融点(mp)、MeSO2−(メシル又はMs)、メチル(Me)、アセトニトリル(MeCN)、m−クロロ過安息香酸(MCPBA)、質量スペクトル(ms)、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)、メチルテトラヒドロフラン(MeTHF)、N−ブロモスクシンイミド(NBS)、n−ブチルリチウム(nBuLi)、N−カルボキシ無水物(NCA)、N−クロロスクシンイミド(NCS)、N−メチルモルホリン(NMM)、N−メチルピロリドン(NMP)、クロロクロム酸ピリジニウム(PCC)、ジクロロ−((ビス−ジフェニルホスフィノ)フェロセニル)パラジウム(II)(Pd(dppf)Cl2)、酢酸パラジウム(II)(Pd(OAc)2)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd2(dba)3)、ジクロム酸ピリジニウム(PDC)、フェニル(Ph)、プロピル(Pr)、イソ−プロピル(i−Pr)、ポンド/平方インチ(psi)、ピリジン(pyr)、1,2,3,4,5−ペンタフェニル−1’−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)フェロセン(Q−Phos)、室温(周囲温度、rt又はRT)、sec−ブチルリチウム(sBuLi)、tert−ブチルジメチルシリル又はt−BuMe2Si(TBDMS)、フッ化テトラ−n−ブチルアンモニウム(TBAF)、トリエチルアミン(TEA又はEt3N)、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル(TEMPO)、トリメチルシリルエトキシメチル(SEM)、トリフラート又はCF3SO2−(Tf)、トリフルオロ酢酸(TFA)、1,1’−ビス−2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−2,6−ジオン(TMHD)、O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(TBTU)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、テトラヒドロフラン(THF)、トリメチルシリル又はMe3Si(TMS)、p−トルエンスルホン酸一水和物(TsOH又はpTsOH)、4−Me−C6H4SO2−又はトシル(Ts)、N−ウレタン−N−カルボキシ無水物(UNCA)を含む。接頭語ノルマル(n)、イソ(i−)、第二級(sec−)、第三級(tert−)及びネオを含む従来の命名法は、アルキル部分と共に使用する場合それらの慣用的な意味を有する(J. Rigaudy and D. P. Klesney, Nomenclature in Organic Chemistry, IUPAC 1979 Pergamon Press, Oxford.)。
一般的な条件
本発明の化合物は、当業者に公知の一般的な合成技術及び手法を利用することにより、市販の出発物質で開始して調製することができる。下記の概要はそのような化合物を調製するのに適切な反応スキームである。さらなる例示を特定の実施例で確認することができる。
特定の略語
boc tert−ブトキシカルボニル
CH2Cl2 ジクロロメタン
Cs2CO3 炭酸セシウム
DCM ジクロロメタン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
EtOAc 酢酸エチル
HATU O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート
ヒューニッヒ塩基 N,N−ジイソプロピルエチルアミン
HCl 塩化水素
LC−MS 液体クロマトグラフィー質量分析
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
MeOH メチルアルコール
MgSO4 硫酸マグネシウム
nBuLi n−ブチルリチウム
NaCl 塩化ナトリウム
Na2CO3 炭酸ナトリウム
NaOMe ナトリウムメトキシド
Na2SO4 硫酸ナトリウム
NH4OH 水酸化アンモニウム
NMP 1−メチル−2−ピロリジノン
NMR 核磁気共鳴
Pd(OAc)2 酢酸パラジウム(II)
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TLC 薄層クロマトグラフィー
TMSCl トリメチルシリルクロリド
一般的な実験の詳細
試薬は、Aldrich、Oakwood、Matrix又は他の供給業者から購入し、さらに精製せずに使用した。加熱にマイクロ波照射を用いる反応は、Personal Chemistry Emrys Optimizer System又はCEM Discovery Systemのいずれかを用いて行った。シリカゲルフラッシュカラムの溶離などの当業者に公知の方法により数ミリグラムから数グラムのスケールの精製を行い;いくつかの事例では、CombiFlashシステムで溶出するディスポーザルのプレパックマルチグラムシリカゲルカラム(RediSep)の使用により分取フラッシュカラム精製を行った。Biotage(商標)及びISCO(商標)もまた、中間体の精製のために本発明で使用しうるフラッシュカラム装置である。
化合物の同一性及び純度を判定する目的で、以下のシステムを使用してLC/MS(液体クロマトグラフィー/質量分析)スペクトルを記録した。質量スペクトルの測定では、システムは、Micromass Platform II 分光計:ポジティブモードのES Ionization(質量範囲:150〜1200)から構成されている。同時クロマトグラフィー分離は、次のHPLCシステムで行った:ES Industries Chromegabond WR C-18 3u 120Å(3.2×30mm)カラムカートリッジ;移動相A:水(0.02%TFA)及び移動相B:アセトニトリル(0.02%TFA);3分間で10%Bから90%Bの勾配;平衡時間1分間;流速2mL/分。
式1で示される多くの化合物もまた、当業者に周知の方法を使用して、逆相HPLCにより精製した。いくつかの例では、株式会社島津製作所製の分取HPLCシステム及びLeap自動注入装置に取り付けられたGilson 215コレクターをコントロールするPE Sciex 150 EX Mass Specを使用して分取HPLC精製を行った。陽イオン検出においてLC/MS検出を使用して溶出の流れから化合物を回収し:C−18カラム(2.0×10cm、20ml/分で溶出)から化合物の溶出は、溶媒(A)0.05% TFA/H2O及び溶媒(B)0.035% TFA/アセトニトリルを10分間にわたり適切な直線勾配モードを使用して行った。HPLCシステムに注入するために、メタノール、アセトニトリル及びDMSOの混合物に粗試料を溶解した。
また、Bruker 400 MHz NMR Spectrometerを用いた1H−NMRにより、化合物の特徴を明らかにした。
本発明の化合物は、公知の技術により合成されうる。以下の実施例及び参照例は本発明の理解を補助するために提供される。しかしながら、実施例は本発明を限定することを意図しておらず、その真の範囲は添付の特許請求の範囲に記載される。実施例での最終生成物の名前はIsis AutoNom 2000を用いて作成した。
調製例
実施例1
{(R)−1−[4−カルバモイル−5−(ピリジン−2−イルアミノ)−チアゾール−2−イル]−ピペリジン−3−イル}−カルバミン酸tert−ブチルエステル
工程1:[(R)−1−(4−シアノ−チアゾール−2−イル)−ピペリジン−3−イル]カルバミン酸tert−ブチルエステルの調製
500mLの丸底フラスコに、(R)−ピペリジン−3−イル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(10.3g、51.6mmol)、炭酸セシウム(33.6g、103mmol)、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−3,6−ジメトキシ−2’4’6’−トリ−イソプロピル−1,1’−ビフェニル(BrettPhos、CAS番号1070663−78−3)(369mg、688μmol)及び2−ブロモチアゾール−4−カルボニトリル(6.5g、34.4mmol)を加え、続いてtert−ブタノール(225mL)を加えた。混合物は、超音波処理しながら真空(約50mmHg)下で脱気し、その後、フラスコをアルゴンで置換した。脱気は2回繰り返した。トリス−(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(CAS番号51364−51−3)(315mg、344μmol)を加え、フラスコを真空にし、アルゴンで再度置換した。2回繰り返した。反応フラスコをアルミニウムブロック加熱マントル(aluminum block heating mantle)に移し、アルゴン下で5時間加熱還流した。反応混合物を周囲温度まで冷却し、水(1L)に入れ、酢酸エチル(3×200mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を塩水(2×200mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過及び真空内で濃縮した。残渣は、100mL/分の流速で、ヘキサン中10%から40%酢酸エチルで溶出する330gシリカカラム勾配を用いたクロマトグラフィーにより精製した。生成物を含有する画分を合わせ、真空内で濃縮し、[(R)−1−(4−シアノ−チアゾール−2−イル)−ピペリジン−3−イル]カルバミン酸tert−ブチルエステルを白色固体(8.75g、78%)として得た。
LC/MS:C14H20N4O2S([M+H−Boc]+)のm/z計算値:209.3、測定値:209.1(ポジティブモードエレクトロスプレーイオン化)。
工程2:[(R)−1−(5−ブロモ−4−シアノ−チアゾール−2−イル)−ピペリジン−3−イル]カルバミン酸tert−ブチルエステルの調製
[(R)−1−(4−シアノ−チアゾール−2−イル)−ピペリジン−3−イル]カルバミン酸tert−ブチルエステル(13.0g、42.2mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(250mL)溶液にN−ブロモスクシンイミド(8.25g、46mmol)を加え、混合物を、アルゴン下、周囲温度で30分間撹拌した。薄層クロマトグラフィー(ヘキサン中25%v/v酢酸エチルで溶出するシリカ固定相)による分析により、[(R)−1−(4−シアノ−チアゾール−2−イル)−ピペリジン−3−イル]カルバミン酸tert−ブチルエステルがわずかに極性の低い化合物に完全に変換されたことが示された。反応混合物を水(1L)に入れ、酢酸エチル(3×250mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を塩水(2×200mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過及び真空内で濃縮し、オフホワイトの固体を得た。粗生成物を1:1v/vジエチルエーテル/石油エーテル(全体積300mL)で粉末化した。ろ過により[(R)−1−(5−ブロモ−4−シアノ−チアゾール−2−イル)−ピペリジン−3−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルを無色の固体として得、1:2v/vジエチルエーテル/石油エーテルで洗浄し、空気流により乾燥した(14.33g、88%)。ヘキサン中5%から40%v/v酢酸エチルで溶出するシリカゲルカラム勾配を用いたクロマトグラフィーによる母液の濃縮から得られた残渣の精製により、追加量の[(R)−1−(5−ブロモ−4−シアノ−チアゾール−2−イル)−ピペリジン−3−イル]カルバミン酸tert−ブチルエステルを得た。生成物を含有する画分を合わせ、真空内で濃縮し、さらに[(R)−1−(5−ブロモ−4−シアノ−チアゾール−2−イル)−ピペリジン−3−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルを無色の固体(1.18g、7%)として得た。
LC/MS:C14H19BrN4O2S([M+H−Boc]+)のm/z計算値:288.2、測定値:287及び289(1:1比、臭素原子が1個存在することを示す)(ポジティブモードエレクトロスプレーイオン化)。
工程3:{(R)−1−[4−シアノ−5−(ピリジン−2−イルアミノ)−チアゾール−2−イル]−ピペリジン−3−イル}−カルバミン酸tert−ブチルエステルの調製
ねじ蓋付き圧力反応容器を真空にし、アルゴンで置換した。反応容器に、[(R)−1−(5−ブロモ−4−シアノ−チアゾール−2−イル)−ピペリジン−3−イル]カルバミン酸tert−ブチルエステル(1.00g、2.58mmol)、2−アミノピリジン(384mg、3.87mmol)、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン(Xantphos、CAS番号161265−03−8)(462mmol、775μmol)及び三塩基性リン酸カリウム(1.64g、7.75mmol)を加え、続いてp−ジオキサン(20mL)を加えた。反応容器は、真空(約50mmHg)下で超音波処理しながら脱気し、容器をアルゴンで置換した。脱気を2回繰り返した。トリス−(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(CAS番号51364−51−3)(241mg、258μmol)を加え、容器を真空にし、アルゴンで再度置換した。2回繰り返した。容器を密閉し、110℃で16時間、予熱した油浴に入れた。反応混合物を周囲温度まで冷却し、水(200mL)に入れ、1:1v/v酢酸エチル/テトラヒドロフラン(3×100mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を塩水(2×75mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過及び真空内で濃縮した。残渣は、ジクロロメタン中0%から10%v/vメタノールで溶出するシリカ勾配を用いたクロマトグラフィーにより精製した。生成物を含有する画分を合わせ、真空内で濃縮し、部分精製生成物を赤色/褐色の固体(429mg)として得た。部分精製物質は、2:1v/vイソプロパノール/酢酸エチル(全体積150mL)に溶かし、活性炭を加えた。周囲温度で10分間静置した後、混合物は、ケイソウ土ろ過助剤を通してろ過し、ろ液を真空内で濃縮し、{(R)−1−[4−シアノ−5−(ピリジン−2−イルアミノ)−チアゾール−2−イル]−ピペリジン−3−イル}−カルバミン酸tert−ブチルエステルを淡褐色/黄色の固体(0.38g、35%)として得た。
LC/MS:C19H24N6O2S([M+H]+)のm/z計算値:401.5、測定値:401.2(ポジティブモードエレクトロスプレーイオン化)。
工程4:{(R)−1−[4−カルバモイル−5−(ピリジン−2−イルアミノ)−チアゾール−2−イル]−ピペリジン−3−イル}−カルバミン酸tert−ブチルエステルの調製
{(R)−1−[4−シアノ−5−(ピリジン−2−イルアミノ)−チアゾール−2−イル]−ピペリジン−3−イル}−カルバミン酸tert−ブチルエステル(455mg、1.14mmol)の10:1v/vテトラヒドロフラン/水(全体積16.5mL)溶液を、撹拌しながら10分間アルゴンを通気させることで脱気した。ヒドリド−(ジメチルホスフィナス酸−kP)[水素ビス(ジメチルホスフィニト−kP]白金(II)(CAS番号173416−05−2)(78mg、183μmol)を加え、マイクロ波により混合物を150℃で45分間加熱した。反応混合物を周囲温度まで冷却し、水(150mL)に入れ、1:1v/vテトラヒドロフラン/酢酸エチル(4×50mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を塩水(2×40mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過及び真空内で濃縮し、黄色の固体を得た。粗生成物は、ヘキサン中30%から70%v/v酢酸エチルで溶出するシリカゲル勾配を用いたクロマトグラフィーにより精製した。生成物を含有する画分を合わせ、真空内で濃縮して、{(R)−1−[4−カルバモイル−5−(ピリジン−2−イルアミノ)−チアゾール−2−イル]−ピペリジン−3−イル}−カルバミン酸tert−ブチルエステルをオフホワイトの固体(362mg、76%)として得た。
LC/MS:C19H26N6O3S([M−H]−)のm/z計算値:417.5、測定値:417.4(ネガティブモードエレクトロスプレーイオン化)。
実施例2
1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボン酸{(R)−1−[4−カルバモイル−5−(ピリジン−2−イルアミノ)−チアゾール−2−イル]−ピペリジン−3−イル}−アミド
工程1:2−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−5−(ピリジン−2−イルアミノ)−チアゾール−4−カルボニトリルの調製
{(R)−1−[4−シアノ−5−(ピリジン−2−イルアミノ)−チアゾール−2−イル]−ピペリジン−3−イル}−カルバミン酸tert−ブチルエステル(実施例1の工程3で記載のように調製)(20.2mg、50.4μmol)のジクロロメタン(0.5mL)溶液に、トリフルオロ酢酸(1mL、13mmol)を加え、混合物を、アルゴン下、周囲温度で30分間撹拌した。反応混合物を真空内で濃縮し、粗2−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−5−(ピリジン−2−イルアミノ)−チアゾール−4−カルボニトリルを、さらに精製することなく合成の次の工程に移した。
LC/MS:C14H16N6S([M+H]+)のm/z計算値:301.4、測定値:301.2(ポジティブモードエレクトロスプレーイオン化)。
工程2:{(R)−1−[4−シアノ−5−(ピリジン−2−イルアミノ)−チアゾール−2−イル]−ピペリジン−3−イル}−カルバミン酸ペンタフルオロフェニルエステルの調製
アルゴン下、0℃の粗2−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−5−(ピリジン−2−イルアミノ)−チアゾール−4−カルボニトリル(約15mg、約50μmol)のテトラヒドロフラン(1mL)溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(18μL、100μmol)を加え、続いて炭酸ジペンタフルオロフェニルエステル(22mg、55μmol)を加えた。反応混合物を周囲温度までゆっくり加温し、その後、さらに1時間撹拌した。一定分量をLC−MSにより分析し、反応混合物を合成順序の次の工程に移す前に反応が完了したことを確かめた。
LC/MS:C21H15F5N6O2S([M+H]+)のm/z計算値:511.5、測定値:511.2(ポジティブモードエレクトロスプレーイオン化)。
工程3:1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボン酸{(R)−1−[4−シアノ−5−(ピリジン−2−イルアミノ)−チアゾール−2−イル]−ピペリジン−3−イル}−アミドの調製
粗{(R)−1−[4−シアノ−5−(ピリジン−2−イルアミノ)−チアゾール−2−イル]−ピペリジン−3−イル}−カルバミン酸ペンタフルオロフェニルエステル(約50μmol)のテトラヒドロフラン(1mL)溶液をアルゴンの雰囲気下で0℃まで冷却し、イソインドリン(12.6mg、106μmol)及びジイソプロピルエチルアミン(20μL、115μmol)を加えた。反応混合物を0℃で1時間撹拌し、その後、周囲温度まで加温し、さらに1時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液(2mL)を加えることにより反応をクエンチし、水(10mL)に入れ、酢酸エチル(4×5mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を塩水(2×5mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過及び真空内で濃縮した。水中10%アセトニトリルから100%アセトニトリルで溶出する12g C−18カラム勾配を用いた逆相クロマトグラフィーにより残渣を精製した。生成物を含有する画分を合わせ、真空内で濃縮し、黄色の固体を得た。黄色の固体をジクロロメタンに溶かし、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過及び真空内で濃縮し、1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボン酸{(R)−1−[4−シアノ−5−(ピリジン−2−イルアミノ)−チアゾール−2−イル]−ピペリジン−3−イル}−アミドを黄色の粘性油(11.3mg、50%)として得た。
LC/MS:C23H23N7OS([M+H]+)のm/z計算値:446.6、測定値:446.3(ポジティブモードエレクトロスプレーイオン化)。
工程4:1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボン酸{(R)−1−[4−カルバモイル−5−(ピリジン−2−イルアミノ)−チアゾール−2−イル]−ピペリジン−3−イル}−アミドの調製
1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボン酸{(R)−1−[4−シアノ−5−(ピリジン−2−イルアミノ)−チアゾール−2−イル]−ピペリジン−3−イル}−アミド(11.3mg、25.4μmol)(11.3mg、25.4μmol)の10:1v/vテトラヒドロフラン/水(全体積2.75mL)溶液に、ヒドリド(ジメチルホスフィナス酸−kP)[水素ビス(ジメチルホスフィニト−kP]白金(II)(CAS番号173416−05−2)(1.1mg、2.5μmol)を加え、混合物をアルゴン下で加熱還流した。8時間後、LC/MSにより、予想生成物の分子イオンを示す1種の主生成物にほぼ約30%変換したことが分かった。反応混合物を再封可能な管に移し、追加分量のヒドリド−(ジメチルホスフィナス酸−kP)[水素ビス−(ジメチルホスフィニト−kP]白金(II)(1mg、2.3μmol)を加え、管を一晩80℃に加熱した。LC−MSにより、反応混合物中に主成分として予想生成物が存在することが分かり、いくらか出発物質がまだ存在することも示された。追加分量のヒドリド(ジメチルホスフィナス酸−kP)[水素ビス(ジメチルホスフィニト−kP]白金(II)(1mg、2.3μmol)を加え、反応容器を100℃で3.5時間加熱した。反応混合物を周囲温度まで冷却し、真空内で濃縮した。水中10%から100%アセトニトリルで溶出するC−18カラム勾配を用いた逆相クロマトグラフィーにより残渣を精製した。生成物を含有する画分を合わせ、真空内で濃縮し、部分精製された1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボン酸{(R)−1−[4−カルバモイル−5−(ピリジン−2−イルアミノ)−チアゾール−2−イル]−ピペリジン−3−イル}−アミドを黄色の固体として得た。水中30%から100%アセトニトリルで溶出するC−18カラム勾配を用いた逆相HPLCによってさらに精製することで、近くを流れる不純物を除去した。生成物を含有する画分を合わせ、真空内で濃縮し、残渣をアセトニトリル/水から凍結乾燥し、1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−カルボン酸{(R)−1−[4−カルバモイル−5−(ピリジン−2−イルアミノ)−チアゾール−2−イル]−ピペリジン−3−イル}−アミドを淡黄色の固体(2.1mg、18%)として得た。
LC/MS:C23H25N7O2S([M+H]+)のm/z計算値:464.6、測定値:464.3(ポジティブモードエレクトロスプレーイオン化)。
実施例3
(R)−2−(3−(5−クロロイソインドリン−2−カルボキサミド)ピペリジン−1−イル)−5−(ピリジン−2−イルアミノ)チアゾール−4−カルボキサミド
(i)工程3において、イソインドリン及び1.1当量のジイソプロピルエチルアミンの代わりに、5−クロロイソインドリンヒドロブロミド及び3当量のジイソプロピルエチルアミンを使用し、(ii)工程4において、密閉管内でマイクロ波により150℃で加熱しながら、0.2当量のヒドリド(ジメチルホスフィナス酸−kP)[水素ビス(ジメチルホスフィニト−kP]白金(II)を用いて反応を行う以外は、実施例2に記載のものと同じ合成経路によって調製した。その後の逆相HPLC精製及び生成物を含有する画分の凍結乾燥により、生成物を淡黄色の固体として得た。
LC/MS:C23H24ClN7O2S([M+H]+)のm/z計算値:499.0、測定値:498.3及び500.3(強度比3:1、塩素原子が1個存在することを示す)(ポジティブイオンエレクトロスプレーイオン化モード)
実施例4
(R)−2−(3−(6−tert−ブチルニコチンアミド)ピペリジン−1−イル)−5−(ピリジン−2−イルアミノ)チアゾール−4−カルボキサミド
ニコチン酸(2.00g、16.2mmol)の水性懸濁液(250mL)に濃硫酸(1mL、18.8mmol)を加え、混合物を窒素下で撹拌し、透明な溶液を生成した。ピバル酸(1.83g、17.9mmol)を加え、周囲温度で窒素下で撹拌し、10分間継続した。硝酸銀(125mg、0.74mmol)を加え、続いて過硫酸アンモニウム(295mg、1.3mmol)を加え、フラスコをアルミホイルで包んで遮光し、窒素下で90℃に加熱した。2時間後、反応混合物を周囲温度まで冷却し、水性混合物を真空内で濃縮し、無色の固体を得た。固体をテトラヒドロフランで粉末化し、ろ過した。固体残渣をメタノールで再度粉末化し、ろ過した。両方のろ液を合わせ、真空内で濃縮した。水中10%アセトニトリルから100%アセトニトリルで溶出する85g C−18カラム勾配を用いた逆相クロマトグラフィーにより粗生成物を精製した。生成物を含有する画分を合わせ、真空内で濃縮した。残渣を水から凍結乾燥し、6−tert−ブチルニコチン酸を無色の固体(139mg、4%)として得た。
LC/MS:C10H13NO2([M+H]+)のm/z計算値:180.2、測定値:180.1(ポジティブモードエレクトロスプレーイオン化)。
工程2:2−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−5−(ピリジン−2−イルアミノ)−チアゾール−4−カルボン酸アミドの調製
{1−[4−カルバモイル−5−ピリジン−2−イルアミノ)−チアゾール−2−イル]−ピペリジン−3−イル}−カルバミン酸tert−ブチルエステル(実施例1に記載のように調製)(359mg、0.86mmol)のジクロロメタン(10mL)懸濁液に、トリフルオロ酢酸(10mL、130mmol)を加え、黄色の溶液を生成した。混合物を周囲温度で30分間撹拌し、真空内で乾燥するまで蒸発させた。残渣をジクロロメタン(25ml)に溶かし、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100ml)で洗浄した。有機層を分離し、黄色が有機層に抽出されなくなるまで水層をジクロロメタン(5×20mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過及び真空内で濃縮し、2−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−5−(ピリジン−2−イルアミノ)−チアゾール−4−カルボン酸アミドを黄色の固体(280mg)として得た。
LC/MS:C14H18N6OS([M+H]+)のm/z計算値:319.4、測定値:319.1(ポジティブモードエレクトロスプレーイオン化)。
工程3:(R)−2−(3−(6−tert−ブチルニコチンアミド)ピペリジン−1−イル)−5−(ピリジン−2−イルアミノ)チアゾール−4−カルボキサミドの調製
6−tert−ブチルニコチン酸(23.5mg、131μmol)及び2−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−5−(ピリジン−2−イルアミノ)−チアゾール−4−カルボン酸アミド(38mg、119μmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(1mL)溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(35μL、200μmol)を加え、続いてO−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(61mg、161μmol)を加えた。アルゴン雰囲気下、周囲温度で一晩撹拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液(2mL)を加えることにより反応をクエンチし、混合物を水(5mL)に入れ、酢酸エチル(3×3mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を塩水(2×2mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過及び真空内で濃縮し、黄色の固体を得た。水中10%アセトニトリルから100%アセトニトリルで溶出する13g C−18カラム勾配を用いたクロマトグラフィーにより粗生成物を精製した。生成物を含有する画分を合わせ、真空内で濃縮し、残渣をアセトニトリル/水から凍結乾燥し、(R)−2−(3−(6−tert−ブチルニコチンアミド)ピぺリジン−1−イル)−5−(ピリジン−2−イルアミノ)チアゾール−4−カルボキサミドを淡黄色の固体(37.8mg、66%)として得た。
LC/MS:C24H29N7O2S([M+H]+)のm/z計算値:480.6、測定値:480.3(ポジティブモードエレクトロスプレーイオン化)。
実施例5
(R)−2−(3−(2−フェニルアセトアミド)ピペリジン−1−イル)−5−(ピリジン−2−イルアミノ)チアゾール−4−カルボキサミド
6−tert−ブチルニコチン酸の代わりに2−フェニル酢酸(17.9mg、131μmol)を使用する以外は、実施例4に記載のものと同じ合成経路により調製した。(R)−2−(3−(2−フェニルアセトアミド)ピペリジン−1−イル)−5−(ピリジン−2−イルアミノ)チアゾール−4−カルボキサミドを淡黄色の固体(59%)として得た。
LC/MS:C22H24N6O2S([M+H]+)のm/z計算値:437.5、測定値:437.3(ポジティブモードエレクトロスプレーイオン化)。
実施例6
(R)−5−(ピリジン−2−イルアミノ)−2−(3−(2−m−トリルアセトアミド)ピペリジン−1−イル)チアゾール−4−カルボキサミド
6−tert−ブチルニコチン酸の代わりに2−m−トリル酢酸(19.7mg、131μmol)を使用する以外は、実施例4に記載のものと同じ合成経路により調製した。(R)−5−(ピリジン−2−イルアミノ)−2−(3−(2−m−トリルアセトアミド)ピペリジン−1−イル)チアゾール−4−カルボキサミドを淡黄色の固体(49%)として得た。
LC/MS:C23H26N6O2S([M+H]+)のm/z計算値:451.6、測定値:451.3(ポジティブモードエレクトロスプレーイオン化)。
実施例7
(R)−2−(3−(4−tert−ブチルベンズアミド)ピペリジン−1−イル)−5−(ピリジン−2−イルアミノ)チアゾール−4−カルボキサミド
6−tert−ブチルニコチン酸の代わりに4−tert−ブチル安息香酸(23.4mg、131μmol)を使用する以外は、実施例4に記載のものと同じ合成経路により調製した。(R)−2−(3−(4−tert−ブチルベンズアミド)ピペリジン−1−イル)−5−(ピリジン−2−イルアミノ)チアゾール−4−カルボキサミドを淡黄色の固体(68%)として得た。
LC/MS:C25H30N6O2S([M+H]+)のm/z計算値:479.6、測定値:479.3(ポジティブモードエレクトロスプレーイオン化)。
実施例8
(R)−2−(3−(メチルスルホンアミド)ピペリジン−1−イル)−5−(ピリジン−2−イルアミノ)チアゾール−4−カルボキサミド
2−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−5−(ピリジン−2−イルアミノ)−チアゾール−4−カルボン酸アミド(実施例4に記載のように調製)(5.6mg、171μmol)のテトラヒドロフラン(1mL)懸濁液に、N,N−ジメチルホルムアミド(0.5mL)を加え、透明な溶液を生成した。ジイソプロピルエチルアミン(59.9μL、343μmol)を加え、続いてメタンスルホニルクロリド(20μL、257μmol)を加え、アルゴン下、周囲温度で一晩混合物を撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液(2mL)を加えることにより反応混合物をクエンチし、水(5mL)に入れ、酢酸エチル(5×2mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を塩水(2×2mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過及び真空内で濃縮した。水中10%アセトニトリルから100%アセトニトリルで溶出するC−18カラム勾配を用いた逆相クロマトグラフィーにより残渣を精製した。生成物を含有する画分を合わせ、真空内で濃縮した。残渣を水/エタノールから凍結乾燥し、(R)−2−(3−(メチルスルホンアミド)ピぺリジン−1−イル)−5−(ピリジン−2−イルアミノ)チアゾール−4−カルボキサミドをオフホワイトの凍結乾燥粉末(41mg、60%)として得た。
LC/MS:C15H20NO3S2([M+H]+)のm/z計算値:397.5、測定値:397.2(ポジティブモードエレクトロスプレーイオン化)。
実施例9
(R)−2−(3−(フェニルスルホンアミド)ピペリジン−1−イル)−5−(ピリジン−2−イルアミノ)チアゾール−4−カルボキサミド
メタンスルホニルクロリドの代わりにベンゼンスルホニルクロリド(33μL、257μmol)を使用する以外は、実施例8に記載のものと同じ合成経路により調製した。(R)−2−(3−(フェニルスルホンアミド)ピペリジン−1−イル)−5−(ピリジン−2−イルアミノ)チアゾール−4−カルボキサミドを淡黄色の固体(23%)として得た。
LC/MS:C20H22N6O3S2([M+H]+)のm/z計算値:459.6、測定値:459.3(ポジティブモードエレクトロスプレーイオン化)。
実施例10
(R)−2−(3−(1−メチルエチルスルホンアミド)ピペリジン−1−イル)−5−(ピリジン−2−イルアミノ)チアゾール−4−カルボキサミド
メタンスルホニルクロリドの代わりにプロパン−2−スルホニルクロリド(30μL、257μmol)を使用する以外は、実施例8に記載のものと同じ合成経路により調製した。(R)−2−3−(1−メチルエチルスルホンアミド)ピペリジン−1−イル)−5−(ピリジン−2−イルアミノ)チアゾール−4−カルボキサミドを淡黄色の固体(4%)として得た。
LC/MS:C17H24N6O3S2([M+H]+)のm/z計算値:425.6、測定値:425.3(ポジティブモードエレクトロスプレーイオン化)。
実施例11
(R)−2−(3−(2−(3−クロロフェニルアミノ)アセトアミド)ピペリジン−1−イル)−5−(ピリジン−2−イルアミノ)チアゾール−4−カルボキサミド
工程1:(3−クロロ−フェニルアミノ)−酢酸メチルエステルの調製
ブロモ酢酸メチル(8.3g、54.3mmol)、3−クロロアニリン(8.31g、65.1mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(7.01g、54.3mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(20mL)に溶解し、淡黄色の溶液を得、反応混合物を60℃で一晩加熱した。反応混合物を周囲温度まで冷却し、酢酸エチルで希釈し、塩水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過及び真空内で濃縮し、(3−クロロ−フェニルアミノ)−酢酸メチルエステルを固体として得た。これをヘキサンで洗浄し、ろ過し、乾燥した(10.2g、96%)。
LC/MS:C9H10ClNO2([M+H]+)のm/z計算値:200.6、測定値:200.0(ポジティブモードエレクトロスプレーイオン化)。
工程2:(3−クロロ−フェニルアミノ)−酢酸の調製
(3−クロロ−フェニルアミノ)−酢酸メチルエステル(4g、20.0mmol)及び水酸化ナトリウム(4.00g、100mmol)をエタノール(60.0mL)及び水(10mL)中で合わせて淡黄色の溶液を得、60℃で4時間加熱した。反応混合物を周囲温度まで冷却し、酢酸エチルで希釈し、1M 塩酸水溶液で洗浄した。有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過及び真空内で濃縮し、(3−クロロ−フェニルアミノ)−酢酸を褐色の固体として得た(3.20g、86%)。
LC/MS:C8H8ClNO2([M+H]+)のm/z計算値:186.0、測定値:186.0(ポジティブモードエレクトロスプレーイオン化)。
工程3:(R)−2−(3−(2−(3−クロロ−フェニルアミノ)アセトアミド)ピペリジン−1−イル)−5−(ピリジン−2−イルアミノ)チアゾール−4−カルボキサミドの調製
6−tert−ブチルニコチン酸の代わりに(3−クロロ−フェニルアミノ)−酢酸を使用する以外は、実施例4に記載のものと同じ合成経路により調製した。(R)−2−(3−(2−(3−クロロフェニルアミノ)アセトアミド)ピペリジン−1−イル)−5−(ピリジン−2−イルアミノ)チアゾール−4−カルボキサミドを淡黄色の固体(63%)として得た。
LC/MS:C22H24ClN7O2S([M+H]+)のm/z計算値:487.0、測定値:486.3及び488.3(強度比3:1、塩素原子が1個存在することを示す)(ポジティブモードエレクトロスプレーイオン化)。
実施例12
(R)−2−(3−アセトアミドピペリジン−1−イル)−5−(ピリジン−2−イルアミノ)チアゾール−4−カルボキサミド
6−tert−ブチルニコチン酸の代わりに酢酸を使用する以外は、実施例4に記載のものと同じ合成経路により調製した。(R)−2−(3−アセトアミドピペリジン−1−イル)−5−(ピリジン−2−イルアミノ)チアゾール−4−カルボキサミドを淡黄色の固体(75%)として得た。
LC/MS:C16H20N6O2S([M+H]+)のm/z計算値:361.4、測定値:361.3(ポジティブモードエレクトロスプレーイオン化)。
生物学的実施例
ブルトン型チロシンキナーゼ(Btk)阻害アッセイ
本アッセイは、ろ過による放射性33Pリン酸化物の捕捉である。Btk、ビオチン化SH2ペプチド基質(Src相同)、及びATPの相互作用により、ペプチド基質のリン酸化が生じる。ビオチン化物は、ストレプトアビジンセファロースビーズに結合する。全ての結合した放射性標識物をシンチレーションカウンターにより検出する。
アッセイするプレートは、96ウェルポリプロピレンプレート(Greiner)及び96ウェル1.2μm親水性PVDFフィルタープレート(Millipore)である。ここで報告する濃度は、最終アッセイ濃度である:DMSO(Burdick and Jackson)中10〜100μMの化合物、5〜10nM Btk酵素(His標識、完全長)、30μMペプチド基質(Biotin-Aca-AAAEEIYGEI-NH2)、100μM ATP(Sigma)、8mM イミダゾール(Sigma、pH7.2)、8mM グリセロール−2−リン酸(Sigma)、200μM EGTA(Roche Diagnostics)、1mM MnCl2(Sigma)、20mM MgCl2(Sigma)、0.1mg/ml BSA(Sigma)、2mM DTT(Sigma)、1μCi 33P ATP(Amersham)、20%ストレプトアビジンセファロースビーズ(Amersham)、50mM EDTA(Gibco)、2M NaCl(Gibco)、1%リン酸を含む2M NaCl(Gibco)、microscint-20(Perkin Elmer)。
IC50の決定は、標準96ウエルプレートアッセイテンプレートから得られるデータを利用して、化合物1個当たり10個のデータポイントから算出する。1種の対照化合物及び7種の未知の阻害剤を各プレートで試験し、各プレート2回行った。典型的には、化合物は、100μMから開始して3nMで終わる半対数(half-log)系列で希釈した。対照化合物は、スタウロスポリンとした。バックグラウンドは、ペプチド基質の非存在下でカウントした。総活性は、ペプチド基質の存在下で求めた。以下のプロトコールを使用しBtk阻害を求めた。
1)試料の調製:試験化合物を半対数増加でアッセイ緩衝液(イミダゾール、グリセロール−2−リン酸、EGTA、MnCl2、MgCl2、BSA)に希釈した。
2)ビーズの調製
a)500gで遠心分離することによりビーズをすすぐ。
b)PBS及びEDTAでビーズを再構成して20%ビーズスラリーを作製する。
3)基質を含まない反応混合物(アッセイ緩衝液、DTT、ATP、33P ATP)及び基質を含む混合物(アッセイ緩衝液、DTT、ATP、33P ATP、ペプチド基質)を30℃で15分間プレインキュベートする。
4)アッセイを開始するために、酵素緩衝液(イミダゾール、グリセロール−2−リン酸、BSA)中のBtk 10μL、及び試験化合物 10μLを室温で10分間プレインキュベートする。
5)基質を含まない又は含む反応混合物 30μLをBtk及び化合物に加える。
6)全アッセイ混合物 50μLを30℃で30分間インキュベートする。
7)アッセイ液 40μLをフィルタープレートのビーズスラリー 150μLに移して反応を停止する。
8)以下の工程で30分後にフィルタープレートを洗浄する。
a.NaCl 3×250μL
b.1%リン酸を含有するNaCl 3×250μL
c.H2O 1×250μL
9)65℃で1時間又は室温で一晩プレートを乾燥する。
10)microscint-20 50μLを加えて、シンチレーションカウンターで33Pcpmをカウントする。
生データ(cpm)から活性率(%)を算出する。
活性率(%)=(試料−bkg)/(総活性−bkg)×100
1サイト(one-site)用量反応シグモイドモデルを使用して、活性率(%)からIC50を算出する。
y=A+((B−A)/(1+((x/C)D))))
x=化合物濃度、y=活性率(%)、A=最小、B=最大、C=IC50、D=1(ヒル勾配)
ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害TR−FRET(時間分解FRET)アッセイ
このBTK競合アッセイは、FRET(フェルスター/蛍光共鳴エネルギー移動)技術を用いて、ブルトン型チロシンキナーゼの不活性化状態に対する化合物効力(IC50)を測定する。BTK−Eu複合体は、50nM BTK-Bioease(商標):10nM Eu−ストレプトアビジン(Perkin- Elmerカタログ番号AD0062)の開始濃度で、使用する1時間前に氷上でインキュベートした。アッセイ緩衝液は、20mM HEPES(pH7.15)、0.1mM DTT、10mM MgCl2、3% Kinase Stabilizer(Fremont Biosolutions、カタログ番号STB−K02)を含む0.5mg/ml BSAから構成された。1時間後、上記からの反応混合物をアッセイ緩衝液で10倍希釈し、5nM BTK:1nM Eu−ストレプトアビジン複合体(ドナー蛍光体)を作製した。その後、0.11nM BTK−Euと0.11nM Kinase Tracer 178(Invitrogen、カタログ番号PV5593)の混合物(BTK−Eu単独の陰性対照なし)18μlを384ウェル平底プレート(Greiner、784076)に分注した。アッセイで試験する化合物を10倍濃度として調製し、10点曲線を作成するように半対数増加の段階希釈をDMSOで行った。FRET反応を開始するために、DMSOの10倍ストックとして調製した化合物をプレートに加え、プレートを14℃で18〜24時間インキュベートした。
インキュベーション後、プレートをBMG Pherastar蛍光プレートリーダ(又は同等物)で読み取り、ユウロピウムドナー蛍光体(620nm発光)及びFRET(665nm発光)からの発光エネルギーを測定するために使用した。陰性対照ウェルの値を平均して平均最小値を得た。「阻害剤なしの」陽性対照ウェルを平均し平均最大値を得た。最大FRETのパーセントは次の式を用いて算出した:%最大FRET=100×[(FSR化合物−FSR平均最小値)/(FSR平均最大値−FSR平均最小値)](式中、FSR=FRETシグナル比)。%最大FRET曲線をActivity Base(エクセル)にプロットし、IC50(%)、ヒル勾配、z’及び%CVを求めた。平均IC50及び標準偏差は、マイクロソフト社のエクセルを用いて、複製曲線(2つの独立した希釈からの単線阻害曲線)から導く。
このアッセイでの代表的な化合物データを表IIに後述する。
CD69発現により測定される全血中のB細胞活性化の阻害
ヒト血中のB細胞のB細胞レセプター介在性活性化を抑制するBtk阻害剤の能力を試験するための手順は以下の通りである:
ヒト全血(HWB)を健常ボランティアから採取するが、24時間薬物を摂取しない非喫煙者という制約がある。ヘパリンナトリウムで抗凝固処理したVacutainer管に、静脈穿刺により血液を採取する。試験化合物は、PBS(20×)中の所望の開始薬物濃度の10倍に希釈し、その後、PBS中10%DMSOで3倍段階希釈を行い、9点用量反応曲線を作成する。各化合物の希釈液5.5μlを二重反復で2ml 96ウェルV底プレート(Analytical Sales and Services、番号59623−23)に加え;PBS中10%DMSO 5.5μlを対照及び刺激なしのウェルに加える。HWB(100μl)を各ウェルに加え、混合後にプレートを37℃、5%CO2、湿度100%で30分間インキュベートする。ヤギF(ab’)2抗ヒトIgM(Southern Biotech、番号2022−14)(500μg/ml溶液10μl、最終濃度50μg/ml)を各ウェル(刺激なしのウェルを除く)に混合しながら加え、プレートをさらに20時間インキュベートする。
20時間のインキュベーション終了後、37℃、5%CO2、湿度100%で30分間、蛍光プローブ標識抗体(PEマウス抗ヒトCD20 15μl、BD Pharmingen、番号555623、及び/又はAPCマウス抗ヒトCD69 20μl、BD Pharmingen、番号555533)と共に試料をインキュベートする。補整及び初期電圧設定のため、誘導された対照、非染色及び単染色も含まれる。次に、試料を1×Pharmingen Lyse Buffer(BD Pharmingen番号555899)1mlで溶解し、プレートを1800rpmで5分間遠心分離する。上清を吸引により除去し、残ったペレットをさらに1×Pharmingen Lyse Buffer 1mlで再度溶解して、前回と同様にプレートを遠心沈殿させる。上清を吸引し、残ったペレットをFACs緩衝液(PBS+1% FBS)中で洗浄する。最後の回転後、上清を除去し、ペレットをFACs緩衝液180μlに再懸濁する。BD LSR IIフローサイトメーターのHTS96ウェルシステムで測定するのに適した96ウェルプレートに試料を移す。
使用する蛍光体に適切な励起及び発光波長を用いて、データを取得し、Cell Quest Softwareを用いて陽性細胞パーセント値を得る。まずFACS分析ソフトウェア(Flow Jo)により結果を分析する。試験化合物のIC50は、抗IgMによる刺激後にCD20陽性でもあるCD69陽性細胞の割合を50%低下させる濃度として定義される(刺激なしバックグラウンドのウェル8個の平均を差し引いた後の対照ウェル8個の平均)。IC50値は、XLfitソフトウェア、バージョン3、式201を用いて算出する。
B細胞活性化の阻害−Ramos細胞におけるB細胞FLIPRアッセイ
本発明の化合物によるB細胞活性化の阻害は、抗IgM刺激B細胞応答に対する試験化合物の効果を測定することにより証明する。
B細胞FLIPRアッセイは、抗IgM抗体による刺激からの細胞内カルシウム増加の候補阻害剤の効果を測定する、細胞に基づいた機能的方法である。Ramos細胞(ヒトバーキットリンパ腫細胞株、ATCC番号CRL−1596)を増殖培地(後述)で培養した。アッセイの前日、新鮮な増殖培地(上記と同様)にRamos細胞を再懸濁し、組織培養フラスコ内で0.5×106/mLの濃度に設定した。アッセイ当日、細胞をカウントし、組織培養フラスコ内で1μM FLUO-3AM(TefLabsカタログ番号0116、無水DMSO及び10%プルロン酸で調製)を補充した増殖培地中で1×106/mLの濃度に設定し、37℃(4% CO2)で1時間インキュベートする。細胞外色素を除去するために、遠心分離(5分、1000rpm)により細胞を回収し、FLIPR緩衝液(後述)に1×106細胞/mLで再懸濁し、次に96ウェルポリ−D−リシンコート黒色/透明プレート(BDカタログ番号356692)に1ウェル当たり1×105細胞で分注した。試験化合物を100μM〜0.03μMの範囲の種々の濃度(7種の濃度、詳細は後述)で加え、細胞と共に室温で30分間インキュベートした。Ramos細胞のCa2+シグナル伝達は、10μg/mL抗IgM(Southern Biotech、カタログ番号2020−01)を加えることにより刺激し、FLIPR(Molecular Devices、480nm励起のアルゴンレーザーを備えるCCDカメラを用いて96ウェルプレートの画像を撮影)で測定した。
培地/緩衝液:
増殖培地:L−グルタミン(Invitrogen、カタログ番号61870−010)、10%ウシ胎児血清(FBS、Summit Biotechnology カタログ番号FP−100−05);1mMピルビン酸ナトリウム(Invitrogenカタログ番号11360−070)を含むRPMI 1640培地。
FLIPR緩衝液:HBSS(Invitrogen、カタログ番号141175−079)、2mM CaCl2(Sigmaカタログ番号C−4901)、HEPES(Invitrogen、カタログ番号15630−080)、2.5mM プロベネシド(Sigma、カタログ番号P-8761)、0.1% BSA(Sigma、カタログ番号A−7906)、11mM グルコース(Sigma、カタログ番号G−7528)。
化合物希釈の詳細:
最高最終アッセイ濃度を100μMとするために、10mM 化合物ストック液(DMSOで作製)24μLをFLIPR緩衝液576μLに直接加える。試験化合物は、FLIPR緩衝液で希釈(Biomek 2000ロボティックピペッターを使用)することにより、次の希釈スキームを得る:媒体、1.00×10−4M、1.00×10−5、3.16×10−6、1.00×10−6、3.16×10−7、1.00×10−7、3.16×10−8。
アッセイ及び分析:
カルシウムの細胞内増加は、最大−最小統計量(Molecular Devices社のFLIPR対照及び統計値エクスポートソフトウェアを用いて、刺激性抗体を加えることにより生じるピークから静止ベースラインを差し引く)を用いて報告した。IC50は、非線形曲線当て嵌め(GraphPad Prismソフトウェア)を用いて求めた。
マウスのコラーゲン誘導関節炎(mCIA)
0日目、II型コラーゲンの完全フロイントアジュバント(CFA)乳濁液を、マウスの尾根部又は背中の複数箇所に注射(内皮投与)する。コラーゲン免疫化後、約21〜35日で動物は関節炎を発症する。21日目に不完全フロイントアジュバント(IFA;内皮投与)中のコラーゲンを全身投与して関節炎の発症を進行させる(追加免疫を行う)。追加免疫に対するシグナルである軽度関節炎(スコア1又は2;後述のスコアの説明を参照のこと)の発症について、20日目以降毎日マウスを検査する。追加免疫後、マウスにスコアをつけ、所定の期間(典型的には2〜3週間)及び投与頻度(毎日(QD)又は1日2回(BID))、候補治療薬を投与する。
ラットのコラーゲン誘導関節炎(rCIA)
0日目、ウシII型コラーゲンの不完全フロイントアジュバント(IFA)乳濁液を、ラットの背中の複数箇所に皮内(i.d.)注射する。7日目頃にコラーゲン乳濁液の追加免疫注射(皮内投与)を、尾根部又は背中の別の箇所に行う。関節炎は、通常、最初のコラーゲン注射から12〜14日後に認められる。14日目以降は、下記(関節炎の評価)のように関節炎の発症について動物を評価しうる。2回目の抗原刺激の時点から開始し、所定の期間(典型的には2〜3週間)及び投与頻度(毎日(QD)又は1日2回(BID))で、動物に候補治療薬を予防的に投与する。
関節炎の評価:
両方のモデルで、後述の基準に従い4足の評価を行う採点システムを用いて足及び肢関節の炎症の進行を定量化する:
スコア:1=足又は1本の指の腫脹及び/又は発赤。
2=2つ以上の関節の腫脹。
3=3つ以上の関節が関与する足の大きな腫脹。
4=足及び指全体の重篤な関節炎。
評価は、ベースライン測定については0日目に行い、最初の徴候又は腫脹が現れたら再び開始し、1週間に最高3回の評価を実験の最後まで行う。各足の4つのスコアを足して、動物1匹あたり最大スコア16を与えることにより、各マウスの関節炎指標を得る。
ラットIn Vivo喘息モデル
雄性Brown-Norwayラットに、ミョウバン0.2ml中のOA(オバルブミン)100μgを、週一回、3週間(0、7、及び14日目)腹腔内投与して感作させる。21日目(最終感作から1週間後)、OAエアロゾル抗原刺激(1%OAを45分間)の0.5時間前に、媒体又は化合物製剤のいずれかを1日1回皮下投与し、抗原刺激の4又は24時間後に終了する。殺処分の際、血清検査及びPK用に全ての動物から血清及び血漿を採取する。気管カニューレを挿入し、PBSで3回肺を洗浄する。BAL液を、総白血球数及び白血球分画について分析する。細胞の一定分量(20〜100μl)中の総白血球数は、Coulter Counterにより測定する。白血球分画については、試料50〜200μlをCytospinで遠心分離し、スライドをDiff-Quikで染色する。標準形態学的基準を使用した鏡検法で、単球、好酸球、好中球、及びリンパ球の比率をカウントし、パーセントとして表した。Btkの代表的な阻害剤では、対照レベルと比較して、OA感作及び抗原刺激ラットのBAL中の総白血球数の低下を示した。
上記の発明は、明瞭性及び理解を目的として、実例及び例として詳細に記載されている。変更及び変形が添付の請求項の範囲内で行われてもよいことが当業者に明らかであろう。したがって、上記の記載は、例示的であり制限的ではないことを意図していることが理解される。したがって、本発明の範囲は、上記の記載を参照して規定されるべきではなく、以下の添付の請求項を参照し、特許請求の範囲が権利化される等価物の全範囲と共に規定されるべきである。
本願に引用される全ての特許、特許出願書及び出版物は、まるでそれぞれ個々の特許、特許出願書又は出版物が個々に意味するのと同じ程度に、全ての目的のためにその全体が参照として本明細書に組み込まれる。