JP2016223192A - 横葺き屋根用ケラバキャップ並びにこれを用いた屋根構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明のケラバキャップ1は、天板部12と側板部13とが断面横L字状に屈曲形成されたキャップ本体10と、このキャップ本体10に組み合わされる長杆状の差込片11とを具え、キャップ本体10における側板部13には、その自由端側に差込片保持部15を有し、一方、差込片11は、差込片保持部15に嵌まる差込固定部11aと、差込片11を差込片保持部15に嵌め込んだ状態で、ケラバ下地3における張り出し縁部32の内側に当接する抜け止め当たり部11bとを具えることを特徴とする。また、キャップ本体10は、天板部12の自由端側に、横葺き屋根材4における屋根面部41の切り放し端部に外嵌めされる屋根面板つかみ部14を設けることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
このような化粧仕上げの従来手法の一つとして、横葺き屋根材自体をその端部において下方に折り曲げるように板金加工し、化粧仕上げをする手法がある。しかしながら、この手法は、横葺き屋根材を葺いた後、現場において現物合わせで板金加工するものであり、現場での多大な労力を要するとともに、そもそもこのような加工技術を有する熟練作業者でなければ施工できない、という問題があった。
しかしながら、この手法であっても、ケラバキャップを下地材に釘打ちで留めたり、工具を用いて、ケラバ下地を構成する唐草の一部をつかみ込むように板金加工する作業が必要となるなど、施工作業が簡便化されたとはいえ、まだ充分ではなかった。
横葺き屋根材の切り放し端部に横方向から差し込み、ケラバの化粧仕上げを行うようにしたケラバキャップであって、
このケラバキャップは、天板部と側板部とが断面横L字状に屈曲形成されたキャップ本体と、このキャップ本体に組み合わされる長杆状の差込片とを具えて成り、
前記キャップ本体における側板部には、その自由端側に差込片保持部を具え、
一方、差込片は、前記差込片保持部に嵌まる差込固定部と、差込片を差込片保持部に嵌め込んだ状態で、ケラバ下地における張り出し縁部の内側に当接する抜け止め当たり部とを具えることを特徴として成るものである。
前記キャップ本体は、天板部の自由端側に、横葺き屋根材における屋根面部の切り放し端部に外嵌めされる屋根面板つかみ部を設けたことを特徴として成るものである。
前記キャップ本体における側板部は、その下端を内側に折り曲げ延長した下回り部を具えるとともに、この下回り部の自由端を更に上方に折り重ねるように形成して、その間を差込片保持部とするものであり、
一方、差込片は、差込固定部と抜け止め当たり部とが連続してアングル断面形状に形成されることを特徴として成るものである。
前記請求項1から3のいずれか1項に記載されたケラバキャップを、ケラバ下地と、端部を切り放し状とした横葺き屋根材とが施工された屋根端部に適用し、
前記差込片における差込固定部を、キャップ本体の側板部における差込片保持部に差し込むとともに、差込片における抜け止め当たり部をケラバ下地の張り出し縁部に当接させてケラバキャップを固定するようにしたことを特徴として成るものである。
屋根構造Cの基本は、一例として図1(a)・(b)に示すように、下地木構造2に対し、その屋根端部のケラバに、ケラバ下地3を設けるとともに、屋根全体に横葺き屋根材4を葺くようにしたものである。以下、ケラバキャップ1の説明に先立ち、この屋根構造Cの基本となる下地木構造2、ケラバ下地3、横葺き屋根材4について説明する。
また、屋根の側縁部にあたるケラバには、妻板状の破風板23が設けられる。そして、この破風板23を覆うように唐草と称されるケラバ下地3が設けられるものであって、このケラバ下地3は、一例として上記図1(b)に示すように、適宜の雨仕舞いをするため屋根面に沿って形成される下地天板31と、屋根端部の外方に張り出すとともに下向きに屈曲状に形成される張り出し縁部32と、前記破風板23に沿うように下垂状に形成される破風覆部33とを具える。
また、屋根面部41の流れ方向上流側(棟側)には後係合部44が構成され、これに連続して後延長部45が形成される。この後係合部44と後延長部45は、言わば次の流れ方向上流側(棟側)の横葺き屋根材4を葺く際の重なり合い部となる。すなわち横葺き屋根材4を棟側に向けて葺いて行く際には、図1(c)に示すように、既に施工された軒側の横葺き屋根材4の後係合部44に、これから施工する棟側の横葺き屋根材4の前厚み板42や前係合部43を上から係合させながら、野地板22に留め付けて行くものである。
このような屋根構造Cのケラバに対し、本発明のケラバキャップ1が適用されるものであり、以下このケラバキャップ1について具体的に説明する。
キャップ本体10は、天板部12とここからほぼ90度屈曲して下方に向かう側板部13とが、断面横L字状に屈曲形成されている。なお、本実施例では側板部13は、軒側の厚み寸法(高さ寸法)が棟側よりも大きくなるように、つまり側板部13自体が等脚台形状を成すように形成されている。またキャップ本体10を形成するにあたり(例えば上記天板部12と側板部13との屈曲形成)、複数の構成部材を適宜板金接続したり、はんだ付けによる接合等で形成することが可能であるが、製造工程等を考慮すると単一(一枚)の金属板状部材から板金加工して形成することが好ましい。もちろん、キャップ本体10の素材についても、このような金属素材に限らず、合成樹脂等を適用しても構わない。
なお、天板部12の上端(棟側端部)から下端(軒側端部)までの長さは、横葺き屋根材4の働き幅とほぼ同じ長さ寸法に形成され、キャップ本体10を、横葺き屋根材4の切り放し端部に嵌め込んだ際に、天板部12の上端(棟側端部)が、横葺き屋根材4の後係合部44の下方に収まる(重なる)ように形成される(図1(c)参照)。
なお、前記側板部13の内側空間には、前記ケラバ下地3の張り出し縁部32が収められるため、ここを下地受入部16とする。因みに、差込片保持部15に挿入される差込片11(後述する抜け止め当たり部11b)は、下地受入部16に収められた張り出し縁部32の更に内側において、このものに当接するように挿入される。
なお、差込片11における差込固定部11aの棟側端部には、一例として図2(a)に示すように、折り返し状のストッパー11cが形成され、このストッパー11cにより差込片保持部15への挿入が止まり、差込片11の抜け落ちを防止するものである。因みに、この折り返し状のストッパー11cは、差込片11を差込片保持部15に挿入する際の操作端にもなる。
以下、このようなケラバキャップ1によるケラバの施工作業並びに施工を完了した屋根構造Cについて以下説明する。
まずケラバの化粧仕上げを行うにあたり、事前に下地木構造2上にケラバ下地3と横葺き屋根材4とが設けられている状態を始発状態とする。このような状態で、まずキャップ本体10が、図1(c)に示すように、横葺き屋根材4の切り放し端部側から差し込まれる。次いで、この差し込みを終えたキャップ本体10の差込片保持部15に差込片11を差し込んで、一つのケラバキャップ1の取り付けが終了するものであり、後はこれを順次、軒側から棟側、すなわち流れ方向下流側から流れ方向上流側に繰り返して行く。
まずキャップ本体10の軒側端部では、横葺き屋根材4の前厚み板42を、キャップ本体10の前化粧板17で包む込む、もしくは覆い被せるように密着させる。
また横葺き屋根材4の切り放し端部については、キャップ本体10の屋根面板つかみ部14で横葺き屋根材4の切り放し端部をくわえ込むようにしてキャップ本体10を嵌め込むものである。すなわち、上つかみ部14aと下つかみ部14bとの間に横葺き屋根材4の切り放し端部を入れ込むようにする。
なお、軒側から棟側への上下方向に連なるキャップ本体10間では、既に嵌め込みを終えた軒側のキャップ本体10の接続係止片19に、棟側のキャップ本体10の巻込部18を差し込む(係止させる)ようにしてキャップ本体10を取り付けて行くものである。
このようにしてキャップ本体10を横葺き屋根材4の切り放し端部に嵌め込んだ後、今度は図1(c)に示すように、棟側から差込片保持部15に差込片11を差し込む。この差し込みは、差込固定部11aを下回り部15aと上返し部15bとの間に嵌め込むように行うものであり、このようにしたときには差込片11の抜け止め当たり部11bが、前記ケラバ下地3の張り出し縁部32の内側に当接するような状態で差し込みが成される(図2(b)参照)。
なお、本実施例では、差込片11を差込片保持部15に差し込むにあたり、差込固定部11aの棟側端縁に折り返し状のストッパー11cが形成されているため、これが差込片11の差込片保持部15からの抜け落ち防止作用を担うものである。
このようにして差込片11の差し込みが完了すると、あたかもキャップ本体10に対し、差込片11が固定され一体化したような状態となる。すなわち一例として図2(b)に示すように、差込片11の抜け止め当たり部11bが、ケラバ下地3の張り出し縁部32の内側に当接し、これを押さえるように作用するため、結果的にケラバキャップ1の側方への抜け出しが阻止される。
一方、天板部12の自由端側では、屋根面板つかみ部14が作用して、ケラバキャップ1の取り付けを更に確実なものとしている。もちろん軒側から棟側への上下方向では、上述したように、当該方向に連なるキャップ本体10間で、軒側のキャップ本体10の接続係止片19に、棟側のキャップ本体10の巻込部18が係止するため、この係止によってもケラバキャップ1の取り付けが、より一層強化される。
本発明のケラバキャップ1並びに屋根構造Cは、以上述べたような構成を代表的な実施例とするものであるが、例えばキャップ本体10や差込片11の形状は、以下の図3(a)〜(d)に示すように、適宜、改変することが可能である。すなわち、ケラバの化粧仕上げを行うにあたり、キャップ本体10や差込片11は、ケラバキャップ1を切り放し状の横葺き屋根材4やケラバ下地3に強固に固定することができればよく、種々の改変が可能である。具体的には、例えば図3(a)に示すように、キャップ本体10における差込片保持部15を下回り部15aから下方に沿わせるように折り返して下返し部15cとする一方、差込片11は抜け止め当たり部11bの下端から偏平な「の」の字状断面に形成して、差込片11を差込片保持部15に嵌め込んだ際には、前記下返し部15cを巻き込む(くわえ込む)ように構成することが可能である。
また、差込片保持部15は、例えば図3(c)に示すように、下方に向けて形成することも可能である。
更に、図3(d)に示す改変例は、差込片保持部15を側板部13を利用して形成し、側板部13の端部を内側上方に折り返して、差込片保持部15を形成し、ここに偏平なジグザグ断面の差込片11を差し込むようにした改変例である。
しかしながら、この場合には、例えばキャップ本体10を一つだけ横葺き屋根材4に差し込んだ状態では、次の棟側のキャップ本体10を施工するまで、接続係止部19同士が未係止となるため、キャップ本体10が流れ方向(軒側)に移動してしまうことがあった。逆に言えば、このために基本の実施例では、接続係止片19を構成しており、これにより流れ方向に葺かれるキャップ本体10同士を係止し、キャップ本体10の流れ方向の移動を阻止していた。
このように基本の実施例では、キャップ本体10を一つだけ横葺き屋根材4に差し込んだ状態では、当該キャップ本体10が屋根の流れ方向に移動してしまう可能性があり、これをキャップ本体10単独で防止できるようにしたのが図4に示す改変例である。
そのため図4の改変例では、まず屋根面板つかみ部14の軒側を、ほぼ前化粧板17の内側付近まで延長するものであり(実際には、横葺き屋根材4の板厚み程度の間隙を設けて延長)、これはキャップ本体10を横葺き屋根材4に差し込んだ際には、前化粧板17の内側と、屋根面板つかみ部14の端軒側端部との間に、横葺き屋根材4の前厚み板42が収まるためである。
また、キャップ本体10単体で流れ方向の移動を阻止するため、接続係止部19は排除した。
なお、下押さえ部12bは上記のように天板部12から連続状に形成されるものの、差し込み時には横葺き屋根材4の裏側に潜り込ませる部位であるため、下つかみ部14bとほぼ同じ高さ(野地板22からの高さ)になるように曲げ形成されることが好ましく、このための段差が、下押さえ部12bと天板部12との間に形成される(屋根面板つかみ部14の折り返し線のほぼ延長線上に形成)。なお、図4(b)では、下押さえ部12bを明確に示すべく、下つかみ部14bよりも低い高さ位置(野地板22からの高さ)で図示している。
また、下つかみ部14bの軒側端部(差し込み側)には、面取り状の角落とし14cが施されており、これは主にキャップ本体10を横葺き屋根材4に差し込み易くするための構造である。もちろん、鋭角な部位をなくすことで、作業者(屋根葺き職人)が施工時に怪我等をしないようにする効果も奏する。
まずキャップ本体10の軒側への移動は、屋根面板つかみ部14の軒側端部が、横葺き屋根材4の前厚み板42の内側に当接することで阻止される。
一方、キャップ本体10の棟側への移動は、前化粧板17の内側が、横葺き屋根材4の前厚み板42の外面に当接することで阻止される。
また、基本の実施例に対し屋根面板つかみ部14の軒側端部が前厚み板42の内側付近まで延長形成されること、且つ下押さえ部12bが形成されること等で、屋根(横葺き屋根材4に対し、水の侵入の懸念がほとんどなくなり、雨仕舞いの強化が達成できるものである。
この場合、上返し部15bは、側板部13に対し極めて接近した状態に形成され、側板部13と上返し部15bとの間(上記下回り部15aに相当)の寸法も極めて小さくなる。
このため差込片保持部15に嵌め込む差込片11についても、上記図5に併せ示すように、アングル断面形状ではなく、単なる細長い板状体で形成することができ、差込片11の下側、つまり差込片保持部15に嵌め込まれる部位が差込固定部11aとなる。また、差込片11の上側、つまり差し込み状態でケラバ下地3の張り出し縁部32の内側に当接し、キャップ本体10の抜け止め作用を担う部位が、抜け止め当たり部11bとなる。
1 ケラバキャップ
10 キャップ本体
11 差込片
11a 差込固定部
11b 抜け止め当たり部
11c ストッパー
12 天板部
12a 切り込み
12b 下押さえ部
13 側板部
14 屋根面板つかみ部
14a 上つかみ部
14b 下つかみ部
14c 角落とし
15 差込片保持部
15a 下回り部
15b 上返し部
15c 下返し部
16 下地受入部
17 前化粧板
18 巻込部
19 接続係止部
2 下地木構造
21 垂木
22 野地板
23 破風板
3 ケラバ下地(唐草)
31 下地天板
32 張り出し縁部
33 破風覆部
4 横葺き屋根材
41 屋根面部
42 前厚み板
43 前係合部
44 後係合部
45 後延長部
Claims (4)
- 横葺き屋根材の切り放し端部に横方向から差し込み、ケラバの化粧仕上げを行うようにしたケラバキャップであって、
このケラバキャップは、天板部と側板部とが断面横L字状に屈曲形成されたキャップ本体と、このキャップ本体に組み合わされる長杆状の差込片とを具えて成り、
前記キャップ本体における側板部には、その自由端側に差込片保持部を具え、
一方、差込片は、前記差込片保持部に嵌まる差込固定部と、差込片を差込片保持部に嵌め込んだ状態で、ケラバ下地における張り出し縁部の内側に当接する抜け止め当たり部とを具えることを特徴とする横葺き屋根用ケラバキャップ。
- 前記キャップ本体は、天板部の自由端側に、横葺き屋根材における屋根面部の切り放し端部に外嵌めされる屋根面板つかみ部を設けたことを特徴とする請求項1記載の横葺き屋根用ケラバキャップ。
- 前記キャップ本体における側板部は、その下端を内側に折り曲げ延長した下回り部を具えるとともに、この下回り部の自由端を更に上方に折り重ねるように形成して、その間を差込片保持部とするものであり、
一方、差込片は、差込固定部と抜け止め当たり部とが連続してアングル断面形状に形成されることを特徴とする請求項1または2記載の横葺き屋根用ケラバキャップ。
- 前記請求項1から3のいずれか1項に記載されたケラバキャップを、ケラバ下地と、端部を切り放し状とした横葺き屋根材とが施工された屋根端部に適用し、
前記差込片における差込固定部を、キャップ本体の側板部における差込片保持部に差し込むとともに、差込片における抜け止め当たり部をケラバ下地の張り出し縁部に当接させてケラバキャップを固定するようにしたことを特徴とする横葺き屋根用ケラバキャップを用いた屋根構造。
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