JP2016223131A - 被覆構造および剥落防止方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】被覆材の剥離と連結機構の劣化とが重なる場合でも、被覆材の剥落を防止できる技術を提供する。
【解決手段】被覆構造は、構造物11と、被覆モルタル14と、ステンレス製金網12と、第1連結機構13,19と、第2連結機構10とを備える。第1連結機構と、第2連結機構とでは、連結に係る構成が異なる。例えば、第1連結機構13,19は、ステンレス製金網12の凹部19を構造物表面17当接し、後施工アンカー13により固定するものである。第2連結機構10は、インサート1にボルト2を捻じ込み固定して突出部材を形成し、被覆後、ボルト2とダブルナット4の螺合により、座金3を介してモルタル表面18より被覆モルタル14を押さえるものである。
【選択図】図1
【解決手段】被覆構造は、構造物11と、被覆モルタル14と、ステンレス製金網12と、第1連結機構13,19と、第2連結機構10とを備える。第1連結機構と、第2連結機構とでは、連結に係る構成が異なる。例えば、第1連結機構13,19は、ステンレス製金網12の凹部19を構造物表面17当接し、後施工アンカー13により固定するものである。第2連結機構10は、インサート1にボルト2を捻じ込み固定して突出部材を形成し、被覆後、ボルト2とダブルナット4の螺合により、座金3を介してモルタル表面18より被覆モルタル14を押さえるものである。
【選択図】図1
Description
本発明は、トンネル等構造物を被覆材により被覆した被覆構造に関する。特に、被覆材の剥落を防止する技術に関する。
金属(鋼鉄、鋳鉄など)、コンクリート又は木材等が用いられて建設されたビル、戸建住宅、トンネルその他の構造体の表面に、耐火性、断熱性、遮音性等の性能を付与又は向上させるために、被覆モルタル等のセメント系被覆材で被覆することが行われている。
ところで、被覆モルタルが剥落することを防止するために、ボルト、ナット、釘、タッピン螺子や木螺子等の螺子、アンカー等の連結機構により、金属メッシュ等の被覆モルタル用剥落防止ネットが構造物表面に取り付けられることがある(例えば、特許文献1及び2)。
これにより、仮に何らかの原因でセメント系被覆材が構造体表面と剥離しても、剥落防止ネットが被覆材を支持するため、被覆材の剥落を防止できる。
しかし、経年劣化により、連結機構と構造体との一体性が損なわれることも考えられる。例えば、接着剤でアンカーを構造体表面に取り付けている場合は、接着剤の劣化又は構造体との取り合い部分の劣化によりアンカーの付着力が低下することが考えられる。また、連結機構の構造体表面への取り付けが適切でないことも考えられる。例えば、接着剤でアンカーを構造体表面に取り付けている場合は、接着剤の量又は質が不適切なことが考えられる。また、螺合により螺子を構造体表面に取り付けている場合は、振動等により螺子が緩むことも考えられる。
被覆材の剥離と連結機構の劣化とが重なると、被覆材の剥落が発生するおそれもある。被覆材が落下した先に、人や車輌等が通行中であったり、設備が設置してあると、重大な事故になる虞がある。
したがって、被覆材の剥離と連結機構の劣化とが重なる場合でも、被覆材の剥落を防止できる技術が望まれていた。
なお、定常点検を介して不具合の早期発見に心掛けているため、被覆材の剥離と連結機構の劣化とが重なって発生することは想定し難いが、想定外の事態も考慮した安全対策を講じることが重要である。
本発明は上記課題を解決するものであり、被覆材の剥離と連結機構の劣化とが重なる場合でも、被覆材の剥落を防止できる技術を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の一態様である被覆構造は、構造物と、前記構造物を被覆する被覆材と、前記被覆材に埋設され、前記構造物から前記被覆材が剥落することを防ぐ剥落防止ネットと、前記剥落防止ネットを前記構造物に連結する第1連結機構と、前記被覆材を前記構造物に連結する第2連結機構と、を備える。
また上記発明において好ましくは、前記第2連結機構は、前記構造物から突出し、前記剥落防止ネットの網目を挿通する突出部材と、該突出部材端部側に設けられることにより前記被覆材表面に設けられる押え部材と、を介して、前記被覆材を前記構造物に連結する。
これにより、被覆材の剥離と第1連結機構の劣化とが重なる場合でも、第2連結機構が直接被覆材を支持するため、被覆材の剥落を防止できる。
また上記発明において好ましくは、前記第1連結機構と、前記第2連結機構とでは、連結に係る構成が異なる。
これにより、一の要因により、第1連結機構が劣化したとしても、第2連結機構は劣化しない。
また上記発明において好ましくは、前記第1連結機構は、螺合、嵌合、締結、埋設、係止、接着、圧着、溶着、溶接、釘打ち、鋲、ステープル、或いは各手段の複合を含む手段のうち一の手段に係る構成を有する。前記第2連結機構は、螺合、嵌合、締結、埋設、係止、接着、圧着、溶着、溶接、釘打ち、鋲、ステープル、或いは各手段の複合を含む手段のうち前記第1連結機構と異なる手段に係る構成を有する。
また上記発明において好ましくは、前記押え部材の寸法は、前記剥落防止ネットの目開き寸法より大きい。
また上記発明において好ましくは、前記被覆材表面近傍に設けられる繊維ネットを備え、前記押え部材の寸法は、前記繊維ネットの目開き寸法より大きい。
これにより、より確実に被覆材の剥落を防止できる。
上記課題を解決する本発明の一態様は、構造物から被覆材が剥落することを防ぐ剥落防止方法であって、剥落防止ネットを前記構造物に連結し、前記剥落防止ネットが埋設されるように、被覆材により前記構造物を被覆し、前記被覆材表面側から押さえることにより、前記被覆材を前記構造物に連結する。
上記課題を解決する本発明の一態様は、構造物から被覆材が剥落することを防ぐ剥落防止方法であって、剥落防止ネットを前記構造物に連結し、前記構造物から突出し、前記剥落防止ネットの目開きを挿通する突出部材を設け、前記剥落防止ネットが埋設されるように、被覆材により前記構造物を被覆し、前記突出部材端部に押え部材を設け、前記被覆材表面側から押さえることにより、前記被覆材を前記構造物に連結する。
本発明によれば、被覆材の剥離と連結機構の劣化とが重なる場合でも、被覆材の剥落を防止できる。
<第1実施形態>
〜構成〜
図1は本実施形態に係る被覆構造の概略断面図である。
〜構成〜
図1は本実施形態に係る被覆構造の概略断面図である。
被覆構造は、構造物11と、被覆モルタル14と、ステンレス製金網(被覆モルタル用剥落防止ネット)12と、第1連結機構13,19と、第2連結機構10とを備える。
RC構造物11は構造物の一例である。本発明における構造物として、鋼製(特に普通鋼製)又は鋳鉄製の構造物(鉄製構造物)、コンクリート製構造物、木製構造物並びに鋼材、鋳鉄、コンクリート、木材、石材、樹脂等を組み合わせた構造物等が挙げられ、より具体的には、例えば、普通鋼製セグメント、鋳鉄製のセグメント、鋼材とコンクリートとからなる合成セグメント、鋳鉄とコンクリートとからなる合成セグメント並びにこれらの1種又は2種以上のセグメントからなるシールドトンネル、コンクリートと鋼材からなる山岳トンネル、鋼製タンク、鉄筋コンクリート製タンク、鋼製の橋脚、鋼製の高架橋、鉄筋コンクリート製高架橋、鋼管,鉄骨,鋼板或いは鋼管充填コンクリートからなる壁,屋根,柱,梁又は床を備える建物、鋼殻の内部にコンクリートを充填した沈埋トンネル、木造住宅、鉄骨製住宅、コンクリート製住宅等が挙げられる。
被覆モルタル14は、被覆材の一例である。本発明における被覆モルタルとしては、構造物表面17に被覆するモルタルであれば特に限定されず、セメントモルタル、ポリマーモルタル又はポリマーセメントモルタルの何れでもよく、例えば耐火被覆モルタル、耐酸性モルタル等の耐薬品性モルタル、仕上げモルタル、断熱性モルタル、断面補修モルタル等が挙げられる。また、モルタル以外の被覆材も含まれる。図1に示した被覆モルタル14は、軽量モルタルからなる耐火被覆モルタルである。
ステンレス製金網12は剥落防止ネットの一例である。本発明における剥落防止ネットとしては、金属、セラミック、樹脂、ガラス、炭素から選ばれる一種又は二種以上を主材として構成されている。具体的には、ステンレス鋼、防錆処理した金属、樹脂、耐アルカリ性ガラス、炭素等の腐食や発錆が起こり難い素材である。施工実務の観点から、強度を確保しながら湾曲面にも沿わせることができる柔軟性を有し、比較的安価であることが好ましい。耐火性の観点から、不燃又は難燃性のものが好ましい。このようなことから、ステンレス鋼、防錆処理した金属、セラミック、耐アルカリ性ガラス等が特に好ましい。中でも、ステンレス鋼は好ましい。
剥落防止ネット12の目開きは、セメント系被覆材の硬化前の粒子が全て通り抜ける大きさであればよいが、剥落防止ネットを予め構造物に固定した後にセメント系被覆材層を設ける場合は、10mm以上が好ましく、20mm以上がより好ましく、30mm以上が特に好ましい。
一方、当該目開きが大きい場合は、セメント系被覆材が落下しないように支えるために、剥落防止ネットを構成する線材を太くする必要が生じ、剥落防止ネットの質量が増してしまう。また、押え部材(後述する座金3)の大きさ及び質量が増してしまう。これらのため、当該目開きが大きい場合は、剥落防止ネットの取り付け及び押え部材の固定の作業の労力が大変である。このため、剥落防止ネットの目開きとしては、300mm以下が好ましく、200mm以下がより好ましく、100mm以下が更に好ましい。
本実施形態では、一例として48.4mm×48.4mmとする。
上記の剥落防止ネットは、セメント系被覆材の厚みの1/4〜3/4の位置に存在することが、セメント系被覆材の剥落を防止し易いことから好ましい。
図2に、ステンレス製金網12の概略斜視図を示す。このステンレス製金網12は、凹部19と平面部20からなり、被覆モルタル14の内部に埋設される。ステンレス線を格子状に配置した上で各交点を溶接してある。一例として用いられているステンレス線の線径は1.6mmとする。凹部19は溝状である。凹部19は構造物表面17に接触し、構造物表面17に当接する位置に第1連結機構13により取り付けられる。
後施工アンカー13は、第1連結機構の一例である。この後施工アンカー13は、一例として直径4mmの芯棒打込み式の金属拡張アンカーである。この後施工アンカー13は、構造物表面17に設けられた直径4mmの孔に挿入した後に、芯棒の頭部をハンマーで打込むことで、拡張部が開き孔壁に機械的に固着する。また、後施工アンカー13には座金が備わっており、この座金が上記凹部19に当接している。本発明における第1連結機構は、被覆モルタル用剥落防止ネットを構造物表面に取り付けることができれば特に限定されない。例えば、アンカーボルト、管付ボルト、フック状金具、釘、タッピン螺子や木螺子等の螺子、ボルト、リベット、インサートナット、ナット、ワイヤ、針金などが挙げられる。材質も、金属、セラミック、樹脂、ガラス、木材などが挙げられる。種類および材質とも2種以上複合したものでも良い。構造体への連結方式は、螺合、嵌合、締結、埋設、係止、接着、圧着、溶着、溶接、釘打ち、鋲、或いはステープル等が適宜採用できる。図1においては、ステンレス製金網12は、全ての凹部19の位置で後施工アンカー13により構造物11と連結しているが、一部の凹部19の位置に後施工アンカー13を配置しないこともある。
次に、第2連結機構10について説明する。
RC構造物11に設けられたインサート1にボルト2を捻じ込み固定する。これにより、構造物11から突出する突出部材が形成される。ボルト2は剥落防止ネットの網目を挿通する。すなわち、ボルト2の径は剥落防止ネットの目開き寸法より小さい。一例として、ボルト2の直径を10mmとする。
ボルト2の端部側(構造物と反対側)から座金3(押え部材)が挿通され、ボルト2とダブルナット4の螺合により、座金3はモルタル表面18に設置される。
第2連結機構10は特定の構成に限定されるものではないが、第1連結機構13と連結に係る構成が異なることが好ましい。たとえば、本実施形態では、第1連結機構は後施工アンカー13であるのに対し、第2連結機構10は、インサートと螺合の複合構造である。
本発明における突出部材については、材質及び形状は特に限定されないが、取り扱い易いこと、強度に優れていること、燃え難いこと及び比較的安価であること等から、金属製の突出部材が好ましく、錆び難く耐久性に優れることからステンレス製のものがより好ましい。
突出部材の形状としては、棒状、管状、ブロック状、板状及びこれらを組み合わせた形状等を好適に用いることができるが、押え部材を固定し易いことから、被覆材表面18側からアクセス可能な部分が螺子状となっていることが好ましい。螺子状部分は、雄螺子でも雌螺子でもよい。
被覆材表面側からのアクセスの観点から、突出部材端部が被覆材表面18から露出していることが好ましいが、端部を雌螺子とすることにより被覆材表面18と面一としてもよい。
突出部材を構造物11に連結する方法も限定されない。螺合、嵌合、締結、埋設、係止、接着、圧着、溶着、溶接、釘打ち、鋲、或いはステープル等が適宜採用できる。ただし、上述の通り、第1連結機構13と第2連結機構10とでは、連結方式が異なることが好ましい。第1連結機構13と第2連結機構10とで連結方式が同じ場合は、大きさ、形状又は材質等を違えることで、構造物11との連結の程度を第1連結機構13と第2連結機構10とで違えることが好ましい。
本発明における押え部材については、材質は特に限定されないが、取り扱い易いこと、強度に優れていること、燃え難いこと、耐久性が高いこと及び比較的安価であること等から、金属製が好ましく、錆び難く耐久性に優れることからステンレス製がより好ましい。
また、押え部材の形状も、特に限定されない。例えば、板状、棒状、ブロック状、傘状、線状等などが好ましい例として挙げられる。平面形状は、円形や矩形が好ましい。ただし、寸法については後述する。
押え部材を突出部材に固定する方法は特に限定されない。例えば、螺合、嵌合、締結、埋設、係止、接着、圧着、溶着、溶接、釘打ち、鋲、ステープル、或いは各手段の複合を含む手段のうち一の手段を用いて固定すればよい。
座金3(押え部材)の寸法は、剥落防止ネット12の目開き寸法より大きいことが好ましい。一例として、剥落防止ネット12の目開きを48.4mm×48.4mmとするとき、座金3を円形とし、直径を75mmとする。
第2連結機構10は、一枚のステンレス製金網12(例えば、3×1m)に対応して、4隅に設けられることが好ましい。もちろん4か所以上でもよい。ただし、隣り合うステンレス製金網が重なる場合は、重ね合わせ箇所において、1つの第2連結機構により、両方を併用してもよい。
〜施工手順〜
事前に構造物11にインサート1を設けておく。ステンレス製金網12を構造物表面17に配置し、第1連結機構(後施工アンカー13)により取り付ける。
事前に構造物11にインサート1を設けておく。ステンレス製金網12を構造物表面17に配置し、第1連結機構(後施工アンカー13)により取り付ける。
ついでボルト2をインサート1に捻じ込み固定する。これにより、ボルト2は構造物11から突出し、突出部材が形成される。このときボルト2は剥落防止ネット12の網目を挿通する。
所定厚さの被覆モルタル14を被覆する。ステンレス製金網12および第1連結機構13は、被覆モルタル14内部に埋設される。一方、ボルト2の端部は被覆材表面18から露出している。
ボルト2の端部側から座金3を挿通しモルタル表面18に配置する。とダブルナット4をボルト2端部に螺合させる。これにより第2連結機構10が形成される。
以上のように、本実施形態は施工性に優れている。
〜想定不具合および効果〜
想定される不具合を説明しながら、本実施形態の作用および効果について説明する。
想定される不具合を説明しながら、本実施形態の作用および効果について説明する。
・想定1
図3は、被覆材14の剥離と連結機構13の劣化とが同時期に重なって発生すると想定した場合の不具合説明図である。このとき、第2連結機構10がないと仮定すると、被覆材14全体の剥落のおそれがあり、重大な事故になる虞がある。
図3は、被覆材14の剥離と連結機構13の劣化とが同時期に重なって発生すると想定した場合の不具合説明図である。このとき、第2連結機構10がないと仮定すると、被覆材14全体の剥落のおそれがあり、重大な事故になる虞がある。
なお、被覆材14の剥離と連結機構13の劣化とが同時期に重なって発生することは想定し難いが、想定外の事態を想定していることに充分な留意が必要である。
ところで、連結機構の経年劣化の要因についてはいくつか考えられる。たとえば、温度変化や湿度変化による構造物の膨張・収縮、大気中の水分や浸入してくる水分或いは化学物質による化学変化、トンネルを通行する車両による変動圧や振動などが挙げられる。
各劣化要因に対応して影響の少ない各手段を取り得る。すなわち、一の要因に対して有効な一の手段を採用できる。しかし、その一の手段を採用する場合、他の要因に対し有効でない場合もあり得る。
一方で、経年劣化の要因は、個別具体的であり、経年して初めてわかることが多い。すなわち、過去の事例から、経年劣化の要因を予測するのは難しい。従って、特定の一の連結手段を選択することは難しい。
本実施形態では、第1連結機構13と第2連結機構10とは、具体的な構成が相違している。これにより、一の要因により第1連結機構13が経年劣化した場合でも、第2連結機構10は劣化せず、被覆材の剥落を防止できる。
すなわち、第2連結機構10が被覆モルタル14を直接支持するため、被覆モルタル14全体の剥落を防止できる。
もちろん、他の要因により第2連結機構10が経年劣化した場合でも、第1連結機構13は劣化せず、被覆材の剥落を防止できる。
このように、本実施形態はフェイルセーフの技術思想を実現できる。
・想定2
トンネル等では定期点検をおこなっており、被覆材14の剥離と連結機構13の劣化とが同時期に重なって発生することは想定しがたい。しかしながら、仮にそのような不具合を想定した場合、本実施形態では、第2連結機構10が被覆モルタル14を直接支持することにより安全性を確保している(上述)。
トンネル等では定期点検をおこなっており、被覆材14の剥離と連結機構13の劣化とが同時期に重なって発生することは想定しがたい。しかしながら、仮にそのような不具合を想定した場合、本実施形態では、第2連結機構10が被覆モルタル14を直接支持することにより安全性を確保している(上述)。
しかしながら、上記不具合が発生したとしても、発生直後は外観に不具合が顕在化しない。したがって目視点検では不具合を発見できないおそれがある。次の定期点検まで上記不具合がそのまま維持される。
図4は、被覆材14の剥離と連結機構13の劣化とが同時期に重なって発生した場合、次の想定に係る不具合説明図である。
第2連結機構10が一枚のステンレス製金網12の4隅に設けられる場合、一枚のステンレス製金網12に対応する被覆材14の自重は4等分され、それぞれの第2連結機構10に集中する。
更に詳しく説明すると、座金3の当接面に応力が集中する。その結果、当接箇所の被覆モルタル14が圧潰されるおそれがある。
なお、被覆モルタル14の圧潰は、徐々に進行するものと思われる。したがって、砕けた破片が少しずつ落下する。
破片および第2連結機構10周辺の被覆モルタル14の損傷は、容易に目視点検可能である。
また、第2連結機構10の設置個所は比較的少なく、検査個所を絞ることができるため、全面点検をするのに比べて、目視点検は容易である。
したがって、上記不具合の早期発見が可能である。その結果、被覆モルタル14全体の剥落し、重大な事故に至ることを防止できる。
なお、細かいモルタル破片が落下することも好ましくはないが、被覆モルタル14全体の剥落と比べれば、重大な事故に至ることはない。
・想定3
上述の通り、本実施形態では、目視点検が容易であり、上記不具合の早期発見が可能である。しかしながら、人為的ミス(たとえば点検リスト漏れなど)が重なり、不具合が暫く放置されることをも想定する。
上述の通り、本実施形態では、目視点検が容易であり、上記不具合の早期発見が可能である。しかしながら、人為的ミス(たとえば点検リスト漏れなど)が重なり、不具合が暫く放置されることをも想定する。
当接箇所の被覆モルタル14の圧潰が徐々に進行しても、座金3の寸法は剥落防止ネット12の目開き寸法より大きいため、剥落防止ネット12が座金3に引っ掛かる。その結果、被覆モルタル14全体の剥落し、重大な事故に至ることを防止できる。
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態に係る被覆構造の概略断面図である。第1実施形態の被覆モルタル表面18近傍に、ガラス繊維ネット21を設けたものである。
図5は、第2実施形態に係る被覆構造の概略断面図である。第1実施形態の被覆モルタル表面18近傍に、ガラス繊維ネット21を設けたものである。
ガラス繊維ネット21は繊維ネットの一例である。本発明における繊維ネットとしては、例えばガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等が好ましい例として挙げられる。更に樹脂により被覆されている又は樹脂が含浸していることが好ましい。
ガラス繊維ネット21の目開きは、セメント系被覆材の硬化前の粒子が全て通り抜ける大きさであればよいが、ボルト2が通る形状及び大きさの目開きが好ましい。したがって、ボルト2はガラス繊維ネット21の網目を挿通する。ただし、ガラス繊維ネット21の目開き寸法は座金3の寸法より小さい。たとえば、ガラス繊維ネット21の目開き寸法は、10×10mm〜40×40mm程度である。ガラス繊維ネット21の目開き寸法が10×10mm未満の場合は、ガラス繊維ネット21の一部を切断する等、ボルト2が挿通するように加工が必要である。その場合においても、ガラス繊維ネット21の目開き寸法は3×3mm以上であることが好ましい。
ところで、被覆モルタル表面18のひび割れを分散し抑制するために、被覆モルタル表面18近傍に、ガラス繊維ネット21が被覆モルタル表面近傍に埋設される。
しかしながら、ただ単に、ガラス繊維ネット21を被覆モルタル表面近傍に埋設しただけでは、ガラス繊維ネット21自体が剥落するおそれがあった。
本実施形態では、ガラス繊維ネット21自体が剥落しても、座金3の寸法はガラス繊維ネット21の目開き寸法より大きいため、ガラス繊維ネット21が座金3に引っ掛かる。その結果、ガラス繊維ネット21の落下を防止できる。
更に、第1実施形態では、ステンレス製金網12より被覆表面18側の被覆モルタル14の一部が剥落し、破片が落下する場合、これを防止できなかった。
これに対し、本実施形態では、ガラス繊維ネット21の目開き寸法以上の破片は、ガラス繊維ネット21に引っ掛かるため、破片の剥落を防止できる。
特に、第1実施形態の想定2における破片の剥落も軽減できる。
<補足>
本発明は、フェイルセーフの技術思想を実現するものである。つまり、想定外の不具合をも想定するものである。
本発明は、フェイルセーフの技術思想を実現するものである。つまり、想定外の不具合をも想定するものである。
ところで、どれだけ想定外の不具合を想定し、どれだけ対策を講じても、不具合発生のリスクをゼロにすることは不可能である。
本発明は、想定外の不具合が発生することを想定し、発生した不具合をも利用して、更なる安全対策を講じるものである。したがって、本発明は、ただ単に、2つの剥落防止手段を組み合わせたものではない。
本発明は、コンクリート、金属、木材、石材又は煉瓦等からなる構造物表面に、耐火被覆モルタルや耐酸モルタル等の被覆モルタルを被覆する被覆構造に適用できる。構造物としては、例えば木造住宅、鉄骨製住宅、コンクリート製住宅、トンネル、タンク、上水道施設、下水道施設、橋脚、高架橋、鉄筋コンクリート製水路等が挙げられる。
1 インサート
2 ボルト
3 座金
4 ナット
10 第2連結機構
11 構造体
12 ステンレス製金網(剥落防止ネット)
13 後施工アンカー(第1連結機構)
14 軽量被覆モルタル
17 構造体表面
18 モルタル表面
19 凹部
20 平面部
21 ガラス繊維ネット
2 ボルト
3 座金
4 ナット
10 第2連結機構
11 構造体
12 ステンレス製金網(剥落防止ネット)
13 後施工アンカー(第1連結機構)
14 軽量被覆モルタル
17 構造体表面
18 モルタル表面
19 凹部
20 平面部
21 ガラス繊維ネット
Claims (7)
- 構造物と、
前記構造物を被覆する被覆材と、
前記被覆材に埋設され、前記構造物から前記被覆材が剥落することを防ぐ剥落防止ネットと、
前記剥落防止ネットを前記構造物に連結する第1連結機構と、
前記被覆材を前記構造物に連結する第2連結機構と、
を備えることを特徴とする被覆構造。 - 前記第2連結機構は、
前記構造物から突出し、前記剥落防止ネットの網目を挿通する突出部材と、
該突出部材端部側に設けられることにより前記被覆材表面に設けられる押え部材と、
を介して、前記被覆材を前記構造物に連結する
ことを特徴とする請求項1記載の被覆構造。 - 前記第1連結機構と、前記第2連結機構とでは、連結に係る構成が異なる
ことを特徴とする請求項1または2記載の被覆構造。 - 前記押え部材の寸法は、前記剥落防止ネットの目開き寸法より大きい
ことを特徴とする請求項2記載の被覆構造。 - 前記被覆材表面近傍に設けられる繊維ネットを備え、
前記押え部材の寸法は、前記繊維ネットの目開き寸法より大きい
ことを特徴とする請求項2記載の被覆構造。 - 構造物から被覆材が剥落することを防ぐ剥落防止方法であって、
剥落防止ネットを前記構造物に連結し、
前記剥落防止ネットが埋設されるように、被覆材により前記構造物を被覆し、
前記被覆材表面側から押さえることにより、前記被覆材を前記構造物に連結する
ことを特徴とする被覆材の剥落防止方法。 - 構造物から被覆材が剥落することを防ぐ剥落防止方法であって、
剥落防止ネットを前記構造物に連結し、
前記構造物から突出し、前記剥落防止ネットの網目を挿通する突出部材を設け、
前記剥落防止ネットが埋設されるように、被覆材により前記構造物を被覆し、
前記突出部材端部に押え部材を設け、前記被覆材表面側から押さえることにより、前記被覆材を前記構造物に連結する
ことを特徴とする被覆材の剥落防止方法。
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JP2015109379A JP2016223131A (ja) | 2015-05-29 | 2015-05-29 | 被覆構造および剥落防止方法 |
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Cited By (1)
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