JP2016222494A - 石炭灰固化物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】振動締固めで石炭灰固化物を製造する際の貝殻砕粉の実用的な割合を特定し、容易に製造できる石炭灰固化物の製造方法の提供。【解決手段】石炭灰、石灰類、及び、5〜43質量%の割合で貝殻砕粉を混練し、混練物を振動させて締固めて硬化体にする際の貝殻粉の実用的配合を特定し、石炭灰を有効に利用すると共に、貝殻の廃棄物を用いて強度を確保し、環境安全性を担保した石炭灰固化物を形成する方法。前記石炭灰の割合が70〜43質量%である石炭灰固化物の製造方法。【選択図】なし
Description
本発明は、石炭灰およびホタテやカキ貝殻などの廃棄物を用いた貝殻砕粉を含有する石炭灰固化物の製造方法に関する。
我が国の石炭灰発生量は年々増加しており、近年は、年間1200万トンを超え、これらの有効利用方法の開発が求められている。一方、年間20〜40万トン産出されるホタテやカキの貝殻は、埋め立て地不足や野積みによる悪臭が地方自治体の抱える産廃処理問題の一つとして深刻な課題となっている。これらの理由から、石炭灰やホタテ貝殻などを大量に、かつ安価、そして安全に処理できる技術の開発が望まれる。
このような状況から、本件出願の発明者等は、有効利用技術の開発が求められている石炭灰、及び、ホタテやカキなどの貝殻の廃棄物を用いて、養浜用の砂礫や路盤材等に利用可能で、微量物質の溶出等の環境影響がほとんどない石炭灰固化物およびこれを安価に製造することができる石炭灰固化物の製造方法を提案している(特許文献1参照)。
特許文献1に記載された技術では、石炭灰に貝殻砕粉を混練することにより、環境影響がほとんどない、貝殻砕粉を含有する石炭灰固化物が得られ、石炭灰、及び、貝殻砕粉を有効に使用した技術となっている。しかし、石炭灰固化物を製造する態様は様々であり、製造の態様と貝殻砕粉の割合(石炭灰を有効利用する際の貝殻砕粉の割合)との関係を把握して貝殻砕粉を含有する石炭灰固化物の製造方法を特定するには至っていないのが現状であった。このため、石炭灰固化物の製造の態様に応じた貝殻砕粉の実用的な割合を特定する要望があるのが実情である。
本発明は、上記状況に鑑みてなされたもので、石炭灰固化物の製造の態様である振動締固めで石炭灰固化物を製造する際の貝殻砕粉の実用的な割合を特定し、石炭灰を有効に利用し、ホタテやカキなどの貝殻の廃棄物を用いて、環境安全性を担保した石炭灰固化物を容易に製造することができる石炭灰固化物の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の石炭灰固化物の製造方法は、石炭灰、石灰類、及び、5質量%から43質量%の割合で貝殻砕粉を混練し、混練物を振動させて締固めて硬化体にすることで石炭灰固化物を形成することを特徴とする。
請求項1に係る本発明では、5質量%から43質量%の割合の貝殻砕粉を含む混練物を振動させて締固めることで石炭灰固化物を形成するので、振動締固めで石炭灰固化物を製造する際の貝殻砕粉の実用的な割合を特定することができる。
このため、石炭灰固化物の製造の態様である振動締固めで石炭灰固化物を製造する際の貝殻砕粉の実用的な割合を特定し、石炭灰を有効に利用し、ホタテやカキなどの貝殻の廃棄物を用いて、環境安全性を担保した石炭灰固化物を容易に製造することができる。
例えば、貝殻砕粉が5質量%の場合、石炭灰の割合は80質量%が好ましい。振動締固めで固化物を製造する場合、加圧で固化物を製造する場合と異なり、空隙が多くなるため、貝殻砕粉の配合量が増えると強度が低下すると考えられる。振動締固めの場合、コンクリート中の骨材のように、強度増大に寄与する貝殻砕粉の割合を5質量%から43質量%に設定することで、流動性の高い石炭灰が空隙に充填されていくことになり、強度が保たれた石炭灰固化物が製造できる。振動締固めを行う際の振動数は50Hzから70Hzが好ましい。これは、振動数が小さ過ぎても大き過ぎても、機械的な装置特性により締固めの効果が低下することに起因する。
そして、請求項2に係る本発明の石炭灰固化物の製造方法は、請求項1に記載の石炭灰固化物の製造方法において、前記貝殻砕粉の割合は、15質量%から43質量%であり、前記石炭灰の割合は、70質量%から43質量%であることを特徴とする。
請求項2に係る本発明では、石炭灰を有効に利用するための貝殻砕粉を不足なく使用することができると共に、空隙に充填される石炭灰の量も確保され、石炭灰を利用するための貝殻砕粉を不足なく使用して的確な強度を確保することができる。
また、請求項3に係る本発明の石炭灰固化物の製造方法は、請求項1もしくは請求項2に記載の石炭灰固化物の製造方法において、前記石炭灰、前記石灰類、及び、前記貝殻砕粉を少なくとも含む原料を混練する際の前記原料に対する水の比率は、0.25から0.32であることを特徴とする。
請求項3に係る本発明では、石炭灰、石灰類、及び、貝殻砕粉を少なくとも含む原料を混練する際の原料に対する水の比率を、0.25から0.32にしたので、水の比率が少なすぎずに水和反応の進行を妨げることなく、固練りの状況の時間を長くすることなく、均一な混合が可能になると共に、水の比率が多すぎずに空隙率の増加、強度の低下を抑制することができる。
また、請求項4に係る本発明の石炭灰固化物の製造方法は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の石炭灰固化物の製造方法において、前記混練物を振動させる際に前記混練物を加圧することを特徴とする。
請求項4に係る本発明では、混練物を振動させる際に混練物を振動とともに加圧するので、振動で締固める過程での貝殻砕粉の間に生じる空隙の一部を加圧力により消すことができ、強度を高めることができる。即ち、振動による締固めは、自重と振動で与えられたエネルギーを作用させて、粒径の異なる各種原料の収まり具合を良くし、余分な気泡を抜くことで材料の緻密化を図っている。振動締固めを行う時に混練物を加圧することで、石炭灰で充填しきれなかった大きな空隙を消し去ることができ、強度の低下を抑制することができる。
また、請求項5に係る本発明の石炭灰固化物の製造方法は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の石炭灰固化物の製造方法において、前記硬化体を高湿雰囲気で養生し、その後、水中で養生を実施すること(水中養生)、または、散水により養生を実施すること(散水養生)を特徴とする。
請求項5に係る本発明では、高湿環境下で、硬化体の水和反応が促進されて表面に炭酸カルシウムなどからなる緻密な表面被膜が形成される。高湿環境下は、相対湿度が、例えば、95%RH以上の環境であり、高湿保持する期間は、水和反応に耐え得る表面骨格が形成される期間(短期間)であればよい。相対湿度95%、室温の環境では、例えば、3日間以上保持すればよい。水中養生においては、硬化体の表面に炭酸カルシウムなどからなる緻密な表面被膜が形成されるとともに、硬化体の内部の水和反応を促進する。水中養生は、養生水を交換することなく行えばよい。水中養生に代えて散水することで養生を実施する散水養生を行なうことも可能である。散水養生では、硬化体が十分に水に触れる程度に霧状の水を散水すれば良い。
また、請求項6に係る本発明の石炭灰固化物の製造方法は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の石炭灰固化物の製造方法において、前記硬化体を高湿雰囲気で養生した後、前記硬化体を壊砕して粒状の壊砕物にし、前記粒状の壊砕物を高湿雰囲気で養生した後、水中で養生を実施すること(散水養生)、または、散水により養生を実施すること(散水養生)を特徴とする。
請求項6に係る本発明では、高湿環境下で、硬化体の水和反応が促進されて表面に炭酸カルシウムなどからなる緻密な表面被膜が形成される。高湿環境下は、相対湿度が、例えば、95%RH以上の環境であり、高湿保持する期間は、水和反応に耐え得る表面骨格が形成される期間(短期間)であればよい。相対湿度95%、室温の環境では、例えば、3日間保持される。そして、3日間の高湿保持の後に壊砕されて粒状の壊砕物とされ、粒状の壊砕物が、例えば、5日間高湿雰囲気で保持され、その後、水中養生されて壊砕物の表面に炭酸カルシウムなどからなる緻密な表面被膜が形成されるとともに、粒状の壊砕物の内部の水和反応を促進する。水中養生は、養生水を交換することなく行えばよい。水中養生に代えて散水することで養生を実施する散水養生を行うことも可能である。散水養生では、粒状の壊砕物が十分に水に触れる程度に霧状の水を散水すれば良い。
請求項5、請求項6において、水中で養生を実施した後、または、散水により養生を実施した後、大気中で養生を実施することが好ましい(気中養生)。気中養生により、硬化体(粒状の壊砕物)の表面に炭酸カルシウム等からなる緻密な表面被膜が確実に形成される。
本発明の石炭灰固化物の製造方法は、石炭灰固化物の製造の態様である振動締固めで石炭灰固化物を製造する際の貝殻砕粉の実用的な割合を特定し、石炭灰を有効に利用し、ホタテやカキなどの貝殻の廃棄物を用いて、環境安全性を担保した石炭灰固化物を容易に製造することが可能になる。
本願発明の貝殻砕粉を含有する石炭灰固化物は、石炭灰、貝殻砕粉(未焼成)、石灰類と、必要に応じて添加される石膏類とを含有する材料を混練し、混練物を振動させて振動締固めにより硬化体とし、硬化体を高湿養生、次いで水中養生を実施し水和反応させたものであり、表面に炭酸カルシウムなどからなる炭酸塩被膜を有するものである。
本願発明で用いる石炭灰は、例えば、フライアッシュを適用することができ、さらに、埋め立て処理されたものを再度利用してもよい。一方、本願発明での貝殻砕粉は、ホタテ、カキ、ハマグリ、アサリなど各種の貝殻を砕粉として用いたものであり、貝の種類は特に限定されない。これらの貝殻は廃棄物となるものをそのまま使用でき、焼成処理などして水和反応活性の高い生石灰(CaO)や消石灰(Ca(OH)2)などにする必要はない。
本発明において、貝殻砕粉は、5質量%〜43質量%の範囲で含有させ、好ましくは、15質量%〜43質量%の範囲で含有させる。この場合、石炭灰は、70質量%〜43質量%の範囲で含有させる。
石灰類は、例えば、消石灰(Ca(OH)2)、生石灰(CaO)等、及び、貝殻砕粉を焼成したもののなかから選択されるものである。
また、必要に応じて添加される石膏類を添加することも可能である。石膏類は、石炭灰、貝殻(未焼成)、石灰類との混合物の総カルシウム含有量の不足分を補うために添加するものであり、排脱石膏(脱硫石膏)、化学石膏、廃石膏ボード砕粉、天然石膏などを挙げることができる。
本発明の石炭灰固化物を製造するには、まず、石炭灰と、石灰類と、貝殻砕粉、及び(または)石膏類とを湿式混合して(混練して)混練物を得る。湿式混合は、例えば、ミキサー、ボールミルなど従来から周知の方法で行い、原料に対する水の比率は、0.25から0.32の範囲で設定される。水の比率を0.25から0.32の範囲で設定することで、原料がほぼ均一に混合され、混練物の水分量が後工程で振動締固めを実施するのに適したものとなる。
次に、振動締固め装置により混練物に振動を与え、混練物を締固めることで硬化体を得る。振動締固めを行う際の振動数は50Hzから70Hzに設定される(例えば、60Hz)。これは、振動数が小さ過ぎても大き過ぎても、機械的な装置特性により締固めの効果が低下することに起因する。
そして、混練物の硬化体を高湿雰囲気で養生し、その後、水中、気中で養生する。硬化体は、振動締固め装置から脱型した形状で石炭灰固化物とすることができる。また、高湿養生の途中で硬化体を壊砕し、粒状の形状で石炭灰固化物とすることができる。尚、水中での養生に代えて、散水により養生を実施することも可能である(散水養生)。散水養生では、硬化体が十分に水に触れる程度に霧状の水を散水すれば良い。
以下、本発明の石炭灰固化物の製造方法を具体的に説明する。
第1実施形態例を説明する。
図1には本発明の第1実施形態例に係る石炭灰固化物の製造方法の処理フローを示してある。第1実施形態例の製造方法は、混練物の硬化体を振動締固め装置から脱型した形状(例えば、四角柱状)で石炭灰固化物とした例である。
図1に示すように、石炭灰(フライアッシュ組成、SiO2:Al2O3:CaO:SO3=67:23:1.3:0.4)、ホタテの貝殻砕粉、二水石膏、消石灰からなる原料に対し、水の比率を0.25から0.32の範囲で調整し(例えば、0.29)として湿式混合する(混練する)。
原料に対する水の比率を0.25から0.32にしたので、水の比率が少なすぎず、水和反応の進行を妨げることなく、固練りの状況の時間を長くすることなく、均一な混合が可能になると共に、水の比率が多すぎずに空隙率の増加、強度の低下を抑制することができる。尚、水の比率と空隙率、強度との具体的な関係は後述する。
ホタテの貝殻砕粉は、5質量%〜43質量%の範囲で含有させ、好ましくは、15質量%〜43質量%の範囲で配合する。この場合、石炭灰は、80質量%(好ましくは70質量%)〜43質量%の範囲で配合する。例えば、石炭灰70質量%、ホタテの貝殻砕粉15質量%、二水石膏4質量%、消石灰11質量%の原料とする。
湿式混合した混練物を振動締固め装置に供給し、振動により混練物を締固める。振動締固めで硬化体を製造する場合、加圧成型で硬化体を製造する場合と異なり、貝殻の組織が破壊されず空隙が多くなるため、貝殻砕粉の配合量が増えると強度が低下すると考えられる。振動締固めの場合、貝殻砕粉の割合を5質量%から43質量%に設定しているので、流動性の高い石炭灰が空隙に充填されて硬化体が製造され、強度が保たれた固化物(石炭灰固化物)が得られる。
例えば、貝殻砕粉が5質量%の場合、石炭灰の割合は80質量%が好ましい。振動締固めで硬化体を製造する場合、加圧で硬化体を製造する場合と異なり、空隙が多くなるため、貝殻砕粉の配合量が増えると強度が低下すると考えられる。振動締固めの場合、コンクリート中の骨材のように、強度増大に寄与する貝殻砕粉の割合を5質量%から43質量%に設定することで、流動性の高い石炭灰が空隙に充填されて硬化体が製造され、強度が保たれた固化物(石炭灰固化)が得られる。尚、貝殻砕粉の割合(石炭灰の割合)と空隙率、強度との具体的な関係は後述する。
振動締固めを行う際の振動数は50Hzから70Hz、例えば、50Hzに設定している。これは、振動数が小さ過ぎても大き過ぎても、機械的な装置特性により締固めの効果が低下することに起因する。
振動締固めを行う際には、混練物が所定の重量で加圧される。これにより、振動で締固める過程での貝殻砕粉の間に生じる空隙の一部を加圧力により消すことができ、強度を高めることができる。即ち、振動による締固めは、自重と振動で与えられたエネルギーを作用させて、粒径の異なる各種原料の収まり具合を良くし、余分な気泡を抜くことで材料の緻密化を図っている。振動締固めを行う時に混練物を加圧することで、石炭灰で充填しきれなかった大きな空隙を消し去ることができ、強度の低下を抑制することができる。尚、強度の低下が抑制される具体的な状況は後述する。
振動締固めを行って硬化体とした後、室温(20℃)、相対湿度95%RH以上の高湿環境下に、例えば、3日目静置して脱型する(材齢3日)。脱型した四角柱状の硬化体を、室温(20℃)、相対湿度95%RH以上の高湿環境下に、例えば、3日間保持する(高湿養生:材齢4日から6日)。
高湿養生の後、養生水を交換することなく、7日間水中で養生する(水中養生:材齢7日から13日)。そして、水中養生物を大気中(室温:20℃、相対湿度約60%RH)に15日間放置して乾燥し(気中養生)、材齢28日の四角柱状の石炭灰固化物を得る。
尚、図に点線で示すように、水中養生に代えて、散水により養生を実施することも可能である(散水養生)。散水養生では、四角柱状の硬化体が十分に水に触れる程度に霧状の水を散水すれば良い。
上述した石炭灰固化物の製造方法は、5質量%から43質量%の割合の貝殻砕粉を含む混練物を振動させて締固めることで材齢28日の四角柱状の石炭灰固化物を形成するので、振動締固めで石炭灰固化物を製造する際の、石炭灰を有効に利用するための(強度を増大させるための)貝殻砕粉の実用的な割合を特定することができる。
このため、固化物の製造の態様である振動締固めで石炭灰固化物を製造する際の貝殻砕粉の実用的な割合を特定し、石炭灰、及び、ホタテやカキなどの貝殻の廃棄物を用いて、環境安全性を担保した四角柱状の石炭灰固化物を容易に製造することができる。
第2実施形態例を説明する。
図2には本発明の第2実施形態例に係る石炭灰固化物の製造方法の処理フローを示してある。第2実施形態例の製造方法は、混練物の硬化体を振動締固め装置から脱型した後壊砕して壊砕物にし、粒状の硬化体として石炭灰固化物を得る例である。
図2に示すように、石炭灰、ホタテの貝殻砕粉、二水石膏、消石灰からなる原料に水を加え、湿式混合する(混練する)。湿式混合した混練物を振動締固め装置に供給し、振動により混練物を締固める。このとき、所定の重量で加圧される。石炭灰の種類、水の比率(範囲)、貝殻砕粉の割合(範囲)、石炭灰の割合(範囲)、振動締固め振動数(範囲)、加圧して振動させる点は、第1実施例と同じである。
振動締固めを行って硬化体とし、室温(20℃)、相対湿度95%RH以上の高湿環境下に、例えば、3日目静置して脱型する(材齢3日)。脱型した硬化体の塊を、室温(20℃)、相対湿度95%RH以上の高湿環境下に、例えば、3日間保持する(高湿養生:材齢4日から6日)。3日間高湿養生した硬化体の塊を壊砕して、例えば、1mmから2mmの粒状の硬化体とする。
粒状の硬化体を、室温(20℃)、相対湿度95%RH以上の高湿環境下に、例えば、5日間保持する(高湿養生:材齢7日から11日)。高湿養生の後、養生水を交換することなく、2日(24時間)水中で養生する。そして、水中養生物を大気中に15日間放置して乾燥し(気中養生)、材齢28日の粒状の固化物(石炭灰固化物)を得る。
尚、図に点線で示すように、水中養生に代えて、散水により養生を実施することも可能である(散水養生)。また、硬化体の塊を壊砕して粒状の硬化体とした後、高湿養生を行わずに散水養生を実施して大気中に放置して乾燥させることも可能である。散水養生では、粒状の硬化体が十分に水に触れる程度に霧状の水を散水すれば良い。
上述した石炭灰固化物の製造方法は、材齢28日の粒状の石炭灰固化物を形成するので、振動締固めで石炭灰固化物を製造する際の、石炭灰を有効に利用するための(強度を増大させるための)貝殻砕粉の実用的な割合を特定することができる。
このため、固化物の製造の態様である振動締固めで石炭灰固化物を製造する際の貝殻砕粉の実用的な割合を特定し、石炭灰、及び、ホタテやカキなどの貝殻の廃棄物を用いて、環境安全性を担保した粒状の石炭灰固化物を容易に製造することができる。
図3、図4に基づいて水の比率と圧縮強度(N/mm2)、細孔空隙率(%)、かさ密度(g/ml)との関係を説明する。
図3には原料に対する水の比率と圧縮強度(N/mm2)との関係、図4には原料に対する水の比率と細孔空隙率(%)、原料に対する水の比率とかさ密度(g/ml)との関係を示してある。原料は、石炭灰70質量%、ホタテの貝殻砕粉15質量%、二水石膏4質量%、消石灰11質量%の配合のものを用いた。
図3に示すように、原料に対する水の比率が0.25、0.29の場合に、圧縮強度(N/mm2)はほぼ20N/mm2となり、原料に対する水の比率が0.30の場合に、圧縮強度(N/mm2)は20N/mm2に近い値となる。更に、原料に対する水の比率が0.32の場合に、圧縮強度(N/mm2)は17N/mm2を超える値となる。これに対し、原料に対する水の比率が0.34になると(0.32を超えると)、圧縮強度(N/mm2)は15N/mm2を下回る値となる。
図4に○印の実線で示すように、原料に対する水の比率が0.25、0.29の場合に、細孔空隙率(%)は34%を下回り、原料に対する水の比率が0.30の場合に、細孔空隙率(%)は35%を下回る。更に、原料に対する水の比率が0.32の場合に、細孔空隙率(%)はほぼ35%となる。これに対し、原料に対する水の比率が0.34になると(0.32を超えると)、細孔空隙率(%)はほぼ38%となる。
図4に△印の点線で示すように、原料に対する水の比率が0.25、0.29、0.30、0.32の場合に、かさ密度(g/ml)はほぼ1.5g/mlとなっている。これに対し、原料に対する水の比率が0.34になると(0.32を超えると)、かさ密度(g/ml)はほぼ1.4g/mlとなる。
従って、原料に対する水の比率が0.25、0.29、0.30、0.32の場合に、圧縮強度(N/mm2)は17N/mm2を超えてセメントの添加なく十分な強度を確保することができる。また、原料に対する水の比率が0.25、0.29、0.30、0.32の場合に、細孔空隙率(%)が35%を下回り、空隙が多くなりすぎることがない。更に、原料に対する水の比率が0.25、0.29、0.30、0.32の場合に、かさ密度(g/ml)はほぼ1.5g/mlとなり、十分な密度を確保することができる。
以上の結果により、原料に対する水の比率を0.25から0.32の範囲で設定することで、十分な強度を確保することができ、原料がほぼ均一に混合され、混練物の水分量が後工程で振動締固めを実施するのに適したものとなる。特に、原料に対する水の比率を0.25、0.29に設定することで良好な結果が得られる。
図5に基づいて石炭灰(貝殻)の割合と圧縮強度、細孔空隙率の関係を説明する。
図5には石炭灰(貝殻)の割合(%)と圧縮強度(N/mm2)との関係、及び、石炭灰(貝殻)の割合(%)と細孔空隙率(%)との関係を説明するグラフを示してある。石炭灰(貝殻)の割合(%)は、80%(5%)、70%(15%)、43%(43%)、25%(60%)の4種類で、いずれも、二水石膏が4%、消石灰が11%となっている。
図5に○印の実線で示すように、石炭灰の割合が80%、即ち、貝殻の割合が5%の場合に、圧縮強度(N/mm2)はほぼ23N/mm2となり、石炭灰の割合が70%、即ち、貝殻の割合が15%の場合に、圧縮強度(N/mm2)は20N/mm2に近い値となる。更に、石炭灰の割合が43%、即ち、貝殻の割合が43%の場合に、圧縮強度(N/mm2)は10N/mm2を超えた値が維持される。これに対し、石炭灰の割合が25%、即ち、貝殻の割合が60%になると、圧縮強度(N/mm2)は5N/mm2を下回る値となる。
図5に△印の点線で示すように、石炭灰の割合が80%、即ち、貝殻の割合が5%の場合に、細孔空隙率(%)は34%を下回る値となり、石炭灰の割合が70%、即ち、貝殻の割合が15%の場合に、細孔空隙率(%)はほぼ34%となる。更に、石炭灰の割合が43%、即ち、貝殻の割合が43%の場合に、細孔空隙率(%)はほぼ35%となる。これに対し、石炭灰の割合が25%、即ち、貝殻の割合が60%になると、細孔空隙率(%)は34%を超えた値となる。
従って、石炭灰(貝殻)の割合(%)が80%(5%)、70%(15%)、43%(43%)の場合に、圧縮強度(N/mm2)は10N/mm2を超えて実用的な強度を確保することができる。また、石炭灰(貝殻)の割合(%)が80%(5%)、70%(15%)、43%(43%)の場合に、細孔空隙率(%)が35%以下となり、実用的な強度を確保することができる。
以上の結果により、石炭灰(貝殻)の割合(%)を80%(5%)、70%(15%)、43%(43%)の範囲で設定することで、石炭灰を有効に利用するための貝殻砕粉を不足なく使用することができると共に、空隙に充填される石炭灰の量が確保され、実用的な強度を確保することができる。特に、石炭灰(貝殻)の割合(%)を80%(5%)、70%(15%)の範囲に設定することで、石炭灰を有効に利用するための貝殻砕粉を不足なく使用し、空隙に充填される石炭灰の量が多く確保され、十分な強度を確保することができる。
つまり、石炭灰を利用するための貝殻砕粉を不足なく使用して的確な強度を確保することができる。
図3から図5に示した結果から、原料に対する水の比率を0.25から0.32の範囲に設定し、原料として、石炭灰(貝殻)の割合(%)を80%(5%)、から43%(43%)の範囲に設定することで、石炭灰を有効に利用するための貝殻砕粉を不足なく使用して、空隙に充填される石炭灰の量を確保し、十分な強度が確保される。そして、原料がほぼ均一に混合され、混練物の水分量が後工程で振動締固めを実施するのに適したものとなる。
特に、原料に対する水の比率を0.25、0.29に設定し、原料として、石炭灰(貝殻)の割合(%)を80%(5%)、70%(15%)に設定することで、石炭灰の有効利用、石炭灰を有効利用するための貝殻砕粉の量の設定、振動締固めを実施するための混練物の水分量の設定に対し、良好な結果が得られる。
図6に基づいて混練物を加圧して振動締固めを行った際の細孔径の分布の状況を説明する。
図6には、原料に対する水の比率を0.29に設定し、原料として、石炭灰(貝殻)の割合(%)を70%(15%)、二水石膏4%、消石灰11%の原料を用い、振動数50Hzで振動締固めを実施し、材齢28日の石炭灰固化物の細孔径(μm)と細孔空隙率(%)との関係により細孔径の分布を表すグラフを示してある。
図中、○印の実線で示す分布が混練物を加圧して振動締固めを行った際の細孔径の分布であり、△印の点線で示す分布が混練物を加圧せずに振動締固めを行った際の細孔径の分布である。図に示すように、圧縮強度に影響を与える0.05μm以上の大径の細孔(空隙)が減少していることがわかる。
このため、混練物を加圧して振動締固めを行うことで、即ち、荷重をかけながら振動締固めを行うことで、振動で締固める過程での貝殻砕粉の間に生じる空隙の一部(大きな空隙)を加圧力により消すことができ、強度を高めることができる。
上述した石炭灰固化物の製造方法は、石炭灰固化物の製造の態様である振動締固めで石炭灰固化物を製造する際の貝殻砕粉の実用的な割合を特定し、石炭灰を有効に利用して、ホタテやカキなどの貝殻の廃棄物を用いて強度を確保し、環境安全性を担保した石炭灰固化物を容易に製造することができる。
本発明は、石炭灰固化物の製造方法の産業分野で利用することができる。
Claims (6)
- 石炭灰、石灰類、及び、5質量%から43質量%の割合で貝殻砕粉を混練し、混練物を振動させて締固めて硬化体にすることで石炭灰固化物を形成する
ことを特徴とする石炭灰固化物の製造方法。 - 請求項1に記載の石炭灰固化物の製造方法において、
前記貝殻砕粉の割合は、15質量%から43質量%であり、
前記石炭灰の割合は、70質量%から43質量%である
ことを特徴とする石炭灰固化物の製造方法。 - 請求項1もしくは請求項2に記載の石炭灰固化物の製造方法において、
前記石炭灰、前記石灰類、及び、前記貝殻砕粉を少なくとも含む原料を混練する際の前記原料に対する水の比率は、0.25から0.32である
ことを特徴とする石炭灰固化物の製造方法。 - 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の石炭灰固化物の製造方法において、
前記混練物を振動させる際に前記混練物を加圧する
ことを特徴とする石炭灰固化物の製造方法。 - 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の石炭灰固化物の製造方法において、
前記硬化体を高湿雰囲気で養生し、その後、水中で養生を実施すること、または、散水により養生を実施する
ことを特徴とする石炭灰固化物の製造方法。 - 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の石炭灰固化物の製造方法において、
前記硬化体を高湿雰囲気で養生した後、前記硬化体を壊砕して粒状の壊砕物にし、前記粒状の壊砕物を高湿雰囲気で養生した後、水中で養生を実施すること、または、散水により養生を実施する
ことを特徴とする石炭灰固化物の製造方法。
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