以下、本発明の一実施形態に係る植物観賞装置について図面を参照しながら説明する。図中、同一又は対応する構成要素に同一の符号を付す。
図1に示すように、本実施形態に係る植物観賞装置1は、床に設置される本体基部2と、本体基部2から立ち上がった複数の柱部4と、それら柱部4によって本体基部2の上方に支持された本体上部6と、本体上部6と本体基部2との間において柱部4に取り付けられた窓8とを備える。これら本体基部2、複数の柱部4、本体上部6、及び窓8によって、植物が配置される配置空間Sを画定する容器が構成されている。
本体基部2は、略円柱形の筐体を備える。柱部4の各々は、本体基部2の外周面に接続された状態で立設されている。4本の柱部4が、本体基部2の外周面の周方向に関して略均等な間隔を開けて配置されている。これら4本の柱部4によって、本体上部6が支持されている。本体上部6は、本体基部2との間に、植物が配置される配置空間Sを確保して、本体基部2の上方に位置する。本体上部6は、本体基部2と同じ直径をもつ略円柱形の筐体を備える。柱部4の上端部分が、本体上部6の外周面に接続されている。
窓8は、本体基部2と本体上部6との間において、4本の柱部4に内接した状態で、これら柱部4に取り付けられている。窓8と柱部4とによって、本体基部2と本体上部6との間の間隙を囲繞する囲繞部が構成される。窓8は、本体基部2及び本体上部6の各々の筐体が構成する円柱と同様の直径をもつ中空筒状をなす。植物観賞装置1は、全体として略円柱形状に形成されている。窓8は、可視光に対して透明な材料、具体的には、アクリル板で構成されている。窓8のうち、或る1つの柱部4から、それに隣る柱部4までの間に位置する部分は、扉10を構成している。扉10は、蝶番を介して柱部4に開閉自在に取り付けられている。
次に、以上のようにして構成される植物観賞装置1の細部構成ついて述べる。
本体上部6の筐体の上面には、外気を配置空間S内に取り込み、かつ配置空間S内の空気を外部に排出するための通気孔12が形成されている。また、本体上部6は、配置空間Sに配置される植物に灌水するための給水ホース14を備える。給水ホース14は、本体上部6の筐体の下面から配置空間Sに垂下している。また、本体上部6は、配置空間Sに面する位置に、配置空間Sの温度を検出する後述する温度センサ80(図7参照)としての熱電対を備える。
本体基部2の筐体の上面には、温められた空気を配置空間Sに放出するための暖気放出孔16が形成されている。また、本体基部2は、配置空間Sに配置される植物が植えられる鉢を保持する鉢保持部18を筐体上面に有する。また、本体基部2は、設定パネル20を正面に備える。ユーザは、設定パネル20を用いて、配置空間Sの温度を設定したり、水やりの時刻を設定したりすることができる。また、本体基部2の筐体の側面の一部は、取り外し可能な開閉板22で構成されている。開閉板22を取り外すと、後述する制御装置38(図2参照)が露出するので、制御装置38をメンテナンスすることができる。
また、植物観賞装置1は、4本の柱部4とは別に、一端が本体基部2に接続され、他端が本体上部6に接続された配線内蔵パイプ5を備える。配線内蔵パイプ5は、配置空間S内に配置されている。配線内蔵パイプ5は、中空構造を有し、内部に配線が通っている。その配線によって、本体基部2が備える後述する制御装置38(図5参照)と、本体上部6が備える後述する給水ポンプ52(図5参照)、ファン56(図5参照)、及び上記温度センサ80(図7参照)とが、電気的に接続されている。
以下、図2〜図5を参照して、本体基部2の筐体の内部構成、及び本体上部6の筐体の内部構成等について、詳細に説明する。
図2に示すように、本体基部2は、鉢保持部18の他にも、残水案内部材32、残水容器34、及びスライド式残水取出部36をそれぞれ筐体内に備える。
鉢保持部18は、本体基部2の上面に形成された凹部で構成される。凹部に、鉢Pが収容される。鉢保持部18は、凹部の底面に置かれた受け皿30を有する。鉢Pの底面には排水用の貫通孔が形成されている。受け皿30と、凹部の底面を構成する底板とにも、鉢P底面の貫通孔と連通して、鉢P内の土に通じる貫通孔が形成されている。
残水案内部材32は、鉢保持部18を構成する凹部の底板の、上記貫通孔が形成された位置に取り付けられている。残水案内部材32は、凹部底板の上記貫通孔と連通する中空筒状をなしており、凹部底板から下方に垂下している。
残水容器34は、残水案内部材32の下方に置かれている。鉢P内の余剰な水分が、残水案内部材32を通じて残水容器34へ自ずと流下する。このため、鉢P内に余剰な水が貯まることによる問題、例えば、植物Rの根腐れの問題等が回避される。
スライド式残水取出部36は、図5に具体的に示されるように、残水容器34を保持する引き出し361と、引き出し361に設けた取手362と、引き出し361を本体基部2の筐体内から筐体外に引き出しかつ筐体内に戻すことができるように、本体基部2の筐体に対してスライド自在に係合させるガイド363とを備える。引き出し361を本体基部2の筐体内に収めると、図2に示すように、取手362が本体基部2の外周面に突出した状態となる。ユーザは、適時、取手362を用いて引き出し361を本体基部2から引き出し、残水容器34に貯まった水を廃棄することができる。
図2及び図5に示されるように、本体基部2はまた、制御装置38を筐体内に備える。制御装置38の動作については、図7を参照して後述する。本体基部2の筐体のうち、制御装置38と対面する部分は、図1に示す開閉板22で構成されている。開閉板22を取り外すと、制御装置38が露出する。ユーザ又は保守要員は、本体基部2を分解せずとも、開閉板22を取り外すだけで、制御装置38の保守を行うことができる。
図5に示されるように、本体基部2はまた、ヒータ40を筐体内に備える。ヒータ40は、制御装置38によって制御される。ヒータ40は、空気を加熱する効率を高めるヒートシンク401を備える。ヒートシンク401は、金属、具体的には、アルミニウムよりなる。ヒータ40で温められた空気は上昇し、ヒータ40の真上に位置する図1に示す暖気放出孔16から配置空間Sへ流れ出る。これにより、配置空間Sの温度が植物Rを長持ちさせるのに適した温度に高められる。ヒートシンク401を備えたことにより、配置空間Sの温度をすみやかに上昇させることができる。
ヒータ40は、図5に示すように、本体基部2の平面透過視において、本体基部2の中央から外れた隅部分に配置されている。ヒータ40の上方の暖気放出孔16も、図1に示すように、本体基部2上面の隅部分に位置する。そして、図1で、給水ホース14の先端に設けられたノズルは、本体基部2上面の中央部に位置する鉢保持部18を向いている。このため、給水ホース14から流出する水が、暖気放出孔16を通じてヒータ40にかかることが防止される。これにより、ヒータ40に電力を供給する配線のショートや、ヒータ40から過剰な水蒸気が発生することに起因する制御装置38や設定パネル20等の故障を防止することができる。
図5に示されるように、本体基部2はまた、ヒータ40で生じた暖気を図1の暖気放出孔16へと導く暖気案内板42を筐体内に備える。暖気案内板42は、平面視において、本体基部2の筐体内面との間で、ヒータ40を挟み込むように、板状体の両端部を本体基部2の筐体内面に向けて折り曲げた形状を有する。暖気案内板42を設けたことにより、ヒータ40で生じた暖気を効率的に図1の暖気放出孔16へ導ける。また、本体基部2の筐体内部の温度が、ヒータ40で生じた暖気によって過剰に上昇することが防止される。このため、熱に起因する制御装置38や設定パネル20等の故障が防止される。
また、図2及び図3に示されるように、鉢保持部18に保持される鉢Pの一部は、本体基部2の筐体上面より下方に位置する。図5に示す暖気案内板42は、本体基部2の筐体内において、ヒータ40の熱が鉢Pに伝わることを抑制する鉢防熱部材としての役割を果たす。このため、鉢P内の土がヒータ40の熱で過剰に加熱されることが防止される。土が過剰に加熱されることは、植物Rが長持ちしやすい環境を形成するうえで好ましくない。土が加熱された状態で灌水すると、植物Rが弱ったり、根腐れを起こしたりする場合がある。暖気案内板42は、配置空間Sをすみやかに温めるという観点のみならず、土の過剰な加熱を防止するという観点からも、植物が長持ちしやすい環境を形成することに資する。
図2〜図4に示されるように、本体上部6は、図1にも示した給水ホース14の他、給水タンク50、給水ポンプ52、及び接続ホース54をそれぞれ筐体内に備える。これら給水ホース14、給水タンク50、給水ポンプ52、及び接続ホース54によって液体供給器が構成される。給水タンク50には、植物Rに与える液体、具体的には水が貯えられる。給水タンク50には、接続ホース54の一端が接続されている。接続ホース54の他端は、給水ポンプ52の吸引口に接続されている。給水ポンプ52の排出口には、給水ホース14が接続されている。給水ポンプ52は、制御装置38(図5参照)によって制御される。給水ポンプ52は、接続ホース54を通じて給水タンク50から水を吸引し、吸引した水を給水ホース14に排出する。給水ホース14に排出された水は、植物Rが植えられる鉢Pに供給される。
給水タンク50を本体上部6の筐体内に配置したことにより、次の効果が得られる。即ち、給水タンク50が鉢Pよりも上方に配置されているので、水の自重を利用して灌水を行うことができる。水の自重を利用することで、給水ポンプ52にかかる負荷を緩和することができる。
また、給水タンク50が、ヒータ40から鉢P及び植物Rよりも遠い位置に配置されているので、給水タンク50内の水がヒータ40の熱で温まりにくい。温められた水を与えることは、根腐れを招くことがあり、植物Rにとって必ずしも好ましくない。このため、給水タンク50内の水が温まることを回避することは、植物が育ちやすい環境を形成することに資する。
また、仮に、給水タンク50が、鉢P及び植物Rよりもヒータ40から熱的に近い位置に配置されていると、次の問題が発生する。第1に、ヒータ40の発熱量のうち給水タンク50の加熱に奪われる熱量を無視できなくなり、配置空間Sを効率的に温めることが妨げられる。第2に、ひとたび給水タンク50及び内部の水が温められると、配置空間Sの温度を低下させたい場合、ヒータ40の発熱を停止しても、給水タンク50によって配置空間Sが温められ続けることになり、配置空間Sのきめ細かな温度調整が妨げられる。これらの問題を回避するという観点からも、給水タンク50をヒータ40から鉢P及び植物Rよりも遠い位置に配置することは、植物が長持ちしやすい環境を形成することに資する。
図3及び図4に示されるように、本体上部6はまた、ファン56を筐体内に備える。ファン56は、制御装置38(図5参照)によって制御される。ファン56の直上には、図1に示す通気孔12が位置する。ファン56が正回転することにより、新鮮な外気が通気孔12を通じて配置空間Sに取り込まれると共に、配置空間S内に気流が生じ、配置空間S内における温度ムラの発生が抑えられる。ファン56が逆回転すると、配置空間S内の空気を通気孔12を通じて外部に排出することができる。
図3に示されるように、本体上部6はまた、光源58を筐体下面に備える。光源58は、発光ダイオードで構成され、制御装置38(図5参照)によって制御される。光源58を発した光は、植物Rを照らす。光源58は、植物Rにとって人工太陽として機能し、植物Rの育成に寄与する。また、植物Rを照らすことにより、植物Rの見栄えが良くなると共に、夜間等でも植物Rの鑑賞を楽しむことができる。
以下、制御装置38の構成及び動作の説明に先立ち、図6を参照して、設定パネル20について詳細に説明する。
図6に示すように、設定パネル20は、表示画面70、複数の項目表示ランプ72、選択ボタン74、設定変更ボタン76、及び照明ボタン78を備える。
ユーザは、複数の項目表示ランプ72の各々の脇に記載されている各項目、具体的には、「現在時刻」、「水やり時刻」、「水やり秒数」、「現在温度」、「上限温度」、及び「下限温度」の各項目について、所望の条件を指定することができる。
各項目について説明する。「現在時刻」とは、現在の時刻を表す。「水やり時刻」とは、水やりを開始する時刻を表す。「水やり秒数」とは、水やりを継続する秒数、即ち給水ポンプ52(図4参照)が稼働し続ける秒数を表す。後述するように、制御装置38(図5参照)は、項目「水やり時刻」で設定された時刻の到来を検出すると、項目「水やり秒数」で設定された秒数の間、給水ポンプ52を稼働させ続ける。「現在温度」とは、配置空間S内の現在の温度を表す。「上限温度」とは、配置空間S内の許容される上限温度を表す。「下限温度」とは、配置空間S内の許容される下限温度を表す。後述するように、制御装置38(図5参照)は、配置空間S内の温度が、項目「下限温度」が表す温度から、項目「上限温度」が表す温度までの範囲内におさまるように、ヒータ40(図5参照)及びファン56(図4参照)を制御する。
ユーザは、選択ボタン74で所望の項目を選択することができる。項目を選択すると、選択された項目に対応する項目表示ランプ72が点灯し、かつその選択した項目に対する現在の設定内容が、表示画面70に表示される。ユーザは、選択した項目の現在の設定内容を変更したい場合は、選択ボタン74を長押しする。すると、表示画面70の表示が点滅する。ユーザは、表示画面70の表示が点滅した状態で、設定変更ボタン76を用いて設定内容を所望の値に変更することができる。
照明ボタン78を押すと、光源58(図3参照)が点灯し、再度照明ボタン78を押すと、光源58が消灯する。
次に、図7を参照し、制御装置38(図5参照)の構成及び動作について説明する。
図7に示すように、制御装置38は、記憶部381、RAM(Random Access Memory)382、タイマ383、入出力I/F(interface)384、及びCPU(Central Processing Unit)385が、バス386で接続された構成を有する。また、バス386には、図6にも示した設定パネル20が接続される。
記憶部381は、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体を含んで構成される。記憶部381は、制御プログラム381a、灌水データ381b、及び温度データ381cを記憶する。制御プログラム381aは、植物Rの育成環境を形成するためのCPU385の動作を規定する。灌水データ381bは、ユーザによって設定パネル20に入力された灌水の条件、具体的には、図6を参照して説明した「水やり時刻」及び「水やり秒数」を表す情報である。温度データ381cは、ユーザによって設定パネル20に入力された温度の条件、具体的には、図6を参照して説明した「上限温度」及び「下限温度」を表す情報である。
RAM382は、CPU385のメインメモリとして機能し、CPU385による上記制御プログラム381aの実行に必要なデータ等を一時的に記憶する。
タイマ383は、時刻を計時すると共に、灌水データ381bが表す「水やり時刻」の到来を検出し、かつ「水やり秒数」の経過を検出する。
入出力I/F384は、温度センサ80から配置空間Sの温度の検出結果を取得する。また、入出力I/F384は、CPU385の指示に従って、給水ポンプ52、ヒータ40、ファン56、及び光源58のそれぞれに、制御信号を出力する。
CPU385は、設定パネル20の図6に示す選択ボタン74及び76を通じてデータが入力されると、その入力されたデータを記憶部381に記憶させることにより、灌水データ381b又は温度データ381cを更新する。また、CPU385は、図6で、選択ボタン74及び76が操作されると、その操作に応じて項目表示ランプ72の点灯/消灯の制御、及び表示画面70の表示内容を変更させる制御も行う。
CPU385はまた、記憶部381に記憶された制御プログラム381aを実行することにより、次に述べる育成制御を実現する。
CPU385は、タイマ383が上記「水やり時刻」の到来を検出すると、給水ポンプ52に対して作動を開始させる制御信号を入出力I/F384に出力させる。これにより、図2で、給水ホース14を通じた植物Rへの灌水が開始される。また、CPU385は、タイマ383が上記「水やり秒数」の経過を検出すると、給水ポンプ52に対して作動を停止させる制御信号を入出力I/F384に出力させる。これにより、灌水が停止する。
ところで、図2を参照して説明したように、給水タンク50が鉢Pよりも上方に配置されている。このことは、鉢Pへの給水の量のきめ細かな制御を実現することに資する。この理由は次の通りである。仮に給水タンク50が鉢Pよりも下方に配置されていると、給水ポンプ52が給水タンク50内の水を鉢Pまで汲み上げるのに時間を要する。この時間をロス時間と呼ぶことにする。この場合、上記「水やり秒数」には、ロス時間未満の時間を設定することが意味をなさない。また、ロス時間より長い時間を上記「水やり秒数」に設定しても、実際に灌水が行われる時間は、設定された時間よりもロス時間の分だけ短くなる。これに対し、給水タンク50を鉢Pよりも上方に配置すると、水の自重により給水ポンプ52の負荷が緩和されるので、給水ポンプ52の作動開始時刻から、給水ホース14から水が流出し始める時刻までに要する時間を無視できる程度に短いものとすることができる。従って、鉢Pへの給水の量のきめ細かな制御、ひいては、植物が育成しやすい環境を実現することに資する。
また、CPU385は、温度センサ80の検出結果を通じて配置空間Sの温度を常時監視している。また、CPU385は、記憶部381に記憶された温度データ381cが表す上記「上限温度」から上記「下限温度」までの範囲内に、配置空間Sの現在の温度が収まっているか否かを常時監視している。CPU385は、配置空間Sの現在の温度が、上記「上限温度」を上回っているか、又は上記「下限温度」を下回っている場合、配置空間Sの温度と上記「上限温度」又は上記「下限温度」との差が低減するように、ヒータ40とファン56の少なくともいずれか一方を制御する。
配置空間Sの温度を上昇させた場合、CPU385は、ヒータ40に作動を開始させるか、又は既に作動しているヒータ40への供給電力を増大させ、発熱量を高める。併せてCPU385は、ファン56を作動させることにより、配置空間S内の温度ムラを低減させる。配置空間Sの温度を低下させた場合、CPU385は、ヒータ40に作動を停止させる。CPU385は、併せて、ファン56を、図1に示す通気孔12から配置空間S内の空気が排気されるようにファン56を逆回転させる。これにより、配置空間S内の温度の低下を促進させることができる。
以上のように、「上限温度」と「下限温度」とを設定できるようにしたことにより、次の効果が得られる。即ち、「上限温度」と「下限温度」とを近い温度に設定すれば、配置空間S内に温度変化が小さい環境を実現することができる。一方、「上限温度」と「下限温度」との差を大きく設定すれば、本植物観賞装置1が設置される環境に応じ、配置空間S内に温度の変化幅の大きな環境を実現することもできる。鑑賞の対象とする植物Rによっては、長持ちさせる上で、ある程度の温度変化を与えることが望まれる場合もある。本実施形態では、配置空間Sの「上限温度」と「下限温度」とを設定できるようにしたので、単に1つの所望の温度を設定する場合に比べると、より植物が長持ちしやすい環境を実現することができる。
例えば、植物Rが蘭である場合、ユーザは、設定パネル20を用いて、上記「下限温度」を例えば15℃に設定し、上記「上限温度」を例えば30℃に設定する。すると、上述したように、CPU385は、配置空間Sの温度が15℃未満となったらヒータ40を作動させ、30℃を超えたらファン56を作動させることにより、配置空間Sの温度を15℃〜30℃の範囲内に制御する。このようにして、配置空間S内に蘭の育成に適した環境が形成される。
なお、上述したように、給水タンク50が鉢P及び植物Rよりもヒータ40から熱的に遠い位置に配置されている。具体的には、給水タンク50とヒータ40とが、両者の間に配置空間Sが介在するように隔離されている。このことは、ヒータ40の熱が給水タンク50に奪われることを防止できると共に、給水タンク50によって配置空間Sが温められることを防止できるという観点から、配置空間Sのきめ細かな温度調整を実現すること、ひいては、植物が育成しやすい環境を実現することに資する。
また、CPU385は、設定パネル20の図6に示す照明ボタン78の押下を検出すると、光源58を点灯させる。また、CPU385は、図6に示す照明ボタン78の再度の押下を検出すると、点灯させていた光源58を消灯させる。
以上説明したように、本実施形態に係る植物観賞装置1によれば、ヒータ40によって配置空間Sが温められるので、例えば、寒冷地や冬期等においても、温帯植物や熱帯植物を長持ちさせることができる。配置空間Sの温度調整がきめ細かになされると共に、灌水のタイミングや灌水量も設定することができるため、初心者でも、蘭等、長持ちさせることが困難な植物を、手間をかけることなく、安心して長持ちさせることができる。光源58を備えたので、植物Rの光合成を促進できると共に、夜間でも植物の鑑賞を楽しむことができる。
次に、図8及び図9を参照して、上述した植物観賞装置の変形例について述べる。
図8に分解斜視図を示すように、本変形例に係る植物観賞装置90は、柱部92と円筒状窓部材94とで構成される囲繞体96を、本体基部98及び本体上部100に対して、着脱可能に構成したものである。
囲繞体96は、円筒状窓部材94に4本の柱部92が取り付けられて構成される。4本の柱部92の各々は、円筒状窓部材94の上部開口よりも上方に突出した上端部92aと、円筒状窓部材94の下部開口よりも下方に突出した下端部92bとを有する。円筒状窓部材94は、円筒状をなす鑑賞用の窓の上下端をそれぞれリング状の枠部材で補強したもので構成される。本体基部98は、各柱部92の下端部92bを受け入れる筒状部98aを有し、本体上部100は、各柱部92の上端部92aを受け入れる筒状部100aを有する。
また、4本の柱部92のうちの少なくとも1つは、中空構造とされ、本体基部98の筐体内に設けられる制御装置38(図2参照)と、本体上部100の筐体内に設けられる給水ポンプ52(図2参照)等とを接続する配線(以下、接続配線という。)を、中空の柱部92の内部を通す構成としている。具体的には、上記接続配線が通される柱部92の上端と下端にそれぞれ雌端子が設けられている。一方、対応する本体基部98の筒状部98aの底部、及び本体上部100の筒状部98aの頂部には、それぞれ雄端子が設けられている。本体基部98の雄端子が柱部92下端の雌端子に接続され、かつ柱部92上端の雌端子が本体上部100の雄端子に接続されると、上記接続配線が構成される。
ユーザは、まず、本体基部98を床面に設置する。次に、ユーザは、各柱部92の下端部92bを、本体基部98の筒状部98aに挿入しつつ、囲繞体96を本体基部98に載置する。このとき、本体基部98の雄端子が柱部92下端の雌端子にはめ込まれ、両者が接続される。次に、ユーザは、本体上部100の各筒状部100aを、各柱部92の上端部92aにはめ込みつつ、本体上部100を囲繞体96の上に載置する。このとき、本体上部100の雄端子が柱部92上端の雌端子にはめ込まれ、両者が接続される。このようにして、囲繞体96及び本体上部100の自重のみによって、本体基部98、囲繞体96、及び本体上部100が組み合わされ、植物観賞装置90が完成する。ユーザはまた、完成された植物観賞装置90を上記と逆の手順で分解することができる。
以上説明したように、本変形例によれば、本体基部98、囲繞体96、及び本体上部100を互いに切り離すこと、及び互いに組み合わせて植物観賞装置90を構成することが可能である。このため、メンテナンスの容易化等が図られるのみならず、次の効果を奏する。即ち、各上端部92aの長さと配置位置、及び各下端部92bの長さと配置位置さえ共通であれば、囲繞体96を、それら上端部92a及び下端部92b以外の部分の構成が異なるものと取り替えることができる。図8には、円筒状窓部材94に可視光を減衰させる可視光減衰領域が形成された囲繞体96を示すが、可視光の減衰が不要な場合は、可視光減衰領域が形成されていない囲繞体に取り替えればよい。
なお、理解を容易にするために、図8では、可視光減衰領域を網掛けして示した。可視光減衰領域が形成された円筒状窓部材94を用いることで、例えば、鑑賞対象の植物にとって過剰な光が照射されることを防止できる。本変形例では、可視光減衰領域が形成された円筒状窓部材94を用いたが、例えば、紫外光を減衰させる紫外光減衰領域が形成された円筒状窓部材を用いてもよい。可視光減衰領域や紫外光減衰領域は、円筒状窓部材を構成する窓の全部に形成されていてもよいし、一部のみに形成されていてもよい。
図9は、図8に示す囲繞体96とサイズの異なる囲繞体96’を備えた植物観賞装置90’を示す。植物を配置する配置空間Sのサイズ及び形状は、囲繞体96、96’によって決まるため、囲繞体96をサイズ又は形状の異なる囲繞体96’と取り替えることにより、配置空間Sのサイズ又は形状を変更することができる。図9に示す囲繞体96’は、図8に示す囲繞体96よりも外径が大きいので、例えば、横方向に葉や花が拡がった植物の観賞に適する。背の高い植物を配置空間Sに配置したい場合は、囲繞体96’や囲繞体96よりも、高さの高い囲繞体と取り替えればよい。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、以下に述べる変更が可能である。
上記実施形態では、灌水のために給水ポンプ52を用いたが、給水ポンプ52に代えてバルブを用いてもよい。例えば、給水タンク50のみならず、給水タンク50から鉢Pに至る流路、具体的には、給水ホース14及び接続ホース54も鉢Pの上方に配置されている構成では、原理的には、給水ポンプ52に代えて、バルブを用いることもできる。即ち、バルブを開くことで、自ずと灌水が行われ、バルブを閉じると、灌水が停止する。また、そのバルブが、制御装置38のCPU385によって制御されるようにしてもよい。具体的には、CPU385は、タイマ383が上記「水やり時刻」の到来を検出すると、バルブを開く。これにより、給水ホース14を通じた植物Rへの灌水が開始される。また、CPU385は、タイマ383が上記「水やり秒数」の経過を検出すると、バルブを閉じる。これにより、灌水が停止する。
上記実施形態では、CPU385が、配置空間Sの温度の制御、植物への灌水の制御、及び光源58の制御をそれぞれ独立して行ったが、これらの制御を相互に連関させてもよい。具体的には、例えば、CPU385は、配置空間Sの温度に応じて、灌水のタイミングや灌水の量、又は光源58を自動的に制御してもよい。また、給水タンク50内の水位を検出する水位センサを設け、CPU385が給水タンク50の残量を監視できるようにしてもよい。給水タンク50の残量が少なくなると、アラームで報知する構成を採ってもよい。即ち、液体供給器が、給水タンク50内の液体の量を検出する液量センサと、ユーザに報知を行う報知器とをさらに有し、制御装置38が、液量センサの検出結果が表す液体の量が予め定められた値以下の場合に、報知器に報知を行わせる制御を行ってもよい。制御装置38は、給水タンク50の残量が少なくなると、自動的に光源58を消灯したり、配置空間Sの温度を低下させたりする制御を行ってもよい。
上記実施形態では、鉢保持部18を構成する凹部の深さを固定としたが、鉢Pの高さや植物Rの高さ等に応じて、凹部の深さを自在に調整できる構造を備えてもよい。鉢Pの高さ又は植物Rの高さが高い場合は、凹部の深さを深く調整することで、植物Rの頂部が本体上部6に接することを回避できる。また、鉢Pの高さ又は植物Rの高さが低い場合は、凹部の深さを浅く調整することで、植物Rの一部が凹部内に隠れてしまうことを回避でき、植物Rの見栄えをよくすることができる。
上記実施形態では、CPU385は、配置空間Sの温度を調整する目的でファン56を作動させたが、配置空間Sの温度制御とは無関係に、適時に、ファン56を作動させることにより、新鮮な空気を配置空間Sに取り込むようにしてもよい。
上記実施形態では、温度センサ80を1つのみ備えたが、配置空間S内に複数の温度センサを分布させ、CPU385が配置空間Sの温度ムラを検出できるようにしてもよい。また、温度ムラを検出した場合に、ファン56を作動させ、温度ムラを緩和させるようにしてもよい。複数のファンを備えてもよい。
上記実施形態では、光源58が照明ボタン78(図6参照)の操作によって制御されるようにしたが、光源58の消灯/点灯のタイミングを、設定パネル20を用いて予めユーザが入力でき、CPU385がその入力に従って光源58の消灯/点灯を自動で制御する構成をとってもよい。即ち、植物観賞装置1は、光源58を点灯又は消灯させる時刻に関する条件を入力する入力部をさらに備え、制御装置38が、入力部に入力された時刻に関する条件に従って光源58が点灯又は消灯するように光源58を制御してもよい。
上記実施形態では、光源58に発光ダイオードを用いたが、蛍光灯、ナトリウムランプ、又はメタルハライドランプ等を用いてもよい。また、光源58として、放射する光の波長、例えば色を変化させることができる波長可変光源を用いてもよい。光源58から照射される光は、単に植物Rの見栄えを良くする効果のみならず、植物Rの育成を促進する効果ももち得る。具体的には、植物Rに照射する光の波長及び強度を適宜選択することにより、植物Rの育成を促すことができる。例えば、赤色の光は、植物Rの茎を伸ばす効果があり、青色の光は、植物Rの葉を厚くしたり、茎を太くしたりする効果がある。光源58から照射される光の波長を変化させるタイミング等の条件を、設定パネル20を用いて予めユーザが設定でき、CPU385がその設定に従って波長の制御を行うようにしてもよい。光源58が赤外光を放射することにより、熱輻射によって植物Rを温めてもよい。
上記実施形態では、給水タンク50に水を貯留したが、水以外の液体、例えば、肥料を含んだ液体を貯留してもよい。植物観賞装置1は、屋内への設置に適するが、屋外に設置してもよい。
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。