JP2016219112A - 絶縁電線 - Google Patents
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Abstract
【課題】フッ素樹脂を含む絶縁層を有する絶縁電線において、フッ素樹脂の耐熱性を維持したまま柔軟性を向上させた絶縁電線を提供すること。【解決手段】モノマーが下記の式(1)で表されるパーフルオロモノマーの1種または2種以上からなるパーフルオロ重合体を含む絶縁層で導体の周囲が被覆されてなる絶縁電線とする。【化1】ただし、Rf1はパーフルオロアルキル基である。Rf1は、1以上のエーテル結合を含んでいてもよい。【選択図】なし
Description
本発明は絶縁電線に関し、さらに詳しくは、自動車等の車両に好適に用いられる絶縁電線に関するものである。
耐熱性、耐薬品性に優れるフッ素樹脂は、自動車等の車両に使用される絶縁電線の絶縁材料として用いられることがある。
従来知られるフッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルコキシトリフルオロエチレンの共重合体(PFA)がある。これらは耐熱性に優れるが、柔軟性に劣っている。このため、これらは細径電線の絶縁材料として適用することができても、太物のパワーケーブルなどの絶縁材料としては、柔軟性の不足により適用することが困難である。
フッ素樹脂よりも柔軟性に優れるフッ素ゴムを絶縁材料として用いる場合、ゴムとして実用的な特性を発揮するために加硫(架橋)が必要であり、加硫(架橋)工程により生産性が悪くなり、製造コストが高くなる。また、フッ素ゴムは加硫(架橋)のために炭素−水素結合を有するので、耐熱性に劣る。また、加硫(架橋)に際し用いる加硫剤(架橋剤)や加硫助剤(架橋助剤)によりフッ素濃度が低下するため、耐熱性が低下するおそれもある。
本発明の解決しようとする課題は、フッ素樹脂を含む絶縁層を有する絶縁電線において、フッ素樹脂の耐熱性を維持したまま柔軟性を向上させた絶縁電線を提供することにある。
上記課題を解決するため本発明に係る絶縁電線は、モノマーが下記の式(1)で表されるパーフルオロモノマーの1種または2種以上からなるパーフルオロ重合体を含む絶縁層で導体の周囲が被覆されてなることを要旨とするものである。
ただし、Rf1はパーフルオロアルキル基である。Rf1は、1以上のエーテル結合を含んでいてもよい。
前記式(1)で表されるパーフルオロモノマーは、下記の式(2)〜(5)で表されるパーフルオロモノマーの1種または2種以上が好ましい。
ただし、Rf2は炭素原子およびフッ素原子からなるパーフルオロアルキル基である。
ただし、Rf3は炭素原子およびフッ素原子からなるパーフルオロアルキル基である。
ただし、Rf4は1以上のエーテル結合を含むパーフルオロアルキル基である。
ただし、Rf5は1以上のエーテル結合を含むパーフルオロアルキル基である。
前記パーフルオロ重合体を構成するパーフルオロモノマーは2種類からなることが好ましい。
前記パーフルオロ重合体を構成するパーフルオロモノマーは1種類からなることが好ましい。
前記パーフルオロ重合体は熱可塑性であることが好ましい。
本発明に係る絶縁電線によれば、モノマーが上記の式(1)で表されるパーフルオロモノマーの1種または2種以上からなるパーフルオロ重合体を含む絶縁層で導体の周囲が被覆されてなることから、フッ素樹脂の耐熱性を維持したまま柔軟性を向上させることができる。柔軟なフッ素樹脂を絶縁材料として用いるので、パワーケーブルなどの太物電線においても柔軟性を確保することができる。上記パーフルオロ重合体は、パーフルオロ化合物であるため、耐熱性の向上効果に優れ、絶縁層を耐熱性に優れたものにする。
パーフルオロ重合体を構成するパーフルオロモノマーが2種類からなる場合には、重合速度と柔軟性のバランスを調整しやすい。パーフルオロ重合体を構成するパーフルオロモノマーが1種類からなる場合には、ホモポリマーとなるため、重合速度が速く、生産性に優れ、生産コストを抑える。パーフルオロ重合体が加硫剤や加硫助剤を用いて架橋させるものではなく熱可塑性であると、加硫剤や加硫助剤による耐熱性の低下、生産性の低下を抑えることができる。
次に、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明に係る絶縁電線は、導体とこの導体の周囲を被覆する絶縁層とを有している。絶縁層は、特定のパーフルオロ重合体を含有している。
特定のパーフルオロ重合体は、モノマーが下記の式(1)で表されるパーフルオロモノマーの1種または2種以上からなるパーフルオロ重合体である。
ただし、Rf1はパーフルオロアルキル基である。Rf1は、1以上のエーテル結合を含んでいてもよい。
特定のパーフルオロ重合体は、モノマーとしてテトラフルオロエチレンを含まないものであり、テトラフルオロエチレンを含まない場合において、モノマーが特定のパーフルオロモノマーからなることで、フッ素樹脂の柔軟化を図るものである。式(1)で表されるパーフルオロモノマーは、重合体としたときに、Rf1が側鎖となる。すなわち、テトラフルオロエチレンと比較して、重合体としたときに側鎖を形成する。モノマーにテトラフルオロエチレンを含む共重合体と比較して、側鎖の体積が大きくなり、結晶性が低下する。これにより、柔軟性が向上する。
また、式(1)で表されるパーフルオロモノマーは、すべての炭素に結合したすべての水素原子がフッ素原子で置換された化合物である。C−H結合を有しておらず、すべてがC−F結合に置換されたものである。C−F結合はC−H結合よりも解離エネルギーが高いため、モノマーが式(1)で表されるパーフルオロモノマーの1種または2種以上からなるパーフルオロ重合体は、優れた耐熱性を有する。よって、特定のパーフルオロ重合体によれば、フッ素樹脂の耐熱性を維持したまま柔軟性を向上することができる。
式(1)で表されるパーフルオロモノマーとしては、下記の式(2)〜(5)で表されるパーフルオロモノマーなどが挙げられる。式(1)で表されるパーフルオロモノマーとしては、下記の式(2)〜(5)で表されるパーフルオロモノマーのうちの1種であってもよいし、これらのうちの2種以上の組み合わせであってもよい。
式(2)で表されるパーフルオロモノマーは、例えば、パラジウム触媒下あるいはニッケル触媒下、テトラフルオロエチレンをパーフルオロアルキルトリメトキシシランと反応させることにより合成することができる。
式(3)で表されるパーフルオロモノマーは、例えば、パラジウム触媒下あるいはニッケル触媒下、テトラフルオロエチレンをパーフルオロアルコールと反応させることにより合成することができる。
式(4)で表されるパーフルオロモノマーは、例えば、パラジウム触媒下あるいはニッケル触媒下、テトラフルオロエチレンをパーフルオロアルキルエーテルトリメトキシシランと反応させることにより合成することができる。
式(4)で表されるパーフルオロモノマーとしては、具体的には、以下の式(6)で表されるパーフルオロモノマーなどが挙げられる。
ただし、式(6)において、n1〜n14は0以上の整数であり、n1〜n11のすべてが0である場合を除く。n1〜n11のすべてが0であると、式(4)のRf4がその構造中に1以上のエーテル結合を含むものとはならないからである。また、式(4)のRf4がその構造中に1以上のエーテル結合を含む観点から、式(6)において、n2、n6、n11のすべてが0である場合を除くことが好ましい。つまり、n2、n6、n11のいずれか1つは少なくとも1以上の整数であることが好ましい。また、式(4)のRf4の炭素数が2以上である観点から、式(6)で表されるパーフルオロモノマーは炭素数5以上であることが好ましい。また、式(4)のRf4の炭素数が2以上である、パーオキシ化合物を除くなどの観点から、式(6)において、n2が0でない(1以上の整数である)場合には、n1は0でない(1以上の整数である)ことが好ましい。
式(6)で表されるパーフルオロモノマーにおいて、式(4)のRf4に対応する部分は、1以上のエーテル結合を含みかつ直鎖からなる第1構造ブロックと、1以上のエーテル結合を含みかつ一の炭素原子から一方向にのみ分岐する分岐鎖を有する第2構造ブロックと、1以上のエーテル結合を含みかつ一の炭素原子から二方向に分岐する分岐鎖を有する第3構造ブロックと、エーテル結合を含まないパーフルオロアルキル鎖からなる第4構造ブロックと、に分けられる。第1構造ブロックは、最初の角括弧で区切られた構造ブロックであり、繰り返し単位数はn2である。第2構造ブロックは、2番目の角括弧で区切られた構造ブロックであり、繰り返し単位数はn6である。第3構造ブロックは、3番目の角括弧で区切られた構造ブロックであり、繰り返し単位数はn11である。第4構造ブロックは、4番目の角括弧で区切られた構造ブロックであり、繰り返し単位数は1である。
式(6)で表されるパーフルオロモノマーにおいては、含まれる構造ブロックの繰り返し単位数(n2、n6、あるいはn11)や含まれる構造ブロック内の含まれる繰り返し単位数(n1、n3、n4、n5、n7、n8、n9、n10、n12、n13あるいはn14)は大きいほうが好ましい。含まれる構造ブロックの繰り返し単位数や含まれる構造ブロック内の含まれる繰り返し単位数は、1以上、好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上である。側鎖の体積を大きくする効果に優れ、結晶性の低下による柔軟化の効果に優れる。一方、結晶性の低下による柔軟化の観点からいえば、上記繰り返し単位数(n1〜n14)の上限は特に限定されるものではないが、繰り返し単位数(n1〜n14)のいずれも、含まれる場合には10以下の整数であることが好ましい。より好ましくは9以下の整数、さらに好ましくは8以下の整数、7以下の整数、6以下の整数、5以下の整数である。n数が少ない場合、重合速度を確保することができる。また、パーフルオロモノマーの合成が容易である。
式(5)で表されるパーフルオロモノマーは、例えば、パラジウム触媒下あるいはニッケル触媒下、テトラフルオロエチレンをパーフルオロアルキルエーテルアルコールと反応させることにより合成することができる。
ただし、式(7)において、n15〜n28は0以上の整数であり、n15〜n25のすべてが0である場合を除く。n15〜n25のすべてが0であると、式(5)のRf5がその構造中に1以上のエーテル結合を含むものとはならないからである。また、式(5)のRf5がその構造中に1以上のエーテル結合を含む観点から、式(7)において、n16、n20、n25のすべてが0である場合を除くことが好ましい。つまり、n16、n20、n25のいずれか1つは少なくとも1以上の整数であることが好ましい。また、式(5)のRf5の炭素数が2以上である観点から、式(7)で表されるパーフルオロモノマーは炭素数5以上であることが好ましい。また、式(5)のRf5の炭素数が2以上である、パーオキシ化合物を除くなどの観点から、式(7)において、n16が0でない(1以上の整数である)場合には、n15は0でない(1以上の整数である)ことが好ましい。
式(7)で表されるパーフルオロモノマーにおいて、式(5)のRf5に対応する部分は、1以上のエーテル結合を含みかつ直鎖からなる第1構造ブロックと、1以上のエーテル結合を含みかつ一の炭素原子から一方向にのみ分岐する分岐鎖を有する第2構造ブロックと、1以上のエーテル結合を含みかつ一の炭素原子から二方向に分岐する分岐鎖を有する第3構造ブロックと、エーテル結合を含まないパーフルオロアルキル鎖からなる第4構造ブロックと、に分けられる。第1構造ブロックは、最初の角括弧で区切られた構造ブロックであり、繰り返し単位数はn16である。第2構造ブロックは、2番目の角括弧で区切られた構造ブロックであり、繰り返し単位数はn20である。第3構造ブロックは、3番目の角括弧で区切られた構造ブロックであり、繰り返し単位数はn25である。第4構造ブロックは、4番目の角括弧で区切られた構造ブロックであり、繰り返し単位数は1である。
式(7)で表されるパーフルオロモノマーにおいては、含まれる構造ブロックの繰り返し単位数(n16、n20、あるいはn25)や含まれる構造ブロック内の含まれる繰り返し単位数(n15、n17、n18、n19、n21、n22、n23、n24、n26、n27あるいはn28)は大きいほうが好ましい。含まれる構造ブロックの繰り返し単位数や含まれる構造ブロック内の含まれる繰り返し単位数は、1以上、好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上である。側鎖の体積を大きくする効果に優れ、結晶性の低下による柔軟化の効果に優れる。一方、結晶性の低下による柔軟化の観点からいえば、上記繰り返し単位数(n15〜n28)の上限は特に限定されるものではないが、繰り返し単位数(n15〜n28)のいずれも、含まれる場合には10以下の整数であることが好ましい。より好ましくは9以下の整数、さらに好ましくは8以下の整数、7以下の整数、6以下の整数、5以下の整数である。n数が少ない場合、重合速度を確保することができる。また、パーフルオロモノマーの合成が容易である。
特定のパーフルオロ重合体は、ポリテトラフルオロエチレンの合成方法と同様、乳化重合により合成することができる。具体的には、1種または2種以上のパーフルオロモノマーを所定の質量比で配合し、乳化重合により合成することができる。乳化剤としては、フッ化アリルエーテル鎖を有するカルボン酸の第4級アンモニウム塩、含フッ素カルボン酸およびその塩、含フッ素スルホン酸塩などを用いることができる。重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、tert−ブチルヒドロパーオキシド、過マンガン酸カリウム/シュウ酸、ジコハク酸パーオキシドなどを用いることができる。
パーフルオロ重合体を構成するパーフルオロモノマーは、式(1)で表されるパーフルオロモノマーの2種類からなることが好ましい。パーフルオロ重合体の生産性(重合速度)の点から、パーフルオロモノマーの種類は少ないほうが好ましく、重合体における側鎖の炭素数は少ないほうが好ましい。その一方で、結晶性の低下による柔軟性の向上を図る点から、パーフルオロモノマーの種類は多いほうが好ましく、重合体における側鎖の炭素数は多いほうが好ましい。式(1)で表されるパーフルオロモノマーの2種類からなれば、多種類による重合速度の低下をできるだけ抑えつつ、複数種類としたことによる結晶性の低下による柔軟性の向上を図るとともに、重合速度に貢献する側鎖の炭素数の少ないフラグメントと柔軟性に貢献する側鎖の炭素数の少ないフラグメントとを合わせ持つようにすることができるため、重合速度と柔軟性のバランスを調整しやすい。
また、パーフルオロ重合体を構成するパーフルオロモノマーは、式(1)で表されるパーフルオロモノマーの1種類からなるものであってもよい。式(1)で表されるパーフルオロモノマーの1種類からなれば、ホモポリマーとなるため、重合速度が速く、生産性に優れ、生産コストを抑える。
特定のパーフルオロ重合体は、熱可塑性であることが好ましい。すなわち、特定のパーフルオロ重合体は、加硫剤や加硫助剤を用いて架橋させるものではないことが好ましい。特定のパーフルオロ重合体が加硫剤や加硫助剤を用いて架橋させるものではなく熱可塑性であると、加硫剤や加硫助剤による耐熱性の低下、生産性の低下を抑えることができる。
絶縁層は、特定のパーフルオロ重合体を含有する樹脂組成物から形成される。この樹脂組成物には、本発明に係る絶縁電線の耐熱性、柔軟性に影響ない程度であれば、特定のパーフルオロ重合体以外のポリマー成分が含有されてもよいが、本発明に係る絶縁電線の耐熱性、柔軟性を考慮すると、この樹脂組成物には、特定のパーフルオロ重合体以外のポリマー成分が含有されていないほうが好ましい。なお、特定のパーフルオロ重合体以外のポリマー成分としては、電線特性に優れるなどの観点から、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)などが挙げられる。
上記樹脂組成物には、特定のパーフルオロ重合体などのポリマー成分の他に、電線被覆材に配合される各種添加剤を配合することができる。この種の添加剤としては、難燃剤、加工助剤、滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定剤、充填剤(フィラー)などが挙げられる。
充填剤(フィラー)としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウムなどが挙げられる。これらは、上記樹脂組成物の耐摩耗性を向上する。フィラーの平均粒子径は、上記樹脂組成物中の分散性の観点から、1.0μm以下であることが好ましい。また、取扱い性などの観点から、0.01μm以上であることが好ましい。フィラーの平均粒子径は、レーザー光散乱法により測定することができる。
フィラーの含有量としては、耐摩耗性に優れるなどの観点から、特定のパーフルオロ重合体などのポリマー成分100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましい。より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1.0質量部以上である。一方、外観悪化を抑える、柔軟性、耐寒性を確保するなどの観点から、特定のパーフルオロ重合体などのポリマー成分100質量部に対し、100質量部以下であることが好ましい。より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下である。
充填剤(フィラー)は、凝集を抑える、特定のパーフルオロ重合体との親和性を高めるなどの観点から、表面処理されていてもよい。表面処理剤としては、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィンの単独重合体、もしくは相互共重合体、或いはそれらの混合物、脂肪酸、ロジン酸、シランカップリング剤などが挙げられる。
上記表面処理剤は、変性されていてもよい。変性剤としては、不飽和カルボン酸やその誘導体を用いることができる。具体的には不飽和カルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。不飽和カルボン酸の誘導体としては、無水マレイン酸(MAH)、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステルなどが挙げられる。このうちで好ましいのは、マレイン酸、無水マレイン酸などである。なお、これらの表面処理剤の変性剤は1種単独で使用しても、2種以上を併用してもいずれでもよい。
表面処理剤に酸を導入する方法としては、グラフト法や直接法などが挙げられる。また酸変性量としては、表面処理剤の0.1〜20質量%、好ましくは0.2〜10質量%、さらに好ましくは0.2〜5質量%である。
表面処理剤による表面処理方法としては、特に限定されるものではない。例えば、上記フィラーに表面処理してもよいし、上記フィラーの合成時に同時に処理してもよい。また処理方法としては、溶媒を用いた湿式処理でもよいし、溶媒を用いない乾式処理でもよい。湿式処理の際、好適な溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒などを用いることができる。また、絶縁層の樹脂組成物を調製する際に、表面処理剤を上記特定の共重合体などの材料と同時に混練してもよい。
炭酸カルシウムには、化学反応によって作られる合成炭酸カルシウムと、石灰石を粉砕して作られる重質炭酸カルシウムとがある。合成炭酸カルシウムは、脂肪酸やロジン酸やシランカップリング剤などの表面処理剤で表面処理を行うことによりサブミクロン以下(数十nm程度)の一次粒子径の微粒子として用いることができる。表面処理された微粒子の平均粒径は一次粒子径で表される。一次粒子径は、電子顕微鏡観察により測定することができる。重質炭酸カルシウムは粉砕品であり、特段、脂肪酸などで表面処理を行わなくてもよく、数百nm〜1μm程度の平均粒径の粒子として用いることができる。炭酸カルシウムとしては、合成炭酸カルシウムおよび重質炭酸カルシウムのいずれを用いることもできる。
炭酸カルシウムとしては、具体的には、例えば、白石カルシウム社製の白艶華CC(平均粒径=0.05μm)、白艶華CCR(平均粒径=0.08μm)、白艶華DD(平均粒径=0.05μm)、Vigot10(平均粒径=0.10μm)、Vigot15(平均粒径=0.15μm)、白艶華U(平均粒径=0.04μm)などが挙げられる。
酸化マグネシウムとしては、具体的には、例えば、宇部マテリアルズ社製のUC95S(平均粒径=3.1μm)、UC95M(平均粒径=3.0μm)、UC95H(平均粒径=3.3μm)などが挙げられる。
水酸化マグネシウムは、海水から結晶成長法で合成するもの、塩化マグネシウムと水酸化カルシウムの反応で合成するものなどの合成水酸化マグネシウム、或いは天然に産出する鉱物を粉砕した天然水酸化マグネシウムなどを用いることができる。上記フィラーとしての水酸化マグネシウムとしては、具体的には、例えば、宇部マテリアルズ社製のUD−650−1(平均粒径=3.5μm)、UD653(平均粒径=3.5μm)などが挙げられる。
絶縁層は、例えば次のようにして形成することができる。すなわち、まず、絶縁層を形成するための絶縁層用の上記樹脂組成物を調製する。次いで、調製した上記樹脂組成物を導体の周囲に押出して、導体の周囲に上記特定の共重合体を含む絶縁層を成形する。上記樹脂組成物は、特定のパーフルオロ重合体と、必要に応じて配合されるフィラーなどの添加剤とを混練することにより調製することができる。上記樹脂組成物の成分を混練する際には、例えば、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、混練押出機、二軸混練押出機、ロールなどの通常の混練機を用いることができる。
絶縁層用の上記樹脂組成物の押出成形には、通常の絶縁電線の製造に用いられる電線押出成形機などを用いることができる。導体は、通常の絶縁電線に使用されるものを利用できる。例えば、銅系材料やアルミニウム系材料よりなる単線の導体や撚線の導体を挙げることができる。また、導体の径や絶縁層の厚みなどは特に限定されず、絶縁電線の用途などに応じて適宜決めることができる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば、上記態様の絶縁電線は、単一層の絶縁層から構成したが、本発明の絶縁電線は、2層以上の絶縁層から構成してもよい。
本発明に係る絶縁電線は、自動車、電子・電気機器に使用される絶縁電線に利用することができる。特に、フッ素樹脂の耐熱性を維持したまま柔軟性を向上させた絶縁電線であるため、耐熱性および柔軟性が要求されるところに適用される絶縁電線として好適である。このような絶縁電線としては、パワーケーブルなどが挙げられる。パワーケーブルは、ハイブリッド車や電気自動車のエンジンとバッテリーとを繋ぐものであり、高電圧、大電流の電気が流れるため、比較的太物の絶縁電線となる。そして、高い耐熱性と太物でも柔軟性に優れる特性が求められる。
パワーケーブルなどに好適な比較的径が太い絶縁電線の導体断面積は、3mm2以上である。この場合、絶縁層の厚みは、導体断面積に応じて適宜設定される。例えば導体断面積が3mm2の場合、絶縁層の厚みとしては、0.5mm以上である。また、導体断面積が15mm2の場合、絶縁層の厚みとしては、1.0mm以上である。
本発明に係る絶縁電線は、フッ素樹脂の耐熱性を維持したまま柔軟性を向上させた絶縁電線である。柔軟性は、絶縁材料として用いられる上記特定の共重合体の曲げ弾性率の値で評価することができる。曲げ弾性率は、ISO178(ASTM−D790)の「プラスチック−曲げ特性の試験方法」に準拠して、23℃絶乾状態で測定した数値である。特定のパーフルオロ重合体の曲げ弾性率の値は、本発明に係る絶縁電線の柔軟性を満足する観点から、200MPa以下であることが好ましい。より好ましくは150MPa以下、さらに好ましくは100MPa以下である。
以下、本発明の実施例、比較例を示す。
〔実施例1〜10〕
表1に示す重合比率(質量部)となるように、上記式(2)のモノマー(CF2=CF−Rf2)、上記式(3)のモノマー(CF2=CF−O−Rf3)、上記式(6)のモノマー、上記式(7)のモノマーを仕込み、乳化重合によってパーフルオロ重合体を合成した。側鎖の炭素鎖の構造は、直鎖または分岐鎖として示している。分岐鎖は、側鎖の末端がtert−ブチル基からなるものである。得られたパーフルオロ重合体と必要に応じて添加されるフィラーとを表1に示す配合組成(質量部)となるように混合することにより、絶縁層用の樹脂組成物を調製した。次いで、押出成形機を用いて、軟銅線を171本撚り合わせた軟銅撚線の導体(断面積15mm2)の外周に絶縁層用の樹脂組成物を1.1mm厚で押出被覆した(350℃)。以上により、実施例1〜10の絶縁電線を得た。
表1に示す重合比率(質量部)となるように、上記式(2)のモノマー(CF2=CF−Rf2)、上記式(3)のモノマー(CF2=CF−O−Rf3)、上記式(6)のモノマー、上記式(7)のモノマーを仕込み、乳化重合によってパーフルオロ重合体を合成した。側鎖の炭素鎖の構造は、直鎖または分岐鎖として示している。分岐鎖は、側鎖の末端がtert−ブチル基からなるものである。得られたパーフルオロ重合体と必要に応じて添加されるフィラーとを表1に示す配合組成(質量部)となるように混合することにより、絶縁層用の樹脂組成物を調製した。次いで、押出成形機を用いて、軟銅線を171本撚り合わせた軟銅撚線の導体(断面積15mm2)の外周に絶縁層用の樹脂組成物を1.1mm厚で押出被覆した(350℃)。以上により、実施例1〜10の絶縁電線を得た。
〔比較例1〜6〕
表2に示す重合比率(質量部)となるように各モノマーを仕込んだ以外は実施例と同様にして、比較例1〜6の絶縁電線を得た。
表2に示す重合比率(質量部)となるように各モノマーを仕込んだ以外は実施例と同様にして、比較例1〜6の絶縁電線を得た。
〔比較例7〕
フッ素樹脂として、市販のFEP(三井デュポン製「9494−J」)を用いた以外は実施例と同様にして、比較例7の絶縁電線を得た。
フッ素樹脂として、市販のFEP(三井デュポン製「9494−J」)を用いた以外は実施例と同様にして、比較例7の絶縁電線を得た。
〔比較例8〜13〕
表3に示す重合比率(質量部)となるように各モノマーを仕込んだ以外は実施例と同様にして、比較例8〜13の絶縁電線を得た。
表3に示す重合比率(質量部)となるように各モノマーを仕込んだ以外は実施例と同様にして、比較例8〜13の絶縁電線を得た。
〔比較例14〕
フッ素樹脂として、市販のPFA(三井デュポン製「420HP−J」、側鎖=メトキシ基)を用いた以外は実施例と同様にして、比較例14の絶縁電線を得た。
フッ素樹脂として、市販のPFA(三井デュポン製「420HP−J」、側鎖=メトキシ基)を用いた以外は実施例と同様にして、比較例14の絶縁電線を得た。
実施例1〜10、比較例1〜14の絶縁電線について、柔軟性を評価した。また、あわせて耐摩耗性を評価した。その結果を表1〜3に合わせて示す。尚、試験方法及び評価は、下記の通りである。
〔柔軟性試験方法〕
実施例、比較例の絶縁電線を500mmの長さに切り出して試験片とし、曲げ半径100mmに固定した。次いで、ロードセルで応力を印加し、曲げ半径が50mmになるまで押さえたときの最大荷重を測定した。
実施例、比較例の絶縁電線を500mmの長さに切り出して試験片とし、曲げ半径100mmに固定した。次いで、ロードセルで応力を印加し、曲げ半径が50mmになるまで押さえたときの最大荷重を測定した。
〔耐摩耗性試験方法〕
社団法人自動車技術規格「JASO D618」に準拠して、ブレード往復法により試験を行った。すなわち、実施例、比較例の絶縁電線を750mmの長さに切り出して試験片とした。そして、23±5℃の室温下で試験片の被覆材(絶縁層)に対し軸方向に10mm以上の長さでブレードを毎分50回の速さで往復させ、導体に接するまでの往復回数を測定した。この際、ブレードにかかる荷重は、7Nとした。回数については1500回以上のものを合格「○」とし、1500回未満のものを不合格「×」とした。また、回数が2000回以上のものは特に優れる「◎」とした。
社団法人自動車技術規格「JASO D618」に準拠して、ブレード往復法により試験を行った。すなわち、実施例、比較例の絶縁電線を750mmの長さに切り出して試験片とした。そして、23±5℃の室温下で試験片の被覆材(絶縁層)に対し軸方向に10mm以上の長さでブレードを毎分50回の速さで往復させ、導体に接するまでの往復回数を測定した。この際、ブレードにかかる荷重は、7Nとした。回数については1500回以上のものを合格「○」とし、1500回未満のものを不合格「×」とした。また、回数が2000回以上のものは特に優れる「◎」とした。
比較例7は、市販のFEPを絶縁層の材料として用いたものである。市販のFEPでは、柔軟性の点で不十分である。比較例1〜6は、市販のFEPと同様、テトラフルオロエチレンをモノマーとして含むパーフルオロ共重合体であり、側鎖の炭素数が1であるフッ素樹脂を絶縁層の材料として用いたものである。これらのいずれも、柔軟性の点で不十分である。
比較例14は、市販のPFAを絶縁層の材料として用いたものである。市販のPFAでは、柔軟性の点で不十分である。比較例8〜13は、市販のPFAと同様、テトラフルオロエチレンをモノマーとして含むパーフルオロ共重合体であり、側鎖(パーフルオロアルコキシ基)の炭素数が1〜3であるフッ素樹脂を絶縁層の材料として用いたものである。これらのいずれも、柔軟性の点で不十分である。
これに対し、実施例は、モノマーが式(1)(CF2=CF−Rf1)で表されるパーフルオロモノマーの1種または2種以上からなるパーフルオロ重合体を絶縁層の材料として用いたものである。このため、柔軟性の点で十分満足できる。また、パーフルオロ重合体であるため、耐熱性も非常に高い。
実施例1、2に比べ、実施例3〜6は、柔軟性評価において最大荷重が20N以下であり、一層、柔軟性に優れることがわかる。これは、側鎖の炭素数が2以上となるパーフルオロモノマーを含むため、あるいは、2種類のパーフルオロモノマーを用いているためと推察される。そして、側鎖の炭素数が10以上となるパーフルオロモノマーを含む実施例4、6では、柔軟性評価において最大荷重が15N以下であり、より一層、柔軟性に優れることがわかる。また、実施例7〜10は、柔軟性評価において最大荷重が10N以下であり、特に柔軟性に優れることがわかる。これは、重合体としたときの側鎖の炭素数が多く分岐も多い、式(6)や式(7)のフルオロモノマーを用いているためと推察される。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
Claims (7)
- 前記パーフルオロ重合体を構成するパーフルオロモノマーが2種類からなることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の絶縁電線。
- 前記パーフルオロ重合体を構成するパーフルオロモノマーが1種類からなることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の絶縁電線。
- 前記パーフルオロ重合体が熱可塑性であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の絶縁電線。
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