JP2016218395A - 反射防止フィルム - Google Patents

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圭祐 内田
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将幸 村瀬
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Abstract

【課題】耐指紋性、反射防止性、反射光の着色抑制効果、耐擦傷性に優れる反射防止フィルムを提供する。【解決手段】ポリエステルフィルム上に、S層、HC層、H層、L層が積層される。S層は膜厚5〜30nm、屈折率1.63〜1.67。HC層は屈折率1.63〜1.67、膜厚0.5〜10μm、S層との屈折率差が0.02以下。H層は屈折率1.78〜1.83、膜厚130〜155nm。L層は屈折率1.29〜1.36、膜厚90〜105nm。L層用の樹脂組成物は、(a)所定の(メタ)アクリレート5.0〜15.0質量%、(b)所定のポリジメチルシロキサン又はポリジメチルシロキサン2.0〜8.0質量%、(c)所定の含フッ素化合物9.0〜70.0質量%、(d)中空シリカ微粒子22.0〜83.0質量%、(e)光重合開始剤1.0〜10.0質量%を含み、(b)<(a)である。【選択図】なし

Description

本発明は、タッチパネルの表面等に適用される反射防止フィルムに関し、特に、防汚性及び反射防止性に優れ、反射光の着色抑制効果の高い反射防止フィルムに関するものである。
現在、画像表示部に直接触れることにより情報を入力できるデバイスとして、タッチパネルが広く用いられている。当該タッチパネルは、外光が写りこんで反射されると画像の視認性が低下するため、その表面には、一般的に反射防止フィルムが貼着される。また、タッチパネルはほぼ日常的に外気と接触したり人の手に触れられるため、汚れや指紋などがその表面に付着し、視認性の悪化や美観を損ねたりする問題もある。
この問題を解決するために、外光の反射防止性と共に防汚性も兼ね備えた反射防止フィルムが、例えば特許文献1や特許文献2に提案されている。特許文献1は、透明基材フィルムの一方の面に、ハードコート層と低屈折率層とを積層した反射防止フィルムであって、低屈折率層にポリジメチルシロキサン構造を有するシリコーン材料を加えることで、防汚性の付与が図られている。また、特許文献2は、透明基材フィルム上に、ハードコート層と低屈折率層、及び必要に応じてハードコート層と低屈折率層との間に該ハードコート層よりも屈折率の高い高屈折率層を積層した反射防止フィルムであって、フッ素系界面活性剤を低屈折率層へ加えることで、防汚性の付与が図られている。具体的には、低屈折率層は、多官能(メタ)アクリル系化合物とフッ素系界面活性剤とを、多官能(メタ)アクリル系化合物:フッ素系界面活性剤=99.9:0.1〜90:10(重量比)の割合で含有する。
特開2011−154177号公報 特開2008−122603号公報
しかし、特許文献1に記載の反射防止フィルムでは、マジックインキなどに対する汚れ防止性能は優れるが、低屈折率層にポリジメチルシロキサン構造を有するシリコーン材料を加えただけでは、指紋の付着防止性や付着した指紋の拭取り性に対する性能が不足する課題を有する。また、反射防止層が低屈折率層の1層のみで構成されているため、視感度波長範囲(光の波長500〜650nm)において反射防止性にバラツキ(強弱)があり、ある特定波長の光に対する反射率を効果的に下げることができないため、反射光が着色してしまうおそれがあった。
また、特許文献2に記載の反射防止フィルムでは、フッ素系界面活性剤の配合量が少ないため、指紋の付着防止性や付着した指紋の拭取り性が不足するといった課題があった。
さらに、反射防止層が低屈折率層と高屈折率層の2層のみで構成されているため、やはり視感度波長範囲(光の波長500〜650nm)において反射防止性にバラツキ(強弱)があり、ある特定波長の光に対する反射率のみが極端に低下しまい、反射光が着色してしまうおそれがあった。
そこで、本発明の目的とするところは、指紋の付着防止性や拭取り性、反射防止性、及び反射光の着色抑制効果に優れる反射防止フィルムを提供することにある。
そのための手段として、本発明の反射防止フィルムは、ポリエステルフィルムの一方面に、易接着層を介して、ハードコート層、高屈折率層、低屈折率層の4層がこの順で設けられている。そして、前記易接着層の膜厚が5〜30nm、屈折率が1.63〜1.67であり、前記ハードコート層の屈折率が1.63〜1.67、膜厚が0.5〜10μmで、且つ、前記易接着層との屈折率差の絶対値が0.02以下であり、前記高屈折率層の屈折率が1.78〜1.83、膜厚が130〜155nmであり、前記低屈折率層の屈折率が1.29〜1.36、膜厚が90〜105nmで設計されている。また、前記低屈折率層は、(a)C2〜C7のパーフルオロアルキル鎖を含有する(メタ)アクリレート5.0〜15.0質量%と、(b)アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はアクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサン2.0〜8.0質量%と、(c)前記(a)成分及び(b)成分と共重合可能な重合性二重結合をもつ含フッ素化合物9.0〜70.0質量%と、(d)中空シリカ微粒子22.0〜83.0質量%と、(e)光重合開始剤1.0〜10.0質量%とを含み、前記(b)成分の含有量が前記(a)成分の含有量より少なく、且つ、前記(a)〜(e)成分の合計が100質量%である低屈折率層用樹脂組成物を硬化させてなることを特徴とする。
なお、本発明において「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」と「メタクリレート」の双方を含む意味である。また、本発明において数値範囲を示す「○○〜××」とは、特に明示しない限り「○○以上××以下」を意味する。
本発明によれば、特定の屈折率と膜厚で設計されたハードコート層、高屈折率層、及び低屈折率層をこの順で積層した反射防止層を設けていることで、視感度反射率を低下させて的確に反射防止機能を発揮させることができる。同時に、一定の波長範囲の光に対する反射率をフラット化することができ、反射光の着色を防止することができる。また、低屈折率層用樹脂組成物の組成を適切に設定したことで、指紋の付着防止性や拭取り性に優れる反射防止フィルムを提供することができる。
その上で、易接着層を設けることによりポリエステルフィルムとハードコート層との密着性を高めることができ、更に易接着層の屈折率と膜厚を調整することにより干渉縞を低減することができる。
本実施形態の反射防止フィルムは、透明基材フィルムとしてのポリエステルフィルムの一方面に、易接着層を介して、ハードコート層、高屈折率層、及び低屈折率層が、この順で順次形成されている。以下に、この反射防止フィルムの構成要素について順に説明する。
〔ポリエステルフィルム〕
ポリエステルフィルムは、加工性、コスト、及び汎用性の観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET:屈折率(n)=1.65)が好ましい。
ポリエステルフィルムの厚みは特に限定されないが、25〜400μmが好ましい。ポリエステルフィルムの厚みが25μmより薄い場合や400μmより厚い場合には、耐指紋性反射防止フィルムの製造時及び使用時における取り扱い性が低下してしまう。なお、ポリエステルフィルムには、各種の添加剤が含有されていてもよい。そのような添加剤としては、例えば紫外線吸収剤、帯電防止剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤などが挙げられる。
〔易接着層〕
易接着層は、光学的な悪影響を及ぼすことなく、ポリエステルフィルムとハードコート層との密着性を高める機能を有している。この易接着層の膜厚は5〜30nm、好ましくは10〜20nmである。この易接着層の膜厚が5nm未満の場合はポリエステルフィルムとハードコート層との密着性が保てない。一方、易接着層の膜厚が30nmを超える場合、易接着層が光学的な悪影響を及ぼし、干渉縞が多くなる。また、易接着層の屈折率はポリエステルフィルムや後述するハードコート層との屈折率差から発生する干渉縞を防ぐために、1.63〜1.67とする。
〔易接着層用樹脂組成物〕
易接着層を形成する材料としては特に限定されないが、前述のように易接着層は干渉縞を防ぐ目的で屈折率の調整が必要となる。易接着層の形成方法としては、例えば高屈折率樹脂や高屈折率微粒子を含有させることで所望の屈折率を得ることができる。
高屈折率樹脂としては、分子中に芳香族環を含む樹脂が挙げられる。特に、縮合多環式芳香族環を含む樹脂が好ましく用いられる。縮合多環式芳香族環としては、ナフタレン環やフルオレン環が挙げられる。このような縮合多環式芳香族環を含む樹脂としては、例えばポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の高分子化合物が好ましく、特にポリエステル樹脂は、分子中に比較的多くの縮合多環式芳香族環を導入することができるのでより好ましい。
ポリエステル樹脂は、一般的にカルボン酸成分とグリコール成分から重縮合して得られる。分子中にナフタレン環を有するポリエステル樹脂は、カルボン酸成分として、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等のナフタレン環を有するジカルボン酸を用いることによって合成することができる。
易接着層の屈折率を高めるために易接着層に含有させる金属酸化物微粒子としては、例えば酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化鉄、アンチモン酸亜鉛、酸化錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、リンドープ酸化錫、アルミニウムドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、フッ素ドープ酸化錫等が挙げられる。これらの中でも、酸化ジルコニウムあるいは酸化チタンが好ましく用いられる。これらの金属酸化物微粒子は単独で用いてもよいし、複数併用してもよい。
易接着層用樹脂組成物における金属酸化物微粒子の含有量は、光学的な影響を及ぼさないかぎり特に限定されないが、密着性の観点から高屈折率樹脂100質量部に対して35〜85質量部が好ましい。金属酸化物微粒子の含有量が85質量部を超えると、ベースとなる高屈折率樹脂の含有量が相対的に少なくなるので、易接着層が脆くなる。
易接着層用樹脂組成物は架橋剤を含有することが好ましい。このような架橋剤としては、例えばメラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤が挙げられる。これらの中でも、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤が好ましく用いられる。易接着層用樹脂組成物における架橋剤の含有量は、高屈折率樹脂100質量部に対して10〜20質量部が好ましい。
易接着層は、更に滑り性や耐ブロッキング性の向上のために、金属酸化物微粒子以外の有機あるいは無機の粒子を含有することが好ましい。このような粒子としては特に限定されないが、例えばシリカ、炭酸カルシウム、ゼオライト粒子などの無機粒子や、アクリル粒子、シリコーン粒子、ポリイミド粒子、テフロン(登録商標)粒子、架橋ポリエステル粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋重合体粒子、コアシェル粒子などの有機粒子が挙げられる。これらの粒子の中でも、シリカが好ましく、更にコロイダルシリカが好ましく用いられる。
粒子の平均粒子径は、光学的な影響をおよぼさない限り特に限定されないが、滑り性や耐ブロッキング性を向上させるという観点から30nm以上が好ましい。平均粒子径の上限は500nm以下が好ましい。
易接着層用樹脂組成物における粒子の含有量は、光学的な影響をおよぼさない限り、また、層間の密着性に影響をおよぼさない限り特に限定されないが、高屈折率樹脂100質量部に対して0.5〜5質量部が好ましい。
易接着層をポリエステルフィルム上に設けるためには、易接着層用樹脂組成物をポリエステルフィルムの表面に塗工することで行われる。塗布は、任意の段階で実施することができるが、ポリエステルフィルムの製造過程で実施することが好ましい。塗布方法としては、公知の任意の塗工法を用いることができる。例えばグラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフ法、コイルバー法、ディップコート法などが挙げられる。
〔ハードコート層〕
ハードコート層は、反射防止フィルムの表面強度を担保するための層である。ハードコート層の屈折率は易接着層との干渉縞の影響を少なくするため、また、他層との干渉バランスを調整するため1.63〜1.67とし、且つ、易接着層との屈折率差を±0.02以下とする。また、ハードコート層の膜厚は、0.5〜10μmとする。ハードコート層の膜厚が0.5μm未満の場合には、十分な表面強度が得られないため好ましくない。その一方、膜厚が10μmを超える場合には、反りの問題が生じるため好ましくない。
〔ハードコート層用樹脂組成物〕
ハードコート層は、紫外線硬化型樹脂、光重合開始剤、及び屈折率調整のための金属酸化物微粒子を含む組成物からなるハードコート層用樹脂組成物を、易接着層上に直接塗布した後に硬化することにより形成される。
ハードコート層を形成する紫外線硬化型樹脂としては、この種の反射防止フィルムにおいて従来から一般的に使用されている、紫外線を照射することにより硬化反応を生じる公知の樹脂であればその種類は特に制限されない。そのような樹脂として、例えば単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。なお、本明細書において(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートの双方を含む総称を意味する。また、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル系、及び(メタ)アクリロイルの記載も同様である。
ハードコート層用樹脂組成物には、その他の成分として各種添加剤を含有させることもできる。当該添加剤としては、例えば、無機又は有機の微粒子状充填剤、無機又は有機の微粒子状顔料、及び金属酸化物微粒子以外の無機又は有機微粒子、重合体、重合開始剤、重合禁止剤、酸化防止剤、分散剤、界面活性剤、光安定剤及びレベリング剤等の添加剤が挙げられる。また、ウェットコーティング法において成膜後乾燥させる限りは、任意の量の溶媒を添加することができる。
光重合開始剤は、紫外線(UV)等の活性エネルギー線によりハードコート層用樹脂組成物を硬化させて塗膜を形成する際の重合開始剤として用いられる。光重合開始剤としては、活性エネルギー線照射により重合を開始するものであれば特に限定されず、公知の化合物を使用できる。例えば、アセトフェノン系重合開始剤、ベンゾイン系重合開始剤、ベンゾフェノン系重合開始剤、チオキサントン系重合開始剤等が挙げられる。アセトフェノン系重合開始剤としては、例えば1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフェリノプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等が挙げられる。ベンゾイン系重合開始剤としては、例えばベンゾイン、2,2−ジメトキシ1,2−ジフェニルエタン−1−オン等が挙げられる。ベンゾフェノン系重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等が挙げられる。チオキサントン系重合開始剤としては、例えば2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられる。
ハードコート層用樹脂組成物における光重合開始剤の含有量は、紫外線硬化型樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部とすればよい。光重合開始剤の含有量が0.1質量部未満では、活性エネルギー線硬化型樹脂の硬化が不十分となる。一方、光重合開始剤の含有量が10質量部を超えると、光重合開始剤が不必要に多くなり好ましくない。
金属酸化物微粒子は、紫外線硬化型樹脂に分散させ、塗膜を形成した際にハードコート層の屈折率を調整できるものが選択される。当該金属酸化物微粒子としては、例えばアンチモン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム錫、酸化ケイ素、アンチモン含有酸化錫からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。ハードコート層用樹脂組成物における金属酸化物微粒子の含有量は、紫外線硬化型樹脂100質量部に対して2〜400質量部とすればよい。
金属酸化物微粒子の平均粒子径は、10〜150nmとすることが好ましい。この平均粒子径が150nmを越えると、微粒子が大きくなり過ぎてハードコート層の透明性が損なわれる結果を招く。
ハードコート層用樹脂組成物に使用する溶媒は、この種の反射防止フィルム等において各層形成用の塗液に従来から使用されている公知のものであれば特に制限は無く、例えばアルコール系、ケトン系、エステル系の溶媒が適時選択できる。
更に、ハードコート層は、その他添加剤を含有していても良い。その他の添加剤としては、帯電防止剤、表面調整剤等が挙げられる。帯電防止剤として、ATO微粒子、ITO微粒子などのような導電性金属酸化物微粒子や、PEDOTのような導電性ポリマーや、4級アンモニウム塩などの界面活性剤を使用することができる。表面調整剤としては、ポリジメチルシロキサンなどのシリコン系レベリング剤や、アクリル系レベリング剤を使用することができる。
〔高屈折率層〕
次に、高屈折率層について説明する。高屈折率層は、後述の低屈折率層との有意な屈折率差により、反射防止効果を発現させるための層である。高屈折率層の屈折率は、ハードコート層よりも高く設定される。
高屈折率層の屈折率は、1.78〜1.83とする。高屈折率層の屈折率が1.78未満の場合、或いは1.83を超える場合には、他の層との屈折率差から生じる干渉のバランスが悪くなり、反射スペクトルをフラットにすることが困難となる。
高屈折率層の膜厚は、130〜155nmとする。高屈折率層の膜厚が130nmを下回る場合や、155nmを上回る場合は、他層との干渉バランスが崩れ反射防止性や反射色を損ねてしまう。
〔高屈折率層用樹脂組成物〕
高屈折率層を構成する材料は、上記屈折率の範囲において、従来から反射防止フィルム等に用いられる公知のものであれば特に制限されず、ベースとなる有機材料に、屈折率調整用の金属酸化物微粒子を適宜添加したものを用いることができる。
例えば、重合硬化したものの屈折率が1.6〜1.8の重合性単量体を含む組成物に、屈折率調整用としてハードコート層と同様の金属酸化物微粒子を適量添加して、最終的な屈折率を1.78〜1.83に調整すればよい。中でも、導電性や帯電防止能の観点より、酸化錫、酸化アンチモン及びITO等の金属酸化微粒子が好ましい。重合硬化した後の屈折率が1.6〜1.8となる重合性単量体としては、2−ビニルナフタレン、4−ブロモスチレン、9−ビニルアントラセン等が挙げられる。
また、多官能ウレタンアクリレートまたは多官能(メタ)アクリレートと金属酸化物微粒子とを含む混合物も好適に使用される。多官能ウレタンアクリレートとしては、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマーなどが挙げられる。このような材料における市販されているものとしては、日本合成化学工業(株)製の紫光UV7600B、UV7630、UV7640Bが挙げられる。
多官能(メタ)アクリレートとしては、紫外線や電子線のような活性エネルギー線を照射することにより硬化反応を生じる紫外線硬化型樹脂を使用でき、その種類は特に制限されない。この多官能(メタ)アクリレートとしては、例えばジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ビス(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)ヘキサン等の多官能アルコール(メタ)アクリル誘導体や、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、さらに紫外線硬化性ハードコート材として市販されているもの等が挙げられる。
高屈折率層用樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の成分として各種添加剤を添加することができる。そのような添加剤としては、例えば、光重合開始剤、分散剤、界面活性剤、光安定剤及びレベリング剤等の添加剤が挙げられる。
光重合開始剤としては、紫外線照射による重合開始能を有するものであれば何れでもよい。例えば、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフェリノプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等のアセトフェノン系重合開始剤、ベンゾイン、2,2−ジメトキシ1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のベンゾイン系重合開始剤、ベンゾフェノン、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系重合開始剤、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系重合開始剤等が挙げられる。これらの光重合開始剤は単独又は混合物として用いることができる。
〔低屈折率層〕
次に、低屈折率層について説明する。低屈折率層の屈折率は、ハードコート層の屈折率より低く設定される。その屈折率は1.29〜1.36の範囲である。該屈折率が1.29未満の場合には、十分に硬い層を形成することが困難である。その一方、屈折率が1.36を超える場合には、十分な視感度反射率を得ることが難しい。
〔低屈折率層用樹脂組成物〕
低屈折率層用樹脂組成物は、(a)C2〜C7のパーフルオロアルキル鎖を含有する(メタ)アクリレートと、(b)アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はアクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサンと、(c)(a)成分及び(b)成分と共重合可能な重合性二重結合をもつ含フッ素化合物と、(d)中空シリカ微粒子と、(e)光重合開始剤とを含む。なお、(b)成分の含有量は(a)成分の含有量より少ない。
〔(a)成分〕
C2〜C7のパーフルオロアルキル鎖を含有する(メタ)アクリレートは、防汚性機能を発現するためのものであり、低屈折率層表面を触った際の指紋の付着性を弱めることができる。C2〜C7のパーフルオロアルキル鎖を含有する(メタ)アクリレートとしては、具体的には、ダイキン工業(株)製オプツールDAC−HP,DIC(株)製メガファックRS−75等が挙げられる。
C2〜C7のパーフルオロアルキル鎖を含有する(メタ)アクリレートは、低屈折率層用樹脂組成物中に5.0〜15.0質量%含まれる。含有量が5.0質量%未満では、低屈折率層表面を触った際の指紋の付着性を効果的に弱めることが出来ない。一方、15.0質量%を超えると、指紋の拭取り性が悪化する。
〔(b)成分〕
アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はアクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサンは、低屈折率層表面に付着した指紋の拭取り性を良好とすることが出来る。アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はアクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサンとしては、具体的には、ビックケミー・ジャパン(株)製BYK−UV 3500,BYK−UV 3530,BYK−UV 3570等が挙げられる。
アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はアクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサンは、低屈折率層用樹脂組成物中に、2.0〜8.0質量%含まれる。含有量が2.0質量%未満では、低屈折率層表面に付着した指紋の拭取り性が向上しない。一方、8.0質量%を越えると、低屈折率層表面を触った際の指紋の付着性を弱めることが出来ない。
〔(c)成分〕
(a)成分及び(b)成分と共重合可能な重合性二重結合をもつ含フッ素化合物は、低屈折率層へ硬度を付与する事が出来る。(a)成分及び(b)成分と共重合可能な重合性二重結合をもつ含フッ素化合物は、低屈折率層用樹脂組成物中に9.0〜70.0質量%含まれる。含有量が9.0質量%未満では、低屈折率層の硬度不足や、透過率の低下が生じる。一方、70.0質量%を越えると、指紋の拭取り性が向上しない。
(a)成分及び(b)成分と共重合可能な重合性二重結合をもつ含フッ素化合物としては、特に制限されるものではないが、例えば含フッ素単官能(メタ)アクリレート、含フッ素多官能(メタ)アクリレート、含フッ素イタコン酸エステル、含フッ素マレイン酸エステル等の単量体、それらの重合体、及び重合性二重結合をもつ含フッ素反応性ポリマー等が挙げられる。
含フッ素単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば1−(メタ)アクリロイロキシ−1−パーフルオロアルキルメタン、1−(メタ)アクリロイロキシ−2−パーフルオロアルキルエタン等が挙げられる。パーフルオロアルキル基は炭素数1〜8の直鎖状、分枝状又は環状のものが挙げられる。
含フッ素多官能(メタ)アクリレートとしては、含フッ素2官能(メタ)アクリレート、含フッ素3官能(メタ)アクリレート及び含フッ素4官能(メタ)アクリレートが好ましい。含フッ素2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば1,2−ジ(メタ)アクリロイルオキシ−3−パーフルオロアルキルブタン、2−ヒドロキシ−1H,1H,2H,3H,3H−パーフルオロアルキル−2’,2’−ビス{(メタ)アクリロイルオキシメチル}プロピオナート、α,ω−ジ(メタ)アクリロイルオキシメチルパーフルオロアルカン等が挙げられる。パーフルオロアルキル基は炭素数1〜11の直鎖状、分枝状又は環状のものが、パーフルオロアルカン基は直鎖状のものが好ましい。これらの含フッ素2官能(メタ)アクリレートは、使用に際して単独又は混合物として用いることができる。
含フッ素3官能(メタ)アクリレートの例としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシ−1H,1H,2H,3H,3H−パーフルオロアルキル−2’,2’−ビス{(メタ)アクリロイルオキシメチル}プロピオナート等が挙げられる。パーフルオロアルキル基は炭素数1〜11の直鎖状、分枝状又は環状のものが好ましい。
含フッ素4官能(メタ)アクリレートの例としては、α,β,ψ,ω−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ}−αH,αH,βH,γH,γH,χH,χH,ψH,ωH,ωH−パーフルオロアルカン等が好ましい。パーフルオロアルカン基は炭素数1〜14の直鎖状のものが好ましい。使用に際しては、含フッ素4官能(メタ)アクリレートは、単独又は混合物として用いることができる。
また、重合性二重結合をもつ含フッ素反応性ポリマーとしては、含フッ素エチレン性モノマーに由来する主鎖を有し、架橋硬化のための反応性基をもつものである。反応性基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基、α−フルオロアクリロイルオキシ基、エポキシ基等が挙げられる。このような溶媒可溶性で重合性二重結合をもつ含フッ素反応性ポリマーは高分子量であるため、フッ素を含有しながらも成膜性が良好で、成膜後に反応性基を利用して架橋硬化することで硬化層を得ることができる。
係る重合性二重結合をもつ含フッ素反応性ポリマーは、重合性二重結合をもつ基の含有率が通常1〜20質量%、好ましくは5〜15質量%であり、また質量(重量)平均分子量が通常1,000〜500,000、好ましくは3,000〜200,000である。具体的な含フッ素反応性ポリマーとしては、下記一般式(1)で示されるパーフルオロ−(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノール)を、下記一般式(2)で示される過酸化物で重合させて得られるホモポリマーに、α−フルオロアクリル酸フルオライド:CH2=CFCOFを反応させて水酸基をフルオロアクリレートに置換した生成物が挙げられる。
Figure 2016218395
Figure 2016218395
〔(d)成分〕
中空シリカ微粒子は、屈折率を積極的に低くするために配合されるものである。中空シリカ微粒子の屈折率は製法によって異なるが、1.25〜1.37であることが好ましい。中空シリカ微粒子としては、屈折率を低くするものであれば特に限定されず、公知の中空シリカ微粒子を使用できる。具体的には、日揮触媒化成(株)製アクリル修飾中空シリカ微粒子スルーリア4320等が挙げられる。
中空シリカ微粒子は、低屈折率層中に22.0〜83.0質量%含まれる。シリカ微粒子の含有量が22.0質量%未満では、低屈折率層の屈折率を後述の範囲とすることが出来ない。一方、シリカ微粒子の含有量が83.0質量%より多いと、塗膜強度が弱くなるため好ましくない。
〔(e)成分〕
光重合開始剤は、紫外線(UV)等の活性エネルギー線により低屈折率層用塗液を硬化させて塗膜を形成する際の重合開始剤として用いられる。光開始剤としては、活性エネルギー線照射により重合を開始するものであれば特に限定されず、公知の化合物を使用できる。例えば、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のアセトフェノン系重合開始剤、ベンゾイン、2,2−ジメトキシ1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のベンゾイン系重合開始剤、ベンゾフェノン、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系重合開始剤、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系重合開始剤等が挙げられる。
光重合開始剤は、低屈折率層用樹脂組成物中に1.0〜10.0質量%含まれる。光重合開始剤の含有量が1.0質量%未満では、低屈折率層の硬化が不十分となる。一方、光重合開始剤の含有量が10.0質量%を超えると、光重合開始剤が不必要に多くなり好ましくない。なお、上記(a)〜(e)成分の合計含有量は100質量%である。
〔ハードコート層、高屈折率層及び低屈折率層の形成〕
ハードコート層、高屈折率層及び低屈折率層の形成方法は特に制限されず、例えばドライコーティング法、ウェットコーティング法等の塗布方法により各塗液を透明基材フィルム上に順に塗布し、硬化させる方法を採用することができる。塗布方法としては、生産性や生産コストの面より、特にウェットコーティング法が好ましい。ウェットコーティング法は公知の方法でよく、例えばロールコート法、ダイコート法、スピンコート法、そしてディップコート法等が代表的なものとして挙げられる。これらの中では、ロールコート法等、連続的に塗膜を形成できる方法が生産性の点より好ましい。形成された塗膜は、加熱や紫外線、電子線等の活性エネルギー線照射によって硬化反応を行うことにより硬化被膜を形成することができる。
<反射防止フィルムの利用>
本実施形態の反射防止フィルムは、高い防汚性、かつ、高い反射防止効果を求められる用途に好適に用いることができる。特に、電子画像表示装置の表面に使用することができる。電子画像表示装置としては、例えばタッチネル、電子黒板、プラズマディスプレイ、液晶表示装置、有機ELディスプレイ等が挙げられる。そして、その画面表面に直接、又は画面の前面に配置される板に接着層を介して密着させて用いることができる。
以下に、製造例、実施例及び比較例を挙げて本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、各例における「部」は質量部を、「%」は質量%を表す。
〔易接着層用樹脂組成物の調製〕
(易接着層用樹脂組成物α1)
下記のナフタレン環含有のポリエステル樹脂を100質量部、酸化ジルコニウムを60質量部、メラミン系架橋剤(メチロール型メラミン系架橋剤(三和ケミカル(株)製の「ニカラックMW12LF」))を15質量部、平均粒子径が190nmのコロイダルシリカを1質量部混合し、易接着層用樹脂組成物α1とした。
(ナフタレン環含有のポリエステル樹脂)
下記の共重合組成からなるポリエステル樹脂である。
・カルボン酸成分
テレフタル酸 35モル%
2,6−ナフタレンジカルボン酸 9モル%
5−Naスルホイソフタル酸 6モル%
・グリコール成分
エチレングリコール 49モル%
ジエチレングリコール 1モル%
(易接着層用樹脂組成物α2〜α5)
α1と同じ材料を、表1に示す配合(質量部)にてα1と同様に調整した。
Figure 2016218395
〔ハードコート層用樹脂組成物の調製〕
(ハードコート層用樹脂組成物β1)
金属酸化物微粒子としてアンチモンドープ酸化錫の30質量%メチルエチルケトン分散液(アンチモンドープ酸化錫の平均粒子径98nm、石原産業(株)製、SNS−10M)93質量部、紫外線硬化型樹脂として多官能アクリレート化合物(6官能のジペンタエリスリトールヘキサアクリレートと5官能のジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物、平均官能基数5.5、日本化薬(株)製、DPHA)72質量部、及び光重合開始剤としてUVラジカル開始剤(チバスペシャルティケミカルズ(株)製、イルガキュア184)5質量部を撹拌混合し、ハードコート層用樹脂組成物β1とした。
(ハードコート層用樹脂組成物β2〜β5)
β1と同じ材料を、表2に示す配合(質量部)にてβ1と同様に調整した。
Figure 2016218395
(高屈折率層用樹脂組成物γ1の調製)
紫外線硬化型樹脂としてウレタンアクリレート〔分子量1400、60℃における粘度が2500〜4500Pa・s、日本合成化学工業(株)製、紫光UV7600B〕24質量部、金属酸化物微粒子として酸化チタン微粒子(分散液)〔CIKナノテック(株)製、RTTPGM20WT%−H30〕を固形分換算で76質量部、光重合開始剤〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、イルガキュア907〕を5質量部、及びメチルエチルケトン500質量部を混合し、高屈折率層用樹脂組成物を得た。
(高屈折率層用樹脂組成物γ2〜γ6の調製)
γ1と同じ材料を、表3に示す配合(質量部)にてγ1と同様に調整した。なお、DPHAは、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートである。
Figure 2016218395
((c)含フッ素化合物δ1の製造)
四つ口フラスコにパーフルオロ−(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビスフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノール)104部と、ビス(2,2,3,3,4,45,5,6,6,7,7−ドデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイドの8質量%パーフルオロヘキサン溶液11部を入れた。そして、その中空部を窒素置換した後、窒素気流下20℃で24時間撹拌して高粘度の固体を得た。得られた固体をジエチルエーテルに溶解させたものをパーフルオロヘキサンに注ぎ、分離後に真空乾燥させて無色透明なポリマーを得た。
このポリマーを19F−NMR(核磁気共鳴スペクトル)、1H−NMR、IR(赤外線吸収スペクトル)により分析したところ、上記アリルエーテルの構造単位からなる側鎖末端に水酸基を有する含フッ素ポリマーであった。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)により測定した数平均分子量は72,000、質量平均分子量は118,000あった。
得られたヒドロキシル基含有含フッ素アリルエーテルポリマー5部と、メチルエチルケトン(MEK)43部、ピリジン1部を四つ口フラスコ中に仕込み、5℃以下に氷冷した。そして、窒素気流下で撹拌しながらα−フルオロアクリル酸フルオライド1部をMEK9部に溶解したものを10分間かけて滴下した。これにより、(a)成分及び(b)成分と共重合可能な重合性二重結合をもつ含フッ素化合物δ1の溶液を得た。
(低屈折率層用樹脂組成物LL1−1の調製)
低屈折率層用樹脂組成物LL1−1は、イソプロピルアルコール(IPA)を溶媒として、固形分濃度が5質量%となるように、(a)C2〜C7のパーフルオロアルキル鎖を含有する(メタ)アクリレート〔信越化学工業(株)製、DAC−HP〕5.0質量%と、(b)アクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサン〔ビックケミー・ジャパン(株)製、BYKUV−3570〕4.0質量%と、(c)溶媒可溶性の含フッ素反応性ポリマー(δ1)を固形分換算で43質量%と、(d)平均粒子径が60nmの中空シリカ微粒子〔日輝触媒化成工業株式会社製、スルーリア4320〕43質量%と、(e)光重合開始剤〔BASFジャパン株式会社製、イルガキュア907(I−907)〕5質量%とを混合して得た。
(低屈折率層用樹脂組成物LL1−2〜LL1−15(実施例用)の調製)
表4に示す配合(質量%)にて、LL1−1と同様に調整した。なお、(a)成分である「RS−75」は、DIC(株)製のC2〜C7のパーフルオロアルキル鎖を含有する(メタ)アクリレートである。また、(b)成分である「BYKUV−3500」及び「BYKUV−3530」は、ビックケミー・ジャパン(株)製のアクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンである。また、(d)成分である「スルーリア2320」は、日輝触媒化成工業株式会社製の中空シリカ微粒子(平均粒子径50nm)である。また、(e)成分である「I−184」は、BASFジャパン株式会社製のイルガキュア184である。
Figure 2016218395
(低屈折率層用組成物LL2−1〜LL2−14(比較例用)の調製)
表5に示す配合(質量%)にて、LL1−1と同様に調整した。なお、「F−558」はDIC(株)製の紫外線硬化しないフッ素含有樹脂であり、C2〜C7のパーフルオロアルキル鎖を含有する(メタ)アクリレートではない。また、(b)成分である「BYKUV331」は、ビックケミー・ジャパン(株)製のアクリル基を有さないポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンである。
Figure 2016218395
(実施例1)
二軸延伸ポリエステルフィルム(厚さ100μm、屈折率1.65)の一方面に、易接着層用樹脂組成物α1を膜厚が15nmとなるようグラビアコート法で塗布して易接着層積層PETを作製した。続いて、易接着層上にハードコート層用樹脂組成物β1を、乾燥膜厚1.5μm程度になるようにスピンコート法で塗布後、紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、120W高圧水銀灯)を用いて400mJの紫外線を照射して硬化させることにより、ハードコートフィルムを作製した。さらに、このハードコート層上に高屈折率層用樹脂組成物γ1を、乾燥時の厚さが140nmとなるように塗布した後、窒素雰囲気下で紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、120W高圧水銀灯)を用いて300mJの紫外線を照射し、高屈折率層用樹脂組成物γ1を硬化させて高屈折率層を形成した。最後に、この高屈折率層上に低屈折率層用樹脂組成物LL1−1を、乾燥時の厚さが100nmとなるように塗布した後、窒素雰囲気下で紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、120W高圧水銀灯)を用いて300mJの紫外線を照射し、低屈折率層用樹脂組成物LL1−1を硬化させて低屈折率層を形成し、実施例1の反射防止フィルムを作製した。
得られた反射防止フィルムにおける各層の膜厚と屈折率は、次のようにして測定した。なお、後述のその他の実施例や比較例においても、同様に測定した。
<膜厚>
膜厚の測定は、光学積層体の断面をTEM写真で観察することにより行った。
<屈折率>
一方の面に易接着層が付与されている屈折率1.65のPETフィルム〔商品名:「A4100」、東洋紡(株)製〕を基材として、易接着層が付与されていない面上に測定したい被膜を100nm程度の膜厚で形成し、反射分光膜厚計(大塚電子(株)製「FE3000」を持いてフィルム上に形成された被膜について270〜1040nmの範囲で絶対反射率を測定した。得られた絶対反射率のスペクトルの実測値から、代表的な波長分散の近似式としてn-Cauchyの分散式を引用し、未知のパラメーターを絶対反射率のスペクトル非線形最小二乗法によって求めて、波長589nmにおける屈折率を算出した。
(実施例2〜28)
表6,7に示す構成にて、実施例1と同様に作製した。
Figure 2016218395

Figure 2016218395
(比較例1−28)
表8,9に示す構成にて、実施例1と同様に作製した。
Figure 2016218395

Figure 2016218395
得られた各実施例及び比較例の反射防止フィルムにおいて、指紋拭き取り性、反射する光の着色抑制効果、反射防止特性、物理的特性(カール性)を測定し評価した。その結果も表6〜表9に示す。なお、各項目の測定方法は次の通りである。
<視感度反射率>
測定面の裏面反射を除くため、裏面をサンドペーパーで粗し、黒色塗料で塗り潰したものを分光光度計〔日本分光(株)製、商品名:U−best560〕により、光の波長380nm〜780nmの5°、−5°正反射スペクトルを測定した。得られる光の波長380nm〜780nmの分光反射率と、CIE標準イルミナントD65の相対分光分布を用いて、JISZ8701で想定されているXYZ表色系における、反射による物体色の三刺激値Yを視感度反射率(%)とした。
<反射色abクロマ及び反射彩度Cab*>
測定面の裏面反射を除くため、裏面をサンドペーパーで粗し、黒色塗料で塗り潰したものを分光光度計〔日本分光(株)製、商品名:U−best560〕により、光の波長380nm〜780nmの5°、−5°正反射スペクトルを測定した。得られる光の波長380nm〜780nmの分光反射率と、CIE標準イルミナントD65の相対分光分布を用いて、JIS Z8720に規定される色空間CIE1976L*a*b*表色系を計算し、求めたa*、b*値から彩度Cab*={(a*)2+(b*)21/2を計算した。
<450〜650nmの領域における反射率の最大値と最小値の差>
測定面の裏面反射を除くため、裏面をサンドペーパーで粗し、黒色塗料で塗り潰したものを分光光度計〔日本分光(株)製、商品名:U−best560〕により、光の波長380nm〜780nmの5°、−5°正反射スペクトルを測定した。得られる光の波長380nm〜780nmの分光反射率の450〜650nmの領域における反射率の最大値と最小値の差を読み取った。
<干渉縞の評価>
裏面反射の影響をなくすため、ハードコート層を設けた面と反対側の面を黒色塗料で塗りつぶしたサンプルを作製した。暗室内で3波長蛍光灯を光源としてサンプルを目視したときに、干渉縞の強度を評価した。
○:干渉縞が見えない,△:弱い干渉縞が見える,×:強い干渉縞が見える
<カール性試験>
10cm×10cmのサイズの反射防止フィルムを作成し、反射防止フィルムを水平面に置いた際の4隅のカール高さを測定し、下記の基準により判定する。
○:カール高さが10mm未満
×:カール高さが10mm以上
<反射防止性>
視感度反射率で求めた数値を以下の3段階で評価した。
○:0.1%、△:0.2%、×:0.3%以上
<着色抑制効果>
10cm×10cmサイズのガラス板の片面にアクリル系粘着シートを使用して反射防止フィルムを貼り合せ、もう片方の面に黒色フィルムを貼り合せたサンプルを作製した。このサンプルを、三波長蛍光灯管の下で観察し、裏面の黒色フィルムの黒色が、自然な黒色に見える場合を○、黒色が白茶けたり、反射防止フィルムの着色がきつく、黒っぽく見えない場合を×として評価した。
<指紋拭取り性>
人工指脂液(尿素1g、乳酸4.6g、ピロリン酸ナトリウム8g、食塩7g、エタノール20mLを蒸留水で1Lに希釈したもの)を1滴反射防止フィルム表面に滴下する。その後、日本製紙クレシア(株)製キムワイプを用い、人工指脂液を馴染ませる。続いて、東レ(株)製トレシーを用いて5往復拭取りを実施した後、表面の跡を目視で観察し下記の3段階で評価した。
○:人工指脂液の跡が無い
△:人工指脂液の跡が一部残る
×:人工指脂液の跡が残る
<耐擦傷性>
反射防止フィルム表面を#0000のスチールウールに250gfの荷重をかけて、ストローク幅25mm、速度30mm/secで10往復摩擦したあとの表面を目視で観察し、以下の○、×で評価した。スチールウールは約10mmφにまとめ、表面が均一になるようにカット、摩擦して均したものを使用した。
○:傷が0〜10本 △:傷が11〜20本 ×:傷が21本以上
表6,7の結果より、各実施例の反射防止フィルムは、指紋拭き取り性が良好で、JISZ8720に基づくCIE標準イルミナントD65に対するJIS Z8701に基づく視感度反射率Yが0.25%以下であり、光の波長500〜650nmの領域における反射率の最大値と最小値の差が0.5%以下であり、かつJISZ8720に基づくCIE標準イルミナントD65に対するJIS Z8729に基づくabクロマCab*={(a*)2+(b*)2}1/2が7.2以下であったため、着色抑制効果が良好であった。また、耐擦傷性及びカール性も良好であった。
これに対し表8の結果より、比較例1〜16は、それぞれ下記の理由により十分な性能を発現しない。
比較例1:易接着層とハードコート層との屈折率差が大きいため干渉縞が強い。
比較例2:易接着層とハードコート層との屈折率差が大きいため干渉縞が強い。
比較例3:易接着層がないため透明基材フィルムとハードコート層との密着性が低く、耐擦傷性が弱い。
比較例4:易接着層が厚いため干渉縞が強い。
比較例5:易接着層とハードコート層との屈折率差が大きいため干渉縞が強い。
比較例6:易接着層とハードコート層との屈折率差が大きいため干渉縞が強い。
比較例7:ハードコート層の膜厚が薄いため耐擦傷性が弱い。
比較例8:ハードコート層の膜厚が厚いためカールが強い。
比較例9:高屈折率層の屈折率が低いため着色抑制効果を発現できていない。
比較例10:高屈折率層の屈折率が高いため耐擦傷性が弱い。
比較例11:高屈折率層の膜厚が薄いため着色抑制効果を発現できていない。
比較例12:高屈折率層の膜厚が厚いため着色抑制効果を発現できていない。
比較例13:低屈折率層の屈折率が低いため着色抑制効果を発現できていない。また低屈折率層内の粒子量が多いため耐擦傷性が弱い。また、(a)(b)(c)成分が不足しているため指紋拭き取り性が悪い。
比較例14:低屈折率層の屈折率が高いため着色抑制効果を発現できていない。
比較例15:低屈折率層の膜厚が薄いため着色抑制効果を発現できていない。
比較例16:低屈折率層の膜厚が厚いため着色抑制効果を発現できていない。
表9の結果より、比較例17〜25は、それぞれ下記の理由により指紋拭き取り性が悪い。
比較例17:低屈折率層用樹脂組成物中の(a)成分量が少ない。
比較例18:低屈折率層用樹脂組成物中の(a)成分量が多い。
比較例19:低屈折率層用樹脂組成物中に(b)成分を含有しない。
比較例20:低屈折率層用樹脂組成物中の(b)成分量が少ない。
比較例21:低屈折率層用樹脂組成物中の(b)成分量が多い。
比較例22:低屈折率層用樹脂組成物中の(b)成分量が多く、かつ(a)成分量が(b)成分量よりも多い。
比較例23:低屈折率層用樹脂組成物中の(a)成分量が(b)成分量と同量。
比較例24:低屈折率層用樹脂組成物中の(a)成分量が(b)成分量よりも多い。
比較例25:低屈折率層用樹脂組成物中の(a)成分量が(b)成分量と同量。
また、表9の結果より、比較例26〜28は、それぞれ下記の理由により耐擦傷性が弱い。
比較例26:低屈折率層用樹脂組成物中に(e)成分を含有しない。
比較例27:低屈折率層用樹脂組成物中に重合性基のない(a)成分を使用している。
比較例28:低屈折率層用樹脂組成物中に重合性基のない(b)成分を使用している。

Claims (2)

  1. ポリエステルフィルムの一方面に、易接着層を介して、ハードコート層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で設けられており、
    前記易接着層の膜厚が5〜30nm、屈折率が1.63〜1.67であり、
    前記ハードコート層の屈折率が1.63〜1.67、膜厚が0.5〜10μmで、且つ、前記易接着層との屈折率差の絶対値が0.02以下であり、
    前記高屈折率層の屈折率が1.78〜1.83、膜厚が130〜155nmであり、
    前記低屈折率層の屈折率が1.29〜1.36、膜厚が90〜105nmであり、
    前記低屈折率層が、
    (a)C2〜C7のパーフルオロアルキル鎖を含有する(メタ)アクリレート5.0〜15.0質量%と、
    (b)アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はアクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサン2.0〜8.0質量%と、
    (c)前記(a)成分及び(b)成分と共重合可能な重合性二重結合をもつ含フッ素化合物9.0〜70.0質量%と、
    (d)中空シリカ微粒子22.0〜83.0質量%と、
    (e)光重合開始剤1.0〜10.0質量%とを含み、
    前記(b)成分の含有量が前記(a)成分の含有量より少なく、且つ、前記(a)〜(e)成分の合計が100質量%である低屈折率層用樹脂組成物を硬化させてなる、反射防止フィルム。
  2. 前記ポリエステルフィルムの他方面に粘着層が積層されている、請求項1に記載の反射防止フィルム。

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