本発明の好適な一実施例の落下物の撤去方法及び燃料デブリの取出し方法を、図3及び図4を用いて以下に説明する。本実施例の燃料デブリ取出し方法は、沸騰水型原子力発電プラントに適用される。本実施例の燃料デブリ取出し方法は、原子炉圧力容器の開放及び燃料デブリの取出しを含んでいる。
本実施例の燃料デブリ取出し方法の一部である原子炉圧力容器を開放する方法は、図3に示された準備作業(ステップS1〜S6の各工程を含む)及び原子炉開放作業(ステップS7〜S13の各工程を含む)を含んでいる。この燃料デブリ取出し方法は、図4に示された原子炉格納容器底部に落下した燃料デブリの取出し作業(ステップS14〜S16の各工程を含む)を含んでいる。
本実施例の燃料デブリ取出し方法を説明する前に、この燃料デブリ取出し方法が適用される沸騰水型原子力発電プラントの概略の構成を、図1及び図2を用いて説明する。
沸騰水型原子力プラント1は、原子炉2及び原子炉格納容器17を備えている。原子炉格納容器17は、原子炉建屋23内に設置されて、上端部に蓋である格納容器ヘッド18が取り付けられて密封されている。原子炉格納容器17は、内部に形成されたドライウェル19、及び冷却水が充填された圧力抑制プールが内部に形成された圧力抑制室21を有する。ドライウェル19に連絡されるベント通路の一端が、圧力抑制室21内の圧力抑制プールの冷却水中に浸漬されている。原子炉格納容器17は、原子炉建屋23の一部になる生体遮へい体100で取り囲まれている。
格納容器ヘッド18の真上に複数に分割された放射線遮へい体であるシールドプラグ28が配置され、これらのシールドプラグ28が、原子炉ウェル25内に配置され、原子炉建屋23の運転床24に設置されている。シールドプラグ28は原子炉ウェル25を封鎖している。ドライヤセパレータプール(機器仮置きプール)26及び燃料貯蔵プール27が、原子炉ウェル25に隣接して配置され、運転床24に取り囲まれている。ドライヤセパレータプールは、以下においてDSPと称する。DSP26、原子炉ウェル25及び燃料貯蔵プール27は、図2に示すように一直線状に配置される。DSP26と原子炉ウェル25は水路によって連絡され、この水路は、少なくとも沸騰水型原子力プラント1の運転中では複数のスロットルプラグ(ゲート部材)29Aにより封鎖されている。これらのスロットルプラグ29Aは、その水路の底部に形成されたコンクリート製の突出部57の上面上に積み重ねられている。原子炉ウェル25と燃料貯蔵プール27も水路によって連絡され、この水路は、少なくとも沸騰水型原子力プラント1の運転中では積み重ねられた複数のスロットルプラグ(ゲート部材)29Bにより封鎖されている。
原子炉2は、蓋である圧力容器ヘッド4が取り付けられて構成される原子炉圧力容器3、核燃料物質を含む複数の燃料集合体8が装荷された炉心7、気水分離器11及び蒸気乾燥器12等を備えている。炉心7、気水分離器11及び蒸気乾燥器12は原子炉圧力容器3内に配置される。原子炉圧力容器3内に設置された炉心シュラウド6が、炉心7を取り囲んでいる。炉心7内に装荷された各燃料集合体8は、下端部が炉心支持板9によって支持され、上端部が上部格子板10によって保持される。気水分離器11は炉心7の上端部に位置する上部格子板10よりも上方に配置され、蒸気乾燥器12が気水分離器11の上方に配置される。
複数の制御棒案内管13が、原子炉圧力容器3内で炉心支持板9の下方に配置される。炉心7内の燃料集合体8間に出し入れされて原子炉出力を制御する制御棒(図示せず)が、各制御棒案内管13内に配置される。複数の制御棒駆動機構ハウジング14が、原子炉圧力容器3の下鏡部5に取り付けられる。制御棒駆動機構(図示せず)が、それぞれの制御棒駆動機構ハウジング14内に設置され、制御棒案内管13内の制御棒と連結される。
原子炉圧力容器3内に設置された炉心シュラウド6、炉心支持板9、上部格子板10、気水分離器11、蒸気乾燥器12及び制御棒案内管13は、炉内構造物である。
原子炉圧力容器3は、原子炉格納容器7内の底部に設けられたコンクリートマット16上に設けられた円筒状のペデスタル15上に据え付けられている。筒状のγ線遮蔽体22が、ペデスタル15の上端に設置され、原子炉圧力容器3を取り囲んでいる。下部プレナム20が、原子炉圧力容器3の下方でペデスタル15内に形成される。
このような沸騰水型原子力プラント1において、原子炉がスクラムされて原子炉出力が低下した状態において、一時的に、沸騰水型原子力プラント1に供給する全部の電源が消失して非常用炉心冷却系が作動しなかった状態が生じたことを想定する。全部の電源が消失して非常用炉心冷却系のポンプ等が作動しなくなり、炉心7内の各燃料集合体8に含まれる各燃料棒の冷却が損なわれた場合には、これらの燃料棒に含まれる核燃料物質が溶融し、核燃料物質の溶融によって燃料集合体8の構造部材、例えば、燃料棒の被覆管、燃料集合体8のチャンネルボックス及び上部タイプレート及び下部タイプレートも溶融する。核燃料物質、及び燃料集合体8の構造部材等の溶融物である燃料デブリ39Aは、原子炉圧力容器3の底部である下鏡部5の内面上に落下する可能性がある。燃料デブリ39Aには、炉心支持板9等の炉内構造物の溶融物が含まれる場合もある。溶融して下鏡部5の内面上に落下した燃料デブリ39Aは、冷却されて固まる。
万が一、このような燃料デブリ39Aの原子炉圧力容器3の底部への落下が生じた場合には、固まった燃料デブリ39Aの原子炉圧力容器3外への搬出が実施され、さらに燃料デブリ39Aの落下が生じている沸騰水型原子力プラント1については、廃炉処理が実施される。また、原子炉圧力容器3の底部に落下した燃料デブリ39Aの一部は、原子炉圧力容器3の下鏡部5からさらに下方の、ペデスタル15内で原子炉格納容器17の底部、すなわち、コンクリートマット16上に落下する可能性もある。ペデスタル15内で原子炉格納容器17の底部に落下した燃料デブリを燃料デブリ39Bと称する。
炉心7内の核燃料物質が溶融する炉心溶融事故が発生したとき、図5に示すように、DSP26内には何も存在していなく、DSP26と原子炉ウェル25は複数のスロットプラグ29Aによって仕切られている。また、手摺31が格納容器ヘッド18の頂部に設けられており、圧力容器ヘッド4は保温材30によって覆われている。原子炉圧力容器3と原子炉格納容器17の間には、原子炉ウェル25の底部の一部になるバッフルプレート76が配置され、このバッフルプレート76は原子炉圧力容器3と原子炉格納容器17に取り付けられている。なお、炉心溶融事故の発生により、格納容器ヘッド18の損傷個所を通して原子炉ウェル25内に放射性物質(例えば、Cs−137等)を含むガスが流出したとする。
まず、炉心溶融事故の発生に伴って原子炉建屋内で水素爆発が発生した場合には、原子炉建屋1の運転床上に散乱していると想定される放射性物質が付着されたガレキ及び構造部材片等の落下物の撤去を主体とした原子炉建屋準備作業を図5A乃至図5Cを用いて説明する。
原子炉建屋準備作業では、まず、既存の原子炉建屋23の運転床24に、作業毎に撤去されることが必要な場所に立てられていた建屋カバーを解体する(ステップST1)。
その後、図5Aに示すように、落下物撤去を行う運転床24から上部を主とし、原子炉建屋23全体をカバーする全体カバー装置を設置する(ステップST2)。図5A(a)は、全体カバー装置300を上部から見た図である。図5A(b)は、図5A(a)おいて原子炉建屋1も含めた全体カバー装置の側面断面図である。図5A(a)に示すように、全体カバー装置300は、少なくとも原子炉建屋1の四隅に立てられた支柱を有し、放射性物質を隔離するために装置上面とその四側面を覆うように隔離シート303A、303Bが設けられている。全体カバー装置300は、その形状を規定する枠部材に、物品搬入口301Aを有する走行台車301を運転床24上部で2次元的に移動させる走行部材及び横行部材が取り付けられている。
本全体カバー装置によれば、走行台車301と運転床24との間に十分な作業空間を形成でき、落下物撤去作業が終了後に、例えば複数の作業をそれぞれ独立して並行で行える環境を提供できる。
図5Bは、隔離フィルム309を用いて落下物310を撤去する作業概念を示す図である。本例は、図5B(a)に示すように楊重装置306を物品搬入口301Aの上部側に設け、楊重装置306の走行台車307から掴み具308が昇降可能に設けられている構成を有する。
まず、物品搬入口301Aを、例えば予め実施した調査に基づいて落下物310が存在する位置の上部に移動させ、摘み具308を物品搬入口301A上部に搬送する(図5B(a))。その後、摘み具308を降下し物品搬入口301Aから挿入させ、落下物310を把持する(図5B(b))。次に、落下物310を物品搬入口301Aを通して上部に引き上げ、摘み具308を回転させ、把持している落下物310を隔離フィルム309で包み、回転して絞られた位置を融着して、分離する(図5B(c))。その後、隔離フィルム309で包まれた落下物を搬出容器311のある容器受台312の位置に移動させ、収納する(図5B(d))。その後、クローラクレーン305のフックを容器受台312の位置に移動させ、搬出容器311を所定の個所に搬出し、物品搬入口301Aを封鎖する(図5B(e))。
なお、本例では、走行台車307を用いたが、物品搬入口301Aと一体になって移動するクレーンで摘み具308を昇降させてもよい。
図5Cは、隔離フィルム309を用いず、装置内包容器313を用いて落下物310を撤去する作業概念を示す図である。本例における図5C(a)は、隔離フィルム309のない物品搬入口301Aの上に装置内包容器313を載置した状態を示す。装置内包容器313内部には、走行台車307と摘み具308が内蔵されている。また、装置内包容器313の下面、物品搬入口301Aの上面には、開閉可能な開閉シート314が設けられている。
まず、物品搬入口301Aを、例えば予め実施した調査に基づいて落下物が存在する位置の上部に移動させ、その後、装置内包容器313を物品搬入口301Aに載置する(図5C(a))。次に、両開閉シート314を開き、摘み具308を降下し物品搬入口301Aから挿入させ、落下物310を把持する(図5C(b))。その後、落下物310を装置内包容器313内に回収し、両開閉シート314を閉じる(図5C(c))。そして、例えば、クローラクレーン305で落下物310を回収した装置内包容器313を持ち上げ(図5C(d))、搬出容器311のある容器受台312の位置に移動し開閉シートを開き、収納した落下物を搬出容器に移設する(図5C(e))。その後、再び装置内包容器313をクローラクレーン305で持ち上げ、次の回収位置に移動する。その移動後、他のクローラクレーン305で搬出容器311を持ち上げ、所定の個所に搬出する(図5C(f))。
本例では、装置内包容器313を物品搬入口301Aに載置して落下物を回収したが、装置内包容器313と装置内包容器313を移動させる走行台車を物品搬入口301Aの下側に設ける構成としてもよい。
上述した原子炉建屋準備作業を行った後、走行台車301と運転床24との間に形成された作業空間に設置した全体カバー装置は、それ内部に排気装置(図示せず)を接続し、負圧に管理することにより気密性を確保できるため、その後の原子炉圧力容器の開放作業及び使用済み燃料搬出作業に共通して使用することができる。また、後述するように原子炉圧力容器の開放作業において、原子炉ウエル内機器の取り出し機器を収納した搬出容器を物品搬入口301Aから搬出に使用できる。また、燃料貯蔵プール27から使用済み燃料搬出作業でも物品搬入口301Aは、プール内で使用した汚染機器の搬出入にも使用でき、両作業を並行して行うことにも寄与できる。また、原子炉建屋全体をカバーしていることから、原子炉格納容器17から万一放射性物質が漏えいし、原子炉建屋からの漏えいが生じていた場合、全体カバー装置により周囲環境への拡散を防止できる。
その結果、オペフロ上でのガレキの撤去後に、その後の作業に応じた専用カバーの付け替えをする必要がなく、また、原子炉圧力容器の開放作業と使用済み燃料搬出作業とを順次行う必要がなく、原子炉解体作業に要する時間をさらに短縮できる。
次に、本実施例の燃料デブリの取出し方法を以下に説明する。まず、本実施例の燃料デブリ取出し方法の一部である原子炉圧力容器を開放する方法における準備作業について説明する。この準備作業は、原子炉開放作業の前作業である。
機器仮置きプール内を遮へいおよび放射性物質の拡散を防止するための隔離エリアとして整備するための一例として、放射線遮へい容器をDSP内に設置する(ステップS1)。原子炉建屋23外に設置された移動式のクローラクレーン(図示せず)を用いて放射線遮へい容器32を吊り上げてDSP26内に設置する(図6参照)。なお、このクレーンは、門型クレーン、タワークレーン等の重量物を一体搬出入可能なものであれば良い。放射線遮へい容器32は、開口部36Aを形成した放射線遮へい板33を天井部材として放射線遮へい容器32に取り付けており、原子炉ウェル25側の側壁に開口部36Bを形成している。放射線遮へい容器32には、開口部36Aを開閉する移動式のドア34が取り付けられる。また、開口部36Bを開閉する移動式のドア35が、原子炉ウェル25側の側壁の内面に取り付けられる。開口部36Bはドア34によって、また、開口部36Bはドア35によってそれぞれ封鎖されている。
スロットルプラグに貫通孔を形成する(ステップS2)。内部に穿孔装置41が収納された隔離チャンバー40が、クローラクレーンに吊り下げられて開口部36Aを通して放射線遮へい容器32内の空間37に搬入される(図7参照)。このとき、ドア34は開いている。隔離チャンバー40の下面には台車40Aが取り付けられており、隔離チャンバー40の一つの側壁に開口部40Eが形成される。この開口部40Eは、その側壁の内面に移動可能に取り付けられたドア40Bによって開閉される。開口部40Eを取り囲む環状のシール装置40Cが、隔離チャンバー40のその側壁の外面に取り付けられる。
穿孔装置41は、隔離チャンバー40内の空間40Dに配置され、移動可能に隔離チャンバー40の底面に取り付けられた支持部材42の上端部に取り付けられる。隔離チャンバー40が放射線遮へい容器32内に搬入された後、ドア34が閉じられ、隔離チャンバー40は台車40Aによって放射線遮へい容器32の原子炉ウェル25側の側壁まで移動される。シール装置40Cが、隔離チャンバー40の移動によって放射線遮へい容器32の、開口部36Bが形成された側壁の内面に、開口部36Bを取り囲むように、押し付けられる(図8参照)。ドア35は、シール装置40Cがこの側壁に押し付けらた後に開けられる。開口部36Bは、隔離チャンバー40に形成された開口部40Eに連通し、ドア40Bを開くことによって隔離チャンバー40内の空間40Dと連通される。
穿孔装置(例えば、ワイヤーソー)41を駆動し、穿孔装置41をコンクリート製の一つのスロットルプラグ29Aに向かって移動させることによってスロットルプラグ29Aをブロック状に切断する。穿孔装置41を用いたスロットルプラグ29Aの切断位置は、原子炉ウェル25を封鎖しているシールドプラグ28のうち最も下方に位置するシールドプラグ28の下面よりも下方の位置である(図9参照)。穿孔装置41によって削り出された、シールドプラグ28のブロック44は、隔離チャンバー40内に搬入される(図10参照)。この結果、シールドプラグ28に貫通孔43が形成され、原子炉ウェル25と隔離チャンバー40内の空間が連通し、原子炉ウェル25内に存在する放射性物質を含むガスが、貫通孔43及び開口部36B及び40Eを通して隔離チャンバー40内に流入する。その後、ドア40Bを閉じて開口部を封鎖し、そして、直ちに、ドア35を閉じて開口部を封鎖する。
ドア35を閉じて密封されて内部に放射性物質を含むガスが存在する隔離チャンバー40が、開口部36Aを通してクローラクレーンによりDSP32内から地上まで搬出される。その後、穿孔装置41を収納しているこの隔離チャンバー40が処分されるが、この処分に際して隔離チャンバー40内の放射性物質を含むガスが、浄化装置に供給されて浄化装置で除去される。
格納容器ヘッドに設けられた手摺を除去する(ステップS3)。内部に手摺取り外し装置45が収納された別の隔離チャンバー40が、ステップS2の工程と同様に、開口部36Aを通して放射線遮へい容器32内の空間37に搬入される。隔離チャンバー40の搬入後に、ドア34が閉じられる。この隔離チャンバー40は、シール装置40Cが放射線遮へい容器32の原子炉ウェル25側の側壁の内面に接触するまで、放射線遮へい容器32内で移動される(図11参照)。ドア35は、シール装置40Cがこの側壁に押し付けられた後で開けられる。
手摺取り外し装置45は、支持部材42の上端部に取り付けられたスライド機構45B、スライド機構45Bに設置された伸縮管45A及び伸縮管45Aの先端部に取り付けられた2つの作業アーム45Cを有する。把持具(図示せず)が一つの作業アーム45Cの先端に取り付けられ、カッタ(パイプカッタ)が他の作業アーム45Cの先端に取り付けられる。これらの作業アーム45Cは、多関節を有し、上下左右に自由に曲げられる。作業アーム45Cは、例えば、特開2011−106529号公報に記載されて互いに連結された複数のアクチュエータ200’で構成される。
ドア40Bが開いて隔離チャンバー40内の空間40Dが原子炉ウェル25に連通される。スライド機構45Bの移動により伸縮管45Aが貫通孔43内に挿入され、さらに、伸縮管45Aが原子炉ウェル25に向かって伸ばされる。格納容器ヘッド18に取り付けられた手摺31は一つの作業アーム45Cの把持具で掴まれ、他の作業アーム45Cのカッタで切断する(図12参照)。上記の把持具で把持された手摺31の切断片は、スライド機構45B及び伸縮管45Aの移動により、隔離チャンバー40内に移動され、隔離チャンバー40内に収納される。このようにして、手摺31が順次切断される。手摺31がすべて除去された後、手摺取り外し装置45の作業アーム45Cが隔離チャンバー40内に収納され、ドア40B及び35が閉じられる。手摺取り外し装置45及び手摺31の切断片を収納した隔離チャンバー40が、クローラクレーンに吊り下げられて開口部36Aを通して放射線遮へい容器32から地上に搬送される。
作業アーム45Cが取り付けられる伸縮管45Aの先端部にカメラ(図示せず)が取り付けられ、このカメラにより原子炉ウェル25内での作業(例えば、手摺31の切断)が撮影される。カメラで撮影された映像は、原子炉建屋23の運転床、若しくは別建屋に設置された運転操作室のモニタに送信され、作業員により監視される。このカメラは、後述のステップS4及びS5で用いられる除染装置46及び遮へい体搬送装置47の各伸縮管45Aの先端部にも取り付けられる。
原子炉ウェル内を除染する(ステップS4)。内部に除染装置46が収納された別の隔離チャンバー40が、ステップS2の工程と同様に、開口部36Aを通して放射線遮へい容器32内に搬入され、その後に、ドア34が閉じられる。この隔離チャンバー40のシール装置40Cが放射線遮へい容器32の原子炉ウェル25側の側壁の内面に接触される(図13参照)。ドア35は、シール装置40Cがこの側壁に押し付けらた後に開けられる。
除染装置46は、手摺取り外し装置45と同様に、支持部材42の上端部に取り付けられたスライド機構45B、伸縮管45A及び作業アーム45Cを有する。噴射ノズル46Aが作業アーム45Cの先端に取り付けられる。
ドア40Bが開いて隔離チャンバー40内の空間40Dが原子炉ウェル25に連通される。スライド機構45B及び伸縮管45Aが原子炉ウェル25に向かって移動することにより、作業アーム45C及び噴射ノズル46Aが原子炉ウェル25内で格納容器ヘッド18とシールドプラグ28の間に挿入される。噴射ノズル46Aから洗浄水が噴射され、例えば、シールドプラグ28の下面の除染が実施される(図14参照)。洗浄水は、伸縮管45A及び作業アーム45Cに沿って設置された給水ホース(図示せず)により供給される。この給水ホースは、隔離チャンバー40内から放射線遮へい容器32の外部へと伸びており、補給水系統に接続される。伸縮管45Aを伸縮させて作業アーム45Cを上下左右に曲げて格納容器ヘッド18の外面、及びスロットルプラグ29A及び29Bの各内面の除染が行われる。原子炉ウェル25における除染が終了した後、除染装置46の作業アーム45C及び噴射ノズル46Aが隔離チャンバー40内に収納され、ドア40B及び35が閉じられる。除染装置46を収納した隔離チャンバー40が、クローラクレーンに吊り下げられて開口部36Aを通して放射線遮へい容器32から地上に搬送される。
除染時に噴射ノズル46Aからシールドプラグ28の下面に向かって噴射されて落下した洗浄水は、作業アーム45Cに取り付けられた洗浄水受け皿(図示せず)に受けられて洗浄水受け皿に接続された排水ホースを通って隔離チャンバー40内に設けられた排水タンク(図示せず)内に蓄えられる。格納容器ヘッド18の外面、スロットルプラグ29A及び29Bの各内面の除染に用いられた洗浄水は、洗浄水受け皿で受けることができなく、原子炉ウェル25内でバッフルプレート76の上面に落下する。バッフルプレート76の上面に落下した洗浄水は、隔離チャンバー40の排水タンクに接続されるポンプ(図示せず)を駆動してこのポンプに接続された排水ホース(図示せず)で吸引し、排水タンク内に蓄えられる。排水タンク内に蓄えられた水も、隔離チャンバー40と共に地上に搬送される。
原子炉ウェル内に第1放射線遮へい体を設置する(ステップS5)。内部に遮へい体搬送装置47及び折りたたまれた遮へい袋48が収納された別の隔離チャンバー40が、ステップS2の工程と同様に、開口部36Aを通して放射線遮へい容器32内に搬入され、その後に、ドア34が閉じられる。遮へい袋48は、伸縮特性を持つシートと強度を保つ繊維から構成される複合シートで作られた袋であり、折り畳んである。このシートは、必要に応じて高強度、高弾性、高延性のある繊維を組み込んだものでも良い。遮へい袋48は、伸縮性のある剛性ゴムで作ってもよい。この隔離チャンバー40のシール装置40Cが放射線遮へい容器32の原子炉ウェル25側の側壁の内面に接触される(図15参照)。ドア35は、シール装置40Cがこの側壁に押し付けられた後に開けられる。
遮へい体搬送装置47は、手摺取り外し装置45と同様に、支持部材42の上端部に取り付けられたスライド機構45B、伸縮管45A及び作業アーム45Cを有する。掴み具47Aが作業アーム45Cの先端に取り付けられる。
ドア40Bが開いて隔離チャンバー40内の空間40Dが原子炉ウェル25に連通される。空間40D内で、掴み具47Aが空間40D内に存在する一つの遮へい袋48を掴む。スライド機構45B及び伸縮管45Aが原子炉ウェル25に向かって移動することにより、作業アーム45C、及び遮へい袋48を掴んでいる掴み具47Aが原子炉ウェル25内で格納容器ヘッド18とシールドプラグ28の間に挿入される。掴み具47Aに掴まれた遮へい袋48が、格納容器ヘッド18の上方で原子炉ウェル25内の所定の位置まで移動される(図16参照)。その後、伸縮管45A及び作業アーム45Cに沿って設置された給水ホース(図示せず)が遮へい袋48に設けられた逆止弁に接続され、給水ホースで供給される水が逆止弁付きのワンタッチカプラを介して遮へい袋48内に供給される。遮へい袋48は、水の供給により膨張し、格納容器ヘッド18の一部を覆って格納容器ヘッド18とシールドプラグ28の間に配置される(図17参照)。
作業アーム45Cに沿って設置された給水ホースがその逆止弁付きのワンタッチカプラから取り外され、スライド機構45B及び伸縮管45Aの移動により掴み具47Aが隔離チャンバー40内の空間40Dに戻される。ここで、掴み具47Aは他の遮へい袋48を掴み、再び、原子炉ウェル25内の所定も位置まで移動して遮へい袋48を所定の位置まで移送する。この遮へい袋48内にも水が供給され、遮へい袋48は膨張する。このように、必要な個数の遮へい袋48が原子炉ウェル25内に移送されて水により膨張されることにより、格納容器ヘッド18は、格納容器ヘッド18とシールドプラグ28の間に配置された、水で膨張した複数の遮へい袋48で覆われる(図18参照)。内部に水が充填されたこれらの遮へい袋48は、放射線遮へい体(第1放射線遮へい体)となる。
スロットルプラグ29Aに貫通孔43が形成されているので、隔離チャンバー40内の遮へい体搬送装置47を用いて、DSP26内に設置した放射線遮へい容器32から貫通孔43を通して格納容器ヘッド18とシールドプラグ28の間に容易に移送することができる。このため、格納容器ヘッド18を覆う、水を充填した遮へい袋48、すなわち第1放射線遮へい体の設置を容易に行うことができる。
内部に水が充填されたこれらの遮へい袋48を格納容器ヘッド18とシールドプラグ28の間に配置することにより、格納容器ヘッド18の下方からの放射線を水が充填されたこれらの遮へい袋48で遮へいすることができる。この結果、汚染された原子炉ウェル内の除染及び遮蔽体設置作業を機器仮置きプール側からアクセスすることで原子炉ウェル内からの放射性物質の拡散及び線量の漏えいを機器仮置きプールに設置した放射線遮へい容器で抑えることができて、運転床に直接放射性ダストと線量の漏えいが生じることを防止できる。また、後述するように、シールドプラグ28を除去した場合においても、運転床24上での線量を低減することができる。また、原子炉ウェル25内に水が充填されたそれらの遮へい袋48が配置されるため、原子炉ウェル25内での空気の流れが阻害され、放射性物質の拡散を防止することができる。
原子炉ウェル25内への水が充填された所定数の遮へい袋の設置が終了した後、遮へい体搬送装置47の作業アーム45C及び掴み具47Aが隔離チャンバー40内に収納され、ドア40B及び35が閉じられる。遮へい体搬送装置47を収納した隔離チャンバー40が、クローラクレーンに吊り下げられて開口部36Aを通して放射線遮へい容器32から地上に搬送される。
なお、ステップS1〜S6の各工程を実施する間、原子炉ウェル25を封鎖しているシールドプラグ28の上面が養生シート38で覆われている。この養生シート38はシールドプラグ28の間からの放射性核種の漏洩を抑制している。
隔離ハウスを原子炉建屋の運転床上に設置する(ステップS6)。クローラクレーンを用いて隔離ハウス49を原子炉建屋23の運転床24上まで搬送し、この隔離ハウス49を運転床24上に設置する(図19参照)。隔離ハウス49は、DSP26、すなわち、放射線遮へい容器32及び原子炉ウェル25を覆っている。隔離ハウス49の側壁には、隔離ハウス49内外への出入口となる開口部(図示せず)が形成され、この開口部の開閉を行うドア(図示せず)が移動可能に取り付けられる。作業員は、隔離ハウス49の側壁に形成された、ドアが開けられたその開口部を通して運転床24上から隔離ハウス49内の空間53に入ることができる。走行台車及び横行台車を含む天井クレーン50が、隔離ハウス49内の空間53内で天井付近に設置されるガイドレール51上に移動可能に設置される。天井クレーン50の横行台車には、掴み具52に取り付けられたワイヤー56の巻き取り及び巻き戻しを行う回転ドラム(図示せず)が取り付けられる。
以上により、原子炉圧力容器を開放する方法における準備作業の各工程が終了する。次に、原子炉圧力容器を開放する方法における原子炉開放作業について説明する。
シールドプラグを取り外す(ステップS7)。環状の隔離フィルム収納容器73が、隔離ハウス49内で、スロットルプラグ29A及びシールドプラグ28を取り囲むように、放射線遮へい容器32、運転床24及びスロットルプラグ29B上に配置される。隔離フィルム収納容器73から取り出された隔離フィルム54が、スロットルプラグ29A及びシールドプラグ28の上方を覆って配置される。天井クレーン50の掴み具52は、隔離フィルム54の上方から一つのシールドプラグ28に取り付けられた吊り具(図示せず)を掴む(図19参照)。ワイヤー56を巻き取ってシールドプラグ28を所定の位置まで吊り上げる(図20参照)。そして、吊り上げたシールドプラグ28を隔離フィルム54で包み込み、包み込んで絞った図20に示すXの位置で隔離フィルム54を溶着させ、溶着した部分で隔離フィルム54を切断する。
その後、天井クレーン50を移動させ、隔離フィルム54で包み込んだシールドプラグ28を、隔離ハウス49内で、放射線遮へい容器32に取り付けられた放射線遮へい板33上に置かれた、放射線遮へい材で作られた搬出容器55内に収納される(図21参照)。シールドプラグ28を収納した搬出容器55は、ドアが開いた前述の開口部を通して運転床24上に搬出され、さらに、クローラクレーンを用いて地上に搬送され、さらに、所定の保管場所まで搬送される。残りのシールドプラグ28も同様に搬送される。
スロットルプラグを取り外す(ステップS8)。全てのシールドプラグ28が取り外されているが、格納容器ヘッド18が、水が充填された遮へい袋48で覆われているため、格納容器ヘッド18の下方からの放射線は、水が充填された遮へい袋48で遮へいされ、隔離ハウス49内の空間53に到達しない。隔離フィルム収納容器73から取り出された隔離フィルム54が、スロットルプラグ29A、及び原子炉ウェル25内の、水が充填された遮へい袋48の上方を覆って配置される。天井クレーン50の掴み具52は、隔離フィルム54の上方から一つのスロットルプラグ29Aに取り付けられた吊り具(図示せず)を掴む(図22参照)。ワイヤー56を巻き取ってスロットルプラグ29Aを所定の位置まで吊り上げ、吊り上げたスロットルプラグ29Aを隔離フィルム54で包み込み、シールドプラグ28と同様に、包み込んで絞った位置で隔離フィルム54を溶着させ、溶着した部分で隔離フィルム54を切断する(図23参照)。
そして、天井クレーン50を移動させ、隔離フィルム54で包み込んだシールドプラグ28を、隔離ハウス49内に配置された搬出容器55内に収納される(図24参照)。スロットルプラグ29Aを収納した搬出容器55は、シールドプラグ28を収納した搬出容器55と同様に、地上に搬送され、さらに、所定の保管場所まで搬送される。残りのスロットルプラグ29Aも同様に搬送される。
その後、原子炉開放作業の一部である図3に示されていないステップS8A〜S8Dの各工程が実施される。ステップS8A〜S8Eの各工程を以下に説明する。
放射線遮へい容器32の原子炉ウェル25側の側壁を除去する(ステップS8A)。放射線遮へい容器32の原子炉ウェル25側の側壁が、ドア35を取り付けた状態で、放射線遮へい容器32から取り外され、天井クレーン50によって吊り上げられて隔離ハウス49内の空間53に移送される。さらに、この側壁は、隔離ハウス49内から隔離ハウス49外の運転床24上に移送され、地上に搬送される。必要であれば、その側壁は複数の切断片に切断され、切断片ごとに移送される。図25は、上記の側壁が除去された状態を示している。
DSPと原子炉ウェルを連絡する水路の底に形成された突出部を除去する(ステップS8B)。ステップS2で用いられた穿孔装置41が収納された隔離チャンバー40が、クローラクレーンにより地上から運転床24上に搬送され、隔離ハウス49に形成された前述の開口部から隔離ハウス49内に移動される。図25に図示されていないが、隔離チャンバー40は、天井クレーン50に吊り下げられて開放された開口部36Aを通して放射線遮へい容器32内に搬入される。さらに、隔離チャンバー40は、放射線遮へい容器32の底面に沿って原子炉ウェル25に向かって移動し、DSP26と原子炉ウェル25を連絡する水路の底に形成された突出部57付近で停止される。穿孔装置(例えば、ワイヤーソー)41を用いて、格納容器ヘッド18を覆っている、水が充填された遮へい袋48に損傷を与えないようにして、突出部57を切断する。切断された突出部57の複数のブロック(図示せず)は、隔離チャンバー40内の空間40Dに収納される。これらのブロックを収納した隔離チャンバー40は、搬入時とは逆に、開口部36Aを通って隔離ハウス49内に搬入され、さらに、隔離ハウス49外部の運転床24上及び地上へと搬送される。その水路の、突出部57が除去された部分には、図26に示すように、平らな底面57Aが形成される。
突出部57の除去により、後述する搬出入エアロック89の設置(図31参照)が突出部57に邪魔されずに容易になる。このため、搬出入エアロック89を用いて、原子炉圧力容器3内で除去された炉内構造物の放射線遮へい容器32内への搬出ルートを容易に確保することができる。
放射線遮へい容器32の新たな側壁を設置する(ステップS8C)。放射線遮へい容器32と原子炉ウェル25の間の開口部36Bを形成するために、作業ハウス49と開口部の間を移動する2枚のドア64A、64Bがある。また、この2枚のドアによって、後述する作業ハウス49を分割する隔離壁60にも開口部60Aを形成する。この2枚のドア64A、64Bはスロットルプラグの取り外した位置に設定し、円形の原子炉ウエルと角形の機器仮置きプール26の境界となる寸法不連続部に位置しており、ドア64Aとドア64Bの幅寸法は異なる。ドア64Aは、隔離ハウス49の幅寸法となるが、ドア64Bは機器仮置きプールのスロットルプラグ据付幅に相当する。この寸法不連続部の据付は、前述のとおり先にスロットルプラグを取り外したことで、境界面の仕切りとなる2枚のドア64A、64Bの据付が容易となる。図25では、ドア64Bが最上位位置に移動し、ドア64Aが放射線遮へい板33の高さ近くまで移動し開口部36Bを形成している。この機構は、実施する作業に必要な開口部を形成できる利点がある。なお、ドア64A,64Bは、その移動によって、各部屋間に放射性物質が移動しないようにシールされている。
隔離ハウス内に設置されている天井クレーンを除去し、新たに、二基の天井クレーン及び隔離壁を隔離ハウス内に設置する(ステップS8D)。隔離ハウス49内に設置されている天井クレーン50を除去し、新たに、ガイドレール51A及び51Bを隔離ハウス49内で隔離ハウス49の天井付近に設置する。そして、天井クレーン50A及び50Bがガイドレール51A及び51Bの上に設置される(図26参照)。天井クレーン50の除去及び天井クレーン51A及び51Bの設置には、隔離ハウス49内に搬入された走行クレーンが用いられる。天井クレーン50A及び50Bが設置された後、開口部60Aが形成されて開口部60Aの開閉を行うドアが移動可能に取り付けられた隔離壁60が、隔離ハウス49内に搬入され、放射線遮へい容器32の原子炉ウェル25側の端部付近に立てて隔離ハウス49の内面に溶接にて取り付けられる(図26参照)。
隔離壁60の取り付けにより、隔離ハウス49内には二つの空間53A及び53Bが形成される。原子炉ウェル25の真上に形成される空間53Aには、天井クレーン50A及びガイドレール51Aが配置され、放射線遮へい容器32の真上に形成される空間53Bには、天井クレーン50B及びガイドレール51Bが配置される。天井クレーン50Aに取り付けられるワイヤー56Aには掴み具52Aが取り付けられ、天井クレーン50Bに取り付けられるワイヤー56Bには掴み具52Bが取り付けられる。隔離ハウス49の内面に取り付けられた開閉式の隔離シート62が、ドア61よりも空間53B側に配置される。空間53Aの底面を形成する板状の床部材58が隔離ハウス49の下端部に取り付けられる。床部材58には、原子炉ウェル25の内径と同じ大きさの開口部58Aが形成されている。
第2放射線遮へい体を設置する(ステップS9)。プラットフォームを兼ねた放射線遮へい体(第2放射線遮へい体)59が、天井クレーン50Aを用いて、スロットルプラグ29Aとスロットルプラグ29B上を取外した後の原子炉ウエル壁面の階段状の最上段に取り外し可能に設置される(図26参照)。この放射性遮蔽体付きのプラットホーム59は、下面に周方向に移動するレール(図示せず)と駆動台車(図示せず)と駆動台車の下面に吊り部(図示せず)を有し、機器仮置きプール側からその吊り部に各種作業装置(例えば後述する第1筋肉ロボッと204等)を設定することで、原子炉ウエル内での以後の切断、ハンドリング作業等を可能とする。また、中央部は、取り外し可能な内円と外円の2重円を有し、後述する原子炉圧力容器内の調査を実施する場合は、圧力容器ヘッドに貫通孔を設けるドリルの通過用として内円部分を取り外し、原子炉圧力容器内の機器を取り外すための隔離容器を設定するときは、外円を取り外し隔離容器の通過用として使用する。隔離フィルム収納容器73内に収納された開閉式の隔離シート54が、原子炉ウェル25を覆うように設置された第2放射線遮へい体兼用のプラットホーム59を設置後に覆って配置される。第2放射線遮へい体兼用のプラットホーム59は、クローラクレーンにより隔離ハウス49の外部で運転床24上に搬送され、さらに、空間53Bを介して空間53A内に移送される。この第2放射線遮へい体兼用のプラットホーム59は、天井クレーン50Aに吊り下げられて開閉式の隔離シート54の開口部を通って原子炉ウエル壁面最上段の上に置かれ、上記の駆動装置により床部材58の開口部58Aを覆うように設置される。
原子炉ウェル内の機器を取り外し、搬出する(ステップS10)。原子炉ウェル25内に配置されている機器、例えば、原子炉格納容器17の上端に取り付けられて原子炉ウェル25内に配置されている格納容器ヘッド18の取り外し及び搬出を、図26及び図27を用いて説明する。まず、原子炉ウェル内の機器を取り外しし易くするために、遮へい袋48を搬出する(図26参照)。
遮へい袋48の搬出は、遮へい体搬送装置47の搬入出以外はステップS5で説明した遮へい袋48の搬入の逆のステップで行う。遮へい体搬送装置47は、内部に遮へい体搬送装置47及び折りたたまれた遮へい袋48が収納された別の隔離チャンバー40が、ステップS2の工程と同様に、開口部36Aを通して放射線遮へい容器32内に搬入され、その後に、ドア34が閉じられる。この隔離チャンバー40は、放射線遮へい容器32の原子炉ウェル25側の突起部に接触し停止する。遮へい体搬送装置47は、手摺取り外し装置45と同様に、支持部材42の上端部に取り付けられたスライド機構45B、伸縮管45A及び作業アーム45Cを有する。掴み具47Aが作業アーム45Cの先端に取り付けられる。
作業アーム45C、及び遮へい袋48を掴んでいる掴み具47Aが原子炉ウェル25内に挿入される。そして、伸縮管45A及び作業アーム45Cに沿って設置された給水ホース(図示せず)が伸びて遮へい袋48に設けられた逆止機能が解除されたワンタッチカプラに接続され、遮へい袋48内の水が排水される。その後、伸縮管45A及び作業アーム45Cを縮ませて、遮へい袋48を回収する。このステップを、左右の遮へい袋48に順次行い、その後、遮へい袋48を開口部36Aから放射線遮へい容器32外に搬出する。
次に、格納容器ヘッド18の取り外し、搬出ステップを図27を用いて説明する。まず、原子炉ウェル25内に多関節マニピュレータである第1筋肉ロボット204を搬入する。
第1筋肉ロボットは、遮へい体搬送装置47と同様に隔離チャンバー40によって放射線遮へい容器32内の空間37に搬入される。隔離チャンバー40には、昇降分だけ段差を有する先端側に第1筋肉ロボット204を垂下し、第1筋肉ロボット204を原子炉ウェル25内に搬入し、昇降して旋回部79Aに嵌合させる作業アームを有する。旋回部79Aは、第2放射線遮へい体の原子炉ウェル25側裏面を周回する機能を有する。
第1筋肉ロボット204は、そのアーム長を変える伸縮部と、先端姿勢の3次元的に変える姿勢部と、姿勢部の先端に設けられたカメラ(図示せず)及び作業効果器としての切断器とを有する。また、第1筋肉ロボット204は、旋回部79Aと嵌合する取付け部204Aを有し、取付け部204Aにはワイヤーがその長さが可変可能に取りつけられ、そのワイヤー先端には掴み具72Bが取付けられる。
この構成によって、カメラによる監視により運転員は、掴み具72Bが格納容器ヘッド18に設けられたフック等の凸部を掴み、第1筋肉ロボット204を操作し、当該フックを含む範囲を含み任意の範囲を切断できる。
第1筋肉ロボット204を原子炉ウェル25内に設置後、切断回収装置70が収納された隔離チャンバー40と、細断された切断片が収納可能な収納容器206を搬出入する搬入出チャンバー75とを、順次クローラクレーンに吊り下げられて開口部36Aを通して放射線遮へい容器32の空間37に搬入される(図27参照)。
切断回収装置70は、第1筋肉ロボット204で所定の大きさに切断された格納容器ヘッドの切断片を回収するスライド式架台205と、回収された切断片を更に細断する第2筋肉ロボット208と、効率的に細断し、収納容器206に回収できるように第2筋肉ロボットを左右に移動させる水平移動部209と、を有する。
スライド式架台205は、放射線遮へい容器32の開口部36Bに対応する切断回収装置70の位置に設けられた開口部70Bを通して原子炉ウェル25内に搬入出できるスライド部205Aを有する。
第2筋肉ロボット208は、そのアーム長を変える根元側に設けられた伸縮部と、伸縮部に固定された3次元的に姿勢可能な2本の姿勢部と、それぞれの姿勢部の先端に設けられた作業効果器としての図示しない掴み具と切断器と、を有する。
隔離チャンバー40と搬入出チャンバー75は、それぞれの隣接部に設けられた図示しない開閉可能な開口部を有し、例えば収納容器206は、それら開口部を通して両者間に移動できる移動手段206Aを有する。さらに、搬入出チャンバー75は、放射線遮へい容器32の開口部36Aに対応する位置に開閉可能な開口部75Aを有する。
これら構成によって、切断回収装置70は、スライド部205Aで回収されたPCVヘッド18の切断片18Aをさらに細断し、その細断片を掴み収納容器206に収納できる。そして、収納容器206に収納された細断片は、開口部75A及び開口部36を通して天井クレーン50Bによって、隔離ハウス49の空間53Bに移送され、さらに、隔離ハウス49外で運転床24上に搬送され、地上に下される。
上記手順は、シールドプラグを取り外し後の運転床上に隔離ハウスを設置してから格納容器ヘッド18を取り外しを示すものであるが、シールドプラグを取り外す前に格納容器ヘッド18を取り外すことでも良い。このときは装置は、図14に示す原子炉ウエル内の除染装置46と同様の構造で、支持部材42の上端部に取り付けられたスライド機構45B、伸縮管45A及び作業アーム45Cを有する。この装置を用いて、格納容器ヘッド18の手摺取り外しと同様に、格納容器ヘッド18を細かに切断し、切断した片を隔離チャンバー40に引込んで、隔離チャンバー40の中で収納容器に収納し搬出する。収納容器の搬出は、図27に示す搬入出チャンバー75を連結して使用すれば良い。この方法は、後述する保温材も同様である。
収納容器206の搬出方法として、貯水チャンバー301を経由して放射性物質の漏えいを防止する別方法を図42にて説明する。貯水チャンバー301は、中央に仕切りを有し、かつこの仕切りは下面に収納容器206が通過可能な通路を有する。水面は下面の通路よりも上方に位置する。貯水チャンバー301は、収納容器206の搬入口302と搬出口303を有し、搬入口302の上方には揚重機(図示せず)が取り付けられており、搬入口302から搬入した収納容器206を水面下に設けた移動手段206Aに設置することを可能とする。貯水チャンバー301の搬入口302は、細断エリアとして使用する隔離チャンバー40の収納容器206の搬出口に連結され、その間はシール構造にて気密を有する。貯水チャンバー301の搬出口303は、機器仮置きプール内に設置した放射線遮へい容器32の開口部34の下面に位置する。次に収納容器206の搬出手順を説明する。隔離チャンバー40内で細断して細断片を収納した収納容器206は、隔離チャンバー40の上端に位置する第2筋肉ロボット208のレールに沿って配置された揚重機(図示せず)により吊上げて、貯水チャンバー301側の揚重機(図示せず)に受け渡す。その後水面下に吊り降ろし、下面に備える移動手段206Aに設置し面に有する通路を通過して搬出口303側に移動する。搬出口303の上方に、隔離ハウスからの天井クレーン50Bを配置し、吊り上げにより水面上に引き上げ搬出する。これにより、収納容器206を搬出する際、隔離チャンバー75内に存在する放射性物質は水面上で拡散を抑制され、貯水チャンバー301の搬出口303から放射性遮へい容器32内に流出することを防止できる。
次に、保温材30の取り外し、搬出を行う(図28)。その詳細は、PCVヘッド18の取り外し、搬出と同様であり、格納容器ヘッド18を保温材30に言い換えることで説明できるので、詳細な説明を省略する。なお、4Aは、保温材30の切断片である。
上記した格納容器ヘッド18及び保温材30の取り出し、搬出を第2放射線遮へい体59を設けた後に実施した。一方、解体のアプローチを放射線遮へい容器内32側から行う、又は第1筋肉ロボットをよりコンパクトに構成する等によって、シールドプラグ28を維持したままで行ってもよい。その後、以後の作業のために、第2放射線遮へい体59を設置してもよい。なお、収納容器206の搬出方法として、搬入出チャンバー75の替わりに前述した貯水チャンバー301を同様に使用しても良い。
上記より格納容器ヘッド18及び保温材30は汚染物であり、特に保温材30は複雑形状をしているため除染は難しく、高い放射線当量率を有している。これらの構造物を原子炉ウエルから運転床上に引上げることは運転床上の作業環境を著しく悪化させるため、他の並行した作業に支障を与える。それに対して、原子炉ウエル内及び機器仮置きプール側にて原子炉ウエル内機器は切断搬出し、遮蔽付きに搬出容器に収納して搬出することは、運転床上での放射線当量率の増加及び放射性ダストの拡散を防止し、作業員が接近できる作業環境の維持が期待できる。
以上により、ステップS10の原子炉ウェル内の機器の取り外し及び搬出が終了する。
図27には、原子炉ウェル内の機器を取り外し、搬出するステップS10の他に、燃料取出し装置201によって、使用済み燃料棒203を燃料貯蔵プール27から、例えば原子炉建屋23外の共用プールに移送するプール燃料取出し工程(ステップSF1)が記載されている。使用済み燃料棒203は、燃料取出し装置201の伸縮管201Bによって燃料ラック202から取出し、燃料取出し装置の本体201Aの移動機能によって共用プールに移送される。
プール燃料取出し工程は、格納容器ヘッド18の取出し、搬出時だけでなく、図3に示すステップS1から長期間、例えば1年間、原子炉圧力容器の開放作業と並行して行われている。従って、本実施例では、両作業を順次行う従来方法に比べて、大幅に全体の作業時間を短縮できる。
次に、バッフルプレート76の取り外し、及び圧力容器支持体及び放射線遮へい板79の取り付けを実施する(ステップS11)。本工程は、プール燃料取出し作業が終了していない場合、格納容器ヘッド及び保温材取出しと同様に並行して実施する。バッフルプレート76の取り外す理由は、バッフルプレート76が圧力容器4を支える能力がないためである。今後の圧力容器4内での作業を考慮し、支持能力の高い支持梁部材80を敷設する。図29を用いてステップS11を説明する。
このステップS11の工程では、ステップS10の原子炉ウェル内の機器の取り外し及び搬出に用いられた隔離チャンバー40内の切断回収装置70,搬入出チャンバー75、収納容器206等を用いる。
図29に示すように、放射線遮へいプレート79及び支持梁部材80を搬入出チャンバー75を介して隔離チャンバー40内のスライド式架台205に載置される。その後、隔離チャンバー40内のドア64を開いてスライド部205Aを原子力ウェル25内に搬入し、掴み具72Bで放射線遮へいプレート79を掴み、原子炉ウェル25内のバッフルプレート76の上方まで移動させる。そして、この放射線遮へいプレート79はバッフルプレート76の上に置かれる。隔離チャンバー40内の支持梁部材80も、同様に掴み具72Bで掴まれて同様にバッフルプレート76上に置かれる。但し、1か所のバッフルプレート76には何も載置されていなく、それに隣接するバッフルプレート76には放射線遮へいプレート79のみが載置されている。
何も載置されていないバッフルプレート76が掴み具72Bに把持されて取り外される。取り外された各バッフルプレート76は、隔離チャンバー40、搬入出チャンバー75を介して搬出される。次に、隣接するバッフルプレート76上の放射線遮へいプレート79が、掴み具72Bに把持されて原子炉圧力容器3と原子炉格納容器17の間の領域まで下降され、そして、原子炉圧力容器3及び原子炉格納容器17に取り付けられる。次に、何も載置しなくなったバッフルプレート76に隣接するバッフルプレート76上に設置されている支持梁部材80が、掴み具72Bに把持されて下降され、放射線遮へいプレート79の上方で原子炉圧力容器3及び生体遮へい体100に設置される。この時の状態が、図29の右側に存在する放射線遮へいプレート79と支持梁部材80である。次々と何も載置しなくなったバッフルプレート76に対して、上記処理を行う。最後に不足する放射線遮へいプレート79、支持梁部材80は、スライド部205Aから調達する。なお、取り外したバッフルプレート等の廃棄物を収納する収納容器206等の搬出方法として、搬入出チャンバー75の替わりに前述した貯水チャンバー301を同様に使用しても良い。
原子炉圧力容器3と原子炉格納容器17の間の領域に配置されて原子炉圧力容器3及び原子炉格納容器17に取り付けられた複数の放射線遮へいプレート79は、原子炉圧力容器3と原子炉格納容器17の間の領域を封鎖しており、原子炉格納容器17から原子炉ウェル25に向かう放射線を遮へいし、さらに、原子炉格納容器17から原子炉ウェル25に向かう放射性ダストの上昇を防止する。原子炉圧力容器3と生体遮へい体100の間の領域に配置されて原子炉圧力容器3及び生体遮へい体100に取り付けられた複数の支持梁部材80は、原子炉圧力容器3と生体遮へい体100の間の領域を封鎖しており、原子炉圧力容器3を生体遮へい体100から支持する。これは原子炉圧力容器3を支持するペデスタル15のコンクリート支持体の強度に万一支障があった場合の対応として、原子炉圧力容器3の下方への落下防止を考慮したものである。
原子炉格納容器内部を調査する(ステップS11.5)。本工程は、プール燃料取出し作業が終了していない場合、格納容器ヘッド及び保温材取出しと同様に並行して実施する。図30を用いて原子炉格納容器内部を調査する調査工程を説明する。本調査工程では、圧力容器ヘッド4に貫通孔を開け、そこからカメラを挿入し原子炉格納容器内部の状態を調査する。そのために、まず、ドリル210Aを内蔵したヘッド調査治具210を、搬入出チャンバー75を通して隔離チャンバー40に移送し、スライド式架台205のスライド部205Aを利用して原子炉ウェル25に搬入する。その後、第1筋肉ロボット204や掴み具72Bを利用して、圧力容器ヘッド4の頭部に設置する。モータ210Bを駆動し、ヘッド調査治具210の先端側の内筒に内蔵されたドリル工具210Aを伸ばしながら回転させ、図30に示すように圧力容器ヘッド4に貫通孔4Bをあける。
その後、一度ヘッド調査治具210を隔離ハウスの49に戻し、新たにドリル工具210Aの替りにカメラを取り付け、再度ドリル工具のときと同様にして、圧力容器ヘッド4の頭部に設置する。モータ210Bを駆動してカメラを貫通孔4Bから圧力容器内部に挿入し、原子力圧力容器3内、特に圧力容器ヘッド4付近及び蒸気乾燥器12の状態を把握する。蒸気乾燥器12の状態の把握によって蒸気乾燥器12の取出し作業に反映することができる。
また、蒸気乾燥器12の状態がしっかりしているならば、同様にして蒸気乾燥器12に貫通孔をあけ、同様に気水分離機11の状態を把握し、気水分離機の取出し作業に反映することができる。
原子炉格納容器内部を調査する調査工程に別方法を図43にて説明する。本調査工程では、圧力容器ヘッド4に貫通孔を開け、そこからカメラを挿入し原子炉格納容器内部の状態を調査する。そのために、まず、ドリル210Aを内蔵したヘッド調査治具210を、遮へいを有する調査容器310に収納し、隔離ハウス49を通して第2放射線遮へい体兼用のプラットホーム59の上面に設定する。そのときの手順として調査容器310は一旦隔離フィルム54の上面に設置し、調査容器310を下方から包み込んでから、調査容器310の上面で溶断・溶着することで隔離フィルム54の下面に設定する。その後、調査容器310内に有する作業装置(図示せず)により第2放射線遮へい体兼用のプラットホーム59の中央に位置する内円部分を取り外し、調査装置310の下面に第2放射線遮へい体兼用のプラットホーム59を貫通するドリルを通過させる通路を形成する。モータ210Bを駆動し、ヘッド調査治具210の先端側の内筒に内蔵されたドリル工具210Aを伸ばしながら回転させ、図43に示すように圧力容器ヘッド4に貫通孔4Bをあける。
その後、一度ヘッド調査治具210を調査容器310に戻し、新たにドリル工具210Aの替りにカメラを取り付け、再度ドリル工具のときと同様にして、圧力容器ヘッド4の頭部に設置する。モータ210Bを駆動してカメラを貫通孔4Bから圧力容器内部に挿入し、原子力圧力容器3内、特に圧力容器ヘッド4付近及び蒸気乾燥器12の状態を把握する。蒸気乾燥器12の状態の把握によって蒸気乾燥器12の取出し作業に反映することができる。
調査方法としては、次に図31で説明する隔離容器の状態において、昇降装置83よってヘッド調査治具を垂下し、圧力容器ヘッド4に貫通孔を設けて、カメラによって圧力容器ヘッド4内部を調査してもよい。
隔離容器を設置する(ステップS12)。ステップS11の工程が終了した後、隔離容器81が、原子炉ウェル25から空間53Aに亘って配置される(図31参照)。隔離容器81の構成を、図31を用いて説明する。隔離容器81は上部円筒部材81A、中間円筒部材81B及び下部円筒部材81Cを有し、上部円筒部材81Aの上端が円板であるカバー部材81Dで封鎖されている。内部に遮へい袋86が設置された下部円筒部材81Cが原子炉ウェル25内において支持梁部材80上に設置される。内部に遮へい袋85が設置された中間円筒部材81Bが、下部円筒部材81Cの上端に置かれ、下部円筒部材81Cに結合される。内部に保持部材82及び支持部材82Aが配置された、カバー部材81Dで封鎖された上部円筒部材81Aが、中間円筒部材81Bの上端に置かれ、中間円筒部材81Bに結合される。中間円筒部材81Bが通る開口部が形成された放射線遮へい板91が床部材58上に設置され、この放射線遮へい板91は中間円筒部材81Bの部分を除いて床部材58に形成された開口部58Aを覆っている。なお、第2放射線遮へい体59の中間部は、開口部58Aの外径よりやや広い径を有する。
さらに、搬出入エアロック89が原子炉ウェル25内に配置され、搬出入エアロック89の一端が放射線遮へい容器32の側壁63に取り付けられる。搬出入エアロック89の、放射線遮へい容器32側の一端には、開閉扉89Aが取り付けられる。搬出入エアロック89の他端が下部円筒部材81Cに取り付けられる。搬出入エアロック89の、下部円筒部材81C側の他端部には、開閉扉89Bが取り付けられる。搬出入エアロック89内の空間89Cは、開閉扉89Aを開くことにより放射線遮へい容器32内と連絡され、開閉扉89Bを開くことにより下部円筒部材81C内と連絡される。
搬出入エアロック90が空間53A内で放射線遮へい板91上に配置され、搬出入エアロック90の一端が中間円筒部材81Bに取り付けられる。搬出入エアロック90の、中間円筒部材81B側の一端には、開閉扉90Aが取り付けられる。搬出入エアロック90の他端部には、開閉扉89Bが取り付けられる。搬出入エアロック90内の空間90Cは、開閉扉90Aを開くことにより中間円筒部材81B内と連絡され、開閉扉90Bを開くことにより隔離ハウス49内の空間53Aと連絡される。
搬出入エアロック89の内面の頂部付近に散水装置(図示せず)が設置され、搬出入エアロック90の内面の頂部付近に散水装置(図示せず)が設置される。さらに、搬出入エアロック89には空間89C内の空気を入れ替える空気入替装置(図示せず)が設置され、搬出入エアロック90にも空間90C内の空気を入れ替える空気入替装置(図示せず)が設置される。
カバー部材81Dで封鎖された上部円筒部材81A、中間円筒部材81B及び下部円筒部材81Cが上記のように結合されて、さらに搬出入エアロック89の開閉扉89A及び搬出入エアロック90の開閉扉90Aがそれぞれ取り付けられたとき、上部円筒部材81A、中間円筒部材81B及び下部円筒部材81Cが結合されて形成される隔離容器81内には、密封空間93が形成される。
中間円筒部材81B及び下部円筒部材81Cのそれぞれは、遮へい袋85及び86内に水が充填されていない状態で原子炉ウェル25及び空間53Aに搬入される。遮へい袋85及び86内に水が充填されていないために中間円筒部材81B及び下部円筒部材81Cは軽くなり、中間円筒部材81B及び下部円筒部材81Cの原子炉ウェル25及び空間53Aへの搬入は容易である。遮へい袋85及び86内への水の供給は、隔離容器81が原子炉ウェル25及び空間53A内で組み立てられた後に、隔離ハウス49の外部に存在する補給水系統に接続された給水ホースを用いて行われる。内部に水が充填された遮へい袋85及び86のそれぞれは、放射線遮へい体である。内部に水が充填された遮へい袋85は隔離容器81内で搬出入エアロック90の開閉扉90Aに対向するように配置され、内部に水が充填された遮へい袋86は隔離容器81内で搬出入エアロック89の開閉扉89Bに対向して圧力容器ヘッド4を覆って配置される。内部に水が充填された遮へい袋85及び86のそれぞれには、遮へい袋48と同様に、貫通孔85A及び86Aがそれぞれ形成されている。この貫通孔85Aは遮へい袋85の部材で取り囲まれており、貫通孔85A内には遮へい袋85内の水が流出しない。貫通孔85Aは水が充填されて膨張した遮へい袋85によって封鎖されている。遮へい袋86の貫通孔86Aも同様な構造になっている。
棒状の支持部材82Aが水平方向に配置されて上部円筒部材81Aの内面に取り付けられる。保持部材82は支持部材82Aに設置されている。隔離シート84が、上部円筒部材81Aの下端に取り付けられ、上部円筒部材81A内の空間を中間円筒部材81B内の空間から隔離している。昇降装置(例えば、ホイスト)83がワイヤー128により保持部材82に保持される。このワイヤー128は隔離シート84を貫通しており、ワイヤー128と隔離シート84の間は気密性を保つために、シールされている。この隔離シートは、蛇腹形状に折りたたまれたもので、ワイヤーの下降、上昇に応じて伸縮できる構造としている。
圧力容器ヘッドを取り外す(ステップS13)。圧力容器ヘッド4は複数のボルトによって原子炉圧力容器3のフランジに取り付けられているので、圧力容器ヘッド4を原子炉圧力容器3から外すためにはそれらのボルトを取り外す必要がある。それらのボルトの取り外しの概略を説明する。これらのボルトの取り外しには、スタットボルトテンショナーが用いられる。図示されていないが、スタットボルトテンショナー、半割の一対のガイドレール及びマニピュレータ装置(図示せず)を収納した隔離チャンバー40が、開口部36A及び放射線遮へい容器32内の空間37を介して、開閉扉89Aを開けることにより、搬出入エアロック89内の空間89Cに搬入される。このとき、開閉扉89Bは閉じている。マニピュレータ装置は、実質的には、ステップS5で用いられる遮へい体搬送装置47と同じ構成を有する。マニピュレータ装置は、支持部材42の上端部に取り付けられたスライド機構45B、伸縮管45A及び多関節の作業アーム45Cを有する。掴み具47Aが作業アーム45Cの先端に取り付けられる。
掴み具47Aで隔離チャンバー40内の半割の一つのガイドレールを掴んだ後、開閉扉89Bを開いて、スライド機構45B及び伸縮管45Aを下部円筒部材81C内で水が充填された遮へい袋86の下方に向かって移動される。作業アーム45Cを曲げて伸ばし、掴み具47Aに掴まれた半割のガイドレールを、その遮へい袋86の下方であって圧力容器ヘッド4のフランジよりも上方で下部円筒部材81Cの内面と圧力容器ヘッド4の外面の間であって開閉扉89Bとは180°反対側の位置に配置する。この半割のガイドレールの下面には複数の支持部材が取り付けられており、ガイドレールはこれらの支持部材によって支持梁部材80上に支持される。もう一つの半割のガイドレールも、マニピュレータ装置により、その遮へい袋86の下方で下部円筒部材81Cの内面と圧力容器ヘッド4の外面の間であって開閉扉89B側の位置に配置される。二つの半割のガイドレールは互いに連結される。マニピュレータ装置を用いて、ガイドレールにはスタットボルトテンショナーの保持部を有する移動装置が取り付けられ、この保持部にスタットボルトテンショナーが取り付けられる。移動装置の駆動によりスタットボルトテンショナーが圧力容器ヘッド4と原子炉圧力容器3を結合しているボルトの上方に移送され、このボルトがスタットボルトテンショナーにより取り外される。このようにして、圧力容器ヘッド4と原子炉圧力容器3を結合しているボルトが順次取り外される。そして、圧力容器ヘッド4と原子炉圧力容器3の結合が解除される。取り外された各ボルトは、マニピュレータ装置により隔離チャンバー40内に回収される。その後、スライド機構45B及び伸縮管45Aが縮められ、掴み具47Aも隔離チャンバー40内に収納される。
開閉扉89Bが閉じられ、隔離チャンバー40に設けられたドアも閉じられる。搬出入エアロック89の空気入替装置により、空間89C内の空気を外部に排出して外部の清浄な空気を空間89C内に供給する。空気入替装置は浄化装置を含んでおり、空間89Cから排出される空気に含まれた放射性物質がその浄化装置で除去される。搬出入エアロック90内の散水装置から隔離チャンバー40に水を掛け、付着している放射性物質を洗い流す。この水は搬出入エアロック89に設けられた排水装置に排出される。そして、その隔離チャンバー40は、開閉扉89Aを開いて放射線遮へい容器32内の空間37に移送され、開閉扉89Aを閉じた後、開口部36A等を通って隔離ハウス49外に搬送される。
圧力容器ヘッド4と原子炉圧力容器3を結合するボルトを取り外している間に、掴み具(図示せず)が昇降装置83に巻き付けられたワイヤー87の先端に取り付けられる。ワイヤー87は水が充填された遮へい袋85の貫通孔85A及び水が充填された遮へい袋86の貫通孔86Aを通って圧力容器ヘッド4の頂部付近に達しており、ワイヤー87に取り付けられた掴み具が圧力容器ヘッド4の頂部に取り付けられた吊り具88を把持する。
圧力容器ヘッド4と原子炉圧力容器3の結合が解除された後、昇降装置83を駆動してワイヤー87を巻き取ることによって、圧力容器ヘッド4が、上昇して水が充填された遮へい袋86の貫通孔86A内に挿入される(図32参照)。圧力容器ヘッド4が貫通孔86A内を上昇するに伴って、遮へい袋86内で圧力容器ヘッド4よりも上方に存在する水が、遮へい袋86内で圧力容器ヘッド4よりも下方に移動する。このため、圧力容器ヘッド4が、水が充填された遮へい袋86の貫通孔86A内を容易に上昇することができ、遮へい袋86の下端の位置が蒸気乾燥器12の上端付近まで下降する。水が充填された遮へい袋86は、蒸気乾燥器12よりも下方の原子炉圧力容器3内からの放射線を遮へいする。
圧力容器ヘッド4が密封空間93内で水が充填されて遮へい袋85と水が充填されて遮へい袋86の間まで上昇したとき、圧力容器ヘッド4の内面(下面)の除染が除染装置71によって実施される(図33参照)。除染装置71は、遮へい体搬送装置47のように伸縮管及び作業アームを有し、その先端に掴み具47Aの替りに噴射ノズルを有する(図16参照)。遮へい体搬送装置47と同様に、除染装置71を収納した隔離チャンバー40が、開口部36Aを介して放射線遮へい容器32内に搬入され、さらに、開閉扉89Aを開いて搬出入エアロック89内の空間89C内に移動される。開閉扉89Aが閉められ、開閉扉89Bの一部である上端部が開けられる。除染装置71は、の伸縮管が空間93内で圧力容器ヘッド4と遮へい袋86の間に挿入される。作業アームを操作して噴射ノズルを圧力容器ヘッド4の内面に対向させ、噴射ノズルから水を噴射させる。噴射ノズルから水を噴射しながら伸縮管及び作業アームを操作して圧力容器ヘッド4の内面の除染を実施する(図33参照)。圧力容器ヘッド4の内面に当たって落下する水は、作業アームに取り付けられた洗浄水受け皿(図示せず)に受けられて、前述したように、隔離チャンバー40内の排水タンクに回収される。なお、圧力容器ヘッド4の除染は、遮へい袋86の下面で実施しても良い。この場合は、圧力容器ヘッド4の下面がドライヤ12の上端よりも除染装置71を挿入可能な空間を考慮した上方位置に引上げたときに、その下面に作業アームを設定し噴射ノズルで除染する。その後、遮へい袋86を通過して引上げる。圧力容器ヘッド4の内面の除染が終了した後、伸縮管、作業アーム及び噴射ノズルが隔離チャンバー40内に収納され、開閉扉89Bが完全に閉じられる。隔離チャンバー40は、搬出入エアロック89内の空間89Cから開口部36Aを通って地上に搬送される。
遮へい袋85内の水の一部を放出して内部に水が存在する状態で遮へい袋85の厚みを薄くする。昇降装置83を駆動して圧力容器ヘッド4を開閉扉90Aに対向する位置まで上昇させる(図34参照)。その後、開閉扉90Aを開いて圧力容器ヘッド4を空間89C内に移送して開閉扉89Aを閉じる。開閉扉90Aを開くことにより空間89Cに放射性物質が流入する可能性が有る。このため、搬出入エアロック90の空気入替装置により、空間90C内の空気を外部に排出して外部の清浄な空気を空間90C内に供給する。空気入替装置は浄化装置を含んでおり、空間90Cから排出される空気に含まれた放射性物質がその浄化装置で除去される。圧力容器ヘッド4は空間90Cに搬入される前に除染されているが、空間90Cに搬入された後、再度、搬出入エアロック90内の散水装置から圧力容器ヘッド4に水を掛け、付着している放射性物質を洗い流す。この水は、搬出入エアロック90に設けられた排水装置に排出される。そして、開閉扉90Bを開いて圧力容器ヘッド4を空間53A内に移送し、この圧力容器ヘッド4は所定の保管場所に保管される。開閉扉90Bは閉じられる。
本実施例では、原子炉ウェル25及び隔離ハウス49内の空間53Aに、圧力容器ヘッド4を覆うように隔離容器81を配置し、圧力容器ヘッド4の取り外しによる原子炉の開放を内部容積の小さい隔離容器81内で行うため、圧力容器ヘッド4が取り外された原子炉圧力容器3内から放射性物質が放出されたとしても、この放射性物質により汚染される領域は、隔離容器81内に制限され、容積の大きな原子炉ウェル25及び隔離ハウス49内がその放射性物質により汚染されることを防止することができる。
隔離容器81内には、水が充填された遮へい袋85及び86が配置されるため、原子炉圧力容器3内から放射される放射線を遮へい袋85及び86によって遮へいすることができる。このため、隔離ハウス49内の線量、例えば、空間53A内の線量は、原子炉圧力容器3内からの放射線の影響を受けず、低い値に抑制することができる。空間53A内で作業を行う作業員の被ばくを著しく低減することができる。
隔離容器81内の機器(例えば、圧力容器ヘッド4等)の隔離容器81外への搬出、及び隔離容器81内への物品の搬入は、搬出入エアロック89及び90を通して行われるため、隔離容器81内の放射性物質を含む空気の外部環境への放出を防ぐことができる。特に、搬出入エアロック89及び90のそれぞれは、散水装置及び空気入替装置を備えているため、放射性物質の外部環境への放出を防ぐことができる。
また、圧力容器ヘッド4の取り出しの別方法として、格納容器ヘッド18の取り外しと同様に隔離容器81を設定する前に細断する方法もある。図44に圧力容器ヘッド4を細断する場合の状態を示す。その詳細は、PCVヘッド18の取り外し、搬出と同様であり、格納容器ヘッド18を圧力容器ヘッド4に言い換えることで説明できるので、詳細な説明を省略する。なお、4Aは、圧力容器ヘッド4の切断片である。なお、収納容器206の搬出方法として、搬入出チャンバー75の替わりに前述した貯水チャンバー301を同様に使用しても良い。
以上により、原子炉圧力容器を開放する方法における原子炉開放作業が終了し、原子炉圧力容器を開放する方法の全ての工程が終了する。
蒸気乾燥器及び気水分離器の取出しについて説明する。圧力容器ヘッド4の取出し(ステップS13)が終了した後、蒸気乾燥器及び気水分離器の取出しが行われる(ステップS14)。まず、蒸気乾燥器12が原子炉圧力容器3から容易に取り外しできる場合における蒸気乾燥器12の取出しを、図35〜図37を用いて以下に説明する。
図35には図示されていないが、ステップS13で用いられたマニピュレータ装置、及び吊り天秤92を収納した隔離チャンバー40を、開口部36Aを通して放射線遮へい容器32内の空間37に搬入し、さらに、開閉扉89Aを開けて搬出入エアロック89内に移送する。隔離チャンバー40が搬出入エアロック89内に移送された後、開閉扉89Aを閉じて開閉扉89Bを開ける。マニピュレータ装置の掴み具47Aで隔離チャンバー40内の吊り天秤92を掴み、その後、スライド機構45B及び伸縮管45Aを伸ばして吊り天秤92を隔離容器81内の空間93に搬入する。吊り天秤92を蒸気乾燥器12上に置いた後、吊り天秤92から掴み具47Aを離し、この掴み具47Aで吊り天秤92の吊り具を掴んで持ち上げる。昇降装置83に接続されているワイヤー87に取り付けられた掴み具が吊り天秤92の吊り具を把持する。
マニピュレータ装置の作業アーム45C及び掴み具47Aが隔離チャンバー40内に収納された後、開閉扉89Bが閉じられ、空間89Cの空気が空気入替装置により清浄な空気と入れ替えられ、そして、搬出入エアロック89内で散水装置から噴射された水が隔離チャンバー40の外面に掛けられて付着している放射性核種が洗い流される。開閉扉89Aが開けられて隔離チャンバー40が空間37に移送され、開閉扉39Aが閉じられる。隔離チャンバー40は、開口部36Aを通って地上に搬送される。
蒸気乾燥器12が原子炉圧力容器3から取り外された後、昇降装置83を駆動してワイヤー87を巻き取る(図35参照)。さらに、ワイヤー87を巻き取ると、蒸気乾燥器12が上昇する。蒸気乾燥器12の下端が搬出入エアロック89の位置まで上昇したとき、蒸気乾燥器12の上昇が停止され、開閉扉89A及び89Bが開けられる。放射線遮へい容器32内に搬入されて放射線遮へい容器32の底面上に置かれていたスライド式台車92を、搬出入エアロック89内を通して下部円筒部材81C内まで移動させる。昇降装置83を駆動してワイヤー87を巻き戻すことにより、蒸気乾燥器12が下部円筒部材81C内でスライド式台車92上に置かれる(図36参照)。開閉扉89A及び89Bが開いているので、下部円筒部材81C内の放射性核種が搬出入エアロック89及び放射線遮へい容器32に拡散する可能性がある。
スライド式台車92を移動させることにより、蒸気乾燥器12が搬出入エアロック89内を通って放射線遮へい容器32内の空間37まで移送される(図36参照)。開閉扉89A及び89Bが閉じられる。前述したように、搬出入エアロック89内の空間89Cの空気が入れ替えられ、搬出入エアロック89内が散水により洗浄される。放射線遮へい容器32内で放射線遮へい板33の下面に散水装置(図示せず)が設置され、放射線遮へい板33に空気入替装置(図示せず)が設置されている。蒸気乾燥器12が放射線遮へい容器32内の空間37に移送され、開閉扉89A及び89Bが閉じられた後に、空気入替装置により放射線遮へい容器32内の空気が清浄な空気と入れ替えられ、散水装置から噴射される水により放射線遮へい容器32の蒸気乾燥器12及びスライド式台車92が洗浄される。放射線遮へい容器32の蒸気乾燥器12及びスライド式台車92が開口部36Aを通して地上まで搬送される。
原子炉圧力容器3内で炉心シュラウド6に取り付けられている気水分離器11も、蒸気乾燥器12と同様に原子炉圧力容器3から取り出され、開口部36Aを通して地上まで搬送される。
蒸気乾燥器12の取り出し後の対応として、機器仮置きプールに設置した放射性遮へい容器32内の空間で細断する手段もある。蒸気乾燥器12の細断手順を図45にて説明する。
蒸気乾燥器12の細断は、放射線の低減と切断時に発生する放射性ダストの拡散を防止するため水中遠隔で実施する。その場合、蒸気乾燥器12の取出し前に機器仮置きプールに配置する放射線遮へい容器32を改造する。放射性遮へい容器32の下面に新たに細断作業を行うための放射性遮へい容器32の全面に移動可能な水中作業アーム321を取り付ける。次に放射線遮へい容器32の搬出入エアロック89Aを取り外し、放射性遮へい容器32の上面の新規に仕切り322を取り付けたのちに、上部開口部に新規で開閉装置323を取り付ける。蒸気乾燥器12および気水分離器11は、図35からの手順と同様に原子炉圧力容器内から取り外し、新規に改造した放射線遮へい容器32の中にコンベア機能を有する引込み装置320にて順次搬入する。その後、放射線遮へい容器32の中に水を張り、水中遠隔で細断を実施する。細断作業は、水中作業アーム321にて切断・ハンドリングし収納容器206に収納する。収納容器206は下面に移動手段206Aを有し、仕切り322の下面にある通路を移動し、搬出口に位置する。その後は天井クレーン50Bにて水面上に引き上げ搬出する。このとき放射線遮へい容器32の水面高さは仕切り322の下端より高い位置にせっていすることで、細断場所で発生した放射性物質を含むダストは仕切り322で拡散を防止し、放射線遮へい容器の搬出口側への流出を防止する。この考え方は、図42に示す貯水チャンバー301と同じである。なお、細断場所で発生した放射性物質を含むダストは、放射線遮へい容器32に接続された換気装置(図示せず)にて換気されフィルタ(図示せず)にて捕集される。また、水中に抽出する浮遊粒子や沈降粒子は、同様に放射線遮へい容器32に接続されるフィルタ付きの水浄化装置(図示せず)にて浄化される。
以上の蒸気発生器12および気水分離器11の細断作業は、機器仮置きプールで実施するため、原子炉圧力容器側との作業の干渉は発生せずに、燃料デブリ取出し作業を並行して実施することができる。
なお、万一蒸気乾燥器12の取り出しにおいて、蒸気乾燥器12が原子炉圧力容器3から取り外せない場合には、前述の蒸気乾燥器12の取り出しの代案として、図38に示す蒸気乾燥器12の取り出しが実施される。この蒸気乾燥器12の取り出しは、蒸気乾燥器12が切断されて切断片として取り出される。その代案を、図38を用いて説明する。
解体装置94が、放射線遮へい容器32内の空間37から搬出入エアロック89を通して下部円筒部材81C内に搬入される。放射線遮へい容器32のドア34は閉じられている。この搬入には、前述のマニピュレータ装置が使用される。解体装置94は、昇降装置83の掴み具に吊り下げられ、原子炉圧力容器3の上部フランジ上に設置される。
解体装置94の構成を以下に説明する。解体装置94は4本の支柱94Bを有し、これらの支柱94Bは水平方向に配置された4本の連結部材94Aのそれぞれによって結合される。先端部に切断機94Dが設けられた、多関節を有するアーム94C、及び先端部に掴み具94Fが設けられた、多関節を有するアーム94Eが、水平方向に伸びる連結部材94Aに移動可能に取り付けられた移動台車に取り付けられる。4本の支柱94Bが原子炉圧力容器3の上部フランジ上に設置される。
さらに、収納容器搬送装置95が放射線遮へい容器32内の空間37から搬出入エアロック89内の空間89Cに搬入される。収納容器搬送装置95は、支持部材を兼ねた収納部95E、収納部95Eを横切って収納部95Eの上端部に取り付けられた水平部材(図示せず)に取り付けられた一対の支持部材95B、及びこれらの支持部材95Bの上端部に取り付けられて水平方向に伸びるガイドアーム95Aを有する。吊り装置95Cが、ガイドアーム95Aに沿って移動可能に、ガイドアーム95Aに取り付けられる。ワイヤー95Dが吊り装置95Cに取り付けられ、吊り具(図示せず)がワイヤー95Dに取り付けられる。
解体装置94において、連結部材94Aに沿って移動する移動台車に取り付けられたアーム94Eの先端部の掴み具94Fを用いて蒸気乾燥器12の切断部分を掴み、その移動台車に取り付けられたアーム94Cの先端部の切断機94Dを用いてその切断部分を切断する。掴み具94Fに掴まれた、蒸気乾燥器12の切断片は、アーム94Eの操作により、収納容器搬送装置95のガイドアーム95Aに沿って移動する吊り装置95に吊り下げられて下部円筒部材81C内に位置する収納容器96内に収納される。切断機94Dによる切断で順次発生する蒸気乾燥器12の切断片は、掴み具94Fに掴まれて、順次、吊り装置95に吊り下げられた収納容器96内に収納される。
収納容器96がそれらの切断片で一杯になったとき、吊り装置95が収納部95Eの真上に移動して吊り下げられているその収納容器96を収納部95E内に吊り降ろし、収納部95E内に収納する。蒸気乾燥器12の切断片が収納された収納容器96が、所定個数、収納部95E内に収納されたとき、開閉扉89Aを開いて、収納容器搬送装置95が搬出入エアロック89から放射線遮へい容器32内の空間37に移動される。吊り装置95Cを用いて収納部95E内の全ての収納容器96を、順次、放射線遮へい容器32の底面に置かれた複数の搬送容器(図示せず)内に移送する。収納部95E内の収納容器96がなくなったとき、収納容器搬送装置95は、再び、搬出入エアロック89内に移動される。下部円筒部材81C内で、蒸気乾燥器12の切断が行われ、その切断片が吊り装置95Cに吊り下げられた収納容器96内に収納され、この収納容器96が収納部95E内に収納される。そして、切断片が収納された収納容器96が、放射線遮へい容器32内の搬送容器に収納される。このような一連の作業は、蒸気乾燥器12の切断が終了するまで行われる。放射線遮へい容器32内で散水装置により洗浄された搬送容器が、開口部36Aを通して外部に搬送される。
蒸気乾燥器12の切断及び搬出が終了した後、解体装置94及び収納容器搬送装置95による原子炉圧力容器3内の気水分離器11の切断及び搬出が蒸気乾燥器12と同様に行われる。
原子炉圧力容器内の炉内構造物及び燃料デブリを切断する(ステップS15)。原子炉圧力容器3内に存在する炉内構造物である炉心シュラウド6、炉心支持板9、上部格子板10及び制御棒案内管13等の炉内構造物が、図39に示すように、切削装置99により切削される。
支持部材131が、水が充填された遮へい袋85の下方で、中間円筒部材81Bの内面に取り付けられ、一対の巻取り装置97A及び97Bが支持部材96の上面に設置される。巻取り装置97Aに巻き取られるワイヤー98A及び巻取り装置97Bに巻き取られるワイヤー98Bが、切削装置99の本体部99Aの上端にそれぞれ取り付けられる。原子炉圧力容器3内に配置された切削装置99はワイヤー98A及び98Bによって支持される。切削装置99及び支持部材131の原子炉圧力容器3への出し入れは、搬出入エアロック89を通して行われる。
切削装置99の構成を、図40及び図41を用いて説明する。切削装置99は、本体部99A,複数の切削刃99Cが下面に取り付けられた回転体99B,及びはつりヘッド99Dを有する。本体部99A内に設置されたモータ(図示せず)に連結される回転体99Bが、本体部99Aに回転可能に取り付けられる。回転体99Bには、下方に向かって開放される溝99Eが回転体99Bの回転中心を通るように形成される。はつりヘッド99Dは、溝99E内に配置されて半径方向に移動可能に回転体99Bに取り付けられた移動テーブル99Iに取り付けられる。この移動テーブルには、図示されていないが、はつりヘッド99Dを回転させる回転機構及びはつりヘッド99Dを回転体99Bの回転軸方向に移動させる移動機構が移動テーブル99Iに設けられている。はつりヘッド99Dの下面には、ウォータジェット若しくはアブレッシブウォータジェット用の噴射ノズル99F及びレーザヘッド99Gが取り付けられている。
原子炉圧力容器3内で切削装置99の回転体99Bを回転させて複数の切削刃99Cにより上記した各炉内構造物を切削する。炉内構造物の切削は、巻取り装置97A及び97Bを駆動してワイヤー98A及び98Bをそれぞれ巻き戻して切削装置99を下降させながら実施される。切削刃99Cによる炉内構造物の切削を実施しているときは、はつりヘッド99Dは、回転体99Bの下面よりも上方に位置するように、溝99E内に存在する。
原子炉圧力容器3内において切削装置99による炉内構造物の切削が進められると、切削装置99は下鏡部5に近づいて来る。やがて、原子炉圧力容器3内で下鏡部5付近に存在する燃料デブリ39Aが切削装置99により切削され始める。燃料デブリ39Aの表面には、セラミックに類する物質と金属溶融物の混合物が存在し、この混合物の高度が高いため、切削装置99の切削刃99Cで切削することが困難である。このため、切削刃99Cの替りに、はつりヘッド99Dに設けられた噴射ノズル99F及びレーザヘッド99Gのいずれかを用いて燃料デブリ39Aを表面からはつっていく。ウォータジェット若しくはアブレッシブウォータジェット用の噴射ノズル99Fを用いる場合には、噴射ノズル99Fから燃料デブリ39Aに向かってウォータジェット若しくはアブレッシブウォータジェットを噴射し、燃料デブリ39Aをウォータジェット若しくはアブレッシブウォータジェットによりはつる。レーザヘッド99Gを用いる場合には、レーザヘッド99Gからレーザを燃料デブリ39Aの表面に照射して燃料デブリ39Aの表面をはつる。
噴射ノズル99Fまたはレーザヘッド99Gによる燃料デブリ39Aのはつりを効率良く行うために、ウォータジェット若しくはアブレッシブウォータジェットまたはレーザが切削刃99Cに当たらないように、はつりヘッド99Dを回転体99Bの回転軸方向で切削刃99C側に移動させ、噴射ノズル99Fまたはレーザヘッド99Gが切削刃99Cよりも前方に出るようにする。このような状態で、ウォータジェット若しくはアブレッシブウォータジェットの燃料デブリ39Aに対する噴射またはレーザの燃料デブリ39Aへの照射を行う。ウォータジェット若しくはアブレッシブウォータジェットの噴射またはレーザの照射は、はつりヘッド99Dを回転させながら行われる。
はつりヘッド99Dを溝99Eの長手方向に移動させながら回転体99Bをゆっくり回転させることにより、原子炉圧力容器3の半径方向及び周方向のあらゆる位置で噴射ノズル99Fまたはレーザヘッド99Gによる燃料デブリ39Aのはつりを行うことができる
切削装置99による切削で生じた炉内構造物及び燃料デブリ39Aの切削片を原子炉圧力容器3外に搬出する(ステップS16)。切削片は、例えば、切削装置99の中心部に空洞を設け、放射線遮へい容器32内に設けられた吸引装置でその空洞から切削片を吸引し、収納容器に収納する。この収納容器は、放射性廃棄物処理建屋内の所定の領域まで移送されて保管される。
なお、切削装置99による原子炉圧力容器3内の炉内構造物の切削が開始された後では、実質的に切削と搬出は並行して実施される。
以上説明した炉内構造物及び燃料デブリ39の切断、搬出よれば、処理時間を短くできる。