JP2016217435A - トルクコンバータ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】特に高地での車両の発進性能を向上可能なトルクコンバータ装置を提供する。
【解決手段】エンジンの出力軸に接続されるポンプインペラ12と、変速機の入力軸に接続されるタービンランナ14と、ポンプインペラ12とタービンランナ14の間に配置されるステータ16と、を備えたトルクコンバータ装置は、ステータ16に接続されるステータシャフト21と、ステータシャフト21の軸心上の軸端部に配設されるトルクカム20と、ステータ16をトルクカム20の配置方向に付勢する付勢部26と、を備える。作動流体を介してステータ16に作用するトルクによりステータシャフト21が回転すると、トルクカム20は、トルクカム20に対するステータシャフト21の回転角度に応じて、ステータ16を軸心に沿って移動させる。
【選択図】図2
【解決手段】エンジンの出力軸に接続されるポンプインペラ12と、変速機の入力軸に接続されるタービンランナ14と、ポンプインペラ12とタービンランナ14の間に配置されるステータ16と、を備えたトルクコンバータ装置は、ステータ16に接続されるステータシャフト21と、ステータシャフト21の軸心上の軸端部に配設されるトルクカム20と、ステータ16をトルクカム20の配置方向に付勢する付勢部26と、を備える。作動流体を介してステータ16に作用するトルクによりステータシャフト21が回転すると、トルクカム20は、トルクカム20に対するステータシャフト21の回転角度に応じて、ステータ16を軸心に沿って移動させる。
【選択図】図2
Description
本発明は、車両の発進性能を向上可能なトルクコンバータ装置に関する。
従来、エンジンの過給ダウンサイジング化により燃費の向上を図った車両がある。しかし、トルクコンバータを用いたダウンサイジングターボ車が標高の高い地域(高地)の上り坂で発進しようとしても、酸素濃度が低いために通常の標高地よりもトルクが出ず、図8に示すように、エンジンがターボブースト回転数に到達する手前でエンジントルクTEとタービントルクTTが釣り合ってしまい、エンジントルクTEが発進に必要なトルクTSまで上がらず、結果として発進できないといった状況が生じ得る。
トルクコンバータを備える車両の発進性能は、ポンプインペラとタービンランナとの相対すべり速度が高い領域でのトルク容量係数を低減させることで改善可能であるが、この場合、一般的に、ポンプインペラとタービンランナとの相対すべり速度が低い領域でのトルク容量係数も下げてしまうので、ロックアップクラッチを締結する際の発熱量が増大し、ロックアップクラッチの寿命が短くなることが懸念される。このため、トルクコンバータを用いたダウンサイジングターボ車には、高地での坂道発進を可能とするポンプインペラとタービンランナとの相対すべり速度に対し、トルクコンバータのトルク容量係数を連続的に調整して、始動時のエンジントルクが小さな高地の上り坂でも安定して発進可能なシステムが求められていた。
特許文献1には、トルクコンバータが、ポンプインペラと、タービンランナと、ステータと、ロックアップクラッチとを備え、ロックアップクラッチが作動したとき、ステータを軸方向に移動させることでトルク容量係数を小さくしてパワーロスを最小化する技術が開示されている。しかし、特許文献1に記載された技術では、トルク容量係数の変更がロックアップクラッチの作動に連動して行われているため、高地の上り坂における発進性能を向上できるものではない。また、特許文献1のトルクコンバータには、ステータを移動するために油路やピストンなどの複雑な構成が必要である。
本発明の目的は、特に高地での車両の発進性能を向上可能なトルクコンバータ装置を提供することである。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、
エンジンの出力軸(例えば、後述の実施形態でのクランクシャフト11e)に接続されるポンプインペラ(例えば、後述の実施形態でのポンプインペラ12)と、変速機の入力軸(例えば、後述の実施形態での入力軸11t)に接続されるタービンランナ(例えば、後述の実施形態でのタービンランナ14)と、前記ポンプインペラと前記タービンランナの間に配置されるステータ(例えば、後述の実施形態でのステータ16)と、を備え、前記ポンプインペラと前記タービンランナとの間に形成された循環路に作動流体を循環させて、前記作動流体を介して前記ポンプインペラから前記タービンランナに回転動力を伝達するトルクコンバータ装置(例えば、後述の実施形態でのトルクコンバータ装置10,10A)であって、
前記ステータに接続されるステータシャフト(例えば、後述の実施形態でのステータシャフト21)と、
前記ステータシャフトの軸心(例えば、後述の実施形態での軸心CL)上の軸端部に配設されるトルクカム(例えば、後述の実施形態でのトルクカム20)と、
前記ステータを前記トルクカムの配置方向に付勢する付勢部(例えば、後述の実施形態での圧縮ばね26)と、を備え、
前記作動流体を介して前記ステータに作用するトルクにより前記ステータシャフトが回転すると、前記トルクカムは、前記トルクカムに対する前記ステータシャフトの回転角度に応じて、前記ステータを前記軸心に沿って移動させる。
エンジンの出力軸(例えば、後述の実施形態でのクランクシャフト11e)に接続されるポンプインペラ(例えば、後述の実施形態でのポンプインペラ12)と、変速機の入力軸(例えば、後述の実施形態での入力軸11t)に接続されるタービンランナ(例えば、後述の実施形態でのタービンランナ14)と、前記ポンプインペラと前記タービンランナの間に配置されるステータ(例えば、後述の実施形態でのステータ16)と、を備え、前記ポンプインペラと前記タービンランナとの間に形成された循環路に作動流体を循環させて、前記作動流体を介して前記ポンプインペラから前記タービンランナに回転動力を伝達するトルクコンバータ装置(例えば、後述の実施形態でのトルクコンバータ装置10,10A)であって、
前記ステータに接続されるステータシャフト(例えば、後述の実施形態でのステータシャフト21)と、
前記ステータシャフトの軸心(例えば、後述の実施形態での軸心CL)上の軸端部に配設されるトルクカム(例えば、後述の実施形態でのトルクカム20)と、
前記ステータを前記トルクカムの配置方向に付勢する付勢部(例えば、後述の実施形態での圧縮ばね26)と、を備え、
前記作動流体を介して前記ステータに作用するトルクにより前記ステータシャフトが回転すると、前記トルクカムは、前記トルクカムに対する前記ステータシャフトの回転角度に応じて、前記ステータを前記軸心に沿って移動させる。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記ステータは、トルク容量係数が最大となる位置を基準として、前記トルクカムに対する前記ステータシャフトの回転角度の増加に伴って前記トルク容量係数が低下する方向に移動する。
前記ステータは、トルク容量係数が最大となる位置を基準として、前記トルクカムに対する前記ステータシャフトの回転角度の増加に伴って前記トルク容量係数が低下する方向に移動する。
また、請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の発明において、
前記トルクカムは、
前記軸心に対して傾斜する第1カム面(例えば、後述の実施形態でのカム面24a)を有し、前記ステータシャフトと一体回転可能に固定されたシャフトカム(例えば、後述の実施形態でのシャフトカム24)と、
前記軸心に対して傾斜する第2カム面(例えば、後述の実施形態でのカム面25a)を有し、トルクカムベースによって回転不能に支持されたベースカム(例えば、後述の実施形態でのベースカム25)と、を有し、
前記シャフトカム及び前記ベースカムは、第1カム面と前記第2カム面とが対向するよう前記軸心上に配置されている。
前記トルクカムは、
前記軸心に対して傾斜する第1カム面(例えば、後述の実施形態でのカム面24a)を有し、前記ステータシャフトと一体回転可能に固定されたシャフトカム(例えば、後述の実施形態でのシャフトカム24)と、
前記軸心に対して傾斜する第2カム面(例えば、後述の実施形態でのカム面25a)を有し、トルクカムベースによって回転不能に支持されたベースカム(例えば、後述の実施形態でのベースカム25)と、を有し、
前記シャフトカム及び前記ベースカムは、第1カム面と前記第2カム面とが対向するよう前記軸心上に配置されている。
また、請求項4に記載の発明では、請求項1または2に記載の発明において、
周囲の大気圧を計測する気圧計測部(例えば、後述の実施形態での気圧計43)と、
周囲の大気圧の低下に伴って前記ステータをトルク容量係数が低下する方向に移動させる駆動部(例えば、後述の実施形態でのベースカム位置制御機構40)と、をさらに備え、
前記トルクカムは、
前記軸心に対して傾斜する第1カム面(例えば、後述の実施形態でのカム面24a)を有し、前記ステータシャフトと一体回転可能に固定されたシャフトカム(例えば、後述の実施形態でのシャフトカム24)と、
前記軸心に対して傾斜する第2カム面(例えば、後述の実施形態でのカム面25a)を有し、トルクカムベースによって回転不能に支持されたベースカム(例えば、後述の実施形態でのベースカム25)と、を有し、
前記シャフトカム及び前記ベースカムは、第1カム面と前記第2カム面とが対向するよう前記軸心上に配置され、
前記駆動部は、周囲の大気圧に応じて前記ベースカムを前記軸心に沿って移動させる。
周囲の大気圧を計測する気圧計測部(例えば、後述の実施形態での気圧計43)と、
周囲の大気圧の低下に伴って前記ステータをトルク容量係数が低下する方向に移動させる駆動部(例えば、後述の実施形態でのベースカム位置制御機構40)と、をさらに備え、
前記トルクカムは、
前記軸心に対して傾斜する第1カム面(例えば、後述の実施形態でのカム面24a)を有し、前記ステータシャフトと一体回転可能に固定されたシャフトカム(例えば、後述の実施形態でのシャフトカム24)と、
前記軸心に対して傾斜する第2カム面(例えば、後述の実施形態でのカム面25a)を有し、トルクカムベースによって回転不能に支持されたベースカム(例えば、後述の実施形態でのベースカム25)と、を有し、
前記シャフトカム及び前記ベースカムは、第1カム面と前記第2カム面とが対向するよう前記軸心上に配置され、
前記駆動部は、周囲の大気圧に応じて前記ベースカムを前記軸心に沿って移動させる。
請求項1に記載の発明によれば、標高の高い地域では空気密度が低いためエンジン始動時のエンジントルクは低いが、トルクコンバータ装置は、このときステータに作用するねじりトルクを利用してステータを移動させることでトルク容量係数を低下させるトルクカムを備える。トルクカムによって、ポンプインペラとタービンランナとの相対すべり速度が大きな領域でのトルク容量係数を低減できる。このため、エンジン始動時のエンジントルクが低い状態であっても、エンジントルクがタービントルクを上回る状態のままエンジンの回転数が上昇し、エンジントルクが発進に必要なトルクを超えて、トルクコンバータ装置を搭載した車両は容易に発進することができる。また、トルク容量係数を小さくするための構成を電気的な仕組みを用いずに実現することができるため、構造が簡単であると共に、車両の発進性能を向上できる。
請求項2に記載の発明によれば、ステータは、トルク容量が最大となる位置を基準として、トルクカムに対するステータシャフトの回転角度が増加するに伴ってトルク容量が低下する方向に移動するので、ポンプインペラとタービンランナとの相対すべり速度が大きな領域でのトルク容量係数を低減させることができる。
請求項3に記載の発明によれば、ステータは付勢部によってシャフトカムと共にトルクカムの配置方向に付勢されているため、シャフトカムの第1カム面の少なくとも一部は、常時、ベースカムの第2カム面に当接する。ステータに接続されたシャフトカムがステータと共に回動すると、ステータは、軸心に対して傾斜して互いに当接する第1カム面及び第2カム面の作用により、付勢部の付勢力に抗して、軸心に沿ってトルクカムから離れる方向に移動する。
請求項4に記載の発明によれば、標高が高く気圧の低い地域では駆動部によってステータの基準位置が変更された状態で、エンジン始動時のポンプインペラとタービンランナとの相対すべり速度に応じたステータの移動によるトルク容量係数の変更によって、車両は容易に発進することができる
以下、本発明の各実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
(第1実施形態)
本発明に係る第1実施形態のトルクコンバータ装置の基本構成について、図1を参照して説明する。図1に示すように、自動車等の車両に搭載されるトルクコンバータ装置10は、エンジン(図示せず)のクランクシャフト11eに連結されたポンプインペラ12と、ポンプインペラ12の作動流体吐出口に近接して配置された作動流体流入口を有し、変速機(図示せず)に結合されたタービンランナ14と、タービンランナ14からポンプインペラ12に戻る作動流体の流れを偏向するステータ16と、ロックアップクラッチ30とを備える。ポンプインペラ12、タービンランナ14及びステータ16は、トルクコンバータケース18内に収容されている。トルクコンバータ装置10は、ポンプインペラ12とタービンランナ14との間に形成された循環路に作動流体を循環させて、作動流体を介してポンプインペラ12からタービンランナ14に回転動力を伝達する。
本発明に係る第1実施形態のトルクコンバータ装置の基本構成について、図1を参照して説明する。図1に示すように、自動車等の車両に搭載されるトルクコンバータ装置10は、エンジン(図示せず)のクランクシャフト11eに連結されたポンプインペラ12と、ポンプインペラ12の作動流体吐出口に近接して配置された作動流体流入口を有し、変速機(図示せず)に結合されたタービンランナ14と、タービンランナ14からポンプインペラ12に戻る作動流体の流れを偏向するステータ16と、ロックアップクラッチ30とを備える。ポンプインペラ12、タービンランナ14及びステータ16は、トルクコンバータケース18内に収容されている。トルクコンバータ装置10は、ポンプインペラ12とタービンランナ14との間に形成された循環路に作動流体を循環させて、作動流体を介してポンプインペラ12からタービンランナ14に回転動力を伝達する。
ポンプインペラ12は、エンジンのクランクシャフト11eに連結されて一体回転するトルクコンバータケース18に取り付けられている。ポンプインペラ12は、外側のポンプシェル12aと、内側のポンプコアリング12bと、ポンプコアリング12bに取り付けられているポンプブレード12cとから構成され、外側のポンプシェル12a及び内側のポンプコアリング12bによって作動流体の流路を形成する。
タービンランナ14は、ポンプシェル12aに対向して配置されている。タービンランナ14は、外側のタービンシェル14aと、内側のタービンコアリング14bと、タービンコアリング14bに取り付けられているタービンブレード14cとから構成され、外側のタービンシェル14a及び内側のタービンコアリング14bによって作動流体の流路を形成する。タービンランナ14は、ポンプインペラ12と同軸上にあるタービンハブ17に結合され、変速機の入力軸11tと一体に回転する。
ステータ16は、ポンプインペラ12とタービンランナ14との間に挟まれるように配置されている。ステータ16は、シェル側リング16aと、コア側リング16bと、ステータブレード16cとから構成され、シェル側リング16a及びコア側リング16bによって作動流体の循環路を形成する。ステータ16は、ワンウェイクラッチ19を介してトルクコンバータ装置10のハウジング(図示せず)に支持されている。
ロックアップクラッチ30は、トルクコンバータケース18とタービンランナ14との間に配置されており、エンジンのクランクシャフト11eと変速機の入力軸11tとを機械的に結合可能である。ロックアップクラッチ30は、円盤状に形成された入力側プレート31と、摩擦板32と、一端が曲げ起こされた爪部を有する入力爪33とを有する。
入力側プレート31は、タービンハブ17の外周面に軸方向に摺動自在に軸支されている。入力側プレート31の左右の圧力を変えることによって入力側プレート31を図中、左右方向に移動させ、摩擦板32とトルクコンバータケース18とを接離させることで、ロックアップクラッチ30を締結又は開放する。
また、入力側プレート31のタービンランナ14側にリベット34によって固定されている入力爪33は、ロックアップクラッチ30とタービンランナ14との間に配置されているダンパ装置35に当接し、トルクを伝達する。
図2は、図1に示した第1実施形態のトルクコンバータ装置10の全体構成を示す模式図である。図2に示すように、トルクコンバータ装置10のステータ16は、ステータシャフト21に連結されている。ステータシャフト21の一端にはトルクカム20が配設されている。ステータシャフト21とトルクカム20とは、同一の軸心CL上に配置されている。
トルクカム20は、軸心CLに対して傾斜するカム面24aを有し、ステータシャフト21と一体回転可能に固定されたシャフトカム24と、同じく軸心CLに対して傾斜するカム面25aを有し、トルクカムベース23によって回転不能に支持されたベースカム25とを有する。シャフトカム24及びベースカム25は、カム面24aとカム面25aとが対向するよう軸心CL上に配置されている。
ステータ16は、ステータシャフト21のばね受け部21aとトルクコンバータケース18との間に配設された圧縮ばね26の弾性力により、シャフトカム24と共にトルクカム20の配置方向に付勢されている。このため、シャフトカム24のカム面24aの少なくとも一部は、常時、ベースカム25のカム面25aに当接する。
本実施形態では、ステータ16に固定されたシャフトカム24がステータ16と共に回動すると、ステータ16は、軸心CLに対して傾斜して互いに当接するカム面24a,25aの作用により、圧縮ばね26の弾性力に抗して、図2に示す基準位置から軸心CLに沿ってトルクカム20から離れる方向(図2において左方向)に移動する。このとき、ステータ16は、トルクカム20に対するステータシャフト21の回転角度の増加に伴って移動する。すなわち、180度を上限として、この回転角度が大きいほどステータ16の移動量は大きい。なお、ステータ16の基準位置は、ステータ16が最もトルクカム20側に移動した位置であり、トルクコンバータ装置10のトルク容量係数が最大となる位置に設定されている。ステータ16がトルクカム20から離れる方向に移動するに伴って、トルクコンバータ装置10のトルク容量係数は低下する。
次に、本実施形態のトルクコンバータ装置10を搭載した車両が、標高が高く大気圧が低い地域の上り坂で発進する際のトルクコンバータ装置10の作用について、図4〜図6を参照して詳細に説明する。
標高が高く大気圧が低い地域では、空気密度が低いために通常の標高地よりもエンジン始動時のエンジントルクは低い。エンジン始動時のトルクコンバータ装置10のトルク容量係数が大きいと、ポンプインペラ12とタービンランナ14との相対すべり速度が大きく、ステータ16には作動流体を介して大きなねじりトルクが作用する。ステータ16にねじりトルクが作用して、ステータシャフト21及びシャフトカム24が回動すると、ステータ16は、軸心CLに対して傾斜して互いに当接するカム面24a,25aの作用により、圧縮ばね26の弾性力に抗して、図3に示すようにトルクカム20から離れる方向(図3において左方向)に移動する。このとき、ステータ16は、ステータシャフト21のトルクカム20に対する回転角度に応じて移動する。その結果、ポンプインペラ12及びタービンランナ14に対するステータ16の位置がトルク伝達効率の点で最適な位置ではなくなるため、トルクコンバータ装置10のトルク容量係数が低下する。
トルクコンバータ装置10のトルク容量係数が小さい状態であれば、ポンプインペラ12にかかる負荷は小さく、かつ、タービントルクTTは、図4に点線で示すトルク容量係数が大きい状態のトルクよりも小さな、実線で示すトルクまで低下する。その結果、図5に示すように、エンジントルクTEがタービントルクTTを上回る状態のままエンジンの回転数が上昇して、エンジントルクTEは発進に必要なトルクTSを超える。その後、タービントルクTTがトルクTSを超えると車両の発進が可能となる。
車両が発進した後、トルクコンバータ装置10のトルク容量係数が小さいままであると、ポンプインペラ12とタービンランナ14との相対すべり速度が高く、エネルギー伝達効率が悪い。また、ポンプインペラ12とタービンランナ14との相対すべりによるロックアップクラッチを締結する際の発熱のためにロックアップクラッチ30の寿命が短くなることが懸念される。しかし、エンジントルクTEが発進に必要なトルクTSを超えた後のポンプインペラ12とタービンランナ14との相対すべり速度は小さくなり、ステータ16に作用するねじりトルクも減少するため、図6に示すように、ステータ16は、ステータ16に作用するねじりトルクと圧縮ばね26の弾性力とが均衡する位置まで、トルクカム20の配置方向(図6において右方向)に移動する。その結果、トルクコンバータ装置10のトルク容量係数が大きくなる。本実施形態では、図6に示したようにステータ16が基準位置まで戻った状態で、ロックアップクラッチ30を締結する。
なお、標高が低い地域では、高地と比べてエンジン始動時のエンジントルクは低くないため、ステータ16に作用するねじりトルクは大きくない。このため、トルクカム20から離れる方向へのステータ16の移動量は小さく、高地と比べて、トルクコンバータ装置10のトルク容量係数は低下しない。
以上説明したように、本実施形態によれば、標高の高い地域では空気密度が低いためエンジン始動時のエンジントルクは低いが、トルクコンバータ装置10は、このときステータ16に作用するねじりトルクを利用してステータ16を移動させることでトルク容量係数を低下させるトルクカム20を備える。トルクカム20によって、ステータ16は、トルク容量係数が最大となる位置を基準位置として、トルク容量係数が低下する方向に移動するので、ポンプインペラ12とタービンランナ14との相対すべり速度が大きな領域でのトルク容量係数を低減できる。このため、エンジン始動時のエンジントルクが低い状態であっても、エンジントルクTEがタービントルクTTを上回る状態のままエンジンの回転数が上昇し、エンジントルクTEが発進に必要なトルクTSを超えて、車両は容易に発進することができる。また、トルク容量係数を小さくするための構成を電気的な仕組みを用いずに実現することができるため、構造が簡単であると共に、車両の発進性能を向上できる。
さらに、トルクコンバータ装置10には、ステータ16をトルクカム20の配置方向に付勢する圧縮ばね26が設けられているため、エンジントルクTEが発進に必要なトルクTSを超えてポンプインペラ12とタービンランナ14との相対すべり速度が小さくなると、圧縮ばね26の付勢力によって、ステータ16は基準位置に戻される、ロックアップクラッチ30の締結は、ステータ16が基準位置に戻されてトルクコンバータ装置10のトルク容量係数が大きい状態で行われるため、ロックアップクラッチ30の締結時における発熱を抑えつつ通常のエネルギー伝達効率で車両が走行できる。
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態のトルクコンバータ装置10Aの全体構成を示す模式図である。第2実施形態のトルクコンバータ装置10Aの基本構成は図1に示した第1実施形態のトルクコンバータ装置10と同じであるが、第2実施形態のトルクコンバータ装置10Aは、図7に示すように、トルクカム20のベースカム25が軸心CLの方向に移動可能であり、ベースカム位置制御機構40をさらに備える。
図7は、第2実施形態のトルクコンバータ装置10Aの全体構成を示す模式図である。第2実施形態のトルクコンバータ装置10Aの基本構成は図1に示した第1実施形態のトルクコンバータ装置10と同じであるが、第2実施形態のトルクコンバータ装置10Aは、図7に示すように、トルクカム20のベースカム25が軸心CLの方向に移動可能であり、ベースカム位置制御機構40をさらに備える。
ベースカム位置制御機構40は、ベースカム25を回転不能かつ軸方向に移動可能に支持するトルクカムベース23の油圧室27に、油圧ポンプ41から供給される作動油の流量を流量制御弁42で制御して供給する。流量制御弁42は、周囲の大気圧を測定する気圧計43からのデータに基づいて、大気圧の低下に伴って油圧室27に供給される油量が多くなるよう制御する。
本実施形態のベースカム25Aは、第1実施形態のベースカム25と同様にトルクカムベース23によって支持されているが、軸心CLに沿って移動可能であり、大気圧の低下に従いより多くの作動油が油圧室27に供給されると、シャフトカム24の配置方向(図7において左方向)に移動する。その結果、ステータ16の基準位置は、周囲の大気圧の低下に従ってトルク容量係数が低くなる方向に変更される。このように、標高が高く気圧の低い地域ではベースカム位置制御機構40によってステータ16の基準位置が変更された状態で、第1実施形態と同様に、エンジン始動時のポンプインペラ12とタービンランナ14との相対すべり速度に応じたステータ16の移動によるトルク容量係数の変更によって、車両は容易に発進することができる。
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
10,10A トルクコンバータ装置
11e クランクシャフト
11t 入力軸
12 ポンプインペラ
14 タービンランナ
16 ステータ
20 トルクカム
21 ステータシャフト
24 シャフトカム
24a カム面
25 ベースカム
25a カム面
26 圧縮ばね
40 ベースカム位置制御機構
43 気圧計
11e クランクシャフト
11t 入力軸
12 ポンプインペラ
14 タービンランナ
16 ステータ
20 トルクカム
21 ステータシャフト
24 シャフトカム
24a カム面
25 ベースカム
25a カム面
26 圧縮ばね
40 ベースカム位置制御機構
43 気圧計
Claims (4)
- エンジンの出力軸に接続されるポンプインペラと、変速機の入力軸に接続されるタービンランナと、前記ポンプインペラと前記タービンランナの間に配置されるステータと、を備え、前記ポンプインペラと前記タービンランナとの間に形成された循環路に作動流体を循環させて、前記作動流体を介して前記ポンプインペラから前記タービンランナに回転動力を伝達するトルクコンバータ装置であって、
前記ステータに接続されるステータシャフトと、
前記ステータシャフトの軸心上の軸端部に配設されるトルクカムと、
前記ステータを前記トルクカムの配置方向に付勢する付勢部と、を備え、
前記作動流体を介して前記ステータに作用するトルクにより前記ステータシャフトが回転すると、前記トルクカムは、前記トルクカムに対する前記ステータシャフトの回転角度に応じて、前記ステータを前記軸心に沿って移動させる、トルクコンバータ装置。 - 請求項1に記載のトルクコンバータ装置であって、
前記ステータは、トルク容量係数が最大となる位置を基準として、前記トルクカムに対する前記ステータシャフトの回転角度の増加に伴って前記トルク容量係数が低下する方向に移動する、トルクコンバータ装置。 - 請求項1又は2に記載のトルクコンバータ装置であって、
前記トルクカムは、
前記軸心に対して傾斜する第1カム面を有し、前記ステータシャフトと一体回転可能に固定されたシャフトカムと、
前記軸心に対して傾斜する第2カム面を有し、トルクカムベースによって回転不能に支持されたベースカムと、を有し、
前記シャフトカム及び前記ベースカムは、第1カム面と前記第2カム面とが対向するよう前記軸心上に配置された、トルクコンバータ装置。 - 請求項1又は2に記載のトルクコンバータ装置であって、
周囲の大気圧を計測する気圧計測部と、
周囲の大気圧の低下に伴って前記ステータをトルク容量係数が低下する方向に移動させる駆動部と、をさらに備え、
前記トルクカムは、
前記軸心に対して傾斜する第1カム面を有し、前記ステータシャフトと一体回転可能に固定されたシャフトカムと、
前記軸心に対して傾斜する第2カム面を有し、トルクカムベースによって回転不能に支持されたベースカムと、を有し、
前記シャフトカム及び前記ベースカムは、第1カム面と前記第2カム面とが対向するよう前記軸心上に配置され、
前記駆動部は、周囲の大気圧に応じて前記ベースカムを前記軸心に沿って移動させる、トルクコンバータ装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015102012A JP2016217435A (ja) | 2015-05-19 | 2015-05-19 | トルクコンバータ装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2015102012A JP2016217435A (ja) | 2015-05-19 | 2015-05-19 | トルクコンバータ装置 |
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JP2016217435A true JP2016217435A (ja) | 2016-12-22 |
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ID=57580744
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2015102012A Pending JP2016217435A (ja) | 2015-05-19 | 2015-05-19 | トルクコンバータ装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2016217435A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP3299198A1 (fr) | 2016-09-23 | 2018-03-28 | Reydel Automotive B.V. | Dispositif de volet d'obturation pour conduit d'aération |
-
2015
- 2015-05-19 JP JP2015102012A patent/JP2016217435A/ja active Pending
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EP3299198A1 (fr) | 2016-09-23 | 2018-03-28 | Reydel Automotive B.V. | Dispositif de volet d'obturation pour conduit d'aération |
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