JP2016215196A - 成形体および成形体の製造方法 - Google Patents

成形体および成形体の製造方法 Download PDF

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【課題】成形性に優れかつ強度が高い製紙スラッジ焼却灰を用いた成形体および成形体の製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】紙パルプ製造工程残渣を焼却処理して得られる製紙スラッジ焼却灰を主材料とする混合材料から製造された成形体であって、混合材料は、製紙スラッジ焼却灰と、セルロースナノファイバーと、を含有する。セルロースナノファイバーが混合されているので、成形体の強度を高くすることができる。また、製紙スラッジ焼却灰とセルロースナノファイバーの混合状態が適切な割合に調整されているので、成形体の強度をより高くすることができる。【選択図】図1

Description

本発明は、成形体および成形体の製造方法に関する。さらに詳しくは、製紙スラッジ焼却灰を原料とする成形体および成形体の製造方法に関する。
製紙スラッジは、製紙工場の各工程の排水を処理したときにできる残渣(有機物質、無機物質を含む)である。この製紙スラッジは、製紙工程で大量に発生している。そして、製紙スラッジに多くの有機物が含まれているため、焼却して熱回収することにより有効利用が図られている。
一方、製紙スラッジを焼却した際には、製紙スラッジ焼却灰が発生する。この製紙スラッジ焼却灰は産業廃棄物であり、その処理が課題となっている。
製紙スラッジ焼却灰は、その一部がコンクリート用の材料として利用されているが、その大部分が産業廃棄物として埋め立て処理されている。近年、製紙スラッジ焼却灰を活用する方法として、製紙スラッジ焼却灰から成形体を作製したり、成形体の原料を製造したりする技術が研究開発されている(例えば、特許文献1〜5)
特許文献1〜4には、セメントや石炭灰等の水硬性材料と製紙スラッジ焼却灰を混合して、固化体や粒状体を製造する技術が開示されている。しかし、これらの技術は、あくまでも水硬性材料の補助剤として製紙スラッジ焼却灰を利用するものにすぎない。
一方、特許文献5には、製紙スラッジ焼却灰と水だけで造粒物を作製する技術が開示されている。この技術では、製紙スラッジ焼却灰を0.4mm以下のサイズにまで微粉砕することによって、製紙スラッジ焼却灰に含まれるアロフェン構造体を剥き出しにすることができる旨が記載されている。そして、アロフェン構造体を剥き出しにすることによって、篩による製紙スラッジ焼却灰の粒度調整を行う場合に比べて反応性を飛躍的に高めることができるので、ある程度の強度を有する造粒物を製造できる旨が記載されている。
特開昭57−11867号公報 特開2007−15893号公報 特開2006−122726号公報 特開2011−212563号公報 特許第4494747号
しかるに、上記特許文献5の技術では、造粒物としての形状を維持する程度の強度しか実現されておらず、製紙スラッジ焼却灰を主たる材料として、ボード等の成形体を実現するまでにはいたっていない。
もし、製紙スラッジ焼却灰を主たる材料として、所定の強度を有するボード等の成形体を製造することができれば、製紙スラッジ焼却灰を産業廃棄物ではなく、産業資源として有効活用することができる。
本発明は上記事情に鑑み、成形性に優れかつ強度が高い製紙スラッジ焼却灰を用いた成形体および成形体の製造方法を提供することを目的とする。
(成形体)
第1発明の成形体は、紙パルプ製造工程残渣を焼却処理して得られる製紙スラッジ焼却灰を主材料とする混合材料から製造された成形体であって、前記混合材料は、製紙スラッジ焼却灰と、セルロースナノファイバーと、を含有することを特徴とする。
第2発明の成形体は、第1発明において、前記混合材料に含まれる製紙スラッジ焼却灰とセルロースナノファイバーの質量比が、95:5〜70:30であることを特徴とする。
第3発明の成形体は、第1または第2発明において、セルロースナノファイバーは、繊維幅が4〜500nm、繊維長が100nm〜100μmであることを特徴とする。
第4発明の成形体は、第1、第2または第3発明において、前記混合材料は、水分比率が35〜65重量%に調整された状態で混練されたものであることを特徴とする。
(成形体の製造方法)
第5発明の成形体の製造方法は、紙パルプ製造工程残渣を焼却処理して得られる製紙スラッジ焼却灰と、セルロースナノファイバーと、水と、を混合した材料を、圧縮脱水して乾燥することを特徴とする。
第6発明の成形体の製造方法は、第5発明において、製紙スラッジ焼却灰と、セルロースナノファイバーが、質量比において、95:5〜70:30となるように混合することを特徴とする。
第7発明の成形体の製造方法は、第5または第6発明において、セルロースナノファイバーは、繊維幅が4〜500nm、繊維長が100nm〜100μmであることを特徴とする。
第8発明の成形体の製造方法は、第5、第6または第7発明において、圧締圧力が、1〜30MPaであることを特徴とする。
第9発明の成形体の製造方法は、第5、第6、第7または第8発明において、混合した材料の水分比率を、35〜65重量%とすることを特徴とする。
(成形体)
第1発明によれば、セルロースナノファイバーが混合されているので、成形体の強度を高くすることができる。しかも、セルロースナノファイバーの混合割合を変化させることによって、成形体の強度や密度などの性質を調整することができる。
第2発明によれば、製紙スラッジ焼却灰とセルロースナノファイバーの混合状態が適切な割合に調整されているので、成形体の強度を一定以上に維持しつつその形状安定性を高くすることができる。
第3発明によれば、セルロースナノファイバーが適切なサイズに調整されているので、成形体の強度を高くしやすくなる。
第4発明によれば、混合材料が適切な水分比率に調整された状態で混練されているので、セルロースナノファイバーを均一に混合させることができる。しかも、混合材料の流動性もある程度維持できるので、成形性を向上させることができる。
(成形体の製造方法)
第5発明によれば、セルロースナノファイバーを混合して成形体を製造するので、製造された成形体の強度を高くすることができる。
第6発明によれば、製紙スラッジ焼却灰とセルロースナノファイバーの混合状態が適切な割合に調整されているので、成形体の強度を一定以上に維持しつつ、成形時の寸法安定性を高くすることができる。
第7発明によれば、セルロースナノファイバーが適切なサイズに調整されているので、成形体の強度を高くしやすくなる。
第8発明によれば、適切な圧力で圧縮するので、成形体の密度および強度を適切な状態に調整することができる。
第9発明によれば、適切な水分比率に調整して混練しているので、セルロースナノファイバーを均一に混合させることができる。しかも、材料の流動性もある程度維持できるので、成形性を向上させることができる。
本発明の成形体の製造方法のフロー図である。 実施例の結果を示した図である。 比較例1の成形体の破断面のSEM画像である。 実施例5の成形体の破断面のSEM画像である。 比較例3の成形体の破断面のSEM画像である。
本発明の成形体は、製紙工程の排水等を処理した際に発生する製紙スラッジを焼却処理して得られる製紙スラッジ焼却灰とセルロースナノファイバーを材料として作製されたものであり、セメント等の従来から使用される硬化材料を使用しなくても、一定以上の強度を発揮するものである。
なお、本発明の成形体を製造する際に、セメント等の硬化材料や結合剤を補助材料として使用することも可能である。例えば、成形体を製造する際には、製紙スラッジ焼却灰とセルロースナノファイバーと水とを混合した混合材料を使用するが、この混合材料にセメント等の硬化材料や、フェノール系樹脂、アミノ系樹脂など樹脂系の結合剤を補助材料として添加することも可能である。かかる硬化材料や結合剤を、補助材料として、総重量(つまり製紙スラッジ焼却灰とナノファイバー、補助材料を合せた重量)の1〜20%となるように添加すれば、安定した強度が確保でき、かつ柔軟性や加工性が向上する等のメリットが得られる可能性がある。硬化材料や結合剤を補助材料として添加する場合には、その量が主材である製紙スラッジ焼却灰よりも少なければよい。
(成形体の製造方法について)
まず、本発明の成形体の製造方法について説明する。
本発明の成形体は、製紙スラッジ焼却灰とセルロースナノファイバーと水と(必要な場合には補助材料と)を混合した混合材料から圧締や乾燥等の方法で水分を除去すれば、製造することができる(図1参照)。
例えば、混合材料を型枠に入れてそのまま自然乾燥(風乾等)したり加熱乾燥したりすれば、所定の形状の成形体を製造することができる。また、型枠に入れたまま、脱水してから乾燥して製造してもよい。乾燥前に、脱水すれば、乾燥時間を短縮できたり乾燥後の密度を調整できたりするという利点が得られる。型枠に入れた混合材料を脱水する方法はとくに限定されない。例えば、型枠内の混合材料から水を吸引して脱水(以下、単に吸引脱水という)したり、混合材料を加圧圧縮して脱水(以下、単に圧縮脱水という)したりしてもよい。
また、混合材料を型枠に入れなくても、混合材料をそのまま脱水や乾燥して成形体を製造することもできる。例えば、連続したシートを移動させながらその上に混合材料を載せていけば、混合材料を連続したシート状(または板状)にできるので、この材料を脱水・乾燥すれば連続したシート状(または板状)の成形体を製造できる。例えば、混合材料を使用して、大型のボードなどを製造することもできる。この場合でも、2枚のシート間に混合材料を挟んで加圧すれば、混合材料を圧縮脱水できる。また、混合材料が載せられているシートや混合材料を挟んでいるシートの表面から吸引すれば、吸引脱水も可能である。
(成形体の用途について)
上記のように、成形体を製造した場合、乾燥して固化させる前の処理、つまり、脱水処理の状況に応じて、同じ混合材料を使用しても、乾燥後の成形体の性質は変化する。具体的には、同じ混合材料を使用した場合でも、脱水処理の状況を変化させれば、成形体の密度や強度を変化させることができる。したがって、脱水処理の状況を変化させるだけで、同じ混合材料から、種々の用途に適した成形体を形成することができる。
例えば、圧縮せずに乾燥した場合、つまり、脱水なしで乾燥したり吸引脱水した後に乾燥したりした場合には、乾燥前の成形体の密度が小さくなるので、乾燥後の成形体の密度も小さくなる。つまり、ある程度の強度を維持しつつ軽量化した成形体を製造することが可能になる。すると、この方法で製造されたボードは、現在、内壁材や天井材などとして使用されているケイ酸カルシウムボードや石膏ボード等の代替品として使用することができる。
一方、圧縮脱水した後乾燥した場合には、乾燥前の成形体の密度を大きくできるので、乾燥後の成形体の密度も大きくなる。すると、成形体の強度が高くなる。また、密度が大きくなれば遮音性が高くなるので、圧縮脱水した後乾燥してボードを製造すれば、遮音ボードに適したボードを製造することができる。一方、混合材料は製紙スラッジ灰を主たる原料としているので、この混合材料で製造された成形体は燃えにくいが、その密度が大きくなることによってより燃えにくくなる。したがって、圧縮脱水した後乾燥してボードを製造すれば、耐火性の高いボードを製造することができる。
(圧縮脱水)
上述したように、脱水状況によって乾燥前の混合材料の密度や水分比率を調整することができるが、圧縮脱水すれば、密度や水分比率をより細かく調整することが可能となる。つまり、圧縮脱水する場合には、圧縮の際に加える力を調整することで、乾燥前の混合材料の密度や水分比率を調整することができる。乾燥前の混合材料の密度や水分比率は、乾燥後の成形体の密度や強度に影響する。したがって、乾燥前の混合材料を適切な圧縮力で圧縮して脱水を行えば、成形後の成形体の密度および強度を適切な状態に調整することができる。
例えば、圧縮力(つまり加圧力)を大きくすれば、圧縮脱水の進行に伴って混合材料間の空隙が潰されるので、脱水後の混合材料はその密度が高くなる。したがって、同じ混合材料を使用して同じサイズ(圧縮後のサイズ)の成形体を形成した場合には、圧縮力を大きくすることによって、成形後の成形体の密度が大きくなり成形体の強度を向上させることができる。
一方、圧縮力をそれほど大きくしなければ、圧縮脱水が進行しても混合材料間にはある程度の空隙が維持されるので、成形後の成形体の密度はそれほど大きくならない。すると、同じ混合材料を使用して同じサイズ(圧縮後のサイズ)の成形体を形成した場合には、圧縮力が小さければ、圧縮力が大きい場合に比べて強度は弱くなるものの、成形後の成形体を軽量化することができる。
なお、圧縮脱水することによって、成形体に付与する性質(強度や密度等)を調整しやすくなるが、圧縮脱水する圧縮力は、とくに限定されないが、1〜40MPa程度としてもよいし、1〜30MPaとしてもよい。
例えば、成形体の製造において、成形体の強度を高くする上では、その圧縮力は20MPa以上が望ましく、30MPa以上がより望ましい。
また、成形体を所定の強度を維持しつつ軽量化を実現する上では、圧縮脱水する圧縮力は10〜30MPaが望ましい。
一方、成形体として、強度よりも軽量化が重視される場合には、圧縮脱水する圧縮力は1〜20MPaが望ましい。
例えば、混合材料として、製紙スラッジ焼却灰とセルロースナノファイバーと水を、重量比で95:5:100で混合したものを使用して成形体を形成する場合、20MPa以上の圧縮力を付与して成形体(板状)を作製する。すると、成形体の曲げ強度を10MPaまたはそれ以上の値に確保することも可能となる。
なお、混合材料を圧縮する方法はとくに限定されず、種々の方法を採用することができるが、混合材料全体を均一に圧縮できる方法が望ましい。例えば、型枠に入れて成形する場合であれば、型枠の形状(混合材料を入れる空間)と相似形の押圧部材によって、型枠内の混合材料を圧縮する(圧締)。すると、混合材料全体を均一に圧縮することができる。
また、一対のシート状部材や一対の板状部材の間に混合材料を挟んで圧縮しても、混合材料全体を均一に圧縮することは可能である。例えば、シートの幅よりも軸方向の長さが長い一対のローラ間に、混合材料を挟んだ一対のシート状部材を通せば、混合材料全体を均一に圧縮することができる。
(混合材料の水分比率)
混合材料は、製紙スラッジ焼却灰とセルロースナノファイバーと水とを混合して混練して製造される。また、補助材料を添加する場合には、上記材料に補助材料を添加して混練して製造される。かかる混練する際に、製紙スラッジ焼却灰およびセルロースナノファイバー(必要な場合には補助材料)と混合する水の量、つまり、混合材料の水分量はとくに限定されない。
しかし、水分量が多くなれば、混練しやすくなる一方、圧締時に混練物が型から流れ出す等の問題が生じる可能性がある。また、成形材料の成形性が低下したり成形時に乾燥時間が長くなったりする等の問題が生じる。逆に、水分量が少なすぎると、混合材料の流動性や、混合材料中における各材料の分散性が低下し、混合材料の混合状態を均一にできない可能性がある。
したがって、混合材料の水分比率(全ての材料の重量に対する割合)は、35〜65重量%が好ましく、44〜56重量%がより好ましい。かかる水分比率とすれば、各材料を混合材料中に均一に分散させることができる。例えば、セルロースナノファイバーや、製紙スラッジ焼却灰に由来する粒子やその水和物を混合材料中に均一に分散させることができる。しかも、混練後の混合材料の流動性もある程度維持できるので、混合材料の成形性を向上させることができる。
なお、セルロースナノファイバーは水分を含んでいるが、上記水分比率は、混合材料としての水分比率であり、セルロースナノファイバーが含有する水分も含んだ値である。この水分比率は、混合材料を赤外水分計等によって測定することによって得ることができる。
また、混合材料を混練する方法はとくに限定されない。上述したような水分比率の混合材料を均一に混合できるのであれば、種々の方法を採用することができる。例えば、公知の混練機(例えば、TX−0.5 (株)井上製作所等)を使用することができる。
(乾燥後の成形体の含水率)
なお、乾燥後の成形体の含水率はとくに限定されない。成形体を使用する用途に応じて、適切な含水率となるようにすればよい。例えば、石膏ボードが使用されている用途に成形体を使用する場合であれば、乾燥後の成形体の含水率は3%以下が望ましい(JIS A 6901参照)。ケイ酸カルシウム板が使用されている用途に成形体を使用する場合であれば、乾燥後の成形体の含水率は5%以下が望ましい。
また、強度や寸法安定性を考慮すれば、乾燥後の成形体の含水率は3%以下程度が望ましい。
(混合材料)
上述したように、本発明の成形体に使用される混合材料は、製紙スラッジ焼却灰とセルロースナノファイバーと水(必要な場合には補助材料)から作製されている。
(混合割合)
混合材料は、主として、製紙スラッジ焼却灰と、セルロースナノファイバーと、水と、を混合して作製されているが、製紙スラッジ焼却灰とセルロースナノファイバーの混合割合は、とくに限定されない。しかし、セルロースナノファイバーの割合が少なすぎれば、セルロースナノファイバーによる強度向上効果を十分に得られない可能性がある。一方、セルロースナノファイバーの割合が多すぎると、混練が難しくなったり強度が高くなり加工性が悪くなったりするなどの問題が生じる可能性がある。
したがって、製紙スラッジ焼却灰とセルロースナノファイバーの混合割合は、両者を合わせた質量を100とした場合において、製紙スラッジ焼却灰とセルロースナノファイバーの質量比が、製紙スラッジ焼却灰:セルロースナノファイバー=99:1〜50:50となるように混合することが好ましい。つまり、製紙スラッジ焼却灰とセルロースナノファイバーを合せた重量(固形分重量)に対して、セルロースナノファイバーを1〜50重量%となるように混合することが好ましい。
なお、以下では、固形分重量に対するセルロースナノファイバーの重量割合を、単に、セルロースナノファイバーの重量割合という場合がある。また、補助材料を使用する場合には、固形分重量は、補助材料を含んだ重量を意味することになる。
また、製紙スラッジ焼却灰:セルロースナノファイバーの割合を95:5〜60:40とすれば、成形体の曲げ強度を10MPa以上の値とすることができる。つまり、建材用のボードとして広く採用されているケイ酸カルシウムを主原料とする建材用のボード(いわゆるケイカルボード)と同等またはそれ以上の曲げ強度を有する成形体を製造することができる。
また、製紙スラッジ焼却灰:セルロースナノファイバーの割合を95:5〜70:30としてもよい。この場合には、混合材料を乾燥して成形体を形成する際に、収縮等による変形を5%以下とすることができる。例えば、矩形の板状の成形体を成形した場合には、縦横寸法の変化割合や厚さの変化割合を5%以下とすることができる。すると、成形体によって、10MPa以上の曲げ強度を有しつつ、ある程度の寸法精度を維持したボード等を製造することができる。
とくに、セルロースナノファイバーの割合を5〜20重量%すれば収縮等による変形を4%以下とすることができるし、一方、セルロースナノファイバーの割合を20〜30重量%すれば13MPa程度以上の曲げ強度とすることできる。
つまり、混合材料における製紙スラッジ焼却灰:セルロースナノファイバーの混合割合は、要求される用途に応じて、適宜定めることができる。
なお、セルロースナノファイバーの割合を30重量%より大きくした場合には、ボードなどを形成すると、混合材料を乾燥する際に反りが生じる。一方、セルロースナノファイバーの割合を30重量%より大きくした場合には、比強度が大きくなるので、軽量かつ強度の高い材料とすることができる。したがって、高い寸法精度を要求されない用途であれば、セルロースナノファイバーの割合を30重量%より大きくしてもよいし、軽量化と比強度を大きくする上では、40重量%以上としてもよい。
また、混合材料に、製紙スラッジ焼却灰とセルロースナノファイバーに加えて、パルプ等の繊維材料を加えてもよい。例えば、セルロースナノファイバーの一部をパルプに代えて混合材料を形成した場合には、セルロースナノファイバーだけを加えた場合に比べて成形体の曲げ強度は低下するが、混合材料を乾燥して成形体を形成した際の収縮を抑えることができるし、軽量化を図ることもできる。したがって、曲げ強度よりも重量や寸法精度が重要な場合には、セルロースナノファイバーの一部をパルプに代えた混合材料によって成形体を形成してもよい。
また、上記質量割合を算出する根拠となるセルロースナノファイバーの質量は、セルロースナノファイバーに含有される水分を除いた質量である。つまり、セルロースナノファイバーの固形分だけの質量である。なお、セルロースナノファイバーの固形分だけの質量は、セルロースナノファイバー(水分を含む)の質量と赤外水分計等によって求めた水分量に基づいて算出することができる。
(製紙スラッジ焼却灰)
本発明の成形体の主原料となる製紙スラッジ焼却灰は、製紙工程の排水等を処理した際に発生する製紙スラッジを焼却処理(例えば、800℃〜900℃程度の燃焼温度で焼却)した際に回収される焼却灰のことである。かかる製紙スラッジ焼却灰は、通常、粒子状の物質であり、内部に多数の空隙を有している。
(焼却設備)
製紙スラッジ焼却灰は、原料となる製紙スラッジを焼却すれば製造することができるが、製紙スラッジを焼却する方法やその設備はとくに限定されない。例えば、一般的な焼却装置(例えば、流動床焼却炉や、ストーカー炉、ロータリーキルン)を、製紙スラッジを焼却する設備として採用することができる。かかる焼却装置で製紙スラッジを焼却すれば、製紙スラッジ焼却灰を得ることができる。
また、製紙スラッジを焼却して製造された製紙スラッジ焼却灰を回収する方法もとくに限定されない。一般的な焼却装置によって製紙スラッジを焼却した場合には、その装置が有する焼却灰回収装置を使用して、製紙スラッジ焼却灰を回収することができる。例えば、一般的な焼却装置には、燃焼ガス中に含まれる粒状体を回収する焼却灰回収装置(例えば、サイクロンやバグフィルター等)が設けられている。したがって、かかる焼却灰回収装置によって捕捉された粒状体を回収すれば、その回収物を製紙スラッジ焼却灰として採用することができる。
(製紙スラッジ焼却灰の成分)
本発明の成形体の主原料となる製紙スラッジ焼却灰を構成する物質、つまり、製紙スラッジ焼却灰に含まれる成分はとくに限定されない。製紙スラッジ焼却灰は、一般的な製紙スラッジに含まれる無機物質に由来する成分、例えば、カルシウム(Ca)やケイ素(Si)、アルミニウム(Al)などの元素を含んでいればよい。
例えば、一般的な製紙スラッジには、パルプ由来の無機物質や填料由来の無機物質が含まれている。とくに、填料由来の無機物質である、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、カオリン(はくとう土)、焼成カオリン、シリカ、タルク、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、二酸化チタン、硫酸バリウムなどが、製紙スラッジには含まれている。したがって、かかる無機物質を含む製紙スラッジを焼却すれば、かかる無機物質に由来する、カルシウム(Ca)やケイ素(Si)、アルミニウム(Al)などの元素が、酸化カルシウムやカオリンなどの種々の形態で存在する製紙スラッジ焼却灰を得ることができる。
(製紙スラッジ焼却灰の粒子径)
また、製紙スラッジ焼却灰の粒子径はとくに限定されない。上述した焼却灰回収装置で回収された焼却灰は、種々の粒子径を有している。例えば、バグフィルターで回収されるバグフィルター灰は、通常、粒子径が20μm以下のものを含んでいるが、サイクロンで回収されるサイクロン灰は、通常、粒子径が1000μm以下のものを含んでいる。したがって、製紙スラッジ焼却灰として、バグフィルター灰を使用すれば、粒子径が20μm以下のものが大部分を占める製紙スラッジ焼却灰となるし、サイクロン灰を使用すれば、粒子径が1000μm以下のものであって、粒子径が20μm以下のものが比較的少ない製紙スラッジ焼却灰となる。そして、バグフィルター灰とサイクロン灰の両方を使用すれば、粒子径が1000μm以下で所望の粒度分布を有する製紙スラッジ焼却灰となる。
混合材料に使用する製紙スラッジ焼却灰の粒度分布が異なれば、混合材料の固化しやすさなどが変化するので、用途や成形条件などに合わせて適切な粒度分布の製紙スラッジ焼却灰を使用することが望ましい。例えば、混合材料に使用する製紙スラッジ焼却灰として、その粒子径が20μm以下の微粒子を15体積%以上となるように含有するように調整したものを使用すれば、混合材料を固化させやすくなる。つまり、成形体の固化を迅速に進めたい場合には、粒度分布が20μm以下の微粒子を15体積%以上となるように調整された混合材料が適している。
(セルロースナノファイバー)
セルロースナノファイバーは、一般的なセルロースナノファイバーを使用することができ、その原料や製造方法はとくに限定されない。
例えば、セルロースナノファイバーの原料としては、木材パルプ(機械パルプ、化学パルプ、古紙パルプ)や、植物系材料(例えば、ケナフ、竹、稲わら等)、リグノセルロース、市販のセルロース粉末等を挙げることができる。もちろん、これらに限定されず、セルロースを含有するものであれば、セルロースナノファイバーの原料として採用することができる。
また、上述した原料からセルロースナノファイバーを製造する方法としては、機械的解繊(ディスクミル、ホモジナイザー等による摩砕や破砕)、化学的方法(TEMPO触媒酸化、カチオン化等)、生物的方法(バクテリアセルロース)を挙げることができる。
上記の原料や製造方法で製造されるセルロースナノファイバーであって、混合材料の材料として使用するセルロースナノファイバーの繊維幅や繊維長はとくに限定されない。例えば、繊維幅が4〜500nm、繊維長が100nm〜100μmであるセルロースナノファイバーが混在するものを使用することができる。
本発明の成形体の製造方法によって成形体を作製し、セルロースナノファイバー添加が成形体の強度に与える影響を確認した。
実験では、製紙スラッジ焼却灰にセルロースナノファイバーを添加して作製された成形体(実施例1〜7)と、製紙スラッジ焼却灰にセルロースナノファイバーと叩解パルプの両方を添加して作製された成形体(実施例8)、製紙スラッジ焼却灰のみで作製した成形体(比較例1)、製紙スラッジ焼却灰に叩解パルプを添加して作製された成形体(比較例2、3)を製造し、これらの成形体について、曲げ強度を比較した。
各成形体の配合割合は、表1のとおりである。
混合材料は、水を加えた状態で、混練機(TX−0.5(株)井上製作所)を用いて10分間混練した。混練した際の混練機のトルク電流は、0.9Aであった。
混練した混合材料は、型枠(80mm×10mm)に入れて、20MPaの圧力で5分間圧締した。圧締は、手動のプレス機を使用して行った。
圧締後の混合材料は、型枠から取り出して、1週間、風乾した後、曲げ試験とSEMによる断面観察を行った。
また、成形直後と養生後(風乾後)の成形体寸法を測定した。
なお、製紙スラッジ焼却灰は、丸住製紙株式会社から提供された焼却灰を使用した。
また、セルロースナノファイバーおよび叩解パルプは、クラフトパルプ(LBKP)を一晩水に浸漬させた後、セルロースナノファイバーはマスコロイダー(MKZA10-15j、増幸産業(株))、叩解パルプはナイヤガラビーター((株)東洋精機)を用いて作製した。
なお、マスコロイダーおよびナイヤガラビーターでの処理する際のクラフトパルプは、その固形分濃度を1.5重量%とした。また、ナイヤガラビーターによる叩解は、ろ水度(CSF)が400mlとなるまで行った。
また、混練の際には、セルロースナノファイバーおよび叩解パルプともに、ろ紙に水分を吸収させたもの(つまり水分比率を低くしたもの)を使用した。このときの水分比率を赤外水分計(FD−800、(株)ケット科学研究所)で測定したところ、セルロースナノファイバーが約79.5%であり、叩解パルプが約78%であった。
(曲げ強度と密度)
まず、各成形体の曲げ強度と密度を測定した。
曲げ強度は、三点曲げ試験により、破断時の最大荷重(N)を測定し、この最大荷重(N)と成形体の寸法から曲げ応力(MPa)を計算した。なお、三点曲げ試験における支点間距離は50mmである。
また、成形体の密度は、成形体の重量と体積から求めた。
結果を図2(A)に示す。
図2(A)に示すように、セルロースナノファイバーを添加した実施例1〜8では、製紙スラッジ灰だけからなる比較例1よりも曲げ強度が向上することが確認された。また、製紙スラッジ灰に叩解パルプを添加した比較例2、3よりも曲げ強度が向上することが確認された。したがって、セルロースナノファイバーの添加により、曲げ強度を向上させることができることが確認された。
とくに、セルロースナノファイバーを5重量%添加した実施例3では、セルロースナノファイバーを1、3重量%添加した実施例1、2に比べて、急激に曲げ強度が増加することが確認された。
同様に、セルロースナノファイバーを20重量%以上添加した実施例5でも、セルロースナノファイバーを5、10重量%添加した実施例3、4に比べて、急激に曲げ強度が増加することが確認された。
つまり、セルロースナノファイバーの添加量を増加させることで徐々に曲げ強度が増加するのではなく、特定の割合が混合された際に、曲げ強度の大きな変化が生じることが確認された。
また、曲げ強度を密度で除した比強度は、比較例1、実施例1〜8の場合において、それぞれ、1.86N・m/kg(比較例1)、3.86N・m/kg(実施例1)、3.72N・m/kg(実施例2)、6.88N・m/kg(実施例3)、6.87N・m/kg(実施例4)、9.09N・m/kg(実施例5)、9.87N・m/kg(実施例6)、10.18N・m/kg(実施例7)、3.87N・m/kg(実施例8)、であった。
いずれの実施例も、比較例1と比較して比強度が約2倍以上にまで向上した。つまり、セルロースナノファイバーを1重量%以上添加するだけで、比強度を2倍以上まで向上できることが確認された。
とくに、実施例3〜7では、比強度は3倍以上に向上しており、セルロースナノファイバーの添加により、軽量化と強度向上の両立を実現できていることが確認された。
(寸法精度)
つぎに、成形体を製造した際に、乾燥過程における収縮による形状変化を確認した。形状変化は、養生前後の成形体の寸法の減少率によって評価した。
養生前後の成形体の寸法減少率を表2に示す。寸法減少率は、寸法減少率(%)={(圧締後寸法−養生後寸法)/圧締後寸法}×100、で求めた値である。
表2に示すように、縦、横、厚さ方向で比較すると、厚さ方向の寸法減少率が最も大きい傾向が見られた。
厚さ減少率は、実施例1〜8は、0.6%(実施例1)、0.5%(実施例2)、2.0%(実施例3)、2.7%(実施例4)、3.7%(実施例5)、2.5%(実施例6)、1.1%(実施例7)、0.4%(実施例8)であった。
一方、比較例1〜3では、0.0%(比較例1)、3.0%(比較例2)、5.1%(比較例3)であった。
縦横の減少率では、実施例3〜5までは比較的緩やかな変化であるが、実施例2と実施例3の間、実施例5と実施例6の間、および、実施例6と実施例7の間で、縦横の減少率が大きくなっている。この間において、成形体の内部に何らかの構造的な変化があった可能性が考えられる。とくに、実施例3〜5と実施例6、7では、縦横の減少率の傾向も変化しており、実施例5と実施例6の間では、何らかの構造的な変化があった可能性が考えられる。
また、実施例6と実施例7の間では、縦横の減少率の傾向は同じであるが、縦横の減少率が急激に増加していることから、この間でも何らかの構造的な変化があった可能性が考えられる。
一方、実施例1、2では、縦横の減少率がいずれもほとんどなく、実施例8でも縦横の減少率は0.4%であった。このうち、実施例8では、実施例3と同量のナノファイバーを添加しており、比較例1と同量の叩解パルプを含有しているにも関わらず、実施例3および比較例1と比べて、減少率が小さい。つまり、ナノファイバーと叩解パルプが共存することによって、内部に寸法減少率を抑える構造が形成されている可能性があることが推測される。
以上のように、セルロースナノファイバーの添加率を変えることによって、成形体の強度を変化させることができることが確認された。
そして、セルロースナノファイバーの添加量が多くなれば単純に曲げ強度が増加するのではなく、何らかの要因によって、特定の添加量で曲げ強度の変化が生じることが推測された。
また、セルロースナノファイバーの添加率を増加することによって、厚さ減少率や縦横の減少率は増加する傾向にあることが確認されたが、厚さ減少率や縦横の減少率も、曲げ強度と同様に、添加量が多くなれば単純に減少率が大きくなるのではないことが推測された。
さらに、セルロースナノファイバーと叩解パルプの両方を添加した実施例8では、同じ割合のセルロースナノファイバーを含む実施例3や、同じ割合の叩解パルプを含む比較例2と比べて、減少率が小さくまた均一であることが確認された。実施例8では、比較例1に対して比強度が2倍以上となっているので、セルロースナノファイバーと叩解パルプの両方を添加することによって、ある程度の曲げ強度と成形性を兼ね備えた成形体を製造できる可能性があることが確認された。
(圧縮圧力の影響)
また、圧締する際の圧力が曲げ強度などに与える影響を確認した。
実験では、実施例3の混合材料を使用して、圧締する際の圧力だけを変化させて上記成形体を製造した。
図2(B)に示すように、圧締する際の圧力を増加させれば、曲げ強度が強くなり、密度も増加することが確認された。つまり、圧締する際の圧力を調整すれば、成形体の曲げ強度や密度を調整できることが確認された。
(成形体の内部構造の確認)
セルロースナノファイバーや叩解パルプを添加した場合に、製紙スラッジ焼却灰だけの場合に比べて、程度の差はあるものの、曲げ強度が向上している。そこで、セルロースナノファイバーや叩解パルプの添加が成形体の内部構造に与える影響を調べるために、成形体の破断面をSEMで観察した。
セルロースナノファイバーの影響は、ナノファイバーの添加量の増加により、大きく曲げ強度が強くなった実施例5の成形体について、その断面のSEM画像を確認した。
まず、製紙スラッジ灰の固化状況を確認するために、比較例1の成形体の断面のSEM画像を確認した。
図3(a)に示すように、比較例1の断面には、黒丸で示した板状の結晶部と(b)に示すように、ナノオーダー幅の微細な針状結晶が確認された。蛍光X線分析結果では、製紙スラッジ焼却灰の構成成分がセメントと類似していた。そこで、XRDを用いて結晶構造を確認したところ、セメントの主要成分であるエーライト、ビーライトと複数のピークが一致していたものの、ピークは完全には一致していなかった。つまり、製紙スラッジ焼却灰の硬化する現象は、セメントとは異なることが推測された。
図4(A)に示すように、実施例5の成形体のSEM画像では、製紙スラッジ焼却灰や図3で確認された結晶、水和物の隙間にセルロースナノファイバーのネットワーク構造が確認できた。セルロースナノファイバーを添加した場合、セルロースナノファイバーが成形体中で製紙スラッジ焼却灰の粒子間の隙間を埋めた状態で脱水・乾燥されたことにより、粒子間を強固に凝集させる接着剤のような役割を果たしていると考えられた。すなわち、セルロースナノファイバーを添加した成形体の強度の発現は、セルロースナノファイバー表面に存在する水酸基間の水素結合によるものと考えられた。
しかし、実施例2と実施例3では、セルロースナノファイバーの量を倍にすることによって曲げ強度が大幅に増加しているが、実施例3と実施例4では、セルロースナノファイバーの量を倍にしても、曲げ強度はほぼ同じである。一方、実施例5と実施例6では、セルロースナノファイバーの量を倍にすることによって曲げ強度が大幅に増加している。これらの現象から、結晶や水和物の隙間に位置するセルロースナノファイバーのネットワーク構造の増加(つまり結晶や水和物の隙間での水素結合の増加)だけが強度発生の原因ではないことが推測される。
そこで、製紙スラッジ焼却灰とセルロースナノファイバーの結合状況をより詳細に確認した
写真を図4(B)に示す。
図4(B)に示すように、セルロースナノファイバーは、製紙スラッジ焼却灰の粒子や結晶や水和物の隙間に位置して結晶などを連結しているだけでなく、製紙スラッジ焼却灰の粒子内部に侵入していることが確認できる。つまり、製紙スラッジ焼却灰とセルロースナノファイバーの結合は、単に表面での結合ではなく、セルロースナノファイバーが製紙スラッジ焼却灰の内部まで侵入することによってより強固に結合していることが確認された。つまり、製紙スラッジ焼却灰の粒子同士をセルロースナノファイバーの紐が縫ったような状態になって製紙スラッジ焼却灰の粒子同士を連結しているような状態となっており、この構造が成形体の強度に寄与している可能性がある。
例えば、製紙スラッジ焼却灰の粒子は、多数の空隙を有する多孔質の物質であり、複数の孔同士が互いに連通している可能性がある。一方、セルロースナノファイバーは、その繊維幅が粒子の空隙の内径よりも小さく、その繊維長が粒子径よりも長いものが存在する。このため、混練工程において、製紙スラッジ焼却灰の粒子の開口から内部へ侵入したセルロースナノファイバー同士が内部で連結すれば、セルロースナノファイバーが粒子を縫ったような状態になる。そして、粒子から突出しているセルロースナノファイバーの自由端同士が絡まったり水素結合したりして連結すれば、見た目上、複数の粒子がセルロースナノファイバーの紐によって製紙スラッジ焼却灰の粒子を縫うようにして連結されたような状態となる可能性がある。すると、製紙スラッジ焼却灰の粒子の表面にセルロースナノファイバーが付着しているような場合に比べて、セルロースナノファイバーによって製紙スラッジ焼却灰の粒子同士がより強固に連結できるので、成形体の曲げ強度等が向上している可能性があると考えられる。
一方、図5に示すように、比較例3の成形体断面のSEM画像では、製紙スラッジ焼却灰のマトリックス中にパルプが埋め込まれたような構造が確認できた(図5(b))。図5(b)は図5(a)の黒丸部分の拡大画像であるが、図5(b)の矢印部分に示したように製紙スラッジ焼却灰とパルプの接着部には、全く接着していない空隙の部分が観察された。パルプを添加した成形体では、パルプと製紙スラッジ焼却灰のマトリックス部の未接着部で破断が生じており、その影響で、セルロースナノファイバーを添加した場合に比べて強度が低下していると推測された。
以上の結果より、製紙スラッジ焼却灰にセルロースナノファイバーを添加することで、成形体の曲げ強度を増加できることが確認された。
本発明の成形体は、建材ボードやブロック等に適している。

Claims (9)

  1. 紙パルプ製造工程残渣を焼却処理して得られる製紙スラッジ焼却灰を主材料とする混合材料から製造された成形体であって、
    前記混合材料は、
    製紙スラッジ焼却灰と、セルロースナノファイバーと、を含有する
    ことを特徴とする成形体。
  2. 前記混合材料は、
    製紙スラッジ焼却灰とセルロースナノファイバーの質量比が、95:5〜70:30である
    ことを特徴とする請求項1記載の成形体。
  3. セルロースナノファイバーは、
    繊維幅が4〜500nm、繊維長が100nm〜100μmである
    ことを特徴とする請求項1または2記載の成形体。
  4. 前記混合材料は、
    水分比率が35〜65重量%に調整された状態で混練されたものである
    ことを特徴とする請求項1、2または3記載の成形体。
  5. 紙パルプ製造工程残渣を焼却処理して得られる製紙スラッジ焼却灰と、セルロースナノファイバーと、水と、を混合した材料を、圧縮脱水して乾燥する
    ことを特徴とする成形体の製造方法。
  6. 製紙スラッジ焼却灰と、セルロースナノファイバーが、質量比において、95:5〜70:30となるように混合する
    ことを特徴とする請求項5記載の成形体の製造方法。
  7. セルロースナノファイバーは、
    繊維幅が4〜500nm、繊維長が100nm〜100μmである
    ことを特徴とする請求項5または6記載の成形体の製造方法。
  8. 圧締圧力が、1〜30MPaである
    ことを特徴とする請求項5、6または7記載の成形体の製造方法。
  9. 混合した材料の水分比率を、35〜65重量%とする
    ことを特徴とする請求項5、6、7または8記載の成形体の製造方法。

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