JP2016215147A - 膜ファウリング原因物質吸着材 - Google Patents

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Abstract

【課題】膜ろ過の膜ファウリング原因物質、特に多糖やタンパク質などのバイオポリマーを、塩を含有する被処理水中であっても効率的に吸着し、かつ、水からの分離性にも優れるカチオン性吸着材を提供すること。【解決手段】カチオン性基の密度が10 mmol/g〜30 mmol/gであるカチオン性基含有高分子が含まれ、また、固体粒子材料が吸着材中に分散された吸着材であって、膜ファウリング原因物質に対して吸着能を有する吸着材。【選択図】なし

Description

本発明は、固体粒子材料が樹脂中に分散した、膜ファウリング原因物質(以下、単にファウリング原因物質と称する場合がある)を除去する吸着材、および、それを用いた水処理方法に関する。
自然環境下または人工環境下から得られる原水に対して水処理を行う場合、そのような原水には、有機体炭素が存在しており、有機体炭素には溶存有機炭素(溶存性有機体炭素、DOC:Dissolved Organic carbon)などが含まれる。特許文献1によると、DOCは、有機炭素、有機着色剤、及び天然の有機物質を包含する用語であるとともに、植物残留物の分解により形成される有機化合物の混合物であるフミン酸及びフルボ酸のようなフミン質をも包含する用語であり、DOCを構成する主要な化合物及び材料は可溶性であるため、水から容易に分離できないとされている。そして特許文献1では;a.溶解された有機炭素を含む水にカチオン性基を有する磁気イオン交換樹脂を添加し;b.前記樹脂上への前記溶解された有機炭素の吸着を可能にするために前記水に前記樹脂を分散し;そしてc.前記溶解された有機炭素により負荷された磁気カチオン性樹脂を前記水から分離する工程により、溶解された有機炭素を水から除去する方法を提案している。
一方、近年、膜ろ過におけるファウリング物質に関する詳細な解析がなされており、非特許文献1では、物理的に不可逆な膜ファウリングの原因物質は、フミン酸やフルボ酸などの芳香族環を有する疎水性物質よりも、比較的親水性が高い溶存有機物である多糖やたんぱく質などのバイオポリマーが主因であることが報告されている。
糖類やたんぱく質などのバイオポリマーの除去技術については、例えば、特許文献2では、カチオン性ポリマーからなる粒子を被処理水に添加して吸着処理し、該吸着処理した被処理水を分離膜により膜分離処理する方法が提案されている。
一方、分散した粒子材料を含む樹脂は、樹脂ビーズの密度を上げること、または、磁気感受性のような別の特性を付与することにより分離の容易さを向上することができ、水から樹脂を分離するために使用できる。磁気粒子を含む樹脂は磁気引力により急速に凝集し、そして沈降する。例えば、特許文献3では、1種類以上のモノマー、固体粒子材料、前記固体粒子材料を分散させ、かつ、前記モノマーと反応する固相分散剤、を含む分散体を製造すること、前記1種類以上のモノマーを重合反応させて、ポリマービーズを形成させることが提案されている。このように形成されたポリマービーズは、固体粒子材料がポリマービーズ全体に均一に分散しており、水からの分離が容易である。
前記特許文献1は、前記特許文献3に従って調製した磁気イオン交換樹脂を用いている。
特許第3839477号公報 特許第5282864号公報 特開2004−300448号公報
渡辺義公、膜、38(5)、207−214(2013)
しかし特許文献1および2の発明のいずれのカチオン性吸着材においても、特に、塩を含有する被処理水を処理した場合、イオン成分の吸着競合が進行するため、水中の膜ファウリング原因物質、特に多糖やタンパク質などの物理的に不可逆な膜ファウリングの原因物質と考えられている成分の吸着性能が不充分である。
本発明の目的は、膜ろ過の膜ファウリング原因物質、特に多糖やタンパク質などのバイオポリマーを、塩を含有する被処理水中であっても効率的に吸着し、かつ、水からの分離性にも優れるカチオン性吸着材を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の点を見出した。すなわち、通常自然界に存在する水中有機物は、負電荷を帯びているものが多く、カチオン性基を有する吸着材で除去しやすいが、一般的に用いられるカチオン性吸着材はカチオン性基の密度が高くないため、塩を含有する被処理水中では、イオン成分が吸着競合し、効率的に該成分を除去できないと考えられる。しかしながら、驚くべきことに、カチオン性基の密度が10mmol/g〜30 mmol/gである高分子(A)が導入された吸着材を適用すると、塩を含む被処理水中であってもカチオン性基が協同的に機能するため、膜ファウリング原因物質、特に多糖やタンパク質などのバイオポリマーを効率的に吸着できること、さらに、前記吸着材中に固体粒子材料を分散させることで、水からの高い分離性を付与できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の一つの態様は、カチオン性基の密度が10 mmol/g〜30 mmol/gである高分子(A)が含まれ、かつ、固体粒子材料が吸着材中に分散された吸着材であって、膜ファウリング原因物質に対して吸着能を有する吸着材である。
前記吸着材においては、カチオン性基がアミノ基(1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基)、4級アンモニウム基、イミノ基、アミジン基、グアニジノ基、イミダゾール基、4級イミダゾリウム基、ピリジル基、4級ピリジニウム基から選択される少なくとも1種類の官能基であるカチオン性基含有高分子が含まれることが好ましい。
前記吸着材においては、高分子(A)がポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリアミジン、ポリグアニジン、ポリアミノ酸、ポリピリジン、およびそれらの塩から選択される少なくとも1種類の高分子であることが好ましい。
前記吸着材においては、カチオン性基の密度が11mmol/g〜28mmol/gであることが好ましい。
前記吸着材においては、カチオン基含有高分子が基材に、導入された高分子吸着材であってもよく、好ましくは、基材(B)が親水性高分子であってもよく、特に好ましくは、基材(B)がエチレン−ビニルアルコール系共重合体であってもよい。
前記吸着材においては、25℃水中における膨潤度が30〜250%であってもよい。
前記吸着材においては、膜ファウリング原因物質が、バイオポリマーを含んでいてもよい。
前記吸着材においては、固体粒子材料が重量付与剤であってもよく、好ましくは、固体粒子材料が、チタニア、ジルコニア、重晶石、錫石、シリカ、アルミノシリケート、酸化ニッケル、酸化銅、酸化亜鉛及び硫化亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。また、固体粒子材料が磁性材料であってもよく、好ましくは、固体粒子材料が、γ―酸化鉄(γ―Fe、磁赤鉄鉱としても知られる)、磁鉄鉱(Fe)及び二酸化クロムからなる群より選ばれる少なくとも1種類であってもよい。
前記吸着材においては、固体粒子材料が0.1〜500μmの範囲のサイズであってもよく、好ましくは、0.1μm〜10μmの範囲のサイズであってもよい。
本発明は別の態様として、膜ファウリング原因物質を含む被処理水を吸着材と接触させ、吸着材により被処理水中に含まれる膜ファウリング原因物質を吸着させる吸着工程と、
吸着工程により得られた吸着処理水を、膜ろ過処理する膜ろ過工程を含み、
膜ろ過工程が、限外ろ過(UF)膜、精密ろ過(MF)膜、ナノろ過(NF)膜、および逆浸透(RO)膜からなる群から選択される少なくとも一種の膜を用いて、一段または多段にて行われる、水処理方法である。
上記水処理方法において、前記吸着材を用いる被処理水は0.1wt%以上の塩を含む水であってもよい。
上記水処理方法は、さらに、吸着工程における膜ファウリング原因物質を吸着した吸着材を再生する再生工程を備えていてもよい。
本発明の吸着材により、従来、塩を含む被処理水中からの除去が困難であった膜ファウリング原因物質、特に物理的に不可逆な膜ファウリングを生じる原因物質と考えられている多糖類やタンパク質などのバイオポリマーを、塩を含む被処理水中であっても効率的に吸着除去することが可能である。それにより、膜ろ過工程において、膜ファウリング、特に物理的に不可逆な膜ファウリングが生じるのを抑制し、ろ過膜の透水性を長期にわたり維持することが可能である。
また、前記吸着材中に固体粒子材料が分散しているために、吸着材は高い密度を有するので、吸着材の沈降時間は短くなり、それにより、処理される水試料からの吸着材の分離を、固体粒子材料が存在しなかった場合と比べて、より単純にできる。
また、前記吸着材はカラムへ充填することも可能であり、その場合、水処理方法では、カラム使用による前記原因物質除去工程と、膜ろ過工程を組み合わせることにより、簡便な方法によって、長期にわたりろ過膜の透水性を維持することができる。
以下、本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は本発明を限定するものではない。
[膜ファウリング原因物質に対する吸着能を有する吸着材]
本発明の吸着材は、カチオン性基の密度が10 mmol/g〜30 mmol/gであるカチオン基含有高分子が含まれ、かつ、固体粒子材料が吸着材中に分散された吸着材であって、膜ファウリング原因物質に対する吸着能を有する吸着材である。
(吸着材)
本発明の吸着材は、カチオン性基の密度が10mmol/g〜30mmol/gであるカチオン基含有高分子が含まれている。
本発明の吸着材が作用するメカニズムは定かではないが、以下のようなメカニズムが推測される。(i)通常自然界に存在する水中有機物は、負電荷を帯びているものが多く、カチオン性基を有する吸着材で除去することが可能である。(ii)一般的に用いられるカチオン性吸着材はカチオン性基の密度が高くないためか、特に、塩を含有する被処理水中では、イオン成分が吸着競合し、カチオン性基を有している場合であっても効率的に水中有機物を除去できない。(iii)一方、本発明者らはカチオン性基の密度が10 mmol/g〜30 mmol/gであるカチオン基含有高分子を含む吸着材を適用すると、カチオン性基の高濃度相においてカチオン性基が協同的に機能するためか、膜ファウリング原因物質、特に多糖やタンパク質などのバイオポリマーを効率的に吸着できる。(iv)特に、このようなカチオン性基の密度が高い高分子が存在すると、塩を含有し、イオン成分が吸着競合するような被処理水中であっても、カチオン性基が協同的に機能するためか、前述の膜ファウリング原因物質(特に多糖やタンパク質などのバイオポリマー)を効率的に吸着できる。
[カチオン基含有高分子]
本発明の吸着材は、前記カチオン基含有高分子を含んでおり、本発明の吸着材は、カチオン基含有高分子に由来して、カチオン性基の密度が10mmol/g〜30mmol/g(絶乾重量1グラムあたり、カチオン性基の含有量が10〜30mmol)である領域(すなわち、カチオン性基高濃度相)を少なくとも一部に有している。
カチオン性基としては、窒素原子含有カチオン性基[例えば、アミノ基(1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基)、4級アンモニウム基、イミノ基、アミジン基、グアニジノ基、イミダゾール基、4級イミダゾリウム基、ピリジル基、4級ピリジニウム基]、スルホニウム基、ホスホニウム基などが挙げられる。それらは塩の状態で存在していても良い。これらの官能基は、単独でまたは二種類以上組み合わせて存在しても良い。これらのうち、好ましい官能基としては、窒素原子含有カチオン性基が挙げられ、より好ましい官能基としては、アミノ基、4級アンモニウム基およびそれらの塩が挙げられる。
カチオン基含有高分子は、特定のカチオン性基密度領域を吸着材において形成することができる限り特に限定されず、好ましくは、典型元素から構成され、より好ましくは、炭素原子、水素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、酸素原子で構成され、さらに好ましくは、炭素原子、水素原子、窒素原子および酸素原子で構成されてもよい。
例えば、好ましいカチオン基含有高分子としては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリアミジン、ポリグアニジン、ポリアミノ酸、ポリピリジン、およびそれらの塩などが挙げられる。このような高分子は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用してもよい。これらのうち、より好ましいカチオン基含有高分子としては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミンが挙げられ、特に好ましいカチオン基含有高分子としてはポリエチレンイミン、ポリアリルアミンが挙げられる。
カチオン性基の密度は、例えば、カチオン基含有高分子の骨格構造から、高分子の単位分子量(M)(g/mol)あたりのカチオン性基数(N)に基づき算出することができる(下式)。
カチオン性基密度=(N/M)×1000(mmol/g)
カチオン性基の密度は、10mmol/g〜30mmol/gであれば特に限定されないが、11mmol/g〜28mmol/gであることが好ましく、12mmol/g〜25mmol/gであることが特に好ましい。カチオン性基の密度が10mmol/g未満であれば、被処理水(特に塩類を含む被処理水)ではカチオン性基が協同的に機能できないため、バイオポリマーなどの分子サイズの大きな膜ファウリング原因物質の吸着率が不十分であり、ろ過膜の透水性が劣る虞がある。30mmol/gを超える場合は、カチオン基含有高分子の製造が困難となる。
なお、吸着材が、カチオン基含有高分子を重合体成分として有する共重合体(例えば、ブロック共重合体やグラフト共重合体)で形成される場合、カチオン性基密度は、前記重合体成分の骨格構造に基づいて算出することができる。
ポリエチレンイミンを用いた場合の、カチオン性基密度の計算例を示す。ポリエチレンイミンは、アジリジンの開環重合により合成されるため、アジリジンの組成式(C)に基づいて、単位構造の単位分子量を算出できる。単位構造に存在するカチオン性基数(N)は1である。よって、カチオン性基密度は、以下の式で算出することができる。
ポリエチレンイミンのカチオン性基密度=
(1/43.070)×1000(mmol/g)=23.218(mmol/g)
一方、キトサンを用いた場合の、カチオン性基密度の計算例を示す。下記一般式(1)にキトサンの構造式を示している。キトサンは単位構造の組成式がC11であり、カチオン性基であるアミノ基を各単位構造につき1つずつ有している。そのため、単位分子量(M)は161.1558g/molであり、カチオン性基数(N)は1である。よって、カチオン性基密度は、以下の式で算出することができる。
キトサンのカチオン性基密度=
(1/161.1558)×1000(mmol/g)=6.205(mmol/g)
カチオン性基密度の算出手法については、カチオン基含有高分子の骨格構造に基づく上記の算出に加えて、以下の手順による方法でも可能である。例えば、所定量の吸着材試料を、4%のNaOH水溶液に添加し、攪拌後、カチオン性基をOH型カチオン性基に交換する。次に、OH型に交換後の樹脂をイオン交換水で十分に洗浄した後、この吸着材を4%のHCl水溶液に添加し、攪拌後、カチオン性基をCl型カチオン性基に交換する。交換後の吸着材をイオン交換水で十分に洗浄した後、該吸着材の断面を切り出し、所定のサイズを有する切片を作製する。該切片を、透過型電子顕微鏡(TEM)−エネルギー分散型X線分光法(EDX)(例えば、JEOL製JEM−2100F、JED−2300T)により分析し、Clをマッピングした際に、Clの分布が均一であれば任意の5点を、相分離構造であれば高濃度相をランダムに5点選択し、Cl/Cモル比を算出する。
吸着材試料中の、炭素原子以外の元素については、上述した5点(または選択部位に相当する5点)において、各原子の炭素原子に対するモル比を把握し、これらのモル比に基づいて単位分子量当たりのカチオン性基濃度を下記式により算出してもよい。
カチオン性基密度
=1/[(1/X)×(炭素原子の原子量)+{(炭素原子に対する対象原子のモル比)×(対象原子の原子量)の総和}]
炭素原子以外の元素については、炭素原子に対する対象原子のモル比を算出することが可能であれば、各種分析方法を利用してもよく、例えば、上述のTEM−EDX以外にも、質量分析、赤外吸収スペクトル、ラマン散乱スペクトル、NMRなどの各種分析により、炭素原子に対する対象原子のモル比を決定してもよい。
例えば、Cl/Cモル比がXであり、N/Cモル比がYであり、H/Cモル比がZである場合、カチオン性基濃度は、下記式で概算することが可能である。
カチオン性基密度
=1/{(1/X)×C+(Y/X)×C+(Z/X)×C}×1000
(式中、Cは炭素原子の原子量、Cは窒素原子の原子量、Cは水素原子の原子量)
で概算することが可能である。
具体的には、カチオン性基がCl型カチオン性基に交換されたポリエチレンイミン(Cl/Cモル比0.5、N/Cモル比0.5、H/Cモル比2.5)をモデルとした場合、これから算出したカチオン性基密度は、23.21となり、上述の値とほぼ同様の値となる。
本手法により、骨格構造が明瞭でない市販の吸着材においてもカチオン性基の密度を算出することができる。
なお、Clの分布が均一である場合、吸着材のイオン交換容量を利用して、カチオン基密度を下記式により算出して、代替値としてもよい。
カチオン性基密度=イオン交換容量(meq/ml)×体積当たりの樹脂絶乾重量(ml/g)
カチオン基含有高分子において、骨格構造に基づくカチオン性基密度の測定の他に様々な測定方法を用いることができる。例えば、本発明は、一態様として、カチオン性基を含有する第1の高分子を含む吸着材であって、前記吸着材は、カチオン性基をCl型カチオン性基に交換した状態において、所定の形状の切片について、透過型電子顕微鏡(TEM)−エネルギー分散型X線分光法(EDX)により測定したCl/Cモル比が0.2〜0.65である領域を少なくとも有し、膜ファウリング原因物質に対して吸着能を有する膜ファウリング原因物質吸着材、についても包含してもよい。例えば、前記Cl/Cモル比は、0.2〜0.65、好ましくは0.25〜0.6、より好ましくは0.28〜0.55程度であってもよく、前記Cl/Cモル比を下記式に適用することで単位分子量あたりのカチオン性基密度を算出することができる。
カチオン性基密度
=1/[(1/X)×(炭素原子の原子量)+{(炭素原子に対する対象原子のモル比)×(対象原子の原子量)の総和}]
また、単位骨格は、カチオン性基以外では、炭素原子と水素原子とを主要元素として有し、任意でその他の元素を有するのが好ましく、例えば、単位骨格中、炭素原子に対するその他の元素(例えば、酸素原子など)のモル比は、例えば、0.5以下、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下、さらに好ましくは0.2以下であってもよい。
また、測定試料が相分離構造を示す場合、前記所定の範囲のCl/Cモル比を有する領域は、Clマッピングにおける測定面積全体に対する高濃度相の割合として、1〜70%程度であってもよく、5〜65%程度であってもよく、より好ましくは8〜60%程度であってもよい。
[固体粒子材料]
固体粒子材料が吸着材中に分散していることで、好ましくは、固体粒子材料が存在しなければ有したであろう密度よりも高い密度を有する吸着材になる。吸着材は高い密度を有するので、吸着材の沈降時間は短くなり、それにより、処理される水試料からの吸着材の分離をより単純にできる。固体粒子材料は重量付与剤として説明されることができ、そして吸着材の急速な沈降を促進することを助けることができる。
本発明に用いられる固体粒子材料は固体の非存在下での吸着材の密度よりも高い密度を有するどのような材料であってもよい。固体粒子材料は、好ましくは、被処理水中に可溶でない。固体粒子材料は、被処理水と反応しないことも好ましい。
適切な固体粒子材料の幾つかの例は、チタニア、ジルコニア、重晶石、錫石、シリカ、アルミノシリケート、酸化ニッケル、酸化銅、酸化亜鉛、硫化亜鉛、並びに、他の重金属の酸化物、硫化物、硫酸塩および炭酸塩を含み、チタニア、ジルコニア、重晶石、錫石、シリカ、アルミノシリケート、酸化ニッケル、酸化銅、酸化亜鉛及び硫化亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
特に好ましい形態として、固体粒子材料は磁性材料である。固体粒子材料を吸着材内に取り込むと、吸着材は磁性になる。磁気分離技術は処理される液体から吸着材を便利に分離するために使用されうる。本発明のこの形態において使用される固体粒子材料は、磁性のどんな固体材料であってもよい。例としては、γ―酸化鉄(γ―Fe、磁赤鉄鉱としても知られている)、磁鉄鉱(Fe)、二酸化クロム、他の金属酸化物および更に異なる磁性材料、例えば、ニオブおよび他の希土類材料をベースとするものが含まれ、γ―酸化鉄(γ―Fe2O3、磁赤鉄鉱としても知られる)、磁鉄鉱(Fe3O4)及び二酸化クロムからなる群より選ばれることがより好ましい。磁赤鉄鉱は安価であるから特に好ましい。
固体粒子材料は粒子の形態で添加される。粒子の粒経は、本発明の方法において形成される吸着材の粒経の1/10以下のサイズの範囲であることができる。それより大きいサイズの粒子は吸着材中に均一に分散することが困難であろう。より好ましくは、固体材料の粒経はサブミクロン(例えば、0.1μm〜500μm)であり、最も好ましくは、0.1μm〜10μmである。
本発明の吸着材はカチオン基含有高分子および固体粒子材料が含まれていればその形態は特に限定されない。例えば、吸着材は、カチオン基含有高分子が基材部分と吸着性部分の双方を兼ね揃えた高分子吸着材であってもよい。例えば、そのような吸着材は、カチオン基含有高分子および固体粒子材料を含む液体または固体を、架橋などにより不溶化した高分子吸着材であってもよい。本発明の吸着材は、カチオン性基含有高分子および固体粒子材料と基材が含まれる吸着材であっても良い。
[基材]
本発明の吸着材は、カチオン基含有高分子および固体粒子材料と基材とが含まれる吸着材であっても良い。また、カチオン基含有高分子および固体粒子材料が基材に、適用または導入された吸着材であってもよい。
基材は無機基材であってもよく、高分子基材であってもよい。無機基材としては、シリカ、アルミナ、ヒドロキシアパタイト、クレイ、モレキュラーシーブスなどが挙げられる。これらの無機基材は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用してもよい。これらのうちシリカがより好ましい。
無機基材を用いる場合、例えば、カチオン基含有高分子および固体粒子材料を無機基材に対して、塗布、含浸などにより適用してもよい。また、必要に応じて、カチオン基含有高分子および固体粒子材料は、無機基材に対して、架橋剤などを用いて、化学結合により固定してもよい。
導入が容易であるとともに、カチオン基含有高分子および固体粒子材料の保持性に優れる観点から、基材は、高分子基材であることが好ましい。
カチオン基含有高分子および固体粒子材料が高分子基材に導入された吸着材である場合、この場合の導入方法としては、カチオン基含有高分子および固体粒子材料と高分子基材とをそれぞれ重合体成分として共重合(好ましくは、ブロック共重合、グラフト共重合)させてもよいし、高分子基材に対してカチオン基含有高分子および固体粒子材料を後変性(例えば、カチオン基含有高分子および固体粒子材料を高分子基材に塗布、含浸などにより適用し、必要に応じて、架橋などにより固定)、アロイ化(例えば、カチオン基含有高分子および固体粒子材料と高分子基材とを混合または混練する)のうち少なくともひとつの手段であってもよい。
導入の容易さや得られる高分子吸着材の強度や膨潤度などの物理特性付与の観点から、カチオン基含有高分子および固体粒子材料と高分子基材のアロイ化により導入されることがより好ましい。
アロイ化は、例えば、(i)カチオン基含有高分子および固体粒子材料、高分子基材、必要に応じて任意成分、および適当な溶媒を用いて混合液を調製する方法により行ってもよいし、(ii)カチオン基含有高分子および固体粒子材料、高分子基材、必要に応じて任意成分を、混練機などを用いて溶融混練する方法(溶液成形)により行ってもよい。
高分子基材は、疎水性高分子であってもよいし、親水性高分子であってもよい。
疎水性高分子は、一般に、Fedorの推算法により算出した凝集エネルギー密度(Ecoh)とモル分子容(V)を用いて、下記式にて算出された溶解度パラメータ(δ)が、22未満である高分子のことをいう。
δ=[ΣEcoh/ΣV]1/2
疎水性高分子としては、具体的には、例えば、ポリスチレンなどのスチレン系高分子;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系高分子;ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル;ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなどのポリスルホン系高分子;ポリフッ化ビニリデンなどのハロゲン系ビニルポリマーなどが挙げられる。これらの高分子は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用してもよい。これらのうち、スチレン系高分子、ポリ(メタ)アクリル酸エステルなどが好ましい。
疎水性高分子の重量平均分子量は、高分子の種類に応じて適宜好ましい範囲を設定することが可能であるが、例えば、疎水性高分子の重量平均分子量は、少なくとも5000以上(例えば、5000〜100000)であってもよく、好ましくは10000以上であってもよい。なお、重量平均分子量は、例えばGPCを用いて求めることができる。
高分子基材は、好ましくは、親水性高分子であってもよい。高分子基材が親水性高分子である高分子吸着材は、高分子基材が疎水性高分子である高分子吸着材と比べて、原水中に含まれる膜ファウリング原因物質(特に多糖類やタンパク質などのバイオポリマー)の吸着性に優れているため、膜ファウリング原因物質の吸着性の観点から好ましい。
高分子基材が親水性高分子である高分子吸着材が膜ファウリング原因物質の吸着性に優れる理由は、定かではないが、高分子基材を親水性高分子にすることで水に対する濡れ性が高まり、膜ファウリング原因物質の少なくとも一部の成分、特に多糖類やタンパク質などのバイオポリマーが吸着材内部まで浸透して、高分子基材が疎水性高分子である高分子吸着材に比べて、カチオン基含有高分子が有効に作用するため、と推測される。
親水性高分子は、一般に、Fedorの推算法の下記式にて算出された溶解度パラメータ(δ)が、22以上である高分子のことをいう。好ましくは23以上であり、より好ましくは24以上であり、25以上がさらに好ましい。なお、溶解度パラメータの上限は特に限定されないが、例えば、35程度であってもよい。
δ=[ΣEcoh/ΣV]1/2
親水性高分子は、上記溶解パラメータを満たすものであれば特に限定されないが、例えば、繰り返し単位中に水酸基、エーテル基、カチオン性基、アニオン性基、アミド基等の親水性基を有する高分子などが挙げられる。
例えば、親水性高分子としては、酢酸ビニル誘導体ポリマー[例えば、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール系共重合体、ポリビニルアセタール(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒドなどの各種アルデヒド類によるポリビニルアルコールアセタール化物)]、ポリビニルアルキルアルコール、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルキルエーテル、ポリアルキレンオキシド、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリアクリロニトリル、カチオン性ポリマー(例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリアミドアミンデンドリマー、ポリピリジン、ポリビニルピリジン、ポリアミノ酸、ポリジアリルジメチルアンモニウムハライド、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムハライド、ポリジアクリルジメチルアンモニウムハライド、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート塩酸塩、ポリヌクレオチドなど)、アニオン性ポリマー(例えば、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニル硫酸、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリマレイン酸、ポリアミック酸)、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、デキストリン、キチン、およびキトサンからなる群より選ばれる少なくとも1種が好適に用いられる。
これらのポリマーは、他のコモノマー単位(例、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸等の不飽和カルボン酸単位、シラノール基、アルデヒド基、又はスルホン酸基を有するモノマー単位など)を有していてもよい。
特に好ましい親水性高分子としては、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール系共重合体、ポリビニルアセタール(例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール)、ポリビニルアルキルアルコール、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルキルエーテル、ポリアルキレンオキシド、カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、フェノール樹脂、ポリビニルピロリドン、デキストリン、キチン、およびキトサンが好ましく、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール系共重合体、ポリビニルアセタールがより好ましく、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール系共重合体、ポリビニルホルマールが特に好ましく、耐水性を有するだけでなく、耐久性、成形性および親水性に優れる観点から、エチレン−ビニルアルコール系共重合体が最も好ましい。
親水性高分子の重量平均分子量は、高分子の種類に応じて適宜好ましい範囲を設定することが可能であるが、例えば、親水性高分子の重量平均分子量は、少なくとも5000以上(例えば、5000〜100000)であってもよく、好ましくは10000以上であってもよい。なお、重量平均分子量は、例えばGPCを用いて求めることができる。
なお、ポリビニルアルコールの分子量に関しては、粘度平均重合度で規定してもよく、30℃水溶液の粘度から求めた粘度平均重合度が、例えば100〜15000程度の幅広い範囲から選択できる。耐久性を向上させる観点から、高重合度のものを用いるのが好ましく、その場合、例えば、粘度平均重合度は好ましくは800〜13000程度、さらに好ましくは1000〜10000程度であってもよい。
また、ポリビニルアルコールのけん化度は、目的に応じて適宜選択でき特に限定されるものではないが、例えば、88モル%以上、好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上であってもよい。特に耐久性を向上させる観点からは、けん化度98モル%以上のものが好ましい。
エチレン−ビニルアルコール系共重合体において、エチレン単位の含量は、全モノマー単位中20〜60モル%であることが好ましく、より好ましくは25〜55モル%であってもよい。エチレン含量が少なすぎると、耐久性が悪くなるおそれがある。一方、エチレン含量が多すぎると、親水性が低下するおそれがある。
[カチオン基含有高分子と高分子基材との質量比]
本発明の吸着材で、カチオン基含有高分子と高分子基材の割合は、例えば、質量比でカチオン基含有高分子/高分子基材=1/99〜70/30程度であってもよく、好ましくは5/95〜65/45程度、より好ましくは8/92〜60/40程度であってもよい。カチオン基含有高分子が多すぎると、耐水性が低下する恐れがあり、カチオン基含有高分子が少なすぎると、吸着性能が低下する傾向にある。カチオン基含有高分子は高分子基材中に分散しているのが好ましい。
[固体粒子材料の添加量]
本発明の吸着材で、固体粒子材料の添加量は、例えば、カチオン基含有高分子と基材の合計質量を基準にして10〜300質量%程度であってもよく、好ましくは20〜100質量%の量であってもよい。固体粒子材料の添加量が少なすぎると十分な分離性が得られず、添加量が多すぎると、単位重量当りの吸着量が低下する。
[その他の成分]
なお、本発明において、原水中に含まれる膜ファウリング原因物質、特に多糖類やタンパク質などのバイオポリマーに対して吸着性を有する吸着材は、必要に応じて、例えば、架橋剤、酸化防止剤、安定剤、滑剤、加工助剤、帯電防止剤、着色剤、消泡剤、分散剤などの各種添加剤を含んでいてもよい。
架橋剤は、カチオン基含有高分子、固体粒子材料および基材の架橋反応性基の種類に応じて適宜決定することができるが、例えば、エポキシ基、カルボキシル基、ハロゲン基、酸無水物基、酸ハライド基、ホルミル基、N−クロロホルミル基、クロロホーメイト基、アミジニル基、イソシアネート基、ビニル基、アルデヒド基、アゼチジン基、カルボジイミド基などから選択される少なくとも1種又は2種以上の官能基を少なくとも2個含む化合物が挙げられる。また、ジルコニル系架橋剤(硝酸ジルコニル、炭酸ジルコニウムアンモニウム、塩化ジルコニル、酢酸ジルコニル、硫酸ジルコニル)、チタン系架橋剤[チタン系架橋剤、チタンラクテート、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)]などを用いてもよい。このような架橋剤は、市販されている各種架橋剤を利用することができ、特に限定されないが、エポキシ基、ハロゲン基、イソシアネート基、ビニル基、アルデヒド基、アゼチジン基、カルボジイミド基などから選択される少なくとも1種又は2種以上の官能基を少なくとも2個含む化合物が好ましい。
また、架橋剤による架橋構造の導入は、カチオン基含有高分子および固体粒子材料の水溶液中に該架橋剤を添加することで導入してもよい。
また、吸着材を合成時にジビニルモノマーなどの共重合成分を用いることにより、架橋構造を導入してもよい。
また、架橋剤と吸着材の構成成分と合わせて溶融混練することにより架橋構造を導入してもよい。
溶融混練を行う場合、吸着材の構成成分、架橋剤、必要に応じて任意成分を、二軸型の混練機などを用いて溶融混練する方法(溶融混練法)が挙げられる。当該溶融混練法によれば、各成分が均一に分散した吸着材を得ることが容易であるという利点を有する。
また、一旦、吸着材材料を溶融成形、溶液成形などにより成形し、各種形状の成形体を形成した後、架橋剤を含む溶液に成形体を浸漬させて架橋構造を導入してもよい。
溶融成形を行う場合、例えば、架橋剤を少なくとも除く吸着材材料を、二軸型の混練機などを用いて溶融混練し、溶融混練物を押出成形、射出成形などにより各種形状の成形体を得た後、この成形体を、架橋剤含有溶液に浸漬させることにより、架橋処理を施してもよい。
一方で、溶液成形を行う場合、例えば、架橋剤を少なくとも除く吸着材材料から、適当な溶媒を用いて混合液を調製し、この混合液を用いて、キャスト製膜または乾式紡糸、湿式紡糸などにより、膜状または繊維状の成形体を得た後、この成形体を、架橋剤含有溶液に浸漬させることにより、架橋処理を施してもよい。
(吸着材の特徴)
吸着材は、被処理水からの膜ファウリング原因物質、特に多糖類やタンパク質などのバイオポリマーの吸着処理に用いることができる限り、各種形状を有することができ、例えば、粒子状、繊維状、各種立体形状などであってもよい。吸着効率を向上させる観点から、吸着材は、粒子状または繊維状であるのが好ましく、カラム充填し使用する方法を考慮すると体積充填率の観点から粒子状がより好ましい。
吸着材が粒子状である場合、その粒子径は特に制限はないが、粒子径は1μm〜5000μmが好ましく、10μm〜4000μmがさらに好ましく、20μm〜3000μmが最も好ましい。粒子径が小さすぎる場合、分離性が悪くなったり、微粉が舞い易いなど取り扱いが難しい。粒子径が大きすぎる場合、吸着性能が十分に得られないことがある。なお、粒子径は、篩分けにより分級された値を示す。
本発明の吸着材は、被処理水の浸透性と、吸着処理での取扱い性の観点から、例えば、25℃水中における膨潤度が20〜500%である吸着材であってもよい。この場合、膨潤度は25〜300%程度であることが好ましく、より好ましくは30〜250%であってもよい。膨潤度が低すぎると、吸着材の吸着性が低下する虞があり、膨潤度が高すぎると、吸着材が変形する虞がある。
例えば、吸着材の膨潤性は、架橋剤により架橋することにより制御してもよいし、カチオン基含有高分子および固体粒子材料を、疎水性高分子基材や、低膨潤性または非膨潤性である親水性高分子(例えば、エチレン−ビニルアルコール系共重合体、及びポリアミドなど)基材に導入したアロイ材として制御してもよい。また、必要に応じて、アロイ材に対しても架橋をしてもよい。
(膜ファウリング原因物質)
原水中には、各種ファウリング原因物質が存在しているが、本発明の吸着材では従来吸着が困難であったファウリング原因物質を吸着除去することができる。特に、本発明の吸着材では、粒子径0.45μm以下の有機物(例えば、フミン酸やフルボ酸などの芳香族含有有機物、界面活性剤等の合成化学物質、バイオポリマーなど)を効率よく吸着することが可能である。
本明細書において、ファウリング原因物質とは、ファウリングを生じさせる原因となる物質を意味する。ファウリング原因物質は、例えば、有機体炭素、各種菌、無機粒子等を含む。なお、本発明の吸着材で吸着除去できるファウリング原因物質としては、無機粒子を除いてもよい。また、本明細書において、有機体炭素とは、水中に存在する有機物を構成する炭素(例えば、溶存有機炭素(DOC:Dissolved Organic carbon);TEPなどの粒子性有機体炭素(POC)を意味する。有機体炭素は、例えば、多糖やタンパク質などのバイオポリマー、フミン、フルボ酸、ウロン酸、クツロン酸、臭気成分(ゲオスミン、2−メチルイソボルネオ−ル)などを含む。なお、本発明の吸着材で吸着除去できる有機体炭素としては、臭気成分を除いてもよい。
本発明の吸着材は、ファウリング原因物質の中でも、特に、親水性が高いバイオポリマーの除去に優れている。バイオポリマーは、各種原水中に存在する有機体炭素の一種であり、一般的には、みかけ分子量が10万Da以上の多糖類およびタンパク質とされている。
本発明では、他の有機体炭素とバイオポリマーとを区別する指標として、例えば、高速液体クロマトグラフィーに湿式全有機炭素計測器を接続したLC−OCDにおいて、フミン質の信号ピークが現れる保留時間より短い保留時間において、信号ピークを示す物質と定義してもよい。
より詳細には、バイオポリマーはStefan A. Huber et al. Water Research 45 (2011) pp879-885に記載された方法により測定したAフラクション、例えばLC−OCDによる保留時間が、25分以上38分以下の成分であってもよい。また、フミン質は、同じ条件下での測定におけるBフラクション、例えば保留時間38分を超えて50分以下の成分であってもよい。
バイオポリマーは、ベンゼン環などの疎水性構造が少なく、主に親水性の高い有機物で構成されており、例えば、SUVA値が1.0[L/(m・mg)]以下を示す有機物で構成されていてもよい。
なお、SUVA値は、以下の式で求められる。
SUVA(L/mg−C・m)=UV(m−1)/DOC(mg−C/L)
なお、ここで、SUVA値を算出するための各パラメータはStefan A. Huber et al. Water Research 45 (2011) pp879-885に記載された方法により測定されたものであり「面積値」とは、LC−OCDにより得られる面積値を表し、「UV」とは、波長254nmでの吸光度、「DOC」とは供試サンプル中のDOC濃度(mg−C/L)を示している。
UV値算出方法
バイオポリマーのUV=供試サンプル全体のUV×スペクトル中のバイオポリマー(保留時間t:25分≦t≦38分)の面積値/スペクトル全体の面積値
DOC値算出方法
バイオポリマーのDOC=供試サンプル全体のDOC×スペクトル中のバイオポリマー(保留時間t:25分≦t≦38分)の面積値/スペクトル全体の面積値
[水処理方法]
本発明は別の実施形態として、水処理方法についても包含する。水処理方法は、膜ファウリング原因物質を含む被処理水を、本発明の吸着材と接触させ、吸着材により被処理水中に含まれる膜ファウリング原因物質を吸着させる吸着工程を少なくとも備えている。
水処理方法は、必要に応じて、さらに吸着工程により得られた吸着処理水を、膜ろ過処理する膜ろ過工程を含んでいてもよい。また、前記膜ろ過工程が、限外ろ過(UF)膜、精密ろ過(MF)膜、ナノろ過(NF)膜、および逆浸透(RO)膜からなる群から選択される少なくとも一種の膜を用いて、一段または多段にて行われる、水処理方法であってもよい。
(吸着工程)
本発明の水処理方法における被処理水は、自然環境下、人工環境下で得られるさまざまな原水を被処理水として利用可能であり、ファウリング原因物質を含有する限り特に限定されないが、例えば、原水としては、一般の河川水、湖沼水、海水、土壌溶出水、用水、生物処理水、これらを前処理(例えば、砂ろ過処理、水処理膜を用いた粗ろ過処理、凝集沈殿処理、オゾン処理、既存の吸着材や活性炭などを用いた吸着処理、生物処理)した後の処理水などが挙げられる。
また、吸着前処理を行う場合、例えば、粒子径が5μm以上の粒子、好ましくは1μm以上の粒子、より好ましくは0.45μmより大きい粒子が排除された水を、吸着被処理水として用いるのが好ましい。
被処理水は、膜ファウリング原因物質、特に物理的に不可逆的な膜ファウリングを生じると考えられている多糖類やタンパク質を含有するとともに、0.1質量%以上の塩化ナトリウムを含む原水であってもよい。例えば、そのような原水は、海水(塩化ナトリウム濃度2〜4質量%)、汽水(塩化ナトリウム濃度0.5〜2質量%)、油田やガス田の採掘の際に発生する随伴水などであってもよく、またはこれらを処理して得られる、より塩濃度の高い水などであってもよく、自然環境下の原水に由来して得られるさまざまな塩を含む水を被処理水として用いてもよい。
例えば、原水は、0.1質量%以上(例えば、0.5〜30質量%程度)、1質量%以上、または2質量%以上の塩化ナトリウム濃度を有していてもよい。また被処理水中には、塩化ナトリウム以外にも、塩化カリウムなどのアルカリ金属塩;塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウムなどのアルカリ土類金属塩などが含まれていてもよい。
吸着処理での被処理水の温度は、室温付近にあればよく、例えば0℃以上40℃未満であってもよく、好ましくは5〜38℃、より好ましくは10〜35℃であってもよい。
吸着工程では、被処理水と吸着材とを接触させることができる限り特に限定されず、例えば、バッチ式として、被処理水へ吸着材を添加し、必要に応じて公知の方法で撹拌することにより、吸着処理を行ってもよいし;連続式として、吸着材を充てんしたカラムに対し、被処理水を通液させることにより吸着処理を行ってもよい。また、吸着工程は、一段であってもよいし、多段であってもよい。
被処理水に対して用いられる吸着材の量は、被処理水の種類、吸着材の形態などに応じて適宜選択することができるが、例えば、バッチ式の場合、吸着材の量は、被処理水1Lあたり、0.05〜30g程度、好ましくは0.1〜10g程度であってもよい。
また、吸着材を被処理水に浸漬し撹拌を行う場合、機械的撹拌、気泡撹拌などにより、吸着材を撹拌してもよい。機械的撹拌を行う場合、周速として0.1〜20m/s程度であってもよく、0.3〜15m/s程度であってもよい。
一方で、連続式の場合、カラムに充填された吸着材に対して、被処理水のカラムへの通液速度は、例えば、処理水流速を吸着材容積で割った値である空塔速度として0.5〜200h−1程度であってもよく、好ましくは1〜150h−1程度であってもよい。
本発明の吸着材を用いた吸着処理により、被処理水中の膜ファウリング原因物質を効率よく吸着することができ、特に、上述のようなバイオポリマーの吸着を効率よく行うことができる。例えば、吸着処理では、被処理水からのバイオポリマーの除去率(または吸着率)が、例えば15%以上であってもよく、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上であってもよい。なお、除去率は、後述する実施例に記載された方法により測定された値を示す。除去率が低すぎる場合、吸着処理後の処理水を膜ろ過工程に供給した場合、膜汚染の抑制効果が十分でない場合がある。
(膜ろ過工程)
吸着工程の後、吸着処理された吸着処理水(または供給水)は、必要に応じて、膜ろ過工程において膜ろ過される。膜ろ過工程は、一段であってもよいし、多段であってもよい。膜ろ過工程の膜の種類については、同一の膜を用いても良いし、異なる種類の膜を組み合わせてもよい。膜ろ過を組み合わせ、用途に応じた浄水化を行ってもよい。
膜ろ過工程は、水処理の目的に応じて、精密ろ過膜(MF膜)、限外ろ過膜(UF膜)、ナノろ過膜(NF膜) 、逆浸透(RO)膜などを用いて適宜行うことができる。膜ろ過工程では、これらの膜を単独で一段以上用いて膜ろ過を行ってもよいし、複数の種類の膜を組み合わせ、それぞれ一段以上用いて膜ろ過を行ってもよい。
また、複数の種類の膜を組み合わせる場合、MF膜またはUF膜で供給処理された処理水を膜ろ過処理した後、NF膜または逆浸透(RO)膜でさらに膜ろ過処理を行ってもよい。
膜ろ過工程におけるろ過膜の膜素材としては、特に限定されず、公知のものはいずれも適用可能である。例えば、UF膜やMF膜の膜素材としては、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、セラミックなどが挙げられる。NF膜の膜素材としては、ポリアミド系、ポリピペラジンアミド系、ポリエステルアミド系、あるいは水溶性のビニルポリマーを架橋したものなどが挙げられる。また、RO膜の膜素材としては、酢酸セルロース系、ポリアミド系などが挙げられる。
膜形態については、特に限定されず、平膜、管状膜、中空糸膜等、いずれの形状のものでもよい。たとえば膜厚は、10μm〜1mmの範囲、中空糸膜の場合、内径が0.2〜2mm程度、外径が0.4〜5mm程度であってもよい。また、ろ過膜は、網目状構造、ハニカム状構造、微細間隙構造などの微細多孔質構造を有していてもよい。
これらのろ過膜は、モジュール化されていてもよい。例えば、平膜状の場合はスパイラル型、プリーツ型、プレート・アンド・フレーム型、円盤状のディスクを積み重ねたディスクタイプであってもよく、中空糸膜の場合は、中空糸をU字状やI字状に束ねて容器に収納した中空糸膜型であってもよい。
ろ過流量は、膜への供給水の種類、ろ過膜の種類などに応じて適宜設定することが可能であるが、例えば、クロスフロー方式でろ過を行う場合、ろ過流量は、Flux0.5〜5.0(m/m/日)でろ過膜に対して通液してもよく、好ましくはFlux1.0〜4.0(m/m/日)であってもよい。
特に、本発明の吸着材は、被処理水が塩類を含有していても有効に機能するため、塩類を含有する被処理水を、本発明の吸着材で吸着処理し、その後RO膜などによる膜処理に供給し、水分中の塩類を除去してもよい。
本発明の吸着材を用いた吸着工程を行うことで、ろ過膜への供給水から膜ファウリング原因物質、特に多糖類やタンパク質などのバイオポリマーを低減させることができる。その結果、ろ過膜に膜ファウリング(特に物理的に不可逆な膜ファウリング)が発生するのを抑制し、ろ過膜の目詰まりにより、ろ過膜の透水性が低下するのを抑制することが出来る。
さらに、供給水中の原因物質の量を低減することができるため、膜ファウリングによりろ過膜が劣化するのを抑制することができ、それにより、膜の使用寿命を延命化することができる。また、供給水中の原因物質の量を低減することができるため、ろ過膜の洗浄頻度や洗浄薬品の使用量を低減することもできる。
本発明の吸着材を用いた水処理では、発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、既存の水処理方法と組み合わせてもよい。既存の水処理方法としては、例えば、砂ろ過処理、粗ろ過処理、凝集沈殿処理、オゾン処理、既存の吸着材や活性炭などを用いた吸着処理、生物処理などが挙げられる。これらの処理は、単独でまたは二種以上組み合わせて行ってもよい。また、これらの水処理は、適宜、吸着処理前および/または吸着処理後に行われればよい。
(再生工程)
本発明の水処理方法においては、吸着工程で膜ファウリング原因物質を吸着した吸着材を、洗浄流体と接触させることにより再生する再生工程を備えていてもよい。
洗浄流体は、水を主成分(例えば、60質量%以上)とする液体からなる媒体であってもよく、例えば、浄水(原水に対して適切な処理操作により、清浄化行為を行った水、例えば水道水など)、純水(RO水、脱イオン水、蒸留水など)、吸着工程において上述した各種原水またはその関連水を用いてもよく、薬剤をこれらの水(浄水、純水、原水またはその関連水)に添加した水溶液を用いてもよい。薬剤としては、例えば、各種酸性物質およびその塩類、各種アルカリ性物質などを利用することができる。
例えば、酸性物質としては、各種無機酸(例えば、塩酸、次亜塩素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、炭酸、リン酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸など)、各種有機酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ステアリン酸、クエン酸、シュウ酸、乳酸、マレイン酸、酒石酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、アジピン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸)などが挙げられる。前記酸性物質の塩類は、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩であってもよいし、アンモニウム塩などの有機塩であってもよい。また、アルカリ性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、アンモニア水などが挙げられる。これらの薬剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用してもよい。洗浄流体中の薬剤の濃度は、水に対する溶質の割合として、例えば0.1〜60量%程度であってもよく、好ましくは0.1〜30質量%程度、より好ましくは0.5〜20質量%程度であってもよい。
また、洗浄流体は、液体に限定されず、例えば、空気又は加熱蒸気等の気体であってもよい。即ち、洗浄流体は、本発明の吸着材を洗浄し、表面に付着したファウリング原因物質を剥がすことができる流体であればよい。また、再生工程での洗浄流体との接触は、一段であっても多段であってもよく、多段である場合、複数の種類の洗浄流体を別々に用いてもよい。
金属イオン含有水溶液に用いられる金属イオンとしては、原因物質の脱離をすることが可能である限り特に限定されないが、典型的にはアルカリ金属イオンが挙げられ、具体的には、塩化ナトリウム水溶液、塩化カリウム水溶液、塩化リチウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸リチウム水溶液などが挙げられる。洗浄流体は、被処理水に存在する塩類と同種の金属イオンを含む金属イオン含有水溶液であってもよい。金属イオン含有水溶液の濃度は、水に対する溶質の割合として、例えば0.1〜30質量%程度であってもよく、好ましくは0.3〜25質量%程度、より好ましくは0.5〜20質量%程度であってもよい。
原水は、吸着工程において上述した各種原水を用いてもよく、吸着工程で利用する原水を一部取り分けて再生工程において利用してもよい。または、吸着工程で用いた原水とは異なる原水を再生媒体として利用してもよい。原水の関連水としては、原水を各種膜処理する際に発生する非透過水(例えば、RO膜処理後に得られる濃縮水など)、原水の吸着工程後に得られる処理水などが挙げられる。
洗浄流体のpHは、例えば、5〜14程度であってもよく、好ましくは5.5〜12程度、より好ましくは6〜11程度であってもよい。pHが中性領域(pH6〜8)であると、再生処理後の洗浄流体の廃棄処理上好ましく、pHが弱塩基性(pH8〜11)であると、再生性能が良好である。
再生工程で用いられる洗浄流体の温度は、特に限定されないが、室温付近であっても、被処理水と同程度の温度であっても、吸着工程での被処理水の温度以上であってもよい。好ましくは、吸着工程での被処理水の温度よりも高温であるように設定されてもよい。吸着材が接触する液体の温度条件を、吸着工程と再生工程との間で変化させることにより、吸着工程で吸着材に対して吸着した原因物質であっても、再生工程においてより効率よく吸着材から脱離することが可能である。
再生工程での洗浄流体の温度は、原因物質を脱離することが出来る限り、適当な温度を選択することができるが、洗浄流体の温度は、脱離性の観点から、例えば40〜110℃であってもよく、好ましくは45〜105℃、より好ましくは50〜100℃であってもよい。
また、再生工程では、吸着材を再生できる限りその処理時間は特に限定されず、吸着材や再生媒体の状態、量などに応じて適宜設定することができる。再生処理時間は、例えば、10分以上であってもよく、好ましくは20分以上であってもよく、より好ましくは30分以上であってもよい。また、再生処理時間は、再生処理を効率化する観点から、36時間以下であってもよく、好ましくは25時間以下であってもよい。
吸着材に対して用いられる洗浄流体の量は、洗浄流体の種類、吸着材の形態、再生工程の形式(バッチ式または連続式)などに応じて適宜選択することができる。また、吸着材を洗浄流体に浸漬し撹拌を行う場合、機械的撹拌、気泡撹拌などなどにより、吸着材を撹拌してもよい。また、機械的撹拌を行う場合、周速として0.1〜20m/s程度であってもよく、0.3〜18m/s程度であってもよい。
再生工程では、洗浄流体と、親水性高分子再生材とを接触させることができる限り特に限定されず、例えば、バッチ式として、洗浄流体へ吸着材を添加し、必要に応じて公知の方法で撹拌することにより、再生処理を行ってもよいし;連続式として、親水性高分子吸着材を充てんしたカラムに対し、洗浄流体を通液させることにより再生処理を行ってもよい。また、再生工程は、一段であってもよいし、多段であってもよい。
再生工程により、再生された吸着材は、必要に応じて、公知のろ別手段により分離され、再度、吸着工程へと供されてもよい。
再生工程では、洗浄流体との接触により吸着材を効率よく再生することができる。例えば、再生工程では、再生処理前後での吸着材の吸着率を、再生効率として評価することができ、例えば、再生効率は、30%以上であってもよく、好ましくは50%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上であってもよい。なお、再生効率は、後述する実施例に記載された方法により測定された値を示す。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「%」および「部」は特に断りのない限り、それぞれ「質量%」および「質量部」を表す。
(カチオン性基密度の算出)
市販のイオン交換樹脂を含め、カチオン性基の密度は、高分子の骨格構造から、高分子の単位分子量(M)(g/mol)あたりのカチオン性基数(N)に基づき算出した(下式)。
カチオン性基密度=(N/M)×1000(mmol/g)
(Cl/Cモル比の測定)
吸着材0.1gを、4%のNaOH水溶液30gに添加し、3時間攪拌させ、カチオン性基をOH-型に交換した。次に、OH-型に交換後の樹脂をイオン交換水で十分に洗浄した後、吸着材0.1gを4%のHCl水溶液30gに添加し、3時間攪拌させ、カチオン性基をCl−型に交換した。交換後の樹脂をイオン交換水で十分に洗浄した後、該樹脂の断面を切り出し、厚み100nm、3μm×3μm四方の超薄切片を作製した。該超薄切片を、透過型電子顕微鏡(TEM)−エネルギー分散型X線分光法(EDX)(JEOL製JEM−2100F、JED−2300T)により分析し、Clをマッピングした際に、Clの分布が均一であれば任意の5点を、相分離構造であれば高濃度相をランダムに5点選び、Cl/Cモル比を算出した。Cl/Cモル比が0.2以上であれば、該点をカチオン性基/Cモル比が0.2以上で含有する点と判定した。
(バイオポリマーの吸着率)
バイオポリマーのモデル物質としてアルギン酸ナトリウム(和光純薬工業(株)製、型番:199−09961)の吸着評価を実施した。各実施例と比較例で得られた吸着材1.0g(12時間真空乾燥機にて乾燥させた状態での質量であり、以下の記載において同じ)を200mLのモデル海水(アルギン酸ナトリウム濃度:4.3mg―C/L、NaCl:3.5%)に添加し、マグネチックホットスターラーにより攪拌した(180rpm、25℃)。18時間攪拌の前後の上澄み液40mlを全有機炭素計によって評価し、該吸着材によるバイオポリマーの吸着率を以下のように評価した。
バイオポリマーの吸着率=(吸着評価前のアルギン酸ナトリウム濃度―吸着評価後のアルギン酸ナトリウム濃度)/吸着評価前のアルギン酸ナトリウム濃度×100(%)
(膨潤度の評価)
吸着材1gを25℃の水に12時間浸漬させた後、吸着材を遠心脱水して秤量(A)した後、105℃で4時間乾燥して秤量(B)する。以下の式より、膨潤度を求めた。
膨潤度=[(A−B)/(B)]×100 (%)
(吸着材の体積変化率)
吸着材5.0gを25℃の水に12時間浸漬させた後、内径15.4mmクロマトカラム管(柴田科学(株)製)に、高さが5cmになるように吸着材を充填した。そこへ、1N HClを3BV通液したのち、イオン交換水を3BV通液した。通液を停止後、クロマトカラム全体を80℃に加温した水浴に1時間浸漬させた際の、浸漬前後の吸着材の体積変化率を下記式に従って算出した。
体積変化率(倍)=80℃加温後の吸着材高さ(cm)/5cm
前記体積変化率が1.2倍以下の場合をA、1.2倍をこえる場合をBと評価した。
(沈降性の評価)
φ1cmのクロマトカラムに、高さ2cmまで含水樹脂を充填したのち、流速50mL/分で、アップフロー方式でイオン交換水を通液した。吸着材が滞留し、高さが一定値となったことを確認したのち、通液を停止した。通液を停止した時点を0秒とし、吸着材が高さ2cmの位置まで沈降してくるまでの時間(秒)を測定した。
(ろ過膜の透水性評価)
印旛沼(千葉県)から採取した表流水(有機体炭素濃度=3.6mg−C/L、pH=8.7)を、まず、排除径2μmのステンレスメッシュカートリッジフィルター(TMP−2、Advantech社製)でろ過することにより不溶物を取り除き、そのろ過後の水に3.5%分のNaClを添加した。得られた液1Lに、作製した吸着材を5g投入し、25℃にて4時間振とうした。振とう後、吸着材をろ別し、吸着処理液を得た。
得られた吸着処理液をFlux2.0(m/m/日)でろ過膜に対して通液するとともに、30分に1回Flux3.0m/m/日)の純水で逆洗浄を実施し、膜を通液する際の圧力変化を評価し、60kPaに到達するまでの時間(分)を求め、以下の基準にて、長期の透水性を評価した。
A:900分以上 B:600分以上900分未満 C:600分未満
(吸着材の再生)
アルギン酸ナトリウムを吸着後、ろ別し、所定の温度に設定したモデル海水もしくは純水に浸漬、1時間攪拌することでアルギン酸ナトリウムを脱離させ再生処理した。下記式により、再生効率を評価した。
吸着材の再生効率=再生処理後の吸着率/再生処理前の吸着率×100(%)
[実施例1]
カチオン性基密度が23.2(mmol/g)であるポリエチレンイミン((株)日本触媒製、「エポミンSP−200」)100質量部に、酸化鉄(Aldrich製、型番:310050−500G)40質量部を添加し、十分に攪拌した後、エポキシ化合物(ナガセケムテックス(株)製、「デナコールEX−810」)を添加して架橋させた後、粉砕処理を施し、粒子径0.4〜0.7mmの粉砕物を得た。得られた粉砕物を多量の80℃熱水で攪拌洗浄することで、表1に示すとおり目的の吸着材1を得た。得られた吸着材1の25℃水中の膨潤度は265%であった。
得られた吸着材1を、モデル海水に浸漬、攪拌させ、アルギン酸ナトリウムの吸着試験を行った。また、印旛沼の表流水に3.5%NaClを添加した液に、吸着材を添加し、吸着処理をおこなったのち、得られた処理水を用いて、PVDF製MF膜(旭化成(株)製、孔径0.1μm)の透水性を評価した結果、長期透水性はAであった。吸着材1の80℃熱水での体積変化率はBであった。得られた吸着材の沈降性を評価した結果、沈降時間は3.5秒であった。結果を表2に示す。
[実施例2]
カチオン性基密度が23.2(mmol/g)であるポリエチレンイミン((株)日本触媒製、「エポミンSP−200」)25質量部と親水性高分子であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体((株)クラレ製、「E−105」、δ=28)75質量部、および酸化鉄(Aldrich製、型番:310050−500G)40質量部をラボプラストミルにて、180℃において3分間溶融混練し、得られた混練物を冷却後、粉砕処理を施し、粒子径0.4〜0.7mmの粉砕物を得た。さらに、この粒子をエポキシ化合物(ナガセケムテックス(株)製、「デナコールEX−810」)2%の25℃の溶液で1時間架橋処理を行い、ろ別後、多量の80℃熱水で攪拌洗浄することで、表1に示すとおり目的の吸着材2を得た。得られた吸着材2の25℃水中の膨潤度は52%であった。
得られた吸着材2を、モデル海水に浸漬、攪拌させ、アルギン酸ナトリウムの吸着試験を行った。また、印旛沼の表流水に3.5%NaClを添加した液に、吸着材を添加し、吸着処理をおこなったのち、得られた処理水を用いて、ポリアクリロニトリル(PAN)製UF膜(旭化成(株)製、分画分子量100kDa)の透水性を評価した結果、長期透水性はAであった。吸着材2の80℃熱水での体積変化率はAであった。得られた吸着材の沈降性を評価した結果、沈降時間は1.6秒であった。結果を表2に示す。
なお、本吸着材をTEM−EDXで分析したところ、高濃度相のCl/Cモル比は0.45であった。
[実施例3]
カチオン性基密度が23.2(mmol/g)であるポリビニルアミン(三菱レイヨン(株)製、「PVAM−0595B」)10質量部と親水性高分子であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体((株)クラレ製、「F−101」、δ=28)90質量部、および酸化鉄(Aldrich製、型番:310050−500G)20質量部をラボプラストミルにて、210℃において3分間溶融混練し、得られた混練物を冷却後、粉砕処理を施し、粒子径0.4〜0.7mmの粉砕物を得た。さらに、この粒子をエポキシ化合物(ナガセケムテックス(株)製、「デナコールEX−810」)2%の25℃の溶液で1時間架橋処理を行い、ろ別後、多量の80℃熱水で攪拌洗浄した。得られた洗浄物を塩酸に浸漬させ、塩酸塩型に置換した吸着材3を得た。得られた吸着材3の25℃水中の膨潤度は32%であった。
得られた吸着材3を、モデル海水に浸漬、攪拌させ、アルギン酸ナトリウムの吸着試験を行った。また、印旛沼の表流水に3.5%NaClを添加した液に、吸着材を添加し、吸着処理をおこなったのち、得られた処理水を用いて、PVDF製MF膜(旭化成(株)製、孔径0.1μm)の透水性を評価した結果、長期透水性はAであった。吸着材3の80℃熱水での体積変化率はAであった。得られた吸着材の沈降性を評価した結果、沈降時間は5.2秒であった。結果を表2に示す。
なお、本吸着材をTEM−EDXで分析したところ、高濃度相のCl/Cモル比は0.4であった。
[実施例4]
カチオン性基密度が17.5(mmol/g)であるポリアリルアミン(ニットーボーメディカル(株)製、「PAA−15C」)35質量部と主骨格である親水性高分子であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体((株)クラレ製、「G−156」、δ=25)65質量部、および酸化銅(和光純薬工業(株)製、型番:038−04345)60質量部をラボプラストミルにて、180℃において3分間溶融混練し、得られた混練物を冷却後、粉砕処理を施し、粒子径0.4〜0.7mmの粉砕物を得た。さらに、この粒子をエポキシ化合物(ナガセケムテックス(株)製、「デナコールEX−810」)2%の25℃の溶液で1時間架橋処理を行い、ろ別後、多量の80℃熱水に浸漬、攪拌洗浄することで、表1に示すとおり目的の吸着材4を得た。得られた吸着材4の25℃水中の膨潤度は41%であった。
得られた吸着材4を、モデル海水に浸漬、攪拌させ、アルギン酸ナトリウムの吸着試験を行った。また、印旛沼の表流水に3.5%NaClを添加した液に、吸着材を添加し、吸着処理をおこなったのち、得られた処理水を用いて、PE製MF膜(三菱レイヨン(株)製、孔径0.1μm)の透水性を評価した結果、長期透水性はAであった。吸着材4の80℃熱水での体積変化率はAであった。得られた吸着材の沈降性を評価した結果、沈降時間は1.2秒であった。結果を表2に示す。
なお、本吸着材をTEM−EDXで分析したところ、高濃度相のCl/Cモル比は0.3であった。
[実施例5]
DMSO中にポリメチルメタクリレート((株)クラレ製、「パラペットG」)を溶解させ、5%溶液を調製した。また、DMSO中にカチオン性基密度が23.2(mmol/g)であるポリエチレンイミン((株)日本触媒製、「エポミンSP−200」)を溶解させ、5%溶液を調整した。ポリメチルメタクリレート5%溶液75質量部とポリエチレンイミン5%溶液25質量部、および酸化鉄(Aldrich製、型番:310050−500G)40質量部を混合し、得られた混合溶液をポリエチレンフィルム上にてキャスト製膜を行い、乾燥させたところ、厚み70μmの膜を得た。この膜を2mm角にカットし、粉砕物を得た。次いで、得られた粉砕物を、エポキシ化合物(ナガセケムテックス(株)製、「デナコールEX−810」)2%の25℃の溶液で1時間架橋処理を行い、ろ別したのち、多量の80℃熱水に浸漬、攪拌洗浄することで、表1に示すとおり目的の吸着材5を得た。得られた吸着材5の25℃水中の膨潤度は25%であった。
得られた吸着材5を、モデル海水に浸漬、攪拌させ、アルギン酸ナトリウムの吸着試験を行った。また、印旛沼の表流水に3.5%NaClを添加した液に、吸着材を添加し、吸着処理をおこなったのち、得られた処理水を用いて、PVDF製MF膜(旭化成(株)製、孔径0.1μm)の透水性を評価した結果、長期透水性はBであった。吸着材5の80℃熱水での体積変化率はAであった。得られた吸着材の沈降性を評価した結果、沈降時間は1.2秒であった。結果を表2に示す。
[比較例1]
市販の帯磁性イオン交換樹脂(前澤工業(株)製、「MIEX樹脂」)を多量の80℃熱水にて浸漬、攪拌洗浄することで吸着材6を得た。吸着材6のカチオン性基密度は、特許文献 特表平10−504995号公報に記載の高分子骨格構造をもとに算出した結果、4.9(mmol/g)であり、25℃水中の膨潤度は170%であった。
得られた吸着材6を、モデル海水に浸漬、攪拌させ、アルギン酸ナトリウムの吸着試験を行った。また、印旛沼の表流水に3.5%NaClを添加した液に、吸着材を添加し、吸着処理をおこなったのち、得られた処理水を用いて、PVDF製MF膜(旭化成(株)製、孔径0.1μm)の透水性を評価した結果、長期透水性はCであった。吸着材6の80℃熱水での体積変化率はAであった。得られた吸着材の沈降性を評価した結果、沈降時間は2.5秒であった。結果を表2に示す。
[比較例2]
市販の陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製、「WA10」)を多量の80℃熱水にて浸漬、攪拌洗浄することで吸着材7を得た。吸着材7のカチオン性基密度は、非特許文献 ダイヤイオン2イオン交換樹脂・合成吸着材マニュアルに記載の高分子骨格構造をもとに算出した結果、7.8(mmol/g)であり、25℃水中の膨潤度は157%であった。
得られた吸着材7を、モデル海水に浸漬、攪拌させ、アルギン酸ナトリウムの吸着試験を行った。また、印旛沼の表流水に3.5%NaClを添加した液に、吸着材を添加し、吸着処理をおこなったのち、得られた処理水を用いて、PVDF製MF膜(旭化成(株)製、孔径0.1μm)の透水性を評価した結果、長期透水性はCであった。吸着材7の80℃熱水での体積変化率はAであった。得られた吸着材7の沈降性を評価した結果、沈降時間は29.2秒であった。結果を表2に示す。
[比較例3]
アミノ基密度が6.2(mmol/g)であるキトサンの架橋粒子((株)キミカ製、「キミカキトサンF」)を多量の80℃熱水にて浸漬、攪拌洗浄することで吸着材8を得た。25℃水中の膨潤度は166%であった。
得られた吸着材8を、モデル海水に浸漬、攪拌させ、アルギン酸ナトリウムの吸着試験を行った。また、印旛沼の表流水に3.5%NaClを添加した液に、吸着材を添加し、吸着処理をおこなったのち、得られた処理水を用いて、PVDF製MF膜(旭化成(株)製、孔径0.1μm)の透水性を評価した結果、長期透水性はCであった。吸着材8の80℃熱水での体積変化率はAであった。得られた吸着材8の沈降性を評価した結果、沈降時間は37.4秒であった。結果を表2に示す。
[比較例4]
酸化鉄を添加しない以外は実施例1と同様にし、表1に示すとおり目的の吸着材9を得た。得られた吸着材9の25℃水中の膨潤度は276%であった。
得られた吸着材9を、モデル海水に浸漬、攪拌させ、アルギン酸ナトリウムの吸着試験を行った。また、印旛沼の表流水に3.5%NaClを添加した液に、吸着材を添加し、吸着処理をおこなったのち、得られた処理水を用いて、PVDF製MF膜(旭化成(株)製、孔径0.1μm)の透水性を評価した結果、長期透水性はAであった。吸着材9の80℃熱水での体積変化率はBであった。得られた吸着材の沈降性を評価した結果、沈降時間は32.5秒であった。結果を表2に示す。
[比較例5]
酸化鉄を添加しない以外は実施例2と同様にし、表1に示すとおり目的の吸着材10を得た。得られた吸着材10の25℃水中の膨潤度は80%であった。
得られた吸着材10を、モデル海水に浸漬、攪拌させ、アルギン酸ナトリウムの吸着試験を行った。また、印旛沼の表流水に3.5%NaClを添加した液に、吸着材を添加し、吸着処理をおこなったのち、得られた処理水を用いて、PVDF製MF膜(旭化成(株)製、孔径0.1μm)の透水性を評価した結果、長期透水性はAであった。吸着材10の80℃熱水での体積変化率はAであった。得られた吸着材の沈降性を評価した結果、沈降時間は22.0秒であった。結果を表2に示す。
表2に示すように、実施例1〜5では、アルギン酸ナトリウムを効率的に吸着することが可能であり、そのため膜ろ過工程において長期にわたって高い透水性を維持することが可能である。一方、比較例1〜3に示すように、アミノ基密度が低い高分子吸着材を用いた場合、アルギン酸ナトリウムを吸着することができないため、十分な長期透水性が得られなかった。
一方、吸着材の沈降性については、表2に示すように、実施例1〜5および比較例1では、固体粒子材料である酸化鉄を含有しているため、良好な沈降性を示している。一方、比較例2〜5に示すように、固体粒子材料を含まない吸着材では、粒子の比重が小さいために、良好な沈降性が得られなかった。
[実施例6]
実施例1に従い、吸着材1にアルギン酸ナトリウムを吸着させた後、吸着材をろ別した。次いで、ろ別した吸着材を80℃に調整した純水に浸漬し、1時間攪拌させることで再生処理を行った。その後、再生処理された吸着材をろ別回収した後、再度、実施例1と同様にしてアルギン酸ナトリウムの吸着率を求めた。評価結果を表3に示す。
[実施例7]
実施例2に従い、吸着材2にアルギン酸ナトリウムを吸着させた後、吸着材をろ別した。次いで、ろ別した吸着材を60℃に調整した上述のモデル海水に浸漬し、24時間攪拌させることで再生処理を行った。その後、再生処理された吸着材をろ別回収した後、再度、実施例2と同様にしてアルギン酸ナトリウムの吸着率を求めた。評価結果を表3に示す。
表3に示すように、アルギン酸ナトリウムを吸着した吸着材に対して、再生処理を行った実施例6および7において、再生処理後の吸着材は、アルギン酸ナトリウムを再び高い吸着率で吸着することが可能である。その再生効率は、実施例6および7のいずれも90%以上である。
本発明によれば、膜ファウリング原因物質に対して吸着能を有し、膜ファウリング原因物質を有する被処理水を、効率よく処理することができる吸着材を提供することができる。また、吸着材により処理された供給水は、膜ファウリングに起因する、ろ過膜の劣化を抑制することができ、それにより、膜の使用寿命を延命化することができる。
以上、本発明の好ましい実施態様を例示的に説明したが、当業者であれば、特許請求の範囲に開示した本発明の範囲および精神から逸脱することなく多様な修正、付加および置換ができることが理解可能であろう。

Claims (18)

  1. カチオン性基の密度が10 mmol/g〜30 mmol/g(絶乾重量1グラムあたり、カチオン性基の含有量が10〜30mmol。以降、gは絶乾重量を示す。)であるカチオン性基含有高分子が含まれ、かつ、固体粒子材料が吸着材中に分散された吸着材であって、膜ファウリング原因物質に対して吸着能を有する吸着材。
  2. カチオン性基がアミノ基(1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基)、4級アンモニウム基、イミノ基、アミジン基、グアニジノ基、イミダゾール基、4級イミダゾリウム基、ピリジル基、4級ピリジニウム基から選択される少なくとも1種類の官能基であるカチオン性基含有高分子が含まれる、請求項1に記載の吸着材。
  3. 高分子(A)がポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリアミジン、ポリグアニジン、ポリアミノ酸、ポリピリジン、およびそれらの塩から選択される少なくとも1種類の高分子である、請求項1または2に記載の吸着材。
  4. カチオン性基の密度が11mmol/g〜28mmol/gである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸着材。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸着材において、カチオン性基含有高分子が基材に導入された高分子吸着材。
  6. 請求項5に記載の吸着材において、基材が親水性高分子である、高分子吸着材。
  7. 請求項6に記載の高分子吸着材において、基材が、エチレン−ビニルアルコール共重合体である、高分子吸着材。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の吸着材において、25℃水中における膨潤度が30〜250%である、吸着材。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の吸着材において、膜ファウリング原因物質が、バイオポリマーを含む、吸着材。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の吸着材において、固体粒子材料が重量付与剤である、吸着材。
  11. 固体粒子材料が、チタニア、ジルコニア、重晶石、錫石、シリカ、アルミノシリケート、酸化ニッケル、酸化銅、酸化亜鉛及び硫化亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項10に記載の吸着材。
  12. 固体粒子材料が磁性材料である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の吸着材。
  13. 固体粒子材料が、γ―酸化鉄(γ―Fe、磁赤鉄鉱としても知られる)、磁鉄鉱(Fe)及び二酸化クロムからなる群より選ばれる、請求項12に記載の吸着材。
  14. 固体粒子材料が0.1〜500μmの範囲のサイズである、請求項1〜13のいずれか一項に記載の吸着材。
  15. 固体粒子材料が0.1μm〜10μmの範囲のサイズである、請求項1〜13のいずれか一項に記載の吸着材
  16. 膜ファウリング原因物質を含む被処理水を、請求項1〜15のいずれか一項に記載の吸着材と接触させ、吸着材により被処理水中に含まれる膜ファウリング原因物質を吸着させる吸着工程と、
    吸着工程により得られた吸着処理水を、膜ろ過処理する膜ろ過工程を含み、
    膜ろ過工程が、限外ろ過(UF)膜、精密ろ過(MF)膜、ナノろ過(NF)膜、および逆浸透(RO)膜からなる群から選択される少なくとも一種の膜を用いて、一段または多段にて行われる、水処理方法。
  17. 請求項16に記載の水処理方法において、被処理水が0.1wt%以上の塩を含む水であることを特徴とする、水処理方法。
  18. 請求項16に記載の水処理方法であって、吸着工程における膜ファウリング原因物質を吸着した吸着材を再生する再生工程と、を少なくとも備える水処理方法。
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