JP2016214085A - 毛成長抑制剤の評価又は選択方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】毛成長抑制作用を有する物質、及びその評価及び/又は選択方法の提供。【解決手段】FABP4/5の発現又は活性を指標とする、毛成長抑制剤の評価及び/又は選択方法。FABP4/5の発現又は活性を低下させる物質を有効成分として含有する毛成長抑制剤。【選択図】なし

Description

本発明は、毛成長抑制剤の評価及び/又は選択方法に関する。
近年、美的外観上の理由で、体毛やひげの除去への要求が高まっている。これらの毛を除去する方法としては、毛抜き、シェーバー、脱毛器等を用いる機械的方法、脱毛剤や除毛剤を用いた化学的方法が従来知られている。しかしながら、これら公知の体毛除去方法では、皮膚に対して物理的又は化学的刺激を伴う場合がある。また上記公知の毛の除去方法では、除去後に再生してくる毛の成長を持続的に抑制することはできないため、一定期間経過後には再び毛の除去処理を行わなければならない。毛の成長を持続的かつ効果的に抑制することにより、毛の除去処理回数を減らし、毛の除去の手間を軽減することのできる毛成長抑制剤が望まれている。
毛成長抑制剤の効率よい研究開発のためには、培養細胞等を用いたin vitroでの毛成長抑制剤のハイスループットスクリーニングモデルの開発が有用である。従来の毛成長制御剤のin vitroスクリーニングモデルとしては、ヒト単離毛包培養物での毛成長の直接観察や、特許文献1に開示されている方法がある。
FABPs(Fatty acid−binding proteins)は、細胞内の脂肪酸結合蛋白質ファミリーであり、脂肪酸等に高い結合性を有する14〜15kDaの蛋白質である(非特許文献1、2)。FABP4及びFABP5は、FABPsのアイソフォームであり、互いにアミノ酸配列と立体構造の相同性が高い。これらは、脂肪細胞とマクロファージに共発現しているが、FABP4は脂肪組織やマクロファージで比較的特異性高く発現し、一方、FABP5は、上皮系細胞に広範に発現している。FABP4とFABP5については、炎症と代謝、特にメタボリックシンドローム関連の研究が多く行われている。例えば、FABP4及びFABP5それぞれの遺伝的変異又はノックアウトマウスでは、粥状動脈硬化や糖尿病の発症が抑制されることが報告されている。しかしながら、毛髪組織での、特に毛成長に関するFABP4及びFABP5の機能は明らかにされていない。
特許第5654808号公報
Nature Reviews Drug Discovery, 2008,7:489-503 Diabetologia,2013,56:10-21
本発明は、毛成長抑制剤の評価及び/又は選択方法に関する。
本発明者らは、FABPsファミリーのうち、FABP4及びFABP5が毛根部において局所的に高い発現を示していること、及び、毛包にFABP4又はFABP5の活性を阻害する化合物を投与することによって毛成長が抑制されることを見出した。これらの知見に基づいて、本発明者らは、FABP4又はFABP5の発現又は活性の抑制作用を指標として、毛成長抑制剤を評価及び/又は選択することができること、及び、FABP4又はFABP5の発現又は活性抑制作用を有する物質が、毛成長抑制に使用できることを見出した。
したがって、本発明は、以下:
FABP4遺伝子若しくはFABP5遺伝子、又はFABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質を発現可能な組織又は細胞に、被験物質を適用すること;
該組織又は細胞における、FABP4遺伝子若しくはFABP5遺伝子の発現量、FABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質の発現量、又はFABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質の活性を測定すること;
該測定結果に基づいて、FABP4遺伝子若しくはFABP5遺伝子の発現量、FABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質の発現量、又はFABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質の活性を低下させる被験物質を、毛成長抑制剤として評価及び/又は選択すること、
を含む、毛成長抑制剤の評価及び/又は選択方法を提供する。
また本発明は、以下:
FABP4蛋白質又はFABP5蛋白質に、被験物質を適用すること;
該FABP4蛋白質又はFABP5蛋白質の活性を測定すること;
該測定結果に基づいて、該FABP4蛋白質又はFABP5蛋白質の活性を低下させる被験物質を、毛成長抑制剤として評価及び/又は選択すること、
を含む、毛成長抑制剤の評価及び/又は選択方法を提供する。
また本発明は、FABP4遺伝子若しくはFABP5遺伝子の発現、FABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質の発現、又はFABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質の活性を低下させる物質を有効成分として含有する、毛成長抑制剤を提供する。
また本発明は、以下の式(I)又は式(II)で表される化合物:
を有効成分として含有する、毛成長抑制剤を提供する。
本発明は、各種物質の毛成長抑制効果をより簡便かつ迅速に評価することができる方法を提供する。また本発明は、FABP4又はFABP5抑制作用に基づいた新たな毛成長抑制剤を提供する。
ヒト頭髪毛根部におけるFABPsの発現。n=6、エラーバー=SD。 FABP4/5−蛍光基質結合に与える式(I)化合物の影響。各バーは1,8−ANSの蛍光強度を表す(n=3、エラーバー=SD)。**:p<0.01(vs 0μM式(I)化合物/FABP4又は5+、Dunnett’s test)。 FABP4/5−蛍光基質結合に与える式(II)化合物の影響。各バーは1,8−ANSの蛍光強度を表す(n=3、エラーバー=SD)。*:p<0.05、**:p<0.01(vs 0μM式(II)化合物/FABP4又は5+、Dunnett’s test)。 式(I)化合物による培養ヒト毛包における毛成長抑制効果。n=16、エラーバー=SD。**:p<0.01(vs Vehicle、Dunnett’s test)。 式(II)化合物による培養ヒト毛包における毛成長抑制効果。n=16、エラーバー=SD。**:p<0.01(vs Vehicle、Dunnett’s test)。 式(I)化合物及び式(II)化合物の細胞毒性評価。左:式(I)化合物、右:式(II)化合物。いずれもn=6、エラーバー=SD。
本明細書において、「毛成長抑制」とは、毛又は毛包の伸長を抑制する作用、あるいは毛径を減少させる作用を意味する。
本明細書において、成長を抑制される「毛」としては、頭髪、ひげ、睫毛、眉毛、及びその他の体毛(例えば、手足や体幹部の毛)などが挙げられるが、好ましくは、ひげ及び手足や体幹部の体毛である。
本明細書において、「非治療的」とは、医療行為を含まない、すなわち人間を手術、治治療又は診断する方法を含まない概念、より具体的には、医師、又は医療従事者若しくは医師の指示を受けた者が人間に対して手術、治療又は診断を実施する方法を含まない概念である。
FABP4とFABP5は、FABPsファミリーに属する蛋白質である。本明細書において、「FABP4/5」とは、FABP4遺伝子、FABP5遺伝子、FABP4蛋白質、又はFABP5蛋白質をいう。また本明細書において、「FABP4/5蛋白質」とは、FABP4蛋白質又はFABP5蛋白質をいう。本明細書において、「FABP4/5の発現」とは、FABP4遺伝子若しくはFABP5遺伝子の発現、又はFABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質の発現をいう。また本明細書において「FABP4/5の活性」とは、FABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質の活性をいう。
本明細書において「FABP4遺伝子」とは、GenBank Accession No.NM_001442.2で表されるヒトFABP4遺伝子、そのホモログ、パラログ又はオルソログをいう。好ましくは、「FABP4遺伝子」とは、配列番号1で示されるヌクレオチド配列、又は当該配列と少なくとも90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、脂肪酸等に高い結合性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドをいう。また、本明細書において「FABP5遺伝子」とは、GenBank Accession No.NM_001444.2で表されるヒトFABP5遺伝子、そのホモログ、パラログ又はオルソログをいう。好ましくは、「FABP5遺伝子」とは、配列番号3で示されるヌクレオチド配列、又は当該配列と少なくとも90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、脂肪酸等に高い結合性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドをいう。
本明細書において「FABP4蛋白質」とは、上記「FABP4遺伝子」にコードされるポリペプチドをいう。より詳細には、「FABP4蛋白質」とは、GenBank Accession No.NP_001433.1で表されるヒトFABP4蛋白質、そのホモログ、パラログ又はオルソログをいう。好ましくは、「FABP4蛋白質」とは、配列番号2で示されるアミノ酸配列、又は当該配列と少なくとも90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、脂肪酸等に高い結合性を有する蛋白質をいう。また、本明細書において「FABP5蛋白質」とは、上記「FABP5遺伝子」にコードされるポリペプチドをいう。より詳細には、「FABP5蛋白質」とは、GenBank Accession No.NP_001435.1で表されるヒトFABP5蛋白質、そのホモログ、パラログ又はオルソログをいう。好ましくは、「FABP5蛋白質」とは、配列番号4で示されるアミノ酸配列、又は当該配列と少なくとも90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、脂肪酸等に高い結合性を有する蛋白質をいう。
本明細書において、アミノ酸配列及びヌクレオチド配列に関する「少なくとも90%の同一性」とは、90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上の同一性をいう。
本明細書において、ヌクレオチド配列及びアミノ酸配列の同一性は、リップマン−パーソン法(Lipman−Pearson法;Science,1985,227:1435−1441)によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx−Win(Ver.5.1.1;ソフトウェア開発)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出される。
一態様において、本発明は、FABP4/5抑制作用を指標として、各種物質の毛成長抑制作用を評価し、又はさらに当該評価に基づいて毛成長抑制剤を選択する方法を提供する。本発明の毛成長抑制剤の評価及び/又は選択方法は、in vitro又はex vivoで行われ得る。
したがって、本発明の一実施形態は、以下:
FABP4/5を発現可能な組織又は細胞に、被験物質を適用すること;
該組織又は細胞における、FABP4/5の発現量又は活性を測定すること;
該測定結果に基づいて、FABP4/5の発現量又は活性を低下させる被験物質を、毛成長抑制剤として評価及び/又は選択すること、
を含む、毛成長抑制剤の評価及び/又は選択方法である。
本発明の別の実施形態は、以下:
FABP4/5蛋白質に、被験物質を適用すること;
該FABP4/5蛋白質の活性を測定すること;
該測定結果に基づいて、該FABP4/5蛋白質の活性を低下させる被験物質を、毛成長抑制剤として評価及び/又は選択すること、
を含む、毛成長抑制剤の評価及び/又は選択方法である。
上記本発明の方法に使用される被験物質は、毛成長抑制剤として使用することを所望する物質であれば、特に制限されない。被験物質は、天然に存在する物質であっても、化学的又は生物学的方法等で人工的に合成した物質であってもよく、また化合物であっても、組成物若しくは混合物であってもよい。
上記本発明の方法の一実施形態において、被験物質を適用されるFABP4/5を発現可能な組織又は細胞の例としては、FABP4遺伝子若しくはFABP5遺伝子、又はFABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質を発現している、哺乳動物から単離された組織若しくは細胞、又はその培養物が挙げられる。より詳細な例としては、哺乳動物から採取された皮膚上皮組織又は細胞、十二指腸や空腸等の小腸組織又は細胞、脂肪組織又は細胞、胸腺上皮組織又は細胞、及びそれらの培養物;毛包を含む皮膚培養物;単離毛包培養物;器官培養毛包;小腸初代培養細胞;Caco−2細胞、IEC−6細胞、IEC−18細胞、STC−1細胞、GLUTag細胞等の小腸培養細胞;3T3−L1細胞、などが挙げられる。
あるいは、本発明の方法に用いられる、FABP4/5を発現可能な組織又は細胞の例としては、FABP4遺伝子若しくはFABP5遺伝子、又はFABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質を発現するように遺伝的に改変された哺乳動物の組織若しくは細胞、又はその培養物が挙げられる。当該遺伝的に改変された哺乳動物の組織又は細胞、及びその培養物は、例えば、哺乳動物の任意の組織又は細胞にFABP4蛋白質又はFABP5蛋白質をコードする遺伝子を導入して、該組織又は細胞がFABP4/5を発現するように、あるいはFABP4/5の発現が強化されるように形質転換することによって作製することができる。遺伝子を細胞に導入する方法としては、エレクトロポレーションやリポフェクションなどによるベクター導入が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の方法で使用されるFABP4/5を発現可能な組織又は細胞が由来する哺乳動物としては、例えば、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ブタ、サル等が挙げられるが、これらに限定されない。
上記FABP4/5を発現可能な組織又は細胞への被験物質の適用は、例えば、被験物質を所定の濃度になるように予め培地中に添加した後、当該組織又は細胞を該培地に播種すること、あるいは、当該組織又は細胞が播種された培地に、被験物質を所定の濃度になるように添加することにより行うことができる。またあるいは、単離毛包培養物や器官培養毛包の場合、毛包又はその周辺組織に被験物質を直接投与してもよい。被験物質適用後の組織又は細胞は、例えば室温(約25℃)〜37℃で通常3〜48時間程度、好ましくは6〜24時間程度培養することが好ましい。
上記培地に対する上記組織又は細胞の播種時の濃度は、細胞が増殖可能な濃度であれば特に限定されない。また、被験物質の添加濃度は、0.00001〜10%(w/v)とするのが好ましく、特に0.0001〜5%(w/v)とするのが好ましい。
上記組織又は細胞を培養する培地は、常用の培地を用いることができ、例えば10%FBS含有Dulbecco’s Modified Eagle’s Mediumなどが挙げられる。細胞継代、増殖時にはこれらの培地に、血清、増殖因子、インスリン等の増殖添加剤や抗菌剤等を添加することが好ましい。
次いで、上記被験物質を適用した組織又は細胞を回収して、FABP4遺伝子若しくはFABP5遺伝子の発現量、FABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質の発現量、又はFABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質の活性を測定する。遺伝子の発現量の測定は、公知の方法に従って行うことができる。例えば、mRNAレベルで検出する場合は、例えば細胞からtotal RNAを抽出した後、リアルタイムRT−PCR法、RNA分解酵素プロテクションアッセイ法、DNAアレイ法、ノーザンブロット解析法などを用いて、FABP4/5遺伝子から転写されたmRNAを検出定量することにより行うことができる。
FABP4/5蛋白質の発現量の測定は、通常の免疫測定法、例えばRIA法、EIA法、ELISA、バイオアッセイ法、ウェスタンブロットなどにより行うことができる。ウェスタンブロットが安価かつ簡便で望ましい。FABP4/5蛋白質の活性の測定は、FABP4/5蛋白質に対する結合基質の結合量を測定することなどにより行うことができる。例えば、結合基質として1−anilinonaphthalene−8−sulfonic acid(1,8−ANS)を用い、その蛍光強度から結合量を測定すればよい。
次いで、本発明の方法においては、上記で測定したFABP4/5の発現量又は活性に基づいて、毛成長抑制剤を評価及び/又は選択する。より詳細には、FABP4/5の発現量又は活性を低下させる被験物質を、毛成長抑制剤として評価及び/又は選択する。
好ましくは、被験物質を適用したFABP4/5を発現可能な組織又は細胞(試験群)におけるFABP4/5の発現量又は活性を、対照群におけるFABP4/5の発現量又は活性と比較し、当該比較結果に基づいて、毛成長抑制剤として使用できる被験物質を選択する。
対照群としては、試験群と同じFABP4/5を発現可能な組織又は細胞であって、被験物質を適用されていないものが挙げられる。対照群におけるFABP4/5の発現量又は活性は、上記と同様の手順で測定することができる。
試験群における発現量又は活性が対照群と比べて低下した場合、被験物質には毛成長抑制作用があると評価し、該被験物質を毛成長抑制剤として選択する。例えば、対照群における発現量又は活性に対して、試験群における発現量又は活性が統計学的に有意に低下していた場合に、被験物質には毛成長抑制作用があると評価する。別の例としては、対照群における発現量又は活性を100%としたときに、試験群における発現量又は活性が90%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは60%以下である場合に、被験物質には毛成長抑制作用があると評価する。毛成長抑制作用があると評価された被験物質は、毛成長抑制剤として選択される。
本発明の方法の別の実施形態においては、細胞外で、FABP4/5蛋白質に被験物質が適用される。例えば、上述したFABP4/5を発現可能な組織又は細胞からFABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質を単離することにより、又は化学合成により、FABP4/5蛋白質を調製する。得られたFABP4/5蛋白質に被験物質及び結合基質を適用し、次いでその活性を測定する。活性の測定は、上述した手順で、FABP4/5蛋白質に対する結合基質の結合量を測定することなどにより行うことができる。
次いで、上記で測定したFABP4/5蛋白質の活性を低下させる被験物質を、毛成長抑制剤として評価及び/又は選択する。好ましくは、被験物質を適用したFABP4/5蛋白質(試験群)における活性を、対照群における活性と比較し、当該比較結果に基づいて、毛成長抑制剤として使用できる被験物質を選択する。対照群としては、被験物質を適用されていない群が挙げられる。対照群におけるFABP4/5蛋白質の活性は、試験群と同様の手順で測定することができる。
試験群における活性が対照群と比べて低下した場合、被験物質には毛成長抑制作用があると評価し、該被験物質を毛成長抑制剤として選択する。例えば、対照群における活性に対して、試験群における活性が統計学的に有意に低下していた場合に、被験物質には毛成長抑制作用があると評価する。別の例としては、対照群における活性を100%としたときに、試験群における活性が90%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは60%以下である場合に、被験物質には毛成長抑制作用があると評価する。毛成長抑制作用があると評価された被験物質は、毛成長抑制剤として選択される。
上記の本発明の方法においては、必要に応じて、上記手順で選択された物質をさらなるスクリーニングにかけてもよい。例えば、上記方法で毛成長抑制作用があると評価又は選択された被験物質を、毛包を含む皮膚培養物、単離毛包培養物、器官培養毛包などに投与した後、毛又は毛包の成長を測定し、必要に応じて対照のそれと比較することにより、より強力な毛成長抑制作用を有する物質をさらに選別することができる。対照としては、例えば、被験物質を投与されていない、毛包を含む皮膚培養物、単離毛包培養物、器官培養毛包などが挙げられる。例えば、被験物質投与群における毛又は毛包の長さや毛径が、対照群における毛又は毛包の長さや毛径に対して統計学的に有意に低下していた場合、あるいは、対照群における毛又は毛包の長さや毛径に対して90%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは60%以下である場合に、該被験物質は毛成長抑制剤として選択される。
以上のとおり、FABP4/5抑制作用を指標として、毛成長抑制剤を同定することができる。したがって、一態様において、本発明は、FABP4/5の発現量又は活性を低下させる物質を有効成分として含有する毛成長抑制剤を提供する。
一実施形態において、本発明の毛成長抑制剤は、以下の式(I)又は式(II)で表される化合物を有効成分として含有する。これらの化合物は、FABP4/5の発現量又は活性を低下させる作用を有し、毛包に適用すれば毛成長抑制剤として働く。
別の実施形態において、本発明の毛成長抑制剤は、公知のFABP4/5阻害剤、例えば、以下に例示する化合物(Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2010,20:3675−3679参照)を有効成分として含有する。これらの化合物は、毛包に適用すれば毛成長抑制剤として働く。
上記本発明の毛成長抑制剤は、毛成長抑制のため、又は除毛若しくは脱毛のために使用することができる。当該使用は治療的使用であってもよいが、非治療的使用であってもよい。非治療的使用の例としては、美容的又は審美的な目的での脱毛、除毛若しくは毛成長抑制のための本発明の毛成長抑制剤の適用、及びエステティシャン、美容師、理容師、トリマー等による本発明の毛成長抑制剤の使用などが挙げられる。好ましい実施形態において、本発明の毛成長抑制剤は皮膚に局所投与される。
上記本発明の毛成長抑制剤はまた、毛成長抑制用、又は除毛若しくは脱毛用の組成物の製造のために使用することができる。当該組成物の例としては、毛成長抑制のため、又は除毛若しくは脱毛のための医薬品、医薬部外品、化粧料、又はその他の外用組成物が挙げられる。当該組成物は、上記本発明の毛成長抑制剤を、毛成長抑制のため、又は除毛若しくは脱毛のための有効成分として含有する。さらに、当該当該組成物は、本発明の毛成長抑制剤の毛成長抑制作用が失われない限り、必要に応じて薬学的に若しくは化粧料として許容される担体や添加剤、又は他の有効成分、薬理成分、化粧成分等を含有していてもよい。
上記本発明の毛成長抑制剤を含む組成物は、任意の形態に調製され得るが、好ましくは皮膚外用剤であり得る。当該皮膚外用剤の例としては、毛成長抑制又は除毛若しくは脱毛のための軟膏、クリーム、ローション、ゲル、フォーム、パッチ、テープ、スプレー等であり得る。あるいは、当該皮膚外用剤は、毛成長抑制機能を備えた、保湿や美白用スキンケア製品、制汗剤、デオドラント剤、ボディソープ等であり得る。
あるいは、上記本発明の毛成長抑制剤は、毛成長抑制成分として、医薬品、医薬部外品、化粧料、その他の外用組成物などの任意の組成物に添加され得る。例えば、保湿や美白用スキンケア製品、制汗剤、デオドラント剤、ボディソープ等に、上記本発明の毛成長抑制剤を毛成長抑制成分として添加し、毛成長抑制効果を付与することができる。
上記組成物における上記本発明の毛成長抑制剤の含有量は、好ましくは0.0005質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上、さらに好ましくは0.005質量%以上であり、他方、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
さらに別の態様において、本発明は、対象の毛成長を抑制する方法を提供する。また本発明は、対象の除毛又は脱毛方法を提供する。当該方法は、当該対象に、上記本発明の毛成長抑制剤を有効量で投与することを含む。当該方法は、治療的方法であってもよいが非治療的方法であってもよい。また当該方法は、in vitro方法であっても、in vivo方法であってもよい。
上記方法における対象としては、毛成長抑制が所望される動物、除毛若しくは脱毛が所望される動物が挙げられる。動物としては、好ましくはヒト、及びイヌ、ネコを含む非ヒト哺乳動物が挙げられ、より好ましくはヒトが挙げられる。あるいは、上記対象としては、動物由来の毛成長能力を有する組織、器官及び細胞を挙げることができる。毛成長能力を有する組織、器官及び細胞としては、毛包を含む皮膚培養物、単離毛包培養物、及び器官培養毛包が挙げられる。
上記方法の好ましい実施形態において、上記本発明の毛成長抑制剤は、毛成長抑制が所望される対象の毛包又はそれを含む皮膚に局所投与(例えば、塗布)される。
上記方法における本発明の毛成長抑制剤の投与の有効量は、対象の毛成長の抑制を達成できる量であり得る。好ましくは、有効量とは、投与群の毛包若しくは毛髪の伸長又は毛径を、未投与群の90%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは60%以下に減少させることができる量であり得る。投与の有効量は、対象の種、体重、性別、年齢、状態又はその他の要因に従って変動し得る。投与の用量、経路、間隔は、当業者によって適宜決定され得る。好ましい投与経路は、皮膚への局所投与である。用量の目安は、成人(60kg)の場合、1日当たり、好ましくは0.001mg以上、より好ましくは0.005mg以上であり、他方、好ましくは500mg以下、より好ましくは100mg以下である。
一実施形態において、上記本発明の毛成長抑制方法、除毛方法又は脱毛方法は、非治療的方法であり得る。非治療的方法の例としては、美容的又は審美的な目的で脱毛、除毛若しくは毛成長抑制が所望されるヒトや非ヒト哺乳動物に上記本発明の毛成長抑制剤を投与する方法、エステティシャン、美容師、理容師、トリマー等により、上記対象に上記本発明の毛成長抑制剤を適用する方法などが挙げられる。
本発明の例示的実施形態として、さらに以下の組成物、製造方法、用途あるいは方法を本明細書に開示する。ただし、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
<1>毛成長抑制剤の評価及び/又は選択方法であって、以下:
FABP4遺伝子若しくはFABP5遺伝子、又はFABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質を発現可能な組織又は細胞に、被験物質を適用すること;
該組織又は細胞における、FABP4遺伝子若しくはFABP5遺伝子の発現量、FABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質の発現量、又はFABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質の活性を測定すること;
該測定結果に基づいて、FABP4遺伝子若しくはFABP5遺伝子の発現量、FABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質の発現量、又はFABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質の活性を低下させる被験物質を、毛成長抑制剤として評価及び/又は選択すること、
を含む、方法。
<2>好ましくは、上記FABP4遺伝子若しくはFABP5遺伝子、又はFABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質を発現可能な組織又は細胞が、以下の(1)〜(4)からなる群より選択される、<1>記載の方法:
(1)哺乳動物から採取された皮膚上皮組織若しくは細胞、小腸組織若しくは細胞、脂肪組織若しくは細胞、胸腺上皮組織若しくは細胞、又はその培養物;
(2)毛包を含む皮膚培養物、単離毛包培養物、又は器官培養毛包;
(3)小腸初代培養細胞、Caco−2細胞、IEC−6細胞、IEC−18細胞、STC−1細胞、GLUTag細胞、又は3T3−L1細胞;又は
(4)FABP4遺伝子若しくはFABP5遺伝子、又はFABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質を発現するように遺伝的に改変された哺乳動物の組織若しくは細胞、又はその培養物。
<3>好ましくは、対照群におけるFABP4遺伝子若しくはFABP5遺伝子の発現量、FABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質の発現量、又はFABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質の活性を測定することをさらに含み、該対照群が、上記FABP4遺伝子若しくはFABP5遺伝子、又はFABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質を発現可能な組織又は細胞であって、上記被験物質を適用されていないものである、<1>又は<2>記載の方法。
<4>好ましくは、上記<1>で測定したFABP4遺伝子若しくはFABP5遺伝子の発現量、FABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質の発現量、又はFABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質の活性が、上記対照群で測定された発現量又は活性に対して統計学的に有意に低下していた場合に、上記被験物質は毛成長抑制剤として選択される、<3>記載の方法。
<5>好ましくは、上記<1>で測定したFABP4遺伝子若しくはFABP5遺伝子の発現量、FABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質の発現量、又はFABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質の活性が、上記対照群で測定された発現量又は活性を100%としたときに90%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは60%以下である場合に、上記被験物質は毛成長抑制剤として選択される、<3>記載の方法。
<6>毛成長抑制剤の評価及び/又は選択方法であって、以下:
FABP4蛋白質又はFABP5蛋白質に、被験物質を適用すること;
該FABP4蛋白質又はFABP5蛋白質の活性を測定すること;
該測定結果に基づいて、該FABP4蛋白質又はFABP5蛋白質の活性を低下させる被験物質を、毛成長抑制剤として評価及び/又は選択すること、
を含む、方法。
<7>好ましくは、対照群におけるFABP4蛋白質又はFABP5蛋白質の活性を測定することをさらに含み、該対照群が、上記被験物質を適用されていないFABP4蛋白質又はFABP5蛋白質である、<6>記載の方法。
<8>好ましくは、上記<6>で測定したFABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質の活性が、上記対照群で測定された活性に対して統計学的に有意に低下していた場合に、上記被験物質は毛成長抑制剤として選択される、<7>記載の方法。
<9>好ましくは、上記<6>で測定したFABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質の活性が、上記対照群で測定された活性を100%としたときに、90%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは60%以下である場合に、上記被験物質は毛成長抑制剤として選択される、<7>記載の方法。
<10>FABP4遺伝子若しくはFABP5遺伝子の発現、FABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質の発現、又はFABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質の活性を低下させる物質を有効成分として含有する、毛成長抑制剤。
<11>本明細書に記載の式(I)又は式(II)で表される化合物を有効成分として含有する、毛成長抑制剤。
<12>上記<10>又は<11>記載の毛成長抑制剤を含有する、毛成長抑制、除毛若しくは脱毛のための組成物。
<13>毛成長抑制、除毛若しくは脱毛用の組成物の製造のための、上記<10>又は<11>記載の毛成長抑制剤の使用。
<14>毛成長抑制のため、又は除毛若しくは脱毛のための、上記<10>又は<11>記載の毛成長抑制剤の使用。
<15>上記<10>又は<11>記載の毛成長抑制剤を有効量で対象に投与することを含む、対象の毛成長を抑制する方法。
<16>上記<10>又は<11>記載の毛成長抑制剤を有効量で対象に投与することを含む、対象の除毛又は脱毛方法。
以下、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。
実施例1 ヒト頭髪毛根部におけるFABPsの発現解析
ヒト頭髪毛根部からtotal RNAを抽出し、遺伝子発現をDNAアレイ(Affymetrix、Human Genome U133 Plus 2.0 Array)により解析した。その結果、図1に示すように、ヒト毛根部においてはFABP4及びFABP5の発現が顕著であり、それ以外のFABPsの発現はほとんど認められなかった。この結果から、毛の成長に関連するFABPsはFABP4及びFABP5であることが示唆された。
実施例2 FABP4/5活性に基づく毛成長抑制剤のスクリーニング
(原理)
Liuらの報告(J Neurochem,2008,106:2015−2029)に基づくFABP4又はFABP5への蛍光基質及び被験物質の拮抗的な結合を利用して、毛成長抑制剤をスクリーニングした。下記Schema 1にその原理を示す。1−anilinonaphthalene−8−sulfonic acid(1,8−ANS)(A)は、FABP4蛋白質及びFABP5蛋白質に結合能(それぞれKd=1.2μM、11.7μM)を有する物質である。1,8−ANSは、疎水性環境下でのみ蛍光を発する物質であり、例えば緩衝液中などの親水性環境下では蛍光を発しない(B)。ところがFABP4蛋白質又はFABP5蛋白質が存在する場合には、1,8−ANSはFABP4蛋白質又はFABP5蛋白質に結合し、結果、1,8−ANS分子周辺が疎水性環境となるため蛍光を発するようになる(C)。一方、FABP4蛋白質又はFABP5蛋白質に対する結合定数がより小さい物質がさらに共存すると、1,8−ANSよりも優先的にその物質がFABP4蛋白質又はFABP5蛋白質に結合し、その結果、疎水性環境下にある1,8−ANSが減少するため、蛍光が減弱する(D)。したがって、被験物質を1,8−ANSと同時に添加した際に蛍光が減弱した場合、該被験物質は、1,8−ANSよりもFABP4蛋白質又はFABP5蛋白質に結合しやすい物質、すなわちFABP4蛋白質又はFABP5蛋白質に結合してその活性を抑制する物質であると判断される。
(被験物質)
FABP4蛋白質特異的活性阻害剤FABP4 Inhibitor(式(I)化合物)はSanta Cruz Biotechnology, Incより購入した。また、FABP3蛋白質、FABP4蛋白質及びFABP5蛋白質の活性をブロードに阻害すると報告されているトリアゾロピリミジノン誘導体(5−((3−chloro−2−methylphenoxy)methyl)−2−phenyl−[1,2,4]triazolo[1,5−α]pyrimidin−7(4H)−one;式(II)化合物)は、後述の参考例1記載の方法で合成した。それぞれの被験物質は、10mMとなるようにDimethyl sulfoxide(DMSO)に溶解した後、所定の濃度になるようエタノールで希釈して使用した。各サンプル間でエタノール/DMSO濃度比は同一になるよう調整した。
(方法)
ヒトFABP4又はFABP5のcDNAをpGEX−6P−2ベクター(GE healthcare)にクローニングし、組換え蛋白質発現用大腸菌株BL21(GE healthcare)に形質転換することで組換型ヒトFABP4蛋白質及び組換型ヒトFABP5蛋白質をそれぞれ得た。96ウェルプレートに、上記で得たFABP4蛋白質又はFABP5蛋白質を含むAssay buffer(10mM potassium phosphate、40mM KCl、pH8.0)を最終容量が200μLとなるように添加し、さらに被験物質として上記式(I)及び式(II)化合物、及び蛍光基質である1,8−ANS(Life technologies)を添加した。その後、室温にて5分間インキュベートし、EnVision 2104 Multilabel reader(PerkinElmer)にて蛍光の測定を行った(励起波長355nm、測定波長480nm)。
(結果)
結果を図2〜3、及び表1〜2に示す。式(I)化合物は、蛍光基質とFABP4蛋白質との結合を濃度依存的かつ統計学的に有意に阻害したが、蛍光基質とFABP5蛋白質との結合を阻害しなかった(図2及び表1)。一方、式(II)化合物は、蛍光基質とFABP4蛋白質との結合を濃度依存的かつ統計学的に有意に阻害し、また添加量が最大量の10μMのときには蛍光基質とFABP5蛋白質との結合も統計学的に有意に阻害した(図3及び表2)。したがって、式(I)化合物はFABP4蛋白質の、また式(II)化合物はFABP4及びFABP5蛋白質の活性抑制剤であることが示された。
実施例3 ヒト単離毛包培養物を用いた被験物質の毛成長抑制作用の評価
ヒト頭皮検体を0.1%ヒビテン液に1分間浸漬して消毒後、PBSで洗浄した。その後、William E培地(Life technologies)中、実体顕微鏡下にてピンセットとメスを用いて毛包を単離した。単離した毛包は、William E培地に2mM L−Glutamine(Life technologies)、10μg/mL Insulin(Life technologies)、40ng/mL Hydrocortisone(Sigma)、1%Antibiotics−antimitotics(Life technologies)を含む培地中(24ウェルプレート、300μL)にて37℃、5%CO条件下で培養した。被験物質として、実施例2で調製したものと同じ式(I)又は式(II)化合物のエタノール/DMSO溶液を、所定の濃度で培地に添加した。または対照(Vehicle)としてエタノール/DMSO溶媒のみを培地に添加した。培養毛包は経時的に顕微鏡下で写真を撮影し、同条件で撮影されたスケールを元に画像解析にて毛包の長さを算出した。画像解析はNewQube(version 4.0.3、Nexus)により実施し、初期値からの増加量を毛伸長量とした。
結果を図4〜5、及び表3に示す。式(I)及び式(II)化合物は、3〜10μMの濃度域において濃度依存的かつ統計学的に有意にヒト毛包の伸長を抑制した。実施例2で示したとおり、式(I)及び式(II)化合物はFABP4蛋白質及び/又はFABP5蛋白質活性抑制剤であることから、本実施例の結果から、FABP4及び/又はFABP5の発現又は活性を抑制することで毛成長を抑制することができることが明らかになった。
実施例4 被験物質の細胞毒性評価
ヒト腎(293A)細胞はATCCより購入し、DMEM(Life technologies、High glucose、10%非働化FBS)中37℃、5%CO条件下で培養した。培養した細胞を96ウェルプレートに撒き、翌日に被験物質を所定の濃度に希釈して添加した。被験物質としては、実施例2で調製したものと同じ式(I)又は式(II)化合物のエタノール/DMSO溶液を用いた。被験物質添加48時間後にalamarBlue(AbD Serotec)を用いて、付属の使用説明書に従って生細胞数の指標となる蛍光(励起波長544nm、蛍光波長590nm)を検出し、対照(Vehicle;エタノール/DMSO溶媒のみ添加)に対する生細胞数の割合(%)を算出した。
結果を図6に示す。式(I)及び式(II)化合物は、30μMまでの濃度域で細胞毒性を示さなかった。したがって、式(I)及び式(II)化合物は、細胞毒性を示さない濃度域で効果的に毛成長を抑制することができる。
参考例1 式(II)化合物の合成
まず、3−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾール−5−アミン1.61gを酢酸12mLに懸濁させ、4−クロロアセト酢酸エチル1.50mLを加えた。これを130℃で15時間撹拌し、室温まで冷却した。ろ過した後、アセトニトリル3mLで洗浄し、乾燥させて5−(クロロメチル)−2−フェニル−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリミジン−7(4H)−オン(化合物1)を白色粉末で得た(263mg、収率10%)。
上記で得られた生成物について、H−NMR解析を行い、5−(クロロメチル)−2−フェニル−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリミジン−7(4H)−オンであることを確認した。
H−NMR(MeOD)δ:8.28−8.24(2H,m),7.55(3H,dd,J=5.2,2.1Hz),6.25(1H,s),4.69(2H,s).
次に、3−クロロ−2−メチルフェノール246mgをジメチルアセトアミド3mLに溶かし、室温で水素化ナトリウム(60%)85.2mgを加えた。20分後、270mgの5−(クロロメチル)−2−フェニル−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリミジン−7(4H)−オン(化合物1)を加え、180℃で40時間加熱した。室温まで冷却後、水5mLを加え、酢酸エチル50mLで4回抽出した。得られた上層を合わせて、飽和食塩水10mLで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過後、溶媒を留去し、粗生成物として式(II)化合物を得た。これを、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム−メタノール)で精製した。次いで、ダイヤイオンHP−20(水−メタノール)で精製し、式(II)化合物を白色粉末で得た(10.3mg、収率2.7%)。
上記で得られた生成物について、1H−NMR解析及び13C−NMR解析を行い、式(II)化合物であることを確認した。
H−NMR(MeOD)δ:8.23−8.22(2H,m),7.48(3H,dd,J=5.2,2.0Hz),7.14(1H,t,J=8.3Hz),7.03(1H,d,J=8.3Hz),6.95(1H,d,J=8.3Hz,6.21(1H,s),5.11(2H,s),2.43(3H,s).
13C−NMR(MeOD)δ:163.7,162.3,161.4,159.0,158.8,136.4,132.6,131.4,129.9,128.6,128.5,126.4,123.2,111.6,95.6,70.9,13.3.

Claims (4)

  1. 毛成長抑制剤の評価及び/又は選択方法であって、以下:
    FABP4遺伝子若しくはFABP5遺伝子、又はFABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質を発現可能な組織又は細胞に、被験物質を適用すること;
    該組織又は細胞における、FABP4遺伝子若しくはFABP5遺伝子の発現量、FABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質の発現量、又はFABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質の活性を測定すること;
    該測定結果に基づいて、FABP4遺伝子若しくはFABP5遺伝子の発現量、FABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質の発現量、又はFABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質の活性を低下させる被験物質を、毛成長抑制剤として評価及び/又は選択すること、
    を含む、方法。
  2. 毛成長抑制剤の評価及び/又は選択方法であって、以下:
    FABP4蛋白質又はFABP5蛋白質に、被験物質を適用すること;
    該FABP4蛋白質又はFABP5蛋白質の活性を測定すること;
    該測定結果に基づいて、該FABP4蛋白質又はFABP5蛋白質の活性を低下させる被験物質を、毛成長抑制剤として評価及び/又は選択すること、
    を含む、方法。
  3. FABP4遺伝子若しくはFABP5遺伝子の発現、FABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質の発現、又はFABP4蛋白質若しくはFABP5蛋白質の活性を低下させる物質を有効成分として含有する、毛成長抑制剤。
  4. 以下の式(I)又は式(II)で表される化合物:
    を有効成分として含有する、毛成長抑制剤。
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