JP2016213149A - 試料収容セル - Google Patents

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Abstract

【課題】試料を収容するセルの利便性を高めること。【解決手段】本発明の実施形態における試料収容セルは、第1開口部を有する第1層と、第1層に対向して配置される第2層と、第1層と前記第2層とに挟まれて配置された中間層であって、第1層または第2層に形成された少なくとも1つの開口部を介して外部空間に接続し、少なくとも2つの開口部の端部から所定の距離にわたって拡がり、第1開口部と第2層との間の観察空間と外部空間とを接続する流路空間を形成する中間層と、第1開口部の第2層側を開口内部から塞ぎ、少なくとも当該第1開口部の側面に支持され、電子線に対して透過性を有する第1薄膜と、を備えることを特徴とする。【選択図】図3

Description

本発明は、走査型電子顕微鏡の観察において、観察対象の試料(Object)を収容するセルに関する。
電子顕微鏡を用いた試料の観察は、一般的には、観察対象の試料が真空等の特殊な空間に曝される。一方、近年では、メカノバイオロジー(Mechanobiology)と呼ばれる技術分野において、生体細胞、生体組織等をそのまま観察したいという要求がある。しかしながら、電子顕微鏡での観察の際に試料を真空中に曝すと、細胞等は、液体成分が揮発していくことで変質し、また測定環境の汚染につながってしまう。これを防ぐために、様々な方法が開発されている。
例えば、試料を急速凍結して薄い氷の中に閉じ込め、冷凍状態で観察する技術がある。しかしながら、冷凍状態で観察する技術は、容易に観察用の試料を作製することができず、また、試料作成用の装置が非常に特殊であり高価なものであった。
さらに、液体中に試料を保持したまま観察することで、さらに試料を直接的に観察するための技術が、特許文献1に開示されている。この技術では、観察用のセルを構成する薄膜間に試料を含む液体を配置しつつ、試料が配置される空間をセルの外部空間と遮断する。電子線は、薄膜を透過して薄膜間の試料に到達するようになっている。
特開2007−165271号公報
また、特許文献1に開示されたセルのうち、注入口から試料を含む液体を注入する方式のセルにおいては、観察孔の大きさが小さい。そのため、観察孔に観察対象となる試料が到達しているか、電子顕微鏡による測定前に確認することが困難であった。また、試料を座体に配置した後に蓋体を被せ、座体と蓋体とを接着剤で接合する方式のセルについても特許文献1に開示されている。このようなセルでは、接合に高度な技術がユーザに求められ、座体と蓋体との接合がうまくいかずに内部の液体が漏れ出したり、座体と蓋体とのギャップ制御が困難であったりする場合があった。これらの複数の問題の少なくとも1つが生じる結果、試料を収容したセルが電子顕微鏡による観察に用いることができない状態であることも多くなり、ユーザの利便性を損ねていた。
本発明の目的の一つは、走査型電子顕微鏡による観察において、試料を収容するセルの利便性を高めることにある。
本発明の一実施形態によると、第1開口部を有する第1層と、前記第1層に対向して配置される第2層と、前記第1層と前記第2層とに挟まれて配置された中間層であって、前記第1層または前記第2層に形成された少なくとも1つの開口部を介して外部空間に接続し、前記少なくとも2つの開口部の端部から所定の距離にわたって拡がり、前記第1開口部と前記第2層との間の観察空間と外部空間とを接続する流路空間を形成する中間層と、前記第1開口部の前記第2層側を開口内部から塞ぎ、少なくとも当該第1開口部の側面に支持され、電子線に対して透過性を有する第1薄膜と、を備えることを特徴とする試料収容セルを提供する。これによれば、試料を収容するセルの利便性を高めることができる。
前記少なくとも2つの開口部のいずれかは、前記第1層に配置されてもよい。これによれば、試料収容セルへの試料含有液体の注入が容易になる。
前記少なくとも2つの開口部のいずれかは、前記第2層に配置されてもよい。これによれば、試料収容セルへの試料含有液体の注入が容易になる。
前記第1層および前記第2層は、シリコンであり、前記中間層は、酸化シリコンであってもよい。これによれば、試料収容セルを容易に製造することができる。
前記第1層および前記第2層は、表面が(100)面のシリコンであり、前記第1開口部および前記第2開口部は、開口内部の側面が(111)面であってもよい。これによれば、試料収容セルを容易に製造することができる。
本発明の一実施形態によると、第1層、第2層および当該第1層と当該第2層とに挟まれた中間層を有する基板において、第1開口部および少なくとも2つの開口部に対応する領域の前記第1層をエッチングして前記中間層を露出させ、前記第1開口部に対応する領域において露出された前記中間層を第1薄膜で覆い、前記少なくとも2つの開口部を介して第1エッチング液を前記中間層に供給して当該中間層をエッチングし、前記第1開口部と前記第2層との間の観察空間、および当該観察空間と前記液体注入口とを接続する流路空間を形成することを特徴とする試料収容セルの製造方法を提供する。これによれば、試料を収容するセルの利便性を高めることができる。
本発明の一実施形態によると、第1層、第2層および当該第1層と当該第2層とに挟まれた中間層を有する基板において、第1開口部に対応する領域の前記第1層をエッチングして前記中間層を露出させ、少なくとも2つの開口部に対応する領域の前記第2層をエッチングして前記中間層を露出させ、前記第1開口部に対応する領域において露出された前記中間層を第1薄膜で覆い、前記少なくとも2つの開口部を介して第1エッチング液を前記中間層に供給して当該中間層をエッチングし、前記第1開口部と前記第2層との間の観察空間、および当該観察空間と前記液体注入口とを接続する流路空間を形成することを特徴とする試料収容セルの製造方法を提供する。これによれば、試料を収容するセルの利便性を高めることができる。
前記第2層をエッチングして、個片化される前記試料収容セルの端部に沿って、前記中間層に到達しない分離溝を形成することを更に含み、前記第1層および前記第2層をエッチングして前記中間層を露出させることは、個片化される前記試料収容セルの端部に沿って、前記中間層に到達しない分離溝を形成することを含んでもよい。これによれば、工程負荷をほとんど増加させずに、試料収容セルの個片化を容易にすることができる。
前記第1層をエッチングして前記中間層を露出させることと、前記第2層をエッチングして前記中間層を露出させることは、個片化される前記試料収容セルの端部に沿って、前記中間層に到達しない分離溝を形成することを含んでもよい。これによれば、工程負荷をほとんど増加させずに、試料収容セルの個片化を容易にすることができる。
前記第1開口部に対応する領域において露出された前記中間層を第1薄膜で覆うことは、前記第1開口部および前記液体注入口に対応する領域において露出された前記中間層を前記第1薄膜で覆い、前記液体注入口に対応する領域において前記第1薄膜をエッチングして前記中間層を露出させてもよい。これによれば、試料収容セルを容易に製造することができる。
前記第1層および前記第2層をエッチングして前記中間層を露出させることは、第2エッチング液を用いたエッチングであり、前記第1層および前記第2層は、前記第2エッチング液よりも前記1エッチング液に対して耐性を有し、前記中間層は、前記第1エッチング液よりも前記2エッチング液に対して耐性を有してもよい。これによれば、試料収容セルを容易に製造することができる。
前記第1層および前記第2層は、シリコンであり、前記中間層は、酸化シリコンであってもよい。これによれば、試料収容セルを容易に製造することができる。
本発明によると、試料を収容するセルの利便性を高めることができる。
本発明の第1実施形態における試料収容セルの外観を示す図である。 本発明の第1実施形態における試料収容セルを第1層側から見た平面図である。 本発明の第1実施形態における試料収容セルの断面構成(図1、2における断面線A−A’の断面構造)を示す模式図である。 本発明の第1実施形態における試料収容セルへ試料含有液体を注入する方法を説明する図である。 本発明の第1実施形態における試料収容セルを封止するための樹脂を形成する方法を説明する図である。 本発明の第1実施形態における試料注入装置の試料注入処理を説明する図である。 本発明の第1実施形態における試料注入装置のセル封止処理を説明する図である。 本発明の第1実施形態における試料収容セルの製造工程を説明する図である。 図8に続く試料収容セルの製造工程を説明する図である。 本発明の第1実施形態における複数の試料収容セルを分離する方法を説明する図である。 本発明の第2実施形態における試料収容セルを封止する方法を説明する図である。 本発明の第3実施形態における試料収容セルの流路空間FPの形状を説明する図である。 本発明の第4実施形態における試料収容セルの断面構成を示す模式図である。 本発明の第4実施形態における試料収容セルの製造工程を説明する図である。 図14に続く試料収容セルの製造工程を説明する図である。 本発明の第5実施形態における試料収容セルの断面構成を示す模式図である。
<第1実施形態>
以下、本発明の一実施形態に係る試料収容セルについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。なお、本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号(数字の後にA、B等を付しただけの符号)を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率(各構成間の比率、縦横高さ方向の比率等)は説明の都合上実際の比率とは異なったり、構成の一部が図面から省略されたりする場合がある。
[試料収容セルの構成]
図1は、本発明の第1実施形態における試料収容セルの外観を示す図である。試料収容セル1は、第1層10、第2層20およびこれらに挟まれた中間層30により形成されている。この例では、第1層10、第2層20および中間層30は、SOI(Silicon on Insulator)基板を構成している。第1層10はシリコン(SOI層)であり、1μm以上100μm以下(この例では5μm)の膜厚を有する。第2層20はシリコン(支持層、支持基板)であり、数百μm(この例では300μm)の膜厚を有する。中間層30は酸化シリコン(BOX層)であり、数百nm(この例では200nm)の膜厚を有するが、膜厚について特に制限は無い。中間層30を部分的に除去することで、第1層10と第2層20との間に空間(流路空間FPおよび観察空間MS)を形成する。
試料収容セル1は、電子顕微鏡の観察対象となる試料を液体に含ませた状態で、この内部空間に収容するセルである。以下、試料を含む液体を、試料含有液体と表現する場合がある。試料収容セル1の大きさは、1辺が0.5mm〜3mm程度の正方形または長方形であり、この例では一辺が概ね1.0mmである。
第2層20に比べて薄い第1層10には、開口部が形成されている。この例では、第1層10に、開口部110、120、130が配置されている。続いて、試料収容セル1の内部構造を含めた詳細な構造について、図2、図3を用いて説明する。
図2は、本発明の第1実施形態における試料収容セルを第1層側から見た平面図である。図3は、本発明の第1実施形態における試料収容セルの断面構成(図1、2における断面線A−A’の断面構造)を示す模式図である。なお、図3は、各断面線に対応する端面図を示している。以下の断面構成を示す模式図についても、それぞれ端面図として示している。
開口部110の中間層30(第2層20)側の開口は、開口内部側から第1薄膜150により塞がれている。すなわち、第1薄膜150は、開口部110の側面(内面)の少なくとも一部と接触した状態で、開口を塞いでいる。また、この例では、第1薄膜150は、第1層10の表面(外部空間1000側の面)に形成されたマスク層155上にも形成されている。マスク層155上に形成された部分の第1薄膜150と、開口部110を塞いでいる第1薄膜150とは、図3に示す例では、後述する庇部分の影響で分離されているが、接続されていてもよい。
第1薄膜150は、電子線に対して透過性を有する膜である。開口部110を塞いでいる部分の第1薄膜150と、第2層20とによって挟まれた領域を観察空間MSという。観察空間MSは、測定対象となる試料が配置され、電子線が通過する。
第1薄膜150は、例えば、窒化シリコンで形成される。第1薄膜150の膜厚は、10nm以上200nm以下、望ましくは、15nm以上50nm以下であり、この例では、20nmである。第1薄膜150は、10nmより薄くなると強度がなくなり破損するおそれがある。一方、200nmよりも厚くなると、電子線が透過しなくなる。したがって、第1薄膜150は、破損しない程度の膜の強度を得ながらも、できるだけ薄くすることが望ましい。
第1薄膜150と第2層20との距離は、中間層30の膜厚に対応する。そのため、この例では、上述した通り、200nmとなるが、特に制限は無い。この距離は、試料すなわち観察対象物(例えば細胞)の大きさに依存して設定されることが望ましく、観察対象物よりも大きくする必要がある。
開口部110の開口(中間層30側)の形状は、この例では、50μm×50μmの正方形である。なお、この開口の形状は、5μm×50μm等の長方形であってもよい。
開口部120、130の開口の形状は、開口部110と比べて大きく、この例では、中間層30側の開口の大きさは、100μm×100μmの正方形である。この開口の形状についても正方形でなく長方形であってもよい。説明に用いた各図では、構造をわかりやすくする表現するために、各構成間の比率等を調整して示している。
なお、これらの開口部110、120、130の開口の形状は、四角形以外の多角形であってもよいし、円形、楕円形等、曲線で囲まれた形状であってもよいし、直線と曲線とで囲まれた形状であってもよい。ただし、第1層10および第2層20のエッチングを結晶異方性エッチングで行う場合には、開口の形状は四角形であることが望ましい。また、開口部120の形状と開口部130の形状とが異なっていてもよい。例えば、試料含有液体が注入される側の開口部が大きくてもよい。
開口部110は、その内壁が、第1薄膜150が拡がる平面(基板表面)に対して傾き(テーパ形状)を持って形成されている。開口部120、130についても、その内壁がその基板表面に対して傾きを持って形成されている。後述するように、(100)面が表面になっている単結晶シリコンである第1層10および第2層20を用い、TMAH(Tetramethylammonium hydroxide)水溶液等のエッチング液で結晶異方性エッチングを施すようにすれば、(111)面が開口部の側面に現れるため、テーパ形状の制御が容易になる。
なお、開口部内において傾きの程度が一定でなく変化していてもよい。すなわち、開口部110、120、130は中間層30(第2層20)側の開口面積が外部空間1000側の開口面積よりも小さい。開口部110の内壁がテーパ形状であると、電子線の入射角のマージンを確保することができる。
第1層10と第2層20との間には、中間層30によって囲まれた空間が形成されている。この空間は、上記の観察空間MSおよび流路空間FPを含み、開口部120の開口端部から拡がった第1範囲、および開口部130の開口端部から拡がった第2範囲を含んでいる。それぞれの開口端部から空間端部までは、ほぼ等距離(この例では、約150μm)に拡がっている。第1範囲と第2範囲とは一部において重複している。この例では、重複した部分に観察空間MSが配置されている。
流路空間FPは、観察空間MSと外部空間1000とを接続するための空間である。この例では、流路空間FPは、少なくとも2つの開口部を介して外部空間1000と接続し、この例では開口部120、130を介して外部空間1000に接続する。一方の開口部が試料含有液体を注入するための開口であり、他方が流路空間FPの空気を外部空間1000に押し出すための排気口として機能する。
以上が、試料収容セル1の構成についての説明である。続いて、試料収容セル1に試料含有液体を配置して、電子顕微鏡にて観察できる状態にするための処理(観察セル作製処理)について説明する。
[観察セル作製処理]
図4は、本発明の第1実施形態における試料収容セルへ試料含有液体を注入する方法を説明する図である。試料含有液体700は、流路空間FPに開口部120から注入されると、流路空間FPを移動して観察空間MSに至り、さらには、開口部130まで到達する。なお、開口部120ではなく開口部130に試料含有液体700が注入されてもよいが、以下の説明では、開口部120に試料含有液体700が注入される液体注入口であるものとして説明する。この場合には、開口部130は、試料含有液体700が注入されるときに、流路空間FPの気体を排出する排出口として機能する。
図5は、本発明の第1実施形態における試料収容セルを封止するための樹脂を形成する方法を説明する図である。試料含有液体700が流路空間FPおよび観察空間MSに充填された後、開口部120、130を封止材320、330で塞ぐことで、流路空間FPおよび観察空間MSは、外部空間1000と分離される。封止材320、330は、例えば、エポキシ樹脂等の樹脂であり、UV硬化型の樹脂であってもよいし、2液混合型硬化樹脂(例えば、2液常温硬化タイプまたは1液低温硬化タイプ)であってもよい。UV硬化型の場合には、開口部120、130を塞ぐように硬化前の樹脂を形成し、UV照射によって硬化させて封止材320、330が形成される。なお、封止材320、330によって外部空間1000と分離された内部空間には気泡が含まれないようにしてもよいし、硬化前の樹脂と試料含有液体700とが混合しないように、少なくとも樹脂が硬化するまでは互いに離れた状態(試料含有液体と封止材との間に気泡が存在する状態)にしてもよい。
観察空間MSに配置された試料含有液体700は、外部空間1000と離隔されているため、電子顕微鏡による観察が行われる際に、試料収容セル1が真空環境に曝されても、試料含有液体700が揮発してしまうことを防ぎ、液体の状態を保持することができる。また、観察空間MSは、電子線に対して透過性を有する数十nm程度の第1薄膜150、および第2層20に囲まれている。
したがって、電子顕微鏡で用いられる電子線は、開口部110を通って、第1薄膜150を通過し、試料含有液体700にて反射し、さらに第1薄膜150、開口部110を通過することができる。
図4における試料注入処理、および図5におけるセル封止処理については、手動処理であっても、自動処理であってもよい。手動処理の場合には、マイクロマニピュレータに取り付けたガラスキャピラリの先端と開口部120、130との位置関係を、実体顕微鏡を用いて確認し、ガラスキャピラリに接続されたインジェクタを用いて試料含有液体700を注入したり、封止材320、330を注入したりすればよい。
また、自動処理の場合には、試料注入処理およびセル封止処理を自動的に実行して観察セルを作成する装置を用いればよい。
[観察セル作製装置]
図6は、本発明の第1実施形態における観察セル作製装置の試料注入処理を説明する図である。観察セル作製装置800は、試料注入器810、UV照射器860およびステージ888を備える。ステージ888には、チップ台825、カップ台835、845、試料台850が取り付けられている。チップ台825は、チップ820を収容する。チップ820は、試料含有液体700を吸い取るためのノズルを有するピペットチップである。カップ台835は、試料含有液体700を保持する試料カップ830を収容する。カップ台845は、封止材となる硬化前樹脂300を保持する試料カップ840を収容する。試料台850は、試料収容セル1を設置する。また、ステージ888には、チップ820を廃棄するための廃棄口870が配置されている。
試料注入器810に対して、ステージ888は水平方向(図6における左右方向、以下、X方向という)に移動可能である。また、試料注入器810は、水平方向であってステージ888の移動方向とは垂直な方向(図6における奥行き方向、以下、Y方向という)と、鉛直方向(図6における上下方向、以下、Z方向という)とに移動可能である。したがって、試料注入器810とステージ888とでX、Y、Z方向で相対的に移動可能になっている。なお、ステージ888上の試料台850については、別途Y方向にも移動可能であってもよい。
試料注入器810は、チップ取付部811、支持部813、制御部815およびチップ取り外し部817を備える。チップ取付部811は、先端にチップ820が差し込まれて取り付けられる部分である。支持部813は、装置天井に対してY方向、Z方向に移動させるように試料注入器810を支持する。制御部815は、チップ取付部811に取り付けられたチップ820に試料カップ内の液体を吸い込んで保持したり、チップ820に保持された液体を排出したりするための制御を行う。チップ取り外し部817は、下方に移動することによって、チップ820を下方に押し出してチップ取付部811から取り外す。
UV照射器860は、硬化前樹脂300を硬化させるためのUV光を照射する装置である。UV光の照射範囲は、試料台850に設置された試料収容セル1全体を含んでいてもよいし、開口部120、130に対応する部分にスポットで照射するようにしてもよい。開口部120、130に対応する部分にスポットで照射するようにすれば、試料へのUV光の影響を抑えることができる。
図6(a)は、試料収容セル1がセル保管庫等から運ばれて、観察セル作製装置800の試料台850に設置された状態を示している。続いて、ステージ888と試料注入器810とを移動させ、以下に示す順に処理を実行する。まず、チップ取付部811にチップ820を取り付ける(図6(b))。その後、試料注入器810は、試料カップ830内の試料含有液体700を吸い上げてチップ820内に保持する(図6(c))。試料含有液体700を保持するチップ820を試料収容セル1の開口部120上に移動させて、チップ820内の試料含有液体700を排出して開口部120から試料収容セル1内部に注入する(図6(d))。
なお、チップ820を試料収容セル1の開口部120上に移動させる際には、例えば、試料注入器810は、カメラ等の撮像部を用いて試料収容セル1の形状を画像認識し、さらには開口部120の位置を認識し、開口部120の位置にチップ820を移動させる。続いて、観察セル作製装置800の封止処理について説明する。
図7は、本発明の第1実施形態における観察セル作製装置のセル封止処理を説明する図である。試料注入器810は、試料カップ840内の硬化前樹脂300を吸い上げてチップ820内に保持する(図7(a))。硬化前樹脂300を保持するチップ820を試料収容セル1の開口部120上に移動させて、チップ820内の硬化前樹脂300を排出して開口部120に滴下し(図7(d))、続いて、開口部130に滴下する(図7(e))。なお、開口部130への滴下前に、再度チップ820内に硬化前樹脂300を吸い上げておいてもよい。硬化前樹脂300が、UV硬化型ではなく、上述した2液常温硬化タイプまたは1液低温硬化タイプであっても同様であり、この場合には、後述するUV光の照射は不要である。
続いて、試料台850をUV照射器860の下方に移動させ、試料収容セル1にUV照射器860からのUV光を照射する。この照射によって、試料収容セル1の開口部120、130に滴下された硬化前樹脂300を硬化させる。これによって、試料収容セル1の内部空間に試料含有液体700が外部空間1000と離隔された状態で収容される。また、試料注入器810は、チップ取り外し部817によって、チップ820をチップ取付部811から取り外して廃棄口870に廃棄する。UV光の照射中にチップ820の廃棄が実施されてもよい。
その後、試料含有液体700を収容した試料収容セル1が回収され、新たな試料収容セル1が試料台850に設置される(図6(a))。なお、チップ820は、試料収容セル1毎に交換するプロセスを説明したが、開口部120に滴下する硬化前樹脂300を吸い上げる前にチップ820を交換してもよい。
以上が、観察セル作製装置800による試料注入処理およびセル封止処理についての説明である。続いて、試料収容セル1の製造方法について図8〜図10を用いて説明する。
[試料収容セルの製造方法]
試料収容セル1は、上述したように、SOI基板を用いて製造される。そして、酸化シリコンで形成された中間層30の一部をエッチングすることによって、シリコンで形成された第1層10および第2層20の間に、流路空間FPおよび観察空間MSを形成する。以下、具体的に、試料収容セル1の製造方法を説明する。
図8は、本発明の第1実施形態における試料収容セルの製造工程を説明する図である。図9は、図8に続く試料収容セルの製造工程を説明する図である。いずれの図も、図3に対応する断面構造を示している。まず、図8(a)に示すように、SOI基板(第1層10、第2層20および中間層30)の両面に、マスク層155、255を形成する。マスク層155、255は、後述するシリコンに対するエッチング液(この例ではTMAH水溶液)に対して耐性(エッチングレートが低い)を有する膜が望ましく、例えば、窒化シリコン膜である。マスク層155、255の膜厚は、例えば、50nm以上2μm以下である。
これらの膜は、CVD(Chemical Vapor Deposition)、PVD(Physical Vapor Deposition)などの蒸着処理等によって形成されればよい。また、マスク層155、255が窒化シリコン膜でなく酸化シリコン膜であれば、SOI基板の表面を熱酸化することで第1層10側の表面に形成された熱酸化膜を用いてもよい。以下に形成される様々な膜についても、同様である。
フォトリソグラフィ技術を用いて、マスク層155の一部をエッチングする(図8(b))。エッチングされる領域は、開口部110、120、130に対応する領域である。マスク層155のエッチングには、RIE(Reactive Ion Etching)が用いられる。このとき、第1層10についても一部エッチング(オーバーエッチング)してもよい。なお、膜のエッチングのためには、ドライエッチングおよびウエットエッチングのいずれも適用可能であり、特に明示しない限り以下の説明においても同様である。
次に、マスク層155をエッチングマスクとして、第1層10をエッチングして中間層30を露出させる(図8(c))。このエッチングは、結晶異方性エッチングであり、エッチング液としてTMAH水溶液が用いられる。この例では、第1層10(シリコン)の表面が(100)面であり、開口部110、120、130の側面が、エッチングレートの遅い(111)面に沿って形成される。また、中間層30がエッチングストッパとなる。
次に、開口部110、120、130を覆うように第1薄膜150を形成する(図9(a))。第1薄膜150は、窒化シリコンであり、20nmの膜厚を有する。このとき、第1薄膜150は、引っ張り応力になるように形成されることが望ましい。なお、第1薄膜150は、TMAH水溶液およびBHF(バッファードフッ酸:フッ酸とフッ化アンモニウムの混合水溶液)に対して耐性を有することが望ましい。しかし、完全な耐性を有することは困難であるため、後述するTMAH水溶液またはBHFを用いたエッチングにおいて減少する膜厚分を考慮して、予め厚膜化しておいてもよい。
第1薄膜150において、開口部110、120、130の内部に形成された部分と、マスク層155上に形成された部分とは分離されているのは、開口部の端部においてマスク層155が庇のように突出しているためである。この庇は、第1層10の深さ方向のエッチング量に対して5%程度の長さになる場合が多い。そのため、庇が小さければ、製造条件によっては、開口部110、120、130の内部に形成された部分と、マスク層155上に形成された部分とが接続される場合もある。
次に、フォトリソグラフィ技術を用いて、第1薄膜150の一部をエッチングする(図9(b))。第1薄膜150は、少なくとも、開口部110に形成された部分を残し、かつ、開口部120、130から中間層30の少なくとも一部が露出するようにエッチングされる。図9(b)に示す例では、第1薄膜150がエッチングされた部分と積層された部分のマスク層155についても、併せてエッチングされている。これによって、開口部120、130の端部において形成された庇をエッチングしてもよい。この工程により、第1層10側のパターンの形成が終了する。なお、第1薄膜150を形成(成膜)する工程(図9(a))において、マスク等を用いて開口部120、130には第1薄膜150が形成されないようにしてもよい。すなわち、第1薄膜150が、開口部110の内部において、露出した中間層30を覆うように形成されていればよい。
なお、上述の試料収容セル1は、各図において1つのセルとして説明したが、実際の製造工程においては、一基板上に複数の試料収容セル1が同時に形成されている。そのため、それぞれの試料収容セル1を個片化するための処理が行われる。後に図10を用いて説明するが、各試料収容セル1の間には、第1層10側に分断溝SL1が形成され、第2層20側に分断溝SL2が形成されている。分断溝SL1、SL2はいずれも、中間層30には到達していない。
図示はしないが、分断溝SL1は図8(c)に示す開口部110、120、130を形成する際に、一緒に形成される。このエッチングは、結晶異方性エッチングであり、マスク層155が狭い幅のスリット状に形成されることで、分断溝SL1が中間層30に到達しないようにすることができる。例えば、分断溝SL1の深さを3μm程度とする場合には、マスク層155のスリットを4μm程度の幅にしておけばよい。
図示はしないが、分断溝SL2も同様にして形成される。このエッチングは、結晶異方性エッチングであり、マスク層255が狭い幅のスリット状に形成されることで、分断溝SL2が中間層30に到達しないようにすることができる。例えば、分断溝SL2の深さを200μm程度とする場合には、マスク層255のスリットを300μm程度の幅にしておけばよい。
次に、開口部120、130を介して中間層30にエッチング液を供給することによって、中間層30をエッチングする(図9(c))。エッチング液は、この例では、BHFである。このエッチングは、等方性エッチングであるため、エッチング時間の経過とともに、開口部120、130の開口端部から拡がるように中間層30がエッチングされていく。一方、第1層10と第2層20とは、BHFに対して耐性を有しているため、ほとんどエッチングされない。そのため、第1層10と第2層20との間に空間が形成されていく。
そして、開口部120、130の双方から拡がった空間が接続され、かつ、第1薄膜150と第2層20とが対向する領域(観察空間MS)が形成された後に、エッチングを終了する。これによって、第1層10と第2層20との間に流路空間FPおよび観察空間MSが形成される。なお、中間層30のエッチングの際には、エッチング液中に気泡が発生する場合がある。このような場合には、脱気処理をしつつ、エッチング処理を実行すればよい。
上述した試料収容セル1は、各図において1つのセルとして説明したが、実際の製造工程においては、一基板上に複数の試料収容セル1が同時に形成されている。そのため、それぞれの試料収容セル1を個片化するための処理が行われる。この処理は、ダイシング等により切断するものであってもよいが、この例では、別の方法により個片化を実現する。
図10は、本発明の第1実施形態における複数の試料収容セルを分離する方法を説明する図である。図10(a)は、試料収容セル1が個片化される前の基板の一部を第1層10側から見た平面図である。図10(b)は、分断溝部分の断面構成(図10における断面線B−B’の断面構造)を示す模式図である。なお、図10においては、試料収容セル1が3×3で配置された例を示しているが、これは基板全体の一部を抽出して例示したものである。
各試料収容セル1の間には、分断溝SL1及び分断溝SL2が形成されている。この例では、分断溝SL1は、第1層10側に設けられている。第2層20側にも分断溝SL2が分断溝SL1に対向した位置に設けられている。分断溝SL1、SL2はいずれも、中間層30には到達していない。
この分断溝SL1は、図8(c)に示す開口部110、120、130を形成する際に、一緒に形成される。このエッチングは、結晶異方性エッチングであり、マスク層155が狭い幅のスリット状に形成されることで、分断溝SL1が中間層30に到達しないようにすることができる。例えば、分断溝SL1の深さを3μm程度とする場合には、マスク層155のスリットを4μm程度の幅にしておけばよい。
同様にして、分断溝SL2も形成される。このエッチングは、結晶異方性エッチングであり、マスク層255が狭い幅のスリット状に形成されることで、分断溝SL2が中間層30に到達しないようにすることができる。例えば、分断溝SL2の深さを200μm程度とする場合には、マスク層255のスリットを300μm程度の幅にしておけばよい。
分断溝SL1、SL2が中間層30に到達していないため、図9(c)に示す中間層30のエッチングの際に、分断溝SL1、SL2から中間層30がエッチングされないようにすることができる。そして、試料収容セル1に軽い衝撃を与えることにより、分断溝SL1、SL2において容易に、隣接する試料収容セル1と分離することができる。
なお、上述した製造方法における各構成の材料、エッチング方法等の各種条件については一例であって、様々な条件に設定可能である。以上が試料収容セル1の製造方法についての説明である。
上述した一実施形態に係る試料収容セル1は、SOI基板を用いて形成されているため、第1層10と第2層20とは予め中間層30によって接合されている。したがって、2つの基板を接合する必要がなく、内部に形成された空間に注入された試料含有液体700が漏れることはほとんどない。また、第1層10と第2層20との距離は中間層30の厚さによって決まるため、精度のよいギャップ制御が可能である。また、このように、試料収容セル1によれば、利便性を高めることができる。
<第2実施形態>
第1実施形態においては、流路空間FPおよび観察空間MSを外部空間1000と分離するために、開口部120、130を封止材320、330によって塞いでいた。第2実施形態では、これを蓋板で塞ぐ例を説明する。
図11は、本発明の第2実施形態における試料収容セルを封止する方法を説明する図である。この例では、蓋板370によって開口部120、130を塞ぐようになっている。蓋板370は、例えば、ガラスである。蓋板370と第1層10との間には、図11に示すように接着剤360が形成されていてもよい。蓋板370は、開口部120、130を塞ぐ程度の大きさ(例えば、開口部より200μm程度大きい正方形)であればよいが、封止する工程の容易性を考慮して、より大きくした形状であってもよいし、正方形以外の形状であってもよい。
<第3実施形態>
第3実施形態では、外部空間1000と流路空間FPとを接続する開口部が3つ以上である場合について説明する。
図12は、本発明の第3実施形態における試料収容セルの流路空間FPの形状を説明する図である。この例では、第1実施形態で説明した開口部120、130の他に、これらと同様な形状の開口部121が形成されている。このように、外部空間1000と流路空間FPとを接続する開口部の数は2つに限らず、さらに多くてもよい。このようにすると、例えば、開口部121と開口部110とを離すことができ、試料含有液体700の注入が容易になる。ただし、この場合には、電子顕微鏡による観察前に、開口部110以外の開口部を封止しておく必要がある。
この場合、開口部120、130は、開口部121よりも開口部が小さくてもよい。すなわち、試料含有液体700を注入するための開口部を大きくしておき、流路空間FPを形成する際のエッチング液導入のための開口部は小さくしてもよい。
<第4実施形態>
図13は、本発明の第4実施形態における試料収容セルの断面構成を示す模式図である。第1層10は、第1実施形態の第1層10において開口部120、130を形成していない構成である。したがって、第1基板10側の製造工程は、第1実施形態とほぼ同様であり、開口部110が形成される工程において開口部120、130が形成されないようになっている。
第2層20は、開口部120、130に対応する構成として開口部220、230が形成されている。したがって、第層20側の製造工程は、分断溝SL2を形成する工程において開口部220、230が形成される。
このように、支持層としての機能を有する第2層20側に、試料含有液体700を注入するための開口部が形成されるようになっていてもよい。
第1実施形態における試料収容セルでは、第1層10に設けられた開口部120、130を封止材や蓋板等で塞ぐ際に、それらが開口部110を覆うことによって観察の妨げとならないように、開口部110、120、130の間には一定の間隔を確保する必要がある。
本実施形態における試料収容セルは、そのような制限がなく、開口部220、230の間隔を第1実施形態における試料収容セルに比べて狭くすることができ、開口部220、230を接続するために確保すべき流路空間FPの平面視における面積が狭くなる。これによれば、試料収容セルの小型化に繋がる。さらに、流路空間FPを形成するために必要なエッチング量が減少し、エッチング工程が短縮される。
[試料収容セルの製造方法]
以下、具体的に、本実施形態における試料収容セル1の製造方法を説明するが、第1実施形態における試料収容セルの製造方法に共通する工程の説明は省略する。
図14は、本発明の第1実施形態における試料収容セルの製造工程を説明する図である。図15は、図14に続く試料収容セルの製造工程を説明する図である。いずれの図も、図13に対応する断面構造を示している。まず、図14(a)に示すように、SOI基板(第1層10、第2層20および中間層30)の両面に、マスク層155、255を形成する。この工程は、図8(a)に示した第1実施形態における試料収容セルの製造工程と同様である。
続いて、14(b)に示すように、フォトリソグラフィ技術を用いて、マスク層155の一部をエッチングするが、図8(b)に示す第1実施形態と比較すると、本実施形態においては第1層10に試料注入口となる開口部は設けないため、エッチングされる領域は、開口部110に対応する領域のみとなる点で異なる。
次に、マスク層155をエッチングマスクとして、第1層10をエッチングして中間層30を露出させる(図14(c))。
次に、開口部110を覆うように第1薄膜150を形成する(図15(a))。
次に、フォトリソグラフィ技術を用いて、第1薄膜150の一部をエッチングする(図15(b))。第1薄膜150は、開口部110に形成された部分を残してエッチングされる。この工程により、第1層10側のパターンの形成が終了する。
続いて、第2層20側の開口部220、230を形成する。図15(b)に示すように、フォトリソグラフィ技術を用いて、マスク層255の一部をエッチングする。エッチングされる領域は、開口部220、230に対応する領域である。
次に、マスク層255をエッチングマスクとして、第2層20をエッチングして中間層30を露出させる(図15(c))。
この工程により、第2層20側の開口部220、230の形成が終了する。なお、この開口部220、230を形成する工程と同時に、図10に示す個片化のための分離溝SL2を形成してもよい。
次に、開口部220、230を介して中間層30にエッチング液を供給することによって、中間層30をエッチングする。
そして、開口部220、230の双方から拡がった空間が接続され、かつ、第1薄膜150と第2層20とが対向する領域(観察空間MS)が形成された後に、エッチングを終了する。これによって、第1層10と第2層20との間に流路空間FPおよび観察空間MSが形成され、図13に示した試料収容セルが得られる。
<第5実施形態>
図16は、本発明の第5実施形態における試料収容セルの断面構成を示す模式図である。第1薄膜150は、単層に限らず、2層以上の膜を含んでいてもよい。この例では、第1薄膜150の第1層150aはアモルファスシリコン膜であり、第1薄膜150の第2層150bは窒化シリコン膜である。
第1薄膜150の第1層150aは、SOI基板の第1層10と接触する。第1薄膜150の第1層150aは、SOI基板の第1層10と第1薄膜150の第2層150bとが接触する場合よりも、SOI基板の第1層10に対する密着性が高くなるため、SOI基板の第1層10と第1薄膜150(第1層150a)との接合強度を高めることもできる。
このように、第1薄膜150を窒化シリコン膜の単層で形成するよりも、膜厚を変化させずにその一部をアモルファスシリコン膜とした積層構造にすることで、膜の強度を向上させたり、各層の応力を調整することで薄膜に張りを与えたりすることもできる。また、積層構造にしたことにより、各層は薄膜化されてピンホール等が発生したとしても、積層構造にすることでピンホールが塞がれて、第1薄膜150の膜の信頼性も向上する。
第1薄膜150の膜厚は、積層膜の合計で10nm以上200nm以下、望ましくは、15nm以上50nm以下であり、この例では、20nmである。第1薄膜150は、10nmより薄くなると強度がなくなり破損するおそれがある。一方、200nmよりも厚くなると、電子線が透過しなくなる。したがって、第1薄膜150は、破損しない程度の膜の強度を得ながらも、できるだけ薄くすることが望ましい。
第1薄膜150の膜厚が20nmである場合、例えば、第1薄膜150の第1層150a(アモルファスシリコン膜)の膜厚は7nmであり、第1薄膜150の第2層150b(窒化シリコン膜)の膜厚は13nmである。第1薄膜150の第1層150aの膜厚は、第1薄膜150全体の膜厚の20%以上50%未満であることが望ましく、30%以上45%未満であることがさらに望ましい。このようにすると、薄膜の強度を確保しつつ、薄膜の可視光線に対する透過率の低下を抑えることもできる。
<その他の実施形態>
[表面処理]
試料収容セル1の外面(特に、第1層10の外面)については、親油(疎水)処理を施してもよい。このようにすると、試料含有液体700が水分系のものであれば、注入の際に外側にこぼれた試料含有液体700をセル表面から取り除くことが容易になる。また、封止材がアルコール系(油系)であれば、開口部内に浸入しにくくなり、試料含有液体との接触を避けて混合しないようにすることもできる。試料含有液体700がアルコール系(油系)であれば、試料収容セル1の外面に、逆の処理、すなわち親水処理を施してもよい。
例えば、親水処理であれば、酸化膜で覆う処理であればよく、フッ素および酸素によるプラズマ処理で形成してもよいし、酸素含有雰囲気下での熱処理で形成してもよい。また、シリコン基板表面に形成された自然酸化膜を親水表面としてもよい。一方、親油(疎水)処理であれば、フッ素および窒素によるプラズマ処理によりシリコン基板表面にフッ化物を形成してもよいし、HMDS(ヘキサメチルジシロキサン)処理によってシリコン基板表面にメチル基を形成してもよい。
[第1薄膜の種類]
第1薄膜150は、窒化シリコン膜に限らず、窒化酸化シリコン、酸化シリコン膜またはアモルファスシリコン膜であってもよく、さらには、金属膜、金属窒化膜、金属酸化膜、金属窒化酸化膜であってもよい。第1薄膜150としては、上述したように、電子線に対して透過性を有する必要がある。そして、電子顕微鏡による観察時に真空中に曝されるため、第1薄膜150は、大気や水分に対してバリア性を有することが望ましい。そして、中間層30のエッチングの際に一緒にエッチングされないように、BHFに対して耐性を有することが望ましい。また、第1薄膜150は、単層に限らず、複数種類の膜を積層した膜であってもよい。
また、製造工程において、複数種類の膜を積層する一方、最終的には単層になるようにしてもよい。例えば、第1薄膜150は、BHFよりもTMAH水溶液に耐性を有する窒化シリコン膜(TMAH耐性膜)と、その膜よりも中間層30側に配置され、TMAH水溶液よりもBHFに耐性を有する窒化シリコン膜(BHF耐性膜)とが積層された膜であってもよい。TMAH耐性膜は、BHF耐性膜よりも相対的にシリコンの含有量が低い。例えば、SixNyで表した場合、TMAH耐性膜はx=3、y=4であり、BHF耐性膜はx=5、y=4である。なお、TMAH耐性膜は酸化シリコン膜であってもよい。また、BHF耐性膜はアモルファスシリコン膜、多結晶シリコン膜または単結晶シリコン膜であってもよい。
このようにすると、図9(a)に示す工程においては、TMAH耐性膜の存在により第1薄膜150のエッチングがされにくい。製造工程が進み、図9(c)に示す工程では、TMAH耐性膜がエッチングされる一方、BHF耐性膜の存在により第1薄膜150が残る。このようにすると、予め第1薄膜を厚膜にして形成しておき、最終的に所望の厚さまで薄膜化することができるため、安定した膜の形成が可能となる。また、応力バランスの調整も容易になる。
[チャージアップ防止]
電子顕微鏡による観察時において、試料収容セルのチャージアップを防止するために、第1層10のシリコンは低抵抗であるほど好ましく、0.001〜10Ωcm程度であれば効果的にチャージアップを防止することができる。
また、数nmのカーボン等の導電膜をセル外面(第1層10、第2層20および第1薄膜150の表面の少なくとも一部)に配置しておいてもよい。
[SOI基板以外を用いた試料収容セルの製造]
上述した実施形態では、試料収容セル1は、第1層10、第2層20および中間層30によって形成されるSOI基板を用いて製造されていたが、SOI基板以外でもよい。すなわち、中間層30をエッチングする際のエッチング液に対して、第1層10および第2層20が耐性を有していればよい。一方、中間層30は、第1層10および第2層20に開口部を形成する際のエッチングに用いるエッチング液に対して、耐性を有していることが望ましい。このような第1層10、第2層20および中間層30の材料の組み合わせで実現される基板であれば、SOI基板でなくてもよい。
1…試料収容セル、10…第1層、20…第2層、30…中間層、110,120,130…開口部、150…第1薄膜、150a…第1層、150b…第2層、155,255…マスク層、300…硬化前樹脂、320,330…封止材、360…接着剤、370…蓋板、700…試料含有液体、800…観察セル作製装置、810…試料注入器、811…チップ取付部、813…支持部、815…制御部、817…チップ取り外し部、820…チップ、825…チップ台、830,840…試料カップ、835,845…カップ台、850…試料台、860…UV照射器、870…廃棄口、888…ステージ、1000…外部空間

Claims (12)

  1. 第1開口部を有する第1層と、
    前記第1層に対向して配置される第2層と、
    前記第1層と前記第2層とに挟まれて配置された中間層であって、前記第1層または前記第2層に形成された少なくとも1つの開口部を介して外部空間に接続し、前記少なくとも2つの開口部の端部から所定の距離にわたって拡がり、前記第1開口部と前記第2層との間の観察空間と外部空間とを接続する流路空間を形成する中間層と、
    前記第1開口部の前記第2層側を開口内部から塞ぎ、少なくとも当該第1開口部の側面に支持され、電子線に対して透過性を有する第1薄膜と、
    を備えることを特徴とする試料収容セル。
  2. 前記少なくとも1つの開口部のいずれかは、前記第1層に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の試料収容セル。
  3. 前記少なくとも1つの開口部のいずれかは、前記第2層に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の試料収容セル。
  4. 前記第1層および前記第2層は、シリコンであり、
    前記中間層は、酸化シリコンであることを特徴とする請求項1に記載の試料収容セル。
  5. 前記第1層および前記第2層は、表面が(100)面のシリコンであり、
    前記第1開口部は、開口内部の側面が(111)面であることを特徴とする請求項4に記載の試料収容セル。
  6. 第1層、第2層および当該第1層と当該第2層とに挟まれた中間層を有する基板において、第1開口部および少なくとも2つの開口部に対応する領域の前記第1層をエッチングして前記中間層を露出させ、
    前記第1開口部に対応する領域において露出された前記中間層を第1薄膜で覆い、
    前記少なくとも2つの開口部を介して第1エッチング液を前記中間層に供給して当該中間層をエッチングし、前記第1開口部と前記第2層との間の観察空間、および当該観察空間と前記液体注入口とを接続する流路空間を形成する
    ことを特徴とする試料収容セルの製造方法。
  7. 第1層、第2層および当該第1層と当該第2層とに挟まれた中間層を有する基板において、第1開口部に対応する領域の前記第1層をエッチングして前記中間層を露出させ、
    少なくとも2つの開口部に対応する領域の前記第2層をエッチングして前記中間層を露出させ、
    前記第1開口部に対応する領域において露出された前記中間層を第1薄膜で覆い、
    前記少なくとも2つの開口部を介して第1エッチング液を前記中間層に供給して当該中間層をエッチングし、前記第1開口部と前記第2層との間の観察空間、および当該観察空間と前記液体注入口とを接続する流路空間を形成する
    ことを特徴とする試料収容セルの製造方法。
  8. 前記第2層をエッチングして、個片化される前記試料収容セルの端部に沿って、前記中間層に到達しない分離溝を形成することを更に含み、
    前記第1層をエッチングして前記中間層を露出させることは、個片化される前記試料収容セルの端部に沿って、前記中間層に到達しない分離溝を形成することを含むことを特徴とする請求項6に記載の試料収容セルの製造方法。
  9. 前記第1層をエッチングして前記中間層を露出させることと、前記第2層をエッチングして前記中間層を露出させることは、個片化される前記試料収容セルの端部に沿って、前記中間層に到達しない分離溝を形成することを含むことを特徴とする請求項7に記載の試料収容セルの製造方法。
  10. 前記第1開口部に対応する領域において露出された前記中間層を第1薄膜で覆うことは、
    前記第1開口部および前記液体注入口に対応する領域において露出された前記中間層を前記第1薄膜で覆い、
    前記液体注入口に対応する領域において前記第1薄膜をエッチングして前記中間層を露出させることを含むことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の試料収容セルの製造方法。
  11. 前記第1層および前記第2層をエッチングして前記中間層を露出させることは、第2エッチング液を用いたエッチングであり、
    前記第1層および前記第2層は、前記第2エッチング液よりも前記1エッチング液に対して耐性を有し、
    前記中間層は、前記第1エッチング液よりも前記2エッチング液に対して耐性を有することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の試料収容セルの製造方法。
  12. 前記第1層および前記第2層は、シリコンであり、
    前記中間層は、酸化シリコンであることを特徴とする請求項11に記載の試料収容セルの製造方法。
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