JP2016207465A - 非水電解質二次電池用炭素質材料及びその製造方法、非水電解質二次電池用負極ならびに非水電解質二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い電池容量を有し、電池の破損等が抑制されたリチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池の負極に好適に用いられる低吸湿性の非水電解質二次電池用炭素質材料、その製造方法、該非水電解質二次電池用炭素質材料を含む非水電解質二次電池用負極ならびに非水電解質二次電池を提供する。
【解決手段】植物原料由来の炭素前駆体を焼成することによって得られる炭素質材料であって、満充電状態となるまでリチウムイオンがドープされた状態で測定した7Li−固体NMRスペクトルにおいて、塩化リチウムを基準として40〜60ppmのケミカルシフトのピークを有する、非水電解質二次電池用炭素質材料。
【選択図】なし
【解決手段】植物原料由来の炭素前駆体を焼成することによって得られる炭素質材料であって、満充電状態となるまでリチウムイオンがドープされた状態で測定した7Li−固体NMRスペクトルにおいて、塩化リチウムを基準として40〜60ppmのケミカルシフトのピークを有する、非水電解質二次電池用炭素質材料。
【選択図】なし
Description
本発明は、リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池の負極に適する、低吸湿性の非水電解質二次電池用炭素質材料、その製造方法、該製造方法により得られる非水電解質二次電池用炭素質材料、該非水電解質二次電池用炭素質材料を含む非水電解質二次電池用負極ならびに非水電解質二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池は携帯電話やノートパソコンといった小型携帯機器用途で広く利用されている。リチウムイオン二次電池の負極材として、例えば特許文献1には、黒鉛の理論容量372mAh/gを超える、リチウムの高いドープ容量及び脱ドープ容量を有し、非脱ドープ容量が低い難黒鉛化性炭素が記載されている(特許文献1)。
近年、環境問題への関心が高まるにつれて、リチウムイオン二次電池の車載用途における開発が進められ、実用化されつつある。車載用途において使用されるリチウムイオン二次電池は、リチウムイオンの高いドープ容量(以下において「充電容量」とも称する)及び脱ドープ容量(以下において「放電容量」とも称する)に加えて、低い非脱ドープ容量(以下において「不可逆容量」とも称する)を有すること、低温条件下でも高い充電容量及び放電容量を有すること等が要求される。難黒鉛化性炭素はこれらに優れる点で当該用途に好適である。
難黒鉛化性炭素は、例えば石油ピッチ、石炭ピッチ、フェノール樹脂、植物を炭素源として得ることができる。これらの炭素源の中でも、植物は栽培することによって持続して安定的に供給可能であり、安価に入手できる原料であるため注目されている。(特許文献1、特許文献2)。
一方、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池においては、電池内部に水分が存在すると、電解液の加水分解に伴う酸の発生や、水の電気分解によるガスの発生により、電池内での短絡や電池の膨張が引き起こされ、電池が破損する場合がある。このため、非水電解質二次電池の負極として用いられる炭素質材料は、可能な限り水分を排除した状態で電池に組み込むことが望ましい。したがって、非水電解質二次電池の負極材料として用いる炭素質材料の製造においては、炭素質材料の吸湿性を低下させることが極めて重要である。
ここで、非水電解質二次電池の負極として用いられる炭素質材料は、低い吸湿性を有するだけでなく、非水電解質二次電池の電池特性の向上に適していることも求められる。
したがって、電池特性の低下をもたらさないような方法で、炭素質材料の吸湿性を低下させることが求められる。
したがって、電池特性の低下をもたらさないような方法で、炭素質材料の吸湿性を低下させることが求められる。
本発明は、高い電池容量を有し、電池の破損等が抑制された非水電解質二次電池の負極に好適に用いられる低吸湿性の非水電解質二次電池用炭素質材料、その製造方法、該非水電解質二次電池用炭素質材料を含む非水電解質二次電池用負極ならびに非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決するために炭素質材料について詳細に検討を重ね、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の好適な態様を包含する。
〔1〕植物原料由来の炭素前駆体を焼成することによって得られる炭素質材料であって、満充電状態となるまでリチウムイオンがドープされた状態で測定した7Li−固体NMRスペクトルにおいて、塩化リチウムを基準として40〜60ppmのケミカルシフトのピークを有する、非水電解質二次電池用炭素質材料。
〔2〕前記炭素質材料のJIS R 7222により測定した真比重は1.5〜1.8g/mLである、前記〔1〕に記載の炭素質材料。
〔3〕窒素吸着BET3点法により算出される前記炭素質材料の比表面積は1〜20m2/gである、前記〔1〕又は〔2〕に記載の炭素質材料。
〔4〕前記炭素質材料の平均粒子径は1〜20μmである、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の炭素質材料。
〔5〕広角X線回折法においてBragg式を用いて算出される前記炭素質材料の(002)面の平均面間隔d002は0.37〜0.385nmである、前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の炭素質材料。
〔6〕前記炭素前駆体は椰子殻由来である、前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の炭素質材料。
〔7〕植物原料由来の炭素前駆体を大気圧を超える圧力下で焼成することによって得られる、前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の炭素質材料。
〔8〕植物原料由来の炭素前駆体を、1000〜1400℃で焼成することにより炭素質材料を得る、前記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の炭素質材料の製造方法。
〔9〕前記焼成を、不活性ガスの存在下及び大気圧を超える圧力下で行う、前記〔8〕に記載の炭素質材料の製造方法。
〔10〕前記焼成を0.11MPa以上の圧力下で行う、前記〔9〕に記載の炭素質材料の製造方法。
〔11〕前記焼成を前記不活性ガスの非流通下で行う、前記〔8〕〜〔10〕のいずれかに記載の炭素質材料の製造方法。
〔12〕前記焼成を、前記炭素前駆体をハロゲン化合物を含有する気相中に暴露することにより炭素前駆体に含まれる金属元素及び/又は非金属元素の含有量を低下させた後に行う、前記〔8〕〜〔11〕のいずれかに記載の炭素質材料の製造方法。
〔13〕前記焼成を、前記植物原料を酸性溶液に浸漬することにより植物原料に含まれる金属元素及び/又は非金属元素の含有量を低下させた後に行う、前記〔8〕〜〔11〕のいずれかに記載の炭素質材料の製造方法。
〔14〕前記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の炭素質材料を含む非水電解質二次電池用負極。
〔15〕前記〔14〕に記載の非水電解質二次電池用負極を含む非水電解質二次電池。
〔1〕植物原料由来の炭素前駆体を焼成することによって得られる炭素質材料であって、満充電状態となるまでリチウムイオンがドープされた状態で測定した7Li−固体NMRスペクトルにおいて、塩化リチウムを基準として40〜60ppmのケミカルシフトのピークを有する、非水電解質二次電池用炭素質材料。
〔2〕前記炭素質材料のJIS R 7222により測定した真比重は1.5〜1.8g/mLである、前記〔1〕に記載の炭素質材料。
〔3〕窒素吸着BET3点法により算出される前記炭素質材料の比表面積は1〜20m2/gである、前記〔1〕又は〔2〕に記載の炭素質材料。
〔4〕前記炭素質材料の平均粒子径は1〜20μmである、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の炭素質材料。
〔5〕広角X線回折法においてBragg式を用いて算出される前記炭素質材料の(002)面の平均面間隔d002は0.37〜0.385nmである、前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の炭素質材料。
〔6〕前記炭素前駆体は椰子殻由来である、前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の炭素質材料。
〔7〕植物原料由来の炭素前駆体を大気圧を超える圧力下で焼成することによって得られる、前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の炭素質材料。
〔8〕植物原料由来の炭素前駆体を、1000〜1400℃で焼成することにより炭素質材料を得る、前記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の炭素質材料の製造方法。
〔9〕前記焼成を、不活性ガスの存在下及び大気圧を超える圧力下で行う、前記〔8〕に記載の炭素質材料の製造方法。
〔10〕前記焼成を0.11MPa以上の圧力下で行う、前記〔9〕に記載の炭素質材料の製造方法。
〔11〕前記焼成を前記不活性ガスの非流通下で行う、前記〔8〕〜〔10〕のいずれかに記載の炭素質材料の製造方法。
〔12〕前記焼成を、前記炭素前駆体をハロゲン化合物を含有する気相中に暴露することにより炭素前駆体に含まれる金属元素及び/又は非金属元素の含有量を低下させた後に行う、前記〔8〕〜〔11〕のいずれかに記載の炭素質材料の製造方法。
〔13〕前記焼成を、前記植物原料を酸性溶液に浸漬することにより植物原料に含まれる金属元素及び/又は非金属元素の含有量を低下させた後に行う、前記〔8〕〜〔11〕のいずれかに記載の炭素質材料の製造方法。
〔14〕前記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の炭素質材料を含む非水電解質二次電池用負極。
〔15〕前記〔14〕に記載の非水電解質二次電池用負極を含む非水電解質二次電池。
本発明の炭素質材料は高い電池容量を有する非水電解質二次電池用炭素質材料として好適な、低吸湿性の炭素質材料である。
本発明の製造方法は、炭素前駆体の焼成時において、炭素前駆体以外の材料の添加を必ずしも必要としないため、原料供給性及び経済性の観点から優れている。
本発明の炭素質材料及び本発明の製造方法により製造した炭素質材料は、特に、体積あたりの高い高電位(>0.1V vs Li/Li+)充放電容量が求められる電気自動車用電池等の非水電解質二次電池の電子部品用の材料として好適である。
本発明の製造方法は、炭素前駆体の焼成時において、炭素前駆体以外の材料の添加を必ずしも必要としないため、原料供給性及び経済性の観点から優れている。
本発明の炭素質材料及び本発明の製造方法により製造した炭素質材料は、特に、体積あたりの高い高電位(>0.1V vs Li/Li+)充放電容量が求められる電気自動車用電池等の非水電解質二次電池の電子部品用の材料として好適である。
また、本発明の一態様において、本発明の製造方法を、炭素前駆体と炭素前駆体以外の材料とを混合して焼成を行うことによる吸湿性抑制方法と併用することができる。この態様によれば、吸湿性が一層抑制された炭素質材料が得られる。
本発明の炭素質材料は、植物原料由来の炭素前駆体を焼成することによって得られる炭素質材料であって、満充電状態となるまでリチウムイオンがドープされた状態で測定した7Li−固体NMRスペクトルにおいて、塩化リチウムを基準として40〜60ppmのケミカルシフトのピークを有する、非水電解質二次電池用炭素質材料である。
本発明の炭素質材料における前記7Li−固体NMR測定スペクトルにおいて観察されるピークのケミカルシフトは40〜60ppmであり、好ましくは42〜58ppmであり、より好ましくは45〜58ppmである。ケミカルシフトが上記の下限以上であることは、Liイオンを吸蔵するのに適切な微小細孔が存在していることを意味し、このような微小細孔が存在するとLiイオンが吸蔵されやすく、電池容量を高めることができるため好ましい。ケミカルシフトが上記の上限以下であることは、吸湿に影響を及ぼす微小細孔が少ないことを意味し、非水電解質二次電池の用途に適当な低吸湿性の炭素質材料となるため好ましい。
満充電状態となるまでリチウムイオンがドープされた状態での7Li−固体NMRの測定は、満充電状態となるまでリチウムイオンがドープされた状態の炭素質材料を用いて7Li−固体NMRを測定することにより行うことができる。満充電状態となるまでリチウムイオンがドープされた状態の炭素質材料は、炭素質材料を含む電極を正極とし、金属リチウムを含む電極を負極とする非水電解質二次電池を組み立て、終了電圧を、通常、0.1〜0mV、好ましくは0.05〜0mV、より好ましくは0.01〜0mVの範囲として充電を行って得ることができる。ここで、満充電状態となるまでリチウムイオンがドープされた状態の炭素質材料は、通常、300〜490mAh/g、好ましくは310〜480mAh/gの容量を有する。
本発明の炭素質材料は、低吸湿性の炭素質材料である。本発明の炭素質材料は、好ましくは40000ppm以下、より好ましくは30000ppm以下、さらに好ましくは20000ppm以下の吸湿量を有する。本発明の炭素質材料の吸湿量の下限は特に限定されず、0ppm以上であればよい。本発明の炭素質材料は低吸湿性であるため、非水電解質二次電池用の負極として用いた場合に、電池内部への水分の混入が低減され、電解液が加水分解することに伴う酸の発生や、水が電気分解することによるガスの発生を抑制し、電池内での短絡や電池の膨張といった電池の破損を抑制することができる。
吸湿量の測定は、炭素質材料粉末を、140℃、133.3Pa(1torr)の条件下に2時間置いて乾燥させた後、25℃、相対湿度50%の条件で170時間放置して、吸湿量測定試料としての炭素質材料αを得て、炭素質材料αの水分量を定量することにより測定される。水分量は、測定試料である炭素質材料αを220℃に加熱したときに放出される水分の質量をカールフィッシャー滴定法により測定し、この質量を炭素質材料αの質量により除して定められる値である。なお、この除算における分母は220℃に加熱する前の炭素質材料αの質量である。
本発明の一態様において、本発明の炭素質材料が、植物原料由来の炭素前駆体を大気圧を超える圧力下で焼成することによって得た炭素質材料である場合、この態様において得た炭素質材料の吸湿量(A)と、大気圧以下の圧力下で焼成する態様において得た炭素質材料の吸湿量(B)との比(A/B)は、好ましくは0.1〜0.9であり、より好ましくは0.2〜0.8であり、さらに好ましくは0.3〜0.7である。
本発明の一態様において、本発明の炭素質材料が、植物原料を酸性溶液に浸漬することにより植物原料に含まれる金属元素及び/又は非金属元素の含有量を低下させた後で、植物原料由来の炭素前駆体を大気圧を超える圧力下で焼成することによって得た炭素質材料である場合、この態様において得た炭素質材料の吸湿量(A)と、大気圧以下の圧力下で焼成する態様において得た炭素質材料の吸湿量(B)との比(A/B)は、好ましくは0.05〜0.85であり、より好ましくは0.15〜0.75であり、さらに好ましくは0.25〜0.65である。
本発明の炭素質材料のJIS R 7222により測定した真比重は、好ましくは1.5〜1.8g/mLであり、より好ましくは1.54〜1.8g/mLであり、さらに好ましくは1.55〜1.6g/mLである。真比重が上記の下限以上であると、体積あたりの容量を高めやすいため好ましい。真比重が上記の上限以下であると、炭素質材料が緻密化し過ぎず、リチウムイオンが炭素質材料に挿入される際の抵抗が低くなり、出力時の抵抗を低くしやすく、リチウムイオン電池としての入出力特性を高めやすいため好ましい。真比重の測定は、JIS R 7222に定められた方法に従い測定することができる。
真比重を上記範囲に調整する方法は何ら限定されないが、例えば、焼成温度を1000〜1400℃の範囲で調整することにより、真比重を調整することができる。
本発明の炭素質材料の窒素吸着BET3点法により算出される比表面積は、好ましくは1〜20m2/gであり、より好ましくは1.2〜9.5m2/gであり、さらに好ましくは1.4〜9.0m2/gである。比表面積が上記の下限以上であると、炭素質材料へのリチウムイオンの吸着量を高めやすく、非水電解質二次電池の充電容量を高めやすいため好ましい。比表面積が上記の上限以下であると、リチウムイオンが炭素質材料の表面で反応して消費されることを防止しやすく、リチウムイオンの利用効率を高めやすいため好ましい。比表面積の測定の詳細は実施例に記載する通りであり、BET法(窒素吸着BET3点法)により測定することができる。
比表面積を上記範囲に調整する方法は特に限定されないが、例えば、本発明の製造方法において、炭素質前駆体の焼成温度や焼成時間を調整することにより調整することができる。すなわち、焼成温度を高くしたり、焼成時間を長くすると比表面積は小さくなる傾向があるので、上記の範囲の比表面積が得られるように、焼成温度や焼成時間を調整すればよい。また、揮発性有機物と混合して焼成する方法を用いてもよい。上記に述べたように、炭素質前駆体と揮発性有機物とを混合して焼成することで、炭素前駆体の表面には、揮発性有機物の熱処理により得られる炭素質被膜が形成されると考えられる。そして、この炭素質被膜により、炭素前駆体から得た炭素質材料の比表面積が減少すると考えられる。そのため、混合する揮発性有機物の量を調整することで、炭素質材料の比表面積を上記の範囲に調整することができる。
本発明の炭素質材料の平均粒子径(Dv50)は、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは3μm以上であり、さらに好ましくは4μm以上であり、特に好ましくは5μm以上である。平均粒子径が小さすぎると、微粉が増加し、炭素質材料の比表面積が増加する。その結果、炭素質材料と電解液との反応性が高くなり、不可逆容量が増加し、正極の容量が無駄になる割合が増加することがある。ここで不可逆容量とは、非水電解質二次電池に充電した容量のうち、放電しない容量である。平均粒子径が上記の下限以上である炭素質材料を用いて負極電極を製造した場合、炭素質材料間に形成される空隙が小さくなりすぎず、電解液中のリチウムの移動が制限されにくいため、好ましい。炭素質材料の平均粒子径は(Dv50)は、好ましくは30μm以下であり、より好ましくは19μm以下であり、さらに好ましくは17μm以下であり、特に好ましくは16μm以下であり、最も好ましくは15μm以下である。平均粒子径が上記の上限以下であると、粒子内でのリチウムの拡散自由行程が少なく、急速な充放電が可能となり好ましい。さらに、リチウムイオン二次電池では、入出力特性の向上には電極面積を大きくすることが重要であり、そのため電極調製時に集電板への活物質の塗工厚みを薄くする必要がある。塗工厚みを薄くするには、活物質の粒子径を小さくする必要がある。このような観点から、平均粒子径の上限は、上記の上限以下であることが好ましい。平均粒子径の測定の詳細は実施例に記載する通りであり、粒子径・粒度分布測定装置(例えば日機装株式会社製「マイクロトラックM T3000」)を用いて測定することができる。
平均粒子径を上記範囲に調整する方法は特に限定されないが、例えば、炭素質前駆体又は炭素質材料の粉砕条件により調整することができる。
広角X線回折法においてBragg式を用いて算出される、本発明の炭素質材料の(002)面の平均面間隔d002は、好ましくは0.37〜0.385nmであり、より好ましくは0.375〜0.385nmである。(002)面の平均面間隔d002が上記の下限以上であると、リチウムイオンが炭素質材料に挿入される際の抵抗が低くなり、出力時の抵抗を低くしやすく、リチウムイオン電池としての入出力特性を高めやすいため好ましい。(002)面の平均面間隔d002が上記の上限以下であると、炭素質材料の体積が大きくなりすぎず、体積あたりの容量を高めやすいため好ましい。平均面間隔d002の測定の詳細は実施例に記載する通りである。
平均面間隔を上記範囲に調整する方法は何ら限定されないが、例えば、本発明の製造方法において焼成を1000〜1400℃の範囲で行うことにより調整することができる。また、ポリスチレンなどの揮発性有機物と混合して焼成する方法を用いることもできる。このような炭素質材料は空孔が低減され、炭素構造が緻密化されるため、水の吸湿、拡散が生じにくくなると共に、炭素密度が向上し、高い電池容量を有すると共に電池の破損等が抑制された非水電解質二次電池の負極に好適に用いることができる。
本発明の炭素質材料の二酸化炭素の吸着量は、吸湿量抑制の観点から、好ましくは50mL/g以下であり、より好ましくは30mL/g以下であり、さらに好ましくは10mL/g以下である。本発明の炭素質材料の二酸化炭素の吸着量は、通常0mL/g以上である。二酸化炭素の吸着量が低いほど吸湿に影響を及ぼす微小細孔が少ないことを意味する。
本発明の炭素質材料が、植物原料由来の炭素前駆体を大気圧を超える圧力下で焼成することによって得た炭素質材料である場合、この態様において得た炭素質材料の二酸化炭素吸着量(a)と、大気圧以下の圧力下で焼成する態様において得た炭素質材料の二酸化炭素吸着量(b)との比(b/a)は1を超える。
本発明の炭素質材料は、植物原料由来の炭素前駆体を、好ましくは大気圧を超える圧力下、好ましくは1000〜1400℃で、焼成することにより得ることができる。本発明はまた、植物原料由来の炭素前駆体を、好ましくは大気圧を超える圧力下、1000〜1400℃で焼成することにより炭素質材料を得る、本発明の炭素質材料の製造方法も提供する。
本発明の炭素質材料は、植物原料由来の炭素前駆体を好ましくは1000〜1400℃で焼成することによって得られる。植物原料由来の炭素前駆体は、炭素質材料を製造する際に炭素成分を供給する炭素質材料の前駆体であり、植物原料から、例えば後述する仮焼成によって製造することができる。
植物原料は特に限定されない。植物原料としては、例えば椰子殻、珈琲豆、茶葉、サトウキビ、果実(例えば、みかん、バナナ)、藁、籾殻、広葉樹、針葉樹、竹が挙げられる。この例には、本来の用途に供した後の廃棄物(例えば、使用済みの茶葉)、あるいは植物原料の一部(例えば、バナナやみかんの皮)も包含される。これらの植物原料を、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。植物原料として、大量入手が容易な観点から椰子殻が好ましい。
椰子殻は特に限定されず、例えばパームヤシ(アブラヤシ)、ココヤシ、サラク、オオミヤシ等から得た椰子殻が挙げられる。これらの椰子殻を、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。椰子殻としては、食品、洗剤原料、バイオディーゼル油原料等として利用される大量の椰子から得られるバイオマス廃棄物であるココヤシ及びパームヤシの椰子殻が、大量入手が容易な観点から特に好ましい。
植物原料から植物原料由来の炭素前駆体を製造する方法は特に限定されないが、例えば植物原料を300℃以上の不活性ガス雰囲気下で熱処理する方法(以下において「仮焼成」とも称する)が挙げられる。また、植物原料由来の炭素前駆体を、植物原料を熱処理して得た炭素材であるチャー(例えば、椰子殻チャー)の形態で入手することも可能である。
ここで、植物原料由来の炭素前駆体から製造された炭素質材料は、多量の活物質をドープ可能であることから、非水電解質二次電池の負極材料として基本的には適している。しかし、植物原料には、植物に含まれていた金属元素が多く含有されている。このような金属元素を多く含んだ炭素質材料を負極として用いると、非水電解質二次電池の電気化学的な特性や信頼性に好ましくない影響を与えることがある。
また、植物原料は、カリウム以外のアルカリ金属(例えば、ナトリウム)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム)、遷移金属(例えば、鉄、銅)及びその他の金属類も含んでいる。炭素質材料がこれらの金属類を含むと、非水電解質二次電池の負極からの脱ドープ時に不純物が電解液中に溶出し、電池性能に好ましくない影響を与え、信頼性が損なわれる可能性がある。
さらに、本発明者等の検討により、金属元素及び/又は非金属元素などの灰分(アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、及びその他の元素類)により炭素質材料の細孔が閉塞され、電池の充放電容量に悪影響を及ぼす場合があることが確認されている。
従って、植物原料に含まれているこのような灰分を、炭素質材料を得るための焼成前に、脱灰処理によって減少させておくことが望ましい。脱灰方法は特に限定されないが、例えば、植物原料を酸性溶液に浸漬することにより脱灰する方法(以下において、「液相脱灰」とも称する)、又は、植物原料由来の炭素前駆体を塩化水素などのハロゲン化合物を含有する気相中に暴露することにより脱灰する方法(以下において、「気相脱灰」とも称する)を用いることができる。液相脱灰及び/又は気相脱灰により、植物原料及び/又は炭素前駆体に含まれる金属元素及び/又は非金属元素の含有量を低下させることができる。本発明の一態様において、植物原料由来の炭素前駆体の1000〜1400℃での焼成を、前記炭素前駆体をハロゲン化合物を含有する気相中に暴露することにより炭素前駆体に含まれる金属元素及び/又は非金属元素の含有量を低下させた後に行うか、又は、前記焼成を、前記植物原料を酸性溶液に浸漬することにより植物原料に含まれる金属元素及び/又は非金属元素の含有量を低下させた後に行うことが好ましい。
本発明の好ましい一態様において、植物原料から植物原料由来の炭素前駆体を製造する方法として、植物原料に液相脱灰を施し、液相脱灰された植物原料を仮焼成することによって植物原料由来の炭素前駆体を製造する方法、又は、植物原料に仮焼成を施して得た炭素材(炭素前駆体)又はチャーの形態で入手した炭素材に、気相脱灰を施すことによって植物原料由来の炭素前駆体を製造する方法を用いることができる。
液相脱灰は、好ましくは、植物原料を酸性溶液に浸漬することにより行われる。酸性溶液に用いる酸としては特に限定されないが、例えば鉱酸又は有機酸が挙げられる。鉱酸としては、塩酸、硫酸等が挙げられる。有機酸としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、蓚酸及び酒石酸、クエン酸等の飽和カルボン酸、安息香酸及びテレフタル酸等の芳香族カルボン酸、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸等が挙げられる。酸性溶液に用いる酸は、酸性度による腐食を防止しやすく、人体への影響が低い観点から、好ましくは有機酸であり、より好ましくは酢酸、蓚酸及びクエン酸である。また、酸性溶液に用いる酸は、リン、硫黄、ハロゲン等の不純物源となる元素を含まないことが好ましい。酸がリン、硫黄、ハロゲン等の元素を含まない場合には、植物原料を酸性溶液に浸漬後の水洗を省略し、酸が残存する植物原料を焼成した場合であっても、炭素材として好適に用いることできる炭化物が得られるため有利である。また、上記浸漬に使用後の酸性溶液の廃液処理を特別な装置を用いることなく比較的容易に行うことができるため有利である。
酸性溶液は、通常、酸と水性溶液とを混合して調製することができる。水性溶液としては、水、水と水溶性有機溶媒との混合物などが挙げられる。水溶性有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロピレングリコール、エチレングリコールなどのアルコールが挙げられる。
酸性溶液中の酸の濃度は特に限定されるものではなく、用いる酸の種類に応じて濃度を適宜調節して用いてよい。酸性溶液の酸濃度は、酸性溶液の総量に基づいて、好ましくは0.001重量%〜20重量%であり、より好ましくは0.01重量%〜18重量%であり、さらに好ましくは0.02重量%〜15重量%である。酸濃度が上記範囲内であれば、適度な灰分溶出速度が得られるため、実用的な時間で脱灰工程を行うことが可能となる。また、液相脱灰後の植物原料における酸の残留量が少なくなるため、その後の製品への影響も少なくなる。
酸性溶液のpHは、好ましくは3.5以下であり、より好ましくは3以下である。酸性溶液のpHは、好ましくは1.5以上であり、より好ましくは2.0以上である。酸性溶液のpHが上記の上限以下であると、灰分の酸性溶液への溶解速度が低下することなく、灰分の除去を効率的に行うことができるため好ましい。酸性溶液のpHが上記の下限以上であると、酸性度による腐食を抑制しながら灰分の除去を効率的に行うことができるため好ましい。
植物原料を浸漬する際の酸性溶液の温度は特に限定されないが、好ましくは45℃〜120℃であり、より好ましくは50℃〜110℃であり、さらに好ましくは60℃〜100℃である。植物原料を浸漬する際の酸性溶液の温度が上記範囲内であれば、使用する酸の分解が抑制され、実用的な時間での脱灰工程の実施が可能となる灰分の溶出速度が得られるため好ましい。また、特殊な装置を用いずに脱灰工程を行うことができるため好ましい。
植物原料を酸性溶液に浸漬する方法としては、植物原料を酸性溶液に浸漬させることができる限り特に限定されず、有機酸水溶液を連続的に添加し、所定の時間滞留させ、抜き取りながら浸漬を行う方法でも、植物原料を有機酸水溶液に浸漬し、所定の時間滞留させ、脱液した後、新たに有機酸水溶液を添加して浸漬−脱液を繰り返す方法であっても構わない。また、有機酸水溶液の全部を更新する方法であってもよいし、有機酸水溶液の一部を更新する方法であってもよい。植物原料を有機酸水溶液に浸漬する時間としては、用いる酸に応じて適宜調節することができる。
液相脱灰の時間は特に限定されないが、反応設備の経済効率、炭素材の構造保持性の観点から、例えば0.1〜100時間であり、好ましくは0.2〜80時間であり、より好ましくは0.5〜50時間である。
植物原料を酸性溶液に浸漬する際の、酸性溶液と植物原料との重量割合は、用いる酸性溶液の種類、濃度及び温度等に応じて適宜調節してよい。酸性溶液の重量に対する、浸漬させる植物原料の重量は、通常0.1重量%〜200重量%であり、好ましくは1重量%〜150重量%であり、より好ましくは1.5重量%〜120重量%である。上記範囲内であれば、酸性溶液に溶出した金属元素及び/又は非金属元素が酸性溶液から析出しにくく、植物原料への再付着を抑制しやすいため好ましい。また、上記範囲内であれば、容積効率が適切となるため経済的観点から好ましい。
液相脱灰を行う雰囲気は特に限定されず、浸漬に使用する方法に応じて適宜選択してよい。液相脱灰は、通常、大気雰囲気中で実施する。
植物原料を酸性溶液に浸漬させる操作を、好ましくは1回〜5回、より好ましくは2回〜4回繰り返して行ってよい。また、植物原料に、酸性溶液を連続的に添加し、所定の時間滞留させ、抜き取りながら浸漬を行ってもよい。
植物原料を酸性溶液に浸漬後、取り出した液相脱灰された植物原料に必要に応じて洗浄工程及び/又は乾燥工程を行ってよい。
本実施形態において、液相脱灰により植物原料に含まれているカリウム、鉄等の灰分が除去される。液相脱灰処理後に得られる植物原料に含まれるカリウム含有量は、脱ドープ容量を大きくする観点及び非脱ドープ容量を小さくする観点から、100ppm以下が好ましく、50ppm以下がより好ましく、30ppm以下がさらに好ましい。液相脱灰処理後に得られる植物原料に含まれる鉄含有量は、脱ドープ容量を大きくする観点及び非脱ドープ容量を小さくする観点から、100ppm以下が好ましく、30ppm以下がより好ましく、20ppm以下がさらに好ましい。植物原料に含まれるカリウムや鉄の含有量が多くなると、最終的に得られる炭素質材料を用いた非水電解質二次電池において、脱ドープ容量が小さくなることがある。また、非脱ドープ容量が大きくなることがある。さらに、これらの金属元素が電解液中に溶出し、再析出した際に短絡が生じ、非水電解質二次電池の信頼性が損なわれることがある。ここで、上記のカリウム含有量及び鉄含有量は、基本的には、該植物原料から得た植物原料由来の炭素前駆体にもあてはまる。
液相脱灰の対象となる植物原料の粒子径は、特に限定されないが、粒子径が小さすぎる場合、除去されたカリウム等を含む液相と、植物原料とを分離することが困難になり得ることから、粒子径の平均値の下限は100μm以上が好ましく、300μm以上がより好ましく、500μm以上がさらに好ましい。また、粒子径の平均値の上限は、酸性溶液中での植物原料の流動性の観点から、35000μm以下が好ましく、25000μm以下がより好ましく、15000μm以下がさらに好ましい。
液相脱灰に用いる装置は、植物原料と酸性溶液とを混合できる装置であれば、特に限定されない。例えば、撹拌翼を具備した反応装置や、酸性溶液をポンプを用いて外部循環することが可能な反応装置等を用いることができる。
気相脱灰は、好ましくは、植物原料由来の炭素前駆体をハロゲン化合物を含有する気相中で熱処理することにより行われる。ハロゲン化合物としては特に限定されないが、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、臭化ヨウ素、フッ化塩素(ClF)、塩化ヨウ素(ICl)、臭化ヨウ素(IBr)、塩化臭素(BrCl)等が挙げられる。熱分解によりこれらのハロゲン化合物を発生する化合物、又はこれらの混合物を、ハロゲン化合物として用いることもできる。気相脱灰に使用するハロゲン化合物は、供給安定性及びハロゲン化合物の安定性の観点から、塩化水素であることが好ましい。
気相脱灰において、ハロゲン化合物と不活性ガスを混合して用いてもよい。不活性ガスとしては、植物原料由来の炭素前駆体を構成する炭素成分と反応しないガスであれば特に限定されず、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、又はこれらの混合ガスが挙げられる。不活性ガスは、供給安定性及び経済性の観点から、窒素であることが好ましい。
気相脱灰においてハロゲン化合物と不活性ガスを混合して用いる場合、ハロゲン化合物と不活性ガスとの混合比は、十分な脱灰が達成できる限り限定されないが、例えば、安全性、経済性及び炭素中へのハロゲン化合物の残留性の観点から、不活性ガスに対するハロゲン化合物の量は好ましくは0.01〜10.0体積%であり、より好ましくは0.05〜8.0体積%であり、さらに好ましくは0.1〜5.0体積%である。
気相脱灰の温度は、脱灰の対象物である植物原料由来の炭素前駆体の種類に応じて変えることが望ましいが、例えば500〜950℃、好ましくは600〜940℃、より好ましくは650〜940℃、さらに好ましくは850〜930℃である。脱灰温度が低すぎると、脱灰効率が低下し、十分に脱灰できないことがある。脱灰温度が高くなりすぎると、ハロゲン化合物による炭素材の賦活が起きることがある。
気相脱灰の時間は特に限定されないが、反応設備の経済効率、炭素材の構造保持性の観点から、例えば5〜300分であり、好ましくは10〜200分であり、より好ましくは20〜150分である。
本実施形態において、気相脱灰により植物原料由来の炭素前駆体に含まれているカリウム、鉄等の灰分が除去される。気相脱灰処理後に得られる炭素前駆体に含まれるカリウム含有量は、脱ドープ容量を大きくする観点及び非脱ドープ容量を小さくする観点から、100ppm以下が好ましく、50ppm以下がより好ましく、30ppm以下がさらに好ましい。気相脱灰処理後に得られる炭素前駆体に含まれる鉄含有量は、脱ドープ容量を大きくする観点及び非脱ドープ容量を小さくする観点から、100ppm以下が好ましく、30ppm以下がより好ましく、10ppm以下がさらに好ましい。炭素前駆体に含まれるカリウムや鉄の含有量が上記の上限以上であると、得られる炭素質材料を用いた非水電解質二次電池において、脱ドープ容量が小さくなることがある。また、非脱ドープ容量が大きくなることがある。さらに、これらの金属元素が電解液中に溶出し、再析出した際に短絡が生じ、非水電解質二次電池の信頼性が損なわれることがある。
気相脱灰の対象となる植物原料由来の炭素前駆体の粒子径は、特に限定されないが、粒子径が小さすぎる場合、除去されたカリウム等を含む気相と、植物原料由来の炭素前駆体とを分離することが困難になり得ることから、粒子径の平均値の下限は100μm以上が好ましく、300μm以上がより好ましく、500μm以上がさらに好ましい。また、粒子径の平均値の上限は、混合ガス気流中での流動性の観点から、10000μm以下が好ましく、8000μm以下がより好ましく、5000μm以下がさらに好ましい。ここで、粒子径の測定の詳細は実施例に記載する通りであり、例えばレーザー回折法により、粒度分布測定器(例えば島津製作所製「SALD−3000S」)を用いて測定される。
気相脱灰に用いる装置は、植物原料由来の炭素前駆体とハロゲン化合物を含む気相とを混合しながら加熱できる装置であれば、特に限定されない。例えば、流動炉を用い、流動床等による連続式又はバッチ式の層内流通方式を用いることができる。気相の供給量(流動量)は特に限定されないが、混合ガス気流中での流動性の観点から、例えば植物原料由来の炭素前駆体1gあたり好ましくは1ml/分以上、より好ましくは5ml/分以上、さらに好ましくは10ml/分以上の気相を供給する。
気相脱灰においては、ハロゲン化合物を含む不活性ガス雰囲気中での熱処理(以下において「ハロゲン熱処理」と称することがある)の後に、さらにハロゲン化合物非存在下での熱処理(以下において「ハロゲン非存在熱処理」とも称する)を行うことが好ましい。ハロゲン非存在熱処理により、前記ハロゲン熱処理により植物原料由来の炭素前駆体に含まれるハロゲンを除去することができる。具体的には、ハロゲン非存在熱処理は、ハロゲン化合物を含まない不活性ガス雰囲気中で500℃〜940℃で熱処理することによって行うが、熱処理の温度は、最初のハロゲン熱処理の温度と同じか、またはそれよりも高い温度で行うことが好ましい。例えば、前記ハロゲン熱処理後に、ハロゲン化合物の供給を遮断して熱処理を行うことにより、ハロゲンを除去することができる。ハロゲン非存在熱処理の時間は特に限定されないが、好ましくは5分〜300分であり、より好ましくは10分〜200分であり、さらに好ましくは10分〜100分である。
植物原料から植物原料由来の炭素前駆体を製造するための仮焼成の熱処理温度は、300℃以上であれば特に限定されない。仮焼成の熱処理温度が高すぎると、得られる炭素前駆体が高結晶化し、続く粉砕が困難になる場合がある。そのため、仮焼成の熱処理温度は、通常300℃〜1000℃であり、好ましくは400℃〜900℃であり、より好ましくは500℃〜800℃である。
仮焼成の熱処理時間は特に限定されない。仮焼成の熱処理時間が長すぎると、得られる炭素前駆体が高結晶化し、続く粉砕が困難になる場合がある。そのため、仮焼成の熱処理時間は、通常1〜24時間であり、好ましくは1.5〜20時間であり、より好ましくは2〜15時間である。
炭素前駆体の平均粒子径は、必要に応じて粉砕工程、分級工程を経ることにより調整してよい。粉砕工程、分級工程は、脱灰処理の後で実施することが好ましい。
粉砕工程では、焼成工程後の炭素質材料の平均粒子径が例えば1〜20μmの範囲になるように、炭素前駆体又は炭素質材料を粉砕する。
炭素前駆体は、後述する焼成工程を実施しても溶解しないため、粉砕工程の順番は、脱灰工程後であればよく、焼成工程の前後は特に限定されない。炭素質材料の比表面積の低減の観点から、焼成工程の前に粉砕工程を実施することが好ましい。しかしながら、焼成工程後に粉砕工程を実施することを排除するものではない。
粉砕工程に用いる粉砕機は特に限定されず、例えばジェットミル、ボールミル、ハンマーミル、又はロッドミルなどを使用することができる。微粉の発生が少ない観点からは、分級機能を備えたジェットミルが好ましい。ボールミル、ハンマーミル、又はロッドミルなどを用いる場合は、粉砕工程後に分級を行うことで微粉を取り除くことができる。
分級工程によって、炭素質材料の平均粒子径をより正確に調整することが可能となる。例えば、分級工程により粒子径が1μm以下の粒子を除くことが可能となる。
分級によって粒子径1μm以下の粒子を除く場合、本発明の炭素質材料において、粒子径1μm以下の粒子の含量が3体積%以下となるようにすることが好ましい。粒子径1μm以下の粒子の除去は、粉砕後であれば特に限定されないが、粉砕工程において紛級を同時に行うことが好ましい。本発明の炭素質材料において、粒子径1μm以下の粒子の含量は、比表面積を低下させ、不可逆容量を低下させやすい観点から、3体積%以下であることが好ましく、2.5体積%以下であることがより好ましく、2.0体積%以下であることがさらに好ましい。
分級方法は特に制限されないが、例えば篩を用いた分級、湿式分級、乾式分級が挙げられる。湿式分級機としては、例えば重力分級、慣性分級、水力分級、遠心分級等の原理を利用した分級機が挙げられる。乾式分級機としては、沈降分級、機械的分級、遠心分級等の原理を利用した分級機が挙げられる。
粉砕工程と分級工程は、1つの装置を用いて実施することもできる。例えば、乾式の分級機能を備えたジェットミルを用いて、粉砕工程と分級工程を実施することができる。さらに、粉砕機と分級機とが独立した装置を用いることもできる。この場合、粉砕と分級とを連続して行うこともできるが、粉砕と分級とを不連続に行うこともできる。
本発明の製造方法において、上記のようにして得た植物原料由来の炭素前駆体を、好ましくは大気圧を超える圧力下、好ましくは1000〜1400℃で焼成し、炭素質材料を得る。
本発明の製造方法において、上記焼成を、目的に応じて、炭素前駆体を単独で加熱して行ってもよいし、炭素前駆体と揮発性有機物との混合物を加熱して行ってもよい。本発明の一態様において、炭素前駆体と揮発性有機物との混合物を加熱して焼成を行うことにより、得られる炭素質材料の比表面積を低減させることができ、吸湿性をさらに低減させることができる。この態様は、非水電解質二次電池用の負極材料として好適な比表面積及び低吸湿性を有する炭素質材料を得やすいため好ましい。さらに、この態様において、炭素質材料への二酸化炭素の吸着量を調整することもできる。
揮発性有機物としては、常温で固体状態であり、残炭率が5%未満である有機物が好ましい。揮発性有機物は、植物原料由来の炭素前駆体の比表面積を低減させることのできる揮発物質(例えば、炭化水素系ガス及びタール成分)を発生させるものが好ましい。なお、揮発性有機物において、上記比表面積を低減させることのできる揮発物質(例えば、炭化水素系ガス及びタール成分)の含量は特に限定されない。
揮発性有機物としては、例えば熱可塑性樹脂、低分子有機化合物が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリルとは、メタクリルとアクリルとの総称である。低分子有機化合物としては、例えばトルエン、キシレン、メシチレン、スチレン、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、ピレン等が挙げられる。焼成温度下で揮発し、熱分解した場合に炭素前駆体の表面を酸化賦活しないものが好ましいことから、熱可塑性樹脂としてはポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。低分子有機化合物としては、さらに安全上の観点から常温下において揮発性が小さいことが好ましく、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、ピレン等が好ましい。
残炭率は、試料を不活性ガス中で強熱した後の強熱残分の炭素量を定量することにより測定される。強熱とは、揮発性有機物およそ1g(この正確な重量をW1(g)とする)を坩堝に入れ、1分間に20リットルの窒素を流しながら坩堝を電気炉にて、10℃/分の昇温速度で常温から800℃まで昇温し、その後800℃で1時間強熱する。このときの残存物を強熱残分とし、その重量をW2(g)とする。
炭素前駆体と揮発性有機物との混合物を加熱して焼成を行う本発明の一態様において、混合物中の炭素前駆体と揮発性有機物との混合割合は特に限定されないが、好ましくは97:3〜40:60(炭素前駆体の質量:揮発性有機物の質量)であり、より好ましくは95:5〜60:40であり、さらに好ましくは93:7〜80:20である。例えば、揮発性有機物が3質量部以上であると比表面積を十分に低減しやすい。一方、揮発性有機物が多すぎると、比表面積の低減効果が飽和し、揮発性有機物を無駄に消費してしまう場合がある。
炭素前駆体と揮発性有機物との混合物を加熱して焼成を行う本発明の一態様において、炭素前駆体と揮発性有機物との混合は、粉砕工程前又は粉砕工程後等のいずれの段階で行ってもよい。混合方法は、両者が均一に混合される方法であればいずれの方法を用いてもよく、公知の種々の混合方法を適宜用いてよい。
粉砕工程前に炭素前駆体と揮発性有機物とを混合する場合、例えば炭素前駆体と揮発性有機物とを計量しながら、粉砕装置に同時に供給することにより粉砕と混合を同時に行うこともできる。
粉砕工程後に炭素前駆体と揮発性有機物とを混合する場合、分散性の観点から、揮発性有機物は粒子の形状で混合されることが好ましい。この場合、揮発性有機物の粒子形状や粒子径は特に限定されない。揮発性有機物を粉砕された炭素前駆体に均一に分散させる観点からは、揮発性有機物の平均粒子径は好ましくは0.1〜2000μmであり、より好ましくは1〜1000μmであり、さらに好ましくは2〜600μmである。
本発明の製造方法において、上記焼成を、炭素前駆体及び場合により混合される揮発性有機物以外の他の成分を含む混合物を加熱して行ってもよい。他の成分としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、金属系材料、合金系材料又は酸化物系材料が挙げられる。他の成分の含有量は、特に限定されるものではないが、好ましくは50質量部以下であり、より好ましくは30質量部以下であり、さらに好ましくは20質量部以下であり、特に好ましくは10質量部以下である。上記含有量は、炭素前駆体のみで焼成を行う場合には炭素前駆体100質量部に対する量であり、炭素前駆体と揮発性有機物との混合物を用いて焼成を行う場合には、該混合物100質量部に対する量である。
本発明の製造方法において、例えば、炭素前駆体及び場合により揮発性有機物等を室温から1000〜1400℃の範囲の温度Aまで昇温する昇温工程、1000〜1400℃の範囲に温度Aを保ち炭素前駆体を焼成する焼成工程、及び、温度Aから室温まで冷却する冷却工程を少なくとも経て、炭素質材料を得ることができる。以下において、前記温度Aを焼成温度とも称する。ここで、温度Aは1000〜1400℃の範囲の1点の温度であってもよいし、上記範囲内の2点以上の温度であってもよいし、上記範囲内で変動する温度であってもよい。焼成温度は、通常1000〜1400℃であり、好ましくは1000〜1350℃であり、より好ましくは1100〜1300℃である。
本発明の製造方法において、炭素前駆体及び場合により揮発性有機物等を、好ましくは大気圧を超える圧力下、好ましくは1100〜1400℃で焼成して炭素質材料を得ることができる。本発明の製造方法において、前記昇温工程もしくは焼成工程の少なくともいずれかが大気圧を超える圧力下で行われることが好ましい。この態様において、前記昇温工程のみを大気圧を超える圧力下で行ってもよいし、前記焼成工程のみを大気圧を超える圧力下で行ってもよいし、前記昇温工程及び焼成工程のいずれもを大気圧を超える圧力下で行ってもよい。前記冷却工程における圧力は特に限定されない。
本発明の一態様において、大気圧を超える圧力下で焼成を行う場合、焼成を行う際の大気圧を超える圧力は、好ましくは0.11MPa以上であり、より好ましくは0.2MPa以上であり、さらに好ましくは0.3MPa以上である。焼成を行う圧力は、装置負荷軽減の観点から、通常100MPa以下であり、より好ましくは50MPa以下である。この態様は、大気圧を超える圧力下で焼成を行うことにより高い電池容量を有すると共に低い吸湿性を有する炭素質材料を得やすいため好ましい。これは、大気圧を超える圧力下で焼成を行う本発明の一態様において、1nm未満、例えば0.3nm程度の径を有する細孔が閉塞されやすいためであると考えられる。このような細孔は、リチウムイオンのドープに対する寄与よりも、水分などの取込みに対する寄与が大きい。そのため、このような細孔を選択的に閉塞することにより、高い電池容量を維持しつつも吸湿性を低下させやすいと考えられる。
本発明の一態様において、大気圧を超える圧力下で焼成を行う方法としては、例えば(i)炭素前駆体をプレスすることにより炭素前駆体に直接圧力をかけながら加熱して焼成を行ってもよいし、(ii)炭素前駆体が存在する空間をプレスすることにより該空間を密閉又は半密閉し、加熱して焼成を行ってもよいし、(iii)密閉又は半密閉された空間に炭素前駆体を入れて加熱して焼成を行ってもよい。ここで、炭素前駆体は焼成過程においてCO、CO2、H2、炭化水素ガス等の熱分解ガスを発生する。密閉又は半密閉された空間に炭素前駆体を入れて加熱し焼成を行う場合、焼成過程において炭素前駆体から生じるガスにより加圧が行われる。
上記(i)の方法により大気圧を超える圧力下で焼成を行う場合、上記プレスは、一軸方式、二軸方式又は等方圧方式のプレスであってよい。プレスの圧力は、大気圧を超える圧力下で焼成を行える限り特に限定されないが、例えば、好ましくは0.11MPa以上であり、より好ましくは0.3MPa以上であり、さらに好ましくは0.5MPa以上である。
上記(ii)の方法により大気圧を超える圧力下で焼成を行う場合、上記プレスは、一軸方式、二軸方式又は等方圧方式のプレスであってよい。プレスの圧力は、大気圧を超える圧力下で焼成を行える限り特に限定されないが、例えば0MPaより大きく100MPaより小さい範囲であり、好ましくは0.1〜50MPaであり、より好ましくは0.1〜35MPaである。ここで、上記に説明したように、密閉又は半密閉された空間に炭素前駆体及び場合により揮発性有機物等を入れて加熱し焼成を行う場合、焼成過程において炭素前駆体から生じるガスにより加圧が行われる。そのため、プレスの圧力自体は、焼成を行う空間が大気圧を超える圧力である限りにおいて、大気圧より低くてもよい。
上記(iii)の方法により大気圧を超える圧力下で焼成を行う場合、該空間は、大気圧を超える圧力下で焼成を行うことができる限り特に限定されないが、熱変形しない空間であることが好ましい。該空間が密閉又は半密閉されていることにより、炭素前駆体から発生する熱分解ガスの全てが該空間の外に拡散することなく該空間が加圧され、大気圧を超える圧力下で焼成を行うことができる。
上記(ii)及び(iii)の方法により大気圧を超える圧力下で焼成を行う本発明の一態様において、半密閉容器とは、焼成時に炭素前駆体から生じるガスの全てが容器外に拡散するのを防ぐ程度に閉じられた容器であればよい。半密閉容器が内蓋又は外蓋を有する容器である場合には、炭素前駆体から生じるガスの全てが容器外に拡散するのを防ぐ程度に蓋と容器との間のクリアランスを調整することが好ましい。
上記態様において使用される容器としては、外蓋付き容器又は内蓋付き容器等が挙げられる。外蓋又は内蓋付き容器としては、焼成時に炭素前駆体から生じるガスの全てが容器外に拡散するのを防ぐことができ、大気圧を超える圧力下で焼成を行える限り何ら限定されず、内部が加圧されても外蓋又は内蓋が外れないような構造を有する容器を使用してもよいし、ガスの全てが容器外に撹拌しないような外蓋又は内蓋と容器との間のクリアランスを有する容器を使用してもよいし、外蓋又は内蓋が外れないように外部から加圧して焼成を行ってもよい。
外蓋又は内蓋が外れないように外部から加圧して焼成を行う場合、該加圧の圧力は0〜100MPaであることが好ましく、0.1〜50MPaであることがより好ましい。
本発明の製造方法において、炭素質材料の酸化抑制の観点から、焼成を好ましくは不活性ガスの存在下で行う。本発明の製造方法においては、前記昇温工程もしくは焼成工程の少なくともいずれかを不活性ガスの存在下で行うことが好ましく、この場合、前記昇温工程のみを不活性ガスの存在下で行ってもよいし、前記焼成工程のみを不活性ガスの存在下で行ってもよいし、前記昇温工程及び焼成工程のいずれもを不活性ガスの存在下で行ってもよい。不活性ガスとしては窒素又はアルゴンなどが挙げられる。ハロゲンガスを含有する不活性ガス中で焼成を行うことも可能である。
本発明の一態様において、大気圧を超える圧力下で焼成を行う場合、焼成時に炭素前駆体から生じるガスにより加圧しやすい観点から、不活性ガスの非流通下で焼成を行うことが好ましい。なお、不活性ガスの非流通下で焼成を行うとは、前記昇温工程及び焼成工程の少なくともいずれかを不活性ガスの非流通下で行うことを表す。前記昇温工程のみを不活性ガスの非流通下で行ってもよいし、前記焼成工程のみを不活性ガスの非流通下で行ってもよいし、前記昇温工程及び焼成工程のいずれもを不活性ガスの非流通下で行ってもよい。前記冷却工程は、不活性ガスの流通下であっても非流通下であってもよい。不活性ガスの非流通下で行う方法としては、上記(i)〜(iii)の方法が挙げられる。不活性ガスの非流通下で焼成を行う方法としては、例えば不活性ガスの流通を停止して焼成を行ってもよいし、不活性ガスの流通下であっても上記のように密閉又は半密閉された空間で前記焼成を行うことにより、不活性ガスの非流通下で焼成を行うことができる。
本発明の製造方法において、前記昇温工程及び焼成工程の少なくともいずれかを不活性ガスの存在下、及び、不活性ガスの非流通下で行うことが、大気圧を超える圧力下で焼成を行いやすい観点から好ましい。
前記昇温工程と、前記焼成工程とを合わせた時間は特に限定されないが、例えば0.05〜10時間であり、好ましくは0.05〜8時間であり、より好ましくは0.05〜6時間である。前記冷却工程の時間は特に限定されない。
室温から1000〜1400℃の範囲の温度Aまで昇温する昇温工程、及び/又は、1000〜1400℃の範囲に温度Aを保ち炭素前駆体を焼成する焼成工程において、炭素前駆体を加熱する方法としては、例えば抵抗加熱(間接抵抗加熱及び直接抵抗(通電)加熱)、誘導加熱などが挙げられる。設備汎用性、量産性の観点から、加熱方法として抵抗加熱を用いることが好ましく、間接抵抗加熱を用いることがより好ましい。
炭素前駆体は、焼成により溶解しないが、焼成後に得られる炭素質物質は、加圧により凝集し、ペレット状に固化している場合がある。これらを、炭素質材料を使用する種々の目的に応じて、必要な場合に解砕して使用してもよいし、固化したものをそのまま使用してもよい。非水電解質二次電池用の炭素質材料として使用する観点からは、凝集又は固化した炭素質物質を一次粒径まで解砕することが望ましい。解砕には、例えば粉砕機を使用することができるが、その方法は特に限定されず、例えばジェットミル、ボールミル、ハンマーミル、又はロッドミルなどを使用することができる。
本発明の炭素質材料、及び、本発明の製造方法によって得た炭素質材料は、低吸湿性の炭素質材料である。このような低吸湿性の炭素質材料は、非水電解質二次電池用の負極として用いた場合に、電池内部への水分の混入が低減され、電解液が加水分解することに伴う酸の発生や、水が電気分解することによるガスの発生を抑制し、電池内での短絡や電池の膨張といった電池の破損を抑制することができる。
本発明はさらに、本発明の炭素質材料又は本発明の製造方法によって得た炭素質材料を含む非水電解質二次電池用負極を提供する。
以下において、本発明の非水電解質二次電池用負極の製造方法を具体的に述べる。本発明の非水電解質二次電池用負極は、例えば、本発明の炭素質材料に結合剤(バインダー)を添加し、適当な溶媒を適量添加、混練して得た電極合剤を、金属板等からなる集電板に塗布・乾燥後、加圧成形することにより製造することができる。
本発明の炭素質材料を用いることにより、導電助剤を添加しなくとも高い導電性を有する電極を製造することができる。高い導電性を賦与することを目的として、必要に応じて電極合剤の調製時に、導電助剤を添加してもよい。導電助剤としては、導電性のカーボンブラック、気相成長炭素繊維(VGCF)、ナノチューブ等を用いることができる。導電助剤の添加量は、使用する導電助剤の種類によっても異なるが、添加する量が少なすぎると期待する導電性が得られないことがあり、多すぎると電極合剤中の分散が悪くなることがある。このような観点から、添加する導電助剤の割合は好ましくは0.5〜10質量%(ここで、活物質(炭素質材料)量+バインダー量+導電助剤量=100質量%とする)であり、より好ましくは0.5〜7質量%であり、さらに好ましくは0.5〜5質量%である。結合剤としては、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ポリテトラフルオロエチレン、及びSBR(スチレン・ブタジエン・ラバー)とCMC(カルボキシメチルセルロース)との混合物等の電解液と反応しないものであれば特に限定されない。中でもPVDFは、活物質表面に付着したPVDFがリチウムイオン移動を阻害することが少なく、良好な入出力特性を得るために好ましい。PVDFを溶解し、スラリーを形成するためにN−メチルピロリドン(NMP)等の極性溶媒を好ましく用いられるが、SBR等の水性エマルジョンやCMCを水に溶解して用いることもできる。結合剤の添加量が多すぎると、得られる電極の抵抗が大きくなることがあるため、電池の内部抵抗が大きくなり電池特性を低下させることがある。また、結合剤の添加量が少なすぎると、負極材料の粒子相互間及び集電材との結合が不十分となることがある。結合剤の好ましい添加量は、使用するバインダーの種類によっても異なるが、例えばPVDF系のバインダーでは好ましくは3〜13質量%であり、更に好ましくは3〜10質量%である。一方、溶媒に水を使用するバインダーでは、SBRとCMCとの混合物など、複数のバインダーを混合して使用することが多く、使用する全バインダーの総量としては0.5〜5質量%が好ましく、1〜4質量%がより好ましい。
電極活物質層は、通常、集電板の両面に形成されるが、必要に応じて片面に形成されてもよい。電極活物質層が厚いほど、集電板やセパレータ等が少なくて済むため、高容量化には好ましい。しかし、対極と対向する電極面積が広いほど入出力特性の向上に有利なため、電極活物質層が厚すぎると入出力特性が低下することがある。活物質層(片面当たり)の厚みは、電池放電時の出力の観点から、好ましくは10〜80μmであり、より好ましくは20〜75μmであり、さらに好ましくは20〜60μmである。
本発明はさらに、本発明の非水電解質二次電池用負極を含む非水電解質二次電池を提供する。本発明の炭素質材料を使用した非水電解質二次電池用負極電極を用いた非水電解質二次電池は、高い電池容量を有し、電池内部に水分が存在することによりもたらされ得る電池の破損等が抑制された二次電池である。
本発明の炭素質材料を用いて、非水電解質二次電池用の負極を形成した場合、正極材料、セパレータ、及び電解液など電池を構成する他の材料は特に限定されることなく、非水溶媒二次電池として従来使用され、あるいは提案されている種々の材料を使用することが可能である。
例えば、正極材料としては、層状酸化物系(LiMO2と表されるもので、Mは金属:例えばLiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、又はLiNixCoyMozO2(ここでx、y、zは組成比を表わす))、オリビン系(LiMPO4で表され、Mは金属:例えばLiFePO4等)、スピネル系(LiM2O4で表され、Mは金属:例えばLiMn2O4等)の複合金属カルコゲン化合物が好ましく、これらのカルコゲン化合物を必要に応じて混合してもよい。これらの正極材料を適当なバインダーと電極に導電性を付与するための炭素材料とともに成形して、導電性の集電材上に層形成することにより正極が形成される。
これらの正極及び負極と組み合わせて用いられる非水溶媒型電解液は、一般に非水溶媒に電解質を溶解することにより形成される。非水溶媒としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、γ−ブチルラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、スルホラン、又は1,3−ジオキソラン等の有機溶媒を、一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。また、電解質としては、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiAsF6、LiCl、LiBr、LiB(C6H5)4、又はLiN(SO3CF3)2等が用いられる。
非水電解質二次電池は、一般に上記のようにして形成した正極と負極とを必要に応じて不織布、その他の多孔質材料等からなる透液性セパレータを介して対向させ電解液中に浸漬させることにより形成される。セパレータとしては、二次電池に通常用いられる不織布、その他の多孔質材料からなる透過性セパレータを用いることができる。あるいはセパレータの代わりに、もしくはセパレータと一緒に、電解液を含浸させたポリマーゲルからなる固体電解質を用いることもできる。
本発明の非水電解質二次電池用炭素質材料は、例えば自動車などの車両に搭載される電池(典型的には車両駆動用非水電解質二次電池)用炭素質材料として好適である。本発明において車両とは、通常、電動車両としてしられるものや、燃料電池や内燃機関とのハイブリッド車など、特に制限されることなく対象とすることができるが、少なくとも上記電池を備えた電源装置と、該電源装置からの電源供給により駆動する電動駆動機構と、これを制御する制御装置とを備える。車両は、さらに、発電ブレーキや回生ブレーキを備え、制動によるエネルギーを電気に変換して、前記非水電解質二次電池に充電する機構を備えていてもよい。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。なお、以下に非水電解質二次電池用炭素質材料の物性値の測定方法を記載するが、実施例を含めて、本明細書中に記載する物性値は、以下の方法により求めた値に基づくものである。
〔窒素吸着BET3点法による比表面積〕
以下にBETの式から誘導された近似式を記す。
上記の近似式を用いて、液体窒素温度における、窒素吸着による3点法によりvmを求め、次式により試料の比表面積を計算した。
このとき、vmは試料表面に単分子層を形成するに必要な吸着量(cm3/g)、vは実測される吸着量(cm3/g)、p0は飽和蒸気圧、pは絶対圧、cは定数(吸着熱を反映)、Nはアボガドロ数6.022×1023、a(nm2)は吸着質分子が試料表面で占める面積(分子占有断面積)である。
具体的には、日本BELL社製「BELL Sorb Mini」を用いて、以下のようにして液体窒素温度における炭素質材料への窒素の吸着量を測定した。粒子径約5〜50μmに粉砕した炭素質材料を試料管に充填し、試料管を−196℃に冷却した状態で、一旦減圧し、その後所望の相対圧にて炭素質材料に窒素(純度99.999%)を吸着させる。各所望の相対圧にて平衡圧に達した時の試料に吸着した窒素量を吸着ガス量vとした。
以下にBETの式から誘導された近似式を記す。
具体的には、日本BELL社製「BELL Sorb Mini」を用いて、以下のようにして液体窒素温度における炭素質材料への窒素の吸着量を測定した。粒子径約5〜50μmに粉砕した炭素質材料を試料管に充填し、試料管を−196℃に冷却した状態で、一旦減圧し、その後所望の相対圧にて炭素質材料に窒素(純度99.999%)を吸着させる。各所望の相対圧にて平衡圧に達した時の試料に吸着した窒素量を吸着ガス量vとした。
〔平均粒子径〕
植物原料、植物原料由来のチャー及び炭素質材料の平均粒子径(粒度分布)を以下の方法により測定した。試料を界面活性剤(和光純薬工業(株)製「ToritonX100」)が0.3質量%含まれた水溶液に投入し、超音波洗浄器で10分以上処理し、水溶液中に分散させた。この分散液を用いて粒度分布を測定した。粒度分布測定は、粒子径・粒度分布測定装置(日機装株式会社製「マイクロトラックM T3000」)を用いて行った。Dv50は、累積体積が50%となる粒子径であり、この値を平均粒子径として用いた。
植物原料、植物原料由来のチャー及び炭素質材料の平均粒子径(粒度分布)を以下の方法により測定した。試料を界面活性剤(和光純薬工業(株)製「ToritonX100」)が0.3質量%含まれた水溶液に投入し、超音波洗浄器で10分以上処理し、水溶液中に分散させた。この分散液を用いて粒度分布を測定した。粒度分布測定は、粒子径・粒度分布測定装置(日機装株式会社製「マイクロトラックM T3000」)を用いて行った。Dv50は、累積体積が50%となる粒子径であり、この値を平均粒子径として用いた。
〔広角X線回折法においてBragg式を用いて算出される(002)面の平均面間隔d002〕
「株式会社リガク製MiniFlexII」を用い、炭素質材料粉末を試料ホルダーに充填し、Niフィルターにより単色化したCuKα線を線源とし、X線回折図形を得た。回折図形のピーク位置は重心法(回折線の重心位置を求め、これに対応する2θ値でピーク位置を求める方法)により求め、標準物質用高純度シリコン粉末の(111)面の回折ピークを用いて補正した。CuKα線の波長を0.15418nmとし、以下に記すBraggの公式によりd002を算出した。
「株式会社リガク製MiniFlexII」を用い、炭素質材料粉末を試料ホルダーに充填し、Niフィルターにより単色化したCuKα線を線源とし、X線回折図形を得た。回折図形のピーク位置は重心法(回折線の重心位置を求め、これに対応する2θ値でピーク位置を求める方法)により求め、標準物質用高純度シリコン粉末の(111)面の回折ピークを用いて補正した。CuKα線の波長を0.15418nmとし、以下に記すBraggの公式によりd002を算出した。
〔真比重〕
真比重は、JIS R 7222に定められた方法に従い測定した。
真比重は、JIS R 7222に定められた方法に従い測定した。
〔残炭率〕
残炭率は、試料を不活性ガス中で強熱した後の強熱残分の炭素量を定量することにより測定される。強熱とは、揮発性有機物およそ1g(この正確な重量をW1(g)とする)を坩堝に入れ、1分間に20リットルの窒素を流しながら坩堝を電気炉にて、10℃/分の昇温速度で常温から800℃まで昇温、その後800℃で1時間強熱する。このときの残存物を強熱残分とし、その重量をW2(g)とする。
次いで上記強熱残分について、JIS M8819に定められた方法に準拠して元素分析を行い、炭素の重量割合P1(%)を測定する。残炭率P2(%)は以下の式により算出される。
残炭率は、試料を不活性ガス中で強熱した後の強熱残分の炭素量を定量することにより測定される。強熱とは、揮発性有機物およそ1g(この正確な重量をW1(g)とする)を坩堝に入れ、1分間に20リットルの窒素を流しながら坩堝を電気炉にて、10℃/分の昇温速度で常温から800℃まで昇温、その後800℃で1時間強熱する。このときの残存物を強熱残分とし、その重量をW2(g)とする。
次いで上記強熱残分について、JIS M8819に定められた方法に準拠して元素分析を行い、炭素の重量割合P1(%)を測定する。残炭率P2(%)は以下の式により算出される。
〔吸湿性の評価〕
カールフィッシャー水分測定装置(三菱化学アナリテック社製 微量水分測定装置CA‐200)を用いてカールフィッシャー滴定法(電量滴定法)により炭素質材料の吸湿性を吸湿量として定量測定した。測定は、得られた各炭素質材料について、上述の吸湿量測定試料としての炭素質材料αを調製して行った。また、得られた吸湿量から、実施例1及び2で得た炭素質材料1又は2の吸湿量(A)と、比較例1で得た炭素質材料5の吸湿量(B)との比(A/B)、及び、実施例3又は4で得た炭素質材料3及び4の吸湿量(A)と、比較例2で得た炭素質材料6の吸湿量(B)との比(A/B)、実施例5で得た炭素質材料7の吸湿量(A)と、比較例3で得た炭素質材料9の吸湿量(B)との比(A/B)、及び、実施例6で得た炭素質材料8の吸湿量(A)と、比較例4で得た炭素質材料10の吸湿量(B)との比(A/B)を算出した。
カールフィッシャー水分測定装置(三菱化学アナリテック社製 微量水分測定装置CA‐200)を用いてカールフィッシャー滴定法(電量滴定法)により炭素質材料の吸湿性を吸湿量として定量測定した。測定は、得られた各炭素質材料について、上述の吸湿量測定試料としての炭素質材料αを調製して行った。また、得られた吸湿量から、実施例1及び2で得た炭素質材料1又は2の吸湿量(A)と、比較例1で得た炭素質材料5の吸湿量(B)との比(A/B)、及び、実施例3又は4で得た炭素質材料3及び4の吸湿量(A)と、比較例2で得た炭素質材料6の吸湿量(B)との比(A/B)、実施例5で得た炭素質材料7の吸湿量(A)と、比較例3で得た炭素質材料9の吸湿量(B)との比(A/B)、及び、実施例6で得た炭素質材料8の吸湿量(A)と、比較例4で得た炭素質材料10の吸湿量(B)との比(A/B)を算出した。
〔NMR測定用試料作製〕
実施例1〜6及び比較例1〜4で調製した炭素質材料90重量部、ポリフッ化ビニリデン10重量部に、N−メチル−2−ピロリドンを加えてペースト状物を得た。該ペースト状物を、フィルム上に均一な厚みで塗布し、乾燥、プレスした。得られたプレス物をフィルムから剥離させて、直径16mmの円板状に打ち抜き炭素電極を得、これを正極として用いた。負極として、厚さ1mmの金属リチウム薄膜を直径16mmの円板状に打ち抜いたものを用いた。電解液として、ジエチルカーボネートとエチレンカーボネートを容量比1:1で混合した混合溶媒に1モル/リットルの割合でLiPF6を加えたものを用いた。セパレータとして、ポリプロピレン製微細孔膜を用いた。炭素電極と負極との間にセパレータを挟み、電解液を注入してコインセルを作製した。
実施例1〜6及び比較例1〜4で調製した炭素質材料90重量部、ポリフッ化ビニリデン10重量部に、N−メチル−2−ピロリドンを加えてペースト状物を得た。該ペースト状物を、フィルム上に均一な厚みで塗布し、乾燥、プレスした。得られたプレス物をフィルムから剥離させて、直径16mmの円板状に打ち抜き炭素電極を得、これを正極として用いた。負極として、厚さ1mmの金属リチウム薄膜を直径16mmの円板状に打ち抜いたものを用いた。電解液として、ジエチルカーボネートとエチレンカーボネートを容量比1:1で混合した混合溶媒に1モル/リットルの割合でLiPF6を加えたものを用いた。セパレータとして、ポリプロピレン製微細孔膜を用いた。炭素電極と負極との間にセパレータを挟み、電解液を注入してコインセルを作製した。
作製したコインセルを用いて、電流密度0.5mA/cm2の電気量で0mVに到達するまでドーピングし、その後0mVの一定電圧下で0.02mAの電流値まで充電することで、リチウムイオンが満充電状態となるまでドープされた炭素電極を得た。ドープ終了後にドープを2時間休止し、アルゴン雰囲気下で炭素電極を取り出し、電解液を拭き取り、得られた炭素電極を全てNMR用のサンプル管に充填した。
〔NMR測定〕
NMR分析は、核磁気共鳴装置(BRUKER製「AVANCE300」)を用い、MAS−7Li−NMRの測定を行った。測定に際して、塩化リチウムを基準物質として用い、塩化リチウムのピークを0ppmに設定した。
NMR分析は、核磁気共鳴装置(BRUKER製「AVANCE300」)を用い、MAS−7Li−NMRの測定を行った。測定に際して、塩化リチウムを基準物質として用い、塩化リチウムのピークを0ppmに設定した。
調製例1
椰子殻を破砕し、500℃で乾留して、粒径2.360〜0.850mmの椰子殻チャー(粒径2.360〜0.850mmの粒子を98質量%含有)を得た。この椰子殻チャー100gに対して、塩化水素ガスを1体積%含む窒素ガスを10L/分の流量で供給しながら870℃で50分間ハロゲン熱処理を実施した。その後、塩化水素ガスの供給のみを停止し、窒素ガスを10L/分の流量で供給しながら、さらに870℃で30分間ハロゲン非存在熱処理を実施し、炭素前駆体を得た。得られた炭素前駆体を、ボールミルを用いて平均粒子径10μmに粗粉砕した後、コンパクトジェットミル(株式会社セイシン企業製、コジェットシステムα―mkIII)で粉砕及び分級し、平均子粒径9.6μmの炭素前駆体を得た。
椰子殻を破砕し、500℃で乾留して、粒径2.360〜0.850mmの椰子殻チャー(粒径2.360〜0.850mmの粒子を98質量%含有)を得た。この椰子殻チャー100gに対して、塩化水素ガスを1体積%含む窒素ガスを10L/分の流量で供給しながら870℃で50分間ハロゲン熱処理を実施した。その後、塩化水素ガスの供給のみを停止し、窒素ガスを10L/分の流量で供給しながら、さらに870℃で30分間ハロゲン非存在熱処理を実施し、炭素前駆体を得た。得られた炭素前駆体を、ボールミルを用いて平均粒子径10μmに粗粉砕した後、コンパクトジェットミル(株式会社セイシン企業製、コジェットシステムα―mkIII)で粉砕及び分級し、平均子粒径9.6μmの炭素前駆体を得た。
調製例2
約5mm角のフィリピン ミンダナオ島産椰子殻チップ120gを7.4重量%クエン酸水溶液280gに浸漬し、95℃に加温し、4時間加熱した。その後室温まで冷却し、ろ過により脱液した。この操作を5回行い、液相脱灰を行った。液相脱灰された椰子殻を真空1Torr下、80℃で24時間乾燥した。このようにして液相脱灰された椰子殻チップに仮焼成を行った。具体的には、液相脱灰された椰子殻チップを坩堝に入れ、光洋サーモ製KTF1100炉(内径70mmΦ)を用いて、酸素含量15ppmの窒素気流3L/分(0.012メートル/秒)の流量下、10℃/分で500℃まで昇温し、60分保持して加熱した後、6時間かけて冷却し、50℃以下で炭化物を取り出し、炭素前駆体を得た。得られた炭素前駆体を、ボールミルを用いて平均粒子径6μmに粗粉砕した後、コンパクトジェットミル(株式会社セイシン企業製、コジェットシステムα―mkIII)で粉砕及び分級し、平均粒子径5.6μmの炭素前駆体を得た。
約5mm角のフィリピン ミンダナオ島産椰子殻チップ120gを7.4重量%クエン酸水溶液280gに浸漬し、95℃に加温し、4時間加熱した。その後室温まで冷却し、ろ過により脱液した。この操作を5回行い、液相脱灰を行った。液相脱灰された椰子殻を真空1Torr下、80℃で24時間乾燥した。このようにして液相脱灰された椰子殻チップに仮焼成を行った。具体的には、液相脱灰された椰子殻チップを坩堝に入れ、光洋サーモ製KTF1100炉(内径70mmΦ)を用いて、酸素含量15ppmの窒素気流3L/分(0.012メートル/秒)の流量下、10℃/分で500℃まで昇温し、60分保持して加熱した後、6時間かけて冷却し、50℃以下で炭化物を取り出し、炭素前駆体を得た。得られた炭素前駆体を、ボールミルを用いて平均粒子径6μmに粗粉砕した後、コンパクトジェットミル(株式会社セイシン企業製、コジェットシステムα―mkIII)で粉砕及び分級し、平均粒子径5.6μmの炭素前駆体を得た。
本発明における炭素質材料の製造方法は、上記のように、炭素前駆体の焼成時に炭素前駆体以外の材料を必ずしも混合しない方法であるが、目的に応じて、炭素前駆体の焼成時に揮発性有機物など炭素前駆体以外の材料を混合する吸湿抑制方法と併用することで、一層の吸湿性の抑制効果を発現できる。以下に、炭素前駆体以外の材料を用いない本発明の一態様により製造した炭素質材料(実施例1、2及び5)、及び、炭素前駆体と揮発性有機物との混合物を焼成する本発明の一態様により製造した炭素質材料(実施例3、4及び6)を示す。
実施例1
調製例1で調製した炭素前駆体15.0gを黒鉛製モールド(円柱形、内径35mmφ、高さ90mm)に入れ、35mmφの黒鉛製スペーサーで上下から炭素前駆体を挟み込んだ。試料を閉じ込めた黒鉛製モールドを、株式会社モトヤマ製ホットプレス炉MS−2159に入れ、毎分1Lの窒素流量下、毎分5℃の昇温速度で1250℃まで昇温した後、30分保持し、自然冷却した。昇温が始まった後、300℃到達時(昇温開始より1時間後)から1250℃保持終了時まで、ホットプレス炉付属のプレッサーにて、31MPaの一軸加圧を炭素前駆体に対し実施した。炉内温度が50℃以下に低下したことを確認し、炉内から炭素質材料を取り出した。回収された炭素質材料を、ミキサーミルを用いて粉砕し、13.3gの炭素質材料1を得た。炭素質材料1の炭素前駆体に対する回収率は89%であった。得られた炭素質材料1の物性を表1に示す。
調製例1で調製した炭素前駆体15.0gを黒鉛製モールド(円柱形、内径35mmφ、高さ90mm)に入れ、35mmφの黒鉛製スペーサーで上下から炭素前駆体を挟み込んだ。試料を閉じ込めた黒鉛製モールドを、株式会社モトヤマ製ホットプレス炉MS−2159に入れ、毎分1Lの窒素流量下、毎分5℃の昇温速度で1250℃まで昇温した後、30分保持し、自然冷却した。昇温が始まった後、300℃到達時(昇温開始より1時間後)から1250℃保持終了時まで、ホットプレス炉付属のプレッサーにて、31MPaの一軸加圧を炭素前駆体に対し実施した。炉内温度が50℃以下に低下したことを確認し、炉内から炭素質材料を取り出した。回収された炭素質材料を、ミキサーミルを用いて粉砕し、13.3gの炭素質材料1を得た。炭素質材料1の炭素前駆体に対する回収率は89%であった。得られた炭素質材料1の物性を表1に示す。
実施例2
一軸加圧において、ホットプレス炉付属の油圧ポンプを用いず、プレッサーの上下位置調節機能のみを用いて加圧することで、0.11MPa以上0.5MPa以下の範囲で一軸加圧を炭素前駆体に対し実施した以外は実施例1と同様にして、13.3gの炭素質材料2を得た。炭素質材料2の炭素前駆体に対する回収率は89%であった。得られた炭素質材料2の物性を表1に示す。
一軸加圧において、ホットプレス炉付属の油圧ポンプを用いず、プレッサーの上下位置調節機能のみを用いて加圧することで、0.11MPa以上0.5MPa以下の範囲で一軸加圧を炭素前駆体に対し実施した以外は実施例1と同様にして、13.3gの炭素質材料2を得た。炭素質材料2の炭素前駆体に対する回収率は89%であった。得られた炭素質材料2の物性を表1に示す。
実施例3
調製例1で調製した炭素前駆体15.0gと、ポリスチレン1.5g(積水化成品工業株式会社製、平均粒子径400μm、残炭率1.2重量%)との混合物を焼成したこと以外は実施例1と同様にして、13.5gの炭素質材料3を得た。炭素質材料3の炭素前駆体とポリスチレンの合計量に対する回収率は82%であった。得られた炭素質材料3の物性を表1に示す。
調製例1で調製した炭素前駆体15.0gと、ポリスチレン1.5g(積水化成品工業株式会社製、平均粒子径400μm、残炭率1.2重量%)との混合物を焼成したこと以外は実施例1と同様にして、13.5gの炭素質材料3を得た。炭素質材料3の炭素前駆体とポリスチレンの合計量に対する回収率は82%であった。得られた炭素質材料3の物性を表1に示す。
実施例4
一軸加圧において、ホットプレス炉付属の油圧ポンプを用いず、プレッサーの上下位置調節機能のみを用いて加圧することで、0.11MPa以上0.5MPa以下の範囲で一軸加圧を炭素前駆体に対し実施した以外は実施例3と同様にして、13.5gの炭素質材料4を得た。炭素質材料4の炭素前駆体とポリスチレンの合計量に対する回収率は82%であった。得られた炭素質材料4の物性を表1に示す。
一軸加圧において、ホットプレス炉付属の油圧ポンプを用いず、プレッサーの上下位置調節機能のみを用いて加圧することで、0.11MPa以上0.5MPa以下の範囲で一軸加圧を炭素前駆体に対し実施した以外は実施例3と同様にして、13.5gの炭素質材料4を得た。炭素質材料4の炭素前駆体とポリスチレンの合計量に対する回収率は82%であった。得られた炭素質材料4の物性を表1に示す。
比較例1
調製例1で調製した炭素前駆体15.0gを黒鉛製モールド(円柱形、内径35mmφ、高さ90mm)に入れ、35mmφの黒鉛製スペーサーを炭素前駆体の下部には位置させるが上部には何も位置させなかった。試料を入れた黒鉛製モールドを、株式会社モトヤマ製ホットプレス炉MS−2159に入れ、毎分1Lの窒素流量下、毎分5℃の昇温速度で1250℃まで昇温した後、30分保持し、自然冷却した。炉内温度が50℃以下に低下したことを確認し、炉内から炭素質材料を取り出した。得られた炭素質材料5は13.2gであり、炭素質材料5の炭素前駆体に対する回収率は88%であった。炭素質材料5の物性を表1に示す。
調製例1で調製した炭素前駆体15.0gを黒鉛製モールド(円柱形、内径35mmφ、高さ90mm)に入れ、35mmφの黒鉛製スペーサーを炭素前駆体の下部には位置させるが上部には何も位置させなかった。試料を入れた黒鉛製モールドを、株式会社モトヤマ製ホットプレス炉MS−2159に入れ、毎分1Lの窒素流量下、毎分5℃の昇温速度で1250℃まで昇温した後、30分保持し、自然冷却した。炉内温度が50℃以下に低下したことを確認し、炉内から炭素質材料を取り出した。得られた炭素質材料5は13.2gであり、炭素質材料5の炭素前駆体に対する回収率は88%であった。炭素質材料5の物性を表1に示す。
比較例2
調製例1で調製した炭素前駆体15.0gと、ポリスチレン1.5g(積水化成品工業株式会社製、平均粒子径400μm、残炭率1.2重量%)との混合物を焼成したこと以外は比較例1と同様にして、13.3gの炭素質材料6を得た。炭素質材料6の炭素前駆体とポリスチレンの合計量に対する回収率は81%であった。得られた炭素質材料6の物性を表1に示す。
調製例1で調製した炭素前駆体15.0gと、ポリスチレン1.5g(積水化成品工業株式会社製、平均粒子径400μm、残炭率1.2重量%)との混合物を焼成したこと以外は比較例1と同様にして、13.3gの炭素質材料6を得た。炭素質材料6の炭素前駆体とポリスチレンの合計量に対する回収率は81%であった。得られた炭素質材料6の物性を表1に示す。
実施例5
調製例2で調製した炭素前駆体を使用したこと以外は実施例1と同様にして、12.4gの炭素質材料7を得た。炭素質材料7の炭素前駆体に対する回収率は83%であった。得られた炭素質材料7の物性を表2に示す。
調製例2で調製した炭素前駆体を使用したこと以外は実施例1と同様にして、12.4gの炭素質材料7を得た。炭素質材料7の炭素前駆体に対する回収率は83%であった。得られた炭素質材料7の物性を表2に示す。
実施例6
調製例2で調製した炭素前駆体15.0gと、ポリスチレン1.5g(積水化成品工業株式会社製、平均粒子径400μm、残炭率1.2重量%)との混合物を焼成したこと以外は実施例5と同様にして、12.6gの炭素質材料8を得た。炭素質材料8の、炭素前駆体及びポリスチレンの合計量に対する回収率は76%であった。得られた炭素質材料8の物性を表2に示す。
調製例2で調製した炭素前駆体15.0gと、ポリスチレン1.5g(積水化成品工業株式会社製、平均粒子径400μm、残炭率1.2重量%)との混合物を焼成したこと以外は実施例5と同様にして、12.6gの炭素質材料8を得た。炭素質材料8の、炭素前駆体及びポリスチレンの合計量に対する回収率は76%であった。得られた炭素質材料8の物性を表2に示す。
比較例3
調製例2で調製した炭素前駆体を使用したこと以外は比較例1と同様にして、12.4gの炭素質材料9を得た。炭素質材料9の炭素前駆体に対する回収率は83%であった。炭素質材料9の物性を表2に示す。
調製例2で調製した炭素前駆体を使用したこと以外は比較例1と同様にして、12.4gの炭素質材料9を得た。炭素質材料9の炭素前駆体に対する回収率は83%であった。炭素質材料9の物性を表2に示す。
比較例4
調製例2で調製した炭素前駆体15.0gと、ポリスチレン1.5g(積水化成品工業株式会社製、平均粒子径400μm、残炭率1.2重量%)との混合物を焼成したこと以外は比較例3と同様にして、12.7gの炭素質材料10を得た。炭素質材料10の、炭素前駆体及びポリスチレンの合計量に対する回収率は77%であった。得られた炭素質材料10の物性を表2に示す。
調製例2で調製した炭素前駆体15.0gと、ポリスチレン1.5g(積水化成品工業株式会社製、平均粒子径400μm、残炭率1.2重量%)との混合物を焼成したこと以外は比較例3と同様にして、12.7gの炭素質材料10を得た。炭素質材料10の、炭素前駆体及びポリスチレンの合計量に対する回収率は77%であった。得られた炭素質材料10の物性を表2に示す。
〔電極の作製〕
実施例1〜6で得た炭素質材料1〜4、7及び8、及び、比較例1〜4で得た炭素質材料5、6、9及び10をそれぞれ用いて、以下の手順に従って負極電極を作製した。
炭素質材料94質量部、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)6質量部に、NMP(N−メチルピロリドン)を混合してスラリーを得た。厚さ14μmの銅箔に、得られたスラリーを塗布し、乾燥後にプレスした後、直径14mmの円板状に打ち抜き炭素電極を得た。
実施例1〜6で得た炭素質材料1〜4、7及び8、及び、比較例1〜4で得た炭素質材料5、6、9及び10をそれぞれ用いて、以下の手順に従って負極電極を作製した。
炭素質材料94質量部、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)6質量部に、NMP(N−メチルピロリドン)を混合してスラリーを得た。厚さ14μmの銅箔に、得られたスラリーを塗布し、乾燥後にプレスした後、直径14mmの円板状に打ち抜き炭素電極を得た。
〔電池初期容量〕
上記で作製した負極電極を作用極とし、厚さ0.2mmの金属リチウム薄膜を直径15mmの円板状に打ち抜いたものを対極及び参照極として使用した。電解液として、ジエチルカーボネート(DEC)とエチレンカーボネート(EC)を容量比で1:1で混合した混合溶媒に1モル/リットルの割合でLiPF4を加えた溶液を使用した。セパレータとして、ポリプロピレン製微細孔膜を使用した。これらを用いて、アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で電気化学セルを作製した。
上記構成のリチウム二次電池について、充放電試験装置(東洋システム株式会社製「TOSCAT」)を用いて充放電試験を行った。リチウムのドーピングは、電流密度0.5mA/cm2で行い、リチウム電位に対して1mVになるまでドーピングした。このときの得られた容量(mAh/g)を充電容量とした。次いで、電流密度0.5mA/cm2で、リチウム電位に対して1.5Vになるまで脱ドーピングを行い、このとき得られた容量(mAh/g)を放電容量とした。得られた電池性能を表3に示す。
上記で作製した負極電極を作用極とし、厚さ0.2mmの金属リチウム薄膜を直径15mmの円板状に打ち抜いたものを対極及び参照極として使用した。電解液として、ジエチルカーボネート(DEC)とエチレンカーボネート(EC)を容量比で1:1で混合した混合溶媒に1モル/リットルの割合でLiPF4を加えた溶液を使用した。セパレータとして、ポリプロピレン製微細孔膜を使用した。これらを用いて、アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で電気化学セルを作製した。
上記構成のリチウム二次電池について、充放電試験装置(東洋システム株式会社製「TOSCAT」)を用いて充放電試験を行った。リチウムのドーピングは、電流密度0.5mA/cm2で行い、リチウム電位に対して1mVになるまでドーピングした。このときの得られた容量(mAh/g)を充電容量とした。次いで、電流密度0.5mA/cm2で、リチウム電位に対して1.5Vになるまで脱ドーピングを行い、このとき得られた容量(mAh/g)を放電容量とした。得られた電池性能を表3に示す。
7Li−固体NMRスペクトルにおいて40〜60ppmのケミカルシフトのピークを有する実施例1及び2で得た炭素質材料1及び2の吸湿量は、比較例1で得た当該所定のケミカルシフトのピークを有さない炭素質材料5と比べ大きく低減されていた。炭素質材料1及び2のd002が、炭素質材料5のd002と比較して小さかったことから、構造の緻密化が低吸湿化の一因であると考えられる。さらに、31MPaという高圧の加圧を行った実施例1で得た炭素質材料1では、真比重及び吸湿量が炭素質材料5と比較して顕著に増加しており、高圧での加圧により構造の緻密化がより進み、顕著な低吸湿化をもたらしたと考えられる。また、電池の充電容量及び放電容量は、炭素質材料1及び2を用いた場合と炭素質材料5を用いた場合とで同等の値であった。このことから、本発明の方法により製造した炭素質材料は、抑制された吸湿性を有しつつ、電池容量も維持していることがわかる。
7Li−固体NMRスペクトルにおいて40〜60ppmのケミカルシフトのピークを有する実施例3及び4で得た炭素質材料3及び4の吸湿量は、実施例1及び2で得た炭素質材料1及び2と同様に低減されており、比較例2で得た当該所定のケミカルシフトのピークを有さない炭素質材料6と比較して顕著に低減されていた。炭素質材料3及び4のd002が、炭素質材料6のd002と比較して小さかったことから、構造の緻密化が低吸湿化の一因であると考えられる。さらに、31MPaという高圧の加圧を行った実施例3で得た炭素質材料3では、真比重及び吸湿量が炭素質材料6と比較して顕著に増加しており、高圧での加圧により構造の緻密化がより進み、顕著な低吸湿化をもたらしたと考えられる。また、電池の充電容量及び放電容量は、炭素質材料3及び4を用いた場合と炭素質材料6を用いた場合とで同等の値であった。このことから、本発明の方法により製造した炭素質材料は、抑制された吸湿性を有しつつ、電池容量も維持していることがわかる。
7Li−固体NMRスペクトルにおいて40〜60ppmのケミカルシフトのピークを有する実施例5及び6で得た炭素質材料7及び8の吸湿量は、比較例3及び4で得た当該所定のケミカルシフトのピークを有さない炭素質材料9及び10と比較して顕著に低減されていた。炭素質材料7及び8のd002が、炭素質材料9及び10のd002と比較して小さかったことから、構造の緻密化が低吸湿化の一因であると考えられる。また、電池の充電容量及び放電容量は、炭素質材料7及び8を用いた場合と炭素質材料9及び10を用いた場合とで同等の値であった。このことから、本発明の方法により製造した炭素質材料は、抑制された吸湿性を有しつつ、電池容量も維持していることがわかる。
このように、本発明の方法により製造した炭素質材料は、抑制された吸湿性を有しつつ、電池容量も維持しているので、電気自動車用電池など非水電解質二次電池の炭素材等電子部品用炭素材として好適に用いることができる。また本発明の方法は、炭素前駆体の焼成時に炭素前駆体以外の材料を混合する吸湿抑制方法と併用することで、一層の吸湿性の抑制効果を発現できる。
Claims (15)
- 植物原料由来の炭素前駆体を焼成することによって得られる炭素質材料であって、満充電状態となるまでリチウムイオンがドープされた状態で測定した7Li−固体NMRスペクトルにおいて、塩化リチウムを基準として40〜60ppmのケミカルシフトのピークを有する、非水電解質二次電池用炭素質材料。
- 前記炭素質材料のJIS R 7222により測定した真比重は1.5〜1.8g/mLである、請求項1に記載の炭素質材料。
- 窒素吸着BET3点法により算出される前記炭素質材料の比表面積は1〜20m2/gである、請求項1又は2に記載の炭素質材料。
- 前記炭素質材料の平均粒子径は1〜20μmである、請求項1〜3のいずれかに記載の炭素質材料。
- 広角X線回折法においてBragg式を用いて算出される前記炭素質材料の(002)面の平均面間隔d002は0.37〜0.385nmである、請求項1〜4のいずれかに記載の炭素質材料。
- 前記炭素前駆体は椰子殻由来である、請求項1〜5のいずれかに記載の炭素質材料。
- 植物原料由来の炭素前駆体を大気圧を超える圧力下で焼成することによって得られる、請求項1〜6のいずれかに記載の炭素質材料。
- 植物原料由来の炭素前駆体を、1000〜1400℃で焼成することにより炭素質材料を得る、請求項1〜7のいずれかに記載の炭素質材料の製造方法。
- 前記焼成を、不活性ガスの存在下及び大気圧を超える圧力下で行う、請求項8に記載の炭素質材料の製造方法。
- 前記焼成を0.11MPa以上の圧力下で行う、請求項9に記載の炭素質材料の製造方法。
- 前記焼成を前記不活性ガスの非流通下で行う、請求項8〜10のいずれかに記載の炭素質材料の製造方法。
- 前記焼成を、前記炭素前駆体をハロゲン化合物を含有する気相中に暴露することにより炭素前駆体に含まれる金属元素及び/又は非金属元素の含有量を低下させた後に行う、請求項8〜11のいずれかに記載の炭素質材料の製造方法。
- 前記焼成を、前記植物原料を酸性溶液に浸漬することにより植物原料に含まれる金属元素及び/又は非金属元素の含有量を低下させた後に行う、請求項8〜11のいずれかに記載の炭素質材料の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の炭素質材料を含む非水電解質二次電池用負極。
- 請求項14に記載の非水電解質二次電池用負極を含む非水電解質二次電池。
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