以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
《第1実施形態》
図1は、本発明の実施形態に係る駆動ユニットを備えたインホイールモータの断面図である。本実施形態に係る駆動ユニットは、例えばインホイールモータに適用される。なお、以下の説明では、駆動ユニットをインホイールモータに適用する場合について説明するが、駆動ユニットはインホイールモータに限らず、動力伝達機構とモータを備えた他のユニットに適用してもよい。
図1に示すインホイールモータは、車体に接続された懸架装置(サスペンション)に支持されており、車輪のホイールに配置されている。インホイールモータは、電動モータ10及び動力伝達機構20を有している。また、インホイールモータは、ケース内に収容される軸受け等を潤滑するためのオイルと、当該オイルを潤滑するための潤滑機構を備えている。
電動モータ10は、動力伝達機構20を介して、動力を車輪に伝える駆動源である。電動モータ10は、ステータ11と、ロータ12を備えている。
ステータ11は、モータハウジング13の内壁に嵌合されることで固定されており、円環状に形成されている。ステータ11は、コアに巻き付けされたコイルを備えている。ステータ11は、エアギャップ31を介して、ロータ12の側壁に相当する外周部を覆うように、設けられている。交流電力がコイルに供給されることで、ステータ11は回転磁界を発生する。
ロータ12は、円環状のステータ11の内周にエアギャップ31を持たせつつ、ステータ11と同心になるように配置されている。また、ロータ軸12aが軸受け(ベアリング)31aで支持されることで、ロータ12は、モータハウジング13内で回転可能に支持されている。ロータ12は、ロータ軸12aと、鋼板12bと、当該鋼板12bを固定する固定部材12cを備えている。
ロータ12は、外周面に等間隔で配置された永久磁石を備えている。永久磁石は、ステータ11で発生した回転磁界によって、回転力を発生する。そして、ロータ12は、この回転力によって、ロータ軸12aの中心軸を回転軸として回転する。ロータ軸12aは、筒状に形成されており、内部には、オイルを流すための流路12dが形成されている。また、ロータ軸12aの端部には、オイルの流入口12eが設けられている。流入口12eが設けられる端部は、回転軸(重心軸)に沿う方向(図1のx軸方向)で、両端のうちの一方の端部となる。また、ロータ軸12aの他方の端部は、先端に向かって径が小さくなるように、形成されている。またロータ軸12aには、吐出口12fが形成されている。吐出口12fは、流入口12eから流路12dに入るオイルを、ロータ軸12aの外部に吐出する孔であって、管で形成されている。吐出口12fは、ロータ軸12aを支える軸受け32(ベアリング)を臨むように、配置されている。吐出口12fは、ロータ軸12aの先端部と、当該先端部と反対側の端部にそれぞれ設けられている。軸受け32は、ロータ軸12aを回転可能な状態で支持するベアリングである。吐出口12fから排出されたオイルは、軸受け32に直接当たり、軸受け32が潤滑される。なお、ロータ軸12aの内部に形成された潤滑機構の詳細は、後述する。
ロータ軸12aの先端部分には、モータ10の回転数を検出するためのセンサとして、レゾルバ33が設けられている。レゾルバ33の検出値は、後述するコントローラに出力される。ロータ軸12aの、オイル流入口12e側の端部には、入力ギア12gが形成されており、入力ギア12gは、動力伝達機構20のギア21と噛合している。
モータハウジング13は、ステータ11、ロータ12、軸受け32等を収容する筐体である。またモータハウジング13は、動力伝達機構20の一部を収容するための筐体としても機能する。
動力伝達機構20は、ギア21、22及び出力軸23を備えている。ギア21は、ギア22と噛合しており、ギア22と共に、一対の減速ギアを構成している。出力軸23は、ギア22と噛合しており、ギア22より伝わる動力を車輪に伝える。出力軸23は、タイヤ軸に相当する。出力軸23は車輪の中心軸と同軸である。ギアハウジング24は、ギア21、22及び出力軸23を収容する筐体である。ギアハウジング24は、モータハウジング13に接合されている。なお、モータハウジング13とギアハウジング24は一体のケースで構成されてもよい。
上記のとおり、動力伝達機構20は、ロータ軸12aと出力軸23との間で、動力を伝達するためのギア機構である。また、動力伝達機構20は、車高を規定する高さ方向(図1に示すz方向)で、ロータ軸12aの位置を、出力軸23に対してオフセットさせる機構でもある。すなわち、動力伝達機構20によって、ロータ軸12aは、図1のz方向で出力軸23よりも高い位置にある。
次に、図2を用いて、潤滑機構及びオイルの流れについて説明する。図2は、図1と同様な、インホイールモータの断面図であって、オイルの循環方向を示す矢印が図示されている。矢印A〜Fは、オイルの循環経路を表している。
潤滑機構は、モータ10の内部及び動力伝達機構20の内部をオイルで潤滑する機構である。ギアハウジング24の下部には、オイルを溜められる空間25が形成されている。当該空間25は、ギアハウジング24内におけるギア21の位置と、ギアハウジングの形状によって規定される。そして、ギア21が、比較的高回転で回転すると、ギアハウジング24の下部に溜められたオイルが、ギア21の回転と共に、ギアハウジング24内の上部に掻き上げられる(図2の矢印Aに相当)。上部に掻き上げられたオイルは、ロータ軸12aの付近に設けられたオイルキャチャ(図2では図示していない)で回収される(図2の矢印Bに相当)。なお、オイルキャッチャの構成は後述する。
オイルキャッチャに溜まったオイルは、オイルキャッチャとロータ軸12aの内部とをつなげる流路を通って、オイルキャッチャからロータ軸に流れる(矢印Cに相当)。これにより、オイルがロータ軸12aの内部に導かれる。
ロータ軸12a内に流れたオイルは、ロータ軸12aの内部に形成されている流路を流れ、ロータ軸12aの先端部分に向かう(矢印Dに相当)。ロータ軸12aの内部に溜まったオイルは、ロータ軸12aの回転で生じる遠心力によって、ロータ軸12aの径方向に押し出され、オイル吐出口12fからロータ軸12aの外部に飛散する(矢印Eに相当)。そして、オイル吐出口12fの付近に配置された軸受け32がオイルで潤滑される。
オイル吐出口12fから飛散したオイルは、落下し、モータハウジング13の下部に溜められる。モータハウジング13とギアハウジング24との間には、連通口が形成されている。連通口は、モータハウジング13の内部とギアハウジング24の内部を連結する孔であって、モータ10の下部に設けられている。また、図2に示すz方向で、モータ10の位置は、動力伝達機構20よりも高い位置にある。そのため、モータハウジング13に多くのオイルが溜まった場合には、オイルは、モータ10の下部から連通口を介してギアハウジング24内に流れる(矢印Fに相当)。これにより、オイルが、駆動ユニット内で循環している。
次に、駆動ユニットの構成のうち、オイルの潤滑に関する詳細な構成について、以下に説明する。
図3は、モータ10と動力伝達機構20の側面図であって、(a)は、車両が水平状態である場合の駆動ユニットとオイル面との関係を示す図であり、(b)は車両が水平状態である場合の駆動ユニットとオイル面との関係を示す図である。ただし、図3において、動力伝達機構20の一部は断面図で示されている。αは出力軸23(タイヤ軸)に対するロータ軸12aの配置角を示し、θは登坂角を示す。配置角は、出力軸23又はロータ軸12aに対して垂直な面(yz面)において、車両の水平方向に沿う線と、出力軸23の軸心とロータ軸12aの軸心とを結んだ線との間に形成される角度で表される。また、登坂角は、道路勾配に相当し、水平方向と垂直方向との間に形成される角度で表される。また図3(a)に示す状態は、車両が水平な道路を走行又は停車しているときの状態を示す。図3(b)に示す状態は、車両が、車両の前方が車両の後方よりも高くなるような道路を、走行又は停車しているときの状態を示す。また点線Pはオイル面を示す。
図3に示すように、車両が水平状態の場合と比較して、車両が傾斜状態である場合には、オイル面の位置がロータ軸12aに近づいており、モータハウジング13内におけるオイル面の高さが高くなる。
図4は、モータハウジング13及びギアハウジング24の内部におけるオイル面の高さの関係を示す模式図であり、(a)は車両が水平状態である場合のオイル面の高さを表し、(b)は車両が傾斜状態である場合のオイル面の高さを表している。図4(a)の水平状態は、図3(a)の水平状態と対応しており、図4(b)の傾斜状態は、図3(b)の傾斜状態と対応している。また図4は、モータ10及び動力伝達機構20を模式的に示している。直線Pはオイル面を示している。
モータハウジング13とギアハウジング24との間には、連通口34が形成されている。連通口34は、z方向で、ロータ軸12aの中心軸よりも低い位置に形成されている。また、z方向の高さで、エアギャップ31の位置が、連通口34の上端と下端との間となるように、連通口34が形成されている。
図4(a)に示すように、車両が水平状態である場合には、モータハウジング13内におけるオイル面の高さは低く、オイル面はエアギャップ31よりも低い。一方、図4(b)に示すように、車両が傾斜状態である場合には、モータハウジング13内におけるオイル面の高さは、図4(a)に示すオイル面よりも高く、オイル面はエアギャップ31の位置よりも高い位置にある。
すなわち、傾斜角θが大きくなると、ギアハウジング24内のオイルが溜まる部分の位置が、水平状態と比べて、相対的に高くなる。一方、傾斜角θが大きくなると、モータハウジング13内のオイルが溜まる部分の位置が、水平状態と比べて、相対的に低くなる。言い替えると、傾斜角θが大きくなるほど、ロータ軸12aの中心軸の位置が相対的に低くなり、かつ、出力軸23の中心軸の位置が高くなる。そのため、車両が傾斜状態である場合には、ギアハウジング24内の下部に溜まっていたオイルが、連通口34を介して、モータハウジング13内に流れるため、モータハウジング13内のオイル面の位置が高くなる。
車両が水平状態である場合には、オイル面がエアギャップ31よりも低くなり、エアギャップ31はオイルで満たされない。そのため、モータ10の高回転時に、オイルの攪拌による損失を抑制することができる。例えば、車両が高速で走行している場合には、車両は略水平状態が保たれる。そして、このような場合には、モータ10は高回転で駆動しているが、本実施形態では、エアギャップ31がオイルで満たされないため、ロータ12が高速で回転しても、オイルの攪拌による損失を抑制できる。
一方、車両が傾斜状態である場合には、オイル面がエアギャップよりも高くなり、エアギャップがオイルで満たされる。そのため、ロータ12の回転により、オイルが跳ね上がることで、軸受け32がオイルで潤滑される。
モータ10の低回転時には、オイルは、ギア21で十分に掻き上げられず、オイルキャッチャまで到達しない。例えば、車両が低速で登坂路を走行しており、モータ10に対して高負荷が求められる場合に、エアギャップ31がオイルに満たされ、オイルがロータ12の回転とともに跳ね上げられることで、軸受け32の潤滑性能を確保できる。
次に、図5及び図6を用いて、連通口34とオイル面との関係について説明する。図5は、モータハウジング13の斜視図である。図6は、モータハウジング13の側面図である。P1は車両が水平状態である場合のオイル面を示し、P2は車両が傾斜状態である場合のオイル面を示す。
連通口34、35は、モータハウジング13の内部とギアハウジング24の内部との間で、オイルを行き来するための孔である。連通口34は、ロータ軸12aよりも下方の位置に形成されている。車両が走行する路面の登坂角θに応じて、オイル面の高さは変化する。このとき、オイル面は、連通口34の開口部分の範囲内で上下する。言い替えると、所定の範囲内をとる登坂角θに対して、オイル面は、連通口34の開口部分の範囲内で変化する。登坂角θの所定の範囲は、車両が走行する際に想定される登坂角の範囲である。
図6の直線P1で示すように、車両が水平状態である場合に、オイル面は、連通口34の上端と下端との間に位置する。また、図6の直線P2で示すように、車両が傾斜状態である場合も、オイル面は、連通口34の上端と下端との間に位置する。これにより、車両が水平状態である場合、又は、車両が傾斜状態である場合、いずれの場合でも、連通口34の開口部分のうち、オイル面よりも上部の部分が開口している。そして、オイル面よりも上部の開口部分が空気の通り道となる。そのため、モータハウジング13とギアハウジング24との間で、圧力差が生じにくくなり、モータハウジング13とギアハウジング24との間で、オイルが行き来しやすくなる。また、車両が水平状態から登坂状態になった場合に、オイルが、ギアハウジング24の内部からモータハウジング13の内部に流れ易くなる。そして、車両が水平状態から傾斜状態になった時より軸受け32が潤滑されるまでの時間も短くできる。その結果として、軸受け32の潤滑性能を高めることができる。
次に、図7及び図8を用いて、ギアハウジング24の内周の形状とオイルキャッチャ36について、説明する。図7は、インホイールモータの断面図である。図8は、モータ10と動力伝達機構20とを重ねた図である。
ギアハウジング24の形状は、オイル面が車両の状態に応じて以下の条件を満たすように形成されている。ギアハウジング24の内周の形状を規定するための条件について、車両が傾斜状態である場合のギアハウジング24内のオイル面の面積は、車両が水平状態である場合のギアハウジング内のオイル面の面積よりも小さい。具体的には、車両が水平状態である場合のオイル面(P1)と、車両が傾斜状態である場合のオイル面(P2)との間に形成される空間であって、モータ10(又は、オイルキャッチャ36)に近い側のギアハウジング24の内壁24aとギア21との間に形成される空間をS1とし、モータ10(又は、オイルキャッチャ36)から遠い側のギアハウジング24の内壁24bとギア21との間に形成される空間をS2とする。この場合に、空間S1が空間S2よりも小さい。これにより、車両が傾斜状態になると、モータ10に近い側の空間において、オイル面が高くなる。さらに、モータに近い側の空間S1が空間S2よりも小さいため、よりオイル面が高くなり易くなる。その結果として、オイルがモータハウジング13の内部に流れ易くなり、エアギャップ31がオイルに満たされ、潤滑性能を高めることができる。
モータ10に近い側のギアハウジング24の内壁24aは、モータ10に対して遠い側のギアハウジング24の内壁24bよりも、ギア21との距離が近い。すなわち、内壁24aはギア21と近接しており、内壁24bはギア21と近接していない。また内壁24aは、ギア21に近接した位置からオイルキャッチャ36に向かう方向に沿った面で形成されている。言い替えると、ギアハウジング24を断面でみたときに、内壁24aは、ギア21に近接した位置からオイルキャッチャ36まで略直線になるように、形成されている。高回転時には、内壁24aがオイルのガイド面として機能するため、オイルがオイルキャッチャ36まで導き出され易くなる。
オイルキャッチャ36は、モータ10に近い側のギアハウジング24の内壁24aに沿う方向であって、ギア21及びロータ軸12aよりもz方向で高い位置に形成されている。オイルキャッチャ36は、ギア21で跳ね上げられたオイルを溜める部分である。またオイルキャッチャ36とロータ軸12aとの間には流路37が形成されている。流路37は、オイルキャッチャ36に溜まるオイルをロータ軸12aに流すための管であり、オイルキャッチャ36とロータ軸12aと間をつなげる。
高回転時には、ギア21で掻き上げられたオイルが、内壁24aを沿って上昇し、オイルキャッチャ36に溜まる。そして、オイルは、流路37を流れて、ロータ軸12aに流れる。ロータ軸12aの回転により、オイルは、吐出口12hから吐出され、軸受け32aを潤滑した後に、モータハウジング13の下部に溜まる。ギアハウジング24の内壁を上記のように形成することで、オイル面は、ギアハウジング24よりもモータハウジング13の方が高くなりやすくなる。そのため、オイルは、連通口34を通って、モータハウジング13からギアハウジング24へ流れ易くなる。
一方、車両が傾斜状態であり、モータ10が低回転の時には、上記のギアハウジング24の形状によって、オイル面は、モータハウジング13よりもギアハウジング24の方が高くなり易くなる。そのため、オイルは、連通口34を通って、ギアハウジング24からモータハウジング13へ流れ易くなる。
次に、ロータ12に設けられた、跳ね上げ機構について説明する。図9(a)は固定部材12cの側面図である。図9(b)は、矢印Aで示す部分の断面図であって、固定部材12cの一部断面図である。
固定部材12cの円形状の外周には、複数の跳ね上げ部材12iが設けられている。跳ね上げ部材12iは、固定部材12cの表面(xz平面に沿う面)から、固定部材12cの内部に向けて陥没した孔によって構成されている。また、孔は、側壁と底面で囲われており、孔により形成される空間は柱状になっている。そして、孔によって形成される空間の中心軸L3、すなわち側壁に沿った方向の軸は、ロータ12の回転軸の軸方向(x軸の方向)に対して傾いている。
モータハウジング13の下部にオイルが溜まり、ロータ12の外周の一部分がオイルに浸かると、オイルは、跳ね上げ部材12iである孔に流入する。この状態で、ロータ12が回転すると、オイルは、跳ね上げ部材12で捕まえられた状態となり、ロータ軸12aよりも上部まで持ち上げられて、ロータ12の上部で放出される。これにより、放出されたオイルが軸受け32に直接あたり、または、オイルがオイルキャッチャ36に溜まりやすくなる。
跳ね上げ部材12がオイル溜まりとして機能するため、モータ10の低回転時でも、オイルをロータ軸12aよりも上側にもっていくことができる。そのため、ロータ12の回転によるオイルの飛散に加えて、オイルを、ロータ軸よりも上の位置から軸受け32に向かって直接当てることもできる。その結果として、軸受け32の潤滑性能を高めることができる。
次に、図10A〜図10Cを用いて、ロータ軸12aの構成について説明する。図10Aは、ロータ軸12aの斜視図である。ただし、図10Aは、ロータ軸の外管101の半分をきった状態を示している。図10Bは、ロータ軸12aを半分にきった状態の斜視図である。図10Cは、図10AのIX−IX線に沿う断面図である。
ロータ軸12aは、外管101と、内管102と、仕切り板103a〜103cと、連通口104a、104bとを備えている。外管101は、円筒状に形成されている。外管101には、複数の吐出口12fが設けられている。ロータ軸12aの回転軸に対して垂直な方向(z方向)で、ロータ軸12aの外部を向いた複数の吐出口12fの開口が、互いに逆方向になるように、形成されている。図10Aの例では、上側の吐出口12fは、z軸の正方向を向いており、下側の吐出口12fは、z軸の負方向を向いている。すなわち、複数の吐出口12fは、ロータ12の回転軸に対して垂直な方向で、当該回転軸を介して互いに対向する位置に配置されている。
内管102は、円筒状に形成され、外管101よりも径の小さい管であって、外管101の中に設けられている。外管101と内管102は同心軸になるように、配置されている。
仕切り板103a〜103cは、外管101の中に形成されている空間を仕切る板である。仕切り板103a、103bは、円盤状の一部を切り欠いた形状に形成されている。仕切り板103cは円盤状に形成されている。仕切り板103aは、内管102の一端に設けられており、仕切り板103cは、内管102の他端に設けられている。仕切り板103bは、内管102の中心軸(ロータ軸の回転軸、図10A〜10Cのx軸)に沿う方向で、仕切り板103aと仕切り板103cとの間に設けられている。また、yz面でみたときに、仕切り板103a〜103cの円盤部分の直径は、内管102の外径よりも大きく、外管101の内径とほぼ同じ大きさである。
連通口104aは、仕切り板103aの切り欠き部分により形成される孔である。連通口104bは、仕切り板103bの切り欠き部分により形成される孔である。連通口104aは、ロータ軸12aの回転軸に対して垂直な面(yz)面に沿う方向で、当該回転軸を介して、吐出口12f(図10A、図10Bにおいて、オイルの排出方向が、z軸の正方向となる吐出口)の反対側に配置されている。また、連通口104bは、ロータ軸12aの回転軸に対して垂直な面(yz)面に沿う方向で、当該回転軸を介して、吐出口12f(図10A、図10Bにおいて、オイルの排出方向が、z軸の負方向となる吐出口)の反対側に配置されている。言い替えると、連通口104aは、吐出口12f(図10A、図10Bにおいて、オイルの排出方向が、z軸の正方向となる吐出口)とは逆位相の位置に設けられており、連通口104bは、吐出口12f(図10A、図10Bにおいて、オイルの排出方向が、z軸の負方向となる吐出口)とは逆位相の位置に設けられている。位相は、yz平面でみたときに、回転軸を中心として回転したときの、連通口104a、bと吐出口12fの角度に相当する。
仕切り板103cが設けられている、内筒103の一方の端部には、オイル排出口107が形成されている。また内筒103の他方の端部には、オイル流入口105が形成されている。
また、内管102には、複数の吐出口106が設けられている。図10A、図10Bの例では吐出口106は、4個である。複数の吐出口106は、外管101の内壁と内管102の外壁との間に形成される空間と、内管102の中に位置する空間とを連通させるための孔である。2個の吐出口106が、仕切り板103aと仕切り板103bとの間に形成されており、2個の吐出口106が、仕切り板103bと仕切り板103cとの間に形成されている。仕切り板103aと仕切り板103bとの間に形成される2個の吐出口106のうち、一方の吐出口106は、仕切り板103aと連通口104bとの間に形成され、他方の吐出口106は、仕切り板103bと連通口104aとの間に形成される。また、仕切り板103bと仕切り板103cとの間に形成される2個の吐出口106のうち、一方の吐出口106は、仕切り板103cと連通口104bとの間に形成され、他方の吐出口106は、仕切り板103bと仕切り板103cとの間に形成される。
外管101と内管102は互いに固定されているため、ロータ12が回転すると、外管101と内管102は同様に回転する。ロータ12の回転中、オイルはオイル流入口105から内管102の中に入り、オイル排出口107から排出される。そして、内筒12から排出されたオイルは、吐出口12fから吐出される。また、内管102の中のオイルは、ロータ軸12の回転によって、吐出口106からも吐出して、外管101の内壁と内管102の外壁と間に形成される空間内に流れ込む。
次に、ロータ12が停止したときのロータ軸12aの内部の状態について、図11〜図13を用いて説明する。図11は位相が0度の場合のロータ軸の状態を示し、図12は位相が180度の場合のロータ軸の状態を示し、図13は位相が90度の場合のロータ軸の状態を示す。図11(a)、図12(a)、図13(a)は、ロータ軸12aの断面図である。図11(b)は、図11(a)のXI−XI線に沿う断面図であり、図12(b)は、図12(a)のXII−XII線に沿う断面図であり、図13(b)は、図13(a)のXIII−XIII線に沿う断面図である。なお、図11〜図13のドットで示すハッチングは、オイルを表している。
位相(0度)は、yz面でみたときに、ロータ軸12aの先端に近い方に位置する吐出口12fのオイルの排出方向が、z軸の正方向となる場合を示す。位相(90度)は、yz面でみたときに、ロータ軸12aの先端に近い方に位置する吐出口12fのオイルの排出方向が、y軸の正方向となる場合を示す。また、位相(180度)は、yz面でみたときに、ロータ軸12aの先端に近い方に位置する吐出口12fのオイルの排出方向が、z軸の負方向となる場合を示す。
図11に示すように、位相が0度の時には、オイルは、仕切り板103aと仕切り板103bとの間の空間と、仕切り板103aと外管101の先端部分の内壁との間の空間に溜まる。
図12に示すように、位相が180の時には、オイルは、仕切り板103aと仕切り板103cとの間の空間に溜まる。
図12に示すように、位相が90度の時には、オイルは、外管101の先端部分の内壁と仕切り103cとの間の空間に溜まる。
このように、本実施形態では、ロータ12が停止したときに、位相がどのような位相であっても、ロータ軸12aの中にオイルを溜めることができる。そして、車両が停車している状態から発進した場合には、ロータ軸12aの中に溜まっていたオイルが、回転と共に、連通口104a、104bを通って、他の空間に導かれ、吐出口12fから吐出されるため、軸受け32aを潤滑できる。
モータ10の回転数が低いときには、オイルがギアの回転により掻き上げられないため、オイルキャッチャ36内のオイルが不足する。そのため、本実施形態では、ギアが回転し始めて、オイルの掻き上げ可能な回転となるまでは、ロータ軸12aの中に溜まったオイルによって、軸受け32aを潤滑できる。
本実施形態では、オイルの流路となるロータ軸12aを、ロータの回転軸を軸心とした筒状の外管101、外管101の内部空間を仕切る仕切り板103a〜103c、及び、仕切り板103a、103bで区切られた隣り合う空間の間を連通させる連通口104a、104bをロータ軸に設ける。そして、内部空間内のオイルをロータ軸12aの外側に吐出させるオイル吐出口12fを外管101に設ける。これにより、モータ10の停止中には、ロータ軸12aの中にオイルが溜まる。そしてロータ軸12aが回転すると、オイルは連通口104a、104bを通って他の空間(部屋)にも供給されるため、ギヤ21の回転数が、オイル掻き上げを可能とする回転数に至るまでの時間、ベアリング潤滑性を確保できる。
また本実施形態では、ロータ12の回転軸に対して垂直な面に沿う方向で、回転軸を介してオイル吐出口12fの反対側に、連通口104aを配置する。これにより、モータ10の停止中には、ロータ軸12aの中にオイルが溜まる。そしてロータ軸12aが回転すると、オイルは連通口104a、104bを通って他の空間(部屋)にも供給されるため、ギア21の回転数が、オイル掻き上げを可能とする回転数に至るまでの時間、ベアリング潤滑性を確保できる。
また本実施形態では、ロータ軸12aの回転軸に沿う方向で、複数のオイルの吐出口12fの間に、複数の仕切り板103a、103bを配置する。これにより、ロータ軸12内に溜まるオイル量を確保できる。
また本実施形態では、ロータ軸12aの回転軸で回転する方向で互いの位相が異なるように、複数のオイルの吐出口12fを配置する。これにより、吐出口12fが上側(図11〜図13でz軸の正方向)にある場合には、当該吐出口12fの下側に位置する空間に、オイルを溜めることができる。そのため、ロータ軸12a内に溜まるオイル量を確保できる。
次に、図14〜図16を用いて、駆動ユニットの制御について説明する。図14は、駆動ユニットの構成のうち制御に関する構成を示したブロック図である。図15は、モータの回転数に対するオイルの供給量Qinの特性を示すグラフである。図16は、コントローラ200の制御フローを示すフローチャートである。
図14に示すように、駆動ユニットを制御するために、コントローラ200が設けられている。コントローラ200は、オイルキャッチャ36に溜まっているオイル量に応じて、モータ10のトルクを制御する制御装置である。コントローラ200は、オイル量推定部201とトルク制限部202を有している。
オイル量推定部201は、レゾルバ33により検出されたロータ12の回転数に基づき、オイルキャッチャ36に溜まっているオイル量(オイル溜まり量)を推定する。トルク制限部202は、オイル量推定部201により推定されたオイル量が所定の制限値以下である場合には、モータ10のトルクに制限をかける。
ここで、モータ10の回転数Nと、オイルの供給量Qinとの関係について説明する。オイルの供給量Qinは、ギア21で掻き上げられて、オイルキャッチャ36に至るオイル量である。
図15に示す菱形は、回転数Nに対する供給量Qinの実験結果をプロットしたものである。そして、プロットしたデータに基づき、グラフを描くと、図15のグラフが得られる。回転数Nが回転数N1よりも小さい場合(回転数が低速域の場合)には、供給量Qinは、ゼロになる(Qin=0)。一方、回転数Nが回転数N1以上から回転数N2以下の範囲内である場合(回転数が中速域の場合)には、供給量Qinは、回転数に比例した値で表される。式で表すと、Qin=A×N−Bとなる。ただし、A、Bは所定の定数であって、実験により得られる値である。回転数Nが回転数N2よりも大きい場合(回転数が高速域の場合)には、供給量Qinは、所定の上限値(C)となる。ただし、Cは所定の係数であって、実験により得られる値である。
すなわち、モータ10の回転数と供給量Qinとの間には相関関係があり、モータ10の回転数の変化に対して、供給量Qinは一定の範囲内(0からCの範囲内)で変化する。
次に、図16を用いて、コントローラ200の具体的な制御フローを説明する。図16に示す制御フローは所定の周期で繰り返し行われている。
ステップS1にて、オイル量推定部201は、供給量Qinを推定する。オイル量推定部201は、モータ10の回転数に応じて、供給量Qinを演算するための演算モードを、以下のステップS2〜S4の制御フローのように切り替えた上で、供給量Qinを演算する。モータ10の回転数が所定値(N1)より小さい場合には、ステップS2にて、オイル量推定部201は、供給量Qinをゼロ(下限値)として演算する。モータ10の回転数が所定値(N1)より小さい場合には、ギアの回転では、オイルを上部に掻き上げることができないため、供給量Qinはゼロとなる。
モータ10の回転数が、回転数(N1)から所定値(N2)までの範囲内である場合には、ステップS3にて、オイル量推定部201は、演算式(Qin=A×N―B)を用いて、供給量Qinを演算する。モータ10の回転数を所定値(N2)より大きい場合には、ステップS4にて、オイル量推定部201は、供給量QinをC(上限値)として演算する。モータ10の回転数を所定値(N2)より大きくしたとしても、ギアで掻き上げるオイル量には上限があり、供給量QinはC(上限値)となる。
ステップS5にて、オイル量推定部201は、オイルキャッチャ36に溜まっているオイル量の変化量(ΔQ)を、QinとQoutとの差分をとることで演算する(ΔQ=Qin−Qout)。Qoutは、オイルキャッチャ36からロータ軸12に流れるオイル量であって、流路37の形状等により予め決まる値である。
ステップS6にて、オイル量推定部201は、前回の制御フローで演算した、オイルキャッチャ36に溜まっているオイル量QT−1に変化量(ΔQ)を加算することで、現在、オイルキャッチャ36に溜まっているオイル量QTを演算する(QT=QT−1+ΔQ)。これにより、オイル量推定部201は、演算によりオイルキャッチャ36に溜まっているオイル量QTを推定し、推定結果をトルク制限部202に出力する。
ステップS7にて、トルク制限部202は、オイル量QTがオイルキャッチャ36の容量(Qmax)未満であるか否かを判定する。
オイル量QTが容量(Qmax)未満である場合には、ステップS8にて、トルク制限部202は、オイル量QTがオイル量の制限値(Qlim)以下であるか否かを判定する。制限値(Qlim)は、トルク制限を行うか否かを判断するための閾値である。
そして、オイル量QTがオイル量の制限値(Qlim)以下である場合には、ステップS9にて、トルク制限部202は、現在のトルクがトルク制限値(Tlim)以上であるか否かを判定する。現在のトルクがトルク制限値(Tlim)以上である場合には、トルク制限部202は、モータ10の出力トルクをトルク制限値(Tlim)に制限する。
ステップS8の判定で、オイル量QTがオイル量の制限値(Qlim)より大きいである場合、又は、ステップS9の判定で、現在のトルクがトルク制限値(Tlim)未満である場合には、トルク制限部202は、モータ10の出力トルクに制限をかけない。
また、ステップS7の判定で、オイル量QTが容量(Qmax)以上である場合には、オイル量推定部201は、現在のオイル量QTを容量(Qmax)として推定する。すなわち、オイルキャッチャ36から溢れたオイルは、ギアハウジング24の下部に戻るため、現在のオイル量QTは容量(Qmax)となる。
上記のように本実施形態では、モータの回転数に基づきオイルキャッチャ36に貯まっているオイル溜まり量を推定し、オイル溜まり量が所定の閾値以下である場合に、モータ10のトルクを制限する。これにより、軸受32の摩擦が高くなることを抑制できる。
また本実施形態では、オイルキャッチャ36に溜まるオイルの上限値を予め設定し、上限値以下の範囲内で、オイル溜まり量を推定する。これにより、オイル溜まり量の推定精度を上げることができる。
また本実施形態では、モータ10の回転数に応じて、オイル溜まり量を推定するための演算モードを切り替える。これにより、回転数に応じたギヤ21のオイル掻き上げ特性に応じてオイル溜まり量を推定できるため、オイル溜まり量の推定精度を上げることができる。
また本実施形態では、モータ10の回転数が低速域の範囲内である場合には、所定の範囲の下限値(0)をオイルの供給量(Qin)として演算し、モータ10の回転数が中速域の範囲内である場合には、モータ10の回転数に比例した値をオイルの供給量(Qin)として演算し、モータ10の回転数が高速域の範囲内である場合には、所定の範囲の上限値(C)をオイルの供給量(Qin)として演算する。これにより、簡単な式で各回転数領域のオイルの供給量(Qin)を演算できる。
また、コントローラ200は、モータ10の回転数を検出するためのセンサ(レゾルバ)を用いて、オイル溜まり量を推定する。これにより、新たなセンシング手段を設けずに、オイル溜まり量を推定できる。
なお、オイル量推定部201はマップを用いた演算により、現在の供給量Qinを演算してもよい。オイル量推定部201には、モータ10の回転数と供給量Qinとの間の相関関係を示すマップが予め保存されている。当該マップは、実験により得ることができる。そして、オイル量推定部201は、レゾルバ33を用いて、モータ10の回転数を検出し、マップを参照して、検出した回転数に対応する供給量を、現在の供給量として演算する。
なお、本実施形態では、ロータ12の回転軸に対して垂直な面に沿う方向で、回転軸を介してオイル吐出口12fの反対側に、連通口104aを配置したが、連通口104aは、回転軸を介してオイル吐出口12fの反対側の位置でなくてもよい。すなわち、ロータ12の回転軸でみたときに、連通口104aの位置に相当する角度と、オイル吐出口12fの位置に相当する角度が異なればよい。角度は、ロータ軸12aの回転角に相当する。
なお、本実施形態では、オイルキャッチャ36をモータハウジング13に設けたが、ギアハウジング24内に設けてもよい。
《第2実施形態》
図17は、発明の他の実施形態に係るインホイールモータの断面図である。本実施形態では上述した第1実施形態に対して、オイルキャッチャ36とロータ軸12aとを接続する流路、及び、トルク制限部202の一部の制御が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、その記載を援用する。
図17に示すように、本実施形態では、オイルキャッチャ36とロータ軸12aとを接続する流路371、372が複数設けられている。流路371は、オイルキャッチャ36からロータ軸12に、流入量(Qa)でオイルを流す。流路372は、オイルキャッチャ36からロータ軸12aに、流入量(Qb)でオイルを流す。オイルキャッチャ36は、z方向で、ロータ軸12aよりも高い位置にある。そのため、流路371、372の両端にそれぞれ設けられている開口のうち、オイルキャッチャ36を臨むように形成された孔が、オイルの入口となる。
流路371の入口は、z方向(オイルキャッチャ36のオイル面の高さ方向)で、流路372の入口よりも高い位置にある。オイルキャッチャ36内のオイル面の高さが、流路371の入口の位置よりも高い場合には、オイルキャッチャ36内のオイルは、流路371及び流路372を通って、ロータ軸12aに流れる。そのため、オイルキャッチャ36からロータ軸12aに供給されるオイルの供給量は、流入量(Qa)に流入量(Qb)を加えた量になる。
オイルキャッチャ36内のオイル面の高さが、流路371の入口の位置よりも低く、かつ、流路371の入口の位置よりも高い場合には、オイルキャッチャ36内のオイルは、流路371を通らず流路372のみを通って、ロータ軸12aに流れる。そのため、オイルキャッチャ36からロータ軸12aに供給されるオイルの供給量は、流入量(Qb)となる。
次に、モータの回転数とオイルの供給量(Qin)との関係について、図18を用いて、説明する。図18は、モータの回転数に対するオイルの供給量Qinの特性を示すグラフである。
モータ回転数とオイルの供給量Qinとの間には、第1実施形態における図15のグラフで示した相関性と、同様の相関性がある。そして、オイルの供給量(Qin)が流入量(Qb)となるときの回転数をNbとすると、回転数(Nb)は、回転数(N1)からN2までの間の一次関数のグラフと、Qin=Qbのグラフとの交点で表される。すなわち、回転数(Nb)は、オイル供給量(Qin)が第2流入量(Qb)となるときのモータ回転数である。
次に、図19を用いて、コントローラ200の制御フローを説明する。ステップS1からステップS11までの制御フローは、第1実施形態に係るステップS1からステップS11までの制御フローと同様である。ただし、ステップS10の制御フローにて制限されるトルク制限値を、Tlim1とする。
ステップS8の判定で、オイル量QTがオイル量の制限値(Qlim)より大きい場合には、トルク制限部202は、モータ10の現在の出力トルクとトルク判定閾値(Tc)とを比較し、かつ、モータ10の現在の回転数と回転数(Nb)とを比較する。そして、現在の出力トルクがトルク判定閾値(Tc)以上であり、かつ、現在の回転数が回転数(Nb)以下である場合には、トルク制限部202は、モータ10の出力トルクをトルク制限値(Tlim2)に制限する。トルク制限値(Tlim2)はトルク制限値(Tlim1)よりも高いである。すなわち、ステップS13の制御フローにおいて制限されるトルクの制限量は、ステップS10の制御フローにおいて制限されるトルクの制限量よりも小さい。
ステップS12の判定で、現在の出力トルクがトルク判定閾値(Tc)未満である場合、又は、現在の回転数が回転数(Nb)より大きい場合には、トルク制限部202は、現在のトルクに制限をかけない。
図20を用いて、モータ10の回転数(N)と出力トルク(T)の関係について説明する。図20は、回転数(N)に対する出力トルク(T)の特性を示すグラフである。
オイルキャッチャ36に溜まっているオイル量(QT)が制限値(Qlim)より大きい状態で、モータ10の回転数が下がり、回転数が回転数(Nb)以下になったとする。この場合に、オイル量(QT)は制限値(Qlim)大きいが、ギア21の回転によりオイルキャッチャ36に供給されるオイルの量は少なく、オイルキャッチャ36に溜まっているオイルは流路371、372を通ってロータ軸12aに流れ、オイルキャッチャ36に溜まっているオイル量が減少する。そのため、本実施形態では、オイル量(QT)が制限値(Qlim)以下になる前に、モータ10の出力トルクをトルク制限値(Tlim2)に制限する(図20に示す領域R2に相当)。そして、オイル量(QT)がさらに小さくなり制限値(Qlim)未満となった場合には、モータ10の出力トルクをトルク制限値(Tlim1)に制限する(図20に示す領域R1に相当)。これにより、領域R1で示されるトルクの制限量の大きい制御が作動するシーンを低減することができる。その結果として、軸受32の摩擦が高くなることを抑制できる。
上記のように本実施形態では、オイル量(QT)が制限値(Qlim)以下である場合には、モータ10のトルクを第1制限値(Tlim1)に制限し、オイル量(QT)が制限値(Qlim)より大きく、モータ10の出力トルクがトルク(Tc)以上であり、かつ、モータ10の回転数が回転数(Nb)以下である場合には、トルクを、第1制限値(Tlim1)より大きい第2制限値(Tlim2)に制限する。これにより、第1制限値(Tlim1)のトルク制限が作動するシーンを低減できる。
また本実施形態では、オイルキャッチャ36とロータ軸12aとの間に、流路371、372を接続し、ギア21の回転によりオイルキャッチャ36に供給されるオイル供給量が流入量(Qb)となるモータ回転数(Nb)を、第2制限値(Tlim2)のトルク制限を行うか否か判定するための回転数に設定する。これにより、簡易な構成で、第2制限値(Tlim2)のトルク制限を行うことができる。
《第3実施形態》
本発明の他の実施形態に係る駆動ユニットを説明する。本実施形態では上述した第1実施形態に対して、吐出口12f、仕切り板103a〜b、連通口104a〜104cの構成が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、その記載を援用する。
図21は、位相が0度の場合のロータ軸の状態を示し、(a)はロータ軸の断面図であり、(b)はXXI−XXI線に沿う断面図である。仕切り板103a〜103cには、一対の連通口104a〜104cがそれぞれ形成されている。yz面に沿うロータ軸aの断面において、一対の連通口104aは、ロータ軸12aの回転軸を挟んで互いに対向する位置に設けられている。
オイル吐出口12fは、yz面に沿うロータ軸12aの断面において、一対の連通口104aに対して90度ずれた位置に設けられている。90度は、ロータ軸12aの回転角に対応している。すなわち、連通口104aは、ロータ12の回転軸(x方向)及び互いに対向する吐出口12fの配列方向(z方向)に対して垂直な方向(y方向)の位置に配置されている。これにより、吐出口12fが複数設けられている場合も、ロータ軸12a内にオイルを溜めることができる。また、モータ10の停止中には、ロータ軸12aの中にオイルが溜まる。そしてロータ軸12aが回転すると、オイルは連通口104aを通って他の空間(部屋)にも供給されるため、ギア21の回転数が、オイル掻き上げを可能とする回転数に至るまでの時間、ベアリング潤滑性を確保できる。