JP2016205199A - チェーンケースの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】シリンダブロックとチェーンカバーとの間に介在されるチェーンケースの製造方法に関し、これら部材の上面および下面に生じる段差を低減できる製造方法を提供する。【解決手段】チェーンケース4におけるカバー側ノックピン挿入孔41を有底の孔とし、ブロック側ノックピン挿入孔42を貫通孔とする。そして、これらノックピン挿入孔41,42を同一方向から加工する。これにより、加工治具のガタ等の影響を受けることなく、各ノックピン挿入孔41,42を加工することが可能になる。従って、各ノックピン挿入孔41,42の加工位置に十分な精度を得ることができ、シリンダブロック2、チェーンケース4およびチェーンカバー5を組み付けた場合に、これらの上面および下面に生じる段差を低減できる。【選択図】図2

Description

本発明はチェーンケースの製造方法に係る。
従来、特許文献1に開示されているように、シリンダブロックの端面(例えばエンジン前側に向いている面)にチェーンカバーを組み付けるに際し、シリンダブロックに対するチェーンカバーの位置決めをノックピンを利用して行うことが知られている。つまり、シリンダブロックの端面にノックピンを装着しておくと共に、チェーンカバーに、このノックピンに対応するノックピン挿入孔を形成しておく。そして、このノックピン挿入孔にノックピンを挿入してシリンダブロックの端面にチェーンカバーを組み付けておき、これらを一体的にボルト止めする。
実開平5−52244号公報
上述したように、シリンダブロックとチェーンカバーとの2部材を組み付けるものにあっては、ノックピン挿入孔の形成位置がチェーンカバーの一方の面(シリンダブロックに対向する面)のみであるため、その形成位置として比較的高い精度を得ることが可能である。
ところで、エンジン本体の構成として、シリンダブロックの端面(エンジン前側に向いている面)にチェーンケースを組み付け、さらに、このチェーンケースの端面(同じくエンジン前側に向いている面)にチェーンカバーを組み付けるものがある。
これら3部材をノックピンを利用して組み付ける場合、これら3部材のうち中間に位置するチェーンケースの両側の端面(シリンダブロックに対向する端面およびチェーンカバーに対向する端面)にノックピン挿入孔が必要になる。
これらノックピン挿入孔の加工作業としては、まず、チェーンケースを加工治具にセットしてチェーンケースの一方の端面(例えばシリンダブロックに組み付けられる面)に対してノックピン挿入孔を加工する。その後、チェーンケースを反転させて(表裏を反転させて)加工治具に再度セットしてチェーンケースの他方の端面(例えばチェーンカバーが組み付けられる面)に対してノックピン挿入孔を加工することになる。
そして、図4(シリンダブロック100、チェーンケース200およびチェーンカバー300の組み付け作業を説明するための一部を拡大した断面図)に示すように、シリンダブロック100に形成されているノックピン圧入孔101にノックピン102を圧入しておくと共に、チェーンカバー300に形成されているノックピン圧入孔301にノックピン302を圧入しておく。そして、チェーンケース200の一方の端面に加工されているノックピン挿入孔201にシリンダブロック100側のノックピン102を挿入して、シリンダブロック100の端面にチェーンケース200を組み付ける。また、チェーンケース200の他方の端面に加工されているノックピン挿入孔202にチェーンカバー300側のノックピン302を挿入して、チェーンケース200の端面にチェーンカバー300を組み付ける。
このようにチェーンケース200の両側の端面にノックピン挿入孔201,202を形成するものにあっては、加工治具のガタや基準孔(例えば加工治具上でチェーンケース200を位置決めするための基準孔)とチェーンケース200との間のガタ等の影響により、ノックピン挿入孔201,202の加工位置に十分な精度が得られない可能性がある。例えば、仮に一方の端面に形成されたノックピン挿入孔201の加工位置に高い精度が得られていたとしても、チェーンケース200を反転させて加工治具に再度セットした際に前記ガタの影響を受け、このガタ分だけ、前記他方の端面に形成されるノックピン挿入孔202の加工位置がずれてしまい、加工位置に十分な精度が得られない可能性がある。この場合、シリンダブロック100、チェーンケース200およびチェーンカバー300を一体的に組み付けた状態では、これらの上面および下面により大きい段差が生じてしまうことになる。一般に、チェーンケース200およびチェーンカバー300それぞれの上面にはヘッドカバーが取り付けられ、シリンダブロック100、チェーンケース200およびチェーンカバー300それぞれの下面にはクランクケースが取り付けられるが、これら上下面の段差が大きいと、ヘッドカバーとの間やクランクケースとの間に隙間が生じ、これがオイル漏れなどの原因になってしまう。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、シリンダブロックとチェーンカバーとの間に介在されるチェーンケースの製造方法に関し、これら部材の上面および下面に段差が生じることを抑制できる製造方法を提供することにある。
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、シリンダブロックに取り付けられる一方の面にブロック側ノックピン孔が形成され、チェーンカバーが取り付けられる他方の面にカバー側ノックピン孔が形成されるチェーンケースの製造方法を前提とする。このチェーンケースの製造方法に対し、前記ブロック側ノックピン孔および前記カバー側ノックピン孔のうち一方のノックピン孔を、そのノックピン孔にノックピンが嵌め込まれる方向から加工する工程と、前記ブロック側ノックピン孔および前記カバー側ノックピン孔のうち他方のノックピン孔を、前記一方のノックピン孔を加工する方向と同じ方向から、前記一方の面と前記他方の面とに亘って貫通する貫通孔として加工する工程とを備えさせている。
この特定事項により、ブロック側ノックピン孔およびカバー側ノックピン孔それぞれを同一方向から加工することになる。つまり、一方のノックピン孔の加工作業と、他方のノックピン孔の加工作業との間でチェーンケースを反転させる必要がなくなる。このため、加工治具のガタ等の影響を受けることがなくなり、各ノックピン孔の加工位置に十分な精度を得ることができる。その結果、シリンダブロック、チェーンケースおよびチェーンカバーを組み付けた場合に、これらの上面および下面に生じる段差を低減できる。
本発明では、チェーンケースのブロック側ノックピン孔およびカバー側ノックピン孔それぞれを同一方向から加工するようにしている。このため、各ノックピン孔の加工位置に十分な精度を得ることができ、シリンダブロック、チェーンケースおよびチェーンカバーを組み付けた場合に、これらの上面および下面に生じる段差を低減できる。その結果、前記段差に起因するオイル漏れを防止することができる。
実施形態に係るエンジンの外観の概略を示す側面図である。 実施形態においてシリンダブロック、チェーンケースおよびチェーンカバーの組み付け作業を説明するための要部を拡大した断面図である。 実施形態においてシリンダブロック、チェーンケースおよびチェーンカバーが組み付けられた状態を示す要部を拡大した断面図である。 従来技術においてシリンダブロック、チェーンケースおよびチェーンカバーの組み付け作業を説明するための一部を拡大した断面図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、直列4気筒の自動車用エンジンに適用されるチェーンケースの製造方法として本発明を適用した場合について説明する。
−エンジンの概略構成−
チェーンケースの製造方法について説明する前に、この製造方法によって製造されたチェーンケースが適用されるエンジンの概略構成について説明する。
図1はエンジン(内燃機関)1の外観の概略を示す側面図(気筒列方向に対して直交する水平方向から見た図)である。この図1に示すように、エンジン1は、シリンダブロック2と、その上面に組み付けられたシリンダヘッド3とを備えている。
シリンダブロック2およびシリンダヘッド3の一方側の端面(気筒列方向の一方側(エンジンの前側)に位置する端面であって、図1では左側の端面)には、チェーンケース4が取り付けられている。また、このチェーンケース4の一方側の端面(気筒列方向の一方側(エンジンの前側)に位置する端面であって、図1では左側の端面)には、チェーンカバー5が取り付けられている。
また、シリンダヘッド3、チェーンケース4およびチェーンカバー5の各上面に亘って、シリンダヘッドカバー6が取り付けられている。さらに、シリンダブロック2、チェーンケース4およびチェーンカバー5の各下面に亘って、クランクケース7が取り付けられている。このクランクケース7の下面には、オイルパン8が取り付けられている。
シリンダブロック2には、複数(図1では4つ)のシリンダ21,21,…が直列に並んで配設されている。各シリンダ21には、ピストン22が収納されている。そして、シリンダ21とピストン22とシリンダヘッド3とによって燃焼室が形成される。シリンダヘッド3には、カムシャフト(吸気カムシャフトおよび排気カムシャフト)31が回転自在に支持されている。また、クランクケース7内にはクランクシャフト71が回転自在に支持されている。このクランクシャフト71は、燃焼室での混合気の燃焼によるピストン22の往復運動に伴って回転して、エンジンの駆動力を取り出す。
前記チェーンケース4は、シリンダブロック2側(図中の右側)およびチェーンカバー5側(図中の左側)がそれぞれ開放された枠状の部材であって、鋳造により成形されている。
前記チェーンカバー5は、チェーンケース4側(図中の右側)が開放され、反対側(図中の左側)が閉塞された部材であって、チェーンケース4と同様に鋳造により成形されている。
図1に示すようにシリンダブロック2およびシリンダヘッド3にチェーンケース4が取り付けられ、このチェーンケース4にチェーンカバー5が取り付けられた状態において、これらチェーンケース4およびチェーンカバー5により形成される空間には、クランクシャフト71からカムシャフト31にエンジン1の回転力を伝達するためのタイミングチェーン9が収納されている。
なお、エンジン1を構成するシリンダブロック2、シリンダヘッド3、チェーンケース4、チェーンカバー5等の各部材の材質としては、特に限定されるものではなく、アルミニウム合金や鋳鉄等が適用可能である。
このように構成されたエンジン1において、互いに対向して配置される部材同士の合わせ面間の所定領域には液状ガスケットが介在されている。これにより、その合わせ面間が液状ガスケットによってシールされる。この液状ガスケットの具体的な使用箇所として、本実施形態では、シリンダブロック2、チェーンケース4およびチェーンカバー5それぞれの下面と、クランクケース7の上面との合わせ面間、クランクケース7の下面とオイルパン8の上面との合わせ面間、チェーンケース4の側面と、シリンダヘッド3およびシリンダブロック2それぞれの側面との合わせ面間、チェーンケース4の側面と、チェーンカバー5の側面との合わせ面間となっている。なお、シリンダブロック2の上面とシリンダヘッド3の下面との合わせ面間には、メタルガスケットが介在されており、シリンダヘッド3の上面とシリンダヘッドカバー6の下面との合わせ面間には、ゴムガスケットが介在されている。これらガスケットの適用箇所は前述したものには限定されない。
−チェーンケースおよびチェーンカバーの組み付け構造−
次に、シリンダブロック2に対するチェーンケース4およびチェーンカバー5の組み付け構造を、チェーンケース4の製造方法と共に説明する。
図2は、シリンダブロック2、チェーンケース4およびチェーンカバー5の組み付け作業を説明するための要部を拡大した断面図である。また、図3は、シリンダブロック2、チェーンケース4およびチェーンカバー5が組み付けられた状態を示す要部を拡大した断面図である。
シリンダブロック2とチェーンケース4とは、後述するノックピン24によって相対位置が位置決めされる。同様に、チェーンケース4とチェーンカバー5とは、後述するノックピン52によって相対位置が位置決めされる。前述したようにチェーンケース4は枠状の部材であるので、シリンダブロック2の側面の外縁部(枠状のチェーンケース4の端面4Bに対向する位置)にノックピン24が適用されて、シリンダブロック2とチェーンケース4との相対位置が位置決めされるようになっている。同様に、チェーンカバー5の側面の外縁部(枠状のチェーンケース4の端面4Aに対向する位置)にノックピン52が適用されて、チェーンケース4とチェーンカバー5との相対位置が位置決めされるようになっている。以下、具体的に説明する。
図2に示すように、チェーンケース4の端面4Bに対向するシリンダブロック2の端面2A(エンジン前側(図2における左側)に向いている面)にはノックピン圧入孔23が形成されている。このノックピン圧入孔23は、シリンダブロック2が鋳造成形される際に成形され、この鋳造成形後に、ドリルやリーマ等(以下、単に切削工具という)による内面加工によってノックピン24の外径寸法に略一致した内径寸法となるように機械加工されて成っている。また、このノックピン圧入孔23の深さ寸法は、このノックピン圧入孔23に圧入されるノックピン24の長さ寸法よりも所定寸法だけ短くなっている。このため、ノックピン圧入孔23にノックピン24が圧入された状態では、このノックピン24の一部がシリンダブロック2の端面2Aから突出している。
一方、チェーンケース4の端面4Aに対向するチェーンカバー5の端面5A(エンジン後側(図2における右側)に向いている面)にもノックピン圧入孔51が形成されている。このノックピン圧入孔51は、チェーンカバー5が鋳造成形される際に成形され、この鋳造成形後に、切削工具による内面加工によってノックピン52の外径寸法に略一致した内径寸法となるように機械加工されて成っている。また、このノックピン圧入孔51の深さ寸法は、このノックピン圧入孔51に圧入されるノックピン52の長さ寸法よりも所定寸法だけ短くなっている。このため、ノックピン圧入孔51にノックピン52が圧入された状態では、このノックピン52の一部がチェーンカバー5の端面5Aから突出している。なお、このチェーンカバー5の端面5Aにおけるノックピン圧入孔51の形成位置は、図3に示すように、シリンダブロック2、チェーンケース4およびチェーンカバー5が組み付けられた状態において、シリンダブロック2のノックピン圧入孔23の形成位置からずれた位置(具体的には、このノックピン圧入孔23の形成位置よりも下側の位置)に設定されている。
本実施形態の特徴はチェーンケース4におけるノックピン挿入孔(本発明でいうノックピン孔)41,42の加工方法にある。以下、チェーンケース4の各ノックピン挿入孔41,42の構成と共にその加工方法について具体的に説明する。
チェーンケース4には、前記チェーンカバー5のノックピン52が挿入されるカバー側ノックピン挿入孔41、および、前記シリンダブロック2のノックピン24が挿入されるブロック側ノックピン挿入孔42が形成されている。
カバー側ノックピン挿入孔41は、チェーンケース4の一方の端面4A(エンジン前側(図2における左側)に向いている面;本発明でいう他方の面)に開放される有底の孔であって、前記チェーンカバー5の端面5Aに形成されているノックピン圧入孔51に対応する位置に形成されている。つまり、このノックピン圧入孔51に圧入されているノックピン52に対応する位置にカバー側ノックピン挿入孔41は形成されている。具体的に、このカバー側ノックピン挿入孔41の位置は、ノックピン52が挿入された際に、チェーンケース4とチェーンカバー5との上面同士および下面同士がそれぞれ面一となる(段差を生じない)位置に設定されている。つまり、カバー側ノックピン挿入孔41の形成位置が高い精度で得られている場合には、チェーンケース4とチェーンカバー5との上面同士および下面同士がそれぞれ面一となる。また、このカバー側ノックピン挿入孔41の深さ寸法は、チェーンカバー5の端面5Aからのノックピン52の突出寸法よりも僅かに長く設定されている。また、このカバー側ノックピン挿入孔41の内径寸法はノックピン52の外径寸法よりも僅かに大きく設定されている。
このカバー側ノックピン挿入孔41は、チェーンケース4が鋳造成形される際に成形され、この鋳造成形後に、切削工具による内面加工によってノックピン52の外径寸法よりも僅かに大きい内径寸法となるように機械加工されて成っている。
ブロック側ノックピン挿入孔42は、チェーンケース4の一方の端面4A(エンジン前側(図2における左側)に向いている面)から他方の端面4B(エンジン後側(図2における右側)に向いている面;本発明でいう一方の面)に亘って貫通した貫通孔で形成されている。このブロック側ノックピン挿入孔42は、前記シリンダブロック2の端面2Aに形成されているノックピン圧入孔23に対応する位置に形成されている。つまり、このノックピン圧入孔23に圧入されているノックピン24に対応する位置にブロック側ノックピン挿入孔42は形成されている。具体的に、このブロック側ノックピン挿入孔42の位置は、ノックピン24が挿入された際に、チェーンケース4とシリンダブロック2との下面同士が面一となる(段差を生じない)位置に設定されている。つまり、ブロック側ノックピン挿入孔42の形成位置が高い精度で得られている場合には、チェーンケース4とシリンダブロック2との下面同士が面一となる。
また、このブロック側ノックピン挿入孔42の内部は、ノックピン挿入領域42aと、カバー側開放領域42bとにより構成されている。
ノックピン挿入領域42aは、ブロック側ノックピン挿入孔42においてチェーンケース4の他方の端面4B側に形成されており、その内径寸法は前記ノックピン24の外径寸法よりも僅かに大きく設定されている。また、このノックピン挿入領域42aの長さ寸法(ブロック側ノックピン挿入孔42の中心線に沿う方向の長さ寸法)は、シリンダブロック2の端面2Aからのノックピン24の突出寸法と略同一の寸法に設定されている。
カバー側開放領域42bは、ブロック側ノックピン挿入孔42においてチェーンケース4の一方の端面4A側に形成されており、その内径寸法はチェーンケース4の一方の端面4Aに向かって次第に大きくなっている。これは、チェーンケース4の鋳造成形後の型開き時にブロック側ノックピン挿入孔42の成形に使用した中子を抜くための抜き勾配を設けたことによる。つまり、このカバー側開放領域42bの内面は、鋳造成形後の中子をチェーンケース4の一方の端面4A側に抜き取るための抜き勾配が設けられた傾斜面となっている。
そして、このブロック側ノックピン挿入孔42は、チェーンケース4の鋳造成形後に、切削工具による内面加工によってノックピン挿入領域42aの内径寸法がノックピン24の外径寸法よりも僅かに大きくなるように機械加工される。そして、この際の切削工具によるノックピン挿入領域42aの内面加工の方向は、チェーンケース4における一方の端面4A(エンジン前側(図2における左側)に向いている面)側から行われる。つまり、切削工具を、前記一方の端面4A側からカバー側開放領域42bに挿通してノックピン挿入領域42aまで到達させ、このノックピン挿入領域42aの内面を加工するようになっている。つまり、このブロック側ノックピン挿入孔42を加工する方向(ノックピン挿入領域42aの内面を加工する方向)は、前記カバー側ノックピン挿入孔41を加工する方向と同一方向(チェーンケース4における一方の端面4A側からの加工)となっている。
この際のカバー側ノックピン挿入孔41およびブロック側ノックピン挿入孔42の具体的な加工方法としては、まず、鋳造により成形されたチェーンケース4を所定の加工治具上にセットする。この際、チェーンケース4における一方の端面4Aが上側となるように、つまり、この一方の端面4A側からの加工が可能となるように加工治具上にセットする。
そして、切削工具を使用して前記カバー側ノックピン挿入孔41の内面を加工する。つまり、有底の孔で成るカバー側ノックピン挿入孔41の内面を加工する。
その後、チェーンケース4を加工治具上にセットしたまま、切削工具を使用して、チェーンケース4における一方の端面4A側から前記ノックピン挿入領域42aの内面を加工する。つまり、貫通孔で成るブロック側ノックピン挿入孔42のノックピン挿入領域42aの内面を加工する。
また、このようにカバー側ノックピン挿入孔41およびブロック側ノックピン挿入孔42を加工した後、ブロック側ノックピン挿入孔42におけるカバー側開放領域42bの開口縁部にカシメ加工を行う。つまり、カバー側開放領域42bの開口縁部をカシメ加工することにより、このカバー側開放領域42bの開口縁部に、その内側に向けて突出する突起42cを形成する。例えば、カバー側開放領域42bの開口縁部を所定の加工具を使用して内周側に向けて塑性変形させることで前記突起42cを形成する。これは、シリンダブロック2にチェーンケース4を組み付けた状態で、ブロック側ノックピン挿入孔42における前記端面4A側の開口からのノックピン24の抜け落ちを防止するためのものである。このため前記突起42c,42c同士の間の距離はノックピン24の外径寸法よりも小さくしておく。
このように形成されたチェーンケース4をシリンダブロック2およびチェーンカバー5に組み付ける際の作業としては、シリンダブロック2のノックピン圧入孔23にノックピン24を圧入しておくと共に、チェーンカバー5のノックピン圧入孔51にノックピン52を圧入しておく。そして、チェーンケース4に形成されたブロック側ノックピン挿入孔42のノックピン挿入領域42aにシリンダブロック2側のノックピン24を挿入して、シリンダブロック2の端面2Aにチェーンケース4を組み付ける。また、チェーンケース4の端面4Aに加工されているカバー側ノックピン挿入孔41にチェーンカバー5側のノックピン52を挿入して、チェーンケース4の端面4Aにチェーンカバー5を組み付ける(図3を参照)。そして、このように互いに位置決めされたシリンダブロック2、チェーンケース4およびチェーンカバー5に締結ボルト(図示省略)を適用し、これら部材2,4,5を締結する。
以上説明したように、本実施形態では、カバー側ノックピン挿入孔41の内面を加工する際に切削工具を挿入する方向と、ブロック側ノックピン挿入孔42の内面を加工する際に切削工具を挿入する方向とを同一方向としたことにより、これらカバー側ノックピン挿入孔41の加工作業と、ブロック側ノックピン挿入孔42の加工作業との間でチェーンケース4を反転させる必要がなくなる。このため、加工治具のガタ等の影響を受けることがなくなり、各ノックピン挿入孔41,42の加工位置に十分な精度を得ることができる。従って、シリンダブロック2、チェーンケース4およびチェーンカバー5を組み付けた場合に、これらの上面および下面に生じる段差を低減できる。その結果、チェーンケース4およびチェーンカバー5それぞれの上面とシリンダヘッドカバー6の下面との間、および、シリンダブロック2、チェーンケース4およびチェーンカバー5それぞれの下面とクランクケース7の上面との間に生じる隙間を低減でき、オイル漏れ等を防止することができる。
−他の実施形態−
以上説明した実施形態は、シリンダブロック2およびチェーンカバー5それぞれに形成したノックピン圧入孔23,51にノックピン24,52を圧入しておき、これらノックピン24,52をチェーンケース4のノックピン挿入孔41,42に挿入して、シリンダブロック2、チェーンケース4およびチェーンカバー5を一体的に組み付けるようにしていた。本発明はこれに限らず、チェーンケース4の各面にノックピン圧入孔を形成し、これらノックピン圧入孔にノックピンを圧入しておき、これらノックピンを、シリンダブロック2およびチェーンカバー5それぞれに形成したノックピン挿入孔に挿入して、シリンダブロック2、チェーンケース4およびチェーンカバー5を一体的に組み付けるようにしてもよい。この場合、チェーンケース4の各面に形成されるノックピン圧入孔が本発明でいうノックピン孔に相当することになる。その他、シリンダブロック2およびチェーンケース4の一方の端面4Aそれぞれにノックピン圧入孔を形成してこれらノックピン圧入孔にノックピンを圧入しておく構成や、チェーンカバー5およびチェーンケース4の他方の端面4Bそれぞれにノックピン圧入孔を形成してこれらノックピン圧入孔にノックピンを圧入しておく構成としてもよい。
また、前記実施形態では、カバー側ノックピン挿入孔41を有底の孔とし、ブロック側ノックピン挿入孔42を貫通孔としていた。本発明はこれに限らず、ブロック側ノックピン挿入孔42を有底の孔とし、カバー側ノックピン挿入孔41を貫通孔としてもよい。この場合、各挿入孔41,42の加工は、チェーンケース4における他方の端面4B側から行われることになる。
また、前記実施形態では、カバー側ノックピン挿入孔41の内面を加工した後、ブロック側ノックピン挿入孔42の内面を加工していた。本発明はこれに限らず、ブロック側ノックピン挿入孔42の内面を加工した後、カバー側ノックピン挿入孔41の内面を加工してもよいし、これらノックピン挿入孔41,42の内面を同時に加工してもよい。
また、前記実施形態では、自動車用エンジンに適用されるチェーンケースの製造方法として本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、自動車以外のものに搭載されるエンジンのチェーンケースの製造方法としても適用可能である。
本発明は、自動車用エンジンに適用され、シリンダブロックとチェーンカバーとの間に介在されるチェーンケースの製造方法に適用可能である。
2 シリンダブロック
4 チェーンケース
41 カバー側ノックピン挿入孔(カバー側ノックピン孔)
42 ブロック側ノックピン挿入孔(ブロック側ノックピン孔)
4A,4B 端面
5 チェーンカバー

Claims (1)

  1. シリンダブロックに取り付けられる一方の面にブロック側ノックピン孔が形成され、チェーンカバーが取り付けられる他方の面にカバー側ノックピン孔が形成されるチェーンケースの製造方法において、
    前記ブロック側ノックピン孔および前記カバー側ノックピン孔のうち一方のノックピン孔を、そのノックピン孔にノックピンが嵌め込まれる方向から加工する工程と、
    前記ブロック側ノックピン孔および前記カバー側ノックピン孔のうち他方のノックピン孔を、前記一方のノックピン孔を加工する方向と同じ方向から、前記一方の面と前記他方の面とに亘って貫通する貫通孔として加工する工程とを備えていることを特徴とするチェーンケースの製造方法。
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