JP2016204697A - 高周波焼入れ部品の素形材、高周波焼入れ部品、及びそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】化学成分が、質量%で、C:0.40〜0.70%、Si:0.01〜3.0%、Mn:0.1〜2.0%、Cr:0.05〜3.0%、S:0.0001〜0.1%、Al:0.001〜0.50%、N:0.001〜0.020%を含有し、必要に応じてB、W、Mo、V、Nb、Ti、Zr、Sb、Sn、Cu、Ni、Ca、Mg、Teをさらに含有し、P:0.05%以下、O:0.0050%以下に制限し、残部がFe及び不純物であり、鉄窒素化合物層が表面から深さ方向の厚みにして10μm以下に制限され、表面から深さ方向に50μm位置における窒素濃度が0.20質量%以上、炭素濃度が0.40質量%以上である。
【選択図】図1
Description
また、歯車等の部品は、過負荷による歯元での曲げ疲労破壊に対する強度が必要なので、高い面疲労強度特性に加えて、高い曲げ疲労強度が要求される場合も多い。
(1)高周波焼入れは表層部の必要な部分のみ加熱焼入れを行うため、浸炭プロセスに比べて効率良く表面が硬化した部品を得ることができる。しかしながら、高周波焼入れのみで浸炭焼入れ材と同等の硬さを得るとすれば、C含有量が0.8%以上の鋼を用いる必要がある。C含有量を0.8%以上とした場合、面疲労強度の向上には不必要な内部の硬さも上昇するので、被削性が著しく劣化する。すなわち、被削性の観点からC含有量を増加できないので、高周波焼入れのみでの面疲労強度向上には限界がある。
(2)窒化は鋼材の変態点以下の500〜600℃位の温度域で、主として窒素を鋼材表層部に拡散浸透させることにより硬化層を形成する表面硬化法である。また、軟窒化は同様に窒素と炭素とを同時に鋼材表層部に拡散浸透させることにより硬化層を形成する表面硬化法である。窒化、軟窒化のいずれも、耐摩耗性・耐焼付性・耐疲労性等を向上させる表面硬化法である。窒化、軟窒化の際には、鋼材表層部では拡散浸透した窒素により窒化物が生成する。窒化または軟窒化後の鋼材は、一般的に最表面に主にFe2−3N(以下、εと記す場合がある)、Fe4N(以下、γ’と記す場合がある)等のFe窒化物からなる鉄窒素化合物層が形成され、その内部には、Nが拡散した窒素拡散層が形成される。
窒化は浸炭の場合と比較して低温で処理ができる事から、低歪が要求される部品への適用が多い。また、窒化処理した鋼材表面では窒素濃度が高くなり、耐食性が向上するというメリットもある。しかしながら、窒化だけでは硬化層深さが小さいので、高い面圧が加わるトランスミッション歯車等への適用は困難である。
そこで、最近では、高周波焼入れ及び窒化のそれぞれの欠点を補い、より優れた機械的性質、特に面疲労強度を発揮する手法として、窒化後に高周波焼入れを施すことが試みられている。
また、本発明は、上記の素形材を高周波焼入れすることによって得られる高周波焼入れ部品であって、曲げ疲労強度及び面疲労強度に優れた高周波焼入れ部品を提供することを課題とする。
さらに、本発明は、上記の高周波焼入れ部品の素形材及び高周波焼入れ部品の製造方法を提供することを課題とする。
具体的には、鋼部品の表面硬さについては、表面から50μm深さにおける窒素濃度を0.20質量%以上、かつ、炭素濃度を0.40質量%以上とした素形材に高周波焼入れを施すことによって、表面から50μm深さにおいてビッカース硬度で700Hv以上の硬さ有する鋼部品が得られることを見出した。また、上述のような表面から50μm深さにおける窒素濃度及び炭素濃度を有する素形材は、0.40質量%以上のC含有量を有する鋼材に対し、脱炭を抑制しつつ窒化を行うことよって得られることを見出した。また、窒化により表層部に浸入した窒素は焼戻しによる軟化を防止する効果を有する。そのため、上記の鋼部品は、300℃で焼戻しが行われても、表面から50μm深さにおいてビッカース硬度で700Hv以上の硬さを確保できることを見出した。
また、本発明者らは、窒化時に素形材の表層部に形成する鉄窒素化合物層が厚い場合には、脱窒反応に起因する窒素濃度の不均質組織の形成や脱窒反応で形成したボイドに酸素が侵入することで粒界酸化を生じることを明らかにした。さらに、このような窒素濃度の不均質組織や粒界酸化が表層に存在すると、高周波焼入れ後の面疲労強度や曲げ疲労強度が低下することを明らかにした。
さらに、高周波焼入れ後の硬化層深さは高周波焼入れ条件によって変化することが知られているが、高温あるいは長時間加熱すると、高周波焼入れ時に脱窒および酸化による表面軟化を避けることができない。したがって、一般的に、高周波焼入れ条件を緩和(焼入れ時の最高到達温度の低減、短時間加熱など)しない限り、高周波焼入れ後の組織を均質にすることができないと考えられていた。しかしながら、本発明者らは、窒化時に表層部に形成する鉄窒素化合物層の厚みを低減することで上記の異常組織の発生を防止することが可能となり、十分な硬化層深さを得たうえで面疲労強度や曲げ疲労強度を向上することができることを見出した。
(2)前記化学成分が、質量%で、B:0.0003〜0.0050%、W:0.0025〜0.5%、Mo:0.05〜1.0%、V:0.05〜1.0%、Nb:0.005〜0.30%、Ti:0.005〜0.20%、Zr:0.0005〜0.05%から選択される1種以上を含有していることを特徴とする(1)に記載の高周波焼入れ部品の素形材。
(3)前記化学成分が、質量%で、Sb:0.0005〜0.10%、Sn:0.01〜0.10%、Cu:0.01〜2.0%、Ni:0.01〜2.0%から選択される1種以上を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の高周波焼入れ部品の素形材。
(4)前記化学成分が、質量%で、Ca:0.0005〜0.010%、Mg:0.0005〜0.010%、Te:0.0005〜0.10%から選択される1種以上を含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一項に記載の高周波焼入れ部品の素形材。
(5)(1)〜(4)のいずれか一項に記載の高周波焼入れ部品の素形材に、最高加熱温度が850〜1100℃である高周波焼入れを施して得られることを特徴とする高周波焼入れ部品。
(6)(1)〜(4)のいずれか一項に記載の化学成分を有する鋼を、雰囲気ガスがNH3、CO及びCO2を含有する雰囲気の中で、500℃〜600℃の第1の温度域で1時間以上保定することによって軟窒化する窒化工程を有し、前記窒化工程では、炭素ポテンシャルを0.03以上に設定し、かつ、前記第1の温度域が、500℃〜550℃未満の場合には、下記式(a)で示される窒化ポテンシャルKNが下記(a1)式を満足し、前記第1の温度域が550℃〜600℃の場合には、前記窒化ポテンシャルKNが下記(a2)式を満足するように設定することを特徴とする高周波焼入れ部品の素形材の製造方法。
KN=PNH3/PH2 3/2 (a)
{−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.44}×1.25≧KN≧{−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.29}×1.25 (a1)
{−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.44}×1.25≧KN≧0.21×1.25 (a2)
ここで、PNH3は雰囲気ガスのNH3分圧であり、PH2は雰囲気ガスのH2分圧であり、Tは単位℃での前記窒化工程での前記雰囲気ガスの温度である。
(7)(1)〜(4)のいずれか一項に記載の化学成分を有する鋼を、雰囲気ガスがNH3、CO及びCO2を含有する雰囲気の中で、500℃〜600℃の第1の温度域で1時間以上保定することによって軟窒化する窒化工程と、軟窒化された前記鋼を、850℃〜1100℃の第2の温度域に加熱した後に冷却する高周波焼入れを行う工程とを有し、前記窒化工程では、炭素ポテンシャルを0.03以上に設定し、かつ、前記第1の温度域が500℃〜550℃未満の場合には、下記式(a)で示される窒化ポテンシャルKNが下記(a1)式を満足し、前記第1の温度域が550℃〜600℃の場合には、前記窒化ポテンシャルKNが下記(a2)式を満足するように設定することを特徴とする高周波焼入れ部品の製造方法。
KN=PNH3/PH2 3/2 (a)
{−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.44}×1.25≧KN≧{−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.29}×1.25 (a1)
{−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.44}×1.25≧KN≧0.21×1.25 (a2)
ここで、PNH3は雰囲気ガスのNH3分圧であり、PH2は雰囲気ガスのH2分圧であり、Tは単位℃での前記窒化工程での前記雰囲気ガスの温度である。
本実施形態に係る素形材は、化学成分が、質量%で、C:0.40〜0.70%、Si:0.01〜3.0%、Mn:0.1〜2.0%、Cr:0.05〜3.0%、S:0.0001〜0.1%、Al:0.001〜0.50%、N:0.001〜0.020%を含有し、必要に応じてさらに、B:0.0050%以下、W:0.50%以下、Mo:1.0%以下、V:1.0%以下、Nb:0.30%以下、Ti:0.20%以下、Zr:0.05%以下、Sb:0.10%以下、Sn:0.10%以下、Cu:2.0%以下、Ni:2.0%以下、Ca:0.010%以下、Mg:0.010%以下、Te:0.10%以下から選択される1種以上を含有し、P:0.05%以下、O:0.0050%以下に制限し、残部がFe及び不純物であり、鉄窒素化合物層が表面から深さ方向の厚みにして10μm以下に制限され、表面から深さ方向に50μm位置における窒素濃度が0.20質量%以上、炭素濃度が0.40質量%以上である。
本実施形態において、高周波焼入れ部品とは、高周波焼入れ部品の素形材に高周波焼入れ(ただし、高周波焼入れ後に焼戻ししても良い)を施したものを指し、例えば、自動車用の動力伝達に使用される歯車等の高い面疲労強度が要求される部品を想定している。また、高周波焼入れ部品の素形材は、高周波焼入れ部品を得るために高周波焼入れに供される素材であって、窒化処理(軟窒化、プラズマ窒化など窒化方法を問わず、また、窒化後に研削等の機械加工を施してもよい。)が施されたものを指す。
また、本実施形態に係る高周波焼入れ部品は、本実施形態に係る素形材に最高加熱温度が850〜1100℃である高周波焼入れを施して得られる。本実施形態に係る高周波焼入れ部品は、残留γや窒化物、及び粒界酸化等から成る不均質な表層異常層を含まない、または、表層異常層の生成が最小限に留められている。
Cは、鋼の強度を得るために重要な元素である。また、Cは、高周波焼入れ前の組織においてフェライト分率を低減し、高周波焼入れ時の硬化能を向上させて、硬化層深さを大きくするために必要な元素である。C含有量が0.40%未満ではフェライト分率が高くなり、高周波焼入れ時の硬化能が不足する。よって、C含有量を0.40%以上とする。好ましくは0.45%以上、より好ましくは0.50%以上である。一方、C含有量が多すぎると被削性や鍛造性を著しく害するだけでなく、高周波焼入れ時に焼割れの発生する可能性が大きくなる。そのため、C含有量は0.70%以下とする。
Siは、焼入層の焼戻し軟化抵抗を向上させることにより、焼入れ後の面疲労強度を向上させる効果を有する元素である。その効果を得るために、Si含有量を0.01%以上とする。好ましくは0.25%以上である。一方、Si含有量が3.0%を超えると鍛造時の脱炭が著しくなる。よって、Si含有量は3.0%以下とする。
Mnは、焼入れ性の向上、焼戻し軟化抵抗の増大により焼入れ後の面疲労強度を向上させるのに有効な元素である。この効果を得るため、Mn含有量を0.1%以上とする。好ましくは0.4%以上である。一方、Mn含有量が2.0%を超えると、母材の硬さは大幅に上昇し、窒化前の被削性が著しく劣化する。このため、Mn含有量は2.0%以下とする。
Crは、窒化物を形成し、窒化時の窒素濃度向上に寄与するとともに、焼戻し軟化抵抗を向上させ、面疲労強度を向上させるのに有効な元素である。この効果を得るため、Cr含有量を0.01%以上とする。好ましくは0.20%以上である。さらに好ましくは0.40%以上である。但し、Cr含有量が3.0%を超えると被削性が悪化するため、Cr含有量は3.0%以下とする。好ましくは2.0%以下である。
鋼がSnを含有する場合には、Cr含有量が0.05%以上であると、腐食環境下での面疲労強度がさらに向上する。
Sは、鋼材の表面に濃化することにより窒化時にNの鋼材への侵入を妨げる。そのため、Sを含有すると、鋼材の窒化が阻害される。S含有量が0.1%を超えると窒化の阻害が著しくなり、さらに、鍛造性も著しく劣化する。従って、S含有量を0.1%以下とする。一方、Sは被削性を向上させる効果がある。そのため、S含有量を、0.0001%以上としてもよい。
Alは、窒化物として鋼中に析出分散することにより、高周波焼入れ時のオーステナイト組織の細粒化に有効な元素である。また、Alは、焼入れ性を高めて硬化層深さを大きくする元素である。またAlは、被削性向上にも有効な元素である。これらの効果を得るため、Al含有量を0.001%以上とする。好ましくは0.010%以上である。さらにAlは、窒化時にNと化合物を形成し、表層部のN濃度を高める効果があり、面疲労強度向上にも有効な元素である。この点からも、Al含有量を0.001%以上とする。一方、Al含有量が0.50%を超えると、高周波加熱時にオーステナイトへの変態が完了しにくく、焼入れ性が低下する。そのため、Al含有量は0.50%以下とする。
Nは、各種窒化物を形成して高周波加熱時のオーステナイト組織の細粒化に有効に働く。そのため、N含有量を、0.001%以上とする。一方、Nは鋼の硬さを上昇させるとともに、Alと結合してAlNを生成し、被削性向上に有効な固溶Alを減少させてしまう。そのためN含有量が過剰であると、被削性は劣化する。また、Nは、高温域の延性を低下させ、更に粗大AlNや粗大BNが生成することにより、母材を著しく脆化させる。母材が脆化すると、圧延や鍛造時に割れが発生する。N含有量が、0.020%超の場合に、被削性の劣化及び母材の脆化が著しいのでN含有量を0.020%以下に制限する。
Pは不純物として含有される。Pは、粒界に偏析して鋼の靭性を低下させるので、極力低減する必要があり、少ないほど好ましい。P含有量が0.05%を超えると靭性の低下が著しいので、P含有量を0.05%以下に制限する。P含有量を0%とすることは困難なので、P含有量の下限を、工業的限界の0.0001%としてもよい。
Oは、Al2O3やSiO2等の酸化物系介在物として鋼中に存在する。Oが多いと上記酸化物が大型化してしまい、これを起点として動力伝達部品の破損に至る。そのため、O含有量は少ないほど好ましいが、O含有量が0.0050%を超えるとその影響が特に大きくなるので、O含有量を0.0050%以下に制限する。O含有量は0.0020%以下が望ましく、0.0015%以下がより望ましい。O含有量を0%とするのは困難なので、O含有量の下限を、工業的限界の0.0001%としてもよい。
ただし、これらの元素は必ずしも含有させる必要はないので、その下限は0%である。ここで、不純物とは、鋼材を工業的に製造する際に、鉱石若しくはスクラップ等のような原料、又は製造工程の種々の環境から混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
本実施形態に係る素形材は、さらに、次に示す鋼材強化元素の内の1種または2種以上を含有してもよい。
Bは、鋼中のNと結合することにより、BNとして析出して被削性向上に寄与する。また、Bは、高周波加熱時にBNが分解してBとなり、焼入れ性を大きく向上させることで、面疲労強度向上に寄与する。これらの効果を得る場合には、B含有量を0.0003%以上とすることが好ましい。一方、B含有量が0.0050%を超えてもその効果は飽和し、むしろ圧延や鍛造時の割れの原因ともなる。そのため、Bを含有させる場合でも、B含有量を0.0050%以下とする。
Wは、鋼の焼入性を向上させて面疲労強度を向上させるのに有効な元素である。この効果を得る場合、W含有量を0.0025%以上とすることが好ましい。より好ましくは、0.01%以上、さらに好ましくは、0.03%以上である。一方、W含有量が0.50%を超えると被削性が劣化する。そのため、Wを含有させる場合でも、W含有量を0.50%以下とする。
Moは、焼入層の焼戻し軟化抵抗を向上させることにより、面疲労強度を向上させる効果を有する。また、Moは、焼入層を強靭化して曲げ疲労強度を向上する効果も有する。これらの効果を得る場合、Mo含有量を0.05%以上とすることが好ましい。一方、Mo含有量が1.0%を超えると、その効果が飽和する上、経済性が損なわれる。そのため、Moを含有させる場合でも、Mo含有量を1.0%以下とする。
Vは、窒化物として鋼中に析出分散することにより、高周波焼入れ時のオーステナイト組織を細粒化する効果を有する元素である。この効果を得る場合、V含有量を0.05%以上とすることが好ましい。一方、V含有量が1.0%を超えるとその効果は飽和する上、経済性が損なわれる。そのため、Vを含有させる場合でも、V含有量を1.0%以下とする。
Nbは、窒化物として鋼中に析出分散することにより、高周波焼入れ時のオーステナイト組織を細粒化する効果を有する元素である。この効果を得る場合、Nb含有量を0.005%以上とすることが好ましい。一方、Nb含有量が0.30%を超えるとその効果は飽和する上、経済性が損なわれる。そのため、Nbを含有させる場合でも、Nb含有量を0.30%以下とする。
Tiは、窒化物として鋼中に析出分散することにより、高周波焼入れ時のオーステナイト組織を細粒化する効果を有する元素である。この効果を得る場合、Ti含有量を0.005%以上とすることが好ましい。一方、Ti含有量が0.20%を超えると析出物が粗大化して鋼が脆化する。そのため、Tiを含有させる場合でも、Ti含有量を0.20%以下とする。
Zrは、窒化物として鋼中に析出分散することにより、高周波焼入れ時のオーステナイト組織を細粒化する効果を有する元素である。この効果を得る場合、Zr含有量を0.0005%以上とすることが好ましい。一方、Zr含有量が0.05%を超えると析出物が粗大化して鋼が脆化する。そのため、Zrを含有させる場合でも、Zr含有量を0.05%以下とする。
本実施形態に係る素形材は、さらに、次に示す、酸化抑制による曲げ疲労強度向上元素の内、1種または2種以上を含有してもよい。
Sbは、表面偏析傾向の強い元素であり、外部からの酸素の吸着による酸化を防止するのに有効な元素である。この酸化防止効果を確実に発揮させるためには、Sb含有量を0.0005%以上とすることが好ましい。一方、Sb含有量が0.10%を超えるとその効果は飽和する。そのため、効率性を考慮して、Sbを含有させる場合でも、Sb含有量を0.10%以下とする。
Snは、単独で含有された場合、及び/またはCrと同時に含有された場合に、耐食性を向上させる元素である。この耐食性向上効果を確実に発揮させるためには、Sn含有量を0.01%以上とすることが好ましい。一方、Sn含有量が過剰になると熱間延性が低下し、鋼材製造時の鋳造、圧延で疵を発生させる原因となることがある。そのため、Snを含有させる場合でも、Sn含有量を0.10%以下とする。
Cuは、酸化する際に鋼材表面に濃化し、後続の酸化反応を抑制する効果を有する。この効果を確実に発揮させるためには、Cu含有量を0.01%以上とすることが好ましい。一方、Cu含有量が2.0%を超えると、機械的性質の点では効果が飽和する上、熱間延性が低下するため、圧延時に疵が形成されやすくなる。そのため、Cuを含有させる場合でも、Cu含有量を2.0%以下とする。
Niは、Cuと同様に、酸化する際に鋼材表面に濃化し、後続の酸化反応を抑制する効果を有する元素である。この効果を確実に発揮させるためには、Ni含有量を0.01%以上とすることが好ましい。一方、Ni含有量が2.0%を超えると、被削性が悪化する。そのため、Niを含有させる場合でも、Ni含有量を2.0%以下とする。
また、Niは、熱間延性を改善させる元素として機能し、CuやSnによる熱間延性の低下を抑制できる。この効果を得る場合、Ni含有量とSn含有量とCu含有量とが下記1式を満たすことが好ましい。
0.12×Cu+Sn−0.1×Ni≦0.15・・・(1)
式中のCu、Sn、Niはそれぞれの元素の含有量(質量%)である。
本実施形態に係る素形材は、さらに、部品で曲げ疲労強度の向上も求められる場合に、次に示す、硫化物微細化によって曲げ疲労強度向上させる元素を含有させてもよい。
<Mg:0.0005〜0.010%>
<Te:0.0005〜0.10%>
Ca、Mg、Teは、圧延時にMnSが延伸するのを抑制し、曲げ疲労強度をさらに向上させる元素である。この効果を確実に得るためには、単独でまたは複合的に、Ca含有量を0.0005%以上、Mg含有量を0.0005%以上、Te含有量を0.0005%以上とすることが好ましい。しかし、各元素の含有量が上記を超えると、その効果が飽和する上、経済性が損なわれる。そのため、Ca、Mg及び/またはTeを含有させる場合でも、Ca含有量を0.010%以下、Mg含有量を0.010%以下、Te含有量を0.10%以下とする。
鋼材を窒化した場合、表層部に鉄窒素化合物層が生成する。この鉄窒化物層は、γ´相(ガンマプライム:Fe4N)及びε相(Fe2−3N)である。本発明者らは、この鉄窒素化合物層の厚みが大きい場合には、次工程で高周波焼入れを行った際に、残留γや窒化物、及び粒界酸化を含む不均質な表層異常層が生成することを明らかにした。また、この表層異常層の生成を防止するためには、窒化後の鉄窒素化合物層の厚みを充分に小さくする必要があり、具体的には窒化後の鉄窒素化合物層の厚みを10μm以下に制限する必要があることを明らかにした。窒化時に表層部に形成する鉄窒素化合物層の厚みが大きい場合には、脱窒反応に起因する窒素濃度の不均質組織や脱窒反応で形成したボイドに酸素が侵入することで生じる粒界酸化等が原因となり、高周波焼入れ後の組織に異常層を生じる。このような異常層は、曲げ疲労や面疲労強度を大きく低下させる原因となる。そのため、本実施形態に係る素形材では、表層部に生成する鉄窒素化合物層を表面から深さ方向の厚みにして10μm以下に制限することを特徴とする。鉄窒素化合物層の厚みを10μm以下に抑制することで、高周波焼入れ後の異常組織の形成を防止し曲げ疲労強度及び面疲労強度を向上させることができる。鉄窒素化合物の厚みは、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは2μm以下であり、最も好ましくは、鉄窒素化合物層の厚みが0μm、すなわち、鉄窒素化合物層が生成されないことである。
鋼部品の面疲労強度の向上には、300℃焼戻し後の硬さをビッカース硬度で700Hv以上とすることが重要である。本発明者らは、高周波焼入れ部品の素形材の段階で、表面から50μm深さの位置において、窒化によって窒素濃度を0.20質量%以上とし、同時に、脱炭を抑制することで炭素濃度を0.40質量%以上とすれば、高周波焼入れ後に、十分な表面硬さが得られ、さらに、300℃焼戻しを行った後でもビッカース硬度で700Hv以上を確保できることを明らかにした。
素形材の段階で、表面から50μm深さの位置において、窒素濃度が0.20質量%未満であると、高周波焼入れ後の軟化抵抗が不足する。また、炭素濃度が0.40質量%未満であると、高周波焼入れ後の硬さが低下し、300℃焼戻しを行った後の硬さも不足する。
表面から50μmの位置(表面から深さ方向に50μm位置)としたのは、マイクロビッカース等で硬さを測定する場合の工業的な限界距離という理由による。ここで、表面から50μmとは、表面の外周方向から法線方向に50μm内側の位置を指す。
また、本実施形態に係る高周波焼入れ部品は、300℃焼戻しを行った後でも表面から50μm深さにおいて、ビッカース硬度で700Hv以上の硬さを有する。
上述したように、本実施形態に係る素形材は、表層部に深さ方向の厚みにして10μm以下の鉄窒素化合物層を有し、表面から深さ方向に50μm位置における窒素濃度が0.20質量%以上、炭素濃度が0.40質量%以上である。
窒化時の脱炭を抑制する方法として、鉄窒素化合物層を積極的に成長させることで保護膜として作用させ、地鉄からの脱炭を抑制する手法も考えられる。しかしながら、本実施形態では、高周波焼入れ後の異常組織の原因となる鉄窒素化合物の厚みを小さくしなければ、目的とする高疲労強度が得られない。そのため、1つの手法として、窒化中に一酸化炭素および二酸化炭素ガスを流入させる手法(一般的に軟窒化と呼ばれる)の適用を検討した。検討の結果、軟窒化で炭素ポテンシャルを適切に制御すれば脱炭抑制が可能となることを明らかにした。具体的には、軟窒化時には一般的には制御されない炭素ポテンシャルを0.03以上に制御することで脱炭を抑制して、素形材の表面から50μm深さの炭素濃度を0.40質量%以上とすることが可能であることを確認した。
ここで、炭素ポテンシャルKcは、鋼を加熱する雰囲気の浸炭能力を示す指標であり、その温度で、そのガス雰囲気と平衡に達したときの鋼の表面の炭素濃度で表される。炭素ポテンシャルは雰囲気のCO濃度、H2O濃度、H2濃度から下記の式で求められる。
Kc=((CO濃度)×(H2濃度))/(H2O濃度)
縦軸に窒化ポテンシャル、横軸に温度をとり、窒化処理の際の窒化ポテンシャル及び温度条件で生成される窒化物の状態を示す図、すなわち鉄−窒素二元系の温度と窒化ポテンシャルとで生成する相を示す平衡状態図として、レーラー線図(例えば、“鉄の窒化と軟窒化”,アグネ技術センター刊,p.131)が知られている。一般に窒化ポテンシャルが上昇するとα相からγ´相へと、平衡状態で存在する相が変化する。窒化ポテンシャルが上昇すると、窒素濃度が高くなるが、鉄窒素化合物層の厚みも大きくなる。本発明者らは、鉄窒素化合物層の厚みを小さく抑制しつつ、50μm深さ位置において0.20質量%以上の窒素濃度を得る1つの方法として、窒化ポテンシャルKNがγ´相の生成範囲内でα相とγ´相の境界付近で且つ0.21以上となるように温度やガス雰囲気を調整する方法が有効であることを確認した。レーラー線図のα/γ´の境界線を数値化した後、上方に平行移動させた線分上の点で実験を行い、500℃〜600℃の温度域について、温度域毎に適正な領域について定式化すると、以下の(b1)式、及び(b2)式の通りとなる。
<500℃〜550℃未満の場合>
−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.44≧KN≧−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.29 (b1)
<550℃〜600℃の場合>
−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.44≧KN≧0.21 (b2)
ここで、KN=PNH3/PH2 3/2 (PNH3:雰囲気ガスのNH3分圧、PH2:雰囲気ガスのH2分圧)、T:単位℃での前記窒化工程での前記雰囲気ガスの温度。
<500℃〜550℃未満の場合>
{−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.44}×1.25≧KN≧{−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.29}×1.25 (a1)
<550℃〜600℃の場合>
{−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.44}×1.25≧KN≧0.21×1.25・・・(a2)
ここで、式中の1.25は、補正係数であり、種々の検討の結果導き出した値である。
窒化ポテンシャルKNが式の左辺よりも大きい場合、鉄窒化物層厚みが大きく成長する。また、窒化ポテンシャルKNが式の右辺よりも小さい場合、窒化後に目標となる窒素濃度が得られない。
<500℃〜550℃未満の場合>
{−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.44}×1.25≧KN≧{−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.29}×1.25 (a1)
<550℃〜600℃の場合>
{−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.44}×1.25≧KN≧0.21×1.25・・・(a2)
ここで、PNH3は雰囲気ガスのNH3分圧、PH2は雰囲気ガスのH2分圧、Tは単位℃での前記窒化工程での前記雰囲気ガスの温度である。
さらには、本願記載の化学成分からなる鋼を窒化処理後に所定の炭素濃度、窒素濃度を満足すれば、窒化処理後に鉄窒素化合物層を研磨して本願規定の範囲内に調整する方法を用いてもよい。
また、軟窒化工程以外の鋳造、圧延、鍛造などの工程については、要求される機械的特性等に応じて、公知の方法で行えばよい。
本実施形態に係る高周波焼入れ部品は、上記の製造方法で得られた高周波焼入れ部品の素形材に、高周波焼入れを行うことによって得られる。
すなわち、上述した高周波焼入れ部品の素形材の製造方法が含む、鋼を軟窒化する工程に加えて、高周波焼入れを行う工程を含む。
高周波焼入れを行う工程では、焼入れ温度(最高加熱温度)を850〜1100℃とし、この温度域(第2の温度域)から、冷却を行う。焼入れ温度が850℃未満であると、高周波焼入れにより素形材に十分な焼入れを施すことができず、初析フェライトが出現し、表面硬化層の硬さが不均一になり、面疲労強度は向上しない。また、表層部が十分にオーステナイト化せず、所望の焼入れ層深さを得ることができない。一方、焼入れ温度が1100℃を超えた場合には、表層部の酸化が著しくなり、表面性状の円滑さは充分に確保されない。この場合、面疲労強度が低下する。
また、十分に表層をオーステナイト化するため、850℃以上となる時間が、0.5秒以上1分以内であることが好ましい。
具体的には、まず、小ローラー試験片について、軟窒化処理(各温度、各時間条件での軟窒化後、N2ガス冷却、浸炭ガス組成:CO+CO2流量調整、窒化ガス組成:N2+NH3流量調整により窒化ポテンシャルを制御)を施した。
この小ローラー試験片に対し、材質調査用の小ローラーを各1本ずつ使用し、EPMAにより窒素濃度と炭素濃度の線分析を行い、断面から50μm深さの窒素濃度と炭素濃度を測定した。また、同じ小ローラーを用いてSEMで観察を行い、鉄窒素化合物層の厚みを測定した。
次に、残りの小ローラー試験片に対し、表3に示す条件で高周波焼入れを施した後、150℃で1hrの焼戻し処理を行った。
次に、焼入れ焼戻しを行った小ローラー試験片10本を後述するローラーピッチング試験に供した。また、材質調査用の小ローラーの残り1本ずつを使用して300℃で60分の焼戻し処理を行った後、断面から50μm深さのビッカース硬度を測定した。ローラーピッチング疲労試験での鋼材の耐久性は、300℃焼戻し硬さと正の相関があることが一般に知られている。本発明では、300℃焼戻し硬さが、ビッカース硬さで700Hv以上を目標とした。
表2に窒化条件及び高周波条件、並びに材質調査結果及びローラーピッチング試験の結果、曲げ疲労強度試験結果を示す。
一方、試験No.14〜21の比較例のうち、試験No.17を除くすべての比較例において1000万回に到達する前に損傷が発生し、ローラーピッチング疲労試験において、ローラーピッチング疲労耐久性が不十分であった。試験No.17については、熱間鍛造時に割れが発生し試験片採取が不可能であったため、評価を行わなかった。
また、試験No.14〜21の比較例のうち、試験No.15、17、20を除くすべての比較例において10万回に到達する前に損傷が発生し、曲げ疲労試験において、曲げ疲労耐久性が不十分であった。試験No.17については、熱間鍛造時に割れが発生し試験片採取が不可能であったため、評価を行わなかった。
試験No.14についてはC含有量が本発明の範囲より少ないため、窒化後の50μm深さの炭素濃度も本発明の範囲を下回っており、300℃焼戻し後の硬さが目標値であるビッカース硬さの700より低く、ローラーピッチング疲労耐久性が不十分であった。
試験No.15についてはCr含有量が本発明の範囲より少ないため、窒化後の50μm深さの窒素濃度が本願規定を下回っていた。その結果、十分な焼戻し軟化抵抗が得られず、300℃焼戻し後の硬さが、目標値であるビッカース硬さ700Hvより低く、ローラーピッチング疲労耐久性が不十分であった。
試験No.16についてはS含有量が本発明の範囲より多いため、MnSを起点とした損傷が発生し、ローラーピッチング疲労耐久性、曲げ疲労耐久性が不十分であった。
試験No.17についてはC含有量が本発明の範囲より多いため、熱間鍛造時に割れが発生し、その後の試験評価ができなかった。
試験No.18については、窒化が軟窒化ではなかったため、脱炭を抑制できず、窒化後の50μm深さの炭素濃度が本発明の範囲を下回っていた。その結果、300℃焼戻し後の硬さが目標値であるビッカース硬さ700Hvより低く、ローラーピッチング疲労耐久性が不十分であった。また、炭素濃度が低くなった結果、表層硬度が低く、曲げ疲労耐久性が不十分であった。
試験No.19については、窒化時の窒化ポテンシャルが高く、鉄窒素化合物層の厚みが本発明の範囲を上回っていた。その結果、高周波焼入れ後に異常組織が発生し、ローラーピッチング疲労耐久性、曲げ疲労耐久性が不十分であった。
試験No.20については、窒化時の窒化ポテンシャルが低く、窒化後の50μm深さの窒素濃度が本発明の範囲を下回っていた。その結果、十分な焼戻し軟化抵抗が得られず、300℃焼戻し後の硬さが目標値であるビッカース硬さ700Hvより低く、ローラーピッチング疲労耐久性が不十分であった。
試験No.21については、素形材の段階では、50μm深さの窒素濃度、炭素濃度、及び鉄窒化物層の厚みが、本発明を満足していた。しかしながら、この素形材に対して行った高周波焼入れ温度が高すぎたため、表層が著しく酸化し、凹凸を生じた。そのため、高周波焼入れ後の特性(高周波焼入れ部品の特性)において、ローラーピッチング疲労耐久性、曲げ疲労耐久性が不十分であった。
Claims (7)
- 化学成分が、質量%で、
C:0.40〜0.70%、
Si:0.01〜3.0%、
Mn:0.1〜2.0%、
Cr:0.05〜3.0%、
S:0.0001〜0.1%、
Al:0.001〜0.50%、
N:0.001〜0.020%、
B:0〜0.0050%、
W:0〜0.50%、
Mo:0〜1.0%、
V:0〜1.0%、
Nb:0〜0.30%、
Ti:0〜0.20%、
Zr:0〜0.05%、
Sb:0〜0.10%、
Sn:0〜0.10%、
Cu:0〜2.0%、
Ni:0〜2.0%、
Ca:0〜0.010%、
Mg:0〜0.010%、
Te:0〜0.10%
を含有し、
P:0.05%以下、
O:0.0050%以下、
に制限し、
残部がFe及び不純物であり、
鉄窒素化合物層が表面から深さ方向の厚みにして10μm以下に制限され、
表面から深さ方向に50μm位置における窒素濃度が0.20質量%以上、炭素濃度が0.40質量%以上である
ことを特徴とする高周波焼入れ部品の素形材。 - 前記化学成分が、質量%で、
B:0.0003〜0.0050%、
W:0.0025〜0.5%、
Mo:0.05〜1.0%、
V:0.05〜1.0%、
Nb:0.005〜0.30%、
Ti:0.005〜0.20%、
Zr:0.0005〜0.05%
から選択される1種以上を含有している
ことを特徴とする請求項1に記載の高周波焼入れ部品の素形材。 - 前記化学成分が、質量%で、
Sb:0.0005〜0.10%、
Sn:0.01〜0.10%、
Cu:0.01〜2.0%、
Ni:0.01〜2.0%
から選択される1種以上を含有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の高周波焼入れ部品の素形材。 - 前記化学成分が、質量%で、
Ca:0.0005〜0.010%、
Mg:0.0005〜0.010%、
Te:0.0005〜0.10%
から選択される1種以上を含有する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の高周波焼入れ部品の素形材。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載の高周波焼入れ部品の素形材に、最高加熱温度が850〜1100℃である高周波焼入れを施して得られることを特徴とする高周波焼入れ部品。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の化学成分を有する鋼を、雰囲気ガスがNH3、CO及びCO2を含有する雰囲気の中で、500℃〜600℃の第1の温度域で1時間以上保定することによって軟窒化する窒化工程を有し、
前記窒化工程では、炭素ポテンシャルを0.03以上に設定し、かつ、前記第1の温度域が500℃〜550℃未満の場合には、下記式(a)で示される窒化ポテンシャルKNが下記(a1)式を満足し、前記第1の温度域が550℃〜600℃の場合には、前記窒化ポテンシャルKNが下記(a2)式を満足するように設定する
ことを特徴とする高周波焼入れ部品の素形材の製造方法。
KN=PNH3/PH2 3/2 (a)
{−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.44}×1.25≧KN≧{−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.29}×1.25 (a1)
{−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.44}×1.25≧KN≧0.21×1.25 (a2)
ここで、PNH3は雰囲気ガスのNH3分圧であり、PH2は雰囲気ガスのH2分圧であり、Tは単位℃での前記窒化工程での前記雰囲気ガスの温度である。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載の化学成分を有する鋼を、雰囲気ガスがNH3、CO及びCO2を含有する雰囲気の中で、500℃〜600℃の第1の温度域で1時間以上保定することによって軟窒化する窒化工程と、
軟窒化された前記鋼を、850℃〜1100℃の第2の温度域に加熱した後に冷却する高周波焼入れを行う工程と
を有し、
前記窒化工程では、炭素ポテンシャルを0.03以上に設定し、かつ、前記第1の温度域が500℃〜550℃未満の場合には、下記式(a)で示される窒化ポテンシャルKNが下記(a1)式を満足し、前記第1の温度域が550℃〜600℃の場合には、前記窒化ポテンシャルKNが下記(a2)式を満足するように設定する
ことを特徴とする高周波焼入れ部品の製造方法。
KN=PNH3/PH2 3/2 (a)
{−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.44}×1.25≧KN≧{−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.29}×1.25 (a1)
{−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.44}×1.25≧KN≧0.21×1.25 (a2)
ここで、PNH3は雰囲気ガスのNH3分圧であり、PH2は雰囲気ガスのH2分圧であり、Tは単位℃での前記窒化工程での前記雰囲気ガスの温度である。
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