JP2016204697A - 高周波焼入れ部品の素形材、高周波焼入れ部品、及びそれらの製造方法 - Google Patents

高周波焼入れ部品の素形材、高周波焼入れ部品、及びそれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、被削性を確保しつつ、曲げ疲労強度及び面疲労強度に優れた高周波焼入れ部品を得るための素形材(高周波焼入れ部品の素形材)を提供することを目的とする。
【解決手段】化学成分が、質量%で、C:0.40〜0.70%、Si:0.01〜3.0%、Mn:0.1〜2.0%、Cr:0.05〜3.0%、S:0.0001〜0.1%、Al:0.001〜0.50%、N:0.001〜0.020%を含有し、必要に応じてB、W、Mo、V、Nb、Ti、Zr、Sb、Sn、Cu、Ni、Ca、Mg、Teをさらに含有し、P:0.05%以下、O:0.0050%以下に制限し、残部がFe及び不純物であり、鉄窒素化合物層が表面から深さ方向の厚みにして10μm以下に制限され、表面から深さ方向に50μm位置における窒素濃度が0.20質量%以上、炭素濃度が0.40質量%以上である。
【選択図】図1

Description

本発明は、高周波焼入れ部品の素形材、及びこの素形材に高周波焼入れを施して得られる高周波焼入れ部品、並びにそれらの製造方法に関する。
自動変速機の歯車や無段変速機のシーブ、等速ジョイント、ハブなどの動力伝達部品は、高い面疲労強度が要求される。従来、一般に上記した部品には、その素材として、JIS SCr420、SCM420等のC含有量が0.2%前後の肌焼鋼に浸炭焼入れ処理を施すことによって、表面近傍にC含有量が0.8%前後のマルテンサイト組織の硬化層を形成させた鋼材が使用されている。表面に上記のような硬化層を有する鋼材を用いて製造された部品は、優れた面疲労強度を有する。しかしながら、浸炭焼入れはオーステナイト変態を伴う950℃前後の高温で、5〜10時間、場合によっては10時間以上もの長時間の処理となる。そのため、浸炭焼入れを行う場合、結晶粒粗大化による熱処理変形(焼入れ歪)が大きくなるという問題がある。このため高い精度が要求される部品の場合には、浸炭焼入れされた後、研削やホーニング等の仕上げ加工を施さなければならない。
また、歯車等の部品は、過負荷による歯元での曲げ疲労破壊に対する強度が必要なので、高い面疲労強度特性に加えて、高い曲げ疲労強度が要求される場合も多い。
近年、地球環境負荷低減の観点から部品の軽量化による燃費向上のニーズが高まりつつあり、その実現のために、部品の高強度化が求められている。上記のような部品の高強度化において、ネックとなるのは、面疲労強度と歯車などの歯元での曲げ疲労強度である。
このような高強度化要求に対し、JIS SCr420、SCM420等を用いて浸炭処理を行う従来の方法から、高周波焼入れや窒化といった新しい熱処理方法を取り入れることによる曲げ疲労強度や面疲労強度、耐食性といった特性の優れる鋼材の開発が検討されている。
しかしながら、高周波焼入れや窒化を行う場合、以下のような問題がある。
(1)高周波焼入れは表層部の必要な部分のみ加熱焼入れを行うため、浸炭プロセスに比べて効率良く表面が硬化した部品を得ることができる。しかしながら、高周波焼入れのみで浸炭焼入れ材と同等の硬さを得るとすれば、C含有量が0.8%以上の鋼を用いる必要がある。C含有量を0.8%以上とした場合、面疲労強度の向上には不必要な内部の硬さも上昇するので、被削性が著しく劣化する。すなわち、被削性の観点からC含有量を増加できないので、高周波焼入れのみでの面疲労強度向上には限界がある。
(2)窒化は鋼材の変態点以下の500〜600℃位の温度域で、主として窒素を鋼材表層部に拡散浸透させることにより硬化層を形成する表面硬化法である。また、軟窒化は同様に窒素と炭素とを同時に鋼材表層部に拡散浸透させることにより硬化層を形成する表面硬化法である。窒化、軟窒化のいずれも、耐摩耗性・耐焼付性・耐疲労性等を向上させる表面硬化法である。窒化、軟窒化の際には、鋼材表層部では拡散浸透した窒素により窒化物が生成する。窒化または軟窒化後の鋼材は、一般的に最表面に主にFe2−3N(以下、εと記す場合がある)、FeN(以下、γ’と記す場合がある)等のFe窒化物からなる鉄窒素化合物層が形成され、その内部には、Nが拡散した窒素拡散層が形成される。
窒化は浸炭の場合と比較して低温で処理ができる事から、低歪が要求される部品への適用が多い。また、窒化処理した鋼材表面では窒素濃度が高くなり、耐食性が向上するというメリットもある。しかしながら、窒化だけでは硬化層深さが小さいので、高い面圧が加わるトランスミッション歯車等への適用は困難である。
そこで、最近では、高周波焼入れ及び窒化のそれぞれの欠点を補い、より優れた機械的性質、特に面疲労強度を発揮する手法として、窒化後に高周波焼入れを施すことが試みられている。
例えば、特許文献1には、高周波焼入れとガス軟窒化を組み合わせることによりそれぞれ単独での欠点を補い、焼戻し軟化抵抗向上によって面疲労強度に優れた機械構造用部品を得ようとする方法が提案されている。しかしながら特許文献1の技術で得られる部品では表面硬度は高いものの、窒化層中のN濃度が低いため高温硬さは低い。そのため、稼動中に高温となる歯車等に適用した場合、表面において十分な焼戻し軟化抵抗を発揮することが出来ず、高い面疲労強度を得ることができない。また、特許文献1の技術では、高周波焼入れ時の鉄窒素化合物層(高周波焼入れ前はε主体の相)からの脱窒および酸化の影響を避けることができないので、これに起因した表層部の組織の不均質や表面凹凸が増長され、曲げ疲労強度や面疲労強度が低下することが懸念される。
特許文献2には、窒化層深さが150μm以上となる条件で窒化処理し、引き続いて高周波焼入れ処理することを特徴とする、面圧疲労強度に優れた機械構造部品の製造方法が提案されている。しかしながら、特許文献2の技術では、窒素濃度の規定が無いため、十分な焼戻し軟化抵抗を発揮することが出来ず、必ずしも良好な面疲労強度を有することができない。また、高周波焼入れ時の鉄窒素化合物層(高周波焼入れ前はε主体の相)からの脱窒および酸化の影響を避けることができないので、これに起因した表層部の組織の不均質や表面凹凸が増長され、曲げ疲労強度や面疲労強度が低下することが懸念される。
特許文献3には、窒化処理で鉄鋼基材の表面に窒素化合物層を形成し、窒素化合物層に覆われた鉄鋼基材の表層部に窒素を拡散浸透させる、焼入れ鉄鋼部材の製造方法及び焼入れ鉄鋼部材が開示されている。この方法では、焼入れ雰囲気をアンモニアガス雰囲気、真空中または低酸素雰囲気等とする高周波焼入れにより、焼入れ後に酸化されていない窒素化合物層を1μm以上残存させることが記載されている。また、その結果として、表面に形成する窒素化合物層に2GPaを超える高面圧が作用しても窒素化合物層の鋼素地に対する剥離強度が大きく、摺動性に優れ、摩耗に強く、焼き付き抵抗性が高い特性を有することが記載されている。しかしながら、特許文献3の技術では、脱炭を防止する窒化条件については考慮されていないので、窒化時の脱炭による表面の炭素濃度の低下によって、高周波焼入れ後の鉄鋼基材の硬さが充分に得られずに面疲労強度が低下することが懸念される。
特許第3145517号公報 特開平6−346142号公報 特開2011−032536号公報
本発明は、上記の実情に鑑みてなされた。本発明は、被削性を確保しつつ、曲げ疲労強度及び面疲労強度に優れた高周波焼入れ部品を得るための素形材(高周波焼入れ部品の素形材)を提供することを課題とする。
また、本発明は、上記の素形材を高周波焼入れすることによって得られる高周波焼入れ部品であって、曲げ疲労強度及び面疲労強度に優れた高周波焼入れ部品を提供することを課題とする。
さらに、本発明は、上記の高周波焼入れ部品の素形材及び高周波焼入れ部品の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、高周波焼入れ部品の曲げ疲労強度及び面疲労強度向上を向上させるためには、表面硬さの向上、表面異常層の抑制、適正な硬化層深さの確保、及び稼働中に最大で300℃程度まで温度上昇する稼働面での高温強度維持のための焼戻し軟化抵抗の向上が有効であることを見出した。
具体的には、鋼部品の表面硬さについては、表面から50μm深さにおける窒素濃度を0.20質量%以上、かつ、炭素濃度を0.40質量%以上とした素形材に高周波焼入れを施すことによって、表面から50μm深さにおいてビッカース硬度で700Hv以上の硬さ有する鋼部品が得られることを見出した。また、上述のような表面から50μm深さにおける窒素濃度及び炭素濃度を有する素形材は、0.40質量%以上のC含有量を有する鋼材に対し、脱炭を抑制しつつ窒化を行うことよって得られることを見出した。また、窒化により表層部に浸入した窒素は焼戻しによる軟化を防止する効果を有する。そのため、上記の鋼部品は、300℃で焼戻しが行われても、表面から50μm深さにおいてビッカース硬度で700Hv以上の硬さを確保できることを見出した。
また、本発明者らは、窒化時に素形材の表層部に形成する鉄窒素化合物層が厚い場合には、脱窒反応に起因する窒素濃度の不均質組織の形成や脱窒反応で形成したボイドに酸素が侵入することで粒界酸化を生じることを明らかにした。さらに、このような窒素濃度の不均質組織や粒界酸化が表層に存在すると、高周波焼入れ後の面疲労強度や曲げ疲労強度が低下することを明らかにした。
さらに、高周波焼入れ後の硬化層深さは高周波焼入れ条件によって変化することが知られているが、高温あるいは長時間加熱すると、高周波焼入れ時に脱窒および酸化による表面軟化を避けることができない。したがって、一般的に、高周波焼入れ条件を緩和(焼入れ時の最高到達温度の低減、短時間加熱など)しない限り、高周波焼入れ後の組織を均質にすることができないと考えられていた。しかしながら、本発明者らは、窒化時に表層部に形成する鉄窒素化合物層の厚みを低減することで上記の異常組織の発生を防止することが可能となり、十分な硬化層深さを得たうえで面疲労強度や曲げ疲労強度を向上することができることを見出した。
本発明は上記の知見に基づいて完成したものであり、その発明の要旨は以下のとおりである。
(1)化学成分が、質量%で、C:0.40〜0.70%、Si:0.01〜3.0%、Mn:0.1〜2.0%、Cr:0.05〜3.0%、S:0.0001〜0.1%、Al:0.001〜0.50%、N:0.001〜0.020%、B:0〜0.0050%、W:0〜0.50%、Mo:0〜1.0%、V:0〜1.0%、Nb:0〜0.30%、Ti:0〜0.20%、Zr:0〜0.05%、Sb:0〜0.10%、Sn:0〜0.10%、Cu:0〜2.0%、Ni:0〜2.0%、Ca:0〜0.010%、Mg:0〜0.010%、Te:0〜0.10%を含有し、P:0.05%以下、O:0.0050%以下、に制限し、残部がFe及び不純物であり、鉄窒素化合物層が表面から深さ方向の厚みにして10μm以下に制限され、表面から深さ方向に50μm位置における窒素濃度が0.20質量%以上、炭素濃度が0.40質量%以上であることを特徴とする高周波焼入れ部品の素形材。
(2)前記化学成分が、質量%で、B:0.0003〜0.0050%、W:0.0025〜0.5%、Mo:0.05〜1.0%、V:0.05〜1.0%、Nb:0.005〜0.30%、Ti:0.005〜0.20%、Zr:0.0005〜0.05%から選択される1種以上を含有していることを特徴とする(1)に記載の高周波焼入れ部品の素形材。
(3)前記化学成分が、質量%で、Sb:0.0005〜0.10%、Sn:0.01〜0.10%、Cu:0.01〜2.0%、Ni:0.01〜2.0%から選択される1種以上を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の高周波焼入れ部品の素形材。
(4)前記化学成分が、質量%で、Ca:0.0005〜0.010%、Mg:0.0005〜0.010%、Te:0.0005〜0.10%から選択される1種以上を含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一項に記載の高周波焼入れ部品の素形材。
(5)(1)〜(4)のいずれか一項に記載の高周波焼入れ部品の素形材に、最高加熱温度が850〜1100℃である高周波焼入れを施して得られることを特徴とする高周波焼入れ部品。
(6)(1)〜(4)のいずれか一項に記載の化学成分を有する鋼を、雰囲気ガスがNH、CO及びCOを含有する雰囲気の中で、500℃〜600℃の第1の温度域で1時間以上保定することによって軟窒化する窒化工程を有し、前記窒化工程では、炭素ポテンシャルを0.03以上に設定し、かつ、前記第1の温度域が、500℃〜550℃未満の場合には、下記式(a)で示される窒化ポテンシャルKが下記(a1)式を満足し、前記第1の温度域が550℃〜600℃の場合には、前記窒化ポテンシャルKが下記(a2)式を満足するように設定することを特徴とする高周波焼入れ部品の素形材の製造方法。
=PNH3/PH2 3/2 (a)
{−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.44}×1.25≧K≧{−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.29}×1.25 (a1)
{−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.44}×1.25≧K≧0.21×1.25 (a2)
ここで、PNH3は雰囲気ガスのNH分圧であり、PH2は雰囲気ガスのH分圧であり、Tは単位℃での前記窒化工程での前記雰囲気ガスの温度である。
(7)(1)〜(4)のいずれか一項に記載の化学成分を有する鋼を、雰囲気ガスがNH、CO及びCOを含有する雰囲気の中で、500℃〜600℃の第1の温度域で1時間以上保定することによって軟窒化する窒化工程と、軟窒化された前記鋼を、850℃〜1100℃の第2の温度域に加熱した後に冷却する高周波焼入れを行う工程とを有し、前記窒化工程では、炭素ポテンシャルを0.03以上に設定し、かつ、前記第1の温度域が500℃〜550℃未満の場合には、下記式(a)で示される窒化ポテンシャルKが下記(a1)式を満足し、前記第1の温度域が550℃〜600℃の場合には、前記窒化ポテンシャルKが下記(a2)式を満足するように設定することを特徴とする高周波焼入れ部品の製造方法。
=PNH3/PH2 3/2 (a)
{−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.44}×1.25≧K≧{−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.29}×1.25 (a1)
{−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.44}×1.25≧K≧0.21×1.25 (a2)
ここで、PNH3は雰囲気ガスのNH分圧であり、PH2は雰囲気ガスのH分圧であり、Tは単位℃での前記窒化工程での前記雰囲気ガスの温度である。
本発明の上記各態様によれば、歯車、無段変速機、等速ジョイント、ハブ、軸受等の自動車等の動力伝達部品に好適な、高い面疲労強度及び曲げ疲労強度を有した高周波焼入れ部品を得るための素形材(高周波焼入れ部品の素形材)及び、この素形材を用いて得られる、高い面疲労強度及び曲げ疲労強度を有した高周波焼入れ部品を提供することができる。そのため、本発明は自動車の高出力化および低コスト化等に大きく寄与することができ、産業上の利用可能性が高い。
曲げ疲労試験に用いた試験片の形状を示す図である。
本発明の一実施形態に係る高周波焼入れ部品の素形材(以下、本実施形態に係る素形材と言う場合がある)及び、本発明の別の実施形態に係る高周波焼入れ部品(以下、本実施形態に係る高周波焼入れ部品と言う場合がある)について、説明する。
本実施形態に係る素形材は、化学成分が、質量%で、C:0.40〜0.70%、Si:0.01〜3.0%、Mn:0.1〜2.0%、Cr:0.05〜3.0%、S:0.0001〜0.1%、Al:0.001〜0.50%、N:0.001〜0.020%を含有し、必要に応じてさらに、B:0.0050%以下、W:0.50%以下、Mo:1.0%以下、V:1.0%以下、Nb:0.30%以下、Ti:0.20%以下、Zr:0.05%以下、Sb:0.10%以下、Sn:0.10%以下、Cu:2.0%以下、Ni:2.0%以下、Ca:0.010%以下、Mg:0.010%以下、Te:0.10%以下から選択される1種以上を含有し、P:0.05%以下、O:0.0050%以下に制限し、残部がFe及び不純物であり、鉄窒素化合物層が表面から深さ方向の厚みにして10μm以下に制限され、表面から深さ方向に50μm位置における窒素濃度が0.20質量%以上、炭素濃度が0.40質量%以上である。
本実施形態において、高周波焼入れ部品とは、高周波焼入れ部品の素形材に高周波焼入れ(ただし、高周波焼入れ後に焼戻ししても良い)を施したものを指し、例えば、自動車用の動力伝達に使用される歯車等の高い面疲労強度が要求される部品を想定している。また、高周波焼入れ部品の素形材は、高周波焼入れ部品を得るために高周波焼入れに供される素材であって、窒化処理(軟窒化、プラズマ窒化など窒化方法を問わず、また、窒化後に研削等の機械加工を施してもよい。)が施されたものを指す。
また、本実施形態に係る高周波焼入れ部品は、本実施形態に係る素形材に最高加熱温度が850〜1100℃である高周波焼入れを施して得られる。本実施形態に係る高周波焼入れ部品は、残留γや窒化物、及び粒界酸化等から成る不均質な表層異常層を含まない、または、表層異常層の生成が最小限に留められている。
先ず、本実施形態に係る素形材の化学組成の規定理由を説明する。本実施形態において、化学組成は、表面から厚みの(断面が円形の場合には、直径の)1/4の位置において測定される値であり、窒化層などの表層部において測定される値ではない。以下の説明において、化学成分における質量%は、単に%と記載する。
<C:0.40〜0.70%>
Cは、鋼の強度を得るために重要な元素である。また、Cは、高周波焼入れ前の組織においてフェライト分率を低減し、高周波焼入れ時の硬化能を向上させて、硬化層深さを大きくするために必要な元素である。C含有量が0.40%未満ではフェライト分率が高くなり、高周波焼入れ時の硬化能が不足する。よって、C含有量を0.40%以上とする。好ましくは0.45%以上、より好ましくは0.50%以上である。一方、C含有量が多すぎると被削性や鍛造性を著しく害するだけでなく、高周波焼入れ時に焼割れの発生する可能性が大きくなる。そのため、C含有量は0.70%以下とする。
<Si:0.01〜3.0%>
Siは、焼入層の焼戻し軟化抵抗を向上させることにより、焼入れ後の面疲労強度を向上させる効果を有する元素である。その効果を得るために、Si含有量を0.01%以上とする。好ましくは0.25%以上である。一方、Si含有量が3.0%を超えると鍛造時の脱炭が著しくなる。よって、Si含有量は3.0%以下とする。
<Mn:0.1〜2.0%>
Mnは、焼入れ性の向上、焼戻し軟化抵抗の増大により焼入れ後の面疲労強度を向上させるのに有効な元素である。この効果を得るため、Mn含有量を0.1%以上とする。好ましくは0.4%以上である。一方、Mn含有量が2.0%を超えると、母材の硬さは大幅に上昇し、窒化前の被削性が著しく劣化する。このため、Mn含有量は2.0%以下とする。
<Cr:0.01〜3.0%>
Crは、窒化物を形成し、窒化時の窒素濃度向上に寄与するとともに、焼戻し軟化抵抗を向上させ、面疲労強度を向上させるのに有効な元素である。この効果を得るため、Cr含有量を0.01%以上とする。好ましくは0.20%以上である。さらに好ましくは0.40%以上である。但し、Cr含有量が3.0%を超えると被削性が悪化するため、Cr含有量は3.0%以下とする。好ましくは2.0%以下である。
鋼がSnを含有する場合には、Cr含有量が0.05%以上であると、腐食環境下での面疲労強度がさらに向上する。
<S:0.0001〜0.1%>
Sは、鋼材の表面に濃化することにより窒化時にNの鋼材への侵入を妨げる。そのため、Sを含有すると、鋼材の窒化が阻害される。S含有量が0.1%を超えると窒化の阻害が著しくなり、さらに、鍛造性も著しく劣化する。従って、S含有量を0.1%以下とする。一方、Sは被削性を向上させる効果がある。そのため、S含有量を、0.0001%以上としてもよい。
<Al:0.001〜0.50%>
Alは、窒化物として鋼中に析出分散することにより、高周波焼入れ時のオーステナイト組織の細粒化に有効な元素である。また、Alは、焼入れ性を高めて硬化層深さを大きくする元素である。またAlは、被削性向上にも有効な元素である。これらの効果を得るため、Al含有量を0.001%以上とする。好ましくは0.010%以上である。さらにAlは、窒化時にNと化合物を形成し、表層部のN濃度を高める効果があり、面疲労強度向上にも有効な元素である。この点からも、Al含有量を0.001%以上とする。一方、Al含有量が0.50%を超えると、高周波加熱時にオーステナイトへの変態が完了しにくく、焼入れ性が低下する。そのため、Al含有量は0.50%以下とする。
<N:0.001〜0.020%>
Nは、各種窒化物を形成して高周波加熱時のオーステナイト組織の細粒化に有効に働く。そのため、N含有量を、0.001%以上とする。一方、Nは鋼の硬さを上昇させるとともに、Alと結合してAlNを生成し、被削性向上に有効な固溶Alを減少させてしまう。そのためN含有量が過剰であると、被削性は劣化する。また、Nは、高温域の延性を低下させ、更に粗大AlNや粗大BNが生成することにより、母材を著しく脆化させる。母材が脆化すると、圧延や鍛造時に割れが発生する。N含有量が、0.020%超の場合に、被削性の劣化及び母材の脆化が著しいのでN含有量を0.020%以下に制限する。
<P:0.05%以下>
Pは不純物として含有される。Pは、粒界に偏析して鋼の靭性を低下させるので、極力低減する必要があり、少ないほど好ましい。P含有量が0.05%を超えると靭性の低下が著しいので、P含有量を0.05%以下に制限する。P含有量を0%とすることは困難なので、P含有量の下限を、工業的限界の0.0001%としてもよい。
<O:0.0050%以下>
Oは、AlやSiO等の酸化物系介在物として鋼中に存在する。Oが多いと上記酸化物が大型化してしまい、これを起点として動力伝達部品の破損に至る。そのため、O含有量は少ないほど好ましいが、O含有量が0.0050%を超えるとその影響が特に大きくなるので、O含有量を0.0050%以下に制限する。O含有量は0.0020%以下が望ましく、0.0015%以下がより望ましい。O含有量を0%とするのは困難なので、O含有量の下限を、工業的限界の0.0001%としてもよい。
本実施形態に係る素形材は、上記の化学成分を含有し、残部がFe及び不純物からなることを基本とする。しかしながら、本実施形態に係る素形材は、必要に応じて、鋼材強化元素であるB、W、Mo、V、Nb、Ti、Zr、酸化抑制による曲げ疲労強度向上元素であるSb、Sn、Cu、Ni、硫化物微細化による曲げ疲労強度向上元素である、Ca、Mg、Teの1種以上を以下に示す範囲で、Feの一部に代えてさらに含んでもよい。
ただし、これらの元素は必ずしも含有させる必要はないので、その下限は0%である。ここで、不純物とは、鋼材を工業的に製造する際に、鉱石若しくはスクラップ等のような原料、又は製造工程の種々の環境から混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
[鋼材強化元素]
本実施形態に係る素形材は、さらに、次に示す鋼材強化元素の内の1種または2種以上を含有してもよい。
<B:0.0003〜0.0050%>
Bは、鋼中のNと結合することにより、BNとして析出して被削性向上に寄与する。また、Bは、高周波加熱時にBNが分解してBとなり、焼入れ性を大きく向上させることで、面疲労強度向上に寄与する。これらの効果を得る場合には、B含有量を0.0003%以上とすることが好ましい。一方、B含有量が0.0050%を超えてもその効果は飽和し、むしろ圧延や鍛造時の割れの原因ともなる。そのため、Bを含有させる場合でも、B含有量を0.0050%以下とする。
<W:0.0025〜0.50%>
Wは、鋼の焼入性を向上させて面疲労強度を向上させるのに有効な元素である。この効果を得る場合、W含有量を0.0025%以上とすることが好ましい。より好ましくは、0.01%以上、さらに好ましくは、0.03%以上である。一方、W含有量が0.50%を超えると被削性が劣化する。そのため、Wを含有させる場合でも、W含有量を0.50%以下とする。
<Mo:0.05〜1.0%>
Moは、焼入層の焼戻し軟化抵抗を向上させることにより、面疲労強度を向上させる効果を有する。また、Moは、焼入層を強靭化して曲げ疲労強度を向上する効果も有する。これらの効果を得る場合、Mo含有量を0.05%以上とすることが好ましい。一方、Mo含有量が1.0%を超えると、その効果が飽和する上、経済性が損なわれる。そのため、Moを含有させる場合でも、Mo含有量を1.0%以下とする。
<V:0.05〜1.0%>
Vは、窒化物として鋼中に析出分散することにより、高周波焼入れ時のオーステナイト組織を細粒化する効果を有する元素である。この効果を得る場合、V含有量を0.05%以上とすることが好ましい。一方、V含有量が1.0%を超えるとその効果は飽和する上、経済性が損なわれる。そのため、Vを含有させる場合でも、V含有量を1.0%以下とする。
<Nb:0.005〜0.30%>
Nbは、窒化物として鋼中に析出分散することにより、高周波焼入れ時のオーステナイト組織を細粒化する効果を有する元素である。この効果を得る場合、Nb含有量を0.005%以上とすることが好ましい。一方、Nb含有量が0.30%を超えるとその効果は飽和する上、経済性が損なわれる。そのため、Nbを含有させる場合でも、Nb含有量を0.30%以下とする。
<Ti:0.005〜0.20%>
Tiは、窒化物として鋼中に析出分散することにより、高周波焼入れ時のオーステナイト組織を細粒化する効果を有する元素である。この効果を得る場合、Ti含有量を0.005%以上とすることが好ましい。一方、Ti含有量が0.20%を超えると析出物が粗大化して鋼が脆化する。そのため、Tiを含有させる場合でも、Ti含有量を0.20%以下とする。
<Zr:0.0005〜0.05%>
Zrは、窒化物として鋼中に析出分散することにより、高周波焼入れ時のオーステナイト組織を細粒化する効果を有する元素である。この効果を得る場合、Zr含有量を0.0005%以上とすることが好ましい。一方、Zr含有量が0.05%を超えると析出物が粗大化して鋼が脆化する。そのため、Zrを含有させる場合でも、Zr含有量を0.05%以下とする。
[酸化抑制による曲げ疲労強度向上元素]
本実施形態に係る素形材は、さらに、次に示す、酸化抑制による曲げ疲労強度向上元素の内、1種または2種以上を含有してもよい。
<Sb:0.0005〜0.10%>
Sbは、表面偏析傾向の強い元素であり、外部からの酸素の吸着による酸化を防止するのに有効な元素である。この酸化防止効果を確実に発揮させるためには、Sb含有量を0.0005%以上とすることが好ましい。一方、Sb含有量が0.10%を超えるとその効果は飽和する。そのため、効率性を考慮して、Sbを含有させる場合でも、Sb含有量を0.10%以下とする。
<Sn:0.01〜0.10%>
Snは、単独で含有された場合、及び/またはCrと同時に含有された場合に、耐食性を向上させる元素である。この耐食性向上効果を確実に発揮させるためには、Sn含有量を0.01%以上とすることが好ましい。一方、Sn含有量が過剰になると熱間延性が低下し、鋼材製造時の鋳造、圧延で疵を発生させる原因となることがある。そのため、Snを含有させる場合でも、Sn含有量を0.10%以下とする。
<Cu:0.01〜2.0%>
Cuは、酸化する際に鋼材表面に濃化し、後続の酸化反応を抑制する効果を有する。この効果を確実に発揮させるためには、Cu含有量を0.01%以上とすることが好ましい。一方、Cu含有量が2.0%を超えると、機械的性質の点では効果が飽和する上、熱間延性が低下するため、圧延時に疵が形成されやすくなる。そのため、Cuを含有させる場合でも、Cu含有量を2.0%以下とする。
<Ni:0.01〜2.0%>
Niは、Cuと同様に、酸化する際に鋼材表面に濃化し、後続の酸化反応を抑制する効果を有する元素である。この効果を確実に発揮させるためには、Ni含有量を0.01%以上とすることが好ましい。一方、Ni含有量が2.0%を超えると、被削性が悪化する。そのため、Niを含有させる場合でも、Ni含有量を2.0%以下とする。
また、Niは、熱間延性を改善させる元素として機能し、CuやSnによる熱間延性の低下を抑制できる。この効果を得る場合、Ni含有量とSn含有量とCu含有量とが下記1式を満たすことが好ましい。
0.12×Cu+Sn−0.1×Ni≦0.15・・・(1)
式中のCu、Sn、Niはそれぞれの元素の含有量(質量%)である。
[硫化物微細化による曲げ疲労強度向上元素]
本実施形態に係る素形材は、さらに、部品で曲げ疲労強度の向上も求められる場合に、次に示す、硫化物微細化によって曲げ疲労強度向上させる元素を含有させてもよい。
<Ca:0.0005〜0.010%>
<Mg:0.0005〜0.010%>
<Te:0.0005〜0.10%>
Ca、Mg、Teは、圧延時にMnSが延伸するのを抑制し、曲げ疲労強度をさらに向上させる元素である。この効果を確実に得るためには、単独でまたは複合的に、Ca含有量を0.0005%以上、Mg含有量を0.0005%以上、Te含有量を0.0005%以上とすることが好ましい。しかし、各元素の含有量が上記を超えると、その効果が飽和する上、経済性が損なわれる。そのため、Ca、Mg及び/またはTeを含有させる場合でも、Ca含有量を0.010%以下、Mg含有量を0.010%以下、Te含有量を0.10%以下とする。
本実施形態に係る素形材に高周波焼入れを行っても、化学組成は変化しない。そのためので、本実施形態に係る高周波焼入れ部品の化学組成は、本実施形態に係る素形材の化学組成と同じである。
次に、本実施形態に係る素形材において、鉄窒素化合物層の厚み、表面から深さ方向に50μm位置における窒素濃度及び炭素濃度を限定した理由を説明する。
<鉄窒素化合物層>
鋼材を窒化した場合、表層部に鉄窒素化合物層が生成する。この鉄窒化物層は、γ´相(ガンマプライム:FeN)及びε相(Fe2−3N)である。本発明者らは、この鉄窒素化合物層の厚みが大きい場合には、次工程で高周波焼入れを行った際に、残留γや窒化物、及び粒界酸化を含む不均質な表層異常層が生成することを明らかにした。また、この表層異常層の生成を防止するためには、窒化後の鉄窒素化合物層の厚みを充分に小さくする必要があり、具体的には窒化後の鉄窒素化合物層の厚みを10μm以下に制限する必要があることを明らかにした。窒化時に表層部に形成する鉄窒素化合物層の厚みが大きい場合には、脱窒反応に起因する窒素濃度の不均質組織や脱窒反応で形成したボイドに酸素が侵入することで生じる粒界酸化等が原因となり、高周波焼入れ後の組織に異常層を生じる。このような異常層は、曲げ疲労や面疲労強度を大きく低下させる原因となる。そのため、本実施形態に係る素形材では、表層部に生成する鉄窒素化合物層を表面から深さ方向の厚みにして10μm以下に制限することを特徴とする。鉄窒素化合物層の厚みを10μm以下に抑制することで、高周波焼入れ後の異常組織の形成を防止し曲げ疲労強度及び面疲労強度を向上させることができる。鉄窒素化合物の厚みは、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは2μm以下であり、最も好ましくは、鉄窒素化合物層の厚みが0μm、すなわち、鉄窒素化合物層が生成されないことである。
<表面から深さ方向に50μm位置における窒素濃度及び炭素濃度>
鋼部品の面疲労強度の向上には、300℃焼戻し後の硬さをビッカース硬度で700Hv以上とすることが重要である。本発明者らは、高周波焼入れ部品の素形材の段階で、表面から50μm深さの位置において、窒化によって窒素濃度を0.20質量%以上とし、同時に、脱炭を抑制することで炭素濃度を0.40質量%以上とすれば、高周波焼入れ後に、十分な表面硬さが得られ、さらに、300℃焼戻しを行った後でもビッカース硬度で700Hv以上を確保できることを明らかにした。
素形材の段階で、表面から50μm深さの位置において、窒素濃度が0.20質量%未満であると、高周波焼入れ後の軟化抵抗が不足する。また、炭素濃度が0.40質量%未満であると、高周波焼入れ後の硬さが低下し、300℃焼戻しを行った後の硬さも不足する。
表面から50μmの位置(表面から深さ方向に50μm位置)としたのは、マイクロビッカース等で硬さを測定する場合の工業的な限界距離という理由による。ここで、表面から50μmとは、表面の外周方向から法線方向に50μm内側の位置を指す。
本実施形態に係る高周波焼入れ部品は、本実施形態に係る素形材に高周波焼入れを行って得られる。したがって、本実施形態に係る高周波焼入れ部品は、残留γや窒化物、及び粒界酸化を含む不均質な表層異常層を有していない、または、表層異常層の生成が最小限に抑制されている。
また、本実施形態に係る高周波焼入れ部品は、300℃焼戻しを行った後でも表面から50μm深さにおいて、ビッカース硬度で700Hv以上の硬さを有する。
本実施形態に係る素形材及び本実施形態に係る高周波焼入れ部品の製造方法について説明する。
<本実施形態に係る素形材の製造方法>
上述したように、本実施形態に係る素形材は、表層部に深さ方向の厚みにして10μm以下の鉄窒素化合物層を有し、表面から深さ方向に50μm位置における窒素濃度が0.20質量%以上、炭素濃度が0.40質量%以上である。
窒化後の素形材において、表面から50μm深さの炭素濃度を0.40質量%以上とするためには、母材(窒化に供する鋼)の炭素濃度を0.40質量%以上とした上で、窒化時の脱炭を小さくする必要がある。
窒化時の脱炭を抑制する方法として、鉄窒素化合物層を積極的に成長させることで保護膜として作用させ、地鉄からの脱炭を抑制する手法も考えられる。しかしながら、本実施形態では、高周波焼入れ後の異常組織の原因となる鉄窒素化合物の厚みを小さくしなければ、目的とする高疲労強度が得られない。そのため、1つの手法として、窒化中に一酸化炭素および二酸化炭素ガスを流入させる手法(一般的に軟窒化と呼ばれる)の適用を検討した。検討の結果、軟窒化で炭素ポテンシャルを適切に制御すれば脱炭抑制が可能となることを明らかにした。具体的には、軟窒化時には一般的には制御されない炭素ポテンシャルを0.03以上に制御することで脱炭を抑制して、素形材の表面から50μm深さの炭素濃度を0.40質量%以上とすることが可能であることを確認した。
ここで、炭素ポテンシャルKcは、鋼を加熱する雰囲気の浸炭能力を示す指標であり、その温度で、そのガス雰囲気と平衡に達したときの鋼の表面の炭素濃度で表される。炭素ポテンシャルは雰囲気のCO濃度、HO濃度、H濃度から下記の式で求められる。
Kc=((CO濃度)×(H濃度))/(HO濃度)
また、鉄窒素化合物層の厚みを抑制し、且つ、窒素濃度を高くするには、窒化処理温度での窒化ポテンシャルを厳格に制御することが最も重要である。
縦軸に窒化ポテンシャル、横軸に温度をとり、窒化処理の際の窒化ポテンシャル及び温度条件で生成される窒化物の状態を示す図、すなわち鉄−窒素二元系の温度と窒化ポテンシャルとで生成する相を示す平衡状態図として、レーラー線図(例えば、“鉄の窒化と軟窒化”,アグネ技術センター刊,p.131)が知られている。一般に窒化ポテンシャルが上昇するとα相からγ´相へと、平衡状態で存在する相が変化する。窒化ポテンシャルが上昇すると、窒素濃度が高くなるが、鉄窒素化合物層の厚みも大きくなる。本発明者らは、鉄窒素化合物層の厚みを小さく抑制しつつ、50μm深さ位置において0.20質量%以上の窒素濃度を得る1つの方法として、窒化ポテンシャルKがγ´相の生成範囲内でα相とγ´相の境界付近で且つ0.21以上となるように温度やガス雰囲気を調整する方法が有効であることを確認した。レーラー線図のα/γ´の境界線を数値化した後、上方に平行移動させた線分上の点で実験を行い、500℃〜600℃の温度域について、温度域毎に適正な領域について定式化すると、以下の(b1)式、及び(b2)式の通りとなる。
<500℃〜550℃未満の場合>
−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.44≧K≧−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.29 (b1)
<550℃〜600℃の場合>
−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.44≧K≧0.21 (b2)
ここで、K=PNH3/PH2 3/2 (PNH3:雰囲気ガスのNH分圧、PH2:雰囲気ガスのH分圧)、T:単位℃での前記窒化工程での前記雰囲気ガスの温度。
しかしながら、本実施形態においては、窒化のうち、窒化中に一酸化炭素および二酸化炭素ガスを流入させる軟窒化を行う。軟窒化の場合、二酸化炭素の流入により、CO+H→CO+HOの反応が進行し、炉内の水素濃度が減少することに起因して窒化ポテンシャルK=PNH3/PH 3/2が影響を受けることが考えられる。窒化ポテンシャルはアンモニア投入量と炉内センサで測定された水素分圧を元に算出されるが、軟窒化の場合には、上記の影響で窒化ポテンシャルが高めに算出される。そのため、狙いの窒化ポテンシャルK=PNH3/PH2 3/2を上方に補正した値を採用することで狙いの窒素濃度、鉄窒素化合物層厚さに調整することを検討した。
本発明者らは、上記の式を基に、さらに実験を行った結果、上述した軟窒化の場合の水素濃度の低下の影響等も考慮し、上述した化学組成を有する鋼に窒化を行う場合、窒化ポテンシャルKが以下の式(a1)及び(a2)式を満足する必要があることを明らかにした。
<500℃〜550℃未満の場合>
{−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.44}×1.25≧K≧{−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.29}×1.25 (a1)
<550℃〜600℃の場合>
{−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.44}×1.25≧K≧0.21×1.25・・・(a2)
ここで、式中の1.25は、補正係数であり、種々の検討の結果導き出した値である。
窒化ポテンシャルKが式の左辺よりも大きい場合、鉄窒化物層厚みが大きく成長する。また、窒化ポテンシャルKが式の右辺よりも小さい場合、窒化後に目標となる窒素濃度が得られない。
すなわち、本実施形態に係る素形材は、上記の化学成分を有する鋼を、雰囲気ガスがNH、CO、COを含有する雰囲気の中で、500℃〜600℃の温度域(第1の温度域)で1時間(60分)以上保定することによって軟窒化する窒化工程を含む製造方法によって得ることができる。また、窒化(軟窒化)に際しては、炭素ポテンシャルを0.03以上に設定すること、かつ、前記第1の温度域が、500℃〜550℃未満の場合には、K=PNH3/PH2 3/2で示される窒化ポテンシャルKが下記(a1)式を満足すること、前記第1の温度域が550〜600℃の場合には、前記窒化ポテンシャルKが下記(a2)式を満足することが重要である。
<500℃〜550℃未満の場合>
{−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.44}×1.25≧K≧{−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.29}×1.25 (a1)
<550℃〜600℃の場合>
{−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.44}×1.25≧K≧0.21×1.25・・・(a2)
ここで、PNH3は雰囲気ガスのNH分圧、PHは雰囲気ガスのH分圧、Tは単位℃での前記窒化工程での前記雰囲気ガスの温度である。
ただし、本実施形態に係る素形材の製造方法は脱炭を抑制し、所定の炭素濃度、窒素濃度を得ることができ、かつ、表層の鉄窒素化合物層の厚みを所定の厚み以内に抑制することができれば、上記の軟窒化に限定されない。上記要件を満たす窒化処理であれば、ガス窒化、プラズマ窒化、イオン窒化等の軟窒化以外の手段を用いて構わない。
さらには、本願記載の化学成分からなる鋼を窒化処理後に所定の炭素濃度、窒素濃度を満足すれば、窒化処理後に鉄窒素化合物層を研磨して本願規定の範囲内に調整する方法を用いてもよい。
また、軟窒化工程以外の鋳造、圧延、鍛造などの工程については、要求される機械的特性等に応じて、公知の方法で行えばよい。
<本実施形態に係る高周波焼入れ部品の製造方法>
本実施形態に係る高周波焼入れ部品は、上記の製造方法で得られた高周波焼入れ部品の素形材に、高周波焼入れを行うことによって得られる。
すなわち、上述した高周波焼入れ部品の素形材の製造方法が含む、鋼を軟窒化する工程に加えて、高周波焼入れを行う工程を含む。
高周波焼入れを行う工程では、焼入れ温度(最高加熱温度)を850〜1100℃とし、この温度域(第2の温度域)から、冷却を行う。焼入れ温度が850℃未満であると、高周波焼入れにより素形材に十分な焼入れを施すことができず、初析フェライトが出現し、表面硬化層の硬さが不均一になり、面疲労強度は向上しない。また、表層部が十分にオーステナイト化せず、所望の焼入れ層深さを得ることができない。一方、焼入れ温度が1100℃を超えた場合には、表層部の酸化が著しくなり、表面性状の円滑さは充分に確保されない。この場合、面疲労強度が低下する。
また、十分に表層をオーステナイト化するため、850℃以上となる時間が、0.5秒以上1分以内であることが好ましい。
以下に本発明を実施例によって具体的に説明する。実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した1条件例であり、本発明は、この1条件例のみに限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得る。
表1に示す化学組成を有する鋼材を作製した。表1に示す化学組成を有する鋳片を熱間鍛造にてφ40mmに鍛伸し、850℃で1時間の加熱後に空冷を行う焼ならしを行った。その後、面疲労強度評価のためのローラーピッチング疲労試験用には、上記の熱処理後のφ40mmの中心から直径26mm、幅28mmの円筒部を有する小ローラー試験片に切削加工した。
小ローラー試験片は同一条件での軟窒化処理、高周波焼入れ、焼戻しを複数行い各条件について12本ずつ作製した。その内、各条件2本ずつを硬度測定などの材質調査用に使用し、残りの10本をローラーピッチング試験で面疲労強度を評価した。
具体的には、まず、小ローラー試験片について、軟窒化処理(各温度、各時間条件での軟窒化後、Nガス冷却、浸炭ガス組成:CO+CO流量調整、窒化ガス組成:N+NH流量調整により窒化ポテンシャルを制御)を施した。
この小ローラー試験片に対し、材質調査用の小ローラーを各1本ずつ使用し、EPMAにより窒素濃度と炭素濃度の線分析を行い、断面から50μm深さの窒素濃度と炭素濃度を測定した。また、同じ小ローラーを用いてSEMで観察を行い、鉄窒素化合物層の厚みを測定した。
次に、残りの小ローラー試験片に対し、表3に示す条件で高周波焼入れを施した後、150℃で1hrの焼戻し処理を行った。
次に、焼入れ焼戻しを行った小ローラー試験片10本を後述するローラーピッチング試験に供した。また、材質調査用の小ローラーの残り1本ずつを使用して300℃で60分の焼戻し処理を行った後、断面から50μm深さのビッカース硬度を測定した。ローラーピッチング疲労試験での鋼材の耐久性は、300℃焼戻し硬さと正の相関があることが一般に知られている。本発明では、300℃焼戻し硬さが、ビッカース硬さで700Hv以上を目標とした。
上記で作製した小ローラー試験片と別途作製した大ローラー試験片(SCM722の浸炭後表面研削)とを用いて標準的な面疲労強度試験であるローラーピッチング疲労試験を行った。ローラーピッチング疲労試験は、小ローラー試験片に種々のヘルツ応力の面圧で大ローラー試験片を押し付けて、接触部での両ローラー試験片の周速方向を同一方向とし、滑り率を−40%(小ローラー試験片よりも大ローラー試験片の方が接触部の周速が40%大きい)として回転させて試験を行った。上記接触部に潤滑油として供給するATF(AT用潤滑油)の油温は80℃とし、大ローラー試験片と小ローラー試験片との接触応力を3500MPaとした。試験打ち切り回数を1000万回(10回)とし、小ローラー試験片においてピッチングが発生せずに1000万回の回転数に達した場合、面疲労強度が十分高く、小ローラー試験片の耐久性(ローラーピッチング疲労耐久性)が十分確保されたと判断した。ピッチング発生の検出は試験機に備え付けてある振動計によって行い、振動検出後に両ローラーの回転を停止させてピッチングの発生と回転数を確認した。
また、上記に示すローラーピッチング疲労試験片と同様の条件で窒化処理、高周波焼入れ、および焼き戻しを行なった素材から、図1に示す寸法で環状V字型切欠き形状の切欠き付き小野式回転曲げ疲労試験片を作成し、この試験片を用いて回転曲げ疲労試験を行った。試験条件として、回転曲げ疲労曲げ応力を760MPaとした。また、試験打ち切り回数を10万回(10回)とし、破断せずに10万回に達した場合に耐久性が十分確保されたと判断した。
表2に窒化条件及び高周波条件、並びに材質調査結果及びローラーピッチング試験の結果、曲げ疲労強度試験結果を示す。
Figure 2016204697
Figure 2016204697
Figure 2016204697
試験No.1〜13は、本発明の化学成分範囲内にある表1の鋼材No.a〜kの鋼を用いた例であり、窒化後の表面から深さ方向に50μm位置の炭素濃度及び窒素濃度、並びに、鉄窒素化合物層の厚みも本発明の範囲内であった。また、試験No.1〜13は高周波焼入れ後において、いずれもローラーピッチング疲労試験において3500MPaの応力条件で1000万回耐久を確保している。また、曲げ疲労試験において、10万回耐久を確保している。
一方、試験No.14〜21の比較例のうち、試験No.17を除くすべての比較例において1000万回に到達する前に損傷が発生し、ローラーピッチング疲労試験において、ローラーピッチング疲労耐久性が不十分であった。試験No.17については、熱間鍛造時に割れが発生し試験片採取が不可能であったため、評価を行わなかった。
また、試験No.14〜21の比較例のうち、試験No.15、17、20を除くすべての比較例において10万回に到達する前に損傷が発生し、曲げ疲労試験において、曲げ疲労耐久性が不十分であった。試験No.17については、熱間鍛造時に割れが発生し試験片採取が不可能であったため、評価を行わなかった。
ここで一方、試験No.14〜17に示す鋼材No.l〜Oの鋼は、いずれかの化学成分が本発明範囲を逸脱していた。
試験No.14についてはC含有量が本発明の範囲より少ないため、窒化後の50μm深さの炭素濃度も本発明の範囲を下回っており、300℃焼戻し後の硬さが目標値であるビッカース硬さの700より低く、ローラーピッチング疲労耐久性が不十分であった。
試験No.15についてはCr含有量が本発明の範囲より少ないため、窒化後の50μm深さの窒素濃度が本願規定を下回っていた。その結果、十分な焼戻し軟化抵抗が得られず、300℃焼戻し後の硬さが、目標値であるビッカース硬さ700Hvより低く、ローラーピッチング疲労耐久性が不十分であった。
試験No.16についてはS含有量が本発明の範囲より多いため、MnSを起点とした損傷が発生し、ローラーピッチング疲労耐久性、曲げ疲労耐久性が不十分であった。
試験No.17についてはC含有量が本発明の範囲より多いため、熱間鍛造時に割れが発生し、その後の試験評価ができなかった。
試験No.18については、窒化が軟窒化ではなかったため、脱炭を抑制できず、窒化後の50μm深さの炭素濃度が本発明の範囲を下回っていた。その結果、300℃焼戻し後の硬さが目標値であるビッカース硬さ700Hvより低く、ローラーピッチング疲労耐久性が不十分であった。また、炭素濃度が低くなった結果、表層硬度が低く、曲げ疲労耐久性が不十分であった。
試験No.19については、窒化時の窒化ポテンシャルが高く、鉄窒素化合物層の厚みが本発明の範囲を上回っていた。その結果、高周波焼入れ後に異常組織が発生し、ローラーピッチング疲労耐久性、曲げ疲労耐久性が不十分であった。
試験No.20については、窒化時の窒化ポテンシャルが低く、窒化後の50μm深さの窒素濃度が本発明の範囲を下回っていた。その結果、十分な焼戻し軟化抵抗が得られず、300℃焼戻し後の硬さが目標値であるビッカース硬さ700Hvより低く、ローラーピッチング疲労耐久性が不十分であった。
試験No.21については、素形材の段階では、50μm深さの窒素濃度、炭素濃度、及び鉄窒化物層の厚みが、本発明を満足していた。しかしながら、この素形材に対して行った高周波焼入れ温度が高すぎたため、表層が著しく酸化し、凹凸を生じた。そのため、高周波焼入れ後の特性(高周波焼入れ部品の特性)において、ローラーピッチング疲労耐久性、曲げ疲労耐久性が不十分であった。
本発明によれば、自動車等の動力伝達部品用に適用できる高い面疲労強度、曲げ疲労強度を有した、歯車、無段変速機、等速ジョイント、ハブ、軸受等の高周波焼入れ部品の素形材及びその製造方法を提供することができ、これにより自動車の高出力化および低コスト化等に大きく寄与する。

Claims (7)

  1. 化学成分が、質量%で、
    C:0.40〜0.70%、
    Si:0.01〜3.0%、
    Mn:0.1〜2.0%、
    Cr:0.05〜3.0%、
    S:0.0001〜0.1%、
    Al:0.001〜0.50%、
    N:0.001〜0.020%、
    B:0〜0.0050%、
    W:0〜0.50%、
    Mo:0〜1.0%、
    V:0〜1.0%、
    Nb:0〜0.30%、
    Ti:0〜0.20%、
    Zr:0〜0.05%、
    Sb:0〜0.10%、
    Sn:0〜0.10%、
    Cu:0〜2.0%、
    Ni:0〜2.0%、
    Ca:0〜0.010%、
    Mg:0〜0.010%、
    Te:0〜0.10%
    を含有し、
    P:0.05%以下、
    O:0.0050%以下、
    に制限し、
    残部がFe及び不純物であり、
    鉄窒素化合物層が表面から深さ方向の厚みにして10μm以下に制限され、
    表面から深さ方向に50μm位置における窒素濃度が0.20質量%以上、炭素濃度が0.40質量%以上である
    ことを特徴とする高周波焼入れ部品の素形材。
  2. 前記化学成分が、質量%で、
    B:0.0003〜0.0050%、
    W:0.0025〜0.5%、
    Mo:0.05〜1.0%、
    V:0.05〜1.0%、
    Nb:0.005〜0.30%、
    Ti:0.005〜0.20%、
    Zr:0.0005〜0.05%
    から選択される1種以上を含有している
    ことを特徴とする請求項1に記載の高周波焼入れ部品の素形材。
  3. 前記化学成分が、質量%で、
    Sb:0.0005〜0.10%、
    Sn:0.01〜0.10%、
    Cu:0.01〜2.0%、
    Ni:0.01〜2.0%
    から選択される1種以上を含有する
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の高周波焼入れ部品の素形材。
  4. 前記化学成分が、質量%で、
    Ca:0.0005〜0.010%、
    Mg:0.0005〜0.010%、
    Te:0.0005〜0.10%
    から選択される1種以上を含有する
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の高周波焼入れ部品の素形材。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の高周波焼入れ部品の素形材に、最高加熱温度が850〜1100℃である高周波焼入れを施して得られることを特徴とする高周波焼入れ部品。
  6. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の化学成分を有する鋼を、雰囲気ガスがNH、CO及びCOを含有する雰囲気の中で、500℃〜600℃の第1の温度域で1時間以上保定することによって軟窒化する窒化工程を有し、
    前記窒化工程では、炭素ポテンシャルを0.03以上に設定し、かつ、前記第1の温度域が500℃〜550℃未満の場合には、下記式(a)で示される窒化ポテンシャルKが下記(a1)式を満足し、前記第1の温度域が550℃〜600℃の場合には、前記窒化ポテンシャルKが下記(a2)式を満足するように設定する
    ことを特徴とする高周波焼入れ部品の素形材の製造方法。
    =PNH3/PH2 3/2 (a)
    {−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.44}×1.25≧K≧{−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.29}×1.25 (a1)
    {−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.44}×1.25≧K≧0.21×1.25 (a2)
    ここで、PNH3は雰囲気ガスのNH分圧であり、PH2は雰囲気ガスのH分圧であり、Tは単位℃での前記窒化工程での前記雰囲気ガスの温度である。
  7. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の化学成分を有する鋼を、雰囲気ガスがNH、CO及びCOを含有する雰囲気の中で、500℃〜600℃の第1の温度域で1時間以上保定することによって軟窒化する窒化工程と、
    軟窒化された前記鋼を、850℃〜1100℃の第2の温度域に加熱した後に冷却する高周波焼入れを行う工程と
    を有し、
    前記窒化工程では、炭素ポテンシャルを0.03以上に設定し、かつ、前記第1の温度域が500℃〜550℃未満の場合には、下記式(a)で示される窒化ポテンシャルKが下記(a1)式を満足し、前記第1の温度域が550℃〜600℃の場合には、前記窒化ポテンシャルKが下記(a2)式を満足するように設定する
    ことを特徴とする高周波焼入れ部品の製造方法。
    =PNH3/PH2 3/2 (a)
    {−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.44}×1.25≧K≧{−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.29}×1.25 (a1)
    {−0.14/90×T+(500×0.14)/90+0.44}×1.25≧K≧0.21×1.25 (a2)
    ここで、PNH3は雰囲気ガスのNH分圧であり、PH2は雰囲気ガスのH分圧であり、Tは単位℃での前記窒化工程での前記雰囲気ガスの温度である。
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