JP2016204494A - 導電性高分子組成物、ならびに固体電解コンデンサ - Google Patents

導電性高分子組成物、ならびに固体電解コンデンサ Download PDF

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Abstract

【課題】バインダー等の非導電性のポリマー成分を用いずに、信頼性に優れた導電性高分子組成物、ならびに、ESR上昇を抑制した固体電解コンデンサを提供する。【解決手段】架橋剤と、該架橋剤と反応する官能基を有する第1ドーパントがドープされた導電性高分子と、溶媒または分散媒とを含む導電性高分子液を用い、該導電性高分子液から溶媒または分散媒を除去する熱処理によって架橋剤と第1ドーパントを架橋させた導電性高分子組成物を、コンデンサの固体電解質とする。【選択図】なし

Description

本発明は、導電性高分子組成物、導電性高分子組成物を固体電解質に用いた固体電解コンデンサに関し、詳しくは、低ESR、高信頼性の固体電解コンデンサに関する。
タンタル、アルミニウムなどの弁作用金属の多孔質体に、陽極酸化法によって誘電体酸化皮膜を形成した後、この酸化皮膜上に導電性高分子を形成し、これを固体電解質とする固体電解コンデンサが開発されている。
このような固体電解コンデンサは、従来用いられてきた二酸化マンガンを固体電解質とするコンデンサよりも等価直列抵抗(以下、ESRと称す)が低く、さまざまな用途に用いられ始めており、近年、集積回路の高周波化、大電流化のトレンドに伴い、ESRが低く、大容量かつ損失の小さい固体電解コンデンサが求められている。
固体電解コンデンサとして導電性高分子を用いた技術が知られている。
特許文献1には、ドーパントがドープされた導電性高分子と、オキサゾリン基含有化合物と、官能基として、カルボキシル基、芳香族性の水酸基、チオール基の少なくとも1つを有する水溶性化合物と、溶媒または分散媒とを含むことを特徴とする導電性高分子液が開示されている。また、この導電性高分子液から溶媒または分散媒を除去し、導電性高分子と、オキサゾリン基含有化合物と水溶性化合物から生成したアミドエステル結合体を含有することを特徴とする導電性高分子組成物が開示されている。
特許文献2には、導電性高分子と、ポリアニオンの少なくとも1種と、有機分散剤の少なくとも1種と、架橋剤の少なくとも1種とを含む導電性高分子懸濁溶液が開示されている。導電性高分子材料中の導電性高分子粒子が有機分散剤と架橋剤を介して結合することで、導電性高分子粒子同士の強固な結合で結ばれ、導電性の経時劣化を抑制できるとされている。
特開2013−171956号公報 特開2013−172742号公報
従来の導電性高分子組成物、ならびに固体電解コンデンサは、導電性高分子組成物を導電性高分子と、バインダー等のポリマー成分が溶媒中に分散される構成にしていたため、導電性高分子同士の接続が弱く、耐熱信頼性において導電性高分子組成物の導電率が低下してしまうという事があった。また当然ながら、その導電性高分子組成物を用いた固体電解コンデンサは、非導電性のポリマー成分を含むことで、ESRが上昇するという問題があった。
特許文献1の導電性高分子組成物や特許文献2の導電性高分子懸濁溶液においても、架橋構造が、水溶性の高分子化合物や分散剤としての高分子化合物等の非導電性のポリマー成分を用いるために、ESRの上昇は避けがたい。
また、高耐電圧のアルミコンデンサ(ALコンデンサ)を作製するにあたり、従来提案されているドーパントがポリスチレンスルホン酸(PSS)である導電性高分子では、誘電体層であるアルミ酸化皮膜が溶解してしまい、耐電圧の低下・信頼性の確保が出来なかった。このため、PSSに代わるドーパントがドープされた導電性高分子の開発が求められている。
本発明は、架橋剤と、該架橋剤と反応する官能基を有するドーパントがドープされた導電性高分子とを導電性高分子液に含む構成することで、バインダー等の非導電性のポリマー成分を全く、若しくは可能な限り用いずに、信頼性に優れた導電性高分子組成物、ならびに、ESR上昇を抑制した固体電解コンデンサを得るものである。
すなわち、本発明の一形態によれば、架橋剤と、該架橋剤と反応する官能基を有する第1ドーパントがドープされた導電性高分子と、溶媒または分散媒とを含むことを特徴とする導電性高分子液が提供される。
上記の導電性高分子液においては、前記架橋剤がオキサゾリン基含有化合物であることが好ましい。
また、前記架橋剤と反応する官能基がカルボキシル基、水酸基、メルカプト基から選ばれる官能基のうち少なくとも1つを有するドーパントであることが好ましく、第1ドーパントは架橋剤と反応する官能基を2つ以上有することが好ましい。第1ドーパントは分子量1000以下の低分子ドーパントであることが好ましい。さらに導電性高分子は、第1ドーパント以外に、架橋反応しない第2ドーパントがドープされていることが好ましい。
また、本発明の一形態によれば、上記の導電性高分子液から前記溶媒または前記分散媒を除去し、前記架橋剤と前記第1ドーパントを架橋させた導電性高分子組成物が提供される。
さらに本発明の一形態によれば、上記の導電性高分子液を80℃以上300℃以下で加熱して、前記溶媒または前記分散媒を除去して得られる導電性高分子組成物が提供される。
加えて、本発明の一形態によれば、上記の導電性高分子組成物を含む固体電解質を備える固体電解コンデンサが提供される。
この固体電解コンデンサは、弁作用金属からなる陽極導体の表面に誘電体層を形成する工程と、該誘電体層上に、上記の導電性高分子液を塗布または含浸する工程と、該導電性高分子液から溶媒または分散媒を除去して、導電性高分子組成物を含む固体電解質層を形成する工程とを有する固体電解コンデンサの製造方法、あるいは、弁作用金属からなる陽極導体の表面に誘電体層を形成する工程と、前記誘電体層上で、導電性高分子を与えるモノマーを酸化重合して、導電性高分子を含む第一の固体電解質層を形成する工程と、前記第一の固体電解質層上に、上記の導電性高分子液を塗布または含浸する工程と、該導電性高分子液から溶媒または分散媒を除去して、第二の固体電解質層を形成する工程とを有する固体電解コンデンサの製造方法によって形成することができる。
ドープされたドーパントの官能基の少なくとも一部と架橋剤とが反応して、形成される導電性高分子層の耐熱特性を向上させることができ、信頼性の高い固体電解コンデンサの提供が可能となる。また、抵抗成分となる非導電性のバインダーを用いる必要がなく、ESR上昇を抑制することができる。
本発明の一実施形態に係る固体電解コンデンサの概要を示す模式的断面図である。
<実施の形態1>
以下、本実施形態に係る導電性高分子液、その導電性高分子液から得られる導電性高分子組成物、ならびにそれを用いた固体電解コンデンサについて、詳細に説明する。
<導電性高分子液および導電性高分子組成物>
本実施形態に係る導電性高分子液は、架橋剤と、該架橋剤と反応する官能基を有する第1ドーパントがドープされた導電性高分子と、溶媒または分散媒とを含む。
ここで言う「導電性高分子液」とは、溶媒に導電性高分子が溶解した溶液、又は、分散媒中に導電性高分子が分散している分散液の両方を意味する。
溶媒としては、導電性高分子を溶解すれば特に制限は無く、単体の溶媒のみでも良く、複数の混和溶媒などでも良い。分散媒としては、導電性高分子を少なくとも分散状態で保持されるものであれば特に制限はなく、単体の分散媒でも良く、複数の分散媒の混合物でも良い。なお、溶媒と分散媒は、選択する導電性高分子の溶解性に依存し、溶媒と分散媒が同じ液体であることもある。溶媒または分散媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、酢酸等のプロトン性極性溶媒、エチレングリコール、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、アセトン等の非プロトン性極性溶媒等から、選択する導電性高分子に対して溶液とするか分散液とするかにより適宜選択することができる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
この導電性高分子液において、架橋剤は溶媒または分散媒に溶解しており、溶媒または分散媒の乾燥過程において、第1ドーパントと反応させることができる。乾燥により得られた導電性高分子組成物中には、偏在なく非水溶性の架橋物が存在することになり、その効果により基材への密着性と耐水性に優れた導電性高分子組成物となる。
導電性高分子液は溶解又は安定な分散状態であることが好ましいが、機械的攪拌により一時的な分散状態にあってもよい。
導電性高分子液のpHは架橋反応を阻害しない限りは特に限定されないが、pH値が低くなると、導電性高分子からドーパントが脱ドープしてしまい導電性を損なう可能性があるため、pH1〜12の間で使用することが望ましい。また、ALコンデンサへの使用の観点からは誘電体層であるアルミ酸化皮膜を溶解して、漏れ電流の上昇が起ることを防止するため、pH3以上であることが望ましい。pHの調整は、酸、アルカリ、あるいはpH緩衝剤などを添加することで調整することが出来る。
導電性高分子液に含まれる導電性高分子としては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンおよびそれらの誘導体が挙げられる。中でも、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)またはその誘導体が好ましい。導電性高分子は、ホモポリマーでもよく、コポリマーでもよく、1種でもよく、2種以上でもよい。
導電性高分子液における導電性高分子の含有量は、溶媒または分散媒100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、0.5〜20質量部であることがより好ましい。
<架橋剤>
導電性高分子液に含まれる架橋剤は、好ましくは、オキサゾリン系、多価アルコール、多価アミン、ヒドラジド系、イソシアネート系、カルボニルイミド系、エポキシ系よりなる群から選ばれた化合物の1種類以上を使用する。特にオキサゾリン系化合物が望ましい。下記に具体例を示すが、架橋剤は第1ドーパントが有する官能基と反応する構造を有していれば良く、例示の架橋剤に限定されない。
オキサゾリン系の架橋剤としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基を含むビニル系単量体を共重合したビニルあるいはアクリル樹脂等が挙げられる。市販品としては、日本触媒(株)製の「エポクロス」(登録商標)の品番「WS−300」、「WS−500」、「WS−700」(以上水溶性タイプ)、品番「K−2010E」、「K−2020E」、「K−2030E」(以上エマルションタイプ)などのオキサゾリン基含有ポリマー(水系架橋剤)が使用できる。
多価アルコールとしては、エチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、イノシトール、キシロース、グルコース、マンニトール、トレハロース、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、ペンタエリトリトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコールおよびこれらの誘導体等が好ましいが、エリスリトールまたはペンタエリトリトールがより好ましい。
また、多価アルコールは、3価以上であることが好ましい。3価以上の水溶性多価アルコールを用いると3次元架橋構造が得られ、2次元架橋構造に比べて吸水性が低く、耐水性にも優れている。その観点からも、エリスリトールまたはペンタエリトリトールがより好ましい。
エリスリトールは、例えば、ソルビトールやマルチトースなどに比べて結晶性が高いため、吸湿性が小さく、取扱いが容易である。また、エリスリトールは、甘味料として用いられる食品添加物として知られており、安全面および安定性にも優れており、さらに水に対する溶解度においても、例えば、エチレングリコールやグリセリンなどに比べて数倍高く、添加量の設計自由度が高い利点がある。
ペンタエリトリトールは、加熱すると徐々に昇華し、融点以上の加熱で脱水して重合する特徴を有している。これによって、有機材料の物性が変化し、密度および強度が向上する利点を有する。このような反応は、その化学構造に起因しており、例えば、エリスリトールやソルビトールのような化学構造では起こり難い。
多価アミンとしては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン、イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン等の芳香族ポリアミン、直鎖状ジアミン、テトラメチルグアニジン、トリエタノールアミン、ピペリジン、ピリジン、ベンジルジメチルアミン等の2級アミン類または3級アミン類、ダイマー酸とジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミンとを反応させて得たポリアミドアミンなどが挙げられる。
アジリジン基を含有する架橋剤としては、例えばN,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジカルボキシアミド)、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート)、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリエチレンメラミン、トリメチロールプロパン−トリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネート、ビスイソフタロイル−1−2−メチルアジリジン、トリ−1−アジリジニルフォスフィンオキサイド、トリス−1−2−メチルアジリジンフォスフィンオキサイド等が挙げられる。市販品としては、日本触媒(株)製の「ケミタイト」(登録商標)の品番「PZ−33」、「DZ−22E」などの多官能アジリジンが使用できる。
カルボジイミド基を含有する架橋剤としては、例えば、特開昭63−264128号公報、米国特許第4,820,863号明細書、米国特許第5,108,653号明細書、米国特許第5,047,588号明細書、米国特許第5,081,173号明細書などに記載されているものが使用できる。市販品としては日清紡(株)製の「カルボジライト」(登録商標)の品番「V−02」、「V−02−L2」、「V−04」、「V−06」などが使用できる。
イソシアネート系架橋剤としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物、イソシアネート基をフェノール、アルコール、カプロラクトン等と反応させたブロックイソシアネート化合物などが挙げられる。
ヒドラジン系架橋剤としては、モノ塩酸ヒドラジン、ジ塩酸ヒドラジン、モノ臭化水素ヒドラジン、炭酸ヒドラジン等のヒドラジン類、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)、セバシン酸ヒドラジド(SDH)、ドデカンジオヒドラジド(DDH)、イソフタル酸ジヒドラジド(IDH)、プロピオン酸ヒドラジド(PHZ)、サリチル酸ヒドラジド(SAH)、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ヒドラジド(HNH)、ベンゾフェノンヒドラゾン(BPH)、アミノポリアクリルアミド(APA)が挙げられる。
エポキシ基を含有する架橋剤としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、アリルフェノールグリシジルエーテル、1,4−ジヒドロキシメチルベンゼンジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、3−アリル−1,4−ジヒドロキシメチルベンゼンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールA ジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ダイマー酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジル、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ジグリシジルテトラフタレート、アルキルグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテルなどが挙げられる。市販品としては三菱化学株式会社のjERシリーズ、DIC株式会社のEPICLONシリーズなどが使用できる。
架橋剤は、架橋剤が有する官能基Aと、該官能基と反応する第1ドーパントが有する官能基Bとの比が、官能基モル比(B:A)で1.0:0.05〜1.0:10.0の範囲で導電性高分子液中に含まれることが好ましく、更に好ましくは1.0:0.2〜1.0:5.0の官能基モル比範囲で含まれることが望ましい。この範囲とすることで、未反応な化合物を極力少なくし、溶媒又は分散媒を除去して得られる導電性高分子組成物の強度や耐熱性を十分に向上させることができる。
但し、該導電性高分子組成物からなる導電性高分子層に接する他材料との界面での結着性改善のため、未反応の官能基を残しておく場合は、その後その他材料と反応し未反応の官能基が消費されるため、このモル比から外れても良い。
架橋による耐熱性の変化の評価は、例えば導電性高分子組成物を高温環境に放置したときの抵抗率変化を確認する方法や、示差熱重量分析(TG/DTA)で行うことができる。有機構造の変化は、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)等で確認できる。
<架橋剤の官能基Aと、第1ドーパントの反応する官能基Bの組合せ>
架橋剤の官能基Aと第1ドーパントの反応する官能基Bの組み合わせは、架橋剤の種類と第1ドーパントの反応する官能基の組み合わせの中から、好適なものが選ばれる。架橋剤の架橋反応に用いられる官能基Aは、導電性高分子中の第1ドーパント同士を架橋するために2個以上有することが望ましい。
架橋剤の架橋反応に用いられる官能基Aと第1ドーパントの反応する官能基Bの組み合わせは架橋反応さえすれば特に限定されるものではないが、組合せの例を下記に示す。
官能基Aがオキサゾリン基である場合は、官能基Bはカルボキシル基、メルカプト基、水酸基、アミノ基、スルフィノ基(−S(=O)OH)が挙げられる。
官能基Aが水酸基、アミノ基である場合は、官能基Bはカルボキシル基、オキサゾリン基が挙げられる。
官能基Aがアジリジン基、カルボジイミド基である場合は、官能基Bはカルボキシル基が挙げられる。
官能基Aがイソシアネート基、ヒドラジンである場合は、官能基Bは水酸基が挙げられる。
官能基Aがエポキシ基である場合は、官能基Bは水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、スルホン酸基が挙げられる。
これらの中でも、官能基Aがオキサゾリン基で、官能基Bはカルボキシル基、メルカプト基、水酸基のうち少なくとも1種から選ばれる官能基である組み合わせが望ましい。特に官能基Bは芳香族性のカルボキシル基、水酸基、メルカプト基から選択されるものであることが好ましい。官能基Aと官能基Bの組み合わせは1対1、1対複数、複数対複数のいずれであってもよい。
架橋(硬化)の条件は、それぞれの架橋反応によって適宜選択されるが、例えば熱架橋、光架橋、X線架橋等が挙げられる。導電性高分子液から溶媒または分散媒を除去して、導電性高分子組成物を得る工程と同時に行えるため、熱架橋で行うことが簡便で望ましい。
この時、硬化速度調整剤を含んでも良い。硬化速度調整剤はそれぞれの架橋剤の架橋反応に用いられる官能基Aと第1ドーパントの反応する官能基Bの組み合わせによって適宜選択されるが、例えば、酸、アルカリ、酸無水物、イミダゾール、ホスフィン、ホスホニウム、フェノール、フェノール樹脂、アミンまたはこれらの誘導体やその塩が挙げられる。
<架橋剤と反応する官能基を有する第1ドーパント>
第1ドーパントとしては、架橋剤と反応する官能基を少なくとも1つ有し、導電性高分子に対して、電子を受け入れやすいアクセプター、もしくは電子を与えやすいドナーとなる構造を有するものであれば特に制限なく使用することができる。
第1ドーパントが有する官能基の少なくとも一部は導電性高分子にドープして導電性高分子の導電性発現に寄与している。特に、第1ドーパントとしては、架橋剤と反応する官能基以外に、導電性高分子へのドープに関与し、架橋剤と反応しない官能基を1つ以上持つものが望ましい。架橋剤と反応する官能基は、前述のように架橋剤の官能基と反応すれば特に限定されるものではないが、カルボキシル基、メルカプト基、水酸基、アミノ基、スルフィノ基、オキサゾリン基が挙げられる。また、第1ドーパントは低分子量であることが好ましく、分子量が1000以下であることが望ましい。
カルボキシル基を有する第1ドーパントは、共鳴構造を多く持ち加水分解反応を抑制する芳香族環、縮合環芳香族化合物を分子内に持つカルボン酸芳香化合物、カルボン酸縮合環芳香族化合物が望ましい。カルボン酸芳香化合物、カルボン酸縮合環芳香族化合物を使用することにより、耐水性が強化された導電性高分子組成物が得られる。カルボン酸芳香化合物、カルボン酸縮合環芳香族化合物は特に制限されないが、例としてオルト−フタル酸、ヘミメリト酸、トリメシン酸、メロファン酸、ベンゼンペンタカルボン酸、メリト酸等のカルボン酸芳香化合物や4−スルホフタル酸等のカルボン酸芳香化合物の誘導体、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物などのナフタレンをカルボン酸のみで置換したカルボン酸芳香族縮合化合物やこれらの誘導体、4−クロロ−1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物、4−スルホ−1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸などのカルボン酸芳香族縮合化合物やこれらの誘導体、2,3−アントラセンジカルボン酸無水物等のアントラセン環を持つもの、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾピレン、ベンゾピレン、クリセン、ピレン、トリフェニレン、コランニュレン、コロネン、オバレン等の多環芳香族炭化水素をカルボキシル化したもの、またはこれらの誘導体などが挙げられる。
メルカプト基を持つドーパントは、チオグリコール酸、メルカプトコハク酸、2−メルカプト酪酸、4−メルカプト酪酸、2−メルカプトエタノール、2−メルカプト安息香酸、3−メルカプト安息香酸、4−メルカプト安息香酸、o−アミノチオフェノール、m−アミノチオフェノール、p−アミノチオフェノール、2−ヒドロキシチオフェノール、3−ヒドロキシチオフェノール、4−ヒドロキシチオフェノールまたはこれらの誘導体などが挙げられる。
水酸基を持つドーパントは、サリチル酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシフタル酸、3−ヒドロキシ無水フタル酸、3.6−ジヒドロキシフタル酸、フェノールスルホン酸、3−ヒドロキシ−2,7−ナフタレンジカルボン酸、またはこれらの誘導体などが挙げられる。
アミノ基を持つドーパントは、アミノメタンスルホン酸、1−アミノ−2−ナフトール−4−スルホン酸、2−アミノ−5−ナフトール−7−スルホン酸、3−アミノプロパンスルホン酸、N−シクロヘキシル−3−アミノプロパンスルホン酸、o−アミノベンゼンスルホン酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、p−アミノベンゼンスルホン酸、4−アミノ−2−クロロトルエン−5−スルホン酸、4−アミノ−3−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−5−メトキシ−2−メチルベンゼンスルホン酸、2−アミノ−5−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−2−メチルベンゼン−1−スルホン酸、5−アミノ−2−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−3−メチルベンゼン−1−スルホン酸またはこれらの誘導体などが挙げられる。
スルフィノ基を持つドーパントは、メタンスルフィン酸、エタンスルフィン酸、イソプロピルスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸、シクロプロパンスルフィン酸、p−クロロベンゼンスルフィン酸の誘導体、ヒドロキシメタンスルフィン酸、L−システインスルフィン酸、2−アミノエタンスルフィン酸またはこれらの誘導体などが挙げられる。
また、架橋剤の官能基がエポキシ基である場合、スルホン酸基を有するドーパントが使用でき、後述する低分子スルホン酸またはその塩、あるいはスルホン酸基含有ポリ酸またはその塩などが使用できる。
更に、架橋作用のある第1ドーパントはドーパント性能が発現しにくい物質もあるため、架橋作用のある第1ドーパント単独で使用した場合、得られる導電性高分子組成物の導電率が低くなってしまうことがある。これを補うために架橋剤と反応する官能基を持つ第1ドーパント以外に、架橋剤と反応する官能基を持たない第2ドーパントを含むことがより望ましい。第2ドーパントは、無機酸のほか、低分子スルホン酸またはその塩、スルホン酸やカルボン酸を持つポリ酸またはその塩など、選択する架橋剤に対して適宜選択して使用すれば良い。以下に、第2ドーパントの例を示すが、第2ドーパントはこれに限定されず、選択する架橋剤によっては、第1ドーパントとして例示した化合物が使用できる場合がある。
無機酸としては、例えば硫酸、硝酸、燐酸、過塩素酸、テトラフルオロホウ酸、六フッ化燐酸等のプロトン酸などが使用できる。
低分子スルホン酸としてはアルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、カンファースルホン酸類、またはこれらの誘導体が使用できる。特に分子量1000以下の低分子有機酸であることが望ましい。
分子量1000以下の低分子有機酸は、ポリマー鎖が無いことや、または十分に短いことで、架橋剤と架橋した際に導電性高分子同士の接続を阻害しないため、分子量1000より大きいドーパントを用いた場合に比べ、得られる導電性高分子組成物の導電率の低下が小さくなる。また、ポリ酸を用いたときと比較して不要な官能基の数が少なくなり、絶縁性である架橋剤の添加量が少量で良いため、導電率の低下などの弊害も防ぐことが出来る。第2ドーパントは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
アルキルスルホン酸としては、例えば2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の誘導体、ドデシルベンゼンスルホン酸の誘導体などが挙げられる。
ベンゼンスルホン酸としては、例えばトルエンスルホン酸の誘導体、スチレンスルホン酸、またはこれらの誘導体などが挙げられる。
ナフタレンスルホン酸としては、例えば1−ナフタレンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、1,3−ナフタレンジスルホン酸、1,3,6−ナフタレントリスルホン酸、6−エチル−1−ナフタレンスルホン酸の誘導体などが挙げられる。
アントラキノンスルホン酸としては、例えばアントラキノン−1−スルホン酸、アントラキノン−2−スルホン酸、アントラキノン−2,6−ジスルホン酸、2−メチルアントラキノン−6−スルホン酸の誘導体などが挙げられる。
カンファースルホン酸としては、例えば(+)−10−カンファースルホン酸、(−)−10−カンファースルホン酸の誘導体などが挙げられる。また、ラセミ体でもよい。
低分子有機酸の塩としては、これらのアンモニウム塩、ナトリウム塩などが挙げられる。
これらの中でも、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸が好ましい。これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
ポリ酸としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸等のポリカルボン酸;ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸等のポリスルホン酸;およびこれらの構造単位を有する共重合体が挙げられる。中でも、ポリスチレンスルホン酸(PSS)が好ましい。ポリ酸は、1種でもよく、2種以上でもよい。ポリ酸の持つ官能基の少なくとも一部は導電性高分子にドープしており、導電性高分子に導電性を付与する。架橋作用の無いドーパントとしてポリ酸として用いる場合、用いる架橋剤はポリ酸の官能基と反応しないものを使用する必要がある。
ポリ酸の重量平均分子量は、2,000〜500,000であることが好ましく、10,000〜200,000であることがより好ましい。
導電性高分子液における第1及び第2ドーパントの合計含有量は、導電性高分子100質量部に対して20〜3,000質量部であることが好ましく、30〜1,000質量部であることがより好ましい。
本発明に係る導電性高分子液においては、これらのドーパントは導電性高分子にドープされており、単に導電性高分子液中にドーパント化合物が含まれているものではない。ドーパントを導電性高分子にドープするには、導電性高分子を与えるモノマーを重合する反応においてドーパント化合物を存在させておく。特に、硫酸鉄(III)等の酸化剤の存在下で重合させることが好ましい。そうすることで、導電性高分子のポリマー鎖間にドーパントが取り込まれ、ドープされる。このようにドープされたドーパントの官能基の一部と架橋剤とが反応して、形成される導電性高分子層の耐熱特性を向上させることができ、信頼性の高い固体電解コンデンサの提供が可能となる。
<固体電解コンデンサおよびその製造方法>
本実施形態に係る固体電解コンデンサは、上記の導電性高分子組成物を含む電解質層を有する。電解質層は、固体状であることが好ましい。本実施形態に係る固体電解コンデンサにおいては、固体電解質を形成する材料が高導電率であるため、低ESRの固体電解コンデンサとなる。さらに、架橋構造の効果により、基材への密着性と耐水性に優れる点から、電解コンデンサの信頼性も向上することが十分見込まれる。図1に、本実施形態に係る固体電解コンデンサ10の構造を示す模式的断面図を示す。この電界コンデンサは、陽極導体1上に、誘電体層2、固体電解質層3がこの順に形成された構造を有している。
陽極導体1は、弁作用金属の板、箔または線;弁作用金属の微粒子からなる焼結体;エッチングによって拡面処理された多孔質体金属などによって形成される。弁作用金属としては、タンタル、アルミニウム、チタン、ニオブ、ジルコニウムおよびこれらの合金などが挙げられる。中でも、アルミニウム、タンタルおよびニオブから選択される少なくとも1種の弁作用金属であることが好ましい。
誘電体層2は、陽極導体1の表面を電解酸化させることで形成することができる層であり、焼結体や多孔質体などの空孔部にも形成される。誘電体層2の厚みは、電解酸化の電圧によって適宜調整できる。
固体電解質層3は、上記の導電性高分子液または導電性高分子組成物を含む。固体高分子電解質層3は、単層構造でもよいが、多層構造でもよい。図1に示す固体電解コンデンサでは、固体高分子電解質層3が、第一の導電性高分子層3Aおよび第二の導電性高分子層3Bからなる。第一の導電性高分子層3Aに含まれる第一の導電性高分子と、第二の導電性高分子層3Bに含まれる第二の導電性高分子は、同一種の重合体であることが好ましい。
固体電解質層3は、導電性高分子以外に、二酸化マンガン、酸化ルテニウムなどの酸化物誘導体;TCNQ(7,7,8,8−テトラシアノキノジメタンコンプレックス塩)などの有機物半導体、電解液、イオン液体を含んでいてもよい。
固体電解質層3の形成方法としては、誘電体層2上に、前述の導電性高分子液を塗布または含浸し、その導電性高分子液から溶媒を除去する方法が挙げられる。また、図1に示す固体電解コンデンサにおける固体電解質層3は、誘電体層上に、第一の導電性高分子化合物を与えるモノマーの化学酸化重合または電解重合により、第一の導電性高分子層3Aを形成し、その第一の導電性高分子層3A上に、上記の導電性高分子液を塗布または含浸し、第二の導電性高分子層を形成する方法で形成することができる。
第一の導電性高分子化合物を与えるモノマーとしては、ピロール、チオフェン、アニリンおよびそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。このモノマーを化学酸化重合または電解重合して第一の導電性高分子化合物を得る際に使用するドーパントとしては、特に限定されないが、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェノールスルホン酸、スチレンスルホン酸およびその誘導体等のスルホン酸系化合物が好ましい。ドーパントの分子量としては、低分子化合物から高分子量体まで適宜選択して用いることができる。溶媒としては、水のみでもよく、水と水に可溶な有機溶媒とを含む混和溶媒でもよい。
また、ALコンデンサの場合、第一の導電性高分子層3Aを化学酸化重合または電解重合で形成する際に、ドーパントとして強酸性のスルホン酸基の含有量を下げるようにポリカルボン酸等の弱酸性ドーパントを併用することや、pHを調整して用いる事が好ましい。また、第一の導電性高分子層3Aとして、本発明に係る導電性高分子液を用いて塗布または含浸によって形成される導電性高分子組成物を用いることも好ましい。その場合、第二の導電性高分子層3Bとして、従来公知のPSSドーパントを含む導電性高分子水溶液等から形成される導電性高分子層を形成してもよい。
本発明に係る導電性高分子液を用いて塗布または含浸の方法としては、特に制限はされないが、十分に多孔質細孔内部へ導電性高分子液を充填させるために、塗布または含浸後に数分〜数10分放置することが好ましい。更には浸漬の繰り返しや、減圧方式または加圧方式が好ましい。
導電性高分子液からの溶媒の除去は、導電性高分子組成物を乾燥することで行うことができる。乾燥温度は、導電性高分子の分解温度以下であれば特に制限されないが、300℃以下が好ましく50℃以上200℃以下が特には望ましい。
以下、実施例を参照して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
<実施例1>
本実施例では、特許第2636968号を参考に導電性高分子液を製造し用いた。
水1000ml、モノマーである3,4−エチレンジオキシチオフェン(以下EDT)を25g、ドーパント兼分散剤であるポリスチレンスルホン酸(以下PSS)を100g、第1ドーパントとしてオルト−フタル酸(以下OPA)を1.6614g(10mmol)加えて十分攪拌した後、硫酸鉄(III)を2.5g加えて室温で48時間放置し重合し、ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン(以下PEDOT)にPSSとOPAがドープされた水溶液を得た。重合終了時、水溶液は濃紺色となっていた。重合を終え未反応の酸化剤など不純物を取り除いた。この重合後の導電性高分子にドープされているOPAの架橋剤と反応可能な官能基(2つのカルボキシル基の一方)と同molとなるように、日本触媒(株)製のオキサゾリン基含有ポリマー(商品名「エポクロスK−2010E」、以下OCP)を5.5556g(オキサゾリン基量:1.8mmol/g)加え十分に攪拌し、導電性高分子液を製造した。この導電性高分子液を、ガラス基板上に30μl滴下し乾燥を100℃で60分行い、ガラス基板上に導電性高分子組成物からなる膜を得た。得られた導電性高分子膜の導電率を、三菱化学アナリテック株式会社のロレスタGP MCT−T610型にて測定した抵抗値と膜厚みから初期導電率(S/cm)を算出した。その後、耐熱特性の評価として125℃の雰囲気下、無負荷で500時間放置したのち導電率を再度測定し、導電率変化率(=500時間放置後の導電率/放置前の導電率)を算出した。評価数は各10個とした。評価結果(平均値)を表1に示す。
<実施例2>
OCPの添加量を0.2778gとした以外は実施例1と同様にして導電性高分子液を製造した。そして、得られた導電性高分子液を用いた以外は、実施例1と同様にして、導電性高分子膜を形成し、その初期導電率をおよび導電率変化率を評価した。結果を表1に示す。
<実施例3>
OCPの添加量を55.5556gとした以外は実施例1と同様にして導電性高分子液を製造した。そして、得られた導電性高分子液を用いた以外は、実施例1と同様にして、導電性高分子膜を形成し、その初期導電率をおよび導電率変化率を評価した。結果を表1に示す。
<実施例4>
OCPの添加量を1.1111gとした以外は実施例1と同様にして導電性高分子液を製造した。そして、得られた導電性高分子液を用いた以外は、実施例1と同様にして、導電性高分子膜を形成し、その初期導電率をおよび導電率変化率を評価した。結果を表1に示す。
<実施例5>
OCPの添加量を27.7778gとした以外は実施例1と同様にして導電性高分子液を製造した。そして、得られた導電性高分子液を用いた以外は、実施例1と同様にして、導電性高分子膜を形成し、その初期導電率をおよび導電率変化率を評価した。結果を表1に示す。
<実施例6>
OCPの添加量を61.1116gとした以外は実施例1と同様にして導電性高分子液を製造した。そして、得られた導電性高分子液を用いた以外は、実施例1と同様にして、導電性高分子膜を形成し、その初期導電率をおよび導電率変化率を評価した。結果を表1に示す。
<実施例7>
OCPに代えてペンタエリスリトール(以下PETT)を使用し、PETTの添加量を0.3405g(2.5mmol)とした以外は実施例1と同様にして導電性高分子液を製造した。そして、得られた導電性高分子液を用いた以外は、実施例1と同様にして、導電性高分子膜を形成し、その初期導電率をおよび導電率変化率を評価した。結果を表1に示す。
<実施例8>
OCPに代えてヘキサメチレンジアミン(以下HMDA)を使用し、HMDAの添加量を0.5810g(5mmol)とした以外は実施例1と同様にして導電性高分子液を製造した。そして、得られた導電性高分子液を用いた以外は、実施例1と同様にして、導電性高分子膜を形成し、その初期導電率をおよび導電率変化率を評価した。結果を表1に示す。
<実施例9>
OCPに代えて日本触媒(株)製の多官能アジリジン(「ケミタイトPZ−33」商品名、以下PFA)を使用し、PFAの添加量を1.4166g(3.3mmol)とした以外は実施例1と同様にして導電性高分子液を製造した。そして、得られた導電性高分子液を用いた以外は、実施例1と同様にして、導電性高分子膜を形成し、その初期導電率をおよび導電率変化率を評価した。結果を表1に示す。
<実施例10>
OCPに代えてカルボジイミド基を含有する架橋剤(日清紡(株)製の「カルボジライトV−02−L2」(商品名)、以下CDZ)を使用し、CDZの添加量を3.8461g(NCN当量10mmol)とした以外は実施例1と同様にして導電性高分子液を製造した。そして、得られた導電性高分子液を用いた以外は、実施例1と同様にして、導電性高分子膜を形成し、その初期導電率をおよび導電率変化率を評価した。結果を表1に示す。
<実施例11>
導電性高分子重合時にPSSに代えて、ドデシルベンゼンスルホン酸(以下DBSA)を使用した以外は実施例1と同様にして導電性高分子液を製造した。
得られたPEDOTにはDBSAとOPAがドープされている。そして、得られた導電性高分子液を用いた以外は、実施例1と同様にして、導電性高分子膜を形成し、その初期導電率をおよび導電率変化率を評価した。結果を表1に示す。
<実施例12>
導電性高分子重合時にさらにp−トルエンスルホン酸(以下p−TSA)を30g加えた以外は実施例1と同様にして導電性高分子液を製造した。
得られたPEDOTにはPSSとOPAとp−TSAがドープされている。
そして、得られた導電性高分子液を用いた以外は、実施例1と同様にして、導電性高分子膜を形成し、その初期導電率をおよび導電率変化率を評価した。結果を表1に示す。
<実施例13>
導電性高分子重合時にさらに2−ナフタレンスルホン酸(以下NSA)を30g加えた以外は実施例1と同様にして導電性高分子液を製造した。得られたPEDOTにはPSSとOPAとNSAがドープされている。
そして、得られた導電性高分子液を用いた以外は、実施例1と同様にして、導電性高分子膜を形成し、その初期導電率をおよび導電率変化率を評価した。結果を表1に示す。
<実施例14>
導電性高分子重合時にさらに1,3,6−ナフタレントリスルホン酸(以下NTSA)を30g加えた以外は実施例1と同様にして導電性高分子液を製造した。得られたPEDOTにはPSSとOPAとNTSAがドープされている。そして、得られた導電性高分子液を用いた以外は、実施例1と同様にして、導電性高分子膜を形成し、その初期導電率をおよび導電率変化率を評価した。結果を表1に示す。
<実施例15>
導電性高分子重合時にOPAに代えて、4−ヒドロキシ安息香酸(重合時添加量1.3812g(10mmol)、以下HBA)を第1ドーパントとして使用し、架橋剤をOCPに代えてジフェニルメタンジイソシアネート(添加量2.5025g(10mmol)、以下DPMDI)とした以外は実施例1と同様にして導電性高分子液を製造した。得られたPEDOTにはPSSとHBAがドープされている。そして、得られた導電性高分子液を用いた以外は、実施例1と同様にして、導電性高分子膜を形成し、その初期導電率をおよび導電率変化率を評価した。結果を表1に示す。
<実施例16>
導電性高分子重合時にOPAに代えて、フェノールスルホン酸(重合時添加量1.7417g(10mmol)、以下PSA)を第1ドーパントとして使用し、架橋剤をOCPに代えてイソフタル酸ジヒドラジド(IDH)(添加量1.942g(10mmol))とした以外は実施例1と同様にして導電性高分子液を製造した。得られたPEDOTにはPSSとPSAがドープされている。そして、得られた導電性高分子液を用いた以外は、実施例1と同様にして、導電性高分子膜を形成し、その初期導電率をおよび導電率変化率を評価した。結果を表1に示す。
<実施例17>
架橋剤をOCPに代えてエチレングリコールジグリシジルエーテル(以下EGDGE)を使用し、EGDGEの添加量を7.31598g(42mmol)とした以外は実施例1と同様にして導電性高分子液を製造した。EGDGEのエポキシ基に対してドーパントのPSSのスルホン酸基、OPAのカルボキシル基のいずれとも反応して架橋することができる。そして、得られた導電性高分子液を用いた以外は、実施例1と同様にして、導電性高分子膜を形成し、その初期導電率をおよび導電率変化率を評価した。結果を表1に示す。
<実施例18>
導電性高分子重合時にOPAに代えて、5−スルホフタル酸(重合時添加量2.46189g(10mmol)、以下SPA)を第1ドーパントとし、架橋剤のOCPの添加量を11.1111gとした以外は実施例1と同様にして導電性高分子液を製造した。得られたPEDOTにはPSSとSPAがドープされている。そして、得られた導電性高分子液を用いた以外は、実施例1と同様にして、導電性高分子膜を形成し、その初期導電率をおよび導電率変化率を評価した。結果を表1に示す。
<実施例19>
導電性高分子重合時にOPAに代えて、4−ヒドロキシベンゼンチオール(重合時添加量1.2617g(10mmol)、以下HBT)をドーパントとした以外は実施例1と同様にして導電性高分子液を製造した。得られたPEDOTにはPSSとHBTがドープされている。そして、得られた導電性高分子液を用いた以外は、実施例1と同様にして、導電性高分子膜を形成し、その初期導電率をおよび導電率変化率を評価した。結果を表1に示す。
<実施例20>
導電性高分子重合時にOPAに代えて、HBA(重合時添加量1.3812g(10mmol))をドーパントとした以外は実施例1と同様にして導電性高分子液を製造した。得られたPEDOTにはPSSとHBAされている。そして、得られた導電性高分子液を用いた以外は、実施例1と同様にして、導電性高分子膜を形成し、その初期導電率をおよび導電率変化率を評価した。結果を表1に示す。
<実施例21>
導電性高分子重合時にフタル酸に代えて、フェノールスルホン酸(重合時添加量1.7417g(10mmol))をドーパントとした以外は実施例1と同様にして導電性高分子液を製造した。得られたPEDOTにはPSSとフェノールスルホン酸がドープされている。そして、得られた導電性高分子液を用いた以外は、実施例1と同様にして、導電性高分子膜を形成し、その初期導電率をおよび導電率変化率を評価した。結果を表1に示す。
<実施例22>
導電性高分子重合時にフタル酸に代えて、3−スルホ安息香酸ナトリウム(重合時添加量2.2417g(10mmol))をドーパントとした以外は実施例1と同様にして導電性高分子液を製造した。得られたPEDOTにはPSSと3−スルホ安息香酸(以下SBA)がドープされている。そして、得られた導電性高分子液を用いた以外は、実施例1と同様にして、導電性高分子膜を形成し、その初期導電率をおよび導電率変化率を評価した。結果を表1に示す。
<実施例23>
導電性高分子重合時にフタル酸を加えず、フタル酸をドープしない導電性高分子液を用い、EGDGEの添加量を71.417g(41mmol)とした以外は実施例17と同様にして導電性高分子液を製造した。得られたPEDOTにはPSSがドープされている。PSSのスルホン酸基はEGDGEのエポキシ基と架橋することができる。そして、得られた導電性高分子液を用いた以外は、実施例1と同様にして、導電性高分子膜を形成し、その初期導電率をおよび導電率変化率を評価した。結果を表1に示す。
<実施例24>
導電性高分子重合時にPSSを加えず、PSSをドープしない導電性高分子液を用いた以外は実施例12と同様にして導電性高分子液を製造した。得られたPEDOTにはp−TSAとOPAがドープされている。得られた導電性高分子液中の導電性高分子は、水への安定した分散性は無く攪拌を止めると沈殿した。そのため、機械攪拌を行い一時的な分散状態にしてから薄くガラス基板上に塗布し導電性高分子膜を形成した。実施例1と同様にして、導電性高分子膜を形成し、その初期導電率をおよび導電率変化率を評価した。結果を表1に示す。
<比較例1>
導電性高分子重合時にOPAを加えず、OPAをドープしない導電性高分子液を用いた以外は実施例1と同様にして、導電性高分子膜を形成し、その初期導電率をおよび導電率変化率を評価した。結果を表1に示す。得られたPEDOTにはPSSがドープされている。
<比較例2>
OCPを加えず架橋剤の無い導電性高分子液を用いた以外は実施例1と同様にして、導電性高分子膜を形成し、その初期導電率をおよび導電率変化率を評価した。結果を表1に示す。得られたPEDOTにはPSSとOPAがドープされている。
<比較例3>
OCPを加えず架橋剤の無い導電性高分子液を用いた以外は実施例12と同様にして、導電性高分子膜を形成し、その導電率をおよび信頼性を評価した。結果を表1に示す。
得られたPEDOTにはPSSとOPAとp−TSAがドープされている。
<比較例4>
水1000ml、モノマーであるEDTを25g、ドーパント兼分散剤であるPSSを100g加えて十分攪拌した後、硫酸鉄(III)を2.5g加えて室温で48時間放置し重合し、PEDOTにPSSがドープされた水溶液を得た。重合終了時、水溶液は濃紺色となっていた。重合を終え未反応の酸化剤など不純物を取り除いた。得られたPEDOTにはPSSがドープされている。
この水溶液にOPA(添加量1.6614g)とOCP(添加量5.5556g)を加え、十分に攪拌し導電性高分子液を製造した。このとき酸化剤を用いていないため、得られた導電性高分子液中のPEDOTには、OPAはドープされておらず、PSSのみドープされている。
この溶液を、ガラス基板上に30μl滴下し、乾燥を100℃で60分行い、ガラス基板上に導電性高分子組成物からなる膜を得た。得られた導電性高分子膜の導電率および信頼性を実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
<比較例5>
水1000ml、モノマーであるEDTを25g、ドーパント兼分散剤であるPSSを100g加えて十分攪拌した後、硫酸鉄(III)を2.5g加えて室温で48時間放置し重合し、PEDOTにPSSがドープされた水溶液を得た。重合終了時、この水溶液は濃紺色となっていた。重合を終え未反応の酸化剤など不純物を取り除いた。得られたPEDOTにはPSSがドープされている。この溶液に、架橋剤と反応する官能基が0.01molとなるように高松油脂株式会社製の「ペスレジンA684G」(商品名、カルボキシル基化ポリエステル/25wt%水溶液、以下CPE)とOCP(5.5556g)を後から添加した導電性高分子液を用いた以外は比較例4と同様にして、導電性高分子膜を形成し、その導電率をおよび信頼性を評価した。結果を表1に示す。得られた導電性高分子液のPEDOTにはCPEはドープされておらず、PSSのみドープされている。
Figure 2016204494
表1から明らかなように、架橋剤と、該架橋剤と反応する官能基を有する第1ドーパントがドープされた導電性高分子を含む導電性高分子液から得られた導電性高分子膜は良好な導電率を有し、導電率変化率にも優れており、信頼性に優れた導電性高分子層を形成できる。
<実施例25>
陽極導体として、エッチングにより拡面処理された3×4mmの多孔質体アルミニウム箔を用いて、モノマー溶液を入れた槽と、ドーパント及び酸化剤の溶液を入れた槽へ交互に数回浸漬を繰返し、多孔質体細孔内部にポリ3,4−エチレンジオキシチオフェンからなる導電性高分子層を化学重合法によって形成し、第一の固体電解質層3aを形成した。
この固体電解質層3aの上に、実施例1で製造した導電性高分子液を5μl滴下し、120℃10分間予備乾燥をおこなった後、本乾燥を165℃で60分行い、第二の固体電解質層3bを形成した。さらに、カーボン層4と銀層5を形成して、コンデンサ素子を作製した。これらのコンデンサ素子の100kHzでの初期ESRを測定した後、耐熱特性の評価として125℃の雰囲気下、無負荷で500時間放置したのち、100kHzでのESRを再度測定し、ESR変化率(=放置後のESR/放置前のESR)を算出した。評価数は、各10個とした。評価結果(平均値)を表2に示す。
<実施例26〜47>
実施例2〜23で作成した導電性高分子液を用いた以外は実施例25と同様にして導電性コンデンサ素子を製造した。そして、得られたコンデンサ素子を用いた以外は、実施例25と同様にして、ESRおよびESR変化率を評価した。結果を表2に示す。
<実施例48>
実施例24で作成した導電性高分子沈殿物にOCPを混練し、第一の固体電解質層3aの上に塗布して形成した以外は実施例25と同様にしてコンデンサ素子を製造した。そして、得られたコンデンサ素子を用いた以外は、実施例25と同様にして、ESRおよびESR変化率を評価した。結果を表2に示す。
<比較例6〜10>
比較例1〜5で作成した導電性高分子液を用いた以外は実施例25と同様にして、コンデンサ素子を形成し、ESRおよびESR変化率を評価した。結果を表2に示す。
Figure 2016204494
実施例では、初期ESRが低く、ESR変化率も小さい固体電解コンデンサを提供することができる。
1:陽極導体(弁作用金属)
2:誘電体層
3:固体電解質層
3A:第一の導電性高分子層
3B:第二の導電性高分子層
4:グラファイト層
5:銀層
6:導電接着剤
7:電極
8:金属リード(弁作用金属)
9:外装樹脂
10:固体電解コンデンサ

Claims (11)

  1. 架橋剤と、該架橋剤と反応する官能基を有する第1ドーパントがドープされた導電性高分子と、溶媒または分散媒とを含むことを特徴とする導電性高分子液。
  2. 前記架橋剤がオキサゾリン基含有化合物であることを特徴とする請求項1に記載の導電性高分子液。
  3. 前記第1ドーパントが有する、架橋剤と反応する官能基が、カルボキシル基、水酸基、メルカプト基から選ばれる官能基のうち少なくとも1つであることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性高分子液。
  4. 前記第1ドーパントは、架橋剤と反応する官能基を2つ以上有することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の導電性高分子液。
  5. 前記第1ドーパントの分子量は1000以下であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の導電性高分子液。
  6. 前記導電性高分子は、さらに、前記架橋剤と反応する官能基を有しない第2ドーパントがドープされていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の導電性高分子液。
  7. 請求項1乃至6のいずれか1項に記載の導電性高分子液から前記溶媒または前記分散媒を除去し、前記架橋剤と前記第1ドーパントを架橋させた導電性高分子組成物。
  8. 請求項1乃至6のいずれか1項に記載の導電性高分子液を80℃以上300℃以下で加熱して、前記溶媒または前記分散媒を除去して得られることを特徴とする、導電性高分子組成物。
  9. 請求項7または8に記載の導電性高分子組成物を含む固体電解質を備えることを特徴とする、固体電解コンデンサ。
  10. 弁作用金属からなる陽極導体の表面に誘電体層を形成する工程と、
    前記誘電体層上に、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の導電性高分子液を塗布または含浸する工程と、
    前記導電性高分子液から前記溶媒または前記分散媒を除去して固体電解質層を形成する工程と
    を有することを特徴とする、固体電解コンデンサの製造方法。
  11. 弁作用金属からなる陽極導体の表面に誘電体層を形成する工程と、
    前記誘電体層上で、導電性高分子を与えるモノマーを酸化重合して、導電性高分子を含む第一の固体電解質層を形成する工程と、
    前記第一の固体電解質層上に、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の導電性高分子液を塗布または含浸する工程と、
    前記導電性高分子液から前記溶媒または前記分散媒を除去して、第二の固体電解質層を形成する工程と
    を有することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
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