JP2016204238A - セラミック構造体およびセラミック構造体の製造方法 - Google Patents

セラミック構造体およびセラミック構造体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】外部から衝撃が加わったときに、CVD−SiC層の内部の本体までクラックが伝搬することのないセラミック構造体およびセラミック構造体の製造方法を提供する。【解決手段】本体20の表面21に形成されたCVD−SiC層30の表層31には、CVD−SiC層30の硬度よりも低い硬度のSiC表面層40が形成されている。このため、SiC表面層40は脆くクラックが入り易いので、クラックがSiC表面層40の面方向に伝搬することにより、衝撃エネルギーがSiC表面層40の面方向に拡散して、CVD−SiC層30に及ぼす影響を少なくでき、本体20までクラックが伝搬するのを防止できる。【選択図】図1

Description

本発明は、セラミック構造体およびセラミック構造体の製造方法に関する。
従来、セラミック部材の表面に、CVD法(化学気相蒸着法)によりSiCを析出させてCVD−SiC層を形成してセラミック構造体を製造する技術が知られている。
このようなセラミック構造体は、焼結法で製造されたSiC成形体に比較して緻密で高純度であり、耐食性、耐熱性、強度特性にも優れているため、半導体製造装置用の加熱ヒータやエッチング装置(エッチャー)、CVD装置等に用いられるダミーウエハ、サセプター、炉芯管等の各種部材として提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2006−16662号公報
ところで、CVD−SiC層は非常に緻密であり、雰囲気から内部に存在する基材を保護するのに有効である。一方、緻密であるが故に、外部から衝撃が加えられたときにクラックが生じると、そのままCVD−SiC層の深部までクラックが伝搬したり、場合によっては内部の基材(本体)までクラックが伝搬することもある。
本発明では、前記課題を鑑み、外部から衝撃が加わったときに、CVD−SiC層の内部の本体までクラックが伝搬することのないセラミック構造体およびセラミック構造体の製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための本発明のセラミック構造体は、SiCからなる本体と、前記本体の表面に形成されたCVD−SiC層と、前記CVD−SiC層の表層に形成されたSiC表面層と、を備え、前記SiC表面層の硬度は、前記CVD−SiC層の硬度よりも低い。
SiC表面層の硬度および弾性率は次の様に求める。
まず、CVD−SiC層(表面層)の表面に対して垂直な面でスライスし、厚さを1μmとする測定試料を作成する。
次に、ハイジトロンインコーポレイテッド製(Hysitron Inc.)のTriboIndenter(登録商標)TI950を用い、図1(C)における紙面に垂直な方向を押し込み方向とし、測定試料の表面から押し込み深さ(変位量)を50nmとして測定するナノインデンテーション法により測定する。
本発明のセラミック構造体は、SiCからなる本体と、本体の表面に形成されたCVD−SiC層とを有し、CVD−SiC層の表層にはSiC表面層が形成されている。そして、SiC表面層の硬度は、CVD−SiC層の硬度よりも低く設定されている。
このため、セラミック構造体に衝撃が加わったときに、最も外層であるSiC表面層に衝撃が加わるが、SiC表面層の硬度はCVD−SiC層の硬度よりも低いので脆く、クラックが入り易い。これにより、クラックがSiC表面層の面方向に伝搬することにより、衝撃エネルギーがSiC表面層の面方向に拡散するので、CVD−SiC層に及ぼす影響を少なくでき、本体までクラックが伝搬するのを防止できる。
ここで、SiC表面層の硬度は、CVD−SiC層の硬度の85%以上95%以下であることが好ましい。SiC表面層の硬度がCVD−SiC層の硬度の95%を超えていると、CVD−SiC層の硬度との差異が僅かであるため、SiC表面層が破壊された場合に、連鎖的にCVD−SiC層までも破壊されてしまう可能性がある。SiC表面層の硬度がCVD−SiC層の硬度の85%未満であると、僅かな衝撃でSiC表面層が変形してしまう可能性あるいは破壊されてしまう可能性があり、その後で大きな衝撃が作用した際にSiC表面層が十分に衝撃を吸収することができない。
さらに、本発明のセラミック構造体は、以下の態様であることが望ましい。
(1)前記SiC表面層の弾性率は、前記CVD−SiC層の弾性率よりも低い。
このため、セラミック構造体に衝撃が加わったときに、最も外層であるSiC表面層に衝撃が加わるが、SiC表面層の弾性率はCVD−SiC層の弾性率よりも低いので、外力に対する歪が大きくなり、クラックがSiC表面層の面方向に拡散する。これにより、CVD−SiC層に及ぼす影響を少なくでき、本体までクラックが伝搬するのを防止できる。
(2)前記SiC表面層の層厚が0.2〜0.5μmである。
CVD−SiC層は、5〜20μm程度の大きさの単結晶SiCが積層された構造となることが多い。ある程度の大きさを有する単結晶SiCが一定の方向に配向していると、特定の方向から衝撃が加わった際に、単結晶SiCの粒子の境界を基点としてクラックが発生し、境界面に沿ってCVD−SiC層の深くまでクラックが進展してしまう恐れがある。クラックの基点となる単結晶SiCの粒子の境界が露出しない様にすることが望まれるが、その一面からはSiC表面層は厚ければ厚いほど好ましい。0.05μm程度の薄いSiC表面層では効果が限定的であり、SiC表面層自体の形態安定性も好ましくない。一方で、SiC表面層が1μm以上の厚さになると、SiC表面層が破壊された際の変形量が大きくなり、CVD−SiC層も連鎖的に破壊されてしまう可能性がある。セラミック構造体の表面に凹凸が生じる可能性がある。また、SiC表面層が厚くなると、CVD−SiC層の特性が隠れてしまい、CVD−SiC層のメリットである気密性,熱伝導性,化学安定性などが得られなくなってしまう。
SiC表面層を0.2〜0.5μmとすると、CVD−SiC層のメリットを活かしつつ、本発明の効果を発現させることができる。
(3)前記SiC表面層はSiCの結晶方向がランダムである。
切削や研磨などによってCVD−SiC層の表面に位置するSiCの結晶方向に偏りが生じていたとしても、CVD−SiC層を覆うSiC表面層が存在するので、SiC表面層の特性が支配的となり、CVD−SiC層の結晶方向の影響は顕在化し難い。
そして、セラミック構造体の表面の特性として顕在化するのはSiC表面層の特性であり、SiC表面層を構成するSiC結晶の配向がランダムであるため、セラミック構造体全体としての表面特性はSiC結晶がランダムに配向した均一なものとなる。このため、切削や研磨などの加工を施しても、広い範囲で表面特性を均一に保持することができる。
SiC結晶の配向がランダムであるか否かは、次の様にして定義する。まず、CVD−SiC層を含むサンプル片から集束イオンビーム装置(FIB,株式会社日立ハイテクノロジーズ製FB2200)を用いて膜厚100nm断面薄膜試料を作製し、透過型電子顕微鏡(TEM,株式会社日立ハイテクノロジーズ製HF−2000)により断面方向から表面層における制限視野電子線回折図形を測定する。直径300nmの制限視野絞りにて表面層の5視野を選択して制限視野電子線回折図形を5枚測定し、得られた5枚の回折図形を画像処理により加算して1枚の回折図形を合成する。この合成された回折図形は、表面層中のπ×150nm×150nm×100nm×5(nm)の体積から得られた回折図形となる。この合成された回折図形が“リング状の回折パターンを示す”か、あるいは“一方向に強度分布を持つ回折パターンを示す”か、によって、それぞれ、“SiC結晶の配向がランダムである”、あるいは“SiC結晶は特定の方向に配向している”、と判断することができる。本件発明においては、回折図形を中心角45度で8分割し、8分割した全ての領域に回折点が存在する場合に“SiC結晶の配向がランダムである”と定義する。
(4)前記SiC表面層の結晶粒径は前記CVD−SiC層の結晶粒径よりも小さい。
前述した様に、CVD−SiC層は、5〜20μm程度の大きさのSiC結晶が積層された構造となることが多いが、ある程度の大きさを有するSiC結晶が一定の方向に配向していると、物理的特性や熱的特性の偏りが大きく現れ易い。
SiC表面層を構成するSiC結晶は配向がランダムであるが、個々のSiC結晶のサイズが大きければ、特性は均一とならず、却って偏りを生じさせてしまう。
SiC表面層を構成するSiC結晶のサイズをCVD−SiC層を構成するSiC結晶のサイズよりも小さくすることで、表面特性の均一化を図ることができる。
(5)前記SiC表面層の結晶粒径は0.01〜0.1μmである。
前述した様に、CVD−SiC層を構成するSiC結晶のサイズは5〜20μm程度であることが多いので、SiC表面層を構成するSiC結晶のサイズを0.01〜0.1μmとすることで、CVD−SiC層において生じる特性の偏りに対して、10%未満に抑えることができる。このため、表面特性の均一化をより一層図ることができる。
なお、前述した(1)の好適範囲と組み合わせ、SiC表面層の厚さは、構成するSiC結晶のサイズ(平均結晶粒径)の10〜50倍程度が好ましい。
表面層を構成するSiCの平均結晶粒径は次の様に求める。
SiC結晶の配向を確認するために制限視野電子線回折図形を測定する試料位置において、同様に透過型電子顕微鏡(TEM,株式会社日立ハイテクノロジーズ製HF−2000)を用いて断面TEM像を5視野撮影する(撮影倍率80,000倍、表示倍率500,000倍)。この際、微結晶の輪郭が明瞭になるように対物絞りを選択(40μm)し、試料傾斜ホルダを用いて適切な電子線入射角度を調整する。各視野のTEM像中で最も輪郭が明瞭な結晶粒を3個ずつ選び、そのTEM像面内における各結晶粒に外接する円の直径を測長して結晶サイズとする。得られた合計15個の結晶サイズから、最大値と最小値とを除いた13個の結晶サイズについて、平均値を算出し、これを表面層の結晶サイズとする。
前記課題を解決するための本発明のセラミック構造体の製造方法は、SiCからなる本体の表面にCVD処理を施してCVD−SiC層を形成した後、前記CVD−SiC層の表面に水が存在する状態でレーザー照射を行うことにより、前記CVD−SiC層の表層を加熱して昇華、その後冷却して再結晶させ、次いで前記CVD−SiC層の表層を固化させることによりSiC表面層を形成し、前記SiC表面層の硬度を前記CVD−SiC層の硬度よりも低くさせる。
なお、昇華と並行して、一部のSiCについては焼結が進むこともある。
すなわち、SiCからなる本体の表面にCVD処理を施して形成したCVD−SiC層の表層に、水が存在する状態でレーザー照射することにより、表層を加熱して昇華させ、その後冷却して再結晶させてSiC表面層を形成する。
このとき、水が存在する状態でレーザー照射してSiC表面層を加熱して昇華させるので、レーザー照射が終了すると水によって急冷され、SiC結晶が大きく成長しない(微小なSiC結晶となる)。このため、SiC表面層は微小なSiC結晶が寄り集まった構造となり、CVD−SiC層に比べて層を構成するSiC結晶粒子が小さい。外力が作用した場合、CVD−SiC層やSiC表面層を構成するSiC結晶粒子そのものが変形することは稀であり、通常は、隣接するSiC結晶粒子の境界面が離間して変形することが大勢を占める。SiC表面層は小さなSiC結晶が寄り集まった構造であるので、CVD−SiC層よりも変形し易い。このため、SiC表面層の硬度はCVD−SiC層の硬度よりも低くなる。
このため、セラミック構造体に衝撃が加わったときに、最も外層であるSiC表面層に衝撃が加わるが、SiC表面層の弾性率はCVD−SiC層の弾性率よりも低いので、外力に対する歪が大きくなり、クラックがSiC表面層の面方向に拡散する。これにより、CVD−SiC層に及ぼす影響を少なくできる。
また、水が存在する状態でレーザー照射して表面層を加熱して昇華させ、その後冷却して再結晶させるので、CVD−SiC層の表面に水が存在することでレーザー照射部分のみがピンポイントで高温となり、内部が高温となり難い。このとき、レーザー照射されている間は高温になるが、レーザー照射が終了すると水によって急冷され、SiC結晶が大きく成長しない(微小なSiC結晶となる)ことから、配向性が低いSiC表面層が得られる。
さらに、本発明のセラミック構造体の製造方法は、以下の態様であることが望ましい。
(1)前記表面層は、SiC結晶がランダム配向となる。
CVD−SiC層の表面層がレーザー照射によりランダム配向となるため、一層均一化される。
(2)前記レーザー照射に用いるレーザー光は、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザーの第2高調波または第3高調波を用いる。
YAGレーザー光(基本波)の波長は1064nmであり、第2高調波の波長は532nm、第3高調波の波長は355nmである。YAGレーザー光の波長が300〜900nmであると、水の光吸収率が10%未満であるので、水が存在する状況下でのレーザー照射に好適である。
(3)前記レーザー照射は、前記CVD−SiC層の表面を少なくとも2545℃まで加熱する。
CVD−SiC層は、2545℃まで加熱すると、SiCが昇華を開始する。
本発明によれば、CVD−SiC層の表面がランダムな配向のSiC結晶によって被覆されるので、切削や研磨などの加工を施した場合であっても、セラミック構造体の表面特性を均一に保持することができる。
本発明によれば、本体の表面に形成されたCVD−SiC層の表層には、CVD−SiC層の硬度よりも低い硬度のSiC表面層が形成されている。このため、SiC表面層は脆くクラックが入り易いので、クラックがSiC表面層の面方向に伝搬することにより、衝撃エネルギーがSiC表面層の面方向に拡散して、CVD−SiC層に及ぼす影響を少なくでき、本体までクラックが伝搬するのを防止できる。
本発明に係るセラミック構造体およびセラミック構造体の製造方法の全体図である。 図1(C)に相当する顕微鏡写真である。 実施例1の結晶粒子の配向を確認ための顕微鏡写真である。 比較・参考のための結晶粒子の配向を確認ための顕微鏡写真である。 (A)、(B)は、結晶粒子のサイズを確認するための顕微鏡写真である。 (A)、(B)は、結晶粒子のサイズを確認するための顕微鏡写真である。 (A)、(B)は、結晶粒子のサイズを確認するための顕微鏡写真である。 (A)、(B)は、結晶粒子のサイズを確認するための顕微鏡写真である。 (A)、(B)は、結晶粒子のサイズを確認するための顕微鏡写真である。
本発明のセラミック構造体およびセラミック構造体の製造方法について説明する。
前記課題を解決するための本発明のセラミック構造体は、SiCからなる本体と、前記本体の表面に形成されたCVD−SiC層と、前記CVD−SiC層の表層に形成されたSiC表面層と、を備え、前記SiC表面層の硬度は、前記CVD−SiC層の硬度よりも低い。
本発明のセラミック構造体は、SiCからなる本体と、本体の表面に形成されたCVD−SiC層とを有し、CVD−SiC層の表層にはSiC表面層が形成されている。そして、SiC表面層の硬度は、CVD−SiC層の硬度よりも低く設定されている。
このため、セラミック構造体に衝撃が加わったときに、最も外層であるSiC表面層に衝撃が加わるが、SiC表面層の硬度はCVD−SiC層の硬度よりも低いので脆く、クラックが入り易い。これにより、クラックがSiC表面層の面方向に伝搬することにより、衝撃エネルギーがSiC表面層の面方向に拡散するので、CVD−SiC層に及ぼす影響を少なくでき、本体までクラックが伝搬するのを防止できる。
SiC表面層の硬度および弾性率は次の様に求める。
測定試料の厚さを1μmに加工し、ハイジトロンインコーポレイテッド製(Hysitron Inc.)のTriboIndenter(登録商標)TI950を用い、押し込み深さ(変位量)を50nmとして測定するナノインデンテーション法により測定する。
さらに、本発明のセラミック構造体は、以下の態様であることが望ましい。
(1)前記SiC表面層の弾性率は、前記CVD−SiC層の弾性率よりも低い。
このため、セラミック構造体に衝撃が加わったときに、最も外層であるSiC表面層に衝撃が加わるが、SiC表面層の弾性率はCVD−SiC層の弾性率よりも低いので、外力に対する歪が大きくなり、クラックがSiC表面層の面方向に拡散する。これにより、CVD−SiC層に及ぼす影響を少なくでき、本体までクラックが伝搬するのを防止できる。
(2)前記SiC表面層の層厚が0.2〜0.5μmである。
CVD−SiC層は、5〜20μm程度の大きさの単結晶SiCが積層された構造となることが多い。ある程度の大きさを有する単結晶SiCが一定の方向に配向していると、特定の方向から衝撃が加わった際に、単結晶SiCの粒子の境界を基点としてクラックが発生し、境界面に沿ってCVD−SiC層の深くまでクラックが進展してしまう恐れがある。クラックの基点となる単結晶SiCの粒子の境界が露出しない様にすることが望まれるが、その一面からはSiC表面層は厚ければ厚いほど好ましい。0.05μm程度の薄いSiC表面層では効果が限定的であり、SiC表面層自体の形態安定性も好ましくない。一方で、SiC表面層が1μm以上の厚さになると、SiC表面層が破壊された際の変形量が大きくなり、CVD−SiC層も連鎖的に破壊されてしまう可能性がある。セラミック構造体の表面に凹凸が生じる可能性がある。また、SiC表面層が厚くなると、CVD−SiC層の特性が隠れてしまい、CVD−SiC層のメリットである気密性,熱伝導性,化学安定性などが得られなくなってしまう。
SiC表面層を0.2〜0.5μmとすると、CVD−SiC層のメリットを活かしつつ、本発明の効果を発現させることができる。
(3)前記SiC表面層はSiCの結晶方向がランダムである。
切削や研磨などによってCVD−SiC層の表面に位置するSiCの結晶方向に偏りが生じていたとしても、CVD−SiC層を覆うSiC表面層が存在するので、SiC表面層の特性が支配的となり、CVD−SiC層の結晶方向の影響は顕在化し難い。
そして、セラミック構造体の表面の特性として顕在化するのはSiC表面層の特性であり、SiC表面層を構成するSiC結晶の配向がランダムであるため、セラミック構造体全体としての表面特性はSiC結晶がランダムに配向した均一なものとなる。このため、切削や研磨などの加工を施しても、広い範囲で表面特性を均一に保持することができる。
なお、表面層のSiC結晶がランダム配向であるとは、表面層を構成するSiC結晶の結晶方位が特定の方向に揃っておらず、バラツキを有することを意味する。
具体的には、SiC結晶の配向がランダムであるか否かは、次の様にして定義する。まず、CVD−SiC層を含むサンプル片から集束イオンビーム装置(FIB,株式会社日立ハイテクノロジーズ製FB2200)を用いて膜厚100nm断面薄膜試料を作製し、透過型電子顕微鏡(TEM,株式会社日立ハイテクノロジーズ製HF−2000)により断面方向から表面層における制限視野電子線回折図形を測定する。直径300nmの制限視野絞りにて表面層の5視野を選択して制限視野電子線回折図形を5枚測定し、得られた5枚の回折図形を画像処理により加算して1枚の回折図形を合成する。この合成された回折図形は、表面層中のπ×150nm×150nm×100nm×5(nm)の体積から得られた回折図形となる。この合成された回折図形が“リング状の回折パターンを示す”か、あるいは“一方向に強度分布を持つ回折パターンを示す”か、によって、それぞれ、“SiC結晶の配向がランダムである”、あるいは“SiC結晶は特定の方向に配向している”、と判断することができる。本件発明においては、回折図形を中心角45度で8分割し、8分割した全ての領域に回折点が存在する場合に“SiC結晶の配向がランダムである”と定義する。
(4)前記SiC表面層の結晶粒径は前記CVD−SiC層の結晶粒径よりも小さい。
前述した様に、CVD−SiC層は、5〜20μm程度の大きさのSiC結晶が積層された構造となることが多いが、ある程度の大きさを有するSiC結晶が一定の方向に配向していると、物理的特性や熱的特性の偏りが大きく現れ易い。
SiC表面層を構成するSiC結晶は配向がランダムであるが、個々のSiC結晶のサイズが大きければ、特性は均一とならず、却って偏りを生じさせてしまう。
SiC表面層を構成するSiC結晶のサイズをCVD−SiC層を構成するSiC結晶のサイズよりも小さくすることで、表面特性の均一化を図ることができる。
(5)前記SiC表面層の結晶粒径は0.01〜0.1μmである。
前述した様に、CVD−SiC層を構成するSiC結晶のサイズは5〜20μm程度であることが多いので、SiC表面層を構成するSiC結晶のサイズを0.01〜0.1μmとすることで、CVD−SiC層において生じる特性の偏りに対して、10%未満に抑えることができる。このため、表面特性の均一化をより一層図ることができる。
なお、前述した(1)の好適範囲と組み合わせ、SiC表面層の厚さは、構成するSiC結晶のサイズ(平均結晶粒径)の10〜50倍程度が好ましい。
前記課題を解決するための本発明のセラミック構造体の製造方法は、SiCからなる本体の表面にCVD処理を施してCVD−SiC層を形成した後、前記CVD−SiC層の表面に水が存在する状態でレーザー照射を行うことにより、前記CVD−SiC層の表層を加熱して昇華、その後冷却して再結晶させ、次いで前記CVD−SiC層の表層を固化させることによりSiC表面層を形成し、前記SiC表面層の硬度を前記CVD−SiC層の硬度よりも低くさせる。
すなわち、SiCからなる本体の表面にCVD処理を施して形成したCVD−SiC層の表層に、水が存在する状態でレーザー照射することにより、表層を加熱して昇華させ、その後冷却して再結晶させてSiC表面層を形成する。
このとき、水が存在する状態でレーザー照射してSiC表面層を加熱して昇華させるので、レーザー照射が終了すると水によって急冷され、SiC結晶が大きく成長しない(微小なSiC結晶となる)。このため、SiC表面層は微小なSiC結晶が寄り集まった構造となり、CVD−SiC層に比べて層を構成するSiC結晶粒子が小さい。外力が作用した場合、CVD−SiC層やSiC表面層を構成するSiC結晶粒子そのものが変形することは稀であり、通常は、隣接するSiC結晶粒子の境界面が離間して変形することが大勢を占める。SiC表面層は小さなSiC結晶が寄り集まった構造であるので、CVD−SiC層よりも変形し易い。このため、SiC表面層の硬度はCVD−SiC層の硬度よりも低くなる。
このため、セラミック構造体に衝撃が加わったときに、最も外層であるSiC表面層に衝撃が加わるが、SiC表面層の弾性率はCVD−SiC層の弾性率よりも低いので、外力に対する歪が大きくなり、クラックがSiC表面層の面方向に拡散する。これにより、CVD−SiC層に及ぼす影響を少なくできる。
また、水が存在する状態でレーザー照射して表面層を加熱して昇華させ、その後冷却して再結晶させるので、CVD−SiC層の表面に水が存在することでレーザー照射部分のみがピンポイントで高温となり、内部が高温となり難い。このとき、レーザー照射されている間は高温になるが、レーザー照射が終了すると水によって急冷され、SiC結晶が大きく成長しない(微小なSiC結晶となる)ことから、配向性が低いSiC表面層が得られる。
さらに、本発明のセラミック構造体の製造方法は、以下の態様であることが望ましい。
(1)前記表面層は、SiC結晶がランダム配向となる。
CVD−SiC層の表面層がレーザー照射によりランダム配向となるため、一層均一化される。
(2)前記レーザー照射に用いるレーザー光は、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザーの第2高調波または第3高調波を用いる。
YAGレーザー光(基本波)の波長は1064nmであり、第2高調波の波長は532nm、第3高調波の波長は355nmである。YAGレーザー光の波長が300〜900nmであると、水の光吸収率が10%未満であるので、水が存在する状況下でのレーザー照射に好適である。
(3)前記レーザー照射は、前記CVD−SiC層の表面を少なくとも2545℃まで加熱する。
CVD−SiC層は、2545℃まで加熱すると、SiCが昇華を開始する。
図1(A)〜図1(C)に基づいて、セラミック構造体10の製造方法について説明する。
まず、SiCからなる本体20の表面21に(図1(A)参照)、CVD処理を施してSiC結晶32を蒸着させてCVD−SiC層30を形成する(図1(B)参照)。
その後、図1(C)に示すように、CVD−SiC層30の表面に水が存在する状態でレーザー照射を行うことにより、CVD−SiC層30の表層31を加熱して昇華させ、その後冷却して再結晶させ、さらに固化させることにより、SiC結晶41がランダム配向となるSiC表面層40を形成してセラミック構造体10を製造する。このとき、SiC表面層40の硬度をCVD−SiC層30の硬度よりも低くする。
次に、セラミック構造体10について説明する。
図1(A)〜図1(C)および図2に示すように、セラミック構造体10は、SiCからなる本体20と、本体20の表面21に形成されたCVD−SiC層30と、CVD−SiC層30の表層31に形成されたSiC表面層40とを有する。
セラミック構造体10は、種々の物に用いることができるため、種々の形状を呈することができる。ここでは、セラミック構造体10として板状のものを例示している。従って、本体20も板状となっている。
図1(B)に示すように、本体20の表面21に形成されたCVD−SiC層30では、CVD法によりSiC結晶32を層状に蒸着させるが、SiC結晶32の堆積方向の制御は難しい。このため、表面21に対して傾斜してSiC結晶32が堆積される場合がある。
CVD−SiC層30の表層31には、SiC表面層40が形成されている。SiC表面層40は、CVD−SiC層30の表面に例えば水が存在する状態でレーザー照射を行うことにより、CVD−SiC層30の表層31を加熱して昇華させ、その後冷却して再結晶させ、さらに固化させて再結晶化することにより形成される。このため、SiC結晶41がランダム配向となっている。
SiC表面層40の層厚T1(図1(C)参照)は、0.2〜0.5μmが望ましい。また、SiC表面層40の平均結晶粒径は、CVD−SiC層30の平均結晶粒径よりも小さいのが望ましい。さらに、SiC表面層40の平均結晶粒径は、0.01〜0.1μmであることが望ましい。ここで、粒径とは、二次元画像における粒子の外形に接する円の直径として定義することができる。
次に、本実施形態のセラミック構造体およびセラミック構造体の製造方法の作用・効果について説明する。
本実施形態のセラミック構造体10によれば、SiCからなる本体20と、本体20の表面21に形成されたCVD−SiC層30とを有し、CVD−SiC層30の表層31にはSiC表面層40が形成されている。そして、SiC表面層40の硬度は、CVD−SiC層30の硬度よりも低く設定されている。
このため、セラミック構造体10に衝撃が加わったときに、最も外層であるSiC表面層40に衝撃が加わるが、SiC表面層40の硬度はCVD−SiC層30の硬度よりも低いので脆く、クラックが入り易い。これにより、クラックがSiC表面層40の面方向に伝搬することにより、衝撃エネルギーがSiC表面層40の面方向に拡散するので、CVD−SiC層30に及ぼす影響を少なくでき、本体20までクラックが伝搬するのを防止できる。
本実施形態のセラミック構造体10によれば、SiC表面層40の弾性率は、CVD−SiC層30の弾性率よりも低い。
このため、セラミック構造体10に衝撃が加わったときに、最も外層であるSiC表面層40に衝撃が加わるが、SiC表面層40の弾性率はCVD−SiC層30の弾性率よりも低いので、外力に対する歪が大きくなり、クラックがSiC表面層40の面方向に拡散する。これにより、CVD−SiC層30に及ぼす影響を少なくでき、本体20までクラックが伝搬するのを防止できる。
本実施形態のセラミック構造体10によれば、SiC表面層40の層厚T1が0.2〜0.5μmである。
CVD−SiC層30は、5〜20μm程度の大きさのSiC結晶32が積層された構造となることが多い。ある程度の大きさを有するSiC結晶32が一定の方向に配向していると、物理的特性や熱的特性の偏りが大きく現れ易い。
CVD−SiC層30の表面特性の偏りが顕在化しない様にすることが望まれるが、その一面からはSiC表面層は厚ければ厚いほど好ましい。0.05μm程度の薄いSiC表面層40では効果が限定的であり、また、薄くて強度が得られ難くなり、SiC表面層40自体の形態安定性も好ましくない。一方で、SiC表面層40が1μm以上の厚さになれば、CVD−SiC層30のメリットである気密性,熱伝導性,化学安定性などが得られなくなってしまう。
SiC表面層40を0.2〜0.5μmとすると、CVD−SiC層30のメリットを活かしつつ、本実施形態の効果を発現させることができる。
本実施形態のセラミック構造体10によれば、SiC表面層40はSiCの結晶方向がランダムである。
切削や研磨などによってCVD−SiC層30の表面に位置するSiCの結晶方向に偏りが生じていたとしても、CVD−SiC層30を覆うSiC表面層40が存在するので、SiC表面層40の特性が支配的となり、CVD−SiC層30の結晶方向の影響は顕在化し難い。
そして、セラミック構造体10の表面の特性として顕在化するのはSiC表面層40の特性であり、SiC表面層40を構成するSiC結晶41の配向がランダムであるため、セラミック構造体10全体としての表面特性はSiC結晶41がランダムに配向した均一なものとなる。このため、切削や研磨などの加工を施しても、広い範囲で表面特性を均一に保持することができる。
本実施形態のセラミック構造体10によれば、SiC表面層40の結晶粒径はCVD−SiC層30の結晶粒径よりも小さい。
前述した様に、CVD−SiC層30は、5〜20μm程度の大きさのSiC結晶が積層された構造となることが多いが、ある程度の大きさを有するSiC結晶が一定の方向に配向していると、物理的特性や熱的特性の偏りが大きく現れ易い。
SiC表面層40を構成するSiC結晶41は配向がランダムであるが、個々のSiC結晶のサイズが大きければ、特性は均一とならず、却って偏りを生じさせてしまう。
SiC表面層40を構成するSiC結晶41のサイズをCVD−SiC層30を構成するSiC結晶32のサイズよりも小さくすることで、表面特性の均一化を図ることができる。
本実施形態のセラミック構造体10によれば、SiC表面層40の結晶粒径は0.01〜0.1μmである。
前述した様に、CVD−SiC層30を構成するSiC結晶のサイズは5〜20μm程度であることが多いので、SiC表面層40を構成するSiC結晶41のサイズを0.01〜0.1μmとすることで、CVD−SiC層30において生じる特性の偏りに対して、10%未満に抑えることができる。このため、表面特性の均一化をより一層図ることができる。
なお、前述したSiC表面層40の層厚T1の好適範囲と組み合わせ、SiC表面層40の層厚T1は、構成するSiC結晶41のサイズ(平均結晶粒径)の10〜50倍程度が好ましい。
本実施形態のセラミック構造体の製造方法によれば、SiCからなる本体20の表面21にCVD処理を施してCVD−SiC層30を形成した後、CVD−SiC層30の表面に水が存在する状態でレーザー照射を行うことにより、CVD−SiC層30の表層31を加熱して昇華、その後冷却して再結晶させ、次いでCVD−SiC層30の表層31を固化させることによりSiC表面層を形成し、SiC表面層40の硬度をCVD−SiC層30の硬度よりも低くさせる。
すなわち、SiCからなる本体20の表面21にCVD処理を施して形成したCVD−SiC層30の表層31に、水が存在する状態でレーザー照射することにより、表層31を加熱して昇華させ、その後冷却して再結晶させて固化させてSiC表面層40を形成する。このとき、SiC表面層40の硬度をCVD−SiC層30の硬度よりも低くする。
このため、セラミック構造体10に衝撃が加わったときに、最も外層であるSiC表面層40に衝撃が加わるが、SiC表面層40の弾性率はCVD−SiC層30の弾性率よりも低いので、外力に対する歪が大きくなり、クラックがSiC表面層40の面方向に拡散する。これにより、CVD−SiC層30に及ぼす影響を少なくでき、本体20までクラックが伝搬するのを防止できる。
また、水が存在する状態でレーザー照射して表面層を加熱して昇華させ、その後冷却して再結晶させるので、CVD−SiC層30の表面に水が存在することでレーザー照射部分のみがピンポイントで高温となり、内部が高温となり難い。このとき、レーザー照射されている間は高温になるが、レーザー照射が終了すると水によって急冷され、SiC結晶が大きく成長しない(微小なSiC結晶となる)ことから、配向性が低いSiC表面層が得られる。
(実施例)
20.0mm(縦)×20.0mm(横)×2.0mm(厚さ)のSiC基材の上に厚さ約150μmのCVD-SiC層を形成した試験片を比較例1として用意した。
この比較例1の試験片に対して、さらにCVD層の表面に水が存在する状態でYAGレーザーの第2高調波(波長532nm)を照射して加熱し、CVD層の表面に存在するSiCを昇華・再結晶させ、厚さ約250nmの表面層を形成した試験片を実施例1として用意した。
実施例1の試験片に対してCVD-SiC層の硬度と弾性率とを測定したところ、硬度は40.5GPa、弾性率は354GPaであった。
また、実施例1の試験片に対して表面層の硬度と弾性率を測定したところ、硬度は37.8GPa、弾性率は316GPaであった。
上記各測定値は、無作為な10カ所の測定値の平均値である。
一方、比較例1の試験片に対してCVD-SiC層の硬度と弾性率とを測定したところ、硬度は40.6GPa、弾性率は355GPaであった。
上記各測定値は、無作為な10カ所の測定値の平均値である。
次に、平置きした実施例1の試験片10サンプル、比較例1の各10サンプルに対して、直径11mm、重量5.5gの鋼球を高さ200mmから落下させる試験を行った。
実施例1の試験片10サンプルには変化が認められなかったが、比較例1の1サンプルについて肉眼で視認できるクラックが発生していた。
以上のことから、SiC表面層の硬度が、CVD−SiC層の硬度よりも低いことにより所望の効果が得られることが判る。
また、実施例1の表面層を構成する結晶粒子の配向を確認した。
具体的には、試験片から集束イオンビーム装置(FIB,株式会社日立ハイテクノロジーズ製FB2200)を用いて膜厚100nm断面薄膜試料を作製し、透過型電子顕微鏡(TEM,株式会社日立ハイテクノロジーズ製HF−2000)により断面方向から“表面層”における制限視野電子線回折図形を測定した。直径300nmの制限視野絞りにて“表面層”5視野を選択して制限視野電子線回折図形を5枚測定し、得られた5枚の回折図形を画像処理により加算して1枚の回折図形を合成した。
その結果を図3に示す。
図3に示す回折図形は“表面層”中のπ×150nm×150nm×100nm×5(nm)の体積から得られた回折図形となる。この合成された回折図形が“リング状の回折パターンを示す”か、あるいは“一方向に強度分布を持つ回折パターンを示す”か、によって、それぞれ、“SiC結晶の配向がランダムである”、あるいは“SiC結晶は特定の方向に配向している”、と判断することができる。本件では、回折図形の上方を0度として中心角45度で8分割し(領域1〜領域8)、8分割した全ての領域に回折点が存在する場合に“SiC結晶の配向がランダムである”と定義する。
図3に示すように、実施例1の表面層については、領域1から領域8までの全てにおいて回折点が多数確認された。
一方、図4に示すように、比較・参考のために表面層を形成しない試験片のCVD−SiC層については、領域3、領域4、領域7、領域8についてのみ回折点が確認された。
この結果から、実施例1の表面層は、SiC結晶粒子の配向(結晶方位)が特定の方向に偏っておらずランダムであると言える。
一方、比較・参考のための試験片(図4)は、SiC結晶粒子の配向(結晶方位)が揃っていると言える。
次に、実施例1の表面層を構成する結晶粒子のサイズを確認した。
表面層を構成するSiCの平均結晶粒径は次の様に求める。
上記と同じ方法により制限視野電子線回折図形を測定した試料位置において、同様に透過型電子顕微鏡(TEM,株式会社日立ハイテクノロジーズ製HF−2000)を用いて断面TEM像を5視野撮影する(撮影倍率80,000倍、表示倍率500,000倍)。この際、微結晶の輪郭が明瞭になるように対物絞りを選択(40μm)し、試料傾斜ホルダを用いて適切な電子線入射角度を調整する。各視野のTEM像中で最も輪郭が明瞭な結晶粒を3個ずつ選び、そのTEM像面内における各結晶粒に外接する円の直径を測長して結晶サイズとする。得られた合計15個の結晶サイズから、最大値と最小値とを除いた13個の結晶サイズについて、平均値を算出し、これを表面層の結晶サイズとする。
実施例1の5視野撮影した結果を図5(A)、図6(A)、図7(A)、図8(A)、図9(A)に示す。
また、これらの5視野において輪郭が明確な結晶粒子を各3個ずつ選択し、合計15個について結晶粒子のサイズを測定した結果を図5(B)、図6(B)、図7(B)、図8(B)、図9(B)に示す。
図5(B)における結晶粒子のサイズは64nm、68nm、56nmであった。
図6(B)における結晶粒子のサイズは82nm(最大値)、34nm、34nmであった。
図7(B)における結晶粒子のサイズは28nm、38nm、38nmであった。
図8(B)における結晶粒子のサイズは54nm、16nm、12nm(最小値)であった。
図9(B)における結晶粒子のサイズは20nm、14nm、24nmであった。
これらの測定値のうち、最大値である82nmと最小値である12nmとを除いた13個の結晶粒子のサイズは14nm〜68nmの範囲であり、平均値は37.5nmとなった。
一方、図4に示すように、比較・参考のための試験片については、回折点が10点程度確認できたが、回折点が領域3と領域7とに集中しており、その他の領域では確認できなかった。
従って、図4に示す比較・参考のための試験片については、結晶粒子が特定の方向に配向していることが確認できた。
本発明のセラミック構造体およびセラミック構造体の製造方法は、前述した各実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形,改良等が可能である。
本発明のセラミック構造体およびセラミック構造体の製造方法は、例えば半導体製造工程に用いるセラミック構造体およびこのセラミック構造体の製造方法として用いることができる。
10 セラミック構造体
20 本体
21 表面
30 CVD−SiC層
31 表層
40 SiC表面層
T1 層厚

Claims (10)

  1. SiCからなる本体と、
    前記本体の表面に形成されたCVD−SiC層と、
    前記CVD−SiC層の表層に形成されたSiC表面層と、を備え、
    前記SiC表面層の硬度は、前記CVD−SiC層の硬度よりも低いことを特徴とするセラミック構造体。
  2. 請求項1に記載のセラミック構造体であって、
    前記SiC表面層の弾性率は、前記CVD−SiC層の弾性率よりも低いことを特徴とするセラミック構造体。
  3. 請求項1または請求項2に記載のセラミック構造体であって、
    前記SiC表面層の層厚が0.2〜0.5μmであることを特徴とするセラミック構造体。
  4. 請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1項に記載のセラミック構造体であって、
    前記SiC表面層はSiCの結晶方向がランダムであることを特徴とするセラミック構造体。
  5. 請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1項に記載のセラミック構造体であって、
    前記SiC表面層の結晶粒径は前記CVD−SiC層の結晶粒径よりも小さいことを特徴とするセラミック構造体。
  6. 請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1項に記載のセラミック構造体であって、
    前記SiC表面層の結晶粒径は0.01〜0.1μmであることを特徴とするセラミック構造体。
  7. SiCからなる本体の表面にCVD処理を施してCVD−SiC層を形成した後、
    前記CVD−SiC層の表面に水が存在する状態でレーザー照射を行うことにより、前記CVD−SiC層の表層を加熱して昇華、その後冷却して再結晶させ、
    次いで前記CVD−SiC層の表層を固化させることによりSiC表面層を形成し、
    前記SiC表面層の硬度を前記CVD−SiC層の硬度よりも低くさせることを特徴とするセラミック構造体の製造方法。
  8. 前記表面層は、SiC結晶がランダム配向となることを特徴とする請求項7に記載のセラミック構造体の製造方法。
  9. 前記レーザー照射に用いるレーザー光は、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザーの第2高調波または第3高調波を用いることを特徴とする請求項7または請求項8に記載のセラミック構造体の製造方法。
  10. 前記レーザー照射は、前記CVD−SiC層の表面を少なくとも2545℃まで加熱することを特徴とする請求項7ないし請求項9のうちのいずれか1項に記載のセラミック構造体の製造方法。
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