以下、本発明における温度検知装置および加熱調理器の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、細かい構造および重複または類似する説明については、適宜簡略化または省略している。以下の実施の形態では、加熱調理器の一例として誘導加熱調理器について説明する。
実施の形態1.
(加熱調理器の構成)
図1は、本発明の実施の形態1における加熱調理器100の斜視図である。加熱調理器100は、本体1と、本体1の上面に配置され、耐熱ガラスで形成されたトッププレート2とを有し、トッププレート2の上に載置される鍋やフライパン等の容器10を、本体1の内部に設けられた加熱部により加熱する。本実施の形態では、トッププレート2の左側手前、右側手前、および中央側奥の3箇所に、それぞれ加熱口6が設けられている。
本体1の上面には、加熱条件や加熱指示の入力操作を受け付ける操作部3が、各加熱口6に対応して配置されている。また、本体1の前面には、例えばダイヤルスイッチによって構成され、加熱条件や加熱指示の入力操作を受け付ける前面操作部3aが配置されている。
使用者が、被加熱物を収容した容器10をトッププレート2上に載置し、加熱口6に対応する操作部3または前面操作部3aを操作して加熱条件等の設定を行い、設定された内容に従って、容器10が加熱部により加熱される。加熱の進行状況や調理モードなどの設定に関する情報は、トッププレート2の上面に配置された液晶等を有する表示部4に表示され、加熱の火力は各加熱口に対応して配置された火力表示部5に表示される。
トッププレート2の加熱口6に対応する部分には、容器10を載置する箇所を示す例えば円形の表示が印刷等によって設けられており、使用者は容器10を載置すべき場所がわかるようになっている。
本体1内において加熱口6の下側には、加熱コイル14が設けられている。加熱コイル14が、本発明の「加熱部」に相当する。なお、図1では、加熱コイル14の配置を破線にて図示している。加熱コイル14に高周波電流を流すことでトッププレート2上に載置された容器10に渦電流が発生し、発生した渦電流と容器10との抵抗により容器10が発熱する。これにより、容器10を直接加熱する加熱効率の良い調理を実現できる。なお、加熱調理器100の加熱口6の加熱部として電気ヒータ等の他の加熱部を設けてもよい。
図2は、本実施の形態における加熱調理器100の主要部の構成と機能とを説明する図である。なお、図2では、1つの加熱口6に対応する構成のみ図示しており、また、例えば水や食材等の被加熱物が収容された容器10と、容器10の温度を検知する温度検知装置30とを併せて図示している。温度検知装置30は、加熱調理器100とは別体に設けられ、容器10の底部の温度を検知し、検知した温度の情報を加熱調理器100へ送信するものである。温度検知装置30の詳細については後述する。
図2に示すように、トッププレート2に設けられた加熱口6の下部には、加熱コイル14が配置されている。本実施の形態では、加熱コイル14は、略環状の内側加熱コイル14aと、その外側に設けられた略環状の外側加熱コイル14bとを備えた二重環形状である。
本体1の内部には、温度検知装置30と通信する機器側通信部21と、駆動部23を制御する機器側制御部22と、高周波インバータ24を駆動する駆動部23と、加熱コイル14に高周波電流を供給する高周波インバータ24と、が配置されている。機器側制御部22は、操作部3による設定内容と、温度検知装置30からの温度の情報に基づいて、駆動部23に対して高周波電力指令(火力情報)を送信する。機器側制御部22は、その機能を実現する回路デバイスなどのハードウェアを用いて構成されるか、またはマイコンやCPU等の演算装置と、その上で実行されるソフトウェアとで構成される。駆動部23は、機器側制御部22からの指令に基づき、高周波インバータ24を制御して加熱コイル14に流れる高周波電流を調整する。これにより、容器10の加熱制御が行われる。また、機器側制御部22は、温度検知装置30の状態を確認するための信号を生成し、その信号を、機器側通信部21を介して温度検知装置30へ送信する。
なお、機器側通信部21は、本発明における「第2通信部」に相当する。また、機器側制御部22は、本発明における「制御部」に相当する。
次に、加熱調理器100の操作部3および火力表示部5の構成について説明する。図3は、本実施の形態における加熱調理器100の操作部3および火力表示部5を説明する図である。加熱調理器100の左側、右側、および中央に設けられた加熱コイル14にそれぞれ対応する操作部3および火力表示部5は、すべて同様の構成であるので、ここでは、左側の加熱コイル14に対応して設けられた操作部3および火力表示部5を例に説明する。
操作部3は、被加熱物を加熱する火力を設定するための火力設定キー3bと、調理メニューを設定するためのメニューキー3cとを備える。火力設定キー3bは、「弱火」キー、「中火」キー、「強火」キー、および「3kW」キーで構成されており、使用者は、これらのキーを用いて4段階の火力の何れかを設定することができるようになっている。火力に応じて個別にキーを設けることで、使用者は、必要な火力の設定を一回の操作で入力できるようになっている。
メニューキー3cは、「揚げ物」キー、「予熱」キー、「煮込み」キー、および「タイマー」キーを備える。これらのキーが押下されると、各メニューに対して予め設定され記憶部(図示せず)に記憶された制御シーケンスに従って、機器側制御部22が加熱制御を行う。
火力表示部5は、火力設定キー3bで入力された火力や、メニューキー3cで設定されたメニューに基づいて火力を複数段階に表示するものであり、火力に応じて表示態様が切り替わる。火力表示部5の表示により、動作中であることを使用者に示すことが可能である。火力表示部5は、例えば複数のLEDを有し、これらLEDの点灯状態(点灯、消灯、点滅等)を切り替える、あるいは点灯色を切り替えることにより、火力を表現する。このようにすることで、使用者が直感的に分かりやすい報知を行うことができる。
なお、図3には図示しないが、液晶画面等で構成された表示部4(図1参照)には、例えば「予熱中」や「適温到達」等の火力や経過状況、設定されているメニューの内容等に関する情報が表示される。
(温度検知装置の構成)
次に、本実施の形態の温度検知装置30の構成について説明する。図4(a)は、温度検知装置30の平面図であり、図4(b)は、温度検知装置30の側面図である。また、図5は、温度検知装置30の内部構成を説明する図である。図4に示すように、温度検知装置30は、鍋敷きのような平面的な形状を有し、容器10が載置される載置部31と、機器側通信部21と通信する通信部33と、載置部31と通信部33とを接続する接続部32と、を備える。
載置部31は、使用時の平面視で中央に開口31aが形成された円環形状を有し、弾力性および耐熱性を有するシリコーンゴム等で構成される。載置部31の容器10が載置される面には、複数のドーム状の突起部311が形成される。複数の突起部311は、直径Dの円周上に等間隔で配置される。突起部311が配置される円の直径Dは、載置される容器10の最小径などから定められるものであり、例えば40mmである。複数の突起部311の内部にはそれぞれ温度センサ34が配置される。温度センサ34は、接触式の温度センサであり、載置部31に載置される容器10の底部の温度を検知する。温度センサ34は、例えばサーミスタまたは熱電対により構成される。
容器10が載置部31に載置されると、容器10の底部が突起部311と接触する。突起部311を、弾力性を有するシリコーンゴム等で形成することで、容器10の底部と突起部311とが密着し、接触面積が増加する。また、容器10の底部に密着する突起部311内に温度センサ34を設けることで、温度センサ34が容器10の底部に接触し、容器10の温度を高精度で検知することができる。
なお、図4の例では、3つの突起部311が形成され、各突起部311に温度センサ34が配置される構成となっているが、これに限定されるものではない。例えば、3つの突起部311の何れか1つに温度センサ34を備える構成としてもよく、または2つ以下もしくは4つ以上の突起部311に1つ以上の温度センサ34を備える構成としても良い。ただし、突起部311の数を3つ以上とすることで、容器10を安定して支持することができる。また、温度センサ34を複数設けることで、断線等が生じた場合にも温度検知を継続することができる。
また、図4(b)に示す載置部31の厚みtは、突起部311を含む最大厚みで5mm未満とする。載置部31の厚みtを5mmとした場合、温度検知装置30に載置される容器10は、加熱調理器100のトッププレート2から約5mm離れることになる。ここで、容器10が加熱コイル14から離れると、磁束は距離の二乗に反比例して減衰する。そのため、一般的に容器10を加熱コイル14から離すことにより、加熱効率も低下すると考えられる。しかしながら、実際には、トッププレート2と容器10とが接触している場合、容器10の熱の一部がトッププレート2に逃げてしまう。
図6は、トッププレート2から容器10の底部までの距離と加熱効率との関係を示すグラフである。図6では、トッププレート2と容器10との間に絶縁物を配置し、トッププレート2と容器10との間に空気層を形成する。そして、絶縁物の大きさを変えてトッププレート2から容器10までの距離を変更し、各距離における湯沸しの加熱効率を測定した実験より得られた結果である。図6に示すように、トッププレート2から容器10までの距離が0mmの場合よりも、トッププレート2から容器10までの距離が約2mmの場合の方が、加熱効率が約2%高くなる。ここで、トッププレート2に一般的に用いられるネオセラムガラスの熱伝導率Kは、1.6であり、空気の熱伝導率Kは0.0241である。そのため、容器10とトッププレート2が接触している場合よりも、空気層が形成される場合の方が、熱伝導が少なくなり、加熱効率が良くなる。
ただし、図6に示すように、トッププレート2から容器10までの距離が5mm以上になると、トッププレート2から容器10までの距離が0mmの場合よりも、加熱効率が低下する。そのため、トッププレート2から容器10までの距離を5mm未満とすることで、トッププレート2と容器10との間の隙間量が0mmの場合の加熱効率と略同等もしくはそれ以上の加熱効率を実現することができる。なお、載置部31に用いられるシリコーンゴムの熱伝導率Kは、0.2であり、空気の熱伝導率よりは高いものの、突起部311上に容器10を載置することで、容器10との接触面積が限定され、熱伝導が抑制される。
また、突起部311の高さは、容器10の底部の反りを考慮して、1mmとする。詳しくは、容器10として用いられる鍋またはフライパンの中には、加熱による変形を考慮して、底部を予め上側(凸状)に反らせているものがある。例えば、容器10の底部の中心における反りの最大値が3mmであると想定した場合、容器10の径方向の外側に向かって次第に反りが小さくなり、突起部311が配置される直径40mmの位置(すなわち中心から半径20mmの位置)では、1mm程度の反りとなる。そのため、突起部311を1mm以上とすることで、容器10の底部が予め反っている場合でも、突起部311を確実に容器10の底部に接触させることができる。
図4および図5に戻って、複数の温度センサ34は、それぞれ接続部32を介して通信部33に配線接続され、検知結果を通信部33へ出力する。また、通信部33は、載置部31に載置される容器10と接触しないように、使用時の平面視で載置部31の外側に配置される。より詳しくは、温度検知装置30が加熱口6上に配置された状態において、通信部33が加熱コイル14よりも外側に配置されるように、接続部32の長さが定められる。
通信部33は、センサ側通信部331、センサ側制御部332および電源部333を備えている。上記各部は、円筒形状の筐体330内に収容され、水密状態で封止されている。筐体330は、耐熱性および耐衝撃性を有し、かつ電波を遮蔽しない構造を有する。詳しくは、筐体330の上面330aは、耐衝撃性および防磁効果を有する材料(例えばアルミなど)で形成される。また、本体330bは、電波を遮蔽せず、耐熱性および摩擦係数が高い材料(例えばPPS、PC、シリコーンゴム、セラミックスなど)で形成され、表面をシリコーンゴムで皮膜される。なお、本体330bの少なくとも一部に金属以外の電波を透過する材料を用いてもよい。また、筐体330には、図示しない電源スイッチが設けられる。この電源スイッチが操作されることにより、温度検知装置30がオン状態とされる。
センサ側通信部331は、センサ側制御部332による制御の下、加熱調理器100の本体1に配置された機器側通信部21と、双方向の情報通信を行う。センサ側通信部331と機器側通信部21との情報通信は、例えば、2.4GHz帯域の無線通信モジュールを用いて行われる。無線モジュールを用いる事で、温度検知装置30の外部にコネクタ部分を設ける必要がなくなり、温度検知装置30内部への浸水により回路がショートすることを軽減することができる。また、配線レスとなり容器10の取っ手等に配線が引っかかることを防止でき、例えば奥側の加熱口6で使いやすくなり、使い勝手も向上する。また、宅内に設けた2.4GHzのWi−Fi(IEEE802.11規格)モジュールへと情報伝送する事が可能となり、外部無線通信機器との拡張性を有する。
なお、周波数帯に関しては、2.4GHz帯に限らず900MHz帯や300〜500MHz帯以下の周波数帯の通信周波数帯を用いた特定小電力無線局通信モジュールを使用してもよい。例えば、誘導加熱調理器(IHクッキングヒータ)における誘導電流の周波数は20〜30kHz帯の周波数帯を用いており、電子レンジにおける電磁波の周波数は2.45GHz帯の周波数帯を用いている。このため、900MHzや300〜500MHz帯の周波数であれば、他の調理機器との干渉を起こすことなく通信を行う事が可能となる。
さらに、上記以外にもBluetooth(登録商標)またはRFID(Radio Frequency Identifier)などを用いて情報通信を行ってもよい。ただし、RFIDを用いる場合は、センサ側通信部331と機器側通信部21とを位置決めする必要があるため、トッププレート2の上面に通信部33の配置位置を示す表示を行う。また、センサ側通信部331と機器側通信部21との情報通信は無線通信に限定されるものではなく、ケーブルを用いた有線通信であってもよい。
センサ側制御部332は、温度検知装置30の各構成部を制御する。センサ側制御部332は、その機能を実現する回路デバイスなどのハードウェアを用いて構成されるか、またはマイコンやCPU等の演算装置と、その上で実行されるソフトウェアとで構成される。センサ側制御部332は、温度センサ34によって検知された温度情報を、センサ側通信部331を介して機器側通信部21へ送信する。ここでは、複数の温度センサ34によって検知された温度のうち、最も高い温度が、温度情報として送信される。なお、別の実施の形態では、複数の温度センサ34によって検知された温度の平均値を温度情報として送信してもよい。また、センサ側制御部332は、機器側制御部22から状態確認の信号を受信した場合、センサ側通信部331を介して、機器側制御部22へ電源がオン状態であることを示す信号を送信する。電源部333は、各構成部に電力を供給するための電池である。
なお、センサ側通信部331は、本発明における「第1通信部」に相当する。また、温度センサ34は、本発明における「第1温度センサ」に相当する。
(加熱調理動作)
次に、本実施の形態における加熱調理器100の加熱動作を説明する。加熱調理器100の機器側制御部22は、目標温度が設定された自動調理モードを有している。自動調理モードでは、温度検知装置30から取得した温度が目標温度となるように加熱コイル14の加熱制御が行われる。自動調理モードとしては、例えば、湯沸しモード、揚げ物調理モード、煮込み調理モード、麺ゆでモード、温泉卵モード、および温度一定制御モードがある。各モードは、それぞれ、目標温度および加熱時間の少なくとも一方が他のモードと異なる。なお、機器側制御部22は、これらのモードのうちの少なくとも1つのモードを実行する構成であればよい。
自動調理モードにおいて、温度検知装置30と加熱調理器100とを連動させて加熱制御を行う場合、温度検知装置30が加熱される加熱口6上に配置されていないと、加熱される容器10の温度を検知できず、誤った加熱制御が行われてしまう。そこで、本実施の形態の機器側制御部22は、自動調理モードを実行する前に、加熱対象の加熱口6上に温度検知装置30が配置されているか否かを判定するセンサ判定処理を行う。
図7(a)は、温度検知装置30の検知温度の推移の一例を示すグラフであり、図7(b)は加熱コイル14に供給される電力の推移の一例を示すグラフである。ここで、加熱されている加熱口6の上に温度検知装置30が配置されている場合、温度検知装置30によって検知される温度は、図7(a)に示すように時間の経過とともに上昇する。そして、所定の時間(Time_A)経過後の温度差(ΔT_pro)が所定の許容範囲内に入っている場合、加熱されている加熱口6の上に温度検知装置30が配置されていると判定される。
図8は、温度差ΔT_proに基づく判定結果および当該判定結果に応じた動作の一例を示す表である。図8に示すように、温度差ΔT_proが15℃以下の場合、すなわち、所定時間経過後の温度変化が許容範囲よりも小さい場合、加熱されている加熱口6の上に温度検知装置30が配置されていないと判定される。一方、温度差ΔT_proが30℃より大きい場合、すなわち、所定時間経過後の温度変化が許容範囲よりも大きい場合、加熱されている加熱口6の上に温度検知装置30が配置されているものの、容器10内に被加熱物はなく、空焼き状態であると判定される。そのため、温度差ΔT_proが、所定の範囲内でない場合には、加熱を停止し、図8に示す判定結果を報知する。
図9は、本実施の形態におけるセンサ判定処理の流れを示すフローチャートである。本処理は、加熱調理器100の電源がオンされた場合に、機器側制御部22によって開始される。本処理では、まず、自動調理モードが選択されたか否かが判断される(S1)。自動調理モードは、加熱対象となる加熱口6に対応する操作部3の自動調理モードが押下されることで選択される。ここで、自動調理モードが選択されていない場合は(S1:NO)、本処理を終了する。自動調理モードが選択されていない場合は、操作部3の操作に従った加熱制御が行われる。
一方、自動調理モードが選択された場合(S1:YES)、機器側通信部21から温度検知装置30へ状態確認の信号が送信される(S2)。温度検知装置30の電源がオン状態である場合には、センサ側通信部331によって状態確認の信号が受信され、センサ側制御部332は、センサ側通信部331を介して、電源がオン状態であることを示す信号を返信する。
そして、機器側制御部22によって、温度検知装置30から、電源がオン状態であることを示す信号の返信があったか否かが判断される(S3)。ここで、温度検知装置30から電源がオン状態であることを示す信号の返信が無い場合(S3:NO)、機器側制御部22は、温度検知装置30が通信不良、または電源がオンされていないと判断し、加熱調理器100に設けた表示部4等により、自動調理モードの動作が不可である旨の報知を行う(S4)。なお、この報知は表示部4による表示に限らず、例えばブザーや音声などで報知してもよく、報知内容は温度検知装置30の電源が入っていない、または通信エラーが発生していることを報知するものであってもよい。
機器側制御部22は、報知後、再度、温度検知装置30へ状態確認の信号を送付し、返信が得られず、3回繰り返した場合(S5:YES)、自動調理モードを実行することなく、本処理を終了する。このように、加熱制御を開始するよりも先に温度検知装置30の状態確認を行う事で、鍋や食材が加熱される前に使用者に温度検知装置30が正常使用の状態にないことを伝える事ができる。
一方、温度検知装置30から、電源がオン状態であることを示す信号の返信があった場合(S3:YES)、初期温度として、温度検知装置30による検知温度T_pro1が取得される(S6)。そして、所定の電力量(W_A)で、加熱コイル14による加熱が開始される(S7)。その後、所定時間が経過したか否かが判断され(S8)、所定時間が経過していない場合は(S8:NO)、所定の電力量(W_A)での加熱が継続される。一方、所定時間が経過した場合は(S8:YES)、温度検知装置30による所定時間経過後の検知温度T_pro2が取得される(S9)。なお、検知温度T_pro1は本発明の「第1温度」に相当し、検知温度T_pro2は本発明の「第2温度」に相当する。
そして、温度T_pro2と温度T_pro1との差ΔT_proが、所定範囲内であるか否かが判断される(S10)。所定範囲は、例えば図9に示す許容範囲である。そして、温度T_pro22と温度T_pro21との差ΔT_proが、所定範囲内である場合(S10:YES)、自動調理モードによる加熱制御が実行される(S11)。自動調理モードによる加熱制御において、温度検知装置30のセンサ側制御部332は、例えば1秒周期にて、温度センサ34によって検知した温度情報を、センサ側通信部331に送信させる。本体1の機器側通信部21は、温度検知装置30からの温度情報を受信し、機器側制御部22は、機器側通信部21が受信した温度情報を取得する。機器側制御部22は、予め設定されている目標温度に向けて高周波インバータ24を制御し、温度情報が目標温度になるよう、加熱の停止と開始とを繰り返す。
一方、温度T_pro22と温度T_pro21との差ΔT_proが、所定範囲内でない場合には(S10:NO)、加熱が停止され(S12)、表示部4を用いて図8に示す判定結果が報知される(S13)。なお、表示部4は、本発明の「報知部」に相当する。
以上のように、本実施の形態では、温度検知装置30によって容器10の温度を直接検知することで、検知精度および検知の追従性の向上を図ることができる。その結果、自動調理モードにおける高精度な温度制御が可能となり、温度の上げ過ぎによる調理の失敗を抑制でき、使用者が火力変更動作をすることなく食材に適した調理が可能となる。よって、利便性の向上や吹き零れや空焼きなどによる温度上昇を抑える事が可能となり、無駄な加熱を抑えることができる。
また、載置部31と通信部33とが一体型に形成された温度検知装置30を用いることで、容器10に温度センサおよび通信部を設ける必要がなく、どのような形状の鍋にも用いることができる。さらに、機器側制御部22にてセンサ判定処理を行うことで、加熱口6に温度検知装置30が配置されていない場合の誤った加熱制御を防ぐことができる。また、温度検知装置30を容器10とトッププレート2との間に設けることで、トッププレート2の焦げ付きも抑制される。
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2の温度検知装置30Aについて説明する。実施の形態2の温度検知装置30Aは、静電容量検知部35を備える点において実施の形態1と相違する。温度検知装置30Aのその他の構成および加熱調理器100の構成については、実施の形態1と同様であり、同一の符号を付する。
図10は、本実施の形態の温度検知装置30Aの平面図である。図10に示すように、温度検知装置30Aの載置部31には、静電容量検知部35が設けられる。静電容量検知部35は、静電容量を検知するための電極であり、複数の突起部311と同一円状に形成された円弧形状の突起部312内に配置される。静電容量検知部35による検知結果は、通信部33のセンサ側制御部332へ出力される。なお、静電容量検知部35は、本発明の「載置検知部」に相当する。
温度検知装置30Aの載置部31に何も載置されていない場合、静電容量検知部35上には主に比誘電率が1である空気が存在するので、電極と基準電位間の静電容量は小さい値となる。一方、載置部31に容器10が載置されると、電極と基準電位間の静電容量は急増する。センサ側制御部332は、静電容量検知部35によってこのような静電容量の変化が検知された場合、温度検知装置30Aに容器10が載置されたと判断し、機器側制御部22からの要求に応じて、載置情報を送信する。
図11は、温度検知装置30Aを用いた場合の機器側制御部22によるセンサ判定処理の流れを示すフローチャートである。本実施の形態では、温度検知装置30A上に容器10が載置されている場合に、温度検知装置30Aが加熱口6上に配置されると判定する。図11において、図9に示す実施の形態1と同じステップについては同じ符号を付す。本処理では、まず、自動調理モードが選択されたか否かが判断される(S1)。そして、自動調理モードが選択されていない場合は(S1:NO)、本処理を終了する。一方、自動調理モードが選択された場合(S1:YES)、機器側制御部22から温度検知装置30Aへ状態確認の信号が送信される(S2)。
そして、機器側制御部22によって、温度検知装置30Aから、電源がオン状態であることを示す信号の返信があったか否かが判断され(S3)、温度検知装置30Aから電源がオン状態であることを示す信号の返信が無い場合(S3:NO)、自動調理モードの動作が不可である旨の報知が行われる(S4)。機器側制御部22は、報知後、再度、温度検知装置30Aへ状態確認の信号を送付し、返信が得られず、3回繰り返した場合(S5:YES)、自動調理モードを実行することなく、本処理を終了する。
一方、温度検知装置30Aから、電源がオン状態であることを示す信号の返信があった場合(S3:YES)、機器側制御部22によって、温度検知装置30に対する載置情報の要求が行われ、温度検知装置30Aから載置情報を取得する(S21)。載置情報の要求を受信したセンサ側制御部332は、静電容量検知部35による検知結果に基づいて、温度検知装置30A上に容器10が載置されているか否かを示す載置情報を生成し、センサ側通信部331を介して、機器側制御部22に送信する。
そして、載置情報が温度検知装置30A上に容器10が載置されていることを示すものである場合(S22:YES)、加熱されている加熱口6の上に温度検知装置30Aが配置されていると判断され、加熱が開始される(S23)。そして、自動調理モードによる加熱制御が行われる(S11)。
一方、載置情報が温度検知装置30A上に容器10が載置されていることを示すものでない場合(S22:NO)、加熱されている加熱口6の上に温度検知装置30Aが配置されていないと判定され、表示部4を用いて、判定結果が報知される(S24)。その後、加熱を開始することなく、本処理を終了する。
以上のように、本実施の形態によれば、実施の形態1の効果に加え、温度検知装置30Aが加熱口6に配置されているか否かを容易に判断することができる。また、温度検知装置30Aの配置を判定する際に、実施の形態1のように所定の時間加熱を行う必要が無いため、消費電力を削減できるとともに、判定時間を短縮できる。
実施の形態3.
次に、本発明の実施の形態3の温度検知装置30Bについて説明する。実施の形態3の温度検知装置30Bは、重量検知部36を備える点において実施の形態1と相違する。温度検知装置30Bのその他の構成および加熱調理器100の構成については、実施の形態1と同様であり、同一の符号を付する。
図12は、本実施の形態の温度検知装置30Bの平面図である。図12に示すように、温度検知装置30Bの載置部31には、複数の重量検知部36が設けられる。複数の重量検知部36は、複数の突起部311と同一円上であって、複数の突起部311と交互に形成された矩形状の突起部313内にそれぞれ配置される。なお、図12では、載置部31に3つの重量検知部36を備える構成となっているが、重量検知部36の数はこれに限定されるものではない。
重量検知部36は、例えばひずみゲージなどによって構成され、重量(荷重)に応じた電圧値などの物理量を検知する。なお、重量検知部36は、これに限定されるものではなく、重量を検知するものであれば任意の部品を使用することができる。例えば静電容量式荷重センサなどを用いてもよい。載置部31に容器10が載置されると、容器10の荷重が重量検知部36に加わり、重量検知部36により検知される値は、容器10の重量に応じて変化する。重量検知部36の検知結果は、センサ側制御部332に出力される。センサ側制御部332は、重量検知部36によって検知される重量の変化量が所定の閾値以上の場合に、温度検知装置30に容器10が載置されたと判断し、機器側制御部22からの要求に応じて、載置情報を送信する。上記の所定の閾値は、例えば小鍋が載置される場合などにおいて想定される値が予め設定される。なお、重量検知部36は、本発明の「載置検知部」に相当する。
温度検知装置30Bを用いた場合の機器側制御部22によるセンサ判定処理の流れは、図11に示す実施の形態2と同様である。ただし、本実施の形態では、重量検知部36の検知結果に基づく載置情報が加熱調理器100へ送信される。
本実施の形態によれば、実施の形態2の効果に加え、容器10の載置の判定精度を向上させることができる。詳しくは、本実施の形態では、重量に基づいて容器10の載置を判断することで、載置部31に人が触れた場合または容器10以外のもの(例えば水滴など)が載置部31に置かれている場合などに、容器10が置かれたと誤って判断することを防ぐことができる。
実施の形態4.
次に、本発明の実施の形態4の温度検知装置30Cについて説明する。実施の形態4における温度検知装置30Cは、載置部31の形状および温度センサ34の配置において、実施の形態1と相違する。温度検知装置30Cのその他の構成および加熱調理器100の構成については、実施の形態1と同様であり、同一の符号を付する。
図13(a)は、温度検知装置30Cの平面図であり、図13(b)は温度検知装置30Cの側面図である。図13(a)に示すように、温度検知装置30Cは、鍋敷きのような平面的な形状を有し、容器10が載置される載置部31Cと、機器側通信部21と通信する通信部33と、を備える。また、載置部31Cは中心から径方向へ放射状に延びる複数の腕部314を有する。図13(a)では、載置部31Cが5つの腕部314を有する構成を示すが、腕部314の数は、これに限定されるものではない。
5つの腕部314には、それぞれ突起部311が形成される。各突起部311は、直径Dの円周上に配置される。また、複数の腕部314のうちの1つには、通信部33が接続される。そして、通信部33が接続される腕部314には、複数の突起部311が径方向において、直線上に並んで配置される。図13(a)では、3つの突起部311が配置される構成を示すが、突起部311の数は、これに限定されるものではない。また、図13(b)に示す載置部31Cの厚みtは、実施の形態1と同様に5mm未満であり、突起部311の厚みは、例えば1mmである。
また、径方向に並んで配置される突起部311の内部には、それぞれ温度センサ34が配置される。各温度センサ34によって検知された温度は、実施の形態1と同様に、通信部33へ出力される。通信部33が接続される腕部314に形成される突起部311内に温度センサ34を設けることで、温度センサ34と通信部33とを容易に接続することができる。なお、載置部31Cにおける突起部311の数および配置、ならびに温度センサ34の数および配置は、図13に示す構成に限定されるものではなく、任意に変更可能である。
本実施の形態においても、容器10が載置部31Cに載置されると、容器10の底部が突起部311と接触する。また、容器10の底部に密着する突起部311内に温度センサ34を設けることで、温度センサ34が容器10の底部に接触し、容器10の温度を精度よく検知することができる。さらに、温度センサ34を径方向に配置することで、容器10の径方向の温度分布を検知することができる。この場合、センサ側制御部332は、温度センサ34によって検知された温度情報を、温度センサ34の径方向の位置情報に関連付けて、加熱調理器100へ送信する。これにより、機器側制御部22は、容器10の径方向の温度分布を把握することができる。そして、自動調理モードにおいて、径方向の温度制御を行うことができ、容器10内に対流を生じさせることなどが可能となる。
以上のように、本実施の形態によれば、実施の形態1の効果に加え、容器10の径方向の温度を検知することで、より複雑な温度制御が可能となり、自動調理モードにおける様々な加熱調理に対応することができる。
実施の形態5.
次に、本発明の実施の形態5の温度検知装置30Dおよび加熱調理器100Aについて説明する。実施の形態5では、加熱調理器100Aから温度検知装置30Dへ非接触給電により電力が供給される点において、実施の形態1と相違する。温度検知装置30Dおよび加熱調理器100Aのその他の構成については、実施の形態1と同様であり、同一の符号を付する。
図14は、本実施の形態における温度検知装置30Dおよび加熱調理器100Aの構成を説明する図である。図14に示すように、温度検知装置30Dの通信部33Dは、電源部333に替えて、電磁誘導により電力を受電する受電コイル334と、受電コイル334が受電した電力によって充電される充電部335とを備えている。受電コイル334は、例えば導線が巻回してなるコイルであり、充電部335は、リチウム二次電池等の蓄電池である。
また、図14に示すように、加熱調理器100Aは、給電用の高周波インバータ25、および高周波インバータ25から高周波電流が供給される給電コイル26をさらに備えている。給電コイル26は、例えば導線が巻回してなるコイルであり、高周波電流が供給されることで高周波磁界を発生する。図14に示すように、給電コイル26は、トッププレート2の下方であって、平面視において加熱コイル14とは異なる位置に配置されている。また、トッププレート2の給電コイル26に対応する部分には、温度検知装置30を載置する箇所を示す例えば楕円形の表示が印刷等によって設けられており、使用者は温度検知装置30を載置すべき場所がわかるようになっている。
本実施の形態における加熱調理器100Aは、予め設定された周波数の高周波電流を給電コイル26に供給する給電モードと、設定火力に応じた高周波電流を加熱コイル14に供給する加熱モードと、を有している。給電モードでは、非接触給電によって、給電コイル26から受電コイル334へ電力が供給される。給電モードでは、まず、使用者によって、温度検知装置30内部の受電コイル334と、給電コイル26とが正対するように、温度検知装置30がトッププレート2に配置される。機器側制御部22は、センサ判定処理と同様の方法(S2〜S10)で、温度検知装置30Dが電源オンであること、および加熱口6に温度検知装置30Dが載置されていることを確認した後、駆動部23を制御して、予め設定された周波数の高周波電流を給電コイル26に供給する。これにより、給電コイル26には高周波磁界が発生し、温度検知装置30の受電コイル334には電磁誘導による起電力が発生する。そして、受電コイル334に流れた高周波電流によって充電部335が充電される。
なお、センサ側制御部332は、充電部335の受電状態を検知して、受電状態である旨の情報をセンサ側通信部331から機器側通信部21へ送信してもよい。また、センサ側制御部332は、充電部335の充電量を検知して、所定の充電量を超えた場合には、満充電を示す情報をセンサ側通信部331から機器側通信部21へ送信してもよい。
機器側制御部22は、給電動作の時間が予め設定した時間を超えた場合、または、センサ側通信部331から満充電を示す情報を取得した場合、駆動部23の動作を停止させて給電動作を完了する。なお、温度検知装置30への蓄電が終了した旨の情報を表示部4に表示させてもよい。
以上のように、本実施の形態によれば、実施の形態1の効果に加え、温度検知装置30の電源を非接触給電により駆動させることで、通信部33の内部の水密構造を得られやすくなり、丸洗いや水の浸水による短絡故障等のリスクを低減することができる。また、電池交換などのメンテナンスが不要となるため、使用者の利便性も向上する。
なお、本実施の形態の変形例として、加熱コイル14と給電コイル26とで、同一の高周波インバータ24を使用してもよい。また、加熱コイル14を加熱用途と給電用途とで共用してもよい。この場合、給電専用の高周波インバータ25または給電コイル26を別途設ける必要が無く、加熱調理器100Aの構成を簡易にすることができる。さらに、機器側制御部22は、給電コイル26の上方に載置されている対象物が温度検知装置30であるか否かを判定し、温度検知装置30であると判定された場合にのみ、給電モードを開始してもよい。
実施の形態6.
次に、本発明の実施の形態6の温度検知装置30Eについて説明する。実施の形態6における温度検知装置30Eは、載置部31Eの形状において、実施の形態1と相違する。温度検知装置30Eのその他の構成および加熱調理器100の構成については、実施の形態1と同様であり、同一の符号を付する。
図15は、本実施の形態の温度検知装置30Eの構成を説明する図である。図15に示すように、温度検知装置30Eは、通信部33と通信部33に接続される載置部31Eとを備える。載置部31Eは、側面視で傾斜面315を有する三角形状を有している。載置部31Eの内部には、傾斜面315に面して温度センサ34が配置される。載置部31Eは、弾力性および耐熱性を有するシリコーンゴム等で構成される。温度検知装置30Eは、傾斜面315に容器10の湾曲部が載置されるように配置される。これにより、温度センサ34が容器10の湾曲部に接し、容器10の温度を直接検知することができる。なお、載置部31Eを容器10に密着させるために、載置部31に磁石などを設けてもよい。
以上のように、本実施の形態によれば、実施の形態1の効果に加え、温度検知装置30Eの小型化を実現することができる。また、容器10を加熱口6に配置した後に温度検知装置30Eを配置することも可能となるため、使い勝手が向上する。
実施の形態7.
次に、実施の形態7における加熱調理器100Bについて説明する。実施の形態7の加熱調理器100Bは、赤外線温度センサ27および接触式温度センサ28を備える点において、実施の形態1と相違する。温度検知装置30の構成および加熱調理器100Bのその他の構成については、実施の形態1と同様であり、同一の符号を付する。
図16は、本実施の形態における加熱調理器100Bの主要部の構成と機能を説明する図である。図16に示すように、加熱調理器100Bのトッププレート2の下方には、赤外線温度センサ27が配置されている。赤外線温度センサ27は、加熱コイル14上のトッププレート2に載置された容器10の底部から放射される赤外線を検知する。なお、赤外線温度センサ27の直上部は、赤外線が遮蔽されない構造(例えば空洞または透過素材)とすることが望ましい。赤外線温度センサ27によって検知された信号は、赤外線温度検知部270へ出力される。赤外線温度検知部270は、赤外線温度センサ27による検知信号をA/D変換し、温度に換算する。赤外線温度検知部270によって換算された温度情報は、機器側制御部22へ出力される。
また、加熱調理器100Bのトッププレート2の裏面の加熱コイル14と対向する面には、サーミスタなどの接触式温度センサ28がトッププレート2の裏面に接触するように配置されている。接触式温度センサ28は、容器10からトッププレート2へ伝わる熱を検知する。接触式温度センサ28によって検知された信号は、接触式温度検知部280へ出力される。接触式温度検知部280は、接触式温度センサ28による検知信号をA/D変換し、温度に換算する。接触式温度検知部280によって換算された温度情報は、機器側制御部22へ出力される。なお、赤外線温度センサ27および接触式温度センサ28は、本発明の「第2温度センサ」に相当する。
本実施の形態の機器側制御部22は、温度検知装置30による検知温度、および赤外線温度センサ27による検知温度または接触式温度センサ28による検知温度に基づいて、センサ判定処理を行う。なお、以下では、温度検知装置30および赤外線温度センサ27による検知温度を用いてセンサ判定処理を行う場合を代表として説明する。温度検知装置30および接触式温度センサ28による検知温度を用いてセンサ判定処理を行う場合も同様の流れとなる。
図17(a)は、温度検知装置30の検知温度の推移の一例を示すグラフであり、図17(b)は、赤外線温度センサ27の検知温度の推移の一例を示すグラフであり、図17(c)は、加熱コイル14に供給される電力の推移の一例を示すグラフである。ここで、加熱されている加熱口6の上に温度検知装置30が配置されている場合、温度検知装置30の検知温度は、図17(a)に示すように時間の経過とともに上昇する。そして、所定の時間(Time_A)経過後の温度差ΔT_proが許容範囲内に入っている場合、加熱されている加熱口6の上に温度検知装置30が配置されていると判断される。
また、加熱されている加熱口6の上に容器10が配置されている場合、赤外線温度センサ27によって検知される温度は、図17(b)に示すように時間の経過とともに上昇する。そして、所定の時間(Time_A)経過後の温度差ΔT_irが許容範囲内に入っている場合、加熱されている加熱口6の上に容器10が配置されていると判断される。
図18は、本実施の形態における温度差ΔT_proおよび温度差ΔT_irに基づく判定結果および判定結果に応じた動作の一例を示す表である。図18に示すように、温度差ΔT_proが15℃以下であり、温度差ΔT_irが10℃以下の場合、すなわち、所定時間経過後の温度変化が許容範囲よりも小さい場合、加熱されている加熱口6の上に温度検知装置30が配置されていないと判定される。
一方、温度差ΔT_proが30℃より大きく、温度差ΔT_irが25℃より大きい場合、すなわち、所定時間経過後の温度変化が許容範囲よりも大きい場合、加熱されている加熱口6の上に温度検知装置30および容器10が配置されているものの、容器10内に被加熱物はなく、空焼き状態であると判定される。
そこで、本実施の形態では、温度差ΔT_proおよび温度差ΔT_irの両方がそれぞれの許容範囲内にある場合にのみ加熱を継続し、そうでない場合には、加熱を停止し、図18に示す判定結果を報知する。これにより、温度検知装置30および容器10の両方が加熱される加熱口6上に適切に配置されている場合にのみ、自動調理モードにおける加熱制御を行うことができる。
図19は、本実施の形態におけるセンサ判定処理の流れを示すフローチャートである。図19において、図9の実施の形態1と同じステップについては同じ符号を付す。本処理では、まず、自動調理モードが選択されたか否かが判断される(S1)。そして、自動調理モードが選択されていない場合は(S1:NO)、本処理を終了する。一方、自動調理モードが選択された場合(S1:YES)、機器側通信部21から温度検知装置30へ状態確認の信号が送信される(S2)。
そして、機器側制御部22によって、温度検知装置30から、電源がオン状態であることを示す信号の返信があったか否かが判断され(S3)、温度検知装置30から電源がオン状態であることを示す信号の返信が無い場合(S3:NO)、自動調理モードの動作が不可である旨の報知が行われる(S4)。機器側制御部22は、報知後、再度、温度検知装置30へ状態確認の信号を送付し、返信が得られず、3回繰り返した場合(S5:YES)、自動調理モードを実行することなく、本処理を終了する。
一方、温度検知装置30から、電源がオン状態であることを示す信号の返信があった場合(S3:YES)、初期温度として、温度検知装置30による検知温度T_pro1、および赤外線温度センサ27による検知温度T_ir1が取得される(S31)。そして、所定の電力量(W_A)で、加熱コイル14による加熱が開始される(S7)。その後、所定時間が経過したか否かが判断され(S8)、所定時間が経過していない場合は(S8:NO)、所定の電力量(W_A)での加熱が継続される。一方、所定時間が経過した場合は(S8:YES)、所定時間経過後の温度検知装置30による検知温度T_pro2および赤外線温度センサ27による検知温度T_ir2が取得される(S32)。なお、検知温度T_ir1は本発明の「第3温度」に相当し、検知温度T_ir2は本発明の「第4温度」に相当する。
そして、温度T_pro2と温度T_pro1との温度差ΔT_pro、および温度T_ir2と温度T_ir1との温度差ΔT_irが、それぞれの許容範囲内であるか否かが判断される(S33)。そして、温度差ΔT_proおよびΔT_irがそれぞれの許容範囲内である場合(S33:YES)、自動調理モードによる加熱制御が実行される(S11)。一方、温度差ΔT_proおよびΔT_irの両方、または何れか一方が許容範囲内でない場合には(S33:NO)、加熱が停止され(S12)、図18に示す判定結果が報知される(S13)。
以上のように、本実施の形態によれば、実施の形態1の効果に加え、加熱調理器100Bの赤外線温度センサ27または接触式温度センサ28による検知温度を用いることで、センサ判定処理の精度および信頼性を向上させることができる。
実施の形態8.
次に、実施の形態8における加熱調理器100Cについて説明する。実施の形態8の加熱調理器100Cは、容器10を複数の加熱コイル140にて加熱する点において、実施の形態1と相違する。温度検知装置30の構成および加熱調理器100Cのその他の構成については、実施の形態1と同様であり、同一の符号を付する。
図20は、本実施の形態における加熱調理器100Cの斜視図である。図20に示すように、加熱調理器100Cのトッププレート2の下方には、複数の加熱コイル140が奥行き方向と横方向に配置されている。なお、図20では、加熱コイル140の配置を破線にて図示している。実施の形態1では、トッププレート2の加熱口6上に載置された容器10が、加熱口6に対応する1つの加熱コイル14によって加熱される構成であったが、本実施の形態においては、トッププレート2上の任意の場所に置かれた容器10が複数の加熱コイル140によって加熱される構成となっている。
トッププレート2の上面には、例えば静電容量式タッチセンサで構成される操作表示部7が設けられている。操作表示部7は、トッププレート2に載置された容器10の加熱設定のための操作を行う領域であるとともに、操作対象となる容器10を表示するための領域である。図21は、本実施の形態における加熱調理器100Cの操作表示部7の表示例を示す。図21では、トッププレート2上に3つの容器10が載置されている場合の例を示す。図21に示すように、操作表示部7には、トッププレート2上に載置されている容器10が円で表示される。そして、使用者によって操作表示部7上で、何れかの容器10が操作対象として選択され、その後、選択された容器10に対する加熱設定等の操作が行われる。
次に、本実施の形態における加熱調理器100Cの加熱動作を説明する。図22は、加熱調理器100Cの機器側制御部22による加熱動作を示すフローチャートである。図22に示すように、本実施の形態では、まず、容器10がどの加熱コイル140上に配置されているかが判定される(S41)。ここでは、まず、複数の加熱コイル140の各々に所定周波数の高周波電流が供給される。加熱コイル140上に容器10が載置されている場合、加熱コイル140から見たインピーダンスが大きくなるため、加熱コイル140に流れる電流が減少する。そこで、機器側制御部22は、加熱コイル140に流れる電流を検出し、検出された電流値を閾値と比較することで、当該加熱コイル140上に容器10が載置されているか否かを判定する。
続いて、ステップS41の判定結果に基づいて、トッププレート2上に容器10があるか否かが判断される(S42)。ここで、トッププレート2上に容器10が無い場合(S42:NO)、容器10が配置されていないことを報知する(S43)。そして、報知後、再度、容器10の位置判定を行い、容器10が検出されないまま3回繰り返した場合(S44:YES)、加熱動作を実行することなく、本処理を終了する。
一方、トッププレート2上に容器10がある場合(S42:YES)、操作表示部7に加熱対象となる容器10の位置が表示される(S45)。そして、複数の加熱コイル140のうち、ステップS41において、容器10が載置されていると判定された加熱コイル140が、加熱制御対象の加熱コイルとして特定される(S46)。
その後、使用者によって操作表示部7に表示された容器10の選択および加熱設定が行われ、センサ判定処理が実施される(S47)。ステップS47では、図9、図11または図19に示される実施の形態1、2または7の何れかのセンサ判定処理が行なわれる。ただし、センサ判定処理では、ステップS46で特定された加熱コイル140に対して、加熱制御が行われる。
以上のように、本実施の形態によれば、実施の形態1の効果に加えて、温度検知装置30を用いることで、複数の加熱コイル140の各々に容器10の温度を検知するための赤外線温度センサ27または接触式温度センサ28を設ける必要がなくなる。特に本実施のように多数の加熱コイル140を備える場合、温度検知装置30を用いることで、部品点数および製品コストを大幅に削減することができる。
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して説明したが、本発明の具体的な構成はこれに限られるものでなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。例えば、上記実施の形態2および3において、温度検知装置に静電容量検知部35または重量検知部36を備え、容器10の載置の有無を判定する構成としたが、本発明の載置検知部はこれらに限定されるものではない。例えば、発光素子と受光素子とを有するフォトセンサなどを用いて、容器10の載置の有無を判定してもよい。
また、上記実施の形態1〜8における構成は、適宜組み合わせることが可能である。例えば、実施の形態2のセンサ判定処理(図11)に、実施の形態1のセンサ判定処理(図9)を組み合わせてもよい。詳しくは、温度検知装置30Aの静電容量検知部35による載置判定に加え、所定時間の加熱による温度差ΔT_proに基づく載置判定を行ってもよい。また、実施の形態2のセンサ判定処理(図11)に、実施の形態7における赤外線温度センサ27または接触式温度センサ28によるセンサ判定処理を組み合わせてもよい。この場合、載置情報が容器10の載置を示す場合であって、赤外線温度センサ27の検知温度の温度差ΔT_irが許容範囲内の場合に、自動調理モードの加熱制御を開始する。上記のような判定を行うことにより、信頼性を向上させることができる。
また、上記実施の形態では、トッププレート2上に1つの容器10および1つの温度検知装置30が載置される場合について説明したが、トッププレート2上に複数の容器10および複数の温度検知装置30が載置されてもよい。この場合、温度検知装置30にそれぞれ固有の識別情報を設け、センサ側制御部332から加熱調理器100へ識別情報を送信することで、加熱調理器100の機器側制御部22にて各温度検知装置30の識別を行うことができる。
また、トッププレート2上に複数の容器10および複数の温度検知装置30が載置され、複数の加熱コイル14が同時に加熱対象となった場合、どの温度検知装置30が、どの加熱コイル14に対応するかを判別する必要がある。この場合は、センサ判定処理における各加熱コイル14への電力投入タイミングをずらすことで、温度検知装置30と加熱コイル14との相対位置を特定することができる。図23は、変形例1におけるセンサ判定処理の流れを示すフローチャートである。本処理は、複数の温度検知装置30が同時に加熱対象となった場合のセンサ処理である。本処理では、まず、実施の形態1と同様に、自動調理モードが選択されたか否かが判断される(S101)。ここで、自動調理モードが選択されていない場合は(S101:NO)、本処理を終了する。
一方、自動調理モードが選択された場合(S101:YES)、機器側通信部21から複数の温度検知装置30へ状態確認の信号が送信される(S102)。そして、温度検知装置30から電源がオン状態であることを示す信号の返信があったか否かが判断される(S103)。ここで、何れの温度検知装置30からも電源がオン状態であることを示す信号の返信が無い場合(S103:NO)、加熱調理器100に設けられた表示部4等により、自動調理モードの動作が不可である旨の報知が行われる(S104)。そして、報知後、再度、温度検知装置30へ状態確認の信号を送付し、返信が得られず、3回繰り返した場合(S105:YES)、自動調理モードを実行することなく、本処理を終了する。
一方、何れかの温度検知装置30から、電源がオン状態であることを示す信号の返信があった場合(S103:YES)、電源がオン状態である温度検知装置30が特定される(S106)。ここでは、温度検知装置30の識別情報に基づいて、電源がオン状態である温度検知装置30が識別される。そして、初期温度として、ステップS106で特定された各温度検知装置30による検知温度T_pro1が取得される(S107)。そして、所定の電力量(W_A)で、加熱対象となっている複数の加熱コイル14のうちの1つによる加熱が開始される(S108)。その後、所定時間が経過したか否かが判断され(S109)、所定時間が経過していない場合は(S109:NO)、所定の電力量(W_A)での加熱が継続される。一方、所定時間が経過した場合は(S109:YES)、各温度検知装置30による所定時間経過後の検知温度T_pro2が取得される(S110)。
そして、各温度検知装置30の温度差ΔT_proが、所定範囲内であるか否かが判断される(S111)。そして、何れかの温度検知装置30の温度差ΔT_proが、所定範囲内である場合(S111:YES)、温度検知装置30と加熱コイル14との相対位置が特定される(S112)。具体的には、温度差ΔT_proが所定範囲内である温度検知装置30が、ステップS108で加熱された加熱コイル14上に載置されると判断される。そして、当該加熱コイルに対して自動調理モードによる加熱制御が実行され(S113)、ステップS116へ進む。
一方、何れの温度検知装置30の温度差ΔT_proも、所定範囲内でない場合には(S111:NO)、加熱が停止され(S114)、表示部4を用いて実施の形態1と同様の判定結果が報知される(S115)。そして、加熱対象となっている複数の加熱コイル14の全てに対してステップS108以降の処理が行われたか否かが判断される(S116)。そして、加熱対象となっている複数の加熱コイル14の全てに対してステップS108以降の処理が行われていない場合(S116:NO)、ステップS108に戻り、次の加熱コイル14に対して以降の処理が繰り返される。一方、加熱対象となっている複数の加熱コイル14の全てに対してステップS108以降の処理が行われた場合(S116:YES)、本処理を終了する。
また、上記実施の形態5のように、温度検知装置30に受電コイル334が設けられている場合は、受電コイル334を用いて、温度検知装置30と加熱コイル14との相対位置関係を判別してもよい。図24は、変形例2におけるセンサ判定処理の流れを示すフローチャートである。本処理では、図23に示す変形例1と同様にステップS101〜ステップS106の処理が実施される。そして、電源がオン状態である温度検知装置30が特定される(S106)と、加熱対象となっている複数の加熱コイル14のうちの一つに対し、所定周波数の高周波電流が供給される(S121)。
そして、複数の温度検知装置30から受電コイル334に流れる2次電流情報が取得される(S122)。ここで、所定周波数の高周波電流が供給された加熱コイル14の近傍にある温度検知装置30では、受電コイル334に2次電流が発生する。そのため、取得した2次電流情報に基づいて、加熱コイル14上に温度検知装置30があるか否かが判断される(S123)。そして、加熱コイル14上に温度検知装置30がある場合(S123:YES)、温度検知装置30と加熱コイル14との相対位置が特定される(S124)。そして、加熱が開始され(S125)、自動調理モードによる加熱制御が行われる(S126)。
一方、加熱コイル14上に温度検知装置30がない場合(S123:NO)、表示部4を用いて、判定結果が報知される(S127)。加熱対象となっている複数の加熱コイル14の全てに対してステップS121以降の処理が行われたか否かが判断される(S116)。そして、加熱対象となっている複数の加熱コイル14の全てに対してステップS121以降の処理が行われていない場合(S116:NO)、ステップS121に戻り、次の加熱コイル14に対して以降の処理が繰り返される。一方、加熱対象となっている複数の加熱コイル14の全てに対してステップS121以降の処理が行われた場合(S116:YES)、本処理を終了する。
また、実施の形態8の加熱調理器100Cに対しても、上記変形例1および2を適用することができる。尚、変形例2において、各加熱コイル14に順に高周波電流を流すことに替えて、各加熱コイル14に周期を変えてパルス状に所定周波数の高周波電流を流し、受電コイル334に流れる2次電流情報に基づいて、温度検知装置30と加熱コイル14との相対位置関係を判別してもよい。