JP2016199514A - 自己組織化ペプチド及びその利用 - Google Patents

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Abstract

【課題】安定性が向上した自己組織化膜を形成することができる自己組織化ペプチドを提供する。また、安定性が向上した自己組織化膜及びその製造方法、パターン形状を有する自己組織化膜及びその製造方法、並びにデバイスを提供する。【解決手段】複数の光架橋性基を有する自己組織化ペプチド;溶媒中に溶解又は分散させた自己組織化ペプチドを基板に接触させて自己組織化膜を形成する工程と、自己組織膜に光を照射する工程と、を備える、安定性が向上した自己組織化膜の製造方法;自己組織化膜を形成する工程と、自己組織化膜にパターン状に光を照射して、光架橋性基が架橋された領域及び架橋されていない領域を形成する工程と、架橋されていない領域の自己組織化膜を基板から剥離する工程と、を備える、パターン形状を有する自己組織化膜の製造方法;自己組織化膜;自己組織化膜を備えるデバイス。【選択図】なし

Description

本発明は、自己組織化ペプチド及びその利用に関する。より具体的には、自己組織化ペプチド、自己組織化膜、自己組織化膜の製造方法及びデバイスに関する。
微細な構造制御の手法として、半導体の微細化技術のように、大きなものを削って小さくしていく「トップダウン」とよばれる手法と、原子や分子を組み上げて大きなものにする「ボトムアップ」とよばれる手法が知られている。近年、トップダウン的な手法による微細な構造制御を補完あるいは代替する手法として、ボトムアップ的な手法が注目を集めている。
例えば、ヒトのアルツハイマー病の原因の一つとされているアミロイドβタンパク質の一部分を模倣して設計されたペプチドが、無機物である雲母の界面において規則正しく配列し自己組織化膜を形成することが報告されている(例えば、非特許文献1を参照。)。
Kowalewski T. and Holtzman D. M., In situ atomic force microscopy study of Alzheimer's beta-amyloid peptide on different substrates: new insights into mechanism of beta-sheet formation., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 96, 3688-3693, 1999.
しかしながら、非特許文献1に記載の自己組織化膜は、溶液中で容易に剥離してしまう場合がある。そこで、本発明は、安定性が向上した自己組織化膜を形成することができる自己組織化ペプチドを提供することを目的とする。本発明はまた、安定性が向上した自己組織化膜及びその製造方法、パターン形状を有する自己組織化膜及びその製造方法、並びにデバイスを提供することを目的とする。
本発明は以下の通りである。
[1]複数の光架橋性基を有する自己組織化ペプチド。
[2]下記式(1)で表される、請求項1に記載の自己組織化ペプチド。
[(GA) (1)
[式(1)中、mは1〜10の整数を表し、nは1〜30の整数を表し、X及びXはそれぞれ独立に、光架橋性基を有するアミノ酸若しくはその誘導体の残基、芳香族アミノ酸若しくはその誘導体の残基又はpH7で電荷を有するアミノ酸若しくはその誘導体の残基を表し、Gはグリシン若しくはその誘導体の残基を表し、Aはアラニン若しくはその誘導体の残基を表す。nが2以上である場合、複数存在するmはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
[3]前記光架橋性基がクマリン基である[1]又は[2]に記載の自己組織化ペプチド。
[4]溶媒中に溶解又は分散させた[1]〜[3]のいずれかに記載の自己組織化ペプチドを基板に接触させて自己組織化膜を形成する工程と、前記自己組織膜に光を照射する工程と、を備える、安定性が向上した自己組織化膜の製造方法。
[5]溶媒中に溶解又は分散させた[1]〜[3]のいずれかに記載の自己組織化ペプチドを基板に接触させて自己組織化膜を形成する工程と、前記自己組織化膜にパターン状に光を照射して、前記光架橋性基が架橋された領域及び架橋されていない領域を形成する工程と、前記架橋されていない領域の自己組織化膜を基板から剥離する工程と、を備える、パターン形状を有する自己組織化膜の製造方法。
[6][1]〜[3]のいずれかに記載の自己組織化ペプチドが配列してなる自己組織化膜。
[7]前記光架橋性基の少なくとも1部が架橋されている[6]に記載の自己組織化膜。
[8]前記光架橋性基がパターン状に架橋されている[7]に記載の自己組織化膜。
[9]パターン形状を有する[7]又は[8]に記載の自己組織化膜。
[10][6]〜[9]のいずれかに記載の自己組織化膜を備えるデバイス。
[11]下記式(2)で表される自己組織化ペプチド。
[(GA) (2)
[式(2)中、mは1〜10の整数を表し、nは1〜30の整数を表し、X及びXはそれぞれ独立に、存在しないか、或いは芳香族アミノ酸若しくはその誘導体又はpH7で電荷を有するアミノ酸若しくはその誘導体を表し、Gはグリシン若しくはその誘導体を表し、Aはアラニン若しくはその誘導体を表す。nが2以上である場合、複数存在するmはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
[12][11]に記載の自己組織化ペプチドが配列してなる自己組織化膜。
[13][12]に記載の自己組織化膜を備えるデバイス。
本発明によれば、安定性が向上した自己組織化膜を形成することができる自己組織化ペプチドを提供することができる。また、安定性が向上した自己組織化膜及びその製造方法、パターン形状を有する自己組織化膜及びその製造方法、並びにデバイスを提供することができる。
実験例4の結果を示す原子間力顕微鏡画像である。 実験例4で作製した自己組織化膜の表面被覆率と使用したペプチド水溶液の濃度を用いて、Langmuirの吸着等温式による近似曲線によるフィッティングを行った結果を示すグラフである。 (a)〜(e)は、実験例5の結果を示す原子間力顕微鏡画像である。 (a)〜(e)は、実験例5の結果を示す原子間力顕微鏡画像である。 (a)〜(e)は、実験例5の結果を示す原子間力顕微鏡画像である。 実験例6の結果を示す原子間力顕微鏡画像である。 実験例6の結果を示す原子間力顕微鏡画像である。 (a)〜(h)は、実験例7の結果を示す原子間力顕微鏡画像である。
[自己組織化ペプチド]
1実施形態において、本発明は、複数の光架橋性基を有する自己組織化ペプチドを提供する。
本明細書において、自己組織化ペプチドとは、溶媒中に溶解又は分散させて基板と接触させると自発的に規則正しく配列して自己組織化膜を形成する能力(自己組織化能)を有するペプチドを意味する。
また、本明細書において、ペプチドとは、アミノ酸又はアミノ酸誘導体がペプチド結合(アミド結合)により複数脱水縮合して形成された物質を意味する。アミノ酸としては、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、アラニン、プロリン、グリシン等の脂肪族アミノ酸;フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン等の芳香族アミノ酸;アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン等の非極性アミノ酸;リシン、アルギニン、ヒスチジン等のpH7で正電荷を有するアミノ酸;アスパラギン酸、グルタミン酸等のpH7で負電荷を有するアミノ酸等が挙げられる。
アミノ酸誘導体としては、上記アミノ酸の各種誘導体が挙げられ、例えば、非天然アミノ酸;アミノアルコール;側鎖のカルボニル基、アミノ基、チオール基等が各種置換基により置換したもの等が挙げられる。置換基としては、アルキル基、アシル基、水酸基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、スルフォニル基、ハロゲン原子(フッ素等)で修飾された芳香族基、各種保護基等が挙げられる。より具体的なアミノ酸誘導体としては、例えば、N−γ−ニトロアルギニン、S−ニトロシステイン、S−メチルシステイン、S−アリルシステイン、バリンアミド、2−アミノ−3−メチル−1−ブタノール等が挙げられる。
本実施形態の自己組織化ペプチドは、1分子のペプチド中に複数の光架橋性基を有することにより、自己組織化させた後、他のペプチド分子の光架橋性基と架橋させることができる。これにより、安定性が向上した自己組織化膜を形成することができる。
光架橋性基としては、紫外線、可視光、赤外線等の光を照射することにより架橋させることが可能な基が挙げられ、例えば、クマリン基、ジアジリン基、アジド基等が挙げられる。光架橋性基の分子量が大きい場合、ペプチドの自己組織化を阻害する場合がある。このため、光架橋性基は分子量が小さいものであることが好ましい。このような観点から、光架橋性基はクマリン基であってもよい。
架橋性基として光架橋性基を採用することにより、フォトリソグラフィー等を用いて所望のパターンに光を照射し、自己組織化膜に光架橋性基が架橋された領域と架橋されていない領域を形成することができる。また、実施例において後述するように、光架橋性基が架橋された領域と架橋されていない領域では、自己組織化膜の安定性が異なる。このため、光架橋性基が架橋されていない領域を選択的に剥離することができる。これにより、所望のパターン形状を有する自己組織化膜を製造することが可能になる。
光架橋性基は、例えば、光架橋性基を有するアミノ酸の残基として自己組織化ペプチドに導入してもよい。例えば、アスパラギン、グルタミン酸等の、側鎖にカルボキシル基を有するアミノ酸の当該カルボキシル基に光架橋性基を導入したアミノ酸を、自己組織化ペプチドを構成するアミノ酸に含めることにより、光架橋性基を導入することができる。
本実施形態の自己組織化ペプチドにおいて、ペプチドを構成するアミノ酸の数は、例えば4〜100個、例えば4〜50個、例えば4〜20個、例えば4〜10個であってよい。ここで、光架橋性基を、光架橋性基を有するアミノ酸の残基として自己組織化ペプチドに導入する場合、自己組織化ペプチドを構成するアミノ酸の数には、光架橋性基を有するアミノ酸の数も含めることとする。
本実施形態の自己組織化ペプチドは、下記式(1)で表されるものであってもよい。
[(GA) (1)
式(1)中、mは1〜10の整数を表し、nは1〜30の整数を表し、X及びXはそれぞれ独立に、光架橋性基を有するアミノ酸若しくはその誘導体の残基、芳香族アミノ酸若しくはその誘導体の残基又はpH7で電荷を有するアミノ酸若しくはその誘導体の残基を表し、Gはグリシン若しくはその誘導体の残基を表し、Aはアラニン若しくはその誘導体の残基を表す。nが2以上である場合、複数存在するmはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
本実施形態の自己組織化ペプチドは、少なくとも2つの光架橋性基を有する。上記のmは2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。また、上記のnは、例えば1〜30であってもよく、例えば1〜20であってもよく、例えば1〜10であってもよく、例えば1〜5であってもよい。
上記式(1)において、光架橋性基を有するアミノ酸としては、上述したものが挙げられ、より具体的には、アスパラギン、グルタミン酸等の、側鎖にカルボキシル基を有するアミノ酸の当該カルボキシル基に、例えばクマリン基等の光架橋性基を導入したアミノ酸等が挙げられる。
また、芳香族アミノ酸としては、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン等が挙げられる。また、pH7で電荷を有するアミノ酸としては、リシン、アルギニン、ヒスチジン等のpH7で正電荷を有するアミノ酸;アスパラギン酸、グルタミン酸等のpH7で負電荷を有するアミノ酸等が挙げられる。上記のアミノ酸は、上述したアミノ酸誘導体であってもよい。
本実施形態の自己組織化ペプチドは、上記式(1)におけるXを、適宜、芳香族アミノ酸若しくはその誘導体の残基、pH7で電荷を有するアミノ酸若しくはその誘導体の残基に改変することにより、様々な基板上で自己組織化させることができる。
基板としては、各種層状物質が挙げられ、例えば、グラフェン(グラファイト)、二硫化モリブデン、二セレン化タングステン、窒化ホウ素、二セレン化モリブデン、二硫化タングステン、雲母等が挙げられる。
1実施形態において、本発明は、下記式(2)で表される自己組織化ペプチドを提供する。
[(GA) (2)
式(2)中、mは1〜10の整数を表し、nは1〜30の整数を表し、X及びXはそれぞれ独立に、存在しないか、或いは芳香族アミノ酸若しくはその誘導体又はpH7で電荷を有するアミノ酸若しくはその誘導体を表し、Gはグリシン若しくはその誘導体を表し、Aはアラニン若しくはその誘導体を表す。nが2以上である場合、複数存在するmはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
後述するように、発明者らは、上記式(2)で表されるペプチドが自己組織化能を有することを見出した。本実施形態のペプチドは、現在自己組織化能を有することが知られているペプチドと比較しても格段に単純な構造を有するものである。このため、低コストで効率よく容易に製造することができる。本実施形態のペプチドは、X、X、m、nを適宜変更することにより、基板への吸着力、自己組織化後又は光架橋後の安定性等を、自在に調整することができる。
上記式(2)において、mは2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。また、上記のnは、例えば1〜30であってもよく、例えば1〜20であってもよく、例えば1〜10であってもよく、例えば1〜5であってもよい。
本実施形態の自己組織化ペプチドにおいても、上記式(2)におけるXを、適宜、芳香族アミノ酸若しくはその誘導体の残基、pH7で電荷を有するアミノ酸若しくはその誘導体の残基に改変することにより、様々な基板上で自己組織化させることができる。基板としては、上述したものが挙げられる。
[自己組織化膜の製造方法]
1実施形態において、本発明は、溶媒中に溶解又は分散させた、複数の光架橋性基を有する自己組織化ペプチドを、基板に接触させて自己組織化膜を形成する工程と、前記自己組織膜に光を照射する工程と、を備える、自己組織化膜の製造方法を提供する。
本実施形態の製造方法により製造された自己組織化膜は安定性が向上しており、例えば、溶媒中に浸漬した場合に、光を照射していない自己組織化膜と比較して、光を照射した自己組織化膜が剥離しにくい。溶媒としては、例えば、ペプチドに対する親和性の高い極性溶媒が挙げられ、より具体的には、水、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
本実施形態の自己組織化膜の製造方法において、自己組織化膜を形成する工程と自己組織膜に光を照射する工程とを同時に実施してもよい。実施例において後述するように、自己組織化膜の形成と光の照射を同時に行っても安定性が向上した自己組織化膜を製造することができる。
(パターニング)
1実施形態において、本発明は、溶媒中に溶解又は分散させた、複数の光架橋性基を有する自己組織化ペプチドを、基板に接触させて自己組織化膜を形成する工程と、前記自己組織化膜にパターン状に光を照射して、前記光架橋性基が架橋された領域及び架橋されていない領域を形成する工程と、前記架橋されていない領域の自己組織化膜を基板から剥離する工程と、を備える、パターン形状を有する自己組織化膜の製造方法を提供する。
本実施形態の自己組織化膜の製造方法によれば、所望のパターン形状を有する自己組織化膜を製造することができる。パターン形状は任意の形状であってよい。実施例において後述するように、発明者らは、複数の光架橋性基を有する自己組織化ペプチドで形成した自己組織化膜に光を照射して架橋すると、架橋していない自己組織化膜と比較して、溶媒中における安定性が向上することを見出した。
したがって、自己組織化膜を所望のパターンで架橋させ、例えば適切な種類、温度の溶媒中等の条件下で、架橋していない部分を剥離させることにより、所望のパターン形状の自己組織化膜を製造することができる。
[自己組織化膜]
1実施形態において、本発明は、複数の光架橋性基を有する自己組織化ペプチドが規則正しく配列してなる自己組織化膜を提供する。本実施形態の自己組織化膜において、光架橋性基は架橋されていなくてもよい。この場合、自己組織化膜を所望のパターン形状で光照射して架橋し、架橋されていない部分を剥離させることにより、所望のパターン形状の自己組織化膜を製造することができる。
1実施形態において、上記の自己組織化膜は、光架橋性基の少なくとも1部が架橋されていてもよい。実施例において後述するように、光架橋性基が架橋されている場合には、安定性が向上した自己組織化膜となる。
1実施形態において、上記の自己組織化膜は、光架橋性基がパターン状に架橋されていてもよい。このような自己組織化膜は、架橋されていない部分を剥離させることにより、架橋されたパターン形状の自己組織化膜を製造することができる。
1実施形態において、本発明は、パターン形状を有する自己組織化膜を提供する。本実施形態の自己組織化膜は、電子デバイス、センサー等のデバイスに利用することができる。
1実施形態において、本発明は、上記式(2)で表される自己組織化ペプチドが規則正しく配列してなる自己組織化膜を提供する。上述したように、上記式(2)で表される自己組織化ペプチドは、現在自己組織化能を有することが知られているペプチドと比較しても格段に単純な構造を有するものである。このため、本実施形態の自己組織化膜は、低コストで効率よく容易に製造することができる。また、上記式(2)で表される自己組織化ペプチドは、X、X、m、nを適宜変更することにより、基板への吸着力、自己組織化後又は光架橋後の安定性等を、自在に調整することができる。
[デバイス]
1実施形態において、本発明は、上述した自己組織化膜を備えるデバイスを提供する。本実施形態のデバイスとしては、例えば、上述した自己組織化膜を足場として様々な生体物質を整列させたバイオセンサー;キャパシター、トランジスタ等の電子デバイス;生体材料と電子材料を併用した電子デバイス等が挙げられる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実験例1]
(側鎖にクマリン誘導体を有する光架橋性アミノ酸の合成)
側鎖にクマリン誘導体を有する光架橋性アミノ酸を合成した。合成スキームを以下に示す。
《Fmoc−Glu(AMC)−OBu(2−3)の合成》
アミノ基を9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)で、1位のカルボキシル基をtert−Bu基でそれぞれ保護したグルタミン酸誘導体(Fmoc−Glu−OBu、2−1、渡辺化学工業社製)169.9mg(0.399mmol、1eq.)、アミノ基を有するクマリン誘導体7−アミノ−4−メチルクマリン(AMC、2−2、東京化成工業社製)76.8mg(0.483mmol、1.2eq.)、O−(7−アザベンゾトリアゾル−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HATU、東京化成工業株式会社)169.4mg(0.446mmol、1.1eq.)を10mLサンプル瓶へ秤量した後、約1時間窒素バブリングを行ったN,N−ジメチルスルホキシド(DMF)6mLを加えて充分に溶解させた。
続いて、N,N’−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA、渡辺化学工業株式会社)75.6μL(0.441mmol、1.1eq.)を加え、窒素雰囲気下にて3日間室温で攪拌した。反応後溶媒を留去した後、ジクロロメタン約50mLに溶解させ、飽和重曹水、0.1M HClaq、0.01M NaOHaq、飽和食塩水による洗浄を行った。最後に溶媒を減圧留去し淡黄色の粉末(Fmoc−Glu(AMC)−OBu、2−3)を回収した。
223.0mg(96%),H NMR(300 MHz,DMSO−d) δ:10.36(s,1H),7.88(d,2H,J=7.4Hz),7.76−7.65(m,5H),7.48−7.27(m,5H),6.24(s,1H),4.36−4.14(m,3H),3.96(m,1H),2.37(s,3H),2.13−1.99,1.94−1.76(m,2H),1.39(s,9H),m/z=605.54(C3434+Na=605.2298)
《Fmoc−Glu(AMC)−OH(2−4)の合成》
得られたFmoc−Glu(AMC)−OBu(2−3)に対してトリフルオロ酢酸を加え、ジクロロメタン中にて室温で約3時間撹拌することでカルボキシル基の脱保護を行い、目的物である光架橋性基を有するアミノ酸Fmoc−Glu(AMC)−OH(2−4)を合成した。
得られたFmoc−Glu(AMC)−OBu(2−3)全量(223.0mg)を19mLのジクロロメタンに溶解させた。続いて、トリフルオロ酢酸19mLを加え、室温で約3時間撹拌した。その後、窒素をバブリングすることでトリフルオロ酢酸及びジクロロメタンを留去し、目的物である、側鎖にクマリン基を有するアミノ酸(Fmoc−Glu(AMC)−OH、2−4)を得た。
231.5mg(不純物含む),H NMR(300MHz,DMSO−d) δ:10.37(s,1H),7.88(d,2H,J=7.4Hz),7.78−7.64(m,5H),7.51−7.28(m,5H),6.24(s,1H),4.33−4.14(m,3H),4.01(m,1H),2.37(s,3H),2.18−1.80(m,2H),m/z=549.46(C3026+Na=549.1598)
[実験例2]
(光架橋性基を有する自己組織化ペプチドの合成)
合成した、側鎖にクマリン基を有するアミノ酸を使用してペプチド固相合成を行い、下記式(3)に示す、光架橋性基を有する自己組織化ペプチド(以下、「クマリン含有ペプチド」という場合がある。)を合成した。
目的物の生成及び単離は、HPLCによる分析及びMALDI−TOF MSによる絶対分子量測定により確認した。
32.1mg(66.0%),MALDI−TOF MS:m/z=996.71(calc.:C45551114+Na=996.3798)
[実験例3]
(紫外線の照射による水溶液中におけるペプチドの架橋の可否の検討)
合成したクマリン含有ペプチドにおいて、クマリン基の光架橋性能が維持されているか否かについて検証を行った。
具体的には、クマリン含有ペプチドの水溶液に対して紫外線を照射し、クマリン基の光架橋に特有の変化である紫外線の吸光度の変化の観測を行った。また、HPLCによる溶出時間やピーク強度及び形状の変化の測定、MALDI−TOF MSによる絶対分子量測定も行った。
まず、クマリン含有ペプチドの0.1mM水溶液を調製した。本ペプチド水溶液について、紫外可視吸光度測定、HPLCによる分析及びMALDI−TOF MS測定を行った後に、波長365nm、980mW/cmの紫外線を15分間照射した。続いて、紫外線照射後の溶液をそのまま用いて紫外可視吸光度測定、HPLCによる分析及びMALDI−TOF MS測定を行い、紫外線照射による光架橋について検討した。
紫外可視吸光度測定の結果、紫外線照射前の溶液では、波長326.5nmにおいて吸光度2.33の値を示す未架橋のクマリン基に由来する大きな吸収が観測された。一方、紫外線照射後の溶液では、波長325.5nmにおける吸光度が0.26となり、約89%程度の吸光度の明確な低下が確認された。これは、クマリン基の光架橋の進行を示していると考えられた。
また、紫外可視吸光度計による検出波長を340nmと216nmに設定したHPLC分析の結果、検出波長340nm(未架橋のクマリン基の吸収波長に対応する。)において、主ピークの強度が紫外線照射に伴い0.69から0.014へ約98%の減少が確認された。これはクマリン基の光架橋による吸光度の低下を示した前述の紫外可視吸光度測定の結果と同一の傾向を示す結果であり、クマリン基の光架橋の進行を示していると考えられた。一方、検出波長216nm(ペプチド主鎖を構築するアミド結合の吸収波長に対応する。)において、紫外線照射前には29.76分に単峰性のピークが見られたのに対し、紫外線照射後は29.74分と29.98分の2つのピークが認められた。新たに生じた29.98分のシグナルは光架橋により生成した多量体ペプチドによるシグナルであると判断された。
また、MALDI−TOF MS分析の結果、ペプチドに由来するシグナルは大きく分けて2つ確認された。最も大きなシグナルはm/z=997.281であり、未架橋もしくは単分子で環化したクマリン含有ペプチドの計算分子量C45551114+Na=996.3798に近い値となった。また、より高分子量側にはm/z=1969.05のシグナルが観測された。クマリン含有ペプチドの2量体の計算分子量はC45551114×2+Na=1969.0628であり、実測値との良好な一致が確認された。
仮にペプチド3量体が形成されていた場合、その計算分子量はC45551114×3+Na=2943.1598である。これに相当するシグナルはMALDI−TOF MSにおいては観測されなかった。また、HPLCにおいても対応するシグナルは観測されなかった。以上のことから、3量体以上の多量体はほとんど形成されなかったことが示された。
以上の紫外可視吸光度測定、HPLCによる分析及びMALDI−TOF MSの結果から、合成したクマリン含有ペプチドは、クマリン基の光架橋性能を維持していると考えられた。
[実験例4]
(自己組織化膜の作製条件の検討)
まず、粘着テープを使用した剥離法によりグラファイトの小片を作製した。このグラファイト片を1cm四方程度に裁断したシリコン基板上に転写した。当該シリコン基板に対して、1μM、0.1μM、0.05μM、0.01μM及び0.005μMのクマリン含有ペプチド水溶液を60μLずつ滴下した。室温で1時間放置した後に液滴を除去し、充分に乾燥させた後に表面の様子を原子間力顕微鏡(型式「Agilent AFM 5500」、アジレント・テクノロジー社製)を用いて観測した。
図1(a)〜(d)は、各濃度のクマリン含有ペプチドを用いて形成した自己組織化膜の原子間力顕微鏡画像である。図1(a)は0.1μM、(b)は0.05μM、(c)は0.01μM、(d)は0.005μMのクマリン含有ペプチド水溶液の結果である。その結果、クマリン含有ペプチドは、濃度0.05μM、室温で1時間放置する条件で自己組織化を行うことにより、良好な自己組織化膜を形成することが明らかとなった。
また、作製したペプチド自己組織化膜の表面被覆率と使用したペプチド水溶液の濃度を用いて、Langmuirの吸着等温式による近似曲線によるフィッティングを行った結果を図2に示す。このLangmuir plotからグラファイトに対する吸着定数Kは50.3μM−1と算出された。同様の条件における既報のグラフェン吸着ペプチドの吸着定数Kは4.85±0.21μM−1と報告されていることから(「So C. R., et al., Controlling Self-Assembly of Engineered Peptides on Graphite by Rational Mutation, ACS Nano, 6, 1648-1656, 2012.」を参照。)、本実験で使用したクマリン含有ペプチドは、既報のペプチドよりも吸着しやすいペプチドであることが示された。
[実験例5]
(紫外線照射による自己組織化膜の安定化)
濃度0.05μM、室温で1時間放置する条件でクマリン含有ペプチドを自己組織化させて得られた自己組織化膜に紫外線を照射し、自己組織化膜を構成しているペプチド同士の光架橋を行った。
そして、紫外線照射の前後においてペプチドの自己組織化構造に変化が現れるか否か、またペプチド分子同士の光架橋によるペプチド分子膜の強度の向上が見られるか否かについての検討を行った。
始めに実験例4と同様にして、シリコン基板上のグラファイト界面でクマリン含有ペプチドを自己組織化させて自己組織化膜を作製した。作製した自己組織化膜を充分乾燥させた後に、原子間力顕微鏡で観察し、規則正しく自己組織化していることを確認した。
続いて、ペプチド分子の運動性を高めるために20μLの水を当該基板上に滴下し、直ちに紫外線照射装置(型式「POT−365」、365 nm UV LED Light Source、朝日分光社製)を使用して、紫外線(波長365nm、980mW/cm)を基板から4cmの距離から照射した。15分間の照射の後、水を除去し充分に乾燥させた後に、原子間力顕微鏡で同一箇所におけるペプチド自己組織化膜の様子を観測し、ペプチドによる表面被覆率を算出した。
続いて、紫外線照射を行った自己組織化膜を有する基板を約10mLのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に室温で1時間浸漬し安定性の評価を行った。DMFはペプチド合成の際にも多用される、ペプチドに対する親和性の高い高極性溶媒である。したがって、光架橋により自己組織化膜の安定化が実現できれば、そのような溶媒中においてもペプチド分子膜が残留できる可能性が高い。
対照として、紫外線照射を行わなかった試料を作製し同様のDMFへの浸漬実験を行い、双方の表面被覆率とその変化の度合いを算出した。
図3(a)〜(e)は、実験結果を示す原子間力顕微鏡画像である。図3(a)及び(d)は、紫外線照射前の自己組織化膜の原子間力顕微鏡画像である。規則正しい六方対称構造を比較的再現性良く観測することができた。図3(b)は、紫外線照射後の自己組織化膜の原子間力顕微鏡画像である。図3(c)は、紫外線照射後の自己組織化膜を室温で1時間DMFに浸漬した後の原子間力顕微鏡画像である。図3(d)は、紫外線照射を行っていない自己組織化膜を室温で1時間DMFに浸漬した後の原子間力顕微鏡画像である。
その結果、紫外線を照射した自己組織化膜では、DMF浸漬後も多数のペプチドが残留し表面被覆率の低下が20.1%に留まった上、元の六方対称構造をある程度留めていた。これに対し、紫外線照射を行わなかった自己組織化膜では、DMF浸漬後にほぼ全てのペプチドが消失し表面被覆率の低下は極めて大きく66.3%の低下となり、約3.3倍の減少幅となった。
続いて、溶媒をDMFから同じく高極性溶媒であるジメチルスルホキシド(DMSO)に変更し同様の浸漬実験を行った。DMSOについては、室温における実験の他に90℃においても浸漬実験を行い、自己組織化膜が不安定となる高温の溶媒中においても安定性を発揮するかについて検討した。
図4(a)〜(e)は、室温でDMSOに浸漬した実験結果を示す原子間力顕微鏡画像である。図4(a)及び(d)は、紫外線照射前の自己組織化膜の原子間力顕微鏡画像である。規則正しい六方対称構造を比較的再現性良く観測することができた。図4(b)は、紫外線照射後の自己組織化膜の原子間力顕微鏡画像である。図4(c)は、紫外線照射後の自己組織化膜を室温で1時間DMSOに浸漬した後の原子間力顕微鏡画像である。図4(e)は、紫外線照射を行っていない自己組織化膜を室温で1時間DMSOに浸漬した後の原子間力顕微鏡画像である。
その結果、紫外線を照射した自己組織化膜では、DMSO浸漬後も多数のペプチドが残留し表面被覆率の低下が14.0%に留まった上、元の六方対称構造を明確に維持していた。これに対し、紫外線照射を行わなかった自己組織化膜では、DMSO浸漬後に六方対称構造が完全に消失した上に表面被覆率の低下も45.4%となり紫外線照射を行ったものと比較して約3.2倍の減少となった。
図5(a)〜(e)は、90℃のDMSOに浸漬した実験結果を示す原子間力顕微鏡画像である。図5(a)及び(d)は、紫外線照射前の自己組織化膜の原子間力顕微鏡画像である。規則正しい六方対称構造を比較的再現性良く観測することができた。図5(b)は、紫外線照射後の自己組織化膜の原子間力顕微鏡画像である。図5(c)は、紫外線照射後の自己組織化膜を90℃のDMSOに1時間浸漬した後の原子間力顕微鏡画像である。図5(e)は、紫外線照射を行っていない自己組織化膜を90℃のDMSOに1時間浸漬した後の原子間力顕微鏡画像である。
その結果、本実験の結果においては紫外線を照射の有無に関係なく元々の六方対称構造が崩れる様子が確認された。表面被覆率の低下は、紫外線照射を行ったものが12.5%、行わなかったものが54.9%となり一応の差異が見られたものの、共に大きくその自己組織化構造が崩れていた。
以上の結果から、クマリン含有ペプチドは、架橋させることにより室温のDMF及びDMSO中における安定性が約3倍上昇することが明らかとなった。ペプチド1分子に対するクマリン基の数を増加させ、ペプチド分子の長さや構成するアミノ酸の種類、配列、クマリン基を配置する位置等を更に検討することにより、溶媒中における安定性を更に向上させることができると考えられた。
[実験例6]
(紫外線照射下におけるペプチド自己組織化膜の作製と安定性の評価)
紫外線の照射を行いながらペプチドの自己組織化を行い、ペプチド分子同士の光架橋反応による分子膜の安定性の向上について検討した。
まず、粘着テープを使用した剥離法によりグラファイトの小片を作製した。このグラファイト片を1cm四方程度に裁断したシリコン基板上に転写した。当該シリコン基板を光路長1cmのプラスチック製セルに垂直に静置し、キセノンランプによる白色光から分光器を用いて取り出した波長360nmの紫外光を照射した。そして、紫外線の照射を行っている状態で、0.05μMのクマリン含有ペプチド水溶液を加え、シリコン基板を完全に水没させ、紫外線照射下でクマリン含有ペプチドの自己組織化を行った。
約1時間後に水中より基板を取り出し充分に乾燥させた後に基板表面を原子間力顕微鏡で観察した。また、比較対照として紫外線照射を行わず実験例5と同様にしてクマリン含有ペプチドの自己組織化膜を作製した。
続いて、エタノール及び約80℃の温水に各シリコン基板を浸漬し、ペプチドがどの程度残留するかを評価した。
まず、各基板をエタノールに約1時間浸漬し充分に乾燥させた後に、表面の様子をAFMにより観測した。その結果、紫外線の照射の有無にかかわらず明確な差異が見られなかったため、同一の基板を引き続きエタノールに3時間浸漬した。この時点について再度AFMによる観測を行ったところ、なおも有意な変化をみることが出来なかった。したがって、クマリン含有ペプチドのグラファイト界面における自己組織化膜は、エタノールに対する安定性が高いことが明らかとなった。
そこで、より極性が大きくペプチド自己組織化膜を効率的に破壊する可能性が高い、温水に各基板を1時間浸漬し、安定性の評価を行った。
図6及び図7は、実験結果を示す原子間力顕微鏡画像である。図7(a)に示すように、紫外線照射を行わなかった場合、実験例5と同様に六方対称構造を形成し規則正しく整列した。この時、ペプチドによるグラファイト界面の被覆率は95.1%と算出された。一方、図6(a)に示すように、紫外線を照射しながら自己組織化を行ったものでは不規則な点状構造が基板表面を覆う様子が観測された。これは、水中に単量体として分散していたクマリン含有ペプチドが、基板表面にて近接し架橋が起こることにより、ペプチド分子同士の分子間相互作用が増強されたことに起因する構造の変化と考えられる。また、ペプチドによるグラファイト界面の被覆率は94.0%となった。
続いて、図6(b)に示すように、紫外光を照射しながら作製した自己組織化膜をエタノールに約1時間浸漬したところ、ペプチドがグラファイト基板上に薄く広がる様子が確認された。これは、ペプチドがエタノール中に拡散することなくグラファイト界面上で分子膜の再構築が起きたものと考えている。
同様に、図7(b)に示すように、紫外光を照射せずに作製した自己組織化膜をエタノールに約1時間浸漬したところ、ペプチドは元の規則正しい自己組織化構造をある程度維持したまま線状に残留した。
一方で、明瞭に確認されるペプチドによる線状の構造の間の部分には、やはりペプチドが薄く広がり残留している様子が確認された。したがって、紫外線照射の有無にかかわらず、グラファイト界面に吸着したペプチドは、エタノール中には拡散せず、自己組織化膜の再構築が起こるのみであることが示唆された。
各試料をエタノールにさらに約3時間浸漬したが、やはり有意な差を確認するには至らなかった。これらは全て、ペプチドのエタノールに対する溶解性がそれほど高くないためであることに起因していると推測し、各試料を、より溶解度の大きい80℃の温水に浸漬する実験を行った。
図6(c)は、紫外線を照射しながら作製した自己組織化膜を80℃の温水に浸漬した結果を示す原子間力顕微鏡写真である。その結果、ペプチドが比較的粒径の揃った点状の集合体を多数形成し、表面全体に一様に残留する様子が確認された。この時、当初94.0%であったペプチドによるグラファイト界面の被覆率が85.4%まで低下する様子が確認された。
一方、図7(c)に示すように、紫外光照射を行わず作製したペプチド自己組織化膜を80℃の温水に浸漬した結果、表面に吸着したペプチドの減少が明確に確認された。粒径が不揃いの斑状のペプチドの集合体が不均一に形成され、はじめに有していた規則的な構造が完全に破壊された。また、表面被覆率の減少幅も紫外線照射の試料と比較して大きく、当初95.1%であったペプチドによるグラファイト界面の被覆率が72.9%まで低下した。
[実験例7]
(ペプチドの自己組織化能の評価)
下記表1に示すアミノ酸配列を有する合成例1〜3のペプチドを合成し、自己組織化能を評価した。基板としては、グラファイト、二硫化モリブデン、窒化ホウ素を使用した。具体的には、各ペプチドを5nM、10nM又は50nMの濃度で水に溶解したものを各基板上に滴下し、1時間静置後窒素ガスを吹きかけて液滴を除去し、原子間力顕微鏡で観察した。なお、E(グルタミン酸)はpH7で負電荷を有するアミノ酸であり、R(アルギニン)はpH7で正電荷を有するアミノ酸であり、Y(チロシン)は芳香族アミノ酸である。
図8(a)〜(h)は観察された原子間力顕微鏡画像である。各画像の右側に、用いたペプチド水溶液の濃度を示す。その結果、合成例1〜3のいずれのペプチドも自己組織化能を有することが明らかになった。
また、下記式(2)[式(2)中、mは1〜10の整数を表し、nは1〜30の整数を表し、X及びXはそれぞれ独立に、存在しないか、或いは芳香族アミノ酸若しくはその誘導体又はpH7で電荷を有するアミノ酸若しくはその誘導体を表し、Gはグリシン若しくはその誘導体を表し、Aはアラニン若しくはその誘導体を表す。nが2以上である場合、複数存在するmはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。]で表されるペプチドにおいて、X及びXを適宜変更することにより、基板への吸着力等を調整できることが示された。
[(GA) (2)
本発明によれば、安定性が向上した自己組織化膜を形成することができる自己組織化ペプチドを提供することができる。また、安定性が向上した自己組織化膜及びその製造方法、パターン形状を有する自己組織化膜及びその製造方法、並びにデバイスを提供することができる。

Claims (13)

  1. 複数の光架橋性基を有する自己組織化ペプチド。
  2. 下記式(1)で表される、請求項1に記載の自己組織化ペプチド。
    [(GA) (1)
    [式(1)中、mは1〜10の整数を表し、nは1〜30の整数を表し、X及びXはそれぞれ独立に、光架橋性基を有するアミノ酸若しくはその誘導体の残基、芳香族アミノ酸若しくはその誘導体の残基又はpH7で電荷を有するアミノ酸若しくはその誘導体の残基を表し、Gはグリシン若しくはその誘導体の残基を表し、Aはアラニン若しくはその誘導体の残基を表す。nが2以上である場合、複数存在するmはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
  3. 前記光架橋性基がクマリン基である、請求項1又は2に記載の自己組織化ペプチド。
  4. 溶媒中に溶解又は分散させた請求項1〜3のいずれか一項に記載の自己組織化ペプチドを基板に接触させて自己組織化膜を形成する工程と、
    前記自己組織膜に光を照射する工程と、
    を備える、自己組織化膜の製造方法。
  5. 溶媒中に溶解又は分散させた請求項1〜3のいずれか一項に記載の自己組織化ペプチドを基板に接触させて自己組織化膜を形成する工程と、
    前記自己組織化膜にパターン状に光を照射して、前記光架橋性基が架橋された領域及び架橋されていない領域を形成する工程と、
    前記架橋されていない領域の自己組織化膜を基板から剥離する工程と、
    を備える、パターン形状を有する自己組織化膜の製造方法。
  6. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の自己組織化ペプチドが配列してなる自己組織化膜。
  7. 前記光架橋性基の少なくとも1部が架橋されている、請求項6に記載の自己組織化膜。
  8. 前記光架橋性基がパターン状に架橋されている、請求項7に記載の自己組織化膜。
  9. パターン形状を有する、請求項7又は8に記載の自己組織化膜。
  10. 請求項6〜9のいずれか一項に記載の自己組織化膜を備えるデバイス。
  11. 下記式(2)で表される自己組織化ペプチド。
    [(GA) (2)
    [式(2)中、mは1〜10の整数を表し、nは1〜30の整数を表し、X及びXはそれぞれ独立に、存在しないか、或いは芳香族アミノ酸若しくはその誘導体又はpH7で電荷を有するアミノ酸若しくはその誘導体を表し、Gはグリシン若しくはその誘導体を表し、Aはアラニン若しくはその誘導体を表す。nが2以上である場合、複数存在するmはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
  12. 請求項11に記載の自己組織化ペプチドが配列してなる自己組織化膜。
  13. 請求項12に記載の自己組織化膜を備えるデバイス。
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