JP2016196583A - 水素化ブロック共重合体並びにこれを用いたポリプロピレン樹脂組成物及びその成形体 - Google Patents

水素化ブロック共重合体並びにこれを用いたポリプロピレン樹脂組成物及びその成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】ポリプロピレン樹脂組成物の成形体にバランスの優れた性能を付与することができる、水素化ブロック共重合体を提供する。
【解決手段】分子中に、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B1)と、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(S)と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B2)とをこの順に有する水素化ブロック共重合体であって、(C)の含有量が5〜20質量%、(B1)の含有量が70〜90質量%、(S)の含有量が1〜10質量%、(B2)の含有量が1〜10質量%であり、(C)、(B1)の水素化前のビニル結合量がそれぞれ5〜20mol%、60〜100mol%で水素化率が80mol%以上である、水素化ブロック共重合体。
【選択図】なし

Description

本発明は、水素化ブロック共重合体、並びにこれを用いたポリプロピレン樹脂組成物及びその成形体に関する。
ポリプロピレン系樹脂組成物は、一般的に耐薬品性、機械的特性に優れているため、包装材料、機械部品、自動車部品など広範囲に使用されている。また、最近、環境問題に対する必要性から非ハロゲン系の透明高分子材料の開発が進んでおり、特にチューブ、シート、及びフィルム分野においては、ポリプロピレン系樹脂が使用され、用途に合わせてポリプロピレン系樹脂を軟質化、透明化等させる要求が出ている。
特許文献1では、「ビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位を主体とする少なくとも2個の重合体ブロックAと、水素添加されたブタジエン単量体単位を主体とする少なくとも2個の重合体ブロックBから構成され、水素添加される前のブタジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック中のオレフィン性不飽和二重結合のうち、90%以上が水素添加された水素添加ブロック共重合体において、末端にあるブロックのうち、少なくとも1個が重合体ブロックBであり、かつ末端にある重合体ブロックBはそれぞれ水素添加ブロック共重合体中で占める割合が、0.1重量%以上9.1重量%未満であり、水素添加ブロック共重合体においてビニル芳香族炭化水素化合物の水素添加ブロック共重合体中で占める割合が、10重量%を越え25重量%未満であり、水素添加前のブタジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックの1、2結合量の平均が62モル%以上99モル%未満であり、かつ該水素添加ブロック共重合体はアイソタクチックホモプロピレンの結晶化開始温度(Tc1)と、該水素添加ブロック共重合体を該アイソタクチックホモポリプロピレンに20重量%添加した場合の結晶化開始温度(Tc2)の差ΔTc(Tc1−Tc2)が1.5℃以上であることを特徴とする水素添加ブロック共重合体。」が開示されている。
国際公開第2000/15681号
食品用包装分野、衣料用包装分野、並びに輸液チューブ及び輸液バック等の医療分野に用いられるポリプロピレン系樹脂組成物の成形体には、低異方性、柔軟性、透明性、平滑性、低べたつき性、キンク性、歪回復性、及び耐衝撃性等が求められ、更に各特性のバランスが良好であることが求められる。しかしながら、発明者らの鋭意検討の結果、特許文献1に記載されているような水素添加ブロック共重合体は、ポリプロピレン成形体、例えばチューブ状、シート状、及びフィルム状等にしたときの低異方性、柔軟性、透明性、平滑性、低べたつき性、キンク性、及び歪回復性のバランスに改善の余地があることが分かった。
本発明は、上記の従来技術が有する課題に鑑みてなされたものであり、ポリプロピレン樹脂組成物の成形体に低異方性、柔軟性、透明性、平滑性、低べたつき性、キンク性、歪回復性のバランスに優れた性能を付与することができる、水素化ブロック共重合体を提供することを目的とする。
本発明は以下のとおりである。
〔1〕
分子中に、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B1)と、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(S)と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B2)とをこの順に有する水素化ブロック共重合体であって、
上記水素化ブロック共重合体中、上記重合体ブロック(C)の含有量が5〜20質量%であり、上記重合体ブロック(B1)の含有量が70〜90質量%であり、上記重合体ブロック(S)の含有量が1〜10質量%であり、上記重合体ブロック(B2)の含有量が1〜10質量%であり、
上記重合体ブロック(C)の水素化前のビニル結合量が5〜20mol%であり、上記重合体ブロック(B1)の水素化前のビニル結合量が60〜100mol%であり、上記重合体ブロック(B2)の水素化前のビニル結合量が40〜100mol%であり、
水素化率が80mol%以上である、水素化ブロック共重合体。
〔2〕
上記水素化ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)が10万〜30万である、項目1に記載の水素化ブロック共重合体。
〔3〕
ビニル化剤、有機リチウム化合物、及びアルカリ金属アルコキシドの存在下、上記ビニル化剤と有機リチウム化合物のモル比(ビニル化剤/有機リチウム化合物)が0.2〜3であり、かつ上記アルカリ金属アルコキシドと有機リチウム化合物のモル比(アルカリ金属アルコキシド/有機リチウム化合物)が0.01〜0.3の条件下で共重合された、項目1又は2に記載の水素化ブロック共重合体。
〔4〕
項目1〜3のいずれか一項に記載の水素化ブロック共重合体1〜99質量%と、ポリプロピレン樹脂1〜99質量%とを含む、ポリプロピレン樹脂組成物。
〔5〕
上記ポリプロピレン樹脂がランダムポリプロピレン樹脂である、項目4に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
〔6〕
項目4又は5に記載のポリプロピレン樹脂組成物を含む、成形体。
〔7〕
項目4又は5に記載のポリプロピレン樹脂組成物を含む、チューブ。
〔8〕
項目4又は5に記載のポリプロピレン樹脂組成物を含む、シート。
本発明によれば、ポリプロピレン樹脂組成物の成形体に低異方性、柔軟性、透明性、平滑性、低べたつき性、キンク性、及び歪回復性のバランスに優れた性能を付与することができる水素化ブロック共重合体、並びにこれを用いた樹脂組成物、及びその成形体を提供することができる。
図1は、チューブ状成形体のキンク性を評価する際の応力カーブの例である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施できる。
<水素化ブロック共重合体>
本実施形態の水素化ブロック共重合体は、分子中に、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B1)と、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(S)と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B2)とをこの順に有する水素化ブロック共重合体であって、上記水素化ブロック共重合体中、上記重合体ブロック(C)の含有量が5〜20質量%であり、上記重合体ブロック(B1)の含有量が70〜90質量%であり、上記重合体ブロック(S)の含有量が1〜10質量%であり、上記重合体ブロック(B2)の含有量が1〜10質量%であり、上記重合体ブロック(C)の水素化前のビニル結合量が5〜20mol%であり、上記重合体ブロック(B1)の水素化前のビニル結合量が60〜100mol%であり、上記重合体ブロック(B2)の水素化前のビニル結合量が40〜100mol%であり、水素化率が80mol%以上である。
ここで、「主体とする」とは、対象の単量体単位を、対象の重合体ブロック中に、91質量%以上含むことをいう。得られるポリプロピレン樹脂組成物成形体の柔軟性、透明性、低べたつき性、キンク性、及び歪回復性等の観点から、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)、(B1)、及び(B2)における共役ジエン化合物の含有量は、それぞれ独立して、好ましくは92質量%以上、より好ましくは93質量%以上、更に好ましくは95質量%以上である。同様の観点から、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(S)におけるビニル芳香族化合物の含有量は、好ましくは92質量%以上、より好ましくは93質量%以上、更に好ましくは95質量%以上である。
共役ジエン重合体を主体とする重合体ブロック(C)、(B1)、及び(B2)における「水素化前のビニル結合量」とは、水素化前の重合体に組み込まれている共役ジエン化合物に起因する1,4−結合(シス及びトランス)と1,2−結合(但し、3,4−結合で重合体に組み込まれている場合には1,2−結合と3,4−結合の合計量をいう)の合計量に対する、1,2−結合量(mol%)をいう。
本実施形態において、水素化ブロック共重合体中の重合体ブロック(C)の含有量は、5〜20質量%である。重合体ブロック(C)の含有量は、得られるポリプロピレン樹脂組成物成形体の低異方性、柔軟性、透明性、平滑性、低べたつき性、キンク性、及び歪回復性等の観点から、好ましくは5〜17質量%であり、より好ましくは7〜15質量%、更に好ましくは8〜13質量%である。
本実施形態において、水素化前の重合体ブロック(C)のビニル結合量は、5〜20mol%である。水素化前の重合体ブロック(C)のビニル結合量は、生産性、並びに得られるポリプロピレン樹脂組成物成形体の透明性、平滑性、低べたつき性、キンク性、及び歪回復性等の観点から、好ましくは6〜19mol%であり、より好ましくは7〜18mol%、更に好ましくは8〜17mol%である。
本実施形態において、水素化ブロック共重合体中の重合体ブロック(B1)の含有量は、70〜90質量%である。重合体ブロック(B1)の含有量は、得られるポリプロピレン樹脂組成物成形体の低異方性、柔軟性、透明性、低べたつき性、及びキンク性等の観点から、好ましくは72〜88質量%であり、より好ましくは73〜87質量%、更に好ましくは75〜85質量%である。
本実施形態において、水素化前の重合体ブロック(B1)のビニル結合量は、60〜100mol%である。水素化前の重合体ブロック(B1)のビニル結合量は、生産性、並びに得られるポリプロピレン系樹脂組成物成形体の柔軟性、透明性、低べたつき性、及びキンク性等の観点から、好ましくは65〜95mol%であり、より好ましくは68〜90mol%、更に好ましくは73〜85mol%である。
本実施形態において、水素化ブロック共重合体中の重合体ブロック(B2)の含有量は、1〜10質量%である。重合体ブロック(B2)の含有量は、生産性、並びに得られるポリプロピレン樹脂組成物成形体の低異方性、柔軟性、透明性、平滑性、低べたつき性、及び歪回復性等の観点から、好ましくは2〜8質量%であり、より好ましくは2〜6質量%、更に好ましくは3〜5質量%である。
本実施形態において、水素化前の重合体ブロック(B2)のビニル結合量は、40〜100mol%である。水素化前の重合体ブロック(B2)のビニル結合量は、生産性、並びに得られるポリプロピレン系樹脂組成物成形体の柔軟性、透明性、及び平滑性等の観点から、好ましくは45〜95mol%であり、より好ましくは50〜90mol%、更に好ましくは55〜85mol%である。
本実施形態において、水素化ブロック共重合体中の重合体ブロック(C)、(B1)、及び(B2)に使用される共役ジエンは、1対の共役二重結合を有するジオレフィンである。ジオレフィンとしては、例えば1,3−ブタジエン、2−メチル―1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル―1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル―1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、及びファルネセンが挙げられる。特に一般的なジオレフィンとしては、1,3−ブタジエン、及びイソプレンが挙げられる。これらは一種のみならず二種以上を使用してもよい。
本実施形態において、水素化ブロック共重合体中の重合体ブロック(S)の含有量は、1〜10質量%である。重合体ブロック(S)の含有量は、生産性、並びに得られるポリプロピレン樹脂組成物成形体の低異方性、柔軟性、透明性、平滑性、低べたつき性、キンク性、及び歪回復性の観点から、好ましくは2〜9質量%であり、より好ましくは3〜8質量%、更に好ましくは3〜7質量%である。
本実施形態において、重合体ブロック(S)の分子量分布(Mw/Mn)は、得られるポリプロピレン樹脂組成物成形体の柔軟性、透明性、低べたつき性、キンク性、及び歪回復性の観点から、1.01〜1.50であることが好ましく、1.01〜1.45であることがより好ましく、1.01〜1.40であることがさらに好ましい。
本実施形態において、得られるポリプロピレン樹脂組成物成形体の柔軟性、透明性、低べたつき性、キンク性、及び歪回復性の観点から、重合体ブロック(S)は、水素化ブロック共重合体に含まれる全芳香族ビニル化合物単位の91質量%以上を30連鎖以上のブロックとして有することが好ましい。より好ましくは、重合体ブロック(S)は、水素化ブロック共重合体に含まれる全芳香族ビニル化合物単位の93質量%以上、95質量%以上、又は97質量%以上を、30連鎖以上のブロックとして有する。
ここで、水素化ブロック共重合体における全芳香族ビニル化合物単位中の、重合体ブロック(S)に含有される芳香族ビニル化合物単位の割合(重合体ブロック(S)のブロック率)は、紫外線分光光度とオスミウム分解法から測定できる。また、芳香族ビニル化合物単位の連鎖量は、オゾン分解法により測定できる。詳細は後述する実施例に記載する。なお、本願明細書において、芳香族ビニル化合物単位の連鎖の数を「連鎖量」といい、特定量の連鎖を構成する芳香族ビニル化合物単位の含有量を「連鎖率」という。
本実施形態において、水素化ブロック共重合体中の重合体ブロック(S)に使用される芳香族ビニル化合物としては、特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン等のビニル芳香族化合物が挙げられる。これらの中でも、入手性及び生産性の観点から、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレンが好ましく用いられる。特に好ましくはスチレンである。重合体ブロック(S)は、1種の芳香族ビニル化合物単位で構成されていてもよいし、2種以上から構成されていてもよい。
本実施形態において、水素化ブロック共重合体中に含まれる全共役ジエン化合物単位の水素化率は80mol%以上である。水素化率は、生産性、及び得られるポリプロピレン系樹脂組成物成形体の低異方性、柔軟性、透明性、平滑性、低べたつき性、キンク性、及び歪回復性の観点から、好ましくは85mol%以上であり、より好ましくは90mol%以上、更に好ましくは95mol%以上である。
水素化率を80mol%以上とすることで、重合体ブロック(C)の結晶化が高まり、得られるポリプロピレン樹脂組成物成形体の平滑性、低べたつき性、キンク性、及び歪回復性が良好となる。また、重合体ブロック(B1)とポリプロピレン系樹脂との溶解パラメータ値が近づき、水素化ブロック共重合体の分散性が良好になることから、得られるポリプロピレン樹脂組成物成形体の柔軟性、透明性、及びキンク性が良好となる。
水素添加率は、例えば、水素添加時の触媒量によって制御することができ、水素添加速度は、例えば、水素添加時の触媒量、水素フィード量、圧力及び温度等によって制御することができる。
水素化ブロック共重合体のメルトフローレート(MFR;ISO 1133に準拠)は、得られるポリプロピレン樹脂組成物成形体の加工性、柔軟性、透明性、低べたつき性、キンク性、及び歪回復性等の観点から、0.1〜12g/10分の範囲が好ましく、0.5〜10g/10分以下であることがより好ましく、1.0〜8g/10分以下であることがさらに好ましく、1.5〜5.0g/10以下であることが最も好ましい。
本実施形態の水素化ブロック共重合体の構造は、特に限定されず、例えば、線状、分岐状、放射状、櫛形状などいかなる形態をとっても構わないが、所望する物性等に応じて好適な構造とすることができる。ポリプロピレン樹脂組成物の成形体に付与する性能、すなわち、低異方性、柔軟性、透明性、平滑性、低べたつき性、キンク性、及び歪回復性の観点から、水素化ブロック共重合体は、下記式で表されるような構造であることが好ましい。水素化ブロック共重合体は、重合体ブロック(C)、(B1)、(S)、及び(B2)をこの順に有すればよく、各ブロック間に他のモノマーから構成されるブロック、または、ビニル含有量の異なるブロックを1つ以上有してもよい。
(C−B1)n−S−B2
(C−B1−S)n−B2
(C−B1−S−B2)n
(C−B1−S−B2)m−X
上式において、C、B1、S、B2はそれぞれ、重合体ブロック(C)、(B1)、(S)、及び(B2)を表す。nは1以上の整数、好ましくは1〜3の整数を表す。mは2以上の整数、好ましくは2〜6の整数を表す。Xはカップリング剤残基又は多官能開始剤残基を表す。水素化ブロック共重合体は、C−B1−S−B2の構造式で表される重合体であることが好ましい。
本実施形態の水素化ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)(以下、「Mw」ともいう。)は、特に限定されず、例えば70,000〜500,000であることが好ましく、90,000〜400,000であることがより好ましく、100,000〜300,000であることが更に好ましい。重量平均分子量(Mw)は、得られるポリプロピレン樹脂組成物成形体の低異方性、柔軟性、透明性、平滑性、低べたつき性、キンク性、及び歪回復性の観点から、好ましくは130,000〜300,000であることが好ましく、より好ましくは140,000〜280,000であり、更に好ましくは150,000〜250,000である。
水素化ブロック共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」ともいう。)で測定される単一ピークの分子量分布は1.30以下であることが好ましく、より好ましくは1.20以下、さらに好ましくは1.15以下であり、よりさらに好ましくは1.10以下である。
水素化ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は、GPCによる測定で得られるクロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)に基づいて求めた重量平均分子量(Mw)である。水素化ブロック共重合体の分子量分布及びカップリング率も、同様にGPCによる測定から求めることができ、分子量分布は重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比率であり、カップリング率はピークの総面積からカップリングされていない部分に相当するピーク面積を差し引いて求められる。
<水素化ブロック共重合体の製造方法>
水素化ブロック共重合体は、一般的には、有機溶媒中で、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として重合を行い、その後水素化反応を行うことにより製造することができる。重合の態様としては、バッチ重合であっても連続重合であっても、或いはそれらの組み合わせであってもよい。分子量分布が狭く、高い強度を有するブロック共重合体を得る観点からは、バッチ重合方法が好ましい。
重合温度は一般に0〜150℃であり、20〜120℃であることが好ましく、40〜100℃であることがより好ましい。重合時間は目的とする重合体によって異なるが、通常は24時間以内であり、0.1〜10時間であることが好ましい。分子量分布が狭く、高い強度を有するブロック共重合体を得る観点からは、0.5〜3時間であることがより好ましい。重合系の雰囲気は、窒素及び溶媒を液相に維持するのに十分な圧力の範囲であればよく、特に限定されるものではない。重合系内に、開始剤及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物、例えば水、酸素、炭酸ガスなどが存在しないことが好ましい。
有機溶媒の例としては、特に限定されないが、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、シクロへプタン、メチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、キシレン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素が挙げられる。
重合開始剤である有機アルカリ金属化合物としては、有機リチウム化合物が好ましい。有機リチウム化合物としては、有機モノリチウム化合物、有機ジリチウム化合物、有機ポリリチウム化合物が用いられる。有機リチウム化合物の具体例としては、以下に限定されないが、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、フェニルリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルリチウム、及びイソプロペニルジリチウムなどが挙げられる。この中でも、重合活性の点でn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムが好ましい。
重合開始剤である有機アルカリ金属化合物の使用量は、目的とするブロック共重合体の分子量によるが、一般的には0.01〜0.5phm(単量体100質量部当たりに対する質量部)の範囲であることが好ましく、0.03〜0.3phmの範囲であることがより好ましく、0.05〜0.15phmの範囲であることが更により好ましい。
水素化ブロック共重合体のビニル結合量は、ルイス塩基、例えばエーテル、アミンなどの化合物をビニル化剤として使用することで調節できる。ビニル化剤の使用量は、目的とするビニル結合量によって調整することができる。また、ビニル化剤及び後述する金属アルコキシドを2以上の条件に分けて添加することにより、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック中に、ビニル結合量の異なる重合体ブロックを製造することができる。
ビニル化剤の例としては、エーテル化合物、酸素原子を2個以上有するエーテル系化合物、及び第3級アミン系化合物等が挙げられる。
第3級アミン系化合物としては、例えば、ピリジン、N,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン、トリブチルアミン、テトラメチルプロパンジアミン、1,2−ジピペリジノエタン、ビス[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]エーテル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは、単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。第3級アミン化合物としては、アミンを2個有する化合物が好ましい。さらに、それらの中でも、分子内で対称性を示す構造を有するものがより好ましく、N,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミンやビス[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]エーテルや1,2−ジピペリジノエタンがさらに好ましい。
本実施形態においては、上述したビニル化剤、有機リチウム化合物、及びアルカリ金属アルコキシドの共存下、水素化ブロック共重合体の共重合を行ってもよい。ここで、アルカリ金属アルコキシドとは、一般式MOR(式中、Mはアルカリ金属、Rはアルキル基である)で表される化合物である。
アルカリ金属アルコキシドのアルカリ金属としては、高いビニル結合量、狭い分子量分布、高い重合速度、及び高いブロック率の観点から、ナトリウム又はカリウムであることが好ましい。アルカリ金属アルコキシドとしては、以下に限定されるものではないが、好ましくは、炭素数2〜12のアルキル基を有するナトリウムアルコキシド、リチウムアルコキシド、カリウムアルコキシドであり、より好ましくは、炭素数3〜6のアルキル基を有するナトリウムアルコキシドやカリウムアルコキシドであり、さらに好ましくは、ナトリウム−t−ブトキシド、ナトリウム−t−ペントキシド、カリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ペントキシドである。この中でも、ナトリウムアルコキシドであるナトリウム−t−ブトキシド、ナトリウム−t−ペントキシドがよりさらに好ましい。
本実施形態の水素化ブロック共重合体の重合工程において、ビニル化剤、有機リチウム化合物、及びアルカリ金属アルコキシドの共存下、重合を行う場合、ビニル化剤と有機リチウム化合物とのモル比(ビニル化剤/有機リチウム化合物)、及びアルカリ金属アルコキシドと有機リチウム化合物とのモル比(アルカリ金属アルコキシド/有機リチウム化合物)を、下記モル比で共存させることが好ましい。
ビニル化剤/有機リチウム化合物が0.2〜3.0
アルカリ金属アルコキシド/有機リチウム化合物が0.01〜0.3
ビニル化剤/有機リチウム化合物のモル比は、高いビニル結合量、高い重合速度の観点から0.2以上とし、狭い分子量分布、かつ高い水素化活性を得る観点から3.0未満とすることが好ましい。また、アルカリ金属アルコキシド/有機リチウム化合物のモル比は、高いビニル結合量、高い重合速度、及び高いブロック率の観点から0.01以上とし、狭い分子量分布、かつ高い水素化活性を得る観点から0.3以下とすることが好ましい。これにより、重合速度の向上が図られ、目的とする水素化ブロック共重合体のビニル結合量を高くできるとともに分子量分布を狭くでき、さらにはブロック率が向上する傾向にある。その結果、ポリプロピレン系樹脂組成物に付与する性能、すなわち、低異方性、柔軟性、透明性、平滑性、低べたつき性、キンク性、歪回復性、がより良好となる傾向にある。
重合工程における、ビニル化剤/有機リチウム化合物のモル比は、高いビニル結合量及び高い重合速度の観点から、0.8以上が好ましく、狭い分子量分布及び高い水素化活性の観点から、2.5以下が好ましく、1.0以上2.0以下の範囲がより好ましい。
また、アルカリ金属アルコキシド/有機リチウム化合物のモル比は、高いビニル結合量、高い重合速度及び高いブロック率の観点から0.02以上が好ましく、狭い分子量分布や高い水素化活性の観点から0.2以下が好ましく、0.03以上0.1以下がより好ましく、0.03以上0.08以下がさらに好ましい。
さらに、アルカリ金属アルコキシド/ビニル化剤のモル比は、高いビニル結合量、高い重合速度及び高いブロック率の観点から、0.010以上であることが好ましく、狭い分子量分布を実現し、かつ高い水素化活性を得る観点から0.100以下が好ましく、0.012以上0.080以下がより好ましく、0.015以上0.06以下がさらに好ましく、0.015以上0.05以下がよりさらに好ましい。
共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック中のビニル結合量の異なるブロックを製造する手法として、ビニル化剤に対する失活剤を用いることもできる。失活剤としては、アルキル金属化合物が挙げられ、一つのアルキル置換基あたり1から20個の炭素原子をもつアルキルアルミニウム、亜鉛及びマグネシウム、ならびにこれらの混合物から選択される。
本実施形態においては、水素化の方法は特に限定されないが、例えば、上記で得られたブロック共重合体を、水素化触媒の存在下に、水素を供給し、水素添加することにより、共役ジエン化合物単位の二重結合残基が水素添加された水素化ブロック共重合体を得ることができる。
水素化ブロック共重合体をペレット化することにより、水素化ブロック共重合体のペレットを製造することができる。ペレット化の方法としては、例えば、一軸又は二軸押出機から水素化ブロック共重合体をストランド状に押出して、ダイ部前面に設置された回転刃により、水中で切断する方法;一軸又は二軸押出機から水素化ブロック共重合体をストランド状に押出して、水冷又は空冷した後、ストランドカッターにより切断する方法;オープンロール、バンバリーミキサーにより溶融混合した後、ロールによりシート状に成型し、更に該シートを短冊状にカットした後に、ペレタイザーにより立方状ペレットに切断する方法などが挙げられる。なお、水素化ブロック共重合体のペレット成形体の大きさ、形状は特に限定されない。
水素化ブロック共重合体は必要に応じて好ましくはそのペレットに、ペレットブロッキングの防止を目的としてペレットブロッキング防止剤を配合することができる。ペレットブロッキング防止剤としては、特に限定されないが、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビスステアリルアミド、タルク、アモルファスシリカ等が挙げられる。得られるランダムポリプロピレン組成物及びそれを含むチューブ状成形体、シート状成形体の透明性の観点から、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレン、及びポリプロピレンが好ましい。好ましい量としては、水素化ブロック共重合体に対して500〜6000ppmである。より好ましい量としては、水素化ブロック共重合体に対して1000〜5000ppmである。ペレットブロッキング防止剤は、ペレット表面に付着した状態で配合されていることが好ましいが、ペレット内部にある程度含むこともできる。
<ポリプロピレン樹脂組成物>
本実施形態のポリプロピレン樹脂組成物は、本発明の水素化ブロック共重合体1〜99質量%と、ポリプロピレン樹脂1〜99質量%とを含む。
得られるポリプロピレン組成物成形体の低異方性、平滑性、及び低べたつき性の観点から、ポリプロピレン組成物中の水素化ブロック共重合体の含有量は99質量%以下であり、得られるポリプロピレン組成物成形体の柔軟性、透明性、平滑性、キンク性、及び歪回復性の観点から、1質量%以上である。
ポリプロピレン組成物成形体の耐衝撃性、キンク性、及び歪回復性の観点から、水素化ブロック共重合体の含有量は、好ましくは30〜90質量%、より好ましくは40〜80質量%、更に好ましくは50〜70質量%であり、ポリプロピレン樹脂の含有量は、好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜60質量%、更に好ましくは30〜50質量%である。
ポリプロピレン樹脂としては、ランダムポリプロピレン樹脂、ホモポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂が挙げられる。ポリプロピレン樹脂は、ランダムポリプロピレン樹脂であることが好ましい。
ここで、ランダムポリプロピレンにおける「ランダム」とは、プロピレンとプロピレン以外のモノマーを共重合したもので、プロピレン以外のモノマーがプロピレン連鎖中にランダムに取り込まれ、実質的にプロピレン以外のモノマーが連鎖しないものをいう。
ランダムポリプロピレンとしては、プロピレン単位の含有量が98質量%未満であれば特に限定されない。ランダムポリプロピレンの好適な例としては、プロピレンとエチレンのランダム共重合体又はプロピレンと炭素数4〜20のα−オレフィンのランダム共重合体などが挙げられる。ランダムポリプロピレンとしてプロピレンとエチレンのランダム共重合体又はプロピレンと炭素数4〜20のα−オレフィンのランダム共重合体を用いる場合、柔軟性、透明性、耐衝撃性及び耐キンク性がより良好となる傾向にある。
α−オレフィンとしては、以下に限定されないが、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。好ましくは、炭素数2〜8のα−オレフィンであり、エチレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンが挙げられる。これらのα−オレフィンは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ランダムポリプロピレンも1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ランダムポリプロピレンの中でも、得られるランダムポリプロピレン組成物及びそれを含むチューブ状成形体、シート状成形体の柔軟性、透明性、耐衝撃性、耐キンク性の観点から、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体及びプロピレン−エチレン−1−ブテン三元ランダム共重合体からなる群より選択される少なくとも1つを用いることがより好ましい。
柔軟性、透明性、低べたつき性、耐衝撃性、耐キンク性の観点から、ランダムポリプロピレンがプロピレンとエチレンのランダム共重合体又はプロピレンと炭素数4〜12のα−オレフィンのランダム共重合体であり、ランダムポリプロピレン中の、エチレン又はα−オレフィン単位の含有量は2質量%超40質量%未満が好ましく、プロピレン単位の含有量が60質量%以上98質量%未満であることが好ましい。上記同様の観点から、エチレン又はα−オレフィン単位の含有量は2質量%超30質量%未満がより好ましく、2.5質量%以上25質量%未満が更に好ましく、3質量%以上20質量%未満がより更に好ましい。また、プロピレン単位の含有量は70質量%以上98質量%未満がより好ましく、75質量%以上97.5質量%未満が更に好ましく、80質量%以上97質量%未満がより更に好ましい。
ランダムポリプロピレン中のプロピレン単位の含有量、エチレン単位の含有量、α−オレフィン単位の含有量は、カーボン核磁気共鳴(13C−NMR)法より測定できる。詳細は後述する実施例に記載する。
ランダムポリプロピレンのメルトフローレート(MFR;230℃、ISO 1133に準拠)は、得られるランダムポリプロピレン組成物の加工性と低べたつき性の観点から、1〜30g/10分が好ましく、1〜25g/10分がより好ましく、2〜20g/10分が更に好ましく、3〜15g/10分がより更に好ましい。
ランダムポリプロピレンを製造するに際して使用される触媒については特に限定されないが、例えば、立体規則性触媒を使用する重合法が好ましい。立体規則性触媒としては、以下に限定されないが、例えば、チーグラー触媒やメタロセン触媒などが挙げられる。これら触媒の中でも、得られるランダムポリプロピレン組成物及びそれを含むチューブ状成形体、シート状成形体の低べたつき性、引裂強、耐衝撃性、耐キンク性の観点から、メタロセン触媒が好ましい。
得られるランダムポリプロピレン組成物及びそれを含むチューブ状成形体、シート状成形体の低べたつき性、引裂強、耐衝撃性、耐キンク性の観点からランダムポリプロピレンの分子量分布(Mw/Mn)は3.5以下であることが好ましい。Mw/Mnは3.0以下であることがより好ましく、2.8以下であることが更に好ましい。下限値は特に限定されないが1.5以上が好ましい。とりわけ、ランダムポリプロピレンが、メタロセン系触媒により重合されたものであり、かつ、分子量分布(Mw/Mn)が1.5以上3.5以下であることが好ましい。なお、ランダムポリプロピレンの分子量分布は、GPCによる測定で得られる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比率から求められる。
本実施形態のポリプロピレン組成物は、要求性能に応じて、その他添加剤を併用してもよい。添加剤としては、特に限定されず、例えば、難燃剤、安定剤、着色剤、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、分散剤、流れ増強剤、ステアリン酸金属塩といった離型剤、シリコーンオイル、鉱物油系軟化剤、合成樹脂系軟化剤、銅害防止剤、架橋剤、核剤等が挙げられる。
<ポリプロピレン樹脂組成物の製造方法>
本実施形態のポリプロピレン組成物は、例えば、水素化ブロック共重合体、ポリプロピレン、及び必要に応じて加えられる他の成分を、その各成分の組成比に応じてドライブレンドする方法、通常の高分子物質の混合に供される装置によって調整する方法等によって製造することができる。
その際に用いられうる混合装置としては、特に限定されないが、例えば、バンバリーミキサー、ラボプラストミル、単軸押出機、2軸押出機等の混練装置が挙げられ、押出機を用いた溶融混合法により製造することが生産性、良混練性の点から好ましい。混練時の溶融温度は、適宜設定することができるが、通常130〜300℃の範囲内であり、150〜250℃の範囲であることが好ましい。
<成形体>
本実施形態の成形体は、本実施形態のポリプロピレン樹脂組成物を含む。成形体としては、チューブ、シート、フィルム、バック、医療用成形体、例えば医療用チューブ、医療用フィルム、医療用輸液バック、並びに包装材、例えば食品包装材、及び衣料包装材等を挙げることができる。
本実施形態の成形体は、以下に述べる方法により成形することができる。例えばチューブの成形方法としては、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン樹脂組成物を押出機に投入して溶融し、これをダイに通して管状にし、水冷又は空冷してチューブとすることができる。押出機としては単軸又は多軸の押出機を使用することができ、また複数台の押出機を使用して多層押出した多層チューブを成形することもできる。また、ポリプロピレン樹脂組成物を製造する際の押出機から直接チューブとして成形することもできる。
チューブの形状は、特に限定されないが、通常円形、楕円形等のチューブが使用される。チューブの太さは特に限定されないが、例えば、外径で1〜50mmのものが好ましく、2〜30mmのものがより好ましく、3〜20mmのものがさらに好ましい。また、チューブの厚みは0.3〜30mmのものが好ましく、0.4〜20mmのものがより好ましく、0.5〜10mmのものがさらに好ましい。
本実施形態のチューブは、本実施形態の目的を阻害しない範囲で他のポリマーを積層して多層チューブとしてもよい。上記のポリマーは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて、単層又は層毎に種類が異なっていてもよい多層で積層して用いることができる。上記多層構造であるチューブの上記したポリマーからなる層は、付与する所望の性能により、最内層、中間層、最外層のいずれにあってもよい。本実施形態では、さらに、肉厚の増加を抑えて柔軟性を維持した上で耐圧性等を向上するために、編組補強糸や螺旋補強体を巻き付けて耐圧チューブ(ホース)とすることができる。編組補強糸は、厚み方向での内部又は層間に設けられ、ビニロン、ポリアミド、ポリエステル、アラミド繊維、炭素繊維、金属ワイヤー等を用いることができ、螺旋補強体は外周に設けられ、金属、プラスチック等を用いることができる。
本実施形態のシートの製造方法は、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン樹脂組成物を押出機に投入して押出す成型法として、Tダイ法、インフレーション法等を採用することができる。インフレーション成型としては、通常の空冷インフレーション成型、空冷2段インフレーション成型、高速インフレーション成型、水冷インフレーション成型などを採用できる。また、ダイレクトブロー、インジェクションブローなどのブロー成型法、プレス成型法を採用することもできる。用いる押出機としては、単軸又は多軸の押出機を使用することができ、また複数台の押出機を使用して多層押出した多層シートを成形することもできる。また、ポリプロピレン樹脂組成物を製造する際の押出機から直接シートとして成形することもできる。
一般的に、厚みが0.005mm以上0.2mm未満であるシート状成形体をフィルムといい、厚みが0.2mm以上50mm以下であるシート状成形体をシートという。本願明細書において、「シート」は、上記フィルム、及びシートを包含する。本実施形態のシートの厚みは、特に限定されないが、成型加工性、柔軟性等の観点から、0.005mm〜0.5mmの範囲内であることが好ましく、0.01mm〜0.3mmであることがより好ましい。
バックは、本実施形態のシートから成形することができる袋状の成形体をいう。バックとしては、食品包装用バック、衣類包装用バック、医療用バック、例えば医療用輸液バック、薬品包装用バック等が挙げられる。
以下、実施例によって本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例においては、以下に説明する方法によって水素化ブロック共重合体の調製を行い、プロピレン系樹脂組成物を製造し、物性の比較を行った。その際、水素化ブロック共重合体の特性やプロピレン系樹脂組成物の物性は次のように測定した。
<測定方法>
1)水素化ブロック共重合体の全芳香族ビニル化合物単位の含有量(以下、「スチレン含有量」とも表記する。)
水素添加後の重合体を用いて、プロトン核磁気共鳴(H1−NMR)法により測定した。測定機器はJNM−LA400(JEOL製)、溶媒に重水素化クロロホルムを用い、サンプル濃度は50mg/mL、観測周波数は400MHz、化学シフト基準にテトラメチルシランを用い、パルスディレイ2.904秒、スキャン回数64回、パルス幅45°、及び測定温度26℃で行った。スチレン含有量は、スペクトルの6.2〜7.5ppmにおける総スチレン芳香族シグナルの積算値を用いて算出した。
2)水素化ブロック共重合体のビニル結合量
水素添加前のブロック共重合体の重合過程のステップ毎にサンプリングしたポリマーを、プロトン核磁気共鳴(H1−NMR)法により測定した。測定条件及び測定データの処理方法は上記1)と同様とした。ビニル結合量は、1,4−結合及び1,2−結合に帰属されるシグナルの積分値から各結合様式の1Hあたりの積分値を算出した後、1,4−結合と1,2−結合(ブタジエンの場合であって、イソプレンの場合ならば3,4−結合になる)との比率から算出した。
3)水素化ブロック共重合体の共役ジエン化合物単位に基づく不飽和結合の水素添加率
水素添加後の重合体を用いて、プロトン核磁気共鳴(H1−NMR)により測定した。なお、測定条件及び測定データの処理方法は上記1)と同様とした。水素添加率は、4.5〜5.5ppmの残存二重結合に由来するシグナル及び水素添加された共役ジエンに由来するシグナルの積分値を算出し、その比率を算出した。
4)水素化ブロック共重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布の測定
水素化ブロック共重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定(島津製作所製、LC−10)、カラム:TSKgelGMHXL(4.6mmID×30cm、2本)、溶媒:テトラヒドロフラン(THF)により、市販の標準ポリスチレンによるポリスチレン換算分子量として求めた。また、水素化ブロック共重合体の分子量分布は、得られた数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の比として求めた。
5)プロピレン系樹脂のプロピレン量、エチレン量の含有量
各プロピレン系樹脂を用いて、カーボン核磁気共鳴(C13−NMR)法により測定した。測定機器はJEOL−ECS400(JEOL製)、溶媒に重水素化オルソジクロロベンゼンを用い、サンプル濃度は10w/v%、観測周波数は400MHz、化学シフト基準に重水素化オルソジクロロベンゼンを用い、スキャン回数10,000回、及び測定温度130℃で行った。プロピレン、エチレンに帰属されるシグナルの積分値から各結合様式の13Cあたりの積分値を算出した後、プロピレン、エチレンとの比率から算出した。
6)プロピレン系樹脂の分子量分布
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定(東ソー製、HLC−8121GPC/HT)、カラム:TSKgelGMHHR-H(20)HT(7.8mmID×30cm、2本)、溶媒:オルトジクロロベンゼンにより、145℃にて測定し、得られた数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の比として求めた。
7)メルトフローレート(以下、「MFR」ともいう。)
水素化ブロック共重合体とプロピレン系樹脂のMFRは、ISO 1133に準拠して、230℃、2.16Kg荷重で測定した。
8)水素化ブロック共重合体中の重合体ブロック(S)のブロック率及び、重合体ブロック(S)の分子量分布
水素添加前のブロック共重合体を、四酸化オスミウム触媒としてターシャリーブチルハイドロパーオキサイドにより酸化分解する方法(酸化分解法:I.M.KOLTHOFF,etal.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法)を適用し、重合体ブロック(S)成分(但し平均重合度が約30未満の芳香族ビニル化合物単位成分は除かれている。)を分離し、当該重合体ブロック(S)の重量を測定し、下記の式により求めた。
重合体ブロック(S)のブロック率(質量%)=(水素化ブロック共重合体中の重合体ブロック(S)の質量/水素化ブロック共重合体中の全芳香族ビニル化合物単位の質量)×100
なお、水素化ブロック共重合体中の全芳香族ビニル化合物単位の質量は、紫外線分光光度計(日立UV200)を用いて、262nmの吸収強度より算出した。
また、重合体ブロック(S)の分子量分布は分離された合体ブロック(S)を前記4)と同様のGPC測定によって得られた数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の比として求めた。
9)水素化ブロック共重合体中の重合体ブロック(S)の連鎖量(オゾン分解法)
水素添加前のブロック共重合体の調整過程で得られたステップ毎にサンプリングしたポリマー0.1gをジクロロメタン100mLに溶解した溶液に、オゾン濃度1.5%の酸素を150mL/分で通過させて酸化分解し、得られたオゾニドを、水素化アルミニウムリチウムを混合したジエチルエーテル中に滴下して還元した。つぎに、純水を滴下して加水分解し、炭酸カリウムを添加し塩析、濾過を行うことにより重合体ブロック(S)成分を得た。この重合体ブロック(S)をGPCにより測定した。
ここで得られた水素添加前の重合体ブロック(S)のピークの面積比(30連鎖以上の芳香族ビニル化合物単位ブロック部分に相当するピーク面積(分子量3120以上の面積)/ピークの総面積)を算出することにより、重合体ブロック(S)中の30連鎖以上の重合体ブロック(S)部分の含有量(連鎖率)を算出した。
なお、オゾン発生機は日本オゾン(株)製OT−31R−2型を用い、GPC測定は、ウォーターズ製の2487を用い、クロロホルムを溶媒とし、流量1.0mL/分、カラムオーブン35℃で、カラムはShodexカラム−K803Lを2本接続して測定を行った。
10)シート状成形体の異方性
実施例3〜5及び比較例7〜13で得られた300μmの厚みのシート状成形体を用いて、引取り方向(MD)とそれと垂直な方向(TD)について、JIS 5号ダンベルに打抜いたサンプルを用い、JIS K6251に準拠して、引張試験機(ミネベア、Tg−5kN)により引張速度200mm/minで引張弾性率(MPa)を測定した。得られた引張弾性率MD/TDの比から、次の基準で異方性を評価した。
◎:MD/TDの値が0.92〜1.08の範囲
○:MD/TDの値が0.89〜1.11の範囲(但し上記◎の範囲以外)
△:MD/TDの値が0.85〜1.15の範囲(但し上記○と◎の範囲以外)
×:MD/TDの値が0.85未満又は、1.15を超える。
11)シート状成形体の柔軟性
実施例3〜5及び比較例7〜13で得られた300μmの厚みのシート状成形体を用いて、引取り方向(MD)について、JIS 5号ダンベルに打抜いたサンプルを用い、JIS K6251に準拠して、引張試験機(ミネベア、Tg−5kN)により引張速度200mm/minで引張弾性率(MPa)を測定し、柔軟性の指標とした。得られた引張弾性率から、次の基準で評価した。
◎:引張弾性率が29MPa未満
○:引張弾性率が29MPa以上33MPa未満
△:引張弾性率が33MPa以上39MPa未満
×:引張弾性率が39MPa以上
12)シート状成形体の透明性
実施例3〜5及び比較例7〜13で得られた300μmの厚みのシート状成形体を用いて、ヘイズメーター(日本電色工業製、NDH−1001DP)を用いてヘイズ値(%)を測定し、透明性の指標とした。得られたヘイズ値から、次の基準で評価した。
◎:ヘイズ値が4%未満
○:ヘイズ値が4%以上8%未満
△:ヘイズ値が8%以上16%未満
×:ヘイズ値が16%以上
13)シート状成形体の表面平滑性
実施例3〜5及び比較例7〜13で得られた300μmの厚みのシート状成形体を用いて、レーザー顕微鏡(キーエンス社製:VK−X8500)を用いて、シートの表面粗さ(10点平均粗さ:Rz)を測定した。得られた値から、次の基準で評価した。
◎:表面粗さの値が20μm未満
○:表面粗さの値が20μm以上25μm未満
△:表面粗さの値が25μm以上35μm未満
×:表面粗さの値が35μm以上
14)シート状成形体の低べたつき性
実施例3〜5及び比較例7〜13で得られた300μmの厚みのシート状成形体を、5cm×8cm及び4cm×6cmの試験片に切り出した。得られた試験片を2枚重ね合わせた(上面:5cm×8cm、下面:4cm×5cm)後、その上面に500gの荷重(大きさ:6cm×10cm×1cm)を載せて、60秒間静止した後に、引張試験機(ミネベア、Tg−5kN)により100mm/分の速度で180°剥離させたときのタック強度(J)を測定し、低べたつき性の指標とした。得られたタック強度から、次の基準で評価した。
◎:タック強度が8N未満
○:タック強度が8N以上15N未満
△:タック強度が15N以上30N未満
×:タック強度が30N以上
15)チューブ状成形体のキンク性
実施例3〜5及び比較例7〜13で得られたチューブ状成形体を用い、引張圧縮試験機によりチューブ屈曲時の応力を測定した。具体的には、長さ30cmのチューブを対象とし、チャック間距離を10cmにセットし、クロスヘッドスピード200mm/分で折り曲げ測定を行った。応力とチャック間距離との関係から得られる応力カーブの例を図1に示す。図1の例において、応力が最大になるときのチャック間距離(図1のX)をチューブがキンクする瞬間のチャック間距離(キンク位置)とし、このキンク位置に対応するチャック間距離の値が大きいものほど、キンク性が良好であるものとして、次の基準で評価した。
◎:キンク位置が61mm以上
〇:キンク位置が57mm以上61mm未満
△:キンク位置が52mm以上57mm未満
×:キンク位置が52mm未満
16)チューブ状成形体の歪回復性
実施例3〜5及び比較例7〜13で得られたチューブ状成形体を用い、1cm幅の荷重1Kgを2本のチューブに載せて、23℃で6時間加圧保持した後に圧力を開放し、30分後の厚みを測定し、残留歪の大きさを評価した。得られた残留歪から、次の基準で評価した。
◎:残留歪が5%未満
〇:残留歪が5%以上20%未満
△:残留歪が20%以上40%未満
×:残留歪が40%以上
<水素化ブロック共重合体の製造例>
[実施例1]
(水添触媒の調整)
水素化ブロック共重合体の水添反応に用いた水添触媒を、下記の方法で調整した。窒素置換した反応容器に、乾燥及び精製したシクロヘキサン1Lを入れ、ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100ミリモルを添加し、十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム200ミリモルを含むn−ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させた。
(水素化ブロック共重合体の作製)
内容積10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を使用して、バッチ重合を行った。反応器内に1Lのシクロヘキサンを入れ、その後n−ブチルリチウム(以下「Bu−Li」ともいう。)を全モノマー100質量部に対して0.050質量部と、ビニル化剤としてのN,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン(以下、「TMEDA」ともいう。)をBu−Li1モルに対して0.05モル添加した。
第1ステップとして、ブタジエン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(ブタジエン濃度20質量%)を10分間かけて投入し、その後更に5分間重合した。第1ステップの重合中、温度は65℃にコントロールした。
第2ステップとして、TMEDAをBu−Li1モルに対して1.50モルと、ナトリウムt−ペントキシド(以下、「NaOAm」ともいう)をBu−Li1モルに対して0.05モル添加し、ブタジエン82質量部を含むシクロヘキサン溶液(ブタジエン濃度20質量%)を60分間かけて投入し、その後更に5分間重合した。第2ステップの重合中、温度は65℃にコントロールした。
第3ステップとして、スチレン5質量部を含むシクロヘキサン溶液(スチレン濃度20質量%)を5分間かけて投入し、その後更に5分間重合した。第3ステップの重合中、温度は65℃にコントロールした。
第4ステップとして、ブタジエン3質量部を含むシクロヘキサン溶液(ブタジエン濃度20質量%)を5分間かけて投入し、その後更に5分間重合した。第4ステップの重合中、温度は65℃にコントロールした。なお、ブロック共重合体の重合過程におけるステップ毎にポリマーをサンプリングした。
得られたブロック共重合体に、上記水添触媒を、ブロック共重合体100質量部当たりにチタン換算濃度100ppmとなるように添加し、水素圧0.7MPa、温度70℃で水添化反応を行った。その後メタノールを添加し、次に安定剤としてのオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、ブロック共重合体に対して0.3質量部添加した。
得られた実施例1の水素化ブロック共重合体(a−1)の水添率は99.5mol%、MFRは2g/10分、重量平均分子量(Mw)は246,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.05、重合体ブロック(S)の30連鎖率は96.5%、重合体ブロック(S)の分子量分布は1.29であった。
[実施例2]
Bu−Liを全モノマー100質量部に対して0.065質量部とし、第1ステップとして、ブタジエン13質量部とし、第2ステップとして、ブタジエン75質量部とし、第3ステップとして、スチレン7質量部とし、第4ステップとして、ブタジエン5質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の水素化ブロック共重合体(a−2)を製造した。
得られた実施例2の水素化ブロック共重合体(a−2)の水添率は99%、MFRは4g/10分、重量平均分子量(Mw)は216,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.07、重合体ブロック(S)の30連鎖率は94.0%、重合体ブロック(S)の分子量分布は1.31であった。
[比較例1]
第1ステップ前において、Bu−Liを全モノマー100質量部に対して0.070質量部とし、TMEDAをBu−Li1モルに対して1.5モルとした。第1ステップとして、スチレン6.5質量部とし、第2ステップとして、NaOAmを添加せずに、ブタジエン82質量部を90分間かけて投入し、その後更に5分間重合した。なお、第1及び第2ステップの重合中、温度は55℃にコントロールした。第3ステップとして、スチレン6.5質量部を5分間かけて投入し、その後更に30分間重合し、第4ステップとして、ブタジエン5質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の水素化ブロック共重合体(a−3)を製造した。
得られた比較例1の水素化ブロック共重合体(a−3)は、水添率98.5%、MFR5g/10分、重量平均分子量(Mw)170,000、分子量分布1.22、重合体ブロック(S)の30連鎖率83.5%、重合体ブロック(S)の分子量分布1.53であった。
[比較例2]
第1ステップ前において、Bu−Liを全モノマー100質量部に対して0.085質量部とし、TMEDAをBu−Li1モルに対して1.5モルとし、NaOAmの添加はしなかった。第1ステップとして、スチレン7.5質量部とし、第2ステップとして、NaOAmを添加せずに、ブタジエン85質量部を90分間かけて投入し、その後更に5分間重合した。第1ステップ及び第2ステップの重合中、温度は55℃にコントロールし、第3ステップとして、スチレン7.5質量部を5分間かけて投入し、その後更に30分間重合し、第4ステップは行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の水素化水添ブロック共重合体(a−4)を製造した。
得られた比較例2の水素化ブロック共重合体(a−4)は、水添率99%、MFR3g/10分、重量平均分子量(Mw)132,000、分子量分布1.24、重合体ブロック(S)の30連鎖率79.5%、重合体ブロック(S)の分子量分布1.65であった。
[比較例3]
第1ステップ前において、Bu−Liを全モノマー100質量部に対して0.110質量部とし、第1ステップとして、ブタジエン13質量部とし、第2ステップとして、ブタジエン72質量部とし、第3ステップとして、スチレン15質量部とし、第4ステップを行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3の水素化ブロック共重合体(a−5)を製造した。
得られた比較例3の水素化ブロック共重合体(a−5)は、水添率99.5%、MFR3g/10分、重量平均分子量(Mw)98,000、分子量分布1.06、重合体ブロック(S)の30連鎖率91.5%、重合体ブロック(S)の分子量分布1.42、であった。
[比較例4]
第1ステップ前において、Bu−Liを全モノマー100質量部に対して0.048質量部とし、第1ステップとして、ブタジエン10質量部とし、第2ステップとして、ブタジエン70質量部とし、第3ステップとして、スチレン5質量部とし、第4ステップとして、ブタジエン15質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例4の水素化ブロック共重合体(a−6)を製造した。
得られた比較例4の水素化ブロック共重合体(a−6)は、水添率99.5%、MFR13g/10分、重量平均分子量(Mw)248,000、分子量分布1.05、重合体ブロック(S)の30連鎖率92.5%、重合体ブロック(S)の分子量分布1.38であった。
[比較例5]
第1ステップ前において、Bu−Liを全モノマー100質量部に対して0.050質量部とし、第1ステップとして、ブタジエン13質量部とし、第2ステップとして、ブタジエン量を75質量部とし、第3ステップとして、スチレン7質量部とし、第4ステップとして、ブタジエン5質量部としてブロック共重合体を製造し、水添反応を途中で停止したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例5の水素化ブロック共重合体(a−7)を製造した。
得られた比較例5の水素化ブロック共重合体(a−7)は、水添率60%、MFR17g/10分、重量平均分子量(Mw)241,000、分子量分布1.07、重合体ブロック(S)の30連鎖率93.0%、重合体ブロック(S)の分子量分布1.40であった。
[比較例6]
第1ステップ前において、Bu−Liを全モノマー100質量部に対して0.063質量部と、TMEDAをBu−Li1モルに対して0.6モルとした。第1ステップとして、ブタジエン13質量部とし、第2ステップとして、NaOAmを添加せずに、ブタジエン79質量部とし、第3ステップとして、スチレン5質量部とし、第4ステップとして、ブタジエン3質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例6の水素化ブロック共重合体(a−8)を製造した。
得られた比較例6の水素化ブロック共重合体(a−8)は、水添率99.5%、MFR3g/10分、重量平均分子量(Mw)193,000、分子量分布1.04、重合体ブロック(S)の30連鎖率97.5%、重合体ブロック(S)の分子量分布1.27、であった。得られた水素化ブロック共重合体(a−1)〜(a−8)の解析結果を下表1に示す。
<ポリプロピレン系樹脂の製造例>
(b−1):プロピレン−エチレンランダム共重合体
特開2001−11128号公報に記載された、メタロセン触媒を用いた方法により、プロピレン−エチレンランダム共重合体を得た。得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体を分析したところ、エチレン含有量は4.3質量%で、MFRは7.0g/10分、分子量分布は2.8であった。
(b−2):プロピレン−エチレンランダム共重合体
特開昭56−143207号公報に記載された、チーグラー・ナッタ触媒を用いた方法により、プロピレン−エチレンランダム共重合体を得た。得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体を分析したところ、エチレン含有量は1.8質量%で、MFRは13.5g/10分、分子量分布は5.6であった。
<成形体の製造例>
[実施例3〜5、及び比較例7〜13]
実施例1及び2、並びに比較例1〜6の水素化ブロック共重合体(a−1)〜(a−6)と、ポリプロピレン系樹脂(b−1)及び(b−2)を、下表2に示す配合割合でドライブレンドし、二軸押出機(L/D=42、30mmΦ)で、200℃、150rpm、押出量5Kg/hの条件で溶融混練して、プロピレン樹脂組成物のペレットを製造した。これらのペレットを用いて、以下に示すようにして、実施例3〜5、及び比較例7〜13のシート状成形体およびチューブ状成形体を作成し、各物性の測定を行った。得られた評価結果を表2に示す。
(シート状成形体の製造)
プロピレン系樹脂組成物ペレットを単軸シート押出機(40mmφ)、Tダイを用いて、樹脂温度190℃、スクリュー回転数30rpm、Tダイスリット厚み0.4mm、Tダイのスリット巾400mm、圧延ローラ表面温度45℃、引取り速度2.5m/minで、厚さ約300μmのシート状成形体を作成した。なお、厚みはスクリュー回転数を変えることにより調整した。
(チューブ状成形体の製造)
プロピレン系樹脂組成物ペレットを単軸押出機(40mmφ)、チューブダイを用いて190℃、押出速度10m/min、チューブダイの外径13mm、内径11mmで押出成型することにより外径7.5mm、内径5.5mmのチューブ状成形体を作成した。なお、外径、内径はスクリュー回転数を変えることにより調整した。
本実施形態の成形体は、低異方性、柔軟性、透明性、平滑性、低べたつき性、キンク性、及び歪回復性のバランスに優れており、特に用途を限定せずに用いることができる。この特性を活かして、各種衣料類の包装、各種食品の包装、日用雑貨包装、工業資材包装、各種ゴム製品、樹脂製品、皮革製品等のラミネート、紙おむつ等に用いられる伸縮テープ、ダイシングフィルム等の工業用品、建材や鋼板の保護に用いられるプロテクトフィルム、粘着フィルムの基材、食肉鮮魚用トレー、青果物パック、冷凍食品容器等のシート用品、テレビ、ステレオ、掃除機等の家電用品用途、バンパー部品、ボディーパネル、サイドシールなどの自動車内外装部品用途、道路舗装材、防水、遮水シート、土木パッキン、日用品、レジャー用品、玩具、工業用品、ファニチャー用品、筆記用具、透明ポケット、ホルダー、ファイル背表紙等の文具、輸液バック等の医療用具等の幅広い用途に好適に用いることができる。これらの中でも、本実施形態の成形体は、低異方性、柔軟性、透明性、平滑性、低べたつき性、キンク性、及び歪回復性のバランスなどの特性を活かして、医療用成形体、例えば医療用チューブ、及び医療用フィルム、並びに包装材、例えば食品包装材、及び衣料包装材等に特に好適に用いることができる。

Claims (8)

  1. 分子中に、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B1)と、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(S)と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B2)とをこの順に有する水素化ブロック共重合体であって、
    前記水素化ブロック共重合体中、前記重合体ブロック(C)の含有量が5〜20質量%であり、前記重合体ブロック(B1)の含有量が70〜90質量%であり、前記重合体ブロック(S)の含有量が1〜10質量%であり、前記重合体ブロック(B2)の含有量が1〜10質量%であり、
    前記重合体ブロック(C)の水素化前のビニル結合量が5〜20mol%であり、前記重合体ブロック(B1)の水素化前のビニル結合量が60〜100mol%であり、前記重合体ブロック(B2)の水素化前のビニル結合量が40〜100mol%であり、
    水素化率が80mol%以上である、水素化ブロック共重合体。
  2. 前記水素化ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)が10万〜30万である、請求項1に記載の水素化ブロック共重合体。
  3. ビニル化剤、有機リチウム化合物、及びアルカリ金属アルコキシドの存在下、前記ビニル化剤と有機リチウム化合物のモル比(ビニル化剤/有機リチウム化合物)が0.2〜3であり、かつ前記アルカリ金属アルコキシドと有機リチウム化合物のモル比(アルカリ金属アルコキシド/有機リチウム化合物)が0.01〜0.3の条件下で共重合された、請求項1又は2に記載の水素化ブロック共重合体。
  4. 請求項1又は2に記載の水素化ブロック共重合体1〜99質量%と、ポリプロピレン樹脂1〜99質量%とを含む、ポリプロピレン樹脂組成物。
  5. 前記ポリプロピレン樹脂がランダムポリプロピレン樹脂である、請求項4に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
  6. 請求項4又は5に記載のポリプロピレン樹脂組成物を含む、成形体。
  7. 請求項4又は5に記載のポリプロピレン樹脂組成物を含む、チューブ。
  8. 請求項4又は5に記載のポリプロピレン樹脂組成物を含む、シート。
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