以下の本発明における実施形態では、必要な場合に複数のセクションなどに分けて説明するが、原則、それらはお互いに無関係ではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細などの関係にある。このため、全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、構成要素の数(個数、数値、量、範囲などを含む)については、特に明示した場合や原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。また、構成要素などの形状に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合などを除き、実質的にその形状などに近似または類似するものなどを含むものとする。
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係る樹脂成形金型10を備える樹脂成形装置500について図1〜図11を参照して説明する。図1〜図10は、製造工程中の樹脂成形金型10を示す模式的断面図である。また、図11は、樹脂成形金型10の要部模式的断面図である。本実施形態では、図1に示す樹脂成形装置500のように、方向D1を鉛直方向(型開閉方向)、方向D2を水平面方向として設置されるものとして説明する。樹脂成形装置500の成形対象(処理対象)となるワークWとしては、例えば、複数の実装部品Pが実装された基板Sを用いる。樹脂成形装置500では、図示しない搬送部によって金型外部から金型内部にワークWおよび樹脂Rが搬送(供給)され、セット(配置)される。被成形品のワークWに対して成形処理を行うことで、複数の実装部品Pを樹脂封止する樹脂成形部が基板S上に成形されてワークWが成形品となる。なお、成形品(成形後のワークW)の樹脂成形部を構成する樹脂Rとしては、例えば、顆粒状、液状、粉状、シート状などの熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ系樹脂)を用いる。
樹脂成形装置500は、キャビティ凹部18を有する樹脂成形金型10(型開閉可能な一対の上型12および下型14)と、樹脂成形金型10の型開閉を行う型開閉機構部16と、上型12や下型14の金型ブロックに内蔵されたヒータなどを有する型加熱機構部(図示せず)とを備える。樹脂成形装置500では、型開閉機構部16によって対をなす上型12および下型14が型開閉可能に構成され、上型12および下型14が近接することで型閉じ(型締め)され、離隔することで型開きされる。本実施形態では、上型12を固定型、下型14を可動型として、上型12に対して下型14が近接して樹脂成形金型10が型閉じされ、上型12に対して下型14が離隔して樹脂成形金型10が型開きされる。なお、上型12を可動型、下型14を固定型としたり、上型12および下型14を可動型としたりすることもできる。
型開閉機構部16は、ベースプラテン19と、複数のタイバー20と、固定プラテン22と、可動プラテン24とを備える。複数のタイバー20は、例えば、水平面視矩形状のベースプラテン19のコーナー部のそれぞれから起立して設けられる。固定プラテン22は、ベースプラテン19から起立するタイバー20の先端部に固定して設けられる。可動プラテン24は、ベースプラテン19と固定プラテン22との間のタイバー20の中途部で、タイバー20によってガイドされて往復動可能に設けられる。固定プラテン22の下面(可動プラテン24側)に上型12が固定して設けられ、可動プラテン24の上面(固定プラテン22側)に下型14が固定して設けられる。したがって、上型12が固定型となり、下型14が可動型となる。
本実施形態では、可動プラテン24を往復動可能に構成するため、型開閉機構部16は、複数(3本以上)のボールネジ26と、複数(ボールネジの本数に対応する数)の駆動部28(例えば、サーボモータ)とを備える。複数のボールネジ26は、ベースプラテン19と可動プラテン24との間で互いに水平面視等間隔に設けられる。各ボールネジ26は、ベースプラテン19のコーナー部で起立する複数のタイバー20の内側に設けられ、駆動部28によって回転駆動される複数のネジ軸30と、ネジ軸30のそれぞれとネジ嵌合し、可動プラテン24に固定して設けられた固定ナット32とを備える。また、駆動部28は、ボールネジ26のそれぞれを駆動する。このような構成による型開閉機構部16は、各駆動部28の同期を取ることで、可動プラテン24を高精度に速度制御する。なお、型開閉機構部16は、複数のボールネジ26によるものに限らず、一のボールネジ26を用いて駆動されるものでもよく、トグルリンクによるものであってもよい。
樹脂成形金型10は、ワークWがセットされるセット部34と、ワークWをセット部34で保持する保持部36と、樹脂成形部が形成されるキャビティ凹部18とを有する。本実施形態では、上型12のパーティング面(クランプ面、金型面ともいう)にセット部34および保持部36が設けられ、下型14のパーティング面から窪むキャビティ凹部18が設けられる。セット部34は、例えば、上型12のパーティング面から構成される。また、保持部36は、例えば、上型12のパーティング面から突き出るチャック爪から構成される。保持部36としては、ワークWを上型12のパーティング面で吸着保持する吸引路および吸引機構部(例えば、真空ポンプ)を有してもよい。また、これらの組み合わせであってもよい。
キャビティ凹部18が設けられる下型14は、キャビティ凹部18の底面を構成するキャビティ駒40(例えば、金型ブロック)と、キャビティ駒40の外周に配置されてキャビティ凹部18の内壁面(の少なくとも一部)を構成するクランパ42(例えば、金型ブロック)とを備える。また、下型14は、キャビティ駒40およびクランパ42が設けられるベース44(例えば、金型ブロック)と、クランパ42とベース44との間に設けられる弾性部材46(例えば、バネ)とを備える。ベース44は、可動プラテン24の上面に設けられる。キャビティ駒40は、ベース44の上面中央部に設けられる。クランパ42は、キャビティ駒40が挿入される貫通孔48(駒孔)を有し、ベース44の上面に弾性部材46を介して設けられる。本実施形態では、キャビティ凹部18の底面がキャビティ駒40の先端面で構成され、キャビティ凹部18の側面が貫通孔48の内壁面で構成される。弾性部材46の作用によって、ベース44に対してクランパ42が型開閉方向に往復動可能に構成される。ここで、キャビティ駒40とクランパ42との関係は、クランパ42に対してキャビティ駒40が相対的に型開閉方向に摺動可能(往復動可能)に設けられることとなる。このため、キャビティ駒40の外周面(外側面)およびクランパ42の貫通孔48の内壁面が摺動面となる。
このキャビティ駒40の摺動面にはキャビティ凹部18に連通する周溝41(図2参照)が設けられる。キャビティ駒40が有する周溝41にはキャビティ駒40とクランパ42との隙間からベース44側へ樹脂Rが漏れるのを防止するためのシール材43(例えば、樹脂リングなどのシールリング)が設けられることとなる(図4参照)。このように、キャビティ駒40とクランパ42との隙間にシール材43を設けて樹脂Rをシールする機構を樹脂成形金型10が備えることとなる。
ところで、本実施形態では、キャビティ駒40が、周溝41を含んでシール材43を保持する交換可能(着脱可能)な保持部材45を有する(図2、図11(a)参照)。これにより、キャビティ駒40が大型化したものであっても、キャビティ駒40の一部である保持部材45(すなわち小型のもの)を交換することができる。また、キャビティ駒40が矩形状であるときにはキャビティ駒40の外周面とクランパ42の貫通孔48の内壁面との平面視矩形状の部材同士の隙間が均一となるように組み立てをする必要があり、このような組み立ては容易ではない。しかしながら、キャビティ駒40において保持部材45を固定的に組み立てるだけで適宜の隙間とすることができる。このため、簡易にメンテナンスすることができる。
本実施形態では、キャビティ駒40の先端部が上型12側に凸状となっており、保持部材45は、キャビティ駒40の先端部に固定可能に構成される。具体的には、保持部材45は、キャビティ駒40の先端部が挿入される貫通孔47および先端部で固定されるための固定溝49を有する(図11(a)参照)。そして、保持部材45は、キャビティ凹部18の底面となる端面37(キャビティ駒40に組み付けられた状態ではキャビティ駒40の先端面と面一となる)から突き出る環状の端面突部51を設けることができる。この端面突部51により、型内に組み付けられた状態で周溝41に連通する樹脂路(型面)38(図2、図11(a)参照)が構成され、キャビティ凹部18に連なる開口面積より周溝41に連なる開口面積が小さくなる(先細りとなる)ように形成される。また、周溝41が樹脂路38を構成する傾斜面の下端位置からアンダーカット形状を構成し、シール材43等を保持可能に構成される。この先細る樹脂路38は、端面突部51の突部頂面から端面37と同一平面(破線で示す)に到達する位置より手前の位置で周溝41と連通する(図11(a)参照)。このため、キャビティ駒40に保持部材45が組み付けられた状態では、樹脂路38は、キャビティ駒40の先端面と同一平面に到達する手前の位置で周溝41と連通する。
本実施形態では、キャビティ駒40の先端部に樹脂路38が形成された端面突部51を有する保持部材45が設けられているので、樹脂成形部Rの表面(端面37に対応する)から窪んだところまで端面突部51が押し込まれ、キャビティ凹部18内で充填された樹脂Rが熱硬化される。このため、仮に樹脂路38に突起樹脂b(樹脂路38に対応する成形樹脂)が形成されたとしても樹脂成形部Rの表面から窪んだところに形成されるので、搬送部などと接触して樹脂屑が発生するのを防止することができる。
また、樹脂成形装置500は、図2に示すように、キャビティ凹部18を含む金型内部を密閉するチャンバ機構部50を備える。チャンバ機構部50は、チャンバブロック52、54と、シール材56、58(例えば、Oリング)と、弾性部材60(例えば、バネ)とを備える。チャンバブロック52、54は、互いに内径が異なる貫通筒状の金型ブロックであり、キャビティ駒40およびクランパ42を囲むようにベース44の上面に設けられる。内径が大きい外側のチャンバブロック52は、ベース44の上面に弾性部材60を介してフローティングに設けられる。この弾性部材60の作用によって、ベース44に対してチャンバブロック52が型開閉方向に往復動可能に構成される。また、内径が小さい内側のチャンバブロック54は、ベース44の上面に固定して設けられる。チャンバブロック52とチャンバブロック54との間にはこれらの隙間からベース44側へエア(雰囲気)が漏れるのを防止するためのシール材58が設けられる。また、上型12のパーティング面の外周部であってチャンバブロック52と対向してシール材56が設けられる。このため、型閉じの際、上型12および下型14が近接して、シール材56とチャンバブロック52とが当接(シーリングタッチ)することで、キャビティ凹部18を含む金型内部に密閉空間を形成することができる(図2参照)。
また、樹脂成形装置500は、密閉空間内の圧力を調節する圧調節機構部62を備える。圧調節機構部62は、減圧部64(例えば、真空ポンプ)と、一端部が上型12のパーティング面(シール材56で囲まれた領域であってセット部34から外れた領域)に開口し、他端部が減圧部64と接続されるエア流路66とを備える。密閉空間が形成された状態で減圧することで、成形品の樹脂成形部にボイドや未充填が発生するのを防止して、成形品の品質を向上させることができる。特に、樹脂Rとして顆粒樹脂を用いた場合には、各粒間のエアを排出するのに有効である。
ところで、樹脂成形装置500では、図5に示すように、型開閉機構部16によって樹脂成形金型10を型開きする際に、成形品にキャビティ駒40を接したまま、まずクランパ42から離型させ、更に型開きしていくことで次にキャビティ駒40から成形品を離型させることができる(詳細は後述)。このような離型の補助的な役割をするものとして、樹脂成形装置500は、離型補助機構部68を備える。離型補助機構部68は、離型の際にキャビティ駒40をベース44から上昇させるリフト部70と、そのキャビティ駒40から成形品(ワークW)を離型させるエジェクタ部72とを備える。
リフト部70は、例えば圧縮部74(例えば、コンプレッサ)と、一端部がベース44の上面に開口し、他端部が圧縮部74と接続されるエア流路76とを備え、キャビティ駒40を昇降可能に構成される。また、リフト部70は、エア流路76の中途部で拡径する拡径部78と、拡径部78にヘッド部が設けられ、エア流路76の一端部に先端部が設けられる凸状ピン80とを備える。この凸状ピン80は、エア流路76を介したエアの圧送により先端部がベース44の上面を越えて突出可能に設けられ、突出することでキャビティ駒40を上昇させる。なお、凸状ピン80のようにキャビティ駒40を昇降させるための部材は、エア以外の駆動源(例えばモータ)により駆動してもよい。また、リフト部70は、キャビティ駒40とベース44との間に設けられる弾性部材82(例えば、バネ)と、拡径部78であって凸状ピン80のヘッド部よりもキャビティ駒40側に設けられる弾性部材84(例えば、バネ)とを備える。リフト部70によりキャビティ駒40が上昇されることとなるが、弾性部材82を設けておくことでエアの圧送を停止して凸状ピン80を引き戻したときにキャビティ駒40を下降させてベース44に当接させ初期位置に復帰させることができる。また、リフト部70によりキャビティ駒40を上昇させる際には、圧縮部74からエアを圧送し、凸状ピン80のヘッド部に押し当てる。また、キャビティ駒40を下降させてベース44に当接させるときには、エアの圧送を停止することで弾性部材84により凸状ピン80を押し下げ、キャビティ駒40を確実に下降させることができる。このようなキャビティ駒40を任意に昇降させるリフト部70によれば、型開きによって成形品(ワークW)が下型14から離型しようとする際に、キャビティ駒40を上昇させながら下型14全体を下降させることで成形品とキャビティ駒40との接触を維持したまま、クランパ42に対する樹脂Rの離型をさせることができる(図5参照)。すなわち、キャビティ駒40に接する成形品の中央位置の大部分を保持し圧力を加えたままでクランパ42における離型を行うことができる。これによれば、例えばクランパ42から樹脂Rを離型するときにワークWから樹脂Rを引き剥がす過大な力が加わったとしてもワークWから樹脂Rが剥離してしまうのを確実に防止することができる。
また、クランパ42に対する樹脂Rの離型を行ったときには、キャビティ駒40から樹脂Rを離型させるときに、圧調節機構部62によって金型内部の密閉空間にエアを圧送することで、クランパ42と成形品の外周部との間を介して、そしてキャビティ駒40と成形品との間にエアを送り込むことができる。これによれば、そのエア圧の作用により離型性を向上させることができ、キャビティ凹部18で充填された樹脂Rからなる樹脂成形部を有するワークWが大型化したとしても、安定して離型させることができる。なお、このような、キャビティ駒40とクランパ42の離型は上述した順序に限定されず、先にキャビティ駒40における樹脂Rの離型を行うことも可能に構成されている。
また、エジェクタ部72は、キャビティ駒40の上面における樹脂Rの離型を補助するために設けられている。このエジェクタ部72は、例えば図2に示すように、キャビティ凹部18の底面(キャビティ駒40の上面)で開口するようにキャビティ駒40を貫通するピン孔86と、ピン孔86に設けられたエジェクタピン88とを備える。また、エジェクタ部72は、複数のエジェクタピン88を起立させて支持する支持プレート96と、支持プレート96を収納するようにベース44の上面から凹む収納凹部98と、キャビティ駒40と支持プレート96との間に設けられた弾性部材99(例えば、バネ)とを備える構成とすることができる。また、エジェクタ部72は、支持プレート96の外周側面と収納凹部98の内壁面との間に設けられるシール材100(例えば、Oリング)と、収納凹部98の底部でベース44を貫通する貫通孔102と、貫通孔102の内壁面と貫通孔102に設けられるセンタピラー114(図1参照)との間に設けられたシール材104(例えば、Oリング)とを備える。また、エジェクタ部72は、圧縮部106(例えば、コンプレッサ)と、一端部が収納凹部98の底面とシール材104との間の貫通孔102に連通し、他端部が圧縮部106と接続されるエア流路108とを備える。エジェクタピン88で成形品(ワークW)をエジェクトする(押し出す)際には、圧縮部106からエアを圧送し、エア流路108および貫通孔102を介してエアを支持プレート96に吹き付ける(押し当てる)。このエア圧の作用によって支持プレート96を介してエジェクタピン88が上昇され、キャビティ凹部18の底面(キャビティ駒40の上面)から突出する。このとき、弾性部材99を設けておくことで、エアの圧送を停止したときにエジェクタピン88の先端部をピン孔86に引き戻すことができる。このようなエジェクタ部72によれば、エジェクタピン88を型開閉方向に往復動可能な構成とすることができる。なお、エジェクタ部72は、エア以外の駆動源により駆動してもよい。
また、エジェクタ部72は、エジェクタピン88とピン孔86との隙間からのエアの吹出し機能を有する。具体的には、エジェクタ部72は、エジェクタピン88の周りでピン孔86との間に設けられたシール材90(例えば、Oリング)と、圧縮部92(例えば、コンプレッサ)と、一端部がキャビティ凹部18の底面とシール材90との間のピン孔86に連通し、他端部が圧縮部92と接続されるエア流路94とを備える。エジェクタピン88で成形品(ワークW)をエジェクトする際には、圧縮部92からエアを圧送し、エア流路94およびピン孔86を介してエアを成形品へ吹き出させる(噴出させる)。このように、エジェクタピン88でのエジェクトに合わせてエアを成形品に対して噴出させることで、界面への流体(エア)の侵入によって剥離の促進を主としたエア圧の作用によって成形品の離型を容易にすることができる。
また、樹脂成形装置500は、キャビティ凹部18をメンテナンスするメンテナンス機構部109を備える(図9参照)。具体的には、樹脂成形装置500は、キャビティ凹部18のクリーニング及びキャビティ駒40とクランパ42との隙間の摺動状態をメンテナンスするメンテナンス機構部109を備える。このような目的のため、メンテナンス機構部109は、下型14(クランパ42)のパーティング面を越えて周溝41(キャビティ駒40の先端部)を露出させるようにキャビティ駒40を移動させる駒可動機構部110と、周溝41を含むキャビティ駒40をクリーニングするクリーナ機構部112とを備える。
駒可動機構部110は、図1及び図8に示すように、可動プラテン24を下降させることで、ベースプラテン19のセンタピラー114でキャビティ駒40を押し上げ、キャビティ駒40をクランパ42から露出させメンテナンス可能にする構成を有する。具体的には、駒可動機構部110は、ベースプラテン19の上面中央部に固定して設けられるセンタピラー114を備える。センタピラー114は、先端部がベース44および可動プラテン24を貫通する貫通孔102に挿入され、支持プレート96の下面に対向して設けられる。このため、型開きして可動プラテン24が下降(ベースプラテン19側へ移動)していくと、ベースプラテン19の上面上のセンタピラー114に支持プレート96が当接し、その後、支持プレート96にキャビティ駒40が当接する。更に、可動プラテン24が下降していくと、支持プレート96を介してセンタピラー114によってキャビティ駒40が上昇される(図8参照)。したがって、駒可動機構部110によって下型14のパーティング面を越えて周溝41を露出させるようにキャビティ駒40を移動させることができる。なお、駒可動機構部110としては、サーボモータのような別途の駆動源を用いた構成とすることもできる。
また、クリーナ機構部112は、図9に示すように、金型内部と金型外部との間で移動可能なクリーナ本体に設けられ、キャビティ駒40の先端部にある周溝41及びその周辺をクリーニング(ブラッシング)するブラシ116と、ブラシ116を囲むようにクリーナ本体に設けられ、クリーニングの際に屑が飛散するのを防止する遮蔽部材118とを備える。また、クリーナ機構部112は、図示しない吸引部と、一端部が遮蔽部材118の内側で開口し、他端部がその吸引部と接続される吸引路120とを備える。駒可動機構部110によって下型14(クランパ42)のパーティング面を越えてキャビティ駒40の先端部を露出させた状態で、クリーナ機構部112によって、遮蔽部材118をクランパ42に当接させて閉塞空間を形成し、吸引路120を介して閉塞空間を吸引しながら周溝41を含むキャビティ駒40の先端部をクリーニングすることができる。このため、キャビティ駒40の先端部をクリーニングして、型面からの樹脂Rの離型性を維持することができる。また、キャビティ駒40に付着した樹脂Rを掻き落として、キャビティ駒40とクランパ42との隙間が狭められるのを防止し、キャビティ駒40とクランパ42との間における摺動抵抗を所定値以下に保持することができる。したがって、例えばキャビティ駒40の一部である保持部材45を交換する回数を低減することができる。
次に、本発明の実施形態1に係る樹脂成形方法(成形品の製造方法)について図面を参照して説明する。まず、図1に示すように、前述した樹脂成形金型10を備える樹脂成形装置500を準備する。なお、本実施形態に係る樹脂成形方法は、樹脂成形装置500を用いるので樹脂成形装置500の動作方法でもある。
次いで、図1に示すように、型開きした状態(初期状態)において、図示しない搬送部によって金型外部から金型内部にワークWが搬送(供給)され、上型12のセット部34にワークWがセットされる。このとき、セット部34からワークWが脱落するのを防止するために、保持部36(例えば、チャック爪)によってワークWがセット部34に保持される。また、型開きした状態において、図示しない搬送部によって金型外部から金型内部に樹脂Rが搬送(供給)され、下型14のキャビティ凹部18に樹脂Rがセットされる。金型内部が型加熱機構部によって加熱されているため、樹脂Rはキャビティ凹部18にセットされると、溶融し始める。
続いて、上型12と下型14とを近接させていき、図2に示すように、上型12のパーティング面に設けられているシール材56とチャンバブロック52とを当接(シーリングタッチ)させる。これにより、キャビティ凹部18を含む金型内部が密閉空間となる。ここで、減圧チャンバ(減圧空間)を構成するために、圧調節機構部62(減圧部64)によって密閉空間のエアを吸引して密閉空間を減圧する。
続いて、更に上型12と下型14とを近接させていき、図3に示すように、上型12のセット部34に設けられているワークWとクランパ42とを当接させる。すなわち、ワークWが上型12と下型14とでクランプされる。これにより、キャビティ凹部18は、開口部がワークWによって閉塞されて実装部品Pを収容するキャビティを構成する。また、クランパ42の上面に図示しないエア溝が形成されている場合、圧調節機構部62(減圧部64)によってこのエア溝を介して閉塞されたキャビティ凹部18内のエアを吸引することができる。
続いて、更に上型12と下型14とを近接させていき、図4に示すように、キャビティ凹部18内で充填された樹脂Rを熱硬化させて成形品を形成する。これにより、実装部品Pを樹脂Rで封止する樹脂成形部がワークW(基板S)上に形成される。また、周溝41では樹脂路38(図11(a)参照)を介して流れ込んだ樹脂Rが熱硬化され、シール材43としての樹脂リングが形成される。このように、シール材43として専用部材(例えば、リング状の別途の部材)を用いなくとも成形品の樹脂成形部を構成する樹脂Rを用いることで、シール材43を容易に設けることができる。なお、成形品を形成した後は、圧調節機構部62(減圧部64)によるエア吸引を停止する。
続いて、ワークW(成形品)を上型12で保持したまま型開きしていき、下型14からワークWを離型させる。具体的には、まず、図5に示すように、上型12と下型14とを離隔させていきながら、ワークWにキャビティ駒40を接したまま、まずクランパ42から離型させる。この際、リフト部70によってキャビティ駒40が上昇することで型開きしてもキャビティ駒40はワークWに接したままとなる。このリフト部70は、圧縮部74によってエアを圧送して凸状ピン80を押し上げることで、キャビティ駒40を上昇させる。このとき、エジェクタ部72は、圧縮部106によってエアを圧送して支持プレート96を押し上げることで、リフト部70によって上昇されるキャビティ駒40と共にエジェクタピン88を上昇させてもよい。
次いで、エジェクタ部72の圧縮部106でエア圧送をしたまま、リフト部70の圧縮部74からのエア圧送を停止することで、図6に示すように、キャビティ駒40の先端面から突出するエジェクタピン88によってワークWがエジェクトされてキャビティ駒40からワークWを離型させる。これによれば、キャビティ凹部18の内壁面(クランパ42)に対応するワークW(成形品)の外周部、キャビティ凹部18の底面(キャビティ駒40)に対応するワークWの中央部の順に離型させることができる。このとき、エジェクタ部72の圧縮部92によってエアを圧送してエア流路94およびピン孔86を介してエアをワークWへ吹き付ける。これによれば、ワークWを安定的かつ容易に離型させることができる。なお、ワークWを下型14から離型させた後は、エジェクタ部72の圧縮部92、106によるエア圧送を停止する。
本実施形態では、図11(a)に示すように、保持部材45は、キャビティ駒40の摺動面の周溝41に連通する樹脂路38がアンダーカット形状に形成されている。このため、下型14からワークWを離型させても、周溝41にシール材43として成形された樹脂リングは離型されずに周溝41に残存する。また、保持部材45では、環状の端面突部51で囲まれた領域がキャビティ駒40の先端面から突部頂面側へ拡径していくように、環状の端面突部51の内壁面が傾斜している。このため、キャビティ駒40からワークWを離型させ易い。
続いて、更に、上型12と下型14とを離隔させていき、図7に示すように、上型12のパーティング面に設けられているシール材56とチャンバブロック52とを離隔させて、型解放させる。その後、金型内部から金型外部へワークW(成形品)を搬送部によって搬送することで、1個のワークW(成形品)についての成形が終了する。
なお、本実施形態では、ワークWには樹脂成形部R(基板Sからの成形厚t)が形成されることとなるが、突起樹脂bも形成される。この突起樹脂bは、ワークW(成形品)の樹脂成形部Rの表面(成形厚tが確保された表面)から窪んだところに形成される。このため、例えば、金型内部から金型外部へ搬送部によってワークW(成形品)を搬送(保持)する際に、突起樹脂bに接せずに樹脂成形部Rの表面が接するので、樹脂屑が発生するのを防止することができる。
具体的には、キャビティ駒40が、周溝41を含んでシール材43を保持する保持部材45を有し、この保持部材45が、キャビティ凹部18の底面となるキャビティ駒40の先端面(保持部材45の端面37と面一となる)から突き出る環状の端面突部51を有する(図11(a)参照)。また、キャビティ凹部18の底面よりも周溝41の上端部分が高い位置に配置されることで、仮に樹脂路38に突起樹脂b(図7参照)が形成されたとしても樹脂成形部Rの表面から窪んだところに形成される。このため、成形品を搬送部などに載せたとしても樹脂成形部Rがこれに接触して樹脂屑が発生するのを防止することができる。したがって、樹脂成形装置500内における不要なクリーニング工程の発生を防止して、生産性を向上させることができる。
続いて、樹脂成形装置500におけるクリーニング動作としては、上型12(固定プラテン22)と下型14(可動プラテン24)とを離隔させ、図8に示すように、支持プレート96にセンタピラー114を当接させ、キャビティ駒40に支持プレート96を当接させて、キャビティ駒40を上昇させる。このとき、下型14のパーティング面(クランパ42の上面)を越えて周溝41を露出させるようにキャビティ駒40を上昇させる(移動させる)ことが可能である。換言すれば、可動プラテン24を昇降させることにより、キャビティ駒40をクランパ42に対して昇降させることになる。
続いて、図9に示すように、クリーナ機構部112によって周溝41を含むキャビティ駒40をクリーニングする。具体的には、まず、金型外部から金型内部へクリーナ機構部112を進入させ、次いで、クリーナ機構部112の遮蔽部材118をクランパ42の上面に当接させて閉塞空間を形成する。その後、吸引路120を介して閉塞空間を吸引しながらブラシ116によって周溝41を含むキャビティ駒40の先端部をクリーニングする。このとき、下型14のパーティング面(クランパ42の上面)を越えて周溝41を含むキャビティ駒40の先端部が露出した状態であるので、容易にキャビティ駒40をクリーニングすることができる。なお、クリーニング後は、クリーナ機構部112を金型内部から金型外部へ退出させ、次の樹脂成形可能な状態にすることができる。なお、図9に示すようなブラシ116を有するクリーナ機構部112を設けず、キャビティ駒40をクランパ42に対して昇降させる動作を繰り返すことで、キャビティ駒40又はクランパ42に付着した樹脂Rを向かい合うそれぞれの角部分で掻き落とすような構成とすることもできる。
なお、図1〜図7に示した工程を一サイクルとし、樹脂成形を数サイクル行った後に、図8及び図9に示すように、周溝41を含むキャビティ駒40をクリーニングしてもよいし、一サイクル毎にクリーニングしてもよい。また、図9に示すようなクリーニング動作では十分なクリーニングが行えない場合や所定のサイクル数に達した場合などにおいて、図10に示すように、周溝41に設けられたシール材43(樹脂リング)と共に保持部材45を取り外し、周溝41にシール材43としての樹脂リングが形成されていない保持部材45と交換する。これによれば、保持部材45を取り換えることで周溝41の周囲を確実にクリーニングすることができる。なお、一サイクルごとに保持部材45を交換してもよい。
(実施形態2)
前記実施形態1では、キャビティ凹部18の底面の全部をキャビティ駒40が構成する場合について説明した。本発明の実施形態2では、キャビティ凹部18の底面の一部をプランジャ40Aで構成する場合について図12〜図23を参照して説明する。図12〜図21は、本実施形態に係る製造工程中の樹脂成形金型10Aを示す模式的断面図である。図22および図23は、樹脂成形金型10Aの変形例の模式的断面図である。樹脂成形金型10Aの成形対象(処理対象)となるワークWとしては、例えば、複数の実装部品Pが実装され、端子Tが形成された基板Sを用いる(図13参照)。
樹脂成形金型10A(型開閉可能な一対の上型12および下型14)は、ワークWがセットされるセット部34と、樹脂成形部が形成されるキャビティ凹部18とを有する。本実施形態では、上型12のパーティング面にセット部34が設けられ、下型14のパーティング面から窪むキャビティ凹部18が設けられる。
キャビティ凹部18が設けられる下型14は、キャビティ凹部18の底面の一部を構成する例えば外形円形のプランジャ40A(例えば、金型ブロック)と、プランジャ40Aの外周に配置されてキャビティ凹部18の内壁面(の少なくとも一部)を構成するクランパ42(例えば、金型ブロック)とを備える。また、下型14は、プランジャ40Aおよびクランパ42が設けられるベース44(例えば、金型ブロック)を備える。本実施形態では、キャビティ凹部18の底面の一部(凹み面)がプランジャ40Aの先端面で構成される。具体的には、クランパ42に複数のキャビティ凹部18が設けられ、各キャビティ凹部18の底面のそれぞれにプランジャ40Aが設けられる。また、クランパ42は、キャビティ凹部18の底面で開口し、プランジャ40Aが挿入される貫通孔48を有するポット39を備える。クランパ42が上下に分割可能に構成されており、これらの組み付けによって、ポット39は抜け止めして設けることも可能となっている。また、クランパ42が、貫通孔48の周りでキャビティ凹部18の底面から突き出る環状の底面突部51Aを有する。この底面突部51Aの突部頂面とポット39の端面が面一となるように設けられる。言い換えると、ポット39の先端部がキャビティ凹部18の底面から突出して設けられる。また、クランパ42は、ワークWの端子Tが型閉じの際に押し潰されないように端子Tが収納されることとなる逃げ凹部17を備える。なお、実装部品がLEDチップで樹脂成形部がLEDチップを封止するレンズとなるワークWの場合には、プランジャ40Aの先端面から窪む半球状の凹部を設けてもよい。また、クランパ42には複数のキャビティ凹部18が設けられる構成だけでなく、1個のキャビティ凹部18が設けられる構成とすることもできる。
また、下型14は、クランパ42とベース44との間に設けられる弾性部材46(例えば、バネ)を備える。この弾性部材46の作用によって、ベース44に対してクランパ42が型開閉方向に相対的に昇降可能(往復動可能)に構成される。ここで、プランジャ40Aとクランパ42との関係として、ベース44にプランジャ40Aを固定しているので、プランジャ40Aがクランパ42に対して相対的に型開閉方向に摺動駆動可能(往復動可能)に設けられることとなる。このため、プランジャ40Aの外周側面およびクランパ42(ポット39)の貫通孔48の内壁面が摺動面となる。
プランジャ40Aの先端部の周囲では、挿入や摺動のためにC面取りまたはR面取りといった面取りがなされている。また、プランジャ40Aの摺動面には、この面取り部の下方においてキャビティ凹部18に連通する周溝41が設けられる。プランジャ40Aの先端部には、組み付けられた状態で周溝41に連通する樹脂路38が、キャビティ凹部18に連なる開口面積より周溝41に連なる開口面積が小さくなる(先細りとなる)ように形成される。この周溝41にはシール材43(例えば、樹脂リング)が設けられる(図16参照)。すなわち、プランジャ40Aとクランパ42との隙間にシール材43を設けて樹脂Rをシールする機構を樹脂成形金型10Aが備えることとなる。本実施形態では、シール材43が保持されるプランジャ40Aの全部が交換可能であることを特徴とする。これによれば、キャビティの底面の全面を構成するようなキャビティ駒そのものを交換するような一般的な構成と比較して、軽量かつ小型のプランジャ40Aを交換するだけでよいため、簡易にメンテナンスすることができる。また、ポット39のみを交換するようにする場合にも、クランパ42全体を交換するような構成と比較してメンテナンス性を高くすることができる。また、円形のプランジャ40Aやポット39を用いるときには、位置決め等の設置作業も容易であり、メンテナンス性を一層高めることができる。なお、プランジャ40Aとクランパ42との隙間にシール構造に関しては、上述した構成以外を採用することもできる。
なお、図22および図23に示すように、プランジャ40Aをベース44に固定せず支持した構成として、複数設けたプランジャ40Aからそれぞれのキャビティ凹部18における樹脂Rに均等に圧力を加えて成形できるようにしてもよい。図22に示す下型14は、プランジャ40Aの高さを弾性部材142により調整可能に構成された構成例である。具体的には、先端部とは反対側にヘッド部138を有するプランジャ40Aと、ベース44の上面に開口し、プランジャ40Aを抜け止めして、ヘッド部138を収容する抜け止め凹部140と、抜け止め凹部140の底面とプランジャ40Aの基端面(ヘッド部138側端面)との間に設けられる弾性部材142とを備える。この弾性部材142の作用によって、プランジャ40Aが弾性部材142の潰し量に応じた圧力を受けながら昇降可能に配置される。また、図23に示す下型14は、プランジャ40Aの高さを油圧により調整可能に構成された構成例である。具体的には、ヘッド部138を有するプランジャ40Aと、抜け止め凹部140と、油圧部144と、ヘッド部138の外周側面と抜け止め凹部140の内壁面との間に設けられるシール材146と、一端部が抜け止め凹部140の底面に開口し、他端部が油圧部144と接続される流路148とを備える。油圧部144からの油圧によって、プランジャ40Aに加えられる圧力が均一となるように圧力を加えながら昇降可能に構成される。これらに例示する均等圧機構によれば、複数のキャビティ凹部18における樹脂Rに加えられる樹脂圧を均等化することにより、例えば樹脂Rの供給量が均一でなかったとしても均一に樹脂圧を加えて成形品質を均一化させることができる。
後述するが、樹脂Rを熱硬化させる際に、キャビティ凹部18の深さが成形厚t(図17参照)に対応する成形位置に、プランジャ40Aの周溝41が達している(図16参照)。すなわち、成形品の樹脂成形部Rの表面(成形品の厚み方向の主面)から窪んだところまでプランジャ40Aの先端部が押し込まれる。本実施形態では、クランパ42のキャビティ凹部18の底面に底面突部51Aが設けられているので、この底面突部51Aで囲まれる位置までプランジャ40Aの先端部(樹脂路38が形成されている部分)を押し込むことができる。そして、キャビティ凹部18の底面と同一平面によりも高い位置に周溝41の端部(本例では上端部)がある状態で、キャビティ凹部18内で充填された樹脂Rを熱硬化させる。このため、プランジャ40Aの面取りによって構成される樹脂路38に突起樹脂b(図17参照)が形成されたとしても樹脂成形部Rの表面から窪んだところに形成されるので、樹脂屑が発生するのを防止することができる。したがって、樹脂成形装置500内における不要なクリーニング工程の発生を防止して、生産性を向上させることができる。
次に、本発明の実施形態2に係る樹脂成形方法(成形品の製造方法)について図面を参照して説明する。まず、図12に示すように、前述した樹脂成形金型10Aを準備する。次いで、図13に示すように、型開きした状態(初期状態)において、図示しない搬送部によって金型外部から金型内部にワークWが搬送(供給)され、上型12のセット部34にワークWがセットされる。また、型開きした状態において、図示しない搬送部によって金型外部から金型内部に樹脂Rが搬送(供給)され、下型14のキャビティ凹部18に樹脂Rがセットされる。本実施形態では、樹脂Rがセットされる際には、キャビティ凹部18の底面よりプランジャ40Aの先端面を後退させ、キャビティ凹部18の容積が大きくなるように構成される。樹脂Rとして顆粒樹脂を用いる場合、樹脂粒の間には隙間ができてしまい供給時の体積は大きくなるが、成形時よりもキャビティ凹部18の容積を大きくして、樹脂Rを所定量セットすることができる。
続いて、上型12と下型14とを近接させていき、図14に示すように、上型12のパーティング面に設けられているシール材56とクランパ42とを当接(シーリングタッチ)させる。これにより、キャビティ凹部18を含む金型内部が密閉空間となる。ここで、減圧チャンバ(減圧空間)を構成するために、圧調節機構部62によってエア流路66を介して密閉空間のエアを吸引して密閉空間を減圧する。
続いて、更に上型12と下型14とを近接させていき、図15に示すように、上型12のセット部34に設けられているワークWとクランパ42とを当接させる。すなわち、ワークWが上型12と下型14とでクランプされる。これにより、キャビティ凹部18は、開口部がワークWによって閉塞されて部品Pを収容するキャビティとなる。また、クランパ42の上面に図示しないエア溝が形成されている場合、圧調節機構部62によってこのエア溝を介してキャビティ内のエアを吸引することができる。
続いて、更に上型12と下型14とを近接させていき、図16に示すように、キャビティ凹部18の底面と同一平面に周溝41がある状態で、キャビティ凹部18内で充填された樹脂Rを熱硬化させて成形品を形成する。この際、周溝41では樹脂路38を介して流れ込んだ樹脂Rが熱硬化され、シール材43としての樹脂リングが形成される。その後、ワークWを上型12で保持したまま型開きしていき、図17に示すように、下型14からワークWを離型させる。
本実施形態では、樹脂Rを熱硬化させる際には、キャビティ凹部18の底面(キャビティ凹部18の深さが成形厚tに対応する成形位置)を同一平面にまでプランジャ40Aの周溝41の上端位置が上回るようにプランジャ40Aを移動させる。このため、プランジャ40Aの面取りによって構成される樹脂路38に突起樹脂bが形成されたとしても樹脂成形部Rの表面から窪んだところに形成され、突起樹脂bが樹脂成形部Rの表面から突出しないので、他の物と接触して樹脂屑が発生するのを防止することができる。したがって、上述した実施形態と同様の効果を奏することができる。
本実施形態では、これまでの工程により成形されたワークWを一次成形品とし、更に同様の工程によって一次成形品の樹脂成形部Rが封止された二次成形品を成形する。例えば、一次成形品の樹脂Rを絶縁性樹脂とし、二次成形品の樹脂R’を導電性樹脂とした成形品も製造することができる。この樹脂R’による樹脂成形部は、例えば、電磁波等に対するシールド機能を有するように、金属粒子を多く含むシールド用樹脂(導電性樹脂)から構成される。また、この樹脂R’としては、ワイヤーフロー等を考慮しなくてよいため、耐湿性や機械強度といった耐環境性等の高い機能性の樹脂を用いることができる。なお、二次成形品を成形せずに、一次成形品で工程を終了させて樹脂成形金型10Aを取り出してもよい。
続いて、図18に示すように、型開きした状態において、キャビティ凹部18の容積を拡張する拡張孔132(貫通孔)を有する中間型130を下型14のパーティング面にセットする。また、中間型130は、ワークWの端子Tが型閉じの際に押し潰されないように端子Tが収納されることとなる逃げ凹部134と、導電性の樹脂R’とワークWに設けた電気的な接続部分とを連結部を形成するための端子用凹部136とを備える。ここでは、キャビティ凹部18の開口部中心と拡張孔132の開口部中心とが一致するようにセットされる。これにより、キャビティ凹部18の深さが中間型130の厚み分だけ増した(すなわち、キャビティ凹部18の容積が拡張する)ように構成される。また、型開きした状態において、図示しない搬送部によって金型外部から金型内部に樹脂R’が搬送(供給)され、下型14のキャビティ凹部18に樹脂R’がセットされる。なお、樹脂R’は樹脂成形部Rを覆うのに適した所定量でセットされる。
続いて、上型12と下型14とを近接させていき、上型12のパーティング面に設けられているシール材56とクランパ42とを当接(シーリングタッチ)させた後、更に上型12と下型14とを近接させていき、図19に示すように、上型12のセット部34に設けられているワークWと中間型130とを当接させる。すなわち、ワークWが上型12と下型14とで中間型130を介してクランプされる。これにより、キャビティ凹部18および拡張孔132は、拡張孔132の開口部がワークWによって閉塞されて樹脂成形部Rを収容するキャビティとなる。
続いて、更に上型12と下型14とを近接させていき、図20に示すように、プランジャ40Aを前進させて一次成形品の樹脂Rの外周を囲うように二次成形品の樹脂R’を充填させることでキャビティ凹部18および拡張孔132内で充填された樹脂R’を熱硬化させて二次成形品を形成する。その後、ワークWを上型12で保持したまま型開きしていき、図21に示すように、下型14からワークW(二次成形品)を離型させる。この二次成形品(ワークW)には、端子用凹部136に流れ込んだ樹脂R’が熱硬化され、例えばGND用端子に接続される連結部T’としての樹脂部が形成される。
本実施形態では、上述した成形と同様の効果を奏するほか、機能性の樹脂である樹脂R’を成形するときに中間型130を付加するだけでよいため、安価な装置により高付加価値な成形を行うことができる。
(実施形態3)
前記実施形態2では、キャビティ凹部18内の樹脂Rを熱硬化させる際に、キャビティ凹部18の底面から先端部が突出するポット39内で、キャビティ凹部18の底面と同一平面に周溝41が達するまでプランジャ40Aを移動させる場合について説明した。本発明の実施形態3では、キャビティ凹部18内への樹脂Rの加熱・加圧をする際に、キャビティ凹部18の底面の位置を越えてプランジャ40Aを前進移動させる場合について図24〜図26を参照して説明する。図24〜図26は、本実施形態に係る製造工程中の樹脂成形金型10Bを示す模式的断面図である。
樹脂成形金型10Bは、ポット39の上端面の位置を除き、図12に示す樹脂成形金型10Aと同様である。具体的には、樹脂成形金型10Bは、ポット39の位置がキャビティ凹部18の底面と先端面が面一となるより簡易な構成となる。
次に、本発明の実施形態3に係る樹脂成形方法(成形品の製造方法)について図面を参照して説明する。まず、図24に示すように、樹脂成形金型10Bを準備する。次いで、型開きした状態(初期状態)において、図示しない搬送部によって金型外部から金型内部にワークWが搬送(供給)され、上型12のセット部34にワークWがセットされる。また、型開きした状態において、図示しない搬送部によって金型外部から金型内部に樹脂Rが搬送(供給)され、下型14のキャビティ凹部18に樹脂Rがセットされる(図25参照)。
この場合、上型12と下型14とを近接させていき、図25に示すように、キャビティ凹部18の底面と同一平面に周溝41がある状態で、キャビティ凹部18内で充填された樹脂Rを熱硬化させて成形品を形成する。その後、ワークWを上型12で保持したまま型開きしていき、図26に示すように、下型14からワークWを離型させる。
本実施形態では、樹脂Rを熱硬化させる際には、キャビティ凹部18の底面(キャビティ凹部18の深さが成形厚tに対応する成形位置)と同一平面にまでプランジャ40Aの周溝41が達するようにプランジャ40Aを移動させる。このため、プランジャ40Aの面取りによって構成される樹脂路38に対応する成形樹脂が形成されたとしても樹脂成形部Rの表面から窪んだところで樹脂成形部Rに包含されるので、搬送部などと接触して樹脂屑が発生するのを防止することができる。
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、次のとおり、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
前記実施形態では、上型にワークのセット部、下型にキャビティ凹部を設けた樹脂成形金型に適用した場合について説明した。これに限らず、金型構成を逆にして上型にキャビティ凹部、下型にワークセット部を設ける場合にも適用することができる。この場合、金型内部に供給される樹脂は、ワーク上にセットさせることができる。
また、前記実施形態では、キャビティに対して樹脂R等が供給され、樹脂Rを圧縮することでワークWを樹脂成形する圧縮成形について説明したがこれに限定されない。例えば、樹脂Rをキャビティ外に設けたポットとプランジャにより、カル、ランナ及びゲートを介してキャビティに樹脂Rを供給するようなトランスファ成形構成において、前記実施形態とした金型構造を有する樹脂成形金型としてもよい。