本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、足裏の接地状況についての条件を特定したうえで、重心移動量の変化量を測定することにより、被検者のバランス能力をより正確に測定することができる、新規なバランス能力測定方法およびバランス能力測定装置を提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
すなわち、本発明の第一の態様は、バランス能力測定方法であって、被検者の立位での重心位置を継続的に計測すると共に、該被検者の立位での足圧分布を継続的に計測し、該重心位置の変位量を、該重心位置の変位方向と同じ方向での該足圧分布の変化量とともに測定することを、特徴とする。
このような本発明の第一の態様に従う構造とされたバランス能力測定方法によれば、被検者の重心位置の変位量に加えて、重心位置の変位方向と同じ方向での足圧分布の変化量を測定することにより、被検者のバランス能力をより正確に評価することができる。すなわち、被検者の重心位置の移動が足裏を接地した正しい測定姿勢で行われているか否かを把握することにより、たとえば足裏の一部が浮いた誤った測定姿勢によって大きな重心位置の変位が測定された場合にも、バランス能力を過大評価してしまうといった問題を回避することができる。
なお、足圧分布は、例えば格子状などに区分けされた各領域ごとに作用する足圧を荷重値として検出することで計測可能であるが、例えば所定値以上の足圧作用領域を検出することによって計測することもできる。前者のように各領域ごとに作用する足圧を荷重値として検出する足圧分布の計測を行う場合には、得られた足圧分布の計測値に基づいて重心位置を求めることも可能となる。また、バランス能力の評価に足裏の接地状態の検出結果を利用する方法としては、たとえば、同じ重心位置の変位量であれば足裏の接地面積や接地割合が大きい場合をよりバランス能力が高いと評価するといったように、バランス能力の評価に足裏の接地状態を加える他、足裏の接地面積や接地割合に閾値を設定したうえで、閾値以上の接地面積や接地割合がある場合だけを有効な重心位置の変位量として評価することも可能である。
本発明の第二の態様は、第一の態様に記載されたバランス能力測定方法において、前記重心位置の変位量を、予め設定した基準重心位置からの位置変位量として測定すると共に、前記足圧分布の変化量を、予め設定した足圧分布の基準面積からの面積変化量として測定するものである。
第二の態様によれば、重心位置の変位量を予め設定された特定の基準重心位置からの位置変位量として測定することにより、たとえば重心位置を前後左右の各方向へ移動させる場合に、重心が基準位置から各方向へそれぞれどの程度移動し得たのかを、簡単に把握することができる。
また、足圧分布の変化量を、所定値以上の足圧作用領域について予め設定された基準面積からの面積変化量や面積変化割合として測定することにより、たとえば重心位置を前後左右へ移動させる場合に、各方向へ重心を動かした場合に足裏の接地面積がそれぞれどの程度変化したのかを、簡単に把握することができる。
本発明の第三の態様は、第一又は第二の態様に記載されたバランス能力測定方法において、前記重心位置の変位量と前記足圧分布の変化量を、両足の平均値として測定するものである。
第三の態様によれば、被検者の体全体のバランス能力を測定して、バランス能力を評価することができる。
本発明の第四の態様は、第一〜第三の何れか一つの態様に記載されたバランス能力測定方法において、前記重心位置の変位量と前記足圧分布の変化量を、片足ずつを対象に測定するものである。
第四の態様によれば、被検者のバランス能力や癖などを片足ずつ把握することができて、より詳細に評価することが可能となり得る。たとえば、左右何れかの足に負傷による障害がある場合などには、重心位置の変位量と足圧分布の変化量とを片足ごとに測定することにより、障害がある足と健常な足とのバランス能力の差などを把握することもできる。
本発明の第五の態様は、第一〜第四の何れか一つの態様に記載されたバランス能力測定方法において、前記重心位置の変位について変位速度と変位加速度の少なくとも一方を測定するものである。
第五の態様によれば、重心位置の変位速度や変位加速度を、身体の能力や状態の判定資料の一つとすることもできる。例えば、加齢に伴って変位速度や変位加速度も低下する傾向があるし、障害の程度で低下する場合もあり、日々の体調の把握や管理にも参照することができる。そして、重心変位量と併せて参照することで、身体の能力や状態の判定をより効果的に行うことも可能になる。なお、重心位置の変位速度や変位加速度は、重心位置の変位に伴って変化するが、例えば初期位置(基準位置)から最大の重心変位点までを継続的に測定して記憶や出力するほか、最大値や平均値等を測定して記憶や出力するようにしても良い。
本発明の第六の態様は、バランス能力測定装置において、被検者が立位で足を載せる測定面に配された複数の圧力検知セルからなる圧力分布センサと、該圧力分布センサの検出信号によって該被検者の重心位置を検出する重心検出装置と、該圧力分布センサの検出信号によって該被検者の足圧作用領域を検出する足圧領域検出装置と、該重心検出装置によって検出される該被検者の該重心位置の変位量を継続的に求める重心変位量演算装置と、該足圧領域検出装置によって検出される該被検者の該足圧作用領域において、該重心変位量演算装置で求められる該重心位置の変位方向と同じ方向における該足圧作用領域の変化量を求める足圧作用領域変化量演算装置と、該重心変位量演算装置で求められた該重心位置の変位量と該足圧作用領域変化量演算装置で求められた該足圧作用領域の変化量とを外部表示する表示装置とを、有することを、特徴とする。
このような本発明の第六の態様に従う構造とされたバランス能力測定装置によれば、圧力分布センサの検出信号によって被検者の重心位置と足圧の作用領域とが検出されて、それらの検出結果から重心位置の変位量と重心位置の変位方向における足圧作用領域の変化量とが求められるようになっている。それ故、被検者は重心位置の変位量だけでなく足圧作用領域の変化量も把握することができて、測定結果からバランス能力をより正確に評価することが可能になる。
本発明の第七の態様は、第六の態様に記載されたバランス能力測定装置において、前記重心変位量演算装置が、予め設定した基準重心位置からの重心位置の変位量を求めるものであり、且つ該基準重心位置が、前記足圧領域検出装置で検出される前記足圧作用領域の検出信号に基づいて決定されるものである。
第七の態様によれば、重心位置の変位量を予め設定された特定の基準重心位置からの変位量として求めることにより、たとえば重心位置を前後左右の各方向へ移動させる場合に、重心が基準位置から各方向へそれぞれどの程度移動し得たのかを精度良く求めることができる。
本発明の第八の態様は、第六又は第七の態様に記載されたバランス能力測定装置において、前記重心変位量演算装置が、重心変位方向における前記足圧作用領域の全幅寸法を、前記足圧領域検出装置で検出される該足圧作用領域の検出信号に基づいて求めると共に、該足圧作用領域の全幅寸法に対する前記基準重心位置からの前記重心位置の変位量の幅方向寸法割合をもって、該重心位置の変位量を求めるものである。
第八の態様によれば、重心位置の変位量を利用してバランス能力を測定する際には、被検者の足裏の接地状態の他に、被検者の身長などの体格も影響するが、重心位置の変位量を被検者の足のサイズに対する寸法割合として求めることにより、体格差による評価の誤差を低減することができて、より高精度なバランス能力の評価が可能になる。
本発明の第九の態様は、第六〜第八の何れか一つの態様に記載されたバランス能力測定装置において、前記足圧作用領域変化量演算装置が、予め設定した足圧分布の基準面積からの面積変化量を求めるものであり、且つ該基準面積が、前記足圧領域検出装置で検出される前記足圧作用領域の検出信号に基づいて決定されるものである。
第九の態様によれば、足圧分布の変化量を予め設定された基準面積からの面積変化量として求めることにより、たとえば重心位置を前後左右へ移動させる場合に、各方向へ重心を動かした場合に足裏の接地面積がそれぞれどの程度変化したのかを精度良く求めることができる。
本発明の第十の態様は、第六〜第九の何れか一つの態様に記載されたバランス能力測定装置において、前記圧力分布センサの検出信号によって右足検出領域と左足検出領域を求める左右区別装置を有しており、該左右区別装置で求めた該右足検出領域と該左足検出領域において前記重心検出装置が各別に前記重心位置を検出すると共に前記足圧領域検出装置が各別に前記足圧作用領域を検出するものである。
第十の態様によれば、重心位置と足圧作用領域が左右の足についてそれぞれ検出されることから、左右両足の接地面積の変化(足圧作用領域の変化)や重心位置の変位、それらの左右でのバランスなどをより正確に把握することが可能になり得る。
本発明の第十一の態様は、第六〜第十の何れか一つの態様に記載されたバランス能力測定装置であって、前記表示装置において、前記重心位置の変位量と前記足圧作用領域の変化量とが、相互に関連した態様で表示されるものである。
第十一の態様によれば、重心位置の変位量と足圧作用領域の変化量との相関関係が容易に把握可能な態様で表示されることから、バランス能力を簡単かつ正確に把握することができる。
本発明の第十二の態様は、第六〜第十一の何れか一つの態様に記載されたバランス能力測定装置において、前記重心位置の変位量と前記足圧作用領域の変化量とが、経時的な測定情報として表示されるものである。
第十二の態様によれば、重心位置が経時的にどのように変位したのかを簡単に確認することができると共に、足圧作用領域が経時的にどのように変化したのかを簡単に確認することができて、それらによって被検者の測定姿勢の変化を経時的に把握することができる。
本発明の第十三の態様は、第六〜第十二の何れか一つの態様に記載されたバランス能力測定装置において、前記重心位置の変位量と前記足圧作用領域の変化量とが、直交二次元座標上の各軸値をもって表示されるものである。
第十三の態様によれば、重心位置の変位量と足圧作用領域の変化量との関連が、直感的に把握可能な態様で表示されることから、バランス能力の把握がより一層容易になる。
本発明の第十四の態様は、第六〜第十三の何れか一つの態様に記載されたバランス能力測定装置において、前記重心検出装置によって検出される前記被検者の前記重心位置の変位量に基づいて該重心位置の変位速度と変位加速度の少なくとも一方を求める重心変位率演算装置を設けたものである。
第十四の態様によれば、重心位置の変位速度や変位加速度を、身体の能力や状態の判定資料の一つとすることもできて、重心変位量と併せて参照することで、身体の能力や状態の判定をより効果的に行うことも可能になる。
本発明によれば、被検者の立位での重心位置の変位量を、重心位置の変位方向と同じ方向での足圧分布の変化量とともに測定してバランス能力を評価等することが可能になる。したがって、たとえば被検者の重心位置の移動が足裏を接地した正しい姿勢で行われているか否かを容易に把握することが可能であり、また、誤った姿勢によって大きな重心位置の変位が測定された場合にバランス能力を過大評価してしまうといった問題を回避することができて、被検者のバランス能力をより正確に評価することが可能になる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1には、本発明の第一の実施形態としてのバランス能力測定装置10が示されている。このバランス能力測定装置10は、測定装置本体12に表示手段としてのパーソナルコンピュータ14が接続された構造を有しており、測定装置本体12は、図2,3に示すように、上下のカバー16,18の間に圧力分布センサ20が収容された構造を有している。なお、以下の説明において、特に説明がない限り、前後方向とは図1中の上下方向を、左右方向とは図1中の左右方向を言う。
より詳細には、上カバー16は、窓部22を備えた略矩形枠状を呈しており、硬質の合成樹脂などで形成されている。また、本実施形態では、上カバー16における窓部22の周囲は、正面部分(後部)の高さが他の部分よりも低くなっており、被検者が躓くことなく測定面に載り易くされている。
下カバー18は、略矩形板状とされており、繊維補強された高剛性の合成樹脂材や金属材、或いは弾性体などで形成されている。本実施形態では、下カバー18がステンレス製の金属板で構成されており、大きな変形剛性を設定されている。また、図2に示すように、下カバー18の下面には、緩衝ゴム層24が固着されている。これにより、測定装置本体12が床面に載置される際に、硬質な下カバー18と床面との間に緩衝ゴム層24が介在することから、床面が傷付くのを防ぐことができると共に、床面に置く際の音も低減乃至は回避される。なお、下カバー18を導電性の金属材で形成して、アース配線を接続して接地することで、後述する圧力分布センサ20の検出精度を高めることもでき得る。
そして、上カバー16と下カバー18は、上下に重ね合わされて、固定ボルト26によって外周部分の複数箇所で相互に固定されており、それら上カバー16と下カバー18の間に空間が形成されている。
この上カバー16と下カバー18の間の空間には、圧力分布センサ20が配設されている。圧力分布センサ20は、図4に示すように、誘電体層28の一方の面にエラストマシート30aが重ね合わされると共に、誘電体層28の他方の面にエラストマシート30bが重ね合わされた構造を、有している。
誘電体層28は、ゴムや樹脂などの電気絶縁性エラストマで形成されて、板状乃至はシート状とされており、弾性乃至は可撓性を有していると共に、伸縮変形可能とされて、特に厚さ方向で容易に変形可能とされている。なお、誘電体層28の形成材料としては、例えば、シリコーンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル−ポリ塩化ビニリデン共重合体、エチレン−酢酸共重合体などが、好適に採用される。更に、誘電体層28は発泡体であっても良く、必要な誘電率と柔軟性が確保されれば、その発泡体は、必ずしも独立気泡によって均質な相を呈するものに限定されず、例えば連続気泡が形成されるなどして不均一な相を呈していても良い。また、誘電体層28の厚さや形成材料などは、後述する圧力検出部38において求められる比誘電率や柔軟性に応じて適宜に設定される。
エラストマシート30aとエラストマシート30bは、互いに略同じ材料および形状で形成されており、ゴム弾性体や高分子エラストマで形成された電気絶縁性のシートであって、本実施形態では平面視で略矩形とされている。さらに、エラストマシート30a,30bには、周上の一辺において外周へ突出する一組の接続片32,33が並んで設けられている。なお、エラストマシート30a,30bの形成材料は、特に限定されるものはないが、たとえばシリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、ポリエステル樹脂、ポリエーテルウレタン樹脂、ポリカーボネートウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース、変性セルロース類などが、好適に採用される。また、本実施形態のエラストマシート30a,30bは、理解を容易とするために透明乃至は半透明とされているが、透明ではなくても良い。
さらに、エラストマシート30aの下面に電極34aが形成されていると共に、エラストマシート30bの上面に電極34bが形成されている。電極34a,34bは、何れも導電性の金属や導電フィラーを混合したゴム及びエラストマなどで形成されており、直線的に延びる薄肉帯状とされている。また、電極34a,34bは、各32本が並列的に並んで形成されていると共に、それら電極34aと電極34bが互いに傾斜して延びており、本実施形態では互いに略直交する方向へ延びている。なお、以下の説明において、エラストマシート30a,30b上の直交二軸のx−y平面において、y軸と略平行に前後へ延びる電極34aを左から順に01x,02x,03x・・・,32xと称すると共に、x軸と略平行に左右へ延びる電極34bを下から順に01y,02y,03y,・・・,32yと称する。
さらにまた、エラストマシート30a,30bは、電極34a,34bの配設領域(感圧部42)よりも外側まで広がっており、エラストマシート30a,30bの電極34a,34bよりも外側には、それぞれ配線36a,36bが導電性材料によって印刷されている。そして、配線36aが電極34aの一端から一方の接続片32まで延びていると共に、配線36bが電極34bの一端から他方の接続片33まで延びている。なお、配線36a,36bは、例えば、エラストマシート30a,30bの表面に導電性インクによってプリントされた配線パターンとして得ることができる。更に、電極34a,34bは、導電性エラストマで形成された導電性インクによって、配線36a,36bと同様にエラストマシート30a,30bに印刷して形成することもできる。また、エラストマシート30a,30bは、電極34a,34bの配設領域および配線36a,36bの形成領域を外れた外周端部において、接着剤や両面テープなどによって相互に固着されている。
かくの如き構造とされたエラストマシート30aとエラストマシート30bが、誘電体層28の上下各一方側から重ね合わされている。これにより、図1に示すように、エラストマシート30aの電極34aとエラストマシート30bの電極34bとが、誘電体層28を挟んで互いに対向するように交差して配置されている。そして、電極34aと電極34bの誘電体層28を介した交差部分において、コンデンサが構成されており、かかるコンデンサによって圧力検出部38が構成されている。なお、図1では、分かり易さのために、圧力分布センサ20、電極34a,34b、配線36a,36b、圧力検出部38が、何れも透視状態で図示されている。
これら電極34a,34bの交差部分(圧力検出部38)では、誘電体層28とエラストマシート30a,30bの積層方向へ圧力が加わると、誘電体層28が変形して電極34a,34b間の距離が短くなるので、該当部分の静電容量が変化する。それ故、電気的な制御装置からなるセンサコントローラ40を用いて、各圧力検出部38における静電容量の変化を検知することで、各圧力検出部38に及ぼされた圧力を検出することが可能とされて、感圧部42が構成されている。即ち、電極34a,34bの各交差部分(圧力検出部38)が、静電容量型の圧力検出素子(セル)として機能し得るのである。
なお、本実施形態の感圧部42は、1024個の圧力検出部38が32列×32行で二次元的に配置された静電容量型のセンサとされている。また、感圧部42の面積が人の足裏の面積よりも大きくされており、感圧部42上に立つことが可能とされている。なお、図1では、分かり易さのために、圧力分布センサ20を細線で仮想的に図示した。
そして、圧力分布センサ20は、上カバー16と下カバー18の間に配設されており、感圧部42を外れた外周部分が上下のカバー16,18によって挟持されていると共に、感圧部42が上カバー16の窓部22を通じて上方に露出しており、感圧部42の上面によって測定面が構成されている。なお、窓部22において露出する感圧部42の上面(測定面)は、ゴムやエラストマで形成された可撓性の保護シート44によって覆われて保護されていることが望ましい(図2参照)。
また、配線36aがセンサコントローラ40のコネクタ46aに着脱可能に接続されていると共に、配線36bがセンサコントローラ40のコネクタ46bに着脱可能に接続されており、感圧部42を備えた圧力分布センサ20がセンサコントローラ40に対して着脱可能に接続されている。
センサコントローラ40は、例えば、図1に示されているように、各電極34a,34bに対してコネクタ46a,46bを介してそれぞれ接続されており、電源装置としての作動電圧給電用の電源回路48と、計測手段としての静電容量検知用の検出回路50とを、備えている。電源回路48は、電極34aの01x〜32xと電極34bの01y〜32yに対する給電を選択的に行うようになっており、中央演算装置(CPU)52による制御下で、コンデンサを構成する1024箇所の各交差部分(圧力検出部38)に対して、計測用電圧として周期的な波形電圧を走査的に印加する。
そして、かかる電圧作用下で検出される静電容量の検出信号が、順次に検出回路50で検出され、その検出値がRAM(random access memory)54に記憶される。なお、検出回路50による静電容量の検出は、例えば電流値から求められるインピーダンスを用いて静電容量値を求めることによって行われる。
また、ROM(read only memory)56には、電極34a,34bの交差部分で構成されたコンデンサの特性データが記憶されており、この特定データに基づいて、CPU52により、配線抵抗の影響を排除して求められた静電容量の検出値から電極34a,34bの交差部分に及ぼされた外力である圧迫力が求められる。なお、図1では、分かり易さのために、電源回路48,検出回路50,CPU52,RAM54,ROM56を備えるセンサコントローラ40を、機能ブロックとして簡略に図示した。
従って、コンデンサを構成する電極34a,34bの交差部分で構成された1024箇所の圧力検出部38における静電容量をそれぞれスキャンすることにより、各圧力検出部38に作用する圧力が各別に検出可能とされていると共に、全体として二次元的な圧力分布が検出可能とされている。
さらに、本実施形態では、センサコントローラ40が表示手段としてのパーソナルコンピュータ14に有線乃至は無線で接続されており、計測結果のデータがセンサコントローラ40からパーソナルコンピュータ14に送信されて、パーソナルコンピュータ14の画面に表示されるようになっている。また、パーソナルコンピュータ14は、静止画や動画、文字、音声などによって使用者にバランス能力測定の方法を指示するための装置としても機能するようになっており、使用者はパーソナルコンピュータ14の指示にしたがうことでバランス能力の測定を簡単に実施することができる。
かくの如き構造とされたバランス能力測定装置10は、身体のバランス能力を測定して評価するために用いられる。以下に、バランス能力の測定方法及びその評価方法について、具体例に基づいて説明する。
すなわち、バランス能力測定装置10を使用してバランス能力を測定しようとする者(以下、被検者)は、先ず、測定装置本体12の図示しない電源スイッチをOFFからONに切り替えて、測定装置本体12の圧力分布センサ20とセンサコントローラ40を測定可能なスタンバイ状態に移行させると共に、パーソナルコンピュータ14を起動させて指示にしたがって年齢や性別を入力する。このように被検者の年齢や性別を入力することにより、被検者のバランス能力の測定結果を同じ性別および年代における平均値に対して評価することも可能となる。
次に、被検者は、測定装置本体12の感圧部42に両足を接地した直立状態(初期立位)で静止する。これにより、センサコントローラ40が圧力検出部38の検出結果に基づいて被検者の初期立位での足圧分布(図5参照)を計測して、感圧部42の上面(測定面)における足の前後端と左右端の位置を算出する。すなわち、センサコントローラ40が、閾値以上の足圧を検出した圧力検出部38の検出信号に基づいて、感圧部42の上面において前後端と左右端に位置する圧力検出部38を特定することにより、足の前後端と左右端の位置をそれぞれ特定する。
本実施形態では、重心位置の変位量を求める際の基準になる基準重心位置が、足の最後端と最左端の交点とされていることから、上述のようにして初期立位での足の前後端と左右端の位置を算出することで定まるようになっている。もっとも、基準重心位置の設定方法はあくまでも例示であって、たとえば以下のようにして求めることもできる。すなわち、先ず、初期立位および前後左右の各方向へ体軸を最大限まで傾動させた各測定姿勢において、閾値以上の足圧を検出する圧力検出部38を特定する。次に、特定された初期立位と体軸を傾斜させた各測定姿勢において特定された前後端および左右端に位置する圧力検出部38から、前後左右の各方向で最も外方に位置する圧力検出部38を特定して、それら圧力検出部38の位置に基づいて足裏の感圧部42に対する最大接地可能領域を特定する。そして、特定された最大接地可能領域の最後端を通る左右直線と最左端を通る上下直線との交点を求めて、かかる交点を基準重心位置とすることができる。この場合には、重心位置の変位量を求めるために初期立位と前後左右の各方向へ体軸を傾斜させたクロステストの各測定姿勢をとる前に、基準重心位置を設定するために各測定姿勢をとることが望ましく、要するに、初期立位と前後左右の各方向へ体軸を傾斜させた姿勢での測定を、それぞれ二度行うことが望ましい。
また、被検者の足の後端を前後方向で距離を測定する際の原点(距離0%)とし、原点から足の前端までの距離を前後距離100%に設定する一方、左足の左端を左右方向で距離を測定する際の原点(距離0%)とし、原点から右足の右端までの距離を左右距離100%に設定する。
さらに、センサコントローラ40は、計測した圧力分布に基づいて初期立位における感圧部42上での重心位置を求めると共に、予め設定された基準重心位置から計測された重心位置までの距離を、前後方向と左右方向において初期立位の足圧分布における前後方向と左右方向の各全幅寸法(初期立位において検出された足の前後端の距離と左右端の距離)に対する寸法割合としてそれぞれ求める。これにより、初期立位における重心位置の基準重心位置からの変位量が、センサコントローラ40によって算出される。このように、センサコントローラ40は、圧力検出部38の検出結果に基づいて重心位置を検出する重心検出装置としての機能を有すると共に、被検者の重心位置の検出結果に基づいて重心位置の変位量を算出する重心変位量演算装置としての機能も有する。
また、足圧領域検出装置としてのセンサコントローラ40は、閾値以上の足圧を検出した圧力検出部38の検出信号に基づいて、足圧作用領域を検出する。さらに、感圧部42上で足圧作用領域が検出されることにより、足圧作用領域の前後端および左右端に位置する圧力検出部38が検出されて、感圧部42における足圧作用領域の前後全幅(最大前後長さ)寸法と左右全幅(最大左右幅)寸法がそれぞれ求められる。電極34aを左右の軸値、電極34bを上下の軸値とすると、図6に示す本実施形態の初期立位では、圧力作用領域の前端が27y、後端が04y、左端が04x、右端が26xとなっており、圧力検出部38の数で示すと、足圧作用領域の前後全幅が23、左右全幅が22となっている。
さらに、センサコントローラ40は、初期立位において閾値以上の圧力を検出した圧力検出部38(図6中でグレーに着色された圧力検出部38)の数を検出し、検出結果を初期立位での接地面積の大きさ(基準面積)に設定する。なお、基準面積の設定方法は、あくまでも例示であって、たとえば、初期立位および体軸を前後左右へ傾動させた各測定姿勢において閾値以上の圧力を一度でも検出した圧力検出部38の数、換言すれば、クロステストにおいて足圧を検出する圧力検出部38の最大数(最大面積)を基準面積とすることなどもできる。なお、基準面積を各測定姿勢において圧力を検出する圧力検出部38の最大数として設定する場合には、各測定姿勢での測定を二度行うことが望ましく、これにより、一度目の測定によって基準面積を設定すると共に、二度目の測定によって重心位置の変位量や足裏の接地面積の変化量などを測定することができる。
初期立位での計測が完了すると、パーソナルコンピュータ14は、被検者に足裏を接地させたままで体軸を前傾させるように指示する。これにしたがって被検者が体軸を前傾させると、重心位置が初期立位から前方へ移動することから、センサコントローラ40は、かかる重心位置の移動を継続的に計測することで、体軸の前傾による重心位置の変位量を求める。本実施形態では、重心位置の変位量が、初期立位での基準重心位置からの変位量として計測されるようになっており、重心位置の変位量を精度良く計測することができる。このように、重心変位量演算装置としてのセンサコントローラ40は、継続的な重心位置の検出結果から重心位置の変位量を継続的に求めるようになっている。
また、体軸の前傾に伴って、足裏の圧力分布も変化する。すなわち、図7に示すように、足裏の前部(爪先)に大きな圧力が作用して、前部の接地面積が大きくなる一方、足裏の後部(踵)に作用する圧力が低下して、後部の接地面積が小さくなる。
ところで、体軸を傾動させる際のバランス能力を正確に評価するためには、被検者が足裏を接地したままで体軸を傾動させる必要がある。蓋し、たとえば体軸を前傾させる際の重心位置の変位量は、同じ被検者でも踵が接地しているか否かによって大きく変化することから、バランス能力を正確に評価するためには、被検者が踵を接地させた正しい姿勢で測定を行っていることが重要になるからである。
ここにおいて、バランス能力測定装置10では、足圧作用領域変化量演算装置としてのセンサコントローラ40が圧力分布(足圧分布)の継続的な検出結果に基づいて足圧分布の変化量を求めることにより、被検者が踵を接地させた状態で体軸を前傾させている場合と、踵を浮かせた爪先立ち状態で体軸を前傾させている場合とを、判別することが可能とされている。すなわち、踵を浮かせた爪先立ち状態では足裏の接地面積(足圧作用領域)がより小さくなることから、足裏の接地面積を前傾姿勢において圧力を検出した圧力検出部38の数として計測することにより、足圧分布の変化量を接地面積の基準面積からの変化量として測定して、爪先立ち状態への移行を把握することができる。なお、足圧作用領域は、体軸の傾動による重心位置の変位に伴って、重心位置の変位方向と同じ方向で変化することから、足圧作用領域全体の変化量を計測することで、重心位置の変位方向と同じ方向での足圧作用領域の変化量を計測することになる。
具体的には、たとえば、図8に示すように、圧力を検出した圧力検出部38(図6中、グレーに着色された圧力検出部38)の数を前傾姿勢での接地面積の大きさとして計測し、初期立位での接地面積の大きさ(基準面積)に対する比率を算出する。このように、本実施形態に係るバランス能力測定装置10では、重心位置の変位量を、重心位置の変位方向と同じ方向での足圧分布の変化量と共に測定する。なお、センサコントローラ40は、感圧部42における圧力作用領域の変化量を算出する足圧作用領域変化量演算装置としても機能するようになっている。
そして、体軸を前傾させた姿勢での接地面積が基準面積に対する比率において予め設定された閾値よりも小さい場合には、被験者が爪先立ち姿勢であると判定する。これにより、たとえば、爪先立ち姿勢での重心位置の変位量の計測結果を無効としたり、被検者に対して足裏全体を接地するように音や光、画面表示などの報知手段によって促したりすることで、被検者のバランス能力をより正確に評価することができる。
同様にして、図9,10に示すように体軸を後傾させた姿勢と、図11,12に示すように体軸を右傾させた姿勢についても、足裏の接地状態を接地面積の変化量に基づいて確認しながら、重心位置の変位量を順に計測する。体軸を後傾させた姿勢では、爪先側の圧力が小さくなって、爪先の接地面積が小さくなる一方、体軸を右傾させた姿勢では、左足の圧力が小さくなって、左足の接地面積が減少し易くなる。各姿勢での計測は、パーソナルコンピュータ14によって姿勢を指示された被検者が、感圧部42上で所定時間に亘って静止することにより完了する。なお、図6,8,10,12においてグレーで着色された圧力検出部38が、各測定姿勢での検出結果における足圧作用領域を示している。
さらに、体軸を左傾させた場合の足圧分布については、一般的に、図11,12に示す体軸を右傾させた姿勢での足圧分布に対して略左右対称の結果となることから、ここでは図示を省略したが、左傾時についても重心位置の変位量と足圧作用領域の変化量を同様に計測する。また、左右何れかの足の運動機能に障害がある場合などには、体軸の右傾時と左傾時との間で足圧分布に顕著な違いが生じることから、そのような左右のバランスの確認をするためにも、体軸を左右両側へ傾斜させた場合について計測を行うことが望ましい。
そして、体軸を前後左右に傾斜させた姿勢についてそれぞれ計測が完了すると、計測結果である重心位置の変化量と足圧作用領域の変化量が、図13のような態様で、表示手段としてのパーソナルコンピュータ14の画面に表示される。なお、計測結果の表示方法として、図13に示すような画面表示を例示したが、たとえば、音声による評価結果の読み上げや、計測結果に基づいたバランス能力の5段階評価の表示などが、図13の画面表示と併せて或いはそれとは別に単独で採用され得る。
すなわち、図13では、被検者が体軸を前後に傾斜させた場合の重心位置の前後方向への変位量が、足裏の接地面積の基準面積に対する変化量との相関を示す前後グラフ60として示されている。これによれば、前後傾斜において、被検者の重心位置が前後外側へ変位するにしたがって、足裏の接地面積の基準面積に対する割合が小さくなっていることが簡単に把握される。また、足裏の接地面積の基準面積に対する割合に閾値を設定して、閾値よりも大きな接地面積が確保されている場合にのみ重心位置の検出結果を有効とすれば、足裏の接地面積の変化がバランス能力の評価に影響し難くなって、バランス能力を適正に評価することができる。
また、パーソナルコンピュータ14の画面における前後グラフ60の下方には、足の側面を示す側面イラスト62が示されている。この側面イラスト62は、パーソナルコンピュータ14の画面の左右において、踵側端が前後グラフ60の左端と同じ位置に配置されていると共に、爪先側端が前後グラフ60の右端と同じ位置に配置されており、前後グラフ60の横軸が足の前後長さに対応していることが簡単に理解されるようになっている。さらに、前後グラフ60には踵からの前後距離が足の前後長さに対して20%の測定下限と80%の測定上限とにそれぞれ破線が表示されており、この破線が足の側面イラスト62まで達するように延びていることから、被検者の重心位置が足の前後方向においてどのような範囲で変化したのかを、イラストによって簡単に把握できるようになっている。また、本実施形態では、前後傾斜時の重心位置を示す足の側面イラスト62において、測定下限から測定上限までの領域が他の領域と色分けされており、色彩の違いによって視覚的に把握できるようになっている。
また、図13では、体軸を左右に傾斜させた場合の重心位置の左右方向への変位量も、足裏の接地面積の基準面積に対する変化量との相関を示す左右グラフ64として示されている。これによれば、左右傾斜において、重心位置が左右外側へ変位するにしたがって、足裏の接地面積の基準面積に対する割合が小さくなっていることが、直感的に把握可能となっている。
また、パーソナルコンピュータ14の画面における左右グラフ64の下方には、両足裏を平面的に示す平面イラスト66が示されている。この平面イラスト66は、パーソナルコンピュータ14の画面の左右において、左足の左端が左右グラフ64の左端と同じ位置に配置されていると共に、右足の右端が左右グラフ64の右端と同じ位置に配置されており、左右グラフ64の横軸が立ち幅に対応していることが簡単に理解されるようになっている。さらに、左右グラフ64には左足左端からの左右距離が足の立ち幅に対して20%の測定下限と80%の測定上限とにそれぞれ破線が表示されており、この破線が足の平面イラスト66まで達するように延びていることから、被検者の重心位置が足の左右方向においてどのような範囲で変化したのかを、イラストによって簡単に把握できるようになっている。また、本実施形態では、左右傾斜時の重心位置を示す足の平面イラスト66において、測定下限から測定上限までの領域が他の領域と色分けされており、色彩の違いによって視覚的に把握できるようになっている。
さらに、本実施形態では、左右両足の平均値として、重心位置の変位量と足圧分布(接地面積)の変化量を測定すると共に、左右それぞれの足についても、重心位置の変位量と足圧分布の変化量を各別に測定するようになっており、左右のバランスなども容易に把握できるようになっている。本実施形態では、左右両足の平均値の計測結果に加えて、左右各足ごとの計測結果も表示されているが、たとえば、左右何れかの足についてのみ計測して、片足の計測結果だけを示すようにもできる。なお、図13の前後および左右のグラフ60,64では、左右両足の平均値の計測結果が「全体」として示されていると共に、左右各足の計測結果が「左」および「右」として示されている。
そして、被検者は、かかる計測結果の表示に基づいて、自己のバランス能力を評価することができる。すなわち、図13にも示すように、たとえば、これらの計測結果において、重心位置の変位幅が足のサイズに対して50%以上である場合にバランス能力が基準値に対して普通以上であると評価する。一方、50〜30%である場合には基準値に対してやや劣ると評価すると共に、30〜15%である場合には基準値から劣っていると評価し、さらに、15%以下である場合には要注意であると評価して、改善の必要性とその程度を認識することができる。もっとも、このような評価基準は、必要に応じて適宜に変更設定されるものであり、具体的には、高齢者や傷病者などのバランス能力を評価する場合と、身体能力に優れたスポーツ選手などのバランス能力を評価する場合とでは、評価基準の数値が異なることは言うまでもない。
本実施形態の表示装置では、重心位置の変位量と足裏の接地割合の変化量とを表示するようになっているが、重心位置の変位速度と変位加速度との少なくとも一方を求める重心変位率演算装置を設けて、重心変位率演算装置が求めた重心位置の変位速度や変位加速度を併せて表示するようにしても良い。なお、重心位置の変位速度や変位加速度は、重心変位に伴って変化するが、例えば初期位置(基準位置)から最大の重心変位点までを継続的に測定して記憶や出力するほか、最大値や平均値等を測定して記憶や出力するようにしても良い。また、重心位置の変位速度と変位加速度は、重心位置の変位量の時間微分によって算出できることから、重心変位率演算装置は、たとえば本実施形態においてセンサコントローラ40によって構成され得る。
このように重心位置の変位速度や変位加速度を測定して表示すれば、重心位置の変位速度や変位加速度を、身体の能力や状態の判定資料の一つとすることもできる。すなわち、重心位置の変位速度や変位加速度は、加齢に伴って低下する傾向があるとともに障害の程度に応じても変化する場合があり、日々の体調の把握や管理にも参照することができる。そして、重心位置の変位速度や変位加速度を重心変位量と併せて参照することで、身体の能力や状態の判定をより効果的に行うことも可能になる。
ところで、足裏を正しく接地させながら体軸を前後へ動揺させると、一般的に重心が位置し得る前後範囲は、足の最大前後長さに対して15〜85%の範囲となり、かかる範囲内での測定によって一般的な健常の程度を判定することも可能であることから、予め測定範囲を当該範囲に限定しておくことにより、演算処理の容易化やそれに伴う装置の小型化、計測結果の信頼性の向上などが図られ得る。同様に、体軸を左右へ動揺させる場合にも、一般的に重心が位置し得る左右範囲は、最大左右立ち幅に対して20〜80%の範囲となることから、当該範囲でのみ測定を行っても良い。なお、重心位置の前後方向での測定範囲を足の最大前後長さに対して20〜80%に限定したり、重心位置の左右方向での測定範囲を足の最大左右立ち幅に対して30〜70%に限定したりすれば、演算処理の負荷低減や装置の小型化などを一層有利に実現することができ得る。なお、本実施形態では、足の前後長さおよび立ち幅に対して20〜80%の範囲における重心位置の変位量を、有効な計測結果としている。
また、計測結果は、パーソナルコンピュータ14に内蔵された記憶装置やその他の記憶装置に保存することも可能であるし、図示しないプリンタによって図13に示すような計測結果を印刷することも可能である。また、計測結果の保存が不要であれば、計測結果を破棄して次の計測を行う待機状態に移行することもできる。
このような本実施形態に従う構造とされたバランス能力測定装置10によれば、被検者の姿勢変化時の重心位置の変位量だけでなく、足裏の接地面積の変化量も計測することから、被検者のバランス能力を、重心位置の変位量だけから評価する場合に比して、より正確に評価することができる。すなわち、体軸の傾動によって重心位置の移動が生ぜしめられる際に、足裏の接地面積を計測することで、足裏の全面を感圧部42に接地させた正しい計測姿勢で計測がされているかどうか、正しい計測姿勢をどの程度まで実現しているかを把握することができる。それ故、前傾時に踵が浮いたり、後傾時に爪先が浮いたり、左傾時および右傾時に片足立ちになったりすることで、バランス能力が実際よりも過大に評価されるのを防いで、実際のバランス能力をより正確に把握することが可能となる。
さらに、重心位置の変位量が予め設定された基準重心位置からの変位量として求められると共に、基準重心位置が圧力検出部38によって検出される足圧の作用領域からに基づいて決定されることから、感圧部42における被検者の立つ位置などによって計測結果に誤差が生じるのを防ぐことができて、バランス能力を安定して測定することができる。
特に、足圧作用領域の前後長さ寸法と左右幅寸法を求めて、重心位置の変位量をそれら前後長さ寸法と左右幅寸法に対する寸法割合として求めることにより、重心位置の変位量の測定結果を、被検者の足の大きさの違い、ひいては被検者の体格の違いを考慮しながら評価し易くすることができる。すなわち、体格が小さい被検者は、体格が大きい被検者に対して、同等のバランス能力を備えていたとしても、重心位置の変位量が小さくなることから、重心位置の変位量の計測結果を絶対値として比較すると体格が小さい被検者のバランス能力が過小評価されることになる。そこで、重心位置の変位量を体格と相関性を有する足の大きさに対する相対値として、それに基づいてバランス能力を評価することにより、体格差によるバランス能力の評価のばらつきを防いで、より正確な評価を行うことができる。なお、このような足圧作用領域の前後長さ寸法と左右幅寸法を求めて、重心位置の変位量をそれら前後長さ寸法と左右幅寸法に対する寸法割合として求める構成は、本発明とはまた別の発明としても成立し得る。
さらにまた、体軸傾動時の足裏接地面積の変化量は、面積の絶対値ではなく、初期立位での足裏接地面積(基準面積)に対する比として求められる。それ故、基準面積が小さい小柄な被検者と、基準面積が大きい大柄な被検者において、接地面積変化の計測結果に違いが生じ難く、計測結果に基づいたバランス能力の評価を安定して行うことができる。
また、センサコントローラ40は、圧力分布センサ20の検出結果から左足の圧力作用領域(左足検出領域)と右足の圧力作用領域(右足検出領域)とを区別する左右区別装置としての機能を有しており、左足検出領域と右足検出領域のそれぞれに対して重心位置の変位量と圧力作用領域の変化量を各別に求めることができる。これによれば、左右の足の筋力などのバランスを確認することができて、たとえば、片足を負傷した場合のリハビリテーションなどにおいて左右の足のバランスから機能の回復度合いを確認することもできる。
また、図13に示すように、横軸が足後端又は足左端から重心位置までの距離の足長又は立ち幅に対する比、縦軸が足裏接地面積の基準面積に対する比とされたグラフエリアに、同時刻に計測された重心位置の変位量と接地面積の変化量が経時的に表示されるようになっている。このように、計測結果の表示画面において、重心位置の変位量と足圧作用領域の変化量が相互に関連した態様で表示されることから、重心位置の移動が適正な計測姿勢で行われたものであるか否かを容易に把握することができる。しかも、計測結果が所定の時間に亘る経時的な測定情報として直交二次元座標上の各軸値をもってグラフ表示されることにより、計測時間全体における重心位置の移動と計測姿勢の変化をグラフ形状などから簡単に把握することができる。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、圧力分布センサの具体的な構造は、特に限定されるものではなく、たとえば歪ゲージを用いた面圧センサなど、各種公知の構造が採用され得る。また、足圧作用領域を検出する圧力分布センサとは別に、重心位置を検出する重心センサとして例えば特許文献1に記載の如きロードセルなどを採用することも可能である。
また、電極34a,34bおよび圧力検出部38の数や配置、形状なども特に限定されない。さらに、測定面を構成する感圧部42の窓部22から露出する部分は、形状や面積を適宜に変更され得るが、被検者が感圧部42に立位で足を載せることができる大きさおよび形状とされる。また本発明では特に必要でないが、測定面に足形などの表示をして使用者が測定面に乗ることを促すようにしても良い。
さらに、前記実施形態では、検出装置や演算装置、さらには左右区別装置が、何れも測定装置本体12に内蔵されたセンサコントローラ40によって構成されているが、それらは測定装置本体12に外付けされていても良く、たとえば重心位置の変位量や足圧作用領域の面積変化量などを演算する演算装置が、測定装置本体12に外付けされてセンサコントローラ40に接続されるパーソナルコンピュータ14によって構成されるようにしても良い。
また、重心位置の変位量および足圧作用領域の面積は、ある程度の時間に亘って継続して計測される必要があるが、必ずしも連続的に計測される必要はなく、たとえば所定の時間間隔をもって断続的に計測されるようにしても良い。
また、重心位置の変位方向と同じ方向で足圧作用領域の変化量を求めるに際しては、予め重心位置の変位方向を被検者に指定しておくと共に、特定された当該変位方向における重心位置の変位量と足圧作用領域の変化量を測定することも可能である。更にまた、足圧作用領域の変化量として、特定された当該変位方向で感圧検出された足圧の両端部間の距離を基準面積である基準距離とみなすと共に、当該変位方向で感圧検出される足圧の両端部間の距離の変化量を面積変化量である距離変化量とみなし、基準距離に対する距離変化量の割合で足裏の部分的な浮き上がりを評価することも可能である。
また、前記実施形態では、基準重心位置からの重心位置の変位量が、足圧作用領域の全幅寸法に対する寸法割合として求められているが、たとえば、重心位置の実際の変位量が絶対値として求められても良い。なお、前記重心変位量演算装置が、重心変位方向における前記足圧作用領域の全幅寸法を、前記足圧領域検出装置で検出される該足圧作用領域の検出信号に基づいて求めると共に、該足圧作用領域の全幅寸法に対する前記基準重心位置からの前記重心位置の変位量の幅方向寸法割合をもって、該重心位置の変位量を求める構成は、必ずしも本発明の好適な態様としてのみ採用されるものではなく、本発明とは別の発明としても成立し得るものである。
また、表示装置は、計測結果をリアルタイムで処理して表示するものであっても良いし、計測データを記憶しておいて、計測完了後に実測結果として表示するものであっても良い。