以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1には、本発明の第一の実施形態としてのバランス能力測定装置10が示されている。このバランス能力測定装置10は、測定装置本体12に表示装置としてのパーソナルコンピュータ14が接続された構造を有しており、測定装置本体12は、図2,3に示すように、上カバー16と下カバー18の間に圧力分布センサ20が収容された構造を有している。なお、以下の説明において、特に説明がない限り、前後方向とは図1中の上下方向を、左右方向とは図1中の左右方向を言う。
より詳細には、上カバー16は、窓部22を備えた略矩形枠状を呈しており、硬質の合成樹脂などで形成されている。また、本実施形態では、上カバー16における窓部22の周囲は、正面部分(後部)の高さが他の部分よりも低くなっており、被検者が躓くことなく測定面に載り易くされている。
下カバー18は、略矩形板状とされており、繊維補強された高剛性の合成樹脂材や金属材、或いは弾性体などで形成されている。本実施形態では、下カバー18がステンレス製の金属板で構成されており、大きな変形剛性を設定されている。また、図2に示すように、下カバー18の下面には、緩衝ゴム層24が固着されている。これにより、測定装置本体12が床面に載置される際に、硬質な下カバー18と床面との間に緩衝ゴム層24が介在することから、床面が傷付くのを防ぐことができると共に、床面に置く際の音も低減乃至は回避される。なお、下カバー18を導電性の金属材で形成して、アース配線を接続して接地することで、後述する圧力分布センサ20の検出精度を高めることもでき得る。
そして、上カバー16と下カバー18は、上下に重ね合わされて、固定ボルト26によって外周部分の複数箇所で相互に固定されており、それら上カバー16と下カバー18の間に空間が形成されている。
この上カバー16と下カバー18の間の空間には、圧力分布センサ20が配設されている。圧力分布センサ20は、図4に示すように、誘電体層28の一方の面にエラストマシート30aが重ね合わされると共に、誘電体層28の他方の面にエラストマシート30bが重ね合わされた構造を、有している。
誘電体層28は、ゴムや樹脂などの電気絶縁性エラストマで形成されて、板状乃至はシート状とされており、弾性乃至は可撓性を有していると共に、伸縮変形可能とされて、特に厚さ方向で容易に変形可能とされている。なお、誘電体層28の形成材料としては、例えば、シリコーンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル−ポリ塩化ビニリデン共重合体、エチレン−酢酸共重合体などが、好適に採用される。更に、誘電体層28は発泡体であっても良く、必要な誘電率と柔軟性が確保されれば、その発泡体は、必ずしも独立気泡によって均質な相を呈するものに限定されず、例えば連続気泡が形成されるなどして不均一な相を呈していても良い。また、誘電体層28の厚さや形成材料などは、後述する圧力検出部38において求められる比誘電率や柔軟性に応じて適宜に設定される。
エラストマシート30aとエラストマシート30bは、互いに略同じ材料および形状で形成されており、ゴム弾性体や高分子エラストマで形成された電気絶縁性のシートであって、本実施形態では平面視で略矩形とされている。さらに、エラストマシート30a,30bには、周上の一辺において外周へ突出する一組の接続片32,33が並んで設けられている。なお、エラストマシート30a,30bの形成材料は、特に限定されるものはないが、たとえばシリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、ポリエステル樹脂、ポリエーテルウレタン樹脂、ポリカーボネートウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース、変性セルロース類などが、好適に採用される。また、本実施形態のエラストマシート30a,30bは、理解を容易とするために透明乃至は半透明とされているが、不透明でも良い。
さらに、エラストマシート30aの下面に電極34aが形成されていると共に、エラストマシート30bの上面に電極34bが形成されている。電極34a,34bは、何れも導電性の金属や導電フィラーを混合したゴム及びエラストマなどで形成されており、直線的に延びる薄肉帯状とされている。また、電極34a,34bは、各32本が並列的に並んで形成されていると共に、それら電極34aと電極34bが互いに傾斜して延びており、本実施形態では互いに略直交する方向へ延びている。なお、以下の説明において、エラストマシート30a,30b上の直交二軸のx−y平面において、y軸と略平行に前後へ延びる電極34aを左から順に01x,02x,03x・・・,32xと称すると共に、x軸と略平行に左右へ延びる電極34bを下から順に01y,02y,03y,・・・,32yと称する。
さらにまた、エラストマシート30a,30bは、電極34a,34bの配設領域(感圧部42)よりも外側まで広がっており、エラストマシート30a,30bの電極34a,34bよりも外側には、それぞれ配線36a,36bが導電性材料によって印刷されている。そして、配線36aが電極34aの一端から一方の接続片32まで延びていると共に、配線36bが電極34bの一端から他方の接続片33まで延びている。なお、配線36a,36bは、例えば、エラストマシート30a,30bの表面に導電性インクによってプリントされた配線パターンとして得ることができる。更に、電極34a,34bは、導電性エラストマで形成された導電性インクによって、配線36a,36bと同様にエラストマシート30a,30bに印刷して形成することもできる。なお、図4では、配線36a,36bの図示を省略した。
かくの如き構造とされたエラストマシート30aとエラストマシート30bが、誘電体層28の上下各一方側から重ね合わされており、電極34a,34bの配設領域および配線36a,36bの形成領域を外れた外周端部において、接着剤や両面テープなどによって相互に固着されている。これにより、図1に示すように、エラストマシート30aの電極34aとエラストマシート30bの電極34bとが、誘電体層28を挟んで互いに対向するように交差して配置されている。そして、圧力分布センサ20において、電極34aと電極34bの誘電体層28を介した交差部分でコンデンサが構成されており、かかるコンデンサによって圧力検出部38が構成されている。なお、図1では、分かり易さのために、圧力分布センサ20、電極34a,34b、配線36a,36b、圧力検出部38が、何れも透視状態で図示されている。
これら電極34a,34bの交差部分(圧力検出部38)では、誘電体層28とエラストマシート30a,30bの積層方向へ圧力が加わると、誘電体層28が変形して電極34a,34b間の距離が短くなるので、該当部分の静電容量が変化する。それ故、電気的な制御装置からなるセンサコントローラ40を用いて、各圧力検出部38における静電容量の変化を検知することで、各圧力検出部38に及ぼされた圧力を検出することが可能とされて、感圧部42が構成されている。即ち、電極34a,34bの各交差部分(圧力検出部38)が、静電容量型の圧力検出素子(セル)として機能し得るのである。また、本実施形態の圧力分布センサ20は、測定面に作用する圧力の分布を検出するセンサとしての機能に加えて、測定面に作用する荷重を検出する荷重センサとしての機能も併せて備えている。
なお、本実施形態の感圧部42は、1024個の圧力検出部38が32列×32行で二次元的に配置された静電容量型のセンサとされている。また、感圧部42の面積が人の足裏の面積よりも大きくされており、感圧部42上に立つことが可能とされている。なお、図1では、分かり易さのために、圧力分布センサ20を細線で仮想的に図示した。
そして、圧力分布センサ20は、上カバー16と下カバー18の間に配設されて、感圧部42を外れた外周部分が上下のカバー16,18によって挟持されていると共に、感圧部42が上カバー16の窓部22を通じて上方に露出している。なお、窓部22において露出する感圧部42の上面によって測定面が構成されており、測定面はゴムやエラストマで形成された可撓性の保護シート44によって覆われて保護されていることが望ましい(図2参照)。
また、配線36aがセンサコントローラ40のコネクタ46aに着脱可能に接続されていると共に、配線36bがセンサコントローラ40のコネクタ46bに着脱可能に接続されており、感圧部42を備えた圧力分布センサ20がセンサコントローラ40に対して着脱可能に接続されている。
センサコントローラ40は、例えば、図1に示されているように、各電極34a,34bに対してコネクタ46a,46bを介してそれぞれ接続されており、電源装置としての作動電圧給電用の電源回路48と、計測手段としての静電容量検知用の検出回路50とを、備えている。電源回路48は、電極34aの01x〜32xと電極34bの01y〜32yに対する給電を選択的に行うようになっており、中央演算装置(CPU)52による制御下で、コンデンサを構成する1024箇所の各交差部分(圧力検出部38)に対して、計測用電圧として周期的な波形電圧を走査的に印加する。
そして、かかる電圧作用下で検出される各圧力検出部38の静電容量の検出信号が、順次に検出回路50で検出され、その検出値がRAM(random access memory)54に記憶される。なお、検出回路50による静電容量の検出は、例えば電流値から求められるインピーダンスを用いて静電容量値を求めることによって行われる。
また、ROM(read only memory)56には、電極34a,34bの交差部分で構成されたコンデンサの特性データが記憶されており、この特性データに基づいて、CPU52により、配線抵抗の影響を排除して求められた静電容量の検出値から電極34a,34bの交差部分に及ぼされた外力である圧迫力が求められる。なお、図1では、分かり易さのために、電源回路48,検出回路50,CPU52,RAM54,ROM56を備えるセンサコントローラ40を、機能ブロックとして簡略に図示した。
従って、コンデンサを構成する電極34a,34bの交差部分で構成された1024箇所の圧力検出部38における静電容量をそれぞれスキャンすることにより、各圧力検出部38に作用する圧力が各別に検出可能とされていると共に、全体として二次元的な圧力分布が検出可能とされている。
さらに、本実施形態では、センサコントローラ40が表示装置としてのパーソナルコンピュータ14に有線乃至は無線で接続されており、計測結果のデータがセンサコントローラ40からパーソナルコンピュータ14に送信されて、パーソナルコンピュータ14の画面に表示されるようになっている。また、パーソナルコンピュータ14は、静止画や動画、文字、音声などによって使用者にバランス能力測定の方法を指示するための装置としても機能するようになっており、使用者はパーソナルコンピュータ14の指示にしたがうことでバランス能力の測定を簡単に実施することができる。
かくの如き構造とされたバランス能力測定装置10は、身体のバランス能力を測定して評価するために用いられる。以下に、バランス能力の測定方法及びその評価方法について、具体例に基づいて説明する。
すなわち、バランス能力測定装置10を使用してバランス能力を測定しようとする者(以下、被検者)は、先ず、測定装置本体12の図示しない電源スイッチをOFFからONに切り替えて、測定装置本体12の圧力分布センサ20とセンサコントローラ40を測定可能なスタンバイ状態に移行させると共に、パーソナルコンピュータ14を起動させて指示にしたがって年齢や性別を入力する。このように被検者の年齢や性別を入力することにより、被検者のバランス能力の測定結果を同じ性別および年代における平均値に対して評価することも可能となる。
次に、被検者は、測定装置本体12の感圧部42に両足を接地した直立状態(初期立位)で静止する。これにより、センサコントローラ40は、圧力検出部38の検出結果に基づいて被検者の初期立位での足圧分布(図5参照)を計測する。さらに、足圧領域検出装置としてのセンサコントローラ40は、閾値以上の足圧を検出した圧力検出部38の検出信号と閾値未満の足圧を検出した圧力検出部38の検出信号とを二値化することにより、それら圧力検出部38の検出信号に基づいて、図6中でグレーに着色された初期立位での足圧作用領域Pを検出する。なお、被検者は、たとえばパーソナルコンピュータ14の表示や音声などで指示されることにより、感圧部42上に足を揃えた自然な直立姿勢で立つことで初期立位での計測を行う。このような被検者の足を揃えた自然な直立姿勢では、一般的に、左右の足が隙間をもって相互に離れて位置すると共に、左右の足の左右外端間の距離が被検者の肩幅よりも狭くなる一方、被検者の左右の足の前後少なくとも一方の端が相互に略同じ前後位置となる。
また、感圧部42上で足圧作用領域Pが検出されることにより、足圧作用領域Pの前後端および左右端に位置する圧力検出部38がセンサコントローラ40によって特定されて、感圧部42における足圧作用領域Pの前後方向の基準幅(初期立位での前後足長さ)寸法Lと左右方向の基準幅(初期立位での左右立ち幅)寸法Wが、足圧作用領域Pの検出信号に基づいてそれぞれ求められる。これにより、圧力分布センサ20の検出信号に基づいて初期立位での足圧作用領域Pの左右方向および前後方向の幅寸法W,Lを基準幅寸法に設定する基準幅寸法設定装置が、センサコントローラ40によって構成されている。図6に示す本実施形態の初期立位では、電極34aを左右の軸値、電極34bを上下の軸値とする二次元直交座標において、圧力作用領域Pの前端の座標が27y、後端が04y、左端が04x、右端が26xとなっており、圧力検出部38の数で示すと、足圧作用領域Pの前後基準幅Lが23、左右基準幅Wが22となっている。なお、図中の二次元直交座標には、理解を容易にするために、縦横の長さを基準幅寸法とされた長方形が太線で図示されている。
さらに、重心基点位置演算装置としてのセンサコントローラ40は、初期立位での足圧作用領域Pの前後基準幅Lおよび左右基準幅Wの中央を算出して、算出された中央位置を重心基点位置Aに設定する。すなわち、上記二次元直交座標において、初期立位における圧力作用領域Pの左端の座標をx1、右端の座標をx2、前端の座標をy1、後端の座標をy2とするときに、重心基点位置Aの座標(X0,Y0)は、(X0,Y0)=(x1+(x2−x1)/2,y1+(y2−y1)/2)と算出される。本実施形態における重心基点位置Aの座標は、(4x+(26x−4x)/2,4y+(27y−4y)/2)=(15x,15.5y)と算出される。なお、図6において、重心基点位置Aは黒丸で図示されていると共に、感圧部42の平面中心がOとして示されている。
なお、重心基点位置Aは、足圧作用領域Pに基づいて求められる位置であれば、必ずしも足圧作用領域Pの中央には限定されず、たとえば、足圧作用領域Pの後端と左端の交点であっても良い。すなわち、センサコントローラ40が足圧作用領域Pの前後端と左右端に位置する圧力検出部38を特定すると共に、後端に位置する圧力検出部38を通る左右直線と左端に位置する圧力検出部38を通る前後直線との交点を求めることにより、足圧作用領域Pの後端かつ左端となる点を重心基点位置Aとするようにもできる。
さらに、重心基点位置Aは、必ずしも初期立位での足圧作用領域Pによって定まるものに限定されない。具体的には、たとえば、初期立位および前後左右の各方向へ体軸を最大限まで傾動させた各測定姿勢において、前後左右の各方向で最も外方で閾値以上の足圧を検出する圧力検出部38を特定して、それら圧力検出部38の位置に基づいて足裏の感圧部42に対する最大接地可能領域を特定する。そして、特定された最大接地可能領域の中央点或いは最後端かつ最左端の点などを求めて、重心基点位置Aとすることができる。なお、たとえば、測定終了後に記憶した測定結果をパーソナルコンピュータ14に表示させる場合には、初期立位と前後左右の各方向へ体軸を傾斜させたクロステストの各測定姿勢で重心位置Gを測定しながら、閾値以上の足圧が作用した圧力検出部38の前後左右端を検出することにより、重心位置の測定と重心基点位置Aの設定を一度の測定で同時に行うことができる。また、たとえば、重心位置Gの変位量を求めるために初期立位と前後左右の各方向へ体軸を傾斜させたクロステストの各測定姿勢をとる前に、重心基点位置Aを設定するために予め各測定姿勢をとって、初期立位と前後左右の各方向へ体軸を傾斜させた姿勢での測定をそれぞれ二度行うことにより、重心位置の変位量をリアルタイムで表示することもできる。
また、重心変位量演算装置としてのセンサコントローラ40は、荷重センサとしての圧力分布センサ20が検出した圧力の分布に基づいて感圧部42上での重心位置Gを求めると共に、重心基点位置Aから重心位置Gまでの相対的な距離を、前後方向と左右方向でそれぞれ算出する。なお、図中において重心位置Gは、白丸で示されている。
さらに、センサコントローラ40は、初期立位の足圧分布において求められた左右方向と前後方向の各基準幅寸法(初期立位において検出された立ち幅の左右端の距離Wと足の前後端の距離L)に対して、重心基点位置Aから重心位置Gまでの左右方向の距離dxと前後方向の距離dyの寸法割合をそれぞれ求める。すなわち、センサコントローラ40は、重心基点位置Aから重心位置Gまでの距離として求められた左右と前後の各重心位置変位量(dx,dy)に基づいて、足圧作用領域Pの左右基準幅Wおよび前後基準幅Lに対する重心位置変位量の各方向での寸法割合((dx/W)×100,(dy/L)×100)を算出する。なお、センサコントローラ40は、圧力分布センサ20の圧力検出部38の検出結果に基づいて重心位置Gを検出する重心検出装置としての機能を有すると共に、被検者の重心位置Gの検出結果に基づいて重心位置Gの変位量を算出する重心変位量演算装置としての機能も有する。
本実施形態では、被検者の足の後端を前後方向で距離を表示する際の原点(距離0%)とし、原点から足の前端までの距離を前後距離100%に設定する一方、左足の左端を左右方向で距離を表示する際の原点(距離0%)とし、原点から右足の右端までの距離を左右距離100%に設定することで、重心位置Gの変位量が初期立位での左右立ち幅Wおよび前後足長に対する寸法割合として示されるようになっている。
また、本実施形態のセンサコントローラ40は、初期立位において閾値以上の圧力を検出した圧力検出部38(図6中でグレーに着色された圧力検出部38)の数を検出し、検出結果を初期立位での接地面積の大きさ(基準面積)に設定する。なお、基準面積の設定方法は、あくまでも例示であって、たとえば、初期立位および体軸を前後左右へ傾動させた各測定姿勢において、閾値以上の圧力を同時に検出した圧力検出部38の最大数や、閾値以上の圧力を一度でも検出した圧力検出部38の数を基準面積とすることなどもできる。なお、各測定姿勢において同時に或いは一度でも閾値以上の圧力を検出する圧力検出部38の最大数として基準面積を設定する場合には、各測定姿勢での測定を二度行うことにより、一度目の測定によって基準面積を予め設定して、二度目の測定によって測定される足裏の接地面積の変化量などを、測定結果をパーソナルコンピュータ14にリアルタイムに表示することもできる。もっとも、測定結果を測定終了後にパーソナルコンピュータ14に表示させる場合には、初期立位と前後左右の各方向へ体軸を傾斜させたクロステストの各測定姿勢で足裏の接地面積を測定しながら、基準面積を検出することにより、接地面積の測定と基準面積の設定を一度の測定で同時に行うことができる。
初期立位での計測が完了すると、パーソナルコンピュータ14は、被検者に足裏を接地させたままで体軸を前傾させるように指示する。被検者に対する指示の仕方は特に限定されるものではなく、例えば、パーソナルコンピュータ14の画面に文字や画像(動画を含む)などを表示して指示したり、音声によって指示したりすることができる。本実施形態では、パーソナルコンピュータ14の画面に文字と画像を表示すると共に、パーソナルコンピュータ14のスピーカーから音声を発することにより、被検者に対して姿勢変化を指示するようになっている。即ち、パーソナルコンピュータ14の画面に「上体を前へ3回傾けて戻しましょう」などの文字を表示すると共に、表示された文字を音声によって読み上げる一方、パーソナルコンピュータ14の画面に図7の画像を表示して、文字と画像によって被検者に対して視覚的に姿勢変化を指示する。
図7の画像は、側面視の被検者に対応する人形画像としての被検者イラスト57aと、被検者イラスト57aの重心に相当する位置を示す重心点58と、重心点58から鉛直下向きに相当する方向へ延びる鉛直基準線としての鉛直基準矢印59とを、備えている。そして、自然な立位の被検者を示す図7(a)の被検者イラスト57aと、体軸を前傾させた立位の被検者を示す図7(b)の被検者イラスト57aとを選択的に表示することによって、体軸を前に倒す姿勢変化を被検者に促すようになっている。
さらに、図7(a)の被検者イラスト57aと図7(b)の被検者イラスト57aの姿勢の変化が、鉛直基準矢印59を基準とすることで把握し易くなっていると共に、被検者イラスト57aの姿勢変化に伴って重心点58の位置が変化して、重心点58から延びる鉛直基準矢印59が変位することにより、姿勢変化によって求められている被検者の重心の移動方向も把握されるようになっている。
なお、図7(a)の被検者イラスト57aと図7(b)の被検者イラスト57aを順に静止画像として表示しても良いし、図7(a)の被検者イラスト57aから図7(b)の被検者イラスト57aまで連続的乃至は断続的に表示する動画(アニメーション)として表示することによって、被検者が動き方を理解し易くなるようにもできる。また、人形画像は、被検者に対応する姿勢の人物を写した写真であっても良い。更に、鉛直基準線は、必ずしも重力作用方向を示す矢印に限定されるものではなく、例えば鉛直相当方向に延びる直線であっても良い。更にまた、重心点58は省略され得る。
そして、パーソナルコンピュータ14の画面に表示された文字および画像による視覚ガイダンスと、パーソナルコンピュータ14のスピーカーから発せられる音声による聴覚ガイダンスとに従って、被検者が体軸を前傾させると、図8に示すように、足裏の前部(爪先)に大きな圧力が作用して、前部の接地面積が大きくなる一方、足裏の後部(踵)に作用する圧力が低下して、後部の接地面積が小さくなる。
その結果、計測される重心位置Gが初期立位での重心位置に対して前方へ移動することから、センサコントローラ40は、かかる重心位置Gの移動を継続的に計測することで、体軸の前傾による重心位置Gの変位量を求める。この前傾姿勢での重心位置Gの変位量は、重心基点位置Aからの相対的な変位量(重心基点位置Aから重心位置Gまでの直線距離)として求められると共に、足の基準幅寸法に対する寸法割合として求められるようになっている。
さらに、本実施形態において、重心変位量演算装置としてのセンサコントローラ40は、微小な時間間隔で実質的に継続する重心位置Gの検出結果に基づいて、重心位置Gの変位量を継続的に求めるようになっている。もっとも、重心位置Gの変位量は、最大値だけを算出して記憶するようにしても良く、必ずしも測定結果を継続して得る必要はない。
また、バランス能力測定装置10では、足圧作用領域変化量演算装置としてのセンサコントローラ40が、圧力分布(足圧分布)の継続的な検出結果に基づいて足圧分布の変化量を求めることにより、被検者が踵を接地させた状態で体軸を前傾させている場合と、踵を浮かせた爪先立ち状態で体軸を前傾させている場合とを、判別することが可能とされている。すなわち、踵を浮かせた爪先立ち状態では足裏の接地面積(足圧作用領域P)がより小さくなることから、足裏の接地面積を前傾姿勢において圧力を検出した圧力検出部38の数として計測することにより、足圧分布の変化量を接地面積の基準面積からの変化量として測定して、爪先立ち状態への移行の有無を把握することができる。なお、足圧作用領域Pは、体軸の傾動による重心位置Gの変位に伴って、重心位置Gの変位方向と同じ方向で変化することから、足圧作用領域P全体の変化量を計測することで、実質的に重心位置Gの変位方向と同じ方向での足圧作用領域Pの変化量を計測することになる。
具体的には、たとえば、図9に示すように、圧力を検出した圧力検出部38(図9中、グレーに着色された圧力検出部38)の数を前傾姿勢での接地面積の大きさとして計測し、初期立位での接地面積の大きさ(基準面積)に対する比率を算出する。このように、本実施形態に係るバランス能力測定装置10では、重心位置Gの変位量を、重心位置Gの変位方向と同じ方向での足圧分布の変化量と共に測定する。なお、センサコントローラ40は、感圧部42における圧力作用領域の変化量を算出する足圧作用領域変化量演算装置としても機能するようになっている。
そして、体軸を前傾させた姿勢での接地面積が基準面積に対する比率において予め設定された閾値よりも小さい場合には、被検者が爪先立ち姿勢であると判定する。これにより、たとえば、爪先立ち姿勢での重心位置Gの変位量の計測結果を無効としたり、被検者に対して足裏全体を接地するように音や光、画面表示などの報知手段によって促したりすることで、被検者のバランス能力をより正確に評価することができる。
同様にして、図10,11に示すように体軸を後傾させた姿勢と、図12,13に示すように体軸を右傾させた姿勢についても、足裏の接地状態を接地面積の変化量に基づいて確認しながら、重心位置Gの変位量を順に計測する。体軸を後傾させた姿勢では、踵側の圧力が大きくなるとともに爪先側の圧力が小さくなって、爪先の接地面積が小さくなると共に、重心位置Gが後方へ変位する一方、体軸を右傾させた姿勢では、右足の圧力が大きくなるとともに左足の圧力が小さくなって、左足の接地面積が小さくなると共に、重心位置Gが右方へ変位する。各姿勢での計測は、パーソナルコンピュータ14によって姿勢を指示された被検者が、感圧部42上で所定時間に亘って静止することにより完了するようにしても良いし、重心位置Gが、指示された測定姿勢によって移動すべき方向へ所定の回数だけ移動したことを検出することにより完了するようにしても良い。なお、図6,9,11,13においてグレーで着色された圧力検出部38が、各測定姿勢での検出結果における足圧作用領域Pを示している。
上記のように体軸を後傾させた姿勢での測定においても、体軸を前傾させた姿勢での測定と同様に、パーソナルコンピュータ14の画面などに表示される文字および画像と、パーソナルコンピュータ14のスピーカーなどから発せられる「上体を後ろへ3回傾けて戻しましょう」などの音声ガイダンスとによって、被検者に体軸が後ろへ傾くような姿勢変化を指示することができる。なお、後傾姿勢を指示する際には、前傾姿勢における図7(b)に相当する姿勢変化後の被検者イラスト57aが、被検者の後傾姿勢に対応するものとされて、重心点58と鉛直基準矢印59が自然な立位を示す図7(a)よりも後方へ変位する。
さらに、体軸を右傾させた姿勢での測定においても、体軸を前傾させた姿勢での測定と同様に、パーソナルコンピュータ14の画面などに表示される文字および画像と、パーソナルコンピュータ14のスピーカーなどから発せられる「上体を右へ3回傾けて戻しましょう」などの音声ガイダンスとによって、被検者に体軸が右へ傾くような姿勢変化を指示することができる。右傾姿勢を指示する際には、図14(a)のような自然な立位の被検者の正面視に対応する被検者イラスト57bとそれに対応する重心点58および鉛直基準矢印59が示された画像と、図14(b)のような体軸を右傾させた立位の被検者に対応する被検者イラスト57bとそれに対応する重心点58および鉛直基準矢印59が示された画像とを、選択的に表示する。なお、図14(a)の画像と図14(b)の画像は、静止画として順に表示されるようにしても良いし、姿勢変化を連続的に示す動画の最初に図14(a)の画像が表示されるとともに最後に図14(b)の画像が表示されるようにしても良い。
さらに、体軸を左傾させた場合の足圧分布については、一般的に、図12,13に示す体軸を右傾させた姿勢での足圧分布に対して略左右対称の結果となることから、ここでは図示を省略したが、左傾時についても重心位置Gの変位量と足圧作用領域Pの変化量を同様に計測する。また、左右何れかの足の運動機能に障害がある場合などには、体軸の右傾時と左傾時との間で足圧分布に顕著な違いが生じることから、そのような左右のバランスの確認をするためにも、体軸を左右両側へ傾斜させた場合について計測を行うことが望ましい。体軸を左傾させる姿勢での測定においても、文字や画像などの視覚ガイダンスと、「上体を左へ3回傾けて戻しましょう」などの音声による聴覚ガイダンスとによって、求める姿勢を被検者に分かり易く伝えることができる。視覚ガイダンスの画像としては、右傾姿勢での測定時に表示される図14の画像を左右反転させたものが採用され得る。
なお、基準面積が最大面積(同時に又は一度でも閾値以上の圧力を検出する圧力検出部38の最大数に基づいて求められる面積)に基づいてセンサコントローラ40で設定される場合には、基準面積の設定時にも図7や図14に示すような画像を表示して、被検者にクロステストなどの動き方(姿勢の変化)を指示することもできる。更に、基準面積の設定時にも、文字や音声によるガイダンスを画像に加えて或いは替えて採用することができる。本実施形態では、視覚的なガイダンスと聴覚的なガイダンスの両方によって動き方を指示する場合について説明したが、例えば視覚的なガイダンスと聴覚的なガイダンスの何れか一方によって指示するようにしても良いことは言うまでもない。
そして、体軸を前後左右に傾斜させた姿勢についてそれぞれ計測が完了すると、計測結果である重心位置Gの変位量と足圧作用領域Pの変化量が、図15のような態様で、表示装置としてのパーソナルコンピュータ14の画面に表示される。なお、計測結果の表示方法として、図15に示すような画面表示を例示したが、たとえば、音声による評価結果の読み上げや、計測結果に基づいたバランス能力の5段階評価の表示などが、図15の画面表示と併せて或いはそれとは別に単独で採用され得る。
すなわち、図15では、被検者が体軸を前後に傾斜させた場合の重心位置Gの前後方向への変位量が、足裏の接地面積の基準面積に対する変化量との相関を示す前後グラフ60として示されている。これによれば、前後傾斜において、被検者の重心位置Gが前後外側へ変位するにしたがって、足裏の接地面積の基準面積に対する割合が小さくなっていることが簡単に把握される。また、足裏の接地面積の基準面積に対する割合に閾値を設定して、閾値よりも大きな接地面積が確保されている場合にのみ重心位置Gの検出結果を有効とすれば、足裏の接地面積の変化がバランス能力の評価に影響し難くなって、バランス能力を適正に評価することができる。
また、パーソナルコンピュータ14の画面における前後グラフ60の下方には、足の側面を示す側面イラスト62が示されている。この側面イラスト62は、パーソナルコンピュータ14の画面の左右において、踵側端が前後グラフ60の左端と同じ位置に配置されていると共に、爪先側端が前後グラフ60の右端と同じ位置に配置されており、前後グラフ60の横軸が足の前後長さLに対応していることが簡単に理解されるようになっている。さらに、前後グラフ60には踵からの前後距離が足の前後長さLに対して20%の測定下限と80%の測定上限とにそれぞれ破線が表示されており、この破線が足の側面イラスト62まで達するように延びていることから、被検者の重心位置Gが足の前後方向においてどのような範囲で変化したのかを、イラストによって簡単に把握できるようになっている。また、本実施形態では、前後傾斜時の重心位置Gを示す足の側面イラスト62において、測定下限から測定上限までの領域が他の領域と色分けされており、色彩の違いによって視覚的に把握できるようになっている。
また、図15では、体軸を左右に傾斜させた場合の重心位置Gの左右方向への変位量も、足裏の接地面積の基準面積に対する変化量との相関を示す左右グラフ64として示されている。これによれば、左右傾斜において、重心位置Gが左右外側へ変位するにしたがって、足裏の接地面積の基準面積に対する割合が小さくなっていることが、直感的に把握可能となっている。
また、パーソナルコンピュータ14の画面における左右グラフ64の下方には、両足裏を平面的に示す平面イラスト66が示されている。この平面イラスト66は、パーソナルコンピュータ14の画面の左右において、左足の左端が左右グラフ64の左端と同じ位置に配置されていると共に、右足の右端が左右グラフ64の右端と同じ位置に配置されており、左右グラフ64の横軸が立ち幅Wに対応していることが簡単に理解されるようになっている。さらに、左右グラフ64には左足左端からの左右距離が足の立ち幅Wに対して20%の測定下限と80%の測定上限とにそれぞれ破線が表示されており、この破線が足の平面イラスト66まで達するように延びていることから、被検者の重心位置Gが足の左右方向においてどのような範囲で変化したのかを、イラストによって簡単に把握できるようになっている。また、本実施形態では、左右傾斜時の重心位置Gを示す足の平面イラスト66において、測定下限から測定上限までの領域が他の領域と色分けされており、色彩の違いによって視覚的に把握できるようになっている。
さらに、本実施形態では、左右両足の平均値として、重心位置Gの変位量と足圧分布(接地面積)の変化量を測定すると共に、左右それぞれの足についても、重心位置Gの変位量と足圧分布の変化量を各別に測定するようになっており、左右のバランスなども容易に把握できるようになっている。本実施形態では、左右両足の平均値の計測結果に加えて、左右各足ごとの計測結果も表示されているが、たとえば、左右何れかの足についてのみ計測して、片足の計測結果だけを示すようにもできる。なお、図15の前後および左右のグラフ60,64では、左右両足の平均値の計測結果が「全体」として示されていると共に、左右各足の計測結果が「左」および「右」として示されている。
そして、被検者は、かかる計測結果の表示に基づいて、自己のバランス能力を評価することができる。すなわち、図15にも示すように、たとえば、これらの計測結果において、重心位置Gの変位幅が足の前後長さや左右立ち幅(基準幅寸法)に対して50%以上である場合にバランス能力が基準値に対して普通以上であると評価する。一方、50〜30%である場合には基準値に対してやや劣ると評価すると共に、30〜15%である場合には基準値から劣っていると評価し、さらに、15%以下である場合には要注意であると評価して、被検者に改善の必要性とその程度を認識させることができる。もっとも、このような評価基準は、必要に応じて適宜に変更設定されるものであり、具体的には、高齢者や傷病者などのバランス能力を評価する場合と、身体能力に優れたスポーツ選手などのバランス能力を評価する場合とでは、評価基準の数値が異なることは言うまでもない。
本実施形態の表示装置では、重心位置Gの変位量と足裏の接地割合の変化量とを表示するようになっているが、重心位置Gの変位速度と変位加速度との少なくとも一方を求める重心変位率演算装置を設けて、重心変位率演算装置が求めた重心位置Gの変位速度や変位加速度を併せて表示するようにしても良い。なお、重心位置Gの変位速度や変位加速度は、重心変位に伴って変化するが、例えば初期位置(重心基点位置A)から最大の重心変位点までを継続的に測定して記憶や出力するほか、最大値や平均値等を測定して記憶や出力するようにしても良い。また、重心位置Gの変位速度と変位加速度は、重心位置Gの変位量の時間微分によって算出できることから、重心変位率演算装置は、たとえば本実施形態においてセンサコントローラ40によって構成され得る。
このように重心位置Gの変位速度や変位加速度を測定して表示すれば、重心位置Gの変位速度や変位加速度を、身体の能力や状態の判定資料の一つとすることもできる。すなわち、重心位置Gの変位速度や変位加速度は、加齢に伴って低下する傾向があるとともに障害の程度に応じても変化する場合があり、日々の体調の把握や管理にも参照することができる。そして、重心位置Gの変位速度や変位加速度を重心変位量と併せて参照することで、身体の能力や状態の判定をより効果的に行うことも可能になる。
ところで、足裏を測定面に正しく接地させながら体軸を傾動させると、重心が変位可能な領域は、前後および左右の各方向において、いずれも足圧作用領域Pの基準幅寸法よりも狭くなることから、重心検出装置としてのセンサコントローラ40による重心位置の検出範囲を予め当該範囲に限定しておくことにより、演算処理の容易化やそれに伴う装置の小型化、計測結果の信頼性の向上などが図られ得る。具体的には、足裏を正しく接地させながら体軸を前後へ動揺させると、一般的に重心が位置し得る前後範囲は、足の前後長さ(前後の基準幅寸法)に対して15〜85%の範囲となり、かかる範囲内での測定によって一般的な健常の程度を判定することも可能である。同様に、体軸を左右へ動揺させる場合にも、一般的に重心が位置し得る左右範囲は、左右立ち幅(左右の基準幅寸法)に対して20〜80%の範囲となることから、当該範囲でのみ測定を行っても良い。なお、重心位置Gの前後方向での測定範囲を足の前後長さに対して20〜80%に限定したり、重心位置Gの左右方向での測定範囲を足の左右立ち幅に対して30〜70%に限定したりすれば、演算処理の負荷低減や装置の小型化などを一層有利に実現することができ得る。本実施形態では、図15に破線で示すように、足の前後長さLおよび立ち幅Wに対して20〜80%の範囲における重心位置Gの変位量を、有効な計測結果としている。
また、計測結果は、パーソナルコンピュータ14に内蔵された記憶装置やその他の記憶装置に保存することも可能であるし、図示しないプリンタによって図15に示すような計測結果を印刷することも可能である。また、計測結果の保存が不要であれば、計測結果を破棄して次の計測を行う待機状態に移行することもできる。
このような本実施形態に従う構造とされたバランス能力測定装置10では、初期立位における足圧作用領域Pの左右基準幅寸法である幅寸法Wと前後基準幅寸法である足長さ寸法Lを求めて、重心位置Gの変位量をそれら左右幅寸法Wと前後長さ寸法Lに対する寸法割合として求める。これにより、重心位置Gの変位量の測定結果を、被検者の足の大きさ、ひいては被検者の身長などの体格を考慮したものとすることができて、測定結果からバランス能力を評価し易くすることができる。
すなわち、身長の低い被検者は、身長の高い被検者に比して、同等のバランス能力を備えていたとしても重心位置Gの変位量が小さくなることから、重心位置Gの変位量の計測結果を絶対値として比較すると小柄な被検者のバランス能力が過小評価されるおそれがある。ここにおいて、重心位置Gの変位量を体格と相関性を有する足の大きさや立ち幅などに対する相対値として測定することにより、測定結果に基づくバランス能力の評価において、体格差に起因する評価のばらつきを防いで、より正確な評価を簡単に行うことができる。
さらに、重心位置Gの変位量が予め設定された重心基点位置Aからの変位量として求められると共に、重心基点位置Aが圧力検出部38によって検出される足圧作用領域Pに基づいて決定されることから、感圧部42における被検者の立つ位置などによって計測結果に誤差が生じるのを防ぐことができて、バランス能力を安定して測定することができる。特に、重心基点位置Aが足圧作用領域Pの左右および前後の中央とされており、実質的に足の大きさに基づいて設定されることから、被検者の直立姿勢の変化による重心基点位置Aの変位も防止されて、測定の再現性がより高くなる。
すなわち、同じ被検者が感圧部42に複数回載ると、図6と図16のように、感圧部42上での立つ位置が変わる場合がある一方、初期立位での足圧作用領域Pの大きさは、被検者の足の大きさや自然な立位での立ち幅に略対応することから、被検者ごとに略一定になる。それ故、重心位置Gの変位量の基準となる重心基点位置Aが、足圧作用領域Pとは関係なく感圧部42の中心などに固定的に設定されていると、被検者の位置によって計測結果に誤差が生じる。ここにおいて、本実施形態のバランス能力測定装置10では、重心基点位置Aが初期立位の足圧作用領域Pに基づいて設定されることから、同じ被検者が何度も計測する場合に、被検者の立つ位置の違いによる計測結果の誤差が低減乃至は回避される。したがって、バランス能力測定装置10による被検者の計測結果を過去の計測結果と比較すれば、バランス能力の変化を精度良く評価することも可能となる。
また、被検者の姿勢変化時の重心位置Gの変位量だけでなく、足裏の接地面積の変化量も計測することから、被検者のバランス能力を、重心位置Gの変位量だけから評価する場合に比して、より正確に評価することができる。すなわち、体軸の傾動によって重心位置Gの移動が生ぜしめられる際に、足裏の接地面積を計測することで、足裏の全面を感圧部42に接地させた正しい計測姿勢で計測がされているかどうか、正しい計測姿勢をどの程度まで実現しているかを把握することができる。それ故、前傾時に踵が浮いたり、後傾時に爪先が浮いたり、左傾時および右傾時に片足立ちになったりすることで、バランス能力が実際よりも過大に評価されるのを防いで、実際のバランス能力をより正確に把握することが可能となる。
さらにまた、体軸傾動時の足裏接地面積の変化量は、面積の絶対値ではなく、初期立位での足裏接地面積(基準面積)に対する比として求められる。それ故、基準面積が小さい小柄な被検者と、基準面積が大きい大柄な被検者において、接地面積変化の計測結果に体格差による誤差が生じ難く、計測結果に基づいたバランス能力の評価を安定して行うことができる。
また、センサコントローラ40は、圧力分布センサ20の検出結果から左足の圧力作用領域(左足検出領域)と右足の圧力作用領域(右足検出領域)とを区別する左右区別装置としての機能を有しており、左足検出領域と右足検出領域のそれぞれに対して重心位置の変位量と圧力作用領域の変化量を各別に求めることができる。これによれば、左右の足の筋力などのバランスを確認することができて、たとえば、片足を負傷した場合のリハビリテーションなどにおいて左右の足のバランスから機能の回復度合いを確認することもできる。
また、図15に示すように、横軸が足後端又は足左端から重心位置Gまでの距離の足長L又は立ち幅Wに対する比、縦軸が足裏接地面積の基準面積に対する比とされたグラフエリアに、同時刻に計測された重心位置Gの変位量と接地面積Pの変化量が経時的に表示されるようになっている。このように、計測結果の表示画面において、重心位置Gの変位量と足圧作用領域Pの変化量が相互に関連した態様で表示されることから、重心位置Gの移動が適正な計測姿勢で行われたものであるか否かを容易に把握することができる。しかも、計測結果が所定の時間に亘る経時的な測定情報として直交二次元座標上の各軸値をもってグラフ表示されることにより、計測時間全体における重心位置Gの移動と計測姿勢の変化をグラフ形状などから簡単に把握することができる。
なお、図15に示す測定結果の表示画面は、あくまでも例示であって、他の表示態様も採用可能である。以下に、パーソナルコンピュータ14の画面に表示される測定結果の表示態様の幾つかを例示する。
先ず、図17には、測定結果の表示態様の一つとして、重心位置Gが体軸の傾動方向で最も外側まで変位した時の測定結果に基づく表示態様が示されている。
より詳細には、図17に示す表示画面の右上には、情報表示領域68が設けられている。この情報表示領域68には、被検者の情報として、被検者ごとに設定される認証情報としてのIDが5桁の数字として表示されていると共に、被検者の年齢と性別が表示されている。更に、情報表示領域68には測定を実施した日付が表示されており、画面に表示された測定結果がいつ測定されたものであるかを確認できるようになっている。なお、IDの桁数や形式は、特に限定されるものではなく、例えばアルファベットの組み合わせなどであっても良い。また、他者による測定結果へのアクセスを防ぐなどの目的で、情報表示領域68にIDが表示されないようにもできる。
また、図17に示す表示画面の中央には、重心軌跡表示領域70が配されている。重心軌跡表示領域70には、測定された被検者の足圧分布図71が色の違いによって圧力の大小を把握可能な態様で表示されており、重心軌跡表示領域70の中央が重心基点位置Aに対応している。なお、重心軌跡表示領域70には、測定中において検出された接地面積が最大になった際の圧力検出値に基づいて被検者の足圧分布図71が表示されていると共に、測定中に一度でも閾値以上の圧力を検出した圧力検出部38の範囲に基づいて最大接地可能領域に対応する重心軌跡表示領域70が設定されている。尤も、足圧分布図71は、例えば、測定時に各圧力検出部38が検出した最大検出値に基づいて表示されるなど、他の態様で表示されるようになっていても良い。
さらに、重心軌跡表示領域70は、中央の重心基点位置Aから前後左右端までがそれぞれ5等分されて20%ごとの目盛が表示されていると共に、被検者の重心変位の軌跡72が示されている。また、重心軌跡表示領域70には、重心基点位置Aを中心とする3重の同心円が描かれている。そして、被検者の重心変位の軌跡72の前後左右での各最外端が最外円(半径が最大の円)よりも外側に位置する場合に、被検者が20〜49歳相当のバランス能力を有することを示すようになっている。同様に、被検者の重心変位の軌跡72の前後左右での各最外端が、最外円と中間円の間に位置する場合に50〜64歳相当のバランス能力を、中間円と最内円(半径が最小の円)の間に位置する場合に65歳以上相当のバランス能力を、最内円よりも内側に位置する場合には注意を要する程に低いバランス能力を、被検者が有することを示すようになっている。なお、重心変位の軌跡72は、被検者の重心の測定面への鉛直投影(重心位置G)を連続的に示すものであって、重心の上下変位は反映されない。
本実施形態では、3重の同心円によって区分けされる領域ごとにそれぞれ色が設定されており、例えば、最外円が青色、中間円および最外円と中間円の間の領域が緑色、最内円および中間円と最内円の間の領域が黄色、最内円よりも内側の領域が橙色で着色されていることによって、被検者のバランス能力の程度がより簡単に理解されるようになっている。なお、表示画面の左下には、色とバランス能力の関係を示す凡例73が示されており、青色が20〜49歳を、緑色が50〜64歳を、黄色が65歳以上を、橙色が要注意を、それぞれ示すことが容易に把握できるようになっている。尤も、上記の色分けにおける領域の区分や配色などは、あくまでも例示であって、特に限定されるものではない。
さらに、図17に示す表示画面において、重心軌跡表示領域70の上下左右には、それぞれ重心位置表示領域74が設けられている。重心軌跡表示領域70の上側に配された重心位置表示領域74には、重心位置Gが前方へ最も大きく変位した状態で測定された足圧分布図71が表示されていると共に、前方へ最大変位した重心位置Gが表示されている。更に、上側の重心位置表示領域74には、重心基点位置Aから足圧作用領域Pの前端までの前後距離に対する重心基点位置Aから前方へ最大変位した重心位置Gまでの前後距離の百分比が、最大重心位置として表示されている。
同様に、重心軌跡表示領域70の下側に配された重心位置表示領域74には、重心位置Gが最も後方へ変位した状態で測定された足圧分布図71が表示されていると共に、後方へ最大変位した重心位置Gが表示されている。更に、下側の重心位置表示領域74には、重心基点位置Aから足圧作用領域Pの後端までの前後距離に対する重心基点位置Aから後方へ最大変位した重心位置Gまでの前後距離の百分比が、最大重心位置として表示されている。
さらに、重心軌跡表示領域70の右側に配された重心位置表示領域74には、重心位置Gが最も右方へ変位した状態で測定された足圧分布図71が表示されていると共に、右方へ最大変位した重心位置Gが表示されている。更に、右側の重心位置表示領域74には、重心基点位置Aから足圧作用領域Pの右端までの前後距離に対する重心基点位置Aから右方へ最大変位した重心位置Gまでの左右距離の百分比が、最大重心位置として表示されている。
更にまた、重心軌跡表示領域70の左側に配された重心位置表示領域74には、重心位置Gが最も左方へ変位した状態で測定された足圧分布図71が表示されていると共に、左方へ最大変位した重心位置Gが表示されている。更に、左側の重心位置表示領域74には、重心基点位置Aから足圧作用領域Pの左端までの左右距離に対する重心基点位置Aから左方へ最大変位した重心位置Gまでの左右距離の百分比が、最大重心位置として表示されている。
なお、重心位置表示領域74の背景色は、前後左右の各バランス能力に応じて設定されている。即ち、表示画面の左下に示される凡例73と対応して、被検者のバランス能力が20〜49歳相当であれば、重心位置表示領域74の背景色が青色とされる。同様に、被検者のバランス能力が50〜64歳相当であれば重心位置表示領域74の背景色が緑色、65歳以上相当であれば重心位置表示領域74の背景色が黄色、要注意であれば重心位置表示領域74の背景色が橙色とされる。図17の例では、前後の重心位置表示領域74の背景色が緑色であると共に、右方の重心位置表示領域74の背景色が青色であり、更に左方の重心位置表示領域74の背景色が黄色となっていることから、例えば、被検者の重心位置が前後中央付近に位置しているとともに左右中央から右方へずれていることや、被検者が左方への重心変位を伴う運動を苦手としていることなどが、推定され得る。
また、表示画面の右下には、測定されたバランス能力の簡単な評価を表示する評価表示領域76が設けられている。評価表示領域76には、前後左右の総合的なバランス能力の評価がバランス年齢として表示されており、たとえば実年齢との比較によってバランス能力を簡易に評価することができる。更に、評価表示領域76には、前後のバランス能力と左右のバランス能力の評価結果が各別に表示されており、たとえば前後のバランス能力は良好だが左右のバランス能力が低いなどといった評価を簡易に把握することができる。
次に、図18には、測定結果の表示態様の一つとして、前後左右各方向への体軸の傾動を伴う姿勢変化によって足裏の接地面積が最小になった時の測定結果に基づく表示態様が示されている。なお、画面右上の情報表示領域68の表示と、中央の重心軌跡表示領域70の表示と、左下に表示される凡例73と、右下の評価表示領域76の表示は、図17に示す表示態様と同一であることから、以下では説明を省略する。
具体的には、図18に示す表示画面における重心軌跡表示領域70の上下左右には、重心位置表示領域78が設けられている。重心軌跡表示領域70の上側に配された重心位置表示領域78には、前傾姿勢での測定結果が表示されており、前傾姿勢によって足裏の接地面積が最小になった状態で測定された足圧分布図71が表示されていると共に、最小接地面積時の重心位置Gが表示されている。更に、上側の重心位置表示領域78には、基準面積に対する前傾姿勢での最小接地面積の百分比が接地面積比率として表示されていると共に、重心基点位置Aから重心軌跡表示領域70の前端までの前後距離に対する重心基点位置Aから前傾姿勢での最小接地面積時の重心位置Gまでの前後距離の百分比が、重心位置として表示されている。なお、基準面積は、自然な立位で検出される足裏の接地面積などであっても良いが、ここでは測定中に検出される最大の接地面積とされている。尤も、体軸を前後左右の各方向へ傾けた姿勢で一度でも閾値以上の圧力を検出した圧力検出部38の範囲から求められる面積とされていても良い。
同様に、重心軌跡表示領域70の下側に配された重心位置表示領域78には、後傾姿勢での測定結果が表示されており、後傾姿勢によって足裏の接地面積が最小になった状態で測定された足圧分布図71が表示されていると共に、最小接地面積時の重心位置Gが表示されている。更に、下側の重心位置表示領域78には、基準面積に対する後傾姿勢での最小接地面積の百分比が接地面積比率として表示されていると共に、重心基点位置Aから重心軌跡表示領域70の後端までの前後距離に対する重心基点位置Aから後傾姿勢での最小接地面積時の重心位置Gまでの前後距離の百分比が、重心位置として表示されている。
さらに、重心軌跡表示領域70の右側に配された重心位置表示領域78には、右傾姿勢での測定結果が表示されており、右傾姿勢によって足裏の接地面積が最小になった状態で測定された足圧分布図71が表示されていると共に、最小接地面積時の重心位置Gが表示されている。更に、右側の重心位置表示領域78には、基準面積に対する右傾姿勢での最小接地面積の百分比が接地面積比率として表示されていると共に、重心基点位置Aから重心軌跡表示領域70の右端までの左右距離に対する重心基点位置Aから右傾姿勢での最小接地面積時の重心位置Gまでの左右距離の百分比が、重心位置として表示されている。
更にまた、重心軌跡表示領域70の左側に配された重心位置表示領域78には、左傾姿勢での測定結果が表示されており、左傾姿勢によって足裏の接地面積が最小になった状態で測定された足圧分布図71が表示されていると共に、最小接地面積時の重心位置Gが表示されている。更に、左側の重心位置表示領域78には、基準面積に対する左傾姿勢での最小接地面積の百分比が接地面積比率として表示されていると共に、重心基点位置Aから重心軌跡表示領域70の左端までの左右距離に対する重心基点位置Aから左傾姿勢での最小接地面積時の重心位置Gまでの左右距離の百分比が、重心位置として表示されている。
重心位置表示領域78の背景色は、前後左右の各バランス能力に応じて凡例73と対応する色とされている。また、重心位置の測定結果だけでなく、接地面積比率も利用してバランス能力を評価することも可能であり、接地面積比率が著しく低い場合には、接地面積を維持するように注意を促したり、測定のやり直しを推奨したりするようにしても良い。
なお、本実施形態において足圧作用領域Pの基準面積は、測定中において検出された接地面積が最大になった際に閾値以上の圧力を検出した圧力検出部38の数に基づいて、基準接地面積検出装置としてのセンサコントローラ40によって検出される。尤も、基準面積として自然な立位での足裏接地面積や最大接地面積を採用する場合には、自然な立位で閾値以上の圧力を検出した圧力検出部38の数や、閾値以上の圧力を少なくとも一度検出した圧力検出部38の数に基づいて、基準面積が検出される。更に、足圧作用領域Pの最小面積は、閾値以上の圧力を検出する圧力検出部38の数が最小となった時点での圧力検出部38の数に基づいて、最小接地面積検出装置としてのセンサコントローラ40によって検出される。そして、検出された足圧作用領域Pの基準面積と最小面積に基づいて、足圧作用領域Pの基準面積に対する最小面積の比率(ここでは百分比)が接地面積比率演算装置としてのセンサコントローラ40によって算出される。このようにして算出された足圧作用領域Pの基準面積に対する最小面積の比率は、表示装置としてのパーソナルコンピュータ14の画面に、例えば図18に示す態様で表示される。
また次に、図19には、測定結果の表示態様の一つとして、前後左右各方向への体軸の傾動を伴う姿勢変化によって最大圧力値が検出された時点での測定結果に基づく表示態様が示されている。
具体的には、図19に示す表示画面における重心軌跡表示領域70の上下左右には、それぞれ最大荷重作用時の測定結果を表示する重心位置表示領域80が設けられている。重心軌跡表示領域70の上側に配された重心位置表示領域80には、前傾姿勢での測定結果が表示されており、前傾姿勢によって最大の荷重が検出された状態で測定された足圧分布図71が表示されていると共に、最大荷重の検出位置(最大荷重点F)と最大荷重作用時の重心位置Gが足圧分布図71の表示と重なって表示されている。更に、上側の重心位置表示領域80には、重心基点位置Aから重心軌跡表示領域70の前端までの前後距離に対する重心基点位置Aから前傾姿勢での最大荷重作用時の重心位置Gまでの前後距離の百分比が、重心位置として表示されている。
同様に、重心軌跡表示領域70の下側に配された重心位置表示領域80には、後傾姿勢での測定結果が表示されており、後傾姿勢によって最大の荷重が検出された状態で測定された足圧分布図71が表示されていると共に、最大荷重点Fと最大荷重作用時の重心位置Gが足圧分布図71の表示と重なって表示されている。更に、重心基点位置Aから重心軌跡表示領域70の後端までの前後距離に対する重心基点位置Aから後傾姿勢での最大荷重作用時の重心位置Gまでの前後距離の百分比が、重心位置として表示されている。
さらに、重心軌跡表示領域70の右側に配された重心位置表示領域80には、右傾姿勢での測定結果が表示されており、右傾姿勢によって最大の荷重が検出された状態で測定された足圧分布図71が表示されていると共に、最大荷重点Fと最大荷重作用時の重心位置Gが足圧分布図71の表示と重なって表示されている。更に、重心基点位置Aから重心軌跡表示領域70の右端までの左右距離に対する重心基点位置Aから右傾姿勢での最大荷重作用時の重心位置Gまでの左右距離の百分比が、重心位置として表示されている。
更にまた、重心軌跡表示領域70の左側に配された重心位置表示領域80には、左傾姿勢での測定結果が表示されており、左傾姿勢によって最大の荷重が検出された状態で測定された足圧分布図71が表示されていると共に、最大荷重点Fと最大荷重作用時の重心位置Gが足圧分布図71の表示と重なって表示されている。更に、重心基点位置Aから重心軌跡表示領域70の左端までの左右距離に対する重心基点位置Aから左傾姿勢での最大荷重作用時の重心位置Gまでの左右距離の百分比が、重心位置として表示されている。
なお、重心位置表示領域80の背景色は、前後左右の各バランス能力に応じて凡例73と対応する色とされている。
図20には、測定結果を示すまた別の表示画面が例示されている。なお、図20の表示画面において、図17〜図19に示す表示画面と実質的に同一の表示領域などについては、図中に同一の符号を付すことにより説明を省略する。
図20の表示画面における左下には、荷重比表示領域82が配されている。荷重比表示領域82は、被検者の左右の足裏の圧力分布に基づいて左右の足に作用する荷重のバランスを示すものであって、図20では、両足裏に対応するイラストに荷重の割合を数字で表示する態様とされている。なお、左右の足に作用する荷重は、各圧力検出部38によって検出される荷重の積分値によって求めることができる。
また、図20の表示画面では、右側に印刷ボタン84が配されている。印刷ボタン84は、パーソナルコンピュータ14上のインターフェースであって、マウスによるカーソルでのクリック操作やタッチパネルのタッチ操作などによって印刷ボタン84を押すことにより、図20の表示画面をプリンタで印刷することができる。
また、図20の表示画面では、印刷ボタン84の下方に詳細ボタン86が配されている。詳細ボタン86は、印刷ボタン84と同様の操作によって押すことにより、過去の測定結果との比較検討画面の表示や、測定結果に基づいた改善点のアドバイス画面の表示、図17の表示画面と図18の表示画面と図19の表示画面の選択的な切替えなどが実行される。以下に詳細ボタン86によって表示される画面の一例について、図21を参照しつつ説明する。
すなわち、図21には、特定の被検者についての継続的な測定結果の推移を表示する画面が示されている。図21では、前後のバランス能力を所定の期間(図21では約2か月間)に亘って定期的に或いは不定期に継続して測定した結果が、表示されている。
より具体的には、図21の表示画面には、上記の如く所定の期間に亘って継続的に測定された測定結果を表示する継続測定結果表示領域88が配されている。継続測定結果表示領域88には、継続的に測定された重心移動の測定結果が折れ線グラフ90によって表示されている。この折れ線グラフ90は、左右が測定日の時間軸とされていると共に、上下が前後方向の重心移動を前後の基準幅寸法に対する百分比で示す重心移動軸とされた座標平面に表示されている。更に、前傾姿勢での測定結果を示す上側の折れ線グラフ90aと、後傾姿勢での測定結果を示す下側の折れ線グラフ90bが表示されており、一般的には、折れ線グラフ90aと折れ線グラフ90bの上下間の距離が大きいほど前後方向のバランス能力が高いと推定される。
さらに、継続測定結果表示領域88には、予め設定された前後重心移動の目標が表示されており、図21では前後重心移動の前後基準幅寸法に対する百分比を60%以上にするという目標が設定されている。前後重心移動の目標は、折れ線グラフ90の描画領域に太線や色の異なる線などで表示されており、目標の達成度が容易に把握可能とされている。
また、継続測定結果表示領域88の上端部と下端部には、前後重心移動の簡易評価記号(ここでは花丸と二重丸と丸と三角)を表示する簡易評価表示領域92が設けられている。簡易評価表示領域92は、例えば、測定結果が目標を達成した場合に花丸などの記号を、測定結果が目標に達していないが前回の測定結果に対して5%以上の向上を実現した場合に二重丸などの記号を、それぞれ表示して、このような測定結果が良好であったことを想起させる記号の表示によって、バランス能力の改善に対する被検者のやる気を引き出すようになっている。一方、前回の測定結果に対する変化が±5%の範囲である場合には、現状維持として丸などの測定結果がまずまずであったことを想起させる記号を簡易評価表示領域92に表示すると共に、前回の測定結果に対して5%以上の変化幅で低下した場合には、三角などの測定結果が悪かったことを想起させる記号を簡易評価表示領域92に表示することにより、被検者の注意を喚起する。
このように、継続的な測定結果の変化をグラフ化することによって、長期的なバランス能力の変化を目に見える形で把握することができると共に、前回の測定結果からの変化を容易に把握できるようにすることによって、バランス能力を改善する努力を持続し易くなる。なお、図21では、継続測定結果表示領域88の上端部に設けられた簡易評価表示領域92aに対して、前方への重心移動の測定結果に関する簡易評価記号が表示されていると共に、継続測定結果表示領域88の下端部に設けられた簡易評価表示領域92bに対して、後方への重心移動の測定結果に関する簡易評価記号が表示されている。また、図21の簡易評価表示領域92に表示されている簡易評価記号は、あくまでも例示であって、他の任意の記号(文字を含む)を採用することも可能である。
また、継続測定結果表示領域88の下方に配された測定日変更ボタン100を印刷ボタン84や詳細ボタン86と同様に押すことにより、継続測定結果表示領域88に表示される測定日を変更することができる。即ち、「前へ」と表示された測定日変更ボタン100aを押すことにより、より古い測定日の測定結果が表示されると共に、「後へ」と表示された測定日変更ボタン100bを押すことにより、より最近の測定日の測定結果が表示される。
また、図21の表示画面における継続測定結果表示領域88の右方には、比較表示領域102が配されている。比較表示領域102には、今回の測定結果に係る重心軌跡表示領域70aと、過去の測定結果に係る重心軌跡表示領域70bが、並べて設けられており、今回の測定結果が過去の測定結果に対してどのように変化したのかを詳細に確認することが可能とされている。図21では、今回の測定結果を過去の測定結果と比較する例を示したが、例えば、選択された過去の2回の測定結果を比較表示領域102に表示して比較することも可能である。なお、図21では、重心軌跡表示領域70aと重心軌跡表示領域70bが上下に並んで設けられているが、例えば、異なる色合いで半透明化した重心軌跡表示領域70aと重心軌跡表示領域70bを重ね合わせて設けることもできる。
バランス能力測定装置10を用いた測定によれば、被検者の測定面上での立ち位置などによる測定結果のばらつきが低減されることから、本実施形態では、継時的な測定結果の比較によってバランス能力の変化をより的確に把握することができる。
また、図21の表示画面における比較表示領域102の下方には、表示切替ボタン104が配されている。表示切替ボタン104は、前後バランスの測定結果の表示と左右バランスの測定結果の表示を切り替えるものであって、印刷ボタン84や詳細ボタン86と同様の操作で表示切替ボタン104を押すことにより表示が切り替わるようになっている。
ところで、図21に示す表示画面は、特定の被検者について所定の期間に亘って継続的に測定された結果に基づいて表示される。即ち、センサコントローラ40によって測定された重心位置Gの変位量は、認証情報としてのIDに関連付けられた重心変位データとして記憶装置に記憶される。本実施形態では、記憶装置がパーソナルコンピュータ14の図示しないハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)などの記憶媒体によって構成されており、測定結果情報がIDと関連付けられた状態で格納されている。なお、記憶装置としての光ディスクなどの外部記憶媒体に重心変位データを書き込むようにしても良い。
そして、被検者が自分の重心変位データを図21のような表示画面で確認する際には、先ず、被検者がパーソナルコンピュータ14のキーボードやタッチパネルなどを操作して自分のIDを入力することにより、記憶データ処理装置としてのCPU52が、入力されたIDに関連付けられた重心変位データを、HDDに記憶された重心変位データから選択的に読み出す抽出処理を実行する。そして、選択的に読み出された特定IDの重心変位データに基づいて、図21に示す画面の表示信号を生成して、出力装置としてのパーソナルコンピュータ14の画面に表示する。
このように、所定の期間に亘る測定結果のデータを記憶しておくことにより、バランス能力の変化を図21のような表示画面によって把握することができる。しかも、測定結果のデータを被検者ごとに設定したIDと関連付けられた重心変位データとして記憶しておくことにより、各被検者のバランス能力の変化をそれぞれ管理して、簡単に確認することができる。
このような図21に示す表示画面は、たとえば図20の表示画面における詳細ボタン86を押すことによって表示される。なお、詳細ボタン86を押すことによって表示される画面は、必要な表示内容などに応じて選択可能であることが望ましい。そこで、たとえばソフトウェアの追加インストールによって希望する機能を選択的に追加できるようにされて、詳細ボタン86を押すことによって追加された機能を使用できるようにされる。図20では、「詳細1」、「詳細2」、「詳細3」の3つの詳細ボタン86が設けられており、各詳細ボタン86に割り当てられる3つの機能を選択して追加できるようになっている。
なお、測定結果の確認が完了した後、図20の表示画面の右上に配された戻るボタン106を押すことにより、測定結果の表示画面から次の測定のための待機画面などに切り替わるようになっている。
以上のように、測定結果の表示画面は、特に限定されるものではなく、要求される測定データや評価態様などに応じて多様な表示画面が適宜に採用され得る。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、圧力分布センサの具体的な構造は、特に限定されるものではなく、たとえば歪ゲージを用いた面圧センサなど、各種公知の構造が採用され得る。また、足圧作用領域Pを検出する圧力分布センサとは別に、測定面に作用する荷重を検出して重心位置Gを検出するための荷重センサとして、例えば特許文献1に記載の如きロードセルなどを採用することも可能である。
また、前記実施形態では、重心位置Gの変位量が、左右と前後の何れにおいても足圧作用領域Pの基準幅寸法に対する寸法割合として求められているが、重心位置Gの変位量が左右と前後の何れか一方においてのみ寸法割合として求められるようにしても良い。たとえば、重心位置Gの変位量を左右と前後の何れか一方においてのみ計測するようにしても良いし、左右方向では足圧作用領域Pの左右全幅(立ち幅)Wに対する割合として求めるとともに前後方向では変位量を実際の距離として求めるようにしても良い。さらに、左右方向の重心位置Gの変位量を足圧作用領域Pの前後全幅(足の前後長さ)Lに対する寸法割合として求めることも可能であるし、前後方向の重心位置Gの変位量を足圧作用領域Pの左右全幅(立ち幅)Wに対する寸法割合として求めることもできる。
さらに、足圧作用領域Pの基準幅寸法は、必ずしも左右全幅寸法Wと前後全幅寸法Lに限定されない。たとえば、それら左右全幅寸法Wと前後全幅寸法Lに対して所定の割合とされた寸法を基準幅寸法としても良いし、足指の接地による圧力検出部分を除いた部分的な足圧作用領域に基づいて基準幅寸法を設定しても良い。また、閾値によって基準幅寸法の上限と下限を設定することにより、計測の信頼性を高めることもでき得る。
また、電極34a,34bおよび圧力検出部38の数や配置、形状なども特に限定されない。さらに、測定面を構成する感圧部42の窓部22から露出する部分は、形状や面積を適宜に変更され得るが、被検者が感圧部42に立位で足を載せることができる大きさおよび形状とされる。また、本発明では特に必要でないが、測定面に足形などの表示をして使用者が測定面に乗ることを促すようにしても良い。
さらに、前記実施形態では、検出装置や演算装置、さらには左右区別装置が、何れも測定装置本体12に内蔵されたセンサコントローラ40によって構成されているが、それらは測定装置本体12に外付けされていても良く、たとえば重心位置Gの変位量や足圧作用領域Pの面積変化量などを演算する演算装置が、測定装置本体12に外付けされてセンサコントローラ40に接続されるパーソナルコンピュータ14によって構成されるようにしても良い。
更にまた、パーソナルコンピュータ14によって構成されていた表示装置、記憶装置、記憶データ処理装置、出力装置などは、何れも測定装置本体12に内蔵されていても良い。即ち、測定装置本体12に載った被検者が対峙するように測定装置本体12に表示装置および出力装置としての画面が設けられていても良いし、測定装置本体12にHDDやSSDなどの記憶装置やCPU、RAM、ROMなどを内蔵しても良い。要するに、本発明において、パーソナルコンピュータ14は必須の構成ではない。
また、重心位置Gの変位量および足圧作用領域Pの面積は、ある程度の時間に亘って継続して計測される必要があるが、必ずしも連続的に計測される必要はなく、たとえば所定の時間間隔をもって断続的に計測されるようにしても良い。
また、重心位置Gの変位方向と同じ方向で足圧作用領域Pの変化量を求めるに際しては、予め重心位置Gの変位方向を被検者に指定しておくと共に、特定された当該変位方向における重心位置Gの変位量と足圧作用領域Pの変化量を測定することも可能である。更にまた、足圧作用領域Pの変化量として、特定された当該変位方向で感圧検出された足圧の両端部間の距離を基準面積である基準距離とみなすと共に、当該変位方向で感圧検出される足圧の両端部間の距離の変化量を面積変化量である距離変化量とみなし、基準距離に対する距離変化量の割合で足裏の部分的な浮き上がりを評価することも可能である。
また、重心位置Gの変位量に基づく測定結果としては、重心基点位置Aから重心位置Gまでの直線距離の他、重心基点位置Aから重心位置Gまでの直線距離の時間微分で求められる重心位置Gの変位速度や変位加速度などを採用して、それらの何れか一つ或いは複数を組み合わせて表示装置に表示させることもできる。さらに、測定時間中に重心位置Gが移動した軌跡の長さを求めて、たとえば、ローテーションテストなどにおいてバランス能力を判定する指標としても良い。
また、表示装置は、計測結果をリアルタイムで処理して表示するものであっても良いし、計測データを記憶しておいて、計測完了後に実測結果として表示するものであっても良い。図15および図17〜20では、計測完了後に表示される測定結果の表示画面を例示したが、例えば、図15の前後グラフ60および左右グラフ64に相当する画面や、図17〜20の重心軌跡表示領域70に相当する画面などを測定中に表示装置で表示して、足圧分布や重心位置Gの軌跡をリアルタイムで示すことにより、足圧分布や重心位置Gの変化を確認しながら測定を実施することも可能になる。更に、前記実施形態では、表示装置としてパーソナルコンピュータ14の画面が例示されているが、例えば、プリンタを表示装置として採用して、計測結果が画面表示されることなく直ちにプリントアウトされるようにしても良い。
また、足圧作用領域Pに基づいて重心基点位置Aを設定する際に、好適には、前記実施形態で示すように、足圧作用領域Pの範囲に基づいて中心点や最後端を通る左右直線と最左端を通る前後直線の交点などとして設定されるが、たとえば、各圧力検出部38への作用圧力の大きさを考慮した初期立位での重心位置Gを重心基点位置Aとして採用しても良い。