JP2018166774A - 呼吸波形計測装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】呼吸動作との関連性が低い誤った感圧点が選択されるリスクを低減して、就寝者の呼吸波形の計測をより精度よく行うことができる、新規な構造の呼吸波形計測装置を提供すること。【解決手段】多点検知型感圧センサ20と、その各感圧点38の出力値に基づき重心位置を所定間隔で算出する重心位置算出手段Aと、重心位置の移動量に基づき安静判定を行う安静判定手段Bと、呼吸波形計測に適した感圧点選択手段Cと、選択された感圧点38の出力値に基づき、呼吸波形を算出する呼吸波形算出手段Dを備え、安静判定手段Bにより安静状態にあると判定された場合に、感圧点選択手段Cが感圧点38を選択し、呼吸波形算出手段Dが選択された感圧点38から呼吸波形を算出する一方、安静判定手段Bにより非安静状態にあると判定された場合に、呼吸波形算出手段Dが呼吸波形の算出を中断するようにした。【選択図】図5
Description
本発明は、就寝者の呼吸波形を計測する、呼吸波形計測装置に関するものである。
従来から、医療や介護等の分野において、患者等の睡眠状態や健康状態を把握する指標として、就寝時の呼吸波形を計測することが行われている。例えば、特許第6030892号公報(特許文献1)には、就寝者の下に敷くマットに感圧センサの複数の感圧点をマトリックス状に設けて、各感圧点に印加される就寝者の圧力変動に基づき、就寝者の呼吸波形を計測することが提案されている。
ところで、上記特許文献1に記載の従来の呼吸波形計測装置では、複数の感圧点のうち、出力値として得られる圧力変動における呼吸波形に該当する周波数帯域(例えば、0.15〜0.5Hz)の変化量が最大のものを計測用の感圧点として選択し、選択された感圧点の圧力変動に基づき呼吸波形が算出されるようになっている。そして、呼吸波形に該当する周波数帯域における圧力変化量が呼吸相当変化量を下回った場合には、呼吸状態を反映する最適な感圧点ではないと判断し、計測用の感圧点を再設定することが行われている。
ところが、呼吸波形に該当する周波数帯域に体動による圧力変動が含まれる場合もあり、特許文献1に記載のように変化量が最大となるものを計測用の感圧点として選択する方法では、就寝者の呼吸動作以外の体動により変化量が最大となった感圧点を呼吸による変動を示すものとして誤選択するおそれがある。この場合、選択した感圧点が呼吸相当変化量をすぐに下回って計測用の感圧点の変更が頻繁に行われる結果となり、正しい呼吸波形を連続して取得することが難しくなるおそれがあった。
なお、特許第3961386号公報(特許文献2)には、呼吸波形計測用の感圧点を選択するに際して、時系列上で隣り合う圧力変動波形の相互相関性を判定し、相関性の高いものを計測用の感圧点として選択する方法が提案されている。しかしながら、特許文献2に記載の方法であっても、就寝者の呼吸動作以外の体動による圧力変動が高い相互相関性を示す場合もあり、感圧点の誤選択を充分な制度で排除できるものではなく、未だ改良の余地があった。
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、呼吸動作との関連性が低い誤った感圧点が選択されるリスクを低減して、就寝者の呼吸波形の計測をより精度よく行うことができる、新規な構造の呼吸波形計測装置を提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
本発明の第一の態様は、就寝者を支持する支持面に分散配置される多数の感圧点を備え、各前記感圧点が前記就寝者による印加圧力に対応した出力値を出力する多点検知型感圧センサと、前記多点検知型感圧センサの各前記感圧点の前記出力値に基づき前記就寝者の重心位置を所定間隔で算出する重心位置算出手段と、前記所定間隔で得られた前記重心位置から前記重心位置の移動量を算出し、該重心位置の移動量に基づき前記就寝者の安静判定を行う安静判定手段と、前記多点検知型感圧センサから、前記就寝者の呼吸波形計測に適した前記感圧点を選択する感圧点選択手段と、前記感圧点選択手段により選択された前記感圧点の前記出力値に基づき、前記就寝者の呼吸波形を算出する呼吸波形算出手段を備え、前記安静判定手段により前記就寝者が安静状態にあると判定されていることを条件として、前記感圧点選択手段が前記感圧点を選択し、前記呼吸波形算出手段が前記感圧点選択手段により選択された前記感圧点から前記呼吸波形を算出する一方、前記安静判定手段により前記就寝者が非安静状態にあると判定された場合に、前記呼吸波形算出手段が前記呼吸波形の算出を中断するようになっていることを特徴とする。
本態様に従う構造の呼吸波形計測装置によれば、重心位置算出手段において、就寝者を支持する支持面に敷設された多点検知型感圧センサの各感圧点の出力値に基づき、就寝者の重心位置を所定間隔で算出する一方、安静判定手段においては、所定間隔で得られた重心位置データから重心位置の移動量を計算し、かかる移動量に基づき就寝者の安静度を判定するようになっている。そして、安静判定手段において就寝者の安静状態が検知されている場合に、感圧点選択手段により就寝者の呼吸波形計測に適した感圧点を選択し、呼吸波形算出手段がかかる感圧点を維持した状態で当該感圧点の出力値に基づき連続した呼吸波形を算出することができる。これにより、従来構造において問題となっていた感圧点の頻繁な遷移による呼吸波形の乱れ等の不具合を確実に解消して就寝者の呼吸状態に対応した安定した呼吸波形を有利に計測することが可能となる。本発明においては、就寝者の重心位置の移動量を安静度の指標とし、安静度の程度により呼吸波形の計測点(選択感圧点)の遷移頻度を有利に制御することができ、取得される呼吸波形の安定化を図ることができるのである。
さらに、安静判定手段により就寝者の非安静状態が検知されると、呼吸波形算出手段が呼吸波形の算出を中断するようになっていることから、寝返り等の就寝者の体動による呼吸波形への影響も回避され、一層安定した呼吸波形の計測を行うことができる。
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記安静判定手段が、前記重心位置の移動量が所定の閾値の範囲内にある状態が所定期間持続した場合に、前記就寝者が安静状態にあると判定し、前記重心位置の移動量が前記閾値の範囲を逸脱し、または前記重心位置の移動量が前記所定の閾値の範囲内にある状態が前記所定期間持続していない場合に、前記就寝者が非安静状態にあると判定するようになっているものである。
本態様によれば、就寝者の重心位置の移動量が所定の閾値の範囲内にあるという条件1と、その状態が所定期間持続されているという条件2を充足した場合に、安静判定手段において、就寝者が安静状態にあると判定されるようになっている。これにより、就寝者の安静状態判定の確実性を向上させることができる。また、条件1と条件2の何れか一方でも充足しない場合には、速やかに非安静状態との判定がされ呼吸波形の算出が中断されることから、一層確実に安静状態での呼吸波形の取得を実現することができる。
本発明の第三の態様は、前記第二の態様に記載のものにおいて、前記安静判定手段において設定される前記重心位置の移動量に関する前記閾値が、現在の前記重心位置と直前の前記重心位置との差分値と、前記所定期間における前記重心位置の移動量の合計値の少なくとも一方を含んでいるものである。
本態様によれば、重心位置の移動量の閾値として、現在の重心位置と直前の重心位置との差分値が設定されている場合には、閾値を越えたことにより素早い体動を検知することができる。また、重心位置の移動量の閾値として、所定期間における重心位置の移動量の合計値が設定されている場合には、閾値を越えたことによりゆっくりとした体動を検知することができる。それゆえ、就寝者の就寝時の傾向に応じて何れか一方を設定したり、あるいは両方の閾値を設定することにより、就寝者の体動をより確実に検知して、呼吸波形への影響を有利に排除することができる。
本発明の第四の態様は、前記第一乃至第三の何れか一つの態様に記載のものにおいて、前記安静判定手段において前記就寝者が安静状態にあるとの判定が所定期間継続した場合に、前記呼吸波形算出手段で用いる前記感圧点を前記感圧点選択手段により再選択するようにした定期更新判定手段をさらに含んでいるものである。
本態様によれば、定期更新判定手段をさらに備えたことにより、就寝者が長く安静状態にある場合に、呼吸波形算出を行う感圧点を再選択することができる。これにより、例えば、就寝者の眠りの深さ等の状態により呼吸波形を最も反映して動く部位が変化するような場合であっても、呼吸波形をより反映する感圧点を定期的に更新することができ、確実な呼吸波形の取得を一層有利に実現することができる。
本発明の第五の態様は、前記第一乃至第四の何れか一つの態様に記載のものにおいて、前記感圧点選択手段が、前記複数の感圧点のうち、前記出力値から得られる圧力変動時系列データのパワースペクトルの全積分に対する呼吸帯域の占める割合が最大となる感圧点を前記就寝者の呼吸波形計測に適したものとして選択しているものである。
本態様によれば、出力値から得られる圧力変動時系列データのパワースペクトルの全積分に対する呼吸帯域の占める割合が最大となる感圧点を就寝者の呼吸波形計測に適したものとして選択していることから、確実な呼吸波形の取得をより一層有利に実現することができる。
本発明の第六の態様は、前記第一乃至第五の何れか一つの態様に記載のものにおいて、前記呼吸波形算出手段が、選択された前記感圧点の前記出力値から得られる圧力変動時系列データに対して、0.05Hz〜0.5Hzを通過帯域とするバンドパスフィルタを実行して得られた波形を呼吸波形として算出するものである。
本態様によれば、選択された感圧点の出力値から得られる圧力変動時系列データに対して、0.05Hz〜0.5Hzを通過帯域とするバンドパスフィルタを実行して得られた波形を呼吸波形として算出することにより、心拍に関連する周波数成分を除去しつつ、呼吸に関連した周波数帯域を広くサンプリングすることができる。
本発明によれば、重心位置算出手段において、就寝者を支持する支持面に敷設された多点検知型感圧センサの各感圧点の出力値に基づき、就寝者の重心位置を所定間隔で算出する一方、安静判定手段においては、重心位置の移動量に基づき就寝者の安静度を判定する。そして、安静判定手段において安静状態が検知されている場合に、感圧点選択手段により呼吸波形計測に適した感圧点を選択し、当該感圧点の出力値に基づき連続した呼吸波形を算出できる。これにより、従来の如き感圧点の頻繁な遷移による呼吸波形の乱れ等の不具合を確実に解消して就寝者の呼吸状態に対応した安定した呼吸波形を有利に計測できる。さらに、安静判定手段により就寝者の非安静状態が検知されると、呼吸波形算出手段が呼吸波形の算出を中断するようになっていることから、寝返り等の就寝者の体動による呼吸波形への影響も回避され、一層安定した呼吸波形の計測を行うことができる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1および図2には、本発明の一実施形態に従う構造とされた呼吸波形計測装置10が示されている。呼吸波形計測装置10は、例えば就寝者12を支持するベッド14の床部16の支持面18上に配設されたシート状の多点検知型感圧センサ20と、後述する多点検知型感圧センサ20に電気的に接続されたデータ処理装置40を含んで構成されている。より詳細には、図1および図2に示されているように、多点検知型感圧センサ20は、例えばマットレス等を備えた床部16の支持面18上の一部の領域に配設されており、多点検知型感圧センサ20上に就寝者12の頸部24から腹部26に亘る部位が載置されるようになっている。そして、かかる多点検知型感圧センサ20を用いて、就寝者12の呼吸動作に伴う圧力変動が検出されるようになっている。なお、以下の説明において、上方とは、図1中の上方、下方とは、図1中の下方、また前方とは、図2中の左方、後方とは、図2中の右方を言うものとする。また、図2では、理解を容易とするため、就寝者12を仮想線で記載している。
図3に示されているように、多点検知型感圧センサ20は、歪ゲージや磁歪体を用いたロードセル等を用いて、例えば歪ゲージを4隅に配設して面圧分布センサを構成する等しても良いが、本実施形態においては、シート状の静電容量型センサによって、多点検知型感圧センサ20が構成されている。なお、静電容量型センサとしては、従来公知のものが適宜に採用可能である。
図3および図4に、多点検知型感圧センサ20を構成する静電容量型センサを概略的に示す。なお、図3においては、後述する誘電層28および表側基材30を透視して図示すると共に、後述する感圧点38を内部に斜線を付した四角で示す。なお、本実施形態では、斜線を付した四角で示された各感圧点38は、図3における横方向の長さが3.0cm、縦方向の長さが2.0cmとされている。また、横方向において隣接する感圧点38,38の間隔は4.6cmであり、縦方向において隣接する感圧点38,38の間隔は3.0cmである。
多点検知型感圧センサ20を構成する静電容量型センサは、誘電層28と、表側電極01X〜08Xと、裏側電極01Y〜08Yと、表側配線01x〜08xと、裏側配線01y〜08yと、表側基材30と、裏側基材32と、表側配線用コネクタ34と、裏側配線用コネクタ36と、を備えている。
誘電層28は、例えばエラストマーとしてのウレタン発泡体製であって、平面視で略矩形平板形状のシート状を呈し、弾性変形可能とされている。また、表側基材30は、例えばゴム製であって、平面視で略矩形平板形状を呈しており、誘電層28の上方(表側)に積層されている。さらに、裏側基材32は、例えばゴム製であって、平面視で略矩形平板形状を呈しており、裏側基材32は、誘電層28の下方(裏側)に積層されている。
図4に示されているように、表側基材30の外縁と裏側基材32の外縁とは接合されており、表側基材30と裏側基材32が、袋状に貼り合わされている。これにより、誘電層28は、当該袋内に収容されている。加えて、誘電層28の上面四隅は、表側基材30の下面四隅に、スポット的に接着されている一方、誘電層28の下面四隅は、裏側基材32の上面四隅に、スポット的に接着されている。それゆえ、誘電層28は、表側基材30および裏側基材32に対して、使用時にシワがよらないように、位置決めされるようになっている。なお、誘電層28は、四隅が接着された状態で、表側基材30および裏側基材32に対して、水平方向(図3中、上下左右方向)に弾性変形可能とされている。
表側電極01X〜08Xは、図3に示されているように、誘電層28の上面に、合計8本配置されており、各々、例えば、アクリルゴムと、導電性カーボンブラックと、を含んで形成されている。また、表側電極01X〜08Xは、各々、略帯状を呈しており、柔軟に伸縮可能に形成されている。さらに、表側電極01X〜08Xは、各々、縦方向(図3中、上下方向)に延在していると共に、横方向(図3中、左右方向)に所定間隔(本実施形態では7.6cmピッチ)で互いに略平行になるように配置されている。
表側配線01x〜08xは、誘電層28の上面に、合計8本配置されており、各々、例えば、アクリルゴムと、銀粉と、を含んで形成されている。また、表側配線01x〜08xは、各々、略線状を呈している。さらに、表側配線用コネクタ34は、表側基材30および裏側基材32の隅部に配置されている一方、表側配線01x〜08xは、各々、表側電極01X〜08Xの端部と表側配線用コネクタ34と、を接続している。
一方、裏側電極01Y〜08Yは、誘電層28の下面に、合計8本配置されている。裏側電極01Y〜08Yは、各々、例えば、アクリルゴムと、導電性カーボンブラックと、を含んで形成されている。また、裏側電極01Y〜08Yは、各々、帯状を呈しており、柔軟に伸縮可能に形成されている。さらに、裏側電極01Y〜08Yは、各々、横方向(図3中、左右方向)に延在していると共に、縦方向(図3中、上下方向)に所定間隔(本実施形態では5.0cmピッチ)で互いに略平行になるように配置されている。このように、表側電極01X〜08Xと裏側電極01Y〜08Yとは、上方または下方から見て、互いに直交する略格子状に配置されている。
裏側配線01y〜08yは、誘電層28の下面に、合計8本配置されている。裏側配線01y〜08yは、各々、例えば、アクリルゴムと、銀粉と、を含んで形成されている。また、裏側配線01y〜08yは、各々、線状を呈している。さらに、裏側配線用コネクタ36は、表側基材30および裏側基材32の隅部に配置されている一方、裏側配線01y〜08yは、各々、裏側電極01Y〜08Yの端部と裏側配線用コネクタ36と、を接続している。
多点検知型感圧センサ20を構成する静電容量型センサが備える複数(本実施形態では、8×8=64個)の感圧点38は、図3に内部に斜線を付した四角で示すように、表側電極01X〜08Xと、裏側電極01Y〜08Yと、が上下方向に交差する部分(重複する部分)に配置されて、誘電層28の略全面に亘って、縦横に略均等に配置されている。すなわち、多点検知型感圧センサ20は、就寝者12を支持するベッド14の床部16の支持面18上に複数の感圧点38が分散配置された構造を有している。また、感圧点38は、各々、表側電極01X〜08Xの一部と、裏側電極01Y〜08Yの一部と、誘電層28の一部と、を備えている。なお、本実施形態の呼吸波形計測装置10において実行される後述する呼吸波形計測方法においては、各感圧点38が、表側電極01X〜08Xをx座標値、裏側電極01Y〜24Yをy座標値として用いて、感圧点38(x、y)として認識される。例えば、表側電極01Xと裏側電極01Yの交差部分に配置されている、図3中左下隅に位置する感圧点38を感圧点38(1,1)と認識し、表側電極08Xと裏側電極08Yの交差部分に配置されている、図3中右上隅に位置する感圧点38を感圧点38(8,8)と認識する。
図3に示されているように、データ処理装置40は、表側配線用コネクタ34および裏側配線用コネクタ36と、電気的に接続されている。データ処理装置40は、CPU(Central Processing Unit)42と、ROM(Read Only Memory)44と、RAM(Random Access Memory)46と、電源回路48と、モニタ50や図示しないタイマー、カウンタ、入出力インターフェース(I/O)等を備えている。ROM44には後述する制御方法に基づく制御プログラム等が記憶されている一方、RAM46には、制御プログラムの演算値等が一時的に格納されるようになっている。なお、データ処理装置40は、後述する重心位置算出手段A、安静判定手段B、感圧点選択手段C、定期更新判定手段c1、呼吸波形算出手段D、を備えており、これらはROM44に記憶されCPU42によって実行されるソフトウェアによって実現されている。
電源回路48は、感圧点38に、周期的な矩形波電圧を走査的に順番に印加する。また、ROM44には、予め、感圧点38に構成されたコンデンサの静電容量と体圧(圧力)との対応を示すマップが格納されている。一方、RAM46には、表側配線用コネクタ34、裏側配線用コネクタ36から入力される感圧点38の静電容量が一時的に格納される。そして、CPU42が、RAM46に格納された感圧点38の静電容量から、ROM44に記憶されたマップに基づいて、感圧点38に作用している体圧を検出するようになっている。すなわち、本実施形態に用いられている多点検知型感圧センサ20は、各感圧点38において就寝者12による印加圧力(体圧)に対応した出力値を出力するようになっているのである。なお、かかるデータ処理装置40における作業内容や測定結果等は、モニタ50上に出力される。
次に、本実施形態の呼吸波形計測装置10を用い、就寝者12がベッド14の床部16上に横たわって就寝した際に、就寝者12の呼吸動作に伴う圧力変動から就寝者12の呼吸に関する波形を得る方法について説明する。
図5に、データ処理装置40のCPU42が実行する処理内容を示す。本処理は、例えば、データ処理装置40に設けられた図示しない操作ボタン(操作ボタンは、データ処理装置40に設けられたモニタ50上に表示されるGUI等でも良い)を使用者が操作すること等によって開始されるようになっている。ここで、本処理は、例えば0.2秒の所定間隔毎に繰り返して実行されるようになっている。
先ず、データ処理装置40は、S1において、圧力データの更新を実行する。かかる圧力データの更新(S1)とは、新たに全ての感圧点38における圧力データ(出力値)を取得することである。
続いて、データ処理装置40の重心位置算出手段Aは、S2において、面圧中心計算を実行する。かかる面圧中心計算(S2)とは、就寝者12が載置された多点検知型感圧センサ20上における重心位置を計算することである。すなわち、重心位置算出手段Aは、S2において、数1に基づいて、重心位置を感圧点38の座標値(Cpx,Cpy)として算出し、座標値(an ,bn )としてRAM46に記憶する(一番最初はn=1とし、例えば0.2秒の所定間隔毎にn=2、3、…とする)。なお、数1では、任意の感圧点38(x,y)をiとして、当該感圧点38の出力値をPi 、x座標値をXi 、y座標値をYi と表す。また、全感圧点38(x,y)の総数をN(本実施形態では64)と表す。このように、データ処理装置40の重心位置算出手段Aは、S2において、多点検知型感圧センサ20の各感圧点38の出力値に基づいて、就寝者12の重心位置(an ,bn )を、例えば0.2秒の所定間隔毎に算出する。
次に、データ処理装置40の安静判定手段Bは、以下のS3〜S12において、就寝者12の安静判定を行う。より詳細には、先ず、安静判定手段Bは、S3において、体動状態計算を実行する。すなわち、前処理(0.2秒前の本処理)における重心位置(Cpx,Cpy)を(an-1 ,bn-1 )として、今回の処理と前処理(0.2秒前の本処理)における重心位置(Cpx,Cpy)の移動量:rを計算すると、数2のように表される。そして、かかる移動量:rが予め設定した閾値以上である場合には、体動が発生したとして、体動状態=1としてRAM46に記憶する一方、移動量:rが予め設定した閾値以下である場合には、体動が発生しなかったとして、体動状態=0としてRAM46に記憶する。ここで、閾値は、例えば本実施形態では1cmに設定されている。
さらに、安静判定手段BのS3における体動状態の計算は、所定期間、例えば過去10秒(0.2秒×50回)における重心位置の移動量:rの合計値が、閾値(例えば12cm)を超えた場合に非安静状態とする条件も含んでいることが望ましい。なお、かかる合計値は、例えば、数3によって計算される。
これにより、重心位置の移動量:rに関する閾値が、現在の重心位置と直前の重心位置との差分値に対して判定される場合には、素早い体動を検知することができるのに対して、重心位置の移動量:rに関する閾値が長い所定間隔における重心位置の移動量の合計値に対して判定される場合には、ゆっくりとした体動を検知することができる。このように上記数2,数3に基づく2つの閾値を設定することにより、就寝者12の体動をより確実に検知して、呼吸波形への影響を有利に排除することができるようになっている。
続いて、上記S3において例えば0.2秒の所定間隔毎に計算された重心位置の移動量:rから算出された体動状態の値に基づいて、先ず、安静判定手段Bは、S4において、体動が発生したか否かを判定し、体動が発生した場合(S4=Yes)場合には、S5に進み、安静レベル=0としてRAM46に記憶し、最初(S1)に戻る一方、体動が発生していない場合(S4=No)場合には、S6に進む。次に、安静判定手段Bは、S6において、過去(0.2秒前の本処理)の安静レベルが0か否かを判定し、過去の安静レベルが0の場合(S6=Yes)場合には、S7に進み、安静レベル=0であった連続継続時間が10秒に満たない(S7=No)場合には、安静レベル=0のままとして最初(S1)に戻る一方、安静レベル=0であった連続継続時間が10秒に達した(S7=Yes)場合には、S8に進み、安静レベル=1としてRAM46に記憶し、最初(S1)に戻る。一方、過去の安静レベルが0でない場合(S6=No)場合には、S9に進む。続いて、安静判定手段Bは、S9において、過去(0.2秒前の本処理)の安静レベルが1か否かを判定し、過去の安静レベルが1の場合(S9=Yes)場合には、S10に進み、安静レベル=1であった連続継続時間が51.2秒(0.2秒×256行)に満たない(S10=No)場合には、安静レベル=1のままとして最初(S1)に戻る一方、安静レベル=1であった連続継続時間が51.2秒に達した(S10=Yes)場合には、S12に進み、安静レベル=2としてRAM46に記憶し、S14に進む。一方、過去の安静レベルが1でもない場合(S9=No)、すなわち既に過去の安静レベルが2であった場合には、S11に進み、安静レベル=2を維持してRAM46に記憶し、S13に進む。
上述のようにして、データ処理装置40の安静判定手段Bは、S3〜S12において、就寝者12の安静判定を行う。かかる安静判定手段Bは、要するに、重心位置の移動量:rが所定の閾値(例えば1cm)の範囲内にある状態が所定期間(およそ60秒=10秒+51.2秒)持続した場合に、就寝者12が安静状態にあると判定されるようになっているのである。すなわち、重心位置の移動量:rが閾値例えば1cmの範囲を逸脱した場合には体動が発生したとして、また重心位置の移動量:rが所定の閾値の範囲内にある状態が上記の所定期間持続していない場合には安静になりかけの状態であるとして、就寝者12は非安静状態にあると判定するようになっているのである。ここで、安静判定手段Bにおいて設定される重心位置の移動量:rに関する閾値は、現在すなわち現処理における重心位置(an ,bn )と直前の重心位置(an-1 ,bn-1 )との差分値に基づいて計算されるようになっている(数2参照)。
次に、上記S3〜S12において、安静判定手段Bによる就寝者12の安静判定が実行された後、データ処理装置40の感圧点選択手段Cは、以下のS13〜S15において感圧点38を選択し、さらにデータ処理装置40の呼吸波形算出手段Dが、かかる感圧点38から呼吸波形を算出するようになっている。
より詳細には、データ処理装置40の感圧点選択手段Cは、S13〜S15において、安静レベルが2でありかつ感圧点38が未選択の場合(S12)または安静レベル=2の状態の連続継続時間が5分を経過した(S13=Yes)場合には、S14に進み、多点検知型感圧センサ20から、就寝者12の呼吸波形計測に適した感圧点38を選択する。すなわち、本実施形態のデータ処理装置40の感圧点選択手段Cが実行する処理内容には、安静判定手段Bにおいて就寝者12が安静状態にあるとの判定である安静レベル=2の連続継続時間が所定期間(本実施形態では5分)継続した(S13=Yes)場合において、呼吸波形算出手段Dで用いる感圧点38を再度選択するようにした定期更新判定手段c1(S13)が含まれているのである。
次に、感圧点選択手段Cは、S14において呼吸波形計算感圧点の選択を行う。具体的な処理内容を図6を用いて説明する。先ず、感圧点選択手段Cは、S140において、S1で取得した全ての感圧点38の出力値であって、少なくとも安静レベル1の連続継続時間中に得られた出力値に基づく圧力変動時系列データに対してFFT解析(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)を行い、全ての感圧点38における周波数毎のパワースペクトルを求める。そして、S141において、かかる全ての感圧点38におけるパワースペクトルを用いて、全周波数帯域における積分値と、呼吸周波数帯域(例えば0.05〜0.5Hz)における積分値を計算し、全周波数帯域における積分値に対する呼吸周波数帯域における積分値の割合が最大となる感圧点38を就寝者12の呼吸波形計測に適したものとして選択して、感圧点選択手段C(S14)を終了する。
続いて、データ処理装置40の呼吸波形算出手段Dは、S15において、上記感圧点選択手段Cにより選択された感圧点38の出力値に基づいて、就寝者12の呼吸波形を算出する。より詳細には、かかる呼吸波形算出手段Dは、上記感圧点選択手段C(S14)により選択された感圧点38の出力値から得られる圧力変動時系列データに対して、0.05Hz〜0.5Hzを通過帯域とするバンドパスフィルタを実行して得られた波形を呼吸波形として算出されるようになっている。
上述したように、S3〜S12における安静判定手段Bにより就寝者12が安静状態にあると判定されていることを条件として、感圧点選択手段C(S14)によって全周波数帯域における積分値に対する呼吸周波数帯域における積分値の割合が最大となる感圧点38を就寝者12の呼吸波形計測に適したものとして選択し、かかる感圧点38を用いて呼吸波形算出手段D(S15)により呼吸波形を算出するようになっている。一方、S3〜S12における安静判定手段Bにより就寝者12が非安静状態にあると判定された場合、すなわち重心位置の移動量:rが閾値を逸脱した場合や重心位置の移動量:rが閾値の範囲内にある状態が所定期間持続していない場合には、呼吸波形算出手段D(S15)に進むことができず、呼吸波形算出手段D(S15)による呼吸波形の算出が中断されるようになっているのである。
そして、呼吸波形算出手段D(図5中、S15)が終了した後に、データ処理装置40は、S16において、呼吸波形の計測を終了するか否かを判断する。かかる判断は、例えば、データ処理装置40に設けられた図示しない操作ボタン(操作ボタンは、データ処理装置40に設けられたモニタ50上に表示されるGUI等でも良い)を使用者が操作すること等によって行われる。引き続き呼吸波形の計測を行う場合(S16=No)には、新たな圧力データの取得(S1)〜呼吸波形計測終了の判断(S16)を繰り返して呼吸データの取得を継続する。その際、安静状態が継続する限り、図5のS11→S13→S15→S16が繰り返し実行されることとなり、感圧点38の変更を伴うことなく、同じ感圧点38から継続して呼吸波形の計測を行うことができる。そして、感圧点38が、定期更新判定手段c1(S13)を含んでいることにより、所定期間(例えば5分)以上安静判定が継続した場合には、感圧点38の再選択(S14)が行われる。一方、呼吸波形の計測を終了する場合(S16=Yes)には、図5に示す一連の作業を完了するようになっている。
本実施形態に従う構造とされた呼吸波形計測装置10によれば、重心位置算出手段Bである面圧中心計算(S2)において、就寝者12を支持する床部16の支持面18上に敷設された多点検知型感圧センサ20の各感圧点38の出力値に基づいて、就寝者12の重心位置(an ,bn )が例えば0.2秒の所定間隔毎に算出されるようになっている。そして、かかる重心位置データから算出された重心位置の移動量:rに基づいて、S3〜S12における安静判定手段Bによって就寝者12の安静度が判定されるようになっている。より詳細には、就寝者12の重心位置の移動量:rが所定の閾値(例えば1cm)の範囲内にある状態が所定期間(例えば15秒)継続した場合に、安静判定手段Bにおいて、就寝者12が安静状態にあると判定されるようになっている。それゆえ、就寝者12の安静状態判定の確実性を向上させることができるのである。また、上記条件を満たさない場合には、速やかに非安静状態との判定がされ呼吸波形の計測が中断されることから、確実に安静状態での呼吸波形の取得を実現することができる。
そして、S3〜S12における安静判定手段Bにより就寝者12が安静状態にあると判定されていることを条件として、感圧点選択手段C(S14)によって全周波数帯域における積分値に対する呼吸周波数帯域における積分値の割合が最大となる感圧点38を選択し、かかる感圧点38を用いて呼吸波形算出手段D(S15)により呼吸波形が算出されるようになっている。これにより、従来の如き感圧点38の頻繁な遷移による呼吸波形の乱れ等の不具合を確実に解消することができることから、就寝者12の呼吸状態に対応した安定した呼吸波形を有利に計測することが可能となっている。しかも、本実施形態によれば、さらに定期更新判定手段c1(S13)を備えており、就寝者12が安静状態にある連続継続時間が所定期間(本実施形態では5分)継続した場合には、改めて感圧点選択手段C(S14)において、就寝者12の呼吸波形計測に適した感圧点38を選択する感圧点選択手段Cが実行されるようになっている。このように呼吸波形を反映する感圧点38を定期的に更新することにより、確実な呼吸波形の取得を一層有利に実現することができるようになっている。
加えて、呼吸波形算出手段D(S15)において、感圧点選択手段C(S14)により選択された感圧点38の出力値から得られる圧力変動時系列データに対して、0.05Hz〜0.5Hzを通過帯域とするバンドパスフィルタを実行して得られた波形を呼吸波形として算出する。これにより、心拍に関連する周波数成分を除去しつつ、呼吸に関連した周波数帯域を広くサンプリングすることができるようになっている。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、安静判定手段Bが実行する安静判定の条件は、就寝者12の就寝時の傾向に応じて、上記数2および数3の閾値のいずれか一方を設定するようにしてもよい。また、上記実施形態では、多点検知型感圧センサ20上に就寝者12の頸部24から腹部26に亘る部位のみが載置されるようになっていたが、かかる部位以外例えば就寝者12の全身が多点検知型感圧センサ20上に載置されていてもよい。さらに、上記実施形態では、多点検知型感圧センサ20は、複数(8×8=64個)の感圧点38が誘電層28の略全面に亘って縦横に略均等に配置されていたが、感圧点38の個数は任意の値に設定可能であると共に、感圧点38は誘電層28に対して不均一に例えば呼吸に関連すると考えられる部位である胸部や腹部26において密になるように配置されていてもよい。なお、上記実施形態では、データ処理装置40における作業内容や測定結果等は、モニタ50に出力されるようになっていたが、プリンタや音声等の公知の任意の出力手段に出力可能である。
10:呼吸波形計測装置、12:就寝者、18:支持面、20:多点検知型感圧センサ、38:感圧点、A:重心位置算出手段、B:安静判定手段、C:感圧点選択手段、c1:定期更新判定手段、D:呼吸波形算出手段
Claims (6)
- 就寝者を支持する支持面に分散配置される多数の感圧点を備え、各前記感圧点が前記就寝者による印加圧力に対応した出力値を出力する多点検知型感圧センサと、
前記多点検知型感圧センサの各前記感圧点の前記出力値に基づき前記就寝者の重心位置を所定間隔で算出する重心位置算出手段と、
前記所定間隔で得られた前記重心位置から前記重心位置の移動量を算出し、該重心位置の移動量に基づき前記就寝者の安静判定を行う安静判定手段と、
前記多点検知型感圧センサから、前記就寝者の呼吸波形計測に適した前記感圧点を選択する感圧点選択手段と、
前記感圧点選択手段により選択された前記感圧点の前記出力値に基づき、前記就寝者の呼吸波形を算出する呼吸波形算出手段を備え、
前記安静判定手段により前記就寝者が安静状態にあると判定されていることを条件として、前記感圧点選択手段が前記感圧点を選択し、前記呼吸波形算出手段が前記感圧点選択手段により選択された前記感圧点から前記呼吸波形を算出する一方、
前記安静判定手段により前記就寝者が非安静状態にあると判定された場合に、前記呼吸波形算出手段が前記呼吸波形の算出を中断するようになっている
ことを特徴とする呼吸波形計測装置。 - 前記安静判定手段が、前記重心位置の移動量が所定の閾値の範囲内にある状態が所定期間持続した場合に、前記就寝者が安静状態にあると判定し、
前記重心位置の移動量が前記閾値の範囲を逸脱し、または前記重心位置の移動量が前記所定の閾値の範囲内にある状態が前記所定期間持続していない場合に、前記就寝者が非安静状態にあると判定するようになっている請求項1に記載の呼吸波形計測装置。 - 前記安静判定手段において設定される前記重心位置の移動量に関する前記閾値が、現在の前記重心位置と直前の前記重心位置との差分値と、前記所定期間における前記重心位置の移動量の合計値の少なくとも一方を含んでいる請求項2に記載の呼吸波形計測装置。
- 前記安静判定手段において前記就寝者が安静状態にあるとの判定が所定期間継続した場合に、前記呼吸波形算出手段で用いる前記感圧点を前記感圧点選択手段により再選択するようにした定期更新判定手段をさらに含んでいる請求項1〜3の何れか1項に記載の呼吸波形計測装置。
- 前記感圧点選択手段が、前記複数の感圧点のうち、前記出力値から得られる圧力変動時系列データのパワースペクトルの全積分に対する呼吸帯域の占める割合が最大となる感圧点を前記就寝者の呼吸波形計測に適したものとして選択している請求項1〜4の何れか1項に記載の呼吸波形計測装置。
- 前記呼吸波形算出手段が、選択された前記感圧点の前記出力値から得られる圧力変動時系列データに対して、0.05Hz〜0.5Hzを通過帯域とするバンドパスフィルタを実行して得られた波形を呼吸波形として算出する請求項1〜5の何れか1項に記載の呼吸波形計測装置。
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