JP2016194126A - クロム含有スラグからのクロム回収方法 - Google Patents
クロム含有スラグからのクロム回収方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2016194126A JP2016194126A JP2015075083A JP2015075083A JP2016194126A JP 2016194126 A JP2016194126 A JP 2016194126A JP 2015075083 A JP2015075083 A JP 2015075083A JP 2015075083 A JP2015075083 A JP 2015075083A JP 2016194126 A JP2016194126 A JP 2016194126A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- slag
- chromium
- concentration
- mass
- electric furnace
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Granted
Links
Classifications
-
- Y—GENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
- Y02—TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
- Y02P—CLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
- Y02P10/00—Technologies related to metal processing
- Y02P10/20—Recycling
Landscapes
- Manufacture And Refinement Of Metals (AREA)
- Treatment Of Steel In Its Molten State (AREA)
Abstract
Description
・高炉溶銑を用いて、転炉でFe−Crを投入しながら粗脱炭を行い、AOD又はVOD等で脱炭精錬を行うプロセス。
・スクラップやFe−Cr等の合金鉄を主原料として電気炉で溶解し、その後、脱炭精錬を行うプロセス。
・Cr鉱石を溶融還元しながら、粗溶鋼(溶銑)を溶製し、その後、脱炭精錬を行うプロセス。
現在は、この有価金属であるクロム分を回収するため、転炉やAOD、VOD等の多量にクロムが酸化するプロセスにおいては、吹止後にFe−Si合金を添加し、Siによってクロム酸化物を溶鉄中に還元回収してから出鋼する方法が主流である。
特許文献1に記載の方法は、本発明者らの知見では、クロム酸化物を含有するスラグの粒径が大きな場合、スラグの迅速な加熱を実現できず、短時間の処理ではクロム酸化物含有スラグの未溶解が発生する。このため、クロム酸化物含有スラグの溶解と還元を完了させるには、一定時間以上の処理が必要となり、クロム酸化物含有スラグの効率的な溶解と還元が、十分に実現できないものであった。
また、特許文献2に記載の方法は、電気炉内でスラグが固化状態のままではクロムの還元速度が極めて遅く、精錬が長時間にわたる。なお、スラグの溶解を促進して還元速度を上昇させるためには、環境問題により規制されているフッ素を含有する蛍石を使用せざるを得ない。
特許文献3に記載の方法は、電気炉内で生じた少量のクロム酸化物の還元を目的としており、他工程で発生したクロム酸化物を含む多量の還元回収においては、還元前にスラグを液状に維持することが難しく、効率的な還元処理を期待できない。
そして、特許文献4に記載の方法は、クロム酸化物の溶解を電気アーク炉内で完了せず、また、出湯後に取鍋内を撹拌する装置や、雰囲気の酸素濃度を10%以下に維持する装置が別途必要となり、効率的でない。
また、還元処理により溶鋼中の溶存酸素濃度が低下するため、炉内もしくは出鋼時に空気を巻込む結果、溶鉄中の窒素濃度が上昇し、加工性等の材質を悪化させるといった課題もあった。
前記スラグを一部又は全部含む篩目25mmオーバーの前記副原料が、前記電気炉への装入物の5質量%以上30質量%以下、かつ、篩目3.15mmアンダーの前記副原料が、前記電気炉への装入物の3質量%以上であり、
還元処理後の溶鉄の温度Tが1500℃以上であって、
還元処理後の溶鉄中のC濃度とSi濃度が、(1)式を満たす量となる炭素源と珪素源を、前記電気炉に添加し、かつ、還元処理後の前記スラグ中のCaO濃度とSiO2濃度とAl2O3濃度の関係が、(2)式を満たす量となる生石灰及び石灰石のいずれか一方又は双方とアルミナ源を、前記電気炉に添加する。
C≧−29.4+0.015×(T+273)−0.003×(T+273)×log(Si) ・・・(1)
0.04≦(CaO)/{(SiO2)×(Al2O3)}≦0.20 ・・・(2)
ここで、CとSiはそれぞれ還元処理後の溶鉄中のC濃度(質量%)とSi濃度(質量%)、CaOとSiO2とAl2O3はそれぞれ還元処理後のスラグ中のCaO濃度(質量%)とSiO2濃度(質量%)とAl2O3濃度(質量%)、Tは還元処理後の溶鉄の温度(℃)、である。
なお、上記した電気炉への装入物とは、電気炉で溶鉄を溶製する際に、電気炉に装入するものであり、上記した金属原料と副原料を含む。
本発明の一実施の形態に係るクロム含有スラグからのクロム回収方法は、金属原料を用いて溶鉄を電気炉(アーク式電気炉)で溶製する際に、クロム酸化物が5質量%以上含まれるスラグを含む副原料を電気炉に添加して、溶鉄中あるいは付加的に添加される合金に含まれる珪素と炭素により、スラグ中のクロム酸化物を還元して、クロムを溶鉄中に還元回収する方法である。なお、副原料の電気炉への添加は、金属原料の溶解開始前の装入でもよく、また、溶解中の上方からの添加でもよい。
副原料に含まれクロム酸化物を含むスラグを電気炉に添加し、溶鉄中あるいは付加的に添加される合金に含まれる珪素と炭素により、クロムを溶鉄中に還元回収する。
この還元回収に際し、本発明者らの知見では、上記クロム酸化物を含むスラグのうち、篩目25mmオーバー(以下、塊状ともいう)のものは溶解しにくく、また、溶解していない塊状のスラグ中のクロム酸化物の還元性は悪いものであった。
この対策として、副原料の微粉比率を規定して、上記した塊状の「クロム酸化物を含むスラグ」の溶解を促進し、効率的な還元回収を可能とする。なお、副原料の微粉比率とは、篩目3.15mmアンダー(以下、微粉ともいう)の副原料の質量を、電気炉への装入物(以下、電気炉装入物ともいう)の質量で割った値である。
更に、溶鉄の温度、溶鉄中の炭素と珪素の濃度、及び、スラグ組成を規定することで、効率的な還元回収を可能とする。
例えば、スラグ中のアルミナ濃度を規定し、滓化性を確保することで、環境問題により規制されているフッ素(F)を使用しない。
また、溶鉄の撹拌動力密度を規定することにより、溶鉄とスラグの接触機会を増やし、効率的なクロム酸化物の還元回収処理を行う。
これらの条件を、前記した条件、即ち、副原料の微粉比率、溶鉄の温度、溶鉄中の炭素と珪素の濃度、及び、スラグ組成に、更に加えることで、溶鉄中のクロム濃度が高濃度であっても、効率的なクロム酸化物の還元回収処理が行える。
クロム酸化物が5質量%以上含まれるスラグを含む副原料のうち、スラグを一部又は全部含む篩目25mmオーバーの副原料が、電気炉への装入物の5質量%以上30質量%以下、かつ、篩目3.15mmアンダーの副原料が、電気炉への装入物の3質量%以上であり、
還元処理(還元精錬)後の溶鉄の温度Tが1500℃以上であって、
還元処理後の溶鉄中のC濃度とSi濃度が、(1)式を満たす量となる炭素源と珪素源を、電気炉に添加し、かつ、還元処理後のスラグ中のCaO濃度とSiO2濃度とAl2O3濃度の関係が、(2)式を満たす量となる生石灰及び石灰石のいずれか一方又は双方とアルミナ源を、電気炉に添加する。
C≧−29.4+0.015×(T+273)−0.003×(T+273)×log(Si) ・・・(1)
0.04≦(CaO)/{(SiO2)×(Al2O3)}≦0.20 ・・・(2)
ここで、CとSiはそれぞれ還元処理後の溶鉄中のC濃度(質量%)とSi濃度(質量%)、CaOとSiO2とAl2O3はそれぞれ還元処理後のスラグ中のCaO濃度(質量%)とSiO2濃度(質量%)とAl2O3濃度(質量%)、Tは還元処理後の溶鉄の温度(℃)、である。
以下、詳しく説明する。
上記した副原料、即ちクロム酸化物が5質量%以上含まれるスラグ(以下、クロム酸化物含有スラグともいう)を含む副原料の粒度は、加熱溶解しにくい粒度を規定する構成であり、本発明の課題を設定する構成である。
この副原料としては、酸化物(生石灰、珪石、マグネシア、アルミナ、廃炉材、金属酸化物)、炭酸化物(石灰石、ドロマイト)、水酸化物(金属や半金属の水酸化物)、を含むものがある。
なお、副原料に含まれるクロム酸化物含有スラグとして、ステンレス鋼の転炉脱炭スラグ等を想定すると、スラグにはクロム酸化物が5質量%以上含まれる。一方、上限は、特に規定する必要はないが、通常50質量%程度である。
副原料として、生石灰の代替となる上記したステンレス鋼の転炉脱炭スラグ(クロム酸化物含有スラグ)の塊状物等の使用を想定すると、塊状副原料は、電気炉装入物の5質量%以上30質量%以下となる。
なお、上記した篩目25mmオーバー(+25mmともいう)と篩目3.15mmアンダー(−3.15mmともいう)はそれぞれ、JIS Z8801−2:2000の公称目開き25mmの板ふるいの篩上に残留するものと、公称目開き3.15mmの板ふるいの篩下のもの、を指す。
ここで、電気炉装入物とは、上記した副原料と金属原料からなることから、微粉の副原料(以下、微粉副原料ともいう)が電気炉装入物の3質量%以上を前提とすると、上記したように、塊状副原料が電気炉装入物の5質量%以上であるため、金属原料は電気炉装入物の92質量%以下となる。
微粉副原料は、溶鉄との接触により容易に溶解する。
そこで、本発明は、この溶解した副原料を用いて、塊状副原料、即ち塊状のクロム酸化物含有スラグの溶解を促進する。なお、微粉副原料には、クロム酸化物含有スラグが含まれてもよいが、含まれなくてもよい。
電気炉装入物に対する微粉副原料の質量比率が3質量%以上であれば、この微粉副原料が溶解した後に塊状副原料の周囲に存在することとなり、電気炉のアークジェット流による撹拌作用も含めて、塊状副原料の加熱や溶解の促進に寄与できる。
また、塊状副原料に一部又は全部含まれるクロム酸化物含有スラグでは、スラグ中のクロム酸化物が溶解され、クロム酸化物の溶鉄による還元反応が、固体〜液体間の反応から、液体〜液体間の反応に変わる。これにより、クロム酸化物の還元反応の指標であるクロム還元容量係数が、0.01(1/分)程度から0.05(1/分)以上へと大幅に向上し、還元反応を効率的に進めることができる。なお、クロム還元容量係数とは、単位時間あたりのクロム酸化物の濃度変化を表す値であり、還元反応の進み易さの指標である。
一方、電気炉装入物に対する微粉副原料の質量比率の上限は、特に定めないが、25mmオーバーが5質量%〜30質量%程度であれば、製造する溶鉄の量を確保する上で、25質量%であればよい。
クロム酸化物の還元速度と還元処理後の到達Cr2O3濃度は、溶鉄の温度にも依存する。還元後の溶鉄の温度Tを1500℃以上とすることで、クロム酸化物が効率よく還元可能となる。
平衡論的には、クロムの還元が進行するSiとCの成分範囲は、高温になるほど高濃度が必要になるが、前記した(1)式を満足する条件下で、還元処理後の溶鉄の温度Tが1500℃以上の場合に、クロム酸化物が効率よく還元可能となる。
なお、溶鉄の温度Tの上限は、特に規定する必要はないが、耐火物の損耗を考慮すれば、1700℃程度である。
塊状副原料が多く存在していても、微粉副原料を一定の割合で含有させることで塊状副原料の加熱溶解を促進し、また、還元処理後の溶鉄の温度Tが1500℃以上であり、前記した(2)式を満足することで、スラグに好ましい粘度条件が確保できた場合に、前記した(1)式(特許文献1に記載の(1)式と同じ)を充足する温度、C濃度、Si濃度であれば、スラグの還元が好適に実現できることを知見した。
還元処理後のスラグ中のCaO濃度、SiO2濃度、Al2O3濃度が、前記した(2)式を満たすことで、クロム酸化物の効率的な還元処理が可能となる。なお、生石灰及び石灰石のいずれか一方又は双方とアルミナ源を、電気炉に添加することで、スラグ組成を適正な領域(即ち、(2)式)に制御する。
撹拌力の弱い電気炉内で、高濃度のクロム酸化物を含むスラグからクロム分を効率よく回収するためには、スラグの溶解性と共に粘度の影響が大きく、スラグの溶解と共に粘度の低下を図ることが肝要である。このスラグの粘度は、塩基性スラグにAl2O3を添加した場合は増加し、酸性スラグにAl2O3を添加した場合は低下することが、一般的に知られている(例えば、前記した非特許文献1:第3版 鉄鋼便覧 第I巻、p.43)。
上記したスラグのM.S.I.が増加するに伴い、スラグの粘度は低下できる。即ち、M.S.I.を0.04以上、好ましくは0.06以上とすることで、還元処理前は30質量%超の高濃度であったスラグ中のCr2O3濃度を、還元処理後に10質量%未満の低濃度まで、効率的に還元できることを知見した。
一方、M.S.I.が0.20超となった場合には、スラグの融点が著しく増加してスラグの溶解が阻害され、クロムの還元速度が大きく低下することも知見した。従って、クロムの還元速度を確保するためには、M.S.I.を0.20以下、好ましくは0.18以下、更に好ましくは0.16以下とすることが望ましい。
スラグ性状の点から、還元処理後のスラグ中のAl2O3濃度を適正範囲とすることで、実質的にフッ素を使用することなく、スラグを溶解し、クロム酸化物の効率的な還元が可能である。
ここで、スラグの融点を下げ、クロム酸化物の還元速度を向上させるためには、Al2O3濃度を5質量%以上とすることが望ましく、10質量%以上であれば更に望ましい。
一方、Al2O3濃度が30質量%を超えると、スラグ溶解によるクロム酸化物の還元促進効果は期待できず、アルミナ源のコストがかさむだけであることから、30質量%以下が望ましい。
ここで、実質的に添加しないとは、還元精錬後のスラグからフッ素の溶出が顕著には認められないことを指すもので、本発明者らの知見では、精錬後のスラグ組成において、CaF2換算で0.5質量%以下となる場合を指すが、0.3質量%以下であれば更に好ましい。
スラグ中のクロム酸化物を効率的に還元するに際しては、電気炉操業時の撹拌動力密度に適正域が存在する。
この撹拌動力密度を0.01kW/トン以上とすることにより、クロム酸化物の効率的な還元のための撹拌効果を得ることが可能となる。一方、撹拌動力密度が1.0kW/トンを超えると、底吹ガスが溶湯を吹抜けて撹拌に寄与しなかったり、また、溶湯面の変動が激しくなり、操業は可能であるが耐火物の溶損が目立つ場合等があるため、1.0kW/トン以下とすることが望ましい。
ε=(0.371×Q×Tl/W)×[ln{1+(9.8×ρl×h)/Pa}+η(1−Tn/Tl)] ・・・(3)
ここで、ε:撹拌動力密度(kW/トン)、Q:底吹きガス流量(Nm3/秒)、Tl:溶鉄の温度(K)、W:溶鉄の質量(kg)、Tn:吹込みガス温度(K)、ρl:溶鉄の密度(kg/m3)、h:ガス供給口における浴深(m)、Pa:雰囲気の圧力(Pa)、η:温度膨張項の寄与度(=0.06)、である。
ここでは、アーク式電気炉に金属原料を装入して溶鉄を溶製する際に、クロム酸化物を含むスラグを添加し、スラグ中のクロム酸化物を還元して、クロムを溶鉄中に還元回収した。なお、アルミナ源を添加するに際しては、アルミナ灰を通電開始前に添加し、生石灰を添加するに際しては、溶解中に上方ホッパーより添加した。また、溶湯の撹拌を行う場合は、底吹きArガスを吹込み、撹拌動力密度を前記した(3)式に基づいて算出した。
この実験条件を以下に示す。
ここでは、100トンの溶湯が溶製できるアーク式電気炉(アーク式溶解炉)を用いて実験を行った。なお、アーク式電気炉としては、10〜150トン、望ましくは30〜100トンの炉を想定している。
<金属原料>・・・合計55トン(電気炉装入物の55質量%)
実験には、炭素源と珪素源を含む金属原料である、スクラップ、鋳銑(高炉溶銑を凝固させたもの)、及び、合金鉄(Fe−Cr)を用いた。
<副原料>・・・合計45トン(電気炉装入物の45質量%)
・Cr2O3を33〜39質量%含むスラグ:総量43トン(電気炉装入物の43質量%)
上記スラグのうち、25mmオーバーの塊状のスラグを30トン(電気炉装入物の30質量%)とし、3.15mmアンダーの微粉のスラグを、0.1トン(電気炉装入物の0.1質量%)と3トン(電気炉装入物の3質量%)の2水準とした。
・残部:中間粒度(3.15mmオーバー、かつ、25mmアンダー)のアルミナ源(アルミナ灰)と生石灰
アーク電極3本、40MW、合計通電時間は60分で一定。
溶鉄の温度Tは、1485℃又は1500℃に設定した。
・還元処理後のスラグ組成「(CaO)/{(SiO2)×(Al2O3)}」は、0.01、0.04、0.06、0.16、0.18、0.20、又は、0.25、に設定した。
・還元処理後のスラグ中のAl2O3濃度は、4.8質量%、5.0質量%、又は、10.0質量%、に設定した。
・撹拌動力密度は、0.00kW/トン、0.01kW/トン、1.0kW/トン、又は、1.5kW/トン、に設定した。なお、撹拌動力密度は、前記した(3)式のガス供給口ごとの撹拌動力密度の合計値である。また、上記した「0.00kW/トン」とは、底吹きガスを吹込まない条件を意味する。
・還元処理後の溶鉄中のCr濃度は、9質量%、20質量%、50質量%、60質量%、又は、61質量%にした。
「スラグ組成(C/(S・A))」とは、前記した式(2)中の「(CaO)/{(SiO2)×(Al2O3)}」の数値である。
「耐火物評価」とは、通電処理後、電気炉炉体より溶湯とスラグを鍋へ排出する際に、出湯口及び電気炉炉内を目視観察した結果である。評価は、電気炉の耐火物損耗状況として、スラグ接触面の凹みが確認されなければ「○」、若干の凹みが確認されたが操業上支障がないものを「△」、凹みの存在が確認され操業上支障のあるものを「×」、とそれぞれ評価した。
なお、表1においては、参考までに「還元処理後Cr2O3/Cr」を付記している。
これは、還元処理後の溶鉄中のCr濃度に対する、還元処理後のスラグ中のCr2O3濃度を算出した値であり、この値が小さいほど、効率的に還元処理ができていることを意味している。なお、ここでは、0.5以下が好ましいと考えている。
このため、還元処理後のスラグ中のCr2O3濃度は10質量%以下となり、クロムの還元処理を効率よく実施できることを確認できた。なお、電気炉の耐火物損耗状況についても、「△」以上の結果が得られた。
以下、実施例1をベース条件として、この実験条件を種々変更した結果について説明する。
比較例16は、実施例1のクロム酸化物含有スラグの微粉比率を、適正範囲の下限値未満(0.1質量%)にした結果である。
このため、塊状スラグの加熱や溶解の促進に寄与する微粉スラグの量が不足し、クロム酸化物中のクロムを効率的に還元できず、スラグ中のCr2O3濃度が10質量%超となった(評価:不良)。
比較例19は、実施例1の溶鉄の温度を、適正範囲の下限値未満(1485℃)にした結果である。
このため、溶鉄の温度が低過ぎて、クロム酸化物中のクロムを効率的に還元できず、スラグ中のCr2O3濃度が10質量%超となった(評価:不良)。
実施例1は、還元処理後の溶鉄中のC濃度とSi濃度の関係が(1)式を満たした場合の結果である。なお、実施例1は、右辺の値が「−1.2」、左辺の値が「4.2」である。
一方、比較例17、18は、還元処理後の溶鉄中のC濃度とSi濃度の関係が(1)式を満たさない場合の結果である。なお、比較例17は、右辺の値が「0.4」、左辺の値が「0.3」であり、比較例18は、右辺の値が「4.6」、左辺の値が「4.2」である。
このため、比較例17、18は、スラグの還元を好適に実現できず、スラグ中のCr2O3濃度が10質量%超となった(評価:不良)。
実施例1、2、7〜9は、スラグ組成(C/(S・A))の数値が、前記した(2)式の適正範囲内となった結果である。なお、実施例1、2は、スラグ組成(C/(S・A))の数値を、適正範囲の下限値と上限値にした結果であり、実施例7〜9は、この適正範囲内の更に好ましい値とした結果である。
表1から明らかなように、スラグ組成(C/(S・A))の数値を好ましい値とすることで、実施例1よりも実施例7で、また、実施例2よりも実施例8、更には実施例9で、還元処理後のスラグ中のCr2O3濃度を更に低減できた。
また、比較例21は、スラグ組成(C/(S・A))の数値を、適正範囲の上限値超(0.25)にした結果である。このため、スラグの融点が著しく増加してスラグの溶解が阻害され、クロムの還元速度が大きく低下し、スラグ中のCr2O3濃度が10質量%超となった(評価:不良)。
実施例1、4は、実施例10のスラグ中のAl2O3濃度を、最適範囲内(実施例1:5.0質量%、実施例4:10.0質量%)にした結果である。表1の実施例1、4から明らかなように、スラグ中のAl2O3濃度を最適範囲内とすることで、還元処理後のスラグ中のCr2O3濃度を、実施例10よりも低減できた。
なお、実施例11は、Al2O3と共に蛍石(CaF2)を添加した結果である。この場合、スラグの流動性が上昇して、耐火物に若干の凹みが確認されたが、操業上の支障はなく、還元処理後のスラグ中のCr2O3濃度も低減できた。
実施例1、3は、撹拌動力密度を最適範囲内(実施例1:0.01kW/トン、実施例3:1.0kW/トン)にした結果であり、実施例12は、撹拌動力密度を、この最適範囲の下限値未満(0.00kW/トン)に、実施例13は、この最適範囲の上限値超(1.5kW/トン)に、それぞれ設定した結果である。
表1の実施例1、3から明らかなように、撹拌動力密度を最適範囲内にすることで、実施例12、13よりも、還元処理後のスラグ中のCr2O3濃度を低減できた。なお、実施例13は、撹拌動力密度が大きくなり、耐火物に若干の凹みが確認されたが、操業上支障はなかった。
Claims (3)
- 金属原料を用いて溶鉄を電気炉で溶製する際に、クロム酸化物が5質量%以上含まれるスラグを含む副原料を前記電気炉に添加して、溶鉄中あるいは付加的に添加される合金に含まれる珪素と炭素により、前記スラグ中のクロム酸化物を還元して、クロムを溶鉄中に還元回収する方法において、
前記スラグを一部又は全部含む篩目25mmオーバーの前記副原料が、前記電気炉への装入物の5質量%以上30質量%以下、かつ、篩目3.15mmアンダーの前記副原料が、前記電気炉への装入物の3質量%以上であり、
還元処理後の溶鉄の温度Tが1500℃以上であって、
還元処理後の溶鉄中のC濃度とSi濃度が、(1)式を満たす量となる炭素源と珪素源を、前記電気炉に添加し、かつ、還元処理後の前記スラグ中のCaO濃度とSiO2濃度とAl2O3濃度の関係が、(2)式を満たす量となる生石灰及び石灰石のいずれか一方又は双方とアルミナ源を、前記電気炉に添加することを特徴とするクロム含有スラグからのクロム回収方法。
C≧−29.4+0.015×(T+273)−0.003×(T+273)×log(Si) ・・・(1)
0.04≦(CaO)/{(SiO2)×(Al2O3)}≦0.20 ・・・(2)
ここで、CとSiはそれぞれ還元処理後の溶鉄中のC濃度(質量%)とSi濃度(質量%)、CaOとSiO2とAl2O3はそれぞれ還元処理後のスラグ中のCaO濃度(質量%)とSiO2濃度(質量%)とAl2O3濃度(質量%)、Tは還元処理後の溶鉄の温度(℃)、である。 - 請求項1記載のクロム含有スラグからのクロム回収方法において、還元処理後の前記スラグ中のAl2O3濃度が5質量%以上30質量%以下となるように、前記電気炉に前記アルミナ源を添加し、実質的にフッ素を使用しないことを特徴とするクロム含有スラグからのクロム回収方法。
- 請求項1又は2記載のクロム含有スラグからのクロム回収方法において、前記電気炉の操業時の撹拌動力密度を、0.01kW/トン以上1.0kW/トン以下にすることを特徴とするクロム含有スラグからのクロム回収方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015075083A JP6451462B2 (ja) | 2015-04-01 | 2015-04-01 | クロム含有スラグからのクロム回収方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015075083A JP6451462B2 (ja) | 2015-04-01 | 2015-04-01 | クロム含有スラグからのクロム回収方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2016194126A true JP2016194126A (ja) | 2016-11-17 |
JP6451462B2 JP6451462B2 (ja) | 2019-01-16 |
Family
ID=57322771
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2015075083A Active JP6451462B2 (ja) | 2015-04-01 | 2015-04-01 | クロム含有スラグからのクロム回収方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP6451462B2 (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN113430398A (zh) * | 2021-05-17 | 2021-09-24 | 攀钢集团攀枝花钢铁研究院有限公司 | 一种含有钒元素的JCr98级金属铬及其制备方法 |
KR20210142168A (ko) | 2019-04-19 | 2021-11-24 | 닛폰세이테츠 가부시키가이샤 | 크롬 함유 용철의 제조 방법 |
JP7447878B2 (ja) | 2021-07-30 | 2024-03-12 | Jfeスチール株式会社 | Cr溶湯の脱炭方法およびCr含有鋼の製造方法 |
Citations (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2001181725A (ja) * | 1999-12-27 | 2001-07-03 | Nippon Steel Corp | ステンレス溶鋼精錬スラグの改質方法 |
JP2002256323A (ja) * | 2001-02-27 | 2002-09-11 | Nippon Steel Corp | ステンレス溶鋼の粗脱炭スラグの改質方法 |
JP2003502504A (ja) * | 1999-06-23 | 2003-01-21 | エスエムエス・デマーク・アクチエンゲゼルシャフト | 酸化クロム含有スラグから金属クロムを回収するための方法 |
JP2007538156A (ja) * | 2004-05-18 | 2007-12-27 | ホルシム リミティド | 冶金スラグのクロム還元方法 |
JP2008163463A (ja) * | 2006-12-28 | 2008-07-17 | Posco | 含酸化クロムスラグからのクロム金属還元方法 |
JP2010090428A (ja) * | 2008-10-07 | 2010-04-22 | Nippon Steel Corp | クロム含有スラグからのクロム回収方法 |
JP2010242128A (ja) * | 2009-04-01 | 2010-10-28 | Nippon Steel Corp | 溶融金属の回収方法 |
-
2015
- 2015-04-01 JP JP2015075083A patent/JP6451462B2/ja active Active
Patent Citations (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2003502504A (ja) * | 1999-06-23 | 2003-01-21 | エスエムエス・デマーク・アクチエンゲゼルシャフト | 酸化クロム含有スラグから金属クロムを回収するための方法 |
JP2001181725A (ja) * | 1999-12-27 | 2001-07-03 | Nippon Steel Corp | ステンレス溶鋼精錬スラグの改質方法 |
JP2002256323A (ja) * | 2001-02-27 | 2002-09-11 | Nippon Steel Corp | ステンレス溶鋼の粗脱炭スラグの改質方法 |
JP2007538156A (ja) * | 2004-05-18 | 2007-12-27 | ホルシム リミティド | 冶金スラグのクロム還元方法 |
JP2008163463A (ja) * | 2006-12-28 | 2008-07-17 | Posco | 含酸化クロムスラグからのクロム金属還元方法 |
JP2010090428A (ja) * | 2008-10-07 | 2010-04-22 | Nippon Steel Corp | クロム含有スラグからのクロム回収方法 |
JP2010242128A (ja) * | 2009-04-01 | 2010-10-28 | Nippon Steel Corp | 溶融金属の回収方法 |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR20210142168A (ko) | 2019-04-19 | 2021-11-24 | 닛폰세이테츠 가부시키가이샤 | 크롬 함유 용철의 제조 방법 |
KR102556231B1 (ko) * | 2019-04-19 | 2023-07-18 | 닛폰세이테츠 가부시키가이샤 | 크롬 함유 용철의 제조 방법 |
CN113430398A (zh) * | 2021-05-17 | 2021-09-24 | 攀钢集团攀枝花钢铁研究院有限公司 | 一种含有钒元素的JCr98级金属铬及其制备方法 |
JP7447878B2 (ja) | 2021-07-30 | 2024-03-12 | Jfeスチール株式会社 | Cr溶湯の脱炭方法およびCr含有鋼の製造方法 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP6451462B2 (ja) | 2019-01-16 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5326475B2 (ja) | クロム含有スラグからのクロム回収方法 | |
JP6164151B2 (ja) | 転炉型精錬炉による溶鉄の精錬方法 | |
JP6230531B2 (ja) | 金属クロムの製造方法 | |
JP6451462B2 (ja) | クロム含有スラグからのクロム回収方法 | |
JP2011094210A (ja) | シリコクロムの脱炭素方法 | |
JP2007332432A (ja) | 溶鋼の精錬方法 | |
JP5408379B2 (ja) | 溶銑の予備処理方法 | |
JP4983303B2 (ja) | 溶銑精錬方法 | |
JP2008190015A (ja) | ステンレス溶銑の製造方法 | |
CN107058677A (zh) | 一种利用不锈钢电炉渣的冶炼方法 | |
JP5205799B2 (ja) | 含Cr低合金鋼の溶製方法 | |
KR20170106597A (ko) | 용선 탈황제 | |
AU2010290830A1 (en) | Processing of metallurgical slag | |
Steenkamp et al. | Introduction to the production of clean steel | |
JP5286892B2 (ja) | 溶銑の脱りん精錬方法 | |
JP4364456B2 (ja) | ステンレス溶鋼の溶製方法 | |
KR20210134310A (ko) | 스테인리스 강 및 페로크롬 가공으로부터의 용융 슬래그 및 잔류물의 조합된 제련 | |
JP2008063600A (ja) | 含クロム溶鉄の脱硫方法 | |
JP3063537B2 (ja) | ステンレス鋼の製造方法 | |
JP7338663B2 (ja) | 含クロム溶鉄の製造方法 | |
JP4854933B2 (ja) | 反応効率の高い精錬方法 | |
JP7255639B2 (ja) | 溶鋼の脱硫方法および脱硫フラックス | |
JPH10265827A (ja) | クロム含有鋼精錬スラグの再生利用方法および該スラグに含有される金属成分の回収利用方法 | |
WO2022054555A1 (ja) | 低リン溶鉄の製造方法 | |
JP6658246B2 (ja) | 耐火物を用いたスラグの希釈方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20171206 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20181023 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20181113 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20181126 |
|
R151 | Written notification of patent or utility model registration |
Ref document number: 6451462 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151 |
|
S533 | Written request for registration of change of name |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |