JP2016193812A - プレス成形用ガラス素材、ガラス光学素子およびその製造方法 - Google Patents

プレス成形用ガラス素材、ガラス光学素子およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】プレス成形後のガラス光学素子に泡が発生することを抑制するための手段を提供すること。
【解決手段】酸化物ガラスと、上記酸化物ガラスの表面の少なくとも一部を覆い、化学量論組成より酸素が欠損した金属酸化物膜である被覆層と、上記酸化物ガラスと被覆層との間に設けられた中間層と、を備え、上記中間層において、上記酸化物ガラスのガラス転移温度以上の温度における上記酸化物ガラスに含まれる酸素原子が拡散する速度は、上記温度における上記金属酸化物膜に含まれる金属原子が拡散する速度より速い、ガラス光学素子。プレス成形用ガラス素材。上記プレス成形用ガラス素材を用いるガラス光学素子の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、プレス成形用ガラス素材、ガラス光学素子およびその製造方法に関する。
ガラスレンズ等のガラス光学素子(以下、「光学素子」とも記載する。)を製造する方法として、対向する成形面を有する上型と下型により、プレス成形用ガラス素材をプレス成形する方法が知られている。
プレス成形によって光学素子を成形する際には、プレス成形用ガラス素材と成形型の成形面とが高温状態下で密着するため、それらの界面で化学反応が生じ、融着、クモリ、キズ状の反応痕等が発生しプレス成形により得られる光学素子の光学性能が低下することがある。
従来、上記反応痕の発生を防止するための手段として、プレス成形用ガラス素材の表面に被膜を一層以上設け、成形型とガラスとの反応を抑制することが提案されていた(例えば、特許文献1参照)。
特開2011−1259号公報
ところで、本発明者らの検討の結果、プレス成形によるガラス光学素子の製造において、プレス成形後にガラス中に微小な泡が生じること(発泡すること)により、光学素子の均質性が低下することが明らかとなった。高い光学性能を有する光学素子を提供するためには、ガラス中の発泡を抑制することが望まれる。
そこで、本発明者らはガラス中の発泡を抑制する手段を見出すために、泡の発生原因について鋭意検討を重ねた。その結果、プレス成形後の光学素子に発生する泡は、非酸化性雰囲気でプレス成形を行ったとしても多くの酸素を含んでいるという、予想外の現象を見出した。非酸化性雰囲気でのプレス成形における酸素の発生原因は酸化物ガラスのみであるため、酸化物ガラス由来の酸素が泡の発生に関与していると考えられる。
本発明の一態様は、プレス成形後のガラス光学素子に泡が発生することを抑制するための手段を提供する。
本発明の一態様は、
酸化物ガラス(以下、「ガラス」とも記載する。)と、
上記酸化物ガラスの表面の少なくとも一部を覆い、化学量論組成より酸素が欠損した金属酸化物膜である被覆層と、
上記酸化物ガラスと被覆層との間に設けられた中間層と、
を備え、
上記中間層において、上記酸化物ガラスのガラス転移温度以上の温度における上記酸化物ガラスに含まれる酸素原子が拡散する速度は、上記温度における上記金属酸化物膜に含まれる金属原子が拡散する速度より速い、プレス成形用ガラス素材、
に関する。
本発明の更なる一態様は、
プレス成形用ガラス素材をプレス成形しプレス成形体を形成するプレス工程を備え、
上記プレス成形用ガラス素材が、上述のプレス成形用ガラス素材である、ガラス光学素子の製造方法、
に関する。
本発明の更なる一態様は、
酸化物ガラスと、
上記酸化物ガラスの表面の少なくとも一部を覆い、化学量論組成より酸素が欠損した金属酸化物膜である被覆層と、
上記酸化物ガラスと被覆層との間に設けられた中間層と、
を備え、
上記中間層において、上記酸化物ガラスのガラス転移温度以上の温度における上記酸化物ガラスに含まれる酸素原子が拡散する速度は、上記温度における上記金属酸化物膜に含まれる金属原子が拡散する速度より速い、ガラス光学素子、
に関する。
本発明者らは酸化物ガラス由来の酸素によるガラス中の発泡を抑制するために鋭意検討を重ねた結果、プレス成形用ガラス素材において、酸化物ガラス上に、上記中間層を介して上述の被覆層を設けることに至った。
上述の被覆層は金属酸化物膜であるが、化学量論組成より酸素が欠損した状態にあるため、より安定な状態である化学量論組成に近づこうと酸素を取り込みやすい状態にある。したがって、この状態の金属酸化物膜であれば、プレス成形時にガラス中で発生して発泡を引き起こす酸素を取り込み、泡の発生を抑制することができる。
但し、プレス成形時には、被覆層から酸化物ガラス側へ向かって、被覆層に含まれる金属原子の移動(拡散)も起こり得る。この拡散により被覆層の実効的な膜厚の減少や膜の消失が生じてしまうと、被覆層によって泡の発生を抑制することは困難となる。
これに対し、上記中間層では、上記酸化物ガラスのガラス転移温度以上の温度における上記酸化物ガラスに含まれる酸素原子が拡散する速度は、上記温度における上記金属酸化物膜に含まれる金属原子が拡散する速度より速い。これにより、酸化物ガラスからの酸素原子の拡散(被覆層側へ向かう移動)は、被覆層からの金属原子の拡散に優先して進行する。そのため、被覆層は、実効的な膜厚の減少や膜の消失を起こすことなく、酸素原子を酸化物ガラスから被覆層へ効率的に取り込み、泡の発生を抑制することができる。
また、こうして得られる光学素子には、プレス工程を経た上述の被覆層および中間層が存在している。この光学素子に含まれる被覆層は、プレス成形時に酸化物ガラスから拡散した酸素原子を取り込むため、プレス成形用ガラス素材に含まれていた状態より金属原子に対する酸素原子の含有率は高い。ただし、一態様では、光学素子に含まれる被覆層は依然として化学量論組成より酸素が欠損した状態にあることも、本発明者らの検討の結果、明らかとなった。
本発明の一態様によれば、プレス成形においてガラス内部に泡が発生することを抑制することが可能な光学素子の製造方法を提供することができる。
更に、本発明の一態様によれば、泡の発生のない均質な光学素子を提供することができる。
図1は、中間層における、酸化物ガラスのガラス転移温度以上の温度における酸化物ガラスに含まれる酸素原子が拡散する速度(T1)と、この温度における金属酸化物膜に含まれる金属原子が拡散する速度(T2)との関係を示すモデル図である。 図2は、本発明の一態様にかかるプレス成形用ガラス素材を示す断面模式図である。 図3は、プレス成形装置の一例を示す図である。 図4は、実施例1に関するプレス成形前(プレス成形用ガラス素材)のTOF−SIMSによる2次イオン強度の深さ方向分析結果を示す図である。 図5は、実施例2に関するプレス成形前(プレス成形用ガラス素材)のTOF−SIMSによる2次イオン強度の深さ方向分析結果を示す図である。
以下、本発明について、更に詳細に説明する。以下において、図面を参照し具体的態様を説明することがあるが、本発明は図面に示す態様に限定されるものではない。
初めに、中間層において、上記酸化物ガラスのガラス転移温度以上の温度における酸化物ガラスに含まれる酸素原子が拡散する速度(T1)と、上記温度における金属酸化物膜に含まれる金属原子が拡散する速度(T2)との関係について説明する。なおT1とT2との関係は、上記酸化物ガラスのガラス転移温度以上の同じ温度におけるT1とT2との関係をいう。
図1は、中間層における、酸化物ガラスのガラス転移温度以上の温度における酸化物ガラスに含まれる酸素原子が拡散する速度(T1)と、この温度における金属酸化物膜に含まれる金属原子が拡散する速度(T2)との関係を示すモデル図である。上記プレス成形用ガラス素材では、図1に示すように、酸化物ガラスと中間層とは、接している。また、中間層と被覆層とは、接している。このモデル図に示すように、中間層において、T1>T2の関係を満たしていれば、酸化物ガラスからの酸素原子の拡散(被覆層側へ向かう移動)は、被覆層からの金属原子の拡散に優先して進行する。これにより、被覆層は、プレス成形が通常行われる温度である酸化物ガラスのガラス転移温度以上において、実効的な膜厚の減少や膜の消失を起こすことなく、酸素原子を酸化物ガラスから被覆層へ効率的に取り込み、泡の発生を抑制することができる。
本発明者らは、上記プレス成形用ガラス素材を用いてプレス成形を行うことにより、ガラス内部に泡が発生することを抑制することができる理由を、以上のように考えている。但し、上記記載は本発明者らによる推察を含むものであり、本発明はそれら推察に何ら限定されるものではない。
なお、中間層がT1>T2の関係を満たすことは、プレス成形後に被覆層の膜厚の実効的な減少や膜の消失が発生しないことにより確認することができる。
以下に、上記プレス成形用ガラス素材(「プリフォーム」(PF)ともいう。)について、更に詳細に説明する。
[プレス成形用ガラス素材]
図2は、本発明の一態様にかかるプレス成形用ガラス素材を示す断面模式図である。図2では、一例として、凹メニスカスレンズ用のプレス成形用ガラス素材PFを示している。
図2に示すプレス成形用ガラス素材は、酸化物ガラス1と、酸化物ガラス1の表面の少なくとも一部を覆い、化学量論組成より酸素が欠損した金属酸化物膜である被覆層3と、酸化物ガラス1と被覆層3との間に設けられた中間層2と、を備える。被覆層3および中間層2は、酸化物ガラス1の表面の少なくとも一部を覆っていればよい。即ち、酸化物ガラス1は、その表面の一部に被覆層3および中間層2が被覆されていない未被覆の部分があってもよく、表面の全面が被覆されていてもよい。一実施形態では、プレス成形用ガラス素材をプレス成形してガラス光学素子を成形したときに、光学素子の光学機能面を形成することになる酸化物ガラスの部位を少なくとも被覆することができる。光学機能面とは、例えば光学素子においては有効径内の領域を意味する。但し、被覆層3がプレス成形用ガラス素材表面のどの部位にせよ少なくとも一部に存在すれば酸化物ガラスから酸素原子を取り込むことができるため、上述の実施形態に限定されるものではない。
以下に、プレス成形用ガラス素材を構成する被覆層、中間層、酸化物ガラスについて、順次説明する。
<被覆層>
酸化物ガラスを覆う被覆層は、化学量論組成より酸素が欠損した状態にある金属酸化物膜である。したがって、被覆層は、かかる金属酸化物膜が形成可能な成膜法により形成すればよい。例えば、酸化物ガラスからなるガラス塊の表面に後述する中間層を形成した後、ターゲットとして金属(金属の単体)を用いて非酸化性雰囲気中でスパッタ法、真空蒸着法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等の公知の成膜法により成膜することで、化学量論組成より酸素が欠損した金属酸化物膜を形成することができる。ここで非酸化性雰囲気とは、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガス等の酸素以外のガスからなる雰囲気をいう。但し雰囲気ガスに意図せず不純物として混入している微量酸素に由来する酸素の存在は許容されるものとする。
成膜温度(ガラス塊の温度)は、下限は150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることが更に好ましい。上限は酸化物ガラスのガラス転移温度未満であることが好ましい。上限温度は、例えば450℃以下である。
具体的態様としては、中間層を形成した複数の酸化物ガラスをトレーに配列して真空チャンバー内に配置し、真空チャンバー内を真空排気しながら、加熱ヒーターにより酸化物ガラスが約300℃になる温度に加熱する。真空チャンバー内の真空度が1×10−5Torr以下になるまで排気した後、アルゴン(Ar)ガスを導入し、真空チャンバー内の雰囲気ガスをArガスに置換した後にターゲット基材に高周波を印加して、原料をプラズマ化し、中間層が形成された酸化物ガラスの表面に被覆層を成膜する。被覆層の膜厚は、真空チャンバー内の圧力(真空度)、電源パワー、成膜時間を調整することによって所望の膜厚に制御することができる。なお、被覆層は、酸化物ガラスの表面の少なくとも一部を覆っていればよい。この点については、上述の通りである。
被覆層は、化学量論組成より酸素が欠損した状態にある金属酸化物膜であればよく、金属酸化物を構成する金属は特に限定されるものではない。被覆層を構成する金属の具体例としては、ジルコニウム、イットリウム、タンタル、ニオブ、タングステンを挙げることができる。但し、ここに例示しない金属であってもよい。なお、本発明において、金属とは、半金属に分類されるものも包含する意味で用いるものとする。例えば一例として、ケイ素(Si)も、本発明における金属に含まれる。
被覆層の膜厚は、酸化物ガラスから酸素を効率的に取り込むためには0.5nm以上とすることが好ましく、1.5nm以上とすることがより好ましい。一方、クモリ防止の観点からは、被覆層の膜厚は、15nm以下とすることが好ましく、10nm以下とすることが更に好ましい。
以上説明した被覆層は、上述の通り、化学量論組成より酸素が欠損した状態にある。例えばジルコニウム酸化物であれば、化学量論組成はZrOであるため、被覆層がジルコニウム酸化物膜である場合、その組成はZrOx(x<2)となる。ここでxは2未満であればよく、特に限定されるものではない。他の金属酸化物膜についても、同様である。
<中間層>
中間層は、被覆層と酸化物ガラスとの間に設けられる。なお、プレス成形用ガラス素材は、酸化物ガラスの表面の少なくとも一部に、中間層を介して被覆層を備えるものであればよく、酸化物ガラス表面の一部に、中間層のみで被覆されている部分があってもよく、被覆層のみで被覆されている部分があってもよい。上記酸化物ガラスのガラス転移温度以上の温度で、中間層において、酸化物ガラスに含まれる酸素原子が拡散する速度(T1)は、金属酸化物膜(被覆層)に含まれる金属原子が拡散する速度(T2)より速い。このように、上記酸化物ガラスのガラス転移温度以上の温度で、中間層においてT1>T2の関係を満たす限り、中間層の材料や膜厚は限定されるものではない。例えば、中間層は、一種以上の金属元素と、酸素、窒素、炭素、およびフッ素からなる群から選ばれる一種以上の元素との化合物を用いて形成することができる。中間層は、例えば、金属酸化物膜であり、金属酸化物膜としては、ジルコニウム、イットリウム、スカンジウム、ランタノイドの酸化物膜を挙げることができる。ランタノイドとしては、ランタン、セリウム、プラセオジム、サマリウム、イッテルビウムを挙げることができる。これらは例示に過ぎず、上述の材料に限定されるものではない。中間層の膜厚は、例えば1〜15nmの範囲とすることができるが、上記酸化物ガラスのガラス転移温度以上の温度においてT1>T2の関係を満たせばよく、膜厚がこの範囲外であってもよい。なお、中間層は、単層であってもよく、二層以上の多層構造のものでもよい。多層構造の場合、上記の中間層の膜厚とは、多層の合計膜厚をいう。多層構造の中間層は、多層構造全体でT1>T2の関係を満たすものであればよい。
中間層の成膜方法としては、スパッタ法、真空蒸着法等の公知の成膜法を用いることができる。例えば、アルゴンガスを用いたスパッタ法によって、酸化物ガラス表面の少なくとも一部に、中間層を形成することができる。適宜、予備実験を行うことにより、T1>T2の関係を満たす中間層を形成するための成膜条件を決定することができる。例えば、予備実験を行いテスト用プレス成形用ガラス素材を作製し、テストプレスを行った後に、被覆層の膜厚の顕著な減少や膜の消失がないことが確認された成膜条件を、実際のプレス成形に用いるプレス成形用ガラス素材の中間層を形成するための成膜条件として採用することができる。
<酸化物ガラス>
酸化物ガラスとしては、光学素子の作製に通常使用される各種組成の光学ガラスを挙げることができる。そのような光学ガラスの具体的態様としては、ホウ酸ランタン系ガラス等のホウ酸−希土類系ガラス、リン酸塩ガラス、ケイ酸塩ガラスを挙げることができる。
ところで、光学ガラスの中で、プレスにより発泡が生じる傾向が高い組成としては、高屈折率付与成分であるNb、TiO、WO、Taを比較的多く含む酸化物ガラスを挙げることができる。これらの金属酸化物は、ガラス転移温度以上において、他の金属酸化物に比べて還元されやすいためと考えられる。本発明の一態様にかかるガラス光学素子の製造方法では、例えばNb、TiO、WOおよびTaからなる群から選択される高屈折率付与成分を一種以上含み、かつ高屈折率付与成分の合計含有量(Nb+TiO+WO+Ta)が10質量%以上の酸化物ガラスに、上述の中間層および被覆層を設けたうえでプレス成形することができる。これによりプレス後の泡の発生が抑制された均質な光学素子を得ることができる。合計含有量(Nb+TiO+WO+Ta)は、より好ましくは15質量%以上である。なお合計含有量(N+TiO+WO+Ta)は、50質量%以下であることが、ガラス転移温度および屈伏点の顕著な上昇によるプレス温度の高温化の抑制、ならびにガラス化の容易性の観点から好ましく、45質量%以下であることがより好ましい。
プレス温度は通常、酸化物ガラスのガラス転移温度以上の温度で行われるため、高ガラス転移温度のガラスであるほどプレス温度が高くなる傾向がある。一方、プレス温度の顕著な上昇は、泡の発生を助長する場合がある。したがって、酸化物ガラスの好ましい具体的態様としては、ガラス転移温度を低下させる作用のあるガラス成分の一種以上を適量含む酸化物ガラスを挙げることができる。ガラス転移温度を低下させる作用のあるガラス成分としては、ZnO、ならびにLiO、NaOおよびKOからなる群から選択されるアルカリ金属酸化物を挙げることができる。ZnOとアルカリ金属酸化物との合計含有量(ZnO+LiO+NaO+KO)は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることが好ましい。一方、ガラス化の容易性の観点からは、合計含有量(ZnO+LiO+NaO+KO)は、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。酸化物ガラスとしては、光学素子の有用性の観点から、屈折率ndが1.70〜2.10、アッベ数νdが20〜55の光学ガラスを具体的態様として例示することができる。また、他の具体的態様としては、プレス成形性、特に精密プレス成形性に優れるガラスとして、ガラス転移温度が630℃以下、屈伏点が680℃以下のいずれか一方または両方を満たす光学ガラスを例示することもできる。但し、本発明の一態様にかかる光学素子の製造方法は、上述の具体的態様に限定されるものではない。
酸化物ガラスとなり得る光学ガラスのより具体的な態様としては、例えば、下記ガラスI、II、IIIを挙げることができる。但し、酸化物ガラスの組成は特に限定されるものではない。ガラスI、II、IIIは、いずれもガラス光学素子を作製するための光学ガラスとして好適なものである。本発明の一態様によれば、このような光学ガラスをプレス成形し、ガラス中に泡のない高品質なガラス光学素子を提供することができる。
(ガラスI)
カチオン%表示で、
3+およびSi4+を合計で5〜60%(但し、B3+を5〜50%)、
Zn2+およびMg2+を合計で5%以上、
La3+、Gd3+、Y3+およびYb3+を合計で10〜50%、
Ti4+、Nb5+、Ta5+、W6+およびBi3+を合計で6〜45%(但し、Ti4+およびTa5+の合計含有量が0%超、かつW6+の含有量が5%超)、
含み、
3+の含有量に対するSi4+の含有量のカチオン比(Si4+/B3+)が0.70以下であり、
Ti4+およびTa5+の合計含有量に対するTa5+の含有量のカチオン比(Ta5+/(Ti4++Ta5+))が0.23以上であり、
Nb5+およびW6+の合計含有量に対するW6+の含有量のカチオン比(W6+/(Nb5++W6+))が0.30以上であり、
3+およびSi4+の合計含有量に対するTi4+、Nb5+、Ta5+、W6+およびBi3+の合計含有量のカチオン比((Ti4++Nb5++Ta5++W6++Bi3+)/(B3++Si4+))が0.37を超え3.00以下であり、
La3+、Gd3+、Y3+およびYb3+の合計含有量に対するZn2+、Mg2+およびLiの合計含有量のカチオン比((Zn2++Mg2++Li)/(La3++Gd3++Y3++Yb3+))が0.40以上であり、
屈折率ndが1.90〜2.00であり、かつアッベ数νdが下記(1)式:
25≦νd<(3.91−nd)/0.06 ・・・(1)
を満たす酸化物ガラス。
ガラスIは高屈折率ガラスでありながら、低いガラス転移温度を示すことができるため、精密プレス成形用のガラスとして好適である。好ましい態様において、ガラス転移温度は650℃以下である。ガラス転移温度が650℃以下の光学ガラスは、精密プレス成形時のガラスの温度を比較的低い温度範囲に維持することができ、プレス成形時のガラスとプレス成形面との反応を抑制し、精密プレス成形性を良好な状態に維持することができる。このような観点からガラス転移温度は640℃以下であることが好ましく、630℃以下であることがより好ましく、620℃以下であることが更に好ましく、610℃以下であることが一層好ましく、600℃以下であることがより一層好ましい。
なお、ガラス転移温度を過剰に低下させるとガラスの安定性が低下したり、屈折率が低下する傾向を示すため、ガラス転移温度は500℃以上であることが好ましく、520℃以上であることがより好ましく、540℃以上であることが更に好ましく、560℃以上であることが一層好ましく、570℃以上であることがより一層好ましい。
(ガラスII)
、LaおよびZnOを含み、モル%表示で、B 20〜60%、SiO 0〜20%、ZnO 22〜42%、La 5〜24%、Gd 0〜20%(但し、LaとGdの合計量が10〜24%)、ZrO 0〜10%、Ta 0〜10%、WO 0〜10%、Nb 0〜10%、TiO 0〜10%、Bi 0〜10%、GeO 0〜10%、Ga 0〜10%、Al 0〜10%、BaO 0〜10%、Y 0〜10%およびYb 0〜10%、を含み、かつアッベ数(ν)が40以上で、実質的にリチウムを含まない酸化物ガラス。
ガラスIIに関し、実質的にリチウムを含まないとは、ガラス表面に光学素子としての使用に支障が生じるクモリやヤケが発生しないレベルの含有量にLiOの導入量を抑えることを意味するものである。具体的には、LiOの量に換算して0.5モル%未満の含有量に抑えることを意味する。リチウムの量を少なくするほどクモリ、ヤケ発生のリスクを低減することができるので、LiOの量で0.4モル%以下に抑えることが好ましく、0.1モル%以下に抑えることがより好ましく、導入しないことが更に好ましい。
ガラスIIは精密プレス成形用に適するものであり、プレス成形型の消耗や型の成形面に形成する離型膜の損傷を防止する上から、ガラス転移温度が低いことが好ましく、ガラス転移温度は630℃以下であることが好ましく、620℃以下であることがより好ましい。一方、ガラス表面のクモリやヤケを防ぐ上から、ガラス中のリチウム量を上記のように制限するため、ガラス転移温度を過剰に低下させようとすると、屈折率が低下したり、ガラスの安定性が低下するなどの問題が発生しやすくなる。そのため、ガラス転移温度は530℃以上であることが更に好ましく、540℃以上であることがより一層好ましい。
ガラスIIの詳細については、特開2006−137662号公報の段落0013〜0039を参照できる。
(ガラスIII)
モル%表示で、
SiO 0〜20%、
5〜40%、
SiO+B=15〜50%、
LiO 0〜10%、
ZnO 12〜36%、
但し、3×LiO+ZnO≧18%、
La 5〜30%、
Gd 0〜20%、
0〜10%、
La+Gd=10〜30%、
La/ΣRE=0.67〜0.95%、
(但し、ΣRE=La+Gd+Y+Yb+Sc+Lu
ZrO 0.5〜10%、
Ta 1〜15%、
WO 1〜20%、
Ta/WO≦2.5(モル比)
Nb 0〜8%、
TiO 0〜8%
を含み、
屈折率ndが1.87以上、
アッベ数νdが35以上40未満
の酸化物ガラス。
ガラスIIIは、ガラス転移温度が650℃以下の低温軟化性を示す。ガラスIIIが有するガラス転移温度のより好ましい範囲は640℃以下、更に好ましくは630℃以下、一層好ましくは620℃以下、なお一層好ましくは610℃である。一方、ガラス転移温度を過剰に低下させるとより一層の高屈折率化、低分散化が困難になり、かつ/またはガラスの安定性や化学的耐久性が低下する傾向を示すため、ガラス転移温度は510℃以上、好ましくは540℃以上、より好ましくは560℃以上、一層好ましくは580℃以上であることが望ましい。
更に、ガラスIIIが有する屈伏点の好ましい範囲は、700℃以下、より好ましくは690℃以下、更に好ましくは680℃以下、一層好ましくは670℃以下、より一層好ましくは660℃以下である。屈伏点を過剰に低下させるとより一層の高屈折率化、低分散化が困難になり、かつ/またはガラスの安定性や化学的耐久性が低下する傾向を示す。したがって、屈伏点は550℃以上であることが好ましく、580℃以上であることがより好ましく、600℃以上であることが一層好ましく、620℃以上であることがより一層好ましい。
ガラスIIIの詳細については、特開2008−201661号公報の段落0016〜0065を参照できる。
(酸化物ガラスの成形)
酸化物ガラスは、プレス成形用ガラス素材として公知の形状に、プレス成形用ガラス素材の成形法として公知の方法により成形することができる。酸化物ガラスの形状および成形方法については、例えば、特開2011−1259号公報段落0087〜0106および実施例の記載、特開2004−250295号公報段落0040〜0044および実施例の記載を参照できる。
<任意の被膜>
本発明の一態様にかかるプレス成形用ガラス素材は、以上説明した酸化物ガラスに、上述の中間層および被覆層を形成する成膜処理を行うことで得ることができる。プレス成形用ガラス素材には、上述の被覆層上に、更に一層以上の被膜を任意に形成することができる。そのような被膜は、プレス成形において成形型からのガラスの離型性を高めること等に有効である。
上述の任意の被膜の一態様としては、炭素含有膜を挙げることができる。炭素含有膜は、プレスに先立ってプレス成形用ガラス素材(以下、「ガラス素材」とも記載する。)が成形型に供給される際、成形型との充分な滑り性をもたらし、ガラス素材が成形型の所定位置(中心位置)に滑らかに移動できるようにするとともに、プレスによってガラス素材が軟化し、変形するときに、ガラス素材の表面上でガラス変形に従って伸び、ガラス素材の成形型表面における延展を助けることができる。更に、プレス後にプレス成形体が所定温度に冷却されたときに、ガラスが成形型表面と離れやすくし、離型を助ける点で有用である。また、上述の被覆層に炭素含有膜を積層することは、プレス成形においてワレが発生することを抑制するうえでも有効である。
炭素含有膜としては、炭素を主成分とするものが好ましいが、炭化水素膜など、炭素以外の成分を含有するものでもよい。炭素含有膜の成膜方法としては、炭素原料を用いた真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング法、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)など、公知の成膜方法を用いることができる。また、炭化水素等、炭素含有物の熱分解によって炭素含有膜を成膜してもよい。
[ガラス光学素子、ガラス光学素子の製造方法]
本発明の一態様は、
酸化物ガラスと、
上記酸化物ガラスの表面の少なくとも一部を覆い、化学量論組成より酸素が欠損した金属酸化物膜である被覆層と、
上記酸化物ガラスと被覆層との間に設けられた中間層と、
を備え、
上記中間層において、上記酸化物ガラスのガラス転移温度以上の温度における上記酸化物ガラスに含まれる酸素原子が拡散する速度は、上記温度における上記金属酸化物膜に含まれる金属原子が拡散する速度より速い、ガラス光学素子、
に関する。
以上説明したプレス成形用ガラス素材を準備し、次いでプレス成形することにより得られたプレス成形体そのものとして、またはプレス成形体に被膜形成等の後工程を施すことにより、本発明の一態様にかかるガラス光学素子を得ることができる。
プレス成形は、光学素子の成形方法として公知のプレス成形法により行うことができる。以下、具体的態様について説明するが、本発明は下記態様に限定されるものではない。
プレス成形に用いる成形型としては、充分な耐熱性、剛性を有し、緻密な材料を精密加工したものを用いることができる。例えば、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化タングステン、酸化アルミニウムや炭化チタン、ステンレス等金属、あるいはこれらの表面に炭素、耐熱金属、貴金属合金、炭化物、窒化物、硼化物などの膜を被覆したものを挙げることができる。成形面を被覆する膜としては、プレス成形用ガラス素材を、融着、クモリ、キズ等をともなうことなくガラス光学素子に成形できるという観点から、炭素を含有する膜が好ましい。炭素含有膜については、特開2011−1259号公報段落0116を参照できる。成形型として、成形面に炭素含有離型膜を有する成形型を用いることより、成形面とガラス素材との滑り性が高まり、成形性がより一層向上するという利点がある。
図3は、プレス成形装置の一例を示す図である。プレス成形にあたっては、図3に示すように、上型4、下型5および胴型6を含む成形型7内に、酸化物ガラス1が中間層2および被覆層3により被覆されたプレス成形用ガラス素材PFを供給し、プレスに適した温度域に昇温する。
例えば、プレス成形用ガラス素材PFの加熱温度は、酸化物ガラス1の種類によって適宜設定されるが、酸化物ガラス1の粘度が10〜1010dPa・sになる温度域に設定し、この温度域においてプレス成形を行うことが好ましい。プレス温度は、例えば、酸化物ガラス1が107.2dPa・s相当前後の10〜10dPa・sとなる温度が更に好ましく、酸化物ガラス1が107.2dPa・s相当となるように設定することがより好ましい。通常、プレス温度は酸化物ガラスのガラス転移温度以上の温度に設定される。このような温度において、化学量論組成より酸素が欠損した状態にある金属酸化物膜である被覆層と、T1>T2の関係を満たす中間層と、により酸化物ガラスが被覆されたプレス成形用ガラス素材のプレス成形を行うことにより、泡の発生原因となる酸素原子を金属酸化物膜に取り込むことで、プレス成形により得られるプレス成形体に泡が発生することを防ぐことができる。なお、プレス温度およびプレスに関する加熱温度とは、プレス成形を行う雰囲気の温度をいうものとする。プレス成形は、上型4に対し、所定の荷重を印加することにより行うことができる。
プレス成形は、プレス成形用ガラス素材PFを成形型7に供給し、プレス成形用ガラス素材PFと成形型7をともに所定の範囲に昇温してもよく、またはプレス成形用ガラス素材PFと成形型7をそれぞれ所定の温度範囲に昇温してから、プレス成形用ガラス素材PFを成形型7内に配置してもよい。更に、プレス成形用ガラス素材PFを10〜10dPa・s粘度相当、成形型6をガラス粘度で10〜1012dPa・s相当の温度にそれぞれ昇温し、プレス成形用ガラス素材PFを成形型7に配置して直ちにプレス成形する方法を採用してもよい。この場合、成形型温度を相対的に低くすることができるため、成形装置の昇温/降温サイクルタイムを短縮できるとともに、成形型7の熱による劣化を抑制できる効果があり、好ましい。いずれの場合も、プレス成形開始時、または開始後に冷却を開始し、適切な荷重印加スケジュールを適用しつつ、成形面とガラス素材PFとの密着を維持しながら、降温する。この後、離型してプレス成形体を取り出す。離型温度は、1012.5〜1013.5dPa・s相当で行うことが好ましい。
一態様では、離型されたプレス成形体には、プレス成形用ガラス素材PFに設けられていた被覆層(金属酸化物膜)が、酸化物ガラスから酸素原子を取り込んだため、プレス成形前よりも酸素含有率の高い被覆層、即ち、金属原子に対する酸素原子の含有率が、プレス成形前のプレス成形用ガラス素材が備える被覆層より高い金属酸化物膜が存在している。一態様では、この金属酸化物膜は、化学量論組成よりも酸素が欠損した状態にある。また、一態様では、プレス成形後のプレス成形体は、酸化物ガラスと、この酸化物ガラスの表面の少なくとも一部を覆う被覆層と、この酸化物ガラスと被覆層との間に設けられた中間層と、を備える。ここで一態様では、プレス成形体が備える上記被覆層は、化学量論組成より酸素が欠損した状態にある金属酸化物膜である。また、一態様では、プレス成形体が備える中間層において、上記酸化物ガラスのガラス転移温度以上の温度における上記酸化物ガラスに含まれる酸素原子が拡散する速度は、上記温度における上記金属酸化物膜に含まれる金属原子が拡散する速度より速い。
但し、上記態様以外の各種態様も、本発明の一態様として、本発明に包含される。
プレス成形されたプレス成形体は、そのまま最終製品である光学素子として出荷することができ、または、芯取り加工や表面に反射防止膜等の光学的機能膜を形成する成膜処理等の後加工を施した後に最終製品とすることもできる。例えば、プレス成形後の上記被覆層を備えるプレス成形体に、Al、ZrO−TiO、MgFなどの材料を単層で、または積層して適宜成膜することによって、所望の反射防止膜を形成することができる。反射防止膜の成膜方法は、蒸着法、イオンアシスト蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタ法など、公知の方法で行うことができる。例えば、蒸着法による場合には、蒸着装置を用いて、10−4Torr程度の真空雰囲気中で、蒸着材料を電子ビーム、直接通電またはアークにより加熱し、材料から蒸発および昇華により発生する材料の蒸気を基材の上に輸送し凝縮・析出させることにより反射防止膜を形成することができる。プレス成形体の加熱温度は室温〜400℃程度とすることができる。但し、プレス成形体を構成する酸化物ガラスのガラス転移温度が450℃以下の場合、プレス成形体加熱の上限温度は、ガラス転移温度−50℃とすることが好ましい。
本発明の一態様にかかる光学素子は、小径、薄肉の小質量レンズ、例えば、携帯撮像機器などに搭載する小型撮像系用レンズ、通信用レンズ、光ピックアップ用の対物レンズ、コリメータレンズ等とすることができる。レンズ形状は特に限定されるものではなく、凸メニスカスレンズ、凹メニスカスレンズ、両凸レンズ、両凹レンズなど各種の形状をとることができる。
以下、本発明を実施例に基づき更に説明する。但し本発明は、実施例に示す態様に限定されるものではない。
以下に記載のガラス転移温度および屈伏点は、理学電機株式会社の熱機械分析装置により昇温速度を4℃/分にして測定した値である。
屈折率ndおよびアッベ数νdは、徐冷降温速度を−30℃/時にして得られた光学ガラスについて測定した。
1.プレス成形用ガラス素材の作製および光学素子の作製
[比較例1]
(1)プレス成形用ガラス素材の作製
プレス成形用ガラス素材の酸化物ガラスとして、前述のガラスIIIに属する表1に記載した光学ガラスIII−1を用いた。
まず、酸化物ガラスを、熔融状態から受け型に滴下、冷却し、一面および他面を凸面とした形状のガラス塊を予備成形した。この予備成形されたガラス塊に対して、特開2011−1259号公報の実施例1〜6における表面層であるZrO膜(膜厚:約5nm)とSiO膜(膜厚:約5nm)をこの順に、同公報に記載の方法で成膜してプレス成形用ガラス素材を得た。得られたプレス成形用ガラス素材の外形寸法は17〜18mm、中心部肉厚は7〜8mmであった。
(2)精密プレス成形によるプレス成形体の作製
次いで、上述の(1)で作製したプレス成形用ガラス素材を精密プレス成形装置により窒素ガス雰囲気下でプレス成形した。即ち、成形面にスパッタ法による炭素含有離型膜を形成したSiC製の上下型と、胴型からなる成形型を用い、成形装置のチャンバー内雰囲気を非酸化性のNガスで充満してから、酸化物ガラスの粘度が107.2dPa・sとなる温度に加熱し、酸化物ガラスの粘度で108.5dPa・s相当の温度に加熱した成形型に供給した。そして、供給直後に上下型間でプレス成形用ガラス素材をプレスし(プレス温度675℃)、プレス成形用ガラス素材と上下型の密着を維持したまま、酸化物ガラスの徐冷温度以下の温度まで冷却し、成形型内からプレス成形体を取り出した。プレス成形体の外径寸法は26.0mm、中心肉厚は4.0mmであった。次いで、プレス成形体の外周部を研削加工により芯取りを行い、φ22mmの両凸形状の非球面ガラスレンズを得た。
[実施例1]
比較例1のSiO膜に変えて、ZrO膜上に被覆層としてジルコニウム酸化物膜(膜厚:約5nm)を成膜した。成膜は、金属ジルコニウム(Zr)をターゲットに用いてAr100%の雰囲気中で成膜温度300℃でスパッタ法により行い、膜厚はスパッタ条件により調整した。中間層であるZrO膜は、酸化物ガラス上に直接成膜した。また、被覆膜であるジルコニウム酸化物膜は、中間層であるZrO膜上に直接成膜した。
こうして得られたプレス成形用ガラス素材は、被覆層としてジルコニウム酸化物膜を有し、中間層としてZrO膜を有する。このプレス成形用ガラス素材を用いて、上記と同様の方法により非球面ガラスレンズを得た。
[実施例2]
金属ジルコニウムに変えて金属イットリウム(Y)を用いて膜厚約5nmの被覆層を成膜した点以外、実施例1と同様にプレス成形用ガラス素材を得た。
こうして得られたプレス成形用ガラス素材を用いて、上記と同様の方法により非球面ガラスレンズを得た。
[比較例2]
中間層を形成しなかった点以外、実施例2と同様にプレス成形用ガラス素材を得た。
こうして得られたプレス成形用ガラス素材を用いて、上記と同様の方法により非球面ガラスレンズを得た。
[実施例3]
金属ジルコニウムに変えて金属タンタル(Ta)を用いて膜厚約5nmの被覆層を成膜した点以外、実施例1と同様にプレス成形用ガラス素材を得た。
こうして得られたプレス成形用ガラス素材を用いて、上記と同様の方法により非球面ガラスレンズを得た。
[実施例4]
金属ジルコニウムに変えて金属ニオブ(Nb)を用いて膜厚約5nmの被覆層を成膜した点以外、実施例1と同様にプレス成形用ガラス素材を得た。
こうして得られたプレス成形用ガラス素材を用いて、上記と同様の方法により非球面ガラスレンズを得た。
[実施例5]
金属ジルコニウムに変えて金属タングステン(W)を用いて膜厚約5nmの被覆層を成膜した点以外、実施例1と同様にプレス成形用ガラス素材を得た。
こうして得られたプレス成形用ガラス素材を用いて、上記と同様の方法により非球面ガラスレンズを得た。
[実施例6]
金属ジルコニウムに変えて金属チタン(Ti)を用いて膜厚約5nmの被覆層を成膜した点以外、実施例1と同様にプレス成形用ガラス素材を得た。
こうして得られたプレス成形用ガラス素材を用いて、上記と同様の方法により非球面ガラスレンズを得た。
[比較例3]
金属ジルコニウムに変えてYを用いて膜厚約5nmのY膜を被覆層として成膜した点以外、実施例1と同様にプレス成形用ガラス素材を得た。
こうして得られたプレス成形用ガラス素材を用いて、上記と同様の方法により非球面ガラスレンズを得た。
2.光学素子の外観評価
光学顕微鏡を用いて、倍率10〜50倍で観察した場合に、直径50μm以上の泡が1ケ未満、または直径25μm以上の泡が2ケ未満、または直径10μm以上の泡が5ケ未満であり、かつ泡の直径の合計が50μmを超えないことを、泡の発生が抑制された均質な光学素子である指標(以下、「外観指標1」)とすることができる。
より好ましくは、光学顕微鏡を用いて、倍率10〜50倍で観察した場合に、直径25μm以上の泡が1ケ未満、または直径10μm以上の泡が3ケ未満であり、かつ泡の直径の合計が25μmを超えないことを、泡のない均質な光学素子である指標(以下、「外観指標2」)とすることができる。
ここで、泡の直径の合計とは、例えば直径50μmの泡が2個存在するならば100μmとなる。また、ここでの直径とは泡が円形状の泡である場合は直径を指し、楕円形状の泡の場合は長手方向の距離、不定形状の泡の場合は取り得る最長の距離を指すものとする。
実施例、比較例で作製した各レンズを光学顕微鏡で倍率50倍で観察し、外観指標1および外観指標2について評価した。各外観指標について、満たすものを○、満たさないものを×として、結果を表2に示す。
表2に示すように、実施例1〜6では、外観指標1、2とも○であったが、比較例1〜3は外観指標1、2とも×であった。
実施例1〜6の被覆層は、金属単体を用いて非酸化性雰囲気で成膜された金属酸化物膜であるため化学量論組成から酸素が欠損した状態にあるのに対し、比較例1の被覆層は特開2011−1259号公報に記載の通りSiO膜、即ち化学量論組成のケイ素酸化物膜である。
また、比較例2は、実施例2と中間層の有無で相違する。
比較例3の被覆層は、詳細を後述するように化学量論組成のイットリウム酸化物膜、即ちY膜である。
なお実施例1〜6では、光学顕微鏡等による観察の結果から、プレス前後で被覆層の膜厚の大きな減少や膜の消失はなかったことが確認された。この結果から、実施例1〜6の中間層は、T1>T2の関係を満たすものであることが確認できる。
表2に示すように、実施例1〜6が比較例1〜3と比べて外観評価の評価結果に優れていたことから、化学量論組成より酸素が欠損した状態にある金属酸化物膜を、T1>T2を満たす中間層を介して酸化物ガラス上に設けることにより、プレス成形においてガラス内部に泡が発生することを抑制することができることが確認できる。
3.泡中の気体組成の確認
比較例1で作製したレンズ中の泡中の気体組成を、質量分析法(Mass Spectrometry)により分析したところ、窒素ガス雰囲気下でプレス成形を行ったにもかかわらず、10%超もの酸素が検出された。この結果は、先に説明した通り、酸化物ガラス由来の酸素が泡の発生原因となっていることを裏付けるものである。
比較例1において被覆層は、化学量論組成のSiO膜である。このような金属酸化物膜は、化学的に安定なため、プレス成形時に酸化物ガラスに由来する酸素を膜中に取り込むことはできないと考えられる。その結果、ガラス中で発泡を引き起こすと推察される。
4.TOF−SIMSによる分析(1)
実施例1と同じ条件で作製したプレス成形用ガラス素材および光学素子について、以下の方法によりTOF―SIMS(Time-of-flight secondary ion mass spectrometer:飛行時間型2次イオン質量分析法)により、表面から深さ方向の組成分析を行った。
TOF−SIMSによる深さ方向分析
ION−TOF社製TOF−SIMS300を用いて、深さ方向測定を実施した。TOF−SIMSは、パルス化された一次イオンを照射し、発生した二次イオンを検出する手法である。TOF−SIMSの深さ方向分析では、(i)一次イオンを照射、(ii)発生した二次イオンを計測、(iii)スパッタイオンを照射、以下(i)〜(iii)の繰り返しでデータを取得する。
一次イオン源にはBi ++を用い、一次イオン源のカラムにかかる電圧は25kVとした。一次イオン源の電流を0.2pAとして測定を行った。一次イオン源の照射面積(=二次イオンを検出する測定領域)は100μm角とし、二次イオンは負イオンを検出した。
スパッタイオン源にはCsを用いた。スパッタイオン源の加速は1kV、電流値は75.4nAで調整を行った。スパッタイオン源の面積は400μm角でスパッタを行った。
図4は、実施例1に関するプレス成形前(プレス成形用ガラス素材)のTOF−SIMSによる2次イオン強度の深さ方向分析結果を示す図である。
実施例1で酸化物ガラスに被覆層として形成したジルコニウム酸化物膜および中間層として形成したZrO膜の膜厚は、いずれも約5nmである。図4には、ジルコニウム酸化物膜およびZrO膜に由来する2次イオンとして、ZrOと単体のZr(図4中、「Zr」)を記載している。また、図4では省略しているがジルコニウム酸化物膜およびZrO膜に由来するZrOも検出されている。Zrが検出されていないため、単体のZrは金属Zrに由来するものではなく、ジルコニウム酸化物膜およびZrO膜に由来するものと考えられる。
図4中、表面(深さ0nm)〜深さ約5nmの領域と深さ約5nm〜約10nmの領域に、それぞれZrOのスペクトルにピークが存在することと、深さ約10nm以降の領域で酸化物ガラスに由来するWOが検出されていることから、酸化物ガラス上に設けられた中間層と中間層上に設けられた被覆層の二層が形成されていることが確認できる。
プレス成形後(光学素子)のTOF−SIMSによる2次イオン強度の深さ方向分析結果では、表面(深さ0nm)〜深さ約10nmの領域では、深さ約10nm以降の領域よりZrOのピーク強度が高く、かつ深さ約10nm以降の領域ではWOが検出された。この結果から、プレス成形後にも被覆層は膜厚の大きな減少や膜の消失を起こすことなく、酸化物ガラス上に存在することが確認できる。この結果から、中間層がT1>T2の関係を満たすことも確認できる。
実施例1に関するプレス成形前(プレス成形用ガラス素材)およびプレス成形後(光学素子)のTOF−SIMSによる2次イオン強度の深さ方向分析結果から、ZrO/Zrの2次イオン強度比(以降、「ZrO/Zr強度比」と記載する。)を求めた。ZrO/Zr強度比は、ジルコニウム酸化物膜中の酸化の度合いを示す指標となるものである。ジルコニウム酸化物が化学量論組成より酸素が欠損した状態にあるならば、化学量論組成、即ちZrOより、ZrO/Zr強度比は小さくなる。
プレス成形前(プレス成形用ガラス素材)について求めた結果から、被覆層に相当する領域において、ZrO/Zr強度比がZrOである場合と比べて小さくなっていることが確認された。この結果から、実施例1のプレス成形用ガラス素材の被覆層であるジルコニウム酸化物膜は、化学量論組成より酸素が欠損した状態にあることが確認できる。
また、被覆層に相当する領域においてプレス成形後にプレス成形前と比べてZrO/Zr強度比が大きくなったことが確認された。即ち、プレス成形後に被覆層の酸素含有率が高くなったことが確認された。この結果は、被覆層が酸化物ガラスから酸素を取り込んだことを示す結果と本発明者らは考えている。
5.TOF−SIMSによる分析(2)
実施例2、比較例3と同じ条件で作製したプレス成形用ガラス素材および光学素子について、上記4.と同様の方法によりTOF―SIMSにより、表面から深さ方向の組成分析を行った。
図5は、実施例2に関するプレス成形前(プレス成形用ガラス素材)のTOF−SIMSによる2次イオン強度の深さ方向分析結果を示す図である。
実施例2で酸化物ガラスに被覆層として形成したイットリウム酸化物膜および中間層として形成したZrO膜の膜厚は、いずれも約5nmである。図5には、イットリウム酸化物膜に由来する2次イオンとして、YOとYOを記載している。また、図5では省略しているが単体のYもわずかに検出されている。他方、Yが検出されていないため、単体のYは金属Yに由来するものではなく、イットリウム酸化物膜に由来するものと考えられる。
図5中、表面(深さ0nm)〜深さ約5nmの領域にYOおよびYOのスペクトルのピークが存在すること、深さ約5nm〜約10nmの領域にZrOのスペクトルにピークが存在すること、および深さ約10nm以降の領域で酸化物ガラスに由来するWOが検出されていることから、酸化物ガラス上に設けられた中間層(ZrO膜)と中間層上に設けられた被覆層(イットリウム酸化物膜)の二層が形成されていることが確認できる。
プレス成形後(光学素子)のTOF−SIMSによる2次イオン強度の深さ方向分析結果でも、表面(深さ0nm)〜深さ約5nmの領域にYOおよびYOのスペクトルのピークが存在し、深さ約5nm〜約10nmの領域にZrOのスペクトルにピークが存在し、かつ深さ約10nm以降の領域で酸化物ガラスに由来するWOが検出された。この結果から、プレス成形後にも被覆層は膜厚の大きな減少や膜の消失を起こすことなく、酸化物ガラス上に存在することが確認できる。この結果から、中間層がT1>T2の関係を満たすことも確認できる。
実施例2、比較例3に関して、プレス成形前(プレス成形用ガラス素材)およびプレス成形後(光学素子)のTOF−SIMSによる2次イオン強度の深さ方向分析結果から、プレス成形前およびプレス成形後の表面から深さ2.5nm、3.0nm、3.5nm、4.0nmの位置におけるYO/YOの2次イオン強度比(以降、「YO/YO強度比」と記載する。)を求めた。実施例2に関して求めた結果を表3に、比較例3に関して求めた結果を表4に示す。
YO/YO強度比は、イットリウム酸化物膜中の酸化の度合いを示す指標となるものである。イットリウム酸化物が化学量論組成より酸素が欠損した状態にあるならば、化学量論組成、即ちYより、YO/YO強度比は小さくなる。表3、表4に示すYO/YO強度比から、以下の点が確認できる。
表4に示すプレス成形前の比較例3の被覆層の各位置におけるYO/YO強度比は、化学量論組成のイットリウム酸化物、即ちYのYO/YO強度比と同様である。この結果から、比較例3の被覆層が化学量論組成のイットリウム酸化物膜、即ちY膜であることが確認できる。
これに対し、表3に示すプレス成形前の実施例2の被覆層の各位置におけるYO/YO強度比は、化学量論組成のイットリウム酸化物(Y)のYO/YO強度比と比べて小さい。この結果から、実施例2のプレス成形用ガラス素材の被覆層であるイットリウム酸化物膜は、化学量論組成より酸素が欠損した状態にあることが確認できる。
また、表3に示すように、実施例2の被覆層では、各位置においてプレス成形後にプレス成形前と比べてYO/YO強度比が大きくなっている。即ち、プレス成形後に被覆層の酸素含有率が高くなったことが確認された。この結果について、被覆層が酸化物ガラスから酸素を取り込んだことを示す結果と本発明者らは考えている。ただし実施例2の被覆層のプレス成形後の各位置におけるYO/YO強度比は、化学量論組成のイットリウム酸化物(Y)のYO/YO強度比と比べて小さい。この結果から、プレス成形後においても、実施例2の被覆層は化学量論組成より酸素が欠損した状態にあることが確認できる。
これに対し、表4に示すように、比較例3の被覆層では、各位置においてプレス成形前後でYO/YO強度比の有意な差は見られない。比較例3のプレス成形用ガラス素材の被覆層は、上記の通り、化学量論組成のY膜である。このような金属酸化物膜は、化学的に安定なため、プレス成形時に酸化物ガラスに由来する酸素を膜中に取り込むことはできないと考えられる。このことが、表4に示すようにプレス成形前後でYO/YO強度比の有意な差が見られなかった理由と推察される。
なお実施例では、中間層として金属酸化物膜、詳しくはジルコニウム酸化物膜を形成したが、中間層はT1>T2の関係を満たすものであればよく、実施例に示す態様に限定されるものではない。
最後に、前述の各態様を総括する。
一態様によれば、
酸化物ガラスと、
上記酸化物ガラスの表面の少なくとも一部を覆い、化学量論組成より酸素が欠損した金属酸化物膜である被覆層と、
上記酸化物ガラスと被覆層との間に設けられた中間層と、
を備え、
上記中間層において、上記酸化物ガラスのガラス転移温度以上の温度における上記酸化物ガラスに含まれる酸素原子が拡散する速度は、上記温度における上記金属酸化物膜に含まれる金属原子が拡散する速度より速い、ガラス光学素子、
が提供される。
一態様によれば、
酸化物ガラスと、
上記酸化物ガラスの表面の少なくとも一部を覆い、化学量論組成より酸素が欠損した金属酸化物膜である被覆層と、
上記酸化物ガラスと被覆層との間に設けられた中間層と、
を備え、
上記中間層において、上記酸化物ガラスのガラス転移温度以上の温度における上記酸化物ガラスに含まれる酸素原子が拡散する速度は、上記温度における上記金属酸化物膜に含まれる金属原子が拡散する速度より速い、プレス成形用ガラス素材、
が提供される。
一態様によれば、
プレス成形用ガラス素材をプレス成形しプレス成形体を形成するプレス工程を備え、
上記プレス成形用ガラス素材が、上述のプレス成形用ガラス素材である、ガラス光学素子の製造方法、
が提供される。
上述のプレス成形用ガラス素材を用いる光学素子の製造方法によれば、泡の発生が抑制された均質な光学素子を提供することができる。
一態様では、
上記製造方法により得られたガラス光学素子、
が提供される。
また、一態様では、
上記の光学素子の製造方法において、
上記プレス成形体は、上記プレス工程を経た上記被覆層を含み、かつ
上記プレス工程を経た被覆層は、プレス工程前の上記被覆層より酸素含有率が高い金属酸化物膜である。
更に、一態様では、上記プレス成形体が備える金属酸化物膜は、化学量論組成より酸素が欠損した状態にある。
なおプレス成形後のプレス成形体は、そのまま光学素子として撮像カメラ等に適用される場合と、その端部を芯取り工程により除去した後に光学素子として適用される場合と、がある。後者の場合は、上記被覆層(金属酸化物膜)は、芯取り工程により一部が除去される。
一態様では、上述の酸化物ガラスは、Nb、TiO、WOおよびTaからなる群から選択される高屈折率付与成分を一種以上含む。この高屈折率付与成分の合計含有量(Nb+TiO+WO+Ta)は、好ましくは10質量%以上50質量%以下である。
一態様では、上述酸化物ガラスは、ZnOおよびアルカリ金属酸化物(LiO、NaO、KO)からなる群から選択される一種以上を含む。好ましくは、ZnOとアルカリ金属酸化物との合計含有量(ZnO+LiO+NaO+KO)は、5質量%以上25質量%以下である。
一態様では、プレス成形時の加熱を、650℃以上の加熱温度で行う。上述の光学素子の製造方法によれば、このような高温でのプレス成形における泡の発生を抑制することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明は、ガラスレンズ等の光学素子の製造分野において有用である。

Claims (9)

  1. 酸化物ガラスと、
    前記酸化物ガラスの表面の少なくとも一部を覆い、化学量論組成より酸素が欠損した金属酸化物膜である被覆層と、
    前記酸化物ガラスと前記被覆層との間に設けられた中間層と、
    を備え、
    前記中間層において、前記酸化物ガラスのガラス転移温度以上の温度における前記酸化物ガラスに含まれる酸素原子が拡散する速度は、前記温度における前記金属酸化物膜に含まれる金属原子が拡散する速度より速い、ガラス光学素子。
  2. 前記金属酸化物は、ジルコニウム、イットリウム、タンタル、ニオブ、タングステンおよびチタンからなる群から選択される金属の酸化物である請求項1に記載のガラス光学素子。
  3. 前記中間層は、金属酸化物膜である請求項1または2に記載のガラス光学素子。
  4. 前記中間層は、ジルコニウム酸化物膜である請求項3に記載のガラス光学素子。
  5. 酸化物ガラスと、
    前記酸化物ガラスの表面の少なくとも一部を覆い、化学量論組成より酸素が欠損した金属酸化物膜である被覆層と、
    前記酸化物ガラスと前記被覆層との間に設けられた中間層と、
    を備え、
    前記中間層において、前記酸化物ガラスのガラス転移温度以上の温度における前記酸化物ガラスに含まれる酸素原子が拡散する速度は、前記温度における前記金属酸化物膜に含まれる金属原子が拡散する速度より速い、プレス成形用ガラス素材。
  6. 前記金属酸化物は、ジルコニウム、イットリウム、タンタル、ニオブ、タングステンおよびチタンからなる群から選択される金属の酸化物である請求項5に記載のプレス成形用ガラス素材。
  7. 前記中間層は、金属酸化物膜である請求項5または6に記載のプレス成形用ガラス素材。
  8. 前記中間層は、ジルコニウム酸化物膜である請求項7に記載のプレス成形用ガラス素材。
  9. プレス成形用ガラス素材をプレス成形しプレス成形体を形成するプレス工程を備え、
    前記プレス成形用ガラス素材が、請求項5〜8のいずれか1項に記載のプレス成形用ガラス素材である、ガラス光学素子の製造方法。
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