以下、実施の形態に係る検出器、PET装置及びX線CT装置について説明する。なお、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
図1は、PET装置・CT装置などの被検体診断装置の概略図である。
被検体診断装置は、クレードル101と、クレードル101が内部に位置する開口を有するガントリ102と、制御装置103とを備えている。制御装置103は、クレードル101を移動させる駆動モータ104を、駆動モータ制御信号によって制御し、クレードル101のガントリ102に対する相対位置を変化させる。クレードル101上には、診断が行われる被検体105が配置される。被検体105は、駆動モータ104の駆動によって、ガントリ102の開口の内部へと搬送される。駆動モータ104は、クレードル101を移動させてもよいが、ガントリ102を移動させてもよい。
ガントリ102の開口を囲むように、検出装置106が複数配置されている。検出装置106は、それぞれが複数の検出器D(図2、図3参照)を有する。制御装置103からは、検出装置106を制御する制御信号がガントリ102に出力され、ガントリ102からは検出器装置106からの検出信号が制御装置103に入力される。
図2は、図1の構造を備えたPET装置のブロック図である。
PET装置では、ガントリの開口を囲むように、複数の検出器Dがリング状に配置されている。被検体105には、陽電子(ポジトロン)を放出するタイプの放射性同位元素(RI)(陽電子放出核種)が注入されている。陽電子は、体内の陰電子と結合して消滅放射線(γ線)を発生する。すなわち、被検体105からは、γ線が出射される。検出器Dは、出射されたγ線を検出し、制御装置3における画像処理装置103gによって検出信号を画像処理し、被検体105の内部情報に関する画像、すなわち断層化した画像を作成する。なお、PET装置において使用されるRIは、炭素、酸素、フッ素、窒素などの生体中に存在する元素である。
被検体105から出射されたγ線は、複数の検出器Dにて検出することができる。このPET装置においては、検出器Dの全体特性が著しく改善されているので、高品質な画像を取得することが可能である。検出器Dについては、後述する。
被検体105の内部におけるRI位置Pからは、γ線が一方向とこれとは逆方向に向けて出射される。複数の検出器Dは、リング状に配置されており、特定の検出器D(n)と、RI位置を挟んで、これに対向する検出器D(k)にγ線が入射する。N個の検出器Dを1つのリング上に配置している場合には、最も高い位置にある検出器Dから、時計まわりに数えてn番目の検出器D(n)と、k番目の検出器D(k)にγ線が入射するが、RI位置Pがリングの中心にあり、リングの面内においてγ線が互いに逆方向に向かう場合には、k=n+(2/N)となる。なお、n、k、Nは自然数である。
PET装置が、TOF型(Time Of Flight)である場合、RIを含む物質を人体や動物及び植物などに投与し、その測定対象中において電子・陽電子対消滅で生成される放射線対(γ線)を計測することにより、測定対象内のその投与物質の分布や動きについての情報を得るものである。TOF−PET装置は、複数の検出器Dからなる放射線検出器アレイ(検出装置106)と、複数のプリアンプ103a,103a’と、複数のサムアンプ103b、103b’と、エネルギー弁別回路103eと、タイミング取り出し回路103c、103c’と、同時計数回路103fとを備えている。
また、被検体105は、放射線検出器アレイ(検出装置106)の略中心にが配置される。被検体105からは、γ線対が放射される。γ線対は、互いに反対方向に放射される。複数の検出器Dは、被検体105を略中心とする円周上に配置されている。なお、検出器Dは、放射線(γ線、X線)を蛍光に変換するシンチレータと、蛍光を検出する光検出器とからなる。
γ線が入射する一方の検出器Dには、複数のプリアンプ103a(図面上は代表して1つを示す)に接続され、プリアンプ103aのそれぞれは、いずれもサムアンプ103b及びサムアンプ103b2の両方に接続されている。プリアンプ103aは、光検出器Dからの出力信号を高速に増幅し、サムアンプ103b、103b2は、それぞれプリアンプ103aの出力信号の論理和を出力する。
γ線が入射する他方の検出器Dには、複数のプリアンプ103a’(図面上は代表して1つを示す)に接続され、プリアンプ103a’のそれぞれは、いずれもサムアンプ103b’及びサムアンプ103b2’の両方に接続されている。プリアンプ103a’は、光検出器Dからの出力信号を高速に増幅し、サムアンプ103b’、103b2’は、それぞれプリアンプ103a‘の出力信号の論理和を出力する。
これらの構成は、リング状に配置された全ての検出器Dに採用されているが、説明の明確化のため、同図では1組のみを示している。
エネルギー弁別回路103eは、サムアンプ103b2、103b2’に接続される。エネルギー弁別回路103eは、所定の閾値(以下閾値SHという)以上の信号をγ線の入射による信号として判別し、判別結果を同時計数回路103fに出力する。すなわち、サムアンプ103b2、103b2’による論理和演算の演算結果は、エネルギー弁別回路103eに出力され、エネルギー弁別回路103eは、これらのサムアンプから入力される信号が、閾値SH以上のエネルギーを有するγ線による信号であるか否かを判定し、判定結果を同時計数回路103fに出力している。
閾値SHは、例えば電子・陽電子対消滅に伴って発生する一対のγ線の光子エネルギーである511keVの付近に設定される。これにより、電気的ノイズ信号や、散乱ガンマ線(消滅γ線の一方或いは両方が散乱物質により方向を変えられたγ線であり、散乱のためにエネルギーが減少している)に起因するノイズ信号等が除かれる。なお、エネルギー弁別回路103eは、サムアンプ103b2、103b2’を介してプリアンプ103a,103a’から出力される信号を積分し、振幅がエネルギーと比例関係となるように波形を成形する回路を含んでいる。
タイミング取り出し回路103c、103c’は、それぞれサムアンプ103b、103b’から出力される信号に基づき、第1のタイミング信号、第2タイミング信号を出力する。第1及び第2のタイミング信号は同時計数回路103fに入力される。なお、タイミング取り出し方法としては、リーディング・エッジ方式やコンスタント・フラクション方式を用いることができる。
同時計数回路103fは、エネルギー弁別回路103e、タイミング取り出し回路103c、103c’に接続されている。同時計数回路103fは、検出器D(n)、D(k)により検出されるγ線対が、同一の電子・陽電子対消滅に伴って発生したγ線対であるか否かを判定する。この判定は、一方の検出器D(n)においてγ線が検出された検出時刻の前後の一定時間の間に、他方の検出器D(k)においてγ線が検出されたか否かによりなされる。この条件で検出された場合には、同一の電子・陽電子対消滅に伴って発生したγ線対であると判定できる。
エネルギー弁別回路103eにより、閾値SH以上のエネルギーレベルを有すると判定された信号のうち、電子・陽電子対消滅で生成されたγ線対によるものであると同時計数回路103fにより判定されたものを真のデータとして採用する。
真のデータは、画像処理回路103gに入力され、被検体の内部情報に関する画像である断層画像を作成する。作成された画像は、記憶装置103k内に格納され、ディスプレイ103h上に表示することができる。記憶装置103kには、画像処理等を行うプログラムが格納されており、中央処理装置(CPU)103iからの指令により、当該プログラムは動作する。検査に必要な一連の操作(制御信号(検出器のON/OFF)の検出器Dへの出力、駆動モータの制御、検出器Dからの検出信号の取り込み、同時計数後の画像処理、作成画像の記憶装置への格納、ディスプレイへの表示)は、入力装置103jによって行うことができる。
図3は、図1の構造を備えたX線CT装置のブロック図である。
X線CT装置も、上述の構造のクレードルとガントリを備えているが、ガントリはX線を出射するX線源103mを内蔵している。X線源103mからのX線が入射する位置に、複数の検出器Dが配置され、検出装置106が構成されている。
図1のガントリ102の開口内に位置するクレードル101には被検体105が配置され、被検体105にはX線源103mからX線が照射される。被検体105を透過したX線は、複数の検出器Dにて検出され、この検出信号を画像処理することで、被検体105の内部情報に関する画像、すなわちコンピュータ断層画像を得ることができる。PET装置とX線CT装置を一体化している場合には、制御装置103は、PET装置で得られた画像と、X線CT装置で得られた画像とを重ねることができる。X線CT装置においては、全体特性が著しく改善された検出器Dを用いているので、高品質な画像を取得することが可能である。
被検体105は、リング状に配置された検出装置106の中心に配置される。検出装置106は、回転軸AXを中心に回転する。X線源103mからは、被検体105にX線が照射され、これを透過したX線が複数の検出器D(n)に入射する。各検出器の出力は、プリアンプ103a及びサムアンプ103bを経て、画像処置回路103gに入力される。X線CT装置の制御装置103は、PET装置と同様に機能するディスプレイ103h、CPU103i、記憶装置103k、入力装置103jを備えている。入力装置103jにより、撮影の開始が指示されると、記憶装置103kに格納されたプログラムが起動し、X線源駆動回路103nが制御され、この駆動回路からX線源103mに駆動信号が出力される。X線源103mからX線が出射される。また、記憶装置103kに格納されたプログラムが起動し、ガントリ駆動モータ103pを駆動し、検出装置106を回転軸AXの周りに回転させ、更に、制御信号(検出器のON/OFF)を検出器Dに出力して、検出器DをONさせ、検出信号をプリアンプ103a、サムアンプ103bを介して、画像処理回路103gに入力する。画像処置回路103gでは、記憶装置103kに入力された断層画像作成プログラムにしたがって、コンピュータ断層画像を作成する。作成された画像は、記憶装置103kに格納され、ディスプレイ103hに表示することができる。
上述のように、記憶装置103kには、画像処理等を行うプログラムが格納されており、中央処理装置(CPU)103iからの指令により、当該プログラムは動作する。検査に必要な一連の操作(制御信号(検出器のON/OFF)の検出器Dへの出力、各種駆動モータの制御、検出器Dからの検出信号の取り込み、検出信号の画像処理、作成画像の記憶装置への格納、ディスプレイへの表示)は、入力装置103jによって行うことができる。
なお、各種プログラムは、従来の装置に搭載されているものを用いることができる。
図4は、検出器Dの斜視図である。
検出器Dは、配線基板20と、二次元状に互いに離間して、配線基板20上に配置・固定された複数の検出チップS(半導体チップS1)とを備えている。なお、個々の検出チップS(半導体チップS1)と、配線基板20との間には、第1バンプ電極BE及び第2バンプ電極B2(図15参照)が介在している。同図では、4×4個の検出チップSが配置されているが、検出チップSの数は複数であれば、これ以外の数も当然に採用することができる。同図では、XYZ三次元直交座標系が示されているが、+Z方向の延長線上に、ガントリの開口中心(被検体105)が位置する。すなわち、γ線又はX線は、Z軸の負方向に進行し、検出チップSに入射し、その出力信号はバンプ電極を介して、配線基板20に入力され、配線基板20からの出力が前述のプリアンプに入力される。
図5は、検出器Dにおける検出チップSの間隔を説明するための図である。
検出チップSは、X軸方向、Y方向、共に距離d1だけ離間して配置されている。検出チップSは、半導体チップS1上にシンチレータを備えたものであるが、同図では、シンチレータの記載を省略している。半導体チップS1は、表面側に検出チャネルとなる半導体領域14を有している。半導体領域14は、半導体チップS1における半導体基板と共にpn接合を構成する領域の表面側の領域である。
隣接する半導体チップS1間における半導体領域14の離間距離の最小値をd2とする。
距離d1(半導体チップS1の側面間距離)は100μmに設定され、距離d2は、200〜300μmに設定され、半導体チップS1の側面と半導体領域14との離間距離の最小値d3は50〜100μmに設定することができる。距離d1=X1μmとすれば、d2=X1+2×d3=X1+100〜200μmを満たしている。
1つの半導体チップS1は、複数の半導体検出領域14を二次元状に備えているが、一群の半導体領域14を1つの検出チャネルとし、単一の検出チャネルを備えている場合には、検出器Dはディスクリートアレイを構成する。1つの半導体チップS1が、複数の検出チャネルを備えている場合には、モノシリックアレイを構成する。ディスクリートアレイの場合には、半導体チップの側面には、高濃度の不純物(半導体基板と同一の導電型:N型)が添加され、不純物添加領域ISを構成している。モノシリックアレイの場合には、半導体チップの側面と、検出チャネル間には、高濃度の不純物(半導体基板と同一の導電型:N型)が添加され、不純物添加領域ISを構成している。
なお、モノシリックアレイの場合の検出チャネル間の離間距離(隣接する検出チャネルにおける半導体領域14間の距離の最小値)は、距離d1と等しく設定することができる。この場合には、全ての半導体領域14の離間距離が等しくなるという利点がある。
図6は、検出器D’の斜視図である。
図4に示した配線基板20が、複数、メインの配線基板又は支持基板20’上に配置・固定されており、全体として、8×8個の検出チップSが並んでいる。このような構成を採用することで、検出器の大型化を達成することができる。
図7は、検出器D”の斜視図である。
図4に示した配線基板20を共通化し、全体として、8×8個の検出チップSが並んで、配線基板20上に配置・固定されている。このような構成を採用することで、検出器の大型化を達成することができる。また、図76は、複数の検出チップを並べた検出器の斜視構成を示す写真の図であり、更に大面積の検出器を試作することができた。
次に、検出チップについて説明する。
図8は、検出チップSの斜視図である。
半導体チップS1上に、接着層S2を介して、シンチレータS3が設けられている。接着層S2は、例えばEpoxy Technologies社製のEpo-Tek301(商標)などの樹脂である。シンチレータS3は、Lu2−xYxSiO5:Ce(LYSO)、ガドリニウムアルミニウムガリウムガーネット(GAGG)、NaI(TI)、Pr:LuAG、LaBr2、LaBr3、及び(LuxTb1−x−yCey)3Al5O12(すなわち、LuTAG)からなる群から選択される1少なくとも1種類又はこれらのいずれか2種以上の混合材料を含んでいる。なお、LuTAGにおけるLuの組成比「x」は0.5〜1.5の範囲にありかつCeの組成比「y」は0.01〜0.15の範囲にある。シンチレータS3に入射した放射線は、シンチレータS3によって蛍光に変換され、接着層S2を介して、半導体チップS1に入射する。
図9は、別の構造の検出チップSの斜視図である。
半導体チップS1上に、接着層S21を介して、ガラス板S22が設けられている。ガラス板S22上には、接着層S23を介して、シンチレータS3が設けられている。接着層及びシンチレータの材料は上述の通りである。シンチレータS3に入射した放射線は、シンチレータS3によって蛍光に変換され、接着層S23、ガラス板S22、接着層S21を介して、半導体チップS1に入射する。
以上のように、個々の半導体チップS1の表面上には、絶縁体(S2、S21、S22,S23)を介して、シンチレータS3が位置している。シンチレータS3は、これに入射したX線又はγ線等の放射線の入射に応じて、これらよりも長波長の光を発生する。可視光や赤外光がSiに入射した場合には、Si内部において効率的に光電変換が生じる。半導体チップS1内部のAPDをSiから構成する場合には、可視光や赤外光の感度を向上させることができる。上述のように、絶縁体は、ガラス板や樹脂からなり、APDの表面を保護すると共に、シンチレータからの光が、APDに到達するまでに、これを若干拡散させることができる。樹脂は、シンチレータと半導体チップとの接着機能を有することもできる。
図10は、半導体チップS1の平面図である。
半導体チップS1の表面には、X軸及びY軸に沿って、複数の光検出部10が配列している。半導体チップS1の中央部には、各光検出部10からの信号が収集される共通電極E3が配置されている。なお、半導体チップS1の全面上に光検出部10が形成されているが、同図では、共通電極の明瞭化のため、両端部周辺にのみ光検出部10を図示している。
図11は、半導体チップS1の共通電極周辺部(図10の領域RS1)の拡大図である。
光検出部10は、APDと、APDの一端(アノード)に接続されたクエンチング抵抗R1(抵抗層)とを備えている。クエンチング抵抗R1は、読出配線TLを介して、共通電極E3に接続されている。すなわち、複数の光検出部10における各APDは、それぞれのクエンチング抵抗R1と、読出配線TLを介して、全て共通電極E3に接続されている。
図12は、検出器の回路図である。
半導体チップS1は、1又は複数のフォトダイオードアレイPDAを含んでいる。フォトダイオードアレイPDAは、複数の光検出部10(APD、クエンチング抵抗R1)からなる。フォトダイオードアレイPDAにおいては、個々のAPDをガイガーモードで動作させる。ガイガーモードでは、APDのブレイクダウン電圧よりも大きな逆方向電圧(逆バイアス電圧)をAPDのアノード/カソード間に印加する。すなわち、アノードには(−)電位V1を、カソードには(+)電位V2を印加する。これらの電位の極性は相対的なものであり、一方の電位をグランド電位とすることも可能である。
配線基板20には、フォトダイオードアレイPDAからの信号を処理する信号処理部SPを設けてもよい。信号処理部SPは、ASIC(Application Specific Integrated
Circuit)を構成している。信号処理部SPは、フォトダイオードアレイPDA(チャンネル)からの出力信号をデジタルパルスに変換するCMOS回路を含むことができる。
図13は、共通電極周辺部の光検出部の平面図である。
APDは、半導体基板の主面側にそれぞれ配置された、電極E1を有している。電極E1は、第2半導体領域14に電気的に接続されている。第2半導体領域14の直下に位置する第1半導体領域は、第2半導体領域14を介して電極E1に電気的に接続されている。
第2半導体領域14の外側の半導体基板上には、絶縁層を介して、読出配線(信号線)TLと共通電極E3とが形成されている。共通電極E3は、各チャンネル(フォトダイオードアレイPDA)の中央領域に位置している。
読出配線TLは、複数の信号線TL1と複数の信号線TL2とを含んでいる。各信号線TL1は、平面視で、隣接するAPD間をY軸方向に延びている。各読出配線TL2は、隣接するAPD間をX軸方向に延びて、複数の読出配線TL1同士を電気的に接続する。読出配線TL2は、共通電極E3に接続されている。読出配線TL1は、共通電極E3に直接接続されるものを除いて、読出配線TL2を介して共通電極E3に電気的に接続されている。
フォトダイオードアレイPDAは、個々のAPD毎に、第2半導体領域14の外側の半導体基板上に、絶縁層を介して形成されたクエンチング抵抗R1を有している。すなわち、クエンチング抵抗R1は、半導体基板の主面側に配置されている。クエンチング抵抗R1は、その一方端が電極E1に接続され、その他方端が読出配線TL1接続されている。
図14は、共通電極周辺部の断面図である。
半導体基板を構成する半導体領域12は、互いに対向する主面1Naと主面1Nbとを含んでいる。半導体領域12は、Siからなる、N型(第1導電型)の半導体基板である。
各フォトダイオードアレイPDAは、半導体領域12に形成された複数のAPDを含んでいる。APDのアノードはP型の半導体領域13(14)であり、カソードはN型の半導体領域12である。APDに光子が入射すると、基板内部で光電変換が行われて光電子が発生する。第1半導体領域13のpn接合界面の近傍領域において、アバランシェ増倍が行われ、増幅された電子群は半導体領域12の裏面に形成された電極に向けて流れる。すなわち、フォトダイオードアレイPDAのいずれかの画素(アバランシェフォトダイオードAPD)に光子が入射すると、増倍されて、信号として電極E3(貫通電極TE)から取り出される。
それぞれのAPDには、クエンチング抵抗R1が直列に接続されている。一つのAPDは、各フォトダイオードアレイPDAにおける一つの画素を構成している。各APDは、それぞれクエンチング抵抗R1と直列に接続された形で、全て並列に接続されており、電源から逆バイアス電圧が印加される。
個々のAPDは、P型(第2導電型)の第1半導体領域13と、P型(第2導電型)の第2半導体領域14と、を有している。第1半導体領域13は、半導体領域12の主面1Na側に形成されている。第2半導体領域14は、第1半導体領域13内に形成され且つ第1半導体領域14よりも不純物濃度が高い。第2半導体領域14の平面形状は、たとえば多角形(本実施形態では、四角形)である。第1半導体領域13の深さは、第2半導体領域14よりも深い。
半導体領域12は、N型(第1導電型)の半導体領域1PCを有している。半導体領域1PCは、半導体領域12の主面1Na側に形成されている。半導体領域1PCは、貫通電極TEが配置される貫通孔THに、N型の半導体領域12とP型の第1半導体領域13との間に形成されるPN接合が露出するのを防ぐ。半導体領域1PCは、貫通孔TH(貫通電極TE)に対応する位置に形成されている。
第2半導体領域14の表面上には、絶縁層16が形成され、この上に共通電極E3と読出配線TLが形成されている。共通電極E3と読出配線TLは、絶縁層17によって被覆されている。半導体領域12の裏面1Nbは、絶縁層L3によって被覆されている。絶縁L3は開口を有しており、貫通電極TEが開口内を通っている。共通電極E3は、貫通電極TEに接触し、電気的に接続されており、貫通電極TE上には、アンダーバンプメタルBMを介して、第1のバンプ電極BEが接触している。半導体領域12に設けられた貫通孔THの内面は、絶縁層L2によって被覆され、絶縁層L2は絶縁層L3に連続している。貫通電極TE及び絶縁層L3は、パッシベーション膜(保護膜)PFによって被覆されている。UBMの形成方法は、無電解めっき法を用いることができる。バンプ電極BEの形成方法は、ハンダボールを搭載する手法又は印刷法を用いることができる。
以上のように、個々の半導体チップは、二次元状に配置された複数の光検出部10を有する半導体領域12と、半導体領域12の表面上に形成された絶縁層16と、絶縁層16上に配置された共通電極E3と、個々の光検出部10のクエンチング抵抗R1と共通電極E3とを電気的に接続する読出配線TLと、共通電極E3から、半導体領域12の貫通孔THを介して、半導体領域12の裏面に延びた貫通電極TEとを備えている。
各フォトダイオードアレイPDAは、貫通電極TEを含んでいる。貫通電極TEは、個々のフォトダイオードアレイPDA毎、すなわち個々のチャンネル毎に設けられている。貫通電極TEは、半導体領域12を、主面1Na側から主面1Nb側まで貫通して形成されている。すなわち、貫通電極TEは、半導体領域12を貫通する貫通孔TH内に配置されている。絶縁層L2は、貫通孔TH内にも形成されている。したがって、貫通電極TEは、絶縁層L2を介して、貫通孔TH内に配置される。貫通電極TEは、その一方端が共通電極E3に接続され、読出配線TLと貫通電極TEとを接続している。
個々の光検出部10は、APDを備えているが、各APDは、第1導電型の半導体領域12(第1半導体領域)、及び、半導体領域12とpn接合を構成し、キャリアを出力する第2導電型の第2半導体領域(13,14)を備えている。APDの第2半導体領域14には、クエンチング抵抗R1が電気的に接続されている。
第1バンプ電極BEは、貫通電極TEと配線基板20とを電気的に接続しており、第2バンプ電極B2(図15等参照)は、APDの半導体領域12(第1半導体領域)と配線基板20とを電気的に接続している。
クエンチング抵抗R1は、これが接続される電極E1、共通電極E3よりも抵抗率が高い。クエンチング抵抗R1は、たとえばポリシリコン等からなる。クエンチング抵抗R1の形成方法としては、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いることができる。クエンチング抵抗R1を構成する抵抗体としては、その他、SiCr、NiCr、TaNi、FeCrなどが挙げられる。
電極E1,E3及び貫通電極TEはアルミニウムなどの金属からなる。半導体基板がSiからなる場合には、電極材料としては、アルミニウムの他に、AuGe/Niなどもよく用いられる。電極E1,E3及び貫通電極TEの形成方法としては、スパッタ法を用いることができる。
Siを用いた場合におけるP型不純物としてはBなどの3族元素が用いられ、N型不純物としては、N、P又はAsなどの5族元素が用いられる。半導体の導電型であるN型とP型は、互いに置換して素子を構成しても、当該素子を機能させることができる。これらの不純物の添加方法としては、拡散法やイオン注入法を用いることができる。
上述の絶縁層の材料としては、SiO2又はSiNを用いることができ、絶縁層の形成方法としては、各絶縁層がSiO2からなる場合には、熱酸化法又はスパッタ法を用いることができる。
上述の構造の場合、N型の半導体領域12とP型の第1半導体領域13との間に、pn接合が構成されることで、APDが形成されている。半導体領域12は、基板1Nの裏面に直接、又は、裏面に形成された電極(図示省略)に電気的に接続されている。第1半導体領域13は、第2半導体領域14、電極E1、クエンチング抵抗R1,読出配線TL、共通電極E3、貫通電極TE,バンプ電極BEを順次介して、配線基板20に接続されている。半導体領域12の裏面は、バンプ電極B2を介して、配線基板20に接続されている。なお、クエンチング抵抗R1はAPDに対して直列に接続されている。
図15は、図14の半導体チップS1の底面図である。
半導体基板の裏面のパッシベーション膜PFは、一部が除去され、半導体領域12の裏面が露出している。この露出領域に、第2バンプ電極B2が配置される。半導体領域12の中央には、第1バンプ電極BEが位置している。第2バンプ電極B2は、四角形の半導体領域12の4つの角部に対応する位置に配置されている。
図16は、改良に係る半導体チップS1の底面図である。
この構造は、図15に示したものと比較して、パッシベーション膜PFを除去することで露出した半導体領域12の裏面上に、導電膜Mを形成し、導電膜M上にバンプ電極B2を配置した点が異なり、他の点は同一である。導電膜Mの形状は、矩形環状であり、材料は電極材料と同一とすることができる。なお、バンプ電極の材料は、半田を用いることができる。
以上のように、個々の光検出部10に含まれるAPDの両端には、第1バンプ電極BE及び第2バンプ電極B2を介して、ガイガーモードで動作するバイアス電圧が与えられる。光(エネルギー線)の入射により、複数のAPDにおいて発生したキャリアは、それぞれのクエンチング抵抗R1を介して、半導体領域12上の共通電極E3に流れ、共通電極E3から、貫通電極TE及び第1バンプ電極BEを通って配線基板20に至り、外部に取り出される。
当該構造のAPDにおいては、貫通電極等を用いたキャリア伝達経路短縮化構造を有しているため、配線抵抗が減少している。しがたって、APDからのキャリアの伝達速度、すなわち、時間分解能が向上する。当該APDを複数備えた1つの半導体チップに、複数の光子が入射した場合、時間分解能が向上することで、より高精度の光子検出を行うことができるようになる。また、別の半導体チップにおいては、製造誤差等の原因により、同一の時間分解能となることが保障されていないが、組み立て時において、製品特性が一定の範囲内の半導体チップを選択して、配線基板にバンプ電極を介してボンディングすれば、半導体チップ毎の特性バラつきが低減される。
二次元状に並べられた半導体チップS1は、離間しているので、特定の半導体チップへ入射した光が、他の半導体チップへ漏れてクロストークが発生する影響が抑制されると共に、半導体チップ間の隙間が、配線基板20の膨張/収縮に起因する配線基板の反りの半導体チップへの影響を緩和することができる。すなわち、検出器全体としての時間分解能、クロストーク、温度変化に対する耐性等の特性は著しく改善される。
図17は、配線基板の基本構成要素の斜視図(A)、底面図(B)である。
配線基板20は、絶縁基板20Cの表面上設けられ、第1バンプ電極BEが接触する電極20a、4つの第2バンプ電極B2が接触する電極21aを備えている。絶縁基板20Cの裏面には、絶縁基板20Cの内部を通る貫通電極20bを介して、電極20aに電気的に接続される電極パッド20dが設けられている。貫通電極20bと電極パッド20dとは接続電極20cを介して接続されている。
絶縁基板20Cの裏面には、絶縁基板20Cの内部を通る貫通電極21bを介して、電極21aに電気的に接続される電極パッド21dが設けられている。貫通電極21bと電極パッド21dとは接続電極21cを介して接続されている。
なお、絶縁基板20Cに設けられる電極は、いずれも印刷された配線パターンである。
表面上の第1の電極20aの形状は四角形であり、第2の電極21aは、第1の電極20aの3辺に隣接し、これを囲むように設けられている。
図18は、配線基板の平面図(A)と、底面図(B)である。
この配線基板20は、図17に示した配線パターンをX軸及びY軸に沿って、複数配列させたものである。左の2列の第2の電極21aは、下側が開放するように配置されているが、右の2列の第2の電極21aは、左の2列を配線基板の厚みに平行な軸を中心に、180°回転させたものであり、上側が開放するように配置されている。
図19は、配線基板の平面図(A)と、底面図(B)である。
この配線基板20は、図17に示した配線パターンをX軸及びY軸に沿って、複数配列させると同時に、第2の電極21aのうち、X軸方向に隣接するもの同士を連続させて、電極210aとしたものである。電極210aは、Y軸に沿って延びており、全ての第2の電極21aが表面側において電気的に接続される構造となっている。この場合、電極210aの一か所の直下に貫通電極210dを設けて、裏面に露出させればよいため、構造が簡単になるという利点がある。
図20は、共通電極周辺部の断面図である。
上記では、第1バンプ電極BEを、半導体領域12に設けられた貫通孔内に配置したが、これとは別の位置に設けてもよい。貫通電極TEは、貫通孔の内面を沿って、半導体基板の裏面上の絶縁層L3上に位置する。絶縁層L3にコンタクトホールを形成して、貫通電極TEを露出させ、この露出面上にアンバーバンプ電極メタルBMを介して、第1のバンプ電極BEを設けることができる。なお、貫通孔THの底部のパッシベーション膜PFを除去して、除去された領域の貫通電極TEに接触するようにアンダーバンプメタルBMを設けることができる。設計によっては、底部のアンダーバンプメタルBM上にも、バンプ電極を配置することができる。
図21は、図20の半導体チップS1の底面図である。
半導体領域12の裏面のパッシベーション膜PFは、一部が除去され、半導体領域12の裏面が露出している。この露出領域に、第2バンプ電極B2が配置される。半導体領域12の中央の周辺には、4つの第1バンプ電極BEが位置している。第2バンプ電極B2は、四角形の半導体領域12の4つの角部に対応する位置に配置されている。第1バンプ電極BEは、開口形状が四角形の貫通孔の各辺に隣接するように設けられている。なお、貫通孔の形状は四角錐台である。
図22は、改良に係る半導体チップS1の底面図である。
この構造は、図21に示したものと比較して、パッシベーション膜PFを除去することで露出した半導体領域12の裏面上に、導電膜Mを形成し、導電膜M上にバンプ電極B2を配置した点が異なり、他の点は同一である。導電膜Mの形状は、矩形環状であり、材料は電極材料と同一とすることができる。なお、バンプ電極の材料は、半田を用いることができる。
図23は、配線基板の基本構成要素の斜視図(A)、底面図(B)である。
配線基板20は、絶縁基板20Cの表面上設けられ、4つの第1バンプ電極BEが接触する電極20a、4つの第2バンプ電極B2が接触する電極21aを備えている。絶縁基板20Cの裏面には、絶縁基板20Cの内部を通る貫通電極20bを介して、電極20aに電気的に接続される電極パッド20dが設けられている。貫通電極20bと電極パッド20dとは接続電極20cを介して接続されている。
絶縁基板20Cの裏面には、絶縁基板20Cの内部を通る貫通電極21bを介して、電極21aに電気的に接続される電極パッド21dが設けられている。貫通電極21bと電極パッド21dとは接続電極21cを介して接続されている。
なお、絶縁基板20Cに設けられる電極は、いずれも印刷された配線パターンである。
表面上の第1の電極20aの形状は十字架形状であり、第2の電極21aは、第1の電極20aに隣接し、これを囲みつつ一端が開放した概略U字形状を有している。
図24は、配線基板の平面図(A)と、底面図(B)である。
この配線基板20は、図23に示した配線パターンをX軸及びY軸に沿って、複数配列させたものである。左の2列の第2の電極21aは、下側が開放するように配置されているが、右の2列の第2の電極21aは、左の2列を配線基板の厚みに平行な軸を中心に、180°回転させたものであり、上側が開放するように配置されている。
図25は、配線基板の底面図である。
上述の配線基板において、電極パッド20d同士を接続する配線SR1と、電極パッド21d同士を接続する配線SR2を設けてもよい。これにより、各第1バンプ電極BEからの出力を、配線SR1を介して外部に出力し、第2バンプ電極B2からの出力を、配線SR2を介して外部に出力することができる。
図26は、配線基板の平面図(A)と、底面図(B)である。
この配線基板20は、図23に示した配線パターンをX軸及びY軸に沿って、複数配列させると同時に、第2の電極21aのうち、X軸方向に隣接するもの同士を連続させて、電極210aとしたものである。電極210aは、Y軸に沿って延びており、全ての第2の電極21aが表面側において電気的に接続される構造となっている。この場合、電極210aの一か所の直下に貫通電極210dを設けて、裏面に露出させればよいため、構造が簡単になるという利点がある。
図27は、半導体チップS1の平面図である。
半導体チップS1の表面には、X軸及びY軸に沿って、複数の光検出部10が配列している。半導体チップS1の中央部には、各光検出部10からの信号が収集される共通電極E3が複数、配置されている。なお、半導体チップS1の全面上に光検出部10が形成されているが、同図では、共通電極の明瞭化のため、両端部周辺にのみ光検出部10を図示している。
同図では、半導体チップS1には、4つの共通電極E3が示されている。個々の共通電極E3の周辺領域RS1の断面構造は、図14又は図20し示したものと同一である。
図28は、図27に示した半導体チップS1の底面図である。同図では断面構造としては、図20に示したものを用いた場合を示すため第1バンプ電極BEの数が、各共通電極毎に4つとなっているが、図14に用いたものを採用した場合には、第1バンプ電極BEの数は、各共通電極毎に1つとなる。
半導体基板の裏面のパッシベーション膜PFは、一部が除去され、半導体領域12の裏面(矩形環状の領域、中央部の領域)が露出している。この露出領域の5か所に、第2バンプ電極B2が配置される。第2バンプ電極B2は、四角形の半導体領域12の4つの角部と、中央部に対応する位置に配置されている。半導体領域12の4つの共通電極に対応する箇所には、それぞれ4つの第1バンプ電極BEが位置している。
図29は、改良に係る半導体チップS1の底面図である。
この半導体チップS1の図28に示したものの相違点は、第2バンプ電極B2を設ける位置を半導体チップS1の中央の一か所のみにした点であり、他の構成は図28に示したものと同一である。
次に、図30、図31を参照して、上述した検出器の製造方法を説明する。
まず、各チャンネル(フォトダイオードアレイPDA)に対応する部分(第1半導体領域13、第2半導体領域14、絶縁層16、クエンチング抵抗R1、電極E1,E3、及び信号線TL)が形成された半導体領域12を用意する。次に、半導体領域12の主面1Na側に、絶縁層17を形成し、その後、半導体領域12を主面1Nb側から薄化する(図30(A)参照)。絶縁層17は、SiO2からなる。絶縁層17の形成方法は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いることができる。半導体領域12の薄化方法は、機械研磨法又は化学研磨法を用いることができる。
次に、用意した半導体領域12の裏面1Nb側に、絶縁層L3を形成する(図30(B))参照)。絶縁層L3は、SiO2からなる。絶縁層L3の形成方法は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いることができる。
次に、絶縁層L3における、貫通孔THを形成する領域を除去する(図30(C)参照)。絶縁層L3の除去方法は、ドライエッチング法を用いることができる。
次に、半導体領域12に貫通電極TEを配置するための貫通孔THを形成する(図30(D)参照)。貫通孔THの形成方法には、ドライエッチング法とウエットエッチング法とを適宜選択して適用できる。ウエットエッチング法としてアルカリエッチング法が用いられた場合には、絶縁層16がエッチングストップ層として機能する。アルカリエッチングによる貫通孔形成時に絶縁層L3にアンダーカットが生じるため、ドライエッチング法により絶縁層L3をエッチングする。この際に絶縁層16も同時にエッチングされる。
次に、用意した半導体領域12の主面1Nb側に、SiO2からなる絶縁層L2を形成した後、電極E3を露出させるために絶縁層L2との一部を除去する(図30(E)参照)。絶縁層L1と絶縁層L2との除去方法は、ドライエッチング法を用いることができる。
次に、貫通電極TEを形成する(図30(F))参照)。貫通電極TEの形成方法は、上述したように、スパッタ法を用いることができる。
次に、半導体領域12の主面1Nb側に、バンプ電極BEに対応する位置に開口が形成されたパッシベーション膜PFを形成し、その後、バンプ電極BEを形成する(図31(G)参照)。これにより、半導体チップが得られる。バンプ電極BEの形成に先立って、貫通電極TEにおけるパッシベーション膜PFから露出する領域に、アンダーバンプメタル(Under Bump Metal)BMを形成する。BMは、バンプ電極BEと電気的及び物理的に接続が優れた材料からなる。BMの形成方法は、無電解めっき法を用いることができる。バンプ電極BEの形成方法は、ハンダボールを搭載する手法又は印刷法を用いることができる。
次に、半導体チップS1に光学接着剤を介してガラス基板S22を接着する(図31(H)参照)。これにより、ガラス基板S22と半導体チップS1とが光学的に接続される。ガラス基板S22も、半導体領域12と同様に、複数のガラス基板を含むガラス基板母材の態様で用意される。ガラス基板S22と半導体チップS1とを接着する工程は、半導体領域12に絶縁層L3を形成した後に実施されていてもよい。尚、ガラス基板S22を用いる必要がない場合には省略が可能である。
次に、ガラス基板S22(ガラス基板母材)及び半導体チップS1(半導体ウエハ)からなる積層体をダイシングにより切断する。これにより、半導体領域12の側面とガラス基板S22の側面30cとが面一とされる。
次に、ガラス基板S22が対向配置された半導体光検出素子10と、別途用意した搭載基板20とバンプ電極接続する(図31(I)参照)。これらの過程により、検出チップSが得られる。配線基板20には、主面20U側に、電極20aに対応する位置にバンプ電極BEが形成され、逆の面20D上に信号取り出し用の電極が形成される。
フォトダイオードアレイPDAを一つのチャンネルとして、複数のチャンネルを有している場合、大面積化が図られた検出チップを実現することができる。
半導体領域12に、信号線TLと電気的に接続され且つ主面1Na側から主面1Nb側まで貫通した貫通電極TEがチャンネル毎に形成され、貫通電極TEと、配線基板20の電極とがバンプ電極を介して電気的に接続されている。これにより、各チャンネルから信号を導くための配線の距離を極めて短くできると共に、その値をばらつきなく揃えることができる。したがって、配線が有する抵抗及び容量の影響が著しく抑制され、時間分解能が向上する。
検出チップSは、半導体領域12の主面1Na側に配置されたガラス基板S22を備えている。これにより、ガラス基板S22により、半導体領域12の機械的強度を高めることができる。半導体領域12の側面とガラス基板S22の側面とは、面一とされている。これにより、デッドスペースを低減できる。
ガラス基板S22の主面30bが平坦である。これにより、ガラス基板S22へのシンチレータの設置を極めて容易に行うことができる。
貫通電極TEが、各チャンネルの中央領域に位置している。これにより、各チャンネルにおいて、各APDから貫通電極TEまでの配線距離を短くすることができる。
半導体チップS1は、半導体領域12の主面1Na側に配置され、信号線TLと貫通電極TEとを接続する共通電極E3を含んでいる。これにより、信号線TLと貫通電極TEとを確実に電気的に接続することができる。
なお、貫通電極TEは、各チャンネル(フォトダイオードアレイPDA)間の領域に位置していてもよい。この場合には、各チャンネルでの開口率の低下を防ぐことができる。
上述のように、バンプ電極BEは、貫通孔THの外側に配置されていてもよい。この場合、一つの貫通電極TEに対して、複数のバンプ電極(本例では、4つのバンプ電極)BEが形成されている。バンプ電極BEは、貫通電極TEに連続し且つ半導体領域12の主面1Nb側に配置された電極部分上に配置することができる。
半導体領域13,14の形状は、上述した形状に限られることなく、他の形状(たとえば、円形状など)であってもよい。また、APD(第2半導体領域14)の数(行数及び列数)及び配列は、上述したものに限られない。また、チャンネル(PDA)の数や配列も、上述したものに限られない。
図32は、同時に入射する光子数NPと信号強度IS(a.u.)の関係を示すグラフである。
光子数NPの増加に伴って、信号強度ISは増加するが、セルピッチが10μmの場合には、これらのリニアリティが、セルピッチ15μmの場合よりも高くなっている。なお、セルピッチとは、隣接する光検出部10の中心間の距離である。
図33は、電圧ばらつきΔV(V)と相対頻度FRの関係を示すグラフ((A)ディスクリートアレイ、(B)モノリシックアレイ)である。なお、相対頻度FRはアレイに含まれる電圧ばらつきΔVの発生数を示している。
半導体チップのAPDのカソードには、共通のバイアス電位が与えられ、印加電圧は全APDにおいて共通となる。光検出部の動作は、オペレーション電圧Vopから各チャンネルのブレイクダウン電圧Vbrを引いた、ΔVover=Vop−Vbrに依存するため、各チャンネルのブレイクダウン電圧が均一でないと、検出効率、ダーク、ノイズ等の各種特性に影響がある。よって全APDのブレイクダウン電圧は均一であるほど好ましい。しかしながら、ブレイクダウン電圧の均一性は、ウエハ材料やプロセスの実力により制限される。
3×3mmのアクティブチャンネル(半導体チップ)を1チップとして特性の近い素子を選別し、16×16個を基板上に配置したディスクリートアレイでは、電圧ばらつきは平均0.06Vに低減されている(図33(A))。ディスクリートアレイの場合には、特性が基準値から外れた検出チップを除去して、特性の揃ったものを同一の配線基板上に配置することができるため、電圧のばらつきΔVが、モノシリックアレイの場合よりも抑制されている。また、貫通電極を用いたディスクリートアレイでは、デッドスペースは少ない。
一方、3×3mmのアクティブチャンネル4行4列を同一の半導体チップ上に並べたモノリシックアレイタイプにおける電圧ゲインばらつきは大きくなる。一定の印加電圧において、全16チャンネル(半導体チップ)の電圧ばらつきは平均0.21V発生している(図33(B))。
次に、光検出部の構造のみを変形した例について説明する。
図34は、フォトダイオードアレイの斜視図、図35は、フォトダイオードアレイのA−A矢印縦断面図である。
このフォトダイオードアレイは、Siからなる半導体基板の表面側に受光領域を備えている。受光領域は、複数の光検出部10を含んでおり、これらの光検出部10はマトリックス状に二次元配置されている。なお、図34では、3行3列の光検出部10が配置されており、これらは受光領域を構成しているが、光検出部10の数は、更に多くても、少なくてもよく、また、一次元配置される構成とすることも可能である。
基板表面には、格子状にパターニングされた信号読出用の配線パターン(上面電極)3C(読出配線TL)が配置されている。なお、図34では、内部構造が分かるように、図35に示す絶縁層17の記載が省略されている。格子状の配線パターン3Cの開口内は光検出領域を規定している。光検出領域内には、光検出部10が配置されており、光検出部10の出力は配線パターン3Cに接続されている。
基板裏面上には、必要に応じて下面電極E4が設けられているが、裏面に設けられるバンプ電極と半導体基板との接触抵抗が小さくなる場合には、用いなくてもよい。したがって、上面電極である配線パターン3Cと、下面電極E4との間に光検出部10の駆動電圧を印加すれば、その光検出出力を配線パターン3Cから取り出すことができる。
pn接合においては、これを構成するp型の半導体領域がアノードを構成し、n型の半導体領域がカソードを構成する。p型の半導体領域の電位が、n型の半導体領域の電位よりも高くなるようにフォトダイオードに駆動電圧を印加した場合、これは順方向バイアス電圧であり、これとは逆の駆動電圧をフォトダイオードに印加した場合、これは逆方向バイアス電圧である。
駆動電圧は、光検出部10における内部のpn接合によって構成されるフォトダイオードに印加される逆方向バイアス電圧である。この駆動電圧を、フォトダイオードのブレイクダウン電圧以上に設定した場合には、フォトダイオードにおいて、アバランシェ降伏が生じ、フォトダイオードがガイガーモードで動作することになる。すなわち、各フォトダイオードは、アバランシェフォトダイオード(APD)である。なお、フォトダイオードに順方向バイアス電圧を印加した場合においても、フォトダイオードは、光検出機能を有する。
基板表面には、フォトダイオードの一端に電気的に接続された抵抗部(クエンチング抵抗R1)4が、配置されている。抵抗部4の一方端は、この直下に位置する別材料のコンタクト電極を介して、フォトダイオードの一端に電気的に接続されるコンタクト電極4Aを構成しており、他方端は、信号読出用の配線パターン3Cに接触し、これに電気的に接続されるコンタクト電極4Cを構成している。すなわち、各光検出部10における抵抗部4は、フォトダイオードに接続されるコンタクト電極4A、コンタクト電極4Aに連続して曲線的に延びた抵抗層4B、及び、抵抗層4Bの終端部に連続するコンタクト電極4Cを備えている。なお、コンタクト電極4A、抵抗層4B、及び、コンタクト電極4Cは、同一の抵抗材料の抵抗層からなり、これらは連続している。
このように、抵抗部4は、フォトダイオードとの電気的な接続点から、曲線的に延びて、信号読出用の配線パターン3Cに接続されている。抵抗部4の抵抗値は、その長さに比例するため、抵抗部4が曲線的に延びることにより、その抵抗値を増加させることができる。また、抵抗部4が存在することにより、その下に存在する半導体領域の表面準位を安定させ、出力を安定させることができる。
図34に示す例では、配線パターン3Cは、個々の光検出部10を囲む形状を含んでいるが、配線パターン3Cの形状はこれに限られるものではなく、例えば、2個以上の光検出部10を囲む形状としたり、一列以上の光検出部10を囲む形状とするとすることができる(図42参照)。なお、図42においては、複数列の光検出部を1つのグループとして、これらの間に配線パターン3C(読出配線TL)が延びている。
また、図42に示すように、個々の光検出部において、半導体領域14のエッジを覆うように抵抗層4Bを配置することで、半導体領域14の表面準位をより安定させることができる。詳説すれば、半導体領域14を厚み方向からみた輪郭上に、抵抗層4Bが配置されている。
光検出部10に含まれるフォトダイオードの一端は、原則的には全ての位置において同電位の配線パターン3Cに接続され、他方端は、基板電位を与える下面電極E4に接続されている。すなわち、全ての光検出部10におけるフォトダイオードは並列接続されている。
半導体チップS1の表面には、共通電極E3が設けられており、読出配線TLは、全て共通電極E3に接続されている。共通電極E3の周囲の断面構造及びバンプ電極下に配置される配線基板の構造は、上述のものと同一である。
図34に示す例では、個々のコンタクト電極4Aは、配線パターン3Cによって囲まれた個々の光検出領域の中央部に位置している。そして、抵抗部4Bの二次元パターンはコンタクト電極4Aの周囲を回転するように延びた形状を含んでいる。コンタクト電極4Aを各光検出領域の中央部に配置し、コンタクト電極4Aの周囲を回転させるように、抵抗層4Bを配置することで、抵抗層4Bの長さを長く設定することができる。
図35に示すように、個々の光検出部10は、第1導電型(n型)の第1半導体領域(層)12と、第1半導体領域12とpn接合を構成する第2導電型(p型)の第2半導体領域(半導体層13及び高不純物濃度領域14)を備えている。
この第2半導体領域における高不純物濃度領域(半導体領域)14には、第1コンタクト電極3Aが接触している。高不純物濃度領域14は、不純物を半導体層13内に拡散することによって形成される拡散領域(半導体領域)であり、半導体層13よりも高い不純物濃度を有している。本例(タイプ1)では、n型の第1半導体領域12上に、p型の半導体層13が形成され、半導体層13の表面側に、p型の高濃度不純物領域14が形成されている。したがって、フォトダイオードを構成するpn接合は、第1半導体領域12と半導体層13との間に形成されている。
なお、半導体基板の層構造としては、上記とは導電型を反転させた構造を採用することもできる。すなわち、(タイプ2)の構造は、p型の第1半導体領域12上に、n型の半導体層13を形成し、半導体層13の表面側に、n型の高濃度不純物領域14が形成して形成される。
また、pn接合界面を、表面層側において形成することもできる。この場合、(タイプ3)の構造は、n型の第1半導体領域12上に、n型の半導体層13が形成され、半導体層13の表面側に、p型の高濃度不純物領域14が形成される構造となる。なお、この構造の場合には、pn接合は、半導体層13と半導体領域14との界面において形成される。
もちろん、かかる構造においても、導電型を反転させることができる。すなわち、(タイプ4)の構造は、p型の第1半導体領域12上に、p型の半導体層13が形成され、半導体層13の表面側に、n型の高濃度不純物領域14が形成される構造となる。
なお、半導体基板の構造として、図41に示す構造も採用することができる。
図41は、基板の構造を変更したフォトダイオードアレイの縦断面図である。
この構造は、上述のタイプ1〜タイプ4の構造において、半導体領域14の直下に半導体領域15を配置した点が異なり、その他の点は、同一である。半導体領域15は、半導体領域14と同一の導電型、又は、異なる導電型を有している。同一の導電型を有するものを(タイプ1S)〜(タイプ4S)とし、異なる導電型を有するものを(タイプ1D)〜(タイプ4D)とする。なお、半導体領域15における不純物濃度は、半導体領域14の不純物濃度よりも小さい。また、p型の不純物としては、B(ボロン)を採用することができ、n型の不純物としてはP(リン)又はAs(ヒ素)を採用することができる。
なお、上述の半導体構造における各層の導電型、不純物濃度及び厚みの好適な範囲は以下の通りである。
(タイプ1)
半導体領域12(導電型/不純物濃度/厚み)
(n型/5×1011〜1×1020cm−3/30〜700μm)
半導体領域13(導電型/不純物濃度/厚み)
(p型/1×1014〜1×1017cm−3/2〜50μm)
半導体領域14(導電型/不純物濃度/厚み)
(p型/1×1018〜1×1020cm−3/10〜1000nm)
(タイプ2)
半導体領域12(導電型/不純物濃度/厚み)
(p型/5×1011〜1×1020cm−3/30〜700μm)
半導体領域13(導電型/不純物濃度/厚み)
(n型/1×1014〜1×1017cm−3/2〜50μm)
半導体領域14(導電型/不純物濃度/厚み)
(n型/1×1018〜1×1020cm−3/10〜1000nm)
(タイプ3)
半導体領域12(導電型/不純物濃度/厚み)
(n型/5×1011〜1×1020cm−3/30〜700μm)
半導体領域13(導電型/不純物濃度/厚み)
(n型/1×1014〜1×1017cm−3/2〜50μm)
半導体領域14(導電型/不純物濃度/厚み)
(p型/1×1018〜1×1020cm−3/10〜1000nm)
(タイプ4)
半導体領域12(導電型/不純物濃度/厚み)
(p型/5×1011〜1×1020cm−3/30〜700μm)
半導体領域13(導電型/不純物濃度/厚み)
(p型/1×1014〜1×1017cm−3/2〜50μm)
半導体領域14(導電型/不純物濃度/厚み)
(n型/1×1018〜1×1020cm−3/10〜1000nm)
(タイプ1S)
半導体領域12、13、14のパラメータは、タイプ1と同一。
半導体領域15(導電型/不純物濃度/厚み)
(p型/1×1014〜1×1017cm−3/2〜50μm)
(タイプ2S)
半導体領域12、13、14のパラメータは、タイプ2と同一。
半導体領域15(導電型/不純物濃度/厚み)
(n型/1×1014〜1×1017cm−3/2〜50μm)
(タイプ3S)
半導体領域12、13、14のパラメータは、タイプ3と同一。
半導体領域15(導電型/不純物濃度/厚み)
(p型/1×1014〜1×1017cm−3/2〜50μm)
(タイプ4S)
半導体領域12、13、14のパラメータは、タイプ4と同一。
半導体領域15(導電型/不純物濃度/厚み)
(n型/1×1014〜1×1017cm−3/2〜50μm)
(タイプ1D)
半導体領域12、13、14のパラメータは、タイプ1と同一。
半導体領域15(導電型/不純物濃度/厚み)
(n型/1×1014〜1×1017cm−3/2〜50μm)
(タイプ2D)
半導体領域12、13、14のパラメータは、タイプ2と同一。
半導体領域15(導電型/不純物濃度/厚み)
(p型/1×1014〜1×1017cm−3/2〜50μm)
(タイプ3D)
半導体領域12、13、14のパラメータは、タイプ3と同一。
半導体領域15(導電型/不純物濃度/厚み)
(n型/1×1014〜1×1017cm−3/2〜50μm)
(タイプ4D)
半導体領域12、13、14のパラメータは、タイプ4と同一。
半導体領域15(導電型/不純物濃度/厚み)
(p型/1×1014〜1×1017cm−3/2〜50μm)
なお、上述の例では、最下部の半導体領域12は、厚みの大きな半導体基板を構成するものであるが、光検出部10は、この下に更に半導体基板を備えていてもよく、この場合は、半導体領域12は、かかる付加的な半導体基板よりも薄い厚みを有することとなる。
また、半導体領域13は、半導体領域12上にエピタキシャル成長法において形成することができるが、基板に対する不純物拡散又はイオン注入によって形成することとしてもよい。半導体領域14,15は、半導体領域13に対する不純物拡散又はイオン注入によって形成することができる。
次に、図34、図35、図41に示したコンタクト電極3A及び抵抗部4について、説明する。
各光検出部10は、半導体基板の表面に形成された絶縁層16を備えている。半導体領域13及び半導体領域14の表面は、絶縁層16によって被覆されている。絶縁層16はコンタクトホールを有しており、コンタクトホール内にはコンタクト電極3Aが形成されている。本例におけるコンタクト電極3Aは、配線パターン3Cと同一材料からなり、同一工程によって、絶縁層16上に形成されるものである。コンタクト電極3A及び配線パターン3Cは、金属からなり、具体的には、アルミニウム(Al)である。コンタクト電極3A及び配線パターン3Cの材料として、他の低抵抗金属材料(Au、Ag、Cu)を用いることができ、2層以上の構造や合金を採用することもできる。合金としては、例えば、Al、Ag、Au、Ge、Ni、Cr及びTiなどの金属元素のうちの幾つかを含む化合物を用いることができる。
下部の絶縁層16及び第1コンタクト電極3A上には、上部の絶縁層17が形成されている。絶縁層16,17は、SiO2やシリコン窒化物(SiNx)などの耐熱性の高い無機絶縁体からなる。絶縁層17は、第1コンタクト電極3Aと同軸配置されるコンタクトホールを有しており、このコンタクトホール内に、第2コンタクト電極4Aが形成されている。したがって、第1コンタクト電極3Aと第2コンタクト電極4Aとは、同軸配置されている。
第2コンタクト電極4Aは、第1コンタクト電極3Aとは異なる材料を含んでいる。また、第2コンタクト電極4Aは、抵抗部4の一部であり、第1コンタクト電極3Aよりも高い抵抗率を有する。第2コンタクト電極4Aは、第1コンタクト電極3Aに重なる位置に配置されており、第1コンタクト電極3Aに接触している。第2コンタクト電極4Aは、抵抗層4Bが連続している。
第2コンタクト電極4Aを第1コンタクト電極3Aに重なる位置に同軸配置することにより、抵抗層4Bと第1コンタクト電極3Aとの接続に要するスペースを最小化することができる。もちろん、必然的に、第1コンタクト電極3Aと第2コンタクト電極4Aとは同一平面上ではなく、高さ方向の位置が異なることとなり、第2コンタクト電極4Aから抵抗層4Bが連続して延びることとなる。これにより、光検出部10内における配線を省略することができ、光検出部の開口率を、著しく増加させることが可能となる。
なお、抵抗層4Bの終端にはコンタクト電極4Cが位置している。コンタクト電極4Cも抵抗部4の一部である。コンタクト電極4Cの直下には、絶縁層16上に形成された配線パターン3Cが位置しており、コンタクト電極4Cは配線パターン3Cに接触し、接続されている。
光子の入射によりpn接合において発生したキャリアは、第1コンタクト電極3A及び第2コンタクト電極4Aを介して、抵抗層4Bに流れ、抵抗層4Bにコンタクト電極4Cを介して接続された配線パターン3Cを介して、外部に取り出される。
コンタクト電極4A、4C及び抵抗層4Bは、同一の抵抗材料からなるが、これらは異なる材料からなることとしてもよい。半導体単独、又は、半導体及び金属を適当な比率で含有する合金又は化合物を抵抗材料として用いることができる。例えば、抵抗体としては、SiCrの他、NiCr、TaNi、FeCrなどが挙げられる。
もちろん、コンタクト電極4A、4C及び抵抗層4Bは、SiCrからなることが好ましい。SiCrは、光透過率が高いため、光検出部10内において、抵抗層が存在していても、入射した光子が抵抗層4Bを透過するため、実効的な開口率を増加させることができる。なお、SiCrは、抵抗値のウエハ面内ばらつきが小さく、1μm程度であれば、容易に細くすることが可能である。また、シート抵抗を高くすることができる。ポリシリコンのシート抵抗は1〜30(kΩ/sq.)であるが、SiCrは1〜50(kΩ/sq.)である。すなわち、SiCrを用いれば、小さいサイズで高抵抗値を実現することができる。
抵抗層4Bの厚みは、3nm以上50nm以下であることが好ましい。下限値以上の場合、抵抗層の均一性を確保することができ、上限値以下の場合には、十分に光子を透過させることができる。
図36は、抵抗層を構成するSiCrへの入射光の波長(nm)と透過率(%)の関係を示すグラフである。このSiCr層の厚みは、20nmである。
SiCrは、波長400nm以上の光に対して、80%以上の透過率を有する。波長400nm未満の光は遮断する傾向がある。同グラフによれば、波長400nm以上500nm未満の光に対して、小さなスペクトルピークが示されている。これは500nm以上の光をフィルターにより遮断した場合においても、波長400nm以上500nm未満の光は、選択的に透過させることができることを意味している。このようなフィルターを組み合わせなければ、波長400nm以上、少なくとも波長1200nmまでの光を、80%以上の透過率で透過させることができる。
上述のフォトダイオードアレイを製造した。
製造条件は、以下の通りである。
(1)構造
(図34,図35の構造における数値例)
・半導体領域12:
導電型:n型(不純物:Sb(アンチモン))
不純物濃度:5.0×1011cm−3
厚み:650μm
・半導体領域13
導電型:p型(不純物:B(ボロン))
不純物濃度:1.0×1014cm−3
厚み:30μm
・半導体領域14
導電型:p型(不純物:B(ボロン))
不純物濃度:1.0×1018cm−3
厚み:1000nm
・絶縁層16:
SiO2(厚み:1000nm)
・絶縁層17:
SiO2(厚み:2000nm)
・コンタクト電極3A:
(アルミニウム(Al))
コンタクトホール径:2.0μm
・配線パターン3C:(アルミニウム(Al))
厚み:1.0μm
配線パターン3Cの幅W0:1.0〜3.0μm
1つの光検出部10の配線パターン3Cで囲まれた領域(光検出領域)の面積S:100〜2500μm2
隣接する光検出部10の中心間の間隔X:50μm〜10μm
・抵抗部4:
SiCr(コンタクト電極4A)
コンタクトホール径:1.0μm
(抵抗層4B)
抵抗層4Bの厚み:20nm
抵抗層4Bの幅W1:1.0〜3.0μm
抵抗層4Bの長さL1:10〜50μm
抵抗部4の抵抗値:200〜500kΩ
(コンタクト電極4C)
コンタクトホール径:1.0μm
(2)製法条件
・半導体領域12:CZ法((001)Si半導体基板)
・半導体領域13:Siエピタキシャル成長法(原材料:気相の四塩化珪素(SiCl4)、三塩化シラン(トリクロルシラン、SiHCl3)、成長温度1200℃)
・半導体領域14:不純物の熱拡散法(不純物原材料:ジボラン(B2H6)、拡散温度1200℃)
・絶縁層16:(Si熱酸化法:酸化温度(1000℃))
・絶縁層17:(プラズマCVD法:原材料ガス(テトラエトキシシラン(TEOS)及び酸素ガス):成長温度(200℃))
・コンタクト電極3A及び配線パターン3C:蒸着法(原料:アルミニウム)
・抵抗部4:スパッタ法(ターゲット材料:SiCr)
図37は、(A)光検出部(50μm間隔配置)、(B)光検出部(25μm間隔配置)、(C)光検出部(20μm間隔配置)、(D)光検出部(15μm間隔配置:タイプA)、(E)光検出部(15μm間隔配置:タイプB)、(F)光検出部(10μm間隔配置)を示す図である。
図37(A)の構造のパラメータは、以下の通りである。なお、抵抗層4Bの長さは、その幅方向の中心線の長さである。
・配線パターン3Cの幅W0=2.0μm
・光検出領域の面積S=2025μm2
・抵抗層4Bの幅W1=3.0μm
・抵抗層4Bの長さ(合計の長さ)L1=200μm
・抵抗部4の抵抗値=160kΩ
抵抗層4Bの形状は、全体としては、格子状の配線パターン3Cの内側面に沿って、環状に形成されている。この構造では、抵抗層4Bは、第2コンタクト電極4Aの位置から、信号出力用のコンタクト電極4Cに至るまでの経路を2つ有している。すなわち、抵抗層4Bは、相対的な長さの短い抵抗層4B1と、相対的な長さの長い抵抗層4B2を有している。抵抗層4Bの抵抗値は、これらの長さの異なる抵抗層4B1と抵抗層4B2の合成抵抗で与えられる。
格子状の配線パターン3Cの交点において、コンタクト電極4Cが配置されている。したがって、光検出領域の対角線上の4か所において、コンタクト電極4Cが位置しており、これらの対角線の交点が、光検出領域(光検出部)の中心(重心)Gとなる。隣接する光検出部10の中心G間の距離Xは50μmである。
抵抗層4B1,4B2は、全体としては概ね矩形の環状を呈しているが、その角部における形状は、滑らかに屈曲している。抵抗層4B1,4B2の角部の外縁の曲率中心Oは、中心Gを通る上記の対角線上に位置しており、曲率半径Rは5.0μm、外縁の円弧の両端から曲率中心Oに向けて延びる2つの弦の成す角度θは、8°である。なお、曲率半径Rは、電界集中を避けるために、2〜10μmに設定され、角度θは、3〜14°に設定される。
第2コンタクト電極4Aから取り出されたキャリアは、抵抗層4Bを介して、コンタクト電極4Cに至り、配線パターン3Cを介して、外部に取り出される。
図37(B)は、製造した光検出部10(隣接中心間の間隔X=25μm)を示す図である。
本例における構造のパラメータは、以下の通りである。
・配線パターン3Cの幅W0=1.5μm
・光検出領域の面積S=420μm2
・抵抗層4Bの幅W1=3.0μm
・抵抗層4Bの長さL1=70μm
・抵抗部4の抵抗値=250kΩ
抵抗層4Bの形状は、全体としては、格子状の配線パターン3Cの内側面に沿って、リングの一部が欠けた形状に形成されている。この構造では、抵抗層4Bは、第2コンタクト電極4Aの位置から、信号出力用のコンタクト電極4Cに至るまでの経路を1つ有している。
格子状の配線パターン3Cの交点において、コンタクト電極4Cが配置されている。したがって、光検出領域の対角線上の4か所において、コンタクト電極4Cが位置しており、これらの対角線の交点が、光検出領域(光検出部)の中心(重心)Gとなる。横方向に隣接する光検出部10の中心G間の距離Xは25μmである。
抵抗層4Bは、リング形状の一部を構成する3つの角部を有しているが、それぞれの角部における形状は、滑らかに屈曲している。抵抗層4Bの角部の外縁の曲率中心Oは、中心Gを通る上記の対角線上に位置しており、曲率半径Rは5.0μm、外縁の円弧の両端から曲率中心Oに向けて延びる2つの弦の成す角度θは、8°である。なお、曲率半径Rは、電界集中を避けるためには、2〜10μmに設定され、角度θは、6〜37°に設定される。
第2コンタクト電極4Aから取り出されたキャリアは、抵抗層4Bを介して、コンタクト電極4Cに至り、配線パターン3Cを介して、外部に取り出される。
図37(C)は、製造した光検出部10(隣接中心間の間隔X=20μm)を示す図である。
本例における構造のパラメータは、以下の通りである。
・配線パターン3Cの幅W0=1.5μm
・光検出領域の面積S=240μm2
・抵抗層4Bの幅W1=2.0μm
・抵抗層4Bの長さL1=55μm
・抵抗部4の抵抗値=300kΩ
光検出部の基本的な構造は、図37(B)に示したものと同一であるので、重複する説明は省略する。隣接する光検出部10の中心G間の距離Xは20μmであり、相違点としては、図37(C)に示すものの場合、抵抗層4Bの幅W1に対して、コンタクト電極4Aが、光検出領域の内側へ向けて突出する割合が、図37(B)のものよりも大きくなっている。なお、いずれの形態の光検出部においても、コンタクト電極4A、4Cの中心は凹んでいる。コンタクト電極4Cに隣接する配線パターン3Cと、コンタクト電極4Aの中心位置との間の距離は、この配線パターン3Cから抵抗層4Bの内側のエッジラインまでの距離よりも大きい。
抵抗層4Bは、リング形状の一部を構成する3つの角部を有しているが、それぞれの角部における形状は、滑らかに屈曲している。抵抗層4Bの角部の外縁の曲率中心Oは、中心Gを通る上記の対角線上に位置しており、曲率半径Rは3.0μm、外縁の円弧の両端から曲率中心Oに向けて延びる2つの弦の成す角度θは、13°である。なお、曲率半径Rは、電界集中を避けるためには、2〜5μmに設定され、角度θは、8〜23°に設定される。
第2コンタクト電極4Aから取り出されたキャリアは、抵抗層4Bを介して、コンタクト電極4Cに至り、配線パターン3Cを介して、外部に取り出される。
図37(D)は、製造した光検出部(隣接中心間の間隔X=15μm:タイプA)を示す図である。タイプAの光検出部では、コンタクト電極4Aは、光検出領域の中心に配置され、抵抗層4Bは、中心から右回転しながら延びる正方向回転領域4Baと、正方向回転領域4Baに連続して左回転しながら延びる逆方向回転領域4Bbとを備えている。なお、ここでは、右回転を正方向回転とする。もちろん、左方向回転を正方向回転とする構造のものを製造することも可能である。
本例における構造のパラメータは、以下の通りである。
・配線パターン3Cの幅W0=1.2μm
・光検出領域の面積S=132μm2
・抵抗層4Bの幅W1=1.0μm
・抵抗層4Bの長さL1=78μm
・抵抗部4の抵抗値=600kΩ
格子状の配線パターン3Cの交点において、コンタクト電極4Cが配置され、光検出領域の対角線上の4か所において、コンタクト電極4Cが位置しており、これらの対角線の交点が、光検出領域(光検出部)の中心(重心)Gとなる。隣接する光検出部10の中心G間の距離Xは15μmである。
上述のように、抵抗層4Bは、正方向回転領域4Baと逆方向回転領域4Bbとを備えている。この構造では、抵抗層4Bは、第2コンタクト電極4Aの位置から、信号出力用のコンタクト電極4Cに至るまでの経路を1つ有しているが、回転方向の異なる各領域4Ba,4Bbによって形成される中心Gにおける磁場の方向は逆となる。すなわち、検出された電子が進行することで形成される磁場の影響は、中心位置において相殺される構造を有しており、自己形成磁場による検出出力への影響が低減されている。
正方向回転領域4Baは、緩やかに屈曲する3つの角部を有しているが、それぞれの角部の外縁の曲率中心Oa1,Oa2,Oa3は、中心Gを通る上記の対角線上に位置しており、それぞれの曲率半径Raは2.0μm、それぞれの外縁の円弧の両端からそれぞれの曲率中心Oa1,Oa2,Oa3に向けて延びる2つの弦の成す角度θaは、19°である。なお、正方向回転領域4Baに関して、角部の曲率半径Raは、電界集中を避けるためには、2〜5μmに設定され、角度θaは、19〜58°に設定される。
逆方向回転領域4Bbも、緩やかに屈曲する3つの角部を有しており、それぞれの角部は向きを除いて同一の形状を有している。1つの角度について説明すると、角部の外縁の曲率中心Obは、中心Gを通る上記の対角線上に位置しており、その曲率半径Rbは2.0μm、外縁の円弧の両端からそれぞれの曲率中心Obに向けて延びる2つの弦の成す角度θbは、8°である。なお、逆方向回転領域4Bbに関して、角部の曲率半径Rbは、電界集中を避けるためには、2〜5μmに設定され、角度θbは、8〜23°に設定される。
なお、正方向回転領域4Baは逆方向回転領域4Bbよりも内側に位置するという理由により、角度θaは、角度θbよりも大きく設定されている。
内側に位置する正方向回転領域4Baの外縁と、外側に位置する逆方向回転領域4Bbの内縁は、対向しているが、これらの離隔距離の最小値D1は、0.6μmである。離隔距離の最小値D1は、0.6〜2.0μmに設定される。
第2コンタクト電極4Aから取り出されたキャリアは、抵抗層4Bを介して、コンタクト電極4Cに至り、配線パターン3Cを介して、外部に取り出される。
図37(E)は、製造した光検出部(隣接中心間の間隔X=15μm:タイプB)を示す図である。
タイプBの光検出部では、コンタクト電極4Aは、光検出領域の中心に配置され、抵抗層4Bは、中心から一方向に回転しながら延びる回転領域を備えている。もちろん、いずれの実施形態においても、回転方向が逆方向の構造のものを製造することも可能である。
本例における構造のパラメータは、以下の通りである。
・配線パターン3Cの幅W0=1.2μm
・光検出領域の面積S=132μm2
・抵抗層4Bの幅W1=1.0μm
・抵抗層4Bの長さL1=55μm
・抵抗部4の抵抗値=420kΩ
格子状の配線パターン3Cの交点において、コンタクト電極4Cが配置され、光検出領域の対角線上の4か所において、コンタクト電極4Cが位置しており、これらの対角線の交点が、光検出領域(光検出部)の中心(重心)Gとなる。隣接する光検出部10の中心G間の距離Xは15μmである。
抵抗層4Bは、緩やかに屈曲する3つの角部を有しているが、それぞれの角部の外縁の曲率中心Oは、中心Gを通る上記の対角線上に位置しており、それぞれの曲率半径Rは2.0μm、それぞれの外縁の円弧の両端からそれぞれの曲率中心Oに向けて延びる2つの弦の成す角度θは、8°である。なお、角部の曲率半径Rは、電界集中を避けるためには、2〜5μmに設定され、角度θは、8〜23°に設定される。
第2コンタクト電極4Aから取り出されたキャリアは、抵抗層4Bを介して、コンタクト電極4Cに至り、配線パターン3Cを介して、外部に取り出される。
図37(F)は、製造した光検出部(隣接中心間の間隔X=10μm)を示す図である。この光検出部10の基本的な構造は、図8に示したものと同一であるので、同一の構造については、記載を省略する。
本例における構造のパラメータは、以下の通りである。
・配線パターン3Cの幅W0=1.2μm
・光検出領域の面積S=42μm2
・抵抗層4Bの幅W1=1.0μm
・抵抗層4Bの長さL1=29μm
・抵抗部4の抵抗値=700kΩ
この構造においても、第2コンタクト電極4Aから取り出されたキャリアは、抵抗層4Bを介して、コンタクト電極4Cに至り、配線パターン3Cを介して、外部に取り出される。
なお、本例では、抵抗層4Bの幅W1が、配線パターン3Cの幅W0よりも小さくなっており、抵抗部4は微細化されているにも拘らず、十分な抵抗値を得ることができる構成となっている。
次に、フォトダイオードの特性について説明する。
図38は、上述のフォトダイオードにおける入射光の波長(nm)と光子の検出効率(%)の関係を示すグラフである。同グラフでは、図37(A)の構造(50μm間隔)、図37(D)の構造(15μm間隔)、図37(F)の構造(10μm間隔)のデータが示されている。なお、1つのフォトダイオードアレイに含まれる光検出部の数は、それぞれ、400個、4489個、1000個である。フォトダイオードへの逆方向バイアス電圧は、74Vであり、ガイガーモードで動作をさせた。なお、ブレイクダウン電圧は71Vである。
光子検出効率(PDE)(%)は、光検出領域が大きいほど、抵抗層による影の領域が少なくなり、高い検出効率が得られている。しかしながら、光検出領域の隣接間隔が、50μmの場合の光検出領域の面積に対して、10μmの場合の光検出領域の面積は約25分の1であるが、検出効率は、その30%以上を維持している。15μmの場合も同様に、比較的高い検出効率を維持している。
これらのスペクトルピークの位置は、波長400nmから500nmの範囲に存在している。この波長範囲(400nm以上500nm以下)内において、50μm間隔のフォトダイオードの場合、検出効率が44%以上であり、15μm間隔のフォトダイオードの場合、検出効率が36%以上であり、10μm間隔のフォトダイオードの場合、検出効率が17%以上である。
なお、比較例1として、隣接中心間の間隔X=50μmとして、図37(A)における抵抗層の内側位置に第1コンタクト電極を設け、第1コンタクト電極から抵抗層4Bとほぼ同一形状で若干小さな環状配線パターン(アルミニウム)を形成した。なお、この環状配線パターン(張り出し電極)は、半導体領域14の輪郭上に位置し、光検出領域内の準位を安定させる機能を有する。そして、この環状配線パターンに連続するこれと同一幅の抵抗体(ポリシリコン:160kΩ)を図37(A)に示すものと同様に形成した場合、検出効率(%)は、波長400nmから500nmの範囲において、最小で28%、最大で36%であった。なお、比較例1の構造において、第1コンタクト電極の位置と、抵抗体の環状配線パターンとの接続位置とはずれている。
また、比較例2として、比較例1における間隔X=15μmとして、図37(E)における抵抗層の内側位置に第1コンタクト電極を設け、第1コンタクト電極から抵抗層4Bとほぼ同一形状で若干小さな環状配線パターン(アルミニウム)を形成した。なお、この環状配線パターン(張り出し電極)は、半導体領域14の輪郭上に位置し、光検出領域内の準位を安定させる機能を有する。そして、この環状配線パターンに連続するこれと同一幅の抵抗体(ポリシリコン:500kΩ)を図37(E)に示すものと同様に形成した場合、検出効率(%)は、波長400nmから500nmの範囲において、最小で18%、最大で26%であった。なお、比較例2の構造において、第1コンタクト電極の位置と、抵抗体の環状配線パターンとの接続位置とはずれている。
なお、第1コンタクト電極の位置と、抵抗体の環状配線パターンとの接続位置とはずれているため、間隔X=10μm以下とすることは、製造プロセス上困難である。
比較例1,2の構造においては、環状配線パターン及び光透過率の低い抵抗部の全てが、実効的な開口率を低下させる遮光要素として機能し、光検出感度が低下している。一方、実施形態に係るフォトダイオードアレイは、抵抗層4Bが、環状配線パターンと同一の表面準位安定化機能を達成しつつも、高い光透過率を有し、また、ポリシリコンのような付加的な抵抗体を用いていないので、著しく光検出感度を向上させることができる。
次に、回復時間(電圧回復時間)の影響について、検査を行った。
図39は、上述のフォトダイオードからの出力(ガイガーモード)と時間の関係を示すグラフである。オシロスコープの出力映像を示しており、縦軸は、フォトダイオードの出力強度を示しており、縦軸の1つの間隔は50mVを示し、横軸の1つの間隔は、5(ns)を示している。同グラフでは、ピーク強度電圧の異なる複数のデータが示されているが、これはフォトダイオードに入射する光子数の違いによるものであり、光子数が多いほど、出力強度も大きくなる。同グラフでは、73(V)のバイアス電圧が印加されている。なお、Vover=フォトダイオードへのバイアス電圧−フォトダイオードのブレイクダウン電圧は、Vover=1(V)以上4(V)以下の範囲内である。
フォトダイオードの出力信号の回復時間(τ)は、光子が光検出部10に入射した場合、光検出部10からの出力の強度ピーク値を与える時刻から、この強度ピーク値の37%に光検出部10からの出力がなる時刻までの期間で規定される。
光検出部の間隔X=50μm(図37(A))の場合(図39(A))、フォトダイオードへのバイアス電圧が73Vの場合、回復時間(τ)は、13nsである。
光検出部の間隔X=20μm(図37(C))の場合(図39(B))、フォトダイオードへのバイアス電圧が73Vの場合、回復時間(τ)は、5.0nsである。
光検出部の間隔X=15μm(タイプA:図39(D))の場合(図39(C))、フォトダイオードへのバイアス電圧が73Vの場合、回復時間(τ)は、4.3nsである。
光検出部の間隔X=10μm(図37(F))の場合(図39(D))、フォトダイオードへのバイアス電圧が73Vの場合、回復時間(τ)は、2.3ns以下とすることができる。
なお、上述の比較例1の場合、回復時間(τ)は、13nsであり、比較例2の場合の回復時間(τ)は、4.3nsであった。
詳説すれば、比較例1の構造の場合(光検出部10の離間間隔X=50μm)、開口率は60%であり、接合容量Cj=80fF、ゲイン=7.5×105、回復時間13ns、画素数密度(400個/mm2)、光子の検出効率は最大で36%である。
また、比較例2の構造の場合(光検出部10の離間間隔X=15μm)、開口率は35%であり、接合容量Cj=11fF、ゲイン=2.0×105、回復時間4.3ns、画素数密度(4489個/mm2)、光子の検出効率は最大で26%である。
なお、X=15μmの場合、図7及び図8の実施形態の構造においては、開口率は60%とすることができ、接合容量Cj=11fF、ゲイン=2.0×105、回復時間4.3ns、画素数密度(4489個/mm2)である。
このように、実施形態の構造では、比較例1と同じ開口率を達成しつつ、接合容量Cjを低減し、回復時間を短くすることができる。また、単位面積当たりに含まれる画素数が多いため、ダイナミックレンジを向上させることができる。
以上のように、隣接する第2コンタクト電極間の間隔(光検出領域の中心間の間隔)Xが、20μm以下の場合、回復時間(τ)が著しく短くなる。光検出部の間隔X=15μm以下であれば、回復時間(τ)を10ns以下とすることができる。間隔Xを、10μm以下とすれば、回復時間(τ)は、更に短くなる。これは、従来、達成できなかった顕著な改善である。
なお、光検出部10のサイズ(ピクセルサイズ)は、パルス回復時間に影響を与える。ピクセルサイズが小さいほど広ダイナミックレンジとなる。1mm×1mm角のチップの中に、ピクセルサイズが50μmの場合にはセル数は400、20μmの場合は2500、15μmの場合は4489、10μmの場合は10000となる。求める解像度とダイナミックレンジに応じてピクセルサイズを選択することができる。また、ピクセルサイズを50μm、20μm、15μm、10μmとする場合、動作電圧におけるゲインは、7.5×105、2.4×105、2.0×105、1.0×105とすることができ、波長420nmにおける光検出効率(PDE)は51%、43%、38%、19%とすることができる。
なお、X線CT装置への適用においては、位置分解能(解像度)の観点から、半導体チップサイズは、又は、アクティブチャンネル(電気的に隣接素子から分離された複数の光検出部の集合領域)のサイズは、1×1mm程度が好ましい。10〜140keV/mm2のX線をエネルギー分解する場合、広いダイナミックレンジが要求される。4500〜10000程度のピクセル数が好ましく、10〜15mmのピッチが好ましい。
また、PET装置への適用においては、重心検出を行う関係でピクセルサイズは、3×3mm程度のサイズが好適であり、シンチレータからの発光を受光するためには3600ピクセル程度で十分である。なお、ASICの読み出しを少なくするために、6×6mm程度の大面積チップを採用することもできる。高時間分解能、高検出効率のピクセルピッチは。50μm以上の大きなものが好適である。
上述の構造において、貫通電極を用いた場合、半導体チップ外縁に沿うデッドスペースの幅が均一となる。また、半導体チップを2次元配列した場合のチャンネル間ギャップを均一化することができ、更に、受光面上にシンチレータを固定する際のアライメントも容易となる。
上述のように、実施形態に係るフォトダイオードアレイでは、金属薄膜抵抗の高い透過率を利用し、比較例1,2において用いた張り出し電極の代わりに、線状にパターニングされた金属薄膜抵抗により、張り出し構造を形成し、デッドスペースを低減している。所望の抵抗値を得るために、図37(B)〜図37(F)に示す構造の場合、抵抗層4Bによって、半導体領域14の輪郭(エッジ)の一部(右隅の位置)を被覆することができないが、この部分は、抵抗層4Bの幅程度であり、表面準位安定化に対する特性低下の影響は小さい。また、図37(A)に示す構造では、半導体領域14の輪郭(エッジ)の全てを被覆している。
図40は、図34及び図35に示したフォトダイオードアレイの製造方法について説明するための図である。
まず、図40(A)に示すように、半導体領域(半導体基板)12上に、エピタキシャル成長法又は不純物拡散法或いはイオン注入法により、半導体領域13を形成する。なお、半導体領域12は、CZ法又はFZ法により形成された(100)Si半導体基板であるが、他の面方位を有する半導体基板を用いることもできる。Siエピタキシャル成長法を用いる場合には、例えば、原材料として、気相の四塩化珪素(SiCl4)と三塩化シラン(トリクロルシラン、SiHCl3)を用い、成長温度1200℃において、基板表面上にこれらのガスを流す。不純物拡散法の場合には、半導体領域13の導電型に対応する不純物をガス又は固体で半導体領域12内に拡散させる。イオン注入法の場合は、半導体領域13の導電型に対応する不純物を半導体領域12内にイオン注入する。
次に、半導体領域13の表面側の領域に、半導体領域14を形成する。これには不純物の拡散法又はイオン注入法を用いることができる。例えば、拡散法において、不純物原材料として、ジボラン(B2H6)を用いる場合には、拡散温度を1200℃に設定することができる。半導体領域14の形成においては、まず、フォトリソグラフィ技術により、半導体領域13上に開口を有するレジストパターンを形成し、続いて、このレジストパターンをマスクとして、不純物の添加を行う。なお、不純物の添加は、格子状の配線パターン3Cを形成した後、これをマスクとして、絶縁層16を介して、イオン注入法により行ってもよい。
次に、半導体基板上に絶縁層16を形成する。絶縁層16は、Si熱酸化法を用いて形成することができる。酸化温度は例えば1000℃である。これにより、半導体領域13及び14の表面が酸化され、SiO2からなる絶縁層16が形成される。絶縁層16の形成にはCVD法を用いることもできる。
次に、絶縁層16における半導体領域14上の位置に、コンタクトホールを形成する。コンタクトホールの形成においては、まず、フォトリソグラフィ技術により、絶縁層16上に開口を有するレジストパターンを形成し、続いて、このレジストパターンをマスクとして、絶縁層16をエッチングする。エッチング法としては、ドライエッチング法の他、HF水溶液を含むエッチング液によるウエットエッチングを用いることもできる。
次に、絶縁層16上に、蒸着法により、第1コンタクト電極3A及び配線パターン3Cを形成する。これらの形成においては、まず、フォトリソグラフィ技術により、絶縁層16上に所定のレジストパターンを形成し、続いて、このレジストパターンをマスクとして、電極材料を絶縁層16上に蒸着する。ここでは、蒸着法に代えて、スパッタ法を用いることもできる。
なお、絶縁層16上には、配線パターン3Cと同時に、同じ方法で、共通電極E3も形成しておく。
次に、図40(B)に示すように、絶縁層16上に絶縁層17を形成する。絶縁層17は、スパッタ法やプラズマCVD法を用いて形成することができる。プラズマCVD法を用いる場合、原材料ガスとして、テトラエトキシシラン(TEOS)及び酸素ガスを用い、成長温度を200℃程度に設定して絶縁層17の成長を行う。絶縁層17の厚みは、その表面が平坦化される厚みに設定されることが好ましく、絶縁層16の表面から配線パターン3Cの上面までの高さよりも大きいことが好ましい。
次に、図40(C)に示すように、絶縁層17上に、抵抗部4を形成する。この形成においては、まず、フォトリソグラフィ技術により、絶縁層17上に所定のレジストパターンを形成し、続いて、このレジストパターンをマスクとして、抵抗材料を絶縁層17上にスパッタ法又は蒸着法を用いて堆積する。抵抗体が、SiCrからなる場合、スパッタ法を用い、ターゲット材料としては、例えば、SiとCrの組成比が70%/30%のSiCrを用いることができ、厚みは3〜50nmに設定することができる。
以上の工程が終了した後、図30、図31と同じ工程で、半導体基板の裏面から貫通孔を形成し、貫通孔の表面を絶縁層で被覆し、しかる後、共通電極E3に接続される貫通電極を形成して、貫通電極にバンプ電極を接触させる。最後に、上述の工程と同様に、半導体基板の裏面には、第1及び第2バンプ電極を形成し、配線基板にバンプ電極を介して接着する。
なお、図41に示す構造の光検出部を製造する場合、半導体領域14の形成前に、半導体領域15を不純物拡散法又はイオン注入法を用いて、半導体領域13の表面側に形成しておけばよい。不純物拡散法の場合には、半導体領域15の導電型に対応する不純物をガス又は固体で半導体領域13内に拡散させる。イオン注入法の場合は、半導体領域15の導電型に対応する不純物を半導体領域13内にイオン注入する。
なお、上記複数の図34以降の半導体チップにおいても、図33以前の構造と同様に、半導体チップ上にガラス板又は樹脂の接着層が設けられ、この上にシンチレータが配置されることで、検出チップが形成される。
また、図34〜図42において説明した検出器では、第2半導体領域14に接触する第1コンタクト電極3Aと、第1コンタクト電極3Aとは異なる材料を備え、第1コンタクト電極3Aに重なる位置に配置され、第1コンタクト電極3Aに接触する第2コンタクト電極4Aとを備えおり、クエンチング抵抗R1(抵抗部4(抵抗層4B))は、第2コンタクト電極4Aに連続している。光子の入射によりpn接合において発生したキャリアは、第1コンタクト電極3A及び第2コンタクト電極4Aを介して、クエンチング抵抗R1に流れ、クエンチング抵抗に接続された読出配線TL、共通電極E3、貫通電極TE、第1バンプ電極BE(図14、図20)を介して、配線基板20に至る。
第2コンタクト電極4Aを第1コンタクト電極3Aに重なる位置に配置することにより、クエンチング抵抗と第1コンタクト電極3Aとの接続に要するスペースを最小化することができる。もちろん、必然的に、第1コンタクト電極3Aと第2コンタクト電極4Aとは同一平面上ではなく、高さ方向の位置が異なることとなり、第2コンタクト電極4Aからクエンチング抵抗が連続して延びることとなる。これにより、光検出部10内における配線を省略することができ、光検出部の開口率を、著しく増加させることが可能となる。
また、第2コンタクト電極4A及びクエンチング抵抗は、SiCrを備えており、SiCrは、光透過率が高いため、光検出部10内において、クエンチング抵抗が存在していても、入射した光子がクエンチング層を透過するため、実効的な開口率を増加させることができる。
なお、上述の実施形態の場合、抵抗層4Bの平面形状は、環状又はリングの一部の形状或いは、スパイラル形状であったが、これは方形波、三角波又は正弦波のように蛇行形状であってもよい。
また、実施形態に係るフォトダイオードアレイの効果について、更に説明する。
ガイガーモードにおいてフォトダイオードアレイを動作させる場合、光子が1つの光検出部10に入射した場合の回復時間(電圧回復時間)τは、光検出部10における光検出領域の面積及びpn接合から広がる空乏層幅によって規定される接合容量(画素容量)Cjと、抵抗部4の抵抗値(クエンチング抵抗値Rq)の積(RC定数=Cj×Rq)に依存する。
画素サイズ(光検出部の面積)を小さくすると、接合容量Cjは小さくなるので、同一の回復時間τ、すなわち、同一のRC定数を得るためには、クエンチング抵抗値Rqを大きくする必要がある。クエンチング抵抗値Rqは、抵抗率、厚さ、幅及び長さを調整して決定することができる。抵抗率、幅、厚さはプロセス条件により制限されるため、抵抗値Rqは、長さを変えることで、調整することが合理的である。同一の回復時間τを得るには、画素サイズが大きいほど、抵抗層4Bを短く設定し、画素サイズが小さいほど、抵抗層4Bを長く設定する。
RC定数が小さすぎる場合には、アバランシェ増倍発生後のクエンチングが不十分となり、ラッチング電流と呼ばれる現象が生じ、正常な動作を示さない。一方、RC定数が大きすぎる場合には、回復時間(電圧回復時間)が長くなる。したがって、RC定数の値は、デバイスに応じた最適な値(2〜20ns)に設定される。
なお、ゲインは接合容量Cjと印加電圧に依存しており、実施形態の構造は、接合容量Cjを小さくすることで、ゲインを低減している。フォトダイオードアレイのノイズ成分として、ダークパルスの他にアフターパルス、オプティカルクロストークによる擬似出力信号も含まれている。アフターパルスはアバランシェ増倍により発生した電子・ホールの一部が不純物準位等にトラップされ、ある時間間隔をおいて、後に放出されることで、再度アバランシェ増倍が起こり発生するパルスのことである。オプティカルクロストークはアバランシェ増倍中に低確率で発生した光子が隣接ピクセルに進入、吸収されることで発生した電子・ホール対が、アバランシェ増倍を起こし発生するパルスによるものである。いずれも1光子に対する出力が1パルスでなく複数パルスとなってしまうノイズ成分である。
実施形態の構造のように、接合容量Cj、すなわち、ゲインが小さければアバランシェ増倍により発生する電子・ホール対の総数が少なくなるため、アフターパルス、オプティカルクロストークによるパルスが発生する確率が少なくなり、ノイズ低減の効果が得られる。
接合容量Cjが大きく、ゲインが大きい素子であるほど、発生したキャリアを掃き出す時間が長いため、電圧回復時間は長く、ゲインが小さいほど、回復時間は短くなる。実施形態のように、画素ピッチを小さくすると、電圧回復時間が短くなり、光子のカウントレートを向上させることができる。
次に、読出配線の構造を2層構造にした例について説明する。
図43はフォトダイオードアレイの平面図である。
このフォトダイオードアレイは、複数の光検出部10を有する半導体基板100を備えている。フォトダイオードアレイは、光検出部10を二次元上に配置してなる受光領域と、半導体基板100の光検出部10に囲まれた領域に設けられた共通電極E3とを備えている。共通電極E3を介して、各フォトダイオードAPDからの信号は読み出される。本形態のフォトダイオードは、ガイガーモードで動作するアバランシェフォトダイオード(APD)である。同図では、光検出部10がX軸方向及びY軸方向に沿ってマトリックス状に配置されている。半導体基板100の厚み方向はZ軸方向であり、XYZ軸は直交座標系を構成している。なお、図43では、3行3列の光検出部10が配置されており、これらは受光領域を構成しているが、光検出部10の数は、更に多くても、少なくてもよく、また、一次元配置される構成とすることも可能である。共通電極E3は、複数の光検出部10の中心に配置されている。
個々の光検出部10は、APDと、接続電極3と、クエンチング抵抗4と、接続配線6を備えている。APDの一端は接続電極3に接続され、接続電極3はクエンチング抵抗4、及び、接続配線6を順次介して、上述の読出配線TLとなる読出配線(配線パターン)5B2に接続されている。読出配線5B2は、隣接するAPD間に位置しており、光検出部10間の境界位置に存在している。
読出配線5B2は、格子状のパターンを構成しており、1つの開口パターン内に、1つの光検出部10が配置されている。読出配線5B2は様々な形状のパターンを採用することができる。読出配線5B2のパターンの1つの開口内に複数の光検出部10を配置してもよい。一列又は複数例の光検出部10を、1つの開口パターン内に配置してもよい。
1つの光検出部10に光子が入射すると、APDにおいてキャリアが発生し、このキャリアが接続電極3、クエンチング抵抗4、接続配線6、読出配線5B2(接続配線5B)を順次介して、共通電極E3に到達する。したがって、フォトダイオードアレイに光子が入射する毎に、共通電極E3からはパルス信号が出力される。なお、複数のAPDに光子がそれぞれ同時に入射した場合においても、共通電極E3から遠い位置に存在するAPDからの信号は、近い位置に存在するAPDからの信号よりも、共通電極E3への到達時間が遅くなる。すなわち、APDの位置に応じて、信号伝達時間が異なる。
個々のAPDからの信号伝達時間が短く、信号伝達時間の面内のバラつきが少なく、且つ、出力信号が大きいほど、特性の優れたフォトダイオードアレイであると言える。前二者の特性は、信号伝達経路における時定数を減少させることで、改善することが可能である。時定数を減少させれば、信号伝達速度が速くなり、フォトダイオード毎の差分も小さくなるからである。読出配線の幅を太くすれば、時定数は小さくなる。一方、後者の特性は、各フォトダイオードにおける開口率を向上させることで、向上させることができるが、一般には、読出配線の幅を太くすれば、開口率は低下してしまう。そこで、本形態のフォトダイオードアレイでは、読出配線5B2を、接続電極3の主要部である表面電極3Bよりも上層側に配置することとし、読出配線の幅を広くしたとしても、開口率が低下しない構造とした。
図44は、フォトダイオードアレイの断面図、図45は、電極及び配線等の接続関係を示す図である。
図44に示すように、個々の光検出部10は、第1導電型(n型)の第1半導体領域(層)12と、第1半導体領域12とpn接合を構成する第2導電型(p型)の第2半導体領域(半導体層13及び高不純物濃度領域14)を備え、これらは半導体基板を構成している。半導体領域14又はその直下の領域は、そのpn接合においてキャリアが発生するため、光感応領域として機能し、キャリアを出力する。p型半導体に、n型半導体よりも低い電位を与えると、フォトダイオードに逆バイアス電圧が印加される。相対的に負電位に引かれるキャリアは正孔であり、相対的に正電位に引かれるキャリアは電子である。逆バイアス電圧が、APDのブレイクダウン電圧よりも大きい場合には、APDはガイガーモードで動作する。バイアス電圧は、共通電極E3と、半導体基板(第1半導体領域12)の裏面に、必要に応じて設けられる裏面電極E4との間に与えられる。
この第2半導体領域における高不純物濃度領域(半導体領域)14には、第1コンタクト電極3A(図45参照)が接触している。高不純物濃度領域14は、不純物を半導体層13内に拡散することによって形成される拡散領域(半導体領域)であり、半導体層13よりも高い不純物濃度を有している。本例(タイプ1)では、n型の第1半導体領域12上に、p型の半導体層13が形成され、半導体層13の表面側に、p型の高濃度不純物領域14が形成されている。したがって、フォトダイオードを構成するpn接合は、第1半導体領域12と半導体層13との間に形成されている。
なお、半導体基板の層構造としては、上記とは導電型を反転させた構造を採用することもできる。すなわち、(タイプ2)の構造は、p型の第1半導体領域12上に、n型の半導体層13を形成し、半導体層13の表面側に、n型の高濃度不純物領域14が形成して形成される。
また、pn接合界面を、表面層側において形成することもできる。この場合、(タイプ3)の構造は、n型の第1半導体領域12上に、n型の半導体層13が形成され、半導体層13の表面側に、p型の高濃度不純物領域14が形成される構造となる。なお、この構造の場合には、pn接合は、半導体層13と半導体領域14との界面において形成される。
もちろん、かかる構造においても、導電型を反転させることができる。すなわち、(タイプ4)の構造は、p型の第1半導体領域12上に、p型の半導体層13が形成され、半導体層13の表面側に、n型の高濃度不純物領域14が形成される構造となる。
図45に示すように、半導体領域14に第1コンタクト電極3Aが接触し、第1コンタクト電極には、環状電極3Bが連続し、環状電極3Bは、第2コンタクト電極3Cを介して、クエンチング抵抗(抵抗層)4に接続される。すなわち、第1コンタクト電極3A、環状の表面電極3B及び第2コンタクト電極3Cからなる接続電極3は、半導体領域4とクエンチング抵抗4の一方端を電気的に接続している。
図44に示すように、半導体領域13,14上には、第1絶縁層16が形成され、第1絶縁層16上には、クエンチング抵抗4が形成されている。クエンチング抵抗4と第1絶縁層16とを覆うように第2絶縁層17が形成されている。第1絶縁層16及び17には、第1コンタクト電極3A(図45)が貫通するコンタクトホールが形成され、第2絶縁層17には、第2コンタクト電極3C(図45)が貫通するコンタクトホールが形成されている。また、クエンチング抵抗4の他方端には、接続配線6が接触し、電気的に接続されている。接続配線6は、第2絶縁層17に設けられたコンタクトホールを貫通するコンタクト電極と、第2絶縁層17上を這う接続部分とからなり、接続部分は、補助読出配線(下層読出配線)5Aに連続している。
また、補助読出配線5A、表面電極3B、及び第2絶縁層上には、第3絶縁層18が形成されている。第1〜第3絶縁層16,17,18は、SiO2やシリコン窒化物(SiNx)などの耐熱性の高い無機絶縁体からなる。第3絶縁層18上には、読出配線5B2が形成されている。図45に示すように、接続配線5Bは、第3絶縁層18に設けられたコンタクトホールを貫通するコンタクト電極5B1と、コンタクト電極5B1に連続し、第3絶縁層18上に位置する読出配線5B2とからなる。図45に示す例では、補助読出配線5A及び読出配線5B2が、厚み方向に離間して、並行に配置されおり、双方の終端が共通電極E3に電気的に接続される。
共通電極E3の周辺の断面構造は、図14又は図20に対応して図74及び図75に示すように、図14及び図15の構造において、絶縁層17上に絶縁層18を形成し、更に、共通電極E3及び読出配線5B2(TL)を、絶縁層18上に形成し、貫通孔THが、共通電極E3の裏面に至るまで、対応箇所の絶縁層16,17,18を除去した点が異なり、その他の点は、同一である。このような半導体チップの上には、上述のようにガラス板や接着層、樹脂などの絶縁体が配置され、その上にシンチレータが接着される。
なお、共通電極E3は、第2絶縁層17上に形成していてもよく、この場合には、読出配線5B2の終端においては、第3絶縁層18が除去された領域上に共通電極E3が位置し、これに補助読出配線5A及び読出配線5B2が接続される。共通電極E3が第3絶縁層18上に形成されている場合には、読出配線5B2が共通電極E3に接続されると共に、補助読出配線5Aの終端において、第3絶縁層18に設けられたコンタクトホールを介して、補助読出配線5Aが共通電極E3に接続される。
環状の表面電極3Bは、第2絶縁層17上に位置しており、且つ、Z軸方向からみて、半導体領域14の外縁上に沿って設けられている。表面電極3Bは、半導体領域14の外縁(半導体領域13との境界)に一定の電界を発生させることで、フォトダイオード出力の安定性を向上させている。
ここで、図44において、半導体領域14の表面を含む平面を基準平面(XY平面)とした場合、この基準平面から読出配線5B2までの距離tbは、この基準平面から表面電極3Bまでの距離taよりも大きい。なぜならば、第3の絶縁層18が、読出配線5B2と、第2絶縁層17との間に介在しているからである。この構造により、読出配線5B2の幅の設計の自由度を、フォトダイオードの開口率を減少させることなく増加させることができる。これにより、読出配線5B2の幅を増加させ、単位長当たりの抵抗値を低下させ、また、寄生容量を低減し、信号伝達速度を向上させることができる。
なお、APDは、半導体領域14及び半導体領域14の直下の領域で構成され、半導体領域13,12を含んでいる。読出配線5B2は、半導体領域14(APD)間の領域に形成されている。読出配線5B2の幅を増加させても、半導体領域14の露出した領域を覆うまでは、開口率の低下が生じず、信号出力を大きくすることができる。
以上、説明したように、上述のフォトダイオードアレイは、ガイガーモードで動作するAPDを有する光検出部10を複数備えたフォトダイオードアレイにおいて、個々の光検出部10は、キャリアを出力する半導体領域14を有するAPDと、半導体領域14に電気的に接続され、且つ、その外縁に沿って半導体領域14を囲む表面電極3Bと、表面電極3Bと読出配線5B2とを接続するクエンチング抵抗4とを備えている。また、半導体領域14の表面を含む平面を基準平面とした場合、この基準平面から読出配線5B2までの距離tbは、この基準平面から表面電極3Bまでの距離taよりも大きく、読出配線5B2は、隣接するAPD間に位置している。このフォトダイオードアレイによれば、信号読出速度等の特性を向上させることができる。
なお、上記では表面電極3Bとして環状のものを用いたが、これは一部分が切れていてもよい。また、クエンチング抵抗4の形状は、上記では直線状に延びたものを示したが、これは種々の形状が考えられる。
図46は、電極及び配線等の接続関係を示す図である。
本例のクエンチング抵抗4は、表面電極3Bの外側を囲むように延びており、途中で切れたリング形状を有している。クエンチング抵抗4の一方端は、接続電極3を介して、半導体領域14に電気的に接続されている。クエンチング抵抗4の他方端は、接続配線6を介して、補助読出配線5Aに接続され、補助読出配線5Aは、コンタクト電極5B1を介して、読出配線5B2に電気的に接続されている。本例では、クエンチング抵抗4を長くしたため、その抵抗値を増加させることができる構造であるが、キャリアの通過経路に沿った縦断面構造は、接続配線6が水平に延びる部分を有しておらず、直接、補助読出配線5Aの下面に接続される点を除いて、図44に示したものと同一である。
次に、様々な読出配線5B及びと補助読出配線5Aの構造の例について説明する。
(第1例)図47は、フォトダイオードアレイ(第1例)の部分平面図、図48は、図47に示したフォトダイオードアレイ(第1例)のA−A矢印断面図である。
第1例の構造は、図46に示した構造において、読出配線5B2が、隣接する半導体領域14の間を延びており、読出配線5B2の幅が、隣接する表面電極3B間の離間距離よりも小さい場合である。なお、補助読出配線5Aは、読出配線5B2と同一の幅を有しており、これらは平行に延びている。ここで、第3絶縁層18の厚みが十分に厚くない場合、又は、表面研磨が行われていない場合には、図48に示すように、第3絶縁層18の表面が、下部の表面電極3Bの形状に起因して、凹凸を有することとなる。もちろん、補助読出配線5Aの形状に起因して、第3絶縁層18の表面も凹凸して変形することになるが、図48においては、かかる変形については図示していない。
本例では、2つの読出配線5A,5B2が併設されているので、配線抵抗を低下させ、時定数を小さくして、信号読出速度を向上させることができる。
(第2例)図49は、フォトダイオードアレイ(第2例)の部分平面図、図50は、図49に示したフォトダイオードアレイ(第2例)のA−A矢印断面図である。
第2例の構造は、図46に示した構造において、読出配線5B2が、隣接する半導体領域14の間を延びており、読出配線5B2の幅が、隣接する表面電極3B間の離間距離に近接した場合である。なお、補助読出配線5Aは、読出配線5B2よりも狭い幅を有しており、これらは平行に延びている。ここで、第3絶縁層18の厚みが十分に厚くない場合、又は、表面研磨が行われていない場合には、図50に示すように、第3絶縁層18の表面が、下部の表面電極3Bの形状に起因して、凹凸を有することとなる。もちろん、補助読出配線5Aの形状に起因して、第3絶縁層18の表面も凹凸して変形することになるが、図50においては、かかる変形については図示していない。
本例では、2つの読出配線5A,5B2が併設されているので、配線抵抗を低下させ、時定数を小さくして、信号読出速度を向上させることができる。更に、読出配線5B2の幅が広いため、配線抵抗を大きく低下させることができる。
なお、上述の第1例及び第2例において、第3絶縁層18の厚みを十分に厚くした場合(1μm〜5μm)には、又は、表面を研磨して平坦化した場合には、読出配線5Bは平坦面上に形成されることになるため、表面の段差に起因する断線が抑制されるという効果がある。なお、表面電極3B及び補助読出配線5Aの厚みは、共に、0.6μm〜3.0μmである。
(第3例)図51は、フォトダイオードアレイ(第3例)の部分平面図であり、図52は、図51に示したフォトダイオードアレイ(第3例)のA−A矢印断面図である。
第3例の構造は、図46に示した構造において、読出配線5B2が、隣接する半導体領域14の間を延びており、読出配線5B2の幅が、隣接する表面電極3B間の離間距離(外縁間の離間距離の最小値)よりも大きい場合である。読出配線5B2の幅は、隣接する表面電極3Bの内縁間の離間距離の最小値以下である。
なお、補助読出配線5Aは、読出配線5B2よりも狭い幅を有しており、これらは平行に延びている。ここで、第3絶縁層18の厚みが十分に厚い、又は、表面研磨が行われているため、図52に示すように、第3絶縁層18の表面が平坦化されている。
本例では、2つの読出配線5A,5B2が併設されているので、配線抵抗を低下させ、時定数を小さくして、信号読出速度を向上させることができる。また、読出配線5B2の幅が著しく広くなったため、配線抵抗が更に低くなっている。
次に、上述の補助読出配線5Aを実質的に省略した例について説明する。
図53は、電極及び配線等の接続関係を示す図である。図46に示した構造との相違点は、補助読出配線5Aが、直接的には共通電極に接続されておらず、接続配線6とコンタクト電極5B1を接続するためのみに用いられている点であり、その他の点は、同一である。すなわち、補助読出配線5Aは、読出配線5B2を介することなく、共通電極には電気的に接続されていない。かかる構造を用いた例について、以下説明する。
(第4例)図54は、フォトダイオードアレイ(第4例)の部分平面図であり、図55は、図54に示したフォトダイオードアレイ(第4例)のA−A矢印断面図である。
第4例の構造は、図53に示した構造において、読出配線5B2が、隣接する半導体領域14の間を延びており、読出配線5B2の幅が、隣接する表面電極3B間の離間距離よりも小さい場合である。なお、補助読出配線5Aは、読出配線5B2と同一の幅を有しており、平行に延びている部分を僅かに有するが、共通電極に至る途中で途切れている。ここで、第3絶縁層18の厚みが十分に厚くない場合、又は、表面研磨が行われていない場合には、図55に示すように、第3絶縁層18の表面が、下部の表面電極3Bの形状に起因して、凹凸を有することとなる。補助読出配線5Aは実質的に存在しないので、これに起因する凹凸は第3絶縁層18の表面には実質的にはない。
本例では、読出配線5B2が上層を通っているので、その厚みや幅を自由に設計することができ、配線抵抗を低下させ、時定数を小さくして、信号読出速度を向上させることができる。
(第5例)図56は、フォトダイオードアレイ(第5例)の部分平面図であり、図57は、図56に示したフォトダイオードアレイ(第5例)のA−A矢印断面図である。
第5例の構造は、図54に示した構造において、読出配線5B2が、隣接する半導体領域14の間を延びており、読出配線5B2の幅が、隣接する表面電極3B間の離間距離に近接した場合である。なお、補助読出配線5Aは、読出配線5B2と同一の幅を有しており、平行に延びている部分を僅かに有するが、共通電極E3に至る途中で途切れている。ここで、第3絶縁層18の厚みが十分に厚くない場合、又は、表面研磨が行われていない場合には、図57に示すように、第3絶縁層18の表面が、下部の表面電極3Bの形状に起因して、凹凸を有することとなる。補助読出配線5Aは実質的に存在しないので、これに起因する凹凸は第3絶縁層18の表面には実質的にはない。
本例では、読出配線5B2の幅が広いので、配線抵抗を低下させ、時定数を小さくして、信号読出速度を向上させることができる。また、補助読出配線5Aは実質的に存在しないので、これに起因する第3絶縁層18の段差がなく、この段差に起因する読出配線5B2の断線が抑制されるという効果がある。
なお、上述の第4例及び第5例において、第3絶縁層18の厚みを十分に厚くし、又は、表面を研磨して、その表面を平坦化することができる。平坦化が可能となる第3絶縁層18の厚みの範囲及び表面電極3Bの厚みの範囲は、第2例に記載の場合と同一である。
(第6例)図58は、フォトダイオードアレイ(第6例)の部分平面図であり、図59は、図58に示したフォトダイオードアレイ(第6例)のA−A矢印断面図である。
第6例の構造は、図53に示した構造において、読出配線5B2が、隣接する半導体領域14の間を延びており、読出配線5B2の幅が、隣接する表面電極3B間の離間距離(外縁間の離間距離の最小値)よりも大きい場合である。読出配線5B2の幅は、隣接する表面電極3Bの内縁間の離間距離の最小値以下である。
なお、補助読出配線5Aは、読出配線5B2と同一の幅を有しており、平行に延びている部分を僅かに有するが、共通電極に至る途中で途切れている。ここで、第3絶縁層18の厚みが十分に厚い、又は、表面研磨が行われているため、図59に示すように、第3絶縁層18の表面が平坦化されている。
本例では、読出配線5B2の幅が十分に広いので、配線抵抗を低下させ、時定数を小さくして、信号読出速度を向上させることができる。また、補助読出配線5Aは実質的に存在せず、また、第3絶縁層18の表面は平坦化されているので、第3絶縁層18の段差がなく、この段差に起因する読出配線5B2の断線が抑制されるという効果がある。
(第7例)図60は、フォトダイオードアレイ(第7例)の部分平面図であり、図61は、図60に示したフォトダイオードアレイ(第7例)のA−A矢印断面図である。
第7例の構造は、第6例の構造において、読出配線5B2の幅を狭くする代わりに、半導体領域14の離間距離を狭くし、フォトダイオードの開口率を向上させたものである。その他の点は、第6例と同一である。なお、いずれの例においても、コンタクト電極5B1は、クエンチング抵抗4で囲まれた領域の外側に設けられていてもよい。
本例では、読出配線5B2の幅が十分に広いので、配線抵抗を低下させ、時定数を小さくして、信号読出速度を向上させることができる。また、補助読出配線5Aは実質的に存在せず、また、第3絶縁層18の表面は平坦化されているので、第3絶縁層18の段差がなく、この段差に起因する読出配線5B2の断線が抑制されるという効果がある。また、フォトダイオードの開口率が向上しているため、出力信号が大きくなるという利点がある。
なお、上述のいずれの構造においても、半導体基板の構造として、図62に示す構造も採用することができる。
図62は、基板の構造を変更したフォトダイオードアレイの縦断面図である。同図では、上記のフォトダイオードアレイと比較して、変更される点のみを実線で示しており、残りを一点鎖線で示している。
この構造は、上述の図43以降に説明されるタイプ1〜タイプ4の構造において、半導体領域14の直下に半導体領域15を配置した点が異なり、その他の点は、同一である。半導体領域15は、半導体領域14と同一の導電型、又は、異なる導電型を有している。同一の導電型を有するものを(タイプ1S)〜(タイプ4S)とし、異なる導電型を有するものを(タイプ1D)〜(タイプ4D)とする。なお、半導体領域15における不純物濃度は、半導体領域14の不純物濃度よりも小さい。また、p型の不純物としては、B(ボロン)を採用することができ、n型の不純物としてはP(リン)、As(ヒ素)又はSb(アンチモン)を採用することができる。
なお、上述の半導体構造における各層の導電型、不純物濃度及び厚みの好適な範囲は、各タイプにおいて、図41以降に説明した通りである。
なお、上述の例では、最下部の半導体領域12は、厚みの大きな半導体基板を構成するものであるが、光検出部10は、この下に更に半導体基板を備えていてもよく、この場合は、半導体領域12は、かかる付加的な半導体基板よりも薄い厚みを有することとなる。
また、半導体領域13は、半導体領域12上にエピタキシャル成長法において形成することができるが、基板に対する不純物拡散又はイオン注入によって形成することとしてもよい。半導体領域14,15は、半導体領域13に対する不純物拡散又はイオン注入によって形成することができる。
図63は、フォトダイオードアレイの平面図である。本例は、図45に示したタイプの構造の電極パターンを有している。表面には、格子状の読出電極(読出配線)5B2と、読出電極5B2に接続される共通電極E3が形成されており、格子の1つ毎の開口内に光検出部10が位置している。
個々の光検出部10は、半導体領域14(図45参照)に接続された接続電極3を有しており、接続電極3は、クエンチング抵抗4を介して、読出配線5B2に接続されている。このフォトダイオードアレイのキャリアの進行経路に沿った縦断面構造は、図44に示したものであるが、上述のタイプ1〜4(タイプ1S〜4S,1D〜4D)の構造を採用することも可能である。また、上層の読出配線5B2は必須であるが、下層の補助読出配線5Aは、用いてもよいが、省略することも可能である。すなわち、読出配線5B2及び補助読出配線5Aの構造として、上述の第1例〜第7例の構造を適用することが可能である。
また、読出配線5B2の1つの開口内に、複数の光検出部10を有することも可能である。
なお、共通電極E3の周辺の断面構造、半導体チップへのシンチレータの貼り付け構造、これらからなる検出チップを配線基板に固定する構造等は、上述の説明のものと同一である。
図64は、このようなフォトダイオードアレイの表面のSEM(走査型電子顕微鏡)写真を示す図であり、図65は、フォトダイオードアレイの断面(A―A矢印断面)のSEM写真を示す図である。なお、本例は、第5例の構造を示すものであり、補助読出電極5Aは実質的に用いていない。
図64では、第3絶縁層18の表面形状の変化によって、表面電極3Bに接続されたクエンチング抵抗4が存在している旨が観察され、クエンチング抵抗4に併設して読出配線5B2が延びている旨が観察される。図65では、表面電極3Bよりも上層に読出電極5B2が存在している旨が示されている。
図66は、フォトダイオードアレイの一部の平面図である。本例は、図46に示したタイプの構造の電極パターンを有している。表面には、長方形の開口を有する格子状の読出電極5B2が形成されており、格子の1つ毎の開口内に複数の光検出部10が位置している。本構造は、第2例のフォトダイオードアレイを示すものである。
個々の光検出部10は、キャリアを出力する半導体領域14を有するアバランシェフォトダイオードを有しており、表面電極3Bは、半導体領域14に電気的に接続され、且つ、その外縁に沿って半導体領域14を囲んでいる。表面電極3Bと読出配線5B2とはクエンチング抵抗4によって、接続されている。
縦方向に延びる1本の読出配線5B2には、横方向に隣接する2つの光検出部10が、共通の接続配線(コンタクト電極)6を介して、接続されており、これらの光検出部10は、当該読出配線5B2の縦方向中心軸に対して線対称の構造を有している。これにより、読出配線5B2の数を減らすことができる。
図67は、図66に示したフォトダイオードアレイ(第2例)のA−A矢印断面図である。
半導体層12上に、半導体領域13が形成されており、半導体領域13上に、第1絶縁層16が形成されている。第1絶縁層16上にはクエンチング抵抗4が形成され、これらの上に第2絶縁層17が形成されている。第2絶縁層17のコンタクトホールを介して、補助読出配線5Aが第2絶縁層17上に設けられており、補助読出配線5A上に第3絶縁層18が形成されている。第3絶縁層18に設けられたコンタクトホール内には、コンタクト電極5B1が設けられており、下層の補助読出配線5Aと上層の読出配線5B2を物理的及び電気的に接続している。
なお、補助読出配線5Aの終端位置にコンタクト電極5B1が位置し、これより出力側の補助読出配線5Aが省略されている場合には、本例は上述の第5例のフォトダイオードアレイとなる。なお、本例の配線接続構造は、第1例〜第7例のいずれの構造にも適用することが可能である。
なお、補助配線電極5Aを備えない場合、コンタクト電極5B1を、クエンチング抵抗4の直上に配置して、クエンチング抵抗4と読出配線5B2とをコンタクト電極5B1によって直接的に接続することも可能である。このように、補助読出配線5Aを完全に省略する構造も可能である。
いずれの構造においても、また、いずれの例においても、上述のフォトダイオードアレイは、クエンチング抵抗4上に形成された絶縁層18を備えており、読出配線5B2は、絶縁層18に設けられたコンタクトホールを介して、クエンチング抵抗4に電気的に接続され、且つ、クエンチング抵抗4と共通電極とを電気的に接続している。
次に、上述のフォトダイオードアレイの構成材料ついて説明する。
半導体基板を構成する半導体領域12,13,14の構成材料は、上述の通りSiであり、所望の不純物を含有している。絶縁層16,17,18の構成材料は、それぞれSiO2又はシリコン窒化物である。接続電極3、接続配線6、補助接続配線5A、接続配線5B(読出配線5B2,コンタクト電極)共通電極及び貫通電極の構成材料は、それぞれ金属であり、好ましくはAl、Cu,Au、Cr、Ag又はFeなどの金属、またはこれらのうち2種以上を含む合金である。クエンチング抵抗4の構成材料は、読出配線5B2よりも高抵抗率の材料であり、ポリシリコン、SiCr、NiCr又はTaNiである。
なお、上述のSEM写真は、絶縁層16,17,18の構成材料としてSiO2を用い、接続電極3、接続配線6、補助接続配線5A、接続配線5B(読出配線5B2,コンタクト電極)及び共通電極E3の構成材料としてAlを用い、クエンチング抵抗4の構成材料としてポリシリコンを用いた例である。
次に、図44を再び参照して、上述のフォトダイオードアレイの製造方法について説明する。
まず、半導体領域(半導体基板)12上に、エピタキシャル成長法又は不純物拡散法或いはイオン注入法により、半導体領域13を形成する。なお、好適には半導体領域12は、CZ法又はFZ法により形成された(100)Si半導体基板であるが、他の面方位を有する半導体基板を用いることもできる。Siエピタキシャル成長法を用いる場合には、例えば、原材料として、気相の四塩化珪素(SiCl4)と三塩化シラン(トリクロルシラン、SiHCl3)を用い、成長温度1200℃において、基板表面上にこれらのガスを流す。不純物拡散法の場合には、半導体領域13の導電型に対応する不純物をガス又は固体で半導体領域12内に拡散させる。イオン注入法の場合は、半導体領域13の導電型に対応する不純物を半導体領域12内にイオン注入する。
次に、半導体領域13の表面側の領域に、半導体領域14を形成する。これには不純物の拡散法又はイオン注入法を用いることができる。例えば、拡散法において、不純物原材料として、ジボラン(B2H6)を用いる場合には、拡散温度を1200℃に設定することができる。半導体領域14の形成においては、まず、フォトリソグラフィ技術により、半導体領域13上に開口を有するレジストパターンを形成し、続いて、このレジストパターンをマスクとして、不純物の添加を行う。なお、不純物の添加は、格子状の配線パターン3Cを形成した後、これをマスクとして、絶縁層16を介して、イオン注入法により行ってもよい。
次に、半導体基板上に絶縁層16を形成する。絶縁層16は、Si熱酸化法を用いて形成することができる。酸化温度は例えば1000℃である。これにより、半導体領域13及び14の表面が酸化され、SiO2からなる絶縁層16が形成される。絶縁層16の形成にはCVD法を用いることもできる。
次に、絶縁層16における所望の位置に、フォトリソグラフィ技術によるレジストのパターニングを用いてマスクを形成し、このマスクを用いて、抵抗材料をレジストの開口内に堆積し、開口内にクエンチング抵抗4を形成し、レジストを除去する。抵抗材料は、これをターゲットとするスパッタ法を用いて堆積することができる。例えば、抵抗材料としては、シリコンを用いて、ポリシリコンのクエンチング抵抗4を形成する。
次に、絶縁層16上に絶縁層17を形成する。絶縁層17は、スパッタ法やプラズマCVD法を用いて形成することができる。プラズCVD法を用いる場合、原材料ガスとして、テトラエトキシシラン(TEOS)及び酸素ガスを用い、成長温度を200℃程度に設定して絶縁層17の成長を行う。絶縁層17の厚みは、その表面が平坦化される厚みに設定されることが好ましく、絶縁層16の表面から配線パターン3Cの上面までの高さよりも大きいことが好ましい。これにより、SiO2からなる絶縁層17が形成される。
次に、絶縁層17及び絶縁層16における半導体領域14上の位置に、コンタクトホールを形成する。コンタクトホールの形成においては、まず、フォトリソグラフィ技術により、絶縁層17上に開口を有するレジストパターンを形成し、続いて、このレジストパターンをマスクとして、絶縁層17及び絶縁層16をエッチングする。エッチング法としては、ドライエッチング法の他、HF水溶液を含むエッチング液によるウエットエッチングを用いることもできる。
次に、絶縁層17上に、所望の位置に、フォトリソグラフィ技術によるレジストのパターニングを用いてマスクを形成し、このマスクを用いて、レジストの開口内に堆積し、開口内に、蒸着法により、第1コンタクト電極3A、表面電極3B、第2コンタクト電極3C、接続配線6及び補助読出電極5Aを同時に形成し、これらの形成後にレジストを除去する。蒸着材料として、本例では、アルミニウムを用いるが、スパッタ法などを用いることも可能である。
次に、絶縁層17上に絶縁層18を形成する。絶縁層18の形成方法は、絶縁層17と同一である。
しかる後、絶縁層18の所望の位置に、フォトリソグラフィ技術によるレジストのパターニングを用いてマスクを形成し、このマスクを用いて、絶縁層18をエッチングして、コンタクトホールを形成し、形成後にレジストを除去する。コンタクトホール形成時のエッチング方法は、ドライエッチング法の他、HF水溶液を含むエッチング液によるウエットエッチングを用いることもできる。このコンタクトホール内に、コンタクト電極5B1を形成し、これと同時にコンタクト電極5B1に連続する読出配線5B2を形成する。
コンタクト電極5B1及び読出配線5B2の形成においては、まず、絶縁層18の所望の位置に、フォトリソグラフィ技術によるレジストのパターニングを用いてマスクを形成し、このマスクの開口内に、コンタクト電極5B1及び読出配線5B2を堆積する。堆積方法は、蒸着方法又はスパッタ法を用いることができる。
なお、図62に示す構造の光検出部を製造する場合、半導体領域14の形成前に、半導体領域15を不純物拡散法又はイオン注入法を用いて、半導体領域13の表面側に形成しておけばよい。不純物拡散法の場合には、半導体領域15の導電型に対応する不純物をガス又は固体で半導体領域13内に拡散させる。イオン注入法の場合は、半導体領域15の導電型に対応する不純物を半導体領域13内にイオン注入する。
また、共通電極E3は、これを第2絶縁層17上に形成する場合には、レジストのパターニングにより、表面電極3Bと同時にこれを形成することができる。また、共通電極E3を、第3絶縁層18上に形成し、これに補助読出配線5Aを接続する場合には、第3絶縁層18に、補助読出配線5Aと共通電極E3とを接続するためのコンタクトホールを形成した後、読出配線5B2の形成と同時に、コンタクトホール内のコンタクト電極と共通電極を同時に形成すればよい。
なお、上述の実施形態の場合、クエンチング抵抗4の平面形状は環状であったが、これはリングの一部の形状、スパイラル形状であってもよい。
次に、上述の第5例(図56及び図57)の構造のフォトダイオードアレイを試作した場合の効果について説明する。なお、本例では、共通電極E3及び貫通電極の製造は行っていない。
製造条件は、以下の通りである。
(1)構造
(1−1)
半導体領域12:
導電型:n型(不純物:Sb(アンチモン))
不純物濃度:5.0×1011cm−3
厚み:650μm
(1−2)
半導体領域13:
導電型:p型(不純物:B(ボロン))
不純物濃度:1.0×1014cm−3
厚み:30μm
(1−3)
半導体領域14
導電型:p型(不純物:B(ボロン))
不純物濃度:1.0×1018cm−3
厚み:1000nm
(1−4)
絶縁層16:SiO2(厚み:1000nm)
(1−5)
絶縁層17:SiO2(厚み:2000nm)
(1−6)
絶縁層18:SiO2(厚み:2000nm)
(1−7)
接続電極3:(アルミニウム(Al))
(1−8)
クエンチング抵抗4(ポリシリコン)
形状:図63に示す形状
厚み:500nm
幅:2μm
長さ:100μm
抵抗値:500kΩ
(1−9)
光検出部10
1つの光検出部10の面積S:2025μm2
隣接する光検出部10の中心間の間隔X:50μm
受光領域内のフォトダイオード数(X軸方向=100個×Y軸方向100個)
受光領域のX軸方向寸法:5mm
受光領域のY軸方向寸法:5mm
(1−10)
読出配線5B2
幅:5μm
X軸方向の配線の本数:101本
Y軸方向の配線の本数:101本
1つの開口内に存在する光検出部10の数:1
(2)製法条件
・半導体領域12:CZ法((001)Si半導体基板)
・半導体領域13:Siエピタキシャル成長法(原材料:気相の四塩化珪素(SiCl4)、三塩化シラン(トリクロルシラン、SiHCl3)、成長温度1200℃)
・半導体領域14:不純物の熱拡散法(不純物原材料:ジボラン(B2H6)、拡散温度1200℃)
・絶縁層16:(Si熱酸化法:酸化温度(1000℃))
・クエンチング抵抗4:スパッタ法(ターゲット材料:Si)
・絶縁層17:(プラズマCVD法:原材料ガス(テトラエトキシシラン(TEOS)及び酸素ガス):成長温度(200℃))
・第1コンタクト電極3A、表面電極3B、第2コンタクト電極3C、接続配線6、補助読出配線5A、共通電極E3:蒸着法(原料:アルミニウム)
・絶縁層18:(プラズマCVD法:原材料ガス(テトラエトキシシラン(TEOS)及び酸素ガス):成長温度(200℃))
・コンタクト電極5B1、読出配線5B2、共通電極(電極パッド):蒸着法(原料:アルミニウム)
実施例に係るフォトダイオードアレイの特性を、以下のように評価した。
図68は、基点となる各フォトダイオード(画素)から、半導体チップの表面上の一端に設けられた電極パッド(共通電極E3とみなす)までの距離と、キャリアの信号伝達時間の基準からの差tp(ps)を示すグラフ(実施例)である。時間差tpは基準時刻からの伝達時間である。基点となるフォトダイオードの周囲には5個のフォトダイオードが配置されており、X軸方向の基点の数は12個、Y軸方向の基点の数は18個であり、同グラフでは各基点の周囲のフォトダイオード出力の平均値を1つのデータとして示している。
フォトダイオードのチップは5mm×5mmの寸法を有しており、グラフにおける最も手前側の位置をXY平面における原点として、受光領域のX軸方向には100個、Y軸方向には100個のフォトダイオードが配置されている。共通電極E3とみなされる電極パッドは、同グラフの右に存在するE3の位置に設けられている。
各フォトダイオードから電極パッドまでの信号伝達時間の差tp(ps)は、電極パッドから遠くなるほど長くなる傾向にあるが、時間差tpは、全て160ps以下と短く、また、面内バラつきも小さい。
図69は、各フォトダイオードから電極パッドまでの距離と、キャリアの信号伝達時間の基準からの差tp(ps)を示すグラフ(比較例)である。比較例では、上述の第1例において、下層の補助読出配線5Aのみを信号伝達に用いた例であり、上層の読出配線5B2は形成されていない。比較例における補助読出配線5Aの1本の幅は2μmである。
各フォトダイオードから電極パッドまでの信号伝達時間の差tp(ps)は、電極パッドE3から遠くなるほど長くなる傾向にあるが、時間差tpは、過半数が160psを超えており、最大で300psを超え、また、面内バラつきも大きい。
図70は、電圧Voverと、出力パルス到着時間のバラつきを示すFWHM(ps)の関係を示すグラフであり、図71は、到着時間tβ(ps)とカウント数の関係を示すグラフである。
フォトダイオードをガイガーモードで動作させるため、フォトダイオードのブレイクダウン電圧(70V)よりも電圧Voverだけ大きな逆バイアス電圧(70+Vover)を各フォトダイオードに与える。この超過電圧Voverが1.5〜4V(逆バイアス電圧=71.5V〜74V)の場合に、実施例では、半値全幅(FWHM)は、200ps以下となり、最小で130psまで小さくなる一方、比較例では220ps以上である。なお、このFWHMの測定法は、以下の通りである。2層メタル配線を形成することで配線抵抗を低減させ、高時間分解能を達成することができる。なお、1つの半導体チップ又は各アクティブチャンネルに1個のみに限らず複数個の共通電極と貫通孔を形成すれば、時間ばらつきを更に改善することが可能となる。
まず、各フォトダイオードアレイに、レーザ光を全面照射する。この場合、各フォトダイオードから、光子入射に対応する複数のパルス信号が出力される。フォトダイオードは面内に分布しているため、同時にレーザ光が各フォトダイオードに入射した場合においても、若干の時間的な広がりを有して、電極パッドに到達する。図71は、レーザ光出射タイミングから、キャリアが電極パッドに到達するまでの時間tβ毎のパルス信号のカウント数(パルス数)をヒストグラムにしたグラフである。到達時間tβが2040(ps)近傍のパルス数が一番大きく、この時間をピークとして、到達時間は正規分布している。このグラフのFWHMが小さいほど、到達時間のバラつきが少ない。
実施例のフォトダイオードアレイでは、FWHMが十分に小さいので、面内の到達時間tβのバラつきが、比較例よりも十分に抑制されていることが分かる。
なお、図68及び図69のグラフは、以下の図72及び図73の方法を用いて求められる。
図72は、レーザビーム照射について説明する図であり、図73は、レーザ光出射タイミングからキャリアが電極パッドに到達するまでの時間tα(ns)と出力OUT(a.u.)の関係を示すグラフ(シミュレーション)である。
図72に示すように、直径1mmのレーザビームを、電極パッドから遠い位置A、中間の位置B、近い位置Cに存在する実施例のフォトダイオード群に照射し、レーザビームを同図の矢印で示す横方向(X軸方向)に沿って走査する。走査後の遠い位置A、中間の位置B、近い位置Cからの出力の平均値が図73のグラフに示される。
この場合、図73に示すように、出力パルス電圧を示す出力OUT(a.u.)が、時間tα(ns)の増加に伴って増加し、tα=2.5ns以上では一定値に飽和している。出力OUTが、閾値(threshold)=0.5以上となる立ち上がりの時間tαは、1.4nsである。
図68及び図69は、図73のシミュレーション図に相当する出力パルスを実際に測定し、パッドから最も近い位置Cの時間tαを基準とした場合の、各レーザ照射位置におけるパルスの時間遅れをマッピングしたものである。なお、このマッピングは閾値における時間tαを用いて行った。
以上、説明したように、上述の実施形態に係るフォトダイオードアレイは、ガイガーモードで動作するアバランシェフォトダイオード有する光検出部を複数備えたフォトダイオードアレイにおいて、個々の光検出部10は、キャリアを出力する半導体領域14を有するアバランシェフォトダイオードPDと、半導体領域14に電気的に接続され、且つ、その外縁に沿って半導体領域14囲む表面電極3Bと、表面電極3Bと読出配線5B2(TL)とを接続するクエンチング抵抗4と、を備え、半導体領域14の表面を含む平面を基準平面とした場合、この基準平面から読出配線5B2までの距離tbは、この基準平面から表面電極3Bまでの距離taよりも大きく、読出配線5B2は、隣接するアバランシェフォトダイオードPD(半導体領域14)間に位置している。
半導体領域14への光の入射に応じて発生したキャリアは、第2半導体領域14から、表面電極3B、クエンチング抵抗4、読出配線5B2を順次介して、共通電極E3、貫通電極、バンプ電極、配線基板へと至る。読出配線5B2は、表面電極3Bよりも上層に形成されているため、表面電極3Bによる空間的な制約が解除され、その幅等を広くすることができ、したがって、時定数を小さくして、信号読出速度を向上させることができる。表面電極は、第2半導体領域14の外縁に一定の電界を発生させることができ、APDの出力安定性を向上させることができる。
また、上記フォトダイオードアレイは、基準平面に垂直な方向から見た場合、読出配線5B2は、表面電極3Bの一部と重なっている(第3例、第6例、第7例)。この場合には、読出配線5B2の形成領域は、光入射に対してデッドスペースとなる表面電極3B上の領域を利用しているので、フォトダイオードの開口率を低下させることなく、読出配線5B2の寸法を広げ、抵抗値を低下させることができる。
また、上記フォトダイオードアレイは、クエンチング抵抗4上に形成された第1絶縁層17と、第1絶縁層17に設けられたコンタクトホールを介して、クエンチング抵抗4に電気的に接続された補助読出配線5Aと、補助読出配線5A上に形成された第2絶縁層18と、を備え、読出配線5B2は、第2絶縁層18に設けられたコンタクトホールを介して、補助読出配線5Aに電気的に接続され、且つ、補助読出配線5Aに対して並行して延びて、補助読出配線5Aと共に、共通電極E3に接続されている(第1例、第2例、第3例)。
2つの読出配線を利用することにより、フォトダイオードから共通電極E3に至るまでの抵抗値を低下させることができる。
また、上記フォトダイオードアレイは、クエンチング抵抗4上に形成された絶縁層18を備え、読出配線5B2は、絶縁層18に設けられたコンタクトホールを介して、クエンチング抵抗4に電気的に接続され、且つ、クエンチング抵抗4と共通電極E3とを電気的に接続している(第1例〜第7例)。また、補助読出配線5Aは直接的には共通電極に接続されていなくてもよい(第4例〜第7例)。これら場合、読出配線5B2の設計自由度が高くなり、時定数を小さくして、信号読出速度を向上させることができる。
なお、クエンチング抵抗4の抵抗値は100〜1000kΩが好適である。フォトダイオードの半導体領域14から電極パッドとしての共通電極に至るまでの配線の抵抗値は、低いほど好ましいが、20Ω以下が好適であり、更に好適には5Ω以下である。
上述のように、貫通電極を用いた場合、大面積タイリングを行う上で、デッドスペースが少なく、対照的な配置となるためPET装置、CT装置等で、画像を再構成が簡単となる。この構造は、ワイヤボンディングパッドを備えた非対称のチップでは画像再構成を行う上で補正が必要となるため、対称の形状が好ましい。
また、貫通孔の形状は、角錐台形状のようなテーパー型のものと、直方体又は円柱型(ストレート型)が考えられる。貫通孔の内部は空洞とすることもできるが、金属や絶縁物で埋めてもよい。貫通電極はアクティブチャンネル1つに対し、1つ、または複数でもよい。アクティブチャンネルのサイズは、1×1mm,3×3mm,6×6とすることができるが、これよりも大きくても小さくてもよい。形状は例えば2×3mmのように正方形でなくてもよい。なお、カソードは例えばバルクの半導体基板の裏面部分からバンプ電極で直接コンタクトをとることができる。
上述の実施形態に係る検出器は、配線基板と、二次元状に互いに離間して、前記配線基板上に配置された複数の半導体チップと、個々の前記半導体チップと前記配線基板との間に配置された第1及び第2バンプ電極と、を備えた検出器であって、個々の前記半導体チップは、二次元状に配置された複数の光検出部を有する半導体基板と、前記半導体基板の表面上に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に配置された共通電極と、個々の前記光検出部のクエンチング抵抗と前記共通電極とを電気的に接続する読出配線と、前記共通電極から、前記半導体基板の貫通孔を介して、前記半導体基板の裏面に延びた貫通電極と、を備え、個々の前記光検出部は、第1導電型の第1半導体領域、及び、前記第1半導体領域とpn接合を構成し、キャリアを出力する第2導電型の第2半導体領域を備えるAPDと、前記APDの前記第2半導体領域に電気的に接続された前記クエンチング抵抗と、を備え、前記第1バンプ電極は、前記貫通電極と前記配線基板とを電気的に接続しており、前記第2バンプ電極は、前記APDの前記第1半導体領域と前記配線基板とを電気的に接続している。
個々の光検出部に含まれるAPD(アバランシェフォトダイオード)の両端には、第1及び第2バンプ電極を介して、ガイガーモードで動作するバイアス電圧が与えられる。光(エネルギー線)の入射により、複数のAPDにおいて発生したキャリアは、それぞれのクエンチング抵抗を介して、半導体基板上の共通電極に流れ、共通電極から、貫通電極及び第1バンプ電極を通って配線基板に至り、外部に取り出される。
当該構造のAPDにおいては、貫通電極等を用いたキャリア伝達経路短縮化構造を有しているため、配線抵抗が減少している。しがたって、APDからのキャリアの伝達速度、すなわち、時間分解能が向上する。当該APDを複数備えた1つの半導体チップに、複数の光子が入射した場合、時間分解能が向上することで、より高精度の光子検出を行うことができるようになる。また、別の半導体チップにおいては、製造バラツキ誤差等の原因により、同一の時間分解能となることが保障されていないが、組み立て時において、製品特性が一定の範囲内の半導体チップを選択して、配線基板にバンプ電極を介してボンディングすれば、半導体チップ毎の特性バラつきが低減される。
二次元状に並べられた半導体チップは、離間しているので、特定の半導体チップへ入射した光が、他の半導体チップへ漏れてクロストークが発生する影響が抑制されると共に、半導体チップ間の隙間が、配線基板の膨張/収縮に起因する配線基板の反りの半導体チップへの影響を緩和することができる。すなわち、検出器全体としての時間分解能、クロストーク、温度変化に対する耐性等の特性は著しく改善される。
また、上述の実施形態に係る検出器において、個々の前記光検出部は、前記第2半導体領域に電気的に接続され、且つ、その外縁に沿って前記第2半導体領域を囲む表面電極を備えている。
また、上述の実施形態に係る検出器において、第1及び第2半導体領域への光の入射に応じて発生したキャリアは、第2半導体領域から、表面電極、クエンチング抵抗、読出配線を順次介して、共通電極に至る。表面電極は、第2半導体領域の外縁に一定の電界を発生させることができ、APDの出力安定性を向上させることができる。
また、上述の実施形態に係る検出器において、前記第2半導体領域の表面を含む平面を基準平面とした場合、この基準平面から前記読出配線までの距離は、この基準平面から前記表面電極までの距離よりも大きく、前記読出配線は、隣接する前記APD間に位置していることを特徴とする。読出配線は、表面電極よりも上層に形成されているため、表面電極による空間的な制約が解除され、その幅等を広くすることができ、したがって、時定数を小さくして、信号読出速度を向上させることができる。
また、上述の実施形態に係る検出器において、前記第2半導体領域に接触する第1コンタクト電極と、前記第1コンタクト電極とは異なる材料を備え、前記第1コンタクト電極に重なる位置に配置され、前記第1コンタクト電極に接触する第2コンタクト電極と、を備え、前記クエンチング抵抗は、前記第2コンタクト電極に連続している。光子の入射によりpn接合において発生したキャリアは、第1コンタクト電極及び第2コンタクト電極を介して、クエンチング抵抗に流れ、クエンチング抵抗に接続された読出配線、共通電極、貫通電極を介して、配線基板に至る。
また、上述の実施形態に係る検出器において、第2コンタクト電極を第1コンタクト電極に重なる位置に配置することにより、クエンチング抵抗と第1コンタクト電極との接続に要するスペースを最小化することができる。もちろん、必然的に、第1コンタクト電極と第2コンタクト電極とは同一平面上ではなく、高さ方向の位置が異なることとなり、第2コンタクト電極からクエンチング抵抗が連続して延びることとなる。これにより、光検出部内における配線を省略することができ、光検出部の開口率を、著しく増加させることが可能となる。
また、上述の実施形態に係る検出器において、前記第2コンタクト電極及び前記クエンチング抵抗は、SiCrを備えることが好ましい。SiCrは、光透過率が高いため、光検出部内において、クエンチング抵抗が存在していても、入射した光子がクエンチング抵抗を透過するため、実効的な開口率を増加させることができる。