JP2016188430A - 低α線ビスマス - Google Patents
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Abstract
【課題】α線量が0.005cph/cm2以下である低α線ビスマスを得る方法の提供。【解決手段】Pbの含有量が0.1ppm以下であり、U、Thの含有量が夫々5ppb以下であり、α線量が0.005cph/cm2以下である低α線ビスマス。α線量が0.2cph/cm2以下であるビスマスを原料とし、電気分解によりビスマス濃度を5〜50g/L、pH0.0〜0.4の硝酸ビスマス溶液を作製し、この溶液に吸着材を添加してポロニウムを吸着させ、これをろ過して吸着材とろ液に分離し、次にこのろ液を電解採取してビスマスを回収する低α線ビスマスの製造方法【選択図】図2
Description
この発明は、半導体の製造等に使用する、α線量を低減させたビスマスの製造方法及びそれによって得られた低α線ビスマスに関する。
一般に、ビスマスは融点が271℃と低く、鉛や錫と同様にはんだ用の材料として用いられる。はんだは、半導体を製造する際に、半導体チップと基板との接合、ICやLSI等のSiチップをリードフレームやセラミックスパッケージにボンディングし又は封止する時や、TAB(テープ・オートメイテッド・ボンディング)やフリップチップ製造時のバンプ形成、半導体用配線材等に使用されている。また近年では、熱電材料としての開発も進められている。
最近の半導体装置等は、高密度化及び動作電圧やセルの容量が低下しているので、半導体チップ近傍の材料からのα線の影響により、ソフトエラーが発生する危険が多くなってきた。このようなことから、前記はんだ材料の高純度化の要求があり、またα線の少ない材料が求められている。
最近の半導体装置等は、高密度化及び動作電圧やセルの容量が低下しているので、半導体チップ近傍の材料からのα線の影響により、ソフトエラーが発生する危険が多くなってきた。このようなことから、前記はんだ材料の高純度化の要求があり、またα線の少ない材料が求められている。
主な半導体用鉛フリーはんだ材料はいくつか考えられるが、低温用の低αはんだとしては、錫・インジウム合金、錫・ビスマス合金が検討されている。しかし、インジウムは非常に高価であるため、錫・ビスマス合金が有力視されている。
しかしながら、錫・ビスマス合金の材料を選択した場合には、錫とビスマスの双方について、α線量を低下させることが必要である。従来、錫や鉛については、低α化する技術が開示されているが、ビスマスについては、低α化の研究がなされていないのが現状である。
しかしながら、錫・ビスマス合金の材料を選択した場合には、錫とビスマスの双方について、α線量を低下させることが必要である。従来、錫や鉛については、低α化する技術が開示されているが、ビスマスについては、低α化の研究がなされていないのが現状である。
本願発明は、低α線ビスマスを提供することを課題としているが、その大きな用途がはんだ材料なので、はんだ材料としての錫のα線を減少させる技術に関して、参考までに紹介する。
下記特許文献1には、錫とα線量が10cph/cm2以下の鉛を合金化した後、錫に含まれる鉛を除去する精錬を行う低α線錫の製造方法が記載されている。この技術の目的は、高純度Pbの添加により錫中の210Pbを希釈してα線量を低減しようとするものである。
しかし、この場合、錫に添加した後で、Pbをさらに除去しなければならないという煩雑な工程が必要であり、また錫を精錬した3年後にはα線量が大きく低下した数値を示しているが、3年を経ないとこのα線量が低下した錫を使用できないというようにも理解されるので、産業的には効率が良い方法とは言えない。
下記特許文献1には、錫とα線量が10cph/cm2以下の鉛を合金化した後、錫に含まれる鉛を除去する精錬を行う低α線錫の製造方法が記載されている。この技術の目的は、高純度Pbの添加により錫中の210Pbを希釈してα線量を低減しようとするものである。
しかし、この場合、錫に添加した後で、Pbをさらに除去しなければならないという煩雑な工程が必要であり、また錫を精錬した3年後にはα線量が大きく低下した数値を示しているが、3年を経ないとこのα線量が低下した錫を使用できないというようにも理解されるので、産業的には効率が良い方法とは言えない。
下記特許文献2には、Sn−Pb合金はんだに、Na、Sr、K、Cr、Nb、Mn、V、Ta、Si、Zr、Baから選んだ材料を10〜5000ppm添加すると、放射線α粒子のカウント数が0.5cph/cm2以下に低下するという記載がある。
しかし、このような材料の添加によっても放射線α粒子のカウント数を減少できたのは0.015cph/cm2レベルであり、今日の半導体装置用材料としては期待できるレベルには達していない。
さらに問題となるのは、添加する材料としてアルカリ金属元素、遷移金属元素、重金属元素など、半導体に混入しては好ましくない元素が用いられていることである。したがって、半導体装置組立て用材料としてはレベルが低い材料と言わざるを得ない。
しかし、このような材料の添加によっても放射線α粒子のカウント数を減少できたのは0.015cph/cm2レベルであり、今日の半導体装置用材料としては期待できるレベルには達していない。
さらに問題となるのは、添加する材料としてアルカリ金属元素、遷移金属元素、重金属元素など、半導体に混入しては好ましくない元素が用いられていることである。したがって、半導体装置組立て用材料としてはレベルが低い材料と言わざるを得ない。
下記特許文献3には、はんだ極細線から放出される放射線α粒子のカウント数を0.5cph/cm2以下にして、半導体装置等の接続配線用として使用することが記載されている。しかし、この程度の放射線α粒子のカウント数レベルでは、今日の半導体装置用材料としては期待できるレベルには達していない。
下記特許文献4には、特級硫酸、特級塩酸などの精製度の高い硫酸と塩酸を使用して電解液とし、かつ高純度の錫を陽極に用いて電解することにより鉛濃度が低く、鉛のα線カウント数が0.005cph/cm2以下の高純度錫を得ることが記載されている。コストを度外視して、高純度の原材料(試薬)を使用すれば、高純度の材料が得られることは当然であるが、それでも特許文献4の実施例に示されている析出錫の最も低いα線カウント数が0.002cph/cm2であり、コスト高の割には、期待できるレベルには達していない。
下記特許文献5には、粗金属錫を加えた加熱水溶液に硝酸を添加してメタ錫酸を沈降させ、ろ過し、これを洗浄し、洗浄後のメタ錫酸を塩酸又は弗酸で溶解し、この溶解液を電解液として電解採取により5N以上の金属錫を得る方法が記載されている。この技術には漠然とした半導体装置用としての適用ができると述べているが、放射性元素及び放射線α粒子のカウント数の制限については、特に言及されておらず、これらについては関心が低いレベルのものと言える。
下記特許文献6には、はんだ合金を構成するSn中に含まれるPbの量を減少させ、合金材としてBi又はSb、Ag、Znを用いるとする技術が示されている。しかし、この場合、たとえPbをできるだけ低減したとしても、必然的に混入してくるPbに起因する放射線α粒子のカウント数の問題を根本的に解決する手段は、特に示されていない。
下記特許文献7には、特級硫酸試薬を用いて電解して製造した、品位が99.99%以上であり、放射線α粒子のカウント数が0.03cph/cm2以下である錫が開示されている。この場合も、コストを度外視して、高純度の原材料(試薬)を使用すれば、高純度の材料が得られることは当然ではあるが、それでも特許文献7の実施例に示されている析出錫の最も低いα線カウント数が0.003cph/cm2であり、コスト高の割には、期待できるレベルには達していない。
下記特許文献8には、4ナイン以上の品位を有し、放射性同位元素が50ppm未満、放射線α粒子のカウント数が0.5cph/cm2以下である、半導体装置用ろう材用鉛が記載されている。また、下記特許文献9には、99.95%以上の品位で、放射性同位元素が30ppm未満、放射線α粒子のカウント数が0.2cph/cm2以下である、半導体装置用ろう材用錫が記載されている。
これらはいずれも、放射線α粒子のカウント数の許容量が緩やかで、今日の半導体装置用材料としては期待できるレベルには達していない問題がある。
これらはいずれも、放射線α粒子のカウント数の許容量が緩やかで、今日の半導体装置用材料としては期待できるレベルには達していない問題がある。
このようなことから、本出願人は下記特許文献10に示すように、高純度錫、すなわち純度が5N以上(但し、O、C、N、H、S、Pのガス成分を除く)であり、その中でも放射性元素であるU、Thのそれぞれの含有量が5ppb以下、放射線α粒子を放出するPb、Biのそれぞれの含有量が1ppm以下とし、半導体チップへのα線の影響を極力排除する提案を行った。この場合、高純度錫は最終的には、溶解・鋳造及び、必要により圧延・切断して製造されるもので、その高純度錫のα線カウント数が0.001cph/cm2以下であることを実現する技術に関するものである。
Snの精製の際に、Poは非常に昇華性が高く、製造工程、例えば溶解・鋳造工程で加熱されるとPoが昇華する。製造の初期の段階でポロニウムの同位体210Poが除去されていれば、当然ながらポロニウムの同位体210Poから鉛の同位体206Pbへの壊変も起こらず、α線も発生しないと考えられる。
製造工程でのα線の発生は、この210Poから鉛の同位体206Pbへの壊変時と考えられたからである。しかし、実際には、製造時にPoが殆ど消失したと考えられていたのに、引き続きα線の発生が見られた。したがって、単に製造初期の段階で、高純度錫のα線カウント数を低減させるだけでは、根本的な問題の解決とは言えなかった。
製造工程でのα線の発生は、この210Poから鉛の同位体206Pbへの壊変時と考えられたからである。しかし、実際には、製造時にPoが殆ど消失したと考えられていたのに、引き続きα線の発生が見られた。したがって、単に製造初期の段階で、高純度錫のα線カウント数を低減させるだけでは、根本的な問題の解決とは言えなかった。
このようなことから、本発明者は、溶解・鋳造した後の試料のα線量が0.0005cph/cm2未満である錫を開発した(特許文献11参照)。純度3Nレベルの原料錫を塩酸又は硫酸で浸出した後、pH1.0以下、Sn濃度200g/L以下の電解液を用いて電解精製することにより得ることができる。
この技術は極めて有効であり、これにより、錫については解決できたが、ビスマスについては依然として、α線量が高い材料のままであり、問題の解決には至っていない。
この技術は極めて有効であり、これにより、錫については解決できたが、ビスマスについては依然として、α線量が高い材料のままであり、問題の解決には至っていない。
一方、ビスマスに関する技術としては、以下の特許文献を挙げることができる。
特許文献12は、錫−ビスマス合金めっき用硫酸錫塩及び硫酸ビスマス塩の電解製造方法に関し、陽極と陰極をアニオン交換膜か又はアニオン交換膜及びカチオン交換膜で分離した電解槽を使用し、電解液として硫酸溶液を使用し、陽極として錫又はビスマスを使用し、しかして直流電圧を陽極と陰極に印加して硫酸電解液中に錫又はビスマスを溶解させることからなり、かつ得られた錫及びビスマス塩を用いてめっきした皮膜の放射性α粒子のカウント数が0.1cph/cm2未満であることを特徴とする錫−ビスマス合金めっき用の硫酸錫塩又は硫酸ビスマス塩の電解製造法が開示されている。
特許文献12は、錫−ビスマス合金めっき用硫酸錫塩及び硫酸ビスマス塩の電解製造方法に関し、陽極と陰極をアニオン交換膜か又はアニオン交換膜及びカチオン交換膜で分離した電解槽を使用し、電解液として硫酸溶液を使用し、陽極として錫又はビスマスを使用し、しかして直流電圧を陽極と陰極に印加して硫酸電解液中に錫又はビスマスを溶解させることからなり、かつ得られた錫及びビスマス塩を用いてめっきした皮膜の放射性α粒子のカウント数が0.1cph/cm2未満であることを特徴とする錫−ビスマス合金めっき用の硫酸錫塩又は硫酸ビスマス塩の電解製造法が開示されている。
また、特許文献13に、珪弗酸を含む電解液を用いた電解精製による高純度ビスマスの製造方法が開示されている。特許文献14には、真空溶解・真空蒸留による高純度ビスマスの製造方法及び製造装置が記載されている。特許文献15には、半田接合方法及び電子装置が開示されている。特許文献16には、溶媒抽出によるBi−212の製造方法及び装置並びにそれらの使用方法が開示されている。
さらに、特許文献17に、ビスマスの電解精製方法に関するもので、鉛品位を1Mass%以下に予め調整したビスマスメタルをアノードにし、カソードにチタン板を用い、電解液は、塩酸溶液中にビスマスを10〜30g/L、電流密度を150A/m2以下とした条件でビスマスの電解精製を行うことで、槽電圧の安定した状態で電解を行うことができ、カソード電着物中の鉛品位が0.01Mass%以下の精製ビスマスを得るビスマスの電解精製方法が開示されている。
しかし、この塩酸浴を使用したビスマスの電解精製法は、鉛の除去という意味では有効であるが、塩酸濃度が高い浴を使用するために設備の腐食があるという問題がある。
しかし、この塩酸浴を使用したビスマスの電解精製法は、鉛の除去という意味では有効であるが、塩酸濃度が高い浴を使用するために設備の腐食があるという問題がある。
以上の特許文献12〜17については、ビスマスを高純度化する技術もあるが、高純度化したビスマスのα線カウント数は0.1cph/cm2レベルであり、ビスマスに関する従来技術は、これが限界と考えられていた。当然ながら、これらのビスマス材料を使用した場合には、半導体チップ近傍の材料からのα線の影響により、ソフトエラーが発生する危険性が高いという問題を有している。
また、下記特許文献18には、硝酸ビスマスの結晶を硝酸水溶液に溶解させた市販品を購入し、この溶液の硝酸濃度を低下させてオキシ硝酸ビスマスとα線放出核種を共沈させ、これによりα線放出核種を除去するという技術が開示されている。しかし、ビスマスも消失するので、効率の悪さを必然的に伴うために生産効率が悪いという問題が存在する。
また、下記特許文献19に記載のように、通常、ビスマスの精製は、蒸留法又は電解法で行われるが、蒸留法では、何回も繰り返し蒸留を行わなければならず、また、共沸混合物があると単離・精製することが難しく、鉛を1ppm以下のレベルまで低減することはできない。また、電解法では、ヘキサフルオロケイ酸と酸とを混合し、これにニカワ等の添加剤を加えた電解液を用いる。ヘキサフルオロケイ酸や添加剤のニカワ等から鉛の汚染を受けることがあり、鉛を数10ppmレベルまでしか低減できないという限界がある。
これに対して、ヘキサフルオロケイ酸や添加剤を用いない、酸(塩酸又は硫酸)のみの電解液において、pH、電解液中のビスマス濃度、電解液温度、電流密度を制御することで、鉛を1ppm以下、ウラン、トリウムをそれぞれ5ppb以下、α線量を0.01cph/cm2以下を達成することが可能となった(特許文献19参照)。
また、本発明者らは、塩酸、硫酸よりも取扱いが容易で、かつ、設備への損傷の少ない方法として、先に「ビスマス濃度5〜50g/L、pH0.0〜0.4の硝酸溶液にチタン製のカソードおよびビスマスアノードを挿入し、カソード電流密度0.1〜1 A/dm2で電解精製を行うこと、さらに電解精製によって得たビスマスを水素還元溶解又は真空溶解する低α線ビスマスの製造方法」を提供し、α線量が0.05cph/cm2の原料からα線量が0.01cph/cm2以下であるビスマスを得ることが可能である発明を提供している。
しかし、特許文献19および硝酸浴を用いた精製方法で得られるビスマスから発せられるα線量は0.01cph/cm2以下となっているが、電解精製に使用されるビスマス原料中から発するα線量が高い材料の場合には、電解精製後に0.01cph/cm2より高いα線量が発生されることがわかり、より高いα線量の原料を用いても簡便に低α化できるようにさらなる改良が必要であることがわかった。
また、ビスマス原料中のα線源は主にポロニウムであることがわかってきた。ポロニウムはビスマス原料に含まれる代表的な放射性元素である。α線量を低減するためには、ポロニウムの低減化が必要であり、その点については、特許文献19には記載されていない。
本願発明は、上記電解精製に使用されたビスマス原料よりもさらに高いα線量を有するビスマス原料からでも、より低いα線量のビスマスを製造する方法を提供するものである。
本願発明は、上記電解精製に使用されたビスマス原料よりもさらに高いα線量を有するビスマス原料からでも、より低いα線量のビスマスを製造する方法を提供するものである。
最近の半導体装置は、高密度化及び動作電圧やセルの容量が低下しているので、半導体チップ近傍の材料からのα線の影響により、ソフトエラーが発生する危険性が多くなってきている。特に、半導体装置に近接して使用される、はんだ材料に対する高純度化の要求が強く、またα線の少ない材料が求められている。本発明は、はんだ材料としての要求に適応できるビスマスのα線量を低減できるビスマスの製造方法を提供することを課題とする。
上記の課題を解決するために、以下の発明を提供するものである。
1)α線量が0.005cph/cm2以下であることを特徴とする低α線ビスマス。
2)Pb含有量が0.1ppm以下であることを特徴とする上記1)に記載の低α線ビスマス。
3)U、Thの含有量が、それぞれ5ppb以下であることを特徴とする上記1)又は2)に記載の低α線ビスマス。
4)α線量が0.2cph/cm2以下であるビスマスを原料とし、電気分解によりビスマス濃度を5〜50g/L、pH0.0〜0.4の硝酸ビスマス溶液を作製し、この溶液に吸着材を添加してポロニウムを吸着させ、これをろ過して吸着材とろ液に分離し、次にこのろ液を電解採取してビスマスを回収することを特徴とする低α線ビスマスの製造方法。
5)吸着材として、活性炭、ゼオライト、酸化チタン、酸化アルミニウムを使用することを特徴とする上記4)に記載の低α線ビスマスの製造方法。
1)α線量が0.005cph/cm2以下であることを特徴とする低α線ビスマス。
2)Pb含有量が0.1ppm以下であることを特徴とする上記1)に記載の低α線ビスマス。
3)U、Thの含有量が、それぞれ5ppb以下であることを特徴とする上記1)又は2)に記載の低α線ビスマス。
4)α線量が0.2cph/cm2以下であるビスマスを原料とし、電気分解によりビスマス濃度を5〜50g/L、pH0.0〜0.4の硝酸ビスマス溶液を作製し、この溶液に吸着材を添加してポロニウムを吸着させ、これをろ過して吸着材とろ液に分離し、次にこのろ液を電解採取してビスマスを回収することを特徴とする低α線ビスマスの製造方法。
5)吸着材として、活性炭、ゼオライト、酸化チタン、酸化アルミニウムを使用することを特徴とする上記4)に記載の低α線ビスマスの製造方法。
本発明は、最近の半導体装置は、高密度化及び動作電圧やセルの容量が低下しており、半導体チップ近傍の材料からのα線の影響により、ソフトエラーが発生する危険性が多くなってきているが、従来技術に比べてα線の少ない材料に適応できるビスマス及びビスマス合金を提供できるという優れた効果を有する。これにより、半導体装置のα線の影響によるソフトエラーの発生を著しく減少できる。
α線を発生する放射性元素は数多く存在するが、多くは半減期が非常に長いか非常に短いために実際には問題にならず、実際に問題になるのはU崩壊チェーン(図1参照)における、ポロニウムの同位体210Poから鉛の同位体206Pbに壊変する時に発生するα線である。
ビスマスは全て放射性同位体であり、α線放射に関与する核種は複数存在する。これらの放射性同位体のためにα線量が高いと考えられており、低α化のためにはこれらα線放射に関与する同位体を分離・除去しなければならず、工業的にα線量の低いビスマスを製造することは無理だと考えられていた。
α線放射に関与する同位体で半減期が長い同位体は209Biのみで、半減期は1.9×1019年と非常に長いので、実用上無害である。
α線放射に関与する同位体で半減期が長い同位体は209Biのみで、半減期は1.9×1019年と非常に長いので、実用上無害である。
209Bi以外でα線放射に関与する同位体の中で最も半減期が長いのは、210Biで半減期は5日である(図1参照)。他のα線放射に関与する同位体211Bi、212Bi、214Biは半減期がそれぞれ2分、61分、20分と非常に短く、これらの娘核種、孫核種も同様に半減期が非常に短いので、実用上無害である。
図1に示すように、210Biは、210Bi→210Po→210Pbと壊変し、210Poが206Pbに壊変する時にα線が放射される。206Pb は安定同位体である。
しかし、ビスマスから放射されるα線量を調査した結果、他の金属では見られないビスマス特有のα線量変化をすることが分かった(図2参照)。
しかし、ビスマスから放射されるα線量を調査した結果、他の金属では見られないビスマス特有のα線量変化をすることが分かった(図2参照)。
通常、例えば錫の場合は溶解・鋳造直後はα線量が低く、時間の経過と共にα線量が増加する。しかし、ビスマスの場合は溶解・鋳造直後にα線量が高く、時間が経過するとα線量が低くなる。検討した結果、α線放射に関与するビスマス中の放射性元素の大部分はポロニウムであることが分かった。
ビスマスから発せられるα線の大部分はポロニウムであることがわかったが、210Poの半減期よりも充分に長い時間、すなわち210Poがほとんど崩壊してなくなるほどの長時間かけてもビスマスのα線量はある一定以下には下がってこない。これはビスマス中に210Pbが存在し、210Pb→210Bi→210Po→206Pbの崩壊が起こることによるものと考えられる。
すなわち、材料中に鉛の同位体210Pb(半減期22.3年)が含有されていると、時間の経過とともに210Pb→210Bi(半減期5日)→210Po(半減期138日)の壊変(図1)が進み、崩壊チェーンが再構築されて210Poが生じるために、ポロニウムの同位体210Poから鉛の同位体206Pbへの壊変によるα線が発生するのである。
以上から、ポロニウムだけでなく、このビスマス中の鉛の同位体210Pbの割合を低減することも重要であり、Pbを0.1ppm以下にまで低減することにより、結果として、鉛の同位体210Pbも低減できるため、ビスマスのα線量をより一層低減することができる。
。低α線ビスマスの製造に際しては、α線量が0.2cph/cm2以下であるビスマスを原料とする。原料自体のα線量が高い場合には、Poの分離が難しくなるので、ある程度α線量が低い、すなわち0.2cph/cm2以下の原料を用いることが必要である。
電気分解により、ビスマス濃度が5〜50g/L、pH0.0〜0.4の硝酸ビスマス溶液を作製する。ビスマス濃度を5〜50g/Lとする理由は、ビスマス濃度が5g/Lよりも低いと生産効率が悪く、50g/Lよりも多くするとビスマス化合物の沈澱が生じ、歩留りが悪くなるからであり、またpHを0.0〜0.4とする理由はpHが0.0よりも低いと多くの薬品量が必要となり、0.4よりも高いとビスマスの溶解度が下がり、充分なビスマス濃度を得ることが難しくなるからである。
次に、この硝酸溶液に吸着材を添加してポロニウムを吸着させ、これをろ過して吸着材とろ液に分離する。そして、このろ液を電解採取してビスマスを回収する。これにより、Poを効果的に除去することができ、α線量の低いビスマスを製造することができる。
好適な吸着材としては、活性炭、ゼオライト、酸化チタン、酸化アルミニウム等あるが、Poを吸着できるものであれば、他の吸着材を使用することもできる。
好適な吸着材としては、活性炭、ゼオライト、酸化チタン、酸化アルミニウム等あるが、Poを吸着できるものであれば、他の吸着材を使用することもできる。
これにより、α線量が0.005cph/cm2以下である低α線ビスマスが得られる。このビスマスは、さらにPb含有量が0.1ppm以下、U、Thの含有量が、それぞれ5ppb以下とすることができ、本願発明は、これらを包含する。
次に、本発明の実施例及び比較例について説明する。なお、本実施例と比較例はあくまで一例であり、この例に制限されるものではない。すなわち、本発明の技術思想の範囲内で、実施例以外の態様あるいは変形を全て包含するものである。また、比較例は、本願発明の条件外であるが、本願発明の効果を容易に理解するために作成したものである。
(実施例1)
α線量が0.192cph/cm2である原料ビスマスを電気分解により硝酸溶液に溶解し、ビスマスよりも電位的に貴な元素を除去した。この硝酸ビスマス溶液は、Bi濃度39.2g/L、pH=0.3、100Lを用いた。
この硝酸ビスマス溶液に、吸着材として活性炭を2000g添加し、19h撹拌した。次に、ろ過により吸着材とろ液1に分離した。
α線量が0.192cph/cm2である原料ビスマスを電気分解により硝酸溶液に溶解し、ビスマスよりも電位的に貴な元素を除去した。この硝酸ビスマス溶液は、Bi濃度39.2g/L、pH=0.3、100Lを用いた。
この硝酸ビスマス溶液に、吸着材として活性炭を2000g添加し、19h撹拌した。次に、ろ過により吸着材とろ液1に分離した。
次に、上記ろ液1を用いて、25A、0.48A/cm2で電解採取してビスマスよりも電位的に卑な元素を除去し、金属ビスマスを得た。
そして、金属ビスマスをα線測定装置でα線量を測定した。原料ビスマスのα線量と精製して得られたビスマスのα線量を表1に示す。
表1に示すように、原料の表面α線量は0.192cph/cm2であったが、精製後は0.005cph/cm2となり、α線量の低下は顕著であった。
また、GDMS(グロー放電質量分析法)により得られたビスマスを分析したところ、Pbの含有量は0.1ppm以下であった。
そして、金属ビスマスをα線測定装置でα線量を測定した。原料ビスマスのα線量と精製して得られたビスマスのα線量を表1に示す。
表1に示すように、原料の表面α線量は0.192cph/cm2であったが、精製後は0.005cph/cm2となり、α線量の低下は顕著であった。
また、GDMS(グロー放電質量分析法)により得られたビスマスを分析したところ、Pbの含有量は0.1ppm以下であった。
(実施例2)
α線量が0.091cph/cm2である原料ビスマスを電気分解により硝酸溶液に溶解し、ビスマスよりも電位的に貴な元素を除去した。この硝酸ビスマス溶液は、Bi濃度42.5g/L、pH=0.3、100Lを用いた。
この硝酸ビスマス溶液に、吸着材として活性炭を500g添加し、19h撹拌した。次に、ろ過により、吸着材とろ液2に分離した。
α線量が0.091cph/cm2である原料ビスマスを電気分解により硝酸溶液に溶解し、ビスマスよりも電位的に貴な元素を除去した。この硝酸ビスマス溶液は、Bi濃度42.5g/L、pH=0.3、100Lを用いた。
この硝酸ビスマス溶液に、吸着材として活性炭を500g添加し、19h撹拌した。次に、ろ過により、吸着材とろ液2に分離した。
次に、上記ろ液2を用いて、50A、0.97A/cm2で電解採取してビスマスよりも電位的に卑な元素を除去し、金属ビスマスを得た。
そして、金属ビスマスをα線測定装置でα線量を測定した。原料ビスマスのα線量と精製して得られたビスマスのα線量を表2に示す。表2に示すように、原料の表面α線量は0.091cph/cm2であったが、精製後は0.004cph/cm2となり、α線量の低下は顕著であった。
また、GDMS(グロー放電質量分析法)により得られたビスマスを分析したところ、Pbの含有量は0.1ppm以下であった。
そして、金属ビスマスをα線測定装置でα線量を測定した。原料ビスマスのα線量と精製して得られたビスマスのα線量を表2に示す。表2に示すように、原料の表面α線量は0.091cph/cm2であったが、精製後は0.004cph/cm2となり、α線量の低下は顕著であった。
また、GDMS(グロー放電質量分析法)により得られたビスマスを分析したところ、Pbの含有量は0.1ppm以下であった。
(比較例1)
α線量が0.781cph/cm2である原料ビスマスを電気分解により硝酸溶液に溶解し、ビスマスよりも電位的に貴な元素を除去した。この硝酸ビスマス溶液は、Bi濃度41.3g/L、pH=0.3、100Lを用いた。
この硝酸ビスマス溶液に、吸着材として活性炭を2000g添加し、19h撹拌した。次に、ろ過により吸着材とろ液3に分離した。
α線量が0.781cph/cm2である原料ビスマスを電気分解により硝酸溶液に溶解し、ビスマスよりも電位的に貴な元素を除去した。この硝酸ビスマス溶液は、Bi濃度41.3g/L、pH=0.3、100Lを用いた。
この硝酸ビスマス溶液に、吸着材として活性炭を2000g添加し、19h撹拌した。次に、ろ過により吸着材とろ液3に分離した。
次に、上記ろ液3を用いて、50A、0.97A/cm2で電解採取してビスマスよりも電位的に卑な元素を除去し、金属ビスマスを得た。
そして、金属ビスマスをα線測定装置でα線量を測定した。原料ビスマスのα線量と精製して得られたビスマスのα線量を表3に示す。
表3に示すように、原料の表面α線量は0.781cph/cm2であったが、精製後は0.014cph/cm2となり、α線量は低下したが、充分ではなかった。この場合、原料ビスマスのα線量が多すぎたために、十分な精製効果が得られなかったと考えられる。
そして、金属ビスマスをα線測定装置でα線量を測定した。原料ビスマスのα線量と精製して得られたビスマスのα線量を表3に示す。
表3に示すように、原料の表面α線量は0.781cph/cm2であったが、精製後は0.014cph/cm2となり、α線量は低下したが、充分ではなかった。この場合、原料ビスマスのα線量が多すぎたために、十分な精製効果が得られなかったと考えられる。
上記の通り、本発明はα線の少ない材料に適応できるビスマスを提供できる。最近の半導体装置は、高密度化及び動作電圧やセルの容量が低下しており、半導体チップ近傍の材料からのα線の影響により、ソフトエラーが発生する危険が多くなってきているが、α線の少ないビスマスを使用することにより、半導体装置のα線の影響によるソフトエラーの発生を減少できる効果を有する。特に、α線の少ない材料であるビスマスを、はんだ材等の錫を使用する材料として有用である。
Claims (5)
- α線量が0.005cph/cm2以下であることを特徴とする低α線ビスマス。
- Pb含有量が0.1ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の低α線ビスマス。
- U、Thの含有量が、それぞれ5ppb以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の低α線ビスマス。
- α線量が0.2cph/cm2以下であるビスマスを原料とし、電気分解によりビスマス濃度を5〜50g/L、pH0.0〜0.4の硝酸ビスマス溶液を作製し、この溶液に吸着材を添加してポロニウムを吸着させ、これをろ過して吸着材とろ液に分離し、次に、このろ液を電解採取してビスマスを回収することを特徴とする低α線ビスマスの製造方法。
- 吸着材として、活性炭、ゼオライト、酸化チタン、酸化アルミニウムを使用することを特徴とする請求項4に記載の低α線ビスマスの製造方法。
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