上記で説明した図7の形態のように、板状のセパレータ110,120の間に、シール材161a,161b,162を介して、単セル130をはじめとする部材を積層して挟み込むことでSOFCユニット100を組み上げる場合には、各部材の面内方向および厚さ方向の位置決めを、高精度に行うことが求められる。また、各部材の厚さに合わせて、シール材161a,161b,162の層を均一な厚さに形成する必要がある。そのためには、シール材ペーストを均一に塗布するともに、均一に荷重を印加して硬化させる必要がある。もし、シール材161a,161b,162の厚さに不均一性が存在すると、シールが不完全な箇所が発生し、SOFCユニット100内部でのガスの混合や、外部へのガスの漏出が起こる可能性がある。このように、板状のセパレータ110,120の間に各部材を積層して挟み込んでSOFCユニット100を組み上げる方法では、高いガスシール性を有するSOFCユニット100を得るために、高い組み上げの技術が必要となる。特に、図7のようなSOFCユニット100を多数積層してセルスタックを構成する場合には、多数のセパレータの間に形成される空間のそれぞれに、単セル130等の部材とシール材161a,161b,162を配置し、全SOFCユニット100に対して、位置決めとガスシールの確立を同時に行う必要がある。このような状況で、セルスタック全体において高いガスシール性を獲得することは、非常に難しい。
また、SOFCユニット100を多数積層して形成したセルスタックに対して性能の確認を行う場合には、積層した全SOFCユニット100を一度に起動しなければ、不良のSOFCユニット100の有無を確認することができない。また、そのようにして不良のSOFCユニット100を発見した場合でも、そのSOFCセル100のみをスタック構造から抜き取って交換するというようなことは行えない。よって、所望の特性を発揮するセルスタックを得るためには、各SOFCセル100の性能に関して、非常に高い歩留まりが要求される。
本発明が解決しようとする課題は、高いガスシール性を有する固体酸化物形燃料電池を簡便に構築することができるセパレータ、およびそのようなセパレータを備え、高いガスシール性を簡便に得ることができる固体酸化物形燃料電池を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明にかかる固体酸化物形燃料電池用セパレータは、平板形の電解質層の両面に燃料極と空気極とを有する固体酸化物形燃料電池単セルと共に用いるセパレータにおいて、気体が流通可能な第一流路が形成された第一接触面と、前記第一接触面よりも上方に、前記第一接触面の外周を囲んで形成された、前記固体酸化物形燃料電池単セルを載置可能な枠状の載置面と、前記載置面よりも上方に、前記載置面の外周を囲んで形成された枠状のフレーム面と、を一体に有することを要旨とする。
ここで、前記固体酸化物形燃料電池用セパレータは、前記第一接触面、載置面、フレーム面の裏側に設けられ、気体が流通可能な第二流路が形成された第二接触面と、前記フレーム面と前記第二接触面の間を貫通し、前記第一流路と連通して設けられたガス供給孔と、をさらに有するとよい。
この場合、前記第一流路と前記第二流路は、同じ方向に走っているとよい。
また、前記載置面と前記フレーム面の間の高さの差は、前記固体酸化物形燃料電池単セルの燃料極の厚さ以上であることが好ましい。
上記課題を解決するために、本発明にかかる固体酸化物形燃料電池は、平板形の電解質層の両面に燃料極と空気極とを有する固体酸化物形燃料電池単セルと、上記のような固体酸化物形燃料電池用セパレータとを有することを要旨とする。
ここで、前記固体酸化物形燃料電池は、上記のような固体酸化物形燃料電池用セパレータを燃料極側セパレータとして有し、さらに前記固体酸化物形燃料電池単セルの空気極の外側に配置された空気極側セパレータを有し、前記固体酸化物形燃料電池単セルは、前記燃料極側セパレータの前記載置面に、気体の流通を遮断する電気絶縁性の内部シール材を介して前記燃料極側の面で載置され、前記固体酸化物形燃料電池単セルと前記燃料極側セパレータと前記内部シール材とに囲まれて外部と区画された空間として、燃料ガスが流通される燃料ガス流通部が形成されていることが好ましい。
この場合、前記燃料極と前記燃料極側セパレータの前記第一接触面の間には、前記固体酸化物形燃料電池単セルおよび前記燃料極側セパレータよりも弾性変形しやすい導電性物質よりなる集電材が配置されているとよい。
あるいは、前記燃料極は、前記燃料極側セパレータの前記第一接触面に直接接触しているとよい。
また、前記空気極側セパレータは、前記燃料ガス流通部の外に配置された、気体の流れを遮断する電気絶縁性の外部シール材を少なくとも介して、前記燃料極側セパレータの前記フレーム面に接合されていることが好ましい。
この場合、前記空気極側セパレータは、前記外部シール材を介して直接前記燃料極側セパレータの前記フレーム面に接合されている形態とすることもできる。
また、前記燃料極側セパレータの前記フレーム面は、前記固体酸化物形燃料電池単セルの電解質層と空気極との間の境界面と高さが揃っていることが好ましい。
そして、前記燃料側セパレータは、上記のような第二接触面を有する固体酸化物形燃料電池用セパレータよりなり、複数の前記固体酸化物形燃料電池単セルが、前記固体酸化物形燃料電池用セパレータを介して積層されており、1つの固体酸化物形燃料電池単セルの前記燃料極側セパレータとして設けられた前記固体酸化物形燃料電池用セパレータは、前記第二接触面を含む部位で、該固体酸化物形燃料電池単セルに隣接する別の固体酸化物形燃料電池単セルの前記空気極側セパレータを構成するものであるとよい。
この場合に、前記固体酸化物形燃料電池単セルと前記固体酸化物形燃料電池用セパレータの積層構造には、空気供給用の外部マニホールドが設けられ、隣接する前記固体酸化物形燃料電池用セパレータの間の空隙を介して、前記外部マニホールドから前記第二流路に空気が供給されるものであるとよい。
上記発明にかかる固体酸化物形燃料電池用セパレータにおいては、第一接触面とフレーム面の間に、固体酸化物形燃料電池単セルを載置可能な載置面を有する。この載置面に、適宜シール材を介して単セルを載置すれば、単セルが載置面とフレーム面の間に嵌まり込んだ状態で位置決めされる。この状態で、単セルよりも上方に配置される他の部材を、適宜シール材を介して積層し、固体酸化物形燃料電池を組み上げれば、従来のように、単セルを嵌め込んで保持する機構を有さない板状のセパレータ2枚の間に単セルをはじめとする各部材を挟み込んで固体酸化物形燃料電池を組み上げる場合と比較して、セパレータを含む各部材の位置関係を規定した状態で組み上げを進めることができるので、各部材の面内方向および厚さ方向の位置決めと、ガスシールの形成を、高精度に、また簡便に行うことができる。また、組み上げ工程において、単セル1層ごとに試運転を行って性能を確認することで、1層ごとに性能の不良がないかを確認することができるので、各単セルが性能において高い歩留まりを有していなくても、不良品を簡便に発見し、除去等の措置を講じることができる。
ここで、固体酸化物形燃料電池用セパレータが、第一接触面、載置面、フレーム面の裏側に設けられ、気体が流通可能な第二流路が形成された第二接触面と、フレーム面と第二接触面の間を貫通し、第一流路と連通して設けられたガス供給孔と、をさらに有する場合には、セパレータの第一接触面と第二接触面を、単セルの燃料極および空気極のそれぞれにガスを供給する接触面として利用することができる。よって、単セルとセパレータを交互に積層することで、固体酸化物形燃料電池のユニットが複数積層されたセルスタックを構成することができる。この際、セパレータの第一接触面の側に載置面が設けられていることにより、単セルを載置面に載置して、フレーム面との間に嵌め込んだ状態としてから、残る各部材の積層を進めることで、多数のセパレータおよび単セルを積層する場合にも、位置決めおよびガスシールの形成を簡便かつ高確度に行うことができる。さらに、セパレータに上記のようなガス供給孔が設けられていることにより、積層した各セパレータのガス供給孔を連通させ、第二接触面との間にガスシールを設ければ、各セパレータの第一流路にガスを供給するための内部マニホールド式のガス供給路を簡便に構築することができる。
この場合、第一流路と第二流路が、同じ方向に走っていれば、セルスタックを形成した際に、並行フロー方式のセルスタックを形成することができるが、上記のようなセパレータを用いることで、2種のガスの混合を高度に防止することができるので、一般的に両ガスの混合が問題となりやすい並行フロー方式を簡便に実現することができる。
また、載置面とフレーム面の間の高さの差が、固体酸化物形燃料電池単セルの燃料極の厚さ以上である場合には、適宜シール材を介して単セルを燃料極側の面で載置面に載置した場合に、燃料極全体が載置面とフレーム面の間の領域に配置される状態を形成しやすい。このようにすることで、固体酸化物形燃料電池を組み上げる際に、燃料極に供給する燃料ガスが流れる空間を、高いガスシール性をもって外部と区画しやすい。
上記発明にかかる固体酸化物形燃料電池においては、単セルをセパレータの載置面に載置して組み上げることで、単セルの位置決めとガスシールの形成を、高確度に、また簡便に行うことができる。
ここで、固体酸化物形燃料電池が、上記のような固体酸化物形燃料電池用セパレータを燃料極側セパレータとして有し、さらに固体酸化物形燃料電池単セルの空気極の外側に配置された空気極側セパレータを有し、固体酸化物形燃料電池単セルは、燃料極側セパレータの載置面に、気体の流通を遮断する電気絶縁性の内部シール材を介して燃料極側の面で載置され、固体酸化物形燃料電池単セルと燃料極側セパレータと内部シール材とに囲まれて外部と区画された空間として、燃料ガスが流通される燃料ガス流通部が形成されている場合には、単セルが、載置面とフレーム面の間の空間に嵌め込まれて位置決めされた状態で、燃料ガス流通部が形成されているので、簡便なガスシール構造によって、燃料ガス流通部からの燃料ガスの漏出を高度に抑制することができる。さらに、このように単セルと燃料極側セパレータの間の位置決めおよびシール形成を高確度に行ったうえで、その上層に他の部材を積層して固体酸化物形燃料電池を組み上げることができるので、固体酸化物形燃料電池全体として、組み上げを簡便に行うことができ、また信頼性の高いガスシールを形成しやすい。
この場合、燃料極と燃料極側セパレータの第一接触面の間に、固体酸化物形燃料電池単セルおよび燃料極側セパレータよりも弾性変形しやすい導電性物質よりなる集電材が配置されている場合には、集電材の弾性変形を利用することで、単セルと燃料極側セパレータの寸法誤差や熱膨張の差を吸収し、燃料極側セパレータと単セルの間の位置決めおよびシール形成の精度を向上させることができる。
あるいは、燃料極が、燃料極側セパレータの第一接触面に直接接触している場合には、上記のような集電材を用いないことで、固体酸化物形燃料電池を構成する部材の点数を削減することができ、固体酸化物形燃料電池の組み上げがさらに簡素化される。
また、空気極側セパレータが、燃料ガス流通部の外に配置された、気体の流れを遮断する電気絶縁性の外部シール材を少なくとも介して、燃料極側セパレータのフレーム面に接合されている場合には、外部シール材によるシール箇所が燃料ガスに接触しないので、仮にこのシール箇所にシール不全が発生することがあったとしても、燃料ガスの漏出につながらず、固体酸化物形燃料電池外部への燃料ガスの漏出に関して、高いシール性を得ることができる。
この場合、空気極側セパレータが、外部シール材を介して直接燃料極側セパレータのフレーム面に接合されていれば、燃料極側セパレータと空気極側セパレータの間に、フレーム状の絶縁材等、シール材以外の部材が介在されないので、固体酸化物形燃料電池を構成する部材の点数を削減することができ、固体酸化物形燃料電池の組み上げをさらに簡素化して行うことができる。
また、燃料極側セパレータのフレーム面が、固体酸化物形燃料電池単セルの電解質層と空気極との間の境界面と高さが揃っている場合には、固体酸化物形燃料電池の組み上げ時に、ガスシールの形成および各部材の厚さ方向の位置決めを高精度に行いやすい。
そして、燃料側セパレータが、上記のような第二接触面を有する固体酸化物形燃料電池用セパレータよりなり、複数の固体酸化物形燃料電池単セルが、固体酸化物形燃料電池用セパレータを介して積層されており、1つの固体酸化物形燃料電池単セルの燃料極側セパレータとして設けられた該固体酸化物形燃料電池用セパレータが、第二接触面を含む部位で、該固体酸化物形燃料電池単セルに隣接する別の固体酸化物形燃料電池単セルの空気極側セパレータを構成する場合には、燃料ガスの空気との混合および外部への漏出を高度に抑制したセルスタックを、簡便に形成することができる。
この場合に、固体酸化物形燃料電池単セルと固体酸化物形燃料電池用セパレータの積層構造に、空気供給用の外部マニホールドが設けられ、隣接する固体酸化物形燃料電池用セパレータの間の空隙を介して、外部マニホールドから第二流路に空気が供給される場合には、積層した各固体酸化物形燃料電池単セルの空気極に空気を供給する供給路を、簡便な構成で構築することができる。
以下に、本発明の実施形態にかかる固体酸化物形燃料電池用セパレータおよび固体酸化物形燃料電池(SOFC)について、図面を参照しながら説明する。
[固体酸化物形燃料電池単セル]
最初に、本発明の実施形態にかかるSOFC用セパレータとともに用いられ、本発明の実施形態にかかるSOFCを構成するSOFC単セル(以下単に「単セル」と称する場合がある)30について簡単に説明する。
図2〜5中に示されるように、単セル30は、水素を含む燃料ガスと、空気(または酸素を含むガス、以下同様)の供給を受けて発電を行うSOFCの主要部材であり、固体酸化物電解質よりなる平板状の電解質層31と、電解質層31の一方面に接合された空気極32、他方面に接合された燃料極33とを有する。電解質層31および両電極32,33を構成する材料は、公知のSOFCにおいて用いられる材料から適宜選択すればよい。電解質層31の材料としては、酸素イオン導電性を示す固体酸化物電解質材料を用いればよく、安定化ジルコニア(ZrO2)やセリア(CeO2)系固溶体、それらとアルミナとの複合体などを例示することができる。空気極32の材料としては、La1−xSrxMnO3、La1−xCaxMnO3、La1−xSrxCoO3、La1−xSrxCo1−yFeyO3、Pr1−xSrxMnO3などの遷移金属ペロブスカイト型複合酸化物を例示することができる、燃料極33の材料としては、Ni、Ni合金、酸化ニッケル(NiO)、Co、Ru、Pt、Pd等の触媒と固体電解質とから形成されるサーメットを例示することができる。電解質層31と両電極32,33の間には、適宜中間層が形成されてもよい。本単セル30においては、両電極32,33が電解質層31よりも小面積で形成されており、単セル30の両面の周縁部には、全周にわたって電解質層31が露出している。
[固体酸化物形燃料電池用セパレータ]
次に、上記のような単セル30とともに用いられる、本発明の一実施形態にかかるSOFC用セパレータ1について説明する。図1に、本セパレータ1の構成を示す。
本セパレータ1は、ブロック状の金属部材に、複数の凹凸構造が一体に設けられてなっている。セパレータ1は、ステンレス鋼等、耐熱性を備えた金属材料よりなっている。
本セパレータ1の一方面には、ブロック材の厚さ方向および面方向の内側から順に、相互に平行な第一接触面23、載置面22、フレーム面21が段差状に形成されている。換言すると、ブロック材の表面がフレーム面21となっており、フレーム面21の内側に設けられた凹部の底面が第一接触面23となっている。そして、凹部の深さ方向中途部に、載置面22が形成されている。
第一接触面23においては、平坦面の上に複数の略平行な第一凸条23aが形成されている。そして、第一凸条23aの間に挟まれた平坦面が、気体が流通可能な第一流路23bとなっている。
載置面22は、第一接触面23の第一凸条23aの頂面よりも上方(厚さ方向外側)に、第一接触面23の外周を囲むようにして、開口を中心に有する枠状に形成されている。載置面22は、上記のような単セル30を載置可能な形状を有している。具体的には、図2等に示されるように、外縁22aが単セル30の電解質層31の面の外形よりもわずかに大きく、つまり単セル30およびセパレータ1を用いてSOFCを組み上げる際に許容される寸法誤差の範囲内で、載置した単セル30を位置ずれなく保持できる程度に、電解質層31の面の外形よりも大きく形成されている。そして、開口の周となる内縁22bが、燃料極33の面よりも大きく、つまり単セル30を燃料極33側の面で載置面22に載置した際に、燃料極33の面全体が開口内に配置されるように形成されている。これにより、単セル30を燃料極33側の面で載置面22に載置すると、燃料極33の外周部に露出した電解質層31が載置面22に接触し、燃料極33は載置面22に接触しない。載置面22と第一接触面23の第一凸条23aの頂面の間の高さの差d2は、後に説明するように、本セパレータ1を用いて構築されるSOFCユニットの実施形態に応じて、載置面22に載置した単セル30の燃料極33の面が第一凸条23aの頂面にちょうど接触するように、あるいは接触せず間に燃料極側集電材45を配置可能な空隙を有するように、適宜選択される。
フレーム面21は、載置面22よりも上方に、載置面22の外周を囲むようにして、開口を中心に有する枠状に形成されている。フレーム面21と載置面22の間の高さの差d1は、単セル30の具体的な寸法に応じて適宜定めればよいが、燃料極33の厚さ以上であることが好ましい。すると、シール材62を介して単セル30を燃料極33側の面で載置面22に載置した際に、燃料極33全体が、フレーム面21の下側に配置されやすくなる。さらに好ましくは、図2等に示すように、シール材を介して単セル30を燃料極33側の面で載置面22に載置した際に、電解質層31の空気極32側の面の高さを、フレーム面21と略面一に揃えられるように、フレーム面21と載置面22の間の高さの差d1を設定すればよい。
セパレータ1において、第一接触面23、載置面22、フレーム面21が設けられている面の裏側は、フレーム面21と同じ外形を有する平坦面に第二凸条11aが設けられた第二接触面11となっている。第二凸条11aの間に挟まれた平坦面が、気体が流通可能な第二流路11bとなっている。第一凸条23aと第二凸条11a、すなわち第一流路23bと第二流路11bは、同じ方向(平行)に走っていても、垂直等、他の位置関係をとっていてもよいが、図1に示した例では、同じ方向に走っている。
さらに、セパレータ1においては、フレーム面21に、裏側の第二接触面11との間に設けられた貫通孔として、燃料供給孔1aが形成されている。燃料供給孔1aは、セパレータ1を用いてセルスタックを形成した際に、各単セル30の燃料極33に供給する燃料ガスを通過させる流路となる。具体的には、燃料供給孔1aは、フレーム面21において、第一流路23bと略垂直の関係にある2つの辺に、2個1組で設けられている。燃料供給孔1aは、フレーム面21と第二接触面11の間を厚さ方向に貫通するとともに、フレーム面21上の開口の端縁から載置面22を横切って第一接触面23の第一流路23bに向かって掘り込まれた溝状の切欠き1cを有している。これにより、フレーム面21の上に、別のセパレータや絶縁フレーム等、平坦面を密着させた状態でも、燃料供給孔1a内の空間が、切欠き1cを介して第一流路23bに連通した状態に維持される。セパレータ1は、このような燃料供給孔1aをフレーム面21に有することにより、後述するように、適宜シール材を用いながらSOFC単セル30とともに複数積層した際に、内部マニホールド方式で燃料ガスを各単セル30の燃料極33に供給するとともに、外部マニホールド方式で空気を各単セルの空気極32の供給するセルスタックを簡便に構築することができる。
[固体酸化物形燃料電池]
次に、上記のようなセパレータ1と単セル30を用いて形成される本発明の3種の実施形態にかかるSOFCについて説明する。
(1)第一の実施形態
本発明の第一の実施形態にかかるSOFCを構成するSOFCユニット2Aを、図2に概略断面図として示す。図3に示すように、本SOFCユニット2Aは、複数積層したセルスタック3の状態でSOFCを構成する。セルスタック3においては、上記で説明したセパレータ1を境界として、複数のSOFCユニット2Aが直列に接続されている。図2では、図3中に破線で囲んだ部位をSOFCユニット2Aの1単位として示している。上記で説明したように、セパレータ1は全体が一体に形成された部材であるが、図2および以下の説明においては、便宜的に、セパレータ1のうち、第一接触面23および載置面22、フレーム面21が設けられている側の面を燃料極側セパレータ20とし、第二接触面11が設けられている側の部位を空気極側セパレータ10として、上下に分割して示す。あるセパレータ1が、第一接触面11が設けられた側の部位において、ある単セル30の燃料極側セパレータ20として機能するとともに、第二接触面23が設けられた側の面において、セルスタック3の積層構造中でその単セル30に隣接する別の単セル30の空気極側セパレータ10を構成することになる。
図2に示すように、本SOFCユニット2Aは、空気極側セパレータ10および燃料極側セパレータ20と、それらの間に配置された単セル30、空気極側集電材40、燃料極側集電材45、絶縁フレーム50を、構成部材として有している。そして、各部材間の所定の部位に、外部シール材61(61a〜61e)および内部シール材62を有している。
空気極側集電材40は、単セル30の空気極32と空気極側セパレータ20の第二接触面11の間に配置され、燃料極側集電材45は、単セル30の燃料極33と、燃料極側セパレータ20の第一接触面23の間に配置される。集電材40,45は、単セル30の電極32,33とセパレータ10,20の間に接触抵抗の低い良好な電気的接続を提供するとともに、セパレータ10,20に設けられたガス流路11b,23bから、各電極32,33に空気および燃料ガスを空間的均一性の高い状態で供給する役割を果たす。燃料極側集電材45は、スチールウールのような金属ウール、金属フォーム、高気孔率ポーラス金属等、導電性を有し、内部を気体が通過可能で、クッション性を有する材料、つまり厚さ方向に荷重を印加した際に燃料極側セパレータ20および単セル30よりも弾性変形しやすい材料よりなっている。一方、空気極側集電材40は、メッシュ材や金属金網のような、貫通孔を多数形成した金属箔または金属板等、実質的にクッション性を有さない材料よりなっている。空気極側集電材40および燃料極側集電材45は、それぞれ単セル30の空気極32および燃料極33と略同一の面形状を有している。
絶縁フレーム50は、雲母をはじめとする酸化物等、SOFCユニット2Aの運転温度(700〜1000℃)で変形や変質を起こさない耐熱性を有した絶縁体よりなる。絶縁フレーム50は、単セル30および集電材40,45を収容できる開口部を有し、これらの部材を開口部に収容した状態で、空気極側セパレータ10と燃料極側セパレータ20のフレーム面21の間に配置される。そして、両セパレータ10,20の間の絶縁を確保しながら、両セパレータ10,20の間隔を規定する役割を果たす。図では表示されないが、絶縁フレーム50においては、セパレータ10,20の燃料供給孔1aに対応する位置に、厚さ方向に貫通した燃料供給孔が形成されており(不図示)、SOFCユニット2Aを組み上げた際に、絶縁フレーム50の燃料供給孔が、セパレータ10,20の対応する燃料供給孔1aと直線的に連通される。
外部シール材61および内部シール材62は、SOFCユニット2Aが運転される高温(700〜1000℃)でも、気体の流通を遮断し、気密なシールを維持することができる電気絶縁性材料よりなっている。そのようなシールを形成でき、かつペースト状で塗布することができるシール材として、ガラスシールやセラミックシール等、公知のガスシール材を用いることができる。
本SOFCユニット2Aにおいては、単セル30が、燃料極33側の面において、内部シール材62を介して、燃料極側セパレータ20の載置面22に載置され、接合されている。内部シール材62は、単セル30の燃料極33側の面において、燃料極33の面方向外側に露出した電解質層31を1周して設けられている。これにより、燃料極側セパレータ20、内部シール材62、単セル30の燃料極33側の面に囲まれ、外部と区画された空間として、図2中に太線で表示した燃料ガス流通部Fが形成されており、空気極32側の空間と気密に区画されている。そして、フレーム面21と載置面22の間の高さの差d1および内部シール材62の厚さを調節することで、単セル30の電解質層31の空気極32側の面、つまり電解質層31と空気極32の間の境界面の高さを、フレーム面21の高さと略面一に揃えている。単セル30の燃料極33と燃料極側セパレータ20の第一接触面23の間には、燃料極側集電材45が配置されており、燃料極側集電材45は、両面において、それぞれ燃料極33の面と第一接触面23の第一凸条23aの頂面に接触している。
単セル30の空気極32側には、空気極側集電材40を介して、燃料極側セパレータ20が設けられている。空気極側集電材40は、両面において、それぞれ空気極32と空気極側セパレータ10の第二接触面11の第二凸条11aの頂面にそれぞれ接触している。
さらに、燃料極側セパレータ20のフレーム面21と空気極側セパレータ10の第二接触面11の間に、単セル30の空気極32および空気極側集電材40が設けられた領域を開口部に収容して、絶縁フレーム50が配置されている。絶縁フレーム50と各セパレータ10,20の間には、外部シール材61が配置されている。
具体的には、外部シール材61(61a〜61e)は、図3(a),(b)に示す各領域に設けられる。つまり、燃料極側セパレータ20においては、図3(a)に示すように、フレーム面21の燃料供給孔1aが設けられていない対向する2辺に沿って、外部シール材61aが配置される。さらに、フレーム面21上の燃料供給孔1aの略U字形の外周に沿って、外部シール材61bが設けられる。加えて、フレーム面21と高さの揃った単セル30の電解質層31の表面において、燃料供給孔1aに面する部位に外部シール材61cが設けられる。フレーム面21上の外部シール材61bと電解質層31上の外部シール材61cは、相互に連続して、燃料供給孔1aの開口部の外周を1周取り囲んだ状態となっている。一方、空気極側セパレータ10においては、図3(b)に示すように、第二接触面11において、燃料供給孔1aが設けられていない対向する2辺に沿った部位に外部シール材61dが配置されるとともに、燃料供給孔1aの外周を1周取り囲んで、外部シール材61eが配置される。
以上のように各部材が積層され、接合されていることで、上記のように、燃料極側セパレータ20の載置面22および第一接触面23、内部シール材62、単セル30の燃料極33側の面に囲まれた空間として、図2中に太線で表示した燃料ガス流通部Fが形成される。一方、空気極側セパレータ10、外部シール材61、絶縁フレーム50、燃料極側セパレータ20のフレーム面21および載置面22、内部シール材62、単セル30の空気極32側の面に囲まれた空間として、空気流通部Aが形成される。そして、燃料ガス流通部Fと空気流通部Aとが、内部シール材62によって、相互に気密に隔離され、SOFCユニット2A内部での燃料ガスと空気の混合(内部漏れ)が抑制される。また、外部シール材61によって、SOFCユニット2Aの内外の空間が気密に区画され、SOFCユニット2A内のガスが外部に漏出すること(外部漏れ)が抑制される。
外部シール材61を上記の各位置に配置することで、セルスタック3において、各単セル30の燃料ガス流通部Fに燃料ガスを供給する燃料供給路と空気流通部Aに空気を供給する空気供給路を、他方の供給路および外部と分離して、各ガスの供給に用いることができる。つまり、各セパレータ10,20に設けられた燃料供給孔1aが、絶縁フレーム50に設けられた燃料供給孔(不図示)と直線的に連通されて、内部マニホールド方式の燃料供給路が形成される。この燃料供給路は、外部シール材61b,61c,61eによって、外部および空気供給路に対して、ガスの混合がない状態で分離される。一方、セルスタック3において、セパレータ10,20の外側に、空気供給用の外部マニホールド(不図示)を設けることで、各セパレータ10,20の外部シール材61a,61dが設けられていない辺に沿った空隙を通って第二流路11b内に空気を流通させることができる。これにより、外部マニホールド方式によって空気を供給することができる。
このようにSOFCユニット2A、およびそれを複数積層したセルスタック3を組み上げて、燃料供給孔1aによって構築された内部マニホールド式の燃料供給路に燃料ガスを流通させるとともに、外部マニホールドから空気を供給することで、燃料極側セパレータ20の第一流路23bから燃料ガス流通部Fに燃料ガスが供給され、空気極側セパレータ10の第二流路11bから空気流通部Aに空気が供給される。この状態のSOFCユニット2Aを、例えば700〜1000℃の運転温度に置くことで、単セル30において発電を行うことができる。
上記のような構成を有するSOFCユニット2Aを組み上げる手順としては、例えば、第一段階において、燃料極側集電材45を、燃料極側セパレータ20の第一接触面23と載置面22の間の段差に嵌め込むようにして、第一接触面23に載置する。この際、燃料極側集電材45の厚さとして、第一接触面23の第一凸条23aの頂面と載置面22の間の高さの差d2よりも大きい厚さを選択しておくことが好ましい。そして、単セル30において、燃料極33側の面に露出した電解質層31の外周を1周するように内部シール材62となるシール材ペーストを塗布しておいたうえで、その単セル30を、載置面22とフレーム面21の間の段差に嵌め込むようにして、燃料極33側の面を下にして載置面22に載置する。そして、燃料極側集電材45のクッション性を利用して、単セル30の電解質層31の空気極32側の面の高さが燃料極側セパレータ20のフレーム面21の高さと揃うように、単セル30の上方から荷重を印加して、燃料極側集電材45とシール材を押し潰す。この段階で、必要に応じて内部シール材62の層となるシール材ペーストを硬化させておく。後述するように、この段階で、発電試験を行い、単セル30の性能や割れの有無を確認しておいてもよい。
次に、第二段階において、燃料極側セパレータ20の載置面22に、外部シール材61となるシール材ペーストを両面の所定箇所に塗布した絶縁フレーム50を載置するとともに、絶縁フレーム50の開口部内において、単セル30の空気極32の上に空気極側集電材40を積層する。さらに、絶縁フレーム50および空気極側集電材40の上にかぶせるようにして、空気極側セパレータ10を配置する。なお、外部シール材61となるシール材ペーストは、絶縁フレーム50ではなく、燃料極側セパレータ20および空気極側セパレータ10の所定部位に塗布しておいてもよい。そして、シール材ペーストを押し潰して両側の部材に密着させるようにしながら、空気極側セパレータ10の上方から荷重を印加する。この状態で、シール材ペーストを硬化させる。
本実施形態にかかるSOFCユニット2Aにおいては、以上のような構成を有することにより、図7に示したような従来一般のSOFCユニット100に比べて、簡便に、高いガスシール性を獲得することができる。上記で説明したように、本SOFCユニット2Aにおいては、内部シール材62によって、燃料ガス流通部Fを流れる燃料ガスと空気流通部Aを流れる空気が混合される内部漏れが抑制され、外部シール材61によってそれらのガスがSOFCユニット2Aの外部に漏出する外部漏れが抑制される。内部漏れや外部漏れが起こると、SOFCユニットにおける発電効率が低下されてしまう。
本SOFCユニット2Aにおいては、燃料極側セパレータ20に、単セル30を載置する載置面22が設けられていることで、燃料極側セパレータ20に対して、単セル30を面内方向および厚さ方向に高精度に位置決めすることができる。このように位置決めされた単セル30と燃料極側セパレータ20の載置面22の間に内部シール材62を配置するので、内部シール材62の形成に関しても、高い位置精度を得ることができる。その結果、内部シール材62において、厚さの不均一性や面内での位置ずれ等に起因するシール不全が生じにくく、高度に内部漏れの発生を抑制することができる。
また、燃料極側セパレータ20に単セル30を嵌め込むようにして位置決めした状態で、上層に絶縁フレーム50や空気極側集電材40、空気極側セパレータ10を積層するので、波及的に、これらの部材の配置においても位置決めが行いやすくなる。外部シール材61の形成においても、均一な厚さを有する信頼性の高いシール層を得やすくなる。特に、上記のように、第一段階で、燃料極側集電材45とシール材を所定の部位に塗布した単セル30とを燃料極側セパレータ20の凹部内に嵌め込んで、一旦シール材を硬化させて内部シール材62の形成を完了してから、第二段階で上層の各部材を配置するとともに外部シール材61を形成するという2段階でSOFCユニット2Aを組み上げるようにすれば、組み上げ作業の簡便性が向上するとともに、内部シール材62および外部シール材61において、位置ずれ等の影響を低減して、信頼度の高いガスシールを達成しやすくなる。さらに、上記のように、単セル30の電解質層31の空気極32側の面の高さを、燃料極側セパレータ20のフレーム面21の高さと揃えておけば、上層に積層する各部材の位置決めが一層行いやすくなる。多数のSOFCユニット2Aを積層してセルスタック3を構成する場合にも、1層ずつのSOFCユニット2Aに対して、上記の手順で位置決めとシール形成を行うことを繰り返せば、SOFCユニット2Aの数が多くなっても、位置決めおよびガスシールの精度を、各層のSOFCユニット2Aにおいて確保することができる。
図7に示した従来一般のSOFCユニット100においては、両セパレータ110,120がともに板状の部材よりなり、載置面22のように、単セル130を嵌め込む等して位置決めできる構造を有していない。よって、内部シール材162および外部シール材161a,161bを形成するに当たり、所定の箇所にシール材ペーストを塗布したうえで全部材を積層し、面内方向の位置ずれや厚さ方向の浮き上がり等が起こらないように、各部材を拘束した状態で、シール材を硬化させて、各部材を接合するとともに、内部シール材162および外部シール材161a,161bによるガスシールを確立する必要がある。このように、位置決めを可能な構造が存在しない状態で、各部のガスシールの形成を一度に行う場合には、シールが不完全な場所が生じ、内部漏れや外部漏れを引き起こす可能性が高くなる。特に、多数のSOFCユニット100を積層してセルスタックを構成する場合には、全SOFCユニット100の構成部材の位置決めとシール形成を同時に行う必要があり、精度の高い位置決めとガスシールの形成を達成することが非常に困難である。セルスタックにおいて、1か所でもシール不全によるガス漏れが生じると、セルスタック全体としての発電効率が低下することになる。
また、ガラスシール等のシール材を用いてセルスタックを作製する際に、シール材を硬化させるまでは、発電性能の確認を行うことができない。ガラスシールの場合は、高温で硬化させる必要がある。また、シール材が硬化する際に、熱応力によって単セルが割れてしまう場合がある。しかし、シール材を用いてセルスタックを構成すると、基本的には、スタック構造を解消して元の状態に戻すことはできない。従来一般のSOFCユニット100を用いてセルスタックを構成する場合には、全SOFCユニット100をシール材161,162とともに積層し、硬化させてからでないと、セルスタックの発電試験を行うことができない。また、その発電試験で、スタック構造を形成する一部のSOFCユニット100に不良があることが発見されたとしても、そのSOFCユニット100のみを交換することはできない。よって、スタック構造の中で、1枚でも不良の単セル130が混入してはならず、また単セル130が1枚でもシール材161,162の硬化時に割れてはならないという要件を満たす必要があり、歩留まりの観点から、単セル130の製造やスタック構造への組み上げおよびシール形成において、非常に厳しい条件が要求される。
これに対し、上記実施形態にかかるSOFCユニット2Aを用いてセルスタック3を作製する場合には、単セル30およびセパレータ10,20の積層、およびシール材61,62の硬化を、SOFCユニット2Aを1層形成するごとに完了することができ、発電性能試験を1層ごとに行うことができる。特に、上記した製造方法の第一段階において、燃料極側セパレータ20に単セル30を内部シール材62を介して嵌めこみ、内部シール材62を硬化させた段階でも、電解質層31に参照電極を取り付けるなどすれば、発電試験を行うことができる。よって、単セル30自体の不良や、シール材62硬化時の単セル30の割れがあれば、さらに上層のSOFCユニット2Aを積層する前に、発見し、除去等の措置を取ることができる。よって、単セル30自体や、シール形成の歩留まりがそれほど高くなくても、高い発電性能を有するセルスタック3を得ることができる。
従来一般のSOFC100と本実施形態にかかるSOFCユニット2Aには、さらに別の構成上の違いが存在する。つまり、従来一般のSOFC100においては、内部シール材162が単セル130の空気極132側の面に設けられており、燃料ガス流通部F’がSOFCユニット100の厚さ方向に広い領域を占めているのに対し、本実施形態にかかるSOFCユニット2Aにおいては、内部シール材62が単セル30の燃料極33側の面に設けられており、燃料ガス流通部FがSOFCユニット2Aの厚さ方向の狭い領域に限定されている。特に電解質層31の空気極32側の面の高さが燃料極側セパレータ20のフレーム面21の高さと揃っており、燃料極33全体が燃料極側セパレータ20のフレーム面21より下側に位置しているので、燃料ガス流通部F全体が燃料極側セパレータ20の内側に形成された状態となり、内部シール材62によるガスシール性さえ確保すれば、燃料ガス流通部Fからの燃料ガスの漏出を高度に防止することができる。また、素材の性質上、絶縁フレーム50で高い平面度を得ることが難しいこと等に起因して、外部シール材61を介した絶縁フレーム50と両セパレータ10,20の間の接合部においては、他の箇所よりもガスの漏れが発生する可能性が高いが、この接合部が、従来一般のSOFC100では燃料ガス流通部F’内に露出されており、燃料ガスが漏出する可能性が排除できないのに対し、本実施形態にかかるSOFCユニット2Aでは、空気流通部A内、つまり燃料ガス流通部Fの外に配置されているので、この接合部から燃料ガスが漏出する可能性が実質的に排除されている。外部漏れが万一起こった際の影響は、空気の場合よりも燃料ガスの場合で顕著である。
従来一般のSOFC100とのさらに別の違いとして、本実施形態にかかるSOFCユニット2Aにおいては、従来用いられているような薄膜セパレータ112が、燃料極33側にも空気極32側にも用いられていない点を挙げることができる。従来一般のSOFCユニット100には、厚いブロック状の金属材料よりなるセパレータ110(または120)と固体酸化物を主としてなる単セル130との間の熱膨張の差を吸収させ、熱膨張の影響によるシール不全の発生を防止する一種のガスケットとして、薄膜セパレータ112が配置されていた。しかし、本実施形態にかかるSOFCユニット2Aにおいては、載置面22を有する燃料極側セパレータ20の構造により、単セル30を燃料極側セパレータ20に対して高精度に位置決めすることができるので、燃料極側セパレータ20の各部の寸法を単セル30に合わせて設計しておけば、熱膨張の影響がシール不全につながりにくいので、特に薄膜セパレータを設ける必要がない。さらに、単セル30と燃料極側セパレータ20の第一接触面23の間にクッション性を有する燃料極側集電材45を配置していることで、燃料極側集電材45によって、寸法の誤差および熱膨張の差の影響を効果的に吸収することが可能となっている。このように、薄膜セパレータを使用しなくてよいことにより、従来よりも部品点数を削減することが可能となっている。
上記のように、本実施形態にかかるSOFCユニット2Aにおいては、燃料極側セパレータ20に段差構造を設けることで、単セル30と燃料極側セパレータ20の間の位置決め精度とガスシール性の向上が達成されているが、このような段差構造は、燃料ガス流通部Fへの選択的な燃料ガスの供給にも寄与している。つまり、燃料極側セパレータ20のフレーム面21に貫通孔として設けられた燃料供給孔1aが、切欠き1cによって第一接触面23に設けられた第一流路23bと連通しているため、燃料供給孔1aに流通された燃料ガスは、切欠き1cを介して燃料ガス流通部Fに供給される。一方、空気は、隣接する燃料極側セパレータ20と空気極側セパレータ10の間に生じた空隙を通って、外部マニホールドから供給されるので、燃料供給孔1aの開口の外周を外部シール材61b,61c,61eで囲んで隔離しておくことで、外部マニホールドから供給される空気が第一流路23bに侵入するのが防止される。このように、単セル30を位置決めするために燃料極側セパレータ20に設けられた段差構造を利用することで、第一流路23bに選択的に燃料ガスを供給するガス供給路を構築することができる。一般に、セパレータ上で燃料ガスと空気の流路が同じ方向に走る並行フロー方式を採用すると、交差フロー方式などと比べて、ガスの混合が起こる可能性が高くなるが、本実施形態にかかるSOFCユニット2Aにおいては、第一接触面23の第一流路23bに対する燃料ガスの選択的供給を高確度に行えるようにしていることで、並行フロー方式を採用しても、ガスの混合が起こりにくくなっている。並行フロー方式を採用できれば、セルスタック3における配管の構築などに際し、自由度が高まる。
加えて、段差構造を利用することで、上記のように、燃料ガスの供給には内部マニホールド方式(クローズ方式)を用いながら、空気の供給には内部マニホールド方式よりも設備を簡素化できる外部マニホールド方式(オープンフロー方式)を用いることが可能となっている。なお、空気も内部マニホールド方式で供給するようにすることも可能であり、その場合には、フレーム面21に空気供給用の貫通孔を別途設け、燃料供給路1aとの間に適宜シール材を配置すればよい。
(2)第二の実施形態
次に、上記第一の実施形態にかかるSOFCユニット2Aを応用し、さらに部品点数を削減した構成として、本発明の第二の実施形態にかかるSOFCについて説明する。ここでは、上記第一の実施形態にかかるSOFCユニット2Aと異なる構成についてのみ説明し、特に記載しない点については、第一の実施形態にかかるSOFCユニットと同様の構成を有するものとする。
図5に、第二の実施形態にかかるSOFCを構成するSOFCユニット2Bを示す。本実施形態にかかるSOFCユニット2Bにおいては、上記第一の実施形態にかかるSOFCユニット2Aとは異なり、空気極側セパレータ10と燃料極側セパレータ20の間に、剛体よりなる絶縁フレームが設けられていない。かわりに、空気極側セパレータ10が、シール材ペーストを硬化して形成される外部シール材61のみを介して、燃料極側セパレータ20のフレーム面21に直接接合されている。
上記第一の実施形態にかかるSOFCユニット2Aに用いられたようなガス供給用の貫通孔を複数設けた絶縁フレーム50は、従来よりSOFCにおいて用いられてきたものであり、セパレータ間の絶縁および間隔の規定のみならず、2種のガスの供給路を分離する役割も担ってきた。しかし、上記のように、セパレータ1の段差構造を利用することで、燃料ガス供給路と空気供給路を分離することができるので、本実施形態にかかるSOFCユニット2Bのように、絶縁フレームを使用しなくても、ペースト状で塗布されるシール材のみを用いて、内部マニホールド方式の燃料ガスの供給路と、外部マニホールド方式の空気の供給路の間で、分離を達成することができる。また、空気極側セパレータ10と燃料極側セパレータ20が、外部シール材61のみを介して直接隣接することで、第一の実施形態にかかるSOFCユニット2Aのように、間に絶縁フレームを介する場合に比べて、外部シール材61となるシール材ペーストを塗布する総面積を小さくすることができる。
このように、本第二の実施形態にかかるSOFCユニット2Bにおいては、絶縁フレームを排することで、第一の実施形態にかかるSOFCユニット2Aと比較して、用いる部材の点数およびシール材の塗布部位を削減しながら、外部マニホールド方式の採用を可能にするものであり、SOFCセルスタックの構成を大幅に簡素化できる可能性を有している。
(3)第三の実施形態
最後に、上記第二の実施形態にかかるSOFCユニット2Bを応用し、さらに部品点数を削減した構成として、本発明の第三の実施形態にかかるSOFCについて説明する。ここでは、上記第一、第二の実施形態にかかるSOFCユニット2A,2Bと異なる構成についてのみ説明し、特に記載しない点については、それらのSOFCユニット2A,2Bと同様の構成を有するものとする。
図6に、第三の実施形態にかかるSOFCを構成するSOFCユニット2Cを示す。本実施形態にかかるSOFCユニット2Cにおいては、上記第一および第二の実施形態にかかるSOFCユニット2A,2Bで用いられていたような燃料極側集電材45が設けられていない。かわりに、単セル30の燃料極33の表面が、燃料極側セパレータ20の第一接触面23を構成する第一凸条23aの頂面に直接接触している。
本SOFCユニット2Cで用いている燃料極側セパレータ20は、単セル30を載置できる載置面22を有しており、内部シール材62の厚みさえ精度よく制御することができれば、単セル30と燃料極側セパレータ20の間の高さ方向の位置関係は、高さの差d1,d2のみによって定まる。そこで、載置面22と第一凸条23aの頂面の間の高さの差d2を、燃料極33の厚さと等しくなるようにしておけば、クッション性を有する燃料極側集電材を介在させなくても、燃料極33の面を第一凸条23aの頂面に浮き上がりなく密着させることができる。なお、内部シール材62は、ペーストの状態にある間に荷重を印加すれば、ある程度厚さを調節可能であり、シール材ペーストを厚めに塗布して単セル30を載置したうえで、上方から荷重を印加すれば、燃料極33と第一凸条23aの間に高い密着性を得ることができる。
なお、燃料極側セパレータ20の形状の適切な設計により、燃料極側集電材を省略しても第一凸条23aの頂部と燃料極33の間に高い密着性を得られるとはいえ、燃料極側集電材を用いる場合と比較すれば、密着性の向上や、熱膨張による密着性低下の防止において、限界がある。そこで、燃料極側セパレータ20を構成する材料として、なるべく単セル30の支持体を構成する材料(例えば支持体が電解質層31である場合にはジルコニア等、支持体が燃料極33である場合にはニッケル等)に近い熱膨張率を有する材料を用いて、密着性の向上および昇温時の密着性の維持を図ることが好ましい。好ましくは、起動停止操作を含むSOFCユニット2Cの作動温度域(室温〜1000℃)での単セル30の支持体と燃料極側セパレータ20の熱膨張率の差が、10倍未満(同オーダー)であるとよい。燃料極側セパレータ20を構成する具体的な金属材料としては、ジルコニアに近い熱膨張率となるように組成を調整したクロム基合金等を挙げることができる。また、燃料極側集電材は、燃料極33と第一接触面23の間の密着性を高めるだけでなく、第一流路23bを流れる燃料ガスに圧損を与えて、燃料極33に供給される燃料ガスの空間的均一性を高める機能も果たすものであるが、本実施形態においては、燃料極側集電材のこのような機能を利用することができないので、燃料極33に供給される燃料ガスの空間的均一性を高める観点から、第一流路23bの幅を狭くし、第一流路23bの配置の密度を高めることが望ましい。
本第三の実施形態にかかるSOFCユニット2Cにおいては、図2等に示した第一の実施形態にかかるSOFCユニットと比較して、燃料極側集電材と絶縁フレームが省略されたものとなっている。さらに、空気極側集電材40も省略することが可能であり、その場合には、両面がそれぞれ空気極側セパレータ10よび燃料極側セパレータ20として機能する単一のセパレータ1と、単セル30と、シール材61,62の3種の部材のみで、SOFCユニットを形成することができる。上記で説明したとおり、第一の実施形態にかかるSOFCユニット2Aにおいても、外部マニホールド方式を簡便に構築できること等により、従来一般のSOFCユニット100よりもセルスタック3を簡便な構成で構築することができるが、本第三の実施形態にかかるSOFCユニット2Cを用いれば、セルスタック全体の構成を、さらに大幅に簡略化することができる。
本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。なお、上記では、セパレータの載置面に、単セルを燃料極側の面で載置し、第一接触面が設けられている側の部位を燃料極側セパレータ、第二接触面が設けられている側の部位を空気極側セパレータとして用いたが、載置面に単セルを空気極側の面で配置し、第一接触面が設けられている側の部位を空気極側セパレータ、第二接触面が設けられている側の部位を燃料極側セパレータとして用いることも考えられる。また、第二接触面は必ずしも設けられなくてもよく、燃料極側セパレータおよび空気極側セパレータのいずれか一方のみとして用いるようにしてもよい。