JP2016186663A - 液晶装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】所定のスイッチング角と応答速度で動作する強誘電性液晶パネル10と、温度を測定するセンサ60と、強誘電性液晶パネル10に駆動電圧VDを供給する駆動回路20と、該駆動回路20に波形信号P5を供給する波形生成回路30と、該波形生成回路30を制御する制御回路40と、を有し、駆動回路20は、駆動電圧の第1フレームでは、第1期間に正の第1電圧を出力し、第2期間に第1期間より長い期間、正の第2電圧を出力し、第2フレームでは、第1期間に負の第1電圧を出力し、第2期間に第1期間より長い期間、負の第2電圧を出力し、制御回路40は、センサ60の測定温度に応じて第1電圧と第2電圧とを可変する構成とした。
【選択図】図1
Description
[強誘電性液晶表示パネルの説明:図10]
ここで、公知ではあるが本発明を理解する助けとなるので、高速応答が可能な強誘電性液晶パネルの構成と強誘電性液晶の動作の概要について以下説明する。なお、強誘電性液晶には、メモリ特性を有する材料と有しない材料があるが、ここで説明する液晶装置の液晶パネルは、メモリ特性を有しない強誘電性液晶の材料を用いて構成されることを例とする。
ここで、図10(a)においては、偏光板101aの偏光軸Cと第1の状態(矢印E)のときの分子長軸方向が、ほぼ平行になるように配置されている。なお、強誘電性液晶の分子長軸方向の第1の状態と第2の状態は、強誘電性液晶に所定の電圧が印加されることで状態が転移するが、第1の状態と第2の状態のそれぞれの分子長軸方向の角度差(すなわち、矢印EとFの角度)をスイッチング角θと定義する。このスイッチング角θは、45度のときが透過と非透過のコントラスト比が最も大きくなるので、45度のスイッチング角θを有することが強誘電性液晶パネルとして理想である。
次に、強誘電性液晶を用いた液晶パネル100の動作について説明する。液晶パネル100に印加する駆動電圧VDを変化させると、液晶パネル100を透過する光Lt(図10(b)参照)の光透過率Lが変化する。ここで、強誘電性液晶のスイッチング、つまり一方の状態から他方の状態への転移は、駆動電圧VDのパルス幅値とパルス高値との積の値が閾値以上の値となる駆動電圧を強誘電性液晶に印加した場合にのみ起こる。液晶パネル100は駆動電圧VDの極性の違いによって、第1の状態(非透過:黒表示)か、第2の状態(透過:白表示)かのいずれかが選択される。
しかし、たとえば低温で45度のスイッチング角θを得るために駆動電圧を選択すると、高温でのスイッチング角θが小さくなり過ぎて問題が生じる(図4A(b−1)または図4B(b−2)参照)。すなわち、高温でのコントラスト比が低下するので液晶パネルとしての性能が低下することになる。また、スイッチング角θだけを考慮して駆動電圧を選択すると、低温での応答速度が遅くなる(図4A(a−1)または図4B(a−2)参照)。また逆に、低温での応答速度を速くするために高い駆動電圧を選択すると、低温でのスイッチング角が大きくなり過ぎて問題となる。
このように、強誘電性液晶パネルは温度依存性を有するので、広い使用温度範囲においては、要求される応答速度とスイッチング角が両立しないために、要求性能を満たす応答速度とスイッチング角を有する液晶装置を実現することは困難である。また、強誘電性液晶は配向安定性にも温度依存性があり、特に高い駆動電圧を印加した場合、高温状態で配向変形が発生しやすくなる問題も有している。
この場合、制御回路は、液晶パネルの応答速度が所定の値で安定するように測定温度に応じて第1電圧を可変することが好ましい。
また、制御回路は、液晶パネル強誘電性液晶のスイッチング角が所定の値で安定するように測定温度に応じて第2電圧を可変することが好ましい。
また、テーブルは、所定の温度ステップで第1電圧と第2電圧の値を有する構成であり、このテーブルによって決定される第1電圧と第2電圧が等しくなる温度より高い温度領域では、第2電圧は測定温度に対応した電圧を採用し、第1電圧は第2電圧に等しい電圧値とするのが好ましい。
さらに、テーブルは、所定の温度ステップで第1電圧と第2電圧の値を有する構成であり、テーブルによって決定される第1電圧と第2電圧が等しくなる温度より低い温度領域において、測定温度がテーブルの温度ステップの間にある場合、第1電圧は温度ステップの低温側の電圧値を選択し、第2電圧は測定温度に対応した電圧を採用することが好ましい。
[実施形態の全体構成の説明:図1]
本発明の液晶装置の全体の構成の概略を図1を用いて説明する。図1において、符号1は本発明の液晶装置である。液晶装置1は、強誘電性液晶パネル10、駆動回路20、波形生成回路30、制御回路40、メモリ回路50、温度センサ60、入力回路70などによって構成される。
入力回路70は、外部装置(図示せず)からの表示情報や制御情報を入力して、入力信号P1を制御回路40に供給する。メモリ回路50は不揮発性メモリで構成され、詳細は後述するが駆動電圧の電圧値を決定するテーブル等を記憶する。温度センサ60は半導体センサなどで構成され、周囲の温度を測定して温度信号P2を出力する。ここで、駆動回路20、波形生成回路30、制御回路40、メモリ回路50、入力回路70等は、ワンチップのマイクロコンピュータで構成しても良いし、個別のカスタムIC等で構成しても良い。
[波形生成回路の構成説明:図2]
次に、液晶装置1の構成要素のひとつである波形生成回路30の内部構成の概略を図2を用いて説明する。図2において、波形生成回路30は、2つのデジタルアナログ変換回路31a、31b(以下、D/A回路31a、31bと略す)、基準電源32、タイミング生成回路33、2つの反転回路34a、34b、切換回路35などによって構成される。
[強誘電性液晶パネルの温度特性と電圧特性の説明:図3A、図3B、図4A、図4B]
次に、本発明の液晶装置で用いられる強誘電性液晶パネル10の応答速度Sとスイッチング角θの温度特性と電圧特性の一例を図3A、図3B、図4A、図4Bを用いて説明する。
図3Aは、強誘電性液晶パネル10の複屈折率異方性(Δn)が0.247である場合における各特性を示している。図3Bは、強誘電性液晶パネル10の複屈折率異方性が0.159である場合における各特性を示している。なお、複屈折率異方性が小さな(たとえば0.159)液晶材料を用いることによりセルギャップを大きくすることができ、歩留まりの向上を図ることができる。
図3Aの表1−1および図3Bの表1−2は、温度が30℃から80℃の環境において、強誘電性液晶パネル10に矩形波の駆動電圧を±0.5V〜±5Vの範囲で印加し、10℃ステップで測定した応答速度S(単位:μsec(μS))の一例を示している。なお、60℃〜80℃は20℃ステップである。また、表1−1および表1−2で空白の箇所は未測定である。
また、図3Aの表2−1および図3Bの表2−2は、温度が30℃から80℃の環境において、強誘電性液晶パネル10に矩形波の駆動電圧を±0.5V〜±5Vの範囲で印加し、10℃ステップで測定したスイッチング角θ(単位:度)の一例を示している。なお、60℃〜80℃は20℃ステップである。
次に図4A(a−1)は、図3Aの表1−1の応答速度Sの温度特性と電圧特性を分かりやすくするために、駆動電圧1.5V、2V、3V、4Vでの応答速度Sを抽出して作成したグラフであり、横軸が温度T(℃)、縦軸が応答速度S(μsec)である。
図4B(a−2)は、図3Bの表1−2の応答速度Sの温度特性と電圧特性を分かりやすくするために、駆動電圧1.3V、1.5V、2V、3V、4V、5Vでの応答速度Sを抽出して作成したグラフであり、横軸が温度T(℃)、縦軸が応答速度S(μsec)である。
これらの図4A(a−1)および図4B(a−2)で理解できるように、応答速度Sは温度が上昇すると速くなる温度特性を有しており、また、駆動電圧が低くなると応答速度Sは遅くなる電圧特性を有している。
[駆動電圧VDの電圧波形の説明:図5]
次に、本実施形態の強誘電性液晶パネル10を駆動する駆動電圧VDの電圧波形の一例を図5を用いて説明する。なお、図5で示す駆動電圧は、後述する高温領域での駆動電圧(VD2)と区別するために駆動電圧VD1として説明する。図5において、駆動電圧VD1は、正電圧が印加される第1フレームと、負電圧が印加される第2フレームの2つのフレームによって構成される。第1フレームは、正の第1電圧V1を印加する第1期間と、第1期間よりも長い期間、正の第2電圧V2を印加する第2期間で構成される。
また、第2フレームは、負の第1電圧V3を印加する第1期間と、第1期間よりも長い期間、負の第2電圧V4を印加する第2期間で構成される。そして、第1フレームの第1電圧V1と、第2フレームの第1電圧V3の絶対値は等しく設定され、第1フレームの第2電圧V2と、第2フレームの第2電圧V4の絶対値は等しく設定される。
[駆動電圧VD1による強誘電性液晶パネルの動作説明:図5]
次に、駆動電圧VD1による強誘電性液晶パネル10の動作を図5を用いて説明する。ここで、本実施形態の強誘電性液晶パネル10が、前述の図10で示した液晶パネル100と同様の特性を有すると仮定して以下説明する。なお、図5の光透過率L1は、強誘電性液晶パネル10に駆動電圧VD1が印加されたときに、強誘電性液晶パネル10を透過する光Lt(図10(b)参照)の光透過率の推移を示している。
図5において、強誘電性液晶パネル10に第1フレームの第1期間で第1電圧V1が印加されると、強誘電性液晶パネル10は第2の状態(液晶分子の長軸方向Fで透過状態(図10(a)参照))となって光透過率L1は上昇する。このときの上昇カーブの傾きが強誘電性液晶の応答速度Sを決定する。そして、次の第2期間では、電圧値の低い正の第2電圧V2が印加されるが、液晶分子の長軸方向Fは維持されるので、第2の状態(透過状態)が継続して光透過率L1は高い状態が継続する。
[駆動電圧VD1を可変することによる強誘電性液晶パネルの動作説明:図6]
次に、駆動電圧VD1の各電圧値を可変すると、強誘電性液晶パネル10の動作がどのように変化するかを図6を用いて説明する。図6において、駆動電圧VD11は、第1電圧V11、V31と第2電圧V21、V41のいずれも、前述の駆動電圧VD1(図5参照)よりも高い電圧値で構成されている。また、駆動電圧VD12は、第1電圧V12、V32と第2電圧V22、V42のいずれも、前述の駆動電圧VD1よりも低い電圧値で構成されている。
また、図6の光透過率L11は、駆動電圧VD11を印加したときの強誘電性液晶パネル10の光透過率の推移の一例であり、光透過率L12は、駆動電圧VD12を印加したときの強誘電性液晶パネル10の光透過率の推移の一例である。また、光透過率L1は、前述の駆動電圧VD1(図5参照)による強誘電性液晶パネル10の光透過率の推移の一例であり、比較のために記載した。
[実施形態の動作フローの説明:図7]
次に、本発明の液晶装置の実施形態の動作フローの一例を図7のフローチャートを用いて説明する。なお、実施形態の構成は図1、図2を参照する。図7において、強誘電性液晶パネル10の応答速度Sの温度特性を取得する(ステップST1)。一例として、温度が30℃から80℃の環境において、強誘電性液晶パネル10に矩形波の駆動電圧を±0.5V〜±5Vの範囲で印加し、10℃ステップでの応答速度Sを測定する。このステップST1での測定データの一例が前述の図3A、図3Bで示した応答速度Sの温度特性(表1−1、表1−2)である。なお、60℃〜80℃は20℃ステップである。
次に図7のフローチャートにおいて、強誘電性液晶パネル10のスイッチング角θの温度特性を取得する(ステップST2)。一例として、温度が30℃から80℃の環境において、強誘電性液晶パネル10に矩形波の駆動電圧を±0.5V〜±5Vの範囲で印加し、10℃ステップでのスイッチング角θを測定する。このステップST2での測定データの一例が前述の図3A、図3Bで示したスイッチング角θの温度特性(表2−1、表2−2)である。なお、60℃〜80℃は20℃ステップである。
なお、この強誘電性液晶パネル10の温度特性の取得(ST1とST2)は、本実施例においては、液晶装置1の内部で実施するのではなく、図示しないが、強誘電性液晶パネル10を外部の測定装置に接続して取得するとよい。
次に図7のフローチャートにおいて、液晶装置1の制御回路40は、外部の測定装置(図示せず)で取得した強誘電性液晶パネル10の応答速度Sの温度特性(図3Aの表1−1または図3Bの表1−2)とスイッチング角θの温度特性(図3Aの表2−1または図3Bの表2−2)の測定データを入力回路70を介して読み込み、メモリ回路50に記憶する(ステップST3)。
次に液晶装置1の制御回路40は、記憶した応答速度Sとスイッチング角θの温度特性のデータから、使用温度範囲において要求される応答速度Sとスイッチング角θを得るための駆動電圧の第1電圧V1、V3と第2電圧V2、V4のテーブルを演算によって生成し、メモリ回路50に記憶する(ステップST4)。ここで、テーブル生成の詳細説明は後述する。
ここで、第1電圧V1は前述した波形生成回路30のD/A回路31aが生成し、第2電圧V2は波形生成回路30のD/A回路31bが生成する。また、負の電圧である第1電圧V3と第2電圧V4は、前述した波形生成回路30の反転回路34a、34bによってそれぞれ生成される。また、パルス幅PW1、PW2、および、PW3、PW4は、波形生成回路30のタイミング生成回路33によって生成される(図2参照)。
[テーブル生成の詳細説明:図8A、図8B]
次に、前述のフローチャート(図7参照)のステップST4における第1電圧V1、第2電圧V2のテーブル生成の詳細を主に図8A、図8Bを用いて説明する。
図8Aは、強誘電性液晶パネル10の複屈折率異方性が0.247である材料の場合(図3A、図4Aに対応)における駆動電圧の第1電圧と第2電圧のテーブルを示している。図8Bは、強誘電性液晶パネル10の複屈折率異方性が0.159である材料の場合(図3B、図4Bに対応)における駆動電圧の第1電圧と第2電圧のテーブルを示している。
以下、主に強誘電性液晶パネル10の複屈折率異方性が0.247である材料の場合(図3A、図4A、図8Aに対応)について説明するが、強誘電性液晶パネル10の複屈折率異方性が0.159である材料の場合(図3B、図4B、図8Bに対応)についても同様である。
まず、液晶装置1の制御回路40は、メモリ回路50に記憶している応答速度Sの温度特性と電圧特性(図3A:表1−1)から必要なデータを抽出する。たとえば、液晶装置1の使用温度範囲が30℃〜60℃であり、応答速度Sの要求値が120μsecであると仮定した場合、30℃〜60℃の温度範囲で、応答速度Sが120μsecを中心とした駆動電圧1.5V〜4Vのデータを抽出し記憶する。この抽出した応答速度Sのデータが前述した図4A(a−1)のグラフに相当する。
次に制御回路40は、抽出した応答速度Sのデータ(図4A(a−1))から、温度30℃〜60℃の各温度ステップにおいて応答速度Sが要求値の120μsec(図4A(a−1)の一点鎖線で示す)になる電圧を算出し、これを第1電圧V1として図8A(a−1)に示すテーブルT1として記憶する。なお、要求値の応答速度S=120μsecは、一例であって限定されない。
次に制御回路40は、抽出したスイッチング角θのデータ(図4A(b−1))から、温度30℃〜60℃の各温度ステップにおいてスイッチング角θが要求値の45度(図4A(b−1)の一点鎖線で示す)になる電圧を算出し、これを第2電圧V2として図8A(a−1)に示すテーブルT1として記憶する。
ここで、図8A(b−1)のテーブルT2の第1電圧V1は、応答速度Sを120μsecに保つための電圧値であり、温度が上昇すると第1電圧V1を低くする必要がある。また、テーブルT2の第2電圧V2は、スイッチング角θを45度に保つための電圧値であり、温度が上昇すると第2電圧V2を高くする必要がある。そして、温度が50℃付近で、第1電圧V1と第2電圧V2は等しくなってクロスし、そのクロスポイントを超える温度では、第1電圧V1と第2電圧V2の大きさが反転する。ここで、第1電圧V1と第2電圧V2がクロスする温度をクロス温度Tcpと定義する。このクロス温度Tcpは、前述したフローチャートのステップST7(図7参照)での判定に用いられる。
[PW1、PW2決定の説明]
次に、前述のフローチャート(図7参照)のステップST5による第1期間のパルス幅PW1と第2期間のパルス幅PW2の決定を説明する。ここで、パルス幅PW1は、強誘電性液晶パネル10に要求される応答速度Sに応じて設定されることが好ましく、パルス幅PW1は、応答速度Sに等しいか、応答速度S+αとする。ここで、+αは最大で応答速度Sの0.5倍程度がよく、従って、第1期間のパルス幅PW1は、要求される応答速度Sが120μsecである場合、120〜180μsecの範囲が好ましい。なお、強誘電性液晶パネル10の応答速度Sは、光透過率L(図5参照)が0%から上昇して90%に到達した時間と定義するとよい。
また、第2期間のパルス幅PW2は、第1フレームの期間−PW1で決定される。そして、前述したように、PW1=PW3、PW2=PW4となるように設定されるので、パルス幅PW1、PW2が決定されれば、自動的にパルス幅PW3、PW4も決定される。
ここで、一例として、第1フレームの期間を10msec、第1期間のパルス幅PW1=140μsecと仮定すると、第2期間のパルス幅PW2は、10msec−140μsec=9.86msecとなる。このように、パルス幅PW1〜PW4は、フレーム期間と強誘電性液晶パネル10に要求される応答速度Sによって決定される。
[クロス温度Tcp未満のV1、V2の決定の説明:図7、図8A]
次に、前述のフローチャート(図7参照)のステップST7において、測定温度がクロ
ス温度Tcp未満である場合に実行されるステップST8、ST9による第1電圧V1と第2電圧V2の決定の詳細を説明する。
ここで、一例として、測定温度が37℃である場合は、フローチャートのステップST7で、測定温度はクロス温度Tcp未満と判定されて制御はステップST8へ進む。そして、ステップST8において制御回路40は、測定温度からテーブルT2を参照して第1電圧V1を決定するが、測定温度がテーブルT2の温度ステップの間にある場合、第1電圧V1は測定温度より低い側の温度ステップの第1電圧V1の電圧値を採用するとよい。
具体的には、制御回路40は、テーブルT2を参照して35℃の温度ステップと40℃の温度ステップの間に測定温度37℃があると判断し(図8A(b−1)の白丸S1)、低い側の温度ステップである35℃における第1電圧V1の値、すなわち、第1電圧V1=2.9Vを採用する。これは、低い側の温度ステップの第1電圧V1を採用すると、第1電圧V1は高めに選択されて応答速度Sは要求値よりも速い速度に設定されるが、応答速度Sが要求値より速い分には問題がないからである。なお、第2フレームの第1電圧V3は−2.9Vとなる。
具体的には、測定温度が37℃である場合、制御回路40は、テーブルT2を参照して35℃の温度ステップと40℃の温度ステップの間に測定温度37℃があると判断し(図8A(b−1)の白丸S2)、この間の第2電圧V2を測定温度に対応して演算によって補完し、この場合、第2電圧V2=1.8Vを採用する。これは、スイッチング角θは要求される角度(すなわち、45度)にできる限り近いことが望まれるので、測定温度のわずかな変化を第2電圧V2に反映させたいからである。なお、第2フレームの第2電圧V4は、−1.8Vとなる。
[クロス温度Tcp以上のV1、V2の決定の説明:図7、図8A]
次に、前述のフローチャート(図7参照)のステップST7において、測定温度がクロス温度Tcp以上である場合に実行されるステップST10による第1電圧V1、第2電圧V2の決定の詳細を説明する。ここで、測定温度がクロス温度Tcp以上である場合は、テーブルT2を参照してスイッチング角θを決定する第2電圧V2を決定し、応答速度Sを決定する第1電圧V1は、第2電圧V2と等しい電圧値とするとよい。
また、測定温度がテーブルT2の温度ステップの間にある場合は、測定温度がクロス温度Tcp未満である場合と同様に、制御回路40は、第2電圧V2を測定温度に対応して演算によって補完して決定し、第1電圧V1は第2電圧V2に等しくする。
[測定温度がクロス温度Tcp以上の場合の駆動電圧VD2の説明:図9]
次に、測定温度がクロス温度Tcp以上の場合の駆動電圧VD2の電圧波形の一例を図9を用いて説明する。図9において、駆動電圧VD2は、第1電圧V1=第2電圧V2、第1電圧V3=第2電圧V4となって、0Vを中心とした矩形波となる。
従って、クロス温度Tcpを超えた温度領域で、第1電圧V1、V3を第2電圧V2、V4に等しくし、温度上昇に伴って、第1電圧V1、V3が第2電圧V2、V4と共に高くなっても問題は生じないのである。また、第1電圧V1、V3を第2電圧V2、V4に等しくすることで、波形生成回路30の制御の一部を簡単化できるメリットがある。
[駆動電圧VD2による強誘電性液晶パネル10の動作説明:図9]
次に、駆動電圧VD2による強誘電性液晶パネル10の動作を図9を用いて説明する。
ここで、駆動電圧VD2による強誘電性液晶パネル10の動作(光透過率L2)は、前述した駆動電圧VD1による動作と同様である。すなわち、図9に示すように、強誘電性液晶パネル10は駆動電圧VD2の第1フレームの第1期間で正の第1電圧V1が印加されると、第2の状態(液晶分子の長軸方向Fで透過状態(図10(a)参照))となって光透過率L2は上昇する。
このときの上昇カーブの傾きが強誘電性液晶の応答速度Sを決定する。そして、第1期間の後の第2期間においても同じ電圧値の正の第2電圧V2が印加されて液晶分子の長軸方向Fは維持されるので、第2の状態(透過状態)が継続して光透過率L2は高い状態が継続する。
なお、クロス温度Tcpを超えた温度領域においても、応答速度Sを要求される速度に保つ場合は、図示しないが、図7のフローチャートに示すステップST7の判定を削除し、常にステップST8,ST9を実行してテーブルT2を参照し、第1電圧V1、第2電圧V2を決定する制御を行うとよい。この場合、テーブルT2(図8A(b−1)参照)に示すように、測定温度がクロス温度Tcpを超えた領域では、第1電圧V1、V3が第2電圧V2、V4より低い電圧値となる。
ここで、クロス温度Tcpを超えた温度領域において、応答速度Sを要求される速度に保つように、すなわち、必要以上に応答速度Sを速くしないように、テーブルT2に従って第1電圧V1、V3を低い電圧に設定すると、高温領域での強誘電性液晶の配向変形の発生を低下させる効果が期待できる。
以上のように、本発明の液晶装置は、温度に応じて駆動電圧の第1電圧V1、V3と第2電圧V2、V4をそれぞれ可変させて強誘電性液晶パネルの温度依存性を補正するので、温度変動に対して要求性能を満たし、高速な応答速度と最適なスイッチング角を有する強誘電性液晶パネルを備えた液晶装置を提供することができる。また、要求される応答速度とスイッチング角に合わせて駆動電圧を調整することで、強誘電性液晶パネルに必要以上の高電圧を印加せずに済むので、強誘電性液晶の配向変形の発生を防ぎ、高精度高品質の液晶装置を提供できる。
なお、本発明の実施形態で示したブロック図やフローチャート等は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を満たすものであれば、任意に変更してよい。
10 強誘電性液晶パネル
20 駆動回路
30 波形生成回路
31a、31b デジタルアナログ変換回路(D/A回路)
32 基準電源
33 タイミング生成回路
34a、34b 反転回路
35 切換回路
40 制御回路
50 メモリ回路
60 温度センサ
70 入力回路
P1 入力信号
P2 温度信号
P3 メモリ信号
P4 制御信号
P5 波形信号
VD、VD1、VD2 駆動電圧
Claims (2)
- 強誘電性液晶を用いた液晶パネルと、該液晶パネルに駆動電圧を供給する駆動回路と、該駆動回路に波形信号を供給する波形生成回路と、該波形生成回路を制御する制御回路と、を有する液晶装置であって、
さらに、周囲の温度を測定するセンサを備え、
前記駆動回路は、前記駆動電圧の第1フレームでは、第1期間に正の第1電圧を出力し、第2期間に前記第1期間より長い期間、正の第2電圧を出力し、
第2フレームでは、第1期間に負の第1電圧を出力し、第2期間に前記第1期間より長い期間、負の第2電圧を出力し、
前記制御回路は、前記センサの測定温度に応じて前記第1電圧と前記第2電圧とを可変し、
前記液晶パネルの応答速度と前記強誘電性液晶のスイッチング角の温度特性から、所定の応答速度とスイッチング角を得るための前記第1電圧と前記第2電圧のテーブルを作成し前記制御回路は、前記測定温度に応じて前記テーブルを参照し、前記第1電圧と前記第2電圧を決定し、
前記テーブルは所定の温度ステップで前記第1電圧と前記第2電圧の値を有する構成であり、前記テーブルによって決定される前記第1電圧と前記第2電圧が等しくなる温度より高い温度領域では、前記第2電圧は前記測定温度に対応した電圧を採用し、前記第1電圧は前記第2電圧に等しい電圧値とすることを特徴とする液晶装置。 - 前記第1フレームと前記第2フレームのそれぞれの第1期間のパルス幅は、前記液晶パネルの応答速度に応じて決定することを特徴とする請求項1に記載の液晶装置。
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