JP2016185736A - 自動車用リアスポイラー - Google Patents

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慎介 日高
内藤 祉康
Shiko Naito
祉康 内藤
松岡 英夫
Hideo Matsuoka
英夫 松岡
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Abstract

【課題】塗装性、表面外観品位に優れた熱可塑性樹脂組成物を用いて、ソリ変形を生じさせにくい、薄肉、高剛性、軽量化に優れた自動車用リアスポイラーを提供する。【解決手段】一対のゴム強化スチレン系樹脂からなる自動車用リアスポイラー部材を接合した中空自動車用リアスポイラーであって、前記自動車用リアスポイラー部材の外表面は塗装面であり、少なくとも一方の前記自動車用リアスポイラー部材の裏面に連続繊維強化樹脂からなる表皮材を接着させてなる自動車用リアスポイラーを提供する。【選択図】図1

Description

本発明は熱可塑性樹脂組成物からなる自動車用リアスポイラー前駆体に連続繊維強化樹脂からなる表皮材を一体化させることにより、薄肉、高剛性、軽量化に優れ、かつ塗装性、表面外観品位に優れた自動車用リアスポイラーに関する。
近年、環境意識の高まりにより自動車内外装部品などで、CO削減、軽量化などの要望が高まり、高剛性、軽量化を両立するため、炭素繊維(以下、「CF」と略することがある。)で強化することが提案されている。しかしながら炭素繊維を全面的に使用することでコスト高となり、実用化を行う上では困難である、一方で、自動車内外装部品においてその求められる強度、剛性は全体ではなく部分的なものが非常に多く、簡単に補強が可能なシート状のCF基材と樹脂との一体化による射出複合成形体の開発が急務であった。
その自動車内外装部品の中でも自動車用リアスポイラーは、自動車の後部に装着され、走行に伴う空気の流れを制御して高速時における自動車の走行安定性を向上させるため、強度・剛性が求められると同時に軽量化も必須であるが、人目に触れやすい部分でもあるため、本来の目的である空気の流れを制御する性能に加えて、表面の外観品位も非常に重要視される。
同時に製品の性能上要求される特性に加え、自動車は大量生産される関係上、その製造方法に関しては量産性が高いことも要求され、特に市場からは常に成形品の塗装不良の低減(耐塗装性)と塗装工程のコストダウンが強く求められている。
このように外観品位の重要性と軽量化、量産性、コストダウンの観点から、従来よりゴム強化スチレン系樹脂は、優れた加工性、耐衝撃性、機械的特性に加え、成形品の外観品位にも優れていることから様々な分野において、各種構成部材の成形材料として使用されており、例えば、近年自動車分野では、ゴム強化スチレン系樹脂の優れた二次加工性、特に塗装性に着目して、幅広く二輪外装部材、四輪内外装部材への使用展開が図られており、耐塗装性に優れたゴム強化スチレン系樹脂が開発されている。たとえば特許文献1では、熱可塑性樹脂の低圧プレス成形により形成された2枚の成形体を貼り合わせたものが提案されているが、外観品位や、量産性には問題がないものの、熱可塑性樹脂は、一般に弾性率が小さいため、リアスポイラーに必要とされる剛性を確保しようとすると肉厚を厚くせざるを得ず、樹脂化による軽量化効果には限界がある。肉厚を薄くするためFRP製のリアスポイラーとしては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維などの繊維強化が挙げられるが、表面外観品位が悪く、外観品位を良好なものとするためには表面研磨や表面修正の仕上げ工数がかかり、量産性が低下するという問題がある。
またゴム強化スチレン系樹脂は、一般的に塗装をしやすい素材ではあるが、樹脂組成物の特性や成形条件、塗装方法、塗装環境などの因子の影響を受け、著しい塗装不良を起こす場合がある。特に、成形品に直接塗料を吹付けて塗装をする場合の塗装外観不良は、塗料に含まれるシンナーなどの溶媒成分が成形品に作用して発生する吸込み現象(塗装表面に微細な凹凸が形成され、光の乱反射によって光沢むらとなって観察される現象)が、最終製品の商品価値を大きく損なうものとなっている。そこで過去の塗装不良を低減させるための技術として、特許文献2、3ではゴム強化スチレン系樹脂のマトリクス成分としてアクリロニトリルのコンテントの高いAS樹脂を使用することで耐塗装性を高め、吸込み性の改善を図る技術が提案されている。
また、軽量化を図るための薄肉化により射出成形品の残留応力、歪みが生じやすく、塗装を施す際に塗料に含まれるシンナーなどの溶媒成分が成形品の残留応力、歪みの生じている部分にシンナーが浸透し、そこからのクラック、ワキの発生により表面の外観品位が大きく損なわれることが問題となっている。そこでクラック、ワキの発生を抑制するための手段として、特許文献4ではゴム強化スチレン樹脂の流動性を高め、薄肉成形時の残留応力、歪みを低減する技術が提案されている。
ここで高剛性、軽量化を達成するためには、簡単に補強効果が発現するシート状のCF基材、すなわち連続繊維強化熱可塑性樹脂からなる表皮材を必要部分に補強し樹脂と一体化させることが有用であるが、熱可塑性樹脂組成物と連続繊維強化樹脂からなる表皮材の線膨張差からソリ変形が発生することがある。
特開平6−321142号公報 特開平9−111077号公報 特開2005−350566号公報 特開2013−199520号公報
本発明の目的は上記の従来技術の問題を背景になされたものであり、塗装性、表面外観品位に優れた熱可塑性樹脂組成物を用いて、ソリ変形を生じさせにくい、薄肉、高剛性、軽量化に優れた自動車用リアスポイラーを提供することにある。
本発明は、以下の構成を有する。すなわち、
(1)一対のゴム強化スチレン系樹脂からなる自動車用リアスポイラー部材を接合した中空自動車用リアスポイラーであって、
前記ゴム強化スチレン系樹脂は、ゴム質重合体(ア)の存在下に、少なくとも芳香族ビニル系単量体(イ)およびシアン化ビニル系単量体(ウ)をグラフト共重合してなるグラフト共重合体(I)10〜50重量部、芳香族ビニル系単量体(イ)70〜85重量%およびシアン化ビニル系単量体(ウ)15〜30重量%を共重合してなるビニル系共重合体(II)20〜70重量部、芳香族ビニル系単量体(イ)36〜65重量%、シアン化ビニル系単量体(ウ)0〜12重量%およびマレイミド系単量体(エ)30〜52重量%を共重合してなる耐熱ビニル系共重合体(III)0〜40重量部、芳香族ビニル系単量体(イ)60〜70重量%およびシアン化ビニル系単量体(ウ)30%超〜40重量%を共重合してなるシアン化ビニル系共重合体(IV)2〜50重量部からなる樹脂組成物であり、
前記自動車用リアスポイラー部材の外表面は塗装面であり、少なくとも一方の前記自動車用リアスポイラー部材の裏面に連続繊維強化樹脂からなる表皮材を接合させてなる自動車用リアスポイラー。
(2)前記グラフト共重合体(I)成分が、ゴム質重合体(ア)40〜65重量%の存在下に、芳香族ビニル系単量体(イ)25〜40重量%およびシアン化ビニル系単量体(ウ)10〜20重量%をグラフト共重合してなることを特徴とする(1)に記載の自動車用リアスポイラー。
(3)前記シアン化ビニル系共重合体(IV)成分が、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の平均含有率が30〜40重量%であり、共重合体中のシアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の組成分布において、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の含有率がその平均含有率より2重量%以上高い共重合体を、シアン化ビニル系共重合体(IV)100重量%中に20〜50重量%含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の自動車用リアスポイラー。
(4)前記表皮材が連続繊維強化熱可塑性樹脂または連続繊維強化熱硬化性樹脂からなることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の自動車用リアスポイラー。
(5)前記表皮材が、強化繊維を一方向に引き揃えて熱可塑性樹脂を含浸させたテープ状基材であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の自動車用リアスポイラー。
(6)前記表皮材が、前記テープ状基材を積層または編み込んだ板状表皮材からなることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の自動車用リアスポイラー。
(7)前記一対のゴム強化スチレン系樹脂からなる自動車用リアスポイラー部材が同形状であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の自動車用リアスポイラー。
本発明によれば、塗装性、表面外観品位に優れた熱可塑性樹脂組成物を用いて、ソリ変形を生じさせにくい、薄肉、高剛性、軽量化に優れた自動車用リアスポイラーおよびその製造方法を提供することができる。
本発明に係る一対の自動車用リアスポイラー部材の組立状態を示す概略斜視図である。 本発明に係る自動車用リアスポイラーの概略断面図である。 本発明に係る自動車用リアスポイラー部材に加わる曲げ力(モーメント)を示した概略図である。 本発明に係る自動車用リアスポイラー部材に加わるねじり力を示した概略図である。
以下、本発明の自動車用リアスポイラー部材について説明する。
本発明の自動車用リアスポイラーとは、図1に示すように、一対の自動車用リアスポイラー部材である上面部材1a、下面部材1bを対向して組み合わせた中空筒状体である。また、少なくとも一方の自動車用リアスポイラー部材の裏面(図1では相手側の自動車用リアスポイラー部材に向いた面)に、連続繊維強化樹脂からなる表皮材が接着されている。図1では、上面部材1a、下面部材1bのそれぞれに、上面表皮材2a、下面表皮材2bが接合されている。
自動車用リアスポイラーを、図2を用いてさらに詳細に説明する。図2に示すように、自動車用リアスポイラーは、その前後端部の曲率半径が3〜50mmの部分を有し、それら前後端部は曲率半径が大きいなだらかな曲線によって結ばれた翼断面形状となっている。自動車用リアスポイラーは、一般に前後端部部分に接合部を有している2つ以上の部材によって構成され、中空構造を形成している。ここで、図1では典型的な例として、2つの部材から構成されるものを挙げており、これで説明を進めていく。
また本発明の一形態である図1のように、水平翼を構成する上面部材1a、下面部材1bの2つの部材のうち少なくとも1つについてその塗装面と反対の裏側面に連続繊維強化熱可塑性樹脂板を接着剤で貼り付けすることにより、剛性を確保することが可能となる。上面部材1aまたは下面部材1bは、炭素繊維の重量含有率が10%より低い熱可塑性樹脂組成物で形成された場合、射出成形性は優れるものの材料の剛性が低いため、リアスポイラーに必要な剛性を確保するために厚肉とする必要が生じ、重量が増加する。また炭素繊維の重量含有率が20%を超えると、剛性を確保することは容易となるものの、射出成形時に自動車用リアスポイラー部材の表面に炭素繊維が流動した跡や穴(ボイド)が発生することにより外観悪化に繋がるため、成形後の表面研磨作業や成形品の廃棄が発生し、収率が低下し量産性が犠牲となるおそれがある。
自動車用リアスポイラーを上面部材1a、下面部材1bの接合部を前後端部部分に有し、かつその内の少なくとも1つの部材の塗装面と反対の裏側面に連続繊維強化熱可塑性樹脂板を接着剤で貼り付けすることにより、自動車用リアスポイラー前後方向の剛性の不均一箇所での局部変形を防ぐことが可能となる。自動車用リアスポイラーの一部分に剛性が低い箇所が存在した場合、高速走行時におけるリアスポイラーに加わる空力により剛性の低い部分に局所変形が生じた結果、空気の流れが乱れ、自動車用リアスポイラーに要求される整流性能が低下するおそれがあるものの、本発明によれば、このような局所変形を防止でき、優れた整流性能を発揮することが可能となる。
次に本発明の自動車用リアスポイラー部材に用いられるゴム強化スチレン系樹脂について詳細に説明する。
配合されるグラフト共重合体(I)は、ゴム質重合体(ア)存在下に、少なくとも芳香族ビニル系単量体(イ)およびシアン化ビニル系単量体(ウ)をグラフト共重合して得られるものである。
ゴム質重合体(ア)としては、ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、エチレン系ゴム等が使用でき、具体例として、ポリブタジエン、ポリ(ブタジエン−スチレン)、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)、ポリイソプレン、ポリ(ブタジエン−アクリル酸ブチル)、ポリ(ブタジエン−メタクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル)、ポリ(ブタジエン−アクリル酸エチル)、エチレン−プロピレンラバー、エチレン−プロピレン−ジエンラバー、ポリ(エチレン−イソプレン)、ポリ(エチレン−アクリル酸メチル)等が挙げられるが、好ましくはジエン系ゴム質重合体であり、より好ましくはポリブタジエンである。
ゴム質重合体(ア)の重量平均粒子径は特に制限はないが、100〜1500nmであることが好ましく、200〜1200nmであることがより好ましい。また、耐衝撃性と流動性との両立の観点から、重量平均粒子径が200〜400nmと450〜1200nmの2種類のゴム質重合体(ア)を併用することもできる。
さらに、ゴム質重合体(ア)として、重量平均粒子径が200〜400nmと450〜1200nmの2種類を併用する場合、流動性の観点から、200〜400nmのものと450〜1200nmのものとの重量比率は、9:1〜5:5の範囲であることが好ましく、8:2〜6:4の範囲であることがより好ましい。
ゴム質重合体(ア)の重量平均粒子径は、「Rubbaer Age Vol.88 p.484〜490(1960)by E.Schmidt,P.H.Biddison」に記載のアルギン酸ナトリウム法(アルギン酸ナトリウムの濃度量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率より累積重量分率50%の粒子径を求める。)により測定することができる。
なお、ゴム質重合体(ア)としては、ガラス転移温度が0℃以下のものが好適であり、その下限値は実用上−80℃程度である。
グラフト共重合体(I)におけるゴム質重合体(ア)の重量分率は、40〜65重量%に調整することが好ましく、より好ましくは40〜60重量%であり、さらに好ましくは40〜50重量%である。重量分率が40重量%未満では材料の耐衝撃性が低下することがあり、一方、65重量%を超えると流動性が低下するといった成形加工性が損なわれ、また成形品の表面外観が低下することがある。
芳香族ビニル系単量体(イ)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、o−エチルスチレン、p−メチルスチレン、クロロスチレンおよびブロモスチレンなどが挙げられるが、特にスチレンが好ましく採用される。なお、グラフト共重合体(I)での芳香族ビニル系単量体(イ)と、後述のビニル系共重合体(II)での芳香族ビニル系単量体(イ)、耐熱ビニル系共重合体(III)での芳香族ビニル系単量体(イ)およびシアン化ビニル系共重合体(IV)での芳香族ビニル系単量体(イ)は同一の物質であっても、それぞれ異なった物質であってもよいが、同一の物質であることが好ましい。
ビニル系単量体混合物に含まれるシアン化ビニル系単量体(ウ)としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどが挙げられるが、特にアクリロニトリルが好ましく採用される。なお、グラフト共重合体(I)でのシアン化ビニル系単量体(ウ)、ビニル系共重合体(II)でのシアン化ビニル系単量体(ウ)、耐熱ビニル系共重合体(III)でのシアン化ビニル系単量体(ウ)およびシアン化ビニル系共重合体(IV)でのシアン化ビニル系単量体(ウ)は同一の物質であっても、それぞれ異なった物質であってもよいが、同一の物質であることが好ましい。
その他、本発明の効果を失わない程度に他の共重合可能な単量体を用いても良い。例えば、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドおよびメタクリル酸メチルなどが挙げられ、それぞれの目的に応じて選択することができる。これらは単独でも複数でも用いることが可能である。耐熱性や難燃性を向上させる意図があれば、N−フェニルマレイミドが好ましい。また、硬度向上や透明感を重視させるのであれば、メタクリル酸メチルが好ましく用いられる。
芳香族ビニル系単量体(イ)およびシアン化ビニル系単量体(ウ)の組成比は、成形加工性の観点から、芳香族ビニル系単量体(イ)25〜40重量%、シアン化ビニル系単量体(ウ)10〜20重量%の範囲とすることが好ましく、より好ましくは、芳香族ビニル系単量体(イ)30〜40重量%、シアン化ビニル系単量体(ウ)10〜20重量%の範囲である。
グラフト共重合体(I)のグラフト率は、衝突延性形態と成形加工性のバランスから、5〜60%であることが好ましく、さらに好ましくは10〜50%であり、特に好ましくは20〜30%である。グラフト率(%)は、次式で示される。
・グラフト率(%)=[ジエン系ゴム質重合体にグラフト重合したビニル系重合体量]/[グラフト共重合体のゴム含有量]×100。
本発明の自動車用リアスポイラー部材に用いられる塗装性、表面外観品位に優れたゴム強化スチレン系樹脂中のグラフト共重合体(I)の重量は10〜50重量部であり、好ましくは15〜45重量部、より好ましくは20〜40重量部である。グラフト共重合体(I)が10重量部より少ないと樹脂組成物の耐衝撃性が低下し、50重量部を超えて使用する場合には樹脂組成物の成形加工性や射出成形品での耐塗装性が損なわれるので好ましくない。
本発明の自動車用リアスポイラー部材に用いられるゴム強化スチレン系樹脂は、成形加工性と耐衝撃性のバランスからビニル系共重合体(II)を20〜70重量部以下の範囲で使用され、好ましくは20〜65量部、より好ましくは30〜65重量部の範囲で使用される。ビニル系共重合体(II)を73重量部を超えて使用すると、樹脂組成物の耐衝撃性が低下することがあるため、好ましくない。
ビニル系共重合体(II)の構成成分である芳香族ビニル系単量体(イ)は、前述のグラフト共重合体(I)での芳香族ビニル系単量体(イ)と同様に、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、o−エチルスチレン、p−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレンなどが挙げられる。これらは必ずしも1種類で使用する必要はなく、複数種併用して使用することもできる。これらの中で特にスチレンが好ましく採用される。
ビニル系共重合体(II)の構成成分であるシアン化ビニル系単量体(ウ)としては、前述のグラフト共重合体(I)でのシアン化ビニル系単量体(ウ)と同様に、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどが挙げられる。これらは必ずしも1種類で使用する必要はなく、複数種併用して使用することもできる。これらの中で特にアクリロニトリルが好ましく採用される。
その他、ビニル系共重合体(II)には、上記芳香族ビニル系単量体(イ)およびシアン化ビニル系単量体(ウ)以外にも、共重合可能な他の単量体を共重合してもよい。共重合可能な他の単量体としては、例えば、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミドおよびメタクリル酸メチルなどが挙げられ、これらは必ずしも単独で使用する必要はなく、複数でも用いることも可能である。
ビニル系共重合体(II)を構成する単量体組成比率は、芳香族ビニル系単量体(イ)70重量%〜82重量%、シアン化ビニル系単量体(ウ)15重量%〜30重量%の範囲であり、好ましくは18重量%〜30重量%、更に好ましくは20重量%〜以上30重量%である。ビニル系共重合体(II)のシアン化ビニル系単量体が15重量%未満である場合には耐塗装性が低下することがあり好ましくない。
ビニル系共重合体(II)の、30℃、0.2,0.4g/dLのメチルエチルケトン溶液のウベローデ粘度測定から導出される固有粘度は0.3〜0.8dl/gであることが好ましく、0.3〜0.6dl/gであることがより好ましい。ビニル系共重合体(II)の固有粘度が0.3dl/g未満である場合には、樹脂組成物の耐衝撃性が低下することがあり、一方、0.8dl/gを超える場合には、樹脂組成物の流動性が低下し、大型成形品の成形が容易でなくなることがある。
本発明の自動車用リアスポイラー部材に用いられるゴム強化スチレン系樹脂において、耐熱、耐塗装性のバランスから耐熱ビニル系共重合体(III)は芳香族ビニル系単量体(イ)36〜65重量%、シアン化ビニル系単量体(ウ)0〜12重量%およびマレイミド系単量体(エ)30〜52重量%を共重合して得られたものである。
耐熱ビニル系共重合体(III)の構成成分である芳香族ビニル系単量体(イ)としては前述のグラフト共重合体(I)での芳香族ビニル系単量体(イ)と同様に、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、o−エチルスチレン、p−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレンなどが挙げられる。これらは必ずしも1種類で使用する必要はなく、複数種併用して使用することもできる。これらの中で特にスチレンが好ましく採用される。 耐熱ビニル系共重合体(III)の構成成分であるシアン化ビニル系単量体(ウ)としては、前述のグラフト共重合体(I)でのシアン化ビニル系単量体(ウ)と同様に、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどが挙げられる。これらは必ずしも1種類で使用する必要はなく、複数種併用して使用することもできる。これらの中で特にアクリロニトリルが好ましく採用される。
耐熱ビニル系共重合体(III)の構成成分であるマレイミド系単量体(エ)としてはN−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドが例示され、好ましくはN−フェニルマレイミドが挙げられる。
耐熱ビニル系共重合体(III)を構成する単量体組成比率は、芳香族ビニル系単量体(イ)36〜65重量%、シアン化ビニル系単量体(ウ)0〜12重量%およびマレイミド系単量体(エ)30〜52重量%の範囲である。特に、マレイミド系単量体の添加量が30重量%を下回ると、樹脂組成物の耐熱性の向上効果が少なく、52重量%を超えると樹脂組成物の成形性を損なったりすることがある。
耐熱ビニル系共重合体(III)の30℃、0.4g/dLのジメチルスルフォキシド溶液のウベローデ粘度計で測定した還元粘度は0.3〜0.7dl/gであることが好ましく、0.4〜0.6dl/gであることがより好ましい。耐熱ビニル系共重合体(III)の還元粘度が0.3dl/g未満である場合には、樹脂組成物の耐衝撃性が低下することがあり、一方、0.7dl/gを越える場合には、樹脂組成物の流動性が低下し、大型成形品の成形が容易でなくなることがある。
本発明の耐熱ビニル系共重合体(III)の重量部は0〜40重量部であり、好ましくは0〜35重量部、より好ましくは0〜30重量部である。耐熱ビニル系共重合体(III)を配合することで、組成物の耐熱レベルを上昇させることができるが、40重量部を超えて使用すると、耐熱性は高くなるが、耐衝撃性が低下するだけでなく、流動性が大幅に低下し、射出成形品の耐塗装性(吸い込み現象、エッジ部のブリスター現象)も低下するため好ましくない。
本発明の自動車用リアスポイラー部材に用いられる塗装性、表面外観品位に優れたゴム強化スチレン系樹脂に配合されるシアン化ビニル系共重合体(IV)は、芳香族ビニル系単量体(イ)60重量%〜70重量%未満、シアン化ビニル系単量体(ウ)30重量%超〜40重量%を共重合して得られるものである。
シアン化ビニル系共重合体(IV)の構成成分である芳香族ビニル系単量体(イ)は、前述のグラフト共重合体(I)、ビニル系共重合体(II)および耐熱ビニル系共重合体(III)での芳香族ビニル系単量体(イ)と同様に、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、o−エチルスチレン、p−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレンなどが挙げられる。これらは必ずしも1種類で使用する必要はなく、複数種併用して使用することもできる。これらの中で特にスチレンが好ましく採用される。
シアン化ビニル系共重合体(IV)の構成成分であるシアン化ビニル系単量体(ウ)としては、前述のグラフト共重合体(I)、ビニル系共重合体(II)および耐熱ビニル系共重合体(III)でのシアン化ビニル系単量体(ウ)と同様に、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどが挙げられる。これらは必ずしも1種類で使用する必要はなく、複数種併用して使用することもできる。これらの中で特にアクリロニトリルが好ましく採用される。
本発明の自動車用リアスポイラー部材に用いられるゴム強化スチレン系樹脂に配合されるシアン化ビニル系共重合体(IV)を構成する原料における各単量体の重量分率は、芳香族ビニル系単量体(イ)およびシアン化ビニル系単量体(ウ)の合計100重量%中、芳香族ビニル系単量体(イ)60〜70重量%、シアン化ビニル系単量体(ウ)30〜40重量%である。シアン化ビニル系単量体の重量分率が30重量%未満であると、成形品の耐薬品性が低下し、塗装不良(吸込み)が発生しやすくなる。一方、40重量%を超える場合には、溶融時の色調安定性が低下することがある。
シアン化ビニル系共重合体(IV)の30℃における固有粘度は、0.3〜0.7dl/gが好ましい。30℃における固有粘度が0.3dl/g未満である場合には樹脂組成物の耐衝撃性が低下することがあり、一方0.7dl/gを超える場合には樹脂組成物の流動性が低下し、大型成形品の成形が容易でなくなることがある。ここで、シアン化ビニル系共重合体(IV)の30℃における固有粘度は、シアン化ビニル系共重合体(IV)をメチルエチルケトンに溶解した濃度0.2g/dlおよび0.4g/dlの各溶液を用いて、30℃において、ウベローデ粘度計で測定した粘度から算出することができる。
本発明の自動車用リアスポイラー部材に用いられるゴム強化スチレン系樹脂において、成形性と衝撃性のバランスからシアン化ビニル系共重合体(IV)は2〜50重量部以下の範囲で使用することができ、好ましくは3〜35重量部、より好ましくは3〜25重量部の範囲で使用される。シアン化ビニル系共重合体(IV)が2重量部より少ない場合には、射出成形品の耐塗装性(吸い込み現象、エッジ部のブリスター現象)が低下し、シアン化ビニル系共重合体(IV)を50重量部を超えて使用すると、樹脂組成物の耐衝撃性が低下することがある。
シアン化ビニル系共重合体(IV)は、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の平均含有率が30〜40重量%であり、共重合体中のシアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の組成分布において、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の含有率がその平均含有率より2重量%以上高い共重合体を、シアン化ビニル系共重合体(IV)100重量%中に20〜50重量%含有することが好ましい。
シアン化ビニル系共重合体(IV)のシアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位は、吸込み現象やエッジ部のブリスター現象を抑制し、成形品の塗装表面外観を向上させる効果を奏する。このため、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の平均含有率が30重量%以上であれば、成形品のエッジ部分における吸込みやブリスター現象をより抑制することができる。一方、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の平均含有率が40重量%以下であれば、溶融時の色調安定性を向上させることができる。
シアン化ビニル系共重合体(IV)中のシアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の平均含有率は、一般的に、原料におけるシアン化ビニル系単量体(ウ)の重量分率によって定まるが、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の含有率はシアン化ビニル系共重合体(IV)中において均一ではなく、ある程度の分布を有する場合が多い。前述のとおり、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の含有率が高い方が塗装表面外観を向上させることができる一方、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の含有率が低い重合体は、グラフト共重合体(I)やビニル系共重合体(II)との相溶性や、溶融時の色調安定性を向上させることができる。そのため、本発明においては、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位にある程度の組成分布を有することが好ましい。具体的には、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の含有率がその平均含有率より2重量%以上高い共重合体を20〜50重量%含有することが好ましい。シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の含有率がその平均含有率より2重量%以上高い共重合体をシアン化ビニル系共重合体(IV)中に20重量%以上含有することにより、ブリスター現象をより抑制し、成形品の塗装表面外観をより向上させることができる。25重量%以上がより好ましい。一方、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の含有率がその平均含有率より2重量%以上高い共重合体をシアン化ビニル系共重合体(IV)中に50重量%以下含有することにより、溶融時の色調安定性および成形品の耐衝撃性をより向上させることができる。45重量%以下がより好ましい。
シアン化ビニル系共重合体(IV)中のシアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の平均含有率は、シアン化ビニル系共重合体(IV)を加熱プレスにより40μm程度のフィルム状にし、赤外分光分析することにより測定することができる。また、シアン化ビニル系共重合体(IV)中のシアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の組成分布は、次の方法により求めることができる。まず、シアン化ビニル系共重合体(IV)のメチルエチルケトン溶液を作製し、この溶液にシクロヘキサンを滴下する。シアン化ビニル系共重合体(IV)が沈殿しだい、シクロヘキサンの滴下を中止し、遠心分離と濾過にてシアン化ビニル系共重合体(IV)を分離後、真空乾燥する。分離した濾液に、一定量のシクロヘキサンを添加し、さらに沈殿したシアン化ビニル系共重合体(IV)を同様の操作にて分離、乾燥を行い、シアン化ビニル系共重合体(IV)の沈殿が無くなるまで本操作を繰り返す。シアン化ビニル系共重合体(IV)中のシアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の含有率により、析出し始めるシクロヘキサン濃度が異なる(シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の含有率が少ないほど、早い段階で祈出する)ことから、本操作により、組成分布のあるシアン化ビニル系共重合体(IV)を、組成が異なる共重合体毎に分離することができる。シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の含有率毎に分離したシアン化ビニル系共重合体(IV)の重量を測定し、総祈出量から割り返して重量分率を求めるとともに、赤外分光分析によりシアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の含有率を求めることで、組成分布を求めることができ、前述の方法で求めた平均含有率とあわせて、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の含有率がその平均含有率より2重量%以上高い共重合体の含有量を算出することができる。
本発明において、グラフト共重合体(I)、ビニル系共重合体(II)、耐熱ビニル系共重合体(III)およびシアン化ビニル系共重合体(IV)の製造方法に関しては特に制限はなく、塊状重合、懸濁重合、塊状懸濁重合、溶液重合、乳化重合、沈殿重合およびこれらの組み合わせ等が用いられる。単量体の仕込み方法に関しても特に制限はなく、初期に一括添加してもよく、共重合体の組成分布を付けるため、あるいは防止するために添加方法は数回に分けて重合してもよい。
本発明において、グラフト共重合体(I)、ビニル系共重合体(II)、耐熱ビニル系共重合体(III)およびシアン化ビニル系共重合体(IV)の重合に使用される開始剤としては、過酸化物またはアゾ系化合物などが好適に用いられる。
また、本発明の自動車用リアスポイラー部材に用いられるゴム強化スチレン系樹脂には、炭素繊維以外の無機充填材を配合することができる。本発明で用いる無機充填材としては、板状、棒状、球状などの非繊維状の無機充填材や繊維状または針状の無機充填材など特に制限はない。非繊維状無機充填材としてはワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素およびシリカなどの充填材が挙げられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填材を2種類以上併用することも可能である。これらのうち特に好ましい充填材は、タルク、ワラステナイトである。また、繊維状または針状の無機充填材としてはガラス繊維、チタン酸カリウイスカ、酸化亜鉛ウイスカ、繊維状炭酸カルシウム、繊維状ワラステナイトなどが挙げられ、これら充填材を二種以上併用することも可能である。
無機充填材の添加量には特に制限がないが、ゴム強化スチレン系樹脂100重量部に対し、5重量部以上50重量部以下とすることが好ましい。5重量部以上の場合には、線膨張係数の低減効果が発揮され好ましい。また、50重量部以下とすることで、耐衝撃性の低下を抑制することができる。
次に本発明である自動車用リアスポイラーを構成する連続繊維強化熱可塑性樹脂からなる表皮材について説明する。
リアスポイラーを構成する連続繊維強化樹脂からなる表皮材に用いられる樹脂は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂の少なくとも1種を含む形態とすることができる。本発明で用いられる熱可塑性樹脂は特に限定されず、また、これらの樹脂を単体で用いる他、もしくは2種以上混合したアロイとして用いても良い。また熱硬化性樹脂としてはエポキシ、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、フェノール、ポリイミド等の熱硬化性樹脂で熱または光や電子線などの外部からのエネルギーによって硬化し、少なくとも部分的に硬化物を形成する樹脂であれば良い。好ましくは、表皮材として用いる熱可塑性樹脂が、自動車用リアスポイラー部材に用いられる樹脂と同種類のゴム強化スチレン系樹脂であると、接合による密着強度が高くなり、安定化することができるが、これに限定されるものではない。
本発明のリアスポイラーに係る連続繊維強化熱可塑性樹脂に使用される強化繊維としては、特に限定されるものではないが、例えば炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維から選ばれる少なくとも1種を含む形態とすることができる。中でも、高い機械特性の実現、強度設計の容易性等を考慮すると、炭素繊維が好ましい。
連続繊維強化熱可塑性樹脂からなる表皮材の強化繊維としては特に限定されないが、自動車用リアスポイラーの一部として塗装性、表面外観品位に優れたゴム強化スチレン系樹脂と併せてリアスポイラー全体の要求部分の剛性・強度の確保を担うため、所望の方向に対して高い剛性(曲げ剛性等)を有することが好ましい。そのためには、強化繊維が連続繊維からなることが好ましい。
また、表皮材として、強化繊維を一方向に引き揃えて熱可塑性樹脂を含浸させたテープ状基材を用いることができる。このような表皮材を使用すれば、比較的大面積のリアスポイラーであっても、容易に表皮材を所望の位置に配置できるようになる。またこの場合、表皮材として、強化繊維を一方向に引き揃えて熱可塑性樹脂を含浸させたテープ状基材を、積層または編み込んだテープ状基材からなる形態も採用することが可能となる。このような形態を採用すれば、大面積の構造体であっても、容易に連続繊維強化熱可塑性樹脂からなるテープ状基材を所望の位置に配置できるとともに、テープ状基材に望ましい機械特性を容易に付与することが可能となる。
また表皮材として、強化繊維織物を含む形態を採用することも可能である。このような形態を採用すれば、リアスポイラーの表面に望ましい意匠性を持たせることも可能になる。また、強化繊維織物を含むことにより、リアスポイラーを構成するゴム強化スチレン系樹脂材自体の機械特性をより向上することも可能になるので、構造体全体としての機械特性の向上が可能になる。
本発明で用いられる表皮材の製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、溶融樹脂が充満した含浸ダイに連続繊維を投入し、スリットダイから引き抜くプルトルージョン法や、連続繊維束に熱可塑性樹脂粉体をまぶし溶融プレスするパウダー含浸法、連続強化繊維と熱可塑性繊維を混紡した繊維を板状に配置し熱プレスする方法などが挙げられる。また得られた表皮材に対し、さらに接着層として熱可塑性樹脂をパウダー、もしくはシート状のものを積層し、熱プレスする方法も挙げられる。この方法は、表皮材を自動車用リアスポイラー部材と接合し一体化させる上で、各々を接合する上で接合が困難な場合において表皮材および自動車用リアスポイラー部材の双方と高い接合強度の確保が可能な熱可塑性樹脂パウダー、シートなどを双方の間に介して振動溶着など熱融着であれば特に限定はされないが、接合方法を用い一体化することが有用な手段である。
次に本発明の一対のゴム強化スチレン系樹脂からなる自動車用リアスポイラー部材と連続繊維強化樹脂からなる表皮材とを一体化させる接着剤の種類としては、一般的に合成系接着剤が用いることが好ましい。例えば、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、α−オレフィン系、エーテル系、エチレン−酢酸ビニル樹脂系、エポキシ樹脂系、塩化ビニル樹脂系、クロロプレンゴム系、シアノアクリレート系、シリコーン系、スチレン−ブタジエンゴム系、フェノール樹脂系、ポリアミド樹脂系、ポリイミド系、ポリオレフィン樹脂系などがあるが、複合成形体に用いられる樹脂の種類に合わせて適選変更することが可能である。
また接着剤層の厚みは10〜500μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは50〜200μmである。10μm以下では接着剤の効能が発揮されず、自動車用リアスポイラー部材と表皮材間で容易に剥離が生じる。一方で500μm以上の厚みでは接着力は問題ないが、塗布時の手間、軽量化の観点において不適である。
接着剤の塗布及び硬化方法については、使用する接着剤の種類に応じて使用推奨条件の記載に従い、適選変更することが可能であるが、塗布方法は特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂の加熱による応力緩和と再度室温まで温度が低下した際の自動車用リアスポイラー部材と表皮材との熱収縮差によるソリ変形が発生するため、好ましくない。従って硬化温度条件は室温に近ければ近いほど好ましい。
また上記接着剤の塗布面は自動車用リアスポイラー部材、表皮材のいずれでも問題ないが、自動車用リアスポイラー部材と表皮材の両方に塗布すると、自動車用リアスポイラー部材および表皮材と接着剤との親和性を向上させることが可能となるため、最も好ましい態様である。
また上記接着剤を塗布する自動車用リアスポイラー部材、表皮材はいずれも温度が室温まで冷却した状態で塗布することが好ましい。特に自動車用リアスポイラー部材において射出成形直後の温度において接着剤を塗布して表皮材と接合した場合、自動車用リアスポイラー部材が冷却する過程においてソリ変形が発生する恐れがあり、好ましくない。従って接着剤を塗布する自動車用リアスポイラー部材、および表皮材の温度は室温に近ければ近いほど好ましい。なお、本発明において室温とは、15〜30℃の範囲であることが好ましく、20〜25℃がより好ましい。
一方、接着剤を硬化反応させる雰囲気温度は、自動車用リアスポイラー部材、および表皮材の熱変形を防止する上で室温に近ければ近いほど好ましく、15〜30℃の範囲であることが好ましく、20〜25℃がより好ましい。
また、表皮材に用いられる連続繊維強化樹脂が熱可塑性樹脂からなる場合、上記接着剤による接合だけに限らず、振動溶着、熱板融着などの熱融着による接合が可能である。
次に熱可塑性樹脂組成物からなる自動車用リアスポイラー部材と連続繊維強化樹脂からなる表皮材の接合について、上面部材と下面部材の2つの自動車用リアスポイラー部材から構成される自動車用リアスポイラーにおいて少なくとも1つ以上の自動車用リアスポイラー部材に表皮材を接合し一体化することが好ましく、より好ましくは2つの自動車用リアスポイラー部材に表皮材を接合し一体化することである。
またリアスポイラー部材への表皮材接合箇所については特に限定されないが、リアスポイラーの形状に合わせて所望の強度、剛性を確保するため、必要とする場所に複数に分けて接合、一体化することも可能であり、1枚のみで接合することも可能である。
本発明は塗装性、表面外観品位に優れた熱可塑性樹脂で成形された自動車用リアスポイラー部材に対し、連続繊維強化樹脂からなる表皮材を一体化させることにより、薄肉、高剛性、軽量化、ソリ変形の抑制を発現することを特徴とする自動車用リアスポイラーに関するものである。特に、一対のゴム強化スチレン系樹脂からなる自動車用リアスポイラー部材が同形状であることが好ましい。更には、いずれの自動車用リアスポイラー部材の裏面にも表皮材が接合され、表皮材同士が対向するように自動車用リアスポイラー部材同士を接合することで、自動車用リアスポイラー全体として対称構造が得られ、ソリやヒケの発生を防止することができる。
本発明の自動車用リアスポイラーは、必要とされる剛性や強度を確保することができる。さらには、上面表皮材2aと下面表皮材2bの炭素繊維の重量含有率を規定した範囲とすることにより、上記の効果に加え、例えばトランクリッドに取り付けられるスポイラーであれば上面部材1a、ルーフに取り付けられるスポイラーでは下面部材1bのように、ユーザーの目に良く晒されるため外観品位の要求厳しい部分に、要求される外観品位を確保することも可能とするものである。さらに上面部材1aの裏面にリブを配置(図示せず)することで、リアスポイラーの外観品位を損なうことなく高剛性化ができ、さらなる軽量化が可能となる。
また自動車用リアスポイラー部材は、成形時間の短い射出成形で作成が可能であり、量産性の高いリアスポイラーが提供できる。
以下に実施例を挙げて更に詳細に説明する。
図1、図2に示すような、L=1200mm、H=20mm、B=150mmの形状を有する自動車用スポイラーを評価対象とした。上面部材1a、下面部材1bは同一形状であり、向い合せて接合した。上面部材1a、下面部材1bの各裏面には100mm×1000mmの表皮材を上面部材1a、下面部材1bの中央となる位置に貼り付ける構造とした。
上面部材1a、下面部材1bを接合した自動車用リアスポイラーの曲げ剛性、ねじり剛性を、シーメンスインダストリーソフトウェア社製Femapを使用して断面二次モーメントを算出し、計算によるシミュレーションを行った。また、後述する自動車用リアスポイラー部材に塗料を塗装し、塗装後の表面に存在する塗料中のシンナー成分の揮発遅れで発生するクレーター状の凹凸をワキ欠点とし、目視で評価した。使用した原材料の組合せを表1に、各種評価結果を表2に示す。
<原材料>
本発明の自動車用リアスポイラー部材のマトリックスとなるゴム強化スチレン系樹脂、およびその自動車用リアスポイラー部材の裏側面に一体化させる表皮材および接着剤を以下のように準備した。
[自動車用リアスポイラー部材に用いるゴム強化スチレン系樹脂]
ABS樹脂(1):グラフト共重合体(I)32重量部、ビニル系共重合体(II)42重量部、耐熱ビニル系共重合体(III)16重量部、シアン化ビニル系共重合体(IV)10重量部を配合し、全体で100重量部とした。
ABS樹脂(2):グラフト共重合体(I)32重量部、ビニル系共重合体(II)31重量部、耐熱ビニル系共重合体(III)27重量部、シアン化ビニル系共重合体(IV)10重量部を配合し、全体で100重量部とした。
ABS樹脂(3):グラフト共重合体(I)37重量部、ビニル系共重合体(II)53重量部、シアン化ビニル系共重合体(IV)10重量部を配合し、全体で100重量部とした。
ABS樹脂(4):グラフト共重合体(I)37重量部、ビニル系共重合体(II)63重量部を配合し、全体で100重量部とした。
[表皮材]
東レ(株)製炭素繊維“トレカ”(登録商標)T700S(12K)を引き揃え、ナイロン6樹脂で充満された含浸ダイに投入した後、引き抜き成形によって、幅50mm、厚み0.28mm、連続繊維含有量50重量%の表皮材を得た。
[接着剤]
エポキシ系接着剤:“アラルダイト”(登録商標)AW4859/HW4859(独ハンツマン社製)
アクリル系接着剤:“ハードロック”(登録商標)NS-700M20A/NS-700M20B(電気化学工業(株)製)
ガラスビーズ:φ100μm(接着剤層厚み調整用に使用)、接着剤100重量部に対し0.5重量部混合
[塗料] レタンPG−60(改)No.202PC−AK(関西ペイント株式会社製)
Figure 2016185736
Figure 2016185736
表1に示す組成、および接合方法で得られた自動車用リアスポイラー部材の各種物性評価結果を表2に示す。実施例1〜6の全てにおいて表皮材を貼り付け一体化することによる曲げ、ねじり剛性の向上効果が大きく、さらに薄肉化による軽量化が達成することが可能となることがわかった。また塗装後の表面外観もワキ欠点がなく良好であることを目視確認し、問題ないことがわかった。
一方、比較例1〜4は表皮材を貼り合わせておらず、剛性を目標値に到達させるためには厚肉化する必要があるため、軽量化が困難となった。また比較例5では、表皮材を張り合わせることにより薄肉化は可能となったが、塗装後の表面外観が悪化し、ワキ欠点が顕在化することがわかった。以上のように、本発明を満足する自動車用リアスポイラーを得ることで、自動車用リアスポイラー中実断面に対して、重量が約1/4に低減でき、曲げ剛性で約2倍・ねじり剛性同等以上の性能を発現できることがわかった。
1a:上面部材
1b:下面部材
2a:上面表皮材
2b:下面表皮材

Claims (7)

  1. 一対のゴム強化スチレン系樹脂からなる自動車用リアスポイラー部材を接合した中空自動車用リアスポイラーであって、
    前記ゴム強化スチレン系樹脂は、ゴム質重合体(ア)の存在下に、少なくとも芳香族ビニル系単量体(イ)およびシアン化ビニル系単量体(ウ)をグラフト共重合してなるグラフト共重合体(I)10〜50重量部、芳香族ビニル系単量体(イ)70〜85重量%およびシアン化ビニル系単量体(ウ)15〜30重量%を共重合してなるビニル系共重合体(II)20〜70重量部、芳香族ビニル系単量体(イ)36〜65重量%、シアン化ビニル系単量体(ウ)0〜12重量%およびマレイミド系単量体(エ)30〜52重量%を共重合してなる耐熱ビニル系共重合体(III)0〜40重量部、芳香族ビニル系単量体(イ)60〜70重量%およびシアン化ビニル系単量体(ウ)30%超〜40重量%を共重合してなるシアン化ビニル系共重合体(IV)2〜50重量部からなる樹脂組成物であり、
    前記自動車用リアスポイラー部材の外表面は塗装面であり、少なくとも一方の前記自動車用リアスポイラー部材の裏面に連続繊維強化樹脂からなる表皮材を接合させてなる自動車用リアスポイラー。
  2. 前記グラフト共重合体(I)成分が、ゴム質重合体(ア)40〜65重量%の存在下に、芳香族ビニル系単量体(イ)25〜40重量%およびシアン化ビニル系単量体(ウ)10〜20重量%をグラフト共重合してなることを特徴とする請求項1に記載の自動車用リアスポイラー。
  3. 前記シアン化ビニル系共重合体(IV)成分が、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の平均含有率が30〜40重量%であり、共重合体中のシアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の組成分布において、シアン化ビニル系単量体(ウ)由来の構造単位の含有率がその平均含有率より2重量%以上高い共重合体を、シアン化ビニル系共重合体(IV)100重量%中に20〜50重量%含有することを特徴とする請求項1または2に記載の自動車用リアスポイラー。
  4. 前記表皮材が連続繊維強化熱可塑性樹脂または連続繊維強化熱硬化性樹脂からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の自動車用リアスポイラー。
  5. 前記表皮材が、強化繊維を一方向に引き揃えて熱可塑性樹脂を含浸させたテープ状基材であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の自動車用リアスポイラー。
  6. 前記表皮材が、前記テープ状基材を積層または編み込んだ板状表皮材からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の自動車用リアスポイラー。
  7. 前記一対のゴム強化スチレン系樹脂からなる自動車用リアスポイラー部材が同形状であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の自動車用リアスポイラー。
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