JP2016184221A - 診療支援装置とその作動方法および作動プログラム、並びに診療支援システム - Google Patents

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Abstract

【課題】簡単に診療対象患者の今後の病状を判断することが可能な診療支援装置とその作動方法および作動プログラム、並びに診療支援システムを提供する。【解決手段】取得部47は、電子カルテDB14から、診療対象患者とクリニカルパスが同一の診療データである比較症例を取得する。分類部48は、比較症例を治療期間の長短に応じて良好群と不良群に分類する。算出部49は、各群それぞれに属する比較症例の検査値から、各群を代表する代表値を算出する。判定部50は、各群の間に有意差があるか否かをt検定により判定する。画面表示制御部51は、判定部50で有意差があると判定された場合、代表値の時系列変化を示す折れ線グラフ92、93と、診療対象患者の検査値の時系列変化を示す折れ線グラフ94とを重畳したグラフ比較表示画面21を生成する。【選択図】図15

Description

本発明は、診療支援装置とその作動方法および作動プログラム、並びに診療支援システムに関する。
医療施設では、患者の診療過程で取得した様々な診療データを電子化して管理する電子カルテの導入が進んでいる。診療データには、患者のバイタルサインの検査値(測定値)、生化学検査、血液検査等の検体検査、あるいは脳波検査等の生理検査を含む各種医療検査の検査値、治療薬の種類および投与量、診察内容、治療内容、処置内容、病名、各種医療検査のオーダ、患者の診療過程で生じた入院、手術等のイベントを記録した診察・治療記録といったものがある。これらの各種診療データは、測定日、検査日、投与日、診察日といった取得日の日付とともに時系列に電子カルテに登録される。
バイタルサインの検査値には、患者の血圧、体温、心拍、脈拍、酸素飽和度等の複数の項目がある。また、医療検査のうちの例えば血液検査の検査値にも、白血球数(WBC;White Blood cell Count)、赤血球数(RBC;Red Blood cell Count)、ヘマトクリット(Ht;Hematocrit)、アルブミン(ALB;Albumin)等の複数の項目がある。検査値は、こうした複数の項目毎に区別して電子カルテに登録される。
電子カルテを導入した医療施設では、診断を支援するための様々な情報を電子データの形式で医師に提供することが可能である。例えば特許文献1には、診療対象患者の病気の進行度を把握したり、診療対象患者の術後や治療薬の投与後の治療効果を判定したりするために、診療対象患者の検査値の時系列変化を示すグラフを提供する診療支援装置が記載されている。
特許文献1では、診療対象患者と他の患者の病状の比較検討を可能とするために、診療対象患者の検査値のグラフに、診療対象患者と病名が共通する患者の診療データである比較症例の検査値の時系列変化を示すグラフを並列または重畳表示している。比較症例の検査値としては、例えば過去に実施された複数回のバイタルサインの測定や複数回の医療検査で得られた複数の検査値の平均値、中央値といった代表値が用いられている。
特開2014−109836号公報
医師にとって、検査値を参照して診療対象患者の今後の病状を判断することは非常に重要である。特に病状が悪化するとの見通しが治療初期の段階で立てば、先回りして診療対象患者に適切な処置を施すことができる。そうすれば結果的に治療成績も良化するため、今後の病状の判断は診療対象患者にとっても大変重要である。
特許文献1では、診療対象患者の検査値のグラフに比較症例の検査値のグラフを並列または重畳表示しているが、比較症例が治療成績の良好なものであるか不良なものであるかが分からないため、この表示だけでは今後の病状の判断が困難である。したがって、現状、診療対象患者の今後の病状は、医師が経験的に判断している。
このように今後の病状の判断が医師の経験に左右されている現状では、経験の浅い医師が病状悪化の兆候を見過ごしてしまい、治療が長引く等の悪影響が出るおそれがあった。そこで、医師の経験や見落としに左右されることなく、簡単に診療対象患者の今後の病状を判断することができる仕組みが切望されていた。
本発明は、簡単に診療対象患者の今後の病状を判断することが可能な診療支援装置とその作動方法および作動プログラム、並びに診療支援システムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の診療支援装置は、時系列に登録された検査値を含む診療データが患者毎に登録された症例データベースから、診療対象患者の比較対象の診療データである比較症例を取得する取得部と、比較症例を治療成績に応じて複数の群に分類する分類部と、同一の群に属する比較症例の検査値に基づいて、群を代表する代表値を算出する算出部と、複数の群の間に有意差があるか否かを判定する判定部と、判定部で有意差があると判定された場合、代表値と診療対象患者の検査値とを表示画面に比較可能に表示する制御を行う画面表示制御部とを備える。
画面表示制御部は、代表値の時系列変化を示すグラフと診療対象患者の検査値の時系列変化を示すグラフ、または代表値の基準値からの変化量の時系列変化を示すグラフと診療対象患者の検査値の基準値からの変化量の時系列変化を示すグラフを、表示画面に比較可能に表示させることが好ましい。この場合、時間軸を揃えてグラフを重畳表示するための基準日が設定されることが好ましい。また、画面表示制御部は、基準日を跨ぐ前後の期間のグラフを重畳表示することが好ましい。
検査値は複数の項目を有し、算出部は、複数の項目別に代表値を算出し、判定部は、複数の項目別に判定を行うことが好ましい。
診療データは患者の治療計画をまとめたクリニカルパスを含み、比較症例は、診療対象患者とクリニカルパスが同一の診療データであることが好ましい。時間軸を揃えてグラフを重畳表示する場合、クリニカルパスの適用開始日が基準日として設定されることが好ましい。
診療データは患者に施した手術の内容を含み、比較症例は、診療対象患者と手術の内容が同一の診療データであることが好ましい。時間軸を揃えてグラフを重畳表示する場合、手術の実施日が基準日として設定されることが好ましい。
診療データは患者の病名および患者に投与した治療薬を含み、比較症例は、診療対象患者と病名および治療薬が同一の診療データであることが好ましい。時間軸を揃えてグラフを重畳表示する場合、治療薬の投与開始日が基準日として設定されることが好ましい。
比較症例は、診療対象患者の検査値との類似度に応じて決定されることが好ましい。
分類部は、治療期間の長短に応じて比較症例を分類することが好ましい。あるいは、診療データは患者の治療計画をまとめたクリニカルパスおよび治療計画に沿わないバリアンスを含み、分類部は、バリアンスに応じて比較症例を分類することが好ましい。
判定部は、複数の群のそれぞれの比較症例の検査値の統計量に基づいて判定を行うことが好ましい。統計量は、比較症例の検査値の件数、平均値、および分散であり、判定部は、複数の群のそれぞれの平均値に有意差があるか否かを検定するt検定により判定を行うことが好ましい。
画面表示制御部は、分類部で治療成績が最も良好な群に分類された比較症例の検査値で規定される規定範囲内に、診療対象患者の検査値がある間は代表値を表示させず、診療対象患者の検査値が規定範囲外となった場合に代表値を表示させることが好ましい。
画面表示制御部は、表示画面に検査値の正常範囲を表示させることが好ましい。
本発明の診療支援装置の作動方法は、時系列に登録された検査値を含む診療データが患者毎に登録された症例データベースから、診療対象患者の比較対象の診療データである比較症例を取得する取得ステップと、比較症例を治療成績に応じて複数の群に分類する分類ステップと、同一の群に属する比較症例の検査値に基づいて、群を代表する代表値を算出する算出ステップと、複数の群の間に有意差があるか否かを判定する判定ステップと、判定ステップで有意差があると判定された場合、代表値と診療対象患者の検査値とを表示画面に比較可能に表示する制御を行う画面表示制御ステップとを備える。
本発明の診療支援装置の作動プログラムは、時系列に登録された検査値を含む診療データが患者毎に登録された症例データベースから、診療対象患者の比較対象の診療データである比較症例を取得する取得機能と、比較症例を治療成績に応じて複数の群に分類する分類機能と、同一の群に属する比較症例の検査値に基づいて、群を代表する代表値を算出する算出機能と、複数の群の間に有意差があるか否かを判定する判定機能と、判定機能で有意差があると判定された場合、代表値と診療対象患者の検査値とを表示画面に比較可能に表示する制御を行う画面表示制御機能とを、コンピュータに実行させる。
本発明の診療支援システムは、診療支援装置を備える診療支援システムにおいて、時系列に登録された検査値を含む診療データが患者毎に登録された症例データベースから、診療対象患者の比較対象の診療データである比較症例を取得する取得部と、比較症例を治療成績に応じて複数の群に分類する分類部と、同一の群に属する比較症例の検査値に基づいて、群を代表する代表値を算出する算出部と、複数の群の間に有意差があるか否かを判定する判定部と、判定部で有意差があると判定された場合、代表値と診療対象患者の検査値とを表示画面に比較可能に表示する制御を行う画面表示制御部とを備える。
本発明によれば、診療対象患者の比較対象の診療データである比較症例を取得してこれを治療成績に応じて複数の群に分類し、群を代表する代表値を算出して、複数の群の間に有意差があるか否かを判定し、有意差があると判定された場合、代表値と診療対象患者の検査値とを比較可能に表示する制御を行うので、簡単に診療対象患者の今後の病状を判断することが可能な診療支援装置とその作動方法および作動プログラム、並びに診療支援システムを提供することができる。
診療支援システムを示す図である。 クライアント端末、診療支援サーバ、およびカルテDBサーバ間で送受信される各種情報を示す図である。 電子カルテDBの内容を示す図である。 クライアント端末、診療支援サーバ、およびカルテDBサーバを構成するコンピュータを示すブロック図である。 クライアント端末のCPUの機能を示すブロック図である。 診療支援サーバのCPUの機能を示すブロック図である。 カルテDBサーバのCPUの機能を示すブロック図である。 取得部の取得機能を説明するための図である。 ある項目の検査値の時系列変化を示すグラフである。 分類部の分類機能を説明するための図である。 算出部の算出機能を説明するための図である。 統計量データの内容を示す図である。 判定部の判定機能を説明するための図である。 診療データ表示画面を示す図である。 グラフ比較表示画面を示す図である。 複数の項目を含む第2配信要求を受け付けた場合のグラフ比較表示画面を示す図である。 クライアント端末のCPUと診療支援サーバのCPUとカルテDBサーバのCPUの処理手順を示すフローチャートである。 第2実施形態における取得部の取得機能を説明するための図である。 第2実施形態におけるグラフ比較表示画面を示す図である。 病名・治療薬テーブルを示す図である。 第3実施形態における取得部の取得機能を説明するための図である。 第3実施形態におけるグラフ比較表示画面を示す図である。 第4実施形態における検索部の検索機能を説明するための図である。 第5実施形態における分類部の分類機能を説明するための図である。 第6実施形態における算出部の算出機能および画面表示制御部の画面表示制御機能を説明するための図である。 第7実施形態における算出部の算出機能を説明するための図である。 第7実施形態における算出部の算出機能を説明するための図である。 第7実施形態におけるグラフ比較表示画面を示す図である。 第8実施形態における分類部の分類機能を説明するための図である。 第8実施形態におけるグラフ比較表示画面を示す図である。
[第1実施形態]
図1において、診療支援システム2は、クライアント端末10、および診療支援装置に相当する診療支援サーバ11を備える。これらクライアント端末10および診療支援サーバ11は、医療施設内に敷設されたLAN(Local Area Network)等のネットワーク13を介して相互接続されている。ネットワーク13には、カルテデータベース(以下、DB(Data Base)と略す)サーバ12も接続されている。
クライアント端末10、診療支援サーバ11、およびカルテDBサーバ12は、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、ワークステーションといったコンピュータをベースに、オペレーティングシステム等の制御プログラムや、各種アプリケーションプログラムをインストールして構成される。
診療支援サーバ11は、患者の診断を支援する診断支援情報を提供する診断支援情報提供機能を有する。カルテDBサーバ12は、電子カルテを管理するカルテ管理機能を有する。
クライアント端末10は、患者を診療する医師や医療検査を実施する検査技師といった医療施設の医療スタッフにより操作される。クライアント端末10は、診療支援サーバ11およびカルテDBサーバ12の各種機能を利用して患者の診療を行う際、具体的には診断支援情報や電子カルテを閲覧する際、電子カルテに各種診療データ(図3参照)を入力する際等に使用される。なお、図1ではクライアント端末10は1台しか描かれていないが、実際には、内科、外科、検査科、リハビリ科等の診療科毎や医療スタッフ毎に複数台のクライアント端末10が配備されている。
カルテDBサーバ12には、症例データベースに相当する電子カルテDB14が設けられている。電子カルテDB14には電子カルテが検索可能に登録されている。
図2において、クライアント端末10は、第1配信要求および第2配信要求を診療支援サーバ11に出力する。第1配信要求には、診療を行う対象である診療対象患者の患者ID(Identification data)が含まれる。患者IDは、医療施設を受診する個々の患者を識別するための記号や番号である。第2配信要求には、診療対象患者の患者IDに加えて、検査値の項目が含まれる(図2では検査値の項目のみ図示)。
診療支援サーバ11は、クライアント端末10からの第1配信要求および第2配信要求を受け付ける。診療支援サーバ11は、第1配信要求と同内容の第1取得要求をカルテDBサーバ12に出力する。
診療支援サーバ11は、第2取得要求を例えば2回に分けてカルテDBサーバ12に出力する。1回目の第2取得要求には、診療対象患者の患者IDが含まれる。2回目の第2取得要求には、診療対象患者に採用したクリニカルパス(以下、CPと略す)のID(CPID)が含まれる(図2では2回目の第2取得要求のみ図示)。
カルテDBサーバ12は、診療支援サーバ11からの第1取得要求を受け付け、第1取得要求に含まれる患者IDが関連付けられた診療データ(以下、診療対象患者の診療データという)を検索し、これを診療支援サーバ11に出力する。
また、カルテDBサーバ12は、診療支援サーバ11からの第2取得要求を受け付け、1回目の第2取得要求に応じて診療対象患者の診療データを検索し、2回目の第2取得要求に応じて診療対象患者の比較対象の診療データ(以下、比較症例という)を検索し、これらを診療支援サーバ11に出力する(図2では比較症例のみ図示)。
診療支援サーバ11は、カルテDBサーバ12からの診療対象患者の診療データおよび比較症例を取得する。診療支援サーバ11は、診療対象患者の診療データに基づいて診療データ表示画面20(図14も参照)を生成する。また、診療支援サーバ11は、診療対象患者の診療データおよび比較症例に基づいて、診断支援情報としてグラフ比較表示画面21(図15等も参照)を生成する。診療支援サーバ11は、生成した各表示画面20、21を各配信要求の出力元のクライアント端末10に出力する。
診療支援サーバ11は、各表示画面20、21を、例えば、XML(Extensible Markup Language)等のマークアップ言語によって作成されるウェブ配信用のXMLデータの形式で出力する。クライアント端末10は、XMLデータに基づき各表示画面20、21をウェブブラウザ上に再現して表示する。なお、XMLに代えて、JSON(JavaScript(登録商標) Object Notation)等の他のデータ記述言語を利用してもよい。
なお、図示は省略するが、クライアント端末10は、第1配信要求および第2配信要求の他に、電子カルテの登録要求および配信要求をカルテDBサーバ12に出力する。カルテDBサーバ12は、登録要求で受け付けた電子カルテを検索可能な形態で電子カルテDB14に登録し、これを管理する。また、カルテDBサーバ12は、配信要求で指定された電子カルテを電子カルテDB14から検索し、検索した電子カルテを配信要求の出力元のクライアント端末10に出力する。
図3において、電子カルテDB14には、電子カルテが患者IDと関連付けられて患者毎に登録される。電子カルテDB14に登録された電子カルテは、患者IDを元に検索することが可能である。
電子カルテは各種診療データで構成される。診療データには、患者の血圧、体温、心拍、脈拍、酸素飽和度等のバイタルサインの検査値(測定値)、生化学検査、血液検査等の検体検査、あるいは脳波検査等の生理検査を含む各種医療検査の検査値、治療薬の種類および投与量、診察内容、治療内容、処置内容、病名、各種医療検査のオーダ、患者の診療過程で生じた入院、手術等のイベントを記録した診察・治療記録といったものがある。これらの各種診療データは、測定日、検査日、投与日、診察日といった取得日の日付とともに時系列に登録されている。
図3では、バイタルサインの検査値として、血圧(上)、血圧(下)、体温の各項目の検査値を例示している。また、医療検査の検査値として、生化学検査のAST(Aspartate Aminotransferase)、ALP(Alkaline Phosphatase)、クレアチニン等の各項目の検査値、血液検査のWBC、RBC、Ht、ALB等の各項目の検査値を、治療薬の種類および投与量として治療薬Aの投与量をそれぞれ例示している。さらに、診察・治療記録として、問診により得られた腹痛、吐き気等の主訴、診断病名の急性胃潰瘍、生化学、血液、単純X線撮影、内視鏡検査といった医療検査のオーダ、採用したCPのCPIDであるCP001等が記録されたものが例示されている。
CPは、診療対象患者に理想的な治療結果をもたらすことを目的として、病種や病名毎に予め作成される。CPは、医療検査、手術、リハビリ、食事等、診療対象患者に施すべき様々な治療や処置等の計画(治療計画)を日毎にまとめたものである。医療スタッフは、このCPで示される治療計画に沿って治療や処置等を行う。CPで示される治療計画に沿わない治療や処置等であるバリアンスが発生した場合、診察・治療記録には、医療スタッフによりバリアンスの内容が記録される(図24参照)。
CPIDは、個々のCPを識別するための記号や番号である。病種や病名毎に作成される治療計画が同じ内容のCPには同じCPIDが付される。
なお、診療データとしては、上記で例示した他に、患者が家庭内で血圧測定器や体重計等の簡易検査機器を用いて日々測定した健康管理情報や、患者の遺伝子検査の結果である遺伝子検査情報が含まれていてもよい。
図4において、クライアント端末10、診療支援サーバ11、およびカルテDBサーバ12を構成するコンピュータは、基本的な構成は同じであり、それぞれ、ストレージデバイス25、メモリ26、CPU(Central Processing Unit)27、通信部28、ディスプレイ29、および入力デバイス30を備えている。これらはデータバス31を介して相互接続されている。
ストレージデバイス25は、クライアント端末10等を構成するコンピュータに内蔵、またはケーブルやネットワークを通じて接続されたハードディスクドライブ、もしくはハードディスクドライブを複数台連装したディスクアレイである。ストレージデバイス25には、オペレーティングシステム等の制御プログラムや各種アプリケーションプログラム、およびこれらのプログラムに付随する各種操作画面の表示データ等が記憶されている。
メモリ26は、CPU27が処理を実行するためのワークメモリである。CPU27は、ストレージデバイス25に記憶されたプログラムをメモリ26へロードして、プログラムにしたがった処理を実行することにより、コンピュータの各部を統括的に制御する。
通信部28は、ネットワーク13を介した各種情報の伝送制御を行うネットワークインターフェースである。ディスプレイ29は、マウスやキーボード等の入力デバイス30の操作に応じた各種操作画面を表示する。操作画面にはGUI(Graphical User Interface)による操作機能が備えられる。クライアント端末10等を構成するコンピュータは、操作画面を通じて入力デバイス30からの操作指示の入力を受け付ける。
なお、以下の説明では、クライアント端末10を構成するコンピュータの各部には添え字の「A」を、診療支援サーバ11を構成するコンピュータの各部には添え字の「B」を、カルテDBサーバ12を構成するコンピュータの各部には添え字の「C」をそれぞれ符号に付して区別する。
図5において、ウェブブラウザが起動されると、クライアント端末10のCPU27Aは、メモリ26と協働して、GUI制御部35、およびブラウザ制御部36として機能する。
GUI制御部35は、各種操作画面をディスプレイ29Aに表示し、かつ各種操作画面を通じて入力デバイス30Aから入力される操作指示を受け付ける。操作指示には、診療データ表示画面20の配信指示、具体的には診療対象患者の患者IDの入力指示、並びにグラフ比較表示画面21の配信指示、具体的には検査値の項目の入力指示がある。GUI制御部35は、受け付けた診療対象患者の患者ID、および検査値の項目をブラウザ制御部36に出力する。
ブラウザ制御部36は、ウェブブラウザの動作を制御する。ブラウザ制御部36は、GUI制御部35からの診療対象患者の患者IDを含む第1配信要求、およびGUI制御部35からの検査値の項目を含む第2配信要求を診療支援サーバ11に対して発行する。
また、ブラウザ制御部36は、診療支援サーバ11からの各表示画面20、21のXMLデータを受け取る。ブラウザ制御部36は、XMLデータに基づきウェブブラウザ上に表示する各表示画面20、21を再現し、これをGUI制御部35に出力する。GUI制御部35は、各表示画面20、21をディスプレイ29Aに表示する。
図6において、診療支援サーバ11のストレージデバイス25Bには、診療支援プログラム45が記憶されている。診療支援プログラム45は、診療支援サーバ11を構成するコンピュータを、診療支援装置として機能させるためのアプリケーションプログラムであり、作動プログラムに相当する。
診療支援プログラム45が起動されると、診療支援サーバ11のCPU27Bは、メモリ26と協働して、受付部46、取得部47、分類部48、算出部49、判定部50、および画面表示制御部51として機能する。
受付部46は、クライアント端末10からの第1配信要求および第2配信要求を受け付ける。受付部46は、第1配信要求および第2配信要求に含まれる診療対象患者の患者IDを取得部47に出力する。また、受付部46は、第2配信要求に含まれる検査値の項目を算出部49に出力する。
取得部47は、診療対象患者の患者IDを含む第1取得要求、および診療対象患者の患者ID、診療対象患者のCPIDを含む第2取得要求をカルテDBサーバ12に対して発行する。
取得部47は、第1取得要求および第2取得要求に応じてカルテDBサーバ12から出力された診療対象患者の診療データおよび比較症例を取得する。取得部47は、診療対象患者の診療データを画面表示制御部51に、比較症例を分類部48、および算出部49にそれぞれ出力する。
分類部48は、取得部47からの比較症例を、治療成績に応じて良好群と不良群の2つの群に分類する(図10参照)。分類部48は、分類結果を算出部49に出力する。
算出部49は、同一の群に属する比較症例の検査値に基づいて、群を代表する代表値を算出する(図11参照)。算出部49は、第2配信要求に含まれる項目の検査値について代表値の算出を行う。算出部49は、算出結果を判定部50および画面表示制御部51に出力する。
判定部50は、第2配信要求に含まれる項目の検査値について、良好群と不良群の間に有意差があるか否かを判定する。判定部50は、判定結果を画面表示制御部51に出力する。
画面表示制御部51は、取得部47からの診療対象患者の診療データに基づいて診療データ表示画面20を生成する。また、画面表示制御部51は、判定部50で有意差があると判定された場合、取得部47からの診療対象患者の診療データ、および算出部49からの代表値に基づいてグラフ比較表示画面21を生成する。画面表示制御部51は、生成した各表示画面20、21のXMLデータを、各配信要求の出力元のクライアント端末10に出力する。
図7において、カルテDBサーバ12のストレージデバイス25Cには、DBプログラム55が記憶されている。DBプログラム55が起動されると、カルテDBサーバ12のCPU27Cは、メモリ26と協働して、受付部56、検索部57、および出力制御部58として機能する。
受付部56は、診療支援サーバ11からの第1取得要求および第2取得要求を受け付ける。受付部56は、第1取得要求に含まれる診療対象患者の患者ID、1回目の第2取得要求に含まれる診療対象患者の患者ID、および2回目の第2取得要求に含まれる診療対象患者のCPIDを検索部57に出力する。
検索部57は、電子カルテDB14から、第1取得要求および1回目の第2取得要求に応じて診療対象患者の診療データを、2回目の第2取得要求に応じて比較症例をそれぞれ検索する。検索部57は、検索した診療対象患者の診療データおよび比較症例を出力制御部58に出力する。出力制御部58は、診療支援サーバ11に診療対象患者の診療データおよび比較症例を出力する。
なお、図示は省略するが、受付部56は、電子カルテの登録要求および配信要求も受け付ける。検索部57は、電子カルテの配信要求に応じて、電子カルテDB14から電子カルテを検索する。また、検索部57は、電子カルテの登録要求に応じて電子カルテを電子カルテDB14に登録する登録機能も備えている。出力制御部58は、検索部57が検索した電子カルテを、配信要求の出力元のクライアント端末10に出力する。
取得部47は、診療対象患者とCP(クリニカルパス)が同一の診療データを比較症例として取得する。例えば図8において、診療対象患者の電子カルテの診察・治療記録に、CPID「CP050」が記録されていた場合、取得部47は、CPID「CP050」を含む2回目の第2取得要求をカルテDBサーバ12に出力する。カルテDBサーバ12では、検索部57により、電子カルテDB14の各患者の電子カルテから、診察・治療記録にCPID「CP050」が記録されている患者(患者ID「P005」、「P008」等の患者)の電子カルテの診療データが比較症例として検索される。その結果、取得部47は、診察・治療記録に診療対象患者と同一のCPID「CP050」が記録されている患者の電子カルテの診療データを比較症例として取得する。
図9は、ある項目の検査値の時系列変化を示すグラフである。縦軸には検査値が、横軸には経過日がそれぞれ割り当てられている。経過日「0」は、診療対象患者の治療開始日である。また、ハッチングおよび2点鎖線で示す符号60は、その項目の検査値の正常範囲を示している。
一点鎖線で示す折れ線グラフ61は、経過日「11」に検査値が正常範囲60内となり、経過日「11」以降も検査値が正常範囲60内にとどまっている。一方、幅が狭い破線で示す折れ線グラフ62は、経過日「21」になってようやく検査値が正常範囲60内となっている。また、幅が広い破線で示す折れ線グラフ63は、経過日「10」に患者が死亡してしまったため、経過日「10」以降は途切れている。
ここで、検査値の時系列変化が折れ線グラフ61で示される比較症例の患者が、例えば経過日「12」に退院し、一方で検査値の時系列変化が折れ線グラフ62で示される比較症例の患者が、例えば経過日「21」以降に退院したとする。この場合、検査値の時系列変化が折れ線グラフ61で示される比較症例は、検査値の時系列変化が折れ線グラフ62で示される比較症例よりも治療期間が相対的に短いため、検査値の時系列変化が折れ線グラフ62で示される比較症例よりも治療成績が良好であるといえる。逆に、検査値の時系列変化が折れ線グラフ62で示される比較症例は、検査値の時系列変化が折れ線グラフ61で示される比較症例よりも治療成績が不良であるといえる。また、検査値の時系列変化が折れ線グラフ63で示される比較症例は、患者が死亡してしまっているので、治療成績が不良であるといえる。
このように、治療成績は、治療期間の長短、および患者の生死に応じてその良し悪しが決まる。そこで本実施形態では、分類部48は、治療期間の長短、および患者の生死に応じて比較症例を分類する。
より具体的には図10に示すように、分類部48は、まず、中間処理データ65を作成する。中間処理データ65は、取得部47からの比較症例の各々について、診察・治療記録に記録されたCPの適用開始日を治療期間の開始日、退院日を治療期間の終了日として治療期間を算出し、算出した治療期間と比較症例の患者IDを関連付けたものである。
例えば患者ID「P005」の比較症例の場合は、診察・治療記録に記録されたCPの適用開始日が「2010.05.15」、退院日が「2010.05.22」であるため、治療期間として「8日間」を算出する。患者ID「P025」の比較症例のように、患者が死亡してしまった場合は、分類部48は治療期間を算出しない。なお、上記のように退院日を治療期間の終了日として治療期間を算出してもよいし、退院日の前日を治療期間の終了日として治療期間を算出してもよい。また、退院日の代わりに、治療薬の投与終了日を治療期間の終了日としてもよい。
分類部48は、算出した治療期間と、予め設定された治療期間の閾値とを比較する。分類部48は、算出した治療期間が閾値未満の場合、その比較症例を良好群に分類し、算出した治療期間が閾値以上、または患者が死亡していた場合、その比較症例を不良群に分類する。なお、算出した治療期間と比較する閾値は、良好群に分類するための閾値と、不良群に分類するための閾値とが2つ設定されていてもよい。この場合、分類部48は、算出した治療期間と2つの閾値とを比較することで、比較症例を良好群、不良群のいずれかに分類する。
図10では、治療期間の閾値として「15日間」が設定された場合を例示している。この場合、患者ID「P005」、「P020」の比較症例の治療期間はそれぞれ「8日間」、「14日間」であるため、分類部48は、患者ID「P005」、「P020」の比較症例を良好群に分類する。一方、患者ID「P008」の比較症例の治療期間は「20日間」で、患者ID「P025」の患者は死亡しているため、分類部48は、患者ID「P008」、「P025」の比較症例を不良群に分類する。
治療期間の閾値としては、例えばCPで定められる標準治療期間、あるいは公共機関が発表している病種や病名毎の平均治療期間が設定される。これらの場合は病種や病名毎に治療期間の閾値が異なる。もちろん、病種や病名に関わらず、治療期間の閾値を一律に設定してもよい。
図11は、第2配信要求に含まれる項目がALBであった場合の、良好群、不良群それぞれの群に属する比較症例のALBの検査値の代表値を、算出部49において算出する様子を示したものである。良好群に属するのは、図10で例示した患者ID「P005」、「P020」等の比較症例である。これらの比較症例のALBの検査値は、患者ID「P005」の場合が「5.2、4.2、3.8、4.5、・・・」、患者ID「P020」の場合が「5.5、4.3、4.2、4.8、・・・」とそれぞれ取得日毎に推移している。取得日の日付のうち、実線の楕円で囲んだ「2010.05.15」、「2012.09.14」は、それぞれCPの適用開始日を示している。
算出部49は、CPの適用開始日を経過日「0」、すなわち基準日として設定する。このため経過日「−1」は基準日の前日、経過日「1」は基準日の翌日、経過日「2」は基準日の翌々日となる。算出部49は、良好群に属する各々の比較症例の経過日毎のALBの検査値をまとめた中間処理データ67A、および不良群に属する各々の比較症例の経過日毎のALBの検査値をまとめた中間処理データ67Bをそれぞれ作成する。例えば良好群に属する各々の比較症例の経過日毎のALBの検査値は、経過日「−1」が「5.2、5.5、・・・」、経過日「0」が「4.2、4.3、・・・」等である。
算出部49は、算出結果68A、68Bに示すように、経過日毎のALBの検査値の平均値を代表値として算出する。算出結果68Aは、良好群の中間処理データ67Aに基づいて算出したものであり、算出結果68Bは、不良群の中間処理データ67Bに基づいて算出したものである。例えば良好群の経過日「0」の代表値は「4.4」、不良群の経過日「0」の代表値は「4.9」といった具合である。このように、代表値は良好群、不良群のそれぞれの経過日毎に1つずつ算出される。
また、算出部49は、代表値である平均値を含む統計量データ69を判定部50に出力する。図12に示すように、統計量データ69は、良好群と不良群のそれぞれの比較症例の検査値(ここではALBの検査値)の件数、検査値の平均値(代表値)、および検査値の分散を、経過日毎にまとめたものである。例えば経過日「−1」のALBの検査値の件数は良好群が「7」、不良群が「10」であり、平均値は図11と同じく良好群が「5.5」、不良群が「5.0」である。また、分散は良好群が「0.052」、不良群が「0.064」である。
図13において、判定部50は、算出部49からの統計量データに基づいて、良好群、不良群のそれぞれの比較症例の検査値の平均値に有意差があるか否かを判定する。より具体的には、判定部50はt検定により判定を行う。
t検定は、統計処理の分野において周知のように、それぞれ複数の数値を有する2つの群間に有意差がないとする帰無仮説が正しいか、あるいは2つの群間に有意差があるとする対立仮説が正しいかを判定するためのアルゴリズムである。t検定では、例えば、2つの群それぞれの数値の数(件数)、平均値、および分散を変数とする算出式(1)によりt値を算出する。
t=(X1AVE−X2AVE)/σ{(1/N1)+(1/N2)}1/2・・・(1)
ただし、X1AVEは2つの群のうちの一方の数値の平均値、X2AVEは2つの群のうちの他方の数値の平均値、N1は2つの群のうちの一方の数値の件数、N2は2つの群のうちの他方の数値の件数である。σは2つの群の数値のそれぞれの分散σ1、σ2を合成した分散であり、次式(2)で表される。
σ={σ1(N1−1)+σ2(N2−1)/(N1+N2−2)}1/2・・・(2)
判定部50は、算出したt値の絶対値と、統計学的、確率論的に導出した閾値とを比較する。そして、t値の絶対値が閾値よりも大きい場合は対立仮説が正しい、すなわち2つの群間に有意差ありと判定し、t値の絶対値が閾値以下の場合は帰無仮説が正しい、すなわち2つの群間に有意差なしと判定する。
図13では、ALBの検査値について、経過日毎にt検定を行って良好群、不良群のそれぞれの比較症例の検査値の平均値に有意差があるか否かを判定する様子を示している。例えば経過日「−1」の場合、X1AVE=5.5、X2AVE=5.0、N1=7、N2=10、σ1=0.052、σ2=0.064であるから、式(1)および(2)より、t値の算出結果70に示すようにt=17.14である。また、この場合はt値の絶対値17.14が閾値2.131よりも大きいため、判定結果71に示すように判定は有意差ありとなる。一方で、経過日「0」の場合はt=−0.369となり、絶対値0.369が閾値2.131以下であるため、判定は有意差なしとなる。
判定部50は、全経過日における判定が全て有意差なしであった場合は、良好群と不良群の間に有意差がないと判定する。一方、図13に例示するように、各経過日のうちの1日でも有意差ありとの判定がなされた場合は、良好群と不良群の間に有意差があると判定する。
図14において、診療データ表示画面20は、診療データ表示領域76を有する。診療データ表示領域76の縦軸には、治療薬、バイタルサイン、検体検査といった診療データの大分類の名称、および治療薬A、血圧(上)、体温、WBC、ALBといった各診療データの個々の項目の名称の表示欄77が配されている。診療データ表示領域76の横軸には、診療データ表示領域76に表示される診療データの取得期間の表示欄78が配されている。
表示欄78は、第1表示欄78Aと第2表示欄78Bとに分かれている。第1表示欄78Aで表される期間(第1期間という)は第2表示欄78Bで表される期間(第2期間という)よりも相対的に時間尺度が長い。
第1表示欄78Aには期間標識79が設けられている。期間標識79は、第2期間が第1期間のいずれに対応するかを示す。期間標識79の幅は、第1期間の時間尺度における第2期間の幅に対応している。図14では、第2期間は2014年12月から2015年3月中旬までの約3か月半であるので、期間標識79の幅は、第1期間の時間尺度における約3か月半の幅に対応する。
期間標識79をカーソル80で横方向に移動させたり、期間標識79の幅を変更することで、第2期間の表示範囲を変更することが可能である。なお、最初に診療データ表示画面20に表示する第2期間は、最新の診療データから所定期間前としてもよいし、ウェブブラウザ上の初期画面において、配信指示で診療対象患者の患者IDを入力する際に医療スタッフが指定してもよい。
診療データ表示領域76は、診療データの大分類毎に複数のサブ領域81A、81B、81Cに分割されている。サブ領域81Aには治療薬、サブ領域81Bにはバイタルサイン、サブ領域81Cには検体検査がそれぞれ割り当てられている。各サブ領域81A〜81Cの表示欄77には、非表示の項目を縦スクロール操作により表示させるためのスクロールバー82が設けられている。
サブ領域81Aには、第2期間における各治療薬A、Bの投与開始日と終了日、並びに投与量を示すバー83が表示される。サブ領域81B、81Cには、第2期間におけるバイタルサインおよび検体検査の検査値を、取得日毎にプロットして線で結んだ折れ線グラフ84が表示される。バイタルサイン、検体検査の表示欄77には、折れ線グラフ84の凡例が表示される。
各サブ領域81A〜81Cに表示されるバー83、および折れ線グラフ84を形成する点は、投与日、測定日、検査日に応じた診療データ表示領域76の位置にそれぞれ配置される。
診療データ表示画面20には、診療データ表示領域76の他に、患者情報表示領域85や病名表示領域86が設けられている。患者情報表示領域85には、診療対象患者の患者IDおよび氏名、生年月日、年齢を示す文字情報が表示される。病名表示領域86には、「肺癌」といった診断病名を示す文字情報が表示される。
表示欄77の各検査値の項目の横には、チェックボックス87が設けられている。また、診療データ表示領域76の下部には、症例検索ボタン88が設けられている。これらチェックボックス87および症例検索ボタン88は、グラフ比較表示画面21の配信指示を入力するためのものである。所望の検査値の項目のチェックボックス87がカーソル80で選択され、かつ症例検索ボタン88がカーソル80で選択された場合、ブラウザ制御部36は、当該チェックボックス87が選択された検査値の項目を含む第2配信要求を診療支援サーバ11に対して発行する。図14では、ALBの項目のチェックボックス87が選択されている様子を示している。
ここで、チェックボックス87が複数選択されて症例検索ボタン88が選択された場合、算出部49は、複数の項目別に代表値を算出する。また、判定部50は、複数の項目別に判定を行う。画面表示制御部51は、複数の項目のうち、判定部50で有意差があると判定された項目の代表値を含むグラフ比較表示画面21を生成する。判定部50で有意差がないと判定された項目の代表値については、グラフ比較表示画面21には表示されない(図16参照)。
グラフ比較表示画面21は、例えば診療データ表示画面20上にポップアップ表示される。図15において、グラフ比較表示画面21は、グラフ表示領域91を有する。グラフ表示領域91の縦軸には検査値が、横軸には経過日がそれぞれ割り当てられている。
グラフ表示領域91には、一点鎖線で示す良好群の代表値の時系列変化を示す折れ線グラフ92と、破線で示す不良群の代表値の時系列変化を示す折れ線グラフ93と、実線および四角の点で示す診療対象患者の検査値の時系列変化を示す折れ線グラフ94とが重畳表示されている。これらのグラフ92〜94は、経過日「0」を基準日として時間軸を揃えて表示されている。
グラフ表示領域91には、グラフ92〜94の他に、凡例95および検査値の正常範囲96が表示されている。正常範囲96は、ハッチングおよび2点鎖線で示すように、異常範囲と区別して表示され、グラフ表示領域91の横軸の全体にわたって帯状に表示される。
グラフ比較表示画面21には、グラフ表示領域91の他に、項目表示領域97が設けられている。項目表示領域97には、検査値の項目を示す文字情報が表示される。
図15では、ALBの検査値について各グラフ92〜94を表示した例を示している。この場合は縦軸の単位は「g/dL」であり、横軸の経過日は、例えば基準日である経過日「0」の前日の経過日「−1」から、経過日「16」まで、基準日を跨ぐ前後の期間が表示されている。また、正常範囲96は、ALBの正常範囲とされている3.8g/dL〜5.3g/dLの範囲に表示されている。なお、横軸の経過日は、例えば経過日「−10」から経過日「20」等、変更することが可能である。
図15では、基準日から6日経過したときに第2配信要求を出力してグラフ比較表示画面21を表示した場合を例示している。したがって、診療対象患者の検査値の時系列変化を示す折れ線グラフ94は、経過日「6」以降は検査値が存在しないため途切れている。
図16は、体温、WBC、RBC、およびALBの4つの項目を含む第2配信要求を出力した場合のグラフ比較表示画面21の例である。ここでは、上記の4つの項目のうち、体温、ALBが判定部50で有意差ありと判定され、WBC、RBCが判定部50で有意差なしと判定された場合を示している。この場合、グラフ比較表示画面21には、ALB用と体温用の2つのグラフ表示領域91A、91Bおよび項目表示領域97A、97Bが設けられ、その下部には、判定部50で有意差なしと判定された項目を示す文字情報の表示欄98が設けられている。なお、体温のグラフ比較表示領域91Bには、体温の正常範囲とされている35.5℃〜37.0℃の範囲に正常範囲96が表示されている。
以下、上記構成による作用について、図17のフローチャートを参照して説明する。まず、医療スタッフは、クライアント端末10を操作して、ウェブブラウザ上の初期画面において、診療データ表示画面20の配信指示を入力する。この配信指示に応じて、ブラウザ制御部36から診療支援サーバ11に対して第1配信要求が発行される。
診療支援サーバ11では、第1配信要求が受付部46で受け付けられる。第1配信要求で受け付けられた診療対象患者の患者IDは取得部47に出力され、取得部47からカルテDBサーバ12に対して第1取得要求が発行される。
カルテDBサーバ12では、第1取得要求が受付部56で受け付けられる。第1取得要求で受け付けられた診療対象患者の患者IDは検索部57に出力される。そして、検索部57によって、電子カルテDB14から、診療対象患者の診療データが検索される。検索された診療対象患者の診療データは、出力制御部58によって診療支援サーバ11に出力される。
診療支援サーバ11では、診療対象患者の診療データが取得部47で取得される。診療対象患者の診療データは画面表示制御部51に出力される。画面表示制御部51では、診療対象患者の診療データに基づいて診療データ表示画面20が生成される。診療データ表示画面20のXMLデータは、第1配信要求の出力元のクライアント端末10に出力される。
クライアント端末10では、診療データ表示画面20のXMLデータがブラウザ制御部36で受け取られる。ブラウザ制御部36によりXMLデータに基づきウェブブラウザ上に表示する診療データ表示画面20が再現され、GUI制御部35により診療データ表示画面20がディスプレイ29Aに表示される。
診療データ表示画面20には、診療対象患者の各種診療データが時系列に沿って表示される。医療スタッフは、診療データ表示画面20を閲覧し、診療対象患者の病状を把握する。
診療データ表示画面20上において、医療スタッフは、診療対象患者の病状をさらに詳しく把握するため、所望の検査値の項目のチェックボックス87をカーソル80で選択し、かつ症例検索ボタン88をカーソル80で選択する。このグラフ比較表示画面21の配信指示により、図17のステップS100に示すように、当該チェックボックス87が選択された検査値の項目を含む第2配信要求が、ブラウザ制御部36から診療支援サーバ11に対して発行される。
診療支援サーバ11では、第2配信要求が受付部46で受け付けられる(ステップS200)。第2配信要求で受け付けられた診療対象患者の患者IDは取得部47に出力され、検査値の項目は算出部49に出力される。取得部47からカルテDBサーバ12に対して第2取得要求が発行される(ステップS210)。
カルテDBサーバ12では、第2取得要求が受付部56で受け付けられる(ステップS300)。1回目の第2取得要求で受け付けられた診療対象患者の患者IDおよび2回目の第2取得要求で受け付けられた診療対象患者のCPIDは検索部57に出力される。そして、検索部57によって、電子カルテDB14から、1回目の第2取得要求に応じて診療対象患者の診療データが検索され、2回目の第2取得要求に応じて比較症例が検索される(ステップS310)。これらは出力制御部58によって診療支援サーバ11に出力される(ステップS320)。
診療支援サーバ11では、診療対象患者の診療データおよび比較症例が取得部47で取得される(ステップS220)。このとき取得された比較症例は、診療対象患者とCPが同一の診療データである。CPは病種や病名毎に作成されるので、比較症例は、少なくとも病種や病名が診療対象患者と一致する患者の診療データである。また、CPは治療計画を日毎にまとめたものであるため、比較症例は、バリアンスが発生していない限り、検査値の項目や取得日が診療対象患者の診療データと一致する。したがって、診療対象患者の診療データとの比較がしやすい比較症例を取得することができる。
取得部47で取得された診療対象患者の診療データは画面表示制御部51に、比較症例は分類部48、および算出部49にそれぞれ出力される。
次いで、分類部48により、治療期間の長短、および患者の生死に応じて比較症例が良好群と不良群に分類される(ステップS230)。具体的には、まず、比較症例の各々について、診察・治療記録に記録されたCPの適用開始日と退院日を元に治療期間が算出される。そして、治療期間と閾値とが比較され、治療期間が閾値未満の場合は良好群に、治療期間が閾値以上、または患者が死亡した場合は不良群に分類される。分類結果は算出部49に出力される。
続いて、算出部49により、同一の群に属する比較症例の検査値に基づいて、群を代表する代表値が算出される(ステップS240)。また、良好群、不良群のそれぞれの比較症例の検査値の件数、平均値(代表値)、および分散を含む統計量データ69が算出される。このとき、CPの適用開始日が基準日として設定される。代表値は、第2配信要求に含まれる項目の検査値について、経過日毎の検査値の平均値が算出される。算出結果は判定部50および画面表示制御部51に出力される。
ステップS250において、統計量データ69に基づいて、t検定を用いて良好群と不良群の間に有意差があるか否かが判定される。この判定は第2配信要求に含まれる項目別に行われる。判定結果は画面表示制御部51に出力される。
画面表示制御部51では、診療対象患者の診療データと、各項目別の代表値のうちの判定部50で有意差があると判定された項目の代表値とに基づいて、グラフ比較表示画面21が生成される。グラフ比較表示画面21のXMLデータは、第2配信要求の出力元のクライアント端末10に出力される(ステップS260)。
クライアント端末10では、グラフ比較表示画面21のXMLデータがブラウザ制御部36で受け取られる(ステップS110)。ブラウザ制御部36によりXMLデータに基づきウェブブラウザ上に表示するグラフ比較表示画面21が再現され、GUI制御部35によりグラフ比較表示画面21がディスプレイ29Aに表示される(ステップS120)。
グラフ比較表示画面21には、良好群の代表値の時系列変化を示す折れ線グラフ92と、不良群の代表値の時系列変化を示す折れ線グラフ93と、診療対象患者の検査値の時系列変化を示す折れ線グラフ94とが、経過日「0」を基準として時間軸を揃えて重畳表示される。また、グラフ比較表示画面21には、正常範囲96が表示される。さらに、基準日である経過日「0」の以前の経過日(図15等では経過日「−1」)を始点として、経過日「0」の以降の経過日(図15等では経過日「16」)までの各グラフ92〜94が表示される。
グラフ比較表示画面21によれば、良好群の代表値、不良群の代表値、および診療対象患者の検査値の時系列変化が一目で分かる。このため、経験の浅い医師であっても、診療対象患者の病状悪化の兆候を簡単かつ確実に把握することができる。また、正常範囲96が表示されるので、診療対象患者の検査値等が正常範囲96とどれだけ隔たりがあるかも分かり、診療対象患者の今後の病状の判断の一助となる。さらに、基準日である経過日「0」を跨ぐ前後の期間の各グラフ92〜94が表示されるので、基準日以前からの患者の病状を確認することができ、治療効果の把握がしやすい。
算出部49によりCPの適用開始日が基準日として設定されるので、グラフ比較表示画面21の各グラフ92〜94を、時間軸を揃えて重畳表示することができる。これにより、各グラフ92〜94の比較がしやすくなり、診療対象患者の今後の病状の判断もしやすくなる。
図15に示すグラフ比較表示画面21では、良好群の代表値は、経過日「0」以降増加傾向にあるのに対して、不良群の代表値は、経過日「0」から経過日「6」にかけて、徐々に減少している。また、経過日「2」以降、診療対象患者の検査値が、不良群の代表値よりも下回っている。このため、診療対象患者の今後の病状が悪化するとの見通しを立てることができ、先回りして診療対象患者に適切な処置を施すことができる。治療成績の良化に貢献することができ、診療対象患者にとっても非常によい結果をもたらすことができる。
なお、図15の場合とは逆に、診療対象患者の検査値の時系列変化が良好群の代表値の時系列変化に沿っている、または上回っている場合は、診療対象患者の今後の病状が良化するとの見通しを立てることができ、現在の治療方針を続けてよいことが分かる。
判定部50で有意差があると判定された項目の検査値は、治療成績の良し悪しによる差異が明確であるため、その代表値は、診療対象患者の今後の病状を判断するための有用な指標となる。反対に判定部50で有意差がないと判定された項目の検査値は、治療成績の良し悪しによって差異が殆どないため、その代表値は、診療対象患者の今後の病状を判断するための有用な指標とはならない。
したがって、判定部50で有意差がないと判定された項目の代表値は、診療対象患者の検査値と比較可能に表示しても、診療対象患者の今後の病状の判断に寄与しないために煩わしいだけで意味がない。そこで本実施形態では、判定部50で項目別に良好群と不良群の間に有意差があるか否かを判定し、有意差があると判定された項目の代表値のみを診療対象患者の検査値と比較可能に表示している。こうすることで、診療対象患者の今後の病状の判断に寄与する有用な指標のみを厳選して医療スタッフに提供することができる。
上記第1実施形態では、代表値として平均値を算出しているが、平均値に代えて、中央値や最頻値を代表値として算出してもよい。
なお、例えば患者Aは基準日から10日後にALBの検査値が取得されているのに対して、患者Bは基準日から10日後はバリアンスの発生によりALBの検査値が取得されず、1日ずれた基準日から11日後にALBの検査値が取得されていた場合等、各患者の検査値の取得日が多少ずれることがある。こうした場合は、基準日からの経過日が例えば10日等と比較的長ければ、1日程度の取得日の違いは許容範囲であるとして、代表値を算出する際には取得日を同日として扱う。
上記第1実施形態では、t検定により判定を行っているが、本発明はこれに限定されない。単純に良好群、不良群それぞれの代表値の差分に基づいて判定を行ってもよい。例えば、良好群、不良群それぞれの代表値の差分が、予め設定された閾値未満の場合は有意差なし、閾値以上の場合は有意差ありと判定する。
上記第1実施形態では、算出した治療期間と閾値との比較により比較症例を分類しているが、閾値を用いることなく、算出した治療期間が相対的に長いか短いかで比較症例を分類することも可能である。具体的には、算出した治療期間の統計分析を行い、治療期間を横軸の階級、比較症例の個数を縦軸の度数にとった度数分布に基づいて分類を行う。例えば、治療期間が短いほうの全体の20%の比較症例を良好群に分類し、治療期間が長いほうの全体の20%の比較症例を不良群に分類する等、全体に占める割合で比較症例を分類する。この場合は予め有意差が見込めるように割合を決定することが好ましい。あるいは、治療期間の最頻値または中央値を境に、最頻値または中央値よりも治療期間が短いものを良好群、長いものを不良群に分類してもよい。この他にも、比較症例の分類方法はいかなる方法であってもよい。
算出部49で算出した代表値が、検査値の項目別に設定される正常範囲内であった場合は、判定部50で有意差ありと判定された場合でも、有意差なしと判定された場合と同じように扱い、当該項目の検査値については各グラフ92、93を表示しないことが好ましい。
上記第1実施形態では、第2配信要求を受け付けた後に、比較症例の取得、分類、代表値の算出、および有意差の判定を行っているが、第2配信要求を受け付ける前にこれらの処理を済ましておいてもよい。また、第2配信要求に含まれる項目ではなく、検査値の全項目について代表値の算出および有意差の判定を行ってもよい。この場合は第1配信要求を受け付けたときに代表値の算出および有意差の判定を行う。そして、診療データ表示画面20の表示欄77において、有意差があると判定された項目をカーソル80で選択可能に構成し、当該項目がカーソル80で選択されたときにグラフ比較表示画面21を表示する。
上記第1実施形態では、診療データ表示画面20とグラフ比較表示画面21を別々の表示画面とし、各グラフ92、93を診療データ表示画面20とは別に表示しているが、診療データ表示画面20に各グラフ92、93を表示してもよい。こうすると、他の項目の時系列変化も同じ表示画面で閲覧することができるため、他の項目との比較検討がしやすい。一方、判定部50で有意差があると判定された項目が比較的多い場合は、診療データ表示画面20に各グラフ92、93を表示するとグラフの本数が多くなって見辛くなるため、上記第1実施形態のように各グラフ92、93を診療データ表示画面20とは別に表示することが好ましい。診療データ表示画面20とグラフ比較表示画面21を別々の表示画面とする表示態様と、診療データ表示画面20に各グラフ92、93を表示する態様とを切り替え可能に構成してもよい。
あるいは、診療データ表示画面20に各グラフ92、93を表示する場合は、各グラフ92、93の表示、非表示を切り替える表示切替ボタンを診療データ表示画面20に設けておき、表示切替ボタンの操作に応じて各グラフ92、93の表示、非表示を切り替えてもよい。判定部50で有意差があると判定された項目が複数ある場合は、項目毎に各グラフ92、93の表示、非表示を切り替え可能に構成してもよい。
なお、代表値と診療対象患者の検査値の表示形態としては、上記第1実施形態の各グラフ92〜94の重畳表示に代えて、あるいは加えて、各グラフ92〜94を並列表示してもよい。この場合、各グラフ92〜94を同一の表示画面に並列表示してもよいし、別の表示画面に表示してもよい。また、折れ線グラフの形態ではなく、表の形態で代表値と診療対象患者の検査値を表示してもよい。要するに、代表値と診療対象患者の検査値が比較可能に表示されていればよい。
[第2実施形態]
上記第1実施形態では、診療対象患者とCPが同一の診療データを比較症例として取得しているが、本実施形態では、図18に示すように、診療対象患者と手術の内容が同一の診療データを比較症例として取得する。
図18では、診療対象患者の電子カルテの診察・治療記録に、手術の内容「胃全摘出手術」が記録されている場合を例示している。この場合、取得部47は、手術の内容「胃全摘出手術」を含む第2取得要求をカルテDBサーバ12に出力する。カルテDBサーバ12では、検索部57により、電子カルテDB14の各患者の電子カルテから、診察・治療記録に手術の内容「胃全摘出手術」が記録されている患者(患者ID「P007」、「P012」等の患者)の電子カルテの診療データが比較症例として検索される。
また、この場合は手術の実施日が算出部49により基準日として設定される。これにより、グラフ比較表示画面21の各グラフ92〜94は、図19に示すように手術の実施日を経過日「0」として時間軸を揃えて表示される。
手術の内容は、病種や病名を間接的に表す情報である。例えば手術の内容が図18の「胃全摘出手術」であった場合は、病名が胃癌であることが分かる。また、手術の内容が「肝右葉切除術」であった場合は、病名が肝臓癌であることが分かる。このため取得部47で取得された比較症例は、上記第1実施形態の場合と同様に、少なくとも病種や病名が診療対象患者と一致する患者の診療データである。病種や病名が同じであれば、検査値の項目も比較症例と診療対象患者の診療データとでおおよそ一致する。したがって、診療対象患者の診療データとの比較がしやすい比較症例を取得することができる。
なお、手術の内容としては、開腹手術、内視鏡的粘膜切除術(EMR;Endoscopic Mucosal Resection)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD;Endoscopic Submucosal Dissection)、腹腔鏡・内視鏡合同手術(LECS;Laparoscopy and Endoscopy Cooperative Surgery)といった手技の内容を含んでいてもよい。
[第3実施形態]
本実施形態では、診療対象患者と病名および治療薬が同一の診療データを比較症例として取得する。この場合、診療支援サーバ11のストレージデバイス25Bには、図20に示す病名・治療薬テーブル100が記録される。
図20において、病名・治療薬テーブル100は、病名を病種毎に分類し、かつ病名毎の治療薬をまとめたものである。図20では、肺炎の病種を「定型肺炎」と「非定型肺炎」に分類し、病名「肺炎球菌性肺炎」、「肺炎桿菌性肺炎」、「黄色ブドウ球菌性肺炎」を「定型肺炎」に、病名「緑膿菌性肺炎」、「マイコプラズマ肺炎」、「クラミジア肺炎」を「非定型肺炎」にそれぞれ分類した例を示している。なお、病名・治療薬テーブル100には、図示する肺炎以外の疾患についても、病種によって分類された病名とその治療薬が登録されている。例えば疾患が肝炎の場合は、病種が「ウイルス性肝炎」と「その他の肝炎」に分類され、「A型肝炎」、「B型肝炎」等が「ウイルス性肝炎」に、「アルコール性肝炎」、「自己免疫性肝炎」等が「その他の肝炎」に分類されている。
「定型肺炎」のうち、「肺炎球菌性肺炎」と「肺炎桿菌性肺炎」は、治療薬が共通している。また、「非定型肺炎」の「マイコプラズマ肺炎」と「クラミジア肺炎」も治療薬が共通している。治療薬「ペニシリン系A、B、C、・・・」や「マクロライド系P、Q、R、・・・」等は、例えば製薬会社が異なるだけで成分および薬効はほぼ同等である。取得部47は、こうした病種および治療薬が共通している病名を同一種の病名と見なし、かつ治療薬も同一種と見なす。
図21に示すように、診療対象患者の電子カルテの診察・治療記録に、病名「マイコプラズマ肺炎」、および治療薬「マクロライド系P」が記録されている場合、取得部47は、病名・治療薬テーブル100を参照して、病名「マイコプラズマ肺炎」、および治療薬「マクロライド系P」、並びに病名「マイコプラズマ肺炎」、および治療薬「マクロライド系P」と同一種の病名(「クラミジア肺炎」)、および治療薬(「テトラサイクリン系P」、「マクロライド系Q」、「マクロライド系R」等)を含む第2取得要求をカルテDBサーバ12に出力する。
カルテDBサーバ12では、検索部57により、診察・治療記録に病名「マイコプラズマ肺炎」またはこれと同一種の病名の「クラミジア肺炎」、および治療薬「マクロライド系P」またはこれと同一種の治療薬「テトラサイクリン系P」、「マクロライド系Q」、「マクロライド系R」等が記録されている患者(患者ID「P003」、「P009」等の患者)の電子カルテの診療データが比較症例として検索される。すなわち、診療対象患者と病名および治療薬が同一の診療データとは、診療対象患者と病名および治療薬が完全一致する診療データと、診療対象患者と病名および治療薬が同一種の診療データとを含んでいる。
また、この場合は治療薬の投与開始日が算出部49により基準日として設定される。これにより、グラフ比較表示画面21の各グラフ92〜94は、図22に示すように治療薬の投与開始日を経過日「0」として時間軸を揃えて表示される。
この場合の比較症例は、少なくとも病名および治療薬が診療対象患者と一致する患者または同一種の患者の診療データである。病名が一致または同一種であれば、検査値の項目も比較症例と診療対象患者の診療データとでおおよそ一致する。また、治療薬が一致または同一種であれば、治療効果が一致する。したがって、診療対象患者の診療データとの比較がしやすい比較症例を取得することができる。
なお、病名・治療薬テーブル100をカルテDBサーバ12のストレージデバイス25Cに記録しておいてもよい。この場合、第2取得要求には診療対象患者の病名および治療薬のみが含まれる。検索部57は、病名・治療薬テーブル100から、診療対象患者の病名および治療薬と同一種の病名および治療薬を読み出し、第2取得要求の診療対象患者の病名および治療薬、並びに病名・治療薬テーブル100から読み出した診療対象患者の病名および治療薬と同一種の病名および治療薬が診察・治療記録に記録された患者の電子カルテの診療データを比較症例として検索する。
診療対象患者とCPが同一、かつ手術の内容が同一の診療データを比較症例として取得する等、上記各実施形態の比較症例の取得方法を複合して用いてもよい。
[第4実施形態]
上記各実施形態では、診療対象患者とCPが同一の診療データ(第1実施形態)、診療対象患者と手術の内容が同一の診療データ(第2実施形態)、または診療対象患者と病名および治療薬が同一の診療データ(第3実施形態)を比較症例として取得する例を示したが、本発明はこれに限定されない。
本実施形態では、検索部57は、診療対象患者の検査値と、診療対象患者以外の患者の検査値との類似度を算出する。類似度は、CPの適用開始日、手術の実施日、治療薬の投与開始日といった基準日以前の取得日における、診療対象患者の検査値と診療対象患者以外の患者の検査値に基づいて算出する。
類似度は、例えば、診療対象患者の基準日以前の取得日の各項目の検査値XI(I=1、2、・・・、M、Mは検査値の項目数)と診療対象患者以外の患者の基準日以前の取得日の各項目の検査値YIの差分|XI−YI|をそれぞれとり、各項目の検査値の差分に適当な重み付け係数WIを掛けたものの総和(ΣWI|XI−YI|)である(図23参照)。こうして算出した類似度は、XI、YIをそれぞれ要素とする2つのM次元ベクトルのM次元ベクトル空間における距離を表している。なお、重み付け係数WIは、病名等に応じて予め定められている。
診療対象患者の検査値と診療対象患者以外の患者の検査値の差分|XI−YI|が小さい程、類似度は小さくなり、診療対象患者以外の患者の診療データは診療対象患者の診療データとの類似性が高いといえる。一方、|XI−YI|が大きい程、類似度は大きくなり、診療対象患者以外の患者の診療データは診療対象患者の診療データとの類似性が低いといえる。
検索部57は、算出した類似度と予め設定された閾値とを比較する。そして、類似度が閾値未満の場合、診療対象患者以外の患者の診療データが診療対象患者の診療データと類似性があると判定し、類似度が閾値以上の場合、診療対象患者以外の患者の診療データが診療対象患者の診療データと類似性がないと判定する。検索部57は、類似性があると判定した診療データを比較症例とする。
図23では、患者ID「P200」の診療対象患者の診療データと、患者ID「P035」の診療対象患者以外の患者の診療データとの類似度を算出してこれらの類似性を判定する様子を示している。基準日以前の取得日の検査値XI、YIとして、実線の楕円で囲んだ基準日「2015.02.03」、「2012.09.14」の前日の検査値「5.8」および「5.5」がピックアップされている。なお、図23ではALBの検査値のみを示しているが、他の項目の検査値についても、基準日の前日の検査値がピックアップされて類似度の算出に用いられる。
診療対象患者の検査値と診療対象患者以外の患者の検査値の類似度に応じて、比較症例とする診療データを決定するので、より診療対象患者の診療データに類似した診療データを比較症例とすることができる。
上記第1〜第3実施形態では、検査値の類似性を考慮していないので、診療対象患者の診療データとの類似性が低い診療データが比較症例として取得される場合がある。そうすると、診療対象患者の検査値と、算出部49で算出される代表値とに乖離が生じ、各グラフ92〜94の比較がしにくくなる。
対して本実施形態では、より診療対象患者の診療データに類似した診療データを比較症例とすることができるため、診療対象患者の検査値と、算出部49で算出される代表値とに乖離が生じることが防がれ、各グラフ92〜94の比較がしやすくなる。
ただし、この場合は、電子カルテDB14に登録された診療対象患者以外の患者の診療データの全てについて類似度を算出する必要があるため、診療対象患者以外の患者の診療データが比較的多い場合は比較症例の検索および取得に時間が掛かる。このため、まずは上記第1〜第3実施形態のいずれかの方法で比較症例を検索した後、検索した比較症例をさらに絞り込むために本実施形態の方法を適用してもよい。この場合は類似度の算出や類似性の判定を取得部47が担ってもよい。
なお、診療データに健康管理情報が含まれている場合は、この健康管理情報の検査値を類似度の算出に使用してもよい。
また、患者の年齢、性別、居住地域等の属性に応じて、比較症例として検索する診療データを決定したり、検索した比較症例を絞り込んでもよい。診療データに遺伝子検査情報が含まれている場合は、比較症例の検索や絞り込みに遺伝子検査情報を利用してもよい。
[第5実施形態]
上記第1実施形態では、治療期間の長短に応じて比較症例を分類しているが、本発明はこれに限定されない。CPを採用した患者の場合は、バリアンスによって治療成績の良し悪しを判断することができる。そこで本実施形態では、バリアンスに応じて比較症例を分類する。
より具体的には、本実施形態の分類部48は、診察・治療記録にバリアンスが記録されていない比較症例、および診察・治療記録に正のバリアンスが記録されている比較症例を良好群に分類する。一方、診察・治療記録に負のバリアンスが記録されている比較症例、および患者が死亡した比較症例を不良群に分類する。
ここで、正のバリアンスは、治療計画で想定していたよりも患者の回復が順調である場合に発生したバリアンスである。負のバリアンスは、その逆に治療計画で想定していたよりも患者の回復が思わしくない場合に発生したバリアンスである。正のバリアンスには、例えば、治療計画が予定よりも早まった場合や、治療計画の一部を不必要と判断して省略した場合がある。負のバリアンスには、例えば、治療計画が予定よりも延期された場合や、合併症が発症して当初の治療計画にはない治療計画を追加した場合がある。
図24には、患者ID「P006」、「P018」、「P021」、「P036」等の比較症例を、良好群、不良群に分類する様子を示している。この場合、分類部48は、患者ID「P018」の比較症例の診察・治療記録にバリアンスが記録されていないので、この比較症例を良好群に分類する。また、患者ID「P036」の比較症例の診察・治療記録に「投与期間切り上げ」の正のバリアンスが記録されているので、この比較症例を良好群に分類する。一方、分類部48は、患者ID「P006」、「P021」の比較症例の診察・治療記録にそれぞれ「食事制限延長」、「血液検査追加」の負のバリアンスが記録されているので、これらの比較症例を不良群に分類する。
なお、例えば正のバリアンスの発生回数から負のバリアンスの発生回数を除算した結果が2以上の場合は良好群に分類し、2未満の場合は不良群に分類する等、正のバリアンスと負のバリアンスの発生回数に応じて比較症例を分類してもよい。また、単純に負のバリアンスの発生有無で比較症例を分類してもよい。
上記第1実施形態の治療期間の長短や上記第5実施形態のバリアンスに応じた分類方法に代えて、例えば体温の検査値に着目して、体温の検査値がある一定期間37.5℃以上であった場合は不良群に分類する等、特定の項目の検査値が異常値か否かに応じて比較症例を分類してもよい。
[第6実施形態]
図15では、基準日から6日経過したときのグラフ比較表示画面21を例示している。この場合は良好群の代表値と診療対象患者の検査値とに明らかな差異が生じていて、診療対象患者の今後の病状が悪化するとの見通しを立てることができるため、グラフ比較表示画面21を表示することには意味がある。
しかしながら、経過日「−1」から経過日「2」までは、良好群の代表値と診療対象患者の検査値とに明らかな差異が生じているとはいえず、この経過日「−1」から経過日「2」の間にグラフ比較表示画面21を表示しても、診療対象患者の今後の病状の見通しが立てにくい。したがって、良好群の代表値と診療対象患者の検査値とに明らかな差異が生じていない間は、グラフ比較表示画面21を表示することにはあまり意味がない。
そこで本実施形態では、分類部48で治療成績が最も良好な群である良好群に分類された比較症例の検査値で規定される規定範囲内に、診療対象患者の検査値がある間は代表値を表示させず、診療対象患者の検査値が規定範囲外となった場合に代表値を表示する。
具体的には図25の算出結果110に示すように、算出部49は、良好群の中間処理データ67Aに基づいて良好群の比較症例の各経過日の検査値の平均値に加えて標準偏差を算出する。画面表示制御部51は、算出結果110に基づいて中間処理データ111を作成する。中間処理データ111は、経過日毎の規定範囲を定めたものである。規定範囲には、良好群の比較症例の各経過日の平均値±標準偏差で表される数値範囲が定められる。
画面表示制御部51は、中間処理データ111に基づいて、グラフ比較表示画面21を生成するか否かを決定する。具体的には、画面表示制御部51は、取得部47からの診療対象患者の検査値が、規定範囲内にあるか否かを判定する。画面表示制御部51は、規定範囲内に診療対象患者の検査値がある間はグラフ比較表示画面21を生成せず、診療対象患者の検査値が規定範囲外となった場合に、はじめてグラフ比較表示画面21を生成する。
図25では、患者ID「P040」の診療対象患者の診療データのALBの検査値が、基準日「2015.03.11」(経過日「0」)の前日「2015.03.10」(経過日「−1」)から「5.7、5.4、4.2、3.0、・・・」と推移していた場合を例示している。
経過日「−1」に該当する「2015.03.10」から経過日「1」に該当する「2015.03.12」までは、診療対象患者のALBの検査値が中間処理データ111に示す規定範囲内にあり、経過日「2」に該当する「2015.03.13」になってはじめて、診療対象患者のALBの検査値が規定範囲外になっている。
この場合、「2015.03.10」から「2015.03.12」までの間は、たとえ判定部50でALBの検査値が有意差ありと判定されたとしても、画面表示制御部51はグラフ比較表示画面21を生成しない。したがってこの間はクライアント端末10のディスプレイ29Aにグラフ比較表示画面21は表示されない。一方、「2015.03.13」に第2配信要求を受け付けた場合は、画面表示制御部51はグラフ比較表示画面21を生成する。したがって「2015.03.13」になってはじめてクライアント端末10のディスプレイ29Aにグラフ比較表示画面21が表示される。
このように、良好群の代表値と診療対象患者の検査値とに明らかな差異が生じていて、診療対象患者の今後の病状が悪化するとの見通しを立てることができるようになってからグラフ比較表示画面21を表示するので、診療対象患者の今後の病状の見通しが立てにくいグラフ比較表示画面21が表示されて、医療スタッフが戸惑いや煩わしさを感じることがない。
なお、規定範囲は、上記で例示した平均値±標準偏差で表される数値範囲に代えて、平均値±標準偏差×2、あるいは平均値±標準偏差×3で表される数値範囲としてもよい。また、平均値±1等、標準偏差に基づかない数値範囲を規定範囲としてもよい。
[第7実施形態]
上記各実施形態では、診療対象患者と比較症例の検査値自体を用いて代表値を算出したり各グラフ92〜94を表示したりしているが、各患者の検査値には患者の個体差による差異があるため、検査値自体では適当な代表値が算出できなかったり、単純に各グラフ92〜94の比較ができなかったりするおそれがある。
そこで本実施形態では、診療対象患者と比較症例の検査値を基準値で規格化する。具体的には、算出部49により、診療対象患者と比較症例の検査値を、基準値からの変化量に変換して規格化する。
図26は、経過日「−1」の検査値を基準値として、診療対象患者のALBの検査値を算出部49で規格化する様子を示している。診療対象患者のALBの検査値は、図25の場合と同じく、患者ID「P040」の患者のものであり、「5.7、5.4、4.2、3.0、・・・」と推移している。算出部49は、算出結果120に示すように、この「5.7、5.4、4.2、3.0、・・・」の検査値を、経過日「−1」の検査値「5.7」からの変化量(差分)「0、−0.3、−1.5、−2.7、・・・」に変換する。
図27は、図26の場合と同様に経過日「−1」の検査値を基準値として、良好群の比較症例のALBの検査値を算出部49で規格化する様子を示している。良好群の比較症例のALBの検査値は、図11の場合と同じである。また、良好群に属する各々の比較症例の経過日毎のALBの検査値をまとめた中間処理データ67Aの内容も、図11の場合と同じである。
算出部49は、中間処理データ67Aに基づいて、さらに中間処理データ121を作成する。中間処理データ121は、良好群に属する各々の比較症例の経過日毎のALBの検査値を、経過日「−1」の検査値からの変化量に変換したものである。例えば患者ID「P005」の患者のALBの検査値は、中間処理データ67Aより、「5.2、4.2、3.8、4.5、・・・」と推移するが、これらが経過日「−1」の検査値「5.2」からの変化量「0、−1.0、−1.4、−0.7、・・・」に変換される。なお、図示は省略するが、不良群の比較症例のALBの検査値も変化量に変換される。
この場合、算出部49は、算出結果122に示すように、検査値自体に基づく中間処理データ67Aではなく、変化量に基づく中間処理データ121を元に代表値である平均値を算出する。
こうして算出された診療対象患者の検査値の変化量と比較症例の検査値の変化量は、基準値とした経過日「−1」が「0」で揃う。このため図28に示すように、グラフ比較表示画面21には、経過日「−1」が「0」で揃った3つの折れ線グラフ130、131、132が表示される。一点鎖線で示す折れ線グラフ130は、良好群の代表値の基準値からの変化量の時系列変化を示す。破線で示す折れ線グラフ131は、不良群の代表値の基準値からの変化量の時系列変化を示す。実線および四角の点で示す折れ線グラフ132は、診療対象患者の検査値の基準値からの変化量の時系列変化を示す。なお、この場合のグラフ表示領域91の縦軸には変化量が割り当てられ、また、正常範囲96は表示されない。
診療対象患者の検査値と比較症例の検査値を基準値で規格化するので、患者の個体差による検査値の差異を吸収することができる。また、各グラフ130〜132の起点が基準値で揃うので、各グラフ130〜132の比較がよりしやすくなる。
なお、経過日「−1」の検査値に代えて、経過日「0」の検査値を基準値としてもよい。診療データに健康管理情報が含まれている場合は、この健康管理情報の検査値を基準値としてもよい。また、グラフ比較表示画面21において、図15に示す検査値自体に基づく各グラフ92〜94と、図28に示す変化量に基づく各グラフ130〜132を切り替え表示してもよい。
[第8実施形態]
図29に示すように、本実施形態では、分類部48において、診療データに登録された治療薬の種類および投与量別に、良好群および不良群をさらに分類する。図29では治療薬A、投与量:100mgの場合と、治療薬B、投与量:150mgの場合とで、良好群および不良群を分類した例を示している。なお、治療薬A、投与量:100mgの場合と治療薬A、投与量:200mgの場合のように、同一の治療薬について投与量別に良好群および不良群を分類してもよい。
この場合、グラフ比較表示画面21には、図30に示すように計5つの折れ線グラフ140、141、142、143、144が表示される。三角の点で示す折れ線グラフ140、141は治療薬A、投与量:100mgの場合、丸の点で示す折れ線グラフ142、143は治療薬B、投与量:150mgの場合であり、一点鎖線の折れ線グラフ140、142が良好群、破線の折れ線グラフ141、143が不良群のそれぞれの代表値の基準値からの変化量の時系列変化を示す。実線および四角の点で示す折れ線グラフ144は、診療対象患者の検査値の基準値からの変化量の時系列変化を示す。
図30からは、治療薬A、投与量:100mgの場合よりも、治療薬B、投与量:150mgの場合のほうが、良好群、不良群いずれも変化量(検査値)が高いレベルを維持していることが分かる。このように、治療薬の種類および投与量別に良好群および不良群を分類し、治療薬の種類および投与量別のグラフ140〜143を表示すれば、どの治療薬をどれだけ投与するかを医療スタッフが決定する際に非常に役立つ。
なお、図30では、基準日である経過日「0」に第2配信要求を出力してグラフ比較表示画面21を表示した場合を例示している。したがって、診療対象患者の検査値の基準値からの変化量の時系列変化を示す折れ線グラフ144は、経過日「0」以降は検査値が存在しないため途切れている。このように、本発明は、治療開始日である基準日から数日経過した場合だけでなく、基準日にグラフ比較表示画面21を表示して、基準日以降の治療方針を決定することも可能である。
上記各実施形態では、比較症例を分類する群を良好群、不良群の2つの群としたが、比較症例を分類する群は2つ以上あってもよい。例えば良好群、不良群、中間群の3つの群や、最良好群、次点良好群、次点不良群、最不良群の4つの群に比較症例を分類してもよい。
比較症例を分類する群を2つ以上とした場合、判定部50は、2つ以上の群のそれぞれの間に有意差があるか否かを判定する。画面表示制御部51は、全ての群の組み合わせで有意差があると判定された場合、グラフ比較表示画面21を生成する。なお、比較症例を分類する群を良好群、不良群、中間群の3つの群とした場合は、中間群は診療対象患者の今後の病状の判断にあまり寄与しないので、中間群については代表値を算出せず、診療対象患者の検査値との比較表示もしなくてもよい。
なお、検査値としては、上記各実施形態で例示したバイタルサインの検査値や検体検査の検査値に限らない。CT(Computed tomography)画像やMRI(Magnetic Resonance Imaging)画像、単純X線画像といった検査画像を画像解析して得られた、検査画像内の病変の特徴を表す計測値を検査値に含めてもよい。計測値としては、例えば病変の領域の画素値の平均、分散、最大、最小値といった画素値に関するものや、病変の領域の位置、領域の輪郭の円形度といった形状に関するもの、病変の領域の半径、面積、体積といったサイズに関するものが挙げられる。この場合、診療データ表示画面20に、計測値の時系列変化を示すグラフとともに検査画像のサムネイルを表示してもよい。
本発明の診療支援装置に相当する診療支援サーバ11を構成するコンピュータのハードウェア構成は種々の変形が可能である。例えば、診療支援サーバ11を、処理能力や信頼性の向上を目的として、ハードウェアとして分離された複数台のサーバコンピュータで構成することも可能である。具体的には、受付部46および取得部47の機能と、分類部48、算出部49、判定部50、および画面表示制御部51の機能とを、2台のサーバコンピュータに分散して担わせる。この場合は2台のサーバコンピュータで診療支援システムを構成する。あるいは、カルテDBサーバ12を廃して診療支援サーバ11に電子カルテDB14を設けて診療支援サーバ11とカルテDBサーバ12を統合し、診療支援サーバ11のCPU27Bに検索部57の機能を担わせたりしてもよい。
また、上記第1実施形態では、診療支援サーバ11で各表示画面20、21を生成し、診療支援サーバ11からの各表示画面20、21のXMLデータに基づいて、クライアント端末10側で各表示画面20、21を再現してディスプレイ29Aに表示する態様を例示したが、診療支援サーバ11から各表示画面20、21の生成の元となる診療対象患者の診療データおよび代表値をクライアント端末10で受け取り、クライアント端末10側で各表示画面20、21を生成してもよい。この場合、画面表示制御部51は、クライアント端末10のCPU27Aに構築される。この場合はクライアント端末10と診療支援サーバ11で診療支援システムを構成する。
さらに、各機能部46〜51を、クライアント端末10のCPU27Aに構築し、クライアント端末10を診療支援装置として稼働させてもよい。この場合、受付部46は、GUI制御部35から各種配信指示を受け付ける。また、画面表示制御部51は、生成した各表示画面20、21をGUI制御部35に出力する。
このように、コンピュータのハードウェア構成は、処理能力、安全性、信頼性等の要求される性能に応じて適宜変更することができる。さらに、ハードウェアに限らず、診療支援プログラム45、DBプログラム55等のアプリケーションプログラムについても、安全性や信頼性の確保を目的として、二重化したり、あるいは、複数のストレージデバイスに分散して格納することももちろん可能である。
上記各実施形態では、1つの医療施設に構築された診療支援システム2を例示し、診療支援サーバ11を1つの医療施設内で利用する形態で説明したが、診療支援サーバ11を複数の医療施設が利用可能な形態としてもよい。
上記各実施形態では、診療支援サーバ11は、1つの医療施設内に設置されるクライアント端末10がLAN等のネットワーク13を介して通信可能に接続され、クライアント端末10からの各種要求に応じた各種機能を提供する形態である。これを複数の医療施設で利用可能とするためには、診療支援サーバ11を、例えば、インターネットや公衆通信網等のWAN(Wide Area Network)を介して、複数の医療施設に設置される各クライアント端末10と通信可能に接続する。そして、複数の医療施設の各クライアント端末10からの要求を、WANを介して診療支援サーバ11で受け付けて、各クライアント端末10に対して各種機能を提供する。なお、WANを利用する場合には、情報セキュリティを考慮して、VPN(Virtual Private Network)を構築したり、HTTPS(Hypertext Transfer Protocol Secure)等のセキュリティレベルの高い通信プロトコルを使用することが好ましい。
この場合の診療支援サーバ11の設置場所および運営主体は、例えば医療施設とは別の会社が運営するデータセンタでもよいし、複数の医療施設のうちの1つでもよい。
上記各実施形態では、有意差の判定結果を、代表値を診療対象患者の検査値と比較可能に表示するか否かの選別にのみ用いているが、有意差の判定結果自体を医療スタッフに提供してもよい。有意差の判定結果の医療スタッフへの提供形態としては、上記第1実施形態で例示したウェブによる各表示画面20、21の配信に限らない。例えば、有意差の判定結果を記録したファイルを格納するDBを設け、このDBへのアクセス権限を医療スタッフに与えて、DBからファイルを読み出させる形態でもよい。FTPS(File Transfer Protocol over SSL/TLS)等の周知のファイル転送プロトコルを用いて、ファイルをクライアント端末12に自動的に送信する形態でもよい。ファイル転送プロトコルの代わりに電子メールを利用してもよい。また、有意差の判定結果を印刷した紙資料を出力してもよい。
本発明は、上述の種々の実施形態や種々の変形例を適宜組み合わせることも可能である。また、上記各実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の構成を採用し得ることはもちろんである。さらに、本発明は、プログラムに加えて、プログラムを記憶する記憶媒体にも及ぶ。
2 診療支援システム
10 クライアント端末
11 診療支援サーバ(診療支援装置)
14 電子カルテDB(症例データベース)
21 グラフ比較表示画面
27 CPU
45 診療支援プログラム(作動プログラム)
47 取得部
48 分類部
49 算出部
50 判定部
51 画面表示制御部
57 検索部
92〜94、130〜132、140〜144 折れ線グラフ

Claims (21)

  1. 時系列に登録された検査値を含む診療データが患者毎に登録された症例データベースから、診療対象患者の比較対象の前記診療データである比較症例を取得する取得部と、
    前記比較症例を治療成績に応じて複数の群に分類する分類部と、
    同一の前記群に属する前記比較症例の前記検査値に基づいて、前記群を代表する代表値を算出する算出部と、
    複数の前記群の間に有意差があるか否かを判定する判定部と、
    前記判定部で有意差があると判定された場合、前記代表値と前記診療対象患者の前記検査値とを表示画面に比較可能に表示する制御を行う画面表示制御部とを備えることを特徴とする診療支援装置。
  2. 前記画面表示制御部は、前記代表値の時系列変化を示すグラフと前記診療対象患者の前記検査値の時系列変化を示すグラフ、または前記代表値の基準値からの変化量の時系列変化を示すグラフと前記診療対象患者の前記検査値の基準値からの変化量の時系列変化を示すグラフを、前記表示画面に比較可能に表示させることを特徴とする請求項1に記載の診療支援装置。
  3. 時間軸を揃えて前記グラフを重畳表示するための基準日が設定されることを特徴とする請求項2に記載の診療支援装置。
  4. 前記画面表示制御部は、前記基準日を跨ぐ前後の期間の前記グラフを重畳表示することを特徴とする請求項3に記載の診療支援装置。
  5. 前記検査値は複数の項目を有し、
    前記算出部は、複数の前記項目別に前記代表値を算出し、
    前記判定部は、複数の前記項目別に判定を行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の診療支援装置。
  6. 前記診療データは患者の治療計画をまとめたクリニカルパスを含み、
    前記比較症例は、前記診療対象患者と前記クリニカルパスが同一の前記診療データであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の診療支援装置。
  7. 請求項3または4を引用する請求項6に記載の診療支援装置において、
    前記クリニカルパスの適用開始日が前記基準日として設定されることを特徴とする診療支援装置。
  8. 前記診療データは患者に施した手術の内容を含み、
    前記比較症例は、前記診療対象患者と前記手術の内容が同一の前記診療データであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の診療支援装置。
  9. 請求項3または4を引用する請求項8に記載の診療支援装置において、
    前記手術の実施日が前記基準日として設定されることを特徴とする診療支援装置。
  10. 前記診療データは患者の病名および患者に投与した治療薬を含み、
    前記比較症例は、前記診療対象患者と前記病名および前記治療薬が同一の前記診療データであることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の診療支援装置。
  11. 請求項3または4を引用する請求項10に記載の診療支援装置において、
    前記治療薬の投与開始日が前記基準日として設定されることを特徴とする診療支援装置。
  12. 前記比較症例は、前記診療対象患者の前記検査値との類似度に応じて決定されることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の診療支援装置。
  13. 前記分類部は、治療期間の長短に応じて前記比較症例を分類することを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載の診療支援装置。
  14. 前記診療データは患者の治療計画をまとめたクリニカルパスおよび前記治療計画に沿わないバリアンスを含み、
    前記分類部は、前記バリアンスに応じて前記比較症例を分類することを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載の診療支援装置。
  15. 前記判定部は、複数の前記群のそれぞれの前記比較症例の前記検査値の統計量に基づいて判定を行うことを特徴とする請求項1ないし14のいずれか1項に記載の診療支援装置。
  16. 前記統計量は、前記比較症例の前記検査値の件数、平均値、および分散であり、
    前記判定部は、複数の前記群のそれぞれの前記平均値に有意差があるか否かを検定するt検定により判定を行うことを特徴とする請求項15に記載の診療支援装置。
  17. 前記画面表示制御部は、前記分類部で前記治療成績が最も良好な前記群に分類された前記比較症例の前記検査値で規定される規定範囲内に、前記診療対象患者の前記検査値がある間は前記代表値を表示させず、
    前記診療対象患者の前記検査値が前記規定範囲外となった場合に前記代表値を表示させることを特徴とする請求項1ないし16のいずれか1項に記載の診療支援装置。
  18. 前記画面表示制御部は、前記表示画面に前記検査値の正常範囲を表示させることを特徴とする請求項1ないし17のいずれか1項に記載の診療支援装置。
  19. 時系列に登録された検査値を含む診療データが患者毎に登録された症例データベースから、診療対象患者の比較対象の前記診療データである比較症例を取得する取得ステップと、
    前記比較症例を治療成績に応じて複数の群に分類する分類ステップと、
    同一の前記群に属する前記比較症例の前記検査値に基づいて、前記群を代表する代表値を算出する算出ステップと、
    複数の前記群の間に有意差があるか否かを判定する判定ステップと、
    前記判定ステップで有意差があると判定された場合、前記代表値と前記診療対象患者の前記検査値とを表示画面に比較可能に表示する制御を行う画面表示制御ステップとを備えることを特徴とする診療支援装置の作動方法。
  20. 時系列に登録された検査値を含む診療データが患者毎に登録された症例データベースから、診療対象患者の比較対象の前記診療データである比較症例を取得する取得機能と、
    前記比較症例を治療成績に応じて複数の群に分類する分類機能と、
    同一の前記群に属する前記比較症例の前記検査値に基づいて、前記群を代表する代表値を算出する算出機能と、
    複数の前記群の間に有意差があるか否かを判定する判定機能と、
    前記判定機能で有意差があると判定された場合、前記代表値と前記診療対象患者の前記検査値とを表示画面に比較可能に表示する制御を行う画面表示制御機能とを、コンピュータに実行させることを特徴とする診療支援装置の作動プログラム。
  21. 診療支援装置を備える診療支援システムにおいて、
    時系列に登録された検査値を含む診療データが患者毎に登録された症例データベースから、診療対象患者の比較対象の前記診療データである比較症例を取得する取得部と、
    前記比較症例を治療成績に応じて複数の群に分類する分類部と、
    同一の前記群に属する前記比較症例の前記検査値に基づいて、前記群を代表する代表値を算出する算出部と、
    複数の前記群の間に有意差があるか否かを判定する判定部と、
    前記判定部で有意差があると判定された場合、前記代表値と前記診療対象患者の前記検査値とを表示画面に比較可能に表示する制御を行う画面表示制御部とを備えることを特徴とする診療支援システム。
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