JP2016183359A - Fe系金属板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】フェライト生成元素が合金化されて濃化した領域を有するFe系金属板であって、前記Fe系金属が、質量%で、Si:1.5〜3.5%、及び、Al:0.5〜3.0%の少なくとも一方と、Mn:2.5〜6.5%、及び、Ni:2.5〜6.5%以下の少なくとも一方とを含有するものであり、前記フェライト生成元素が濃化した領域のうちの少なくとも表面から0.2μmの領域あるいは全部の領域がα−Fe単相の組成で、その内側の領域がα−γ変態を生じ得る組成であり、前記フェライト生成元素が濃化した領域のうち少なくとも表面から0.2μmの領域あるいは全部が粗大粒組織の領域であり、前記粗大粒組織の領域における{200}面集積度が30〜99%であり、前記粗大粒組織の領域の内側の領域が細粒組織であり、該細粒組織の厚さがFe系金属板の板厚をtとすると、1/10t以上7/10t以下であることを特徴とするFe系金属板。
【選択図】図1
Description
(a)α−γ変態系のFe系金属よりなる母材金属板の片面あるいは両面にフェライト生成元素を付着させる工程と、
(b)該母材金属板を、室温から母材金属板のA3点まで加熱して母材金属板内にフェライト生成元素を拡散させ、一部を母材に合金化させるとともに、合金化された領域でのα−Fe相の{200}面集積度を25%以上50%以下とし、かつ、{222}面集積度を40%以下とする工程と、
(c)母材金属板をA3点以上の温度に加熱、保持して、フェライト生成元素と合金化されたα−Fe相の面集積度について、{200}面集積度を増加させるとともに{222}面集積度を低下させる工程と、
(d)母材金属板をA3点未満の温度へ冷却し、合金化していない領域のγ−Fe相がα−Fe相へ変態する際に、該α−Fe相の{200}面集積度を高めて、{200}面集積度が 30%以上99%以下となり、かつ、{222}面集積度が30%以下となるようにする工程とを有することを特徴とする高い{200}面集積度を有するFe系金属板の製造方法。
(1)フェライト生成元素が合金化されて濃化した領域を有するFe系金属板であって、
前記Fe系金属が、質量%で、Si:1.500%以上3.500%以下、及び、Al:0.500%以上3.000%以下の少なくとも一方と、Mn:2.500%以上6.500%以下、及び、Ni:2.500%以上6.500%以下の少なくとも一方とを含有するものであり、
前記フェライト生成元素が濃化した領域のうちの少なくとも表面から0.2μmの領域あるいは全部の領域がα−Fe単相の組成で、その内側の領域がα−γ変態を生じ得る組成であり、
前記フェライト生成元素が濃化した領域のうち少なくとも表面から0.2μmの領域あるいは全部が粗大粒組織の領域であり、
前記粗大粒組織の領域における{200}面集積度が30%以上99%以下であり、
前記粗大粒組織の領域の内側の領域が細粒組織であり、該細粒組織の厚さがFe系金属板の板厚をtとすると、1/10t以上7/10t以下であることを特徴とするFe系金属板。
(2)前記フェライト生成元素が濃化した領域のうち少なくとも表面から0.2μmの領域あるいは全部の領域を占めている結晶粒の表面が、板の表面を形成し、さらに、当該結晶粒の板内の粒界が前記細粒組織との境界となっていることを特徴とする前記(1)に記載のFe系金属板。
(3)前記フェライト生成元素が濃化した領域における{100}<011>のX線ランダム強度比が50以上400以下であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のFe系金属板。
最初に、本発明を規定する個々の条件の限定理由及び本発明を実施するに当たり好ましい条件について説明する。
本発明のFe系金属板は、Fe系金属板全体に対する割合で、Si:1.500%以上3.500%以下、及び、Al:0.500%以上3.000%以下の少なくとも一方と、Mn:2.500%以上6.500%以下、及び、Ni:2.500%以上6.500%以下の少なくとも一方とを含有し、更に、フェライト生成元素を含有するものである。
Siの含有率は1.500%以上3.500%以下とする。1.500%未満であると、細粒組織を得ることができない。3.500%超であると、α単相成分となり、集合組織を{100}に揃えることが出来ない。2.000%以上3.500%以下が好ましい。
Alの含有率は0.500%以上3.000%以下とする。0.500%未満であると、細粒組織を得ることができない。3.000%超であると、磁束密度が低下する。0.500%以上2.500%以下が好ましい。
Mnの含有率は2.500%以上6.500%以下とする。2.500%未満であると、細粒組織を得ることができない。6.500%超であると、磁束密度が低下する。2.500%以上4.500%以下が好ましい。
Niの含有率は2.500%以上6.500%以下とする。2.500%未満であると、細粒組織を得ることができない。6.500%超であると、磁束密度が低下する。2.500%以上6.500%以下が好ましい。
なお、複数種類のγ安定化元素を含有させる場合は、元素の含有率の合計を2.500%以上6.000%以下とするとよい。
フェライト生成元素の非濃化部/中心層は、非濃化部/中心層全体に対する割合で、Si:1.500%以上3.500%以下、及び、Al:0.500%以上3.000%以下の少なくとも一方と、Mn:2.500%以上6.500%以下、及び、Ni:2.500%以上6.500%以下の少なくとも一方とを含有し、フェライト生成元素の合計濃度が板中心部の濃度の1.1倍未満であり、常温でα相であるα-γ変態成分系の組成を有する。
なお、フェライト生成元素の非濃化部/中心層のうち、フェライト生成元素の濃化部/表層との境界近傍において、Mn及びNiの濃度が高くなることがあるが、フェライト生成元素の非濃化部/中心層の組成は、非濃化部/中心層全体に対する割合では、上記組成となっている。
フェライト生成元素の濃化部/表層の組成は、フェライト生成元素の非濃化部/中心層の組成に、フェライト生成元素の合計濃度が金属板の板厚中心の濃度の1.1倍以上となるようにフェライト形成元素を加えたものである。
フェライト生成元素の濃化部/表層の厚みは、0.5μm以上9/20t以下とするのが好ましい。この厚さが0.5μm未満であると、表層の{100}方位粒を十分に発達させることができず、鋼板内部の{200}面集積度を30%以上とすることが困難である。この厚みが9/20tを超えると中心層の厚みを十分にとることができず、強度の高い金属板が得られない。
Fe系金属板の厚さは、たとえば、10μm以上5mm以下であることが好ましい。厚みが10μm未満であると、積層させて磁心として使用する際に、積層枚数が増加して隙間が多くなり高い磁束密度が得られ難くなる。また、厚みが5mm超であると、{100}集合組織を十分に成長させられず、高い磁束密度が得られ難くなる。
図1には、Fe系金属板の厚さ方向の断面図を示す。フェライト生成元素の濃化部のうちの少なくとも表面から0.2μmの領域あるいは全部の領域がα−Fe単相である。α−単層の厚さは、Fe系金属板の板厚方向の断面を、EPMAを用いて線分析を行うことで求めることができる。
なお、フェライト生成元素の濃化部/表層の厚さ、α−単層の厚さ、及び、粗大粒組織の厚さを求める際も、上記する細粒組織で構成される領域の厚さの求め方と同様の手法により、測定点を決定して平均値を算出して求める。
{200}面集積度=[{i(200)/I(200)}/Σ{i(hkl)/I(hkl)}]×100
・・・(1)
ただし、記号は以下のとおりである。
i(hkl):測定した試料における{hkl}面の実測積分強度
I(hkl):ランダム方位をもつ試料における{hkl}面の理論積分強度
Σ :α−Fe結晶の11の方位面についての和
ここで、ランダム方位を持つ試料の積分強度は、試料を用意して実測して求めてもよい。
その際、フェライト生成元素を金属板内部に拡散させ、熱処理後に表層に{200}面集積度を高めた粗大粒組織の領域を形成するとともに、中心層のフェライト生成元素が濃化していないα-γ変態成分系の領域では、熱処理の際のγ-α変態を利用して細粒組織を形成する。
以下では、母材金属板の準備、母材金属板の熱処理の順で説明する。
母材金属板として、上記Fe系金属板の成分組成を有し、表層部に歪が導入されたものを用いる。母材金属板の再結晶の際に、圧延面に平行な面が{100}に配向した結晶粒を多数発生させ、α−Fe単相の{200}面集積度を向上させるためである。たとえば、転位密度が1×1015m/m3以上1×1017m/m3以下となる加工歪が導入されていることが好ましい。このような歪を生じさせる方法は特に限定されないが、たとえば、高い圧下率、特に97%以上99.99%以下の圧下率で冷間圧延を施すことが好ましい。また、冷間圧延によって、0.2以上のせん断歪を生じさせてもよい。せん断歪は、たとえば冷間圧延時に上下の圧延ロールを互いに異なる速度で回転させれば生じさせることができる。この場合、上下の圧延ロールの回転速度の差が大きいほど、せん断歪が大きくなる。せん断歪の大きさは、圧延ロールの直径と回転速度の差とから算出することができる。
(フェライト生成元素の種類)
歪みが蓄積された母材金属板に、Fe以外のフェライト生成元素を拡散させ、鋼板厚み方向へ{100}に配向した領域を増加させる。
そのために、α−γ変態系のFe系金属よりなる母材金属板の両面にフェライト生成元素を第二層として層状に付着させ、その元素が拡散して合金化した領域をα−Fe単相系の成分にし、{200}面集積度を高めるための{100}配向の芽とする。
そのようなフェライト生成元素として、Al、Cr、Ga、Ge、Mo、Sb、Si、Sn、Ti、V、W、Znの少なくとも1種を単独であるいは組み合わせて使用できる。
フェライト生成元素を層状で母材金属板の表面に付着させる方法としては、溶融めっきや電解めっきなどのめっき法、圧延クラッド法、PVDやCVDなどのドライプロセス、さらには粉末塗布など種々の方法を採用することができる。工業的に実施するための効率的なフェライト生成元素の付着方法としては、めっき法又は圧延クラッド法が適している。
フェライト生成元素の加熱前の付着厚みは、0.05μm以上1000μm以下であることが望ましい。厚みが0.05μm未満では十分な{200}面集積度を得ることができない。また、1000μm超であると、付着したフェライト生成元素を表面に残留させる場合でもその厚みが必要以上に厚くなる。
フェライト生成元素として、たとえばAlを付着させた母材金属板を、母材のA3点まで加熱して再結晶させるとともに、母材金属板内の一部にAlを拡散させ母材に合金化させる。
母材金属板が再結晶する際、高い加工歪みが付与されている場合には、再結晶後に{100}に配向した集合組織が形成される。また、昇温につれてAlは金属板内部に拡散して鉄と合金化されるが、合金化した領域ではα−Fe単相成分となり、その領域ではγ相からα相に変態していく。その際、表層部に形成された{100}集合組織の配向を引き継いで変態するため、合金化した領域でも{100}に配向した組織が形成される。
この結果、合金化された領域では、α−Fe単相の{200}面集積度が25%以上50%以下となり、それに応じて{222}面集積度が1%以上40%以下となった組織が形成される。
すでに合金化されている領域ではγ変態しないα単相の組織となるため、{100}結晶粒はそのまま保存され、その領域の中で{100}粒が優先成長して{200}面集積度が増加する。
しかし、保持温度を高く、又は、保持時間を長くし過ぎると、γ相からα相への変態が進行し易くなり、粗大粒組織の内側に細粒組織が形成されなくなるので、母材金属板の成分組成に応じて、保持温度(A3点未満を含む温度)及び保持時間を調整し、Alの拡散、{100}粒への配向及び{100}粒の粒成長を止める。
この条件を満たすと、{200}面配向の芽の高集積化がより進行し、より確実に冷却後にα−Fe単相の{200}面集積度を30%以上とすることができる。
拡散処理後、Alが合金化されていない領域が残った状態で冷却すると、合金化していない領域は、Mnなどの相変態時の粒界の移動速度を遅らせる元素を含有しているので、γ相からα相への変態が進行し難くなり、通常は、冷却の際のγ相からα相への変態のときに、{100}に配向する結晶が大きく成長するが、結晶成長が止まり、又は、結晶成長の進行が遅くなり、合金化していない内部の領域は、細粒組織となる。なお、拡散処理後の冷却の際、冷却速度は、特に限定されてないが、0.1℃/sec以上500℃/sec以下が好ましい。
母材金属板の成分組成の影響について検討した。表1に示す成分組成(残部はFe及び不可避的不純物である)となるように溶製し、インゴットを鋳造した。インゴットをγ域で厚さ50mmまで熱間圧延し、続いて温間又は冷間で加工し、母材金属板とした。比較例として、本発明の範囲外の含有量で、Mn、Ni、Si、Alを含有する母材金属板を作成した。
組織については、X線回折法により、{200}面集積度及び{100}<011>のX線ランダム強度比を求めた。
α−単層の厚さの測定は、金属板の板厚方向の断面を、EPMAを用いて線分析を行うことで求めた。なお、α−単層は、板厚方向において、細粒組織の両側に2層形成されるが、この2層の厚さは、同等であるため、一方のα−単層の厚さのみ測定した。また、粗大粒の層構造、及び、金属板の内部の細粒組織の厚さは、光学顕微鏡を用いて測定し求めた。
Fe系金属板の強度については、圧延直角方向にJIS Z2201に記載の5号引張試験片を採取し、JIS Z2241に記載の試験方法に従って、引張試験を行い、引張強度を評価した。
比較例2及び4は、α単相系成分となっているため、フェライト生成元素を付着、拡散させても粗大粒組織は形成されなかった。
皮膜元素(フェライト生成元素及びオーステナイト生成元素)、母材金属板の熱処理の保持温度と保持時間、及び、細粒組織の厚さの影響について検討した。
表4に示す皮膜元素を母材金属板の両面に付着させた。皮膜元素は、イオンプレーティング法、又は、めっき法によって付着させた。表4に示す皮膜元素の厚さ(両面合計の厚さ)は、片面ずつで測定した厚さを合計して得られた値である。次いで、表4に示す保持温度及び保持時間で、皮膜元素の付着した母材金属板を熱処理した。熱処理炉には、赤外炉を用い、10-3Paレベルまで真空引きした雰囲気中で熱処理した。表5に、得られたFe系金属板の組織、α−単層の厚さ、粗大粒の層構造、細粒組織の厚さ、磁気特性、及び、引張強度の評価結果を示す。なお、実施例1と同様に、α−単層の厚さの測定では、板厚方向において、細粒組織の両側に形成される2層のα−単層のうち1層の厚さのみ測定した。
2 細粒組織
Claims (3)
- フェライト生成元素が合金化されて濃化した領域を有するFe系金属板であって、
前記Fe系金属が、質量%で、Si:1.500%以上3.500%以下、及び、Al:0.500%以上3.000%以下の少なくとも一方と、Mn:2.500%以上6.500%以下、及び、Ni:2.500%以上6.500%以下の少なくとも一方とを含有するものであり、
前記フェライト生成元素が濃化した領域のうちの少なくとも表面から0.2μmの領域あるいは全部の領域がα−Fe単相の組成で、その内側の領域がα−γ変態を生じ得る組成であり、
前記フェライト生成元素が濃化した領域のうち少なくとも表面から0.2μmの領域あるいは全部が粗大粒組織の領域であり、
前記粗大粒組織の領域における{200}面集積度が30%以上99%以下であり、
前記粗大粒組織の領域の内側の領域が細粒組織であり、該細粒組織の厚さがFe系金属板の板厚をtとすると、1/10t以上7/10t以下であることを特徴とするFe系金属板。 - 前記フェライト生成元素が濃化した領域のうち少なくとも表面から0.2μmの領域あるいは全部の領域を占めている結晶粒の表面が、板の表面を形成し、さらに、当該結晶粒の板内の粒界が前記細粒組織との境界となっていることを特徴とする請求項1に記載のFe系金属板。
- 前記フェライト生成元素が濃化した領域における{100}<011>のX線ランダム強度比が50以上400以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のFe系金属板。
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