JP2015010241A - Fe系金属板及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】磁気特性、機械的特性に優れたFe系金属板、及びその製造方法を提供する。【解決手段】片面もしくは両面にフェライト生成元素とオーステナイト生成元素からなる異種元素が合金化してα−Fe単相となった領域を有し、少なくとも板厚中心部がα−γ変態成分系であり、板面における{200}面集積度が30%以上99%以下、及び、{222}面集積度が0.01%以上30%以下であるFe系金属板。その製法は、(a)α−γ変態成分系のFe系金属鋳片を熱間圧延及び圧下率97%以上99.99%以下の範囲で冷間圧延し、(b)フェライト生成元素とオーステナイト生成元素からなる異種元素を、最表層がα—Fe単相となるように付着させ、(c)母材金属板のA3点まで加熱し、(d)さらにA3点以上1300℃以下に加熱、保持し、(e)A3点未満の温度へ冷却する工程を有する。【選択図】なし

Description

本発明は発電機、電動機、変圧器の磁心等、特に高速回転機のロータ等の大きな応力が付加される部品に好適な、高強度、かつ優れた磁気特性を有するFe系金属板及びその製造方法に関するものである。
従来から電動機、発電機、変圧器等の磁心にはケイ素鋼板が用いられている。ケイ素鋼板は小さな励磁磁場において飽和磁束密度Bsに対する平均磁束密度B50の比率B50/Bsが得られること、及び交流励磁磁場において低鉄損であることが求められる。さらに近年のモータの小型化、ハイパワー化に伴い、可変速運転や商用周波数以上での高速で回転するモータが増加している。このような回転体に作用する遠心力は回転速度の2乗に比例して大きくなるため、ロータ等に使用される材料は高強度が必要となる。
圧延面内に{200}面を高集積化させ、飽和磁束密度Bsに対する平均磁束密度B50の比率B50/Bsを高めたFe系金属板については、本発明者らは、先に特許文献1によって次のような技術を提案している。
(a)α−γ変態系のFe系金属よりなる母材金属板の片面あるいは両面にフェライト生成元素を付着させる工程と、
(b)該母材金属板を室温から母材金属板のA3点まで加熱して母材金属板内にフェライト生成元素を拡散させ、一部を母材に合金化させるとともに、合金化された領域でのα‐Fe相の{200}面集積度を25%以上50%以下とし、かつ、{222}面集積度を40%以下とする工程と、
(c)母材金属板をA3点以上の温度に加熱、保持して、フェライト生成元素と合金化されたα‐Fe相の面集積度について、{200}面集積度を増加させるとともに、{222}面集積度を低下させる工程と、
(d)母材金属板をA3点未満の温度へ冷却し、合金化していない領域のγ‐Fe相がα‐Fe相へ変態する際に、該α‐Fe相の{200}面集積度を高めて、{200}面集積度が30%以上99%以下となり、かつ、{222}面集積度が30%以下となるようにする工程とを有することを特徴とする高い{200}面集積度を有するFe系金属板の製造方法。
また、機械的性質を高めるためには固溶強化や析出強化などが一般的であるが、これらの強化方法の多くは、磁気特性を劣化させるため、強度と磁気特性の両立は非常に困難である。これに対して特許文献2には、Si量を3.5〜7.0%と高め、Ti,W,Mo,Mn,Ni,Co,Alなどの元素を添加して固溶強化を利用する技術が記載されている。
さらに、特許文献3には鋼板に未再結晶組織を残留させた高強度電磁鋼板が提案されている。
しかしながら特許文献2に記載の技術を工場生産に適用した場合、圧延工程などにおいて板破断などのトラブルが生じやすいという問題があった。また特許文献3では製造性は良いものの、圧延直角方向での鋼板強度のばらつきが大きくなりやすいという問題点があった。
国際公開第2011/052654号 特開昭60−238421号公報 特開2005−113185号公報
本発明はかかる事情に鑑みなされたもので、磁気特性が優れ、かつ機械的特性に優れたFe系金属板、及びそのような金属板を安定的に製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、様々な異種元素を付与したFe系金属板の機械的特性について、鋭意研究、検討を行った。その結果、本発明者らはフェライト生成元素とオーステナイト生成元素からなる異種元素を付与したFe系金属板が、低温でも集合組織が高集積化すると同時に、低温での熱処理のため結晶粒が細かくなり機械的特性が向上することを見出した。
本発明のFe系金属板は、
(1)片面もしくは両面にフェライト生成元素とオーステナイト生成元素からなる異種元素が合金化してα−Fe単相となった領域を有し、
少なくとも板厚中心部がα−γ変態成分系であり、
板面における{200}面集積度が30%以上99%以下、及び、{222}面集積度が0.01%以上30%以下である
ことを特徴とするFe系金属板。
ここで{200}面集積度とは、試料表面に対して平行なα−Fe結晶の11ある方位面({110}、{200}、{211}、{310}、{222}、{321}、{411}、{420}、{332}、{521}、{442})の積分強度を測定し、その測定値それぞれを、ランダム方位である試料の理論積分強度で除した後、{200}強度の比率を百分率で求めたものである。
(2)合金化した異種元素のオーステナイト生成元素がC、Co、Cu、Ni、N、Mn、Pdのうち1種以上であり、フェライト生成元素がAl、Cr、Ga、Ge、Mo、Sb、Si、Sn、Ta、Ti、V、W、Znのうち1種以上であることを特徴とする(1)に記載のFe系金属板。
(3)Fe系金属板の板厚が10μm以上6mm以下であることを特徴とする(1)、(2)の何れかに記載のFe系金属板。
(4)前記合金化領域の異種元素のフェライト生成元素の濃度をx%、オーステナイト生成元素の濃度をy%とすると、0<y/x<5であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のFe系金属板。
(5)Fe系金属よりなる母材金属板上に異種元素を付着させ、熱処理して拡散させたFe系金属板を製造する方法であって、
(a)α−γ変態成分系のFe系金属よりなる鋳片から熱間圧延及び圧下率97%以上99.99%以下の冷間圧延によって厚みを減少させて母材金属板を得る工程と、
(b)前記母材金属板の片面もしくは両面に、フェライト生成元素とオーステナイト生成元素からなる異種元素を、Fe系金属板の最表層がα―Fe単相となるように付着させる工程と、
(c)異種元素が付着した前記母材金属板を、母材金属板のA3点まで加熱して、異種元素を母材金属板に拡散させる工程と、
(d)前記金属板をさらにA3点以上1300℃以下の温度に加熱、保持して異種元素を拡散させる工程と、
(e)前記金属板をA3点未満の温度へ冷却する工程を有することを特徴とするFe系金属板の製造方法。
(6)異種元素となるオーステナイト生成元素がC、Co、Cu、Ni、N、Mn、Pdのうち1種以上であり、フェライト生成元素がAl、Cr、Ga、Ge、Mo、Sb、Si、Sn、Ta、Ti、V、W、Znのうち1種以上であることを特徴とする(5)に記載のFe系金属板の製造方法。
(7)付着させる異種元素層の厚みが0.05μm以上1000μm以下であることを特徴とする(5)または(6)の何れかに記載のFe系金属板の製造方法。
(8)該金属板の厚みが10μm以上6mm未満であることを特徴とする(5)〜(7)の何れかに記載のFe系金属板の製造方法。
本発明によれば、Fe系金属板にフェライト生成元素とオーステナイト生成元素からなる異種元素を拡散させて熱処理すると、集合組織を制御でき、かつ従来よりも高い機械的特性が得られることがわかった。
また、本発明によれば、既存設備を利用して、集合組織が制御され、かつ高い機械的特性を両立したFe系金属板を短時間で安定して製造することができ、経済性に優れる。
本発明者らは、特許文献1に示した方法についてさらに検討を加えた結果、金属板表面に拡散させる異種元素としてフェライト生成元素に加えてオーステナイト生成元素を加えることにより、金属板の集合組織を制御して、機械的特性が向上する現象を見出した。
(本発明の基本原理の説明)
まず、フェライト生成元素とオーステナイト生成元素からなる異種元素を拡散させた時に、従来技術よりも機械的特性が向上する基本原理を説明する。
本発明では母材となるFe系金属板にα−γ変態系の組成のものを用い、その片面もしくは両面にフェライト生成元素とオーステナイト生成元素からなる異種元素を付着させ、異種元素を拡散させて集合組織を制御し、かつ機械的特性に優れたFe系金属板を得る。
母材金属板には、強加工や脱炭などによって、板の片面もしくは両面の全面に{200}に近い方位に配向した組織を付与する。
工程(a)ではα−γ変態系成分のFe系金属を、例えば圧下率97%以上99.99%以下で冷間圧延して母材金属板を得る。
工程(b)では、母材金属板にフェライト生成元素とオーステナイト生成元素からなる異種元素を付着させる。
工程(c)で、異種元素の付着した金属板を、母材金属板のA3点以上まで加熱して、母材金属板内の{200}に近い方位が配向した領域の一部または全体に異種元素を拡散させ、母材に合金化させ、合金化した領域でα−Fe相を保存する。あるいは{200}に近い方位が配向した領域を超えて内部にフェライト生成元素を拡散させて、γ−Fe相であった領域をα−Fe相へ変態させる。その時、保存されたα−Fe相の配向を引き継いで変態するため、合金化した領域でも{200}に近い方位に配向した組織が形成される。また、先にα相化した粒においても、さらに{200}に近い方位への配向が高まる。
工程(d)では前記金属板をA3点以上1300℃以下の温度に加熱、保持する。α−Fe単相成分の領域は、γ変態を起こさないため、{200}に近い方位に配向した結晶粒はそのまま保存され、その領域の中で{200}に近い方位の結晶粒が優先成長して{200}面集積度が高まる。また、α−Fe単相成分でない領域はγ−Fe相へと変態する。保持時間を長くすると、{200}結晶粒は食い合いによって優先的に成長し、その結果、{200}面集積度はさらに高くなる。
工程(e)では金属板をA3点未満の温度へ冷却する。この時、合金化していない内部の領域のγ−Fe相はα−Fe相へ変態する。この内部の領域はA3点以上の温度域において、既に{200}に近い方位へ配向したα−Fe粒となっている領域に隣接しており、γ−Fe相からα−Fe相へ変態する際に、隣接するα−Fe粒の結晶方位を引き継いで変態する。このため、その領域でも{200}に近い方位が集積する。
異種元素としてフェライト生成元素とオーステナイト生成元素を適用すると、工程(c)において金属板内でA3点が変化する。すなわち、最表層の異種元素が十分に合金化した領域はα−Fe単相となるが、内部では、最表層から拡散してきた異種元素が合金化するため、合金量が少ない。このためオーステナイト生成元素の影響が大きく現れ、この領域ではA3点が存在する。従ってフェライト生成元素のみを拡散させた場合よりも、工程(d)でα−Fe相からγ−Fe相へと変態する領域を広くすることができ、この領域の配向をランダムにすることができる。工程(e)で冷却すると、この領域はγ−Fe相からα−Fe相へと変態するが、変態の際にα−Fe相の核生成サイトとなるγ粒界が多く存在するため、冷却後のα−Fe粒が細かくなる。さらにこの領域のγ−Fe相のランダム粒は、最表層のα−Fe単相領域で保存、成長した{200}結晶粒の方位を引き継いでα−Fe相へ変態するため、{200}に近い方位に配向する。このため高い{200}面集積度を有し、かつ、機械的性質に優れた金属板が得られる。
以上、本発明の基本的な構成について説明したが、さらに本発明の製造方法を規定する個々の条件の限定理由及び本発明を実施するに当たり、好ましい条件について説明する。
(母材金属板の成分)
母材金属板にはA3点を有するα−γ変態系の成分を有するFe系金属を用いる。C:1質量ppm〜0.2質量%、残部Fe及び不可避不純物からなる純鉄や低炭素鋼を基本とし、適宜、添加元素を含有させたものである。C:0.1質量%以下、Si:0.1〜2.5質量%を基本成分とするα−γ変態系成分のケイ素鋼でもよい。MnやCrは添加することでα−γ変態領域を拡大させることができる。また、その他の不純物としては微量のMn,Ni,Cr,Al,Mo,W,Ti,V,Nb,B,Cu,Co,Zr,Y,Hf,La,Ce,N,O,P,S等が含まれる。
(フェライト生成元素の種類)
母材金属板の表層から拡散させるフェライト生成元素は、特にAl,Cr,Ga,Mo,Sb,Si,Sn,Ta,Ti,V,W,及びZnのうち1種以上であると良い。
(オーステナイト生成元素の種類)
母材金属板の表層から拡散させるオーステナイト生成元素は、特にC、Co、Cu、Ni、N、Mn、Pdの1種以上であると良い。
(Fe系金属板の厚み)
Fe系金属板の厚みは10μm以上、6mm以下とすることが好ましい。厚みが10μm未満であると積層させて磁心として使用する際に、積層枚数が増加して隙間が多くなり高い磁束密度が得られない。また、厚みが6mm超であると、拡散処理後の冷却後に、十分に内部まで集合組織が制御できない。
(Fe系金属板の集合組織)
製品金属板の板面に対するα−Fe相の{200}面集積度は、30%以上99%以下とする必要がある。この集積度が30%未満であると、十分に高い磁束密度が得られない。また99%を超えると、磁束密度は飽和し、製造も困難になる。望ましくは50%以上95%以下である。
なお、上記方位面の面集積度の測定は、MoKα線によるX線回折で行うことができる。
詳細に述べると、各試料について、試料表面に対して平行なα−Fe結晶の11ある方位面({110}、{200}、{211}、{310}、{222}、{321}、{411}、{420}、{332}、{521}、{442})の積分強度を測定し、その測定値それぞれを、ランダム方位である試料の理論積分強度で除した後、{200}強度の比率を百分率で求める。
その際、{200}強度比率では、以下の式(I)で表される。
{200}面集積度=[{i(200)/I(200)}/Σ{i(hkl)/I(hkl)}]×100 ・・・ (I)
ただし、記号は以下のとおりである。
i(hkl): 測定した試料における{hkl}面の実測積分強度
I(hkl): ランダム方位をもつ試料における{hkl}面の理論積分強度
Σ: α−Fe結晶の11の方位面についての和
ここで、ランダム方位を持つ試料の積分強度は、試料を用意して実測して求めてもよい。
(フェライト生成元素とオーステナイト生成元素の割合)
濃化領域の異種元素のフェライト生成元素の濃度をx%、オーステナイト生成元素の濃度をy%とすると、0.001<y/x<5を満たす割合で付着させる。y/xが0.001未満だと拡散領域のA3点を十分に下げることができず、強度が向上しない。また5超では冷却後にγ−Fe相が残ってしまうため、{200}面集積度が低下する。より好ましくは0.005≦y/x≦4である。
次に製造方法について述べる。(母材金属板の製造方法)
母材金属板はα−γ変態成分のFe系金属を圧下率97%以上99.99%以下で冷間圧延する。圧下率が97%未満では高い{200}面集積度が得られず、99.99%超では{200}面集積度の増加は飽和し、製造コストが増加する。圧下率を高くすることに変えて、ブラストやCCBなどFe系金属板の表層に歪を付与する方法でも良い。さらに脱炭や脱Mnを施しても良い。
(異種元素の付着)
異種元素層の厚さは、0.05μm以上1000μm以下であることが好ましい。異種元素層の厚さが0.05μm未満であると、合金領域を十分に形成することが困難になって、十分なα相の{200}面集積度が得られないことがある。また、異種元素層の厚さが1000μmを超えていると、A3点未満への冷却後に異種金属層が厚く残存することがあり、高い磁気特性が得られないことがある。異種元素の付着方法はEB蒸着法、イオンプレーティング法、めっき法及びスパッタ法のいずれでも良い。フェライト生成元素とオーステナイト生成元素はこれらの方法によって同時に付着させても良いし、別々に付着させても良い。
(拡散熱処理)
フェライト生成元素とオーステナイト生成元素からなる異種元素を付着させた母材金属板を、母材金属板のA3点まで加熱して、母材金属板内の一部または全体に異種元素を拡散させ、母材に合金化させ、合金化した領域でα相を保存する。そして、母材金属板をさらにA3点以上1300℃以下の温度に加熱して、保持する。すでに合金化されている領域はγ変態しないα単相組織となり、その領域の結晶粒の配向はそのまま保存される。また、α単相でない領域はγ変態を起こす。さらに、異種元素の拡散に伴い、合金化した領域ではγ−α変態が進む。その際、変態する領域に隣接する領域ではすでに集合組織が保存されたα粒となっており、γ相からα相へ変態する際に、隣接するα粒の結晶方位を引き継ぐかたちで変態する。保持時間が長くなると集合組織が揃う半面、結晶粒が粗大化してしまい強度が低下するので、保持時間は0.5sec以上36000sec以下が好ましい。
本発明を実施例でさらに説明する。実施例での条件は本発明の実施可能性及び効果を確かめるために行った一条件例であり、本発明はこの一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用しうるものである。
(実施例1)
真空溶解炉で表1に示す鋼種A〜Fの成分の鋼を溶解し、インゴットを鋳造した。インゴットをγ域で厚さ45mmまで熱間圧延し、続いて温間または冷間で加工し、母材金属板とした。表1に母材金属板の化学成分及びA3点を示した。次いで、母材金属板の両面にフェライト生成元素のAlとオーステナイト生成元素のNiを、合計の厚みで5μmとなるように付着させた。
Figure 2015010241
次いで、異種元素の付着した金属板に熱処理を行った。熱処理炉には赤外炉を用い、10-3Paレベルまで真空引きした雰囲気中で熱処理した。1050℃、保持時間を1200secとした。
得られたFe系金属板の評価は以下のように行った。まず、集合組織についてはX線回折法で評価した。
続いて、引張強度はJIS5号引張り試験片を採取して、機械的性質を測定した。フェライト生成元素とオーステナイト生成元素の比率は、金属板表面の任意の位置においてφ100μmのエリアをEPMA(Electron Probe Micro−Analysis)法を用いて面分布を測定し、その平均値から求めた。磁気特性についてはSST(Single Sheet Tester)を用いて、5000A/mの磁化力に対する磁束密度B50を求めた。この時、測定周波数は50Hzとした。次にVSM(Vibrating Sample Magnetometer)を用いて飽和磁束密度Bsを求めた。この際、印加した磁化力は0.8×106A/mとした。また鉄損はJIS C2256に準拠し、単板磁気試験機(SST)で求めた。
表2及び表3から明らかなように、母材成分がα−γ変態系成分であり、A3点を有するものは高い{200}面集積度を有しておりB50/Bsも0.85を超え、かつ、引張強度も高くなった。一方、母材がα−γ変態系成分でない比較例1では、B50/Bsが0.85を大きく下回り、また引張強度も低かった。
Figure 2015010241
Figure 2015010241
(実施例2)
本実施例では母材に表1に記載の鋼種Aを用いた。この母材は真空溶解によってインゴットを溶製した後に、熱間圧延、温間または冷間圧延により様々な厚みに加工したものである。熱間圧延は1200℃に加熱した厚さ245mmのインゴットを厚さ50mmまで薄肉化した。この熱間圧延板から機械加工によって各種の板材を切り出し、温間または冷間で圧延を実施し、厚み0.1〜5.6mmの母材金属板を製造した。得られた母材金属板の両面に種々のフェライト生成元素とオーステナイト生成元素を付着させた。フェライト生成元素としてAl,Mo,Si,Sn,V、オーステナイト生成元素としてCo,Cu,Ni,Mn,Pdを付着させた。比較例においてはフェライト生成元素またはオーステナイト生成元素を単独で付着させた場合、さらには異種元素を付着させなかった場合を検討した。
熱処理炉には赤外炉を用い、10-3Paレベルまで真空引きした雰囲気中で熱処理した。保持温度は900℃〜1200℃、保持時間を5〜18000secとした。評価は実施例1と同じ方法により行った。
表4及び表5から明らかなように、発明例はすべて350MPa以上の引張強度を有すると同時に、B50/Bsが0.85以上となることがわかった。これに対し、本発明の条件を外れる場合や、異種元素を付着させなかった場合には、集合組織も制御できず、引張強度も低かった。また比較例2や3のようにy/xが5を超えた場合には、B50/Bsが低く、引張強度も低くなった。また比較例4のようにフェライト生成元素のみを付着させた場合、高い{200}面集積度が得られたものの、引張強度は低かった。比較例6ではオーステナイト生成元素のみを付着させたが、この場合には{200}面集積度も低く、引張強度も低い結果であった。
Figure 2015010241
Figure 2015010241
Figure 2015010241
Figure 2015010241
(実施例3)
本実施例では母材に表1に記載の鋼種Cを用いた。この母材は真空溶解によってインゴットを溶製した後に、熱間圧延、温間または冷間圧延により様々な厚みに加工したものである。熱間圧延は1200℃に加熱した厚さ245mmのインゴットを厚さ50mmまで薄肉化した。この熱間圧延板から機械加工によって各種の板材を切り出し、温間または冷間で圧延を実施し、厚み0.2〜4.7mmの母材金属板を製造した。得られた母材金属板の両面に種々のフェライト生成元素とオーステナイト生成元素を付着させた。フェライト生成元素としてCr,Ga,Sb,Ta,Ti,W,Zn、オーステナイト生成元素としてCo,Cu,Ni,Mn,Pdを付着させた。比較例においてはフェライト生成元素またはオーステナイト生成元素を単独で付着させた場合を検討した。
熱処理炉には赤外炉を用い、10-3Paレベルまで真空引きした雰囲気中で熱処理した。保持温度は960℃〜1270℃、保持時間を0.5〜6000secとした。評価は実施例1と同じ方法により行った。
表6及び表7から明らかなように、発明例はすべて350MPa以上の引張強度を有すると同時に、B50/Bsが0.85以上となることがわかった。これに対し、本発明の条件を外れる場合や、異種元素を付着させなかった場合には、集合組織も制御できず、引張強度も低かった。また比較例10のようにy/xが5を超えた場合には、B50/Bsが低く、引張強度も低くなった。また比較例11のようにフェライト生成元素のみを付着させた場合、高い{200}面集積度が得られたものの、引張強度は低かった。比較例12ではオーステナイト生成元素のみを付着させたが、この場合には{200}面集積度も低く、引張強度も低い結果であった。
Figure 2015010241
Figure 2015010241
Figure 2015010241
Figure 2015010241
(実施例4)
本実施例では母材に表1に記載の鋼種Dと鋼種Eを用いた。この母材は真空溶解によってインゴットを溶製した後に、熱間圧延、温間または冷間圧延により様々な厚みに加工したものである。熱間圧延は1200℃に加熱した厚さ225mmのインゴットを厚さ25mmまで薄肉化した。この熱間圧延板から機械加工によって各種の板材を切り出し、冷間で圧延を実施し、厚み0.008〜6.2mmの母材金属板を製造した。得られた母材金属板の両面にフェライト生成元素のSiやZn、オーステナイト生成元素のMn,Cuを付着させた。熱処理は実施例2と同様に行った。保持温度は700〜1325℃、保持時間を0.05〜40000secとした。評価は実施例1と同じ方法により行った。
表8及び表9から明らかなように、発明例はすべて400MPa以上の引張強度を有すると同時に、B50/Bsが0.85以上となることがわかった。これに対し、本発明の条件を外れる場合には、B50/Bsは低く、引張強度も低いレベルに留まった。
Figure 2015010241
Figure 2015010241

Claims (8)

  1. 片面もしくは両面にフェライト生成元素とオーステナイト生成元素からなる異種元素が合金化してα−Fe単相となった領域を有し、
    少なくとも板厚中心部がα−γ変態成分系であり、
    板面における{200}面集積度が30%以上99%以下、及び、{222}面集積度が0.01%以上30%以下である
    ことを特徴とするFe系金属板。
    ここで{200}面集積度とは、試料表面に対して平行なα−Fe結晶の11ある方位面({110}、{200}、{211}、{310}、{222}、{321}、{411}、{420}、{332}、{521}、{442})の積分強度を測定し、その測定値それぞれを、ランダム方位である試料の理論積分強度で除した後、{200}強度の比率を百分率で求めたものである。
  2. 合金化した異種元素のオーステナイト生成元素がC、Co、Cu、Ni、N、Mn、Pdのうち1種以上であり、フェライト生成元素がAl、Cr、Ga、Ge、Mo、Sb、Si、Sn、Ta、Ti、V、W、Znのうち1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のFe系金属板。
  3. Fe系金属板の板厚が10μm以上6mm以下であることを特徴とする請求項1、2の何れかに記載のFe系金属板。
  4. 前記合金化領域の異種元素のフェライト生成元素の濃度をx%、オーステナイト生成元素の濃度をy%とすると、0<y/x<5であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のFe系金属板。
  5. Fe系金属よりなる母材金属板上に異種元素を付着させ、熱処理して拡散させたFe系金属板を製造する方法であって、
    (a)α−γ変態成分系のFe系金属よりなる鋳片から熱間圧延及び圧下率97%以上99.99%以下の冷間圧延によって厚みを減少させて母材金属板を得る工程と、
    (b)前記母材金属板の片面もしくは両面に、フェライト生成元素とオーステナイト生成元素からなる異種元素を、Fe系金属板の最表層がα―Fe単相となるように付着させる工程と、
    (c)異種元素が付着した前記母材金属板を、母材金属板のA3点まで加熱して、異種元素を母材金属板に拡散させる工程と、
    (d)前記金属板をさらにA3点以上1300℃以下の温度に加熱、保持して異種元素を拡散させる工程と、
    (e)前記金属板をA3点未満の温度へ冷却する工程を有することを特徴とするFe系金属板の製造方法。
  6. 異種元素となるオーステナイト生成元素がC、Co、Cu、Ni、N、Mn、Pdのうち1種以上であり、フェライト生成元素がAl、Cr、Ga、Ge、Mo、Sb、Si、Sn、Ta、Ti、V、W、Znのうち1種以上であることを特徴とする請求項5に記載のFe系金属板の製造方法。
  7. 付着させる異種元素層の厚みが0.05μm以上1000μm以下であることを特徴とする請求項5または6の何れかに記載のFe系金属板の製造方法。
  8. 該Fe金属板の厚みが10μm以上6mm未満であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載のFe系金属板の製造方法。
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